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オキュロミクスとその展望

2026年3月31日 火曜日

オキュロミクスとその展望OculomicsandItsPerspective三宅正裕*はじめに眼はしばしば「全身の窓」と称される.眼底を覗けば,高血圧による細動脈狭窄,糖尿病性の微小血管障害,動脈硬化の進行,さらに神経変性や腎障害など,身体の多様な病態が反映されていることが知られている.すなわち,眼底とは「生体内部を非侵襲的に直接観察できる臓器」であり,脳や心血管,腎臓と密接に連動する全身の鏡である.この「眼と全身の相関」は古くから注目されてきたが,近年,深層学習(ディープラーニング,deeplearning:DL)を中心としたAI技術の発展により,その概念は質的に変化した.人工知能(arti.cialintelligence:AI)が眼底画像から,年齢・性別・喫煙歴・血圧・血糖など,従来は採血や測定を要した多様な全身情報を直接推定できるようになったのである.DLによって,眼底がもはや「観察の対象」ではなく,「情報を抽出するセンサー」として再定義されたと言える.さらに,この動きは基盤モデル(foundationmodel)の登場によって新たな段階に入った.これらのモデルは,数百万枚規模の眼底画像を事前学習し,わずかなラベル付きデータで多様な疾患(心不全,糖尿病,認知症など)を予測できる.従来の単一疾患ごとのAIモデルから,全身状態を包括的に推定する「汎化された医療AI」への転換である.すなわち,眼底から読み取れる情報量は指数的に拡大しつつあり,眼は今や「全身のマルチモーダル指標」を映し出す生体スクリーンとして位置づけられる.このような背景のもと,オキュロミクス(oculomics)という新しい学問領域が生まれた.オキュロミクスは,眼科画像データをビッグデータ解析とAIで統合し,全身疾患の診断・予測・リスク層別化に応用する取り組みである(図1).これにあたっては,ハードウェア(高解像度イメージング),ビッグデータ(大規模連結コホート),そしてソフトウェア(AIアルゴリズム)の三位一体的進化が,この領域の急速な発展を支えている.本稿では,このオキュロミクスの最新動向を,深層学習による眼底情報抽出,基盤モデルによる進展,それによって開かれた新たな医療応用の可能性,という流れに沿って整理し,その展望を概説する.IDLによるパラダイムシフト2015年前後からのDLの登場は,眼科画像解析のありかたを根底から変えた.従来の研究では,血管径や屈曲度,乳頭径などを専門家が定義し,半自動ソフトウェア(例:IVAN,SIVA)で解析していたが,人間の眼で捉えられない情報を扱うことはできず,また,膨大な画像を扱うには限界があった.これに対して,DLは「人間が特徴を設計せず,画像そのものから特徴量を自動抽出できる」点で革命的であり,眼底から得られる情報の次元を大きく拡張した.*MasahiroMiyake:京都大学大学院医学研究科眼科学〔別刷請求先〕三宅正裕:〒606-8507京都市左京区聖護院川原町54京都大学大学院医学研究科眼科学(1)(55)2830910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1眼に映る全身疾患のオーバービュー眼は「全身の窓」として,脳・心血管・腎・肝など多臓器の病態を反映する.ディープラーニングをはじめとする人工知能(AI)技術の発展により,眼底画像から神経変性疾患(Alzheimer病,Parkinson病,多発性硬化症),心血管疾患(冠動脈疾患,心血管イベント),代謝疾患(高血圧,高血糖,脂質異常症),腎疾患(慢性腎臓病,糖尿病性腎症),および肝胆疾患など,従来は血液検査や画像検査を要した全身情報を非侵襲的に推定できるようになった.オキュロミクスは,このような「眼を通じた全身疾患の解析」を統合的に捉える新たな研究領域である.個別化医療非侵襲的アウトカムスクリーニング改善科学的洞察疾患の早期検出費用対効果のよい診断適時介入経済的負担の軽減図2オキュロミクスがもたらす臨床的価値オキュロミクスは,眼底画像を通じて全身疾患を非侵襲的に評価する新たな医療パラダイムである.これにより,費用対効果の高い診断,疾患の早期検出,適時介入が可能となり,個別化医療やアウトカム改善,医療経済負担の軽減へとつながる.さらに,網膜を介した生体情報の解析は,病態理解を深化させる「科学的洞察(scienti.cinsights)」をもたらし,医療と研究の両面で新たな価値を創出する.-Ahdiらは,眼底年齢と実年齢の差の指標として,実年齢に眼底年齢を回帰した残差を眼底年齢加齢(eyeageaccel)と定義し,ゲノムワイド関連解析を行った.この結果,38の遺伝子座で示唆的な関連が得られ,そのうち12遺伝子座はゲノムワイドレベルで有意な関連を示した.非常に強い関連を示したのはSH3YL1,ACP1,ALKAL2の3遺伝子を含む遺伝子座で,これはのちに行われた筆者らの日本人での研究においても再現性が確認されている.また,眼科医にとって興味深いのは,加齢黄斑変性の疾患感受性遺伝子であるARMS2がヒットしている点である.これらヒットした遺伝子が他疾患の疾患感受性遺伝子と重複しているかどうかを評価したところ,黄斑網膜厚,注意欠陥多動性障害,加齢黄斑変性,等価球面度数,屈折異常などと共通点がみられた.筆者らも長浜スタディの参加者においてretinalagegapを計測して全身疾患との関連を評価したところ,脂質異常症と糖尿病の存在が有意に関連していた.Reti-nalagegapは高血圧・脂質異常症・糖尿病・脳梗塞・心疾患の発症を予測することはできなかったが,高血圧や脂質異常症が発症するとretinaagegapが大きくなる(網膜年齢と実年齢の乖離が大きくなる)ことがわかった.このように,眼底年齢と実年齢の乖離は,各種疾患との関連が見られるのみならず,ゲノムレベルで評価しても強い関連をもつ遺伝子も同定されており,加齢に伴う微小変化を統合的に反映する可能性のある興味深い新規バイオマーカーである.2.心血管・代謝疾患の予測心血管疾患はオキュロミクス研究の中心領域である.眼底血管の口径・屈曲度などが動脈硬化や高血圧の指標となりうることは昔から知られていたが,人間の眼による読影には限界があり,精密な予測はむずかしかった.しかし,AIモデルを用いれば,冠動脈石灰化スコア(coronaryarterycalciumscore:CAC)や心筋梗塞リスクを非侵襲的に推定できることが明らかになっている.たとえば,Rimらは21万枚超の眼底画像を用い,冠動脈石灰化の存在確率を推定する深層学習モデルreti-nalCACscore(RetiCAC)を開発・検証した.Reti-CACは,CACの有無を予測する性能でAUC0.742(95%信頼区間:0.732.0.753)を示し,単一の臨床パラメータモデルをすべて上回った.これは外部検証でも一定の精度を示したことから,RetiCACはCT計測と同等の心血管イベント予測性能を示すと報告されている.このアプローチは,放射線被曝を伴わず,低リソース環境でも容易に取得可能な眼底画像を活用できることから,非侵襲的で汎用性の高い心血管スクリーニングツールとしての応用が期待される.代謝疾患領域でも,AIは血糖・HbA1c・脂質・腎機能〔推算糸球体濾過量(estimatedglomerular.ltrationrate:eGFR)など〕を推定できることが報告されている.Zhangらは,57,672名から得られた115,344枚の眼底写真を用いて,慢性腎臓病(chronickidneydis-ease:CKD)および2型糖尿病(type2diabetesmelli-tus:T2DM)を同時に検出する深層学習モデルを開発した.このモデルは,眼底画像単独ないしは臨床メタデータ(年齢・性別・BMI・血圧など)と組み合わせてCKDおよびT2DMを識別でき,AUC0.85.0.93の高い性能を示した.このモデルは,血液検査に依存せずにeGFRを平均絶対誤差11.1.13.4ml/分/1.73m2で推定,血糖値を0.65.1.1mmol/lの誤差で予測できた.さらに,外部検証やスマートフォン眼底画像による前向き試験でも再現性が確認され,疾患進行リスクの層別にも有用であることが示された.この研究は,眼底画像が腎・代謝機能の非侵襲的バイオマーカーとしても利用可能であることを初めて大規模に実証し,オキュロミクスの応用範囲を「臓器疾患」から「生化学的表現型」へと拡張した.3.神経疾患の予測眼と脳は発生学的に同一の外胚葉由来構造をもち,血管・神経の微細構築も相似している.このため,古くから眼底所見が中枢神経疾患の間接的指標となることが知られてきた.近年ではDLを活用することで,この関連がより定量的かつ予測的に示されつつある.Cheungらは,11の多国籍コホートから収集された12,949枚の眼底画像(AD患者648名・対照3,240名)を用いて眼底写真のみからAlzheimer型認知症を識別する286あたらしい眼科Vol.43,No.3,2026(58)深層学習モデルを開発した.モデルにはE.cientNet-B2を基盤ネットワークとして採用し,両眼の視神経乳頭中心像および黄斑中心像(計4枚)を統合する「bilateralmodel」を構築した.内部検証データセットでは,精度83.6%(±2.5),感度93.2%(±2.2),特異度82.0%(±3.1),AUC0.93(±0.01)を達成した.外部テストデータでは,国・施設の異なる5研究を用いてAUC0.73.0.91を維持し,うち三つのコホートではpositronemis-siontomography(PET)によるアミロイドb陽性・陰性を分別可能であった(AUC0.68.0.86)と報告されている.この研究は,眼底画像からADを高精度に検出できることを初めて多施設レベルで示したものであり,非侵襲的な認知症スクリーニングの可能性を拓いた.現在では,光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT)や光干渉断層血管撮影(OCTangiogra-phy:OCTA)による網膜神経節細胞層・毛細血管密度解析と組み合わせることで,軽度認知障害(mildcogni-tiveimpairmen:MCI)や前臨床期ADにおける神経変性の早期検出をめざす試みも進展している.これらの成果は,眼底が「脳を覗くための新しい窓(anewwin-dowtothebrain)」として中枢神経疾患の予防・早期診断の入口となりうることを示している.III基盤モデルの登場とオキュロミクスの加速1.基盤モデルとは医療AI研究は近年,個別疾患・個別表現型を対象とする教師あり学習から,大規模自己教師あり学習へと移行しつつある.この流れのなかで登場したのが基盤モデル(foundationmodel)と総称される新たな枠組みである.基盤モデルとは,膨大なデータを事前学習し,得られた特徴表現を多様な下流タスクに転移させることで,少量のラベル付きデータでも高精度な学習を可能にするモデル群をさす.自然言語処理でいうとChatGPTの元となっているGPT5にあたる(GPT5という基盤モデルに,Q&Aという下流タスクを学習させたものがChatGPTである).これは,医療画像分野においても「疾患ごとに学習するAI」から「基盤的視覚表現を共有するAI」への移行を意味する.眼科領域における代表的研究が,RETFoundである.RETFoundは英国NHSデータベースの約90万枚の眼底画像と約70万枚のOCT画像を用いてVisionTrans-former(ViT)をベースに自己教師あり学習を行い,多疾患転移性能を検証した.糖尿病網膜症・緑内障・加齢黄斑変性などの眼疾患だけでなく,心不全やParkinson病などの全身疾患のリスク推定にも一定の汎化性能を示した.基盤モデルを使用することにより,従来よりも少ないラベル付きデータによって高精度のモデルを作成することが可能となることから,オキュロミクスの加速が大きく期待される.このようななかにおいて,基盤モデルを自国で作成することの重要性が増すと考えられており,各国で競争が始まっている.2.眼科領域の基盤モデルの具体例RETFoundの登場以降,眼科領域では基盤モデルの概念を応用した多様な試みが報告されている.これらは単なる疾患分類精度の向上にとどまらず,眼底画像を多疾患・多モダリティ解析のための生体情報プラットフォームとして再定義する動きを加速させている.RETFoundは,英国Moor.eldsEyeHospitalのデータセットなどから得られた904,170枚のカラー眼底写真と736,442枚のOCT画像を用いてViTベースの自己教師あり学習を行った.上述の通り,学習後の表現を下流タスクに転移した結果,糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・緑内障といった眼疾患だけでなく,心不全やParkinson病などの全身関連タスクにも一定の性能を示した.この流れを汎用化したのが,VisionFMである.VisionFMはCT,X線,病理画像など複数の医用モダリティを横断的に統合したマルチモーダル・マルチタスク型基盤モデルであり,約340万枚の画像と50万人超の被験者データから事前学習を行った.眼底画像はその一部として扱われ,少数データでも精度を保つ転移性能が報告された.眼科特化モデルに比べ精度はやや劣るが,医療画像横断的なモデルを実現した点で意義が大きい.さらに,画像基盤モデルを言語情報と結合する試みも進んでいる.RetiZeroは,画像と言語の対応関係を学(59)あたらしい眼科Vol.43,No.3,2026287

