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角膜屈折矯正術後眼に対するハードコンタクトレンズ処方

2024年11月30日 土曜日

角膜屈折矯正術後眼に対するハードコンタクトレンズ処方PrescriptionofHardContactLensesforPost-RefractiveSurgeryEyes岩本悠里*高静花*はじめに良好な裸眼視力への需要が高まるなか,屈折矯正手術はさまざまな進歩をとげてきた.屈折矯正手術は角膜面で矯正を行う角膜屈折矯正手術と,implantablecollam-erlens(ICL)など眼内レンズ面にて矯正を行う有水晶体眼内レンズに大別される.屈折矯正手術は良好な裸眼視力を得ることを目的として施行され,患者満足度の高い手術ではあるが,過矯正や低矯正を起こすことがある.また,とくに角膜屈折矯正手術の場合には角膜形状の変化によって不正乱視が生じ,視力低下を引き起こすことがある.不正乱視は眼鏡などでは矯正できない乱視で,その矯正方法としてハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)が広く用いられている.しかし,屈折矯正手術によって変形した角膜へのCHCL処方はしばしば困難となることが知られている1).本稿では屈折矯正手術の歴史を振り返りながら,角膜屈折矯正術後のHCL処方について述べる.CI角膜屈折矯正手術1930年代に佐藤氏手術が施行された.この手術は角膜前後面を切開するものであり,その後の内皮減少に伴う水疱性角膜症の発症により,わが国で屈折矯正手術はほとんど行われなくなった.この合併症からの教訓をもとに,1980.1990年代にかけて放射状角膜切開術(radialkeratotomy:RK)が広く行われるようになった.RKでは角膜前面に放射状の切開を入れることで角膜中央部を平坦化し,近視を軽減する.同様の術式として角膜前面に切開を入れて乱視を矯正する,乱視矯正角膜切開術(astigmaticCkeratotomy)なども用いられていたが,いずれも正確な術後の予測がむずかしかった.その後,レーザーで角膜実質を切除するCphotorefractivekeratectomy(PRK)やClaserCinCsituCkeratomileusis(LASIK)が出現し,RKは徐々に衰退して現在では行われなくなった.2023年C3月にはフェムトセカンドレーザーを用いて角膜内部を切開し角膜片を小切開から取り出すCsmallCincisionClenticuleextraction(SMILE)が承認された.2023年の日本白内障屈折矯正手術学会の調査2)によると,屈折矯正手術を行っていると回答した医師はC26%程度である.その中でCPRK,LASIK,SMILEを施行していると回答した医師の割合はCPRK:18%,LASIK:27%(microkeratomeLASIK:10%,femtosecondClaserLASIK:27%),SMILE:11%であった.今後有用と考えられる屈折矯正手術に関する設問ではCLASIK,SMILEはそれぞれC38%,24%であり,オルソケラトロジーやCICLの発展により減少傾向ではあるものの,LASIKを含む角膜屈折矯正手術は現在も多く行われている.角膜切開を行うCRK,レーザーで角膜実質を切除するPRKやCLASIKはそれぞれ異なる角膜変化を示す.以下にそれぞれの手術後の特徴について述べる.*YuriIwamoto&ShizukaKoh:大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室〔別刷請求先〕岩本悠里:〒565-0871大阪府吹田市山田丘C2-2大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室C0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(43)C13131.RKRKは,前方角膜を放射状に切開することで,角膜中央部を平坦化し近視を軽減する.術後合併症としては,術直後の過矯正,低矯正に加え,術後長期に遠視化が起こることや,屈折の日内変動,切開に誘発された乱視(不正乱視を含む)などが広く知られている.RK後の角膜形状は通常と比較して中央部が扁平で周辺部が急峻となるため,通常の球面CHCLではフィッティングがむずかしいことが多い(図1a)3).角膜の不正により,中心からCHCLがずれてしまうことがあるため,大径のレンズを使用する.また,周辺が急峻になっているため涙液交換がうまく行えず,酸素供給やデブリの排出が不十分になってしまう可能性があり,通常と比較して光学部(opticalzone:OZ)の直径は小さいほうが望ましいとされている.筆者らがC2023年に行った調査4)では,RK術後の視機能低下を主訴とするC44人の患者のうち,HCLが効果的であったのはC16人(36%)であり,そのうちのC9人がカスタム球面レンズ,7人がリバースジオメトリーレンズを処方されていた.治療に至らなかった患者には,HCL装用に伴う不快感が強かった患者や,良好な視力改善が得られなかった患者などが含まれる.近年では,屈折矯正手術後の患者に対する強膜レンズの有用性がさまざまに報告されている.強膜レンズは角膜の凹凸が顕著であっても安定した視力を提供でき,レンズ後面の液層から角膜に一定の水分を供給できる.台湾からの報告5)によると,ミニ強膜レンズは眼鏡やソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)で矯正できない不正乱視に対してC64%の有効性を示した.RK施行領域の偏心や,2Cmm未満の小さな中央クリアゾーンが最適なフィッティングを妨げる要因となった.強膜レンズは,ほかのCHCLが適応とならない患者に対する外科的介入の代替手段と考えられる.C2.PRK,LASIKいずれもレーザーで角膜実質を切除し,角膜屈折力を変化させる術式である.PRKでは角膜上皮を除去した後にエキシマレーザーを照射し,上方の角膜実質を切除する.LASIKでは一定厚の角膜フラップを作製し,エキシマレーザーを照射したあとにフラップを戻す.その術式上から,PRKでは角膜上皮下混濁,LASIKではフラップ異常やびまん性層状角膜炎などが合併症として知られている.2000年以降,波面収差解析や角膜形状解析のデータを用いて切除を行うことで,術後の不正乱視が軽減されるようになった.RKと比較し予測精度が高いものの,RK同様に過矯正,低矯正のリスクや,予測不能な不正乱視に伴いハロー・グレア,片眼複視などが出現する可能性がある.これらの症状に対しレーザーの再照射が検討されるが,必ずしも成功するとは限らず,また角膜厚によっては再手術が禁忌となる場合がある.その際,に屈折矯正手段としておもに使用されるのがHCLである.角膜形状解析において,PRKやCLASIKでは周辺部は残されるため,通常はCRKほどの著明な変化をきたすことはないが,RK同様に中央部の平坦化と周辺部の角膜の急峻化が知られている.そのため,通常の球面レンズで対応できることもあるが,リバースジオメトリーレンズが有用であるとされている.Yeungらの報告1)ではCRK,PRKおよびCLASIK後の患者はいずれも複雑なレンズデザインのガス透過性(rigidgaspermeable:RGP)レンズを必要とし,多くの患者にリバースジオメトリーレンズが有用であることが示された.LASIK後に視機能低下を生じたC28例に対する検討6)では,対象となったすべての患者においてリバースジオメトリーレンズは有用であり,視力の向上(0.99C±0.33C→C1.11±0.24)や高次収差の約C65%の減少を認めた.重篤な合併症としてまれではあるが,術後に進行性の角膜菲薄化,突出を認める角膜拡張症(ectasia)とよばれる角膜形状異常をきたす(図2a)3).角膜拡張症をきたした眼に対する屈折矯正としてCHCLは有用であるが,円錐角膜同様に中央部の突出が大きく,周辺部との曲率差が正常眼と比較して大きいため,HCLのフィッティングがむずかしくなることも多い.Woodward7)らによる報告では,角膜拡張症をきたしたC45人の患者のC74眼(うちLASIK後が72眼,PRK後が2眼)のうち,76%の患者で屈折矯正としてCRGPレンズが使用されたが,そのうちのC20%の患者でフィッティング不良や,1314あたらしい眼科Vol.41,No.11,2024(44)ab図1RK後の症例16本のCRK切開痕を認め,角膜形状解析で中央部は扁平化を認める.Ca:前眼部写真.b:前眼部COCTによる角膜形状解析.Cc:フルオレセインパターン.(文献C3より引用)b図2LASIK術後にectasiaをきたした症例周辺部にフラップ痕を認める.角膜形状解析では中央部下方は菲薄化を示す.a:前眼部写真,b:前眼部COCTによる角膜形状解析.Cc:フルオレセインパターン.(文献C3より引用)エッジPCベベルエッジリフト図3カスタムタイプレンズデザインIC:中間カーブ.PC:周辺カーブ.標準的なレンズデザイン.オプティカルゾーンの外側に緩やかなカーブとしてベベル部分がデザインされている.(サンコンタクトレンズより提供)エッジPC図4ツインベルLVCレンズデザインIC1:第C1中間カーブ.IC2:第C2中間カーブ.PC:周辺カーブ.NBC:ノーマルCBC(レンズ設計時にベースとなるカーブ).BCと比較し,IC1を急峻にしている.中央部のフィッティングをCBCで,中間周辺部をCNBCで調整する.(サンコンタクトレンズより提供)CabノーマルBC(NBC)図5ベベルデザインa:IC1はCNBC差(BC-NBC)で自動的に決定する.Cb:IC2はフィッティングに合わせて変更可能.(サンコンタクトレンズ社より提供)状のCHCLである(図4).中心(OZ),第一中間カーブ(intermediateCcurve1:IC1),第二中間カーブ(interC-mediateCcurve2:IC2),周辺カーブ(peripheralcurve:PC)の各領域に対して異なる四つの曲率半径が設けられている.IC1の曲率半径をより小さくすることで,BCを平坦化させることが可能となっており,屈折矯正術後の角膜にフィットしやすくしている.周辺部の形状に合わせ,ベベルタイプの選択も可能である(図5).ベベル部分が広くなるため球面レンズと比較して光学部であるCOZが狭く,レンズ調整を行ってもセンタリングが不良な例などではむしろ視力不良になる場合もあることに注意が必要である.図1,2に実際の処方例を示す.症例1(図1):RK術後で中央部角膜が扁平化している.初回は球面HCLを装用し矯正視力はC1.0であったが,レンズのセンタリングが不良であり長時間の装用が困難であった.LVCレンズに変更後,矯正視力はC1.2と良好でレンズも角膜中央部で安定した.フルオレセインパターンではベベル幅は安定し,中央部が濃くややレンズがスティープな印象を受ける.41カ月の長期にわたって装用を継続している.症例2(図2):LASIK後にCectasiaをきたした症例.角膜中央部の突出,菲薄化を認める.LVCレンズを初回から使用し,矯正視力はC1.2と良好で装用期間はC39カ月に及ぶ.フルオレセインパターンではC3点接触が確認できる.C3.強膜レンズ詳細については別稿に譲るが,角膜径よりもサイズが大きく(直径C12.9Cmm以上),強膜でフィットするCHCLである9).レンズ後面に涙液貯留スペースがあり強膜部分で装着するため,角膜形状にかかわらず安定したフィッティングが得られる.利点として,視力向上が期待できること,さらにレンズ下の涙液層が角膜とレンズの直接接触を防ぐため上皮障害が少ないことなどがあげられる.一方で,サイズが大きいため取り扱い自体もむずかしく,瞼裂が小さい場合は装着が困難な場合もあるが,サイズの小さいものや,脱装着を補助する器具の開C1318あたらしい眼科Vol.41,No.11,2024発も進んでおり,使用しやすくなってきている.わが国においては強膜レンズがまだ承認されていないため,現時点では自由診療での使用となる.おわりに角膜屈折矯正術後の角膜は通常と比して扁平化し,その変化は症例ごとにかなりのバリエーションがある.元来は視力が良好であった患者がほとんどで,視機能に対する要求も高いため,CL処方の難度が高い.現在変形が大きい角膜に対する解決方法の一つとして強膜レンズが世界的に使われてきており,わが国でも導入する施設が徐々に増えてきている.処方の際にはさまざまなレンズ種類があることを念頭におき,BCの選択,エッジ加工を含め試行錯誤を繰り返すことが必要である.文献1)YeungKK,OlsonMD,WeissmanBA:Complexityofcon-tactlens.ttingafterrefractivesurgery.AmJOphthalmol133:607-612,C20022)SatoM,KamiyaK,HayashiKetal;onthedataanalysiscommitteeCofCtheCjapaneseCsocietyCofCcataract,Crefractivesurgery:ChangesCinCcataractCandCrefractiveCsurgeryCpracticeCpatternsCamongCJSCRSCmembersCoverCtheCpastC20years.JpnJOphthalmolC68:443-462,C20243)立花都子,前田直之,宇髙健一ほか:角膜形状異常眼に対するリバースジオメトリーコンタクトレンズ処方.日コレ誌58:68-72,C20164)IwamotoY,KohS,InoueRetal:Whathappens20to30yearsCafterCradialCkeratotomy?CcaseCseries.CEyeCContactCLens50:329-331,C20245)ChuHS,WangIJ,TsengGAetal:Mini-sclerallensesforcorrectionofrefractiveerrorsafterradialkeratotomy.EyeCContactLensC44(SupplC2):S164-S168,C20186)TanG,ChenX,XieRZetal:ReversegeometryrigidgaspermeableCcontactClensCwearCreducesChigh-orderCaberra-tionsCandCtheCassociatedCsymptomsCinCpost-LASIKCpatients.CurrEyeResC35:9-16,C20107)WoodwardCMA,CRandlemanCJB,CRussellCBCetal:VisualCrehabilitationCandCoutcomesCforCectasiaCafterCcornealCrefractiveCsurgery.CJCCataractCRefractCSurgC34:383-388,C20088)小玉裕司:角膜形状とハードコンタクトレンズフィッティング.日コレ誌53:74-81,C20119)吉野健一:円錐角膜や強度不正乱視に対する強膜レンズ.あたらしい眼科33:1737-1738,C2016(48)

