《原著》あたらしい眼科37(3):336?344,2020?ブリモニジン/チモロール配合点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)および高眼圧症を対象とした第II相臨床試験―チモロールとの比較試験新家眞*1福地健郎*2中村誠*3関弥卓郎*4*1公立学校共済組合関東中央病院*2新潟大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野*3神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野*4千寿製薬株式会社PhaseIStudytoEvaluatetheE?cacyandSafetyofNovelBrimonidine/TimololOphthalmicSolutionComparedwithTimololOphthalmicSolutioninPatientswithPrimaryOpen-angleGlaucoma(BroadDe?nition)orOcularHypertensionMakotoAraie1),TakeoFukuchi2),MakotoNakamura3)andTakuroSekiya4)1)KantoCentralHospitaloftheMutualAidAssociationofPublicSchoolTeachers,2)DivisionofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofMedicalandDentalSciences,NiigataUniversity,3)DepartmentofSurgery,DivisionofOphthalmology,KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine,4)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltdはじめに緑内障は,わが国における視覚障害原因の第1位を占めているが1),根本治療法はなく,エビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧下降である2).緑内障診療ガイドラインでは,薬物治療を行う場合,まず単剤(単薬)療法から開始し,有効性が十分でない場合には多剤併用(配合点眼剤を含む)〔別刷請求先〕新家眞:〒158-8531東京都世田谷区上用賀6-25-1公立学校共済組合関東中央病院Reprintrequests:MakotoAraie,M.D.,Ph.D.,KantoCentralHospitaloftheMutualAidAssociationofPublicSchoolTeachers,6-25-1Kamiyoga,Setagaya-ku,Tokyo158-8531,JAPAN336(88)0910-1810/20/\100/頁/JCOPYを行うとされており2),多剤併用患者は年々増えている3?5).その一方で,アドヒアランスの低下や点眼剤に含まれる保存剤による角膜上皮障害,点眼間隔を十分に空けずに点眼することによる治療効果の減弱(洗い流し効果)などの多剤併用治療特有の問題も発生している6?8).それらを軽減または回避するため,多剤併用の際には配合点眼剤の使用による患者のアドヒアランスを考慮する必要がある2).現在,わが国で承認されている配合点眼剤の有効成分の組み合せはプロスタグランジン関連薬とb遮断薬,または炭酸脱水酵素阻害薬とb遮断薬の組合せのみであることから,上記以外の組み合わせの配合点眼剤の開発は治療の選択肢を拡大するという点において臨床的意義があると考える.0.1%ブリモニジン酒石酸塩/0.5%チモロールマレイン酸塩配合点眼剤(以下,SJP-0135)は,a2作動薬であるブリモニジン酒石酸塩とb遮断薬であるチモロールマレイン酸塩を有効成分とする,わが国初のa2作動薬を含む配合点眼剤である.ブリモニジン酒石酸塩は第二選択薬として使用される薬剤であり,房水産生抑制およびぶどう膜強膜流出促進することで眼圧下降効果を示す9).臨床試験においては他の緑内障治療薬と併用することでさらなる眼圧下降効果が得られている10).また,眼圧下降効果に相応しない視野維持効果があることも報告されている11).