眼と糖尿病

2026年3月31日 火曜日

眼と糖尿病EyesandDiabetes三田村瑞穂*齋藤理幸*はじめに糖尿病網膜症(diabeticretinopathy:DR)は日本における視覚障害の原因疾患の第3位であり1),とくに労働年齢層における失明原因としてもっとも多い疾患である.網膜は全身の窓であるといわれ,人体で唯一微小血管系を直接観察できる部位として積極的に研究されている器官であり,網膜の状態と全身の状態を結びつける研究は兼ねてより行われてきた.近年,画像解析技術手法や人工知能(arti.cialintelligence:AI)の発展に伴って,この事実が再度クローズアップされており,眼から得られる情報と全身状態の関連を探求する学問はオキュロミクス(oculomics)と名づけられている2).IDRの自動診断DRについても例外ではなく,2018年には米国で,AIによるDRに対する自動診断システムであるIDx-DR(DigitalDiagnostics社)が承認され3)(図1),カナダでも同様のスクリーニング機器であるEyeArtを承認,2022年には農村部に同機器を提供する民間サービスが発表された.これらの自動診断システムは,眼科医が眼底検査や眼底写真の読影をしなくても自動でDRのスクリーニングを行ってくれるため,眼科医の労力を減らしてくれるスクリーニングツールとして非常に重要であると考えられる.IDx-DRは,図2のように眼底写真から出血や軟性・硬性白斑を検出して,DRの有無を自動的に判定してくれる.しかし,眼底における糖尿病性変化とは出血と白斑だけではない.糖尿病網膜症の発症に先行する眼底所見としてよく知られているものに,網膜血管の変化がある.眼底写真を用いて網膜血管径を測定した先行研究では,網膜血管の拡大は網膜症の予測因子であり,網膜細動脈拡張は1型糖尿病の若い患者の網膜症の発症を予測すること4,5),また,糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)では発症前に網膜細動脈細静脈およびそれらの黄斑枝が有意に拡張伸長している6)といった報告がある.このように,DRにおける眼底変化は人間の眼で容易にわかる所見からわかりづらい所見まで多岐にわたるが,AIを用いてDRの「有無」を学習し判定するときには,AIがこの血管変化を検出することは困難であると考えられる.その理由の一つは,出血や軟性・硬性白斑の有無という指標はわかりやすいからである.AIは判定精度の向上を至上命題として画像を解析するため,網膜血管の変化よりもわかりやすい出血や白斑の有無を検出したほうが判定精度が向上するので,微細な網膜血管の変化はAIには無視されてしまう.理由の二つめは,そもそも血管変化をAIに学習させていないからである.糖尿病があり網膜血管に変化があっても,DRがない,つまり出血や白斑がない眼は「網膜症なし」として学習させているので,当然基準に該当しない網膜血管の変化は学習対象とならず無視されてしまうわけである.それでは,DR発症の予測という観点に立ってみるとどうであろうか.*MizuhoMitamura&MichiyukiSaito:北海道大学大学院医学研究院眼科学教室〔別刷請求先〕三田村瑞穂:〒060-8648北海道札幌市北区北14条西5北海道大学大学院医学研究院眼科学教室(1)(47)2750910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1眼科用AI医療機器・IDx-DR糖尿病網膜症(DR)を1分で自動診断できる.(https://www.healthvisors.com/en/idx-dr/より転載)Lesion-BasedDiseaseDetectionLeslonDetectionQualityDiseaseAssessmentPassAssessment:AnatomyDR+/DR-Localization図2IDx-DRによる画像解析と判定網膜のデジタル画像を独自のAIアルゴリズムで解析し,DRが陽性か陰性かの判断を行う.(https://www.healthvisors.com/en/idx-dr/より転載)AI:arti.cialintelligence,DL:deeplearning.図3ニューラルネットワークの概念図(https://medium.com/@UdacityINDIA/di.erence-between-machine-learning-deep-learning-and-arti.cial-intelligence-e9073d43a4c3より改変引用)図4ニューラルネットワークを用いた画像認識の1例(https://wiki.tum.de/display/lfdv/Image+Semantic+Segmentationより転載)ニューラルネットワーク生成図5HokkaidoUniversityretinalvesselsegmentation(HURVS)model筆者らが開発したCHURVSmodelは,眼底写真から網膜動静脈を自動識別するニューラルネットワークである.(文献C7改変より改変引用)(pixels)(pixels)動脈面積5,00010,00015,000静脈面積10,00020,00030,0002,5002,5002,500(cm/秒)2,5001,0001,5002,000(cm/秒)2,500脈波伝播速度脈波伝播速度動脈面積R=-0.40,静脈面積R=-0.36,各p<0.001図6脈波伝播速度と動脈面積,静脈面積との負の相関(文献C9より改変引用)図730歳代の糖尿病患者の眼底DR発症前に比較的血管密度が高い領域,とくに動脈で血管密度が変化する.Ca:網膜動脈.b:網膜静脈.赤領域:増加.青領域:減少.(筆者らが作成)図8HokkaidoUniversitymacular.uidsegmentation(HUMFS)modelHUMFSmodelはCOCT画像から網膜液の予測画像を作成するニューラルネットワークである.(文献C15より引用)図9網膜液(MF)画像生成の代表的画像a,d:糖尿病黄斑浮腫(DME)の網膜液(MF)のみを抽出した網膜内液(IRF)画像.Cb,e:面積測定用の二値化画像.c,f:平均輝度および輝度分散を測定するための重み付け画像.(文献C16より引用)図10Gradient-weightedClassActivationMapping(Grad-CAM)画像AIが視力の判定に重要であると認識した部位を可視化したCGrad-CAMのC1例.(筆者らが作成)=メンテーションモデルを用いて,定量的・定性的なCMFのパラメータを分析できたことは意義があると考える.この定性的CMFパラメータは,MF内部の高反射性物質の濃度の変化と不均一性を反映している可能性があり,DR進行に伴うCDME病態の理解を深めるうえで有用であると考えられる.また,同研究ではCMFのみを抽出したマスク処理COCT画像から視力を推量することが可能であった.MFの形態や性状が最終的に視力に影響を与えることが証明されるとともに,今後どのようなCMFが視力に影響を及ぼすのか解析対象として有用であることが示された.図10はCAIが視力の判定に重要であると認識した部位を可視化したCGradient-weightedCClassCActivationMapping(Grad-CAM)画像18)であるが,MF部位やCMFが存在しない部位がさまざまに強調されており,MFの性状(形態,輝度,部位など)やそれ以外の複数の微細構造の変化を,AIが視力の判定に重要であると認識している可能性がある.このCDME研究の展望としては,AIの判断根拠部位の解析により黄斑浮腫と視力の関係をより明らかにできると考え,治療薬剤の種類による黄斑浮腫の治療効果の違いなど臨床に即した研究を計画しており,今後治療効果予測や視力予後予測など臨床応用できる可能性がある.おわりに眼底画像やCOCTなどの医療画像を用いたCAI研究は,眼と全身疾患を結びつける新たな視点を与え,スクリーニングや診断から治療判定・予後予測まで筆者らの日常診療に欠かせないものとなっている.そして,眼科学の知見とCAIの計算力の融合によって,糖尿病を含めた全身疾患におけるさまざまな眼底変化を定量化,可視化することは,病態解明につながると考える.文献1)MatobaCR,CMorimotoCN,CKawasakiCRCetal:ACnationwideCsurveyCofCnewlyCcerti.edCvisuallyCimpairedCindividualsCinCJapanCforCtheC.scalCyear2019:impactCofCtheCrevisionCofCcriteriaCforCvisualCimpairmentCcerti.cation.CJpnCJCOphthal-molC67:346-352,C20232)WagnerCSK,CFuCDJ,CFaesCLCetal:InsightsCintoCsystemicCdiseaseCthroughCretinalCimaging-basedCoculomics.CTranslCVisSciTechnolC9:6,C20203)KhanZ,GaidhaneAM,SinghMetal:DiagnosticAccura-cyofIDX-DRforDetectingDiabeticRetinopathy:ASys-tematicCReviewCandCMeta-Analysis.CAmCJCOphthalmolC273:192-204,C20254)CheungN,RogersSL,DonaghueKCetal:Retinalarteri-olardilationpredictsretinopathyinadolescentswithtype1diabetes.DiabetesCareC31:1842-1846,C20085)VelayuthamCV,CCraigCME,CLiewCGCetal:Extended-zoneCretinalvascularcaliberandriskofdiabeticretinopathyinadolescentsCwithCtypeC1Cdiabetes.COphthalmolCRetinaC4:C1151-1157,C20206)KristinssonCJK,CGottfredsdottirCMS,CStefanssonE:RetinalCvesseldilatationandelongationprecedesdiabeticmacularoedema.BrJOphthalmolC81:274-278,C19977)FukutsuK,SaitoM,NodaKetal:Adeeplearningarchi-tectureCforCvascularCareaCmeasurementCinCfundusCimages.COphthalmolSciC1:100004,C20218)MitamuraM,SaitoM,FukutsuKetal:Sexdi.erencesinage-relatedCchangesCinCretinalCarteriovenousCareaCbasedCondeeplearningsegmentationmodel.OphthalmolSciC5:C100719,C20259)FukutsuCK,CSaitoCM,CNodaCKCetal:RelationshipCbetweenCbrachial-ankleCpulseCwaveCvelocityCandCfundusCarteriolarCareacalculatedusingadeep-learningalgorithm.CurrEyeResC47:1534-1537,C202210)SaitoM,MitamuraM,FukutsuKetal:Retinalarteriove-nousCinformationCimprovesCtheCpredictionCaccuracyCofCdeepClearning-basedCpulseCwaveCvelocityCfromCcolorCfun-dusphotographs.InvestOphthalmolVisSci66:63,C202511)WongTY,KnudtsonMD,KleinRetal:Computer-assist-edmeasurementofretinalvesseldiametersintheBeaverDamEyeCStudy:methodology,CcorrelationCbetweenCeyes,Cande.ectofrefractiveerrors.OphthalmologyC111:1183-1190,C200412)SchleglCT,CWaldsteinCSM,CBogunovicCHCetal:FullyCauto-matedCdetectionCandCquanti.cationCofCmacularC.uidCinCOCTCusingCdeepClearning.COphthalmologyC125:549-558,C201813)HsuHY,ChouYB,JhengYCetal:Automaticsegmenta-tionCofCretinalC.uidCandCphotoreceptorClayerCfromCopticalCcoherenceCtomographyCimagesCofCdiabeticCmacularCedemaCpatientsCusingCdeepClearningCandCassociationsCwithCvisualCacuity.BiomedicinesC10:1269,C202214)AlryalatCSA,CAl-AntaryCM,CArafaCYCetal:DeepClearningCpredictionofresponsetoanti-VEGFamongdiabeticmac-ularCedemapatients:TreatmentCResponseCAnalyzerSystem(TRAS)C.Diagnostics(Basel)C12:312,C202215)MitamuraCM,CSaitoCM,CNishiyama-HirookaCKCetal:AI-basedCanalysisCofCsurgicalCoutcomesCinCvitrectomyCwithCandCwithoutCcystotomyCforCrefractoryCcystoidCdiabeticCmacularedema.SciRepC15:14629,C2025(53)あたらしい眼科Vol.43,No.3,2026C281

