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基礎研究コラム:若返りへのアプローチ

2021年5月31日 月曜日

若返りへのアプローチ若返り(rejuvenation)とは世界中で急速に老年人口が増えています.1950年には65歳以上の高齢者がわずか1億3,000万人(世界人口の5%)であったものが,2050年には16億人(17%)になると予測されており,老化への理解は緊喫の課題です.人生100年時代といわれますが,他の生物をみると寿命は多種多様です.ベニクラゲは不老不死のクラゲとよばれており,寿命を迎えてもポリプに戻り,まったく同一の遺伝子で再び同一個体が生まれます.このようなところに,不老不死のヒントがあるのかもしれません.年齢はchronologicalageとbiologicalageの二つに定義されます.前者はいわゆる「年齢」で,生まれてから何年経ったかを意味します.後者は細胞や組織年齢をさし,いわゆる「体内年齢」と同義です.現在,栄養,運動などさまざまなアプローチでbiologicalageを調整する研究が盛んに行われています.DNAのメチル化は年齢とともに蓄積することが知られており,DNAメチル化から構築された年齢予測因子は「エピジェネティック・クロック」とよばれています.iPS細胞の樹立に必要な四つの転写因子(山中因子:OSKM)がinvitroで加齢に関連した表現型を改善させ1),invivoにおいて高齢の野生型マウスの代謝疾患や筋損傷からの回復を改善させたこと2)は記憶に新しいところです.このようなエピジェネティック・クロックの制御を介した長寿や若返りの研究が注目されています.眼科領域ではリプログラミグによる眼科領域でのアプローチが最近二つ報告されています.一つは低分子化合物で細胞をリプログラミングすることで視細胞を作製する,再生医療的アプローチでの介入3),もう一つは,山中因子であるOct4,Sox2,Klf4(OSK)の三つの転写因子を導入し,エピジェネティック・クロックを制御することで,老化し機能低下したものを若返りさせる方法です4).後者では,マウス視神経損傷モデル用いてAAVベクターでOSKを導入し,軸索の再生が確認されました.ポイントは,DNAのメチル化状態がOSKの投与により損傷前のレベルにまで戻っていたことです.また,高眼圧緑内障モデルでは,OSKの投与で網膜神経節細胞に対応するERGの回復を認め,さらに視力の改善も確認されました.また,若年マウスと比べると12カ月齢マウスで上(75)0910-1810/21/\100/頁/JCOPY北澤耕司京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学緑内障モデル眼AAVベクター図1若返り(rejuvenation)のアプローチエピジェネティックを変化させるOct4,Sox2,Klf4(OSK)を導入することで,緑内障モデルマウスで機能的,遺伝子発現的に回復が観察された.がっていた遺伝子の90%がOSKの導入により若年マウスのレベルに回復しており,DNAメチル化の変化が高齢者の視力回復に機能的な役割を果たしている可能性があると結論づけています.今後の展望エピジェネティック・リプログラミングは,組織の修復や年齢に関連する機能低下の回復を促進する可能性があることを示唆しています.一方で,細胞がどのように若々しいエピジェネティック情報をコードし,保存しているのだろうかという疑問は残ります.Digitaltransformationによって,個別化された疾患特異的な方法で,先手を打った健康増進のための介入が可能となると予測されます.このような老化プロセスを調節しようとする研究は今後ますます加速するでしょう.文献1)LapassetL,MilhavetO,PrieurAetal:Rejuvenatingsenescentandcentenarianhumancellsbyreprogram-mingthroughthepluripotentstate.GenesDev25:2248-2253,20112)OcampoA,ReddyP,Martinez-RedondoPetal:Invivoameliorationofage-associatedhallmarksbypartialrepro-gramming.Cell167:1719-1733,e1712,20163)MahatoB,KayaKD,FanYetal:Pharmacologic.broblastreprogrammingintophotoreceptorsrestoresvision.Nature581:83-88,20204)LuY,BrommerB,TianXetal:Reprogrammingtorecoveryouthfulepigeneticinformationandrestorevision.Nature588:124-129,2020あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021555

硝子体手術のワンポイントアドバイス:強度近視眼に生じた増殖糖尿病網膜症(中級編)

2021年5月31日 月曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載216216強度近視眼に生じた増殖糖尿病網膜症(中級編)池田恒彦大阪回生病院眼科●はじめに近視は糖尿病網膜症の抑制因子とされており,その要因として網膜の菲薄化による酸素需要の減少,近視進行による眼血流の遅延や減少,早期後部硝子体.離などがあげられる.また,後部ぶどう腫を有するような強度近視眼では,重篤な増殖糖尿病網膜症(proliferativedia-beticretinopathy:PDR)が発症することはまれとされている.筆者らは以前に後部ぶどう腫を有する強度近視眼に硝子体出血と牽引性網膜.離をきたし,硝子体手術に至ったPDRの1例を経験し報告したことがある1).●症例59歳,女性.両眼に後部ぶどう腫を伴う強度近視とPDRを認め,汎網膜光凝固術を開始したが,経過中に右眼に網膜前出血(図1a),左眼に硝子体出血と牽引性網膜.離が生じた(図1b).蛍光眼底造影検査では,両眼に広範な無灌流領域と網膜新生血管からの蛍光漏出があり,左眼は後部ぶどう腫の下方に線維血管性増殖膜を認めた(図1b,矢印).超音波Bモードでは,左眼に後部ぶどう腫に沿って硝子体牽引,浅い牽引性網膜.離がみられた(図2,矢印).硝子体手術の術中所見として,後部ぶどう腫の辺縁に沿って線維血管性増殖膜と強固な網膜硝子体癒着があり,増殖膜処理後の人工的後部硝子体.離作製時に後部ぶどう腫の辺縁に医原性裂孔を形成した.後部ぶどう腫内には肥厚した後部硝子体膜が認められ,硝子体鑷子で網膜との癒着を解離した.その後,気圧伸展網膜復位術,眼内光凝固術を施行し術後網膜は復位した.●後部ぶどう腫を伴う増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の問題点本症例の増殖膜は通常のPDRのように血管アーケー(73)0910-1810/21/\100/頁/JCOPY図1術前の眼底右眼(a)は鼻側に網膜前出血がみられた.左眼(b)は後部ぶどう腫(点線)を認め,下方に硝子体出血および血管アーケードに沿って線維血管性増殖膜(..)を認め,その周囲に牽引性網膜.離が生じていた.(文献1より引用)図2術前の左眼超音波Bモード所見後部ぶどう腫に沿って硝子体牽引,増殖膜(..)および牽引性網膜.離がみられた.(文献1より引用)ド近傍にみられたが,これは後部ぶどう腫の辺縁に隣接していた.また,牽引性網膜.離は増殖膜近傍だけでなく後部ぶどう腫内にも一部及んでおり,後部ぶどう腫の形状が関与していた可能性も考えられた.また,後部ぶどう腫内では後部硝子体.離が生じておらず,肥厚した後部硝子体膜が網膜と強固に癒着していた.後部ぶどう腫を有するPDR症例に対して硝子体手術を施行する際には,通常のPDRの病態に加えて,強度近視眼の異常な網膜硝子体癒着が加味されるため,硝子体処理時に細心の注意が必要である.文献1)村井克行,植木麻理,南政宏ほか:硝子体手術に至った後部ぶどう腫を有する増殖糖尿病網膜症の1例.臨床眼科59:1729-1733,2005あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021553