チモロールマレイン酸塩は第一選択薬として使用される薬剤であり,房水産生抑制により眼圧下降効果を示す12,13).わが国では,ブリモニジン酒石酸塩点眼剤の使用患者の約6割にb遮断薬が併用されている14).SJP-0135は作用機序の異なる両有効成分を配合していることから,相加的な眼圧下降効果が期待される.海外では,0.2%ブリモニジン酒石酸塩/0.5%チモロールマレイン酸塩配合点眼剤(COMBIGAN,米国Allergan,Inc.)が60を超える国と地域で承認,販売されている.今回は,SJP-0135の第III相比較試験として,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象に,SJP-0135の有効性(眼圧下降効果)および安全性について,SJP-0135の有効成分の一つである0.5%チモロールマレイン酸塩点眼剤(以下,チモロール)を対照に比較検討したので報告する.I方法1.実施医療機関および治験責任医師本治験は,2017年3月?2017年12月に表1に示す全国67医療機関で実施した.治験開始に先立ち,すべての医療機関の治験審査委員会で審議され,治験の実施が承認された.本治験は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則,本治験実施計画書,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」第14条第3項および第80条の2に規定する基準,ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)に関する省令」などの関連規制法規を遵守して実施した.治験の実施状況の登録は,UMIN-CTRに行った(UMIN試験ID:UMIN000026472).2.目的SJP-0135を4週間点眼したときの有効性(眼圧下降効果)および安全性について,チモロールを対照に比較検討する.さらに,参照群として0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤(以下,ブリモニジン)およびチモロールの併用群を設定し,SJP-0135の有効性および安全性が各単剤の併用と同程度であることを確認する.3.対象対象は,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症と診断され,チモロールを4週間投与後の眼圧が18.0mmHg以上で,表2の基準に該当する患者とした.すべての被験者から治験参加前に文書による同意を得た.4.方法a.被験薬被験薬は,点眼剤1ml中にブリモニジン酒石酸塩を1.0mg,チモロールを5.0mg(チモロールマレイン酸塩として6.8mg)含有する水性点眼剤である.b.治験デザイン・投与方法本治験は,多施設共同無作為化単遮閉(評価者遮閉)並行群間比較試験として実施した.観察期にチモロールを両眼に1回1滴,1日2回(朝および夜),4週間点眼した後,治療期に,SJP-0135群はSJP-0135およびSJP-0135基剤(プラセボ)点眼剤,チモロール群はチモロールおよびプラセボ点眼剤,併用群(参照群)はブリモニジンおよびチモロールを,両眼に1回1滴,1日2回(朝および夜),4週間点眼した.治験薬の点眼間隔は5分以上10分以内とした.遮閉性を確保するため,SJP-0135群およびチモロール群ではプラセボ点眼剤を用い,すべての投与群で2剤の治験薬を点眼した.治験デザインを図1に示した.治験薬は点眼容器を小箱に入れて封緘し,外観上の識別不能性を確保した.治験薬の割付は,割付責任者が,識別不能性を確認したのち,無作為割付を行った.被験者への割付は,観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値の2時間値および観察期終了日(治療期開始日)の2時間値のスクリーニング検査日からの変化値を因子とし,施設および各因子の群間のバランスを確保するため,動的割付を行った.SJP-0135群,チモロール群,併用群の割付比は,3:3:1とした.割付表は厳封し,開鍵時まで割付責任者が保管した.c.