眼で見つかる全身血管障害

2026年3月31日 火曜日

眼で見つかる全身血管障害SystemicVascularDisordersDetectedThroughtheEye坪田欣也*はじめに眼底は「全身の鏡」と古くからよばれ,網膜の血管変化は高血圧症や動脈硬化症など全身の血管状態を映し出す重要な指標である.眼科領域では,網膜動脈硬化の重症度評価にKeith-Wagener-Barker(KWB)分類やScheieのS/H分類が歴史的に用いられてきた.とくに,Keith-Wagener-Barker分類(KWB分類)は高血圧性網膜症の古典的な分類として知られ,健診の現場などで広く使われてきた1).一方で,Scheie分類は網膜動脈硬化度(S0.S4)と高血圧性変化(H0.H4)をそれぞれ評価する特徴をもち,高血圧症の眼底所見判定基準として定着している2).こうした古典的な手法により,眼科医は全身の血管疾患の影響を眼底所見から評価し,内科的管理に役立ててきた3).近年では,眼科領域にオキュロミクス(oculomics)とよばれる新たな概念も登場しつつある.オキュロミクスは網膜をはじめとする網膜の画像データを高度に解析することによって,従来の肉眼では捉えきれない微細な変化を検出し,各種データ処理手法や人工知能(arti.cialintelligence:AI)の発展によって,眼所見から全身疾患を予測することが改めて注目され,眼科領域でのオミクス技術を活用した研究や診療の概念をさす造語である.オキュロミクスの台頭によって,眼科は古典的な診察所見のみならず,AIとビッグデータを活用した最先端の全身スクリーニングの場へと変貌しつつある.本稿では,動脈硬化,高血圧や血管炎症候群などの全身血管障害を示唆する眼所見から,オキュロミクスの新しい知見について紹介する.I高血圧性網膜症と網膜動脈硬化症高血圧症による網膜血管の変化は,高血圧性網膜症(高血圧性眼底)と網膜動脈硬化症の二つの側面がみられる.高血圧性網膜症とは,急性または可逆的な血圧上昇による網膜血管の攣縮や透過性亢進による所見をさし,軽度の網膜細動脈狭細や局所的な動静脈交叉現象から,重症例では網膜出血,硬性白斑,軟性白斑,乳頭浮腫に至る段階的な所見を呈する(図1).KWB分類ではI群(軽度の狭細),II群(狭細と交叉現象の著明化),III群(網膜出血や白斑の出現),IV群(乳頭浮腫の合併)と4段階に分類される.急性発症した悪性高血圧(高血圧緊急症)では漿液性網膜.離を伴うこともあり,Vogt-小柳-原田病と誤診されることもある(図2)4).近年は降圧療法の進歩により悪性高血圧眼底(IV度)を目にする機会は減少したものの,軽度の網膜症所見であっても心血管イベント発症リスクの上昇と相関することが報告されている5).日本の吹田研究(SuitaStudy)では,KWB分類で軽度と判定される網膜症所見を有する高血圧患者は網膜所見のない患者に比べ将来の脳卒中リスクが有意に高いことが明らかとなった6).したがって,高血圧性網膜症の評価は単に眼合併症の有無をみるだけでなく,全身の臓器障害の有無や今後のリスク予測において重要であることが示された.KWB分類I群以上は血管疾患リスクおよび脳卒中リスクと正の相関を示してお*KinyaTsubota:東京医科大学臨床医学系眼科学分野〔別刷請求先〕坪田欣也:〒160-0023東京都新宿区西新宿6-7-1東京医科大学臨床医学系眼科学分野(1)(39)2670910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1高血圧性網膜症の眼底写真a:右眼.Cb:左眼.両眼ともに網膜出血,黄斑近傍の硬性白斑,乳頭周囲の軟性白斑,一部銀線動脈がみられ,右眼には網膜下出血と硝子体硝子体出血まで伴っている.Keith-Wagener-Barker分類のCIII群,Scheie分類のHIII度,SIV度.ab図2悪性高血圧(高血圧緊急症)に伴う漿液性網膜.離a:右眼.b:左眼.乳頭周囲の出血・白斑に加え,後極部を中心とした漿液性網膜.離がみられ,OCTではVogt-小柳-原田病急性期に類似した漿液性網膜.離を呈しているが,脈絡膜の肥厚はみられない.-図3Hollenhorst斑(網膜動脈内コレステロール塞栓)網膜動脈分枝内に黄色光沢を伴う塞栓子がみられ(.),硝子体出血,網膜新生血管と増殖性変化までみられる.図4多発血管炎性肉芽腫症の眼球破裂a:転倒受傷前.角膜輪部周辺の強膜の菲薄化がみられ,脈絡膜が薄く透見されている.b:転倒受傷後.転倒により眼球を打撲し,強膜菲薄部が裂け眼球破裂をきたした.図5顕微鏡的多発血管炎による虚血性視神経症a:右眼.b:左眼.右眼の視神経乳頭は蒼白浮腫をきたし,乳頭周囲には虚血を思わせる軟性白斑様の変化と動脈白線化がみられる(Ca1).左眼の動脈血管の一部は反射が亢進しているものの明らかな虚血を疑う所見はみられない(Cb1).OCTAでは右眼に視神経乳頭周囲領域の毛細血管灌流低下を示す低信号がみられ(Ca2),左眼の視神経乳頭周囲領域の灌流低下はみられない(Cb2).眼徴候を手がかりに血管炎症候群が診断される症例も少なくなく,眼科医はぶどう膜炎や強膜炎を発見した際には常に背景にある全身疾患を鑑別にあげる必要がある.とくに原因不明の血管炎性眼疾患に遭遇した場合は,リウマチ専門医との連携のもとで早期に全身検索を行い,適切な診断と治療につなげることが患者の予後改善につながる.PANとCAAVにおけるオキュロミクスは,光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)/光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)などの有用性の報告が蓄積しつつあるものの(図5)17,18),どの眼所見が血管炎の発症・再燃・全身イベントを一貫して予測しうるかは,現段階では確立していない.一方で,測定・解析の標準化と前向き検証が進めば,将来的に臨床予測へ実装可能となる見込みがある.おわりに眼を通じて全身の血管疾患を診るという眼科の伝統的アプローチは,古典的な眼底所見の把握からCAI時代のオキュロミクスへと大きな広がりを見せている.高血圧性網膜症の所見は依然として患者の全身管理における貴重な指標であり,眼科医はそれらを正確に評価・報告することで内科診療に寄与している.一方で,網膜に現れるサインから全身疾患を予見しようとする試みはますます高度化しており,深層学習(ディープラーニング,Cdeeplearning:DL)技術の応用により,これまで人間が捉えきれなかった微細なパターンから疾患リスクを読み解くことが可能になりつつある.高齢社会を迎えるなかで生活習慣病や認知症の早期発見・予防が重要課題であり,眼科がその入り口として大きな役割を果たすことが期待される.今後,オキュロミクスのエビデンスが蓄積され実用性が高まれば,眼科健診での眼底写真一枚から個々の患者の心血管リスクプロファイルや臓器障害の程度を評価し,必要に応じて専門診療科へ迅速に紹介する,といった新たなクリニカルパスが確立する可能性もある.これは眼科医にとって従来の視力や眼病変の管理を超え,全身の健康管理に深く関与することを意味する.幸い,眼科医療はテクノロジーとの親和性が高く,多くの眼科医や研究者を中心にCAI性能のさらなる向上やデータサイエンスへの関心も高まりつつある.「予防眼科」ともよぶべき新しいコンセプトのもと,眼科と他科の垣根を越えた包括的な医療提供が将来のスタンダードになるかもしれない.古典的知見と最新技術の融合により,眼科診療は今後ますます発展し,患者の全身の健康長寿に貢献できる分野へと進化していくことが期待される.文献1)KeithCNM,CWagenerCHP,CBarkerNW:SomeCdi.erentCtypesofessentialhypertension:theircourseandprogno-sis.AmJMedSciC268:336-345,C19742)SCHEIEHG:EvaluationCofCophthalmoscopicCchangesCofChypertensionandarteriolarsclerosis.AMAArchOphthal-molC49:117-138,C19533)川崎良:眼底検査の方法高血圧症に伴う眼底変化・糖尿病による眼底変化.日循環器予防誌56:226-232,C20214)HayrehCSS,CServaisCGE,CVirdiPS:FundusClesionsCinCmalignantChypertension.CVI.CHypertensiveCchoroidopathy.COphthalmologyC93:1383-1400,C19865)SairenchiCT,CIsoCH,CYamagishiK:MildCretinopathyCisCaCriskCfactorCforCcardiovascularCmortalityCinCJapaneseCwithCandwithouthypertension:theIbarakiPrefecturalHealthStudy.CirculationC124:2502-2511,C20116)LiCJ,CKokuboCY,CArafaA:MildChypertensiveCretinopathyandriskofcardiovasculardisease:theSuitaStudy.JAth-erosclerThrombC29:1663-1671,C20227)LiewG,XieJ,NguyenH,KeayL:Hypertensiveretinopa-thyCandCcardiovascularCdiseaserisk:6Cpopulation-basedCcohortsmeta-analysis.IntJCardiolCardiovascRiskPrevC17:200180,C20238)Gra.-RadfordJ,BoesCJ,BrownRDJr:Historyofhollen-horstplaques.StrokeC46:e82-e84,C20159)WongTY,IslamFM,KleinRetal:Retinalvascularcali-ber,CcardiovascularCriskCfactors,Candin.ammation:theCmulti-ethnicCstudyCofatherosclerosis(MESA)C.CInvestCOphthalmolVisSciC47:2341-2350,C200610)LiCL,CVermaCM,CWangCBCetal:AutomatedCgradingCsys-temCofCretinalCarterio-venouscrossingCpatterns:aCdeepClearningCapproachCreplicatingCophthalmologist’sCdiagnosticCprocessCofCarteriolosclerosis.CPLOSCDigitCHealthC2:Ce0000174,C202311)PoplinCR,CVaradarajanCAV,CBlumerCKCetal:PredictionCofCcardiovascularCriskCfactorsCfromCretinalCfundusCphoto-graphsCviaCdeepClearning.CNatCBiomedCEngC2:158-164,C201812)YavariCN,CGhorabaCH,CMohammadiCSSCetal:PresumedCgranulomatosisCwithCpolyangiitisCpresentingCwithCanteriorCscleritisCandCin.ammatoryCciliaryCbodyCgranuloma.CJCOph-thalmicIn.ammInfectC15:26,C2025272あたらしい眼科Vol.43,No.3,2026(44)’C-

