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網膜色素変性とその他の網膜変性疾患に伴う 黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

網膜色素変性とその他の網膜変性疾患に伴う黄斑浮腫CystoidMacularEdemaAssociatedwithRetinitisPigmentosaandOtherRetinalDystrophies大石明生*はじめに網膜色素変性(retinitispigmentosa:RP)は,遺伝的な異常により視細胞が進行性に変性・脱落する疾患群である.一般に症状は夜盲や求心性視野障害から始まり,中心視野は後期まで保たれる.RPE65遺伝子の異常による一部の患者に対しては遺伝子治療が承認されているが,これも障害された視細胞を回復するものではなく,RPE65遺伝子と関連しない大多数の患者に対してはそもそも有効な治療がない.一方で,RPでは合併症として白内障や.胞様黄斑浮腫(cystoidCmacularedema:CME)を生じることがある.これらの合併症は治療介入の可能性があること,後期まで保たれる中心視野に影響することから臨床上重要である.本稿では,RPに伴うCCMEを中心に,他の網膜変性疾患に関連する黄斑所見について概説する.CI有病率,原因遺伝子など上記のように,RPは周辺部から網膜が障害され,黄斑部は比較的後期まで保たれる疾患であるが,黄斑部にも変化をきたすことはまれではない.既報では,細かいものまで含めれば患者の最大半数程度にCCMEが生じるとされている1)(図1).一方で,このCCMEは網膜静脈閉塞症や糖尿病黄斑症に伴うものと比較すると,.胞腔が内顆粒層に留まることも多く,視機能への影響は限定的なことも多い.たとえば,RPやCUsher症候群(Ushersyndrome:USH)でCCMEのある眼とない眼を単純に比較すると視力は同等,またはCCMEのない眼のほうがむしろ悪い傾向である2,3).これは,一定以上網膜萎縮が進行するとCCMEが生じにくくなる,つまりCCMEが存在することが,網膜組織がある程度保たれていることを示す指標になっていることが一つの理由と考えられる.また,CMEがある眼のみに限っても網膜厚は視力とは直接相関せず,重要なのはCellipsoidCzone(EZ)の状態である4).さらに,USHでC5年間経時的に変化をみた検討では,EZの障害の速度もCCMEの有無による差がなかったとされている3).このように,すべてのCMEが積極的な治療の対象になるわけではないということには留意しておく必要がある.RPはさまざまな原因遺伝子によって引き起こされること,それぞれの遺伝子のおもな働きが異なることを考えると,原因遺伝子によってCCMEの起こりやすさが異なっても不思議はない.最近まで特定の原因遺伝子とCMEの関連を報じた研究は乏しかったが,原因遺伝子の特定されたCRP-CME179人を扱った研究で,顕性遺伝を呈するCRHO,PRPF8,PRPF3でCCMEの頻度が高かった(58.75%)一方で,X染色体連鎖性のCRP2やRPGRでは低かった(3.9%)とされている5).他の報告でも,RHOを含む顕性遺伝の遺伝子でCCMEが多く,X染色体連鎖性のCRP2やCRPGRで少ないという傾向は認められている6).ただし,この結果を解釈するには考慮すべき点もある.上記のように,網膜萎縮が進行するとCCMEを認めなくなる.一般的にCX染色体連鎖性*AkioOishi:長崎大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕大石明生:〒852-8501長崎市坂本C1-7-1長崎大学医学部眼科学教室(1)(35)C1530910-1810/26/\100/頁/JCOPYab図1網膜色素変性(RP)に伴う.胞様黄斑浮腫(CME)の光干渉断層計(OCT)所見aのような内顆粒層に少しだけ.胞腔がある症例は少なくない.このような症例は治療の対象にはならない.Cbのようにはっきりした.胞腔があってもCellipsoidzone(EZ)が保たれていれば,僚眼と視力の差がないといったことはしばしば認められる.図2RPのある眼に加齢黄斑変性(AMD)と黄斑部新生血管(MNV)を生じた例RP眼でもCAMD発症により,またはCRPの合併症としてMNVを生じることがある.Ca:右眼初診時のCOCT所見.この写真のみでは一見わかりにくいが,中心部のみしか外顆粒層が残っておらず,眼底所見とあわせCRPとそれに併発したCAMDの診断となった.左眼はCCMEを伴っていた.Cb:この症例では右眼に抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬による治療を行い,視力はC0.2からC0.3に改善した.Cc:CMEを伴う左眼も視力は0.3であった.図3若年性網膜分離症の症例OCTで内顆粒層に連なる特徴的な網膜分離所見を認める.この症例では下方周辺部にも分離をきたしていたが(↓),幸い内層のみの分離で網膜.離には至っておらず,経過をみることとなった.図4RPに伴うCMEに対して炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)の内服および点眼を行った症例CMEが増悪し,視力がC0.6からC0.4まで低下,それまで読めていた新聞が読めなくなってきたとの訴えがあった.Ca:アセタゾラミド内服によってCCMEは改善し,視力もC0.6まで戻り新聞が読めるようになった.Cb:腎機能低下のため使用を中断するとCCMEが再発し視力もC0.4に悪化した.Cc:ブリンゾラミド点眼薬C1日C2回を試したが効果がなく,1日C5回まで回数を増やしたところ改善を認めた.Cd:視力はC0.4で変わらなかったが,また新聞が読めるようになった.が,とくに長期使用では副作用が問題になる.また,一度よくなっても再発はまれではない(図4).C2.ステロイド治療ステロイドの内服や点眼は一般的に効果が乏しい.炎症の関与が大きそうな患者では,トリアムシノロンTenon.下注射,海外ではデキサメタゾンインプラントなどが用いられることがあり,有効とする報告もある.ただし,眼圧上昇や白内障などの副作用もあり,長期の使用には問題がある.C3.抗VEGF療法一部の施設から抗CVEGF薬を使用して効果があったとする報告がある.しかし,RPに伴うCCMEではVEGF過剰発現は主因でなく,VEGFの神経栄養因子としての側面を考えると,これを阻害することの潜在的な害もありうる.高額な薬剤であり,硝子体内注射という侵襲的な投与経路もあわせ,通常は推奨されない.C4.その他の治療グリッドレーザー,閾値下レーザー,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalanti-in.ammatoryCdrugs:NSAIDs),硝子体手術,ルテインなどに関しての報告もあるが8),評価は定まっていない.とくに,レーザーや硝子体手術など侵襲的な手技については非常に慎重な判断が望まれる.CVIまとめRP患者のC10.30%に黄斑浮腫を認め,可逆的視力低下要因となりうる.主病態はCMuller細胞障害とCRPEポンプ機能低下によるものと考えられており,眼科でよく問題になる血管からの漏出によるものとは異なる.診断はおもにCOCTによるものとなり,治療効果の判定にも用いる.治療はCCAIが第一選択だが,適応外である.治療は形態的,機能的な反応をみながら行う.そもそも視機能にあまり影響していないこともあり過剰治療は避けるべきである.文献1)LiewCG,CStrongCS,CBradleyCPCetal:PrevalenceCofCcystoidCmacularoedema,epiretinalmembraneandcataractinreti-nitispigmentosa.BrJOphthalmolC103:1163-1166,C20192)MakiyamaY,OishiA,OtaniAetal:Prevalenceandspa-tialdistributionofcystoidspacesinretinitispigmentosa:CinvestigationCwithCspectralCdomainCopticalCcoherenceCtomography.RetinaC34:981-988,C20143)ArrigoCA,CAragonaCE,CAntropoliCACetal:TheCimpactCofCcystoidCmaculopathyCinCUSH2ACretinitispigmentosa:aCretrospective5-yearanalysis.RetinaC45:1959-1966,C20254)OishiA,OtaniA,SasaharaMetal:Photoreceptorinteg-rityandvisualacuityincystoidmacularoedemaassociat-edCwithCretinitispigmentosa.CEye(Lond)C23:1411-1416,C20095)TestaFKaraliM,BocciaRetal:CystoidmacularedemainCnon-syndromicCretinitispigmentosa:associationsCwithCcausativeCgenesCinCaClargeCcohort.CInvestCOphthalmolCVisCSciC66:5,C20256)AsbothB,SanroccoA,BeszterceiBetal:Cystoidmacu-larClesionsCinCinheritedCretinaldiseases:prevalence,Cchar-acteristics,andgeneticassociationsinahungariancohort.Genes(Basel)C16:1212,C20257)ReichenbachCA,CWurmCA,CPannickeCTCetal:MullerCcellsCasCplayersCinCretinalCdegenerationCandCedema.CGraefesCArchClinExpOphthalmolC245:627-636,C20078)StrongCS,CLiewCG,CMichaelidesM:RetinitisCpigmentosa-associatedCcystoidCmacularoedema:pathogenesisCandCavenuesCofCintervention.CBrCJCOphthalmolC101:31-37,C20179)HeckenlivelyCJR,CJordanCBL,CAptsiauriN:AssociationCofCantiretinalCantibodiesCandCcystoidCmacularCedemaCinCpatientsCwithCretinitisCpigmentosa.CAmCJCOphthalmolC127:565-573,C1999(39)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C157

ぶどう膜炎黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

ぶどう膜炎黄斑浮腫UveiticMacularEdema岩橋千春*はじめにぶどう膜炎は,虹彩・毛様体・脈絡膜からなるぶどう膜に炎症が生じた病態である.ぶどう膜炎の合併症のうち,視力低下につながる疾患としては,白内障,緑内障,硝子体混濁,ぶどう膜炎黄斑浮腫(uveiticmacularedema:UME),網膜上膜(epiretinalmembrane:ERM)形成などがある1).UMEはぶどう膜炎の視力障害の原因としてもっとも頻度が高く,中間部,後部,汎ぶどう膜炎の約C40%に発症すると報告されている2).2019年に報告された国際的な文献レビュー論文では,UMEは高齢者,中間部ぶどう膜炎や汎ぶどう膜炎,罹病期間が長い場合に多くみられると報告されている3).CI病態ぶどう膜炎による眼内炎症により,サイトカインなどの炎症性メディエーターが誘導され,網膜組織の恒常性を維持するために重要な血液網膜関門(blood-retinalbarrier:BRB)の破綻が生じる.BRBは網膜血管内皮細胞のタイトジャンクションによる内側CBRBと,網膜色素上皮細胞より構成される外側CBRBからなり,これらが破綻すると,血管透過性亢進により血漿成分あるいは間質液が漏出し,網膜内あるいは網膜下に貯留して黄斑浮腫(macularedema:ME)となる.UMEでは,インターロイキン(interleukin:IL)-6,IL-8,腫瘍壊死因子(tumorCnecrosisfactor:TNF)C-aの血清および前房水中での上昇4)や,可溶性CIL-6受容体,BcellactivatingfactorbelongtotheTNFfamilyの硝子体液中での上昇5)などが報告されており,UMEに関与する炎症メディエーターである可能性がある.CIIMultimodalimagingUMEの診断には,光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)による検査が非侵襲で検出可能であり,再現性が高く高感度であるため,臨床で広く用いられている6).UMEは形態から網膜内に低反射の.胞様の領域が存在するCcystoidspaces(.胞様網膜浮腫),小さな低反射域を伴う網膜厚の増加と網膜層がスポンジ状に見える外観を呈するびまん性網膜肥厚(di.usethickening),漿液性網膜.離(serousCretinalCdetach-ment:SRD)などに分類される3).これらは単独でみられることもあれば,同時に存在することもあり,視機能予後や治療反応性に関連をもつ可能性が示唆されている7).網膜厚測定による定量的な評価も治療効果の判定に有用であり,黄斑マップ解析をみると浮腫が改善している様子を捉えるのにわかりやすい(図1).フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)は侵襲的な検査ではあるが,黄斑部の血管漏出,血管炎,脈絡膜新生血管,虚血領域の検出に有用である(図2).また,MEを呈する他疾患との鑑別にも有用である.CIII治療UMEの治療にあたっては,まず診断が重要である.*ChiharuIwahashi:近畿大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕岩橋千春:〒589-8511大阪狭山市大野東C377-2近畿大学医学部眼科学教室(1)(29)C1470910-1810/26/\100/頁/JCOPYabc図1黄斑マップ解析カラーマップ表示により経時的な変化が捉えやすい.a:治療前.b:トリアムシノロンCTenon.下投与C2週間後.Cc:トリアムシノロンCTenon.下投与C2カ月後.図2フルオレセイン蛍光造影網膜血管からの色素漏出,視神経乳頭過蛍光,黄斑部の花弁状の色素貯留がみられる.図3梅毒性ぶどう膜炎による黄斑浮腫a:前医でリアムシノロンCTenon.下投与後.黄斑浮腫と軽度の硝子体混濁がみられる.Cb:抗菌薬内服治療後(aのC2カ月後).黄斑浮腫と硝子体混濁はともに改善している.図4トリアムシノロンTenon.下投与前後のOCT像a:治療前..胞様網膜浮腫と軽度の漿液性網膜.離がみられる.b:治療C2カ月後..胞様黄斑浮腫と漿液性網膜.離の改善がみられる.図5硝子体手術を行ったぶどう膜炎黄斑浮腫a:手術前.網膜上膜による牽引がみられる.硝子体混濁により画像が不鮮明である.b:手術後.黄斑浮腫の改善がみられる.ある.抗CTNF-a薬はCBehcet病によるCUMEに対しては有効であったが,サルコイドーシスによるCUMEに対しては有効でなかったという報告がわが国でなされている22).また,わが国では保険適用外であるが,抗CIL-6薬であるトシリズマブの有効性と安全性の評価を目的として米国で行われた前向き試験であるCSTOP-UveitisStudyでは,トシリズマブのC4週毎静脈内投与により治療開始6カ月後に中心窩網膜厚の減少および視力改善が得られたこと,UMEだけでなく,硝子体混濁も約半数の症例で改善したことが報告されている23).また,Behcet病によるCUMEに対する抗CTNF-a薬とトシリズマブの治療効果を比較した後ろ向き試験では,両薬剤ともに有効であるが,抗CTNF-a薬に抵抗性の症例でトシリズマブが有効であったとの報告もある24).わが国でも今後の保険適用が望まれる.CVIIIその他ERMがある場合にはCUMEに対する薬物治療への反応が悪くなるという報告があることから25),薬物治療以外に硝子体手術によりCERMを除去し,ERMによる牽引を解除することはCUMEの治療となりうる.また,硝子体手術は牽引解除のみならず炎症メディエーターのクリアランスにもつながり,解剖学的な改善は限定的であるが,視力の改善が得られることも報告されている26).UMEに対する硝子体手術は,牽引要素が明確な患者(図5),硝子体混濁が視機能に影響する患者,薬物治療に抵抗する患者で,炎症の十分なコントロールを前提として検討される治療選択肢となる.文献1)JonesNP:TheCManchesterCuveitisclinic:theC.rstC3000Cpatients,2:uveitisCmanifestations,Ccomplications,CmedicalCandCsurgicalCmanagement.COculCImmunolCIn.ammC23:C127-134,C20152)RothovaA,SchultenMSS,Tre.ersWFetal:CausesandfrequencyCofCblindnessCinCpatientsCwithCintraocularCin.ammatorydisease.BrJOphthalmolC80:332-336,C19963)AccorintiM,OkadaAA,SmithJRetal:EpidemiologyofmacularCedemaCinCuveitis.COculCImmunolCIn.ammC27:C169-180,C2019C4)vanCKooijCB,CRothovaCA,CRijkersCGTCetal:DistinctCcyto-kineCandCchemokineCpro.lesCinCtheCaqueousCofCpatientsCwithuveitisandcystoidmacularedema.AmJOphthalmolC142:192-194,C20065)TakedaA,HasegawaE,YawataNetal:Increasedvitre-ousClevelsCofCBCcellCactivationfactor(BAFF)andCsolubleCinterleukin-6CreceptorCinCpatientsCwithCmacularCedemaCdueCtoCuveitisCrelatedCtoCBehcet’sCdiseaseCandCsarcoidosis.CGraefesArchClinExpOphthalmolC260:2675-2686,C20226)KoronisCS,CStavrakasCP,CBalidisCMCetal:UpdateCinCtreat-mentCofCuveiticCmacularCedema.CDrugCDesCDevelCTherC13:667-680,C20197)CicinelliMV,GerosolimaC,ScandalePetal:Clinicalandimagingbiomarkersofresponsetointravitrealdexametha-soneCimplantCinCeyesCwithCnon-infectiousCuveiticCmacularedema.Eye(Lond)C38:910-916,C20248)AllegriCP,CMurialdoCU,CPeriCSCetal:Randomized,Cdouble-blind,Cplacebp-controlledCclinicalCtrialConCtheCe.cacyCofC0.5%CindomethacinCeyeCdropsCinCuveiticCmacularCedema.CInvestOphthalmolVisSci55:1463-1470,C20149)LederCHA,CJabsCDA,CGalorCACetal:PeriocularCtriamcino-loneCacetonideCinjectionsCforCcystoidCmacularCedemaCcom-plicatingCnoninfectiousCuveitis.CAmCJCOphthalmolC152:C441-448.e2,C201110)MaedaCY,CIshikawaCH,CNishikawaCHCetal:IntraocularCpressureCelevationCafterCsubtenonCtriamcinoloneCacetonideinjection;MulticenterCretrospectiveCcohortCstudyCinCJapan.PLoSOneC14:e0226118,C201911)HiranoY,ItoT,NozakiMetal:Intraocularpressureele-vationfollowingtriamcinoloneacetonideadministrationasrelatedCtoCadministrationCroutes.CJpnCJCOphthalmolC53:C519-522,C200912)CallananDG,Je.eGJ,MartinDFetal:Treatmentofpos-teriorCuveitisCwithC.uocinoloneCacetonideimplant:three-yearCclinicalCtrialCresults.CArchCOphthalmolC126:1191-1201,C200813)ThorneCJE,CSugarCEA,CHolbrookCJTCetal:PeriocularCtri-amcinoloneCvsCintravitrealCtriamcinoloneCvsCintravitrealCdexamethasoneimplantforthetreatmentofuveiticmacu-laredema:thePeriOcularvsINTravitrealcorticosteroidsforCuveitcCmacularedema(POINT)trial.COphthalmologyC126:283-295,C201914)YehCS,CKhuranaCRN,CShahCMCetal;PEACHTREECStudyInvestigators:E.cacyandsafetyofsuprachoroidalCLS-TACforCmacularCedemaCsecondaryCtoCnoninfectiousCuve-itis:phaseC3CramdomizedCtrial.COphthalmologyC127:948-955,C202015)WeissCK,CSteinbruggerCI,CWegerCMCetal:IntravitrealCVEGFClevelsCinCuveitisCpatientsCandCtreatmentCofCuveiticCmacularCoedemaCwithCintravitrealCbevacizumab.CEye(Lond)23:1812-1818,C200916)TaylorCSR,CHabot-WilnerCZ,CPachecoCPCetal:IntreocularCmethotrexateCinCtheCtreatmentCofCuveitisCandCuveiticCcys-(33)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C151’C’C-