被験者数SJP-0135群とチモロール群の眼圧下降の差を1.0mmHg,共通の標準偏差を約2.8mmHgと推定し,有意水準両側5%,検出力90%と設定し,必要な評価被験者数を各群166例と表1実施医療機関および治験責任医師実施医療機関治験責任医師実施医療機関治験責任医師富士見台眼科浅野由香医療法人社団緑泉会南波眼科南波久斌三橋眼科医院三橋正忠医療法人かがやきくぼた眼科久保田泰隆道玄坂加藤眼科加藤卓次医療法人菅澤眼科医院菅澤啓二成城クリニック松﨑栄医療法人泰明堂福島アイクリニック狩野廉医療法人社団はしだ眼科クリニック橋田節子医療法人前田眼科前田秀高医療法人社団ひいらぎ会若葉台眼科佐藤功医療法人創夢会むさしドリーム眼科武蔵国弘たまがわ眼科クリニック關保尾上眼科医院尾上晋吾医療法人社団富士青陵会なかじま眼科中島徹医療法人稲本眼科医院稲本裕一医療法人社団ムラマツクリニックむらまつ眼科医院村松知幸医療法人湖崎会湖崎眼科湖崎淳医療法人社団優あい会小野眼科クリニック小野純治杉浦眼科杉浦寅男医療法人社団橘桜会さくら眼科松久充子ふじつ眼科藤津揚一朗北川眼科医院北川厚子医療法人社団鈴木眼科鈴木克佳医療法人良仁会柴眼科医院柴宏治新井眼科医院新井三樹東北大学病院津田聡医療法人杏水会右田眼科右田雅義福井大学医学部附属病院稲谷大松村眼科医院松村明東京大学医学部附属病院坂田礼医療法人慶明会宮崎中央眼科病院髙岸麻衣北里大学病院松村一弘姶良みやもと眼科宮本純孝岐阜大学医学部附属病院川瀬和秀医療法人陽山会井後眼科馬渡祐記熊本大学医学部附属病院井上俊洋医療法人恕心会さめしま眼科鮫島基泰株式会社日立製作所土浦診療健診センタ坪井一穂医療法人耕真会えとう眼科クリニック江藤耕太郎医療法人社団いとう眼科大原睦子新潟大学医歯学総合病院福地健郎医療法人社団悠琳会しぶや眼科クリニック渋谷裕子さいとう眼科齋藤代志明医療法人社団泰成会こんの眼科今野泰宏医療法人社団豊栄会さだまつ眼科クリニック貞松良成医療法人社団優美会川口あおぞら眼科清水潔医療法人社団済安堂お茶の水・井上眼科クリニック岡山良子医療法人社団恵香会やまぐち眼科クリニック山口恵子医療法人健究社スマイル眼科クリニック岡野敬医療法人社団深志清流会清澤眼科医院清澤源弘神戸大学医学部附属病院中村誠いまい眼科今井雅仁みなもと眼科皆本敦医療法人社団善春会若葉眼科病院吉野啓医療法人社団仁香会しすい眼科医院呉輔仁医療法人高橋眼科髙橋研一東海大学医学部付属東京病院山崎芳夫医療法人豊潤会松浦眼科医院松浦雅子東邦大学医療センター大橋病院石田恭子野村眼科野村亮二東海大学医学部付属病院中川喜博医療法人湘山会眼科三宅病院三宅豪一郎祇園すやま眼科クリニック須山貴子長坂眼科クリニック長坂智子みぞて眼科溝手秀秋吉村眼科内科医院吉村弦算出した.併用群は参照群とし,評価被験者数を55例とした.中止脱落を考慮し,SJP-0135群,チモロール群の目標被験者数を各群175例,併用群を58例,合計408例と設定した.5.検査・観察項目眼圧,最高矯正視力,眼科的所見(結膜・眼瞼・角膜),眼底,視野および血圧・脈拍数の各検査を表2のスケジュールで実施した.眼圧は,Goldmann圧平眼圧計で朝の点眼前を0時間値として8時?10時の間に測定し,点眼後は2時間値を測定した.有害事象は,治験薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくないまたは意図しない疾病またはその徴候を収集した.治験薬との因果関係を否定できない場合表2おもな選択基準および除外基準おもな選択基準1)20歳以上の外来患者(日本人),性別不問2)両眼とも最高矯正視力が0.3以上3)観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値が18.0mmHg以上31.0mmHg以下おもな除外基準1)緑内障に対する手術またはレーザー療法,内眼手術(各種レーザー療法を含む),角膜移植術または角膜屈折矯正手術の既往のある者2)コンタクトレンズの装用が必要な者3)高度の視野障害がある者4)スクリーニング検査日の過去180日以内に副腎皮質ステロイドの眼内注射,Tenon?