後眼部色素性病変─脈絡膜母斑,脈絡膜メラノーマ,視神経乳頭黒色細胞腫MelanoticTumorsoftheOcularFundus古田実*はじめに後眼部に生じる原発性色素性病変は,メラニン産生細胞である網膜色素上皮細胞と脈絡膜のメラノサイト,母斑細胞などが原因である.本来はその色調から,疾患の鑑別は容易であるはずであるのに,中間透光体の混濁,網膜の色調変化,網膜?離,網膜色素上皮の変性,反応性病変,転移性病変,そして無色素性病変の存在などが鑑別診断をむずかしくする.本稿においては,代表的な腫瘍性病変の典型例と非典型例をアトラス形式で解説する.I脈絡膜母斑脈絡膜に生じた母斑細胞母斑である.母斑細胞は神経堤由来ではあるが,メラノサイトやSchwann細胞のどちらにも分化できなかった中途半端な組織である.青色母斑や太田母斑のように,メラノサイトが過剰に増生している病態よりは悪性黒色腫(メラノーマ)には遠いといえる.実際に,脈絡膜母斑の悪性化率は8,845病変に1つであるが1),太田母斑患者の眼底メラノーシスのメラノーマ発症率は400例に1人であることが知られている2,3).臨床所見のバリエーションはとても多く,診断に苦慮することもある.病変自体の所見と,付随する変化のバリエーションをいくつか呈示する.脈絡膜母斑診断後の臨床上のポイントは,①視力低下の原因となるか,②悪性化のリスクはあるか,の2点に絞られる.大きな母斑と小さなメラノーマを鑑別するためには,眼底画像診断をもとにした危険因子を参考にする4).全部で6種類あり“ToFindSmallOcularMelanomaDoingImaging”(TFSOM-DIM)と語呂合わせされている.Thickness腫瘍厚>2mm(超音波検査),Fluidsubreti-nal網膜?離(OCT),Symptomsvisionloss視力低下(視力),Orangepigmentオレンジ色素(眼底自発蛍光),Melanomahollow腫瘍内低反射(超音波検査)とDIaMeter腫瘍径>5mm(眼底写真)である.これらの危険因子から,統計学的に5年後にメラノーマに移行する危険率は,0因子で1%(ハザード比HR0.8),1因子で11%(HR3.09),2因子で22%(HR10.6),3因子で34%(HR15.1),4因子で51%(HR15.2),5因子で55%(HR26.4)であり,臨床的には,4因子以上をもつ病変はメラノーマと診断することが推奨されている.危険因子の中でも,腫瘍厚,網膜?離,オレンジ色素はもっとも重要な所見である.オレンジ色素は眼底自発蛍光で過蛍光を呈する,網膜後面の斑状沈着物として観察される.1.典型的な脈絡膜母斑(図1)脈絡膜母斑は,脈絡膜上腔(suprachoroidalspace)を基底にした鏡餅型に発育し,基底は円形で頂点部分も不整形にはならない.OCTや超音波断層検査(Bモードエコー)では,境界明瞭で内部の構造はメラニン色素により透見不可能である.脈絡膜上腔からBモードエコーで計測した腫瘍厚は,2mm未満であることが多く,◆MinoruFuruta:福島県立医科大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕古田実:〒960-1295福島県福島市光が丘1福島県立医科大学医学部眼科学講座(0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(41)41図1典型的な脈絡膜母斑(修飾され変化がない病変)a:カラー眼底.右眼中心窩上方の脈絡膜母斑.b:OCT.脈絡膜内に高反射腫瘤があり,軽微な隆起がある.c:EDI-OCT.脈絡膜内高反射腫瘤は,鏡餅型に脈絡膜上腔側に基底がある.d:bの拡大.脈絡膜毛細管板は保たれており(→),網膜の各層にも途切れはない.e:Bモードエコー.腫瘤は高反射を呈する(→).f:FA中期像.腫瘤による.絡膜の背景蛍光はブロックされる.g:FA後期像.腫瘤と周囲組織からの蛍光漏出はない.h:IA早期像.腫瘤による蛍光ブロックがある.腫瘍内血管はない.i:IA後期像.低蛍光のままで,新生血管はない.頂点付近の網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)は腫瘍の大きさによりさまざまな程度で障害される.