黄斑浮腫を伴う加齢黄斑変性と鑑別疾患

2026年2月28日 土曜日

黄斑浮腫を伴う加齢黄斑変性と鑑別疾患MacularEdemaAssociatedwithAge-RelatedMacularDegenerationandItsMimics片岡恵子*はじめに新生血管型加齢黄斑変性(neovascularage-relatedmaculardegeneration:nAMD)は脈絡膜から生じた黄斑新生血管(macularneovascularization:MNV)が網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)下に伸展する1型MNV,RPEを穿破し網膜下に進展する2型MNVと,網膜血管から生じた網膜内新生血管が網膜下やRPE下に伸展していく3型MNVがある.病的血管であるMNVは正常な血管と比べ脆弱であり,容易にMNVからの滲出を生じる.MNVからの滲出は.uidの貯留や硬性白斑,出血として眼底写真および光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)で捉えることができる.MNVの存在部位やRPEの破綻などから滲出が生じる部位は異なってくるため,病変の広がりをイメージしながら画像を読影するのがポイントである.以下,症例ごとに黄斑浮腫〔網膜内液(intraretinal.uid:IRF)〕を伴うnAMDとその鑑別疾患について画像を読み解いていく.I黄斑浮腫を伴うnAMD①1型MNVはRPE下に存在するので,滲出が生じるとRPE下液(sub-RPE.uid)が生じることが多い.Sub-RPE.uidがめだたずに網膜下液(subretinal.uid:SRF)を生じることもしばしば目にする.1型MNVで黄斑浮腫を伴うことは多くないが,炎症などによりRPEと網膜の癒着が生じると1型MNVからの.uidが癒着部位を通過して直接網膜内へ流入することで黄斑浮腫が生じる.2型MNVはRPE上にMNVが伸展しているため,SRFに加えフィブリンや出血による網膜下高輝度物質(subretinalhyperre.ectivemate-rial:SHRM)がみられることが多い.さらに,MNVが網膜内に伸展したり,MNVと網膜の癒着が生じるとMNVからの.uidは網膜内へ直接流入し黄斑浮腫を生じる.これらをイメージしながら画像を見ていく.図1は,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvas-culopathy:PCV)の症例である.眼底カラー写真で網膜出血や硬性白斑がみられ,活動性が高いことがうかがえる(図1a).OCTでは中心窩を横切る縦方向のスキャンで中心窩下に及ぶSRFと中心窩近傍に黄斑浮腫,つまりIRFがみられる(図1b).OCTのスキャン位置を上方にずらしたスキャンでは黄斑浮腫とSRF,急峻に立ち上がる網膜色素上皮.離(pigmentepithelialdetachment:PED)がみられる.PEDにはノッチと内部にリング状の構造物がみられる(図1c).OCTにおけるリング状の構造物は,ポリープ状病変として特異度の高い所見である1).この時点で視力は右眼(0.8),活動性のあるPCVと診断し,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)療法を開始した.抗VEGF薬を毎月計7回投与した時点でSRFは消失したが,PEDはまだ大きく(図1e),その後慎重に投与間隔を調整し,抗VEGF薬16回目投与時点のOCTにてPEDは縮小,PED内部のリング状構造物も消失して硬*KeikoKataoka:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕片岡恵子:〒188-8611東京都三鷹市新川6020-2杏林大学医学部眼科学教室(1)(23)1410910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1網膜浮腫を伴うポリープ状脈絡膜血管症の1例a:出血と硬性白斑を伴う橙赤色病変がみられる.b:中心窩を通る縦方向のOCT画像.黄斑浮腫(.)と中心窩下にも網膜下液(SRF)が及んでいる(*).c:カラー眼底写真の矢印に該当する部分のOCTでは,黄斑浮腫(.)とSRF(*)がみられる.急峻に立ち上がる網膜色素上皮.離(PED)はノッチ()を伴い,PED内部には血管腔を示唆するリング状構造物がみられる.d,e:抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬を7回毎月投与後のカラー眼底写真(d)とOCT(e)である.黄斑浮腫とSRFは消失したが,PEDとPED内部のリング状構造物はまだ残存している().f,g:抗VEGF薬16回目の投与時点のカラー眼底写真(f)とOCT(g)である.硬性白斑は減少し(f),黄斑浮腫,SRFは完全に消失し,PEDの丈の減少に加え,内部のリング状構造物やsub-RPE.uidを示唆する低輝度領域は消失している.図2黄斑浮腫を伴う3型黄斑新生血管a:カラー眼底写真では,網膜出血を周囲に伴う淡い赤色病変(.)と大型ドルーゼン(),網膜下ドルーゼン様沈着物(SDD)がみられる.b:中心窩を通る水平スキャンでは黄斑浮腫がみられる(.).c:中心窩を通る垂直スキャンでは中心窩の上方に黄斑浮腫(.)と網膜色素上皮下液(sub-RPE.uid)を伴うPED()がみられる.d:スキャンの位置を中心窩より上方へずらすと,網膜色素上皮(RPE)の断裂(bumpsign)が捉えられる(.).OCTの近赤外線画像上のの部位はaの.と一致する.e:Bumpsignの部位のOCTAのBスキャンでは,RPEの断裂部位に網膜外層から続く血流シグナルがみられる(.).f:抗VEGF療法の1カ月後のOCTでは,網膜浮腫とsub-RPE.uidは消失している.図3黄斑浮腫を伴う慢性中心性漿液性脈絡網膜症の1例a:カラー眼底写真ではRPE障害を示唆する色素異常がみられる.b:中心窩を横切るOCTでは黄斑浮腫と中心窩下にSRFがみられる.c:OCTのスキャンを中心窩より上方へずらすとRPEの欠損部位と,その後方の脈絡膜ではOCTの輝度の上昇がみられる(に挟まれた部位).d:眼底自発蛍光では低蛍光領域があり,RPEの欠損部位と一致する(.).図4毛細血管瘤による黄斑浮腫がみられる陳旧性網膜静脈分枝閉塞症の1例a:カラー眼底写真では硬性白斑()と小さな血管病変がみられる(.).b:中心窩を通る垂直スキャンのOCTでは黄斑浮腫(.)とSRF(*)がみられる.c:中心窩を通る水平スキャンでは黄斑浮腫(.)とSRF(*)に加えて,網膜内にリング上の構造物がみられるが(),PEDはない.d:FAでは視神経乳頭から下耳側に向かう網膜静脈の蛇行と狭細化,上下の網膜静脈の吻合,網膜血管の拡張と大きな毛細血管瘤()がみられる.e,f:毛細血管瘤へ直接光凝固を施行後3カ月のカラー眼底写真とOCTである.硬性白斑は一時的に増加しているが(e),黄斑浮腫およびSRFは消失し,リング状構造物の内腔も消失している()ことから,光凝固が著効したことがわかる.

網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫MacularEdemaAssociatedwithRetinalVascularDiseases長谷川泰司*はじめに網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫の基本病態は,内側血液網膜関門の破綻によって生じる滲出性変化である.そのため,網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫の形態パターンとしては,①網膜内浮腫が単独で存在するパターンと②網膜内の滲出性変化が網膜下にまで及び,網膜内浮腫に加えて漿液性網膜.離が合併するパターンの二つが存在する.つまり,網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫では,外側血液網膜関門障害の代表疾患である急性中心性漿液性脈絡網膜症のように漿液性網膜.離が単独で生じるということはない.日々の臨床現場では,検眼眼鏡による眼底検査に加えて光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)やフルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)を活用し滲出性所見の確認を行うが,原因となる疾患を探っていく過程で,内側および外側血液網膜関門のどちらが障害されているのか,または両方の障害なのかを常に考え,鑑別診断を行うことが重要となる.今回は代表的な網膜血管疾患である網膜静脈閉塞症(retinalCveinocclusion:RVO)と黄斑部毛細血管拡張症(maculartelangiectasia:MacTel)に伴う黄斑浮腫をとりあげ,鑑別が必要な疾患についても解説する.CIRVOとMacTelに伴う黄斑浮腫の病態RVOは,その閉塞部位によって網膜静脈分枝閉塞症(branchRVO:BRVO)と網膜中心静脈閉塞症(centralRVO:CRVO)に分類され,BRVOは網膜動静脈交叉部で,CRVOは視神経乳頭篩状板付近で動脈による静脈圧排によって血栓が形成され静脈閉塞を発症すると考えられている.加齢,高血圧,脂質異常症などの動脈硬化がリスクファクターとなるが,CRVOの一部では若年層での発症があり,そのような例では乳頭血管炎や凝固能亢進など内科疾患が背景にある場合がある.日本で行われたCHisayamaCstudyでは,RVOのC40歳以上の有病率はC2.14%と報告されており,その内訳をみるとBRVOはC1.97%,CRVOはC0.17%でCBRVOが約C10倍高い1).BRVOでは,急性期に病変全体から滲出性変化がみられ,OCTでは病変から中心窩にかけて黄斑浮腫が広がることが多い(図1a).BRVO発症からC1年以上経過する陳旧期になると中心窩近傍に毛細血管瘤が生じ,それが原因で黄斑浮腫をきたすことがある.そのような患者では,中心窩近傍に限局する黄斑浮腫の形態をとることが多い(図1b).CRVOに伴う黄斑浮腫は,BRVOのように滲出性変化の分布に偏りがなく黄斑を中心に広がる形態となる(図1c).MacTelは特発性に黄斑部の毛細血管拡張を呈する症候群の総称であり,type1とCtype2がある.MacTelCtype1とCtype2には,FAで中心窩周囲の毛細血管拡張と蛍光漏出が確認されるという共通点があり,毛細血管拡張症というカテゴリーでまとめられているが,それぞれの病態生理はまったく異なっており,別々の疾患であるという点に留意する必要がある.MacTeltype1は,*TaijiHasegawa:東京女子医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕長谷川泰司:〒162-8666東京都新宿区河田町C8-1東京女子医科大学眼科学教室(1)(13)C1310910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1網膜静脈閉塞症(RVO)に伴う黄斑浮腫の特徴a:網膜静脈分岐閉塞症(BRVO)に伴う黄斑浮腫は,病変から中心窩にかけて浮腫が広がり,OCT水平断よりも垂直断でその特徴がわかりやすい.Cb:陳旧性CBRVOに伴う黄斑浮腫(白線化した静脈,)は,中心窩近傍に限局する浮腫となりやすく,毛細血管瘤が原因となることが多い.c:網膜中心静脈閉塞(CRVO)に伴う黄斑浮腫は,黄斑を中心に広がる形態となる.図2黄斑部毛細血管拡張症(MacTel)type1MacTeltype1は片眼性で,中心窩周囲に毛細血管瘤や毛細血管拡張がみられ,それが原因で黄斑浮腫を生じる.血管変化が耳側縫線をまたいで上下に分布するのが特徴である.抗CVEGF療法を行っても黄斑浮腫はほとんど軽減していない.図3MacTeltype2左眼(Cb)は中心窩耳側の網膜色調が灰色である.Cc,d:FAでは両眼ともに中心窩耳側の毛細血管の拡張と蛍光漏出がみられる.Ce,f:OCT水平断では中心窩耳側のCellipsoidzoneの断裂と内境界膜を前壁としたCinnerlamellarcystとよばれる.胞様変性所見がみられる.f図4アーケード血管外のBRVOと網膜細動脈瘤a~e:アーケード血管外のCBRVOに伴う黄斑浮腫.FA(Cb)では病変全体から旺盛な蛍光漏出がみられる.網膜出血が濃いため,FAよりもCIAのほうが網膜血管を鮮明に確認でき,静脈の充盈遅延(Cc,)と動静脈交叉部位での静脈閉塞(Cd,)がみられる.OCT垂直断(Ce)では外網状層の網膜内浮腫と漿液性網膜.離がみられる.Cf,g:網膜細動脈瘤からの滲出.網膜表層出血と網膜下出血が広がっている.網膜出血が濃いが,IA(Cg)で細動脈瘤が確認できる.OCT垂直断(Ch)では細動脈瘤付近に外網状層の網膜内浮腫があり,黄斑下には丈の高い漿液性網膜.離がみられる.図5高血圧網脈絡膜症a,b:両眼に軟性白斑と硬性白斑.小さな網膜表層出血がみられる.c,d:OCT水平断では,右眼は漿液性網膜.離がみられ,左眼は乳頭黄斑間の網膜内浮腫と黄斑下の漿液性網膜.離がみられる.高血圧の内科治療を自己中断しており,眼科受診時の収縮期血圧はC220CmmHgであった.Ce,f:内科で降圧療法を再開し,1カ月後には滲出性所見は消失している.図6アーケード血管外のBRVOに伴う黄斑浮腫の治療反応パターン(図4の症例)抗CVEGF療法C1カ月後には網膜内浮腫は消失している.しかし,漿液性網膜.離はわずかに増えている.網膜内浮腫の消失は,抗CVEGF療法によって網膜内への新たな滲出が抑制されたためである.漿液性網膜.離が増えたのは,網膜内に存在していた大量の滲出液が黄斑下に移動してきたためと考えられる.その後は無治療で漿液性網膜.離は小さくなり,抗CVEGF療法C3カ月後には漿液性網膜.離は消失した.当科初診時12カ月後図7陳旧性BRVOに伴う黄斑浮腫a~d:当科初診時.a:白線化した血管()がみられ,黄斑に硬性白斑が散在しており,中心窩鼻側に毛細血管瘤()がみられる.b,c:FAでは狭窄し蛇行した静脈枝()があり,その末梢側に毛細血管瘤()がみられる.Cd:OCTでは黄斑浮腫がみられる.前医では複数回の抗CVEGF療法を実施しても,黄斑浮腫の軽減が得られなかった.毛細血管瘤に対して複数回の網膜光凝固を実施し,12カ月後(Ce,f)には毛細血管瘤および黄斑浮腫は消失している.–