眼で見つかる神経疾患

2026年3月31日 火曜日

眼で見つかる神経疾患RetinalImaginginNeuropsychiatricDisorders上田瑛美*はじめに眼の網膜は脳と共通点が多く,視神経を介して直接つながっている(図1a).精神神経疾患患者の剖検脳を用いた病理学的研究において,脳の神経変性の初期に網膜の神経節細胞の壊死や異常蛋白の沈着が確認されている1.5)(図1b).さらに,近年の脳画像研究では,網膜の神経節細胞層(ganglioncelllayer:GCL)の厚みと,海馬などの認知機能関連領域の萎縮との関連も報告されている.Alzheimer病やParkinson病などの精神神経疾患の形態学的評価には脳MRI検査や髄液検査が用いられるが,費用や侵襲性,定量性,撮像時間などの問題から,より簡便な手法の必要性が指摘されている.一方で,網膜イメージング技術は近年急速に進歩している.光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)では造影剤を用いずに網膜の構造や血管を詳細に描出可能であり,さらに光学フィルター付き眼底カメラを用いた特定波長での反射測定も実用化されている.これらは非侵襲的かつ簡便であり,眼科診療を超えて精神神経疾患領域での臨床応用が期待されている.本稿では,精神神経疾患のなかでもAlzheimer病とParkinson病に焦点をあて,各疾患における網膜の病理学的および臨床学的特徴を概説する.さらに,従来の眼底画像診断に加えて新たに登場したハイパースペクトル網膜イメージング(hyperspectralretinalimaging:HSRI)を紹介し,精神神経疾患における網膜イメージングの臨床的有用性について考察する.I精神神経疾患における網膜の病理学的特徴Alzheimer病やParkinson病といった代表的な精神神経疾患において,神経変性異常蛋白の沈着は脳病理の中心的所見である.一方で,網膜においても同様の変化が生じるかについて病理学的検討が重ねられてきた.これらの知見は,網膜が単なる観察しやすい組織にとどまらず,脳内病理を映し出す窓として機能し得ることを示唆する.本節では,Alzheimer病におけるアミロイドb(amyloidb:Ab)やリン酸化タウ(phosphorylatedTau:p-Tau)の沈着との関係性,ならびにParkinson病におけるaシヌクレイン(a-synuclein:aSYN)関連病変との報告を整理する.1.Alzheimer病との関連Alzheimer病患者の剖検脳を用いた病理学的研究では,GCL近傍にAbの沈着が認められることや,神経変性の初期過程で網膜に神経節細胞壊死および樹状突起構造の変化が起こることがすでに明らかとなっている1.5).APPswe/PS1ΔE9トランスジェニックマウスでは,網膜の内外網状層にAbプラークが形成され,ミクログリア活性の亢進や網膜電図の振幅の低下といった機能障害が認められた3).denHaanらの研究ではAlzheimer病患者6例と対照6例の剖検網膜を比較し,Abは網膜にも存在するが脳内とは異なる形態で特異的ではない一*EmiUeda:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕上田瑛美:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野(1)(31)2590910-1810/26/\100/頁/JCOPYb網膜と共通した病態●網膜神経節細胞の壊死●網膜神経節細胞近傍に異常蛋白が沈着●網膜血管の病変が存在図1網膜.脳ネットワークa:眼の網膜は発生学的,解剖学的,および生理学的に脳と多くの共通点をもち,脳と視神経を介して連結している.b:老年期精神疾患の病態が脳と網膜の両方に認められることが明らかになっている.病理学的研究において,脳の神経変性の初期過程で網膜の神経節細胞が壊死することや,近傍に異常蛋白の沈着が認められることなどが示されている.精神神経疾患の診断・予測に向けた網膜イメージングの多様性HSRI:ハイパースペクトル網膜イメージング(hyperspectralretinalimaging)図2精神神経疾患の診断・予測に向けた網膜イメージングの多様性多様な網膜イメージング手法(眼底カラー画像,OCT,OCTA,HSRI)は,精神神経疾患に関連する網膜症,神経変性,微細循環障害,異常蛋白沈着を反映する可能性がある.表1Alzheimer病に関連する網膜変化網膜変化網膜イメージング代表的な研究の知見網膜症の出現(毛細血管瘤,点状・斑状出血,硬性・軟性白斑などの異常所見)眼底カラー画像久山町研究による追跡調査では,網膜症はCAlzheimer病の発症リスクが上昇した11).オランダのCRotterdamstudy12)と米国のCARICstudy13)では,網膜症とCAlzheimer病発症に有意な関連はなかった.視神経乳頭周囲の網膜神経線維層および黄斑部の網膜神経節細胞層・網膜神経節細胞複合体の菲薄化光干渉断層計(OCT)Thomsonらのメタ解析ではCAlzheimer病患者において網膜神経線維層が菲薄化し,網膜神経節細胞層や網膜神経節細胞複合体も菲薄化していた14).Chanらの軽度認知機能障害患者を対象とした報告では,網膜神経線維層および網膜神経節細胞層の菲薄化が確認され,AClzheimer病の発症前から網膜変化が出現することが示唆された15).久山町研究では網膜神経節細胞層の菲薄化がCAlzheimer病と有意に関連した16).網膜毛細血管密度の低下,中心窩無血管域(FAZ)の拡大OCT血管造影画像(OCTA)CdenHaanらのメタ解析では,網膜浅層毛細血管叢の血管密度はCAlzheimer病で有意に低下し17),軽度認知障害患者や早期のCAlzheimer病患者でも認められた18).FAZの拡大や網膜深層毛細血管叢の変化は一貫した結果が得られていない.短波長域の網膜反射スペクトル変化,アミロイドCb沈着の反映ハイパースペクトル網膜イメージング(HSRI)Hadouxらの報告では,脳内のアミロイドCb沈着陽性群では短波長域で網膜に特徴的スペクトル変化が検出され,脳CPET検査におけるアミロイドCb負荷と有意に相関した19).LemmensらはCOCTでの網膜神経線維層厚とCHSRIデータを統合した結果,Alzheimer病患者と対照群をCAUC0.74で識別できた20).表2Parkinson病に関連する網膜変化網膜変化網膜イメージング代表的な研究の知見視神経乳頭周囲の網膜神経線維層および黄斑部の網膜神経節細胞層・網膜神経節細胞複合体の菲薄化光干渉断層計(OCT)Zhouらによるメタ解析では,視神経乳頭周囲の網膜神経線維層厚がCParkinson病群で有意に減少していた.黄斑部の網膜神経節細胞層・網膜神経節細胞複合体の厚みも有意に減少していた21).網膜毛細血管密度の低下,中心窩無血管域(FAZ)の拡大OCT血管造影画像(OCTA)CAndreasKatsimprisらのメタ解析では,PCarkinson病患者の網膜浅層毛細血管叢の血管密度が健常者より低下していた.CFAZ面積や網膜深層毛細血管叢については研究間で結果が不一致だった22).短波長域の網膜反射スペクトルの変化ハイパースペクトル網膜イメージング(HSRI)Parkinson病患者の短波長域(上鼻側<C490Cnm,下鼻側<C510Cnm)において,網膜反射スペクトルの低下が確認された.線形判別分析とCleave-one-outクロスバリデーションによる機械学習解析では,AUC0.60と中等度の水準であった23).us:DCP)の血管密度は全体として有意差を認めず,FAZについては拡大が認められたが,効果量や統計的有意性は一貫しなかった.さらにCBiscettiらの解析では,軽度認知障害患者や早期のCAlzheimer病患者において,SCP・DCPの灌流密度低下が検出され,血管分岐の複雑性を示すフラクタル次元の上昇も認められた18).これはCAlzheimer病の初期に,毛細血管密度の低下と並行して代償的な血管再構築が進む可能性を示唆している.OCTAを用いたメタ解析の結果,Alzheimer病ではSCPの血管密度の低下が一貫して認められ,重要な指標となることが示唆された.Cd.網膜スペクトル画像を用いた神経変性異常蛋白の検出HSRIによる網膜スペクトル画像は,ACbなどの神経変性異常蛋白の沈着に伴う網膜の構造的・光学的変化を非侵襲的に検出する手法として開発されている.Hadouxらが,脳のCpositronCemissionCtomography(PET)検査によるCACbの陽性群C15例と陰性群C20例を対象に解析を行い,眼内メラニンや水晶体混濁の影響を補正する独自アルゴリズムを適用した結果,565Cnm以下の短波長域で陽性群と陰性群の間に有意な反射スペクトル差が認められた19).補正後のスコアは陽性群で有意に高値を示し,とくに上方網膜や黄斑中心窩で顕著であった.ROC解析では,陽性群・陰性群を識別するCAUC(曲線下面積)が主解析コホートでC0.82,検証コホートでC0.87と良好な診断能を示し,スコアは脳CPET検査で定量されたCACb負荷と有意に相関した.これにより網膜スペクトル変化が脳内のCACb沈着を反映する可能性が示唆された.一方で,多波長のスペクトル情報と形態学的パラメータを機械学習で統合し,診断精度を向上させる試みも報告されている.LemmensらはCOCTでの視神経乳頭周囲のCRNFL厚とCHSRIデータを統合した結果,Alzheimer病患者と対照群をCAUC0.74で識別でき,とくに下象限CRNFLの菲薄化が有意な特徴量として抽出された20).C2.Parkinson病との関連a.OCT画像を用いた網膜層の菲薄化近年では,Parkinson病でもCOCTによる網膜構造解析が進み,客観的評価指標として注目されている.Zhouらのメタ解析によると,Parkinson病患者では視神経乳頭周囲のCRNFLの平均厚が有意に低下していた21).また,黄斑部のCGCLおよびCGCCの厚みも有意に低下しており,網膜全体にわたる変性を反映する所見と考えられる.これらの変化は,網膜内に存在するドーパミン作動性アマクリン細胞の減少や神経節細胞の変性に起因し,色覚異常やコントラスト感度の低下など臨床的な視覚症状と関連する可能性がある.Cb.OCTA画像を用いた網膜血管密度の低下Parkinson病は,網膜のCSCPの血管密度の低下との関連も示唆されている.Katsimprisらのメタ解析によると,Parkinson病のCSCPの血管密度は健常者と比較して低下していたと報告されている22).しかし,FAZや浅層血管叢(shallowCvascularplexus:SVP)の血管密度には統計的な差異は認めなかった.したがって,OCTAによるCSVPの血管密度はCParkinson病における視覚系変化や神経変性の非侵襲的マーカーとなりうる可能性がある.今後CParkinson病においてCOCTA所見を臨床応用するには,縦断的研究や多施設共同研究を通じて,パラメータの再現性や疾患進行との関連性を検証することが重要である.Cc.網膜スペクトル画像を用いた神経変性異常蛋白の検出Parkinson病患者にもCHSRIの網膜スペクトル画像によって,網膜反射スペクトルの特徴を検討した臨床報告がある23).対象はCParkinson病患者C20例と,年齢・性別をマッチさせた対照群C20例で,眼疾患の既往を有する者は除外された.黄斑部のC4領域を設定し反射スペクトルを解析したところ,Parkinson病ではとくに短波長域(上鼻側<490Cnm,下鼻側<510Cnm)で反射強度が有意に低下していた.線形判別分析とCleave-one-outクロスバリデーションによる機械学習解析では,識別能はCAUC0.60,感度C60%,特異度C50%と,中等度の水準にとどまった.HSRIによる網膜スペクトル画像がCPar-kinson病の病態やCaSYNの蓄積を反映し得る可能性を示したが,今後大規模研究やCOCT・OCTAなど他の網膜画像との統合的解析研究への進展が期待される.(35)あたらしい眼科Vol.43,No.3,2026C263脳網膜●画像データOCT,OCTA,HSRI…図3深層学習による網膜画像からの精神神経疾患推定近年では,深層学習を応用した網膜イメージングによる精神神経疾患の識別研究が急速に進展している.網膜画像から精神神経疾患に関する有用な情報を抽出し,疾患の有無を識別(診断)するとともに,進行度や重症度を推定することが期待される.’C’C’C’C-’C’C’C’C

眼で見つかる悪性疾患

2026年3月31日 火曜日

眼で見つかる悪性疾患DetectingMalignancyThroughOcularFindings中島勇魚*岸本達真*はじめに眼は全身の病態を反映する臓器であり,しばしば「全身の窓」と表現される.悪性疾患においても,眼科的な異常が全身疾患の初発所見となる場合が少なくなく,眼科医が診断の契機を担うこともありうる.眼に現れる悪性疾患には原発性の眼内腫瘍や眼窩腫瘍も含まれるが,中枢神経リンパ腫や白血病,悪性リンパ腫といった血液腫瘍,あるいは乳癌や肺癌に代表される転移性腫瘍のように,全身の病変の一部としても生じる.これらの疾患はその存在を見抜くことで全身疾患の診断や治療方針の決定に大きく貢献できるが,炎症疾患など他の眼疾患と類似し診断に難渋する例も散見される.本稿ではこれらの疾患を,眼内悪性リンパ腫・眼付属器悪性リンパ腫・白血病・転移性腫瘍の項に分け概説する.I眼内悪性リンパ腫1.疫学眼内悪性リンパ腫は網膜硝子体リンパ腫(vitreoreti-nallymphoma:VRL)ともよばれる悪性リンパ腫の一亜型である.原発性VRLと既知のリンパ腫が眼に進展した二次性VRLに大別され,頻度としては原発性VRLが多い.臨床的にはぶどう膜炎に類似した症状を呈することから「仮面症候群」とも呼称される.わが国でのぶどう膜炎全国疫学調査において,眼内悪性リンパ腫は全ぶどう膜炎の1.2%を占めると報告されており,ぶどう膜炎診療において常に念頭におく必要がある1).また,VRLは50.60歳代の比較的高齢者に好発する.VRLの生命予後は不良であり,わが国の多施設共同研究では5年生存率が約60%にとどまることが示されている.2.診断VRLの病型は大きく,硝子体混濁を主体とする型と,網膜から網膜下にかけて斑状の黄白色病変を呈する型(図1a,b)に分けられ,両者が混在する場合も少なくない.硝子体混濁は,いわゆる「オーロラ状硝子体混濁」とよばれる濃淡のある混濁として観察され,大型の細胞が確認されることがある.しかし,虹彩毛様体炎,角膜後面沈着物,網膜血管炎など所見を伴うことも多く,熟練した検者であっても他のぶどう膜炎との鑑別が困難な患者も存在する.とくに硝子体混濁型では鑑別がむずかしく,強い硝子体混濁を呈する中高年のぶどう膜炎症例において,ステロイド点眼や全身投与による消炎治療に反応が乏しい場合にはVRLを留意する.VRLにおける網膜病変は黄白色で多発し,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)では網膜色素上皮(reti-nalpigmentepithelium:RPE)の粒状影や,RPEとBruch膜の間にドーム状の隆起や網膜の波打ち像として描出される(図1c).さらに,VRLでは病変が一見自然に軽快することがあり,新しい浸潤巣と,色調が淡く萎縮傾向を示す,やや古い病変が同時に存在することも特徴の一つである.確定診断は硝子体手術によって採取した硝子体検体の*IsanaNakajima&TatsumaKishimoto:高知大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕中島勇魚:〒783-8505高知県南国市岡豊町小蓮高知大学医学部眼科学講座(1)(23)2510910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1眼内悪性リンパ腫a:網膜に多発する斑状の黄白色病変.b,c:後極に多発する白色病変を認め(b),OCTにてRPEの粒状影や結節状の隆起,網膜の波打ち像を認める(c).d:VRL治療中に生じた頭蓋内病変.-a図2眼付属器悪性リンパ腫a:結膜円蓋部に生じた結膜悪性リンパ腫.いわゆる「サーモンピンク様」病変を呈している.b,c:眼窩悪性リンパ腫におけるCT2強調CMRI画像.冠状断では両側に腫瘍を生じていることが確認できる(Cb).矢状断では上直筋に沿って,眼窩間隙を這うように腫瘍が増大していることが確認できる(Cc).図3白血病により生じた網膜症a:右眼.b:左眼.若年男性の両眼に網膜しみ状出血,火炎状出血を認める.採血で重度の赤血球および血小板低下を認め,白血球分画で異常血球が検出され,白血病と診断された.図4白血病の視神経浸潤白血病細胞が視神経に浸潤し,視神経乳頭腫脹および出血を呈している.本病変は白血病寛解期に発症し,眼部以外には異常所見を認めず,髄液検査も正常であったことから,眼所見のみで白血病の再燃と診断した.図5転移性脈絡膜腫瘍a:視神経上方に黄白色の扁平な隆起病変を認める.b:Bモードでは扁平な充実性の隆起病変が確認できる.図6網膜.離を生じた転移性脈絡膜腫瘍a,b:視力低下で紹介となり,眼底検査で胞状.離を認めた.c:エコーでは.離(.)下に充実性病変(.)を認め,脈絡膜腫瘍が想起された.既往歴に治療中の転移性耳下腺腫瘍があり,転移性脈絡膜腫瘍と診断し,放射線治療を施行した.