小さな病変では脈絡膜毛細管板は障害されていない.フルオレセイン蛍光造影(?uoresceinangiogra-phy:FA)およびインドシアニングリーン蛍光造影(indocyaninegreenangiography:IA)では造影早期から後期まで一貫して低蛍光を示し,蛍光漏出や組織染もみられず,病変への栄養血管や内部の異常血管はない.病変上の網膜色素上皮障害の程度に応じて造影早期から蛍光漏出のない過蛍光を呈するtransmissiondefect(windowdefect)がみられる.大きな脈絡膜母斑(図2),RPE変性の強い脈絡膜母斑(図3),新生血管を伴った脈絡膜母斑(図4),脈絡膜母斑と鑑別を要する先天性網膜色素上皮肥大(図5)を示す.II脈絡膜メラノーマ脈絡膜メラノーマは,脈絡膜メラノサイトの悪性腫瘍であり,成人の原発性眼内悪性腫瘍の中ではもっとも高頻度である.とはいえ,わが国での年間新規患者数は100例に満たないまれな疾患である.脈絡膜メラノーマは,ほぼ全例に漿液性網膜?離か硝子体出血を伴っており,腫瘍上のRPEはさまざまな修飾を受けて多彩な色調を呈する.また,腫瘍自体のメラニンの多寡によるバリエーションがあるため,近年普及した広角眼底カメラと広角OCTを用いたmultimodalimagingを駆使しての判断がきわめて有用である.眼底画像検査以外に,メラノーマの放射線学的検査でもっとも特異性が高いのは,123I-IMPシンチグラム(脳血流シンチ)の24時間像である5).一般的に用いられる18F-FDG-PETよりも感度と特異性が高いとされている.皮膚メラノーマとは異なり,患者は自覚症状が出てからの初診となるため,すでに大きな腫瘍になっていることも多く,生命予後の改善に対する大きな障壁となっている.せめて,受診後には迅速な診断と治療が提供できるよう最大限の配慮が必要である.1.典型的な脈絡膜メラノーマ(図6)脈絡膜メラノーマは,脈絡膜母斑と同様に脈絡膜上腔を基底に発育し,基底は基本的には円形であるが,浸潤性発育のため不整形となることもある.垂直方向のもっとも特徴的な発育形態は,Bruch膜を破って発育するマッシュルーム型であるが,実際には半数例はドーム型となる.病変上のRPEはさまざまな程度の変性が生じ,白色にみえることも多い.漿液性網膜?離は必発であるが,滲出を伴うことはまれである.Bモードエコー検査では,腫瘍内部は特徴的に低反射を示し,正常脈絡膜とのコントラスト(choroidalexcavation)が生じており,診断的意義は高い.微細な強膜外浸潤などもエコ-で検出可能である.眼底自発蛍光では,オレンジ色素の検出性にも優れる.OCTでは,腫瘍上の網膜浮腫や網膜?離が検出され,?胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME)は眼底周辺部に病変がある場合でも生じる.大きな病変では撮影が困難であるが,OCT-angiog-raphy(OCTA)は,腫瘍表面の新生血管を鮮明に描出できる.FAでは,腫瘍上のびまん性蛍光漏出と網膜血管と乳頭からの反応性蛍光漏出があり,CMEがみられる.IAでは,腫瘍内血管が透見されてループ形成や血管拡張がみられ,doublelayerサインとして観察されることがあり,生命予後不良因子の一つに加えられている.IAでみられる低蛍光領域は,病変の大きさを正確に示しており,検眼鏡所見より大きいことがわかる.びまん性発育した脈絡膜メラノーマ(図7),周辺部に生じたマッシュルーム型メラノーマ(図8),脈絡膜メラノーマと鑑別を要する網膜色素上皮腺腫(図9)を示す.III視神経乳頭黒色細胞腫視神経乳頭黒色腫は,先天性非遺伝性病変であり,発症頻度には人種差がない.メラニン色素量が豊富なため,診断は容易である.しかし,視神経乳頭を超えた範囲に色素性病変がある場合,乳頭原発の黒色細胞腫の網脈絡膜浸潤と,傍乳頭脈絡膜母斑やメラノーマの乳頭浸潤を区別するのがむずかしいときがある.補助画像検査には,超音波断層検査,OCT,OCTA,眼底自家蛍光,FA,IA,大きな病変にはMRIなどを行う.視神経乳頭黒色細胞腫が発育しないとの誤った記述をみることがあるが,実際には視力低下は10年で18%の症例に生じ,腫瘍の拡大は5年で11%,10年で32%に生じる6).