糖尿病黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

糖尿病黄斑浮腫DiabeticMacularEdema野崎実穂*はじめに糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)は,糖尿病による細小血管障害に起因する血管からの漏出が原因の浮腫であり,視力障害の原因となる1).わが国の糖尿病患者の失明(身体障害者手帳取得)原因のうち,3.6級のいわゆるロービジョンに相当するなかでは,DMEが原因の約3割を占めている2).DMEを正しく診断し,病態に基づいた治療方針を立てることは,失明を防ぐためにも重要である.本稿では,DMEの病態,診断,鑑別診断および治療について述べる.IDMEの病態DMEの有病率は,1型糖尿病で4.2.7.9%,2型糖尿病で1.4.12.8%と報告されている3).また,わが国において大規模保険請求データを用いて行われた調査では,糖尿病患者の約2.4%にDMEが認められていた4).一般的に,糖尿病網膜症の重症度が進行するにつれてDMEの有病率も上昇する.しかし,単純糖尿病網膜症(軽症非増殖糖尿病網膜症)であってもDMEを合併する患者が少なからず存在することは,臨床上注意を要する点である(図1)5).DMEは,慢性的な高血糖により引き起こされる網膜血管内皮細胞障害(網膜血管関門の破綻)からの血管透過性亢進のほかに,毛細血管瘤からの漏出,硝子体牽引,組織の膠質浸透圧の上昇,網膜色素上皮障害(網膜血管関門の破綻),炎症性サイトカインの増加など,複数の病態が関与する多因子性疾患である(図2).IIDMEの診断検眼鏡で認められる黄斑部の網膜肥厚,硬性白斑,点状・斑状出血などがDME診断の手がかりとなるが,浮腫の程度や局在を定量的に評価することは困難である(図3).一方で,光干渉断層計(opticalcoherencetomog-raphy:OCT)は,網膜厚の定量評価や浮腫の局在,形態を客観的に把握できる非侵襲的検査であり,現在のDME診療において不可欠な検査法といえる.OCTにより,中心窩を含む浮腫(center-involvedDME:CI-DME)(図3)と,中心窩を含まない浮腫(non-center-involvedDME:non-CI-DME)(図4)の分類が可能となり,治療開始の判断に有用である1).EarlyTreat-mentDiabeticRetinopathyStudy(ETDRS)では,網膜肥厚部位と硬性白斑の部位から,治療を開始しない場合視力が低下する浮腫をclinicallysigni.cantmacularedema(CSME,わが国の診療ガイドラインでは「視力をおびやかす浮腫」1))と定義しており,non-CI-DMEでCSMEは局所凝固のよい適応とされている(図4)6).また,OCTでは,スポンジ状網膜肥厚,.胞様黄斑浮腫,漿液性網膜.離など,DMEの形態的特徴を評価できるほか,硝子体黄斑牽引や網膜上膜(epiretinalmembrane:ERM)などの硝子体網膜界面異常の有無も同時に確認できる(図3,4).また,OCTで観察できる網膜内層構造の障害(disorganizationofretinalinner*MihoNozaki:名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科・レーザー治療センター〔別刷請求先〕野崎実穂:〒464-8547名古屋市千種区若水1-2-23名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科・レーザー治療センター(1)(3)1210910-1810/26/\100/頁/JCOPY糖尿病黄斑浮腫を有する患者の割合(%)100777562503925180軽症非増殖中等症非増殖重症非増殖増殖糖尿病網膜症糖尿病網膜症糖尿病網膜症糖尿病網膜症図1糖尿病網膜症重症度別の糖尿病黄斑浮腫(DME)を有する図2糖尿病黄斑浮腫(DME)の病態患者の割合DMEは多因子疾患である.単純糖尿病網膜症(軽症非増殖糖尿病網膜症)であってもDMEを合併する症例は存在する.(文献5より改変引用)-cd図3中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)73歳,男性.a:カラー眼底写真では,網膜出血,硬性白斑が黄斑部にみられる.b:OCTmapでは,網膜の肥厚部位が中心窩を含んでおり,CI-DMEと判定できる.c:OCTBスキャンでは,網膜上膜を伴った.胞様黄斑浮腫を認める.d:中心網膜厚(ILM-RPE)は640μmである.図4中心窩を含まない浮腫(non-CI-DME)78歳,女性.左眼視力は(0.8)と比較的良好である.a:カラー眼底写真では黄斑耳側に輪状に硬性白斑が沈着し,その中心に網膜出血を認める.b:OCTmapでは,網膜肥厚部位は中心窩にかかっていない.c:OCTBスキャンでは,中心窩下に漿液性網膜.離と,黄斑耳側に網膜肥厚,高輝度点を認める.中心窩から1乳頭径以内にある1乳頭径大以上の網膜肥厚がみられる黄斑浮腫で,視力をおびやかす黄斑浮腫(CSME)である.d:フルオレセイン蛍光造影(FA)で,輪状の硬性白斑の毛細血管瘤から強い漏出があり(),局所凝固が有用である.図5図3の症例のFA,IA,OCTAa:フルオレセイン蛍光造影(FA)早期に中心窩周囲および黄斑部に多数の毛細血管瘤を認める.b:FA後期では漏出が強く中心窩近傍の毛細血管瘤以外は同定が困難である.c:インドシアニングリーン蛍光造影(IA)早期に多数の毛細血管瘤を認める.d:IA後期には黄斑鼻側に毛細血管瘤を認め,その分布は図3bのOCTmapの網膜肥厚部位と一致している.e,f:OCTA.表層毛細血管層(e)に比較し深層毛細血管層(f)に毛細血管瘤を認めるが(.),その数はFA早期(a)に認められる毛細血管瘤よりはるかに少ない.図6黄斑部毛細血管拡張症1型61歳,男性.抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬に反応しない黄斑浮腫として紹介された.カラー眼底写真(Ca)では輪状に沈着する硬性白斑に囲まれて網膜出血を認める.黄斑部以外の網膜には点状出血は認めない.OCTmap(Cb)では中心窩を含む広範囲に網膜肥厚を認める.OCTBスキャン(Cc)では.胞様変化を認める.FA早期(Cd)では黄斑とくに耳側に多数の毛細血管瘤を認め,後期(Ce)には旺盛な漏出を認める.IA早期(Cf)でも耳側を中心に毛細血管瘤を認め,後期(Cg)には輪状の硬性白斑による蛍光ブロックに囲まれた毛細血管瘤がはっきり同定できる.図7黄斑部分枝網膜静脈閉塞症(MacularBRVO)による黄斑浮腫59歳,男性.a:カラー眼底写真では黄斑部に網膜出血をわずかに認める以外に出血はみられない.b:OCTmapで中心窩にかかる黄斑浮腫を認める.c:OCTA.網膜表層毛細血管層では毛細血管瘤を認めない.d:網膜深層毛細血管層では黄斑上方で毛細血管瘤血管の拡張や脱落を認める().e:OCTAのフローシグナルを示すCBスキャンでは,.胞に隣接して毛細血管瘤(.)を認める.NPDR網膜硝子体界面異常なしNPDR:non-proliferativediabeticretinopathy(非増殖糖尿病網膜症),PDR:proliferativediabeticretinopathy(増殖糖尿病網膜症),CSME:clinicallysigni.cantmacularedema(視力をおびやかす黄斑浮腫),IVTA:トリアムシノロンアセトニド硝子体内注射,STTA:トリアムシノロンアセトニド後部Tenon.下注射.図8わが国におけるDME治療フローチャートの1例(文献C12より改変引用)cd図9ステロイド治療が有効であったhyperre.ectivefociを認めるDME(a,b)と硝子体手術が有効であった網膜上膜を伴うDME(c,d)a,b:80歳,男性.視力(0.3).a:第一世代抗CVEGF薬を複数回注射しても改善がみられないため紹介受診..胞とChyperre.ectivefociを多数認める.Cb:トリアムシノロンアセトニド注射を行い浮腫は改善.視力(0.5)に改善した.Cc,d:65歳,男性.Cc:第一世代抗CVEGF薬を複数回注射したが,浮腫が改善せず,スポンジ状浮腫,漿液性網膜.離,網膜上膜を認めた.視力(0.1).d:硝子体手術施行後C4カ月.視力(1.0)に改善し浮腫も改善した.局所凝固(とくにCSME)中心窩外硝子体手術(or抗VEGF薬)網膜硝子体界面異常あり中心窩を含む有水晶体眼図10透析導入により浮腫が消失したDME61歳,男性.2カ月ごとに抗CVEGF薬治療を行っていた(Ca)が,透析導入後に黄斑浮腫の再発は認めなくなった(Cb).

序説:黄斑浮腫を正しく診断・治療する

2026年2月28日 土曜日

黄斑浮腫を正しく診断・治療するCorrectDiagnosisandManagementofMacularEdema古泉英貴*辻川明孝**黄斑浮腫は,糖尿病網膜症,網膜血管疾患,加齢黄斑変性,ぶどう膜炎,網膜変性疾患など,さまざまな疾患に合併しうる病態であり,日常診療において眼科医がもっとも頻繁に遭遇する所見の一つである.一方で,黄斑浮腫はあくまで「所見」であり疾患名ではなく,その背景にある病態を正しく理解しないまま診療を進めることは,誤診や不適切な治療介入につながる危険性をはらんでいる.血管からの滲出,炎症,硝子体牽引,網膜色素上皮機能障害,さらに漏出を伴わない構造変化まで,多彩な機序が「黄斑浮腫」という共通の形態を呈しうる点に,この病態のむずかしさがある.近年では,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)を中心とした画像診断技術の進歩により,黄斑浮腫の形態や局在,背景病態を詳細に評価することが可能となった.さらに,フルオレセイン蛍光造影や光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)を組み合わせたマルチモーダルイメージングにより,血管漏出の有無や虚血,微細な血管異常まで把握できるようになっている.その一方で,画像所見が詳細化するほど,形態的変化と病態の解釈を混同しやすくなっている側面も否定できない.すなわち,画像上「浮腫様」に見える所見が,必ずしも治療介入を要する滲出性浮腫とは限らないという認識が,これまで以上に重要となっている.このような背景のもと,「浮腫があるから治療する」のではなく,「なぜ浮腫が生じているのか」「本当に治療すべき浮腫なのか」を見きわめたうえでマネージメントを行う姿勢が,現在の黄斑浮腫診療において強く求められている.本特集は,網膜専門医のみならず,一般眼科医や若手医師が実臨床で黄斑浮腫に直面した際に,その原因や病態を正しく整理し,合理的な診断と治療につなげられることを目的として企画した.まず,糖尿病黄斑浮腫については,野崎実穂先生(名古屋市立大学東部医療センター)により,病態,診断,鑑別,治療戦略を包括的に解説していただいた.続いて,網膜血管病変に伴う黄斑浮腫については,長谷川泰司先生(東京女子医科大学)により,網膜静脈閉塞症および黄斑部毛細血管拡張症(mac-ulartelangiectasia:MacTel)を中心に,鑑別を含めた実践的な解説がなされている.加齢黄斑変性およびその類縁疾患に伴う黄斑浮腫については,片岡恵子先生(杏林大学)により,網膜内液を伴う新生血管型加齢黄斑変性や慢性中心性漿液性脈絡網膜症など,診断に迷いやすい病態を画像読影の視点から整理していただいた.ぶどう膜炎*HidekiKoizumi:琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座**AkitakaTsujikawa:京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(1)119