抗VEGF治療:未熟児網膜症へのラニビズマブの適応拡大

2021年5月31日 月曜日

●連載107監修=安川力髙橋寛二87.未熟児網膜症へのラニビズマブの野々部典枝名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター適応拡大活動期の未熟児網膜症に対する治療は,長く網膜光凝固術が第一選択であった.2019年C11月にラニビズマブが抗CVEGF薬として初めて未熟児網膜症に対する効能追加の承認を得たことで,視機能予後の改善をもたらす可能性が期待される.治療の選択肢が増え,最適な治療方針の確立や長期安全性の確認が待たれる.レーザー網膜光凝固術の課題レーザー網膜光凝固術は,長く未熟児網膜症(retinop-athyofprematurity:ROP)に対する標準治療として失明予防に寄与してきた.しかし,光凝固単独では鎮静化できない重症例も存在し,いったん網膜.離に進行すれば,たとえ手術で復位を得ても重篤な視力障害の原因となる.また,zoneIROPのような血管発育の悪い例では,後極まで密な凝固斑を生じて瘢痕期の黄斑部形態異常や強度近視などを誘発し,良好な視機能を得られない場合がある.晩期には裂孔原性網膜.離や白内障,緑内障などの合併症を生じる例があり,光凝固に代わる新たな治療方法が模索されてきた.CROPに対する抗VEGF薬の大規模試験2011年,BEAT-ROPstudyによってとくにCzoneCIROPに対するベバシズマブの有効性が報告1)され,抗VEGF薬が適応外投与ながら世界的に広く使用されるようになった.そして,RAINBOW(ranibizumabcom-paredCwithClaserCtherapyCforCtheCtreatmentCofCinfantsCbornCprematurityCwithCretinopathyCofprematurity)Cstudy2)を経て,2019年C11月に抗CVEGF薬として初めてCROP治療にラニビズマブ硝子体内注射(intravitrealranibizumab:IVR)が承認された.CRAINBOWstudyは,国内外のCROP患者C225名を対象とした第CIII相臨床試験である.IVR0.1Cmgもしくは0.2Cmgとレーザー治療を比較し,24週後の治療成功率(両眼ともに活動性のCROPがなく,かつ不良な形態学的転帰もない患者の割合)を評価している.治療成功率はIVR0.2mg群で80%,レーザー群で66%となり,感度分析で有意差がみられたためCIVRC0.2Cmg/0.02CmlがCROPへの効能追加の承認を得ることとなった.再発率(初回治療以外の追加治療を治療開始C24週以内に実施した患者の割合)はIVR0.2mg群で31.1%,レーザー群でC18.9%であり,IVRで再発率が高い.IVR(71)C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY図1実際の穿刺(左眼)症例は修正C36週時.結膜出血がみられる.0.2Cmg群における再投与までの期間はC55日(中央値)であった.おもな副作用はいずれの群も結膜出血(図1)であったが,IVR0.2Cmg群で白内障がC1眼に生じている.血中CVEGF濃度はC14日目,28日目で低下がみられず,短期間で回復している.現在長期継続試験が行われており,5歳までの経過を追跡して眼や全身合併症の有無などについて検討する予定である.CROPに対する抗VEGF療法の実際ROPに対するラニビズマブ承認後C1年が経過し,初回治療としてCIVRを行う機会が増加している(図2).2020年C12月の『日本眼科学会雑誌』にCROPに対する抗CVEGF療法の手引き3)が掲載され,注射手技や経過観察の方法について詳しく述べられている.しかし,IVRとレーザー網膜光凝固の選択については現時点で明確な基準がない.当院では現在初回治療はほぼ全例がラニビズマブである.再発率の高さや頻回の経過観察は問題であるが,たとえ追加治療が必要になったとしても,修正週数が早い時期に行う初回治療での治療時間を短くし,黄斑近傍への光凝固を避けるメリットが大きいあたらしい眼科Vol.38,No.5,2021C551b図2ラニビズマブ投与例(右眼)在胎C25週,出生体重C840Cgの児.修正C33週で両眼にCROPを発症.Ca:修正C35週,zoneCII,stageC3(+)にてCIVR施行.Cb:投与7日後.後極の拡張蛇行は改善し,増殖も消退傾向がみられる.図3ラニビズマブ投与後の再発b(左眼)在胎C26週,出生体重C800Cgの児.修正C32週で両眼にCROPを発症.Ca:修正C36週,zoneCII,stageC3(+)にてCIVR施行.Cb:IVR後12週目.ややのびた血管先端部に再びCridgeを形成したが,追加治療を要さず経過観察のみで鎮静化した.と考えるためである.また,重症のCaggressive-posteri-orROP(APROP)例では,IVRを先に施行することで水晶体血管膜の怒張や散瞳状態が改善し,光凝固も施行しやすくなることが多い.再発に対するリスクファクターとして,ベバシズマブでの報告では,在胎週数が短い,出生体重が軽い,壊死性腸炎,入院期間が長い,CzoneI,APROPがあげられている4).RAINBOWstudyでの再発率は追加治療を要した割合なので,治療に至らない程度の再発はこれより多い(図3).初回IVRを選択することで追加治療までの時間に少しでも全身状態が整い,網膜血管が伸びれば,その後レーザーを選択しても鎮静に耐えられる可能性があり,網膜の凝固範囲を減らして黄斑を守るとともに,あとで近視化しにくく有利である.追加治療の選択は再発時期(ラニビズマブは初回投与からC1カ月経過していないと再投与できない),退院時期や病院へのアクセス,再発時点での血管先端部の位置によって選択している.再発時の網膜血管先端部がまだCzoneIやCzoneCIIposteriorのような状態であればラニビズマブの再投与を選択することが多い.今後の課題現在CROPに対するアフリベルセプトを用いた第CIII相臨床試験(NCT04004208)も行われており,今後,抗C552あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021VEGF薬の選択肢が増える可能性もある.とくに抗VEGF薬投与後に周辺部の血管異常が残存する5)ことがあり,最適な治療・経過観察の方法確立にむけて,多くの長期経過の蓄積が必要である.診療報酬については診断群分類包括評価(DPC)を導入している施設では,高額なラニビズマブを使用することでコスト面で問題が生じるため,検討する必要がある.文献1)Mintz-HittnerCHA,CKennedyCKA,CChuangCAZCetal;CBEAT-ROPCooperativeCGroup:E.cacyCofCintravitrealCbevacizumabCforCstageC3+retinopathyCofCprematurity.CNEnglJMedC364:603-615,C20112)StahlCA,CLeporeCD,CFielderCACetal:RanibizumabCversusClaserCtherapyCforCtheCtreatmentCofCveryClowCbirthweightCinfantsCwithCretinopathyCofprematurity(RAINBOW):anCopen-labelrandomizedcontrolledtrial.LancetC394:1551-1559,C20193)未熟児網膜症眼科管理対策委員会:未熟児網膜症に対する抗CVEGF療法の手引き.日眼会誌124:1013-1019,C20204)Mintz-HittnerCHA,CGeloneckCMM,CChuangAZ:ClinicalCmanagementCofCrecurrentCretinopathyCofCprematurityCfol-lowingCintravitrealCbevacizumabCmonotherapy.COphthal-mologyC123:1845-1855,C20165)HarperCA3rd,WrightLM,YoungRCetal:FluoresceinangiographicCevaluationCofCperipheralCretinalCvasculatureCafterCprimaryCintravitrealCranibizumabCforCretinopathyCofCprematurity.RetinaC39:700-705,C2019(72)

緑内障:緑内障濾過手術モデルを用いた研究

2021年5月31日 月曜日

●連載251監修=山本哲也福地健郎251.緑内障濾過手術モデルを用いた研究小嶌祥太大阪医科薬科大学三島南病院眼科緑内障濾過手術モデル眼を用いた研究は緑内障治療発展のために必要不可欠であるが,使用動物,眼圧測定法,濾過手術の方法,濾過胞や組織の分析方法など多くの点を考慮して最適な実験系を組み立てていく必要があり,さらに最終的な結果の解釈には人眼との違いを熟慮して結論を出す必要がある.●はじめに緑内障手術のゴールドスタンダードはマイトマイシンCなど線維芽細胞増殖抑制作用のある薬剤を併用した線維柱帯切除術であり,その成功率向上のための濾過胞における瘢痕形成の抑制や眼内炎などの重篤な合併症の克服の意味からも,さまざまな検討が必要とされている.新しい方法については,まず緑内障濾過手術モデル眼の使用による効果と安全性の検討が求められる.C●使用動物瘢痕形成の組織学的検討にはラットなど小動物が用いられることもあるが,精密な眼圧測定や詳細な組織学的検討のためには,眼球形状と大きさがヒトに類似したサルなどの動物の使用が有利である.実際には取り扱いや購入価格の手軽さからウサギを用いた報告が多い.筆者らは,1)組織瘢痕化に関連するキマーゼ活性がヒトと同様に存在1)し,2)房水排出経路がヒトと比較的類似,かつC3)ヒト同様に緑内障治療が行われている2)という理由から,おもにイヌを用いて実験を行なっている.C●眼圧測定動物眼での眼圧測定にはさまざまな報告3)があり,カニューレ前房内挿入による測定がもっとも正確だと考えられるが,煩雑性や侵襲などの問題がある.ヒトで用いられるCTono-penやCICareは簡便で測定者による差異が少ないが,角膜厚や剛性,曲率半径といった測定に影響を与える因子が動物種によって異なっているため注意が必要である.現在筆者らはおもにイヌに使用可能な機器(図1)を使用している.C●濾過手術モデル理想的にはヒトと同様の手技で行うべきであり,実際にそうした報告も多い.ただし動物眼の場合,ヒトよりも急速に瘢痕形成が進行して濾過が不成功になること(69)C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY図1イヌの眼圧測定に用いている眼圧計a:イヌおよびネコ用のCTono-PenCAVIACVET(Reichert社).b:イヌ,ネコ,ウマ用に調整されたCTonoVetCreboundtonometer(CIcareFinland社).や,瘢痕形成が強膜開窓部に生じやすいことなどが報告4)されている.したがって,長期的な観察には,房水流出量増加による流出路閉塞抑制を期待して,強膜弁を作製せず強膜開窓(と周辺虹彩切除)のみ行うこともある.さらに,たとえばイヌでは強膜が硬く虹彩などからの出血が多いことから,個体間での術式の差異を最小限にとどめる意味からも,より簡便な方法を用いることも考慮する.C●濾過胞・組織の検討ヒト用の光干渉断層計や超音波生体顕微鏡(図2)による経時的観察5)が可能である.ただし動物種によっては結膜下組織が厚いため光干渉断層計による観察が困難なことがある.組織学的検討においては眼球摘出後に詳細な検討が可能であり,動物実験ならではのさまざまな知見5)を得ることが可能である(図3,4).C●おわりに緑内障濾過手術モデル眼を用いた実験は,前述のようにヒトと異なる部分が多いためしっかりとした対照の設定が肝要であり,結果の解釈にも十分な検討が必要となる.あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021C549図2ウサギ緑内障濾過手術モデル眼(術12週後)における濾過胞の超音波生体顕微鏡像UD-800UltrasonicA/BScannerandBiometer(トーメーコーポレーション)を用い,マルチキナーゼ阻害薬であるレゴラフェニブを術後点眼した眼(Ca)と通常のマイトマイシンCC術中使用眼(Cb)を術C12週後に比較すると,濾過胞壁(⇔)はCbのほうが薄かった.スケールバー:1mm.(文献C5より転載)図3ウサギ緑内障濾過手術モデル眼(術12週後)における結膜および結膜下組織像(アザン染色)色抽出法を用いてレゴラフェニブ点眼眼(Ca)とマイトマイシンCC術中使用眼(Cb)のコラーゲン(緑部分)を比較したところ,bがCaより有意に密度が低かった.スケールバー:1,000Cμm.(文献C5より転載)図4ウサギ緑内障濾過手術モデル眼(術12週後)における結膜下組織における毛細血管(抗ビメンチン抗体による免疫染色)レゴラフェニブ点眼眼(Ca)と比較しマイトマイシンCC術中使用眼(Cb)では毛細血管密度が有意に低かった.スケールバー:100Cμm.(文献C5より転載)CintraocularCpressureCinClaboratoryCanimals.CExpCEyeCRes文献141:74-90,C20151)MiyazakiM,TakaiS:Roleofchymaseonvascularprolif-4)DesjardinsCDC,CParrishCRKC2nd,CFolbergCRCetal:WoundCeration.CJCReninCAngiotensinCAldosteroneCSystC1:23-26,Chealingafter.lteringsurgeryinowlmonkeys.ArchOph-2000CthalmolC104:1835-1839,C19862)KomaromyCAM,CBrasCD,CEssonCDWCetal:TheCfutureCof5)NemotoCE,CKojimaCS,CSugiyamaCTCetal:E.ectsCofCrego-canineCglaucomaCtherapy.CVetCOphthalmolC22:726-740,Crafenib,CaCmulti-kinaseCinhibitor,ConCconjunctivalCscarringCinCaCcanineC.ltrationCsurgeryCmodelCinCcomparisonCwith20193)MillarCJC,CPangIH:Non-continuousCmeasurementCofCmitomycin-C.IntJMolSciC21:63,C2019550あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021(70)

