内因性眼内炎(細菌・真菌)EndogenousEndophthalmitis(BacterialandFungal)河越龍方*はじめに眼内炎は外因性と内因性に分けられる.外因性では内眼手術後,穿孔性眼外傷,涙.炎や角膜感染の波及によるものがある.内因性では他臓器原発の感染が血行性に転移して発症する.内因性の場合,細菌性では肝膿瘍や心内膜炎など,真菌性では中心静脈栄養(intravenoushyperalimentation:IVH)カテーテルなどによって起こる.眼科的所見では飛蚊症,視力低下,充血,眼痛をきたしうる.眼症状は内因性のなかでも細菌性では急性の経過をたどることが多く,一方真菌性では数日~数週をかけて症状が悪化する亜急性の経過をたどる.全身症状として発熱,CRP上昇,WBC(白血球)増加をきたしうる.糖尿病,透析患者,担癌患者,ステロイド使用など易感染性のものに生じやすい.内因性眼内炎では全身状態が悪いこともあり,意識障害がある状態や認知機能低下例では発見が遅れが次いで,角膜や強膜が融解していると眼球摘出や眼球内容除去術が必要となることもある.一方,術後眼内炎では健常者が多く,術後定期診察をするため,また,術後C1週間以内に発症することが多く診断が比較的容易であるため,眼球摘出までになることは少ないと考えられる.ただし,外因性眼内炎でも緑内障などで視機能が著しく落ちている眼で,たとえば線維柱体切除術の既往がある場合などにおいては,気づくのが遅れて眼球摘出になる例も存在する.内因性眼内炎は外因性眼内炎と比べて頻度は低く,まとまった数の報告は多くはない.原因微生物は外因性ではグラム陽性球菌が多いが,内因性ではCKlebsiellapneumoniaeなどが多く,また外因性では少ない真菌感染が起こる.真菌感染のC9割がカンジダ属(C.albicansによるものが多い)であり,多くはCIVHが原因となる.原因病原体の種類は,抗生薬の使用や治療法の変化,培養検査の感度,静脈内薬物乱用の頻度,あるいは民族による感受性違いからなのか,時代や地域によって大きな差がある.今後,予後に関しては硝子体手術の普及などにより変わってくると予想される.本稿では,まず,内因性眼内炎の後ろ向き症例対象研究についてこれまでの報告をレビューし,その後診断と治療について概説する.治療に関してはまだ明らかなエビデンスがないことも多く,私見が入ることをご容赦願いたい.CI疫学Guptaらによる,英国でのC1999年~2012年の調査1)では,47例の眼内炎のうち,81%が術後,11%が硝子体注射後,6%が内因性,2%が外傷性であった.つまり,眼内炎全体のC90%以上が術後眼内炎であり,内因性眼内炎は頻度として少なかった.秦野らが報告したわが国の多施設における検討(1988年までのC5年~20年の間)ではC280例C323眼を調べている2).内因性はC88例(31.4%)131眼であった.細菌学的確定診断率はC28.2%であった.内因性ではグラム*TatsukataKawagoe:埼玉医科大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕河越龍方:〒350-0495埼玉県入間郡下呂山町下呂本郷C38埼玉医科大学医学部眼科学教室C0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(51)C523陰性菌がもっとも多くC14株(45%)で,そのうちCKlebC-siellapneumoniaeが5株,E.coliがC4株であった.真菌がC9株のCCandidaを含むC11株(35%),グラム陽性菌がC6株(19%)で,計C31株分離された.一方,外因性ではコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulaseCnegativeStaphylococci:CNS)などのグラム陽性菌が多く,グラム陰性菌と真菌は少なかった.内因性眼内炎に限って,細菌性と真菌性の前房と硝子体液の培養陽性率を比較すると,細菌性はC19/25(76%)なのに対して真菌性は11/28(39%)であり,真菌の分離率は低かった.Wongらはシンガポールにおける内因性眼内炎C27例32眼(1994年~1997年)について報告している3).19例(70%)はグラム陰性菌で,Klebsiellapneumoniaeは16例(60%)であった.肝胆道系感染はC13例(48%)であった.