正常眼圧緑内障患者に対するオミデネパグイソプロピルと 他の点眼薬の眼圧下降効果の比較

2026年1月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(1):108.113,2026c正常眼圧緑内障患者に対するオミデネパグイソプロピルと他の点眼薬の眼圧下降効果の比較東條直貴*1,2大塚光哉*1新田康人*1林篤志*1*1富山大学学術研究部医学系眼科学講座*2雄山アイクリニックCComparisonoftheIntraocularPressureLoweringE.ectsbetweenOmidenepagIsopropylandOtherGlaucomaMedicationsforNormalTensionGlaucomaPatientsNaokiTojo1,2),MitsuyaOtsuka1),YasuhitoNitta1)andAtsushiHayashi1)1)DepartmentofOphthalmologyGraduatteSchoolofMedicineandPharmaceuticalSciencesUniversityofToyama,2)OyamaEyeClinicC目的:正常眼圧緑内障未治療患者に対する,オミデネパグイソプロピル(OMDI)と他の緑内障点眼薬の眼圧下降効果を比較する.対象および方法:多施設後ろ向き研究である.点眼治療を開始してC3カ月経過を追うことができた未治療の正常眼圧緑内障(NTG)患者C175名を対象とした.初回点眼薬として,OMDIと比較対象にした点眼は,ラタノプロスト,タフルプロスト,チモロール,カルテオロールのC4種類とし,眼圧下降効果を比較検討した.結果:3カ月後のそれぞれの眼圧下降率は,OMDI9.2%,ラタノプロストC14.4%,タフルプロストC18.5%,チモロールC13.9%,カルテオロールC14.1%であった.OMDIは,ラタノプロストとタフルプロストと比較して,有意に眼圧下降効果が小さかった.結論:OMDIは,他のプロスタグランジン点眼と比較してCNTGに対する眼圧下降効果が小さい.CPurpose:ToCcompareCofCtheCintraocularpressure(IOP)loweringCe.ectsCbetweenComidenepagCisopropyl(OMDI)andotherglaucomamedicationsfornormaltensionglaucomapatients.SubjectsandMethods:Thisretro-spectiveCmulticenterCstudyCinvolvedC175CpatientsCwithCnormalCtensionCglaucomaCwhoCwereCpreviouslyCuntreatedCandwhowerefollowedformorethan3monthsaftertopicaltreatment.ThefourmedicationsusedforcomparisonwithCOMDICwereClatanoprost,Cta.uprost,Ctimolol,CandCcarteolol,CandCtheirCIOPCloweringCe.ectsCwereCcompared.CResults:TheIOPreductionrateat3monthsafterinitiationoftreatmentwas9.2%forOMDI,14.4%forlatano-prost,18.5%forta.uprost,13.9%fortimolol,and14.1%forcarteolol.OMDIhadthesmallestIOPreductione.ect,andwassigni.cantlysmallerthanlatanoprostandta.uprost.Conclusion:TheIOPreductione.ectofOMDIwassmallerthanthatoftheotherprostaglandinmedicationstested.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)43(1):108.113,C2026〕Keywords:オミデネパグイソプロピル,正常眼圧緑内障,緑内障点眼治療,EP受容体.omidenepagCisopropyl,Cnormaltensionglaucoma,glaucomamedicationtreatment,EPreceptor.Cはじめにオミデネパグイソプロピル(omidenepagCisopropyl:OMDI)(エイベリス)はC2018年C11月に日本で発売された緑内障点眼薬である.FP受容体ではなくCEP受容体に作用することで,従来のプロスタグランジン点眼の副作用である,眼瞼への色素沈着,睫毛伸長,眼瞼陥凹などの副作用を抑えることができる点眼薬である1,2).これまでにCOMDIの眼圧下降効果に関する研究はいくつかあるが,その多くは高眼圧の症例を含んでいる.そのため,眼圧下降率は高く表示される傾向にある3).実際に多治見スタディの結果から,日本の原発開放隅角緑内障(primaryCopenangleCglaucoma:POAG)のC92%は正常眼圧緑内障(normalCtensionglaucoma:NTG)とされ,緑内障治療前の平均眼圧はC15.4CmmHgと報告されている4).NTG患者に対するCOMDIの効果の報告もあるが,他の点眼と比較している報告は少ない5,6).〔別刷請求先〕東條直貴:〒930-0229富山県立山町前沢新町C472雄山アイクリニックReprintrequests:NaokiTojo,M.D.,OyamaEyeClinic,472Maezawashinmati,Tateyamatown,Toyama930-0229,JAPANC108(108)今回筆者らは,NTG患者に対するCOMDIの眼圧下降効果を他の点眼薬と比較した.比較対象は,緑内障のガイドラインでも第一選択薬に推奨されているCFP受容体作動薬のラタノプロストとタフルプロスト(タプロス),また,Cb遮断薬点眼であるチモロール,カルテオロールのC4剤とした.CI対象および方法この研究はC2施設による後ろ向き研究であり,富山大学附属病院の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号R2024037).2020年C5月.2023年C12月に,富山大学附属病院,または雄山アイクリニックでCNTGと診断され,緑内障に対する治療をまったく行ったことがない患者,または以前緑内障の治療を行っていたが,中断してC3カ月以上点眼治療を行っていない患者を対象とした.すでに緑内障の外科的治療をしている患者は除外した.緑内障の診断には,細隙灯顕微鏡検査,隅角検査,眼底検査,光干渉断層法(opticalCcoherencetomography:OCT),Humphrey視野検査を施行し,緑内障を専門とする医師により診断された.隅角検査でCShe.er分類CGrade2以上は閉塞隅角緑内障の可能性があるため,本研究から除外した.また,落屑緑内障や他の続発性緑内障の患者は除外した.ベースライン眼圧の定義は,未治療の状態でC2回別の日に受診してもらい,そのつど測定したC2回の平均眼圧とした.POAGの患者でベースライン眼圧がC21CmmHg以下の患者をCNTGと定義し,これらの患者を対象とした.眼圧は全例でCGoldmann圧平式眼圧計によって測定された値を用いた.眼圧測定時間は日内変動などを考慮していない.緑内障の治療プロトコールとしては緑内障の点眼治療を行っていない状態で,2回のベースライン眼圧測定後に緑内障の点眼治療を開始した.緑内障点眼薬は担当医の判断にて選択された.点眼治療は眼圧下降効果の確認に加えて副作用の確認の意味も含め,両眼に緑内障がある患者に対しても全例で片眼緑内障点眼薬トライアルを行った.両眼同時に点眼治療を開始した患者は本研究から除外した.基本的に緑内障性神経障害が強いほうの眼を片眼緑内障点眼薬トライアルの対象とした.点眼開始後約C1カ月後に受診して眼圧測定を行い,この点眼で継続可能か確認した.眼圧下降が不十分でないかどうかや結膜充血などの副作用の有無を確認し,患者の希望も聞いて,点眼変更が望ましいと担当医が判断した場合は変更した.1カ月後に点眼変更なしで問題ないと判断された患者は,次回(約C3カ月後)の眼圧を測定した.本研究では,OMDI,ラタノプロスト,タフルプロスト,チモロール,カルテオロールのC5剤のC1カ月後とC3カ月後の眼圧値と眼圧下降率を比較検討した.眼圧下降率は,ベースライン眼圧を基準にして点眼治療後の眼圧値から算出した.OMDIを中心に他の点眼治療をCpaired-t検定でC2群間比較を行った.本研究では,2群間の年齢が有意に異なるというケースを認めたため,年齢因子を排除してC2群間を統計比較する共分散分析(analysisofcovariance:ANCOVA)も行った.統計ソフトはCJMPPro14を使用した.初回から上記C5種類の点眼の単剤治療以外の点眼を処方された患者,初回から配合剤を使用した患者およびC3カ月以内に追加点眼治療や手術治療を行った患者データは除外した.1カ月目で点眼を変更した症例においては,1カ月目までのデータを用いることにした.CII結果本研究の包括基準を満たしたC175名・175眼を解析した.表1に患者データを示す.未治療時の平均眼圧はC14.9mmHgであった.表2にC5種類の点眼別のデータを示す.タフルプロストの処方例がもっとも多かった.年齢分布は図1に示した.年齢に関しては,OMDIとチモロールは若年者に多く処方されていた傾向にあった.OMDIを中心に,他のC4剤との比較を表3~6に示す.表3のラタノプロストとCOMDIの比較では,有意にOMDIは若年者に処方された.OMDIはC15例中C14眼で女性に処方されていた.点眼治療後に両薬剤とも有意な眼圧下降を認めた.点眼C1カ月後の眼圧下降率を比較すると,ラタノプロストはC18.2%,OMDIはC9.9%と,paired-t検定ではラタノプロストのほうが有意に高いという結果であった.また,ANCOVAにおいても,3カ月後の眼圧下降率に有意差を認めた.OMDI群では,1カ月後に眼圧下降が不十分と判断された患者はC6眼であったため,その患者は別の点眼に変更した.眼圧は下降していたが,充血のため点眼継続困難と判断された患者がC1名であった.3カ月後にはC1カ月後に眼圧がよく下がっていると判断された患者が含まれるが,眼圧値も眼圧下降率も大きくは変化しなかった.表4のタフルプロストとCOMDIの比較でもCOMDIのほうが有意に若年者に処方されていた.点眼C3カ月後の眼圧下降率は,paired-t検定ではタフルプロストのほうが有意に高いという結果であった.また,ANCOVA検定においても,3カ月後の眼圧値に有意差を認めた.表5のチモロールとCOMDIの比較では年齢にも差はなく,両方とも若年者に使用されていた.両群で眼圧値,眼圧下降率に有意差はなかった.表6のカルテオロールとCOMDIの比較では年齢のみ有意差が出たが,ほかに有意差はなかった.1カ月後に点眼を変更した理由を眼圧下降が不十分と判断されたためと点眼の副作用のための二つに分類した.結果を表7に示した.眼圧下降が不十分という明確な定義はなく,担当医が術前眼圧と比較して眼圧下降効果が不十分と判断して変更したものとした.副作用についても,患者が副作用が表1患者背景パラメータ年齢中心角膜厚ベースライン眼圧ベースラインCMD平均±標準偏差65.9C±13.1歳534C±32Cmm14.9C±3.1CmmHgC.4.48±4.08CdBC表2点眼別眼圧と眼圧下降率OMDI(1C5眼)ラタノプロスト(1C7眼)タフルプロスト(1C10眼)チモロール(1C7眼)カルテオロール(1C6眼)年齢C47.5±10.4歳C65.2±13.2歳C67.8±11.6歳C52.6±14.8歳C69.3±9.8歳年齢の範囲31.C67歳41.C85歳34.C91歳31.C74歳44.C83歳ベースライン眼圧C14.2±1.6CmmHgC15.1±2.8CmmHgC14.5±2.7CmmHgC14.6±2.5CmmHgC14.8±2.3CmmHg点眼C1カ月後眼圧C12.9±2.5CmmHgC12.4±2.1CmmHgC12.0±2.4CmmHgC12.7±2.3CmmHgC12.6±2.4CmmHg1カ月後の眼圧下降率C9.9±13.4%C18.2±9.0%C16.6±11.5%C12.6±10.3%C14.4±10.8%点眼C3カ月後眼圧C12.9±1.2CmmHgC12.8±2.5CmmHgC11.7±2.6CmmHgC12.6±2.4CmmHgC12.7±1.9CmmHg3カ月後の眼圧下降率C9.2±6.2%C14.4±12.1%C18.5±11.0%C13.9±10.0%C14.1±9.8%(歳)1009080706050403020100図1年齢分布あっても問題ないという場合は継続するケースもあり,担当医が点眼変更が望ましいと判断した症例とした.初回点眼から変更が必要と判断された割合は,OMDI46.7%,ラタノプロストC5.9%,タフルプロストC10.9%,チモロールC5.9%,カルテオロールC18.8%であり,OMDIが眼圧下降不良や充血が多いという結果であった.III考按緑内障の診断後第一選択の治療は点眼が主流である.なかでも第一選択薬として推奨されているものとして,FP受容体作動薬のプロスタグランジン製剤,EP受容体作動薬のプロスタグランジン製剤,Cb遮断薬があげられる.冒頭でも触れたように,FP受容体作動薬のプロスタグランジンは,眼瞼への色素沈着,睫毛伸長,眼瞼陥凹などの副作用が生じる可能性がある.