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屈折矯正手術:ICLの長期成績

2021年10月31日 日曜日

監修=木下茂●連載257大橋裕一坪田一男257.ICLの長期成績北澤世志博サピアタワーアイクリニック東京CImplantablecollamerlens(ICL)はC20年以上の長期実績があり,臨床成績も良好である.またホールCICLにより懸念事項であった術後の白内障や緑内障も解決され,今後は屈折矯正手術の中心になると思われる.●はじめにLaserCinCsitukeratomileusis(LASIK)はC1989年にPallikalisが施行してから屈折矯正手術の中心を担ってきたが,近年その主役はCLASIKからCimplantableCcolla-merlens(ICL.CStaarSurgical社)に代わりつつある.その理由は,LASIKではドライアイや術後視機能の低下,長期的に視力が低下するリスクが高いのに対して,ICLはこれらの欠点が補えること,そしてリバーシブルであることが利点であり,1993年から現在の素材Ccolla-merが使用され長期臨床経過が報告されている.ICLはレンズ中心に穴のない時代には術後に眼圧上昇や白内障が起こることがあったが,ホールCICL(VisianICLKS-AquaPORT)の普及により術後合併症は激減した.本稿ではCICLの今後の展望を考えるうえで重要なCICLの長期臨床成績と術後合併症について検討した.C●ICLの長期成績の報告Shimizuらは,片眼にホールのないCICLを僚眼にホールCICLを挿入した術後C5年の成績で,術後視力や屈折度,視機能に有意差はなかったと報告している1).ホールのないCICLはすでにC10年を超える長期臨床報告が多数あり,術後裸眼視力や矯正精度は良好であるが,白内障発症率が高い.一方,ホールCICLについてはCPackerがC4,196眼の文献レビューを報告しており,前.下混濁0.49%,白内障手術C0%,瞳孔ブロックC0.04%と少ない2).また,Nakamuraらは白内障手術のために摘出したCICL(平均挿入期間C10.5年)を解析したところ,分光透過性は新品と変わりなく,電子顕微鏡的にも異常がなかったと報告しており3),ICLの素材Ccollamerの長期安全性が確認されている.C●ICL多数症例の長期臨床成績筆者が2007年11月~2021年4月に施行したICL5,146例C10,218眼(うちホールCICL4,224例C8,397眼)の臨床結果をまとめた.屈折度と視力は術後C5年以上経過を追えたホールのないCICL109例C212眼とホールICL280例C560眼で比較し,術後合併症は全例で検討した.等価球面屈折度は術後やや近視化したが,術後C5年でCICL-0.24D,ホールCICL-0.21Dであった(図1).また,裸眼視力CLogMAR(換算少数視力)は術後C5年で-0.13(1.35)とC0.12(1.32)(図2),裸眼視力C1.0以上はC89.6%とC91.1%,1.5以上はC62.3%とC63.6%,矯正精度は±0.25D以内がC59.0%とC66.1%,C±0.50D以内が81.1%とC80.4%と良好な結果であった.眼圧は術後C5年でC14.2C±2.7CmmHgとC13.6C±2.7CmmHg(図3),角膜内皮細胞密度はC2,844.1C±364.5個/mmC2とC2,838.7C±428.6個/mmC2で有意差なく,術前からの減少率はC4.1%とC4.9%で有意差はなかった(図4).術後合併症(表1)は,ICLで緑内障発作や浅前房で虹彩切開を施行した症例がC47眼(2.58%),白内障手術がC5眼(0.27%)あったが,ホールCICLではいずれもC0眼(0%)であり,ホールの存在が緑内障や白内障のリスク回避に寄与していた.また,トーリックの軸ずれ再固定はCICL25眼(1.37%),ホールCICL52眼(0.51%),サイズ交換がC26眼(1.43%)とC13眼(0.13%)で,いずれもホールCICLで有意に少なかった.度数交換はCICL2眼(0.11%)に対してホールCICL25眼(0.24%)と多かったが,ICLでは残余屈折異常に対して追加CLASIK16眼(0.88%)を施行していたが,ホールCICLでは追加CLASIK9眼(0.09%)ではなく度数交換を推奨したためである.本人希望による抜去はCICL2眼(0.11%),ホールCICL20眼(0.20%)あった.また,眼内炎が各C1眼(0.05%とC0.01%)あったが,いずれもいったんCICLを抜去し,前房洗浄からC6カ月後に再挿入して視力は改善し経過良好である.そのほかCICLで術前の虹彩切開のYAGレーザーの影響と思われるC20%以上の角膜内皮細胞減少がC1眼(0.05%)みられた.またホールCICLでは中毒性前眼部症候群が一定期間に連続してC7眼(0.08%)起きたが,ステロイドの頻回点眼と内服で軽快した.(49)あたらしい眼科Vol.38,No.10,2021C11810910-1810/21/\100/頁/JCOPY2.0-1.00.0-2.00.0-4.0等価球面屈折度(D)-6.0-8.0-10.0-12.0-14.0logMAR(少数視力)(1.0)1.0(0.1)2.0(0.01)術前6M1Y2Y3Y5Y*:p<0.05,n.s.:notsigni.cant,対応のないt検定*:p<0.05,n.s.:notsigni.cant,対応のないt検定図1ICLとホールICLの等価球面屈折度の経時的変化図2ICLとホールICLの裸眼視力の経時的変化ICLとホールCICLの等価球面屈折度は全期間で有意差なく良ICLとホールCICLの裸眼視力は全期間で有意差なく良好である.好で正視に近い.)20.018.016.03,500.0角膜内皮細胞密度(個/mm23,000.02,500.02,000.01,500.01,000.0500.00.0眼圧(mmHg)14.2D14.012.010.08.06.04.013.6D2.00.0術前6M1Y2Y3Y5Y術前6M1Y2Y3Y5Y*:p<0.05,n.s.:notsigni.cant,対応のないt検定*:p<0.05,n.s.:notsigni.cant,対応のないt検定図3ICLとホールICLの眼圧の経時的変化図4ICLとホールICLの角膜内皮細胞密度の経時的変化ICLとホールCICLの眼圧は全期間で有意差なく安定している.ICLとホールCICLの角膜内皮細胞密度は全期間で有意差なく経年変化内である.表1ICLとホールICLの術後合併症・追加処置のまとめICL(C1,821眼)ホールCICL(C8,397眼)p値(c2検定)緑内障発作16眼(C0.88%)0眼(0C.00%)<C0.001予防的虹彩切開・切除31眼(C1.70%)0眼(0C.00%)<C0.001再固定(軸ずれ)(外傷脱臼)25眼(C1.37%)3眼(0C.16%)52眼(C0.51%)1眼(0C.01%)<C0.001<C0.001入れ替え(サイズ)(度数)26眼(C1.43%)2眼(0C.11%)13眼(C0.13%)25眼(C0.24%)<C0.001C0.008追加CLASIK16眼(C0.88%)9眼(0C.09%)<C0.001抜去(本人希望)白内障手術2眼(0C.11%)C5眼(0C.27%)20眼(C0.20%)0眼(0C.00%)<C0.001C0.106眼内炎1眼(0C.05%)1眼(0C.01%)<C0.001角膜内皮細胞減少1眼(0C.05%)0眼(0C.00%)<C0.001中毒性前眼部症候群0眼(0C.00%)7眼(0C.08%)<C0.001合計128眼(C7.03%)C128眼(C1.25%)<C0.001LASIKは非眼科専門医による手術や美容系クリニックによる価格破壊などにより,LASIKバブルが崩壊し,症例数が減少した.その一方,ICLは眼科専門医の白内障術者が一定水準以上の技量をもって適正な価格で手術を提供することが継続できれば,LASIKとは違う道を歩み,近い将来屈折矯正手術の第一選択肢になると思われる.文献1)ShimizuCK,CKamiyaCK,CIgarashiCACetal:Long-termCcom-parisonofposteriorchamberphakicintraocularlenswithandCwithoutCaCcentralhole(holeCICLCandCconventionalICL)implantationCforCmoderateCtoChighCmyopiaCandCmyo-picastigmatism:Consort-compliantarticle.Medicine(Bal-timore)95:e3270,C20162)PackerM:TheImplantableCollamerLenswithacentralport:reviewoftheliterature.ClinOphthalmol27:2427-2438,C2018C●おわりにICLの執刀にはライセンスの取得が必要で,2021年3)NakamuraT,IsogaiN,KojimaTetal:Long-terminvivostabilityCofCposteriorCchamberCphakicCintraocularlens:PropertiesCandClightCtransmissionCcharacteristicsCofC5月末時点でC281名のライセンス取得医師がいる.Cexplants.AmJOphthalmolC219:295-302,C2020C1182あたらしい眼科Vol.38,No.10,2021(50)