屈折矯正手術:カスタム角膜クロスリンキング

2021年5月31日 月曜日

監修=木下茂●連載252大橋裕一坪田一男252.カスタム角膜クロスリンキング神谷和孝北里大学医療衛生学部視覚生理学従来の角膜クロスリンキング(CXL)は,角膜中央部に均一な紫外線を照射していた.円錐角膜の構造的脆弱性は全体ではなく,局所的な菲薄化部位に由来することが示唆されており,角膜形状解析データを基に選択的に紫外線を照射するCcustomizedCXLが開発されている.進行予防だけでなく,一定の角膜形状改善効果も有することから,今後普及が期待される.C●はじめに円錐角膜は,角膜傍中央部が進行性に菲薄化して前方突出し,不正乱視や近視化により視機能低下をきたす疾患であり,日常臨床の現場において遭遇しやすい疾患の一つである.本疾患は長期的に進行を認めることが多く,患者の視機能維持の観点から,早期発見および進行予防が重要な課題となっている.角膜クロスリンキング(cornealcross-linking:CXL)は,角膜実質のコラーゲン線維間の架橋構造を強めることにより角膜全体の剛性を上げる治療であり,現在国内では未承認治療となっている.波長C370Cnmの紫外線で励起された光感受性物質であるリボフラビン(ビタミンB2)が酸素分子との反応により,活性酸素の一種である一重項酸素を産生し,角膜実質コラーゲン線維の架橋結合を増加させることで(図1),角膜自体の剛性が上がり進行を抑制する,唯一のエビデンスを有する治療である.CXLの標準術式としてCSeilerらが提唱したドレスデン法が広く知られている.この方法は,8Cmm径で角膜上皮を.離し,リボフラビンを角膜に浸透させたのち,C3CmW/cm2のエネルギーでC370Cnmの長波長紫外線をC30分間照射し,総エネルギーC5.4CJ/cmC2とするものである.そのほか,近年高出力にて照射時間を短縮したCacceler-atedCXLや角膜上皮を温存するCtransepithelialCCXL(Epi-onCXL)も応用されている.従来のCCXLは本疾患の進行予防に有効であったが,術後角膜形状や屈折変化は予測困難であった.近年の研究から,角膜形状解析データを基に選択的に紫外線を照射するCcustomizedCXLが考案されており,角膜強度を上げ,疾患の進行を抑制するだけでなく,照射パターンの工夫によって角膜形状を最適化し,視機能を向上する可能性が考えられる.本稿では,新たなCcustomizedCXLの概要や従来のCCXLとの相違について紹介する1).(67)C0910-1810/21/\100/頁/JCOPYOHOPOH2COHHCOHHCOHH2CUVA(365nm)活性酸素H3CNNHNOCHOHH3CNORivo.avin(VitaminB2)図1CXLの奏効機序紫外線で励起されたリボフラビンが酸素分子との反応により一重項酸素を産生し,コラーゲン線維の架橋結合を増加させる.C●開発の経緯昨今のブリルアン散乱を用いた研究1)から,円錐角膜の脆弱性は,角膜全体の剛性に由来するのではなく,局所的な角膜脆弱性に起因して,進行を生じる可能性が高いことが報告されている.また,有限要素法を用い構造力学特性に関する研究2)から,角膜の剛性を局所的に変化させることによって近視,乱視,遠視矯正を行いうる可能性が指摘されている.これらをふまえ,従来の方法のように紫外線を広範囲に均一に照射するのでなく,角膜形状解析データを基に,構造力学的な解析から脆弱化を生じている領域を中心として選択的に紫外線を照射することで,角膜剛性を上げるだけでなく,視機能向上も同時に行うCcustom-izedCXLが考案された.C●手術の実際現在CcustomizedCXLが可能な装置は,MosaicSystem(Avedro社)のみであり,本装置を用いて行う.エキシマレーザーと同様に眼球運動を追尾するアイトラッキングシステムも搭載されている.まず点眼麻酔を行い,0.25%リボフラビン点眼を約C10分間行い,角膜あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021C547図2CustomizedCXLの選択的紫外線照射パターン角膜後面高さ最大位置を中心として,3段階の同心円状の紫外線照射(7.2,10,15CJ/cm2)を行う.内に十分に浸透させる.角膜表面上に残るリボフラビンはCBSSなどで洗い流す.筆者の施設では通常角膜上皮.離を行わないCEpi-on法で施行している.その後,酸素ゴーグルを着用させ,ゴーグル内の酸素濃度をC95%以上となることを確認したのち,術前の角膜形状解析データを基に,角膜後面高さ最大位置を中心としてC3段階の同心円状の紫外線照射(7.2,C10,C15CJ/cm2)を行う(図2).その後,コンタクトレンズを装用させ,手術を終了する.C●臨床成績北里大学病院において進行性円錐角膜に対してCcus-tomized(Epi-onCO2-supplemented)CXLを施行し,術後C1年経過観察可能であったC42眼(年齢C20.3C±5.2歳,男性C30眼,女性C12眼)を対象として,術前・術後C1年の時点における視力,屈折度数,乱視度数,角膜形状変化,合併症を検討した.その結果,裸眼視力(logMAR)はC0.87C±0.53からC0.78C±0.56へ(WilcoxonCsigned-rankCtest,Cp=0.016),矯正視力はC0.19C±0.36からC0.11C±0.31へ(p=0,004),それぞれ有意に改善した.等価球面度数は-3.47C±3.87Dから-2.80±3.02Dへと有意な変化を認めず(p=0.259),乱視度数はC4.50C±2.96DからC3.27C±2.61Dへと有意に軽減した(p=0.004).最大角膜屈折力はC53.04C±7.91DからC52.31C±7.50Dへと有意な平坦化を生じた(p<0.001)(図3).病期別では,軽度より重度の症例が平坦化しやすい傾向にあった.全例,経過観察中に進行は認めず,17眼(40%)に一過性上皮下混濁を認めるも保存加療にて消失し,重篤な合併症は認めなかった.以上より,customizedCXLは裸眼・矯正視力が有意に向上し,乱視度数が有意に軽減し,角膜形状が有意なフラット化を生じる術式であることが示唆された.C●従来のCXLとの比較海外の既報によると,Seilerら4)は,40例40眼の進C548あたらしい眼科Vol.38,No.5,202155.0最大角膜屈折力(D)54.053.0453.052.3752.3252.2552.3152.051.050.0術前1カ月3カ月6カ月1年術後期間図3CustomizedCXL術前後における最大角膜屈折力の経時変化術前C53.04C±7.91Dから術後C52.31C±7.50Dへと有意にフラット化した.行性円錐角膜に対してCcustomizedCXLと従来CCXLを無作為割り付けのうえで術後C1年経過を検討したところ,customizedCXLは,従来のCCXLより最大角膜屈折力が有意に減少し,角膜不正形状指数が有意に改善し,角膜上皮治癒期間も有意に短縮されたと報告している.Nordstromら5)は,37例C50眼の進行性円錐角膜に対して同様の検討を行い,customizedCXLでは有意な球面度数の減少と有意な視力向上を認めた一方,従来のCXLでは視力・屈折が有意な変化を認めず,両手術とも角膜内皮細胞への有意な影響はなかったと報告している.自験例における検討でもほぼ同様の結果が得られている.今後長期データの蓄積は必要であるが,理論的な背景からはポテンシャルは高く,一歩先をめざすCCXLとして注目しておきたい治療法である.文献1)KamiyaCK,CKanayamaCS,CTakahashiCMCetal:VisualCandCtopographicCimprovementCwithCepithelium-on,Coxygen-supplemented,CcustomizedCcornealCcross-linkingCforCpro-gressivekeratoconus.JClinMedC9:3222,C20202)ScarcelliG,BesnerS,PinedaRetal:Biomechanicalchar-acterizationofkeratoconuscorneasexvivowithBrillouinmicroscopy.CInvestCOphthalmolCVisCSciC55:4490-4495,C20143)SinhaCRoyCA,CRochaCKM,CRandlemanCJBCetal:InverseCcomputationalCanalysisCofCinCvivoCcornealCelasticCmodulusCchangeCafterCcollagenCcrosslinkingCforCkeratoconus.CExpCEyeResC113:92-104,C20134)SeilerTG,FischingerI,KollerTetal:Customizedcorne-alcross-linking:One-yearCresults.CAmCJCOphthalmolC166:14-21,C20165)NordstromM,SchillerM,FredrikssonAetal:Refractiveimprovementsandsafetywithtopography-guidedcornealcrosslinkingCforkeratoconus:1-yearCresults.CBrJOph-thalmolC101:920-925,C2017(68)

眼内レンズ:瞳孔拡張器具の術中トラブル(前房出血)