今回は,とくに副作用の頻度の高いトラボプロストやビマトプロストは処方を控えた研究となった7).実臨床では,若い女性など容姿を気にする患者に対して,このような副作用の可能性がある点眼は避ける傾向にあると予想される.本研究でもCOMDIはCFP受容体作動薬と比較し,有意に若年者に処方されていた.そのため,今回は二つの方法で統計学的に比較を行った.リアルワールドでは,OMDIは白内障術後にも使用できないことから,他の点眼薬と比べて若い患者に多く処方されやすいのではないかと推測する.その点を考慮すると,年齢因子を除去した検定が正しいとは限らないとも考えられる.本研究では,タフルプロストの処方が多かった.とくに眼圧の低いCNTG患者に対しては,ラタノプロストよりタフルプロストのほうが眼圧下降率が高かったという報告がある8).OMDIはラタノプロストに対して非劣性であると報告されているが,本研究では,NTG患者に対して有意に眼圧下降率が低いという結果であった.1カ月後に眼圧下降が不十分であった患者を除外したC3カ月後の眼圧下降率も低いという結果であった.また,Cb遮断薬と比較しても有意差はない表3ラタノプロスト対OMDIラタノプロストCOMDIp値※p値†年齢C65.2±13.2歳(C17眼)C47.5±10.4歳(C15眼)<C0.0001ベースライン眼圧C15.1±2.8CmmHg(1C7眼)C14.2±1.6CmmHg(1C5眼)C0.275C0.445点眼C1カ月後C12.4±2.1CmmHg(1C7眼)C12.9±2.5CmmHg(1C5眼)C0.429C1.0001カ月後の眼圧下降率C18.2±9.0%(1C7眼)C9.9±13.4%(C15眼)C0.0166C0.716点眼C3カ月後C12.8±2.5CmmHg(1C6眼)C12.9±1.2CmmHg(8眼)C0.948C0.4653カ月後の眼圧下降率C14.4±12.1%(C16眼)C9.2±6.2%(8眼)C0.252C0.037※:Paired-t検定.†:ANOVA検定.表4タフルプロスト対OMDIタフルプロストCOMDIp値※p値†年齢C67.8±11.6歳(C110眼)C47.5±10.4歳(C15眼)<C0.0001ベースライン眼圧C14.5±2.7CmmHg(1C10眼)C14.2±1.6CmmHg(1C5眼)C0.7572C0.473点眼C1カ月後C12.0±2.4CmmHg(1C10眼)C12.9±2.5CmmHg(1C5眼)C0.154C0.1881カ月後の眼圧下降率C16.6±11.5%(C110眼)C9.9±13.4%(C15眼)C0.257C0.365点眼C3カ月後C11.7±2.6CmmHg(9C8眼)C12.9±1.2CmmHg(8眼)C0.221C0.0393カ月後の眼圧下降率C18.5±11.0%(C98眼)C9.2±6.2%(8眼)C0.0212C0.074※:Paired-t検定.†:ANOVA検定.表5チモロール対OMDIチモロールCOMDIp値※p値†年齢C52.6±14.8歳(C17眼)C47.5±10.4歳(C15眼)C0.279ベースライン眼圧C14.6±2.5CmmHg(1C7眼)C14.2±1.6CmmHg(1C5眼)C0.64C0.872点眼C1カ月後C12.7±2.3CmmHg(1C7眼)C12.9±2.5CmmHg(1C5眼)C0.793C0.4261カ月後の眼圧下降率C12.6±10.3%(C17眼)C9.9±13.4%(C15眼)C0.438C0.365点眼C3カ月後C12.6±2.4CmmHg(1C6眼)C12.9±1.2CmmHg(8眼)C0.789C0.3343カ月後の眼圧下降率C13.9±10.0%(C16眼)C9.2±6.2%(8眼)C0.241C0.157※:Paired-t検定.†:ANOVA検定.表6カルテオロール対OMDIカルテオロールCOMDIp値※p値†年齢C69.3±9.8歳(C16眼)C47.5±10.4歳(C15眼)<C0.0001ベースライン眼圧C14.8±2.3CmmHg(1C6眼)C14.2±1.6CmmHg(1C5眼)C0.457C0.511点眼C1カ月後C12.6±2.4CmmHg(1C6眼)C12.9±2.5CmmHg(1C5眼)C0.683C0.3151カ月後の眼圧下降率C14.4±10.8%(C16眼)C9.9±13.4%(C15眼)C0.227C0.482点眼C3カ月後C12.7±1.9CmmHg(1C3眼)C12.9±1.2CmmHg(8眼)C0.815C0.6653カ月後の眼圧下降率C14.1±9.8%(1C3眼)C9.2±6.2%(8眼)C0.196C0.265※:Paired-t検定.†:ANOVA検定.表7点眼変更理由OMDI(15)ラタノプロスト(17)タフルプロスト(1C10)チモロール(17)カルテオロール(16)眼圧下降不十分6(4C0.0%)1(2C.6%)8(7C.2%)1(5C.9%)3(1C8.8%)点眼アレルギー1(6C.7%)C04(3C.6%)C0C0Cものの,眼圧下降率は低かったという結果であった.充血の割合も多く,充血でCOMDI点眼治療を中止となった患者以外でも充血する患者は散見された.井上らは,NTG患者に対するCOMDI点眼治療により,ベースライン眼圧C15.5C±2.7CmmHgからC12カ月後にC13.7C±2.3mmHg(平均眼圧下降率はC9.3%)に下降したと報告している6).中澤らの報告では,NTGに対してはC1.5CmmHgの眼圧下降を認めたと報告している9).本研究でCOMDIを使用した患者データでは,ベースライン眼圧がC14.2C±1.6CmmHgとさらに低く,3カ月後の眼圧はC12.9C±1.2CmmHg(平均眼圧下降率C9.2%,C.1.3CmmHgの下降)であった.眼圧下降率においては既存の報告と同等の結果であり,NTG患者においては,FP受容体作動薬と比較しても非劣性であるとはいえない結果となった.一方で尾崎らは,新規にCOMDI点眼治療で,ベースライン眼圧C14.1C±3.9CmmHgからC6カ月後にC11.6C±2.2CmmHg(平均眼圧下降率はC17.7%)に下降したと報告しており10),金森らもベースライン眼圧C17.1C±2.2CmmHgからC6カ月後にC13.9C±2.4CmmHg(平均眼圧下降率はC18.7%)に下降したと報告している11).このように,FP受容体作動薬と同等の眼圧下降効果が得られたとの報告もある.井上らは,副作用である充血はC11.0%であると報告している5).中澤らは,20%の患者が眼圧下降不十分や結膜充血のためにCOMDI点眼を中止したと報告している12).尾崎らは,OMDIのノンレスポンダーの割合はC34.7%であったと報告しており,筆者らの研究でもC40%と,FP受容体作動薬と比較して高いという結果であった10).また,ノンレスポンダーと判断された患者C6眼のベースライン眼圧はC14.9C±1.5mmHgで,点眼治療C1カ月後の平均眼圧はC15.5C±1.0CmmHgであった.OMDIはCFP受容体作動薬と比較し,ノンレスポンダーの割合が多く,結膜充血も生じることは念頭におく必要がある.またCBacharachらはCOMDIとチモロールの眼圧下降効果の比較を行ったが,同等であったと報告している13).しかし,チモロールの治療法が眼圧下降効果にばらつきが大きいと述べている.本研究でもC3カ月後のチモロールとCOMDIの眼圧下降効果は同等であり,平均眼圧下降率の標準偏差はOMDIよりチモロールのほうが大きいという結果であった.Cb遮断薬点眼は自律神経に作用するため,効果は個人差が大きいと予想される.本研究で,OMDIのノンレスポンダーに対して,Cb遮断薬に変更した症例は,5例であったが,眼圧C13.6C±2.2mmHgからC3カ月後にC12.0C±2.7CmmHg(平均眼圧下降率はC12.1C±13.3%)に下降した.この研究は,後ろ向き研究であり,初回の点眼選択や,点眼変更も担当医の判断であり,明確に定義されていない.またCOMDI群で明らかに若年者が多い.チモロール群でも若年者が多いが,これは眼瞼への色素沈着などの副作用を配慮した結果であり,バイアスがかかっている.しかしCOMDIは,白内障術後に使用できない点から,実臨床では高齢者に使用しにくい点もある.OMDIの点眼治療患者数も非常に少ないため,信頼度は低いデータである.また,3カ月という短期間のため,FP受容体作動薬の点眼に特有の副作用が評価できていない.CIV結論OMDIのCNTG患者に対する眼圧下降効果は,従来のCFP受容体に作用する点眼薬よりも低いという結果であった.またCb遮断薬点眼と比べ眼圧下降効果は有意差を認めなかった.FP受容体作動薬の副作用を懸念するCNTG患者に対してはCOMDIを選択する場合もあるが,OMDIに対してノンレスポンダーや副作用が生じる患者にはCb遮断薬点眼も選択肢になりうると考えられる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)MatsuoCM,CMatsuokaCY,CTanitoM:E.cacyCandCpatientCtolerabilityCofComidenepagCisopropylCinCtheCtreatmentCofCglaucomaCandCocularChypertension.CClinCOphthalmolC26:C1261-1279,C20222)InoueCK,CShiokawaCM,CKatakuraCSCetal:PeriocularCadversereactionstoomidenepagisopropyl.AmJOphthal-molC237:114-121,C20223)AiharaCM,CLuCF,CKawataCHCetal:OmidenepagCisopropylCversusClatanoprostCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCandCocularhypertension:theCphaseC3CAYAMECStudy.CAmJOphthalmolC220:53-63,C20204)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofpri-maryCopen-angleCglaucomaCinJapanese:theCTajimiCStudy.OphthalmologyC111:1641-1648,C20045)InoueK,ShiokawaM,Kunimatsu-SanukiSetal:Three-yearCe.cacyCandCsafetyCofComidenepagCisopropylCinCpatientsCwithCnormalCtensionCglaucoma.CJpnCJCOphthalmolC68:206-210,C20246)InoueCK,CShiokawaCM,CKunimatsu-SanukiCSCetal:One-yearCe.cacyCandCsafetyCofComidenepagCisopropylCinCpatientswithnormal-tensionglaucoma.JOculPharmacolTherC38:354-358,C20227)InoueCK,CShiokawaCM,CWakakuraCMCetal:DeepeningCofCtheCupperCeyelidCsulcusCcausedCbyC5CtypesCofCprostaglan-dinanalogs.JGlaucomaC22:626-631,C20138)田邉祐資,菅野誠,山下英俊:正常眼圧緑内障に対するトラボプロスト,タフルプロスト,ビマトプロストの眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科29:1131-1135,C20129)NakazawaCT,CTakahashiCK,CKuwayamaCYCetal:InterimCresultsCofCpost-marketingCobservationalCstudyCofComide-nepagCisopropylCforCglaucomaCandCocularChypertensionCinCJapan.AdvTherC39:1359-1374,C202210)尾崎弘明,小林彩加,横尾葉子ほか:オミデネパグイソプロピル点眼液の1年後治療成績.臨眼76:1380-1386,C202211)金森章泰,金森敬子,若林星太:オミデネパグイソプロピル点眼液の効果と安全性の検討:平均C10カ月成績.臨眼C75:767-774,C202112)NakakuraCS,CKanamoriCA,CFukumaCetal:EvaluationCofCearlymedicationpersistencewithomidenepagisopropyl,atopicalCselectiveCprostaglandinCEP2Cagonist,CinCpatientsCwithglaucoma:aCretrospectiveCtwo-instituteCstudy.CBMJCOpenC11:e040301,C202113)BacharachCJ,CBrubakerCJW,CEvansCDGetal:OmidenepagCisopropylCversusCtimololCinCpatientsCwithCglaucomaCorCocularhypertension:twoCrandomizedCphase3CTrials(SPECTRUM4and3)C.AmJOphthalmolC263:23-34,C2024***