下注射または結膜下注射を実施した者5)治験期間中に病状が進行するおそれのある網膜疾患を有する者6)原発開放隅角緑内障(広義),高眼圧症以外の活動性の眼科疾患を有する者7)がんに罹患している者,または重篤な全身性疾患(例:肝障害,腎障害,心血管系疾患,内分泌系疾患)を有する者8)脳血管障害,起立性低血圧,心血管系疾患などの循環不全を有する者9)気管支喘息,気管支痙攣もしくは重篤な慢性閉塞性肺疾患を有する,または既往のある者10)コントロール不十分な心不全,洞性徐脈,房室ブロック(II,III度)もしくは心原性ショックを有するまたは既往のある者11)肺高血圧による右心不全,うっ血性心不全,糖尿病性ケトアシドーシス,代謝性アシドーシスまたはコントロール不十分な糖尿病のある者12)ブリモニジン酒石酸塩または他のa2作動薬,チモロールマレイン酸塩または他のb遮断薬,本治験で使用する薬剤の成分に対し,アレルギーまたは重大な副作用の既往のある者13)緑内障・高眼圧症に対する治療薬,副腎皮質ステロイド,交感神経刺激薬,交感神経遮断薬,副交感神経刺激薬,モノアミン酸化酵素阻害薬,抗うつ薬,炭酸脱水酵素阻害薬,抗コリン作用を含む治療薬および眼局所の治療薬を使用する予定のある者14)その他,治験責任医師または治験分担医師が本治験への参加が適切でないと判断した者SCR注1前治療観察期治療期4週・現行治療(緑内障点眼薬の種類は問わない)または無治療・チモロールを点眼・観察期終了日の0時間値および2時間値の眼圧値が18mmHg以上31mmHg以下の場合,治療期へ移行する・SJP-0135群:SJP-0135+プラセボチモロール群:チモロール+プラセボ併用群:ブリモニジン+チモロールを点眼注1:スクリーニング検査日図1治験デザインは副作用とした.6.併用薬および併用処置治験期間中は,表3の除外基準に抵触する薬剤および処置の併用は禁止した.7.評価方法および解析方法a.有効性有効性は,最大の解析対象集団(fullanalysisset:FAS)を主たる解析対象集団とした.主要評価項目は,治療期の投与4週における治療期開始日からの眼圧変化値(2時間値)とした.欠測値に対しては,lastobservationcarriedfor-ward(LOCF)によりデータを補完した.副次評価項目は,治療期の投与4週における眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値,眼圧変化率(それぞれの0時間値,2時間値,7時間値,0時間値と2時間値の平均値および0時間値と2時間表3検査・観察スケジュール観察期(4週)治療期(4週)Visit1Visit2Visit3中止脱落時スクリーニング検査日観察期終了日(治療期開始日)4週─測定時点(時間)─027027027同意取得○背景因子●●点眼●●最高矯正視力●●●●結膜・眼瞼・角膜所見●●●●●●眼圧●●●(●)●●(●)●●(●)眼底●●●視野●●●血圧・脈拍数●●●(●)●●(●)●●(●)点眼状況●●●有害事象○:スクリーニング実施前に文書による同意を取得した.(●):7時間値を測定することに同意が得られた被験者について実施した.値と7時間値の平均値)とした.7時間値測定は,7時間値測定に同意が得られた被験者のみを対象とした.t検定(有意水準両側5%)によりSJP-0135群およびチモロール群の2群間で比較した.眼圧値については,治療期開始日と治療期の投与4週をpairedt検定(有意水準両側5%)により比較した.b.安全性安全性は,治療期に組み入れられたすべての被験者のうち,治験薬の投与を一度も受けなかった被験者,初診時(治療期開始日)以降の再来院がないなどの理由により安全性が評価できなかった被験者を除外した集団を安全性解析対象集団(safetyset:SS)とした.有害事象,最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧および脈拍数を評価した.有害事象は,発現割合(発現例数/SS)を算出した.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,血圧および脈拍数は,治療期の治験薬投与前後を比較した.眼底および視野は,スクリーニング検査日からの悪化の有無について比較した.II結果1.被験者の構成同意を取得できた被験者は487例で,観察期としてチモロールの投与を開始したのは470例であった.このうち385例が無作為化され,治療期の投与を開始した.治験完了例は380例,治験未完了例は5例であった.治療期を開始した385例全例(SJP-0135群163例,チモロール群164例,併用群58例)をSSとした.このうち,治療期開始日以降の有効性評価が可能な検査データがなかった5例を除く380例(SJP-0135群159例,チモロール群163例,併用群58例)をFASとした.被験者背景(FAS)を表4に示した.2.有効性眼圧値ならびに治療期開始日からの眼圧変化値および眼圧変化率を表5に,治療期投与4週の眼圧変化値を図2に示した.