253糖尿病黄斑浮腫とMacTeltype2(中級編)池田恒彦大阪回生病院眼科●はじめに黄斑部毛細血管拡張症C2型(macularCtelangiectasisCtype2:MacTeltype2)は,黄斑色素の消失,傍中心窩の毛細血管拡張,ellipsoidzoneの欠損,網膜の肥厚を伴わない網膜内の空洞所見などを特徴とする疾患である.OCT所見で観察される網膜内の空洞所見は,糖尿病黄斑浮腫(diabeticCmacularedema:DME)などの黄斑浮腫との鑑別を要する.MacTeltype2と糖尿病網膜症(diabeticretinopathy:DR)は,それぞれ異なる臨床的特徴をもつ眼疾患であるが,いくつかの類似点があり,その合併例も多いことが報告されている1).C●症例提示67歳,男性.以前よりコントロール不良の糖尿病を指摘され,HbA1cはC9%程度で推移していた.最近,右眼の変視症を自覚して来院した.眼底検査では後極から中間周辺部に毛細血管瘤と散在性の小出血をわずかに認めた.OCTでは網膜肥厚を伴わない傍中心窩の空洞形成を認め,その大きさは時間の経過とともにやや拡大してきた(図1).フルオレセイン蛍光造影検査では黄斑部に目立った漏出を認めなかった(図2).矯正視力はCab0.9であった.他院でCDMEを疑われ,ステロイドのTenon.下注射を受けたが,軽快しなかった.OCT所見からCDRに合併したCMacTelCtype2と診断し経過観察することにした.C●MacTeltype2と糖尿病黄斑浮腫の鑑別両疾患とも発症にCMuller細胞の関与が指摘されており,MacTeltype2はCMuller細胞の枯渇による神経変性疾患とする説が最近は有力である2).筆者らはサル眼を用いた免疫組織学的検討により,中心窩の未分化な細胞群のうち,fovealslopeに存在する未分化なCMuller細胞のアポトーシスがCMacTelCtype2の本態ではないかと考えている3).アポトーシスによる組織欠損はCapop-toticCvolumedecreaseといわれ4),容積の増加を伴わないので通常のCDMEとは異なり網膜厚の増加を伴わない空洞形成をきたすと考えられる.DRでこのような空洞形成を中心窩に認めた場合には,MacTeltype2の可能性を考え,抗CVEGF療法や硝子体手術の効果は得られにくいという認識をもつ必要がある.文献1)vanRomundeSHM,vanderSommenCM,MartinezCiria-noJPetal:Prevalenceandseverityofdiabeticretinopa-thyCinCpatientsCwithCmacularCtelangiectasiaCtypeC2.COph-thalmolRetinaC5:999-1004,C20212)PownerMB,GilliesMC,TretiachMetal:PerifovealMul-lerCcellCdepletionCinCaCcaseCofCmacularCtelangiectasiaCtypeC2.OphthalmologyC117:2407-2416,C20103)池田恒彦,中村公俊,奥英弘ほか:網膜硝子体疾患の病態解明臨床の素朴な疑問を出発点として.日眼会誌C126:C254-297,C20224)OkadaCY,CMaenoCE,CShimizuCTCetal:Receptor-mediatedcontrolofregulatoryvolumedecrease(RVD)andapoptot-icCvolumedecrease(AVD).CJCPhysiolC532(Pt1):3-16,2001C図2提示例のフルオレセイン蛍光造影写真黄斑部にめだった漏出は認めなかった.図1提示例のOCT所見網膜肥厚を伴わない傍中心窩の空洞形成を認め(a),その大きさは時間の経過とともに拡大した(b).(89)あたらしい眼科Vol.41,No.6,20246930910-1810/24/\100/頁/JCOPY