眼で見つかる免疫疾患

2026年3月31日 火曜日

眼で見つかる免疫疾患ImmuneDisordersRevealedThroughOcularManifestations松宮亘*はじめに眼は中枢神経系と血管・免疫系に富む特殊な臓器であり,全身の免疫異常や血管炎症が鋭敏に反映される「全身疾患の窓」としての役割を担う.とくに免疫・炎症性疾患においては,関節,皮膚,腸管など他臓器症状に先行して眼症状が出現することも少なくなく,眼科医が最初に疾患の存在に気づく機会も多い.実臨床では,原因不明のぶどう膜炎,強膜炎,網膜血管炎,視神経障害などを契機に,背後に潜む全身性免疫疾患が診断される例をしばしば経験する.本稿では,「眼で見つかる免疫疾患」という視点から,サルコイドーシス,Behcet病,Vogt-小柳-原田病の三大疾患を除く,抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophilcytoplasmicantibody:ANCA)関連血管炎(ANCA-associatedvasculitis:AAV),関節リウマチ(rheuma-toidarthritis:RA),全身性エリテマトーデス(system-iclupuserythematosus:SLE),大血管炎(巨細胞性動脈炎・高安動脈炎),炎症性腸疾患(in.ammatoryboweldisease:IBD),脊椎関節炎の6疾患をとりあげ,それぞれに併発するぶどう膜炎を含む代表的眼病変の特徴,眼症状の臨床的意義,そして全身症状に先行しうる可能性について概説し,日常診療における早期診断のポイントを整理する.I抗好中球細胞質抗体関連血管炎抗好中球細胞質抗体関連血管炎(AAV)は多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosiswithpolyangiitis:GPA),顕微鏡的多発血管炎(microscopicpolyangiitis:MPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilicgranulo-matosiswithpolyangiitis:EGPA)を含む小.中型血管炎であり,全身臓器に多彩な炎症をきたす.眼病変はAAVの重要な臓器障害の一つであり,GPAでは30%以上,EGPA・MPAでは約5.10%に認められる.GPAでは眼病変が初発症状となる割合は8.16%前後と比較的高いのに対し,EGPAでは約5%前後,MPAでは1.3%未満とされ,眼初発はGPAに特徴的である.EGPAやMPAでは多くの場合に喘息,好酸球増多,腎炎,肺病変などの全身症状が眼症状に先行するが,眼病変が全身症状に先行する例も少なくなく,診断の契機となることがある1,2).AAVにおける前眼部病変は結膜炎・上強膜炎・強膜炎・周辺部角膜潰瘍・虹彩炎(前部ぶどう膜炎)が主体である.とくにGPAでは強膜炎がもっとも多く,約25.40%を占める.強膜炎は壊死性に進展しやすく,強い眼痛とともに強膜菲薄化や穿孔をきたす重篤な病態で注意を要する.ぶどう膜炎はおもに前部ぶどう膜炎(虹彩炎)として出現し,眼内炎症に伴って前房混濁,羞明,霧視を呈し,強膜炎や角膜病変に合併することも多い.網膜病変については,網膜血管炎はEGPAで比較的多く(22%),GPAでは3%前後とされる.血管炎により血管漏出,黄斑浮腫,網膜出血が生じ,さらに網膜動静脈閉塞症へ進展すると急激な視力低下をきたす.視神経*WataruMatsumiya:神戸大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕松宮亘:〒650-0017神戸市中央区楠町7-5-2神戸大学医学部眼科学教室(1)(15)2430910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1関節リウマチに伴う壊死性強膜炎の症例(83歳,女性)a:左眼耳側上方にびまん性に広がる壊死性強膜炎を認め,強い菲薄化により脈絡膜がかすかに透見される.Cb:治療後.同部位の炎症は鎮静化したものの,強膜融解が進行し,強膜下の脈絡膜がより明瞭に透見されるようになった.bc図2全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う閉塞性網膜血管炎の症例(29歳,女性)a:カラー眼底写真.右眼耳側下方網膜に,白鞘化した血管に沿う網膜出血()を認める.また,上方および鼻側上方の網膜血管にも部分的な白色変化()を認める.Cb:フルオレセイン蛍光造影(FA).耳側下方網膜に無血管領域を認め,鼻側上方の網膜血管には血管炎を示唆する部分的な過蛍光を認める.c:OCTangiography(OCTA)画像.FAで確認された部位に一致して血流欠損領域を認め,同部の境界では網膜血管の蛇行や形態異常を認める.C-abc図3巨細胞性動脈炎に伴う前部虚血性視神経症の症例(70歳,男性)a:右眼視神経乳頭に腫脹・発赤を認め,視神経周囲には出血を伴う.b:視神経乳頭部の拡大像.c:FA.視神経乳頭上方に充盈欠損を認め,その他の部位では蛍光色素の漏出を認める.図4潰瘍性大腸炎に伴う虹彩炎の症例(36歳,女性)a:前眼部写真.左眼に毛様充血およびC6時からC9時に虹彩後癒着を伴う前部ぶどう膜炎を認める.Cb:カラー眼底写真.軽度硝子体混濁を伴うが,眼底に異常所見は認めない.図5強直性脊椎炎に伴う虹彩炎の症例(34歳,女性)a:前眼部写真.左眼に強い毛様充血およびC12時に虹彩後癒着を伴う前部ぶどう膜炎を認める.Cb:MRI所見(STIR法).仙腸関節で軽度の炎症を認める().’C—

眼で見つかる全身感染症

2026年3月31日 火曜日

眼で見つかる全身感染症CUveitisAssociatedwithSystemicInfectiousDiseases松田順繁*はじめにぶどう膜炎は,その病因から大きく感染性および非感染性(自己免疫性)に分けられる.どちらも眼局所に病変が留まらない場合も多く,眼所見を契機に全身疾患が見つかることがある.本稿では,眼局所だけではない全身感染,とくに結核・梅毒・転移性眼内炎・ウイルスについてとりあげ,日常診療でよく遭遇するものから,頻度は高くないものの鑑別に重要なものまで,各疾患概念や眼・全身所見,治療法につき概略をまとめた.CI結核再興感染症としても注目される結核によるぶどう膜炎は,他のぶどう膜炎と臨床所見が重複することが多いが,眼症状から全身の結核感染が判明することもあり,網脈絡膜炎の原因として常に念頭におくべき疾患である.豚脂様の角膜後面沈着物(keraticprecipitate:KP)や虹彩結節・後癒着,雪玉状硝子体混濁に代表される肉芽腫性の炎症を呈するが,特徴的なのは下記C3タイプの後眼部病変である.「脈絡膜粟粒結核」は全身の粟粒結核の眼所見としてみられ,網膜下レベルで黄白色円形病巣が散在する.「脈絡膜結核腫」は後極部を中心に隆起性黄白色病巣が孤立性ないしは多発性に形成される.そしてもっとも頻度が高いのは「網膜血管炎」であり,境界不明瞭な白鞘を伴った網膜静脈周囲炎と,蛍光眼底造影にて周辺部網膜に無灌流領域(non-perfusionarea:NPA)が認められる.全身検査所見としては,結核菌由来物質(puri.edCproteinderivative:PPD)に対する皮膚の遅延型過敏反応であるツベルクリン反応,血中結核菌インターフェロン(interferon:IFN)C-c(クォンティフェロン)やCT-SPOT陽性があげられる.眼外病変として肺病変を伴わない場合もあるが,とくにCNPAを伴う肉芽腫性の網脈絡膜炎をみた場合には,結核感染を想定した血液検査から実際に陽性が判明し,病変の所在を含めたさらなる全身検索へとつながることがある.治療はステロイドや散瞳薬の点眼に加え,イソニアジド(INH)やリファンピシン(RFP)を含む抗結核薬の内服,硝子体混濁が強い場合にはステロイド(プレドニゾロンC0.5Cmg/kg/日)の服用,そしてCNPAへは新生血管の破綻による硝子体出血を防ぐために網膜光凝固が必須である.CII梅毒梅毒トレポネーマ(Treponemapallidum)によって引き起こされる性感染症であり,駆梅療法や疾病予防対策により一時は患者数が減少していたが,近年再び増加傾向にある.先天梅毒と後天梅毒に分類され,先天梅毒では「角膜実質炎・内耳難聴・Hutchinson歯(上顎中切歯切縁の半月状切痕)」を代表徴候とする「Hutchinson三徴候」が認められる.*YorishigeMatsuda:信州大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕松田順繁:〒390-8621長野県松本市旭C3-1-1信州大学医学部眼科学教室(1)(3)C2310910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1黄色ブドウ球菌による細菌性眼内炎(78歳,女性)右眼の眼痛・霧視・充血を主訴に来院.前房蓄膿と,瞳孔領にはフィブリン膜が析出していた.既往歴に糖尿病があり,全身検査にて腎膿瘍が判明した.ab図2Candidaalbicansによる真菌性眼内炎(78歳,男性)既往歴に糖尿病・尿管結石・腎盂腎炎があり,尿道カテーテルが長期に留置されていた.左眼の飛蚊症を主訴に近医を受診したところ,ぶどう膜炎に対しトリアムシノロンCTenon.下注射が施行されたが悪化し当科紹介となった.Ca:前眼部.前房蓄膿と瞳孔領にフィブリン膜が形成されていた.Cb:眼底.大小不同の雪玉状硝子体混濁(真菌塊)が連なっていた.a治療前b治療後図3単純ヘルペスウイルス(HSV)樹枝状角膜炎に対し,アシクロビル眼軟膏が奏効した症例(80歳,男性)右眼の霧視・充血を主訴に来院.ゾビラックス眼軟膏C5回/日にステロイド点眼・眼圧下降点眼を併用.改善とともに漸減・終了した.Ca:治療前.右眼視力(0.5),右眼眼圧C32CmmHg.Cb:治療後.右眼視力(0.8),右眼眼圧C9CmmHg.図4水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)虹彩炎を繰り返し,部分的な虹彩萎縮と瞳孔の変形をきたした症例(81歳,男性)左眼C11時方向の虹彩が萎縮し菲薄化している.発症時,前房水CPCRからはCVZVが陽性であった.図5VZV-急性網膜壊死(ARN)に対し保存的加療が奏効した症例(17歳,男性)a:左眼の飛蚊症・霧視にて受診.周辺部網膜に多発する黄白色壊死病巣が認められた.左眼視力(0.4),左眼眼圧C43mmHg.Cb:病変は急速に癒合・拡大していき,閉塞性血管炎も生じた.Cc:アシクロビルの全身投与,ステロイド・抗血小板薬の内服を行うとともに,残存する健常部網膜に汎網膜光凝固を施行した.Cd:視神経萎縮により左眼視力(0.1)となったが,現在も網膜.離はなく経過している.d図6VZV-ARNに対し硝子体手術により網膜復位が得られた症例(47歳,女性)a:左眼のぶどう膜炎に対し近医でトリアムシノロンCTenon.下注射を施行されるも悪化.左眼視力(0.3).Cb:アシクロビルの全身投与を行うも,多発する網膜裂孔および増殖膜の牽引・収縮により網膜全.離となった.左眼視力(0.01).c,d:術後黄斑浮腫は残存するものの,最終的にシリコーンオイルタンポナーデにて後極部網膜は復位した.左眼視力(0.8).abc図7サイトメガロウイルス(CMV)角膜内皮炎に対し,1%ガンシクロビル点眼が奏効した症例(79歳,男性)既往に左眼の末期緑内障があったが,霧視・視力低下進行を主訴に来院.左眼角膜にコインリージョンを認め(.),前房水ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にてCCMV陽性であった.1%ガンシクロビル点眼C2回/日の継続にて改善した.a:初診時.b:治療前.左眼視力(0.01),左眼眼圧C21mmHg.c:治療後.左眼視力(0.2),左眼眼圧C10CmmHg.ab治療前治療後図8CMV網膜炎に対しバルガンシクロビル内服が奏効した症例a:後極血管炎型.72歳,女性.骨髄異形成症候群の既往あり,腋窩リンパ腫に対し化学療法後であった.血球減少に対し,顆粒球コロニー刺激製剤併用にて抗ウイルス薬を投与した.治療前の右眼視力(0.02),治療後の右眼視力(0.05).Cb:後極血管炎型.69歳,女性.重症筋無力症に対し長期にプレドニゾロンC10Cmg内服中.胸腺腫への化学療法後であった.治療前の右眼視力(0.3),治療後の右眼視力(0.5).c:周辺部顆粒型.72歳,男性.胃癌術後であり,頸部濾胞性リンパ腫へも化学療法後であった.治療前の右眼視力(0.4),治療後の右眼視力(0.7).右眼左眼ab図9HIV感染症および梅毒性ぶどう膜炎の症例(19歳,男性)両眼の飛蚊症を主訴に受診.両眼に硝子体混濁と網膜血管炎,網膜白斑が認められた.血液検査にてCRPR256倍,TPHA46,960倍の梅毒感染が判明し,HIVも陽性であった.抗CHIV薬にて改善し,現在も治療経過観察中である.a:治療前.右眼視力(1.0),左眼視力(0.9).b:治療開始後.右眼視力(1.5),左眼視力(1.5).’C

