●連載監修=安川力髙橋寛二70.加齢黄斑変性の抗VEGF療法の抵抗症例原千佳子大阪大学眼科学教室抗CVEGF薬抵抗症例の中には,当初から効果のないノンレスポンダーと,途中で効果が得られなくなるタキフィラキシー症例があり,それぞれ特徴がある.それらの特徴とその後治療について解説する抗VEGF薬抵抗症例とは現在,加齢黄斑変性(age-relatedCmacularCdegenera-tion:AMD)の治療は,抗CVEGF薬の硝子体内注射がおもに行われており,どの臨床試験においてもとても良好な成績が報告されている.しかし,その中に少数ではあるが,抗CVEGF薬投与を行っても,期待するような治療効果の得られない症例(抗CVEGF薬抵抗症例)がある.ノンレスポンダー症例ノンレスポンダーの定義は報告によってさまざまである.どのタイミングで判断するのか,視力改善を基準とするのか,滲出性変化の改善を基準とするのかどうかということである.どれが正解というわけではないが,判断のタイミングについては,タキフィラキシーと区別するため,また視力については,白内障の進行や網膜色素上皮萎縮など,薬剤効果と直接関係のないことが影響している場合も多いため,本稿では,ノンレスポンダーを,「治療開始直後(導入期後)に滲出性変化の改善が得られない症例」と定義する.ノンレスポンダーの判断は,基本的にC3回の導入期投与のあとに行う.1回投与ではあまり効果がないようにみえる症例でも,数回続けて投与することにより効果が得られる症例も多くあり,数回の連続投与は必要である.3回の連続投与を行っても光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)にて滲出性変化の明らかな改善のない症例をノンレスポンダーと診断する(図1左).このようなノンレスポンダー症例は,ラニビズマブでC10~20%1),アフリベルセプトではC5%程度2)あると報告されている.アフリベルセプトノンレスポンダー症例は,視力良好で網膜下高反射物質がなく(つまり出血や網膜色素上皮上の新生血管がなく),脈絡膜血管の透過性亢進所見の強い症例に多かった.その特徴を総合して考えると,最近話題となっているCpachychoC-roidに関連したCAMD(pachychoroidCneovasculopa-(83)ノンレスポンダータキフィラキシー図1ノンレスポンダーとタキフィラキシーのイメージthy:PNV)のような病態が関与している可能性がある.タキフィラキシー症例タキフィラキシーとは薬剤耐性という意味で,治療を繰り返しているうちに薬剤効果が得られにくくなることである.AMD症例は長期間にわたって治療を行う必要があることから,こういった症例に遭遇することもしばしばある.原因としては,①薬剤抗体ができること,②慢性的にCVEGFが抑制されることにより,その他の血管増殖因子が活性化すること,③新生血管内のマクロファージが増殖することでCVEGF濃度が上昇することなどが推測されているが,決定的なことはわかっていない.タキフィラキシーの診断基準も決まったものがあるわけではないが,毎月連続で複数回投与を行ってもOCT上でそれ以上滲出性変化が改善しなくなった場合と定義されていることが多い(図1右).タキフィラキシー症例の特徴としては,網膜色素上皮より下に病変のある症例で,網膜浮腫を伴わないものという報告もあり,病変が網膜色素上皮下に限局しているということであり,薬剤の到達しやすさは原因の一つとしては影響している可能性がある3).抗VEGF薬抵抗症例に対する治療ノンレスポンダー症例の治療についてのみまとめた報告は少ないが,光線力学的療法(photodynamicCthera-py:PDT)は有効であったという報告はある2).ノンレスポンダー症例の特徴(脈絡膜透過性亢進あり)からもあたらしい眼科Vol.36,No.11,2019C14250910-1810/19/\100/頁/JCOPY図21型脈絡膜血管新生(65歳,女性)初診時,網膜下液とフィブリンを認め,抗CVEGF薬C3回投与行うも,網膜下液は悪化したため,抗CVEGF薬併用CPDTを施行し,網膜下液の改善が得られた.初診時のインドシアニングリーン眼底造影検査所見では脈絡膜血管の透過性亢進を認める.PDTが有効である可能性は高いと考えられる(図2).また,薬剤の変更も有効な症例がみられるため,PDTを躊躇するような症例(薄い脈絡膜の症例,大きな網膜色素上皮.