瘢痕性角結膜症に対する輪部支持型ハードコンタクトレンズ

2024年11月30日 土曜日

瘢痕性角結膜症に対する輪部支持型ハードコンタクトレンズLimbal-RigidContactLensWearTherapyinCicatricialKeratoconjunctivitisCases吉川大和*I瘢痕性角結膜症に対するコンタクトレンズ処方の必要性瘢痕性角結膜症は,Stevens-Johnson症候群などをはじめとする眼表面の高度な炎症により,恒久的な角膜混濁および眼表面の癒着と瘢痕化,重度のドライアイを生じる疾患で,その結果著しい視力障害と眼不快感が生涯にわたって持続してしまう.これらに対して口腔粘膜上皮を用いた上皮シート移植(培養自家口腔粘膜上皮シート移植,COMET)をはじめとする再生医療により,瘢痕性角結膜症の視機能を長期的にも改善させることが可能になった.しかしその一方で,不正乱視や角膜混濁の残存などにより視力障害が十分に改善しない患者も多い.それらの視力障害に対しては,通常の眼鏡装用やソフトコンタクトレンズ(softCcontactlens:SCL)では矯正不能であることがほとんどである.重度のドライアイと眼表面の恒久的な角膜混濁および眼表面の癒着と瘢痕化による視力低下に対しては通常サイズのハードコンタクトレンズ(hardCcontactlens:HCL)ではすぐに脱落してしまい装用が困難なため,強膜レンズや輪部支持型CHCLのようなサイズの大きいCLが登場した.これらにより脱落することなく装用することができるようになった.とくに輪部支持型CHCLは瞬目するだけでCCLと角膜の間の涙液交換が可能であり,終日装用がしやすいというメリットがある1).高度な瘢痕化と角膜混濁により通常では視力が出にくい眼でも,輪部支持型CHCLの装用により読書が可能となる患者も多い(図1).同時に,レンズと眼表面の間に涙液をためる層が形成されるため,涙液の蒸発を抑制し,眼表面の乾燥を防ぐ効果もある.筆者らは,5年間の輪部支持型CHCL長期装用で結膜充血を改善させつつ視力を安定させることができた症例を報告した2).必ずしも外科的治療に踏み切らなくても,生活の質を高めることができる選択肢が増えてきている.ローリスクで大きなリターンを得られる可能性のある選択肢であり,積極的に処方を検討したい.CII輪部支持型HCLのスペック輪部支持型CHCLは直径C13.0.14.0Cmmと通常サイズのCHCLより大きく,角膜全体から強膜の一部を覆う形に設計されたCHCLである.同様の用途で使用されるものとして強膜レンズがあるが,強膜レンズよりはサイズが小さく,眼球が小さい患者や瞼球癒着がある患者でも装用しやすい.周辺部分がハット型に広がった多段式カーブになっており(図2),周辺部分に涙液が貯留しつつ瞬目時にレンズ下とレンズ外の涙液が入れ替わるようになっているため,慣れてくれば終日装用が可能である.ベースカーブ(basecurve:BC)や周辺部の形状にバリエーションがあり,添付文書より作成したトライアルレンズ規格の一覧を示す(表1).レンズサイズはC13.0mmとC14.0CmmのC2種類があり,レンズサイズC14.0Cmm*YamatoYoshikawa:よしかわ眼科医院〔別刷請求先〕吉川大和:〒619-0214京都府木津川市木津駅前C1-5よしかわ眼科医院C0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(37)C1307図1代表2症例の前眼部写真a,b:症例1.47歳,女性.角膜表面が高度に角化しており(Ca),通常では視力が出ないが,輪部支持型CHCL装用により(Cb),タブレットを使用した読書が可能となり,生活の質が大いに向上した.Cc,d:症例2.31歳,女性.角膜中央まで結膜が侵入しており(Cc),高度乱視で眼鏡では十分な視力が出なかった.輪部支持型HCL装用により(Cd)異物感乾燥感も減少し,良好な視力が得られているC.Cベースカーブ(7.60~8.10mm)0.1mmステップレンズサイズ(13.0または14.0mm)図2輪部支持型ハードコンタクトレンズのレンズデザイン周辺部分が広がった構造になっており,その部位の下に貯留する涙液がリザーバーとなり,瞬目時に眼表面の涙液とコンタクトレンズ下の涙液との交換が自動的に行われる.(文献C1を参考に作成)表1レンズ規格(添付文書より)規格ベースカーブ7.60.C8.10.mm(0C.1.mm刻み)レンズサイズC13.0CmmC14.0CmmオプティカルゾーンC8.5.mmC9.0.mmベベルタイプノーマル型タイト型図3装用困難な症例の前眼部写真角膜上に瞼球癒着がまたがっており,このままでは輪部支持型HCLの装用は困難である.このような症例ではCCOMETや羊膜移植で癒着解除を行って装用可能な眼表面に再建する必要がある.初回処方・再処方年月日Kyoto-CSテストレンズ一覧患者ID:レンズ装用眼(R・L)BCPSBT17.60±0.0013.085N27.70±0.0013.085N37.80±0.0013.085N47.90±0.0013.085N58.00±0.0013.085N68.10±0.0013.085N77.60±0.0014.085N87.70±0.0014.085N97.80±0.0014.085N107.90±0.0014.085N118.00±0.0014.085N128.10±0.0014.085N137.60±0.0014.090N147.70±0.0014.090N157.80±0.0014.090N167.90±0.0014.090N178.00±0.0014.090N188.10±0.0014.090N197.60±0.0014.090T207.70±0.0014.090T217.80±0.0014.090T227.90±0.0014.090T238.00±0.0014.090T248.10±0.0014.090T装用順BC浮きコメントスティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大スティープ・フラット小・適・大図4Kyoto-CS処方オーダーシート例13.0mm14.0mmレンズサイズ13.014.014.014.0オプティカルゾーン8.58.59.09.0ベベルタイプノーマルノーマルノーマルタイト図5レンズの形状とSagittalDepth(SAG)の関係レンズサイズが小さくなるとCSAGは浅くなり,オプティカルゾーンが広くなったり,周辺部分のベベル形状がタイトになるとCSAGは深くなる.一般に瘢痕が強くなればCSAGは浅くなる傾向がある.(文献C3を参考に作成)目で抜けない場合はスティープフィットと判断する.フルオレセイン染色のパターンがレンズ中央部の接触面で均一に染まっており(パラレル),瞬目時に周辺部への涙液交換が問題なく行われていればよい.下方にずれるなどのセンタリングの異常がある場合は,オプティカルゾーンを広くすることでCSAGが深くなり,センタリングが安定しやすい.レンズの型とSAGの関係を示す(図5).そのうえでCBCの微調整を行ってフィッティングを整えていく.最適と判断された場合にも,その前後のCBCを確認して比較することが推奨される.C4.ベベルタイプの選択必要に応じてタイトな周辺エッジデザイン(タイト型ベベルタイプ)に変更する.コンタクト中央部の接触面のフルオレセイン染色が均一に染まっているにもかかわらず,周辺部のベベル部分に気泡が含まれるケースでは,ベベルタイプをタイト型に変更する.一般に,瘢痕が少なく正常に近い形状の眼球ほど,ノーマル型のベベルタイプでは周辺部分が浮きやすくなるので,タイト型にするほうが安定する.逆にタイト型にして涙液交換がうまくいかなくなったり,エッジが眼球側に食い込むようであれば,ノーマル型のベベルタイプを選択する.C5.レンズパワーの決定フィッティングがある程度落ちつけば,しばらく装用したまま過ごしてもらい,痛みなどが生じないかを判断する.痛みなどがなく装用可能であれば,レンズ上から屈折値を測定し,加入度数を決定する.非装用下では屈折値を測定できない眼表面でも,CL装用後には屈折値を測れるケースがあるので可能なら測定し,加入度数の参考にする.低視力の場合は,遠方の視力よりも近方の視力が確保できるほうが生活に便利なことも多く,加入度数は患者のライフスタイルに合わせて決定する.装用開始時は,通常のCHCLと同様に短時間から開始し,状態をみながら徐々に装用時間を延長してもらう.V限界輪部支持型CHCLにおいても通常のCCLと同様に,異物に伴う外傷やレンズの機械的トラブルなども発生しうる.その際に,瘢痕性角結膜症の患者はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(mechicillin-resistantCStaphylococcusaureus:MRSA)などの保菌率が高かったり,小さな角膜上皮欠損が遷延してしまったりと,眼表面の細菌叢や創傷治癒が正常眼と異なるため,無理に装用を継続してしまうと予期せぬ角膜感染症や角膜潰瘍などの合併症につながる可能性がある.輪部支持型CHCLの処方時には結膜.培養を行い,MRSAなどの保菌の状態があるかなどを検査しておくことは重要である.処方後も十分な指導とこまめな診察が必要である.重症の瘢痕性角結膜症の患者は,涙液量がまったく得られないほどの高度なドライアイを有することも多い.そのような患者においては,輪部支持型CHCLにより涙液の蒸発が抑制されるとはいえ,完全に人工涙液の点眼が不要になることはむずかしい.涙液の補充のために,ある程度の頻回の人工涙液の点眼が必要となる(基本的には防腐剤無添加の人工涙液が推奨される).ただ,瞬目によりCCL下の涙液は簡単に新しいものに置き換わるため,涙液補充のために付けはずしする必要はなく,装用したまま点眼するとよい.乾燥感が減少して人工涙液の点眼回数が減少すると,脱落や異物感などが生じやすくなる.装用時にもこまめな人工涙液の点眼を指導する必要がある.瘢痕が高度な患者の場合は,装用前の視力は手動弁などが珍しくなく,CLの装用練習に苦慮するケースもしばしば遭遇する.CLの紛失なども視機能の良好な装用者と比較すると生じやすく,注意を要する.レンズの洗浄時や装脱時に排水溝にレンズマットを敷く,レンズ装脱時には体と机を密着させるなどの指導をすることで,万が一レンズが落下した際に紛失してしまうリスクを減らすことができるので,そのような指導が肝要である.おわりに執筆時点では輪部支持型CHCLはCStevens-Johnson症候群と中毒性表皮壊死症にのみ保険適用となっており,(41)あたらしい眼科Vol.C41,No.C11,2024C1311

円錐角膜に対する強膜レンズ

2024年11月30日 土曜日

円錐角膜に対する強膜レンズScleralLensesforEyeswithKeratoconus小島隆司*はじめにこれまで長らく円錐角膜診療に携わってきたが,円錐角膜診療にとって強膜レンズは必要不可欠であると筆者は考えている.わが国ではまだ未認可の治療であるが,すでに臨床治験が始まっており,近い将来に認可され広く普及する治療であることをお伝えしたい.本稿では,強膜レンズをすでに処方している医師の知識の整理のためだけでなく,これから処方を考えている医師や,処方をしていなくても知識をもっておきたい医師など幅広い読者を対象に,円錐角膜に対する強膜レンズ処方の現状および将来についてまとめた.CI海外の現状と日本最近では諸外国で認可されているにもかかわらず,わが国で認可されていない薬剤・医療機器が多いが,強膜レンズもその一つである.最近の調査によると,欧米諸国のガス透過性(rigidCgaspermeable:RGP)コンタクトレンズに占める強膜レンズの割合はどの国でもC10%以上を占め,オランダとデンマークではそれぞれC56%,58%と過半数を占めるに至っている1).それでは,欧米各国ではどのような症例に強膜レンズが処方されているのだろうか.ScleralCLensesCinCCur-rentCOphthalmicCPracticeEvaluation(SCOPE)studyの結果2)によると,84%が円錐角膜などの角膜不正乱視症例で,10%が眼表面疾患(兎眼,Stevens-Johnson症候群,重症ドライアイ),2%が合併症のない屈折異常の矯正目的となっている.これらの結果から,欧米諸国では強膜レンズは角膜不正乱視の矯正手段の一つとして大きなポジションを占めていることがわかる.CII円錐角膜の屈折矯正治療における強膜レンズの有効性強膜レンズは角膜に触れずに強膜で眼球に接するコンタクトレンズ(contactlens:CL)である.それゆえに装用感がよく,はずれたりずれる心配もない.また,角膜表面が常に涙液に接しているためにドライアイ症状も軽減される.ハードコンタクトレンズ(hardCcontactlens:HCL)不耐の原因となる,装用感,ずれ,ドライアイの三つの問題をすべてカバーしているため,円錐角膜眼のCHCL不耐症(後述)にはとてもよい適応となる.円錐角膜に対する屈折矯正治療の戦略を図1に示す.眼鏡矯正可能な軽度な状態であれば,眼鏡やソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)での矯正を考えるが,円錐角膜が進行すると不正乱視により眼鏡矯正視力が不良となり,HCLが選択肢となる.HCLは角膜不正乱視の矯正において非常に有効であるが,円錐角膜がさらに進行すると,角膜頂点への圧迫によって角膜上皮障害が強くなり,場合によってはレンズがはずれやすくなり長時間の装用が困難になることがある.このような状態をCHCL不耐症とよび,特殊コンタクトレンズが選択肢となる.具体的には特殊CSCL,強膜レンズ,ハイ*TakashiKojima:名古屋アイクリニック〔別刷請求先〕小島隆司:〒456-0003愛知県名古屋市熱田区波寄町C24-14COLLECTMARK金山C2F名古屋アイクリニックC0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(31)C1301矯正視力HCL不耐図1円錐角膜の屈折矯正治療の戦略図2強膜レンズのパラメータと装用時のクリアランスa:強膜レンズのパラメータを示す.b:強膜レンズを装用したときのクリアランス,涙液リザーバーの状態を示す.3.26mm13mm図3前眼部OCTを使用したトライアルレンズのlenssag決定方法3.26にC0.5を加えたC3.76に近いClenssag3.75Cmmのトライアルレンズを選択.予測クリアランスはC3.75C.3.26=0.49.ランディングゾーンの角度を変更ab図4ランディングゾーンの調整a:血管の圧迫所見を認め,ランディングゾーンの角度を変更した.b:フルオレセインのレンズ下への流入が確認できる.この程度の流入は適正である-

