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インプラント挿入術後はインプラント近くのわずかな結膜障害 でも感染症を生じる

2021年8月31日 火曜日

《第31回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科38(8):941.944,2021cインプラント挿入術後はインプラント近くのわずかな結膜障害でも感染症を生じる相川菊乃木内理奈谷山ゆりえ尾上弘光坂田創徳毛花菜村上祐美子岩部利津子奥道秀明廣岡一行木内良明広島大学大学院医歯薬学総合研究科視覚病態学CACaseinwhichaSlightConjunctivalLacerationNeartheImplantCausedInfectionPostBaerveldtGlaucomaImplantSurgeryKikunoAikawa,RinaKinouchi,YurieTaniyama,HiromitsuOnoe,HajimeSakata,KanaTokumo,YumikoMurakami,RitsukoIwabe,HideakiOkumichi,KazuyukiHirookaandYoshiakiKiuchiCDepartmentofOphthalmologyandVisualscience,GraduateSchoolofBiomedicalSciences,HiroshimaUniversityC目的:インプラントの露出を繰り返し複数回の眼内炎をきたした症例を経験したので報告する.症例:17歳,男子.両眼先天白内障のためC1997年,0歳時に広島大学病院眼科で両眼白内障手術を受けた.眼圧がC2007年頃から上昇し始め,続発緑内障のためC2008年C1月に両眼線維柱帯切開術を行ったが,眼圧のコントロールが不良のため,2012年C7月に右眼の耳上側からバルベルト緑内障インプラント(BGI)挿入術を,2015年C1月に右眼耳下側からCBGI挿入術を行った.2015年C3月にベール状の硝子体混濁が出現し,眼内炎を発症したと考えられた.耳上側に露出したC10-0ナイロン糸が感染の原因と考えられた.2019年C2月には耳下側から挿入したチューブの上の結膜に小さな裂孔が見つかりそのC5日後には眼内炎を生じた.いずれの感染も抗菌薬投与と硝子体手術で軽快した.結論:インプラント挿入後はわずかな結膜障害でも感染症を生じると考えられた.CPurpose:Toreportacaseofrecurrentendophthalmitisassociatedwithimplantexposurepostsurgery.CaseReport:Thisstudyinvolveda17-year-oldmalewithahistoryofcongenitalcataractswhohadundergonebilater-alcataractsurgeryin1997whenhewaslessthan1yearold.Hisintraocularpressure(IOP)begantoincreasein2007,CandCbilateralCtrabeculotomyCwasCperformedCinC2008CforCsecondaryCglaucoma.CHowever,CIOPCremainedChighCpostCsurgery,CandCBaerveldtCglaucomaCimplantCsurgeryCwasCperformedCinChisCrightCeyeCsuperotemporallyCinCJulyC2012andinferotemporallyinJanuary2015.Postsurgery,vitreousturbidityappearedinhisrighteyeduetoendo-phthalmitis,withtheinfectionthoughtpossiblycausedbyexposed10-0nylonsuture.InFebruary2019,aslightconjunctivalCperforationConCtheCinferotemporallyCimplantCtubeCwasCfound,CandC5CdaysClater,CendophthalmitisCoccurred.CBothCinfectionsCwereCtreatedCbyCantibioticCadministrationCorCvitrectomy.CConclusion:PostCglaucomaCdrainagedevicesurgery,evenslightconjunctivallacerationsneartheimplantcanleadtoinfection.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(8):941.944,C2021〕Keywords:緑内障,バルベルト緑内障インプラント,結膜障害,眼内炎.glaucoma,Baerveldtglaucomaimplant,conjunctivallaceration,endophthalmitis.CはじめにGDD)が用いられる.インプラント挿入術の合併症には,イ緑内障の外科的治療の一つにインプラント挿入術があり,ンプラント露出,チューブ閉塞,複視,角膜浮腫,出血,感緑内障ドレナージデバイス(glaucomaCdrainagedevice:染,白内障,眼圧コントロール不良1.5)などがあげられる.〔別刷請求先〕相川菊乃:〒734-8551広島市南区霞C1-2-3広島大学大学院医歯薬学総合研究科視覚病態学Reprintrequests:KikunoAikawa,M.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofBiomedicalSciences,HiroshimaUniversity,1-2-3,Kasumi,Minami-ku,Hiroshima734-8551,JAPANC図12015年4月の右眼結膜所見耳上側に露出したC10-0ナイロン糸があり(),同部位からの房水の漏出があった.なかでも,インプラントの露出はインプラント挿入術後の感染リスクの一つとして考えられている.結膜障害によるCGDDの露出は,術後感染の一因であるが,わずかな結膜障害は見落とされることが多い.今回,筆者らはインプラント挿入術後に眼内炎を繰り返した症例を経験した.結膜のわずかな損傷が感染の原因と考えられたので報告する.CI症例患者:17歳,男子.主訴:右眼の視野のゆがみ.既往歴:1997年C9月(0歳時)に両眼先天白内障に対して両眼白内障手術が行われた.術後は視力矯正のためハードコンタクトレンズを使用していた.2007年頃から両眼続発緑内障に対して点眼加療されていたが眼圧は上昇していた.2008年C1月に両眼線維柱帯切開術(trabeculotomy:TLO),図22019年2月の前眼部所見右眼耳下側から挿入したCBGIのチューブ上の結膜に小裂孔()があった.角膜浮腫や毛様充血があり,前房内炎症細胞C3+であった.2008年C2月に右眼CTLO+右眼下眼瞼内反症手術が行われたが眼圧コントロールは不良であり,2012年C7月に右眼バルベルト緑内障インプラント(BaerveldtglaucomaCimplant:BGI)挿入術(耳下側)を行った.その後もC2012年C12月に左眼CTLO,2014年C10月に右眼チューブフラッシュを行った.現病歴:術後,右眼にはドルゾラミド・チモロールを点眼していたが,2014年C10月下旬頃から眼圧がC20CmmHgを上回るようになった.タフルプロスト,ブリモニジンを追加したが眼圧はさらに上昇したため,2015年C1月にC2個目の右眼CBGI挿入術(耳上側)を行った.術後約C1カ月半後に右眼のゆがみを自覚したため,その翌日に近医を受診したところ,右眼の硝子体出血と網膜.離を疑われた.同日広島大学病院眼科に紹介されて再受診した.再診時,視力は右眼C0.05(現用コンタクトレンズ装用時の矯正視力),左眼C30Ccm/h.m(矯正不能)であった.眼圧は右眼C4CmmHg,左眼C23CmmHg(icareCR)であった.右眼前眼部所見では,結膜の充血はなく,角膜は透明であり,前房深度は正常で,炎症細胞はなかった.また,チューブの閉塞はなかったものの先端に白色点状物質があった.無水晶体眼であった.眼底は検眼鏡的に網膜.離の所見はなかったが,ベール状の硝子体混濁があった.また,網膜血管の白線化はなかった.経過:ベール状の硝子体混濁に対して頻回の経過観察を行ったが,増悪はなかった.2015年C4月(術後C3カ月後)の外来受診時には,眼底所見の変化はなかったが,右眼耳上側の結膜にわずかな裂傷を見つけた.結膜は軽度の充血があり,前房内は炎症細胞C1+で温流があったが,創部から房水の漏出はなかった.チューブやプレートは覆われている状態であった.眼圧は右眼C6CmmHg,左眼C22CmmHgであった.感染を防ぐ目的でエリスロマイシン・コリスチン軟膏外用,レボフロキサシン点眼,セフジニル内服加療とした.そのC7日後の外来受診時,結膜の充血や,前房内の炎症細胞の変化はなかった.前房は正常深度であったが,7日前の創部と同部位の耳上側結膜上にC10-0ナイロン糸が露出しており,同部から房水の漏出があった(図1).眼圧は右眼C3CmmHgと低下していた.硝子体混濁の増悪はなかったため,まずはリークを止めて菌体の侵入を防ぐことで感染リスクを下げる目的で,同日に結膜縫合術+強膜パッチを行った.角膜輪部から5Cmm程度の強膜をC1/8サイズにした保存強角膜片を使用した.術中の前房水の培養検査ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistantCStaphylococcusaureus:MRSA)が検出された.術後はレボフロキサシン点眼およびセフメノキシム点眼,セフジニル内服で加療した.結膜縫合術+強膜パッチ後,前眼部所見は改善し,10日目に前房内炎症細胞消失,35日目には硝子体混濁が軽快した.4年後のC2019年C2月の外来受診時に右眼の結膜に小裂孔があった.裂孔はC2012年に右眼耳下側から挿入したCBGIのチューブの上に位置していた.両眼にタフルプロスト点眼,ドルゾラミド・チモロール点眼を行っており,眼圧は右眼12CmmHg,左眼C22CmmHgであった.感染予防のため右眼にゲンタマイシン点眼を開始して,3月に強膜パッチ術を予定した.しかし,7日後の受診時には毛様充血があり,前房内炎症細胞C3+で眼底も透見不良であり,すでに右眼内炎をきたしていた(図2).同日に右眼硝子体手術と強角膜パッチを行った.術中の硝子体液の培養検査は陰性であった.術後はモキシフロキサシンおよびセフメノキシム点眼を行い,しだいに軽快した.CII考按2015年のC1度目の結膜障害は,前眼部所見から積極的に感染を疑わなかったが,感染予防目的で行った強膜パッチ術と抗菌薬投与により改善した.患者は無水晶体眼であり,結膜障害部からチューブを介して眼内に感染が波及していた可能性がある.2019年のC2度目の結膜障害も,軽微であったにもかかわらず眼内炎を生じ,硝子体手術および強膜パッチによって軽快した.インプラント挿入術は緑内障に対する外科的治療の一つである.GDDはチューブとプレートで構成されており,房水は眼球内に挿入されたチューブを通ってプレートへ流れる.インプラント挿入術の合併症には,インプラント露出,チューブ閉塞,複視,角膜浮腫,出血,感染,白内障,眼圧コントロール不良1.5)などがあげられる.そのうち眼内炎はGDD手術の合併症としてはまれで,後ろ向き研究でその発生率はC0.9.6.3%という報告があり6),インプラントの露出はそのリスクの一つとして考えられている.TubeCVersusTrabeculectomy(TVT)studyではC5年間でCBGI術後患者のC5%にチューブの露出が生じていたとの報告がある1).また,井上らの報告では,2012年からC2017年に行われたBGI術後C68例C75眼においてC4眼(5%)でインプラントの露出があった7).以上よりインプラントの露出はまれではなく,術後感染症のリスクであり早急な外科的治療が必要とされている2).インプラント露出の危険因子として,下方からのインプラント挿入8),過去に眼科手術の既往があること9),血管新生緑内障10),糖尿病患者のCBG102-350の使用11),若年であること12)などがあげられる.また,GDDと結膜の摩擦が強いため白人よりアジア人のほうがインプラントの露出リスクが高いと報告されている11).本症例では,若年であり,手術を何度も繰り返していることや,2回目の露出では下方からインプラントを挿入していることもリスクとして考えられる.その一方で,GDDに続発する結膜障害は,頻度やリスク因子,管理,結果に関しての報告が乏しく,インプラントが覆われていれば外科的修復は行われず,通常は軽症な合併症として見落とされることが多い2).本症例は,結膜裂傷を生じたがインプラントは結膜に覆われた状態であった.しかし,結膜裂傷を介してチューブと結膜表面に交通が生じたため,プレートの露出はないもののチューブが眼外と接触し露出したような状態となった.これにより,チューブの表面を伝って強膜の刺入部から眼内に細菌が侵入し,感染を起こしたと推測した.ゆえに,わずかな結膜障害のみであっても,菌の侵入経路となる可能性があり軽視できないと考えられる.GeddeらはCBGI挿入後に眼内炎をきたしたC4例すべてにおいてチューブの露出があったと報告している.感染は,菌がチューブを介して眼内へ侵入することで生じるため,チューブ露出に対する強膜パッチの使用が求められている6).2015年のC1度目の感染は,硝子体混濁を生じてから経過が長期化していた.検出されたCMRSAはコンタミネーションであった可能性があり,弱毒菌による感染症のため前眼部や眼底所見の変化に乏しかったと考えられる.2019年のC2度目の感染は硝子体液からは菌体は検出されなかったが,臨床所見からは明らかに眼内炎を生じていた.本症例では感染所見としては軽微であった.結膜障害に気づいた時点で,抗菌薬投与を行い,早期の強膜パッチの手術を予定した.比較的早い段階での対応により感染の重症化を防ぐことができたが,発見時のより早い段階で強膜パッチを行うことができていれば,感染予防に有効であったかもしれない.本症例より,わずかな結膜障害であっても眼内炎を生じるリスクがあると考えられる.結膜障害に対して,早急な対応が求められ,なかでも強膜パッチ術が有効であると思われた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)GeddeCSJ,CHerndonCLW,CBrandtCJDCetal:PostoperativecomplicationsintheTubeVersusTrabeculectomy(TVT)CstudyCduringC.veCyearsCofCfollow-up.CAmCJCOphthalmolC153:804-814,C20122)Ge.enCN,CBuysCYM,CSmithCMCetal:ConjunctivalCcompli-cationsCrelatedCtoCAhmedCglaucomaCvalveCinsertion.CJGlaucomaC23:109-114,C20143)KrishnaCR,CGodfreyCDG,CBudenzCDLCetal:Intermediate-termoutcomesof350-mm2CBaerveldtglaucomaimplants.OphthalmologyC108:621-626,C20014)OanaCS,CVilaJ:TubeCexposureCrepair.CJCCurrCGlaucomaCPractC6:139-142,C20125)BudenzCDL,CFeuerCWJ,CBartonCKCetal:PostoperativeCcomplicationsintheAhmedBaerveldtComparisonStudyduringC.veCyearsCofCfollow-up.CAmCJCOphthalmolC163:C75-82,C20166)GeddeCSJ,CHerndonCLW,CBrandtCJDCetal:LateCendo-phthalmitisCassociatedCwithCglaucomaCdrainageCimplants.COphthalmologyC108:1323-1327,C20017)井上俊洋:Baerveldtチューブシャント手術後インプラント露出症例の検討.日眼会誌C123:824-828,C20198)LevinsonCJD,CGiangiacomoCAL,CBeckCADCetal:GlaucomaCdrainagedevices:riskCofCexposureCandCinfection.CAmJOphthalmolC160:516-521,C20159)ByunCYS,CLeeCNY,CParkCK:RiskCfactorsCofCimplantCexposureCoutsideCtheCconjunctivaCafterCAhmedCglaucomaCvalveimplantation.JpnJOphthalmolC53:114-119,C200910)KovalCMS,CElCSayyadCFF,CBellCNPCetal:RiskCfactorsCforCTubeCshuntexposure:ACmatchedCcase-controlCstudy.CJOphthalmolC2013:196215,C201311)EdoCA,CJianCK,CKiuchiY:RiskCfactorsCforCexposureCofCBaerveldtCglaucomaCdrainageimplants:aCcase-controlCstudy.BMCOphthalmol20:364,C202012)ChakuCM,CNetlandCPA,CIshidaCKCetal:RiskCfactorsCforCtubeexposureasalatecomplicationofglaucomadrainageCsurgery.ClinOphthalmolC10:547-553,C2016***

