眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋438.新規遺伝子変異が検出されたAlport八塚洋之木許賢一大分大学医学部眼科学講座症候群に伴う前部円錐水晶体の1例Alport症候群はCIV型コラーゲン異常を原因とする遺伝性疾患である.筆者らは,新規遺伝子変異が検出されたCAlport症候群に伴う前部円錐水晶体による視力低下に対して,水晶体再建術を施行したので,経過と画像や検査所見を供覧する.●はじめにAlport症候群は,基底膜の主要な構成成分であるCIV型コラーゲンCa3.5鎖の異常を原因とし,進行性の慢性腎炎,感音性難聴をおもな症状とする遺伝性疾患である.遺伝形式はおもにCX連鎖顕性遺伝型であり,有病率はC5,000人にC1人1)とされる.眼症状は,後部多型性角膜ジストロフィ,前部円錐水晶体,後部円錐水晶体,水晶体混濁,白内障,網膜白斑2,3),黄斑耳側菲薄化4)などが報告されている.C●症例患者はC38歳,女性.両眼の前部円錐水晶体を伴う視力低下で当科に紹介された.Alport症候群に伴う慢性腎不全のため血液透析を受けており,Alport症候群に伴う感音性難聴がある.家族歴として妹にCAlport症候群があるが,両親と弟は健常である.矯正視力は右眼0.3,左眼C0.3.両眼に前部円錐水晶体があり,水晶体混濁はなかった(図1上段).前眼部三次元光干渉断層計CASIA(トーメーコーポレーション)では水晶体前部中央が膨隆し,前方へ突出している様子が確認された(図1下段).眼底には両眼とも黄斑部耳側にクリスタリン様沈着物と同部の菲薄化があった.ウェーブフロントアナライザーCKR-1W(トプコン)における眼球高次収差解析のカラーコードマップ(図2上段)では,両眼とも中心部分に遅い部分があり,その周囲をリング状に早い部分が取り巻いているカラフルなパターンを示し,白内障の単眼複視症例と類似したパターンであった.前部円錐水晶体による大きな高次収差が矯正視力低下の原因と考えられたため,両眼の水晶体再建術を施行した.手術では,前.組織は脆弱で,連続円形切.の際に切開線が赤道部に流れやすく,注意を要した.手術は両眼とも問題なく終了し,術後矯正視力は両眼ともC1.5と改善した.術後は高次収差の改善がみられた(図2下段).術中採取した水晶体前.を透過電子顕微鏡で観察(73)図1初診時の前眼部スリット写真(上段)と前眼部三次元光干渉断層計画像(下段)両眼とも水晶体前部中央が膨隆し,前方への突出がみられた.すると,前.の菲薄化と,特徴的な多数の裂隙・亀裂が確認された(図3).遺伝子検査ではCCOL4A3遺伝子変異(p.Thr911*Asnfster29)が検出された.この遺伝子変異は終止コドンをきたす新規のフレームシフト変異のホモ多型であった.妹も同様の遺伝子変異があり,患者の両親は同様の遺伝子変異のヘテロ多型であったため,遺伝形式は常染色体潜性遺伝と考えられた.両親の親族結婚はなかった.C●まとめAlport症候群では水晶体前.中央部が菲薄化することが知られており,前.の構造的異常と相まって,前部円錐水晶体を発症すると考えられる.本症例はCAlport症候群に伴う眼症状として,前部円錐水晶体と網膜クリスタリン様沈着物,耳側網膜の菲薄化があり,前部円錐水晶体に対して水晶体再建術を施行し,視機能の改善を得た.Alport症候群に前部円錐水晶体を合併した際には,同時に網膜の構造異常があっても水晶体再建術で良あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023C6510910-1810/23/\100/頁/JCOPY右眼術前眼球高次収差左眼術前眼球高次収差図2本症例の眼球高次収差解析のカラーコードマップとLandolt環シミュレーション術後は,前部円錐水晶体に伴う大きな高次収差が改善した.Cab図3水晶体前.の透過電子顕微鏡写真a:コラーゲン異常なし.b:本症例.前.の菲薄化と特徴的な多数の裂隙・亀裂が確認された.好な術後視力を得られる可能性がある.本症例は新規の2)HentatiCN,CSelleamiCD,CMakniCKCetal:OcularC.ndingsCinフレームシフト変異のホモ多型であり,非常にまれな症AlportCsyndrome:32CcaseCstudies.CJCFrCOphtalmolC31:C597-604,C2008例であった.3)JacobsM,Je.reyB,KrissAetal:Ophthalmologicassess-mentCofCyoungCpatientsCwithCAlportCsyndrome.COphthal-文献mologyC99:1039-1044,C19921)HasstedtCSJ,CAtkinCL:X-linkedCinheritanceCofCAlport4)UsuiCT,CIchibeCM,CHasegawaCSCetal:Symmetricalsyndrome:familyprevisited.AmJHumGenetC35:1241-reducedCretinalCthicknessCinCaCpatientCwithCAlportCsyn-1251,C1983Cdrome.RetinaC24:977-979,C2004