眼内レンズ:外傷性虹彩離断を伴う成熟白内障に対する手術

2021年10月31日 日曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋419.外傷性虹彩離断を伴う成熟白内障に松島博之獨協医科大学眼科学教室対する手術外傷による虹彩離断と角膜内皮減少を伴うMorgagni様成熟白内障を有する患者に対して,離断部を利用して水晶体を娩出したあとに,虹彩縫合と強角膜切開創の縫合を同時に行う手術戦略を立てたことで,角膜の透明性を保ったまま白内障手術を行うことが可能であった.●はじめに外傷によって虹彩離断を認める患者では水晶体亜脱臼を合併していることが多く,離断した虹彩が手術の邪魔をするので,むずかしいケースとなる.さらに白内障のグレードが高い場合は術前の戦略が重要である.本稿の症例は,さらに角膜内皮細胞数の減少を伴っていたので,角膜内皮細胞に対する負担を恐れて超音波乳化吸引術を選択肢からはずし,水晶体.内摘出術+虹彩縫合+強膜内固定術を施行し,良好な経過であったので報告する.●症例65歳,男性.50年前に右眼打撲の既往あり.視力低下のため近医を受診し,白内障の進行が認められ,手術目的で紹介となった.前立腺癌の治療歴はあるが他に特記すべき既往はない.右眼10時から2時部位にハンモック状虹彩離断と茶色いMorgagni様核を有する成熟白内障を認めた(図1).術前右眼視力は0.01(矯正不能),角膜内皮細胞数は875cells/mm2であった.虹彩離断部より脱出した硝子体が観察されたので,水晶体.内摘出術を予定した.Tenon.下麻酔後,10mmの強角膜切開創を作製し(Morgagni様であったため水晶体核は小さいと判断した),分散型眼粘弾剤シェルガン(参天製薬)で角膜内皮細胞を保護しながら,リンピを用いて離断した虹彩の下から褐色水晶体を摘出した(図2).摘出後,脱出硝子体の処理を行い,強角膜切開創を10-0ナイロン糸で縫合した.離断した虹彩の整復のため,強角膜切開創直下にVランスで穿孔創を作製し,離断虹彩を穿孔創に嵌頓させた状態で,強角膜切開創の縫合と同時に虹彩縫合も施行した.縫合時に虹彩整復部位と強角膜切開創縫合部位を一致させることで,創口閉(47)鎖と虹彩整復を同時に行う工夫をした.その後,NX-70(参天製薬)を用いてダブルニードルフランジ強膜内固定術1)を施行した.離断後長期経過していたため,虹彩は少し楕円になった(図3)が,眼内レンズの位置は良好で,術後2週間後の右眼視力は0.15(0.4×sph+0.5D(cyl-3.5DAx10°)と改善した.●考按外傷によって虹彩離断を有するケースでは,離断部に一致してZinn小帯断裂を有することが多く,前.切開後に水晶体.拡張リング(HOYA)を挿入し,超音波乳化吸引術を施行することが多い2).この場合,水晶体核硬度のグレードが低いことが手術可能な条件であり,進行した白内障ではZinn小帯断裂が進行してしまうこともある.超音波乳化吸引術の場合,離断部から脱出した硝子体が嵌頓する可能性があるので,白内障手術のための切開創は離断部から離す.しかし,今回は特殊症例で,術前から角膜内皮細胞数減少があったため,超音波乳化吸引による角膜侵襲を恐れて水晶体.内摘出術を選択した.水晶体核も褐色に着色しており,核破砕吸引がむずかしく時間がかかり,角膜内皮細胞の手術侵襲による減少から水疱性角膜症の発生が予測できたため,核硬度の高い白内障でもできるだけ角膜内皮細胞に対する負担が少ない術式を選択した.術前の戦略として,虹彩離断の範囲が広かったので,水晶体.内摘出術のための切開創を虹彩離断部がある12時を中心に作製することにした.散瞳状態が悪い場合,通常通りに水晶体を娩出すると圧出される水晶体によって虹彩が引き伸ばされ,虹彩離断が拡大し虹彩萎縮が生じる可能性がある.今回は,離断部位を利用し離断部の中を通して水晶体を娩出することで,大きい水晶体を最小限の組織侵襲で摘出することができた.さらにもう一つ工夫したのが,虹彩縫あたらしい眼科Vol.38,No.10,202111790910-1810/21/\100/頁/JCOPY図1術前写真外傷のため広範囲に離断した虹彩と成熟白内障がみられる.図3術後写真虹彩は整復されているが,縫合のために上方へ偏位している.図2実際の手術手順a:Tenon.下麻酔後,10mmの強角膜3面切開を作製.b:分散型眼粘弾剤で角膜内皮細胞を保護しながら,リンピを用いて離断した虹彩の下から褐色水晶体を摘出.c:虹彩の整復のため,強角膜切開創直下にVランスで穿孔創を作製し,離断虹彩を穿孔創に嵌頓させ,強角膜切開創と同時に虹彩縫合.d:ダブルニードルフランジ強膜内固定術.合と強角膜切開創の縫合を同時に行ったことである.虹彩縫合用の強膜穿孔を強角膜切開創と平行に作製することで創口を閉じながら虹彩根部を縫合することが可能となった.今回の手術戦略によって角膜の透明性を保ったまま虹彩整復と水晶体.内摘出術および眼内レンズ強膜内固定術を行うことができた.外傷後の白内障は症例が少ないことに加え,各々の症例で状態が異なり,術者の経験値と手術力を問われる.正解をみつけることはむずかしいが,水晶体および周辺組織の状態をじっくり観察し,状況にあった手術戦略を考えることが重要である.文献1)YamaneS,SatoS,Maruyama-InoueMetal:Flangedintrascleralintraocularlens.xationwithdouble-needletechnique.Ophthalmology124:1136-1142,20172)松島博之:外傷性白内障,水晶体亜脱臼・脱臼.OCULIS-TA56:57-66,2017

コンタクトレンズ:コンタクトレンズの処方とフォロー 5. ハードコンタクトレンズの修正-異物感・充血など(その2)