基礎研究コラム:緑内障病型と生理活性脂質

2021年8月31日 火曜日

緑内障病型と生理活性脂質生理活性脂質とは生理活性脂質とは,膜の脂質から局所で産生され細胞外に放出されたのち,ほかの細胞膜受容体に結合することによって作用する脂質のことで,免疫・生体防御・炎症など多様な生体反応を生じることが知られています.生理活性脂質にはプロスタグランジン(prostaglandin:PG),ロイコトリエン(leukotriene:LT),血小板活性化因子(plateletactivatingfactor:PAF),スフィンゴシン1リン酸(sphingosine-1-phosphate:S1P)などが存在します.それらの生理活性脂質のなかでも,リゾリン脂質由来の生理活性脂質であるリゾホスファチジン酸(lysophosphatidicacid:LPA)はRhoの強力なアゴニストであり,Rhoを介して細胞増殖,細胞遊走などを促進することが報告されています1).TGF.b,LPA.ATX経路と緑内障病態LPAおよびその産生酵素であるオートタキシン(autotax-in:ATX)は眼房水中に発現していることが報告されており,invivoやexvivoの検討において,LPAが眼房水の流出抵抗を増大させることや,ATX阻害薬の灌流実験によって眼圧が下降することが確認されています2).従来より,原発開放隅角緑内障(primaryopenangleglaucoma:POAG)において,その病態への関与が示唆されていたTGF(transform-inggrowthfactor)-b2はPOAGの房水中で非緑内障眼と比較して有意にその眼房水中の濃度が上昇していることが報告されていましたが,その一方で著明な高眼圧を呈する続発緑内障(secondaryopenangleglaucoma:SOAG)眼においてはその濃度が上昇しておらず低濃度でした.筆者らのグループでは,眼房水中のTGF-b2濃度が低くなっているSOAG************五十嵐希望*,**相原一*本庄恵**東京大学医学部附属病院眼科**東京逓信病院眼科眼において,ATXおよびLPAの濃度が有意に上昇しており,また眼圧と正の相関を示すことを確認しました.このことから,眼房水中のTGF-b濃度とLPA-ATX濃度との間になんらかの相関が存在する可能性が示唆されました(図1)3).今後の展望これまで,臨床所見だけでは区別することが困難であったSOAGや落屑緑内障においては,眼房水中のATX・TGF-b1・TGF-b3の濃度が非緑内障眼やPOAG眼と比較して有意に上昇している一方で,TGF-b2の濃度は低値であるなどの特性を生かして,眼房水メディエーターの検索による正確な緑内障分類が可能となる可能性が示唆されました3).また,緑内障病型ごとの眼房水中でのこれらのメディエーターの濃度の差は,線維柱帯細胞におけるTGF-bおよびLPA-ATXpathwayの間にあるなんらかのcross-talkによって生じている可能性が考えられ,この機序を解明することで緑内障病型ごとの病態発症のメカニズム,およびそれぞれに適した新たな治療法を生み出すことができる可能性が高いと考えられます.文献1)vanMeeterenLA,MoolenaarWH:Regulationandbiolog-icalactivitiesoftheautotaxin-LPAaxis.ProgLipidRes46:145-160,20072)RaoPV:Bioactivelysophospholipids:Roleinregulationofaqueoushumorout.owandintraocularpressureinthecontextofpathobiologyandtherapyofglaucoma.JOculPharmacolTher30:181-190,20143)IgarashiN,HonjoM,AsaokaRetal:AqueousautotaxinandTGF-bsarepromisingdiagnosticbiomarkersfordis-tinguishingopen-angleglaucomasubtypes.Scirep11:1408,2021**************4,000TGFb1(pg/ml)TGFb2(pg/ml)TGFb3(pg/ml)2,500150***5,0004,0003,0002,0001,000ATX(μg/l)********2,0001,5001,0005003,0002,0001,0000***1005000ATXTGF-b1TGF-b2TGF-b3*<0.05,**<0.01,***<0.001図1緑内障病型ごとの眼房水中のATX・TGF.b1・TGF.b2・TGF.b3濃度緑内障病型ごとにATXおよびTGF-bの濃度に差が確認でき,これが病態ごとの違いを反映している可能性が示唆された.(文献3より引用)(85)あたらしい眼科Vol.38,No.8,20219330910-1810/21/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス:加齢黄斑変性に対する抗VEGF療法後に発症した黄斑円孔(中級編)

