網膜色素変性とその他の網膜変性疾患に伴う黄斑浮腫CystoidMacularEdemaAssociatedwithRetinitisPigmentosaandOtherRetinalDystrophies大石明生*はじめに網膜色素変性(retinitispigmentosa:RP)は,遺伝的な異常により視細胞が進行性に変性・脱落する疾患群である.一般に症状は夜盲や求心性視野障害から始まり,中心視野は後期まで保たれる.RPE65遺伝子の異常による一部の患者に対しては遺伝子治療が承認されているが,これも障害された視細胞を回復するものではなく,RPE65遺伝子と関連しない大多数の患者に対してはそもそも有効な治療がない.一方で,RPでは合併症として白内障や.胞様黄斑浮腫(cystoidCmacularedema:CME)を生じることがある.これらの合併症は治療介入の可能性があること,後期まで保たれる中心視野に影響することから臨床上重要である.本稿では,RPに伴うCCMEを中心に,他の網膜変性疾患に関連する黄斑所見について概説する.CI有病率,原因遺伝子など上記のように,RPは周辺部から網膜が障害され,黄斑部は比較的後期まで保たれる疾患であるが,黄斑部にも変化をきたすことはまれではない.既報では,細かいものまで含めれば患者の最大半数程度にCCMEが生じるとされている1)(図1).一方で,このCCMEは網膜静脈閉塞症や糖尿病黄斑症に伴うものと比較すると,.胞腔が内顆粒層に留まることも多く,視機能への影響は限定的なことも多い.たとえば,RPやCUsher症候群(Ushersyndrome:USH)でCCMEのある眼とない眼を単純に比較すると視力は同等,またはCCMEのない眼のほうがむしろ悪い傾向である2,3).これは,一定以上網膜萎縮が進行するとCCMEが生じにくくなる,つまりCCMEが存在することが,網膜組織がある程度保たれていることを示す指標になっていることが一つの理由と考えられる.また,CMEがある眼のみに限っても網膜厚は視力とは直接相関せず,重要なのはCellipsoidCzone(EZ)の状態である4).さらに,USHでC5年間経時的に変化をみた検討では,EZの障害の速度もCCMEの有無による差がなかったとされている3).このように,すべてのCMEが積極的な治療の対象になるわけではないということには留意しておく必要がある.RPはさまざまな原因遺伝子によって引き起こされること,それぞれの遺伝子のおもな働きが異なることを考えると,原因遺伝子によってCCMEの起こりやすさが異なっても不思議はない.最近まで特定の原因遺伝子とCMEの関連を報じた研究は乏しかったが,原因遺伝子の特定されたCRP-CME179人を扱った研究で,顕性遺伝を呈するCRHO,PRPF8,PRPF3でCCMEの頻度が高かった(58.75%)一方で,X染色体連鎖性のCRP2やRPGRでは低かった(3.9%)とされている5).他の報告でも,RHOを含む顕性遺伝の遺伝子でCCMEが多く,X染色体連鎖性のCRP2やCRPGRで少ないという傾向は認められている6).ただし,この結果を解釈するには考慮すべき点もある.上記のように,網膜萎縮が進行するとCCMEを認めなくなる.一般的にCX染色体連鎖性*AkioOishi:長崎大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕大石明生:〒852-8501長崎市坂本C1-7-1長崎大学医学部眼科学教室(1)(35)C1530910-1810/26/\100/頁/JCOPYab図1網膜色素変性(RP)に伴う.胞様黄斑浮腫(CME)の光干渉断層計(OCT)所見aのような内顆粒層に少しだけ.胞腔がある症例は少なくない.このような症例は治療の対象にはならない.Cbのようにはっきりした.胞腔があってもCellipsoidzone(EZ)が保たれていれば,僚眼と視力の差がないといったことはしばしば認められる.図2RPのある眼に加齢黄斑変性(AMD)と黄斑部新生血管(MNV)を生じた例RP眼でもCAMD発症により,またはCRPの合併症としてMNVを生じることがある.Ca:右眼初診時のCOCT所見.この写真のみでは一見わかりにくいが,中心部のみしか外顆粒層が残っておらず,眼底所見とあわせCRPとそれに併発したCAMDの診断となった.左眼はCCMEを伴っていた.Cb:この症例では右眼に抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬による治療を行い,視力はC0.2からC0.3に改善した.Cc:CMEを伴う左眼も視力は0.3であった.図3若年性網膜分離症の症例OCTで内顆粒層に連なる特徴的な網膜分離所見を認める.この症例では下方周辺部にも分離をきたしていたが(↓),幸い内層のみの分離で網膜.離には至っておらず,経過をみることとなった.図4RPに伴うCMEに対して炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)の内服および点眼を行った症例CMEが増悪し,視力がC0.6からC0.4まで低下,それまで読めていた新聞が読めなくなってきたとの訴えがあった.Ca:アセタゾラミド内服によってCCMEは改善し,視力もC0.6まで戻り新聞が読めるようになった.Cb:腎機能低下のため使用を中断するとCCMEが再発し視力もC0.4に悪化した.Cc:ブリンゾラミド点眼薬C1日C2回を試したが効果がなく,1日C5回まで回数を増やしたところ改善を認めた.Cd:視力はC0.4で変わらなかったが,また新聞が読めるようになった.