眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋市川慶457.LightAdjustableLens総合青山病院,中京眼科眼内レンズ度数計算式の発展や光学式眼軸長測定装置の開発により,昔と比較して術後屈折誤差は小さくなっているが,とくに屈折矯正手術後の場合は屈折誤差が生じやすい.本稿では眼内に挿入後に屈折を変更することが可能なCLightAdjustableLensを紹介する.●はじめに眼内レンズ(intraocularlens:IOL)度数計算式の発展や光学式眼軸長測定装置の開発により術後屈折誤差は小さくなってきているが,1D以上の屈折誤差が生じる患者も依然として存在する.こうした患者に対応するために,IOLの挿入後に見え方を調整できないかとさまざまな研究が行われている1.2).本稿では,そのうちの一つであるCLightCAdjustable,Lens(LAL,Rxsight社)(図1)を紹介する.C●LALの原理LALの原理はCSchwartzによってC20年以上前に報告された1)が,実際に米国でCLALが普及しはじめたのは,2017年に米国食品医薬品局により承認されて以降である.LAL(図1a)は人の眼内に挿入した状態でCLightCDeliveryDevice(LDD)(図1b)という専用の機械を用いて紫外線照射を行うことでCLAL内のCphotosensitiveCsiliconemacromerを刺激し,形状変化を誘発し,球面度数で±2.0Dまで,乱視はC2.0Dまで度数変更を行うことが可能である(図1b).LDDによる度数変更後は,度数固定のためのCLock-in照射を行う(図1c).度数固定が終了するまでのC1~2カ月程度は紫外線カット用の眼鏡装用が必要である.C●LALの安全性安全性について,Hengerらが術後C1年間の短期成績図1LightAdjustableLens(LAL)とLightDeliveryDevice(LDD)a:LAL.Cb:LDD本体.Cc:LDD使用時の画像.として,Schojaiらが術後C7年目までの長期成績として,それぞれとくに問題がなかったと報告している3.4).屈折矯正手術後の患者にCLALを挿入した術後成績について,WongらはCLASIKまたはレーザー屈折矯正角膜切除術後の患者に対して,良好な成績であったことを報告している5).しかし,2024年C12月時点でCLALは国内未承認であり,あくまで医師の裁量で使用するCIOLとなっている.C●症例提示筆者らが中京眼科で乱視矯正角膜周辺部切開術後の患者にCLALを挿入したデータを示す.患者:58歳,女性,既往なし.Emery-Little分類:III術前視力:右眼C0.5(0.5C×cyl.1.0DAx75°),左眼:0.4(0.5C×cyl.1.0DCAx90°).術前瞳孔径:右眼:6.7mm,左眼:6.8mm.白内障による視力低下を自覚し中京眼科を受診.術前説明の際にCLALに興味をもち希望した.まずはC.0.5D狙いとし,IOL度数決定を行い,両眼に白内障手術を通常通り施行しCLALを挿入した(図2a).術後C1カ月目時点での視力は右眼C0.8(1.5C×sph.0.75D(cyl.1.0DCAx10°),左眼0.9(1.5C×sph.0.5(cyl.0.75DAx20°)であった(図2b).2回の度数調整で右眼C0.5D,左眼C0D狙いを希望されCLDDで度数調整を施行した.1回目の度数調整後の視力は右眼C1.0(1.5C×sph.(71)あたらしい眼科Vol.42,No.6,2025C7130910-1810/25/\100/頁/JCOPYab視力図2実際の使用例(58歳,女性,右眼)a:LAL挿入時の術中画像.Cb:LAL挿入後の細隙灯顕微鏡画像.C0.25D(cyl.0.75DCAx175°),左眼1.0(1.5C×sph.0.5D)となった.右眼は自覚的に問題はないが乱視の残存を認め,左眼は正視にしたほうが自覚的に見やすいとのことで,右眼C.0.5D,左眼C0D狙いでC2回目のCLDDでの度数調整を施行した.2回目の度数調整後の視力は右眼C1.2p(1.5C×sph.0.5D),左眼C1.0(1.5C×sph.0.25D(cyl.0.25DCAx70°)となり,LDDを用いて度数固定のための両眼のCLock-in照射をC2回行った.Lock-in後の全距離視力とコントラスト感度を測定したところ,遠方から中間C70Ccmまでは両眼裸眼視力で1.0以上見えており,近方C50Ccmでは右眼C0.8,左眼C0.6,近方C40Ccmでは右眼C0.8,左眼C0.5であった(図3).コントラスト感度も明所・暗所ともに正常範囲内で,患者満足度も非常に高かった.C●考察今回の症例では検査日によって若干の屈折の変化が生じていた.屈折値の変化は生じたが,裸眼視力がC1.0以上に保たれていたため,とくに患者満足度に変化を生じるほどではなかった.通常の患者では同様の乱視変化は認めていないため,LASIKを含めた屈折矯正手術後の合併症であるドライアイ6)が本症例のような自覚屈折値の変化の原因ではないかと考えている.距離図3図2の症例のLock-in後の全距離視力●おわりにLALは,術後に患者本人の自覚を確認しながら度数調整できる.これまでにないCIOLである.LASIKなどの屈折矯正手術後の患者は見え方の質へのこだわりが強い場合が多いが,術後に自覚をもとに乱視を含めた屈折値を変化できることで,高い患者満足度を得やすい.今後もこうした新しいCIOLに注目していきたいと考えている.文献1)SchwartzDM:Light-adjustablelens.TransAmOphthal-molSocC101:417-436,C20032)FordJ,WernerL,MamalisN:Adjustableintraocularlenspowertechnology.JCataractRefractSurgC40:1205-1223,C20143)HengererCFH,CMullerCM,CDickCHBCetal:ClinicalCevalua-tionCofCmacularCthicknessCchangesCinCcataractCsurgeryCusingCaClight-adjustableCintraocularClens.CJCRefractCSurgC32:250-254,C20164)SchojaiM,SchultzT,SchulzeKetal:Long-termfollow-upandclinicalevaluationofthelight-adjustableintraocu-larlensimplantedaftercataractremoval:7-yearresults.CJCataractRefractSurgC46:8-13,C20205)WongCJR,CFoldenCDV,CWandlingCGRCetal:VisualCout-comesCofCaCsecond-generation,CenhancedCUVCprotectedClightCadjustableClensCinCcataractCpatientsCwithCpreviousCLASIKCand/orCPRK.CClinCOphthalmolC17:3379-3387,C20236)NairCS,CKaurCM,CSharmaCNCetal:RefractiveCsurgeryCandCdryCeyeC─CAnCupdate.CIndianCJCOphthalmolC71:1105-1114,C2023C