強度乱視に対するトーリックソフトコンタクトレンズ

2024年11月30日 土曜日

強度乱視に対するトーリックソフトコンタクトレンズToricSoftContactLensesforCasesofHighAstigmatism平岡孝浩*I乱視の程度分類近視の程度分類に関しては.3Dと.6Dが国際的な基準になっており,.0.5..3.0Dを弱度,.3.0..6.0Dを中等度,.6.0D.を強度近視と分類しているが,乱視に関しては明確な基準がない..1.0Dを弱度,1.0.3.0Dを中等度,3.0D以上を強度乱視と分類している場合もあるが,国際的にコンセンサスが得られた基準とはいえない.また,コンタクトレンズ(contactlens:CL)シェアの大多数を占める1日使い捨てソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)や2週間頻回交換SCLに関しては,乱視矯正用のトーリックレンズが多くのメーカーから製造販売されているが,円柱度数が2.75Dまでの規格(大多数は2.25Dまでの規格)に限定されている.したがって,これらのトーリックレンズで矯正できない乱視を漠然と強度乱視と捉えるようになっており,慣習的に3D以上が一つの目安になっているといえる.II弱度~中等度の乱視矯正弱度.中等度の乱視であれば,上述のトーリックデザインSCLで矯正可能であり,また球面ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)でも高い矯正効果が得られる.ただし,水晶体乱視がある場合はHCLで角膜乱視をキャンセルすると水晶体乱視が顕在化してしまうため,トーリックSCLが用いられる.III強度乱視の矯正使い捨てや頻回交換型のトーリックSCLの製造範囲を超える乱視を有する場合は,製造範囲内最大の円柱度数(2.25.2.75D)を処方して,残余乱視が軽度であればそのまま様子をみてもよい.しかし,十分な視力が出ない,もしくは視力は出るが乱視によるボケ像に満足できないケースでは別の対策が必要となる.球面HCLがその候補となるが,レンズ安定性が悪かったり強主経線方向でレンズ周辺部が強く浮き上がったりする場合は装用感が不良となるので,後面トーリックHCLやピギーバック法(間に使い捨てSCLを挟む)を試してみる.また,球面HCLでも前面にMZ加工(周辺部にリング状の溝を付ける加工)を施すと上眼瞼がレンズをとらえやすくなり,開瞼時の上方移動が促されレンズ安定性が向上すると報告されている1).IVHCL不耐症に対する矯正HCL特有の装用感になじめずHCL処方をあきらめざるを得ない患者が一定の割合で存在する(HCL不耐症).とくに円錐角膜や外傷後,角膜移植後などの病的角膜では形状が複雑であるため,突出部にHCLが強く当たり痛みや異物感を生じやすい.しかし,KeraSoftIC(UltraVision)など特殊デザインを有するSCLが近年開発され,これらの不整角膜に対しても有用であることが報告された2,3).*TakahiroHiraoka:筑波大学医学医療系眼科〔別刷請求先〕平岡孝浩:〒305-8575つくば市天王台1-1-1筑波大学医学医療系眼科0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(23)1293図1ユーソフトのデザイン直径が14.5mm,中心厚が0.4mmと分厚く,乱視軸安定のためのバラストデザインを有する.(トーメーコンタクトレンズ,シードより許可を得て引用)表1ユーソフト規格範囲ベースカーブ(mm)球面度数(D)7.80.8.80(0.20ステップ)+30.00..30.00(0.25ステップ)円柱度数(D).0.25..6.00(0.25ステップ)円柱軸(°)5.180(5ステップ)(トーメーコンタクトレンズ,シードより許可を得て引用)角膜形状が角膜形状の正乱視の場合不正乱視が強い場合平均角膜曲率半径+0.8mm図2ベースカーブの選択角膜形状が正乱視の場合は青矢印,角膜形状の不正乱視が強い場合は赤矢印に従ってファーストベースカーブを選択する.(トーメーコンタクトレンズ,シードより許可を得て引用)/==/==図3乱視軸ガイドマークトライアルレンズにはC6時方向にガイドマークが入っており(),装用時に下方に位置することを確認する.(トーメーコンタクトレンズ,シードより許可を得て引用)図4強度乱視眼のトポグラフィ所見両眼ともに強い直乱視を認めるが,Fourier解析で角膜前後面に明らかな不正乱視は認めなかった.20Dでありユーソフトより狭いが,円柱度数はC.6DまでC5度刻みで設定できる.不正乱視を有さない強度乱視眼ではこのレンズも使用可能である.CVIIIユーソフトは円錐角膜眼にも有効筆者らはユーソフトを円錐角膜眼へも多数処方しており,その成績を論文にまとめ報告している4).以下にその概要を示す.対象はCHCL不耐症を有する円錐角膜C20例C36眼で,平均年齢はC33.1C±11.7歳(12.52歳),平均球面度数はC.4.99±3.97D(C.14.75.0.75D),平均円柱度数はC.3.39±2.13D(C.9.75.0.50D),平均観察期間はC21.6C±9.2カ月(6.1.33.4カ月)であった.トポグラフィでのCAverageK値はC50.3C±6.6D(42.0.70.0D)であり,KmaxはC55.2C±8.4D(42.5.80.0D)であった.また,最小角膜厚はC429.8C±55.1Cμm(271.536Cμm)であった.視力に関しては,レンズ装用前の裸眼視力はC1.08C±0.43ClogMAR(0.22.2.00logMAR)であったが,レンズ装用後はC0.01C±0.15ClogMAR(C.0.18.0.40ClogMAR)まで有意に改善した(p<0.0001).小数視力C1.0以上を達成できたのはC24/36眼(67%)であった.レンズ度数の交換回数はC1.3C±1.8回(0.6回)であった.変更の必要がなかった症例が多いが,最高C6回の変更を要した症例も存在した.とくにCHCLから切り替えた場合に,徐々に角膜形状がスティープ化するため,頻回の調整が必要となることがあった.脱落患者はC3例であり,レンズの装脱着が困難な症例がC1例,角膜混濁が強く視力改善が不十分であった症例がC2例であった.残りの患者は使用を続けており,継続率はC88%であった.角膜内皮細胞密度に関しては,使用前C2,373C±482Ccells/mm2,最新の検査時がC2,402C±464Ccells/mm2であり,使用前後で有意差はなく,明らかに減少したという症例も経験していない.合併症はC17眼で認められ,内訳は角膜周辺部血管侵入がC8眼,ドライアイがC8眼,点状表層角膜症がC5眼,アレルギー性結膜炎,結膜充血,pigmentslideがそれぞれC2眼,結膜下出血がC1眼(重複あり)であった.感染症など重篤な障害の発生は認められず,いずれも装用時間短縮や一時的な装用中止,投薬により改善を認めた.また,合併症の発生を理由に脱落した患者はいなかった.以上から,ユーソフトはCHCL不耐性を示す円錐角膜眼に対して有効な矯正手段であり,許容できる安全性を有することが示された.CIX角膜移植後やペルーシド角膜変性にも有効筆者らはペルーシド角膜辺縁変性や角膜移植後にも処方を行っている.以下に代表症例を提示する.症例2:39歳,男性.会社員.10年前にペルーシド角膜辺縁変性を指摘され,眼鏡とCHCLを使用していたが,HCLは痛みのため使用できなくなった.眼検査所見:スリット所見では角膜下方に帯状の菲薄部を認めた.視力:右眼=0.03(0.9C×.2.00D(cyl×.8.00DAx55°)左眼=0.06(1.2C×.3.75D(cyl×.4.00DAx110°)トポグラフィのオリジナルマップで,角膜下方にカニ爪様の形状変化が認められ,Fourier解析では不正乱視成分(非対称成分,高次不正乱視成分)の増加も確認できた(図5).ユーソフトの処方により,視力:右眼=1.2×ユーソフト(n.c.)左眼=1.2p×ユーソフト(n.c.)と改善した.症例3:23歳,男性.タクシー運転手.16歳時に円錐角膜を指摘されCHCLを装用していたが,右眼急性水腫を発症し,それ以降は角膜混濁のため視力矯正不良となる.17歳時に右角膜全層移植術を受け,その後は裸眼で過ごすことも多かったが,保育士からタクシー運転手への転職を希望し,視力改善目的で筆者の施設を受診.眼検査所見:スリット所見では右眼の移植グラフトは透明性を維持しており,左眼は角膜の突出と非薄化が認められた(図6).視力:右眼=0.04(0.7C×.6.00D(cyl×.4.00DAx50°)左眼=0.1(0.9×+0.50D(cyl×.6.00DCAx65°)1296あたらしい眼科Vol.41,No.11,2024(26)図5症例2のペルーシド角膜辺縁変性のトポグラフィ所見右眼のトポグラフィを示す.オリジナルマップで,角膜下方にカニ爪様の形状変化が認められ,Fourier解析では不正乱視成分(非対称成分,高次不正乱視成分)の増加も確認できた.図6症例3の角膜移植後の前眼部所見右眼の移植グラフトは透明性を維持しており,左眼は角膜の突出と非薄化が認められた.==ab図7症例3の角膜移植後のトポグラフィ写真a:右眼の広範囲にわたる前方突出と不正乱視の著しい増加が確認された.b:左眼には下方に突出した円錐角膜の典型像を認めた.

定期交換型ハードコンタクトレンズ

2024年11月30日 土曜日

定期交換型ハードコンタクトレンズPlannedPeriodicReplacementofHardContactLenses鈴木崇*はじめに装用感の快適性やシリコーンハイドロゲルレンズの登場による酸素透過性向上から,ソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)装用者が増加している.一方でハードコンタクトレンズ(hardCcontactlens:HCL)・酸素透過性(regidCgas-permeable:RGP)HCL(本稿ではCRGPレンズもCHCLと表記)もその有用性から装用者数は維持されている状況である1).本稿では,HCLの課題を克服するために新たに登場した定期交換型CHCLを中心に解説する.CIHCLの適応乱視用CSCLの度数や軸のバリエーションの増加,そして素材の変更による酸素透過性の向上から,初めてCLを装用する際にCSCLを選択する患者が増えている.しかし,乱視用CSCLでカバーされていない度数の乱視や円錐角膜など,不正乱視成分を有する患者にはCHCLのほうがよい適応となっている.また,患者の家族がHCLを使用しており,その利便性を知っているために初めてのCCLとしてCHCLを選択する場合もある.CIIHCLの利点と問題点HCLには表1のような利点と問題点がある.通常,HCLは素材が固いことから角膜表面の凹凸の影響を受けにくく,近視,遠視矯正のみならず,正乱視,不正乱視も矯正することが可能である2.6).そのため,矯正さ表1HCLの利点と問題点利点問題点視力矯正力が高い初期装用感が不良強度乱視や不正乱視の症例に紛失・破損した時の対応が面倒も適応長期に使用するとCHCLに傷やケアや取扱が簡便汚れが付くれる映像も鮮明であり,見え方の満足度は非常に高い.とくに,CLの安定位置が中央でフィッティングが良好な場合は効果も高い.さらに,レンズケアについてもSCLよりも簡便なことが多く,装用者には利点も多い.一方でCHCLは素材が硬質であることから,SCLと比較すると装用開始後初期の異物感が多い7,8).さらに,HCLを長期使用することでレンズ表面に傷や汚れが生じると,レンズの透明性が失われたり,CLの動きが悪くなって良好なフィッティングが得られなかったりする場合もある9,10).図1はC20カ月同じCHCLを使用していた症例で,使用していたCHCLは傷や汚れでレンズ表面が白濁しており,フィッティングも不良であった.このように,HCLの長期使用によってレンズ表面に汚れや傷が生じると,HCL装用中の視力低下やフィッティング不良によるレンズ固着,角膜上皮障害,アレルギー性結膜炎などの眼障害が生じ,自覚症状も悪化する場合がある.CIII定期交換型HCLの開発前述のようなCHCLの長期使用による眼部への影響を*TakashiSuzuki:いしづち眼科〔別刷請求先〕鈴木崇:〒792-0811愛媛県新居浜市庄内町C1-8-30いしづち眼科C0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(17)C1287図120カ月使用したHCLと装用状態a:使用中のCHCLの状態傷や汚れが付着し,白濁している.Cb:安定位置が下方にあり,固着しかけている.図2HCLのレースカット製法大きな材料を切削してCHCLを作製する.1個あたりのコストが高く大量生産に向かないため,HCLのトライアルレンズなど頻回の交換はむずかしい.図3HCLのモールディング製法凹型にレンズの材料(モノマー)を流し込み,凸型を合わせてレンズ形状にする製法.1個あたりの材料費を抑制できるため,HCLの大量生産が可能.表2市販されているHCLの重量品名重量(g)C.3.00D重量(g)C.10.00DマルチビューCEX(a)C0.0140C0.0140アイミーサプリームC0.0133C0.0171ブレスオーハードCIIフィットC0.0148C0.0164シードCAS-LUNAC0.0130C0.0191メニコンティニューC0.0123C0.0158フォーシーズンC0.0112C0.0148C図4従来型HCLと定期交換型HCLのフィッティングの比較同じ装用者で同じCBCである.a:HCL装用時のフルオレセイン染色像.b:従来型CHCL装用時.ベベル幅が狭い.Cc:定期交換型CHCL.ベベル幅が広く,センタリングや動きがよい.表3従来型HCL装用時と定期交換型HCL12カ月装用時の自覚症状スコアの比較従来型CHCL定期交換型CHCLp値Cmean±SDCmean±SD異物感C0.65±0.58C0.46±0.65C0.004乾燥感C0.90±0.58C0.60±0.59<C0.001充血C0.51±0.63C0.24±0.49<C0.001くもりC0.73±0.69C0.50±0.66C0.007痛みC0.41±0.56C0.26±0.49C0.002かゆみC0.27±0.48C0.26±0.52C0.8見え方C0.63±0.60C0.40±0.58<C0.001*対応のあるCt-検定(文献C12より改変引用)表4従来型HCL装用時と定期交換型HCL装用時の他覚所見の比較従来型CHCL定期交換型CHCL6カ月後12カ月後有無(割合)有無(割合)p値*有無(割合)p値*所見あり(3C4.9%)あり(2C5.9%)C0.10あり(1C4.3%)<C0.001Cmean±SDCmean±SDp値**Cmean±SDp値**所見スコア角膜上皮ステイニングC0.34±0.63C0.24±0.48C0.13C0.13±0.43<C0.001球結膜充血C0.13±0.40C0.04±0.25C0.06C0.03±0.17C0.009上眼瞼乳頭増殖C0.06±0.25C0.05±0.21C0.45C0.05±0.26C0.55*McNemar検定**対応のあるCt-検定(文献C12より改変引用)表5従来型HCL装用時と定期交換型HCL装用時のフィッティング状態の比較従来型CHCL定期交換型CHCL6カ月後12カ月後レンズフィッティング状態割合割合p値*割合p値*固着していない99.5%100%C─100%C─ノーマルフィッティング(スティープ,ルーズ以外)75.8%81.6%C0.0985.7%C0.005安定位置が中央である60.2%77%<C0.00175.6%<C0.001*McNemar検定(文献C12より改変引用)図5従来型HCLと定期交換型HCLの混濁の比較a:長期間使用していた従来型CHCL9枚.白濁しているレンズが多い.Cb:3カ月使用後の定期交換型HCL9枚.白濁しているレンズが少ない.

