シグナル情報伝達を担うRNA修飾由来の小川亜希子新しい眼内液性因子RNA修飾とはRNAはA・U・G・CのC4種類の塩基,糖とリン酸から構成される核酸であり,遺伝情報の伝達を行いセントラルドグマの根幹的な役割を担う分子です.RNAに存在する約C150種類もの複雑な修飾が近年つぎつぎにみつかり,このCRNA修飾が翻訳後の新たな転写調節機構として着目されています(図1上).さらにCRNA修飾の異常によって疾患が発症するRNA修飾病という概念も新たに提唱されています.修飾されたCRNAが代謝されると,産物として修飾ヌクレオシドが生じます.修飾ヌクレオシドが細胞外液である血清や尿中へ排出され,その一部は病態により変動するバイオマーカーとして知られていましたが,生理活性意義については未解明でした.筆者は質量分析を用いた高感度かつ網羅的なCRNA修飾分析法である「RNAモドミクス法」(MODO-MICSはCmodi.cationにC-omicsを付けた造語)を代謝解析に最適化し1),さまざまな生物種の細胞外液中でモドミクス解析を行いました(図1中).すると,細胞外液中には実にさまざまな修飾ヌクレオシドが豊富に含まれていることがわかりました.ヌクレオシドのなかでも,たとえばアデノシンは,未修飾のアデノシンよりはるかに多くの修飾アデノシンが含まれており,血清のC94%,尿のC96%,そして房水のC90%が修飾アデノシンでした(図1下).とくに房水中の修飾ヌクレオシドの検出は世界で初めての報告となります.修飾ヌクレオシドは新しい眼内液性因子である修飾ヌクレオシドの受容体活性能を網羅的に調べたところ,修飾ヌクレオシドのなかでCmC6A(NC6-メチルアデノシン)がアデノシンCA3受容体に対する高い活性を有していることがわかり,その活性能は未修飾のアデノシンの約C10倍以上も強力でした2).既知のシグナル因子の多くは刺激に応じて変動するため,mC6Aが変動するかを調べたところ,細胞障害などの外的刺激が加わった際にCmC6Aが特異的に増えることがわかりました.mC6Aは生体内でアデノシンと独立したシグナル応答を惹起している可能性があります.アデノシンA3受容体はアレルギーを含む炎症にかかわるため,細胞・動物モデルを用いて調べたところ,mC6AはCI型アレルギー反応や炎症性サイトカインの産生を誘導していました2).今後の展望RNA修飾の代謝産物の一つであるCmC6Aが,生体内で受(85)C0910-1810/23/\100/頁/JCOPY東北大学加齢医学研究所モドミクス医学分野熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座細胞内のRNA修飾細胞外へ分泌mRNAtRNAAAA修飾ヌクレオシドrRNA代謝房水・質量分析装置硝子体血液尿intensityRNAモドミクス=modi.cation+omics125,000100,000m1Am1I75,000Um1Gm22G50,00025,000YDCICmGm2Gac4CGmAt6Am6Ams2t6A00.01.02.03.04.05.06.07.08.09.0min少量サンプルより安定して100種類以上のRNA修飾を網羅的に検出血清尿眼房水未修飾アデノシン修飾アデノシン94%96%90%われわれの体は修飾ヌクレオシドに満ちている図1細胞内外のRNA修飾とその検出法(文献C1,2より改変引用)容体を強力に活性化して生理作用・病的作用を起こすことを明らかにしました.アデノシンの生理作用が発見されて以来,約C90年ぶりに内在性に存在する強力なヌクレオシドを見いだしたことになります.mC6Aは房水中にも含まれており,さまざまな眼病態で変動する可能性があります.従来の概念に存在しない新しい眼内液性因子としての修飾ヌクレオシドの研究によって,まったく新しい核酸医薬開発につながることが期待されます.文献1)OgawaCA,CWeiFY:ProtocolCforCpreparationCandCmea-surementCofCintracellularCandCextracellularCmodi.edCRNACusingCliquidCchromatography-massCspectrometry.CSTARCProtocols2:100848,C20212)OgawaCA,CNagiriCC,CShihoyaCWCetal:N6-methyl-adenosine(m6A)isanendogenousA3adenosinereceptorligand.MolecularCell81:1-16,C2021あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023C663