序説:眼で見つかる全身疾患

2026年3月31日 火曜日

眼で見つかる全身疾患SystemicDiseasesDetectableThroughtheEyes園田康平*眼は「全身の窓」といわれる.眼底を診ることで,古くから高血圧,糖尿病,腎臓病,脳圧亢進など,さまざまな全身疾患の存在を示しうることは広く認識されてきた.近年では,各種データ処理手法や人工知能(arti.cialintelligence:AI)の発展により,この事実が再び脚光を浴びている.「オキュロミクス(oculomics)」とは,眼科領域においてオミクス技術を活用した研究や診断の概念をさす新しい造語である.本特集では,現代的な視点から「眼で見つかる全身疾患」に焦点をあてた.ぶどう膜炎には多数の原因疾患が混在しているため,正確な診断が治療の成否を左右する.眼科医が診ている疾患であるが,もう一度「すべてのぶどう膜炎は眼だけの病気ではなく,全身病に起因する」という原則を思い出していただきたい.ぶどう膜炎を診たときに想起すべき全身疾患は大きく感染症,免疫疾患,悪性疾患の三つであり,早期に鑑別することはぶどう膜炎治療だけでなく,患者の生命予後にかかわる.眼科所見から,いかにこの三つを鑑別するのか?感染症については信州大学の松田順繁先生,免疫疾患については神戸大学の松宮亘先生,悪性疾患については高知大学の中島勇魚・岸本達真先生にまとめていただいた.眼底写真から連想される全身疾患には高血圧,神経疾患,動脈硬化など血管障害,糖尿病,心臓病などがある.たとえば神経疾患については,うっ血乳頭や視神経乳頭腫脹などから類推することが多かったが,光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT)や光干渉断層血管撮影(OCTangiog-raphy:OCTA)の発展によって正確な網膜厚が測定できるようになり,層別解析も進んでいる.また,さまざまな波長を用いたイメージング技術も新たな機器を創生している.現在の技術を用いることで,眼科から全身科にフィードバックできる情報が多くなっている.こうした観点から,神経疾患について九州大学の上田瑛美先生,全身血管障害について東京医科大学の坪田欣也先生,糖尿病について北海道大学の三田村瑞穂・齋藤理幸先生,AIの飛躍的な進歩と画像解析が生み出したオキュロミクスとその展望について,京都大学の三宅正裕先生にご寄稿いただいた.執筆者の多大な尽力により,本特集は非常に読みごたえのある充実した内容になったと自負している.本特集が,眼科医の担う全身疾患の診断・治療における役割について,改めて考える契機となれば幸いである.*Koh-heiSonoda:九州大学大学院医学研究院眼科学分野0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(1)229

見えにくさのある児童の困りごとと学習配慮に関する アンケート調査

2026年2月28日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(2):216.221,2026c見えにくさのある児童の困りごとと学習配慮に関するアンケート調査鎌田さや花*1池田陽子*1吉井健悟*2柏井真理子*3外園千恵*1*1京都府立医科大学眼科学教室*2京都府立医科大学生命基礎数理学*3柏井眼科医院CQuestionnaireSurveyonDi.cultiesandLearningSupportforChildrenwithLowVisionSayakaKamada1),YokoIkeda1),KengoYoshii2),MarikoKashii3)andChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)DepartmentofMathematicsandStatisticsinMedicalSciences,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,3)KashiiEyeClinicC目的:見えにくさを有する児童が困っていることと学校における配慮の実態を明らかにすること.方法:2022年10月.2024年C2月に京都府内C91校の小学校または京都府内眼科医療機関を通じて,見えにくさが気になっている児童の保護者を対象にアンケート調査を実施した.眼疾患や見えにくさに関する困りごとおよび学習上の配慮について質問し,解析を行った.結果:アンケートに回答した保護者はC183人,検討の対象とした児童数はC194人で,A群:眼疾患ありC19人,B群:弱視C31人,C群:斜視C19人,D群:屈折異常C58人,E群:色覚異常C14人,F群:その他C53人であった.困りごとに関するC12項目の該当数はCA群が他の群に比べて有意に多かった(p<0.05,Steelの多重比較).結論:本調査で用いた困りごとに関する質問項目は,見えにくさを抱え学習配慮が必要であるロービジョン児童の拾い上げに活用できる可能性がある.CPurpose:Toelucidatetheproblemsthatchildrenwithvision-relateddi.cultiesexperienceatschoolandthetypesofsupporttheyreceive.SubjectsandMethods:AquestionnairesurveywasconductedfromOctober2022toCFebruaryC2024CtargetingCparents/guardiansCofCchildrenCwithCvision-relatedCproblems.CParentsCwereCrecruitedCthrough91elementaryschoolsandophthalmologyclinics.Thesurveyassessedtheiroculardiseases,vision-associ-atedCdi.culties,CandClearningCsupport.CTheC.ndingsCwereCthenCanalyzed.CResults:OfCtheCparents/guardiansCsur-veyed,C183CrespondedCtoCtheCquestionnaire.CTheCnumberCofCchildrenCwas194;i.e.,C19CwithCoculardiseases(GroupA),31withamblyopia(GroupB),19withstrabismus(GroupC),58withrefractiveerroronly(GroupD),14withcolorCvisionde.ciency(GroupE),CandC53CwithCotherCvision-relateddi.culties(GroupF).COfCtheC12Cvision-di.culty-relatedquestions,thenumberofthoseapplicablewassigni.cantlyhigherinGroupAthanintheothergroups(p<0.05).Conclusion:Thequestionnaireusedinthissurveystudywasfoundusefulforidentifyingchil-drenwithlowvisionwhohavevision-relateddi.cultiesandrequirelearningsupport.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)43(2):216.221,C2026〕Keywords:ロービジョン,視覚障害,視覚支援,学習配慮,質問紙調査.lowvision,visualdi.culty,specialsup-portsforvision,learningsupports,questionnaire.Cはじめに見えにくさのある学齢期のロービジョン児は,生活上のロービジョンケアに加えて,学習におけるさまざまな配慮を要し,眼科医療と教育機関との連携が重要である1.5).とくに器質的眼疾患のある児童では,ロービジョン外来などで視機能を評価し配慮の要否を検討するのが望ましい6).しかし,多くの眼科主治医は,学齢期のロービジョン児にどのような困りごとがあるのかを知らず,視覚支援の必要性に気がつきにくい.また,ロービジョン児は自ら困っていると訴えることが少なく,何も視覚支援を受けずに過ごしている場合がある4).本研究では,見えにくさを有する小学生が困っているこ〔別刷請求先〕鎌田さや花:〒602-0841京都市上京区河原町通り広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学眼科学教室Reprintrequests:SayakaKamada,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine.465Kajii-cho,Kawaramachi-Hirokoji,Kamigyo-ku,Kyoto-shi602-8566,JAPANC216(98)表1質問紙の内容困りごとの質問C12項目・読み書きするときにかなり近づく(10cm以下)・読み書きするときの距離をC30Ccmほどに離すと小さい文字は見えにくい・ルビや地図帳など細かい文字が見えにくい・壁掛けの時計は見えにくい・3Cmの距離にいる友人の表情がわかりにくい・なぞり書きの薄い色が見えにくい・定規の目盛リが読みにくい・テレビを見るときにかなリ近づく(1Cm以下)・まぶしそうにする・暗いところで見えにくい・階段や段差がわかりにくい・色によって見分けがつきにくいことがある・座席の位置の配慮(席を前の方にする,など)・まぶしさに関する座席の配慮(まぶしくない席にする,カーテンやブラインドの使用)・遮光眼鏡の使用・プリントなどの文字サイズを大きくする・拡大鏡(ルーペ)の使用・書見台や斜面机の使用・拡大教科書(文字のサイズが大きい教科書)の使用・単眼鏡(小型の望遠鏡のようなもの)の使用・教科書閲覧アプリ(UDブラウザなど)の利用・学習資料やプリントなどはCPDFなどのデータで受け取る・タブレット端末などの利用(カメラで写して大きくして見る,書き込むなど)・音声読み上げの利用(音声図書,音声教科書,読み上げアプリの利用など)・音声入力(パソコンやタブレット端末などを利用)・拡大読書器(見たいものをモニターに大きく写す機器)の使用・色の見分けのつきにくさに対する配慮・移動時の配慮(教職員や友人と一緒に移動する,など)・給食時の配慮(配膳下膳を手伝ってもらうなど)・体育授業の配慮(一緒に参加てきるように工夫してもらう,など)・集団活動を行う上ての配慮(掃除のときに細かい汚れは見えにくいので周囲の理解協力を得る,一人でむずかしいことは手伝ってもらう,など)・理科の実験や課外活動などでの配慮(近づいて見ることができない場合や細かく観察するのがむずかしいときは周囲に言葉で解説してもらう,など)児童が見えにくさでどのようなことに困っているかの質問項目C12項目,現在受けている学習上の配慮の内容C15項目,学校生活上の配慮C5項目に分け,該当項目数を調べた.と,および学校でどのような配慮を受けているかについて,現状を明らかにするため調査を行った.CI対象と方法2022年C10月.2024年C2月に子どもの見えにくさが気になるという児童の保護者を対象に任意でアンケートを行った.京都府内で本調査に協力を得られたC91校の小学校を介してC2022年度の在籍児童計C26,416人に案内チラシを配布したほか,京都府内の眼科医療機関からも子どもの見えにくさが気になる保護者にチラシを配布した.アンケートの対象者は「子どもの見えにくさについて,気になる様子がある保護者」または「弱視やなんらかの眼疾患で眼科に通院中の子どもの保護者」とし,チラシ内のCQRコードからCwebフォームに回答する形式とし,研究への参加同意確認欄を設け,同意確認を行った.