2021年5月31日 月曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋留守良太414.瞳孔拡張器具の術中トラブル(前房出血)トメモリ眼科・形成外科現在,国内で認可された瞳孔拡張リングはCMST社のCMalyuginCRing2.0とCBeaverVisitec社のCI-RingのC2種類である.海外で作成されたそれぞれの説明書通りに国内の患者に使用すると,前房出血や角膜内皮障害などの合併症を併発する可能性がある.そのため挿入,抜去は患者に応じて対応することが望ましい.今回は挿入時に前房出血を起こすケースを解説する.●はじめに小瞳孔や術中に進行性の縮瞳を起こす術中虹彩緊張低下症候群(intraoperativeC.oppyCirissyndrome:IFIS)は,術後成績に大きく影響する要因である.近年は白内障手術においても術後裸眼視力改善を目標とすることも多く,いかに小瞳孔であっても確実に手術を終了し短期間で改善する必要がある.そこで小瞳孔,IFISの両方に対応できる利便性から,瞳孔拡張リングを多くの術者が選択するようになってきた.現在,わが国で認可されている瞳孔拡張リングはCMST社のCMalyuginRing2.0(以下,M-Ring)とCBeaverVisitec社のCI-Ringであるが,両方とも海外で作製されたもので,推奨される使用方法は,眼球が小さい日本人患者には適さないケースも多い.無理に使用説明書通りに使用すると,挿入時の前房出血,抜去時の角膜内皮障害,虹彩損傷,脱出といった術中トラブルの原因となる.今回はCM-RingとCI-Ring挿入時の前房出血について,原因と対処法を解説する.C●瞳孔拡張リングによる前房出血M-Ring,I-RingともにC4カ所のスクロール(図1)やチャンネル(図2)とよばれる部分に瞳孔縁を挟み込み,6.0Cmm以上の散瞳を確保する構造になっている.3時,6時,9時のスクロール,チャンネルを装着後,最後のC4カ所目を装着するときに虹彩,隅角より前房出血を起こすことがあり,術翌日まで観察されることが多く,術後眼圧上昇,瞳孔変位の原因となる避けたいトラブルの一つである.出血の原因としては,小さな瞳孔に対してC4カ所目のスクロール,チャンネルを無理に押し込み装着しようとすると,M-Ringの場合,12時部の虹彩隅角が過伸展(65)C0910-1810/21/\100/頁/JCOPYし出血を起こす(図1).このときC6時部のスクロールはほとんど厚みがないため虹彩がたわみ,隅角を圧迫することはない.I-Ringも同様にC12時部から出血することもあるが,チャンネルに厚みがあるため,6時部の隅角を圧迫または切断することで出血を起こす(図2).C●前房出血の回避方法このように瞳孔拡張リングの種類によってストレスのかかる部位は異なり,出血場所に特徴があるが,どちらのケースも過度な虹彩,隅角の伸展が原因である.使用説明書のC1本のフックだけを使用する挿入方法では,このような前房出血を回避することはむずかしいことから,筆者は以前よりCdoubleChooktechnic(以下,Dテクニック)を提案してきた.これはC2本のフック(図3)を用いて瞳孔拡張器具を電車のパンタグラフが縮むように挿入する方法である.3カ所のスクロール,チャンネルを装着した状態で,12時部の瞳孔縁が水晶体中心部に達していない場合は,使用説明書通りにC1本のフックで安全に挿入することが可能である.しかし,12時部の瞳孔縁が水晶体中心に達している場合は,Dテクニックを行うことで隅角に対し不必要な負荷がかかることを図1M.Ringの12時部隅角からの前房出血矢印はCM-Ringのスクロール.図2I.Ringの6時部隅角からの前房出血矢印はCI-Ringのチャンネル.あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021C545図3瞳孔拡張操作用のフック上:トメC1フック(M-127T,イナミ),下:トメC2プッシュフック(M-128T,同).図4術中写真上段:瞳孔縁が水晶体中心より遠い状態.Singlehookで操作可能.下段:瞳孔縁が水晶体中心に近い状態.Doublehooktechnicで安全に操作できる.回避できる(図4).I-Ringも同様の条件で挿入方法を文献変更する.この場合はCBeaverVisitec社から販売され1)MalyuginB:TheCIQ-Ring.CACnewCsolutionCtoCphaco-ている専用フックをC2本使用する.Cemulsi.cationCinCpresenceCofCsmallCpupil.CCataractCRefractSurgTodaySeptember:87-89,2006C●おわりに2)MalyuginB:SmallCpupilCphacosurgery:aCnewCtech-nique.AnnOphthalmol(Skokie)C39:185-193,C2007瞳孔拡張器具によるトラブルは手術経験を積むより3)ChangDF:UseCofCMalyuginCpupilCexpansionCdeviceCforも,安全な挿入抜去方法を理解することで回避することintraoperative.oppy-irissyndrome:resultsin30consec-が可能である.Cutivecases.JCataractRefractSurgC34:835-841,C2008

コンタクトレンズ:ハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識 円錐角膜・ハードコンタクトレンズの処方(2)

2021年5月31日 月曜日

・・提供コンタクトレンズセミナー今だからハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識小玉裕司小玉眼科病院12.円錐角膜・ハードコンタクトレンズの処方(II)■はじめに前回のセミナーでは,軽度円錐角膜に対する3点接触法によるハードコンタクトレンズ(HCL)処方について解説した.今回のセミナーでは,円錐角膜が進行して3点接触法では対処できなくなった場合のHCL処方について解説する.円錐角膜が進行するにつれてフォトケラトスコープ(photokeratoscope:PKS)のプラチドリング像の角膜中央部における歪みが大きくなり,角膜全体に写る像の範囲が狭くなる(図1).3点接触法ではタイトになってしまう症例では,レンズと角結膜が上方と中央のみで接触する2点接触法にてHCLを処方する.2点接触法にてもレンズが安定せず良好な視力が得られなかったり,角膜中央部に慢性的な機械的角膜上皮障害が生じるような症例では,多段カーブHCLを試してみる.また,HCLの異物感に耐えられない症例や前述した機械的角膜上皮障害が生じる症例には,1日使い捨てソフトコンタクトレンズ(SCL)を装用させた上からHCLを装用するピギーバックレンズシステムを採用することもある.■2点接触法2点接触法におけるトライアルレンズのベースカーブ(basecurve:BC)選定についても,前回のセミナーで解説した方法にて決定する.角膜形状をPKSで観察したときに,プラチドリング像が角膜全体のどの範囲まで写っているかによってBCを決定する.PKSの最外周リングの大きさが角膜径と同じ場合は8.00mm前後,2/3の場合は7.50mm前後,1/2の場合は7.00mm前後のBCのレンズを選択する.図2は初診時に他医にて処方されたHCLで視力はLV=(0.3×7.40/-5.75/8.8)であった.装用感も悪く,レンズはタイトであった.この症例のPKSは図3のように最外周リングの大きさが角膜径とほぼ同じであったため,BC8.00前後のトライアルレンズを選択すると,レンズの動きはよくなり,視力もLV=(1.2p×7.95/-2.50/8.8)と改善した(図4).(63)0910-1810/21/\100/頁/JCOPY図1進行した円錐角膜角膜中央部のプラチドリング像の歪みが大きくなり,角膜全体に写る像の範囲が狭くなる(右側・左眼).■ラージサイズHCLによる2点接触法図5は他医にて2点接触法で処方された図1の症例の左眼であるが,レンズがはずれやすい,違和感が強いという訴えがあった.視力もLV=(0.4×7.60/-3.00/8.8)とあまりよくはなかった.ただ,フルオレセインパターンで見るかぎりは比較的上手に処方されているように思える.そこでレンズサイズを大きくして2点接触法で処方してみると,レンズのはずれやすさも装用感も改善し,視力もLV=(1.0×7.70/-2.00/10.0)と大幅に向上した(図6).このようにはずれやすく安定性が悪い場合は,上眼瞼にてHCLを支持できるようにラージサイズのHCLを選択するのも一つの方法である.■多段カーブHCL球面HCLでは装用感の改善が得られない,あるいは角膜頂点近傍の上皮障害や角膜上方のレンズエッジによる上皮障害が強い場合には,多段カーブHCLを試してみる(図7).ただし,多段カーブHCLは光学径がやや狭く,センタリング不良例では,球面HCLよりも矯正視力は劣る.■ピギーバックレンズシステムHCLの異物感に耐えられない,あるいは角膜頂点近傍の上皮障害が強いなどの場合に,1日使い捨てSCLあたらしい眼科Vol.38,No.5,2021543図2進行した円錐角膜に3点接触法で処方されたHCLベベル幅は狭くてアピカル・タッチではあるが,全体としてスティープな印象を受ける.レンズの動きは非常にタイトであった.図5強度円錐角膜に他医にて2点接触法で処方されたHCL(図1の症例の左眼)アピカル・タッチを呈しており,フルオレセインパターンも悪くはないが,レンズの動きが不安定で,それがレンズをはずれやすくしており,視力も不安定で装用感も不良にしている.を装用した上にHCLを装用させるピギーバックレンズシステムを採用することがある.図8の症例は初診時にフルオレセインパターンによるフィッティング判定では良好と思われたが,視力はRV=(0.6×8.00/-2.25/8.8),LV=(0.6×7.90/-1.50/8.8)と予想外に悪く,またHCL装用による異物感を強く訴えた.HCL上のレチノスコープによるオーバースキアでは右眼-3.75DAx90図6図5の症例にラージサイズHCLを2点接触法で処方HCLの安定性が増し,装用感,視力ともに改善した.図3図2の症例のPKS像最外周リングの大きさは角膜径とほぼ同じであった.図7多段カーブHCL球面HCLでは角膜中央部近傍に角膜上皮障害が発生して,視力,装用感が不良の場合には,多段カーブHCLを処方することで改善する症例がある.図42点接触法図2の症例に2点接触法でHCLを処方した.レンズの動きは改善して視力も向上した.図8ピギーバックレンズシステムHCLでは異物感が強く,しかも残余乱視で視力が出ない症例に,乱視用1日使い捨てSCL装用上にHCLを装用させることで,装用感と視力の改善が得られた.°,左眼-1.00DAx90°の残余乱視が明らかになった.そこで乱視用1日使い捨てSCLを用いたピギーバックレンズシステムを試してみた.最終視力はRV=(1.2×HCL(8.50/-1.0/14.5/-1.75Ax90°),LV=(1.0×HCL(8.50/-1.0/14.5/-0.75Ax90°)と良好な視力が得られてHCL装用も可能となった(図8).