主要評価項目である,治療期投与4週における眼圧変化値(2時間値)(LOCF)の平均は,SJP-0135群では?3.1±2.4mmHg,チモロール群では?1.8±2.1mmHgであり,統計学的に有意な差を認め(点推定値:?1.3mmHg,95%両側信頼区間:?1.8??0.9mmHg,p<0.0001),SJP-0135群のチモロール群に対する優越性を検証できた.副次評価項目の治療期投与4週における眼圧値,眼圧変化値,変化率は,2時間値および0時間値と2時間値の平均で,SJP-0135群のチモロール群に対する統計学的に有意な差を認めたが,0時間値は両投与群間で統計学的に有意な差を認めなかった(いずれもp<0.01).測定時点に7時間値を含む7時間測定同意症例の結果についても,同様であった(いずれもp<0.001).SJP-0135群およびチモロール群で,治療期投与4週における眼圧値は,すべての測定時点で投与前と比較して,統計表4被験者背景(FAS)項目分類SJP-0135(n=159)TIM(n=163)併用(n=58)合計(n=380)性別男75(47.2)72(44.2)24(41.4)171(45.0)女84(52.8)91(55.8)34(58.6)209(55.0)年齢(歳)平均値±標準偏差62.0±12.462.1±12.861.7±14.7?最小値?最大値32?8722?8520?87?対象疾患注1原発開放隅角緑内障(広義)115(72.3)121(74.2)43(74.1)279(73.4)(有効性評価対象眼)原発開放隅角緑内障80(50.3)86(52.8)26(44.8)192(50.5)前視野緑内障35(22.0)35(21.5)17(29.3)87(22.9)高眼圧症44(27.7)42(25.8)15(25.9)101(26.6)緑内障治療薬注2有128(80.5)124(76.1)47(81.0)299(78.7)無31(19.5)39(23.9)11(19.0)81(21.3)眼局所の合併症注2有113(71.1)104(63.8)37(63.8)254(66.8)無46(28.9)59(36.2)21(36.2)126(33.2)眼局所以外の合併症有116(73.0)114(69.9)42(72.4)272(71.6)無43(27.0)49(30.1)16(27.6)108(28.4)例数(%),TIM:チモロール?:該当なし注1:対象疾患は下のように定義した.原発開放隅角緑内障:以下の(1),(2)を満たす者前視野緑内障:以下の(2)を満たし治療が必要と判断された者(1)緑内障性視野異常の存在,(2)緑内障性視神経乳頭の存在注2:左右眼どちらか一方でも該当した場合,有とした.表5眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率測定時点SJP-0135TIM併用0時間値治療期開始日眼圧値(mmHg)19.9±1.9(159)20.2±1.7(163)20.3±1.8(58)治療期投与4週眼圧値(mmHg)18.1±2.5*(159)18.5±2.6*(163)17.9±2.2(58)変化値(mmHg)?1.8±2.3(159)?1.7±2.0(163)?2.3±1.9(58)2時間値変化率(%)?8.8±11.0(159)?8.6±9.9(163)?11.5±9.0(58)治療期開始日眼圧値(mmHg)19.7±1.8(159)19.7±1.9(163)19.8±1.8(58)治療期投与4週眼圧値(mmHg)16.6±2.4*†(159)17.9±2.7*†(163)16.8±2.2(58)変化値(mmHg)?3.1±2.4†(159)?1.8±2.1†(163)?3.0±2.2(58)変化率(%)?15.7±11.4†(159)?9.2±10.7†(163)?14.9±10.0(58)7時間値治療期開始日眼圧値(mmHg)18.9±2.4(137)19.2±2.1(137)19.5±2.2(47)治療期投与4週眼圧値(mmHg)16.9±2.7*†(136)18.1±2.5*†(137)17.1±2.5(47)変化値(mmHg)?2.0±2.2†(136)?1.1±2.0†(137)?2.3±2.1(47)変化率(%)?10.1±10.9†(136)?5.4±10.1†(137)?11.8±10.1(47)0時間値と2時間値の平均値治療期開始日眼