2021年10月31日 日曜日

・・提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズユーザーの満足度向上をめざすコンタクトレンズの処方とフォロー5.ハードコンタクトレンズの修正―異物感・充血など(その2)―小玉裕司小玉眼科医院■はじめに前回のセミナーではハードコンタクトレンズ(HCL)の装用による異物感や充血などの原因としてレンズの汚れと破損を取りあげ,その対処法について解説した.ベベル・エッジ形状による異物感や充血については,その一部を解説するにとどめた.今回はその続きと,そのほかにどのような問題に対して修正という方法が有効なのかについて解説する.■HCLのベベル・エッジ形状による異物感と充血(その2)ベベル幅が広すぎてエッジの浮き上がりが大きすぎても,ベベル幅が狭すぎてエッジの浮き上がりが小さすぎても,レンズのくもりや異物感や充血の原因となる.最近はあまりみかけないが,ICブレンドやPCブレンド(図1)が不足している場合(図2,3)やエッジが尖りすぎている場合も,機械的刺激により異物感,充血,くもりなどの原因となる(図4).そのようなときにICブレンドやPCブレンドの追加,またはエッジを丸めるといった修正を施す(図5).■中央部フロントの研磨・修正レンズにキズがたくさん入って(図6)くもるなどの視力障害が生じてきた場合や,度数に変化が生じてきた場合には,レンズの中央部フロントを研磨・修正するこエッジリフトフロントカーブ(45)0910-1810/21/\100/頁/JCOPYとによって対処することができる.中央部フロントをフロントカーブに沿って平行に研磨すれば,浅い傷であれば除去することができる.レンズの中央部を強く,周辺部を軽く研磨することによってマイナス度数をアップすることができる.もともとのレンズ度数にもよるが,1Dくらいまでは強くすることができるが,レンズメーターで度数の変化とリングのボケをチェックしながら慎重に進める.中央部を軽く,周辺部を強く研磨してプラス度数をアップ(マイナス度数をダウン)することも可能ではあるが,ややむずかしい(図7).■周辺部フロントの修正ウェットなくもり(図8)が強くてレンズの機械的刺激が原因として疑われる場合は,周辺部フロントを研磨・修正して刺激を少なくする(図9a).この修正はレンズが瞬目によって過大に上方に引き上げられる場合に,その効果を減少させる目的にも用いられる.また,瞬目による引き上げが少なくてレンズが下方に定位している場合は,周辺部フロントにMZ加工を施す(図9b).MZ加工によって生じた溝の部位に涙液が溜まり,それによる表面張力がレンズの引き上げ効果を増加させる(図10).■おわりにHCLの研磨・修正方法について述べてきたが,角膜図3ICブレンド不足あたらしい眼科Vol.38,No.10,20211177図2ベベル・エッジの模式図a:エッジの浮き上がりが小さい.b:ブレンド不足.c:ブレンド過剰.d:良好な状態.図4ブレンド不良による点状表層角図6レンズのキズ図8ウェットなくもり膜症ababc図9周辺部フロントの修正図5ベベルの修正図7中央部フロントの修正a:瞬目によるレンズの引き上げが過大であa:ICブレンド.ベースカーブと中間カーブレンズ表面のキズを除去したり,レンったり,瞬目によってすぐレンズが汚れてしの移行部を研磨して丸みをつける.b:PCズの度数を変更する場合は,フロントまうような場合は,周辺部フロントを研磨しブレンド.中間カーブと周辺カーブの移行部を研磨・修正する.て薄くする.b:瞬目によるレンズの引き上を研磨して丸みをつける.c:エッジの修正.げが不十分な場合は,周辺部フロントに安全エッジを研磨して丸みをつける.カミソリにて溝を付ける(MZ加工).もベストフィッティングが得られるわけではなく,研磨・修正が必要な場合があることを理解しておきたい.しかも,眼にもレンズにも経年変化が生じるので,それらの変化に応じたレンズの修正が必要になってくる.レンズのくもりだけでも原因は多様である.フルオレセインパターンでフィッティングを判定する場合に,スティープかフラットかなどをチェックするだけではなく,ベベル幅,エッジの浮き上がり,ブレンドの状態を図10MZ加工後合わせてチェックし,日頃からレンズの状態をルーペなどを用いてチェックする習慣をつけることが大切であ形状一つをとってもその個人差は大きく,涙液量や眼瞼る.形状もさまざまであり,できあいのHCLを装用させて

写真:円錐角膜患者に生じた角膜感染症は急性水腫に類似する

2021年10月31日 日曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦449.円錐角膜患者に生じた角膜感染症は急性水腫に類似する細谷比左志ホワイティうめだ眼科クリニック前田直之湖崎眼科大橋裕一南松山病院アイセンター図2図1のシェーマ①角膜感染巣.著明に白濁し,高度の浮腫と浸潤を認める.②毛様充血も強い.図1円錐角膜患者にみられた角膜感染症角膜感染により角膜は白濁し浮腫を生じている.毛様充血も強い.一見すると急性水腫と似ている.図4図3の症例の前眼部OCT写真角膜感染を起こしている部位(C..)には,Descemet膜の断裂や実質浮腫などを認めない.図3円錐角膜患者にみられた角膜感染症図C1とは別の症例.(43)あたらしい眼科Vol.38,No.10,2021C11750910-1810/21/\100/頁/JCOPY進行した円錐角膜患者では角膜中央部のやや下方が菲薄化して前方に突出し,不正乱視をもたらして眼鏡やソフトコンタクトレンズでは視力矯正が不能となり,ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)による視力矯正が必要となる.しかし患者によっては,慢性的に角膜頂点付近に点状表層角膜症(super.cialpunctatekeratopathy:SPK)を生じ,ときに角膜感染症を発症することがある.図1,2は,そのような円錐角膜患者にみられた角膜感染症の一例である.円錐角膜に生じた角膜感染症では通常の角膜感染症よりさらに角膜は白濁し,著明な角膜浮腫を伴い,また毛様充血もみられる.角膜浮腫が強いため,急性水腫を生じたかと見まがうこともある.筆者らは以前に,そのような円錐角膜患者に生じた角膜感染症の症例をC5例経験し発表1)したことがある.5症例の内訳は男性C2例,女性C3例で年齢はC20~35歳,いずれもCHCL装用眼に生じた細菌性角膜感染である.感染巣からの擦過物の培養の結果,原因菌としてStaphylococcusCepidermidis,Ca-haemolyticCstreptococ-cus,Staph.aureusなどが検出された.いずれの症例も角膜は著明な浮腫を伴い,急性水腫に類似した病像を呈していた.治療は抗菌薬の頻回点眼と点滴であり,いずれの症例も治療によく反応し,数日のうちに角膜浮腫が消退し,また感染巣にみられた混濁も徐々に消失していった.一方,円錐角膜患者にまれにみられる急性水腫(acutehydrops)は,Descemet膜の破裂により前房水が急速に角膜実質内に流入することにより生じる高度の角膜実質の浮腫であり,角膜中央部は白濁し視力低下がみられる.その病像は一見すると今回の角膜感染症症例と類似しており,注意深い鑑別が必要である.円錐角膜患者に角膜感染を生じた場合に角膜浮腫が高度になると,角膜浸潤がわかりにくく,角膜急性水腫と類似した所見2,3)となることがある.急性水腫と鑑別するためには,前房炎症の有無,毛様充血の程度などが参考になるが,最近では前眼部光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)が登場し,Descemet膜の破裂像など角膜の断面の情報を得ることが可能となった.図3,4の症例はC64歳,男性.やはり円錐角膜患者で普段はCHCL装用していたところ角膜感染を生じたもので,角膜擦過物からの培養は陰性であったが,レンズの保存ケースからセラチア菌が検出された.この症例では前眼部COCTにより角膜の断面図が得られ,急性水腫とは異なり,Descemet膜破裂,Descemet膜.離,stroC-malcleftなどを認めなかった.高度の角膜浮腫を伴う円錐角膜に生じた角膜感染症を急性水腫と鑑別するには,前眼部COCTが非常に有用であると思われた.文献1)細谷比左志,前田直之,井上幸次ほか:円錐角膜患者に見られた角膜感染症のC5症例.第C46回日本臨床眼科学会総会抄録集,19922)西田幸二,井上幸次,中川やよいほか:両眼にCAcuteHydrops様所見を呈した角膜感染症のC1例.あたらしい眼科7:263-266,C19903)遠藤純子,崎元暢,嘉村由美ほか:急性水腫様所見を呈する細菌感染を生じた円錐角膜のC2症例.眼科C42:711-714,C2000C