アンケートでは,児童の背景として,保護者が把握している範囲で眼疾患,矯正視力,在籍学校(学級),学年,発達に関して,児童が見えにくさでどのようなことに困っているかの質問C12項目,現在受けている学習上の配慮の内容C15項目,学校生活上の配慮C5項目について質問した.各質問項目(表1)は重複回答とし,そのほかに見えにくさに関して気になる様子や困っていることがあれば自由回答とした.児童C194人を眼疾患により以下のCA.FのC6群に分類し,上記質問項目の該当数についてCSteelの多重比較を行い,困りごとの該当項目数と受けている学習配慮の項目数の相関を調べた.A群:眼疾患(器質的眼疾患を有するもの,先天眼振を含む),B群:弱視(A群以外で弱視を指摘されているもの,弱視の既往があるが調査時点では矯正視力良好例を含む),C群:斜視(視線の位置がずれるものや斜視や斜位を指摘されているもの,AB群の対象者を除く),D群:屈折異常(ABC群の対象者を除く),E群:色覚異常(AB群以外で色覚異常があるもの,疑い例を含む),F群:その他(異常なし,わからないを含む)とした.CII結果アンケートに回答した保護者はC183人,検討の対象とした児童数はC194人,A群:19人,B群:31人,C群:19人,A群B群C群D群E群F群(人)8765432100.01未満0.010.020.030.040.050.060.070.080.090.10.20.30.40.50.60.70.80.9図1矯正視力1.0未満の児童の群別視力分布全対象児童のうちよいほうの眼の矯正視力がC1.0未満であるC36人について,各群別の矯正視力の内訳を示す.D群:58人,E群:14人,F群:53人であった.F群には,眼の異常を指摘されたことなしC25人,眼疾患の有無がわからないC23人,アレルギー性結膜炎C2人,睫毛内反C1人,心因性視覚障害C2人が含まれた.A群の眼疾患の内訳は,先天眼振C4人,角膜混濁C3人,家族性滲出性硝子体網膜症C2人,網膜色素変性C2人,緑内障C2人,黄斑低形成C2人,視神経萎縮C1人,コロボーマC1人,先天白内障C1人,虹彩異常C1人であった.すべて小学生で,1年生C48人(24.7%),2年生C33人(17.0%),3年生C49人(25.2%),4年生C19人(9.8%),5年生C17人(8.8%),6年生C28人(14.4%)で,児童の在籍学校は普通学校C188人,特別支援学校C6人であった.特別支援学校のうち視覚特別支援学校(以下,盲学校)はC2人,その他は4人であった.在籍学級は,特別支援学級C25人(うち弱視学級C5人,その他C20人),普通学級C163人で,普通学級のうち弱視通級指導教室や巡回相談などの視覚支援がある児童がC3人,学習障害(learningdisability:LD)通級指導教室利用がC1人,その他C159人はとくに支援を受けていなかった.計C12人がなんらかの視覚支援を受けており,いずれもCA群の児童であった.一方で,A群の児童で普通学級に在籍し,上述した視覚支援を受けていない児童がC7人だった.児童の神経発達症に関連した設問では,「発達がゆっくりであるなど診断を受けている」39人,「発達がゆっくりである可能性があるが診断は受けていない」20人,「発達について気になることはとくにない」121人,「わからない・その他」14人であった.A.F全例の矯正視力は,両眼とも矯正視力C1.0以上がC91人,少なくとも片眼の矯正視力C1.0以上(他眼は視力不明)がC22人,よいほうの眼の矯正視力C1.0未満がC36人,視力不明(矯正視力不明を含む)がC45人であった.よいほうの眼の矯正視力がC1.0未満であるC36人について各群別の視力分布を調べ,図1に示す.A群ではよいほうの眼の矯正視力0.6以上C1.0未満がC2例,1.0以上がC1例あり,矯正視力C1.0以上の症例は片眼性眼疾患で僚眼は健常眼であった.児童の見えにくさについてあてはまる質問項目が該当する割合を各群別のグラフに示す(図2).A群は多くの質問項目にあてはまった.「まぶしそうにする」の項目はCA群,C群に多くみられた.「色によって見分けがつきにくい」の項目はCE群が突出して多かったが,A群でもC4人(21.1%)が該当した.児童が学習上の配慮を受けている割合は全C194人中C100人(51.5%),とくに配慮はされていないC89人,わからない5人であった.児童が受けている学習上の配慮の内訳を図3に示す.配慮を受けている児童のうち,もっとも多い配慮内容は「席を前のほうにする」でC77人(77.0%)であった.それ以外の配慮内容はCA群の児童に対して行われている内容が多かった.12項目ある困りごとの質問項目の該当項目数と学習上の配慮内容の数の中央値(四分位範囲)はそれぞれA群C8.0(3.0,9.0),5.0(1.0,9.0)で,いずれもCA群が他群に比べて有意に多かった(Steelの多重比較:p<0.05).また,困りごとの該当項目数と学習配慮の項目数には正の相関があった(Spearmanの順位相関係数:Ct=0.39,p<C0.001).児童が学校生活上で配慮を受けている割合はC27人(13.9(%)1009080706050403020100A眼疾患B弱視C斜視D屈折異常のみE色覚異常Fその他図2児童の見えにくさについてあてはまる質問項目児童の見えにくさについてC12項目の質問項目(重複回答)で群別にあてはまる項目を示す.%),「とくに配慮はされていない」144人(74.2%),「わからない」23人(11.9%)で,群別にみると,A群ではC19人中C14人(73.7%)が学校生活上での配慮を受けていた.学校生活上での配慮の内訳を図4に示す.学校生活上の配慮の数について,A群の中央値(四分位範囲)はC2.0(0.0,3.0)で,A群が他群に比べて有意に多かった(Steelの多重比較:p<C0.05).また,学校生活上の配慮の数は困りごとの該当項目数と正の相関があった(Spearmanの順位相関係数:Ct=0.41,p<0.001).CIII考按本調査により,眼疾患がある児童では学習や学校生活において困りごとが多いことが明らかとなった.また,眼疾患があり,配慮や視覚支援が必要である可能性があるにもかかわらず,配慮がなされていないと回答した例があった.ロービジョンケアとして視機能評価に基づいて適切な視環境を整えること,医療機関と教育機関の連携が重要であることは以前より報告がある1.7).当院眼科ロービジョン外来でこれまでに多くの児童に対して必要な視覚支援の検討を行ってきた経験から,本調査で使用した困りごとの質問C12項目を作成した.質問項目の内容はロービジョン外来で学齢期の患者を担当した際の問診で聴取される頻度が高い内容を含めて,より具体的な設問になるように工夫して作成し,近見の見えにくさ,コントラスト不良による見えにくさ,遠見の見えにくさ,羞明や夜盲や移動の困難さ,色覚に関する項目から成り立っている.本調査の回答者は保護者であることから,これらの質問項目は,周囲の人がその児童の見えにくさに早く気がつくために重要な項目ともいえる.本調査にて,眼疾患のある児童において本質問項目の該当が多いことが明らかになったことから,少なくとも該当項目が多い場合には学習における配慮の要否を検討する必要があると考えられる.A群C19人のうち,学習における配慮を何も受けていなかったのはC2人で,1人は黄斑低形成で視力C0.9,もうC1人は網膜色素変性で視力C0.5であった.また,A群で学校生活における配慮を受けていない例はC5人あった.以上のことからも,見えにくさがあり配慮が必要である児童の拾い上げは(人)80706050403020100図3児童が受けている学習配慮の内訳学習配慮を受けている児童C100人について,その配慮内容(重複回答)を示す.(人)眼疾患(14/19)弱視(4/31)C斜視(1/19)D屈折異常(0/58)43210色覚異常(3/14)その他(5/53)その他理科実験や課外活動掃除や集団活動体育(一緒に参加できる工夫)給食の配膳など移動時の配慮図4児童が受けている学校生活上の配慮の内訳学校生活上の配慮を受けている児童C27人について,その配慮内容(重複回答)を示す.いまだ不十分と考えられる.見えない・見えにくい小児の相談先としては盲学校が知られており,各地域の盲学校が視覚支援のセンター的役割を担う8).ただし,盲学校は相談が入らなければつながることができない.このため,器質的眼疾患を有する児童は眼科医療機関で拾い上げ,必要に応じて教育機関と情報を共有して視覚支援の要否を検討し,支援につなげていく仕組みの構築が望まれる.本調査は子どもの見えにくさが気になっている保護者に対して実施したものであり,それらの保護者がかかわる児童は,器質的眼疾患や弱視のほか,屈折異常,斜視(眼位異常),色覚異常などを有する場合が多いことがわかった.また本調査では,発達に関するなんらかの診断を受けているまたはその可能性がある場合は合わせてC59例(30.4%)であった.知的障害を伴い視機能の評価が困難である場合や,神経発達症のなかには羞明9)や読み書き障害10)がある場合などで,児童の見えにくさが気になると推測される.本調査のリミテーションとして,以下の点があげられる.第一に,本アンケートは子どもの見えにくさが気になる保護者を対象として実施したため,児童本人の意見を直接調査できていない点である.また,保護者が子どもの見えにくさに気づいていない可能性も考慮する必要がある.第二に,今回の質問項目は眼疾患や弱視を有するロービジョン児の拾い上げを主目的として作成したものであるため,屈折異常や眼位異常,色覚異常のみで矯正視力が良好な児童や,神経発達症に伴う見えにくさのある児童の拾い上げには必ずしも適していない可能性がある.見えにくさを有する小学生が困っていること,および学校でどのような配慮を受けているかについてアンケート調査を行い,ロービジョン児には学習や学校生活上で多くの困難さがあること,ロービジョン児に対する視覚支援や配慮がいまだ不十分であることがわかった.今回用いた質問項目は,見えにくさがあり,学習や学校生活上での配慮が必要なロービジョン児童の拾い上げに活用できる可能性がある.本研究は第C78回日本臨床眼科学会一般講演で発表した.また,本研究は文部科学省科学研究費の助成を受けて実施した(課題番号:22K09817).利益相反外園千恵:【F】参天製薬株式会社,サンコンタクトレンズ株式会社,AurionBiotec,【P】あり池田陽子:【P】あり文献1)石井雅子,張替涼子,阿部春樹:就学にあたり読書検査を行なったロービジョン児C6例の検討.日視能訓練士協誌C37:179-186,C20082)川瀬芳克:眼科と盲学校の連携の経験.日眼紀C56:740-744,C20053)三井田千春,仁科幸子,石井杏奈ほか:医療機関と教育機関の連携による小児のロービジョンケア.眼臨紀C13:655-661,C20204)鎌田さや花,小西幸代,吉田麻里子ほか:小児の年齢別・視機能別ロービジョンケア内容の検討.眼臨紀C14:338-346,C20215)稲垣理佐子:弱視児の就学時前からのロービジョンケアと教育との連携.眼臨紀15:338-342,C20226)稲葉純子,村上美紀:ロービジョン児童生徒等の対応について.OCULISTAC103:55-63,C20217)松野希望,赤井田あかね,森隆史ほか:福島県立医科大学附属病院における小児ロービジョンケア.眼臨紀C16:443-449,C20238)稲葉純子:ロービジョン児のための公的支援と盲学校.臨眼C77:1479-1487,C20239)小野田有華,岩崎佳奈枝,篠野公二ほか:羞明のある発達障害児の遮光眼鏡の有用性について.日ロービジョン会誌C18:S6-S10,C201910)北洋輔,芦沢文子,稲垣真澄:発達性読み書き障害の早期発見に向けた行動観察項目の開発.小児保健研C78:191-198,C2019C***