2021年8月31日 火曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載219219加齢黄斑変性に対する抗VEGF療法後に発症した黄斑円孔(中級編)池田恒彦大阪回生病院眼科●はじめに通常,黄斑円孔(macularhole:MH)は網膜硝子体界面の牽引により発症するが,網膜下の牽引が誘因となることもある.脈絡膜新生血管(choroidalCneovscular-ization:CNV)をきたす疾患にCMHを合併したとする報告は近視性CCNV眼が多いが,まれに加齢黄斑変性(age-relaterCmaculardegeneration:AMD)でも生じることがある1).C●症例68歳,男性.両眼の滲出型CAMDの診断で光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)では著明な網膜色素上皮.離(pigmentCepithelialdetachment:PED)を認め(図1),両眼とも複数回の抗CVEGF薬硝子体内注射を施行した.右眼のCPEDはほぼ消退したが,左眼はCPEDが遷延して中心窩網膜が菲薄化し(図2),1年半後にCMHが生じた(図3).抗CVEGF療法後のPEDおよびCCNVの退縮により,中心窩網膜に異常な牽引が作用したことがCMH形成の一因と考えられた.後日,inverted.ap法を併用した硝子体手術を施行し閉鎖を得たが,矯正視力はC0.2に留まった(図4).C●滲出型加齢黄斑変性に伴う黄斑円孔滲出型CAMDに伴うCMHの発症機序としては以下のようなものが考えられる.①CAMDに伴うCCNVの発育により,網膜下に異常な牽引が作用する.②抗CVEGF療法後にCCNVの退縮,PEDの扁平化,網膜下滲出性変化の減少などにより,中心窩網膜の形態が変化すると同時に,退縮したCCNVが中心窩網膜を牽引する.③複数回の抗CVEGF療法により,後部硝子体.離が進行したり,黄斑上膜が形成されるなど網膜硝子体界面の状態が変化する.今回の提示例はおもに②が原因で発症した可能性が高い.(83)C0910-1810/21/\100/頁/JCOPYab図1当科初診時の左眼眼底写真(a)とOCT(b)黄斑部に滲出性変化と著明な網膜色素上皮.離を認める.図2治療開始1年3カ月後の左眼OCT左眼は網膜色素上皮.離の隆起が遷延しており,中心窩網膜が菲薄化している.図3治療開始1年半後の左眼OCT黄斑円孔が生じたが,網膜色素上皮.離はほぼ消退しており,脈絡膜新生血管も縮小していた.Cb図4硝子体手術後の左眼眼底写真(a)とOCT(b)黄斑円孔は閉鎖したが,黄斑変性のため矯正視力はC0.2に留まった.C●硝子体手術の注意点MH縁の網膜伸展性の低下や網膜色素上皮面の不整などのため,通常のCMHよりも閉鎖しにくい可能性があるので,(hemi-)inverted.ap法などを適宜施行する必要がある.文献1)OshimaCY,CApteCRS,CNakaoCSCetal:FullCthicknessCmacu-larholecaseafterintravitreala.ibercepttreatment.BMCOphthalmolC15:30,C2015あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C931

抗VEGF治療:ブロルシズマブ関連の閉塞網膜血管炎

2021年8月31日 火曜日

●連載110監修=安川力髙橋寛二90.ブロルシズマブ関連の閉塞網膜血管炎山内知房三栄会ツカザキ病院眼科ブロルシズマブ硝子体内注射により閉塞網膜血管炎が生じることがある.今回経験した患者では,治療により消炎は得られたものの視力予後は不良であった.この合併症はひとたび生じると予後不良なことが多く,ブロルシズマブ使用に際しては常に念頭に置く必要がある.はじめにブロルシズマブは硝子体内注射として使用される抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬で,加齢黄斑変性(age-relat-edCmaculardegeneration:AMD)に対する新しい治療薬である.従来幅広く使用されていたアフリベルセプトと比べると,視力予後で劣らず,より効果が強い可能性が示されている1).ただし,ブロルシズマブは眼内炎症およびそれに伴うと考えられる網膜血管閉塞を引き起こすことが知られている2).また,この合併症は比較的日本人では起こりやすいのではないかと考えられている3).今回,ブロルシズマブ硝子体内注射による眼内炎症を伴う網膜血管閉塞の患者を経験したので報告する.合併症症例の経過患者はC86歳,男性.左眼のC1型脈絡膜新生血管を伴う典型CAMDで,以前にC14回のアフリベルセプト硝子体内注射とC1回の光線力学的療法治療歴があり,内科的疾患はとくに認めなかった.アフリベルセプトの効果が不十分であったためブロルシズマブの使用が可能となったタイミングでスイッチした.2020年C6月C12日に初回のブロルシズマブ硝子体内注射施行.投与時,黄斑部に網膜下液と色素上皮.離を認め,矯正視力(0.4).ブロルシズマブ硝子体内注射C2週間後のC6月C26日受診時は眼内に炎症や血管閉塞を認めず,網膜病変の滲出の軽減を認めた.その後ブロルシズマブ硝子体内注射C17日目図1ブロルシズマブ硝子体内注射35日目の受診時眼底硝子体混濁,網膜動脈白鞘化,網膜白濁を認めた.OCTでは滲出性変化は認めなかった.(81)あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C9290910-1810/21/\100/頁/JCOPYIVBroIVA2015/9/8~2019/12/13症状出現STTAIVAX14PDTX1(2016/6/25)X4X2X1リンデロン点眼図2治療経過のまとめ日付の横のカッコ内は矯正視力.IVBro:ブロルシズマブ硝子体内注射,IVA:アフリベルセプト硝子体内注射,STTA:トリアムシノロン後部テノン.下投与,PDT:光線力学的療法.頃より左眼の霧視,視力低下を自覚するも受診せず.ブロルシズマブ硝子体内注射C35日目のC7月C17日受診.角膜後面沈着物および前房に炎症細胞を認め,硝子体混濁,網膜動脈白鞘化,黄斑を含む網膜白濁を認め視力(0.06)であった.ブロルシズマブ投与前には認めた網膜の滲出性病変については沈静化していた.図1に受診時の眼底写真および光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)画像を示す.眼内炎症に伴う網膜動脈閉塞と判断し治療を開始した.同日よりリンデロン点眼C1日C4回を開始した.1週間後のC7月C25日受診時には前眼部の炎症は軽減傾向を認めたが,AMD病変からの滲出の再燃を認めたため,アフリベルセプト硝子体内注射および消炎目的のトリアムシノロン後部テノン.下投与(sub-TenonCtriamcino-loneCacetonideinjection:STTA)を行った.治療開始よりC4週間目には炎症は完全に鎮静化したが,その後も視力は不良のままであった.図2に治療経過,および視力の推移を示す.今後のブロルシズマブの使用についてブロルシズマブの合併症として生じる眼内炎症だが,血管閉塞を伴わないものについては炎症に対する対症療法的な治療で問題ないと考えられるが,今回経験したような血管閉塞が黄斑領域を巻き込むようなものでは,発症後早期に治療を行ったとしても視力予後は期待しにくいと思われる.したがって重要なのは予防ということになる.合併症発生の可能性が高い患者がある程度事前に予測できると,場合によってはブロルシズマブの使用をC930あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021避けるなど対応が可能だが,現状,はっきりとしたことはわかっていない.現在できる対策は限られるが,治療の基本的な考え方として,第一選択としてはアフリベルセプトなどを使用し,ブロルシズマブの使用は無効例,効果不十分例,投与間隔がC2カ月以上にできないケースに限ること,そういった患者においても視力良好例や,僚眼の視力が不良な患者は避けるなど,できるだけトラブルを避ける方針が望ましい.炎症予防という意味では,初回ブロルシズマブ硝子体内注射時にCSTTAを併用するという治療法もいまだエビデンスはないが有効である可能性があり,現在筆者らの施設では,新規患者については初回投与時はCSTTAを併用するようにしており,またトリアムシノロンの薬効が切れると考えられるC3カ月以上間隔が空いた場合も併用するようにしている.今後の症例の蓄積により,ブロルシズマブの使用の方針が確定されることを期待したい.文献1)DugelCPU,CSinghCSR,CKohCACetal:HAWKCandCHARRI-ER:96-Weekoutcomesfromthephase3trialsofbroluci-zumabCforCneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.COphthalmologyC128:89-99,C20212)MonesCJ,CSrivastavaCSK,CJa.eCGJCetal:RiskCofCin.amma-tion,retinalvasculitis,andretinalocclusion.relatedeventswithbrolucizumab.PostHocReviewofHAWKandHAR-RIER.OphthalmologyS0161.6420:31075-31077,C20203)MarukoI,OkadaAA,IidaTetal:Brolucizumab-relatedintraocularCin.ammationCinCJapaneseCpatientsCwithCage-relatedCmaculardegeneration:aCshort-termCmulticenterCstudy.CGraefe’sCarchCclinCexpC2021CMarC15.(OnlineCaheadofprint.)(82)

緑内障:緑内障と間違えやすい視神経疾患(2)