硝子体手術,眼球摘出術,眼球内容除去術の術後交感性眼炎のリスク

2021年10月31日 日曜日

硝子体手術,眼球摘出術,眼球内容除去術の術後交感性眼炎のリスクRiskofSympatheticOphthalmiaFollowingVitrectomy,EnucleationandEvisceration重安千花*岡田アナベルあやめ*はじめに交感性眼炎(sympatheticophthalmia)は非常にまれな疾患であるが,その概念は紀元前のヒポクラテスの時代まで遡るといわれる1).“Sympatheticophthalmia”という用語は1840年にMackenzieが提唱し,症例を提示して詳細に病態の記載している2,3).なお,罹患した歴史上の人物のなかでは,5歳頃に交感性眼炎のために失明し点字を考案したフランスの盲学校教師であるLouisBrailleが有名である4).現在,ぶどう膜炎の分類や疾患の用語は国際的に統一され,2019年にはわが国におけるぶどう膜炎診療ガイドラインが発表され5),また2021年には国際的なぶどう膜炎の研究グループStandardizationofUveitisNomenclature(SUN)WorkingGroupによる交感性眼炎の国際分類基準が定義された6).本稿では,時代とともに変化してきた硝子体手術後の交感性眼炎のリスクおよび眼球摘出術後・眼球内容除去術後の交感性眼炎のリスクについて記載する.I交感性眼炎とは1.定義交感性眼炎は「片眼の穿孔性眼外傷または内眼手術後に生じた両眼性のぶどう膜炎」とSUNWorkingGroupによる国際分類基準で定義されている5,6).フォークト・小柳・原田病(Vogt-Koyanagi-Haradadisease:VKH)と同様に,メラノサイトに対する自己免疫疾患であり,穿孔性眼外傷または内眼手術の既往の有無より鑑別する.なお,外傷や手術の既往のある眼を起交感眼(excit-ingeye),既往のない対眼を被交感眼(sympathizingeye)という7).起交感眼は,角膜瘢痕,眼球癆や眼球摘出術後であることも多く,炎症の確認ができないことも多いのが現状である.2.疫学近年,発症率は年間10万人あたり0.03人と推計されているまれな疾患であり8),外傷後は0.02~0.05%,手術後は0.01%と予測され6),過去の報告と比べるとその発症頻度は減少している9).また,複数回に及ぶ手術や硝子体手術のリスクが高いといわれるが10~12),線維柱帯切除術後13),白内障術後14),翼状片術後の強膜軟化症15),黄斑変性に対する複数回の硝子体注射後16)などに加え,眼内腫瘍に対する治療目的の放射線照射後に発症した例も報告されている17).歴史的には外傷リスクの高い小児や男性に多いとされるが,近年はあらゆる年齢で発症し,あまり性差はないともいわれている1,18).発症の契機から対眼が発症するまでの期間は5日~66年と報告の幅は広いが1,19),70~80%は3カ月以内,90%は1年以内に発症するとされる11,20).なお,外傷後から交感性眼炎の発症までの期間は平均6.5カ月と報告され,手術後の14.3カ月と比較して短期間であること,また視力予後が外傷後のほうが手術後と比較をして2.39倍悪いと報告されている8).発*ChikaShigeyasyu&AnnabelleAyameOkada:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕重安千花:〒181-8611東京都三鷹市新川6-20-2杏林大学医学部眼科学教室0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(35)1167症に際し人種差はないとされるが21),主要組織適合抗原であるCHLA-DRB1*04,CDQA1*03,CDQB1*04との関連が報告される22,23).日本人の交感性眼炎患者C16例を調べた調査ではCHLA-DR4がC93.4%(DRB1*0405:81.3%,DRB1*0410:6.3%)にみられた22).HLA-DRB1*0405の頻度は健康な日本人ではC26.7%とされており24),HLA-DR4の保有者は日本人をはじめとしたモンゴロイドに多い.また,地中海のサルデーニャ島には中央アジアを由来とする保有者が多いとされ,歴史的にはクリミア戦争と交感性眼炎の関連なども散見される3).なお,日本人ではCVKHと同様に少なくともCHLA-DR4,DR53の遺伝子素因が存在する24).C3.病態初期はCCD4陽性ヘルパーCT細胞の活性からはじまり25),CD8陽性キラーCT細胞の活性に続く26).組織学的には炎症性の単球(T,Bリンパ球,マクロファージ)の浸潤がみられ,一部の患者では多核巨細胞の肉芽腫形成をみる.また,網膜色素上皮とCBruch膜との間にリンパ球,類上皮細胞の集簇によるCDalen-Fuchs結節が25~35%にみられることもある21,27,28).VKHと比較して,脈絡膜および網膜に炎症所見があまりみられないことが多いとされ29,30),解剖学的に観察した病期(急性期か慢性期)が異なることを反映している可能性がある.C4.臨床所見5)Ca.発症早期自覚症状としては霧視,羞明から始まり毛様充血,視力低下などがみられ,眼外症状はみられないこともあるが,VKHと同様に頭痛,難聴,耳鳴りを示すこともある.他覚所見としては,両眼性の急性肉芽腫性ぶどう膜炎を呈する.眼底は滲出性網膜.離,網膜浮腫,視神経乳頭の発赤・腫脹,硝子体炎がみられる.また,脈絡膜.離や多発性脈絡膜炎(散在性白斑)などがみられる.筆者らの経験では,初期のCVKH典型例にみられる漿液性網膜.離と比較して,初期の交感性眼炎では脈絡膜炎を示唆する多発性脈絡膜白斑の眼底所見が多い.フルオレセイン蛍光眼底造影検査で,初期に点状の多発性蛍光漏出,後期に網膜下の蛍光色素の貯留,視神経乳頭の過蛍光がみられる.超音波CBモード検査では脈絡膜の肥厚がみられ,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)では網膜下液の貯留,網膜色素上皮.離などがみられる.全身検査では,髄液検査で細胞増多,聴力検査では感音性難聴が検出されることがある.Cb.寛解期・晩期他覚所見として,夕焼け状眼底,視神経乳頭周囲の萎縮,多発性網脈絡膜萎縮斑,黄斑部の色素沈着や網膜色素上皮の集簇・遊走などがみられる.脈絡膜新生血管,網膜下索状物の形成を合併した場合は,視力の予後不良の原因となる.また,全身的に皮膚の白斑,頭髪の白髪,脱毛などがみられることがある.C5.診断基準5)現時点では明確なものはないが,以下の所見から判断する.①穿孔性眼外傷,内眼手術の既往②交感性眼炎を示唆する眼所見③頭痛,難聴,耳鳴りなどの眼外症状④髄液細胞増多⑤CHLA-DR4,HLA-DR53の有無⑥他のぶどう膜炎疾患を示唆する所見がないことCII硝子体手術の術後交感性眼炎のリスク1.エビデンスに基づいたショートレビュー歴史的な背景により穿孔性眼外傷が減少したため,交感性眼炎を発症する総数は減少し,また手術技術の向上は外傷後や硝子体手術後に交感性眼炎を発症する患者の減少に寄与している31).そのため,相対的に硝子体手術後に交感性眼炎を発症する割合が増えている32).20ゲージ(G)硝子体手術による強膜・結膜を縫合する手技とC23G,25G無縫合硝子体手術では,無縫合のほうが術後の眼内液の漏出により交感性眼炎の発症リスクが上昇するという報告もあれば33),差はないとする報告もあり34),現段階では一定の結論は出ていない.しかしながら,27Gの硝子体手術に伴う交感性眼炎の報告は現段階で筆者らが検索した限りC2021年のCTakaiらによる症例報告のみであり35),近年の硝子体手術は,より小切開1168あたらしい眼科Vol.38,No.10,2021(36)で低侵襲の手技になったため交感性眼炎のリスクは少ないものの,発症する可能性は残されていることには注意が必要である.C2.処置の目的,予測するメリット強膜穿孔創からの抗原の漏出が交感性眼炎の発症に関与する可能性があると考えられており36),ぶどう膜組織が結膜リンパ組織を介して所属リンパ節に達し,細胞性免疫を誘導すると考えられている37).硝子体手術後の強膜穿刺部からの眼内液の漏出による低眼圧や,結膜に術後色素沈着がみられる場合は,交感性眼炎のリスクとなりうる38).また,複数回に及ぶ手術既往のある眼やシリコーンオイル注入眼,眼球癆に至った眼が,起交感眼として多い39).術後は自覚症状や他覚所見が取りづらく,交感性眼炎のリスクをふまえ,術眼だけでなく,僚眼も経過観察を行う.C3.タイミング,術周期の治療(局所,全身)5)前眼部の炎症に対しては局所のステロイド点眼を行い,交感性眼炎の診断が確定次第,原田病に準じて早期にステロイドの全身投与を行う40).ステロイドの治療は長期に継続する必要があり,投与前には糖尿病,高血圧,脂質異常症,肝腎機能障害,精神疾患の有無について確認する.また,感染症(結核,ヘルペスウイルス,肝炎ウイルスなど)について確認し,ステロイドの副作用(胃腸障害,耐糖能異常,骨粗鬆症,易感染症,精神症状など)につき十分に説明する.定期的に血液検査に加え,必要に応じて消化管検査や骨密度の測定を行う.Ca.初発例局所療法:前眼部の炎症を伴うときはC0.1%リンデロン点眼をC4~6回,虹彩後癒着予防のためミドリンCP点眼を1~4回用いる.全身療法:ステロイドパルス療法あるいはステロイドの大量療法が基本となり,眼所見を確認しながら徐々に減量する.処方例としてはメチルプレドニゾロンC200~1,000CmgをC3日間点滴静注後,プレドニゾロンC40Cmgの内服に切り替えて漸減するが,病態によりこの限りではない.