焦点深度拡張型コンタクトレンズ

2024年11月30日 土曜日

焦点深度拡張型コンタクトレンズAnnularRingDesignEDOFLenses東原尚代*はじめに近年,スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスが急速に普及している.年代別のデジタルデバイス利用率は年齢が上がるにつれ徐々に低下するものの,60歳代でも半数以上が「よく利用している」ことが示されている(図1)1).老視症状を自覚するのはピントが合う近点距離が33cmになり,調節力では3Dになる45歳頃と考えられるが,スマートフォンでは視距離が約20cmと短い2,3)ため5Dの調節力が必要となり,調節力が十分ある若い世代であっても視覚への影響が懸念される.近年,デジタルデバイス使用に伴う眼精疲労はdigitaleyestrain4)とよばれる.ここではdigitaleyestrainへの対策として,低加入度コンタクトレンズ(contactlens:CL)および焦点深度拡張型(extendeddepthoffocus:EDOF)CLについて解説する.Iデジタルデバイスが眼に及ぼす影響パソコンではディスプレイとの視距離が50cmと長く,視角が大きい.また,ディスプレイとキーボード,紙媒体の3点間を視線が移動するため,調節反応と調節解除を繰り返し行う.一方,スマートフォンでは視距離が約20cmと短く,視角も小さいために視線移動が少なくすむ反面,同じ視距離で画面を凝視して読み進めてしまうため,若い世代でも調節反応への負担が大きくなる5).デジタルデバイス使用時は瞬目回数が減少し,不完全瞬目が増加してドライアイも誘発されるため6.8),さらにdigitaleyestrainを増悪させてしまう.一般に,近業時には眼位が正位でも内眼筋あるいは外眼筋の作業量は増加するが,視距離が短いスマートフォンではより強い筋肉疲労を生じさせる.とくに外斜位の患者では輻輳を余分に強いられるために筋性の眼精疲労を生じやすい.実際,読書専用端末AmazonKindleによる読書で左右眼の固視点ずれを検討した報告では,健常者は視距離50cmおよび30cmに比べて視距離20cmで有意に固視ずれが大きかった.また,間欠性外斜視の患者では視距離30cm以下の条件で明らかに単眼視が多くなって読み取り速度が落ちることも報告されている9).IIDigitaleyestrainへの対策1.デジタルデバイス使用時の環境設定厚生労働省のガイドラインでは,仕事中にデジタルデバイスを1時間見たあとには15分程度の休憩をとるよう提唱している.同様に,米国眼科学会(AmericanAcademyofOphthalmology:AAO)でも人間工学に基づいたデジタルデバイス使用時の環境設定をつぎのように示している10).①パソコン画面との視距離を25インチは離し,見えにくければ文字を拡大する,②スクリーンの輝度を抑える,③20分ごとに休憩し20フィート(6m)離れたものを20秒間見るように努める(20-20-20ルール),④眼の乾燥を防ぐ,⑤部屋の照度を調節してスクリーンとの明るさのバランスをとる,といった具体的な指針である.*HisayoHigashihara:ひがしはら内科眼科クリニック〔別刷請求先〕東原尚代:〒621-0861京都府亀岡市北町57-13ひがしはら内科眼科クニック0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(9)1279(%)0102030405060708090100図1スマートフォンやタブレットの年代別利用状況デジタルデバイスの利用率は若い世代だけでなく,中高年でも高いことがわかる.(文献1より引用)表1低加入度遠近両用SCLの製品特徴2週間交換1日使い捨て商品名2WEEKメニコンCDUOバイオフィニティアクティブプライムワンデースマートフォーカスシードC1dayPureうるおいプラスCFLEX製造元メニコンクーパービジョンアイレシードFDA分類グループCIIグループCIグループCIVグループCIV物性Dk値C34C128C28C30含水率72%48%58%58%制作範囲CBCC8.6CmmC8.6CmmC8.8CmmC8.8Cmm度数C.0.25D.C.6.00D(C0.25Dステップ)C.6.50D.C.10.0D(C0.50Dステップ)5.00D.C.6.00D(C0.25Dステップ)C.6.50D.C.10.0D(C0.50Dステップ)1.00D.C.7.00D(C0.25Dステップ)5.00D.C.10.00D(C0.25Dステップ)C.10.50D.C.12.0D(C0.50Dステップ)直径C14.5CmmC14.0CmmC14.2CmmC14.2Cmm加入度数C0.50DC0.25DC0.50DC0.50Dその他ガイドマーク入りシリコーンハイドロゲル素材レギュラーパック(3C0枚),ミニパック(5枚),UVカット機能UVカット機能,3C2枚入り光学イメージ図パッケージ外観低加入度CSCL各製品のスペック,特性をまとめた.(文献C11より引用)2018年10,00010,0008,0008,0006,0006,0004,0004,000Proportionoflens.ts70%60%2,0002,00050%0040%30%20%29歳以下30~39歳40~49歳50~59歳60~69歳70歳以上29歳以下30~39歳40~49歳50~59歳60~69歳70歳以上図32018年および2021年の眼鏡とコンタクトレンズへの年間支出金額の比較がコンタクトレンズ,が眼鏡である.コンタクトレンズの支出金額のピークはC2018年でC40歳代,2021年でC50歳代と変化しているが,60歳以上になると急激にコンタクトレYearsンズ支出金額は減少する().図2日本における各種SCLの処方率の動向(総務省家計調査:世帯主の年齢階級別,二人以上の世帯のデ単焦点(球面)SCLの処方率が圧倒的に高いものの,乱視用やータをもとに作成)老視用(累進多焦点CSCL)の処方率が近年では徐々に増加傾向にあることがわかる.(文献C12より引用)表2シード1dayPureEDOFの製品スペック素材両性イオン素材(SIB)ベースカーブC8.4Cmm度数+5.00.C.12.00D(C0.25Dステップ)拡張焦点深度(EDOF)Low(低焦点深度):ADD+0.75D相当Middle(中焦点深度):ADD+1.50D相当High(高焦点深度):ADD+2.25D相当直径C14.2Cmm中心厚C0.07Cmm(.3.00Dの場合)レンズマークLow:“EL”Middle:“EM”High:“EH”※C1カ所マーク度数はC0.25ステップで+5.00DからC.12.0Dまで幅広い度数が製作されており,焦点深度はC3種類ある.=210-1420244202442024-2光学部径(mm)光学部径(mm)光学部径(mm)図4シード1dayPureEDOFの光学デザイン3種類の焦点深度がある.度数分布イメージ必要があれば必要があれば±0.25D±0.25D図5EDOFコンタクトレンズ検査の流れ初回検査でCSCL度数を決定すればC1週間程度のお試し期間を設ける.眼科検査室は明るく見やすいため,実生活で見え方に問題がないか確認する.お試し後の再診時に見えにくさを訴えた場合は,検査チャートを参考にして度数調整を行う.===ab図6初診時の涙液層破壊時間短縮型ドライアイ(a)と治療1カ月後(b)a:左は開瞼直後で,開瞼を維持すると中央,右へと涙液が破綻しているのがわかる.b:ジクアホソルナトリウム点眼を処方したC1カ月後.開瞼以降も涙液の安定性が確認できる.SCL成功の秘訣はCSCLによる適正矯正だけでなはなく,事前のドライアイ評価とドライアイ点眼治療,さらにはCSCL処方後もドライアイ治療の継続といえる.==========年代20代30代40代50代60代眼の状況Digitaleyestrain初期老視成熟老視CL選択低加入度CL累進多焦点CL焦点深度拡張型CL図7年代別のSCL選択の提案==-

遠近両用トーリックソフトコンタクトレンズ

2024年11月30日 土曜日

遠近両用トーリックソフトコンタクトレンズBifocalToricSoftContactLenses月山純子*はじめに日本は高齢化が急速に進んでおり,眼科臨床の現場では老視対応が必要な人口が増加している印象がある.それもそのはずで,1971.1974年にかけて年間約C200万人出生していた団塊ジュニアとよばれる世代が一斉に老視年齢に達しているのである.この世代は,学生時代からコンタクトレンズ(contactlens:CL)に慣れ親しんでおり,1日使い捨てや頻回交換ソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)にもなじんでいる.また,ライフスタイルも多様で,これまでどおりCSCLを使い続けたいと願うケースも非常に多い.そのまま遠近両用(多焦点)SCLに移行できればよいのであるが,乱視がC1.0Dを超えると,遠近両用CSCLでは見え方の満足度が低くなり処方がむずかしくなる1).しかし,乱視を有する割合は高く,英国での調査2)によると少なくとも片眼C0.75Dを超える乱視の割合は47%であり,さらに年齢層別に分析すると,8.20歳ではC10.2%,21.40歳ではC19.5%,そしてC40歳を超えるとその割合はC70.3%まで跳ね上がり,明らかに年齢とともに増加傾向にある.近年,軽度乱視矯正の重要性に関する報告が多数ある.Kobayashi,CKamiyaら3)は,乱視が大きくなるほど読書スピードが遅くなると報告している.また,山本,魚里ら4)は乱視C1.0D以上では瞳孔径が大きくなるほど有意に視力が低下し,乱視が強くなるほど瞳孔径の影響を受けると報告している.この理由として,瞳孔径が大きいと乱視眼では最小錯乱円サイズの拡大により網膜像の質の劣化が生じ,視機能に影響を与えるのではないかとしている.Berntsenら5)は,0.75.1.75Dの軽度乱視を有する健常ボランティアに単焦点CSCLとトーリックSCLを装用してもらった場合の比較試験で,トーリックCSCL群は,高コントラストおよび低コントラストの視力が有意に優れており,眼精疲労も少ないと報告している.視機能や眼精疲労,快適性の観点から乱視矯正は大切であるが,老視対応も同時に必要な場合は選択肢が少なくなる.遠近両用トーリックCSCLを用いる,モノビジョンテクニックで優位眼と非優位眼で球面度数に差をつけて明視域を広げる,優位眼にトーリックCSCL,非優位眼に遠近両用CSCLを用いるといった方法があげられる.しかし,わが国で販売されている遠近両用トーリックSCLはC2WEEKプレミオ遠近両用トーリック(メニコン)のみとなっている.本稿では,おもにこのレンズについて解説する.CI2WEEKプレミオ遠近両用トーリックの概要表1と図1にC2WEEKプレミオ遠近両用トーリックの概要6,7)を示す.プレミオ遠近両用トーリックは,光学部の前面が遠近両用に,後面が乱視矯正(バックトーリック)となっている.遠近両用面は中心部が近用,その周辺に中間部,さらにその周辺に遠用領域が配置されている.度数変化はなだらかに推移する累進屈折型である.*JunkoTsukiyama:医療法人心月会つきやま眼科クリニック〔別刷請求先〕月山純子:〒648-0065和歌山県橋本市古佐田C1-5-5医療法人心月会つきやま眼科クリニックC0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(3)C1273表12WEEKメニコンプレミオ遠近両用トーリックの概要B.C.C8.6Cmm球面度数0.00..6.00D(0.25Dステップ)C.6.00..10.00D(0.50Dステップ)加入度数+1.0D円柱度数C.0.75D..1.25D円柱軸度180°,90°CDIAC14.2Cmmデザインダブルスラブオフ装用スケジュール2週間頻回交換素材CN,N-ジメチルアクリアミド(Dマア),ケイ素含有メタクリレート系化合物,ピロリドン系化合物,ケイ素含有アクリレート系化合物(文献C6より許可を得て転載)Cc図12WEEKメニコンプレミオ遠近両用トーリックa:ガイドマーク.b:厚みマップ.c:レンズの外箱.(メニコン提供)図2レンズ早見表縦軸に球面度数が,横軸に乱視度数が示されており,直交する値を用いる.(メニコン社提供)====矯正視力測定,優位眼の確認乱視用度数早見表を用いてトライアルレンズを決定トーリック軸が安定するまで時間がかかることがある.10分程度待ってから,CL上のオーバーレフ,診察図3細隙灯顕微鏡でのガイドマークの見え方スリット光にして観察するとわかりやすい.上下にガイドマークがある.見えにくい見えにくい決定=図4レンズ処方のフローチャート(文献C6より転載)===細隙灯顕微鏡検査フィッティング確認①レンズのゆれ:ガイドマークのゆれが10°以内であることを確認②レンズの傾き:ガイドマークの傾きが15°を超える場合は不適応決定

