提供コンタクトレンズセミナー読んで広がるコンタクトレンズ診療10.円錐角膜へのハードコンタクトレンズ処方(その2)■はじめに前回は円錐角膜眼へのハードコンタクトレンズ(HCL)処方について,レンズデザインやベースカーブ(basecurve:BC)の選択方法を中心に解説した.今回は,フィッティングの評価方法やレンズのケアについて解説する.C■フィッティングの動的・静的評価円錐角膜眼でも,フィッティングの評価は動的・静的評価に分かれる.動的評価では,涙液交換の有無と安静位置を評価する.涙液交換については,正常眼と同様に,瞬目時のレンズの動き(スピードと移動量)を参考にする.一方,安静位置の評価は,正常眼とは少し異なるポイントがある.円錐角膜眼はレンズが偏位しやすいため,瞬目直後のみならず,瞬目してしばらく経過したあとに,さらにレンズが偏位することが多い.そういった場合,瞬目直後の評価だけでは偏位を見逃してしまう危険性がある.そのため,円錐角膜眼では,瞬目直後に加えて,5秒程度開瞼を継続した状態でも安静位置を評価することが望ましい.図1円錐角膜眼におけるフルオレセイン染色パターンの名称上段にレンズと角膜の模式図を,下段にフルオレセイン染色パターンを示す.各図のはレンズと角膜の接触部である.アピカルタッチ糸井素啓京都府立医科大学道玄坂糸井眼科静的評価では,フルオレセイン染色パターンからCBCと角膜曲率の関係性を推測する.円錐角膜眼のフルオレセイン染色パターンは,レンズを角膜頂点で支えるアピカルタッチ,角膜頂点と傍中心部のC3点で支えるスリーポイントタッチ,傍中心部で支えるアピカルクリアランスのC3種類(図1)に分類される1).各レンズフィッティングにおけるレンズと角膜曲率の関係性は,角膜とレンズが並行(パラレル)な状態がスリーポイントタッチレンズ,レンズがフラットな状態がアピカルタッチ,スティープな状態がアピカルクリアランスとなる.それぞれのフィッティングにはメリット・デメリットがあり1)(表1),原則的には,角膜への負担が少ないスリーポイントタッチが理想とされる.しかし,角膜形状や眼瞼形状によってはアピカルタッチで処方せざるをえないことも多く,スリーポイントタッチに過度にこだわる必要はない.角膜への負担を減らすために,極端にフラットあるいはスティープな処方を避けることを意識したい.C■レンズ周辺部の確認レンズ最周辺部には,装用感を良好に保ち,涙液交換を円滑に行うために,ベベルというカーブが設けられてスリーポイントタッチアピカルクリアランス表1各レンズフィッティングのメリット・デメリットアピカルタッチスリーポイントタッチアピカルクリアランス利点・視力が出やすい・重症例でも行いやすい・角膜頂点に傷が生じる危険性が低い中間的な立ち位置欠点・角膜頂点に傷が生じやすい・視力が出にくい・涙液交換が生じにくい(87)あたらしい眼科Vol.40,No.6,2023C7990910-1810/23/\100/頁/JCOPY図2円錐角膜眼のフルオレセイン染色パターンベベル下に貯留した涙液の幅から,レンズ周辺カーブが角膜に適合しているか評価する.円錐角膜眼では,レンズ下部の浮きはあまり重要視せず,角膜上部と左右の適合性を優先する.いる.フルオレセイン染色時にはベベル下に貯留した涙液の幅からベベル幅を評価し,ベベルが角膜形状に適しているかどうかを判定する.円錐角膜眼は上下非対称性の突出を示すことが多いため,下方のベベルばかりを重要視すると,レンズ上方が角膜に食い込み,上皮障害や疼痛などを生じる要因となる.そのため,円錐角膜眼では下方のベベル幅をあまり重要視せず,上方と左右について,均一にC0.5~0.8Cmm程度のベベル幅が出ていることをしっかりと確認することがポイントとなる(図2).C■レンズケア円錐角膜眼はアレルギー性結膜炎を合併することが多く,レンズが汚れやすい傾向にある.また,眼鏡で視力が出にくいためか,通常であれば目視で気づけるほどに汚れたレンズや欠けたレンズを気づかずに使用している人が多い(図3).レンズの傷や汚れは角膜感染症の発症リスクを高めるため,円錐角膜眼では定期診察時にレンズ汚れを確認し,こすり洗いの重要性やレンズの取り扱い方法を丁寧に説明する.とくに多段カーブレンズはBCが小さく,こすり洗いがしにくいため,レンズ内面に汚れが堆積しやすい.そのため,多段カーブレンズを処方する際には,洗いにくい形状であることを説明したうえで,とくにCHCL内面を意識した洗浄を行うように指導する(図4).図3レンズ状態の確認診察時にはレンズの欠け(Ca),傷(Cb)にも注意する.図4HCLの洗浄方法こすり洗いの手法には,手のひら洗浄(Ca)と指先洗浄(Cb)がある.手のひら洗浄ではCHCLの外面の汚れは除去しやすいが内面の汚れが残りやすい,一方,指先洗浄ではCHCLの内面の汚れは除去しやすいが,外面の汚れが残りやすいという特徴がある.多段カーブレンズ装用者には,両洗浄方法を併用しつつ,指先洗浄をより長く行うように指導している.C■おわりに円錐角膜眼に対するCHCL処方は,やや煩雑というイメージをもつ人が多いだろう.しかし,実際には通常眼への処方と異なる点は少なく,前回・今回で紹介したポイントを押さえれば,けっしてむずかしいものではない.円錐角膜眼に対しても積極的にCHCLを処方し,満足度の高いコンタクトレンズ診療を行いたい.文献1)LeungKKY:RGPC.ttingCphilosophiesCforCkeratoconus.CClinExpOptom82:230-235,C1999