焦点深度拡張型単焦点眼内レンズと従来型単焦点眼内レンズ の焦点深度の比較

2026年1月31日 土曜日

焦点深度拡張型単焦点眼内レンズと従来型単焦点眼内レンズの焦点深度の比較吉川祐司青柳林太郎橘綠蒔田潤篠田啓埼玉医科大学病院眼科CComparisonofDepthofFocusbetweenExtendedDepth-Of-FocusMonofocalIOLsandConventionalMonofocalIOLsYujiYoshikawa,RintaroAoyagi,MidoriTachibana,JunMakitaandKeiShinodaCDepartmentofOphthalmology,SaitamaMedicalUniversityHospitalC本研究は焦点深度拡張型(EDOF)単焦点CIOL(DIB00V,XY1-EM,NSP-3)と従来型単焦点CIOL(CNA0T0)の焦点深度の比較を行った.術後矯正視力がC1.2であった患者を対象とし,完全矯正の状態から+1.0D..3.0Dまで0.5Dずつ負荷し焦点深度曲線を作成した.±0.5D,.2.5D,.3.0Dでの視力はレンズごとに有意差を認めなかったが,+1.0DではCNSP-3がCXY1-EMよりも有意によい視力が得られた..1.0..1.5DではCCNA0T0と比較してすべての焦点深度拡張型単焦点CIOLで有意によい視力が得られた..2.0DではCXY1-EMとCNSP-3はCCNA0T0と比較して有意によい視力であったが,DIB00VとCCNA0T0との間に有意差はなかった.EDOF単焦点CIOLは従来型単焦点CIOLと比較し広い焦点深度が得られたが,IOLの種類によって範囲が異なることが示された.CThepurposeofthisstudywastocomparethedepthoffocusofextendeddepth-of-focus(EDOF)monofocalintraocularlenses(IOLs)(DIB00V[TECNISCEyhance,CJohnsonC&Johnson],XY1-EM[VivinexImpress,CHoya],CandNSP-3[NIDEK])andaconventionalmonofocalIOL[CNA0T0;ALCON]).Thedefocuscurvesweregener-atedusingvisualacuity(VA)loadedin0.5Dincrementsfrom+1.0Dto.3.0Dfromthefullycorrectedstate.VAat±0.5D,.2.5Dand.3.0Ddefocuslevelswerenotsigni.cantlydi.erentbetweentheIOLs.At+1.0D,NSP-3hadCsigni.cantlyCbetterCVACthanCXY1-EM.CAtC.1.0to.1.5D,CallCEDOFCmonofocalCIOLsCprovidedCsigni.cantlyCbetterVAcomparedtoCNA0T0.However,at.2.0D,XY1-EMandNSP-3providedsigni.cantlybetterVAcom-paredtoCNA0T0,buttherewasnosigni.cantdi.erencebetweenDIB00VandCNA0T0.TheEDOFmonofocalIOLsprovidedawiderdepthoffocusthantheconventionalmonofocalIOLs,buttherangedi.ereddependingonthetypeofIOL.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)43(1):104.107,C2026〕Keywords:焦点深度曲線,インプレス,アイハンス,NSP-3.Defocus,Impress,Eyhance,NSP-3I背景眼内レンズ(intraocularlens:IOL)の進化に伴う患者満足度や術後の視覚の質(qualityofvision:QOL)の向上はめざましいものである.多焦点CIOLはC2焦点から連続焦点,3焦点と進歩を遂げ,中間/近方視力の改善をもたらした1)一方で,依然として価格面での問題やChalo,glareなどの異常光視現象を伴う1,2)など課題はある.近年では多焦点CIOLにおけるハロー,グレアを軽減する目的で,近見視力は高加入度多焦点CIOLと比較して劣るが焦点深度を拡張することで中間視力を改善する特性をもつさまざまな焦点深度拡張型(extendedCdepthCoffocus:EDOF)IOLが登場した3).なかでも単焦点CIOLでありながら,焦点深度を強化した特性のレンズが登場している4).その一つとしてCTECNISEyhnace(ジョンソン・エンド・ジョンソン社)があげられる.これは単焦点CIOLであり〔別刷請求先〕吉川祐司:〒350-0495埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷C38埼玉医科大学病院眼科Reprintrequests:YujiYoshikawa,DepartmentofOphthalmology,SaitamaMedicalUniversityHospital,38Morohongo,Moroyamamachi,Iruma,Saitama350-0495,JAPANC104(104)視力(logMAR)0.00.20.40.60.81.0DIB00VXY-1EMNSP-3CNA0T0図1各レンズのデフォーカスカーブ完全矯正の状態から+1.0.C.3.0Dの負荷を行い各デフォーカスレベルでの視力を測定した.各デフォーカスレベルで得られた視力の平均値をプロットしデフォーカスカーブを作成し,各眼内レンズの比較をCSteel-Dwass検定を用いて行った(errorbar:標準偏差).+1.0DではCNSP-3がCXY1-EMと比較し有意によい視力であった.また,C.1.0.C.1.5DではCXY1-EM,DIB00V,NSP-3がCNA0T0と比較して有意によい視力であった.C.2.0DではXY1-EMとCNSP-3がCNA0T0と比較して有意によい視力であった.ながら,光学部の中心に高次非球面構造を有し,デフォーカスカーブが従来の単焦点CIOLと比較してなだらかであることから,中間視力の向上が得られることが示されている5,6).現在国内で単焦点CIOLでありながら中間視力の改善を期待できるCEDOF単焦点CIOLはCTECNISCEyhanceDIB00V,CVivinexCImpressXY1-EM(HOYA),NexLoadCNSP-3(NIDEK)である.本研究ではCEDOF単焦点CIOL(DIB00V,XY1-EM,CNSP-3)と従来型単焦点CIOL(CNA0T0)の焦点深度の違いを比較した.CII方法本研究は埼玉医科大学病院CIRB委員会の承認を得たあとに行われた(No.2025-021).2024年C4月.2025年3月の間に埼玉医科大学病院でEDOF単焦点CIOLもしくは従来型単焦点CIOLの白内障手術を受け,眼底疾患を有さず,術後矯正視力がC1.2であった患者を対象とした.白内障手術はC18名の術者で行い,2.4Cmmの角膜もしくは強角膜切開で行い,連続環状.切開が完全であり,IOLが.内固定されている症例を対象とした.EDOF単焦点CIOLはCDIB00V,XY1-EM,NSP-3のいずれかを,従来型単焦点CIOLはCCNA0T0(アルコン社)が挿入されたものを対象とした.視力は術後C1カ月時点で測定し,専任の視能訓練士が完全矯正の状態から+1.0ジオプトリー(D)..3.0DまでC0.5Dずつ負荷した視力(logMAR)を用いてデフォーカスカーブを作成した(図1).各負荷におけるCIOL別の視力の比較をSteel-Dwass検定を用いて行った.また,imo(CREWTCMedicalSystems)を使用して薄暮下のコントラスト感度を測定し,その曲線下面積をCareaCunderCthelogCcontrastCsensitivityfunction(AULCSF)として測定し,IOL間の比較をCSteel-Dwass検定を用いて行った.すべての値は中央値(四分位範囲)で表記した.p値が0.05未満を統計学的有意差ありとし,Fisherの正確確立検定,Kruskal-Wallis検定,Steel-Dwass検定を行った.統計解析は,JMPversion10.1ソフトウェア(SASInstitute)を用いて行った.CIII結果DIB00V31眼,XY1-EM32眼,NSP-322眼,CNA0T0DIB00V(n=31)XY1-EM(n=32)NSP-3(n=22)CNA0T0(n=24)p値年齢,歳74歳(70,77)72歳(68,76)73歳(70,82)75歳(71,82)C0.298*性別女性C22/男性C9女性C19/男性C13女性C15/男性C7女性C8/男性C16C0.030†等価球面度数C.0.25D(.1.5D,0C.38D)C.0.38D(.2.69D,C0.09D)C.0.63D(.2.43D,C0.13D)C.0.93D(.2.43D,C.0.28D)C0.237*眼圧C12.3CmmHg(1C0.7mmHg,1C4mmHg)C11.2CmmHg(1C0mmHg,1C3.6mmHg)C11.2CmmHg(9C.7mmHg,1C3.5mmHg)C13.3CmmHg(1C0.9mmHg,C15.2mmHg)C0.223*眼軸長C24.0Cmm(2C3.3mm,2C5.0mm)C24.2Cmm(2C3.1mm,2C5.6mm)C23.3Cmm(2C2.6mm,2C5.5mm)C24.8Cmm(2C3.8mm,2C6.0mm)C0.129**Kruskal-Wallis検定.C†Fisherの正確確立検定.D:diopter.C21.81.61.41.210.80.60.40.20図2各レンズのコントラスト感度各眼内レンズのCareaCunderCtheClogCcontrastCsensitivityfunction(AULCSF)を箱ひげ図で示す.眼内レンズ間でCAULCSFの値に有意差を認めなかった.上下Cbarは最大値と最小値示し,boxは四分位範囲を示す.C●は外れ値を示す.レンズ間の比較はCKruskal-コントラスト感度(AULCSF)DIB00VXY-1EMNSP-3CNA0T0Wallis検定を用いて行った.24眼を対象とした.レンズごとの症例の年齢はCDIB00Vで74歳(70歳,77歳),XY1-EMで72歳(68歳,76歳),DIB00VでC75歳(71歳,82歳),NSP-3でC73歳(70歳,82歳)といずれも有意差を認めなかった.また,等価球面度数,眼圧,眼軸長でも群間での差を認めなかったが,性差では有意差を認めた(表1).各デフォーカスレベルでの視力は±0.5DならびにC.2.5.C.3.0DではCEDOF単焦点CIOL,従来型単焦点CIOLにかかわらずCIOLごとに有意差を認めなかった.一方で,C.1.0.C.1.5DではCCNA0T0と比較してすべてのCEDOF単焦点IOLが有意によい視力が得られた.しかし,EDOF単焦点IOL間での有意差は認めなかった.C.2.0DではCXY1-EMとCNSP-3はCCNA0T0と比較して有意によい視力であった一方で,DIB00VとCCNA0T0の間には傾向は認めるが,有意差は認めなかった(XY1-EMCvsCNA0T0:p=0.017,CNSP-3CvsCNA0T0:p<0.01,DIB00VCvsCNA0T0:p=0.056).+1.0DではNSP-3がCXY1-EMよりも有意に視力がよい値であった(p=0.048).また,統計学的有意差を認めなかったが,CNA0T0と比較してCDIB00VとCNSP-3が,XY1-EMと比較してCDIB00Vがよい視力が得られる傾向であった(DIB00VCvsCNA0T0:Cp=0.072,NSP-3CvsCNA0T0:p=0.055,DIB00VCvsXY1-EM:p=0.059).AULCSFの値は従来型単焦点CIOLとすべてのCEDOF単焦点CIOL間で差を認めなかった(図2).IV考按V結論本研究では,EDOF単焦点CIOLは従来型の単焦点CIOLと比較して同等の術後コントラスト感度が得られ,またより広い明視域が得られることが明らかとなった.DIB00Vは光学部中心に高次非球面設計を施すことで,なだらかな焦点深度曲線をもつ単焦点CIOLとして発売された5).DIB00Vは従来の単焦点レンズとCEDOF多焦点CIOL(Symfony)の中間のデフォーカス特性をもつと報告されている6).また,XY1-EMも同様に従来型単焦点レンズと比較して良好な中間視力が得られるレンズとして登場した.XY1-EMとDIB00Vを比較した研究では,+2.0.C.2.5Dまでのデフォーカスレベルでは同等の視力が得られると報告されている7).一方で,C.1.5DではCXY1-EMのほうがCDIB00Vよりも良好な視力が得られたとする報告8,9)もあり,EDOF単焦点CIOLのなかでもレンズごとに異なるデフォーカス特性を認めることが明らかとなっている.本研究は過去の研究に加えてNSP-3を加えて検討した初めての報告である.NSP-3も独自の新非球面構造によって同社の従来型単焦点レンズよりもなだらかなデフォーカス特性を得られるCIOLとして登場した.本研究ではCNSP-3はCXY1-EMとCDIB00V同様に従来型単焦点レンズと比較して広いデフォーカス特性を有することがわかった.とくにC.側のデフォーカスレベルでは,XY1-EMと同様にCDIB00Vよりも良好な中間視力が得られる範囲が広い可能性が示された.一方で+側のデフォーカスレベルではCXY1-EMやCCNA0T0と比較して良好な視力が得られた.また,明視域が拡張した際にはコントラスト感度は低下することが危惧されるが10),本研究ではコントラスト感度も従来型単焦点CIOLやその他のCEDOF単焦点CIOLと有意な差を認めなかった.以上のことからいずれのCEDOF単焦点CIOLも,コントラスト感度を犠牲にすることなく,明視域を拡張することができるCIOLであることが示された.本研究は小数例の比較検討であり,症例を蓄積しさらなる検討が必要である.また,執刀医が複数いることも本研究の課題であるが,術後C1カ月時点で良好な視力が得られたもののみを対象としていることから手術手技の影響は少ないと考えられる.また,専任の視能訓練士によって完全矯正状態から負荷視力測定を行うことで,視力検査手技によるばらつきや残余乱視・円柱度数のばらつきによる術後屈折誤差の影響も少ないと考えられる.EDOF単焦点CIOLは従来型単焦点CIOLと比較し広い明視域が得られたが,IOLの種類によってその範囲が異なることが示された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)CaoK,FriedmanDS,JinSetal:Multifocalversusmono-focalintraocularlensesforage-relatedcataractpatients:Casystemreviewandmeta-analysisbasedonrandomizedcontrolledtrials.SurvOphthalmolC64:647-658,C20192)RodovL,ReitblatO,LevyetAetal:VisualoutcomesandpatientCsatisfactionCforCtrifocal,CextendedCdepthCofCfocusCandmonofocalintraocularlenses.JRefractSurgC35:434-440,C20193)Megiddo-BarnirCE,CAlioJL:LatestCdevelopmentCinCextendedCdepth-of-focusCintraocularlenses:anCupdate.AsiaPacJOphthalmol(Phila)C12:58-79,C20234)WanCKH,CAuCACK,CKuaCWNCetal:EnhancedCmonofocalCversusconventionalmonofocalintraocularlensincataractsurgery:aCmeta-analysis.CJCRefractCSurgC38:538-546.C20225)MencucciCR,CCennamoCM,CVenturiCDCetal:VisualCout-come,CopticalCquality,CandCpatientCsatisfactionCwithCaCnewCmonofocalIOL,enhancedforintermediatevision:prelimi-naryresults.JCataractRefractSurgC46:378-387,C20206)CorbelliE,IulianoL,BandelloFetal:Comparativeanaly-sisofvisualoutcomewith3intraocularlenses:monofocal,enhancedmonofocal,andextendeddepthoffocus.JCata-ractRefractSurgC48:67-74,C20227)MencucciCR,CMorelliCA,CCennamoCMCetal:EnhancedMonofocalIntraocularLenses:ARetrospective,Compara-tiveCStudyCbetweenCThreeCDi.erentCModels.CJCClinCMedC12:3588,C20238)KaburaR,TakeshitaT,FurushimaKetal:ComparativeevaluationCofCclinicalCresultsCandCpatient-reportedCout-comesofenhancedmonofocalandconventionalmonofocalintraocularClenses.CJCCataractCRefractCSurgC51:520-524,C20259)蕪龍大,松本栞音,岩崎留己ほか:単焦点CIOLXY1-EM(VivinexImpress)の早期術後成績.眼科66:577-583,C202410)川守田拓志:屈折矯正のトピックス.日白内障会誌C35:C31-36,C2023C***