ステロイドの内服はC6~9カ月程度継続することが望ましい7).Cb.遷延例眼底型の再燃の際はステロイドを増量し,より長い期間の免疫抑制が必要となり,ステロイド減量(steroid-sparing)のために免疫抑制薬の併用を検討する.眼底型の再燃時には,トリアムシノロンのCTenon.下注射(単独あるいは追加)の選択も行う.白内障の程度,ステロイドによる眼圧上昇の既往の有無,腎機能・肝機能などの全身状態を考慮したうえで治療方針を総合的に判断する.遷延化を防ぐには,ステロイドの治療開始の時期,初期投与量,漸減・再発時の管理が重要である41).遷延した患者や副作用のためにステロイドの継続投与が困難な患者には,免疫抑制薬のシクロスポリン(2~4Cmg/kg:トラフ値がC100Cng/ml程度になるように調整)やアザチオプリンの有効性が報告されている32).免疫抑制薬の使用時も肝腎機能障害,高血圧,中枢神経障害などの副作用については説明ならびにモニタリングが必要である.また,海外では交感性眼炎の治療として生物学的製剤であるアダリムマブ(ヒュミラ)の有効性も報告されている42,43).使用中は重篤な感染症をはじめとした有害事象に対して留意が必要な薬剤であり,「非感染性ぶどう膜炎に対するCTNF阻害薬使用指針および安全対策マニュアル」に準拠する必要がある44).わが国では交感性眼炎に対してはまだ使用頻度は少ないものの,今後の報告が待たれる薬剤である.C4.具体的な方法,注意点,コツ強膜内陥術後の交感性眼炎も報告されるものの45),強膜内陥術と比較して硝子体手術による交感性眼炎のリスクは約C2倍といわれる36).交感性眼炎の発症予防という観点からは低侵襲の手術が推奨され,また術後は僚眼の眼所見についても注意する.また,VKHの既往がある場合は,交感性眼炎ではないものの術後の再燃リスクをふまえて十分観察を行う.(37)あたらしい眼科Vol.38,No.10,2021C1169図1前眼部所見(低倍率)毛様充血がみられる.図3眼底所見図2前眼部所見(高倍率)硝子体混濁により視認性は不良で,視神経乳頭は発赤して角膜後面沈着および虹彩炎がみられる.いる.図4フルオレセイン蛍光眼底造影検査の所見造影早期(Ca)に視神経乳頭部および下方の周辺網膜より蛍光色素の漏出がみられ,後期(Cb)には網膜下に漏出液の貯留がみられた.図5光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)所見網膜下液の貯留がみられ,網膜色素上皮ラインは波打ち,脈絡膜の肥厚がみられた.1),角膜後面沈着物および虹彩炎がみられた(図2).眼底検査では,硝子体混濁により視認性はやや不良で,視神経乳頭は発赤していた(図3).フルオレセイン蛍光眼底造影検査では,造影早期に視神経乳頭部および下方の周辺網膜より蛍光色素の漏出がみられ(図4a),後期には網膜下に漏出液の貯留がみられた(図4b).OCTでは網膜下液の貯留がみられ,網膜色素上皮ラインは波打ち,脈絡膜の肥厚がみられた(図5).本症例では頭痛,難聴の自覚はなかったが,入院後の髄液検査で細胞増多を確認し,交感性眼炎と診断した.また,入院時の採血によりCHLA-DRB1*04,DRB1*15が陽性であることが経過中に確認された.加療に際して全身状態を確認後,速やかにステロイドパルス療法(ソルメドロールC1Cg/日をC3日間点滴)を施行し,その後プレドニソロン内服C50Cmg/日に切り替えた.内服に変更後C1週間の時点で,OCTで網膜下液の消失を確認した.外来でステロイド内服を徐々に漸減し,ステロイド加療開始後C2カ月の時点でシクロスポリン内服(100Cmg/日)とプレドニゾロンC35Cmg/日を併用して,漸減中である.現在は炎症の再燃はなく,全身への副作用も生じていない.おわりに交感性眼炎は手術技術の向上に伴い,発症率は減少している.しかしながら,低侵襲の手技であっても交感性眼炎を発症する可能性は残されていることには留意し,患者の理解を得たうえで術眼のみでなく僚眼も含めた経過観察を行うことが重要であると考える.文献1)AlbertCDM,CDiaz-RohenaR:AChistoricalCreviewCofCsym-patheticCophthalmiaCandCitsCepidemiology.CSurvCOphthal-molC34:1-14,C19892)MackenzieW:Apracticaltreatiseonthediseasesoftheeye.p523-534,Longmans,London,18403)北市伸義,北明大洲,大野重昭:炎症性眼疾患の診療交感性眼炎.臨眼62:650-655,C20084)KadenR:[HistoricnoticesofLouisbrailleandthedevel-opmentCofdot-writing(authorC’stransl)]C.CKlinCMonblCAugenheilkdC170:154-158,C19775)大野重昭,岡田アナベルあやめ,後藤浩ほか:ぶどう膜炎診療ガイドライン.日眼会誌123:635-696,C20196)JabsCDA,CDickCA,CKramerCMCetal:Classi.cationCcriteriaCforCSympatheticCOphthalmia.AmJOphthalmolC2021.doi:10.1016/j.ajo.2021.03.0487)慶野博,岡田アナベルあやめ:眼科手術のリスクマネージメント交感性眼炎と硝子体手術.眼科手術20:523-524,C20078)GalorCA,CDavisCJL,CFlynnCHWCJrCetal:SympatheticCoph-thalmia:incidenceCofCocularCcomplicationsCandCvisionClossCinthesympathizingeye.AmJOphthalmol148:704-710,Ce702,C20099)GotoH,RaoNA:SympatheticophthalmiaandVogt-Koy-anagi-HaradaCsyndrome.CIntCOphthalmolCClinC30:279-285,C199010)MakleyCTACJr,CAzarA:SympatheticCophthalmia.aClong-termfollow-up.ArchOphthalmol96:257-262,C197811)LubinCJR,CAlbertCDM,CWeinsteinM:Sixty-.veCyearsCofCsympatheticCophthalmia.CaCclinicopathologicCreviewCofC105cases(1913-1978)C.COphthalmologyC87:109-121,C198012)井上俊輔,出田秀尚,石川美智子ほか:網膜・硝子体手術後にみられた交感性眼炎の臨床的検討.日眼会誌C92:372-376,C198813)竹田朋代,小嶌祥太,高井七重ほか:線維柱帯切開術後に交感性眼炎を発症したステロイドレスポンダーのC1例.眼科57:1067-1074,C201514)竹宮信子,菅野貴子:稲用和也白内障術後に水痘帯状ヘルペスウイルス虹彩炎を生じ,経過中に交感性眼炎をきたしたC1例.臨床眼科71:1369-1375,C201715)大橋和広,宮平大輝,下地貴子ほか:第C71回日本臨床眼科学会講演集[2]強膜軟化症を契機に発症した交感性眼炎のC1例.臨床眼科72:537-542,C201816)古泉英貴,長谷川泰司,丸子一朗ほか:滲出型加齢黄斑変性に対する多数回の抗血管内皮増殖因子薬治療を契機に発症した交感性眼炎のC1例.日眼会誌124:713-719,C202017)BrourJ,DesjardinsL,LehoangPetal:SympatheticophC-thalmiaCafterCprotonCbeamCirradiationCforCchoroidalCmela-noma.OculImmunolCIn.ammC20:273-276,C201218)CastiblancoCCP,CAdelmanRA:SympatheticCophthalmia.CGraefesArchCClinExpOphthalmolC247:289-302,C200919)ZahariaCMA,CLamarcheCJ,CLaurinM:SympatheticCuveitisC66CyearsCafterCinjury.CCanCJCOphthalmolC19:240-243,C198420)NussenblattR:Sympatheticophthalmia.In:Uveitis:fun-damentalCandCclinicalpractice(NussenblattCR,CWhitcupCSM,CPalestineCAG,eds)C.CpC97-134,Cp311-323,CMosby,CSt.CLouis,199621)ChanCCC,CRobergeCRG,CWhitcupCSMCetal:32CcasesCofCsympatheticCophthalmia.CaCretrospectiveCstudyCatCtheCNationalCEyeCInstitute,CBethesda,CMd.,CfromC1982CtoC1992.CArchOphthalmol113:597-600,C199522)ShindoY,OhnoS,UsuiMetal:ImmunogeneticstudyofsympatheticCophthalmia.CTissueCAntigensC49:111-115,C199723)KilmartinDJ,WilsonD,LiversidgeJetal:Immunogenet-1172あたらしい眼科Vol.38,No.10,2021(40)–