圧値(mmHg)19.8±1.7(159)20.0±1.7(163)20.0±1.7(58)治療期投与4週眼圧値(mmHg)17.4±2.2*†(159)18.2±2.5*†(163)17.4±2.1(58)変化値(mmHg)?2.5±2.0†(159)?1.8±1.8†(163)?2.7±1.9(58)変化率(%)?12.3±9.6†(159)?8.9±9.2†(163)?13.2±8.7(58)0時間値と2時間値と7時間値の平均値治療期開始日眼圧値(mmHg)19.5±1.8(137)19.7±1.7(137)20.0±1.8(47)治療期投与4週眼圧値(mmHg)17.2±2.2*†(136)18.2±2.4*†(137)17.4±2.1(47)変化値(mmHg)?2.4±1.7†(136)?1.5±1.6†(137)?2.5±1.8(47)変化率(%)?12.0±8.4†(136)?7.5±8.2†(137)?12.7±8.3(47)平均値±標準偏差(例数),TIM:チモロール*:p<0.0001(SJP-0135およびチモロールの眼圧値について,治療期開始日と治療期投与4週をpairedt検定で比較した.有意水準:両側5%)†:p<0.01(SJP-0135vsチモロールt検定,有意水準:両側5%)00時間値2時間値-1-2-3-4-5-6■SJP-0135チモロール■併用7時間値(159)(163)(58)(159)(163)(58)(136)(137)(47)平均値±標準偏差,*:p<0.01(SJP-0135vsチモロールt検定,有意水準:両側5%)図2治療期投与4週の眼圧変化値(例数表6治療期副作用の発現割合安全性解析対象集団例数SJP-0135(n=163)TIM(n=164)併用(n=58)副作用名注1件数例数(%)件数例数(%)件数例数(%)全体2218(11.0)77(4.3)55(8.6)眼障害2118(11.0)66(3.7)44(6.9)点状角膜炎44(2.5)33(1.8)11(1.7)眼刺激44(2.5)22(1.2)11(1.7)結膜充血44(2.5)11(0.6)22(3.4)角膜びらん22(1.2)00(0.0)00(0.0)眼部不快感22(1.2)00(0.0)00(0.0)結膜浮腫11(0.6)00(0.0)00(0.0)アレルギー性結膜炎11(0.6)00(0.0)00(0.0)羞明11(0.6)00(0.0)00(0.0)閃輝暗点11(0.6)00(0.0)00(0.0)眼そう痒症11(0.6)00(0.0)00(0.0)眼障害以外11(0.6)11(0.6)11(1.7)徐脈00(0.0)11(0.6)00(0.0)耳そう痒症11(0.6)00(0.0)00(0.0)傾眠00(0.0)00(0.0)11(1.7)TIM:チモロール.注1:副作用名はICH国際医薬用語集MedDRA/JVersion19.1のPT(基本語)を用いて分類した.学的に有意な変化を認めた(いずれもp<0.0001).測定時点に7時間値を含む7時間測定同意症例の結果についても,同様であった(いずれもp<0.0001).併用群の治療期投与4週における眼圧変化値(2時間値)の平均は,?3.0±2.2mmHgであり,SJP-0135群の眼圧下降効果と同程度であった.3.安全性本治験でSJP-0135群,チモロール群および併用群に発現した有害事象はそれぞれ39例(23.9%)54件,29例(17.7%)34件および11例(19.0%)12件で,各投与群の発現割合は同程度であった.このうち副作用は,それぞれ18例(11.0%)22件,7例(4.3%)7件,5例(8.6%)5件で,各投与群の発現割合は同程度であった.副作用の発現割合を表6に示した.おもな副作用は,SJP-0135群では点状角膜炎4例(2.5%),眼刺激4例(2.5%),結膜充血4例(2.5%),角膜びらん2例(1.2%)および眼部不快感2例(1.2%),チモロール群では点状角膜炎3例(1.8%)および眼刺激2例(1.2%),併用群では結膜充血2例(3.4%)であった.重度と判定された有害事象はいずれの投与群にもなく,中等度と判定された有害事象はSJP-0135群に3例(1.8%)3件,チモロール群に1例(0.6%)1件,併用群に2例(3.4%)2件であり,その他は軽度であった.有害事象による中止例,死亡例,重篤な副作用はなかった.