30 秒点眼動画の有効性:視聴後の経時記憶的に関する 単盲検試験

2026年1月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(1):99.103,2026c30秒点眼動画の有効性:視聴後の経時記憶的に関する単盲検試験池田博昭*1,2澤岻琉之介*1加藤智久*1中妻章*1池田純子*3*1徳島文理大学香川薬学部*2香川県美容学校*3トワニー薬局CE.ectivenessofa30-SecondEyeDropVideo:ASingle-BlindStudyonMemoryRetentionOverTimeHiroakiIkeda1,2)C,RyunosukeTakushi1),TomohisaKato1),AkiraNakatshuma1)andJunkoIkeda3)1)DepartmentofPharmaceuticalHealthCareandSciences,KagawaSchoolofPharmaceuticalSciences,TokushimaBunriUniversity,2)KagawaBeautyCollege,3)TownyPharmacyC目的:患者に適切な点眼方法を遠隔指導するための独創的なC30秒動画を制作し,経時的な記憶を評価した.対象および方法:健常者を対象に開瞼法を含む動画C4指導項目を,視聴前後の点眼行動と比較した.同意を得たあと,臨床試験の被験者は単盲検法で動画視聴群と未視聴群に割り付けた.結果:動画視聴群C25名のC4項目各C25%を合計した実施率はC20分後にC82%,60分後にC70%,24時間後にC70%,1週間後にC61%だった.点眼成功率は動画視聴前にC48%だったが,20分後はC92%,60分後はC84%,24時間後はC92%,1週間後は動画視聴前に比べC88%に増加した.動画視聴前の動画視聴群の実施率は,動画未視聴群と同様だった.動画未視聴群C25名の成功率はそれぞれC76%,76%,88%,64%,80%,で有意差は認められなかった.結論:動画内容のC61%が視聴後C1週間で記憶されていたことから,適切な点眼行動を強化するために,点眼時に動画を視聴することが推奨される.CPurpose:WeCproducedCaCcreativeC30-secondCvideoCtoCremotelyCinstructCpatientsConCproperCeyeCdropCtech-niqueandevaluatedmemoryretentionovertime.Methods:Fourinstructionalitemsfromthevideo,includingtheeye-openingCmethod,CwereCcomparedCwithCtheCeye-dropCbehaviorCbeforeCandCafterCviewing.CAfterCprovidingCcon-sent,participantsintheclinicaltrialwereassignedtoeitherthevideo-viewingornon-viewinggroupinasingle-blindCmanner.CResults:AmongCtheC25CparticipantsCinCtheCvideo-viewingCgroup,CrecallCratesCforCtheCinstructionalCitemswere82%at20minutes,70%at60minutes,70%after24hours,and60%after1week.Correspondingeyedropadministrationsuccessratewas48%beforeviewingthevideo,andincreasedto92%after20minutes,84%at60minutes,92%at24hours,and80%after1week.Thesuccessratesofthe25participantsinthenon-viewingCgroupCwere76%,76%,88%,64%,Cand80%,Crespectively,CwithCnoCsigni.cantCdi.erencesCobserved.CConclusion:CGiventhat61%oftheinstructionalcontentwasretainedat1weekafterviewing,deliveringthevideoatthetimeofeyedropadministrationisrecommendedtoreinforcethepropertechniqueofadministration.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(1):99.103,2026〕Keywords:点眼説明C30秒ショート動画,単盲検試験,経時記憶.30-secondeyedropvideo,single-blindstudy,memoryretention.Cはじめに作用の内容,点眼回数などの用法,点眼を忘れないための知点眼薬物療法のアドヒアランスは,薬液が眼の中に入り副識の評価・向上を行った成果が中心となっている2,3).その作用の減少をめざした点眼前後の行動を実施した成否に影響ため,患者の点眼行動が適切であることの確認,点眼薬が眼される1).これまでの点眼行動に関する報告は,患者への副の中に入った確認,眼周囲の状況を報告・検討した観察研究〔別刷請求先〕池田博昭:〒760-0079香川県高松市松縄町C1091-3香川県美容学校Reprintrequests:HiroakiIkeda,Ph.D.,KagawaBeautycollege,1091-3Matsunawa,Takamatsu-shi,Kagawa760-0079,JAPANC0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(99)C99は多くない4,5).医療の現場では,患者自身の点眼技術や知識に委ねる場合が多い6).また,薬液が眼の中に入ったあとの眼内の副作用は充血,しみるなどの報告がある7,8).一方で,薬液に関連した眼周囲などの眼外の副作用は睫毛の異常,接触性皮膚炎などの報告がある7,8).点眼の行動後は,眼をパチパチするなどして薬液の鼻涙管への流出を促すなど「正しい目薬の使い方」ができていない報告があり,対応を検討する必要性が考察される9).このような研究背景から今回,リモートで随時点眼行動を支援するC30秒間ショート動画「正しい目薬の使い方」(以降,動画)を作製し,動画の視聴前後の点眼行動および記憶の保持量と期間を探索した.CI対象および方法臨床研究への被験者は,大学職員および学生を対象に2023年C4月.2024年C6月に徳島文理大学香川キャンパス内に掲示したポスターおよび学内メールで公募し,研究内容のインフォームド・コンセントを行ったうえで文書同意を得た.加えて,被験者に同意撤回は常にできることもあわせて説明した.被験者へ保存剤を含まない一般用医薬品(overCthecounter:OTC)点眼薬を交付し,点眼の様子をビデオ撮影した.撮影は,被験者の利き腕の反対側から利き腕の反対眼をハイスピードデジタルビデオカメラで動画撮影した.被験者は任意の封筒を引く単盲検法(封筒法)で動画視聴群と未視聴群のいずれかに割り付け,動画視聴群は事前に作製した点眼指導の動画を視聴し,点眼前,20分後,60分後,24時間後,1週間後に点眼行動をビデオ撮影した.追跡調査可能な被験者はC1年後を含めた計C6回,点眼行動をビデオ撮影した.未視聴群も点眼前,20分後,60分後,24時間後,1週間後に点眼行動をビデオ撮影した.被験者のリクルートは利益相反に配慮し,慎重に行った.C1.被験者の選択基準①C18歳以上の男女,②医師による眼の治療を受けていない者,③薬によるアレルギーを起こしたことがない者,④同意時点で眼の痛みを感じていない者.C2.被験者の除外基準①医師による眼の治療を受けている者,②薬によるアレルギー症状を起こしたことがある者,③同意時点で眼の痛みなどの症状のある者,④本研究に利益相反のある者.C3.評価項目主要評価項目は,①手指の清拭(ウエットティッシュを使用),②点眼後の閉瞼,③鼻涙管押さえ,④あふれた点眼薬の拭き取り,の実施のC4項目を各C25%で換算して実施率を算出した.副次評価項目は点眼成功率,座位で最初のC1滴が眼の中に入った場合を滴下成功,それ以外は滴下失敗とした.副次評価項目は,座位で最初のC1滴が眼の中に入った場合を点眼成功として点眼成功率とした.それ以外は点眼不成功と評価した.C4.使用点眼薬ロートCCキューブCa(ロート製薬).C5.撮影条件ハイスピードデジタルビデオカメラCLUMIXTZ90(パナソニック)で被験者の利き腕の反対側から点眼行動を撮影し,照明はCLEDビデオライト(3200.5600K)を用いた.点眼薬のC1滴が眼の中に入る確認は,1秒C240コマの動画撮影条件(VGA,240フレーム/秒)で撮影した.撮影動画から主要および副次評価項目の行動の実施を確認した.C6.作製した動画の概要日本眼科医会監修の「点眼剤の適正使用ハンドブックC.Q&A.」など10,11)を参考に,正しい点眼行動を説明する30秒ショート動画を作製した.動画の構成は,①人差し指をウエットティッシュで拭く行動,②点眼後は閉瞼し目頭を押さえて約C1分間待つ行動,③滴下後に人差し指を迅速に眼元へスライドさせ鼻涙管を圧迫する行動,④点眼後に眼周囲を縦横に拭く行動,とした.このC30秒動画は,誰でも視聴できるように公開した(https://www.youtube.com/shorts/CuAsLsb2Z5I).C7.統計解析主要評価項目の動画視聴前後の行動変化の比較は,C|2検定を用いた.C8.研究倫理被験者の映像は匿名化し,連結不可能なデータにして研究者が施錠により厳重保管した.本研究は,徳島文理大学倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:R4-14).CII結果被験者は動画視聴群で女性C16名(64.0%),男性C9名(36.0%)の計C25名,平均年齢はC18.8C±1.6歳(10.20歳代C24名,30.40歳代1名)だった.未視聴群で女性C15名(60.0%),男性C10名(40.0%)の計C25名,平均年齢はC48.2C±17.1歳(10.20歳代C11名,30.40歳代5名,50.60歳代8名,70歳代C1名)だった.手指の清拭点眼後の閉瞼鼻涙管押さえあふれた点眼薬の拭き取り(%)100806040200点眼行動の実施率図1動画の視聴有無による主要評価項目の点眼行動の変化1.主要評価項目(図1)①手指の清拭(ウエットティッシュを使用),②点眼後の閉瞼,③鼻涙管押さえ,④あふれた点眼薬の拭き取り,のC4項目の実施率である.動画視聴後の主要評価項目の実施率は,20分後にC82%,60分後にC70%,24時間後にC70%,1週間後にC61%と経時的に減少した(n=25,図1).1年後の追跡調査の実施率は,動画視聴後群(n=15)ではC4項目で減少,動画未視聴者群(n=10)は増加が認められた.①手指の清拭:動画視聴群C25名中,視聴前に手指をウエットティッシュで拭いて点眼したのはC1名(4.0%),20分後は17名(68%),60分後は15名(60%),1日後は11名(44%),1週間後はC11名(44%)で視聴前と比べ有意に増加した(p<0.01).動画未視聴群C25名中,1回目に手指をウエットティッシュで拭いて点眼したのはC5名(20%),20分後の2回目は3名(12%),60分後の3回目は5名(20%),1日後の4回目は5名(20%),1週間後の5回目は5名(20%)で有意差はなかった.②点眼後の閉瞼:動画視聴群C25人中,視聴前に閉瞼したのは3名(12%),20分後は22名(88%),60分後は20名(80%),24時間後はC21名(84%),1週間後はC20名(80%)で,視聴後に有意に増加した(p<0.01).動画未視聴者群に変化はなかった.動画未視聴群C25名中,1回目の点眼後に閉瞼したのはC3名(12%),20分後のC2回目はC3名(12%),60分後の3回目は3名(12%),1日後の4回目は3名(12%),1週間後のC5回目はC3名(12%)で有意差はなかった.③鼻涙管押さえ:動画視聴群C25名中,視聴前に鼻涙管付近を押さえたのはC0名(0%),20分後22名(88%),60分後はC20名(80%),24時間後はC22名(88%),1週間後は21名(84%)で,いずれも視聴後に有意に増加した(p<C0.01).動画未視聴者群に変化はなかった.動画未視聴群C25名中,1回目の点眼後に鼻涙管付近を押さえたのはC3名(12%),20分後の2回目は3名(12%),60分後の3回目は3名(12%),1日後の4回目は3名(12%),1週間後の5回目はC3名(12%)で有意差はなかった.④あふれた点眼薬の拭き取り:動画視聴群C25名中,視聴前にあふれた薬液を拭き取ったのはC9名(36%),20分後C21名(84%)60分後はC16名(64%),24時間後はC17名(68%),1週間後はC16名(64%)で,20分後のみ有意に増加した(p<0.01).動画未視聴者群に変化はなかった.動画未視聴群25名中,1回目の点眼後に溢れた薬液を拭き取ったのはC3名(12%),20分後の2回目は3名(12%),60分後の3回目は3名(12%),1日後の4回目は3名(12%),1週間後のC5回目はC3名(12%)で有意差はなかった.C2.副次評価項目(n=25)動画視聴群の点眼成功率は視聴前がC12名(48%),20分後がC23名(92%),60分後がC21名(84%),24時間後がC23名(92%),1週間後がC22名(88%)で視聴C20分後とC24時間後は視聴前に比べ有意に差があった(図2).動画未視聴者群に変化はなかった.動画未視聴群の点眼成功率は撮影C1回目がC19名(76%),1回目のC20分後のC2回目がC19名(76%),同C60分後のC3回目がC22/25名(88%),同C24時間後のC4回目がC16名(64%),同C1週間後のC5回目がC20名(80%)で有意な差はなかった(図2).動画未視聴者群に変化はなかった.(%)100806040200実施率点眼成功率図2動画視聴群(n=25)と未視聴群(n=25)の点眼成功率(%)10080604020020分後60分後24時間後1週間後1年後■動画視聴者群(n=15)■動画未視聴群(n=10)図3動画で説明した4項目の実施率の追跡調査結果実施率は点眼前の手指の清拭(ウエットティッシュを使用),点眼後の閉瞼,鼻涙管押さえ,あふれた点眼液の拭き取りを各C25%として合計して算出した.CIII考按医療機関で行う点眼指導は医療従事者に都合のよい処方日数ごとで行う傾向にあることから11,12),本研究で調査した項目を含む点眼の実施率(図1)を考慮した適切な指導間隔で行うことはむずかしい.動画視聴後の主要評価C4項目の実施率は,20分後にC82%,60分後にC70%,24時間後にC70%,1週間後にC61%と経時的に負の線形相関で減少していた(図1).これは,ドイツの心理学者CEbbinghausがC1885年に発表した二次関数の忘却曲線とは異なる負の非線形関数だった13).理由としては,Ebbinghausは文字や音節を記憶し保持量を調べた結果であるが,今回は動画視聴の記憶を利用した実施率であり,一般的に人間の記憶情報は視覚や聴覚から得るものが多いため,文字を記憶するより記憶が保持しやすいと考える.また,Ebbinghausの実験は意味をもたない音節の記憶という実験なのに対し,今回の適切な点眼行動の動画のほうが知識として覚えやすいため,Ebbinghausの忘却曲線とは異なる記憶の経時消失になったと考えられる.滴下成功率は,動画視聴群ではC3回目(視聴後C60分後),5回目(視聴後C1週間後)以外で有意差があり(p>0.01),増加していたのに対し,動画未視聴群では有意差がなく,点眼成功率に変化はなかった(図2).動画視聴群の点眼成功率が上昇した理由は,開瞼方法の変化が要因と考えられる14).点眼失敗例の多くは点眼薬を持たない手で上眼瞼と下眼瞼を引いて点眼,指で下眼瞼を引くことなく片手のみで点眼していた.滴下成功率は人差し指で下眼瞼を引く動画視聴後に有意な増加(p<0.01)を示した(図2).動画視聴後では点眼成功率が増加した原因は下眼瞼結膜が露出して受け皿となり,薬液が飛び跳ねて眼外に流出することなく,点眼薬を滴下する位置が明確になったと思われる.あわせて薬液が眼外への流出が減少することから15),副作用の軽減が期待できる.動画視聴の有無は封筒法により無作為化したが,動画視聴群の平均年齢はC18.8歳,未視聴群はC48.2歳で有意差を認めた.被験者は各群C50名を予定して封筒法のC100封筒を用意して均等ランダム化を予定したが,実際にはC50封筒のみの使用になったことが年齢の有意差を生じた一因として考えられる.1年後の追跡調査でも動画視聴群の平均年齢はC20.8歳,未視聴群はC27.1歳で年齢の有意差を認めた.また,動画視聴後からC1年後の点眼行動を追跡したところ,原因は不明であるが,動画未視聴後群の実施率が増加した(図3).動画未視聴後群の実施率の増加は,大学キャンパス内という小さなコミュニティで研究を行ったことから,被験者間で点眼行動の情報交換があったとみられる.この結果は,医療機関の待合室で動画視聴する機会を設ければ,患者間で点眼行動の情報交換が期待できることを示唆している.CIV結論点眼指導はC60分後以降に素早く行えば,次回以降の点眼行動に好影響が期待できる.繰り返し動画を視聴することにより,自己点眼に戻ることなく,適切な点眼行動を記憶して継続することが期待できる.研究限界として動画視聴者群の96%はC10.20歳代と偏りがあり,30歳代以上の被験者数は少なかったことから高齢者を加えて再検討する必要がある.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)野呂隆彦:緑内障患者のアドヒアランス向上のために.あたらしい眼科C36:1423-1424,C20192)谷戸正樹:K-J法により把握した点眼アドヒアランスの問題点.あたらしい眼科35:1679-1682,C20183)山口洪樹,三浦剛,舩本智津子ほか:眼科クリニカルパスにおける点眼手技評価方法の統一化に向けた取り組み.日病薬師会誌48:1366-1370,C20124)NaitoT,YoshikawaK,NamiguchiKetal:Comparisonofsuccessratesineyedropinstillationbetweensittingposi-tionandsupineposition.PLoSOne13:e0204363,C20185)IkedaCH,CTsukamotoCH,CSugimotoCetal:ClinicalCsigni-.canceoftopicalinstillationtechniqueinJapaneseglauco-mapatients.PharmazieC63:81-85,C20086)谷戸正樹:点眼指導の繰り返しによる点眼手技改善効果.あたらしい眼科35:1675-1678,C20187)KotaniK:InvestigationCofCsuccessfulCeyedropCinstillationCratesandanalysisofdroppositionsusinghigh-speeddigi-talCvideoCrecordingCsystem.CJCOculCPharmacolCTherC32:C33-36,C20188)角田孝彦,佐藤文子,大村眞ほか:緑内障の点眼液による接触皮膚炎のC2例.皮膚病診療42:226-229,C20209)池田博昭,谷本知美,高本彩音ほか:点眼教育用C1分動画の作成と動画視聴後の点眼行動の変化.薬学雑誌C143:C655-662,C202310)東京医薬品工業協会点眼剤研究会,大阪医薬品協会点眼剤研究会:目薬の使い方(初版日本眼科医会監),201111)杉本文子,池田博昭,塚本秀利ほか:医薬薬連携を目的として配布した冊子「目薬CQ&A─正しい目薬の使い方─」の評価.日病薬誌C41:997-1000,C200512)池田博昭:緑内障点眼薬の薬物相互作用の解明と点眼薬物療法の費用最小化分析の確立.医療薬学C40:543-557,C201413)MurreCJM,CDrosJ:ReplicationCandCanalysisCofCebbing-haus’forgettingcurve.PLoSOneC10:e0120644,C201514)池田博昭,高本彩音,池田純子ほか:点眼の滴下成功率と滴下部位のビデオ解析,点眼の滴下成功率と滴下部位のビデオ解析.薬学雑誌140:1455-1462,C202015)池田博昭,河野清尊:みるみるわかる眼とくすり点眼剤から眼科の副作用をまとめました.薬局74:44-48,C2023***