離症例,視力良好例など)では,薬剤変更も選択肢となる.タキフィラキシー症例に対する治療は薬剤変更が有効であると報告されており,ベバシズマブに対してタキフィラキシーとなった症例をラニビズマブに変更したり4),ラニビズマブにタキフィラキシーとなった症例に対しペガプタニブ5)やアフリベルセプト投与6)が有効であったという報告がある.薬剤変更は効果が期待でき,またデメリットが少ないため,試す価値はある(図3).ただ,変更後の薬剤にもタキフィラキシーとなる症例も珍しくなく,再度変更を迫られる場合もある.PDTについては,ポリープ状病巣があったり,活動性の高い症例に対しては有効だが,活動性が低いが滲出性変化が消失しないような症例では効果は限定的であることも多い.おわりにノンレスポンダー症例でもタキフィラキシー症例でも,一度効果がないと判断した薬剤でも,再燃時やその他の治療後に効果を示すこともある.そのため,長い治療生活のなかではときどき治療を変更しながら継続していくことも必要である.しかし,頻回投与やCPDTを追加することにより,患C1426あたらしい眼科Vol.36,No.11,20191カ月後滲出性変化再燃薬剤A薬剤B図31型脈絡膜血管新生(78歳,男性)初診時に認めた網膜下液はC3回連続投与後,完全に消失したが,その後すぐに再燃.再燃が早いため連続で投与行うも,投与後C1カ月でも滲出性変化が減少しなくなった.7回連続投与後,薬剤変更したところ,滲出性変化は消失した.者本人が治療を負担に感じ,今後の治療継続がむずかしいと思わせる原因となってしまうこともあり,治療中断してしまうことで,結果的には視力予後を悪化させることにもなりうる.活動性が低い場合には,患者本人の負担も考慮し,悪化させない程度の頻度での投与という選択肢もある.個々の状態をみながら,どの選択をするのかを検討することも重要である.文献1)OtsujiT,NagaiY,ShoKetal:Initialnon-responderstoranibizumabCinCtheCtreatmentCofCage-relatedCmaculardegeneration(AMD)C.CClinCOphthalmolC7:1487-1490,C20132)HaraC,WakabayashiT,ToyamaHetal:Characteristicsofpatientswithneovascularage-relatedmaculardegener-ationCwhoCareCnon-respondersCtoCintravitrealCa.ibercept.CBrJOphthalmol103:623-629,C20193)HaraCC,CWakabayashiCT,CFukushimaCYCetal:Tachyphy-laxisCduringCtreatmentCofCexudativeCage-relatedCmacularCdegenerationwitha.ibercept.GraefsArchClinExpOph-thalmolC2019〔Epubaheadofprint〕4)GasperiniCJL,CFawziCAA,CKhondkaryanCACetal:Bevaci-zumabandranibizumabtachyphylaxisinthetreatmentofchoroidalCneovascularisation.CBrJCOphthalmolC96:14-20,C20125)ShiragamiC,OnoA,KobayashiMetal:E.ectofswitch-ingCtherapyCtoCpegaptanibCinCeyesCwithCtheCpersistentCcasesCofCexudativeCage-relatedCmacularCdegeneration.CMedicineC93:e116,C20146)HoCVY,CYehCS,COlsenCTWCetal:Short-termCoutcomesCofCa.iberceptforneovascularage-relatedmaculardegenera-tionCinCeyesCpreviouslyCtreatedCwithCotherCvascularCendo-thelialCgrowthCfactorCinhibitors.CAmCJCOphthalmolC156:C23-28,Ce2,C2013(84)