バイタルサイン,身体的所見および安全性に関連する他の観察項目でも,臨床上問題となるような変動や所見に関連する副作用はなかった.III考按今回,SJP-0135の有効性を検証するにあたり,SJP-0135の有効成分の一つであり,わが国でプロスタグランジン関連薬とともに第一選択薬として広く使用されているチモロールを対照薬として用い,比較試験を行った.有効性に関しては,治療期投与4週における2時間値の眼圧変化値および眼圧変化率の比較の結果,SJP-0135群のチモロール群に対する統計学的に有意な差を認めた.また,測定時点に7時間値を含む日内眼圧下降効果の検討において,眼圧変化値および眼圧変化率はともに,SJP-0135群で治療期投与4週の2時間値,7時間値,0時間値と2時間値の平均および0時間値と2時間値と7時間値の平均のいずれにおいても統計学的に有意な差を認め,1日を通して良好な眼圧下降効果を確認した.さらに,眼圧変化値および眼圧変化率は全測定時点において,SJP-0135群と参照群とした併用群で同程度であった.これらのことから,SJP-0135はチモロール単剤から切り替えることで,追加の眼圧下降効果が得られること,ブリモニジンとチモロールの併用から切り替えることで薬剤数を減らしかつ同程度の眼圧下降効果が得られると考える.SJP-0135と同様にチモロールと第二選択薬の配合点眼剤として,ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩点眼液(コソプト配合点眼液)およびブリンゾラミド/チモロールマレイン酸塩配合懸濁性点眼液(アゾルガ配合懸濁性点眼液)がわが国では販売されている.いずれの製剤においてもSJP-0135と同様に観察期にチモロール点眼液(1日2回)を点眼した国内第III相二重遮閉比較試験の報告がある.これらの治験開始時および終了時の2時間値の眼圧値(平均値±標準偏差)は,ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩点眼液で20.58±2.07mmHg,18.04±2.79mmHg15),ブリンゾラミド/チモロールマレイン酸塩配合懸濁性点眼液20.7±2.5mmHg,17.5±3.3mmHg16,17)であった.一方,本治験では,SJP-0135群における治験開始時および治療期4週の2時間値の眼圧値(平均値±標準偏差)は19.7±1.8mmHg,16.6±2.4mmHgであった.このことから,SJP-0135は他の配合点眼薬と同様に,チモロール単剤からの切り替えにより良好な眼圧下降効果を示すことが期待される.安全性に関しては,有害事象の発現割合はSJP-0135群で23.9%,チモロール群で17.7%,併用群で19.0%に認め,各投与群の発現割合は同程度であった.副作用発現割合も3群間で同程度であり,いずれの群においても重篤な副作用は認めなかった.SJP-0135群で比較的発現割合の高かった副作用は点状角膜炎(2.5%)および眼刺激(2.5%)であったが,これらは0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液(アイファガン点眼液0.1%)およびチモロール点眼液において既知の副作用であり,発現割合はチモロール群および併用群と同程度であった.このことから,4週間の使用ではSJP-0135の安全性はチモロール単剤および併用療法と同様に良好であると考える.以上の結果より,SJP-0135は原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症の患者に対して,既承認薬であるチモロール点眼剤に比べ眼圧下降効果は有意に高く,その効果は1日を通じて良好であること,さらに安全性に問題のないことを確認した.このことから,b遮断薬単剤からSJP-0135に変更することで,薬剤数および点眼回数を変えることなく,より高い眼圧下降効果を得ることができると考えられる.また,すでにa2作動薬およびb遮断薬を併用している場合は,SJP-0135に変更することで併用治療と同程度の治療効果が得られることに加え,薬剤数および総点眼回数が減ることで患者のアドヒアランスが向上すると考えられる.SJP-0135はa2作動薬であるブリモニジン酒石酸塩を有効成分として含有するわが国初の配合点眼剤である.ブリモニジン酒石酸塩は眼圧下降効果に相応しない視野維持効果が報告されていることから11),SJP-0135でも同様の効果が期待される.