2021年8月31日 火曜日

●連載254監修=山本哲也福地健郎254.緑内障と間違えやすい視神経疾患(2)坂本麻里神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野視神経乳頭陥凹拡大は緑内障に特徴的な所見であるが,非緑内障性の視神経疾患や頭蓋内疾患でもみられる.「緑内障と間違えやすい視神経疾患」第C2回目の本稿では,非緑内障性視神経疾患の乳頭所見や視野障害の特徴,緑内障との鑑別のポイントについて概説する.●はじめに視神経乳頭陥凹拡大は緑内障に特徴的な所見であるが,非緑内障性の視神経疾患や頭蓋内疾患でも視神経乳頭拡大様の所見がみられることが知られている1~5).視神経乳頭陥凹拡大様の所見を呈する非緑内障性視神経疾患には,圧迫性視神経症,視神経乳頭炎・球後視神経炎,Leber遺伝性視神経症,常染色体優性視神経萎縮,感染性視神経症,中毒性視神経症,虚血性視神経症,外傷性視神経症などがある.本稿では,非緑内障性視神経疾患の乳頭所見や視野の特徴,緑内障との鑑別のポイントについて,症例を交えて解説する.C●非緑内障性の視神経疾患を疑うポイント1.乳頭所見非緑内障性視神経疾患の乳頭所見は,1)乳頭所見の程度に比して視力・視野障害が強い,2)垂直方向よりもびまん性の陥凹拡大が多く,耳側への拡大もみられる,3)視神経乳頭蒼白部位が陥凹よりも大きい,4)乳頭周囲網脈絡膜萎縮や乳頭出血の頻度は少ない,などの特徴がある.C2.視野障害緑内障による視野障害は一般的に鼻側から始まり,網膜神経線維の走行に沿って進行し,視野障害と視神経乳頭の構造異常は原則対応している.一方,非緑内障性の視神経疾患では,障害部位によって中心暗点,傍中心暗点,両耳側半盲,同名半盲,下方の水平半盲などさまざまであるが,頭蓋内疾患を疑うポイントとしては,1)耳側の視野障害,2)視野障害が垂直経線ではっきり分かれるもの,3)中心暗点・傍中心暗点,4)視野障害と視神経乳頭所見に対応がみられないもの,などがある.また,頭蓋内疾患の視野検査では,静的視野計を用いると,動的視野計では見逃されてしまう微妙な垂直半盲を発見できることがあり,有用である6,7).(79)3.その他のポイント年齢,病歴に加え,頭痛・眼窩深部痛・眼位異常や眼球運動障害などの随伴症状も非緑内障性視神経疾患を疑うポイントである.また,限界フリッカ値(criticalC.ickerCfusionfrequency:CFF)の低下や相対的瞳孔求心路障害(relativeCa.erentCpupillarydefect:RAPD)は進行した緑内障でもみられることがあるが,頭蓋内疾患では視力障害や乳頭所見,視野障害が比較的軽度でもこれらを認める場合がある.また,眼圧がコントロールされているにもかかわらず視野障害の進行が早いときや,左右差が大きいときも,非緑内障性の視神経疾患を疑い,頭蓋内を精査する必要がある.C●症例検討症例はC2,3年前から左眼が徐々に見づらく暗くなってきたと訴えるC50代男性.眼科で白内障と診断されたが納得できず別の眼科を受診したところ,左眼視神経乳頭萎縮(図1b)を指摘され,大学病院に紹介された.矯正視力は右眼(0.6),左眼(1.0)(幼少時より右眼の視力が悪いとのこと)で,眼圧は左右ともにC19CmmHgだった.RAPDは陰性だが,CFFは右眼C28CHz,左眼C17CHzと低値で,左眼がより低かった.光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)の乳頭解析では両眼の乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillaryretinalnerve.berlayer:cpRNFL)の厚みは正常だった(図1f).視力とCOCTの結果から,はじめの眼科では視野検査に至らなかったのかもしれない.しかし,乳頭所見を詳しくみると左右差があり,左眼で乳頭陥凹拡大と乳頭耳側蒼白を認めた(図1a,b).前医の静的視野検査では左眼に強い視野障害を認めた(図1c,d)が,乳頭所見(垂直陥凹乳頭径比C0.78)やCOCT所見(cpRNFL厚正常)に比して視野障害が強く,構造と機能が対応していないことがわかる.動的視野では両側のCMariotte盲点拡大と傍中心暗点を認め,両耳側に視野障害があることがわかった(図1g,h).頭部造影CMRIでは前頭蓋底に正中からあたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C9270910-1810/21/\100/頁/JCOPYh図1症例1の検査所見(仮)a,b:視神経乳頭写真.乳頭陥凹は左右差があり,左眼で大きく,乳頭耳側が蒼白である.c,d:前医の静的視野検査.左眼に広範囲に視野障害を認める.Ce:OCT.cpRNFL厚は両眼とも正常範囲である.Cf,g:動的視野検査.両側のCMariotte盲点拡大と傍中心暗点を認め,両耳側に視野障害を認める.Ch:頭部造影CMRI.前頭蓋底に正中からやや左よりに均一に造影される腫瘍を認める.やや左よりに腫瘍を認め(図1e),後方で視交叉を圧排していた.本症例は髄膜腫と診断された.C●おわりに緑内障では原則,構造と機能が対応している.視神経乳頭所見と視機能障害に乖離がみられるときや,眼圧が良好にもかかわらず進行が早いときなどは,非緑内障性の視神経疾患を疑い,頭蓋内を精査する必要がある.文献1)FardMA,MoghimiS,SahraianAetal:OpticnerveheadcuppingCinCglaucomatousCandCnon-glaucomatousCopticCneuropathy.BrJOphthalmolC103:374-378,C20192)Green.eldCDS,CSiatkowskiCRM,CGlaserCJSCetal:TheCcuppedCdisc.CWhoCneedsCneuroimaging?COphthalmologyC928あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021105:1866-1874,C19983)Bianchi-MarzoliS,RizzoJF3rd,BrancatoRetal:Quan-titativeanalysisofopticdisccuppingincompressiveopticneuropathy.OphthalmologyC102:436-440,C19954)Se.-YurdakulN:VisualC.ndingsCasCprimaryCmanifesta-tionsCinCpatientsCwithCintracranialCtumors.CIntCJCOphthal-molC8:800-803,C20155)RebolledaCG,CNovalCS,CContrerasCICetal:OpticCdiscCcup-pingCafterCopticCneuritisCevaluatedCwithCopticCcoherenceCtomography.EyeC23:890-894,C20096)FujimotoN,SaekiN,MiyauchiOetal:CriteriaforearlydetectionCofCtemporalChemianopiaCinCasymptomaticCpitu-itarytumor.EyeC16:731-738,C20027)BolandCMV,CMcCoyCAN,CQuigleyCHACetal:EvaluationCofCanCalgorithmCforCdetectingCvisualC.eldCdefectsCdueCtoCchi-asmalCandCpostchiasmallesions:TheCneurologicalChemi.eldCtest.CInvestCOphthalmolCVisCSciC52:7959-7965,C2011(80)

屈折矯正手術:オルソケラトロジーと近視進行予防

2021年8月31日 火曜日

監修=木下茂●連載255大橋裕一坪田一男255.オルソケラトロジーと近視進行予防森紀和子慶應義塾大学医学部眼科学教室近視有病率の急激な増加より,さまざまな近視進行予防法が模索されているが,昨今確立した近視矯正法の一つであるオルソケラトロジーにも進行抑制効果があることが明らかとなった.利便性が高まり小児に適応となるなど普及が進んでいる.安全性や治療の限界などの問題もあるが,近視進行抑制法の一つとして大いに期待されている.C●はじめにオルソケラトロジーとは,中央部曲率がフラットな特殊デザインの酸素透過性ハードコンタクトレンズ(con-tactlens:CL)を夜間就寝時に装用することにより角膜を平坦化させ,近視矯正を行う方法である.日中眼鏡やCLなしで過ごせるという利点に加え,最近では近視進行抑制効果があることも報告された.本稿ではオルソケラトロジーによる近視進行抑制治療について解説する.C●オルソケラトロジーの歴史古代中国で錘を眼にのせて近視を矯正したことが始まりとする説もある.現在のような就寝時装用オルソケラトロジーが普及しはじめたのはC1990年代である.米国ではC2002年に,日本でもC2009年にC20歳以上の安定した軽度近視眼にのみ適応許可が下り,2016年にはC20歳未満に対して慎重処方が可能となった.その背景として,2005年にCChoら1)が初めて無作為化比較臨床試験を行い,その後の研究でも同様の近視進行抑制効果が認められたことがある(図1).C●オルソケラトロジーの近視進行抑制メカニズム●オルソケラトロジーの利点と限界オルソケラトロジーの最大の利点は,日中裸眼で過ごせることである.夜間装用のみで近視矯正と近視進行抑制の双方の効果が同時に得られることから,満足度が高く継続性が高い.学童期ではスポーツ活動に与える影響が少なく,さらに小児においては保護者監督下で適正な使用が可能であり,学校生活におけるトラブルの心配が少ない.正しい装用と定期診察を行えば,確実で安全性の高い近視矯正および進行抑制法である.一方欠点として,1)近視矯正範囲が限られており,強度近視の矯正には不向きである,2)合宿や夜間勤務などで装用困難な日が続くと,近視矯正効果が低下する,3)いまだ保険適用外であり,経済的な負担となる,4)角膜・結膜疾患など装用が困難な患者は適応からはずれる,などがあげられる.C●オルソケラトロジー選択時の注意点オルソケラトロジーは一種のハードCCLであるため,一般的なCCL装用に伴うものと同様の危険性を伴うもの近視は遺伝要因と環境要因が複雑に影響しあって発症,進行するといわれている.そのメカニズムの一つとして,光の焦点が網膜後方に結ばれる遠視性デフォーカスが起こると眼軸長が伸長し近視が進行するといわれている(図2a).オルソケラトロジーのもっとも支持されている近視進行抑制メカニズムは,遠視性デフォーカス2年間の眼軸長伸長(mm)0.80.70.60.50.40.30.20.132%46%63%の一つである軸外収差の軽減である.角膜形状の変化により黄斑部では焦点が網膜上に結ばれ近視が矯正され,同時にレンズの特性により網膜周辺部では焦点が網膜前方に結ばれる.そのことにより眼軸長の伸長が抑制され0図1オルソケラトロジー近視抑制効果の既報比較ると考えられている2)(図2b).また,高次収差の増大単焦点眼鏡や単焦点ソフトコンタクトレンズと比較し,オルソもメカニズムの一つと推測されている3).ケラトロジーはC32~63%の近視進行抑制効果を認める.(77)あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C9250910-1810/21/\100/頁/JCOPY単焦点眼鏡装用オルソケラトロジー装用図2オルソケラトロジーの軸外収差軽減効果a:光が網膜後方に焦点を結ぶ遠視性デフォーカスが起こると,眼軸長が伸長し近視が進行する.Cb:単焦点眼鏡を装着すると黄斑部では網膜上に焦点が結ばれるが,周辺では焦点が網膜後方に結ばれる軸外収差が起こる.これが眼軸長伸長の原因とされる.オルソケラトロジーを装着後は,角膜形状が変化することにより周辺での焦点が網膜前方に結ばれるため,軸外収差の軽減が起こり,眼軸長伸長が抑制されるといわれている.と理解すべきである.角膜上皮障害,細菌性角結膜炎,角膜内皮障害,巨大乳頭結膜炎などの早期発見には留意すべきである.性能が改良されたとはいえ,夜間就寝中装用という特殊性から,CLのずれ,疼痛閾値の上昇による角膜損傷の発見遅れや角膜酸素供給量の低下も危惧され,通常のCCLより注意が必要な点もある.オルソケラトロジーの長期予後については今なお不確定な要素が多いため,とくに幼少期からの使用に際しては慎重に処方すべきである.C●オルソケラトロジーの現在と今後の発展オルソケラトロジーに関する研究は広く行われており,他の近視進行抑制法との併用も試みられている.屋外活動,点眼,内服,眼鏡などとの併用は可能であり,低濃度アトロピン点眼との併用では相加効果も報告されている4).また,当初オルソケラトロジーは中等度以下の近視に適応とされていたが,強度近視においても夜間C926あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021安全で効果的な近視矯正および進行抑制法として期待できる.C●おわりに幼少期,学童期から強度近視の発症を予防することは,将来失明につながりうる眼疾患のリスクを減少させる可能性があり,近視進行抑制治療のおもな目標である.オルソケラトロジーは現在行われている近視進行抑制治療のなかでも高い効果を示している(図3).小児への適応が拡大している現状から,長期的な影響,リバウンドなどについてもさらなる研究が求められる.文献1)ChoCP,CCheungCSW,CEdwardsM:TheClongitudinalCortho-keratologyresearchinchildren(LORIC)inHongKong:apilotCstudyConCrefractiveCchangesCandCmyopicCcontrol.CCurrEyeResC30:71-80,C20052)SmithEL3rd,KeeCS,RamamirthamRetal:PeripheralvisionCcanCin.uenceCeyeCgrowthCandCrefractiveCdevelop-mentCinCinfantCmonkeys.CInvestCOphthalmolCVisCSciC46:C3965-3972,C20053)HiraokaCT,KotsukaCJ,KakitaCTetal:RelationshipCbetweenChigher-orderCwavefrontCaberrationsCandCnaturalCprogres-sionofmyopiainschoolchildren.SciRepC7:7876,C20174)WangCS,CWangCJ,CWangN:CombinedCorthokeratologyCwithatropineforchildrenwithmyopia:Ameta-analysis.OphthalmicResCdoi:10.1159/000510779(2020)5)LyuCT,CWangCL,CZhouCLCetal:RegimenCstudyCofChighCmyopia-partialCreductionCorthokeratology.CEyeCContactLensC46:141-146,C2020(78)