写真:白内障術後早期に生じた角膜白色沈着

2021年5月31日 月曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦444.白内障術後早期に生じた角膜白色沈着鍵谷悠福岡秀記京都府立医科大学大学院医学研究科視機能再生外科学図2図1のシェーマ図1紹介受診時の前眼部写真角膜中央やや下方に沈着を認める.以前あった上皮欠損に一致した形状であると考えられる.図3フルオレセイン染色角膜白色沈着上の上皮欠損を認めた.図4最終受診時の前眼部写真複数回の角膜掻爬後にCPTKを施行し,瞳孔領の透明性を得た.(61)あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021C5410910-1810/21/\100/頁/JCOPY症例は88歳,女性.両眼白内障と右眼加齢黄斑変性にて経過観察されていた.角膜内皮細胞密度は両眼とも2,700/mm2程度であり,角膜に異常はなかった.白内障の進行により視力低下をきたしたため,2020年C7月に両眼白内障に対して水晶体再建術を施行した.先に施行した右眼は問題なく経過良好であった.2週間後に左眼水晶体再建術を施行した.術中,1-6時方向の角膜浮腫により透見性が低下し手術が続行できず,角膜上皮.離を行った.手術は予定通り終了し,術終了時にオフロキサシン眼軟膏を点入した.術翌日には上皮.離部位の欠損を認めた.レボフロキサシン点眼液1.5%1日4回,ベタメタゾン液0.1%1日4回,ブロムフェナク点眼液C1日C2回を開始し,上皮保護のためオフロキサシン眼軟膏C1日C2回を追加した.術後C2日目に角膜上皮欠損部に一致した表層性の角膜混濁が出現した.淡い白色混濁は角膜表層で中央から下方にかけて上皮欠損部を埋めるように広がり,中央から耳側にかけてとくに濃い白色混濁があり,一部角膜表層から実質に至る深さに進行していた.当初,角膜感染症を疑い,レボフロキサシンをC7回に増量し,セフメノキシム点眼液C7回を開始した.角膜擦過培養検査は陰性であった.上皮欠損は改善していったが,白色の角膜混濁は徐々に濃くなった.術後C8日目に角膜専門医にコンサルテーションし,ベタメタゾン点眼によるカルシウム沈着の可能性を指摘されたため,ベタメタゾン点眼を中止し,ゴルフメスによる角膜上皮掻爬および沈着除去を行った.混濁は容易には除去できず,沈着物の除去には至らなかった.改善が認められないため大学病院に紹介となった(図1~3).前眼部所見よりカルシウム沈着を疑い,複数回の掻爬の結果,瞳孔領がうっすら見える程度まで改善した.瞳孔周辺の混濁は治療的表層角膜切除術(phototherapeutickeratectomy:PTK)を施行し,瞳孔領の透明性を得た(図4).点眼薬には主成分となる薬剤のほかに,さまざまな添加剤が含まれており,pH緩衝の添加剤としてリン酸塩が知られている.機序は明らかになっていないが,リン酸塩はまれに角膜の表層から実質にかけてカルシウム沈着をきたすことがある1.2).原因としては,涙液のアルカリ化によりカルシウム溶解度が低下し,角膜へのカルシウム沈着を引き起こすことや,房水代謝異常,涙液異常などが考えられている3.6).角膜表面に急速なカルシウム沈着を疑わせる所見を認めた場合には,高カルシウム血症やその他の全身疾患(腎機能障害,サルコイドーシスなど)を除外したうえで,点眼液中のリン酸塩によるものを考え,点眼液の中止もしくは変更を考慮すべきである7.9).カルシウム沈着に対する治療法はCEDTA(エチレンジアミン四酢酸)による薬物的除去や,PTK,ゴルフメスによる掻爬などの機械的除去がある4).いずれも沈着したカルシウムの除去効果は良好であるが,視軸にかかる混濁がある場合は,視力予後は不良である4,9).文献1)SchrageCNF,CSchlossmacherCB,CAschenbernnerCSCetal:CPhosphateCbu.erCinCalkaliCeyeCburnsCasCanCinducerCofCexperimentalCcornealCcalci.cation.CBurnsC27:459-464,C20012)PopielaMZ:Cornealcalci.cationandphosphates:doyouneedCtoCprescribeCphosphateCfree?COculCPharmacolCTherC30:800-802,C20143)BerlyneGM:MicrocrystallineCconjunctivalCcalci.cationCinCrenalfailure.LancetC2:366-370,C19684)StokkermansCTJ,CGuptaCPC,CSayeghRR:AChands-onCapproachCtoCbandCkeratopathy.CRevCOptomC154:36-41,C20175)BernauerW,ThielMA,KurrerMetal:Cornealcalci.ca-tionCfollowingCintensi.edCtreatmentCwithCsodiumChyaluro-natearti.cialtears.BrJCOphthalmolC90:285-288,C20066)DoostdarCN,CManriqueCCJ,CHamillCMBCetal:SynthesisCofCcalcium-silicacomposites:aCrouteCtowardCanCinCvitroCmodelsystemforcalci.cbandkeratopathyprecipitates.JBiomedCMaterResC99A:173-183,C20117)RaoCGP,CO’BrienCC,CHicky-DwyerCMCetal:RapidConsetCbilateralCcalci.cCbandCkeratopathyCassociatedCwithCphos-phate-containingsteroideyedrops.EurJImplantRefractSurgC7:251-252.C19958)Calci.cbandkeratopathy.https://www.aao.org/bcscsnip-petdetail.aspx?id=1430bd5e-635d-4bad-92e6-c566680C55790.AccessedAugust22,20199)DonaghyCL,VisliselJM,GreinerMAetal:Calci.cbandkeratopathy.CEyeRounds.org.https://webeye.ophth.uiowa.Cedu/eyeforum/cases/214-band-eratopathy.htm.CPublishedCJune2,2015.AccessedAugust22,2019C