序説:多様化するコンタクトレンズの最前線

2024年11月30日 土曜日

多様化するコンタクトレンズの最前線OntheFrontlineofContactLensDiversification高静花*前田直之**コンタクトレンズ(contactlens:CL)は,臨床において欠かすことができない屈折矯正手段であり,その優れた安全性,有効性,および利便性によって,わが国での装用人口は1,500万人以上に達しているといわれている.このような多くのCL装用者の要望に応えるべく,CLは日々進歩し,多様化してきた.そのため,日常CLを処方する者にとっても,その情報をアップデートすることは容易ではない.そこで今回は「多様化するコンタクトレンズの最前線」と題した特集を企画した.最初に,一般的な屈折異常を対象としたCLにおける光学デザインや製造技術に関するトピックスをとりあげた.遠近両用トーリックソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)に関しては,月山純子先生にわが国における現況を解説いただいた.加齢に伴い乱視を有するCL装用者が増加するので,遠近両用CLで乱視矯正が可能なものが登場したことは,選択肢が増えて好ましい状況である.今後本レンズが普及し,さらに球面度数,加入度数,円柱度数,円柱軸で幅広いもの,あるいは1日使い捨てのものがわが国にも導入されることを望みたい.東原尚代先生には,低加入度CLおよび焦点深度拡張型CLに関してまとめていただいた.デジタルデバイス使用に伴う眼精疲労の対策として,調節力が十分にある若年者であっても,低加入度数のSCLへ積極的な切り替えが今後のトレンドとなりそうである.加えて,CL処方時に患者のライフスタイルを確認して環境整備を指導することがますます重要である.そして鈴木崇先生には,定期交換ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)をご紹介いただいた.HCLの長期使用によるレンズ表面の汚れや傷が装用時の自覚症状の悪化をもたらすため,3カ月ごとの定期交換により装用時の自覚症状が改善すれば,HCL処方のハードルを低くすることなど,HCLのパラダイムシフトが期待できそうである.つぎに,特殊なCLに関するトピックスをとりあげた.まず,平岡孝浩先生に3Dを超える強度乱視に対応可能なトーリックSCLについてお示しいただいた.酸素不足に対する注意が必要であるものの,強度の正乱視のみならず,円錐角膜など不正乱視がある眼にも適応があるのは,HCL不耐症への選択肢として魅力的である.近年に,海外で注目が集まっている円錐角膜に対する強膜レンズについては,小島隆司先生に詳述し*ShizukaKoh:大阪大学大学院医学系研究科視覚先端医学**NaoyukiMaeda:湖崎眼科0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(1)1271