急性網膜壊死に合併する裂孔原性網膜剝離 の硝子体手術

2021年10月31日 日曜日

急性網膜壊死に合併する裂孔原性網膜.離の硝子体手術VitrectomyforRhegmatogenousRetinalDetachmentComplicatingAcuteRetinalNecrosis厚東隆志*はじめに急性網膜壊死(acuteCretinalnecrosis:ARN)は単純ヘルペスウイルス(herpesCsimplexvirus:HSV)や水痘帯状疱疹ウイルス(varicellaCzostervirus:VZV)の網膜感染により生じる壊死性網膜炎を主体とする病態である.1971年に桐沢型ぶどう膜炎として浦山らが報告1)し,その後CHSV,VZVが原因であるぶどう膜炎であることが解明された2~4).無治療の場合は数週間~数カ月で失明に至るきわめて予後不良の疾患である.しばしば裂孔原性網膜.離(rhegmatogenousCretinalCdetach-ment:RRD)を合併し,硝子体手術の絶対適応となるが,手術のタイミングや術式に統一的な見解は得られていない.本稿では筆者の施設での経験を元にした私見も交え,ARNに対する硝子体手術について述べる.CI急性網膜壊死の診断と薬物治療ARNはわが国におけるぶどう膜炎の約C1%強と推定される5).肉芽腫性前部ぶどう膜炎(図1)と,網膜周辺部の黄白色病変を初期病変の特徴とし,眼底所見で網膜動脈炎,視神経乳頭発赤,硝子体混濁(図2)や眼圧上昇が診断基準に含まれる.フルオレセイン蛍光眼底検査は,網膜動脈炎や視神経乳頭炎の存在を描出するのに有図1急性網膜壊死の肉芽腫性前眼部ぶどう膜炎(47歳)強い毛様充血と虹彩後癒着を生じ(a),白色の豚脂様角膜後面沈着物を認める(b).*TakashiKoto:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕厚東隆志:〒181-8611東京都三鷹市新川C6-20-2杏林大学医学部眼科学教室C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(29)C1161図2急性網膜壊死の初期眼底所見図C1と同一症例.硝子体混濁とともに,周辺部網膜に黄白色病変を認める.中間周辺部の病変は斑状,顆粒状だが,再周辺部の病変は癒合し広い壊死病変となっている.図3急性網膜壊死のフルオレセイン蛍光眼底検査所見図C1と同一症例.全周の網膜動脈炎と血管閉塞を造影早期(Ca)より認め,後期(Cb)では視神経乳頭周囲の漏出を認め視神経乳頭炎の存在が確認できる.図5急性網膜壊死に合併した裂孔原性網膜.離(RRD)図C1と同一症例.抗ウイルス薬治療中,下耳側にCRRDを生じた().術中所見から原因裂孔はC4時方向の健常網膜と壊死網膜の境界部にスリット状に生じた裂孔であった.図4OCTによる後部硝子体.離(PVD)の検出図C1と同一症例.ARN初診時はCPVD(-)であった(Ca)が,3週間の抗ウイルス薬治療の経過中,PVDが生じた(b)ことがCOCTで検出された.後部硝子体膜()が硝子体混濁のため比較的明瞭に判別できる.C-図6急性網膜壊死に合併した裂孔原性網膜.離に対する硝子体手術の術中所見別症例.術中に裂孔を検索し,裂孔部位()をジアテルミーでマーキングする(Ca).圧迫下に際周辺まで十分にシェービングを行う(Cb).#287シリコーンタイヤを用いて輪状締結を併施する(Cc).壊死網膜と健常網膜の境界の健常網膜側に全周光凝固を施行する(Cd).図7硝子体術後の再増殖図C1と同一症例.2度のガスタンポナーデ後いずれも再.離を生じ,最終的にシリコーンオイル下に復位した.耳側を中心に増殖性変化を生じているが,この所見は術後も徐々に増悪している.低眼圧となっており,シリコーンオイル抜去を行うと眼球癆に至る可能性が高い.-