以上より,SJP-0135は緑内障治療において有用性の高い配合点眼液であると考える.文献1)MorizaneY,MorimotoN,FujiwaraAetal:IncidenceandcausesofvisualimpairmentinJapan:the?rstnation-widecompleteenumerationsurveyofnewlycerti?edvisu-allyimpairedindividuals.JpnJOphthalmol63:26-33,20192)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第4版.日眼会誌122:5-53,20183)清水美穂,今野伸介,片井麻貴ほか:札幌医科大学およびその関連病院における緑内障治療薬の実態調査.あたらしい眼科23:529-532,20064)新井ゆりあ,井上賢治,塩川美菜子ほか:多施設による緑内障患者の治療実態調査2016年版─正常眼圧緑内障と原発開放隅角緑内障.臨眼71:1541-1547,20175)石澤聡子,近藤雄司,山本哲也:一大学附属病院における緑内障治療薬選択の実態調査.臨眼60:1679-1684,20066)溝上志朗:点眼アドヒアランスに影響する要因とその対処法.薬局65:1835-1839,20147)ChraiSS,MakoidMC,EriksenSPetal:Dropsizeandinitialdosingfrequencyproblemsoftopicallyappliedoph-thalmicdrugs.JPharmSci6:333-338,19748)FukuchiT,WakaiK,SudaKetal:Incidence,severityandfactorsrelatedtodrug-inducedkeratoepitheliopathywithglaucomamedications.ClinOphthalmol4:203-209,20109)BurkeJ,SchwartzM:Preclinicalevaluationofbrimoni-dine.SurvOphthalmol41(Suppl1):S9-S18,199610)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした臨床第III相試験─チモロールとの比較試験またはプロスタグランジン関連薬併用下におけるプラセボとの比較試験.日眼会誌116:955-966,201211)KrupinT,LiebmannJM,Green?eldDSetal:Arandom-izedtrialofbrimonidineversustimololinpreservingvisualfunction:resultsfromthelow-pressureglaucomatreat-mentstudy.AmJOphthalmol151:671-681,201112)LarssonLI:Aqueoushumor?owinnormalhumaneyestreatedwithbrimonidineandtimolol,aloneandincombi-nation.ArchOphthalmol119:492-495,200113)CoakesRL,BrubakerRF:Themechanismoftimololinloweringintraocularpressure:Inthenormaleye.ArchOphthalmol96:2045-2048,197814)2014年4月?2018年3月における縮瞳薬及び緑内障治療剤:局所用の使用状況.株式会社JMDC15)北澤克明,新家眞;MK-0507A研究会:緑内障および高眼圧症患者を対象とした1%ドルゾラミド塩酸塩/0.5%チモロールマレイン酸塩の配合点眼液(MK-0507A)の第III相二重盲検比較試験.日眼会誌115:495-507,201116)YoshikawaK,KozakiJ,MaedaH:E?cacyandsafetyofbrinzolamide/timolol?xedcombinationcomparedwithtimololinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:389-399,201417)アゾルガ配合懸濁性点眼液添付文書.ノバルティスファーマ株式会社,2019◆**