硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載199199Coats様病変を有する網膜色素変性に対する硝子体手術(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに網膜色素変性に合併する網膜病変としては黄斑上膜,.胞様黄斑浮腫などの報告が多いが,まれにCCoats様病変を合併することがある1,2).その発症機序としては,網膜色素変性による網膜循環障害により異常網膜血管が生じるとする説3),変性した網膜や色素上皮から異常な生理活性物質が放出されるとする説4),Bruch膜の断裂部位に新生血管が侵入してくるとする説5)などがある.治療は通常のCCoats病と同様にレーザー光凝固が基本であるが,治療に抵抗する重症例では硝子体手術が必要となることがある.C●自験例症例はC43歳,女性.網膜色素変性の診断で経過観察中に右眼視野欠損を自覚した.右眼の下方に滲出性網膜.離を合併したCCoats様病変を認めたため,異常網膜血管に対して光凝固を施行した.しかし,滲出性網膜.離がさらに増悪した(図1)ため,硝子体手術を施行した.手術は水晶体を切除した後,硝子体切除を行い,後極から周辺に向かって人工的後部硝子体.離を作製した.肥厚した後部硝子体膜と網膜が強固に癒着していたため,適宜硝子体鑷子や剪刀を使用した.下方の網膜下硬性白斑が多量であったため,下方周辺部に意図的裂孔を作製し,網膜下硬性白斑および滲出液を抜去した.その後,液体パーフルオロカーボンで網膜を伸展し,眼内光凝固,周辺部輪状締結術,シリコーンオイルタンポナ-デを施行した.半年後にシリコーンオイルを抜去し,眼内レンズ二次挿入術を施行した.術後,眼底の状態は落ち着いたが,矯正視力はC0.2にとどまった(図2).C●Coats様病変を有する網膜色素変性の臨床的特徴通常のCCoats病と異なり,両眼性が多く,片眼性でも僚眼に網膜血管異常を有することがある.通常のCCoats病が小児期の男性に多いのに対して,性差はなく,発症年齢も高い.病変部位は下方C4分のC1象限が多く,光凝(97)C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY図1光凝固施行後の右眼眼底写真下方の異常網膜血管にレーザー光凝固を施行したが,硬性白斑と滲出性網膜.離が増強した.図2硝子体手術後の右眼眼底写真下方に意図的裂孔を作製し,硬性白斑を抜去した.固などの治療に抵抗性で難治例が多い.光凝固を施行しても滲出性病変が進行した場合や硝子体出血をきたした場合には,硝子体手術の適応となることがある6).網膜色素変性は通常,肥厚した後部硝子体膜が網膜と広範囲に癒着していることが多いので,確実な人工的後部硝子体.離を作製したうえで,病変部位に適切な治療を行う.網膜下硬性白斑が多量の場合は,今回のように意図的裂孔から抜去する方法が有効であるが,術後の再.離や再増殖に注意する必要がある.文献1)MorganCWEC3rd,CCrawfordJB:RetinitisCpigmentosaCandCCoats’disease.ArchOphthalmol79:146-149,C19682)AyeshI,SandersMD,FriedmannAI:Retinitispigmento-saCandCCoats’sCdisease.CBrCJCOphthalmolC60:775-777,C19763)WitschelH:RetinopathiaCpigmentosaCand“MorbusCCoats”.KlinMonblAugenheilkdC164:405-411,C19744)WolbarshtCML,CLandersCMBC3rd,CWadsworthCJACetal:CRetinitispigmentosa:CclinicalCmanagementCbasedConCcur-rentconcepts.AdvExpMedBiolC77:181-195,C19775)FogleJA,WelchRB,GreenWR:RetinitispigmentosaandexudativeCvasculopathy.CArchCOphthalmolC96:696-702,19786)大崎明子,今後充代,加藤久幸ほか:網膜色素変性症にCoats様病変と硝子体出血を合併した症例.眼臨紀1:810-813,C2008あたらしい眼科Vol.36,No.12,2019C1573