患者のC2/3に基礎疾患を有しており,糖尿病が46%と多かった.9例(28%)のみがC20/120あるいはそれ以上の視力を保つことができたが,2眼は眼球摘出と眼球内容除去術となった.Nishidaらは,日本人の内因性細菌性眼内炎C21例C27眼(2002年~2013年)に関して報告している4).90.5%において血液,眼内液,その他から培養で検出され,グラム陽性菌はC76.2%,グラム陰性菌はC19.0%であった.52.3%で黄色ブドウ球菌(そのうちC72.7%がメチシリン耐性)であって,真菌感染はいなかった.17例(81.0%)で眼外感染病巣が特定され,3例(14.3%)で感染性心内膜炎,2例(9.5%)で肺炎,2例(9.5%)で軟部組織(皮膚および創傷)感染症,2例(9.5%)で腹膜炎,2例(9.5%)でカテーテル関連感染症,2例(9.5%)で外傷(頭部および腎臓)が特定された.そのほか,肝膿瘍,尿路感染症,熱傷,腰筋膿瘍がそれぞれC1例であった.残りC4例は感染源が特定できなかった.最終視力は,44%でC0.5以上,64%でC0.1以上,36%がC0.1未満であった.3眼で眼球摘出が行われ,2眼で眼球癆となった.硝子体内注射と硝子体手術では,視力予後に差がなかった.SilpaらはタイにおけるC36例C41眼(2005年~2015年)について報告しており5),肝膿瘍(19%),尿路感染症(19%)が原因の上位であった.グラム陰性菌(49%),グラム陽性菌(44%),真菌(7%)であった.全症例のうち,KlebsiellapneumoniaeがC26.8%,次いでCStrepto-coccusagalactiaeがC15%で多かった.感染源は,肝膿瘍(19%)と尿路感染(19%)が多かった.肝膿瘍のC80%はCKlebsiellapneumoniaeが原因であった.初診時の視力と炎症の度合いが予後に影響した.Choらは,2006年~2013年発症のC60例の米国人と48例の韓国人の計C108例C128眼の内因性眼内炎について調べている6).グラム陽性菌は,米国人C44.8%,韓国人C21.3%であり,米国人に多かった.グラム陰性菌は米国人C3%,韓国人C44.3%で韓国人に多かった.Klebsi-ellapneumoniaeは韓国人のC37.7%でみられた.肝膿瘍が原因のものは米国人にはみられず,韓国人ではC33.3%にみられた.真菌性眼内炎は,細菌性眼内炎よりも視力予後が良好であった.硝子体手術は視力予後に関与はしなかったが一部の強毒菌においては有効と考えられた.Bjerrumらは,2000年~2016年のデンマークにおけるC50例C59眼の内因性眼内炎について報告している7).皮膚潰瘍C18%,心内膜炎C12%などが原因であった.患者背景は糖尿病(36%)と癌(26%)が多かった.63%が血液か硝子体で病原微生物が判明し,連鎖球菌と黄色ブドウ球菌が多く,KlebsiellapneumoniaeとCCandidaalbicansは少なかった.他の米国やドイツの報告と比ベてカンジダが少なかった.最終視力は,0.1以下がC62%,0.5以上がC26%,0.1以上は8%であった.Gounderらは西オーストラリア地域における,2000年~2015年の間の内因性眼内炎C57例C66眼を報告している8).尿路感染(28%),肺炎(23%),心内膜炎(21%)であった.培養陽性患者C53例のうち,35%がグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌C10例),20.8%がグラム陰性菌(Klebsiellapneumoniae,9例),35.8%が真菌(Candi-daCalbicans,7例)であった.検体の培養陽性率は,硝子体(34/52例,65%),血液(22/51例,43%),前房水(1/11例,9%)であり,全体でC53例(93%)が培養陽性となった.視力はC33眼(50%)で改善し,15眼(22.7%)で低下した.硝子体手術はC66眼中C29眼(44%)で行われたが,視力予後とは相関しなかった.10例C10眼(18%)で眼球内容除去か眼球摘出が行われた.Hsiehらは,台湾におけるC2007年~2017年の,70例C83眼の培養が陽性になった内因性眼内炎を報告して524あたらしい眼科Vol.41,No.5,2024(52)いる9).もっとも多かった感染源は腹腔内膿瘍(N=36,43.37%)で,次いで尿路感染であった.背景因子としてC2型糖尿病が多かった(N=53,63.86%).原因病原体はグラム陰性菌(77.11%),グラム陽性菌(14.46%),真菌(8.43%)であった.陰性菌のなかでもCKlebsiellapneumoniaeがC44例(53.01%)と多かった.真菌はC7例中6例がCCandidaalbicansであった.7例を除き,抗菌薬の全身投与に加え,ただちにテイコプラニンとセフタジジムの併用などの硝子体内注射がC3.03C±2.27回行われた.硝子体手術はC39眼に施行された.指数弁以上視力を残せたものがC34.94%,6眼(7.23%)は眼球摘出か眼球内容除去術になった.