眼内レンズ:モルガーニ白内障に対する手術の注意点

2021年8月31日 火曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋417.モルガーニ白内障に対する西村栄一昭和大学藤が丘リハビリテーション病院眼科手術の注意点モルガーニ白内障は過熟白内障の皮質部分が液化し,核がその重量で下方に沈下した状態をよぶ.術式は近年超音波機器の進歩により水晶体乳化吸引術が第一選択となっている.手術時の注意点としては,前.視認性の低下,水晶体.圧の上昇,核処理時後.が近いことなどがあげられ,その対処方法を知っておくことは重要である.●はじめに解剖学者CMorgagni(1682~1771年)は著書“DeCsedibusCetCcariisCmorborumCperCanatomenCindagatis”において,高齢者の過熟白内障について述べている1).過熟白内障の皮質部分が液化し,核がその重量で下方に沈下した状態を,彼の名にちなんでモルガーニ白内障(Morgagniancataract)とよぶ2).モルガーニ白内障の手術は難症例のひとつであるが,近年その頻度は減少している.しかし,ごくまれにモルガーニ白内障に直面することがあり,あらかじめその特徴,注意点などを知っておくことは,実際に直面した際の合併症予防に重要である.●診断と術式選択診断は,細隙灯顕微鏡検査で液化した皮質中に自身の重量で下方に沈んだ核を確認することで,比較的容易にできる(図1).しかし,前.が自然融解して,皮質が前房内に漏出し,水晶体起因性ぶどう膜炎を呈するような場合は,詳細が不明なこともある(図2).従来,モルガーニ白内障手術の第一選択は水晶体.外摘出術であった.しかし近年,超音波機器の進歩により,硬い核の破砕力,前房安定性が増したため,水晶体乳化吸引術(phacoemulsi.cationandaspiration:PEA)が第一選択となってきている.しかし現在でも,すでに前.が破.して前.亀裂が周辺に及んでいる場合や,Zinn小帯断裂を生じている場合は,.外摘出術を選択したほうがよい3).図1モルガーニ白内障皮質が液化し,茶褐色の核が下方に沈下している.図2水晶体.起因性ぶどう膜炎水晶体前.が自然融解し,皮質が前房内に漏出,ぶどう膜炎を生じている.(75)あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C9230910-1810/21/\100/頁/JCOPYa高分子眼粘弾剤図3膨隆した前.の陥凹化高分子眼粘弾剤を用いて膨隆した前.を陥凹させ,針などで前.を穿刺して.内圧を下げ図4核処理時の後.破損予防ることがCCCCのポイントである.分散型眼粘弾剤を後.上に留置する(Ca),核の下にフックを置き後.の前方移動をブロックする(Cb),などの手技を用いると後.破損を予防可能である.●PEA施行時の注意点実際の手術手技の注意点を場面別に紹介する.C1.連続円形切.(continuouscurvilinearcapsulorrhexis:CCC)PEAを安全に施行するにはCCCCの完成が必須である.CCC不成功例では,後.破損の頻度がCCCC成功例の約C4倍有意に上昇する4).CCC施行時は視認性の低下と.内圧の上昇に注意を要する.視認性の低下に対しては前.染色で対処する.インドシニアニングリーン,トリパンブルー,ブリリアントブルーCGなどの染色液を使用するが,これらはわが国では適用外使用となる.モルガーニ白内障では.内圧が上昇し前.が膨隆しているため,不用意な前.穿刺は前.切開線が周辺に流れてしまう要因となる.膨隆した前.を高分子眼粘弾剤で陥凹化させた状態で(図3),前.を穿刺し,液化した皮質を吸引して内圧を下げてからCCCCを行うことが重要なポイントである.C2.水晶体核処理PEA手技の注意点としては,皮質の液化により,核が動きやすく,また核が硬化しているため把持しにくい.しっかりと核を保持して分割することが重要である.また,液化した皮質は容易に吸引されるので,核の背後に後.が存在していることに注意を要する.もともとモルガーニ白内障の後.は薄く,Zinn小帯脆弱も伴い,.の張りも弱いことが多い.そのため,軽度のサージ現象などにより,超音波チップがダイレクトに後.を吸引し,破.するリスクが高くなる.そのため超音波は低灌流,低吸引の設定とし,核片が残り少なくなってきた時点で,分散型眼粘弾剤を後.上に留置する,核の下にフックを置き後.の前方移動をブロックする,などの手技を用いると後.破損を予防することができる(図4).C3.皮質吸引皮質の変性が進行し,水晶体.赤道部に皮質が残ることがある.皮質が残存すると術後炎症や眼圧上昇の原因となりうるので,シムコ針やバイマニュアルの灌流吸引器を使用し,できるだけ吸引することを心がける.文献1)KnappA:ObservationsonglaucomainMorgagniancata-ract.TransAmOphthalmolCSocC24:84-92,C19262)BronCAJ,CHabgoodJO:MorgagnianCcataract.CTransCOph-thalmolSocUK96:265-277,C19763)徳永義郎,西村栄一,砂川珠輝ほか:両眼性モルガーニ白内障の一例.IOL&RS,2021,印刷中4)西村栄一,陰山俊之,綾木雅彦ほか:大学病院におけるC1万例以上の小切開超音波白内障手術統計─術中合併症の検討.眼科45:237-240,C2003

コンタクトレンズ:コンタクトレンズの処方とフォロー 3. ハードコンタクトレンズの修正-くもり

2021年8月31日 火曜日

・・提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズユーザーの満足度向上をめざすコンタクトレンズの処方とフォロー小玉裕司小玉眼科医院3.ハードコンタクトレンズの修正―くもり―■はじめにハードコンタクトレンズ(HCL)にもユーザーにも季節的変化や経年変化は生じる.HCL処方時には認められなかったくもり,充血,異物感などの症状が出た場合,原因によって対処法が異なるが,レンズの種類によってはHCLを修正することによって症状を改善できる場合がある.修正ができないHCLとしてはメニコンのレンズすべてとシードのS-1があげられる.■HCLの汚れによるくもりレンズ表面に汚れがこびりついており(図1),クリーナーで洗浄してもなかなか落ちない場合がある.まずは使用しているレンズが修正可能なレンズか否かを調べなくてはならない,購入店に聞くかネットで調べるとよい.修正不可能なレンズの場合は,レンズと同じメーカーのクリーナーでしっかりと擦り洗いをする.それでもだめな場合は,ガーゼにクリーナーを含ませて擦り洗いをしてみる.次は一晩,レンズを蛋白分解酵素の入った保存液中に浸けておき,翌日,クリーナーにて同様に擦り洗いをしてみる.最終的には次亜塩素酸ナトリウムと臭化カリウムに30分浸漬する方法があるが,この方法が適さないレンズもあるので注意を要する.修正可能図1汚れによるくもりレンズ表面に汚れがこびりついており,通常のクリーナーでは落ちないことがある.図2キズによるくもりベベル表面のキズにタンパクや脂質が入り込んで生じる.なレンズであれば,以上の方法の次の段階として研磨剤入りの強力なクリーナーで擦り洗いをしてみて,それでもだめな場合は表面を研磨修正する.このような汚れは,HCLをまったくクリーナーで擦り洗いをせず,蛋白分解酵素の入った液に保存しているだけのユーザーのレンズに多くみられる.しっかりとしたレンズケアの指導が大切である.■HCLのキズによるくもりHCLの表面にキズが多くついてしまうと,キズに蛋白質と脂質が入り込んで水濡れ性が低下してくもるようになる(図2).このような場合は,修正可能なレンズであればレンズ表面を研磨して対処する.しかし,キズが深い場合や修正不可能なレンズでは新しいレンズへの交換が必要になる.■HCLの3パターンのくもりベベル幅が広すぎてエッジの浮き上がりが大きすぎると,ベベル部分に涙液が蓄えられてしまい,レンズの表面は乾燥して「ドライなくもり」(図3)が生じてしまう.また,レンズ周辺部位のドライアップによって,3時-9時ステイニングを生じる場合もある(図4).前回の図3ドライなくもりエアコンの効いた乾燥した状況などで,HCL表面が息を吹きかけたようにくもる.ベベル幅が広すぎてエッジの浮き上がりが大きすぎるか,ドライアイによって生じる.図4ドライアップによる3時.9時ステイニングベベル部位に涙液が貯留してレンズ周辺部の角膜がドライアップすることによって生じる.(73)あたらしい眼科Vol.38,No.8,20219210910-1810/21/\100/頁/JCOPYエッジエッジリフトabcdefフロントカーブ図5ベベル・エッジの修正a:ベベル幅を狭くしてエッジの浮き上がりを小さくする.b:ベベル幅を広くしてエッジの浮き上がりを大きくする.c:周辺部フロントを研磨して厚みを落とす.d:エッジを丸めて機械的刺激を少なくする.e:ベースカーブとintermediatecurveの境界部を研磨してなめらかにする.f:Intermediatecurveとperipheralcurveの境界部を研磨してなめらかにする.図6ウェットなくもり図7レンズの機械的刺激によっ図8オイリーなくもりレンズの機械的刺激による分泌て生じた3時.9時ステイアレルギー性結膜炎によってレ地物で表面が汚れて生じる.ニングンズ表面に油膜や油滴が付着しベベル幅が狭くてエッジの浮き上て生じる.がりが小さすぎることで生じる.セミナーでも解説したが,人工涙液などの点眼で対処する方法と,修正可能なレンズではベベル幅を狭くしエッジの浮き上がりを小さくする方法(図5a)がある.レンズの機械的刺激による眼脂などの分泌物でレンズ表面が汚れて「ウェットなくもり」(図6)が生じることもある.瞬目が浅くてレンズ使用開始後しばらくしてから,次第にレンズがくもってきて見にくくなる場合は,ベベル幅が狭すぎてエッジの浮き上がりが小さすぎることが多い.このようなケースではレンズの機械的刺激によって3時-9時ステイニング(図7)が認められることがある.修正可能なレンズであれば,研磨によってベベル幅を広くしエッジの浮き上がりを大きくする(図5b).修正ができないレンズの場合は,そのようなデザインを有するレンズに交換するか,少しベースカーブをフラットにしてみるのもよい.アレルギー性結膜炎が生じてレンズ表面に油膜や油滴が付着して「オイリーなくもり」(図8)が認められることがある.抗アレルギー点眼液で解消すれば問題ないが,そうでない場合は修正可能なレンズでは周辺部フロント(フロントベベル)を研磨して少し厚みを落としたり(図5c),エッジを丸めたり(図5d),ICブレンド(図5e)やPCブレンド(図5f)を追加すると有効な場合がある.