が,とくに長期使用では副作用が問題になる.また,一度よくなっても再発はまれではない(図4).C2.ステロイド治療ステロイドの内服や点眼は一般的に効果が乏しい.炎症の関与が大きそうな患者では,トリアムシノロンTenon.下注射,海外ではデキサメタゾンインプラントなどが用いられることがあり,有効とする報告もある.ただし,眼圧上昇や白内障などの副作用もあり,長期の使用には問題がある.C3.抗VEGF療法一部の施設から抗CVEGF薬を使用して効果があったとする報告がある.しかし,RPに伴うCCMEではVEGF過剰発現は主因でなく,VEGFの神経栄養因子としての側面を考えると,これを阻害することの潜在的な害もありうる.高額な薬剤であり,硝子体内注射という侵襲的な投与経路もあわせ,通常は推奨されない.C4.その他の治療グリッドレーザー,閾値下レーザー,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalanti-in.ammatoryCdrugs:NSAIDs),硝子体手術,ルテインなどに関しての報告もあるが8),評価は定まっていない.とくに,レーザーや硝子体手術など侵襲的な手技については非常に慎重な判断が望まれる.CVIまとめRP患者のC10.30%に黄斑浮腫を認め,可逆的視力低下要因となりうる.主病態はCMuller細胞障害とCRPEポンプ機能低下によるものと考えられており,眼科でよく問題になる血管からの漏出によるものとは異なる.診断はおもにCOCTによるものとなり,治療効果の判定にも用いる.治療はCCAIが第一選択だが,適応外である.治療は形態的,機能的な反応をみながら行う.そもそも視機能にあまり影響していないこともあり過剰治療は避けるべきである.文献1)LiewCG,CStrongCS,CBradleyCPCetal:PrevalenceCofCcystoidCmacularoedema,epiretinalmembraneandcataractinreti-nitispigmentosa.BrJOphthalmolC103:1163-1166,C20192)MakiyamaY,OishiA,OtaniAetal:Prevalenceandspa-tialdistributionofcystoidspacesinretinitispigmentosa:CinvestigationCwithCspectralCdomainCopticalCcoherenceCtomography.RetinaC34:981-988,C20143)ArrigoCA,CAragonaCE,CAntropoliCACetal:TheCimpactCofCcystoidCmaculopathyCinCUSH2ACretinitispigmentosa:aCretrospective5-yearanalysis.RetinaC45:1959-1966,C20254)OishiA,OtaniA,SasaharaMetal:Photoreceptorinteg-rityandvisualacuityincystoidmacularoedemaassociat-edCwithCretinitispigmentosa.CEye(Lond)C23:1411-1416,C20095)TestaFKaraliM,BocciaRetal:CystoidmacularedemainCnon-syndromicCretinitispigmentosa:associationsCwithCcausativeCgenesCinCaClargeCcohort.CInvestCOphthalmolCVisCSciC66:5,C20256)AsbothB,SanroccoA,BeszterceiBetal:Cystoidmacu-larClesionsCinCinheritedCretinaldiseases:prevalence,Cchar-acteristics,andgeneticassociationsinahungariancohort.Genes(Basel)C16:1212,C20257)ReichenbachCA,CWurmCA,CPannickeCTCetal:MullerCcellsCasCplayersCinCretinalCdegenerationCandCedema.CGraefesCArchClinExpOphthalmolC245:627-636,C20078)StrongCS,CLiewCG,CMichaelidesM:RetinitisCpigmentosa-associatedCcystoidCmacularoedema:pathogenesisCandCavenuesCofCintervention.CBrCJCOphthalmolC101:31-37,C20179)HeckenlivelyCJR,CJordanCBL,CAptsiauriN:AssociationCofCantiretinalCantibodiesCandCcystoidCmacularCedemaCinCpatientsCwithCretinitisCpigmentosa.CAmCJCOphthalmolC127:565-573,C1999(39)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C157