視図2大きな脈絡膜母TFSOM-DIMのうち,5/6危険因子が陽性のため,厳格な管理と患者との相談を要する例.a:カラー眼底.左視力(0.6),耳側に大きな脈絡膜母斑があり,中心窩を含む範囲に網膜?離がある.頂点では網膜への浸潤を疑わせる所見がある(→).その下方にはオレンジ色素がある(丸印).Bモードエコーでは,高反射を呈し,大きさは基底11mm,腫瘍厚は2.1mmであった.b:OCT.中心窩下に近接する脈絡膜腫瘤があり,網膜?離を伴っている.腫瘤上のRPE障害は高度である.c:青色自発蛍光.帯状過蛍光は,網膜?離が下方に広がる部分である.オレンジ色素に一致して過蛍光斑がある(丸印).d:FA静脈相.RPE障害部位から蛍光漏出があり,後期にはびまん性蛍光漏出が生じた.e:IA静脈相.腫瘍内に異常血管網はない.図3RPE変性の強い脈絡膜母斑(TFSOM?DIMリスクなし)a:カラー眼底.右眼耳側に表面が白色調の腫瘤がある.b:OCT.腫瘤上には網膜?離はなく,腫瘤内部は色素性病変のため,高反射である.RPE障害が強く,古いドルーゼンとRPE変性による変化と考えられる.c:Bモードエコー.腫瘤の基底4.7mm,厚1.6mmで腫瘤内は高反射であった.図4新生血管を伴った脈絡膜母斑a:カラー眼底.右眼中心下耳側に赤橙色の隆起と網膜下沈着物と網膜?離があり,一見加齢黄斑変性に似た所見を呈する.b:EDI-OCT.網膜下沈着物と網膜?離があり,網膜色素上皮は緩やかに隆起している.脈絡膜内には脈絡膜上腔を基底にした鏡餅型の高反射陰影があり,脈絡膜母斑と考えられる.c:IA中期像.赤橙色隆起の部分に脈絡膜新生血管があり,脈絡膜母斑を背景にして生じたものと考えられる.d:FA後期像.病変に一致した旺盛な蛍光漏出がある.図5脈絡膜母斑と鑑別を要する先天性網膜色素上皮肥大a:カラー眼底.左眼鼻側に扁平で花びら型の色素性病変があり,病変内には色素脱失が散在する.b:OCT.粗造なRPEが1層あり,病変上の網膜蓋層は消失している.網膜内層の構造は保たれている.網膜?離はない.病変は大きめであるが,典型的な先天性網膜色素上皮肥大(congenitalhyper-trophyoftheretinalpigmentepi-thelium:CHRPE)である.図6典型的な脈絡膜メラノーマa:カラー眼底.右眼上方アーケード血管付近に灰白色の隆起性病変があり,周囲には網膜?離がある.病変の下縁に沿ってオレンジ色素のある(点線).b:Bモードエコー.病変の大きさは基底12mm,腫瘍厚5.3mmで,病変内部は低反射であり,正常脈絡膜との間にchoroidalexcavationがある(→).c:EDI-OCT.黄斑には?胞様黄斑浮腫があり腫瘍辺縁に網膜?離がある.病変の深部は中心窩下近傍に迫る(→).病変内は高反射で観察不可能である.脈絡膜毛細管板と網膜色素上皮の障害が著しく,病変の表面は不整である.d:OCTA網膜全層enface像.インセットの病変条目膜断面の血流信号は,著しく亢進している.Enface画像で,病変表面の毛細血管が増生していることがわかる.e:眼底自発蛍光.病変上のRPEは低蛍光であるが,aに示すオレンジ色素がある病変下縁では,過蛍光斑がある.f:FA中期像.病変表面の毛細血管は拡張し,蛍光漏出がある.黄斑にも?胞様浮腫が確認できる.g:IA早期像.病変自体は蛍光ブロックを呈し,病変内の異常血管はみられない.図7びまん性発育した脈絡膜メラノーマa:カラー眼底.左眼耳側に色素性脈絡膜病変があり,びまん性に発育している.黄斑には網膜?離とオレンジ色素がある(点線).b:IA中期像.カラー眼底写真でみられる範囲を遙かに上回る視神経乳頭に達する範囲で,病変による脈絡膜蛍光のブロックがある.びまん性発育した脈絡膜メラノーマであり,最大基底長は約20mm,腫瘍厚は3.1mmであった.AmericanJointCommissiononCancer(AJCC)のTNM分類では,生命予後不良のT4に分類される.c:眼底自発蛍光.aに示す黄斑のオレンジ色素は,斑状過蛍光を呈する.図8周辺部に生じたマッシュルーム型メラノーマa:カラー眼底.右眼上耳側周辺部に基底がある黄白色の腫瘤が視軸を遮っている.