長期経過観察を行った抗リン脂質抗体陽性SLE網膜症の2例

2024年10月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科41(10):1256.1265,2024c長期経過観察を行った抗リン脂質抗体陽性SLE網膜症の2例福永直子*1林孝彰*1,2溝渕圭*2伊藤晴康*3野田健太郎*3中野匡*2*1東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科*2東京慈恵会医科大学眼科学講座*3東京慈恵会医科大学内科学講座リウマチ・膠原病内科CLong-TermFollow-UpinTwoCasesofSystemicLupusErythematosusRetinopathyNaokoFukunaga1),TakaakiHayashi1,2),KeiMizobuchi2),HaruyasuIto3),KentaroNoda3)andTadashiNakano2)1)DepartmentofOphthalmology,TheJikeiUniversityKatsushikaMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmology,TheJikeiUniversitySchoolofMedicine,3)DivisionofRheumatology,DepartmentofInternalMedicine,TheJikeiUniversitySchoolofMedicineC目的:全身性エリテマトーデス(SLE)網膜症の視機能予後において,対照的な転帰をたどったC2症例の長期経過を報告する.症例:症例C1はC42歳,女性.左眼霧視を自覚し受診した.34歳時に抗リン脂質抗体(aPL)陽性と特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を指摘され,ITPに対してプレドニゾロン内服加療中であった.矯正視力は右眼C1.2,左眼C0.07で,両眼底に多数の綿花様白斑を認め,左眼は網膜出血を伴う虚血性変化を認めた.SLEと診断されていたことからCSLE網膜症と診断した.内科的治療の強化に加え抗凝固薬が投与されたが,両眼ともに網膜血管閉塞による広範囲な虚血性変化を呈し,汎網膜光凝固術が施行された.その後,網膜菲薄化による重度視力障害を残し鎮静化した.約C13年後の矯正視力は右眼C0.02,左眼手動弁で,両眼視神経は蒼白化していた.症例C2はC21歳,女性.左眼視力低下を自覚し受診した.aPL陽性のCSLEと診断されていた.矯正視力は右眼C1.0,左眼C0.7で,両眼ともに多数の綿花様白斑を認め,SLE網膜症と診断した.網膜血管閉塞所見ははっきりしなかったが,抗凝固薬投与に加え内科的治療が強化された.その後,血管閉塞による無灌流領域が出現し,両眼に汎網膜光凝固術が施行され,SLE網膜症は鎮静化した.約C5年経過し,矯正視力は両眼とも(1.2)を維持していた.結論:活動性のあるCaPL陽性のCSLE網膜症に対しては,内科医と連携してCSLEに対する治療を強化するとともに,早期に抗凝固療法を検討することが視力予後に重要と考えられた.CPurpose:Toreportthelong-termoutcomesintwocasesofsystemiclupuserythematosus(SLE)retinopathywithcontrastingprognosesofvisualfunction.Casereports:Case1involveda42-year-oldfemalewhopresentedwithblurredvisioninherlefteye.Attheageof34,shewasdiagnosedwithidiopathicthrombocytopenicpurpura(ITP)andpositiveforantiphospholipidantibodies(aPL),andwasundergoingtreatmentwithoralprednisoloneforITP.CUponCexamination,CherCbest-correctedCvisualacuity(BCVA)wasC1.2CO.D.CandC0.07CO.S.,CandCmultipleCcotton-woolCspotsCwereCobservedCinCtheCfundusCbilaterally.CMoreover,CischemicCchangesCwithCretinalChemorrhageCwereCobservedCinCherCleftCeye,CandCsheCwasCdiagnosedCwithCSLECretinopathy.CInCadditionCtoCintensi.edCsystemicCtreat-ment,CanticoagulantCtherapyCwasCadministered.CHowever,CextensiveCischemicCchangesCdevelopedCinCbothCeyesCdueCtoCretinalCvascularCocclusion,CandCpanretinalCphotocoagulationCwasCperformed.CSubsequently,CsevereCvisualCimpair-mentCdueCtoCretinalCthinningCwasCnoted,CandCapproximatelyC13CyearsClater,CherCBCVACwasC0.02CO.D.CandChandCmotionO.S.,withpallorofbothopticdiscs.Case2involveda21-year-oldfemalewhopresentedwithvisionlossinherlefteye.ShehadadiagnosisofaPL-positiveSLE,andherBCVAwas1.0CO.D.and0.7CO.S.,withmultiplecot-ton-woolspotsobservedinbotheyes.SLEretinopathywasdiagnosed,althoughretinalvascularocclusionwasnotevident.CAlongCwithCanticoagulantCtherapy,CsystemicCtreatmentCwasCintensi.ed.CSubsequently,Cnon-perfusionCareasCduetovascularocclusionappeared,leadingtobilateralpanretinalphotocoagulation.SLEretinopathystabilized,andafterCapproximatelyC5Cyears,CBCVACinCbothCeyesChasCremainedCatC1.2.CConclusion:ForCgoodCprognosisCofCvisionCfunctioninactiveandaPL-positiveSLEretinopathycases,itisvitaltocollaboratewithinterniststointensifytreat-mentforSLEandtoconsiderearlyanticoagulationtherapy.C〔別刷請求先〕林孝彰:〒125-8506東京都葛飾区青戸C6-41-2東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科Reprintrequests:TakaakiHayashi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,TheJikeiUniversityKatsushikaMedicalCenter,6-41-2Aoto,Katsushika-ku,Tokyo125-8506,JAPANC1256(108)〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(10):1256.1265,C2024〕Keywords:全身性エリテマトーデス,抗リン脂質抗体,SLE網膜症,網膜虚血,抗凝固療法.systemicClupusCer-ythematosus,antiphospholipidantibodies,SLE/lupusretinopathy,retinalischemia,anticoagulationtherapy.Cはじめに全身性エリテマトーデス(systemicClupusCerythemato-sus:SLE)は,自己抗体の産生,免疫複合体の沈着により,皮膚,腎臓,網膜,脳などに臓器傷害を引き起こす自己免疫疾患で,指定難病(告示番号C49)に認定されている(難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/53).2019年における難病認定届け出人数はC61,835人で,申請していないケースなどを含めるとこの約C2倍の人がCSLEに罹患していると推定され(難病情報センター),有病率は人口C10万人あたりC50.100人ほどである.発症年齢は,20.40代の女性に多く,男女比はC1:9と圧倒的に女性に多い疾患である.もっとも重篤な眼合併症はCSLE網膜症であり,SLE全体のC10%前後に発症する1.3).SLE網膜症は,閉塞性網膜血管炎・網膜虚血によって視力障害を引き起こす病態である.日本リウマチ学会からCSLEの診療ガイドライン(2019)4)が発表されているが,SLE網膜症に関して,急性活動性病変として重要であるとの記載はあるものの,分類基準や治療に関する記載はない.抗リン脂質抗体(antiphospholipidantibodies:aPL)は,細胞膜のリン脂質もしくはリン脂質と蛋白質との複合体に対する自己抗体をさす.aPLには,ループスアンチコアグラント,抗カルジオリピン抗体,抗カルジオリピンCb2グリコプロテインCI複合体抗体(抗CCL・Cb2GPI抗体)などが含まれる.aPLが原因となって動静脈血栓症や習慣性流産などを発症する疾患を抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipidsyn-drome:APS)という.SLEのC30.40%でCaPLが陽性となる5).これまでにCSLE網膜症の長期経過に関する報告は少ない.今回,対照的な転帰をたどったCaPL陽性CSLE網膜症C2症例の長期経過について報告する.CI症例[症例1]42歳,女性.主訴:左眼霧視.現病歴:2009年某月,顔面紅斑を認めた.2カ月後に手関節および手指関節の関節痛が出現し,そのC2週後,東京慈恵会医科大学附属病院(以下,当院)救急外来を受診した.顔面紅潮,関節痛,血小板減少がみられ,SLEが強く疑われリウマチ・膠原病内科に緊急入院となった.34歳時にaPL陽性と特発性血小板減少性紫斑病(idiopathicCthrombo-cytopenicpurpura:ITP)と診断され,当院腫瘍・血液内科に通院中であった.aPL陽性であったものの血管血栓症や妊娠合併症はみられず,抗血小板薬や抗凝固薬の導入には至らなかった.入院前より,ITPに対してプレドニゾロン(pred-nisolone:PSL)20mg/日内服加療中であった.身長C156cm,体重C57Ckg,BMIC23.42Ckg/m2.また,左眼霧視(第C1病日)を自覚していたため,眼科受診となった.既往歴:34歳時にCaPL陽性とCITPの診断,36歳時に腹腔鏡下脾臓全摘手術,2妊C2産.初診時眼科所見:前眼部に異常所見なく,眼底検査で右眼に数個の綿花様白斑が,左眼上方血管アーケードに融合した綿花様白斑を認めたため,眼底疾患の精査予定となった.経過:血液検査が施行され,血小板数C5万/μl,蛍光抗体法による抗核抗体C640倍(基準値:40倍未満)で染色パターンは斑紋型(speckledpattern),抗CdsDNAIgG抗体はC10未満,抗CSS-A抗体C57.7CU/ml(基準値C10CU/ml未満),抗SS-B抗体C7CU/ml,抗CSm抗体C42.6CU/ml(基準値C10CU/ml未満)であった.一方,APSに関連するCaPLで,ループスアンチコアグラントC1.11(基準値C1.29以下),抗カルジオリピンCIgG抗体C8U/ml(9U/ml未満),抗CCL・Cb2GPI抗体1.2CU/ml(3.5CU/ml未満)は陰性であった.肝機能および腎機能に異常はなかった..部紅斑,関節炎,血液学的異常,免疫学的異常,抗核抗体陽性所見から,ACR(AmericanCCollegeCofRheumatology)分類改訂基準(1997)6)の4項目以上の基準を満たしCSLEと診断された.第C6病日に眼科的検査を行った.矯正視力は右眼(1.2),左眼(0.07),眼圧は右眼C9CmmHg,左眼C9CmmHgであった.眼底所見として,右眼は綿花様白斑の増加,左眼も綿花様白斑増加に加え血管アーケード内に網膜出血を伴う網膜白濁所見を認めた(図1a).同日,フルオレセイン蛍光造影検査(.uoresceinangi-ography:FA)を施行し,右眼は網膜血管炎に加え点状の蛍光漏出,左眼は血管アーケード内の網膜血管閉塞の所見を認め,SLE網膜症と診断した.黄斑部の光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT,StratusCOCTCIII3000,CCarlZeissMeditec社)検査で,右眼に明らかな異常所見はなかったが,左眼に黄斑浮腫を認めた.SLE網膜症が悪化したこともあり,第C7病日からメチルプレドニゾロンC1,000mg/日によるステロイドパルス療法(intravenousCmethyl-predonisolone:IVMP)がC1クール(3日間)施行され,後療法としてCPSL40Cmg/日が投与された.第C12病日よりプロトロンビン時間国際標準比(prothrombintime-internationalnormalizedratio:PT-INR)がC1.5.2.0になるように抗凝固図1症例1の眼底写真とフルオレセイン蛍光造影写真a:第C6病日のカラー眼底写真を示す.右眼は多数の綿花様白斑,左眼も多数の綿花様白斑に加え血管アーケード内に網膜出血を伴う網膜白濁所見を認める.Cb:第C15病日のカラー眼底写真を示す.両眼ともに,眼底所見は悪化しており,血管アーケード内に網膜出血を伴う網膜白濁所見を認め,左眼はさらに悪化している.Cc:第C15病日のフルオレセイン蛍光造影写真(後期相).右眼(7分C41秒)は後極の網膜血管閉塞による虚血,左眼(8分C3秒)も広範囲な網膜虚血を認める.図2症例1の眼底写真とOCT画像(第203病日)a:眼底所見として,両眼ともに汎網膜光凝固術が施行されCSLE網膜症の活動性は低下している.Cb:OCTでは,両眼ともに黄斑部網膜は菲薄化している.薬ワルファリンカリウム(1.2Cmg/日)内服が開始された..部紅斑ならびに関節炎症状は改善した.その後,左眼の閉塞性血管炎に起因する著しい視力低下に加え,右眼の視力低下も認め,第C15病日の視力は右眼(0.02),左眼C20Ccm/指数弁とさらに悪化した.眼底所見は,両眼ともに血管アーケード内の網膜出血を伴う網膜白濁所見を認め,左眼はさらに悪化していた(図1b).同日施行したCFAで,右眼は後極の網膜血管閉塞による虚血,左眼も広範囲な網膜虚血を認めた(図1c).第C16病日より左眼から汎網膜光凝固術(panretinalphotocoagulation:PRP)を開始し,並行して右眼のCPRPも行った.第C14病日から開始されたシクロスポリン(cyclo-sporineA:CyA)200Cmg投与後に全身症状がやや悪化したため,第C15病日で終了し,第C16病日よりシクロホスファミド(500Cmg)間欠静注療法(intravenousCcyclophospha-mide:IVCY,1日C1回の点滴治療をC2週間以上開けて複数回施行する治療)が計C3回施行された.その後,血小板数減少を認め,第C30病日からワルファリンカリウムを約C1カ月間休薬となった.IVCY後,寛解維持を目的に,第C82病日よりアザチオプリン(azathioprine:AZP)50Cmg/日投与が開始された.第C132病日の視力は右眼(0.1),左眼(0.04)であった.経過観察を継続し,第C203病日の視力は右眼(0.08),左眼(0.04)と維持していた.眼底所見として,両眼ともにPRPによりCSLE網膜症の活動性は低下していたが(図2a),OCT(CirrusCHD-OCT5000,CarlCZeissMeditec社)検査で,両眼ともに黄斑部網膜は菲薄化していた(図2b).その後,第C438病日,後部硝子体.離に伴う左眼硝子体出血に対して,23CGシステムを用いた硝子体手術,眼底周辺部に網膜光凝固術(photocoagulation:PC)を追加施行した.経過(病日)第1病日第1病日経過(病日)図3治療経過ならびに視力の経時変化a:症例C1.横軸に第C1病日からの経過(日数)を示す.ステロイドパルス療法(IVMP),プレドニゾロン(PSL)内服投与量,ワルファリンカリウム内服,シクロスポリン(CyA)内服,シクロホスファミド(IVCY)間欠静注療法,アザチオプリン(AZP)内服の投与量と投与期間を示す.視力は,小数視力からClogMARに換算している.Cb:症例C2.横軸に第C1病日からの経過(日数)を示す.IVMP,PSL内服,トリアムシノロンアセトニドCTenon.下注射(STTA),ヘパリンナトリウム持続点滴,ワルファリンカリウム内服,AZP内服の投与量と投与時期を示す.視力は,小数視力からClogMARに換算している.