肝膿瘍と尿路感染を比較すると肝膿瘍で視力予後が悪かった.硝子体手術と視力予後は相関がなかった.初期の視力が視力予後と相関した.Todokoroらは多施設におけるC25例C32眼の内因性眼内炎(2009年~2014年)について報告している10).培養陽性率は,房水(28.6%),硝子体(62.5%),血液(57.1%),中心静脈カテーテル(100%)であった.12例(48.0%)で糖尿病がみられた.多いものから黄色ブドウ球菌10例(うちCMRSA4例),KlebsiellaCpneumoniae7例であった.すべてのグラム陽性菌でバンコマイシンに感受性があった.すべてのグラム陰性菌において第C3世代セファロスポリン,イミペネム,ゲンタマイシン,レボフロキサシンに感受性があった.Klebsiellapneumoniaeとグラム陰性菌は視力予後不良因子であった.抗生物質硝子体内注射はC19眼(58.8%)で行われた.硝子体手術はC32眼中C14眼(43.8%)で行われた.最終視力がC0.2よりよかったのはC19例(59.4%)であった.2眼(6.3%)に眼球摘出あるいは眼球内容除去が行われた.抗生物質硝子体内注射および硝子体手術は,視力予後とは関連しなかった.Ishikawaらにより,日本人を対象としたC2010年~2019年多施設研究でのC314例C350眼の細菌性眼内炎が報告されている10).外因性と内因性眼内炎の比較を行っている.外因性はC242眼(69.1%),内因性はC108眼(30.9%)であった.ほかの研究に比べて内因性眼内炎の比率が高かった.Klebsiellapneumoniaeの記載はないが,真菌の記載はあり,真菌C20例中C7例は外因性であった.眼痛,毛様充血は外因性のほうが強かった.2群間での最終視力予後に差はなかった.KuoらによりC2008年~2015年の台湾におけるC175例の内因性眼内炎に関して報告されている12).44%において感染源が明らかで,24.6%が肝膿瘍であり,またCKlebsiellapneumoniaeがもっとも多い原因菌(34.4%)であった.175例中C90例で培養陽性であった.グラム陽性菌はC23株で,Coagulase-negativeCStaphylococcusが多かった(6/23,26.1%).グラム陰性菌はC48株で,CKlebsiellapneumoniaeが多く(31/48,64.6%),次いで緑膿菌(11/48,22.9%)であった.真菌はC15株でCCan-didaalbicansが多かった(6/15,40.0%).細菌性よりも真菌性のほうが視力予後良好であった.グラム陰性菌が硝子体から検出された群は培養陰性の群よりも眼球摘出が多かった.硝子体内抗生物質の使用は非使用群と比べて眼球摘出のリスクが低かったため,早期の硝子体内抗生物質治療により,眼球摘出を避けられる可能性があるとしている.硝子体手術と眼球摘出のリスクには相関がなかった.初診時の視力と治療後の視力は相関した.北村らは,2013年~2022年に内因性眼内炎と診断されたC13例C14眼に対する後ろ向き検討を行った13).7例が細菌性,2例が真菌性,4例が起因菌不明であった.原因が明らかになったC9例の内訳は,G群レンサ球菌(GroupCGStreptococcus:GGS),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(mechicillin-resistantCStaphylococcusCaure-us:MRSA),化膿レンサ球菌(Streptococcuspyogenes)がそれぞれC1例,メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meti-cillin-susceptibleCStaphylococcusaureus:MSSA),CKlebsiellapneumoniae,CandidaalbicansがそれぞれC2例であった.患者背景としては,悪性腫瘍治療中C3例,敗血症治療中C6例,免疫抑制中C2例,糖尿病C1例であった.内因性眼内炎の視力予後は一般的に不良と考えられているが,本研究でも術後に視力が改善したのはC4眼のみであった.内因性眼内炎においては,視力予後は細菌性よりも真菌性のほうが良好であると報告されているが,細菌性でも視力予後がよかったものもいて,必ずしもそうとはいえないとしている.また,以前の報告でグラム陰性菌は視力予後が不良とされているが,本研究でもCKlebsiellapneumoniaeによる内因性眼内炎の予後は不良であった.