色調はRPEの変性により生じており,腫瘤自体は色素性である.b:Bモードエコー.腫瘤はマッシュルーム型で,基底13mm,腫瘍厚12mmで,網膜?離を伴う.腫瘤内部は高反射である.眼球外への浸潤はない.図9脈絡膜メラノーマと鑑別を要する網膜色素上皮腺腫a:カラー眼底.左眼黄斑耳側に色素性腫瘤があり,周囲には滲出性網膜?離がある.色素性腫瘤は網膜に浸潤し,網膜の牽引も生じている.脈絡膜メラノーマでは硬性白斑の滲出を生じることは少なく,網膜への明らかな浸潤や穿孔は相当進行してから生じる.また,網膜表面の増殖性変化は,網膜色素上皮腫瘍の特徴である.b:FA中期像.上下の網膜アーケード血管が腫瘍を栄養しており,旺盛な蛍光漏出がある.栄養血管は基本的には,脈絡膜メラノーマは脈絡膜血管,色素上皮腫瘍は網膜血管である.網膜色素上皮腫瘍は,眼底後極に生じることはまれであり,通常は眼底周辺部に生じる.このため,十分な眼底画像検査ができなかったが,広角眼底カメラの普及により,鑑別しやすくなることが期待される.力・視野障害は腫瘍による直接的な視神経線維束障害,視神経乳頭や視神経篩板内での圧迫性視神経線維束障害,腫瘍局在によるMariotte盲点拡大の三つの因子に分類できる.非常にまれに,腫瘍壊死による色素の硝子体内播種,発育による網膜中心静脈閉塞がみられるほか,視神経乳頭黒色細胞腫の2%にメラノーマへの転化が生じるため,長期の経過観察が必要である.1.典型的な視神経乳頭黒色細胞腫(図10)高度のメラニン色素を伴った結節性病変が視神経乳頭内にみられ,若年患者や腫瘍の増大時には,圧排された視神経乳頭に浮腫が生じる.年月の経過とともに視神経乳頭は萎縮する.Bモードエコーでは高反射の結節が乳頭上にみられ,視神経篩板を超えた発育があるかを確認できる.球後の病変が疑われる場合にはMRI検査を行う.OCTでは乳頭拡大とその領域を超えた腫瘍浸潤が網脈絡膜にあるかどうかを確認できる.また,腫瘍上の視神経線維束が菲薄している場合には,視野障害が強いことが予測される.静的視野検査は,腫瘍による直接障害.間接障害,Mariotte盲点拡大の三成分に分けて観察するとよい.眼底自発蛍光撮影では,青色光に対してはRPEや網膜はないために低蛍光を示すが,メラニン色素が豊富なため赤外光には自発蛍光を示す.FA,IAともに初期から後期まで腫瘍は低蛍光であるが,視神経乳頭浮腫の部分はFA早期から旺盛な蛍光漏出がみられる.腫瘍からの滲出がみられる場合は,典型例ではない.大きめの視神経乳頭黒色細胞腫(図11),視神経乳頭黒色細胞腫の脈絡膜浸潤(傍乳頭脈絡膜母斑もしくはメラノーマの視神経乳頭浸潤との鑑別を要する例)(図12)を示す.おわりに眼底に生じる色素性病変は多数あるが,もっとも重要なのは,脈絡膜悪性黒色腫(メラノーマ)との鑑別である.隆起性病変が,どの部位のどの深さにあるのか,どの血管から栄養を受けているか,周囲組織にはどのような障害が生じているか,などに注目して眼底画像診断を行うのが鉄則である.鑑別に困る病変がある場合には,眼腫瘍もしくは眼底画像診断のスペシャリストに迷わず図10典型的な視神経乳頭黒色細胞腫a:カラー眼底.左眼視神経乳頭の下方縁を中心に色素性腫瘤がある.腫瘤は視神経乳頭を超えているようにみえる.上方の視神経乳頭には浮腫が生じている.網膜血管は腫瘤の表面にあるが,一部色素により走行がみえない部分がある(*).網膜血管のうっ血はなく,網膜?離,滲出斑や出血はない.b:Bモードエコー.視神経乳頭上に高反射の腫瘤があり,ダンベル型に発育して乳頭篩板後方にも病変が拡大しているようにみえる.眼窩MRIでは明らかな眼球外への浸潤はなかった.c:OCT.高反射の腫瘤のため,内部構造は不明である.腫瘤上には菲薄した網膜神経線維があり,顆粒状高反射がみられる.浮腫のため,視神経乳頭組織は本来の辺縁(→)を超えている.腫瘤の辺縁で,網膜,脈絡膜への浸潤・拡大はない.d:Humphrey視野検査.鼻側の視野欠損と盲点拡大がある.上下の成分で分けると,腫瘤による直接視神経線維束障害で上鼻側欠損,続発した視神経乳頭浮腫による下鼻側視野欠損,腫瘤自体のブロックによる上方盲点拡大がある.e:青色光自発蛍光.腫瘤は低蛍光で,周囲の網膜色素上皮にも障害はない.f:赤外光自発蛍光.