LASIK 術後長期経過し外傷性フラップ偏位を認めた1 例

2026年1月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(1):93.98,2026cLASIK術後長期経過し外傷性フラップ偏位を認めた1例下河邉有利恵門田遊佐々木研輔佛坂扶美吉田茂生久留米大学医学部眼科学講座CLate-OnsetTraumaticFlapDislocationafterLaserInSituKeratomileusisYurieShimokobe,YuMonden,KensukeSasaki,HumiHotokezakaandShigeoYoshidaCDepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicineC目的:Laserinsitukeratomileusis(LASIK)の術後合併症の一つとして,角膜フラップ偏位をきたすことがある.LASIK術後長期経過し,頭部外傷時に角膜フラップ偏位を生じたC1例を経験したので報告する.症例:59歳,男性.10年前に久留米大学病院にて両眼CLASIKを施行.鍬で右前額部を打撲,右眼視力低下をきたしC2日後近医を受診し,当院に紹介となった.受診時に右眼視力C0.5(0.8),角膜フラップの偏位と皺襞を認め,翌日角膜フラップ下洗浄と整復術を施行した.10-0ナイロン糸にて皺襞が進展するまで単結節縫合を行い,全周C12針にて整復した.術後早期に段階的に抜糸を行い,術後C3カ月で右眼視力C1.5(n.c.)に改善した.結論:LASIK後長期経過していても,外傷によるフラップ偏位は生じることがあり,注意を要すると考えられた.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofCtraumaticC.apCdislocationClongCafterClaserCinCsitukeratomileusis(LASIK)sur-gery.CCase:AC59-year-oldCmanCwhoCunderwentCLASIKCsurgeryC10CyearsCagoCpresentedCwithCdecreasedCvisionCafterbeinghitwithahoeinhisrightforehead.Thevisualacuity(VA)inhisrighteyewas0.5(0.8)C,andcorneal.apCdislocationCandCfoldCwereCobserved.CTheC.apCwasCsurgicallyCrepositionedCwithC12CinterruptedC10-0CnylonCsuturesandstretched.Thestitcheswereremovedgraduallyearlyaftersurgery,andtheVAimprovedto1.5(n.c.)C3monthsafterthesurgery.Conclusion:EvenlongafterLASIKsurgery,.apdislocationmayoccurduetotrau-ma,butgoodVAcanbyachievedwithsurgery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(1):93.98,2026〕Keywords:レーシック,外傷,フラップ偏位,フラップ皺襞,フラップ整復術.LASIK,trauma,.apdislocation,.apfold,repositioningofthe.ap.CはじめにLaserCinCsitukeratomileusis(LASIK)は角膜屈折矯正手術の一つで,疼痛が少なく外来手術で施行可能であり,術後の裸眼視力が比較的早期に回復することから広く施行されている.LASIK術後合併症としては角膜上皮迷入(epithelialingrowth),層間角膜炎(di.useClamellarkeratitis:DLK),感染,角膜拡張症などがあげられ,角膜フラップ偏位もその一つであるが頻度は少ない1).角膜フラップ偏位はCLASIK手術後C24時間以内が多く,目をこする,目を圧迫するなどによって起こるといわれ,長期経過した例では外傷によるものが報告されている2.9).角膜フラップ偏位により起こる所見には,角膜フラップ皺襞(fold),微細な皺襞(wrinckle),微細線条(microstriae)があり,合併症としてDLK,epithe-lialingrowth,感染があげられる.今回,LASIK術後長期経過した例で頭部外傷時に角膜フラップ偏位を生じたC1例を経験したので報告する.CI症例患者:59歳,男性.主訴:右眼視力低下.現病歴:X年,両眼近視性乱視に対して久留米大学病院(以下,当院)にて両眼のCLASIK手術を受けた.マイクロケラトームはCMoria社のCM2,エキシマレーザーはアルコン社のCLADARVisionC4000を使用し,手術は問題なく終了し,その後定期的に当院へ通院していた.X+10年,農作業中に鍬が右前額部に強く当たり,右眼の視力低下を訴え受傷C2〔別刷請求先〕門田遊:〒830-0011福岡県久留米市旭町C67久留米大学医学部眼科学講座Reprintrequests:YuMonden,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicine,67Asahi-machi,Kurume,Fukuoka830-0011,JAPANC図1右眼受傷直後の前眼部写真と角膜形状解析a:散瞳後に撮影した徹照法による前眼部写真,角膜フラップに縦走するCfoldを認めた(.).b:フルオレセイン染色による前眼部写真,フラップ縁にはフルオレセインが貯留している(.).c:前眼部OCT・SS-1000AxialPower(Ketatometric).角膜不正乱視を認めた.日後に近医眼科を受診,角膜フラップ異常を認めたため当院へ紹介となった.既往歴:X年両眼正常眼圧緑内障.X年(LASIK術前)視力:右眼C0.05(1.5C×sph.8.5D(cylC.0.75DAx180°),左眼0.06(1.5C×sph.7.0D(cyl.0.75Ax10°).CX+9年時視力:右眼C0.9(1.5C×sph+1.0D),左眼C0.9(1.5C×sph+1.0D)CX+10年時(受傷直後)所見:視力は右眼C0.5(0.8C×sph+0.75D),左眼C1.2(2.0C×sph+1.0D),眼圧は右眼C7mmHg,左眼C8CmmHgであった.右眼は角膜フラップがやや耳側へ偏位し,角膜フラップに縦走するCfoldを認めた(図1a).また,フルオレセイン染色では,フラップ縁にフルオレセインが貯留していた(図1b).前眼部COCTCSS-1000CAxialCPower(Ketatometric)にて,角膜の不正乱視を認めた(図1c).以上より,頭部鈍的外傷によりCLASIKフラップの偏位が生じたものと判断し,同日入院,翌日緊急手術を施行した.手術法:手術は局所麻酔下で行った.ライトガイドでフラップの偏位,foldを確認し,フラップ縁にマーキングを施行.フラップ縁の角膜上皮をマイクロスパーテルにて.離し,フラップ下に眼内灌流液を注入してフラップの洗浄を十分に行い,整復を試みた.徐々にフラップの伸展は得られたが,フラップ皺襞が残存するために皺襞が伸展する方向に10-0ナイロン糸で縫合し,最終的にC12針角膜縫合を行った.手術所要時間はC1時間であり,手術は問題なく終了した.経過:手術翌日よりレボフロキサシン点眼液C1.5%C1日C4回,ベタメタゾン点眼液C0.1%C1日C4回,トロピカミド・フェニレフリン点眼液C1日C1回点眼を開始した.また,広範囲に角膜びらんを認めたため,久留米大学倫理委員会の承認を得てC20%自己血清点眼液C1日C4回点眼を開始し,治療用ソフトコンタクトレンズ(contactlens:CL)を装用した.術翌日は角膜形状解析にて直乱視を強く認めたが,皺襞は認めなかった(図2a,b).術後C6日,角膜上皮が再生され半抜糸を施行した.半抜糸翌日の角膜形状解析では倒乱視を認め(図2c,d),右眼視力はC0.4(n.c.)であった.術後C8日に全抜糸し,術後C13日の角膜形状解析で角膜乱視はほぼ消失し(図2e,f),右眼視力はC1.2(n.c.)であった.自己血清点眼およびトロピカミド・フェニレフリン点眼は術後C14日で中止し,同日退院となった.退院後にレボフロキサシン点眼,ベタメタゾン点眼は漸減し術後C2カ月で中止とした.術後C3カ月,右眼視力はC1.5(n.c.).フラップ縁,角膜縫合部にやや角膜混濁を認めたが,フラップは整復されていた.鼻側はややフルオレセインの貯留を認めたが,foldは認めなかった(図3a,b).角膜形状解析では角膜乱視の改善を認めた(図3c).術後C2年,右眼視力はC1.2(n.c.).フラップ縁,角膜縫合部の角膜混濁は軽減し,epithelialingrowthも認めなかった.鼻側はわずかにフルオレセインの貯留を認めた(図3c,d).角膜形状解析では角膜乱視の改善を認めた(図3e).CII考按わが国では,2000年に厚生省(現厚生労働省)からエキシマレーザーが承認されて以来,LASIKは多いときには年間約C45万件が施行された.LASIK手術施行から長期間が経過するにつれて,さまざまな長期合併症が報告されるようになったが,欧米に比較して日本ではCLASIK手術施行数が少ないこともあり,国内での報告は少ないのが現状である.今回筆者らは,LASIK手術からC10年が経過し頭部外傷によるフラップ偏位をきたしたC1例を経験した.Schmackらは,LASIKフラップの周辺部の創部は正常な角膜実質のC28.1%の接着力であり,フラップ中央はそのC1/10のC2.4%であると報告しており10),Khourirらが「the.apneverheals」と図2右眼フラップ整復後の前眼部写真と角膜形状解析a:術翌日の前眼部写真.フラップの皺襞は伸展していた.Cb:術翌日の前眼部COCT〔SS-1000CAxialPower(Ketatometric),以下同様〕.直乱視を認めた.c:術後C7日の前眼部写真.半抜糸翌日フラップの皺襞は認めなかった.Cd:術後C7日の前眼部COCT.倒乱視を認めた.Ce:術後C13日の前眼部写真,全抜糸後C5日.Cf:術後C13日の前眼部OCT.倒乱視はほぼ消失している.表現しているように3),長期経過しても外傷によるフラップを要した症例の報告を表1にまとめた2.9).最長C24年が報偏位は起こりうると考えられる.2010年以降にCLASIK術告されており,さらに年数の長い報告も今後されていくと考後C10年以上が経過し,外傷によりフラップ偏位をきたし,えられる.受傷機転は,Shihらの交通事故で詳細不明な症fold,wrinckleやCmicrostriaeなどの異常を生じ,外科治療例を除き,全例で眼部に直接受傷していた(表1).本症例で図3右眼術後3カ月と2年の前眼部写真と角膜形状解析a,b:スクレラルスキャッタリング法による前眼部写真.Ca:術後C3カ月.角膜縫合部にやや角膜混濁を認めるが,フラップは整復されている.b:術後C2年:角膜縫合部の角膜混濁は軽減し,epithelialingrowthも認めなかった.Cc,d:フルオレセイン染色による前眼部写真.Cc:術後C3カ月.鼻側はややフルオレセインの貯留を認めた.d:術後C2年.鼻側はわずかにフルオレセインの貯留を認めた.Ce,f:前眼部COCT・SS-1000AxialPower(Ketatometric).e:術後C3カ月:角膜不正乱視の改善を認める.Cf:術後C2年:角膜不正乱視の改善を認める.は,本人は鍬で右前額部を受傷し,右眼は受傷していないとから,本症例は前額部の衝撃が強く,その痛みで右眼にも鍬訴えており,診察上も外眼部や前眼部には明らかな外傷は認の一部が当たっていたことに気づいてない可能性が考えられめられなかった.しかし,フラップ偏位をきたしていることた.フラップ偏位による角膜フラップのCfoldやCwrinckle,表1LASIK術後10年以上経過し外傷でフラップの異常により外科治療を要した症例の報告著者報告年(年)年齢(歳)性別LASIKから受傷までの期間受傷機転受傷から整復までの期間おもな所見整復方法整復前視力整復後視力CHolt2)C2012C59女14年尖っていない木片5週Cfold,macrostriae,ingrowth洗浄,SCLC0.71.0(C1.2)CKhoueir3)C2013C35男10年棒5時間フラップ反転洗浄,SCLC0.01C0.8CTaneri4)C2019C49男10年紙飛行機1日Cfold洗浄,SCLC0.32C1.0CTing5)2例C2019C58男14年U字型の金属5週Cfold,ingrowth洗浄0.02(C0.025)C1.0C67男10年小枝4カ月Cfold,ingrowth洗浄C0.40.8(C1.0)CChamg6)C2020C42男10年小枝6日感染による浸潤,Cingrowth洗浄,SCLC0.2C1.0CShih7)5例C2021C34女11年交通事故42時間個別の記載なし洗浄,縫合,CSCL0.77(logMAR)0.30(logMAR)C38女10年指3時間個別の記載なし洗浄,縫合,CSCL0.30(logMAR)0.00(logMAR)C43女10年ペン5時間個別の記載なし洗浄,縫合,CSCL0.77(logMAR)0.05(logMAR)C43女10年下敷き8時間個別の記載なし洗浄,SCL0.70(logMAR)0.00(logMAR)C35男10年机の角4時間個別の記載なし洗浄,縫合,CSCL0.15(logMAR)0.05(logMAR)CCarranza-Casas8)C2022C59男16年犬にひっかかれた3時間Cfold洗浄,SCL指数弁C0.8CZhang9)C2024C59男24年トウモロコシの茎6カ月Cwrinklestriarions,ingrowth層間掻爬,洗浄,SCLC0.5C0.5当院C2025C59男10年鍬(右前額部)3日後Cfold洗浄,縫合,CSCL0.5(C0.8)1.5(nc)microstriaeは瞳孔領にかかると不正乱視を引き起こし視力低下の原因となりうるため,foldやCwrinckle,microstriaeを整復する必要がある.角膜縫合を行った症例は当院を含め5例であった(表1).フラップ下洗浄のみでフラップの伸展が得られない場合,角膜縫合を追加し整復することでCfoldの伸展が得られると考えられる.本症例においては,foldが消失するまで角膜縫合を追加したこと,さらに可能な限り早期に段階的に抜糸することで縫合糸による角膜乱視が軽減し,視力が改善したと考えられた.本症例と同様(表1とは別)に,過去にCLASIK後C7年でフラップ偏位を生じた例にフラップ縫合をC9針行い,術後早期に段階的に抜糸が行われ,視力C1.0を得た報告もあった11).本症例ではCepithelialingrowthは認められなかった.フラップ偏位に伴うCepithe-lialingrowthの場合,フラップが偏位したことにより角膜上皮細胞がフラップ縁から迷入することで発症するため,受傷からフラップ整復までの時間が長い場合に起こりやすい傾向にあると考えられる.Fernandez-Barrientosらは,受傷から整復までの時間が長いほどCepithelialCingrowthになりやすいと報告している1).EpithelialCingrowthがフラップ辺縁のみで進行が止まっている場合は慎重な経過観察でよいが,Cepithelialingrowthが瞳孔領にかかった場合や角膜融解に至った場合には視機能に大きな影響が出るため,フラップ下洗浄やデブリードマンなどの手術介入が必要となる.本症例では受傷からフラップ整復までC3日と比較的早期に整復できたこと,術中にフラップ内を十分洗浄したことでCepithelialingrowthを防ぐことができた可能性がある.また,フラップ整復後にはCepithelialCingrowthやCDLKなどの合併症を防ぐため,フラップ側とベッド側の接着を良好にしておく必要があると考える.角膜間の接着を良好にする方法として,フラップ整復術の際に眼内灌流液を蒸留水でC2倍希釈し意図的に角膜フラップに浮腫を起こす報告もあった12).本症例では角膜縫合と治療用CCL装用により角膜の接着が良好となり,術後にCepithelialCingrowthやCDLKなどの発症がなかったと考えられた.CIII結論今回CLASIK術後C10年という長期経過後,外傷によりフラップ偏位が生じた症例を経験した.LASIK術後長期経過していても,外傷によるフラップ偏位は生じることがあり,注意が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)Fernandez-BarrientosCY,COrtega-UsobiagaCJ,CBeltran-SanzCJCetal:E.cacyCandCsafetyCofCsurgicallyCmanagedClatetraumaticLASIK.apdisplacementsinastudyof66cases.JRefractSurgC38:270-276,C20222)HoltCDG,CSikderCS,CMi.inMD:SurgicalCmanagementCofCtraumaticCLASIKC.apCdislocationCwithCmacrostriaeCandCepithelialCingrowthC14CyearsCpostoperatively.CJCCataractCRefractSurgC38:357-361,C20123)KhoueirZ,HaddadNM,SaadAetal:Traumatic.apdis-locationC10CyearsCafterCLASIK.CcaseCreportCandCliteratureCreview.JFrOphtalmolC36:82-86,C20134)TaneriS,RostA,KieslerSetal:Traumatic.apdisloca-tionbypaperairplane10yearsafterLASIK.AmJOph-thalmolCaseRepC15:100514,C20195)TingCDSJ,CDanjouxJP:Late-onsetCtraumaticCdislocationCoflaserinsitukeratomileusiscorneal.aps:acaseserieswithCmanyCclinicalClessons.CIntCOphthalmolC39:1397C-1403,C20196)ChangCYC,CLeeYC:TraumaticClaserCinCsituCkeratomileu-sis.apdislocationwithepithelialingrowth,propionibacte-riumacnesinfection,anddi.uselamellarkeratitis:acasereport.Medicine(Baltimore)C99:e19257,C20207)ShihCLY,CPengCKL,CChenJL:TraumaticCdisplacementCofClaserCinCsituCkeratomileusis.aps:anCintegratedCclinicalCcasepresentation.BMCOphthalmolC21:177,C20218)Carranza-CasasCM,CAnaya-BarraganCF,CCedilloCGCetal:CManagementCofClateCtraumaticCLASIKC.apCdislocationCrelatedCtoCdogCscratchC16CyearsCpostoperatively.CAmJOphthalmolCaseRepC25:101270,C20229)ZhangX,WangH,GaoXetal:Late-onsettraumaticcor-neal.apdislocationandsecondaryepithelialingrowth24yearsCafterCLASIK.CAmCJCOphthalmolCCaseCRepC36:C102180,C202410)CSchmackCI,CDawsonCDG,CMcCareyBE:CohesiveCtensileCstrengthCofChumanCLASIKCwoundsCwithChistologic,Cultra-structural,CandCclinicalCcorrelations.CJCRefractCSurgC21:C433-445,C200511)MoshirfarCM,CAndersonCE,CTaylorCNCetal:ManagementCofCaCtraumaticC.apCdislocationCsevenCyearsCafterCLASIK.CCaseRepOphthalmolMedC2011:514780,C201112)UrseaCR,CFengMT:TraumaticC.apCstriaeC6CyearsCafterLASIK:casereportandliteraturereview.JRefractSurgC26:899-905,C2010***