(53)あたらしい眼科Vol.41,No.5,2024C525受診黄斑,視神経乳頭に病変が及んでいる全身抗菌薬投与,点眼で様子をみる*全身状態が悪く手術ができない場合には,抗菌薬+ポビドンヨードの硝子体内投与も検討する**ニューキノロン,セフタジジム,バンコマイシン図1内因性眼内炎診断治療フローチャート(私見)白内障手術灌流なしで硝子体生検1ml程度採取*抗菌薬とポビドンヨード入り灌流液につなぎ替える**硝子体手術(シャンデリア照明を用いて可能な限り硝子体除去,水晶体後.開窓)抗菌薬硝子体注射***,トリアムシノロン硝子体注射,トリアムシノロンTenon.下注射*:培養・鏡検に提出,真菌を疑うならb-Dグルカンも検査.**:BSS500mlにバンコマイシン10mg,セフタジジム20mg,10%ポビドンヨード1.25mlをいれる.BSS内でポビドンヨードは失活するので使用直前に混注する,30分たったら新しい灌流液に変える.真菌性の場合は,BSS500mlにフルコナゾール10mgなど.***:バンコマイシン1.0mg/0.1ml,セフタジジム2.0mg/0.1ml.真菌性の場合は,フルコナゾール100μg/0.1mlなど.図2硝子体手術の流れ(私見)・中心窩に大きな病巣があり抗真菌薬が著効しない時・初診時すでに高度の硝子体混濁あるいは網膜.離がある時とされている.硝子体手術の流れを図2に示した.比較的高齢であることが多い,術中透見の改善,術後白内障が進むといった理由で,手術は基本的に水晶体再建術も併用する.術中セフタジジムとバンコマイシンを用いる(セフタジジムはグラム陽性菌,陰性菌に広い抗菌スペクトラムをもち,バンコマイシンはグラム陽性菌には強いが陰性菌には効かない).またポビドンヨードも用いる17).ポビドンヨードは灌流液にC0.025%になるように調整する.BSS内では還元されて殺菌効果が薄まるため,30分以上経ったら新たに調整したC0.025%BSSと交換する.局所麻酔あるいは全身麻酔に耐えられず,硝子体手術がどうしても施行できない際には抗生薬硝子体投与のほかに,ポビドンヨードの硝子体投与も有効である可能性がある.田中らによると,全身状態不良の内因性眼内炎患者(黄色ブドウ球菌)に対し,1.25%ポビドンヨード0.1Cml硝子体内注射施行し改善し,硝子体手術が施行できない際の代替ともなりうるとしている18).ポビドンヨードは細菌だけでなく真菌に対しても強い殺菌効果を示すことが知られているが,真菌性眼内炎への有効性については,ウサギを用いた報告がCLeeらによりなされている19).Candidaalbicans眼内炎モデルにおいて,ボリコナゾール,ポビドンヨード,ボリコナゾールとポビドンヨード併用の硝子体内注射を試行し比較している.ボリコナゾールとポビドンヨードは同等の効果を示し,ボリコナゾールとポビドンヨード併用ではその相乗効果は認めなかったとしている.真菌性眼内炎においてもポビドンヨードを硝子体手術の灌流液に添加することの有効性が示唆される.C2.抗菌薬(細菌)細菌性の眼内炎に対する点滴は,一般的に眼内に移行性のよいカルバペネム系であるイミペネムやメロペネムを投与されることが多い.カルバペネム系薬剤はCb-ラクタム系の広域スペクトルをもつ抗生薬である.多剤耐性菌ではカルバペネム系に耐性をもつものもあり,硝子体検体などを用いた薬剤感受性の確認は重要である.バンコマイシンは全身投与による眼内移行は悪いとされており20),Ferenczらによると,バンコマイシンの静脈注射は硝子体内では有効濃度には達せず,硝子体注射がよいとしている21).Huervaらによると,バンコマイシン点眼でも前房内濃度は有効濃度に達し,4時間後には有効濃度以下になることから,2時間ごとの点眼がよいとしている22).以上よりバンコマイシンは点滴ではなく点眼で投与されていることが通常である.硝子体手術においては硝子体腔への薬剤の移行をよくするために後.は切開する.C3.抗菌薬(真菌)真菌性眼内炎に対する抗真菌薬の使用は,まずは全身投与が基本である.感受性と眼内移行性を考え薬剤選択をする.『深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014』14)に非常に詳しく記載されているため参照していただきたい.菌種不明の際にはフルコナゾールが第C1選択薬として用いられる.すでに菌種と感受性が判明している際には標的治療を行う.C4.術後炎症抑制ウサギ眼内炎モデル(表皮ブドウ球菌)において,バンコマイシン,バンコマイシン+トリアムシノロン硝子体内投与,生理食塩水硝子体内投与のC3郡に分けて,その予後比較をした報告がある23).その結果,トリアムシノロンを用いた群で組織破壊が少なかったという結果が出ている.この結果をもとに,筆者は硝子体手術の最後にトリアムシノロンを硝子体内,さらにCTenon.下にも注射している.