写真:帯状疱疹後に銭型(貨幣状)角膜炎と考えられる病変を認めた症例

2021年8月31日 火曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦447.帯状疱疹後に銭型(貨幣状)角膜炎と野々村美保京都府立医科大学附属北部医療センター眼科考えられる病変を認めた症例京都府立医科大学眼科学教室横井則彦京都府立医科大学眼科学教室図1細隙灯顕微鏡所見(強膜散乱法)角膜輪部に広がる上方の灰白色状の角膜浸潤病巣,および中央から耳側にかけてのハローを伴う角膜浸潤病巣を認める.図3細隙灯顕微鏡所見(ディフューザー法)角膜C12時方向に円盤状の浸潤を認める.同部位近傍の角膜輪部に血管侵入を認める.結膜充血は軽度.図41カ月後の細隙灯顕微鏡所見(間接観察像)角膜浸潤は消失している.(71)あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C9190910-1810/21/\100/頁/JCOPY症例は42歳,公務員の男性.眼疾患の既往はなし.当科受診1週間前より右側顔面に疼痛を伴う水疱が出現し,皮膚科にて帯状疱疹と診断され,バラシクロビル3g内服を開始していた.同日に右眼の充血と眼痛も認めたため,1週間後に当科に紹介受診となった.受診時,眼痛は自然軽快し,視力,眼圧には異常なかったが,強膜散乱法による細隙灯顕微鏡の観察で,角膜C12時方向の灰白色状の浸潤病巣と,角膜中央から耳側にかけて角膜の実質浅層にC4カ所の浸潤病巣を認めた(図1,2).ディフューザー法による観察でも角膜C12時方向に直径C2~3Cmm程度の淡い灰白色の浸潤(図3),および12時方向の病変のみフルオレセイン染色で病変部位の角膜表層に凹凸不整を認めた.また,耳側の角膜実質の浸潤病巣周囲にはハロー様の浸潤の減弱した所見を認めた.帯状疱疹の既往および浸潤病変の特徴的な所見より,銭型角膜炎(nummularkeratitis)と診断し,0.1%フルオロメトロン点眼液を右眼C4回/日とC1.5%レボフロキサシン点眼液を右眼C2回/日で治療を開始した.所見の改善により,開始時からC2週間後,フルオロメトロン点眼液は右眼C2回/日に減量した.1カ月後,角膜浸潤所見は大幅に改善し,角膜の耳側方向および上方にわずかに角膜混濁を認める程度になったため(図4),点眼液は終了とした.当科受診以前より乏突起神経膠腫で脳神経内科に通院中であったが,血液検査などで免疫不全は認めなかった.CNummularkeratitisはC1905年にCDimmerにより,結膜炎を伴わず貨幣状の角膜混濁をきたし,農作業を生業とする若年男性の片眼に発症することが多いと報告され,病状として異物感,羞明,霧視,眼脂が多く,植物や泥による外傷の既往を多く認めるとされる1).所見はBowman膜直下にC0.5~3.0Cmm程度の円形の多発角膜浸潤として出現し,原因は不明であったが治療としてはステロイドが著効するため,ウイルスなどの外的要因に対する免疫学的反応と考えられていた2).発展途上国の農村地帯でみられるため,外傷や汚水の眼への飛入を契機とした感染が原因として考えられたが,その病態としてなんらかの病原体に対する感染アレルギーが推察される.2016年にCmicrosporidia感染による結膜炎の治療後,約C10%で銭型角膜炎がみられたとの報告がなされた.Microsporidiaは日本では微胞子虫とよばれ,同菌による角膜炎は南インドなどの地域でC11月をピークに若年男性の片眼によくみられる3).他にも流行性角結膜炎における非典型例として,結膜炎症状をほぼ伴わないBowman膜直下の円盤状角膜浸潤を認めるという報告や4),水痘罹患後5),頻度は低いがCEpstein-Barrウイルス感染後6)の報告もある.Microsporidiaが原因の場合にC0.3%フルコナゾール点眼液が使用される以外は,ステロイド点眼による治療が行われている.本症例は帯状疱疹罹患後の若年男性の片眼における角膜浸潤であり,既報の銭型角膜炎として矛盾はないと考えた.帯状疱疹後の銭型角膜炎は,典型例では帯状疱疹発症からC10日ほどでみられ,先に述べたように,多くはハローを伴う多発するCBowman膜直下の浸潤所見からなり,ステロイド点眼に反応して消退するが,治療が十分でないと再発しうるとされる.今回,皮膚科から紹介されたが,同様の所見がみられた場合は,職業や全身疾患を含めた既往歴を確認することが重要と考えられる.文献1)ValentonMJ:DeepCstromalCinvolvementCinCDimmer’sCnummularkeratitis.CAmJOphthalmolC78:897-902,C19742)北川和子:多発性小円形病巣を呈する特異な角膜炎─能登角膜炎と銭型角膜炎.あたらしい眼科C26:647-648,C20093)AgasheR,RadhakrishnanN,PradhanSetal:ClinicalanddemographicCstudyCofCmicrosporidialCkeratoconjunctivitisCinCSouthIndia:aC3-yearstudy(2013.2015)C.CBrJOph-thalmol101:1436-1439,C20174)HoganMJ,CrawfordJW:Epidemickeratoconjunctivitis:(super.cialCpunctateCkeratitis,CkeratitisCsubepithelialis,CkeratitisCmaculosa,Ckeratitisnummularis):withCaCreviewCoftheliteratureandareportof125cases.CAmJCOphthal-mol25:1052-1078,C19425)DenierCM,CGabisonCE,CSahyounCMCetal:StromalCkeratitisCaftervaricellainchildren.CorneaC39:680-684,C20206)IovienoCA,CCoassonCM,CViscogliosiCFCetal:Delayed-onsetCbilateralCperipheralCposteriorCinterstitialCkeratitisCassociat-edwithEpstein-Barrvirus-inducedinfectiousmononucle-osis.COculCImmunolCIn.amm2020.Cdoi:10.1080/09273948.C2020.1811351C