硝子体生検目的の硝子体手術

2021年10月31日 日曜日

硝子体生検目的の硝子体手術VitreousBiopsyfortheDiagnosisofUveitis橋田徳康*はじめにぶどう膜炎の日常診療においては,しっかりとした診断をつけたうえでの治療が第一であるのは周知の事実であるが,ときに内眼手術が必要になる場合がある.眼内の状態を評価するためには,前房水や硝子体液の採取および解析が重要である.なぜなら,細胞やサイトカイン濃度を直接的に解析できるために診断に直結し,病態把握につながるからである.ただし,ぶどう膜炎に対する内眼手術は,術前の十分な消炎が得られたうえでの施行が望ましいとされている1).いままでは炎症眼に対する硝子体手術は大きな侵襲性のために原疾患の炎症悪化をきたす可能性が高く,慎重に症例選択がなされていたが,低侵襲硝子体手術(minimally-invasiveCvitreoussurgery:MIVS)の急速な進歩により,硝子体手術の安全性が向上し,炎症疾患に対する手術適応が拡大してきている2,3).本稿では,ぶどう膜炎疾患において,硝子体生検目的で行われる硝子体手術の適応・手技・注意点などについて解説する.CI硝子体手術を行う目的とタイミングぶどう膜炎疾患領域において硝子体手術を行う目的は,治療と診断に大きく分けられる4).本稿では(生検として)得られた硝子体液からいかに診断につなげるかというテーマで,診断目的で行われる硝子体手術について解説する.生検といえば悪性腫瘍が疑われる患者において,診断や進行度の解析に行われる手技のイメージがあるが,眼科領域においては広義に解釈すれば得られた硝子体サンプルを用いて,腫瘍細胞の検出と悪性度判定だけでなく,細菌性・真菌性眼内炎における感染病原体の検出・硝子体サイトカイン濃度測定,細胞解析および遺伝子再構成の有無の検索を行うなど,多彩な利用目的が存在する.次に手術を行うタイミングであるが,感染性ぶどう膜炎と非感染性ぶどう膜炎で大きく異なる.感染性ぶどう膜炎において硝子体手術を考えなければならない場合は,もともと緊急性疾患であるために時間的な猶予がない状況である.前房内や硝子体に激しい炎症があり中間透光体の混濁で網膜の状態が評価できない場合は,超音波画像診断(Bモード)による硝子体混濁の有無の精査が役に立つ(図1).さらに,網膜電図(electroretino-gram:ERG)を用いた網膜の機能評価も手術を行うか否かの一つの判断材料になる5,6).フリッカ網膜電位計レチバル(メーヨーコーポレーション)も,角膜電極ERGと同等の評価ができるかは今後の課題であるが,非侵襲的かつ簡便に錐体系機能を評価できるので有用である7).CII感染性ぶどう膜炎における硝子体生検目的の硝子体手術感染性ぶどう膜炎の代表疾患として急性網膜壊死や細菌性・真菌性眼内炎があるが,急性網膜壊死に関しては他稿に解説があるので参照していただきたい.眼内炎に*NoriyasuHashida:大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室〔別刷請求先〕橋田徳康:〒565-0871大阪府吹田市山田丘C2-2大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(23)C1155図1超音波画像診断(Bモード)による硝子体の評価中間透光体の混濁で眼底観察が困難な状況での評価に重要で,本症例では非常に強い硝子体混濁が認められる.図3穿孔性眼外傷後の感染性眼内炎の症例受傷後,前医で経過観察されていたが前房内炎症が激しくなり当院に紹介された.前房蓄膿・前房出血を伴う激しい前房内炎症,毛様充血を認める.図2Cutibacteriumacnesによる遅発性眼内炎の1例外傷後の無水晶体眼対する眼内レンズ二次挿入後,4カ月して出現した遅発性眼内炎.眼内レンズのCopticおよびChapticに沈着物の付着が多数みられる.図5抗菌薬を混注した灌流液での前房内洗浄図C3と同一症例.細菌性眼内炎が疑われ,眼の状況を確認すると同時に抗菌薬を混注した灌流液で前房内の洗浄を行っている.図4白内障術後早期に出現した術後眼内炎の症例紹介元での朝一番の診察時には,「眼底は十分透見可能であった」と紹介状にあったが,数時間で硝子体混濁が進み,同日の当院受診時には眼底観察が困難な状況まで病状が進行していた.図7感染性眼内炎に対する硝子体手術における周辺網膜処理図C3と同一症例.強い硝子体混濁があり視認性が悪い状況で医原性裂孔を作らないように丁寧に確実に周辺網膜を処理する.(大阪大学丸山和一先生より提供).図6前房に析出したフィブリン膜の前.鑷子による除去図C3と同一症例.瞳孔領に析出したフィブリン膜を,前.鑷子を用いて除去している.図8眼内悪性リンパ腫における硝子体混濁図9硝子体生検1週間後の術後眼底所見ベール状もしくはオーロラ状と表現される比較的強い硝子図C8の硝子体手術後.硝子体生検後,網膜浸潤病巣が明ら体混濁が赤道部から周辺も網膜にかけてびまん性に認めらかになった.周辺網膜郭清中に網膜最周辺部に裂孔があっれる.強い混濁の割には,視力がある程度保たれることがたため,網膜光凝固術を施行し,ガス注入で終了してい多い.る.図10硝子体生検時の無灌流硝子体手術(dryvitrectomy)眼球を圧迫しながらCdryvitrectomyを行い,生検サンプル1.2Cmlを採取する.細胞診やサイトカイン濃度測定用に使用する.図11灌流下での硝子体混濁の除去図C8,9と同一症例.十分な視認性を保ちながら混濁が強い部分を中心に硝子体をくまなく切除していく.生検サンプルはフローサイトメトリーなどに使用する.(大阪大学丸山和一先生より提供)—

ぶどう膜炎続発緑内障に対する手術: 考え方と実際

2021年10月31日 日曜日

ぶどう膜炎続発緑内障に対する手術:考え方と実際TypesofSurgeryforUveiticGlaucoma:ProcedureandManagement高橋枝里*井上俊洋*はじめにぶどう膜炎では,炎症が眼圧上昇の原因となる,消炎のためのステロイドが眼圧上昇の原因となる,手術により炎症が増悪し,その炎症により手術不成功率があがる,といったように,一方の治療が他方を悪化させるため,管理がむずかしい.また,ぶどう膜炎続発緑内障は,発症年齢が若い,難治で度重なる手術が必要となる,という特徴もある.本稿では,このような管理がむずかしいぶどう膜炎続発緑内障に対して,どのようなときにどの手術を選択すべきかを考える.I術式の選択図1に術式選択のシェーマを示す.消炎,緑内障点眼による治療を行っても眼圧が下降しないときに緑内障手術を決断する.まず,炎症の状態を評価する.炎症が鎮静化していない状態で手術に踏み切る場合は,濾過手術を選択し,術後,ステロイドの全身投与も含め消炎に努める.炎症がサイレントにみえても,必ず隅角鏡検査を行い,隅角結節やanglehypopion(隅角鏡で確認される前房蓄膿)を認める場合は濾過手術を選択する.基本的に,ぶどう膜炎続発緑内障に対する手術の第一選択は濾過手術で,線維柱帯切除術であるが,近年の低侵襲緑内障手術(microinvasiveglaucomasurgery:MIGS)の普及に伴い,炎症所見を認めず,広範な周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)がなければ,眼内法による線維柱帯切開術(トラベクロトミー)も選択されている.しかし,視野が後期の症例では眼内トラベクロトミーは慎重に検討したほうがよい.緑内障手術や硝子体手術など,白内障手術以外の内眼手術の既往がある場合は,線維柱帯切除術よりチューブシャント手術の適応である.1.眼内線維柱帯切開術(眼内トラベクロトミー)線維柱帯切開術は,房水の流出抵抗の場である線維柱帯を切開または切除することで房水をSchlemm管へ直接流す術式である.眼外法は線維柱帯切除術と同様に結膜を切開し強膜フラップを作製する術式で,ステロイド緑内障や落屑緑内障におもに行われてきた.現在,角膜創からのアプローチで眼内から線維柱帯切開を可能にしたMIGSが導入されたため,角膜混濁など特殊な事情がなければ,眼外法を選択する理由はない.眼外法によるトラベクロトミーはぶどう膜炎続発緑内障に対する適応は非常に低いが,眼内トラベクロトミーは後述する濾過手術に比べ低侵襲で安全性が高いこと,角膜切開で行うため将来的な濾過手術に支障が生じないこと,またステロイド緑内障の要素も否定できない症例が少なからずあるという理由から,ぶどう膜炎続発緑内障に対して選択の余地がある1).ただし,炎症がアクティブなときは手術により炎症が増悪しPASの形成を増悪させる可能性が高く,行うべきではない.また,線維柱帯切除術に比して眼圧下降効果が弱く,術後眼圧スパイクがしばしばみられるため,視野が後期の症例には慎重に検討しな*EriTakahashi&ToshihiroInoue:熊本大学大学院生命科学研究部眼科学分野〔別刷請求先〕高橋枝里:〒860-8556熊本市中央区本荘1-1-1熊本大学大学院生命科学研究部眼科学分野0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(17)1149隅角に(広範な)癒着があるYESNO炎症が鎮静化しているYES視野初期~中期NO視野後期眼内トラベクロトミー濾過手術線維柱帯切除術バルベルトチューブシャント手術アーメド緑内障バルブ手術図1ぶどう膜炎続発緑内障における緑内障手術選択のシェーマ図2MIGSデバイスa:カフークデュアルブレード.b:カフークデュアルブレードによる線維柱帯切除イメージ.(提供:JFCセールスプラン)図3眼内線維柱帯切開術(眼内トラベクロトミー)のイメージ図4線維柱帯切除術のイメージ図5バルベルト緑内障インプラント図6アーメド緑内障バルブ(提供:エイエムオー・ジャパン)(提供:JFCセールスプラン)図7チューブシャント手術におけるチューブの留置a:前房挿入例.b:毛様溝に挿入されたチューブ.図8全周性虹彩後癒着による瞳孔ブロックa:細隙灯顕微鏡写真.著明な充血と全周性虹彩後癒着を認める.Cb:瞳孔領部の写真.慢性炎症により著明な虹彩ルベオーシスをきたしている.Cc:前眼部光干渉断層計画像.著明な膨隆虹彩を認め,虹彩と角膜は接触している.図9観血的周辺虹彩切除術のイメージabc図10全周性虹彩後癒着による瞳孔ブロックに対し白内障手術を施行した症例a:術前の細隙灯顕微鏡の写真.全周性の虹彩後癒着と膨隆虹彩を認める.Cb:前眼部光干渉断層計画像.aに一致した膨隆虹彩が確認される.c:白内障手術後の前眼部光干渉断層計画像.瞳孔ブロックは解除されているが,隅角は癒着している.