術後炎症を抑えたいが,外因性の場合と異なり,内因性の場合は原発病変がある,全身状態が悪いといった理由で全身性のステロイド投与はできないことも多い.このことが予後にどの程度影響しているか今後検討の余地がある.CIII出血性閉塞性網膜血管炎白内障手術後に予防的にバンコマイシンを投与された患者のなかで,まれではあるが出血性閉塞性網膜血管炎(hemorrhagicCocclusiveCretinalvasculitis:HORV)を528あたらしい眼科Vol.41,No.5,2024(56)起こすことが知られている(米国では白内障手術終了時に眼内炎予防のために抗生薬,とくにバンコマイシンを前房内投与して終わることが多いため報告が多い).2014年に白内障術後C2例C4眼において閉塞性血管炎を起こしたことが報告され24),バンコマイシンの前房内投与が疑わしいとされた.2015年にはC6患者C11眼の白内障手術時バンコマイシン投与後のCHORVが報告された25).術後C1日~14日後に無痛性の視力低下をきたし,全例に全身および局所のステロイド治療が行われ,7眼に新生血管緑内障が生じ,全例に抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)薬硝子体投与か汎網膜光凝固(panretinalCphotocoagulation:PRP)が行われた.8眼で最終視力がC0.2以下になった.2018年には,白内障手術終了時の抗生薬前房内投与に関するメタ解析の結果が報告され26),セフロキシム,モキシフロキサシン,バンコマイシンを比較した際に,バンコマイシンにおいてのみ発症を認めている.細菌性眼内炎の硝子体手術においては,バンコマイシンを術中灌流液に入れて用い,また,術最後に硝子体注射を行う.眼内炎では元々ある低度の閉塞性網膜血管炎を起こしていることも多く,術中にバンコマイシンを使用したことが原因でCHORVを起こしたかどうかは判断がつきにくい.眼内炎で炎症細胞が大量に浸潤している眼内では,まれとされているCHORVが生じやすくなることも予想される.術後,眼底透見できるようになれば蛍光造影検査を試行し,無血管領域の確認,およびその後のCPRPや抗CVEGF薬の使用が必要になる患者も一定数あるのではないかと推測する.筆者も眼内炎術後に異常な血管周囲の出血があると,HORVなのかどうか悩むことがある.HORVを考えるとバンコマイシンはなるべく使用したくないが,薬剤感受性試験でセフェム系やカルバペネム系抗生薬に耐性を示す菌も眼内炎で散見する.Nishi-daらの報告によると内因性眼内炎でもCMRSAが多く検出されている4).失明を避けるためには,多剤耐性菌も対象とし,バンコマイシンを使ったエンピリックセラピーも仕方ないのではないかと考えるが,感受性結果からほかの薬剤が使えるならば途中変更するべきであろう.投与前に他科で薬剤感受性結果が示されており,ほかの抗生薬を使用できる際には,むやみにバンコマイシンを使わないようにすべきである.バンコマイシンに替わる抗生薬(諸外国ではテイコプラニンなどを使用することもあるようである),あるいはさらに積極的な術後のポビドンヨード使用など,新たな治療法の開発が待たれる.文献1)GuptaCA,COrlansCHO,CHornbyCSJCetal:MicrobiologyCandCvisualCoutcomesCofCculture-positiveCbacterialCendophthal-mitisCinCOxford,CUK.CGraefeCArchCClinCExpCOphthalmolC252:1825-1830,C20142)秦野寛,井上克洋,的場博子ほか:日本の眼内炎の現状─発症動機と起炎菌─.日眼会誌95:369-376,C19913)WongCJS,CChanCTK,CLeeCHMCetal:EndogenousCbacterialendophthalmitis:anCeastCAsianCexperienceCandCaCreap-praisalCofCaCsevereCocularCa.iction.COphthalmologyC107:C1483-1491,C20004)NishidaT,IshidaK,NiwaYetal:Aneleven-yearretro-spectiveCstudyCofCendogenousCbacterialCendophthalmitis.CJOphthalmol:261310,C20155)Silpa-ArchaS,PonwongA,PrebleJMetal:Culture-pos-itiveendogenousCendophthalmitis:anCeleven-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