腫瘤内のメラニン色素により過蛍光を呈する.g:FA中期像.腫瘤は造影早期から後期まで低蛍光であり,周囲の網膜組織に反応性変化やうっ血がない.腫ロックされている.上方の視神経乳頭浮腫がある.h:IA静脈相.腫瘤は造影早期から後期まで低蛍光であり.腫瘤内血管は観察されない.腫瘤上の網膜血管は部分的に蛍光ブロックされている.図11大きめの視神経乳頭黒色細胞腫a:カラー眼底.色素性腫瘤は視神経乳頭下鼻側を中心に視神経乳頭のほぼ全体と周囲の脈絡膜へ発育している.上耳側視神経乳頭は萎縮している.腫瘤上の網膜血管は一部走行が追えない部分があり,動脈は白鞘化している.腫瘤の上耳側縁で視神経乳頭表面にメラニン色素が露出している(→)が,硝子体内への播種はない.腫瘤による網膜浮腫,網膜?離,滲出性変化や血行障害はない.b:OCTA全層enface画像.FAでは描出されない腫瘤上の毛細血管が克明に描出されている.カラー眼底写真ではみえない腫瘤上の網膜血管も描出されている.c:OCTA断面像.腫瘤表面の乳頭上組織内の血流が亢進している.腫瘤内は観察不能で,この断面では視神経乳頭周囲の網膜と脈絡膜への水平方向の浸潤を示唆する所見はない.図12視神経乳頭黒色細胞腫の脈絡膜浸潤傍乳頭脈絡膜母斑もしくはメラノーマの視神経乳頭浸潤との鑑別を要する例.a:カラー眼底.右眼視神経乳頭鼻側辺縁に結節状色素性腫瘤があり,周囲の脈絡膜に色素沈着がある.視神経乳頭への浸潤が疑われる.b:OCT.傍視神経乳頭に結節性病変があり,内部の観察は不能である.視神経乳頭と腫瘤上のグリアや視神経乳頭線維には菲薄がなく,顆粒状高反射所見はない(→).脈絡膜側に高反射病変が広がっており,ellipsoidzoneとRPEの障害がある()が,脈絡膜毛細管板は保たれている(横線).鼻側の高反射病変の辺縁は境界が明瞭であり,色素病変が脈絡膜の浅層に局在していることが疑われる.脈絡膜母斑やメラノーマにみられる脈絡膜上腔を基底とした発育形態とは異なる.脈絡膜内のメラニン色素が亢進した状態であり,黒色細胞腫の浸潤と考えられる.紹介し,メラノーマの早期診断に結びつくよう,広く眼科医にご協力いただきたい.文献1)SinghAD,KalyaniP,TophamA:Estimatingtheriskofmalignanttransformationofachoroidalnevus.Ophthal-mology112:1784-1789,20052)ShieldsCL,KalikiS,LiveseyMetal:Associationofocu-larandoculodermalmelanocytosiswiththerateofuvealmelanomametastasis:analysisof7872consecutiveeyes.JAMAOphthalmol131:993-1003,20133)SinghAD,DePotterP,FijalBAetal:Lifetimepreva-lenceofuvealmelanomainwhitepatientswithoculo(der-mal)melanocytosis.Ophthalmology105:195-198,19984)ShieldsCL,DalvinLA,Ancona-LezamaDetal:Choroi-dalnevusimagingfeaturesin3,806casesandriskfactorsfortransformationintomelanomain2,355cases:The2020TaylorR.SmithandVictorT.CurtinLecture.Retina39:1840-1851,20195)GotoH:Clinicale?cacyof123I-IMPSPECTforthediagnosisofmalignantuvealmelanoma.IntJClinOncol9:74-78,20046)ShieldsJA,DemirciH,MashayekhiAetal:Melanocyto-maofopticdiscin115cases:The2004SamuelJohnsonMemorialLecture,part1.Ophthalmology111:1739-1746,2004