病的近視の合併症の治療  緑内障

2021年8月31日 火曜日

病的近視の合併症の治療緑内障TreatmentofGlaucomaAssociatedwithPathologicalMyopia新田耕治*はじめに近視は生涯にわたり眼球がさまざまに変形し,いろいろな病態を引き起こす可能性がある.視神経乳頭部においても多種多様な変形をきたし,視神経乳頭は蒼白となり,視野障害が急速に進行する患者に遭遇することがある.強度近視の病態がどのようにしてこのような状態に陥るのかを,近視眼の構造変化,なぜ近視眼に緑内障が発症しやすいか,近視と緑内障の鑑別の決め手,近視眼緑内障の治療に眼圧下降は有効かの順で考察する.まだまだエビデンスに乏しいこのテーマであるが大変興味をもって長年取り組んできたので,筆者の考えも交えて論じることをご容赦いただきたい.I近視眼の構造変化1.若年期近視眼の構造変化若年期の眼軸長の延長に伴い視神経乳頭の耳側縁が鼻側へ偏位して視神経乳頭に傾斜や回旋が生じ,もともと円形の乳頭が縦楕円,斜楕円,横楕円などの形状を呈する.同時にもともと乳頭が存在した耳側部位はコーヌスとよばれる網脈絡膜萎縮が形成される(図1).近視は原発開放隅角緑内障(primaryopenangleglaucoma:POAG)発症のリスクが2~3倍増加するとされ,近視は緑内障発症の危険因子と考えられている1~2).乳頭傾斜が緑内障にどのように影響するかを報告した論文では,両眼ともに-2D以上の近視眼緑内障において視野の平均偏差(meandeviation:MD)値が悪い眼と良い眼に分けて,垂直乳頭傾斜角,水平乳頭傾斜角,最大乳頭傾斜角,最大乳頭傾斜部位などを検討した結果,MD値が悪い眼はMD値が良い眼と比較して,有意に水平乳頭傾斜角が大きく,最大乳頭傾斜部位がより下耳側であった.眼軸長の延長により眼球の非対称性が生じ,結果として,アストロサイト,毛細血管,網膜神経節細胞軸索に影響を与えたことがこのような結果をもたらしているのではないかと論じている3).よって,若年の頃から眼科を受診している患者には,乳頭を拡大した眼底写真の撮影が推奨される.電子カルテが普及してきた現代の眼科医療においては,若年の頃に撮影した眼科に関する画像は,その患者が将来緑内障を疑われた場合に緑内障診断の一助になる可能性がある.また,コンタクトレンズや眼鏡度数の修正のために不定期に受診した若年患者にもときどき光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)などの画像解析を施行し,緑内障の発症の有無について常に念頭に置いた診療を心がけたいものである.2.壮年~老年期近視眼の構造変化壮年期には加齢によりコーヌス周囲に網膜色素上皮の萎縮が形成される.もともとのコーヌスとこの網膜色素上皮の萎縮は検眼鏡的に判別が困難なので,あわせて乳頭周囲網脈絡膜萎縮(peripapillaryatrophy:PPA)とよばれている.また,後部ぶどう腫とよばれる眼球後部の一部分のみ拡張する変化を呈する近視眼が存在する.*KojiNitta:福井県済生会病院眼科〔別刷請求先〕新田耕治:〒福井市和田中町舟橋7-1福井県済生会病院眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(55)903abc図1若年者の視神経乳頭拡大カラー写真a:非近視眼では9年経過しても眼底写真上,視神経乳頭の変形は認めない.b:中等度近視眼では乳頭が傾斜し正面からは乳頭が小さくなったように見える.c:強度近視眼では,経年的に下方のコーヌス部が白色化をきしている.TypeIwide,macularstaphylomaTypeIInarrow,macularstaphylomaTypeIIIperipapillarystaphylomaTypeIVnasalstaphylomaTypeVinferiorstaphyloma図2後部ぶどう腫の新分類3DMRIを撮影し眼球の外観と眼底所見と組み合わせて分類した.図3強度近視眼のさまざまな乳頭および乳頭周囲形状強度近視眼では乳頭やその周囲の形態は非常にさまざまな形状を呈するので,緑内障と明確に鑑別できない.図4強度近視眼14例における乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血出現時の眼底写真14例15カ所の乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血の出血部位をで示した.症例10と症例12以外は乳頭縁からかけ離れた部位に出血をきたしている.症例3,症例10,症例12,症例13,症例14は乳頭所見や視野所見から緑内障が疑われる.そのほかは,緑内障の有無は不明である.図5図4の症例の乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血消退後の眼底14例15カ所の乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血はすべていったん消退している.--1996年2021年図6近視性構造変化が増悪した強度近視眼初診時40歳,女性の右眼.眼軸長27.57mmの強度近視眼.乳頭傾斜の進行やPPA拡大し近視性構造変化は増悪した.緑内障性構造変化も合併しているかは判別困難であるが,25年の経過で視野障害は増悪した.2007年2021年図7眼底に広範な網脈絡膜萎縮が出現拡大した強度近視眼初診時48歳,女性の左眼.眼軸長32.25mmの強度近視眼.15年の経過で視神経乳頭上耳側のリムの菲薄化が進行し緑内障性構造変化が増悪した.コーヌスは拡大し,眼底に広範な網脈絡膜萎縮が拡大し近視性構造変化も増悪し,両者の影響で視野障害は増悪した.図8強度近視眼の乳頭後部ぶどう腫がなく,乳頭周囲の構造変化が軽微な強度近視眼の場合,強度近視眼では緑内障合併の有無を判断しやすい.図9豹紋眼底を呈する近視眼の網膜神経線維層欠損カラー眼底写真では豹紋眼底を呈するために網膜神経線維層欠損の有無を判別できないが,青成分のみを抽出した白黒写真では上耳側や耳側に複数の網膜神経線維層欠損を確認できる.図10GCCmapにおける上下非対称性により緑内障と診断できた症例眼底写真にて右眼下耳側に網膜神経線維層欠損()を認め,GCCmapにも上下非対称性のCGCCの菲薄化を下耳側に認めた.OCTにて乳頭周囲を詳細に観察すると,右眼のCPPA部位上の網膜神経線維は左眼と比較して菲薄化を認めた.-======図11LSFG.NAVIにて左右差が顕著な症例左眼のみ緑内障と診断し加療中の症例であるが,OCTAにて深層毛細血管がの部位で脱落している.LSFG-NAVIにて乳頭および乳頭周囲のCMBRを測定すると,左眼は顕著な血流低下を認めた.2017/5/312020/1/20MBR16.416.8MV43.440.9図12血流不全型近視性視神経症に緑内障を合併した症例乳頭は傾斜回旋し,下方にはCICCを合併している.深層COCTA(上右)ではコーヌス上には太い血管のみが残存し通常は存在する太い血管をネットワークする毛細血管が顕著に脱落している.LSFG-NAVI(下中)では視神経乳頭や脈絡膜の血流は低下している.血流不全型近視性視神経症に緑内障を合併した病態と判断した.2018.102020.12018/10/182019/8/282019/8/282019/10/22019/12/92020/1/22MBR15.012.514.014.917.9MV36.629.5塩酸ブナゾシン開始31.932.338.5MT7.97.26.77.910.0図13血流不全型近視性視神経症+緑内障合併例に血流改善効果の期待できる塩酸ブナゾシンを点眼した症例塩酸ブナゾシンを点眼開始して,眼血流を表す指標が改善している.図14小児近視眼に認めた網膜内層厚の菲薄化5歳時に当院を初診した外斜視の患児である.6歳ごろから近視を認め眼鏡を常用していた.8歳C10カ月時(-3.75D)にCOCTを施行し,左眼網膜内層厚の上下差を認めた.視野検査では有意な感度低下を認めなかった.左眼視神経乳頭の傾斜や回旋を認め,上方の視神経乳頭リムの菲薄化を認め,前視野緑内障に類似した状態と判断した.の乖離が顕著で視野障害の割にCOCTやCOCTAでの変化が強いのが特徴である.さらに,上述のごとく,視神経乳頭や脈絡膜の血流は低下する(図12).そのため近視眼緑内障の対処療法として眼血流を改善する付加価値を有する薬剤を点眼することを推奨したい(表1).このうち強い眼血流改善作用を有すると考えられる点眼は,塩酸ブナゾシン(Ca1遮断薬,商品名デタントール)である.この点眼薬は,正常家兎において脈絡膜血流を有意に増加させることが報告されている31).また,NTGの眼灌流量(pulsatileCocularCblood.ow)が塩酸ブナゾシン点眼によりC1週間後には開始前より有意に増加し,さらに徐々に増加し点眼開始C3カ月後にはC50.3%増加したとの報告もある32).プロスタグランジン関連薬のうち,タフルプロストも血流改善が報告されている.家兎において視神経乳頭の組織血流の有意な増加が報告されている33).柴田らは,POAGにC3年間点眼したタフルプロスト群とラタノプロスト群を比較して,LSFG-NAVIを用いた乳頭血流は,ラタノプロスト群は経時的に血流量は低下したがタフルプロスト群で乳頭血流を維持したと報告した34).筆者は実際に,血流不全型近視性視神経症を併発したと思われる近視眼緑内障患者に塩酸ブナゾシン点眼を開始し,LSFG-NAVIのCMBRは点眼開始前より改善している症例を経験している(図13).今後,血流不全型近視性視神経症に対する血流改善治療の有用性を検討してみたいと考えている.C3.明確な治療方法がないのであればより早期発見をめざしたいこれまで述べてきたように近視眼緑内障にエビデンスのある明確な治療方法は現時点で存在しない.であれば,視力障害を自覚してから通院治療を始めても改善しないのであるから,より早期に発見し管理を続けていくことが患者のためである.図14に当院で最近経験した症例を呈示する.5歳時に当院を初診した外斜視の患児である.6歳ごろから近視を認め眼鏡を常用し,徐々に眼鏡度数を強くしていた.8歳C4カ月時に全身麻酔にて斜視手術(直筋C2筋,斜筋C2筋)を施行し,術後経過観察中である.8歳C10カ月時にCOCTを施行し,左眼網膜内層厚の上下差を認めた.視野検査では有意な感度低下を認めなかった.左眼視神経乳頭の傾斜や回旋を認め,上方の視神経乳頭リムの菲薄化を認め,前視野緑内障に類似した状態と判断した.この患児のように,近視矯正や斜視のために定期的に通院している小児や若年者に,一度はCOCTを施行してみることを習慣化していただきたい.とくに,小学校低学年にもかかわらず近視矯正用の眼鏡を使用している場合は要注意と考える.より早期の状態での発見に努めることも強度近視眼緑内障の治療の一環と考えていただきたい.おわりに強度近視眼で緑内障に類似した構造性変化やその変化に一致すると思われる視野障害を見いだしたときに,そのような眼が眼圧依存性であるか確証が得られていないのが現状である.現時点では視野障害を伴う強度近視眼を診察した場合,エビデンスのない眼圧下降療法を行うかどうか検討することになる.しかし,このような症例に緑内障点眼を多剤併用して治療する意義はあるのか,ましてや最大耐用点眼でも視野障害が進行する場合にリスクを冒してまでも緑内障濾過手術を施行することは本当に意義のあることなのであろうか?仮に手術が成功して術後に眼圧が一桁の後半を維持できてもそれは眼科医の自己満足でしかないのではないか.患者を眼圧値のマジックで納得させているだけで,迫りくるCQOV低下,QOL低下に正面から患者と向き合うことを避けようとしているだけではないかと自責の念に駆られることがある.日本を含めたアジアでは欧米と比較して近視の罹患率が高く,近視による視神経障害の病態とその治療方法の確立は急務であると筆者は考えている.