安定的に経過している緑内障におけるimo 24plus(1-2) AIZE-EX のMD 値変動と予測区間

2026年2月28日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(2):210.215,2026c安定的に経過している緑内障におけるimo24plus(1-2)AIZE-EXのMD値変動と予測区間北川厚子*1堀口剛*2野本裕貴*3井田直子*1清水美智子*1廣信麻友美*1上暁美*1手良向聡*2松本長太*3*1北川眼科医院*2京都府立医科大学大学院医学研究科生物統計学*3近畿大学医学部眼科学教室EvaluationoftheFluctuationandPredictionIntervalofimo24plus(1-2)AIZE-EXinStableGlaucomaPatientsAtsukoKitagawa1),GoHoriguchi2),HirokiNomoto3),NaokoIda1),MichikoShimizu1),MayumiHironobu1),AkemiUe1),SatoshiTeramukai2)andChotaMatsumoto3)1)KitagawaEyeClinic,2)DepartmentofBiostatistics,GraduateSchoolofMedicalScience.KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,3)DepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityFacultyofMedicineC目的:安定的に経過している緑内障におけるCimo24plus(1-2)AIZE-EXのCMD値変動と予測区間を調べる.対象および方法:2年以内にC3回,imoAIZE-EXを施行し,安定的に経過している緑内障および緑内障疑い例をCbettereye・worseeyeのC2群に分け,検査点ごとの閾値変動,およびベースライン閾値に対する再検査の変動および予測区間を算出した.また,病期別C4群に分類し,その予測区間を算出した.結果:検査点ごとおよび再検査の変動は閾値が大きいほど小さかった.予測区間は,病期により±0.85CdB.±1.56CdBであった.結論:予測区間は視野障害の進行評価を行う際の有用な指標となる.CPurpose:Toinvestigatethevariabilityand95%predictionintervalsofvisual.eldindicesobtainedusingtheAIZE-EXalgorithmontheimo24plus(1-2)perimeter(CREWTMedicalSystems)inpatientswithstableglauco-maCorCsuspectedCglaucoma.CPatientsandMethods:DataCfromC146CeyesCwithCthreeCtestsCoverCaC2-yearCperiodCwereCretrospectivelyCanalyzed.CResults:Point-wiseCsensitivityCvariabilityCdecreasedCwithChigherCthresholdCvalues.CMixed-e.ectsmodelingshowedminimaltime-relatedchangesinmeandeviation(MD),allowingestimationofpre-dictionintervalsacrossdi.erentglaucomastages.ThewidthofMDpredictionintervalsrangedfrom±0.85CdBinearlyCstagesCtoC±1.56CdBCinCmoderateCstages.CTheseCintervalsCprovideCusefulCreferenceCrangesCtoChelpCdistinguishCactualCdiseaseCprogressionCfromCmeasurementCvariability.CConclusion:AIZE-EXCdemonstratedClessC.uctuationCthanthepreviouslystudiedAIZE-Rapid,thussuggestingalgorithmicsuperiority.Whilehelpfulinclinicaldecision-making,predictionintervalsshouldbeinterpretedalongsideclinicalcontextandrepeatedtestingwhennecessary.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)43(2):210.215,C2026〕Keywords:緑内障,アイモ視野計,24plus(1-2)AIZE-EX,変動,予測区間.glaucoma,imoperimetry,.uctu-ation,24plus(1-2)AIZE-EX,predictioninterval.はじめにimo(クリュートメディカルシステムズ)はC2015年に開発されたヘッドマウント型自動視野計1)であるが,据置型がおもに使用されている.imoに搭載されている検査アルゴリズムCAnbientInteractiveZippyEstimatedSequentialTesting(AIZE)2)は,Humphrey視野計(HumphreyCFieldCAnalyz-er:HFA)のCSITAStandardより短い検査時間で同等の緑内障性視野障害が検出できることが報告されている3).また,その後開発されたCAIZE-EXは前回のデータを利用し効率的に閾値検査を行うことで,短時間かつCAIZEと同程度の異常検出ができる4).緑内障の早期発見や進行評価において中心C10°内の検査が〔別刷請求先〕北川厚子:〒607-8041京都市山科区四ノ宮垣ノ内町C32北川眼科医院Reprintrequests:AtsukoKitagawa,KitagawaEyeClinic,32Kakinouchi-cho,Shinomiya,Yamashina-ku,Kyoto-City607-8041,CJAPANC210(92)有用とされており5,6),imoでは従来のC24-2の検査点C54点にC10-2の測定点C24点を追加したC24plus(1-2)での検査が行える(図1).筆者らはCHFACSITA-FAST24-2とC10-2をあわせた結果とCimo24plus(1-2)AIZE-Rapidの比較を行い,検査データの一致度が高かった結果を踏まえ7),緑内障の経過観察はC24plus(1-2)で行っている.視野検査は自覚検査であり検査結果は常に変動するため8,9),緑内障の経過診察を行うに際しては,検査結果のとりうる変動範囲を知っておくことが重要となる.筆者らは過去に安定した経過を示す緑内障および緑内障疑い症例におけるCimo24plus(1-2)AIZE-Rapidの変動・予測区間について報告している10).本研究では新たな測定アルゴリズムであるCAIZE-EXでの予測区間を算出し,緑内障の経過において視野障害進行ではなく検査結果の変動と判断できうる範囲の検討を行った.CI対象および方法1.対象2020.2022年に北川眼科医院でCimo24plus(1-2)CAIZE-EX(据置型)による検査をC2年以内にC3回行えた(固視不良5%以下,偽陽性・偽陰性C10%以下),少なくともC1眼が経過中の視野状態が安定的に経過している(MDslope<C±0.5CdB/year)緑内障,および緑内障疑い症例を対象とした.除外基準は,矯正視力C0.5未満,明らかな網脈絡膜疾患を有するもの,急速な白内障進行例,期間中に眼科手術を施行されたものとした.ベースラインのCMD値に基づき両眼をCbettereye,worseeyeのC2群,および進行度によりC4群に分類し解析を行った.本後ろ向き研究は,京都府立医科大学医学倫理審査委員会の承認(ERB-C-2394)を受けている.C2.診断機器imoはCHFAと同じ条件下で視野検査を行うことが可能となっている.詳細については過去の論文1)に述べられているが,両眼開放下に同時に両眼検査を行えるのが特徴である.C3.評価項目MD値および各測定点の閾値を評価項目とした.C4.統計解析各対象者のベースライン時における患者特性について,分類変数は例数(割合),連続変数は中央値(範囲)で要約した.閾値と変動の関係をみるために,3回の検査結果に対して検査点ごとの平均閾値と標準偏差を計算し,平均閾値(5CdBごと)に対する標準偏差をプロットした.Bettereye,Cworseeye間の比較はCWilcoxon順位和検定を用いて行った.また,最初の検査とC2回目以降の再検査の変動を比較するた24-210-230°6°間隔54点2°間隔24点>合計78点図124plus(1-2)の配列めに,ベースラインの閾値ごとにC2回目以降の再検査の閾値の分布を箱ひげ図で示した.ベースラインの閾値はC2CdBごとに刻み,箱ひげ図はC5,25,75,95パーセンタイルと中央値で表現した.各症例C3回の検査で得られたCMD値の推移について,個人内相関を考慮するため,個人を変量効果,時間を固定効果とした混合効果モデル(ランダム切片モデル)を用いてC95%予測区間を算出した.時間効果の推定値が小さく統計的にも有意でなかった場合には,時間によるCMD値の変化が臨床的に無視できると判断し,MD値が時間に依存せず一定であるという仮定のもとで予測区間を解釈した.95%予測区間は,ある対象者におけるつぎの測定値がC95%の確率でとりうる区間を表す11).各対象者の推移を折れ線グラフで図示し,回帰直線およびC95%予測区間を追加した.予測区間については,ベースラインCMD値に基づく病期別C4分類(MD>.3CdB,C.6CdB<MDC..3CdB,C.12CdB<MDC..6CdB,CMD..12CdB)でも同様に算出し,グラフを作成した.なお,ベースラインのCMDに基づくC4分類については,標本サイズを確保するためにCbettereye,worseeyeを区別せずに分類した.そのため,同一対象者の両眼が同じグループに含まれる場合は,右眼の検査値を採用した.検査時間とCMD値の関係を調べるために,ベースラインにおける検査時間について,bettereye,worseeyeのC2群およびベースラインCMD値に基づくC4群ごとに中央値(範囲)を算出した.検定の有意水準は両側C0.05とし,すべての統計解析は表1ベースライン時における研究対象者の人口統計学的および臨床的背景bettereye(n=60)Cworseeye(n=86)検査眼.右眼:n(割合)28(C46.7%)59(C68.6%)年齢:中央値(範囲)68歳(2C0歳,8C8歳)65.5歳(C20歳,C90歳)性別:男性C/女性C18/42C33/53視力:中央値(範囲)1.0(C0.6,C1.5)1.0(C0.5,C1.5)等価球面度数:中央値(範囲)C.2.38D(C.13.0D,+3.75D)C.2.00D(C.16.75D,+3.50D)固視監視:中央値(範囲)0%(0%,5%)0%(0%,4%)偽陽性:中央値(範囲)1%(0%,1C0%)0.5%(0%,1C0%)偽陰性:中央値(範囲)0%(0%,4%)0%(0%,5%)検査:中央値(範囲)1.01年(C0.58年,C1.99年)1.03(C0.55年,C1.94年)グローバルインデックスMD:中央値(範囲)C.0.30CdB(C.15.26dB,2C.03dB)C.2.15CdB(C.23.30dB,1C.35dB)MDslope:中央値(範囲)0.07CdB/年(C.0.46CdB/年,C0.48CdB/年)0.12CdB/年(C.0.49CdB,C/年C0.49CdB/年)眼圧(CGoldmann圧平眼圧計)3回の平均:中央値(範囲)14.8CmmHg(C10.3CmmHg,C22.0CmmHg)C14.5CmmHg(9C.3mmHg,2C0.7mmHg)3回の標準偏差:中央値(範囲)1.2CmmHg(0C.0mmHg,4C.5mmHg)1.5CmmHg(0C.0mmHg,5C.3mmHg)COCT*RNFL厚C3回の平均,中央値(範囲)79.3Cμm(C55.7Cμm,9C8.7Cμm)(n=59)77.3Cμm(C51.0Cμm,C159.3Cμm)RNFLslope:平均値(標準偏差)0.46Cμm/年(C3.87Cμm/年)(n=59)C.0.07Cμm/年(C4.28Cμm/年)CGCL+IPL厚C3回の平均:中央値(範囲)70.0Cμm(C54.3Cμm,9C2.7Cμm)(n=58)68.0Cμm(C47.5Cμm,8C5.0Cμm)黄斑マップslope:平均値(標準偏差)C.0.15Cμm/年(C2.49Cμm/年)(n=58)C.0.41Cμm/年(C2.41Cμm/年)*CIRRUSHD-OCTplus(モデルC5000,CarlZeissMeditecInc).少なくともC1眼がCMDslope<C±0.5CdB/年の症例をCbettereye,worseeyeのC2群に分類し,ついで除外基準により選別しているため,2群の症例数は異なる.ab(dB)(dB)bettereye(dB)worseeye131211bettereyeworseeye3632363210282892424再検査の閾値再検査の閾値標準偏差2016122016127655%5%3825%825%214中央値75%4中央値75%0095%095%05101520253035024681012141618202224262830323436024681012141618202224262830323436閾値[dB]ベースラインの閾値[dB]ベースラインの閾値[dB]図2閾値の変動a:検査点ごとの平均閾値の変動.bettereyeおよびCworseeyeにおける検査点ごとの平均閾値に対する標準偏差を示す.Cb:ベースライン閾値(bettereyeおよびCworseeye)に対する再検査の変動.細い縦線は再検査のC90%区間(再検査閾値のC5.95パーセンタイルの幅)を示し,太い縦線は四分位範囲を示す.SASversion9.4(SASInstitute,Inc,Cary,NC)を用いて行った.CII結果解析対象の背景を表1に示す.abettereyeworseeye(dB)95%予測区間の幅:±0.992MD0-2n=600200400600(日)(日)時間bMD>-3-6<MD.-3(dB)95%予測区間の幅:±0.852MD0-2n=910200400600(日)(日)時間-12<MD.-6MD.-12(dB)95%予測区間の幅:±1.562MD0-2n=180100200300(日)400(日)時間図3予測区間a:対象者ごとの推移と予測区間(bettereyeおよびCworseeyeにおけるCMDのスパゲティプロット).グレーの塗りつぶしは予測区間を示す.b:ベースラインCMD別の予測区間.bettereye,worseeyeともに各症例の閾値の変動は検査点の平均閾値と関連しており,閾値が大きいほど変動は小さかった(図2a).15CdB以上では,bettereyeとCworseCeyeの変動はほぼ同等であったが,10.15CdBでは,betterCeyeの変動がCworseeyeよりも大きい傾向がみられた(p=0.024,図2a).検査機器のダイナミックレンジが限られているため,閾値がゼロに近い部分での標準偏差は低かったが,再検査分布の尾は長く,90%区間は大きかった(図2a,b).MD値について,混合効果モデルによる解析を行った結果,時間効果の推定値はCbettereye:0.00024(p=0.293),worseeye:0.00024(p=0.191),MD>.3のグループ:0.00020(p=0.176),.6CdB<MD..3:0.00021(p=0.564),.12CdB<MD..6:0.00022(p=0.763),MD..12:.0.00033(p=0.674)であり,時間の効果は非常に小さかった.したがって,予測区間を解釈するにあたり,時間による変化はないと仮定した.図3にCbettereye・worseeye別,およびベースラインCMD別の推移と予測区間を示した.予測区間の幅は,bettereye・worseeyeとも±0.99CdBであり,ベースラインCMD値別では,MD>.3CdB:±0.85CdB,.6CdB<MD..3CdB:±0.97CdB,.12CdB<MD..6CdB:±1.56dB,MD..12dB:±0.96CdBであった.ベースラインでの検査時間は,中央値がCbettereye:2.6分,worseeye:3.0分であった.また,ベースラインのCMD別では,MD>.3CdB:2.6分,.6CdB<MD..3CdB:3.3分,C.12CdB<MD..6CdB:3.5分,MD..12dB:3.9分であり,MD値が低いほど検査時間が長い傾向がみられた.CIII考按安定的に経過している緑内障症例の経過観察におけるCimo24plus(1-2)AIZE-EXの変動を解析した.過去のCHFAについての報告と同様に,各測定点の閾値変動は検査点の閾値が大きいほど小さかった8).また,3回の測定の変動から算出された予測区間の幅は,ベースラインCMD値別で±0.9.C±1.6CdBであった.以前筆者らが報告したCAIZE-Rapidの予測区間は±1.4.±1.8CdBであり10),AIZE-EXの優位性の可能性が示唆されたが,今後更に多くのデータをもとに緑内障の視野経過観察では,AIZE-Rapid,AIZE-EX,AIZE-RapidEXなどのいずれのアルゴリズムがもっとも短時間にかつ正確な経過判断が可能か検討を要する.95%予測区間は将来の測定値がC95%の確率で入る区間を表す.つまり,測定結果が予測区間外であった場合には,状態が改善もしくは悪化している可能性が高いと判断できる.そのため,検査結果が悪化した場合は,疾患進行によるものか,測定誤差による変動であるかを判別する指標として有用となる可能性がある.推定値の精度を表す指標としては信頼区間がよく用いられる.たとえば,本研究のデータに対してCMD値の平均値の95%信頼区間幅を計算すると,bettereyeで±0.09CdB,Cworseeyeで±0.08CdBとなり,予測区間の幅と比較すると非常に狭くなるが,これは個々の測定データのばらつきを考慮していないためであり,信頼区間は母平均などの母数に関する推測を意味する.一方で,個々のばらつきを考慮した予測区間は,標本に関する推測に対応する.また,データが正規分布に従う場合は,平均値±1.96×標準偏差の範囲にはデータのC95%が含まれることが知られているが,将来のデータがこの範囲に入る確率はC95%にはならない.これは,推定量(平均値と標準偏差)の不確かさを考慮していないためである.予測区間はこの不確かさを考慮しており,将来の測定値が含まれるであろう区間を表す.本研究ではこの予測区間を用いることで検査結果の変動を評価可能であると考えた.本研究の限界について,一つは安定的に経過している緑内障の定義があげられる.本研究では著明な眼圧変動もなく,CMDCslope..0.5dB/年,光干渉断層計(opticalCco-herencetomography:OCT)でも大きな変化の認められない症例とした12).また,今回算出した予測区間はデータに依存している点,また,MD..12CdBの後期症例については症例数が少ない点,症例を追加したうえでのさらなる検討が必要である(図3b).予測区間はあくまでも目安であり,予測区間に入っていても進行の可能性はある.逆に,予測区間に入っていなくても透光体の混濁の変化,患者の集中度,検査機器の誤差による変化である可能性もあり,これらを考慮したうえで予測区間を超える結果が認められた場合や,再検査を行い再現性のある結果が得られた場合は進行と判断し治療強化を行う必要がある.検査結果の変動から算出したCMD値の予測区間は,初期・早期:±0.9.±1.0CdB,中期:±1.6CdBであり,中期症例での予測区間が大きくなる傾向があった.各病期におけるCMD値の変動幅がこの値を超えると視野障害進行を疑う指標となり,緑内障進行の評価を行う際の有用な指標となると考える.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)MatsumotoC,YamaoS,NomotoHetal:Visual.eldtest-ingCwithChead-mountedCperimeter‘imo’.CPLoSCOneC11:Ce0161974,C20162)NomotoH,MatsumotoC,OkuyamaS:Anewstaticvisu-alC.eldCtestalgorithm:theCAmbientCInteractiveCZEST(AIZE).SciRepC13:14945,C20233)KimuraCT,CMatsumotoCC,CNomotoH:ComparisonCofChead-mountedperimeter(imoCR)andCHumphreyCFieldCAnalyzer.ClinOphthalmolC13:501-513,C20194)NomotoCH,CMatsumotoCC,CYoshikawaCKCetal:EvaluationCofthevisual.eldtestalgorithm:theAmbientInteractiveZEST-EX(AIZE-EX)C.CSciRep(2026,Cinpress):https://Cdoi.org/10.1038/s41598-026-35696-y5)KimuraCY,CHangaiCM,CMorookaCSCetal:RetinalCnerveC.berlayerdefectsinhighlymyopiceyeswithearlyglau-coma.InvestOphthalmolVisSciC53:6472-6478,C20126)DeMoraesCG,HoodDC,ThenappanAetal:24-2visual.eldsmisscentraldefectsshownon10-2testsinglauco-maCsuspects,CocularChypertensives,CandCearlyCglaucoma.COphthalmologyC124:1449-1456,C20177)北川厚子,清水美智子,山中麻友美ほか:ヘッドマウント型自動視野計と従来型自動視野計の検査結果および検査時間の比較.あたらしい眼科C38:1221-1228,C20218)ArtesPH,IwaseA,OhnoYetal:Propertiesofperimet-ricCthresholdCestimatesCfromCFullCThreshold,CSITACStan-dard,andSITAFaststrategies.InvestOphthalmolVisSciC43:2654-2659,C20029)GardinerSK,SwansonWH,GorenDetal:Assessmentofthereliabilityofstandardautomatedperimetryinregionsofglaucomatousdamage.OphthalmologyC127:1359-136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