徐々にCSLE網膜症の活動性は低下し,第C637病日が最終受8Cmg/日とCAZP100Cmg/日の内服加療で,SLEの臨床症状診となり,近医へ逆紹介となった.最終受診時の視力は,右は落ち着いていた.初診からの臨床経過を図3aに示す.眼(0.09),左眼C10Ccm/指数弁であった.内科的には,PSL2022年某日(初診からC13年後)に眼科受診され,視力は,右眼(0.02),左眼手動弁であった.眼底は両眼CPRP後で鎮静化しており,両眼視神経は蒼白化していた.[症例2]21歳,女性.主訴:羞明,左眼視力低下.現病歴:2018年某月,発熱,発疹,手首の痛みを自覚し(発症日),東京慈恵会医科大学葛飾医療センター総合診療部を受診,顔面紅斑および汎血球減少を認め,7日後に精査加療目的で入院となった.身長C160Ccm,体重C50.8Ckg,BMIC19.84Ckg/m2.胸腹部CCTで全身リンパ節腫脹および肝脾腫がみられたものの,骨髄検査で芽球はC5%未満であった.顔面部から採取した皮膚病理の結果,皮膚エリテマトーデス(cutaneouslupusCerythematosus:CLE)に矛盾ない組織像であった.血液検査で,白血球数C2,500/μl,血小板数C14万/μl,蛍光抗体法による抗核抗体はC640倍(基準値:40倍未満)で染色パターンは斑紋型(speckledpattern),補体蛋白CC322Cmg/dl(基準値:73.138Cmg/dl),C42.0Cmg/dl(11.31Cmg/dl),CH5010CU/ml(基準値:31.6.57.6CU/ml)は低値,抗CSm抗体C8CU/ml,抗CdsDNAIgG抗体C74CIU/ml(基準値C12CIU/ml以下)と陽性であった.腎機能に異常はなかった.aPL関連の抗カルジオリピンCIgG抗体C20CU/ml(基準値:12.3U/ml以下),抗CCL・Cb2GPI抗体C3.5U/ml(基準値:3.5CU/ml未満)の陽性も確認された.ACR分類改訂基準(1997)6)のC4項目以上の基準を満たしCSLEと診断された.発症C11日後からCPSL40Cmg/日内服治療が開始された.血液検査所見の改善がみられ退院した.発症C23日後(第C1病日),左眼視力低下を認め,第C10病日,再入院するとともに眼科に紹介受診となった.既往歴・家族歴:特記すべき事項なし.初診時眼所見:視力は右眼C0.05(1.0C×sph.3.25D(cylC.0.75DAx55°),左眼C0.04(0.7C×sph.4.75D(cyl.0.25DAx90°),眼圧は右眼C13mmHg,左眼C14mmHgであった.前眼部に異常所見なく,眼底所見として,両眼ともに後極部を中心として多数の綿花様白斑を認めた(図4a).黄斑部OCT(CirrusCHD-OCT5000)検査において,両眼ともに.胞様黄斑浮腫を認めた(図4b,c).SLE網膜症と診断し,FAを施行し,両眼に網膜血管炎の所見はみられたが,明らかな網膜血管閉塞所見ならびに無灌流領域(nonCperfusionarea:NPA)は検出されなかった.経過:再入院後,IVMPのC1クール(2日間)に加え抗凝固療法(ヘパリンナトリウムC10,000.15,000単位/日持続点滴)が開始された.その後,サイトメガロウイルス感染症を発症し,ガンシクロビル(デノシン250CmgをC1日C2回,4日間)点滴治療,PSL50Cmg/日内服,抗凝固薬はワルファリンカリウム2.4Cmg/日(PT-INR1.5.2.0を目標)に変更となった..胞様黄斑浮腫に対してトリアムシノロンアセトニドCTanon.下注射(sub-tenonCinjectionCofCtriamcinoloneCacetonide:STTA)を計画していたが,治療強化の目的で,第C15病日に東京慈恵会医科大学附属病院リウマチ・膠原病内科および眼科に転院となった.同日CFA施行,両眼に網膜血管炎,一部CNPAがみられたが,経過観察となった.第C17病日に左眼にCSTTA施行,第C22病日にCFA施行したところ,右眼は上方から耳側にかけて,左眼は上方と下方の広範囲にCNPAが検出され(図5),右眼CNPAにCPC,左眼にPRPを施行した.第C32病日の視力は右眼(1.2),左眼(0.6)であった.第43病日よりPSL45mg/日に加え,AZPC25mg/日投与が開始となり,2週後からC50Cmg/日へ増量された.以降,内科的にはCPSL内服を漸減し,眼科的には適宜FA施行し,両眼のCNPAに対してCPCの追加治療を行った.第C161病日の視力は右眼(1.5),左眼(1.2)まで改善した.その後,右眼に網膜血管.離に伴う硝子体出血を認め,第400病日にC27CGシステムを用いた硝子体手術を施行,網膜.離や増殖膜はみられず,眼底周辺部にCPCを追加した.その後,追加治療はせず経過観察となった.初診からの臨床経過を図3bに示す.第C500病日の眼底は,両眼CPRP後に鎮静化し(図6a),OCT検査で網膜外層構造は保たれている(図6b).第C654病日,白血球減少がみられたためCAZP中止となった.初診からC4年以上経過した某日より,顔面と右上腕皮膚のCCLEが悪化し,可溶型CBリンパ球刺激因子(BLyS)阻害薬であるベリムマブ(ベンリスタC200Cmg)皮下注製剤が開始され,そのC2カ月後にヒドロキシクロロキン硫酸塩(hydroxychloroquinesulfate:HCQ,プラケニル200Cmg/日とC400Cmg/日をC1日おきに経口投与)が追加投与された.最終受診時,内科初診からC5年経過し,PSL4Cmg/日に加えCHCQとベリムマブを継続している.視力は両眼それぞれ(1.2)を維持し,SLEとCSLE網膜症の悪化はみられていない.また,初診時にCaPL陽性であったが,そのC12週以降から最終受診までCaPLは陰性であった.CII考按今回,SLE網膜症の視機能予後において,対照的な転帰を辿ったC2症例の長期経過について報告した.症例C1の特徴として,SLE活動期にCSLE網膜症が急速に進行し,血管アーケード内の網膜血管閉塞により,重篤な黄斑部網膜虚血(図1b,c)が起こり,網膜菲薄化(図2b)による重度視力障害を残し鎮静化した.一方,症例C2では,SLE網膜症診断後,網膜血管閉塞による重篤な網膜虚血が回避され,良好な視力が維持され,網膜症が鎮静化した(図5).SLEの診断に関して,ACR分類改訂基準(1997)6)に準じた難病情報センターの診断基準に照らし合わせると,症例C1(顔面紅斑,関節炎,血小板減少,抗核抗体陽性,抗CSm抗体陽性)と症例C2(顔面紅斑,関節炎,白血球減少,抗核抗体陽性,抗CdsDNAIgG抗体陽性,aPL陽性)ともに,診断図4症例2の眼底写真とOCT画像(初診時)a:眼底所見として,両眼ともに後極部を中心として多数の綿花様白斑を認める.Cb:OCTでは,両眼ともに.胞様黄斑浮腫を認める.カテゴリーのC4項目以上を満たし,SLEの診断に合致している.2024年現在,SLE分類基準はCACR分類改訂基準(1997)6)とともに,EuropeanLeagueAgainstRheumatism(EULAR)/ACR2019が採用され,少なくともC1回は抗核抗体C80倍以上の陽性が必須(エントリー基準)とされ,7つの臨床項目(発熱,血液学的所見,神経精神症状,皮膚粘膜所見,漿膜炎,関節炎,腎病変)と三つの免疫学的項目(aPL,補体蛋白,特異的自己抗体)に分け,一つ以上の臨床項目を含み,臨床項目と免疫学的項目を合わせて,合計が10点以上でCSLEに分類される7.9).症例C1の初診時,すでにCITPに対するCPSL加療中であったが,今回のC2症例を現在のCEULAR/ACR2019分類基準に照らし合わせても,合計点数がC10点を超えており,SLEに分類される結果であった.SLEの治療について考察する.2015年C7月C3日にCSLEとCLEの治療薬として,HCQが承認され,同年C9月に販売さ図5症例2の超広角フルオレセイン蛍光造影写真(第17病日)右眼(1分C52秒)は上方から耳側にかけて,左眼(2分C28秒)は上方と下方の広範囲に無灌流領域が検出されている.図6症例2の眼底擬似カラー画像とOCT画像(第500病日)a:超広角眼底写真で,両眼汎網膜光凝固術が施行され,SLE網膜症は鎮静化している.Cb:OCTで黄斑浮腫はなく,網膜外層構造は保たれている.れた.HCQは,抗炎症作用,免疫調節作用,抗マラリア作られている4,10).SLEの診療ガイドライン(2019)4)において,用など多岐にわたる薬理作用を有する薬剤である.その分子HCQは病態や臓器病変にかかわらず,禁忌事項に注意しなメカニズムについては十分に明らかになっているとはいえながら全例で投与を考慮すると記載されている.ただし,皮膚いが,Toll様受容体の機能阻害ならびにエンドソームCpH上に限局するCCLEの場合,まず外用治療を行い,それに抵抗昇作用による抗原提示を阻害することに関連していると考え性の場合に投与を検討すると記載されている.2023改訂SLE患者の管理・治療に関するCEULAR推奨においても,目標量C5Cmg/kg/日で基本的にすべてのCSLE症例に対してHCQを推奨している11).現状,SLEと診断されれば,最初にCHCQ投与が行われる.HCQ投与後の治療指針として,SLE診療アルゴリズムが提唱されている4).その後はCPSL内服治療と並行して,ループス腎炎の有無・Class分類,神経精神ループスの有無,血液検査所見,全身状態を評価し,寛解導入に向けてCIVMP,IVCY,免疫抑制薬,モノクローナル抗体製剤を追加投与する治療アルゴリズムとなっている4).症例C1では,活動性CSLEの発症時期が,HCQ保険収載以前であったことから,経過中にCHCQの使用歴はない.一方,症例C2では,診療ガイドライン(2019)発表以前に発症し,活動期にCSLE網膜症を発症していたことからCHCQ投与が見送られた可能性がある.発症からC4年後にCHCQが開始されているが,最終受診までC1年は経過していない.現在,HCQの保険適用からC8年以上が経過し,本剤の副作用としてもっとも留意すべきものとして網膜障害(ヒドロキシクロロキン網膜症)がある12,13).とくに累積投与量がC200Cgを超えたら注意する必要がある12,13).HCQ投与後は,通常の眼科的検査に加え,OCT検査,色覚検査,視野検査をC6カ月からC1年ごとに行うことが必須となっている.しかし,症例C1のように網膜血管閉塞後の黄斑部網膜菲薄化による不可逆的変化(図2)が生じた場合,たとえCHCQを投与していたとしてもヒドロキシクロロキン網膜症の発症を評価することは不可能である.SLEと診断され,HCQ投与検討時期に,SLE網膜症を発症している場合,HCQ投与後にヒドロキシクロロキン網膜症発症の評価が困難となるため,投与に関しては,慎重にならざるをえない.現在,SLEの病態に保険収載されているモノクローナル抗体製剤は,ベリムマブ,アニフロルマブ,リツキシマブの3剤である(表1).ベリムマブはCB細胞活性化を制御する薬剤で,標準的治療に対して効果不十分な症例に適応がある.また,SLEに合併するCCLEに対する有効性も報告されている14).症例C2では,CLE悪化時にベリムマブが導入された.ステロイドとCHCQ治療にベリムマブが追加投与され,SLE網膜症による視力低下の改善を認めた報告例がある15).アニフロルマブは,I型インターフェロンCa受容体のサブユニットC1(IFNAR1)の阻害薬で,IFNAR1を介したインターフェロンシグナル伝達を阻害し,IFNAR1応答性の遺伝子発現を抑制する薬剤で,既存の治療を行っても疾患活動性を有する場合に追加投与を検討する.CD20陽性のCB細胞を枯渇化させるリツキシマブは,ループス腎炎に対して適応が拡大された.APSの診断に関して,難病情報センターの診断基準では,臨床基準C1項目以上が存在し,かつ検査項目(ループスアンチコアグラント,抗カルジオリピン抗体,抗CCL・Cb2GPI抗体)のうちC1項目以上が陽性で,12週間以上の間隔をおいてC2回以上検出されることとなっている.今回のC2症例とも,1回のCaPL陽性を認めているが,診断基準は満たしていない.SLEに対する治療が行われていたことと関係している可能性は否定できない.しかし,両症例ともCaPL陽性が確認されていることから,APSでみられる血管血栓症に留意する必要があったと考えられる.SLEにCAPSを合併する症例では,網膜血管閉塞性疾患を発症するリスクが高いことが指摘されている16).SLE網膜症に対する治療アルゴリズムは存在しないが,.胞様黄斑浮腫に対してはCSTTAを行い17),適宜CFAを施行し網膜血管閉塞やCNPAが検出されればCPCやCPRPを検討する必要がある17,18).しかし,いずれも対症療法で,重篤な閉塞性網膜血管炎に対する治療を強化しなければ根本治療とはいえない.APSを合併している場合,血管血栓症や視力予後の悪化を防ぐために,抗凝固薬による迅速な治療が重要であると指摘する報告もある19).大島らは20),網膜血管閉塞を発症したCSLE網膜症のC2例を報告し,1例はCAPS合併例で,もうC1例はCAPS非合併例であったが,血管閉塞が進行する活動性の高いCSLE網膜症において,既存の治療に加えて抗凝固療法が進行抑制に有効であったと考察している.抗凝固薬の開始時期について,症例C1では,第12病日からワルファリンカリウム内服を開始している.しかし,発症時(第C1病日),すでに左眼霧視を訴えていたこと,ITPに対してCPSL20Cmg/日内服加療中であったことか表1全身性エリテマトーデスに対するモノクローナル抗体製剤ベリムマブ(ベンリスタ)アニフロルマブ(サフネロー)リツキシマブ(リツキサン)標的抗原可溶型CBリンパ球刺激因子(BLyS)I型インターフェロンCa受容体のサブユニットC1(IFNAR1)CCD20作用機序BLyS阻害I型CIFN受容体阻害CD20発現細胞除去効能・効果既存治療を行っても疾患活動性がある場合既存治療を行っても疾患活動性がある場合既存治療で効果不十分なループス腎炎投与方法点滴静注/皮下注点滴静注点滴静注投与量10Cmg/kgを初回,2週後,4週後/C200CmgC300CmgC375Cmg/m2(体表面積)投与間隔静注C4週ごと/皮下注C1週ごと4週ごと1週間間隔でC4回注意点アナフィラキシー,重症感染症,間質性肺炎などアナフィラキシー,重症感染症投与時反応,感染症承認時期2017年C9月2021年C9月2023年C8月ら,正確なCSLEならびにCSLE網膜症の発症日は不明であったと考えられた.また,SLEではしばしば血小板減少症を合併することから,SLEと確定診断された以前より,潜在的なCSLEが存在していた可能性は考えられる.仮にCSLEの診断時期が早ければ,SLE網膜症をより早期に診断できた可能性があり,左眼の重度視力障害をきたす前に,抗凝固療法を含めたCSLEの治療強化行えた可能性がある.一方,症例C2では,SLE網膜症の診断日(視力低下自覚のC9日目・第10病日)からCIVMPならびにヘパリンナトリウムによる抗凝固療法が開始された.SLEに対する治療は,2015年以降,HCQの保険適用やモノクローナル抗体製剤の開発など,めざましい進歩を遂げている.一方,閉塞性網膜血管炎を主体とするCSLE網膜症は不可逆的かつ重篤な視機能障害を引き起こす病態であるにもかかわらず,治療アルゴリズムは存在しない.今回経験した2症例の治療経過と過去の報告と併せて考えると,急速に進行するCSLE網膜症がみられた場合,aPL陽性やCAPS合併の有無にかかわらず,内科医と連携して,SLEに対する治療を強化するとともに,早期に抗凝固療法を検討することが重要であると考えられた.本論文の内容は,第C36回日本眼循環学会(札幌,2019),第C56回日本眼炎症学会(大阪,2023)にて発表しました.利益相反:林孝彰FクラスCIII(ジョンソン・エンド・ジョンソン/AMO株式会社,株式会社リィツメディカル,株式会社ユニハイト,バイエル薬品株式会社,日本アルコン株式会社,田辺三菱製薬株式会社,参天製薬株式会社),FクラスCII(千寿製薬株式会社,第一三共株式会社,株式会社オグラ,株式会社栗原医療器械店,中外製薬株式会社,わかもと製薬株式会社,大塚製薬株式会社,興和株式会社,協和キリン株式会社)文献1)Sta.ord-BradyCFJ,CUrowitzCMB,CGladmanCDDCetal:CLupusCretinopathy.CPatterns,Cassociations,CandCprognosis.CArthritisRheumC31:1105-1110,C19882)KharelCSitaulaCR,CShahCDN,CSinghD:RoleCofClupusCreti-nopathyCinCsystemicClupusCerythematosus.CJCOphthalmicCIn.ammInfectC6:15,C20163)SethCG,CChengappaCKG,CMisraCDPCetal:LupusCretinopa-thy:aCmarkerCofCactiveCsystemicClupusCerythematosus.CRheumatolIntC38:1495-1501,C20184)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班):全身性エリテマトーデス診療ガイドラインC2019.南山堂,20195)DurcanCL,CPetriM:ClinicalCaspect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Selective Laser TrabeculoplastyとPattern Scanning Laser Trabeculoplastyの2年成績