文献1)MarcusCMW,CdeCVriesCMM,CJunoyCMontolioCFGCetal:CMyopiaCasCaCriskCfactorCforopen-angleCglaucoma:CaCsys-temicCreviewCandCmeta-analysis.COphthalmologyC118:C1989-1994,C20112)MitchellCP,CHourihanCF,CSandbachCJCetal:TheCrelation-shipbetweenglaucomaandmyopia:CtheBlueMountainsEyeStudy.Ophthalmology106:2010-2015,C19993)ChoiJH,HanJC,KeeC:Thee.ectsofopticnerveheadtiltConCvisualC.eldCdefectsCinCmyopicCnormalCtensionCglau-coma.JGlaucomaC28:341-346,C2019916あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021(68)4)CurtinBJ:TheCposteriorCstaphylomaCofCpathologicCmyo-pia,CTransAmOphthalmolSocC75:67-86,C19775)HsiangCHW,COhno-MatsuiCK,CShimadaCNCetal:ClinicalCcharacteristicsCofCposteriorCstaphlomaCinCeyesCwithCpatho-logicmyopia.AmJOphthalmolC146:102-110,C20086)Ohno-Matsuikyoko:ProposedCclassi.cationCofCposteriorCstaphylomasCbasedConCanalysesCofCeyeCshapeCbyCthree-dimensionalCmagneticCresonanceCimagingCandCwide-.eldCfundusimaging.OphthalmologyC121:1798-1809,C20147)新田耕治,齋藤友護,杉山和久:乳頭周囲網脈絡膜萎縮の静的視野に及ぼす影響─眼軸長との関係─.日眼会誌C10:C257-262,C20068)JonasCJB,CBerenshteinCE,CHolbachL:LaminaCcribrosaCthicknessCandCspatialCrelationshipsCbetweenCintraocularCspaceandcerebrospinal.uidspaceinhighlymyopiceyes.InvestOphthalmolVisSci45:2660-2665,C20049)Ohno-MatsuiCK,CShimadaCN,CYasuzumiCKCetal:Long-termCdevelopmentCofCsigni.cantCvisualC.eldCdefectsCinChighlyCmyopicCeyes.CAmCJCOphthalmolC152:256C-265,C201110)AkagiT,HangaiM,KimuraYetal:PeripapillaryscleraldeformationCandCretinalCnerveC.berCdamageCinChighCmyo-piaCassessedCwithCswept-sourceCopticalCcoherenceCtomog-raphy.AmJOphthalmol155:927-936,C201311)新田耕治,杉山和久,生野恭司ほか:強度近視眼における乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血のC14例.日眼会誌印刷中12)JonasCJB,CNagaokaCN,CFangCYXCetal:IntraocularCpres-sureCandCglaucomatousCopticCneuropathyCinChighCmyopia.CInvestOphthalmolVisSciC58:5897-5906,C201713)TanO,ChopraV,LuATetal:Detectionofmaculargan-glionCcellClossCinCglaucomaCbyCFourier-domainCopticalCcoherenceCtomography.COphthalmologyC116:2305-2314,Ce1-e2,C200914)ShojiT,SatoH,IshidaMetal:Assessmentofglaucoma-touschangesinsubjectswithhighmyopiausingspectraldomainCopticalCcoherenceCtomography.CInvestCOphthalmolVisSci52:1098-1102,C201115)ShojiT,NagaokaY,SatoHetal:ImpactofhighmyopiaonCtheCperformanceCofCSD-OCTCparametersCtoCdetectCglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmolC250:1843-1849,C201216)ShimadaN,Ohno-MatsuiK,HarinoSetal:ReductionofretinalCbloodC.owCinChighCmyopia.CGraefesCArchCClinExpOphthalmol242:284-288,C200417)AzeminCMZ,CDaudCNM,CAbCHamisCFCetal:In.uenceCofCrefractiveCconditionConCretinalCvasculatureCcomplexityCinCyoungerCsubjects.CScienti.cCWorldCJournalC2014:783525,C201418)LiCM,CYangCY,CJiangCHCetal:RetinalCmicrovascularCnet-workCandCmicrocirculationCassessmentsCinChighCmyopia.CAmJOphthalmol174:56-67,C201719)WangX,KongX,LiangCetal:Istheperipapillaryreti-nalCperfusionCrelatedCtoCmyopiaCinChealthyCeyes?CaCpro-spectivecomparativestudy.BMJOpenC11:e010791,C201620)SamraWA,PournarasC,RivaCetal:Choroidalhemody-namicinmyopicpatientswithandwithoutprimaryopen-angleglaucoma.ActaOphthalmolC91:371-375,C201321)SungCMS,CLeeCTH,CHeoCHCetal:ClinicalCfeaturesCofCsuper.cialanddeepperipapillarymicrovasculardensityinhealthymyopiceyes.PLoSCOneC12:e0187160,C201722)AizawaCN,CKunikataCH,CShigaCYCetal:CorrelationCbetweenstructure/functionandopticdiscmicrocirculationCinCmyopicCglaucoma,CmeasuredCwithClaserCspeckleC.owgraphy.BMCOphthal14:113,C201423)KiyotaCN,CKunikataCH,CTakahashiCSCetal:FactorsCassoci-atedCwithCdeepCcirculationCinCtheCperipapillaryCchorioreti-nalatrophyzoneinnormal-tensionglaucomawithmyopicdisc.ActaOphthalmolC96:e290-e297,C201824)SuwanCY,CFardCMA,CGeymanCLSCetal:AssociationCofCmyopiaCwithCperipapillaryCperfusedCcapillaryCdensityCinpatientswithglaucoma:anopticalcoherencetomographyangiographystudy.JAMA136:507-513,C201825)ShinCYJ,CNamCWH,CParkCSECetal:AqueousChumorCcon-centrationsCofCvascularCendothelialCgrowthCfactorCandCpig-mentCepithelium-derivedCfactorCinChighCmyopicCpatients.CMolVis18:2265-2270,C201226)JiaCY,CHuCDN,CZhouJ:CHumanCaqueousChumorClevelsCofTGF-b2:relationshipCwithCaxialClength.CBiomedCResCIntC2014:258591,C201427)ZhuCX,CZhangCK,CHeCWCetal:Proin.ammatoryCstatusCinCtheaqueoushumorofhighmyopiccataracteyes.ExpEyeRes142:13-18,C201628)HerbortCCP,CPapadiaCM,NeriCP:MyopiaCandCin.ammation.CJOphthalmicVisRes6:270-283,C201129)HusainR,LiW,GazzardGetal:LongitudinalchangesinanteriorchamberdepthandaxiallengthinAsiansubjectsafterCtrabeculectomyCsurgery.CBrCJCOphthalmolC97:852-856,C201330)CostaCJC,CAlioJ:CSigni.cantChyperopicCshiftCinCaCpatientCwithCextremeCmyopiaCfollowingCsevereChypotoniaCcausedCbyCglaucomaC.lteringCsurgery.CEurCJCOphthalmolC29:CNP6-NP9,C201931)杉山哲也:塩酸ブナゾシン点眼の家兎・脈絡膜組織血流量.眼圧に及ぼす影響.日眼会誌95:449-454,C199132)杉山哲也,徳岡覚,守屋伸一ほか:低眼圧緑内障に対する塩酸ブナゾシン点眼の効果.眼脈流量を中心に.臨眼C45:327-329,C199133)AkaishiCT,CKurashimaCH,COdani-KawabataCNCetal:CE.ectsCofCrepeatedCadministrationsCofCta.uprost,Clatano-prost,CandCtravoprostConCopticCnerveCheadCbloodC.owCinCconsciousCnormalCrabbits.CJCOculCPharmacolCTher26:C181-186,C201034)柴田真帆,杉山哲也,小嶌祥太ほか:原発開放隅角緑内障に対するタフルプロストC3年間点眼の視神経乳頭・形状,視野に及ぼす影響.臨眼69:741-747,C2015(69)あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C917■用語解説■intrachoroidalcavitation(ICC):乳頭の主として下方にみられる扇型の黄色の病変で,OCT所見から脈絡膜内の空洞であることが明らかになった.ICCは高度の乳頭傾斜に伴って起こることが多く,眼軸延長の過程でコラーゲン線維主体である強膜と弾力が,強膜コラーゲンより強いエラスチンを多く含むCBruch膜の間で張力の差を生じ,脈絡膜に間隙が生じ発症すると考えられる.ICCの境界部にはしばしば網膜欠損を伴い,欠損部位を通じて硝子体腔とCICCが交通している.そのような症例では,網膜内層に断裂が生じるために神経線維の障害が生じ,しばしば網膜全層欠損となり,断裂部位に一致する視野障害を約C70%に伴う.いったん,網膜全層欠損に至った症例では,視野障害の進行は停止もしくは緩徐となる.これは網膜が全層欠損しCICCと硝子体腔の交通ができることによりCBruch膜による網膜の内向きの牽引が消失あるいは軽減するためと考えられる.篩状板部分欠損:視神経乳頭のエッジの篩状板が局所的に欠損する病態で,2012年に初めて緑内障眼にて報告された.その後,近視眼でも報告され,乳頭傾斜・乳頭回旋・PPAなどが篩状板部分欠損に関連していた.そのことより,近視眼での篩状板部分欠損は,乳頭の伸展や傾斜などの機械的ストレスが関連している可能性がある.強膜リッジ:Curtin分類CtypeCIXの後部ぶどう腫では,強膜が眼球内方向に急峻に突出し,視神経のすぐ耳側に隆起(リッジ)がある.これを強膜リッジとよび,リッジ部では網膜が過度に牽引され菲薄化している.Akagiらは,強膜リッジが急峻なほど網膜神経線維は薄く,中心視野障害が生じることを報告した.重症例では,リッジ部の網膜神経線維は完全に断裂する場合がある,そのような症例では高度の中心視野障害を生じる.強膜リッジ症例では,視野障害が急速に進行することをしばしば経験する.近視性視神経症:強度近視眼では,しばしば近視性黄斑疾患やコーヌスでは説明できない視野障害を呈する.40~50歳代の比較的若年で発症し完全失明に至ることも多い点で,中心視野障害にとどまる近視性黄斑病変とは予後に大きな違いがある.この病態を近視性視神経症として独立した疾患概念とする考え方がある.