ぶどう膜炎併発白内障の手術:考え方と実際

2021年10月31日 日曜日

エピジェネティックな転写制御エピジェネティックな遺伝子発現制御われわれヒトを含む多細胞生物を構成する細胞はそれぞれ異なる形態や機能をもち,それらが協力しあうことで個体としての生存を可能にします.一方で,細胞のいわば設計図であるゲノムは,当然ながら一つの個体の中では基本的に同一です.また,同じ個体・細胞であっても,生涯にわたって病気や加齢,環境などの変化にさらされ,それに伴い求められる機能も変化していきます.それでは,どのようにして共通の設計図から,多様で柔軟な生命が生み出されるのでしょうか.細胞には,その多様性や柔軟性を実現する仕組みの一つとして,遺伝子発現を臨機応変に変化させる機能が備わっています.そのなかでもCDNA配列に依存せずに(つまり設計図が同一であっても)遺伝子発現を制御するメカニズムが知られており,それを扱う学問領域はエピジェネティクスとよばれます.その物質的な実態として,古くから知られているものとしてはヒストン修飾,DNAメチル化の二つがあります.近年ではゲノムの三次元構造の重要性も新たに明らかにされ,ゲノムワイドな解析手法の普及と相まって新しいエピジェネティックな因子としてトレンドとなっています.網膜発生におけるエピジェネティクス網膜においてもエピジェネティックな発現制御が重要であることが知られています.とくに筆者らが着目している網膜発生においては,ヒストン修飾の重要性が明らかにされています1).ヒストン修飾も数多くありますが,筆者らはそのなかでヒストンCH3のC36番目のリジン残基(H3K36)を脱メチル化図1H3K36脱メチル化酵素の網膜発生への寄与網膜特異的にCH3K36脱メチル化酵素をノックアウトしたところ,桿体細胞の発生に異常が生じた.この酵素にかぎらず,ヒストン修飾をつかさどる複数の酵素が網膜発生に影響を与えることが知られている.福島正哉東京大学医学部附属病院眼科する酵素が桿体細胞の発生に必須であることを明らかにしました(図1,論文投稿準備中).この遺伝子はCDNAのメチル化状態によって局在が変化することが知られており,ヒストン修飾とCDNAメチル化をつなぐプレイヤーとして注目しています.エピジェネティクスの展望近年,超並列シーケンサーの性能向上と解析技術の発展により,網羅的な解析手法がますます一般的になっています.筆者らの扱うヒストン修飾についても,2018年頃から単一細胞レベルでゲノムワイドに解析する手法が複数報告されています2,3).今後はこれまでにない詳細なレベルで遺伝子発現の制御機構が明らかになることは間違いありません.また,医療と関係する話題としては,現時点では発癌との関連に着目した創薬が行われています.とくにヒストンH3K27メチル化酵素であるCEZH2に対する阻害薬は,米国で濾胞性リンパ腫などに対して承認を受けています.今後ターゲットとなる分子や疾患領域が広がっていくことが期待されます.文献1)IwagawaCT,CWatanabeS:MolecularCmechanismsCofCH3K27me3andH3K4me3inretinaldevelopment.Neuro-sciRes138:43-48,C20192)SkeneCPJ,CHeniko.CJG,CHeniko.S:TargetedCinCsituCgenome-wideCpro.lingCwithChighCe.ciencyCforClowCcellCnumbers.NatProtocC13:1006-1019,C20183)Kaya-OkurCHS,CJanssensCDH,CHeniko.CJGCetal:E.cientClow-costCchromatinCpro.lingCwithCCUT&Tag.CNatCProtocC15:3264-3283,C2020(57)あたらしい眼科Vol.38,No.10,2021C11890910-1810/21/\100/頁/JCOPY

眼局所の薬物投与 (ステロイド結膜下注射,Tenon 囊下注射)

2021年10月31日 日曜日

眼局所の薬物投与(ステロイド結膜下注射,Tenon.下注射)LocalOcularDrugAdministration(SubconjunctivalInjectionofSteroid,Sub-Tenon’sTriamcinoloneAcetonideInjectionofSteroid)長谷川英一*園田康平*はじめにぶどう膜炎の治療は原因検索ののち,薬物治療や外科的治療を組み合わせて行うが,消炎を目的とした副腎皮質ステロイド(以下,ステロイド)の投与はぶどう膜炎治療の中心である.ステロイドの投与方法は病態や病状に合わせて点眼,眼局所注射,内服もしくは点滴による全身投与を選択する.本稿では眼局所注射について,その適応と投与の実際について解説する.Iぶどう膜炎における眼局所治療ぶどう膜炎の激しい炎症や持続する炎症は,各眼組織を障害し不可逆的な視力低下をもたらす.感染症による炎症であることを否定したのち消炎目的にステロイドの投与を行うが,そのうち眼局所への注射によるステロイドの投与は,ステロイドの全身への副作用を抑えつつ眼炎症に対する消炎効果も高い投与方法であり,実臨床でも汎用されている.ここでは結膜下注射とTenon.下注射について述べる.II結膜下注射1.結膜下注射の適応前眼部の炎症に対してはまず点眼にて加療を行うが,炎症が強く点眼ではコントロールができない場合はステロイドの結膜下注射を行う.水溶性デキサメタゾンを炎症の強い部分の結膜下に注射する.激しい炎症により虹彩後癒着をきたしている患者では,散瞳薬を少量混ぜて注射することで虹彩後癒着を解除できることがある.急性前部ぶどう膜炎などとくに炎症が強い場合は,連日の複数回投与が必要になることもある(図1).注射時はキシロカイン点眼による表面麻酔を行ったのちに注射するため注射針刺入による痛みはないが,薬液注入に伴う物理的な結膜の伸展によって痛みを生じることが多い.薬液にキシロカインを少量混ぜてゆっくり注入することで痛みを緩和することができる.強膜炎の治療では,点眼のみでは炎症コントロールに難渋することが多く,ステロイドの内服併用を必要とすることも多い.しかし,全身疾患によりステロイドの内服が困難な場合もあり,その際にはトリアムシノロンアセトニドの結膜下注射が有効なことがある.炎症の強い部分に注入を行うが,強膜が菲薄化していることもあるため,穿孔に注意しながら投与を行う.また,強膜壊死を引き起こすこともあり,慎重投与が必要である.2.結膜下注射の手順1)①点眼麻酔薬と抗菌薬を点眼する.②デキサメタゾン(デカドロン)1.65mg/mlを1.mlシリンジに入れる.③開瞼器をかけたのち27ゲージ(G)鋭針で炎症の強い部位に0.5~1.0ml注入する.虹彩後癒着を解除したい場合はミドリンP点眼液を0.2ml,薬液注入時の痛みを緩和したい場合は2%キシロカイン0.2mlを混ぜて投与する.*EiichiHasegawa&Koh-HeiSonoda:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕長谷川英一:〒812-8582福岡市南区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(7)1139図1急性前部ぶどう膜炎の前眼部写真a:強い毛様充血を認める.b:点眼で消炎が不十分であったため結膜下注射を複数回施行し,毛様充血は改善している.図2ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫a:STTA施行前.b:STTA施行後,黄斑浮腫は消失している.図3ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HumanT.cellLeukemiaVirusType1:HTLV.1)関連ぶどう膜炎に伴う硝子体混濁a:STTA施行前.b:STTA施行後,硝子体混濁は消失し眼底の透見が改善している.図4Tenon.下注射針25G鈍針.針先は少し弯曲している.図5後部Tenon.下注射の手順(右眼)a:上鼻側を注視させる.b:結膜・Tenon.を切開し強膜を露出させる.c:25GTenon.下注射針をTenon.下に挿入し,眼球壁に沿わせながら奥に進めて薬液を注入する.表1局所注射による合併症結膜下出血眼球穿孔眼圧上昇血圧上昇白内障感染症’