2024年10月31日 木曜日

SelectiveLaserTrabeculoplastyとPatternScanningLaserTrabeculoplastyの2年成績中野花菜*1小椋俊太郎*1木村雅代*1安川力*1野崎実穂*1,2*1名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学*2名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科CComparativeStudyofSLTandPSLTforGlaucomaTreatmentwith2-yearFollow-upKanaNakano1),ShuntaroOgura1),MasayoKimura1),TsutomuYasukawa1)andMihoNozaki1,2)1)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,NagoyaCityUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences,2)DepartmentofOphthalmology,NagoyaCityUniversityEasternMedicalCenterC目的:2年間経過を追えた選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)とCPASCALのパターンシステムを利用したパターンレーザー線維柱帯形成術(PSLT)を施行した症例について後ろ向きに比較検討した.対象と方法:2010.2018年に名古屋市立大学病院でCSLTあるいはCPSLTを施行し,2年間経過観察できた原発開放隅角緑内障C17眼(SLT群C8眼,PSLT群C9眼).両群ともC360°照射を行い,眼圧および点眼スコアを比較,検討した.結果:眼圧はCSLT群,PSLT群共にC2年の時点で有意に低下していた.点眼スコアは,両群とも有意に増加していたが,両群で点眼スコアに有意差は認めなかった.また,平均眼圧下降率は両群で統計学的有意差は認めなかった.結論:PSLTはC2年の経過観察期間においてCSLTと同等の眼圧下降効果を有すると考えられた.CPurpose:Toretrospectivelycomparethee.cacybetweenselectivelasertrabeculoplasty(SLT)andpatternscanninglasertrabeculoplasty(PSLT)usingthePASCAL(Topcon)patternsystemovera2-yearfollow-upperi-odCinCprimaryCopen-angleCglaucoma(POAG)patients.CMethods:ThisCstudyCinvolvedC17CPOAGCeyesCthatCunder-wentSLT(8eyes)andPSLT(9eyes)with360°Cirradiationbetween2010and2018.Inbothgroups,intraocularpressure(IOP)andthenumberofocularhypotensivemedications(OHM)administeredoverthe2-yearfollow-upperiodwasexamined.Results:At2-yearspostoperative,signi.cantIOPreductionwasobservedintheSLTandPSLTgroups.AlthoughbothgroupsdidrequireanincreasednumberofOHM,therewasnosigni.cantdi.erencebetweenthetwogroups.AverageIOPreductionintheSLTandPSLTgroupswas17.5%and22.9%,respectively,thusshowingnosigni.cantdi.erencebetweenthetwogroups.Conclusion:SLTandPSLTwereequallye.ectiveforCreducingCIOPCinCPOAGCeyesCoverCaC2-yearCfollow-upCperiod,CthusCshowingCthatCPSLTCisCaCviableCtreatmentCoptionforlong-termIOPmanagementinglaucomapatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(10):1251.1255,C2024〕Keywords:原発開放隅角緑内障,選択的レーザー線維柱帯形成術,パターンレーザー線維柱帯形成術.primaryCopenangleglaucoma,selectivelasertrabeculoplasty,patternscanninglasertrabeculoplasty.Cはじめにパターンレーザー線維柱帯形成術(patternscanninglasertrabeculoplasty:PSLT)はレーザー光凝固装置CPASCAL(トプコン)のパターンシステムを利用したレーザー線維柱帯形成術である.選択的レーザー線維柱帯形成術(selectivelasertrabeculoplasty:SLT)と比較し,一度に複数発のレーザー発射が可能で,コンピューターで照射範囲を制御できる特徴を有する.2010年にCTuratiらは,波長C532Cnm(緑)のCPASCALを用いてCPSLTを施行し,6カ月の平均眼圧下降率はC24%であったことを報告した1).PSLTは施行後も組織瘢痕や癒着をきたさないため,その奏効機序はCSLTに類似していると考えられていたが,当時CPSLTとCSLTの眼圧下降効果は比較検討されていなかった.そのため,筆者らは以前にC6カ月の観察期間における波長C577nm(黄)の〔別刷請求先〕野崎実穂:〒464-8547愛知県名古屋市千種区若水C1-2-23名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科Reprintrequests:MihoNozaki,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,NagoyaCityUniversityEasternMedicalCenter.1-2-23Wakamizu,Chikusa-ku,Aichi,Nagoya464-8547,JAPANCSLT群(n=8)PSLT群(n=9)p値年齢(歳)C70.8±11.3(C60.C83)C69.1±10.4(C53.C84)C0.78a性別男性C4例,女性C2例男性C4例,女性C4例C0.53b病型狭義CPOAG8眼狭義CPOAG8眼,NTG1眼C0.33b眼圧(mmHg)C19.9±4.5C17.4±2.4C0.20a点眼スコアC3.5±1.1C3.8±1.1C0.60alogMAR視力C0.33±0.60C0.16±0.28C0.47a視野重症度早期2,中期2,後期C4早期2,中期0,後期C7C0.25bCat検定,CbC|2検定.PASCALによるCPSLTとCSLTを比較検討し,両者は同等の眼圧下降効果が得られると報告した2).さらに,原発開放隅角緑内障(primaryopenangleglaucoma:POAG)または高眼圧症患者に対してC12カ月間比較した報告3)や,開放隅角緑内障(openangleglaucoma:OAG)と高眼圧症に対して,24カ月間の長期観察した海外の報告4)でも,PSLTの眼圧下降効果や安全性はCSLTと同等であった.今回筆者らは,2年間経過を追うことのできたCOAG患者のCSLTあるいはCPSLT施行症例について後ろ向きに比較検討したので報告する.CI対象と方法対象はC2010.2018年までに名古屋市立大学病院でCSLTまたはCPSLTを施行し,2年間経過観察できたCPOAG17眼である.SLTを施行した群C8眼をCSLT群,PSLTを施行したC9眼をCPSLT群とした.視野重症度はCHumphrey視野計における視野異常の判定基準(Anderson-Patellaの基準)に従った.視野の統計学的指標の一つであるCmeanCdeviation(MD)値が,MD>C.6dBは初期,C.6CdB≧MD≧.12CdBは中期,MD<C.12CdBは後期と分類した.施行前に,対象患者に対しあらかじめ起こりうる事態の可能性を説明し,長期予後は不明である旨を十分説明し,インフォームド・コンセントを得た.レーザー照射前の処置として,レーザー開始30.60分前にCa2受容体作動薬であるアプラクロニジンを点眼し,麻酔薬はオキシブプロカイン点眼液を使用した.PSLT群では,PASCALCStreamline577(波長577nm),SLT群ではタンゴオフサルミックレーザー(波長C532Cnm)(エレックス社)を使用し,両群ともCLatinaSLTゴニオレーザーレンズ(オキュラー社)を使用して,線維柱帯全周C360°に照射を行った.レーザーの照射条件は,SLT群では,線維柱帯からごくわずかに気泡が認められる程度を目安にエネルギー設定を行った.PSLT群では,はじめにシングルスポットC10ミリ秒の照射時間で,線維柱帯の色調がわずかに変化する程度に出力を設定し,実際には照射時間が半分のパターンスポットのエネルギーで照射した.レーザー終了後に再びアプラクロニジンを点眼し,術後はステロイド点眼,非ステロイド性抗炎症点眼は使用しなかった.また,すでに緑内障点眼治療を受けている症例ではレーザー後も点眼をすべて継続した.点眼スコアは点眼C1種をC1点と計算,配合点眼薬と炭酸脱水酵素阻害薬C2錠/日の内服は,2点として計算した.有意差検定にはCStudentのCt検定あるいはC|2検定を用い,有意確率C5%未満を有意と判定した.本研究に関しては名古屋市立大学病院倫理委員会承認のもと施行した.CII結果平均年齢は,SLT群でC70.8C±11歳(60.83歳),PSLT群でC69.1C±10歳(53.84歳),病型の内訳は,SLT群では狭義CPOAGがC8眼,PSLT群では狭義CPOAGがC8眼,正常眼圧緑内障(normaltensionglaucoma:NTG)1眼で,年齢,性別,病型,緑内障手術既往眼の割合に両群間で有意差はみられなかった.また,術前の眼圧はCSLT群でC19.9C±4.5mmHg,PSLT群でC17.4C±2.4CmmHgで有意差はみられなかった.術前の点眼スコアはCSLT群で,3.5C±1.1,PSLT群でC3.8±1.1と有意な差はなかった.視力や視野重症度のいずれも有意差を認めなかった.病期は早期症例だけではなく,中期や後期に至っているものも含まれた(表1).平均照射エネルギーは,SLT群でC0.70CmJ,PSLT群では平均レーザー出力C379CmW,平均照射エネルギーがC1.89CmJであった(表2).術後C24カ月の平均眼圧はCSLT群C15.8C±2.9CmmHg,PSLT群C13.4C±2.6CmmHgでベースラインと比較して両群とも有意な眼圧下降を得た(p<0.05)(図1).また,点眼スコアは,SLT群で術前C3.5C±1.1であったものが術後C4.0C±0.8,PSLT群で術前C3.8C±1.1であったものが術後C4.2C±0.8と,両群ともに増加していたが,術前後で有意な差は認めなかった(図2).24カ月における平均眼圧下降率はCSLT群C17.5%,PSLTSLTCPSLTCレーザー波長C532CnmC577CnmレーザースポットサイズC400CμmC100Cμm378.6±69.9CmWレーザー出力・エネルギーC0.70±0.14CmJ(0C.4.C0.9mJ)C(3C00.C500mW)C1.89±0.35CmJ(1C.50.C2.50mJ)レーザー照射時間C3CnsecC5CmsecIOP(mmHg)群C22.9%で,有意な差は得られなかった.さらに視力や重症度も両群間において有意差はみられなかった(表3).また,SLT群,PSLT群ともにC5CmmHg以上の一過性眼圧上昇や,強い炎症などの術後合併症を生じた症例はなかった.C6N.S.SLT24カ月の期間内に眼圧下降目的に観血的手術を施行したC5N.S.症例はなかったが,1眼追加の治療を行った.追加治療を要4点眼スコアしたC1眼はCSLTを施行した狭義CPOAGの症例で,SLT後C63カ月間は眼圧C14-16CmmHgで推移していたが,徐々に眼圧上昇があり,22カ月後にCPSLTを施行した.,PSLT後は,2緑内障点眼を継続し,眼圧C12-14CmmHg程度で経過した.CIII考按今回筆者らは,すでに点眼治療中のCPOAGに対し,追加治療としてCSLTまたはCPSLTを施行し,その眼圧下降効果について後ろ向きにC2年間の比較検討をした.SLT群,PSLT群ともに術後2年の期間で有意な眼圧下降効果を示し,1024カ月後t検定*p<0.05(術前と比較),N.S.有意差なし.図2術前術後点眼スコア点眼C1種を点眼スコアC1点,合剤はC2点と計算.SLT群,PSLT群とも有意差は認めなかったが,点眼スコアは増加した.SLT(n=8)PSLT(n=9)p値眼圧C点眼スコアC眼圧下降率C眼圧下降率C20%以上を達成した割合logMAR視力C視野重症度15.8±2.9CmmHgC3.5±1.1C17.5±21.5%C50.0%(Cn=4)0.45±0.52C早期1,中期4,後期C313.4±2.6CmmHgC3.8±1.1C22.9±10.5%C66.7%(Cn=6)C0.34±0.47※C早期1,中期2,後期C6C※C0.10a0.57a0.53a0.49b0.67a0.45b※経過観察中C1眼が網膜静脈分枝閉塞症を発症,1眼が網膜前膜に対する手術を受け視力低下,いずれも術前の視野重症度で後期緑内障.at検定,CbX2検定.PSLT群,SLT群間で有意差はなかった.SLTによる眼圧下降の奏効機序としては線維柱帯色素細胞を選択的に標的とし,レーザー治療を行うことで,治療後の組織瘢痕や癒着が生じにくいとされている5).Alvaradoらによれば,SLTによるレーザー照射はマクロファージの遊走を促進し,炎症性サイトカインの放出がCSchelemm管内皮細胞の房水透過性を増加させ,これによって眼圧が下降する可能性が示唆されている6,7).一方で,PSLTによる眼圧低下のメカニズムはまだ解明されていないが,アルゴンレーザーによる線維柱帯形成術と比較すると,PSLTはC15分のC1以下の低エネルギーで照射され,線維柱帯に不可逆性の障害を残さないため,PSLTの眼圧低下のメカニズムはCSLTとの類似性が推測されている8).ElahiらによるC24カ月のCSLTとCPSLTの効果比較した報告では,眼圧下降率はCSLT群C13.0%,PSLT群C11.0%で有意な差はなく,経過中点眼スコアの有意な増加もみられなかった4)が,対象症例のベースラインの視野CMD値がC.5CdB,点眼スコアもC1.2と,今回の筆者らの研究よりも初期の症例が対象であった.本研究ではC65%が後期緑内障症例であり,SLT群,PSLT群ともに点眼スコアがC24カ月で有意な増加を認めていた.さらに,経過観察中にブリモニジン,リパスジルや種々の配合点眼薬の発売が相ついだことや,もともと後期緑内障症例が多く,より目標眼圧を低く設定する必要性があったことが点眼スコア増加の一因として考えられる.本研究の限界として,2年経過を追えた症例数が少ないこと,SLTとCPSLT症例の選択が無作為ではない点があげられるが,SLT群,PSLT群ともに術後C2年の期間で有意な眼圧下降効果を示し両治療ともに有効性が考えられた.これまでに,NTG眼に対する第一選択治療としてCSLTを施行した後C3年間観察した結果,SLTが第一選択治療として有効な方法の一つであったという報告や9),早期緑内障症例にCSLTを施行したほうがより大きな眼圧下降を得られたという報告もある10).コンピューターの制御下で自動的にエーミングビームが動き,180°あるいはC360°照射を行うことが可能であるCPSLTでは,SLTで起こりうるような重ね打ち照射や照射漏れといったことがなくなり,再現性のある手技が実現できる利点があげられる.本研究では,PSLTがSLTに劣らずC2年間経過後も眼圧下降効果を得られたが,今後初期症例に対してのCPSLTの長期にわたる有効性についての検討が重要であると思われた.本論文の要旨は第C33回日本緑内障学会にて発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)TuratiCM,CGil-CarrascoCF,CMoralesCACetal:PatternedCLaserCTrabeculoplasty.COphthalmicCSurgCLasersCImagingC41:538-545,C20102)荒木みどり,野崎実穂,服部知明ほか:PatternedClasertrabeculoplastyと選択的レーザー線維柱帯形成術の比較.臨眼68:1269-1273,C20143)WongMOM,LaiIS,ChanPPetal:E.cacyandsafetyofselectivelasertrabeculoplastyandpatternscanninglasertrabeculoplasty:arandomisedclinicaltrial.BrJOphthal-molC105:514-520,C20214)ElahiCS,CRaoCHL,CPaillardCACetal:OutcomesCofCpatternCscanninglasertrabeculoplastyandselectivelasertrabecu-loplasty:ResultsCfromCtheClausanneClaserCtrabeculoplastyCregistry.ActaOphthalmologicaC99:e154-e159,C20215)KramerTR,NoeckerRJ:ComparisonofthemorphologicchangesCafterCselectiveClaserCtrabeculoplastyCandCargonClaserCtrabeculoplastyCinChumanCeyeCbankCeyes.COphthal-mologyC108:773-779,C20016)AlvaradoJA,AlvaradoRG,YehRFetal:AnewinsightintoCtheCcellularCregulationCofCaqueousout.ow:howCtra-becularCmeshworkCendothelialCcellsCdriveCaCmechanismCthatCregulatesCtheCpermeabilityCofCSchlemm’sCcanalCendo-thelialcells.BrJOphthalmolC89:1500-1505,C20057)AlvaradoJA,KatzLJ,TrivediSetal:Monocytemodula-tionofaqueousout.owandrecruitmenttothetrabecularmeshworkCfollowingCselectiveClaserCtrabeculoplasty.CArchCOphthalmolC128:731-737,C20108)LeeCJY,CHaCSY,CPaikCHJCetal:MorphologicCchangesCin10)GazzardG,KonstantakopoulouE,Garway-HeathDetal:Ctrabecularmeshworkafterpatternedandargonlasertra-Selectivelasertrabeculoplastyversuseyedropsfor.rst-beculoplastyincats.CurrEyeResC39:908-916,C2014ClineCtreatmentCofCocularChypertensionCandCglaucoma9)新田耕治,杉山和久,馬渡嘉郎ほか:正常眼圧緑内障に対(LiGHT):amulticentrerandomisedcontrolledtrial.Lan-する第一選択治療としての選択的レーザー線維柱帯形成術CcetC393:1505-1516,C2021の有用性.日眼会誌117:335-343,C2013***