睡眠時無呼吸症候群と緑内障

2021年5月31日 月曜日

睡眠時無呼吸症候群と緑内障TheRelationshipbetweenGlaucomaandSleepApneaSyndrome檜森紀子*はじめにCollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyで提唱された通り,緑内障の診療では視野保持のために眼圧を30%下降させる眼圧下降に重点を置いて治療しているが,眼圧が十分低いにもかかわらず視野進行を認める症例が存在する.最近,眼圧以外の緑内障の危険因子として全身疾患(高血圧,糖尿病,高脂血症,睡眠時無呼吸症候群など)が指摘されている.本稿では,睡眠時無呼吸症候群と緑内障の関係について紹介し,いかに問診で聞き出し,その事実をふまえて診療に活かしていくのか概説する.I睡眠時無呼吸症候群とは睡眠時無呼吸症候群(sleepapneasyndrome:SAS)は閉塞性,中枢性,混合型の3型がある.ここでは睡眠中に上気道の狭窄・閉塞により呼吸停止(無呼吸)もしくは減弱(低呼吸)が出現する閉塞性SASについて説明する.有病率は50~70歳男性の22(9~37)%,女性では17(4~50)%といわれている1).そして,加齢によって出現頻度が増すことも知られ,SASの有病率は30~60歳で3%だが60歳以上で45~62%といわれている2).咽頭は軟部組織で構築されており,加齢によって筋緊張の低下・支持組織が脆弱化し,舌根部と軟口蓋の構造が保ちにくくなる.そのため加齢に伴いいびきの頻度が増し,さらに上気道が閉塞すると閉塞型睡眠時無呼吸症候群(obstructivesleepapneasyndrome:OSAS)を呈する.また,東アジア人の顔面形態の特徴として,小顎および軟口蓋低位の傾向があげられる.欧米諸国と比較してBMI(bodymassindex)25以上の肥満割合が低いのにもかかわらず,OSASの有病率は同等と考えられている.無呼吸による睡眠の分断化から徐波睡眠が減少し,徐波睡眠とともに分泌のピークをもつ成長ホルモン(growthhormone:GH)の分泌は低下する.成長期以降も生体活動である代謝に重要なGHの分泌低下は,咽頭筋肉組織の減少,脂肪組織の増加を引き起こしSASが悪化するという悪循環をきたす.動脈血酸素飽和度と不飽和度,および睡眠の断片化の周期的なエピソードは,睡眠中の無呼吸と低呼吸によって引き起こされる3).SASは全身的に低酸素障害が引き起こされ,不整脈4),高血圧5),心筋梗塞などの致死性心疾患6)のリスクファクターといわれている(表1).症状は日中の過剰な眠気,いびきや中途覚醒,熟睡感が少ない,家族からの無呼吸の指摘などがあげられる(表2)7).診断は入院してポリソムノグラフィ(polysomnog-raphy:PSG)で脳波や脈拍も含めて精密検査を行う.診断基準は無呼吸低呼吸指数(apneahypopneaindex:AHI)が1時間に5回以上と自覚症状を伴うこと,もしくはAHIが15以上で他に睡眠異常をきたす疾患がなければ確定診断となる7)(表3).SASの治療はPSGでAHI20回/時以上の患者には経鼻的持続陽圧呼吸療法(continuouspositiveairway*NorikoHimori:東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座眼科・視覚科学分野〔別刷請求先〕檜森紀子:〒980-8574仙台市青葉区星陵町1-1東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座眼科・視覚科学分野0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(53)533表1睡眠時無呼吸症候群に関連する因子・性別(男性)・年齢・肥満・喫煙・アルコール・高血圧・冠動脈疾患・脳梗塞・糖尿病表3睡眠時無呼吸症候群の重症度AHI<5正常5<AHI<20軽症20<AHI<40中等度40<AHI重症(文献C7を改変)表2睡眠時無呼吸症候群の症状(文献C7より改変)図1酸化ストレスと睡眠時無呼吸症候群(文献C12より改変)表4睡眠時無呼吸症候群と関連する眼科疾患・フロッピーまぶた症候群・円錐角膜・非動脈炎性前部虚血性視神経症・糖尿病網膜症・加齢黄斑変性症・緑内障表5緑内障と睡眠時無呼吸症候群表6緑内障の乳頭血流低下に起因する因子研究デザイン調査人数調査したタイプ結果CMojonetal.Ophthalmolgica.2000横断C30CPOAGSASは20%CMojonetal.Ophthalmolgica.2002横断C16CNTGSASは44%CMarcusetal.JGlaucoma.2001ケースコントロールC23/14/30NTG/NTG疑い/controlSASは78%CMojonetal.Ophthalmolgy.1999横断C114CSASSASの診断を受けた7%がCPOAG/NTGCBendeletal.Eye.2008横断C100CSASSAS群の27%がCPOAG/NTGと診断されたCSergietal.JGlaucoma.2007ケースコントロールC51/40CSAS/controlSAS群の5.9%がCNTGCLinPWetal.JGlaucoma.2011ケースコントロールC247CSAS/controlSAS群の5.7%がCNTG単回帰重回帰Cbp値Cbp値CcpRNFLT年齢男性(女性と比較して)Bodymassindex眼軸長角膜厚眼圧収縮期血圧拡張期血圧脈拍数喫煙歴高血圧糖尿病高脂血症心疾患睡眠時無呼吸片頭痛C0.35<C0.001-0.17<C0.001-0.23<C0.001-0.17<C0.001C0.04C0.371C0.04C0.366C0.01C0.907-0.09C0.057-0.09C0.053C0.07C0.147-0.02C0.660-0.09C0.063-0.13C0.011-0.01C0.891C0.04C0.458-0.15C0.002C0.05C0.282*C0.32<C0.001-0.06C0.171*C-0.16C0.001*-0.10C0.023-0.01C0.871*-0.09C0.042(文献C34より改変)(A)(B)(C)+6.06003,0002,500非SAS群SAS群+4.0500MDslope(dB/Y)dROM(U.CARR)400300200BAP(mmol/l)+2.00.0-2.02,0001,500-4.01000-6.00図2睡眠時無呼吸症候群と緑内障Wilcoxonsigned-ranktest,*p<0.05,**p<0.01(文献C35より改変)非SAS群SAS群非SAS群SAS群(A)(B)(C)5.01004.03.080MDslope(dB/Y)dROM(U.CARR)AHI(events/h)60402.01.00.0-1.0-2.0-3.020-4.0-5.00図3CPAP治療前後の酸化ストレスと視野進行Wilcoxonsigned-ranktest,*p<0.05,**p<0.01(文献C36より改変)CPAP前CPAP後CPAP前CPAP後CPAP前CPAP後睡眠時無呼吸症候群夜間の間欠的な低酸素炎症反応亢進NO(血管拡張),エンドセリン(血管収縮)バランスの崩れ視神経乳頭血管障害視野進行図4緑内障に対する睡眠時無呼吸症候群の影響交感神経亢進酸化ストレス亢進血圧上昇血管内皮障害の調節障害から視神経乳頭血流低下を起こすことが,視野進行が悪化する一因になっていると考えられる.おわりに本稿ではCSAS,酸化ストレス,緑内障について述べた.緑内障の基本である眼圧下降治療を行ったうえで,全身疾患にも着目し治療することが望まれる.SASに罹患している緑内障患者において,点眼治療に加え適切なCSAS治療を行うことによって,緑内障進行を抑えることが可能となると考えている.よって当科外来では,前述した症状(日中の過剰な眠気,いびきや中途覚醒,熟睡感が少ない,家族からの無呼吸の指摘)を認める場合,速やかに専門施設に紹介し治療を勧めている.本稿が読者の先生方の日常診療の一助になれば幸いである.文献1)FranklinCKA,CLindbergE:ObstructiveCsleepCapneaCisCaCcommondisorderinthepopulation-areviewontheepide-miologyofsleepapnea.JThoracCDisC7:1311-1322,C20152)YoungCT,CPaltaCM,CDempseyCJCetal:TheCoccurrenceCofCsleep-disorderedCbreathingCamongCmiddle-agedCadults.CNEnglJMedC328:1230-1235,C19933)BendelCRE,CKaplanCJ,CHeckmanCMCetal:PrevalenceCofCglaucomaCinCpatientsCwithCobstructiveCsleepCapnoea–aCcross-sectionalCcase-series.CEye(Lond)C22:1105-1109,C20084)MonahanCK,CStorfer-IsserCA,CMehraCRCetal:TriggeringCofCnocturnalCarrhythmiasCbyCsleep-disorderedCbreathingCevents.JAmCollCardiolC54:1797-804,C20095)PeppardCPE,CYoungCT,CPaltaCMCetal:ProspectiveCstudyCoftheassociationbetweensleep-disorderedbreathingandhypertension.NEnglJMedC342:1378-1384,C20006)GottliebDJ,YenokyanG,NewmanABetal:ProspectivestudyCofCobstructiveCsleepCapneaCandCincidentCcoronaryCheartCdiseaseCandCheartfailure:theCsleepCheartChealthCstudy.CCirculationC122:352-360,C20107)SpicuzzaCL,CCarusoCD,CDiCMariaG:ObstructiveCsleepCapnoeasyndromeanditsmanagement.ThercAdvChron-icDis6:273-285,C20158)TezelG,YangX,CaiJ:Proteomicidenti.cationofoxida-tivelyCmodi.edCretinalCproteinsCinCaCchronicCpressure-inducedratmodelofglaucoma.InvestOphthalmolCVisSciC46:3177-3187,C20059)NakajimaCY,CInokuchiCY,CShimazawaCMCetal:Astaxan-thin,CaCdietaryCcarotenoid,CprotectsCretinalCcellsCagainstCoxidativeCstressCin-vitroCandCinCmiceCin-vivo.CJCPharmCPharmacolC60:1365-1374,C200810)YukiCK,CTsubotaK:IncreasedCurinaryC8-hydroxy-2’-deoxyguanosine(8-OHdG)/creatinineClevelCisCassociatedCwithCtheCprogressionCofCnormal-tensionCglaucoma.CCurrCEyeResC38:983-988,C201311)HimoriCN,CKunikataCH,CShigaCYCetal:TheCassociationCbetweenCsystemicCoxidativeCstressCandCocularCbloodC.owCinCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucoma.CGraefesCArchCClinExpOphthalmol254:333-341,C201612)DumitrascuCR,CHeitmannCJ,CSeegerCWCetal:ObstructiveCsleepapnea,oxidativestressandcardiovasculardisease:Clessonsfromanimalstudies.OxidMedCellLongevC2013:C234631,C201313)JelicS,PadelettiM,KawutSMetal:In.ammation,oxida-tiveCstress,CandCrepairCcapacityCofCtheCvascularCendotheli-umCinCobstructiveCsleepCapnea.CCirculationC117:2270-2278,C200814)XuW,ChiL,RowBWetal:IncreasedoxidativestressisassociatedCwithCchronicCintermittentChypoxia-mediatedCbraincorticalneuronalcellapoptosisinamousemodelofsleepapnea.NeuroscienceC126:313-323,C200415)PialouxV,HanlyPJ,FosterGEetal:E.ectsofexposuretoCintermittentChypoxiaConCoxidativeCstressCandCacuteChypoxicventilatoryresponseinhumans.CAmJRespirCritCareMed180:1002-1009,C200916)BerryCC,CBrosnanCMJ,CFennellCJCetal:OxidativeCstressCandCvascularCdamageCinChypertension.CCurrCOpinCNephrolCHypertens10:247-255,C200117)MinuzP,FavaC,CominaciniL:Oxidativestress,antioxi-dants,CandCvascularCdamage.CBrCJCClinCPharmacolC61:C774-777,C200618)Jurado-GamezB,Fernandez-MarinMC,Gomez-ChaparroJLCetal:RelationshipCofCoxidativeCstressCandCendothelialCdysfunctionCinCsleepCapnoea.CEurCRespirCJ37:873-879,C201119)DragerLF,BortolottoLA,FigueiredoACetal:E.ectsofcontinuouspositiveairwaypressureonearlysignsofath-erosclerosisCinCobstructiveCsleepCapnea.CAmCJCRespirCCritCCareMedC176:706-712,C200720)KohlerM,PepperellJC,CasadeiBetal:CPAPandmea-suresCofCcardiovascularCriskCinCmalesCwithCOSAS.CEurCRespirJC32:1488-1496,C200821)BaesslerCA,CNadeemCR,CHarveyCMCetal:TreatmentCforCsleepCapneaCbyCcontinuousCpositiveCairwayCpressureCimproveslevelsofin.ammatorymarkers-ameta-analy-sis.JIn.amm(Lond)C10:13,C201322)RobertCPY,CAdenisCJP,CTapieCPCetal:EyelidChyperlaxityCandCobstructiveCsleepapnea(O.S.A.)syndrome.CEurJOphthalmolC7:211-215,C199723)NaderanM,RezagholizadehF,ZolfaghariMetal:Associ-ationbetweentheprevalenceofobstructivesleepapnoeaandCtheCseverityCofCkeratoconus.CBrCJCOphthalmolC99:C1675-1679,C201524)PurvinCVA,CKawasakiCA,CYeeRD:PapilledemaCandC538あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021(58)–

血糖だけが原因ではない!? 糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫

2021年5月31日 月曜日

血糖だけが原因ではない!?糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫InfluenceofLifestyleonDiabeticRetinopathyandDiabeticMacularEdema佐々木真理子*はじめに生活習慣病は,ライフスタイル(生活習慣)が深く関与し,発症の原因となる疾患の総称である1).日本人の三大死因である癌,脳血管疾患,心疾患,さらに脳血管疾患や心疾患の危険因子となる動脈硬化症,糖尿病,高血圧症,脂質異常症などはいずれも生活習慣病とされる.疾患の発症には,遺伝要因,外部環境要因(病原体,有害物質,ストレッサーなど)に加え,ライフスタイル(食事,運動,喫煙,飲酒,ストレスなど)が関与するが,ライフスタイルはこれを改善することにより疾病の発症・進行が予防できる点で重要である(図1).このように考えた場合,糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫自体を生活習慣病ととらえることができるが,本稿では,糖尿病を含む“生活習慣病(一般に糖尿病網膜症の遺伝要因リスク因子)”もしくは“ライフスタイル”の,これらの疾患に対する影響について考察する(図2).生活習慣病については,各疾患の予防や治療は成書に譲り,糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫への血糖値(糖尿病)だけでない影響について,最近の知見を交え概説する.ライフスタイルの影響については,糖尿病合併症である大血管症や腎症に比べ研究は限られるが,現在までの知見を紹介し,糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫の発症・進行予防のためのより良いライフスタイルについて考えたい.I最近の糖尿病網膜症・黄斑浮腫の動向InternationalDiabetesFederation(IDF)によれば,2000年の推定糖尿病患者人口は1億5,092万人であったが,2019年には4億6,300万人に増加し,2045年に外部環境要因病原体,有害物質,ストレッサーなどライフスタイル食生活,運動,喫煙,飲酒,ストレスなど図1生活習慣病とライフスタイル疾患の発症には,遺伝要因,外部環境要因に加え,ライフスタイルが関与するが,ライフスタイルは改善することにより疾病の発症・進行が予防できる点で重要である.*MarikoSasaki:国家公務員共済組合連合会立川病院眼科,慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕佐々木真理子:〒190-8531東京都立川市錦町4-2-22国家公務員共済組合連合会立川病院眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(43)523図2ライフスタイル・生活習慣病と糖尿病合併症の関係糖尿病合併症は“生活習慣病”と“ライフスタイル”の影響を受ける.糖尿病黄斑浮腫の有病率(%)糖尿病網膜症の有病率(%)9080706050403020100<1010~<2020≦≦7.07.1~8.08.1~9.09.0<正常血圧高血圧<44≦罹病期間(年)HbA1c(%)血圧総コレステロール(mmol/l)図3危険因子ごとの糖尿病網膜症の有病率糖尿病の罹病期間,HbA1c,血圧は多くの疫学研究で共通して指摘される糖尿病網膜症のリスク因子である.(文献3より作図)2520151050<1010~<2020≦≦7.07.1~8.08.1~9.09.0<正常血圧高血圧<44≦罹病期間(年)HbA1c(%)血圧総コレステロール(mmol/l)図4危険因子ごとの糖尿病黄斑浮腫の有病率糖尿病の罹病期間,HbA1c,血圧,脂質異常症が糖尿病黄斑浮腫のリスク因子である.(文献3より作図)れば,強化療法は発症・進展を含む糖尿病網膜症のイベントリスクを13%減少させた8).2型糖尿病患者を対象に日本で行われたKumamotoStudy9)では,HbA1cが7.0%未満(NGSP)で,細小血管合併症の発症・進展の予防効果が認められたため,血糖是正の目標値の一つとして用いられている.DCCTの追跡調査では,試験終了後,強化療法群と従来療法群の間にHbA1cに差はなくなったが,強化療法を継続された群では,糖尿病網膜症の進展,糖尿病黄斑浮腫の発生,汎網膜光凝固の必要性が有意に抑制された10).さらに,細小血管障害とともに大血管障害の発症も有意に抑制された.このような,早期の強力な血糖の是正が,その後の長期間にわたる合併症の発症・進展を抑制する現象をmetabolicmemory,もしくはlegacye.ectというが,早期に厳格な血糖コントロールに取り組むことがいかに大切かということを示している.b.低血糖とその管理状況血糖の強化療法の有用性については揺るがないところではあるが,そのコントロール状況も糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫の発症や増悪に影響する.血糖コントロール開始時に生じる急速な糖尿病網膜症の悪化,earlyworseningもしばしば臨床で問題となる.血糖コントロール完了後3.6週で10.20%の患者に,進行した糖尿病網膜症患者では約2倍生じ,糖尿病網膜症がないか軽度では,増悪による変化は可逆的だが,進行した糖尿病網膜症では不可逆となる.ベースラインでの高い血糖値,HbA1cの大きな減少幅,長期の糖尿病歴,進行した糖尿病網膜症がリスクである.緩やかな血糖の是正が望ましいとされるが,その速度についてはエビデンスがなく,調整も容易ではない.リスクの高い患者では,内科医と連携をとり,血糖コントロール開始後,糖尿病網膜症の悪化所見に留意しつつ頻回に診察し,早期に治療を開始することが肝要である.また,他人の介助を要するような重症の低血糖症は,糖尿病網膜症の発生率を約4倍に増加させる11).内科的にも低血糖は重要な問題であり,とくに高齢者では,心身機能の個人差が著しく,重症低血糖をきたしやすいため,患者の年齢,認知機能,身体機能,併発疾患,重症低血糖のリスク,余命などを考慮して,血糖コントロールの目標を個別に設定することが推奨されている.さらに,HbA1cの長期的な変動が大きいことが,平均HbA1c値とは独立して糖尿病網膜症の発症リスクを2倍高める,Continuousglucosemonitoring(CGM)におけるtimeinrange(TIR)が2型糖尿病の糖尿病網膜症に関連するなどの報告があり,血糖の変動は網膜症に大きく影響する.インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬,GLP-1受動体作動薬),SGLT2阻害薬など,2000年以降に登場した新しい血糖降下薬は,血糖値の変動や重症低血糖を生じにくく,現在広く糖尿病治療に用いられている.大規模臨床試験では,GLP-1受動体作動薬やSGLT2阻害薬で心血管,腎保護作用が認められており,網膜保護作用も期待され注目されている.2.高血圧高血圧は糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫の重要なリスク因子である(図3,4).収縮期血圧との関連が強く,WisconsinEpidemiologicStudyofDiabeticRetinopa-thyでは,収縮期血圧が10mmHg上昇すると初期の糖尿病網膜症のリスクが10%,増殖糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫のリスクが15%上昇するとされている12).前述のメタ解析においても,非高血圧と高血圧における有病率は,糖尿病網膜症全体で30.8%から39.6%に上昇するが,増殖糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫を合わせた視力を脅かす糖尿病網膜症では,7.6%から17.6%と2倍以上に増加した3).これらの結果は,高血圧が糖尿病網膜症の重症化や糖尿病黄斑浮腫の発症に関与することを示唆する.血圧の是正が糖尿病網膜症の進展を抑制することを初めて明らかにした介入研究が,UKPDSである13).この研究では,高血圧を合併した2型糖尿病患者1,148名を対象としており,9年後に,厳格な血圧管理群(平均血圧144/82mmHg)は,非厳格群(同154/87mmHg)に比べ糖尿病網膜症の進行リスクは34%,視力低下のリスクは47%減少した.また,光凝固施行も35%減少したが,その80%は糖尿病黄斑浮腫に関するものであった13).一方,近年のAppropriateBloodPressureControlinNIDDM(ABCD)trial,ActiontoControlCardiovascu-526あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021(46)larCRiskCinDiabetes(ACCORD)studyでは同様の効果が認められず,2015年のコクランレビューでは,厳格な血圧コントロールは,4.5年間でC20%の糖尿病網膜症の発症抑制効果とC22%の発症・進展抑制効果を認めたが,進展抑制効果は明らかではなかった14).現在では,血圧の是正は糖尿病網膜症の抑止に有効であるが,寄与率はCHbA1cより低いと考えられ,後述のように単独ではなく,他の生活習慣病や生活習慣の是正との組み合わせである集学的治療において有効と考えられる.降圧薬であるレニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensinCsystem:RAS)阻害薬は腎保護作用を有することが知られているが,正常血圧あるいは治療中の高血圧を伴う糖尿病患者を対象とした試験において,血圧とは独立して糖尿病網膜症の発症・進展抑制および改善効果をもつ可能性が示唆されている.正常血圧もしくは治療中の高血圧を有するC2型糖尿病網膜症患者を対象としたCDIRECT-Protect2では,カンデサルタンによる進展抑制効果はみられなかったが,糖尿病網膜症の改善が34%上昇した15).血圧正常のC1型糖尿病患者を対象としたCRenin-AngiotensinCSystemStudy(RASS)では,アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-convertingenzyme:ACE)阻害薬のエナラプリル,アンジオテンシンCII受容体拮抗薬(angiotensinIIreceptorblocker:ARB)のロサルタンは糖尿病網膜症の進展をそれぞれ65%,70%減少させた16).さらに,これらの介入研究のメタ解析において,プラセボあるいは他の降圧薬との比較で,RAS阻害薬は糖尿病網膜症の発症・進展抑制および改善効果を認め,ACE阻害薬はCARBより有効であった17).C3.脂質異常症疫学研究では,脂質異常と糖尿病網膜症の関連について相反する報告がみられ,一致した見解が得られていない.一方,糖尿病黄斑浮腫に関しては,コホート研究におけるメタ解析で総コレステロール値との関連が(図4)3),症例・対照研究のメタ解析で総コレステロール,LDLコレステロール,中性脂肪との関連が認められている.また,糖尿病黄斑浮腫が消退したあとに,リポ蛋白が沈着する硬性白斑は,中心窩に集簇すると恒久的な視力障害をきたす.筆者らは,その面積は血清中のLDLと中性脂肪の濃度が高いほど大きく,中性脂肪の濃度が高いほど中心窩に沈着しやすいことを報告している18).このように,糖尿病網膜症だけでなく,糖尿病黄斑浮腫や硬性白斑の抑制という点においても,脂質のコントロールは重要である.介入研究では,2型糖尿病患者C9,795名を対象とし,高トリグリセリド血症,低CHDLコレステロール血症を是正する脂質異常症治療薬フェノフィブラートの効果を検討した無作為化比較試験であるCFenof.brateInterven-tionCandCEventCLoweringCinDiabetes(FIELD)Studyにおいて,フェノフィブラート投与群では,5年間の観察期間中,光凝固治療の導入がプラセボ群よりC31%減少し,増殖糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫の発症リスクもそれぞれC30%,31%減少した19).一方,約C6万人のレジストリデータを用いた解析では,スタチン内服者において,非内服者と比較して糖尿病網膜症の発症リスクが,2.7年でC40%減少した20).フィブラート系薬剤やスタチンは,脂質の是正自体に加え,脂質を介さない糖尿病網膜症の進展や糖尿病黄斑浮腫の発症を抑制する作用をもつ可能性が示唆されている.C4.腎障害腎機能障害をもつ糖尿病黄斑浮腫患者で透析後の浮腫の改善が,臨床では散見される.疫学研究においては,腎症と糖尿病網膜症の関連はC1型に比べ,2型では弱いとされる.白人のC2型糖尿病患者を対象とした病院ベースの横断研究では,推算糸球体濾過値(estimatedCglemerularC.ltrationrate:eGFR)の低下は,糖尿病網膜症の有病と重症度に関連したが,糖尿病黄斑浮腫とは関連しなかった21).レセプトデータを用いた日本での解析では,蛋白尿とCeGFRの低下ならびにその組み合わせが,視力をおびやかすような重症糖尿病網膜症発症のリスクであった22).JDCSからは,微量アルブミン尿と糖尿病網膜症が併存すると腎機能低下が顕著であると報告されている23).これらの報告は,腎障害と糖尿病網膜症の相互の関連を示唆する(図5).(47)あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021C527図5糖尿病網膜症とその他の糖尿病合併症との関係糖尿病網膜症は腎障害や大血管障害のリスク因子であり,多くのリスク因子を共有している.ポリオール代謝ヘキソサミン生合成PKCの活性化経路亢進経路亢進炎症酸化ストレス虚血増悪抑制図6糖尿病網膜症の病態と食事摂取の影響食事摂取には,“網膜症を増悪させる”と“網膜症を抑制する”という二つの作用点がある.相対リスク糖尿病合併症(95%Cl)p値腎症0.39(0.17~0.87)0.003網膜症0.42(0.21~0.86)0.02自律神経症0.37(0.18~0.79)0.002末梢神経症1.09(0.54~2.22)0.660.00.51.01.52.025強化療法がよい標準療法がよい図7糖尿病合併症に対する多因子介入治療の効果血糖,血圧,脂質,生活習慣など多くの因子の総合的な是正効果を検討したCSteno-2studyでは,強化療法群は標準療法群に比べ,平均C3.8年で糖尿病網膜症の進展リスクがC58%低減した.(文献C32より改変作図)つながる.今,糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫を生活習慣病ととらえ,ライフスタイルを見直すことが重要ではないだろうか?文献1)厚生労働省編:生活習慣病.生活習慣病予防のための健康情報サイト,e-ヘルスネット(2021.2.6.アクセス)2)IDFCdiabetesCatlasC9thCeditionC2019.C2019.Chttps://www.Cdiabetesatlas.org/en/sections/proven-and-e.ective-actions.html.Accessed020620213)YauJW,RogersSL,KawasakiRetal:GlobalprevalenceandCmajorCriskCfactorsCofCdiabeticCretinopathy.CDiabetesCCare35:556-564,C20124)ThomasCRL,CHalimCS,CGurudasCSCetal:IDFCdiabetesatlas:areviewofstudiesutilisingretinalphotographyontheCglobalCprevalenceCofCdiabetesCrelatedCretinopathyCbetweenC2015CandC2018.CDiabetesCResCClinCPractC157:C107840,C20195)KawasakiCR,CTanakaCS,CTanakaCSCetal:IncidenceCandCprogressionCofCdiabeticCretinopathyCinCJapaneseCadultswithtype2diabetes:8yearfollow-upstudyoftheJapanDiabetesComplicationsCStudy(JDCS)C.CDiabetologiaC54:C2288-2294,C20116)TheCDiabetesCControlCandCComplicationsCTrialCResearchGroup:TheCe.ectCofCintensiveCtreatmentCofCdiabetesConCtheCdevelopmentCandCprogressionCofClong-termCcomplica-tionsCinCinsulin-dependentCdiabetesCmellitus.CNewCEnglJMed329:977-986,C19937)UKCProspectiveCDiabetesStudy(UKPDS)Group:Inten-siveCblood-glucoseCcontrolCwithCsulphonylureasCorCinsulinCcomparedwithconventionaltreatmentandriskofcompli-cationsinpatientswithtype2diabetes(UKPDS33)C.Lan-cet352:837-853,C19988)ZoungasCS,CArimaCH,CGersteinCHCCetal:E.ectsCofCinten-siveglucosecontrolonmicrovascularoutcomesinpatientswithtype2diabetes:ameta-analysisofindividualpartic-ipantdatafromrandomisedcontrolledtrials.LancetDiabe-tesEndocrinol5:431-437,C20179)OhkuboCY,CKishikawaCH,CArakiCECetal:IntensiveCinsulinCtherapyCpreventsCtheCprogressionCofCdiabeticCmicrovascu-larCcomplicationsCinCJapaneseCpatientsCwithCnon-insulin-dependentCdiabetesmellitus:aCrandomizedCprospectiveC6-yearstudy.DiabetesResClinPract28:103-117,C199510)DiabetesControlandComplicationsTrial/EpidemiologyofDiabetesCInterventionsCandCComplicationsCResearchGroup:RetinopathyCandCnephropathyCinCpatientsCwithCtype1diabetesfouryearsafteratrialofintensivethera-py.NEnglJMed342:381-389,C200011)TanakaCS,CKawasakiCR,CTanaka-MizunoCSCetal:SevereChypoglycaemiaCisCaCmajorCpredictorCofCincidentCdiabeticCretinopathyCinCJapaneseCpatientsCwithCtypeC2Cdiabetes.CDiabetesMetab43:424-429,C201712)KleinR,KleinBE,MossSEetal:TheWisconsinepidemi-ologicCstudyCofCdiabeticCretinopathy.CII.CPrevalenceCandCriskCofCdiabeticCretinopathyCwhenCageCatCdiagnosisCisClessCthan30years.ArchOphthalmol102:520-526,C198413)UKCProspectiveCDiabetesStudy(UKPDS)Group:TightCbloodCpressureCcontrolCandCriskCofCmacrovascularCandCmicrovascularCcomplicationsCinCtypeC2diabetes:UKPDSC38.CBmj317:703-713,C199814)DoDV,WangX,VedulaSSetal:BloodpressurecontrolforCdiabeticCretinopathy.CCochraneCDatabaseCSystCRevC1:CCD006127,C201515)SjolieCAK,CKleinCR,CPortaCMCetal:E.ectCofCcandesartanConCprogressionCandCregressionCofCretinopathyCinCtypeC2diabetes(DIRECT-Protect2):arandomisedplacebo-con-trolledtrial.Lancet372:1385-1393,C200816)MauerCM,CZinmanCB,CGardinerCRCetal:RenalCandCretinalCe.ectsCofCenalaprilCandClosartanCinCtypeC1Cdiabetes.CNewCEnglJMedC361:40-51,C200917)WangCB,CWangCF,CZhangCYCetal:E.ectsCofCRASCinhibi-torsConCdiabeticretinopathy:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.CLancetCDiabetesCEndocrinolC3:263-274,C201518)SasakiCM,CKawasakiCR,CNoonanCJECetal:QuantitativeCmeasurementCofChardCexudatesCinCpatientsCwithCdiabetesCandtheirassociationswithserumlipidlevels.InvestOph-thalmolVisSci54:5544-5550,C201319)KeechCAC,CMitchellCP,CSummanenCPACetal:E.ectCofCfeno.brateConCtheCneedCforClaserCtreatmentCforCdiabeticretinopathy(FIELDstudy):arandomisedcontrolledtrial.Lancet370:1687-1697,C200720)NielsenCSF,CNordestgaardBG:StatinCuseCbeforeCdiabetesCdiagnosisandriskofmicrovasculardisease:anationwidenestedCmatchedCstudy.CLancetCDiabetesCEndocrinolC2:C894-900,C201421)ManRE,SasongkoMB,WangJJetal:Theassociationofestimatedglomerular.ltrationratewithdiabeticretinopa-thyCandCmacularCedema.CInvestCOphthalmolCVisCSciC56:C4810-4816,C201522)YamamotoCM,CFujiharaCK,CIshizawaCMCetal:OvertCpro-teinuria,moderatelyreducedeGFRandtheircombinationareCpredictiveCofCsevereCdiabeticCretinopathyCorCdiabeticCmacularCedemaCinCdiabetes.CInvestCOphthalmolCVisCSciC60:2685-268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