監修=木下茂●連載235大橋裕一坪田一男235.円錐角膜の新しい指標(Belin円錐新分類)中山智佳バプテスト眼科クリニック円錐角膜の進行判定や,円錐角膜の進行予防目的に施行する角膜クロスリンキングの術後治療効果判定には,総合的な評価が必要であり,臨床現場での正確な判断がむずかしい場合がある.前眼部解析装置CPentacam(Oculus社)に搭載されているCBelinABCD進行判定ソフトは角膜の最薄部を測定することができ,円錐角膜についてより正確な判断が可能である.円錐角膜は,角膜中央部が菲薄化し,その部分が前方突出することで強度の近視と不正乱視を生じる非炎症性,進行性の疾患である.思春期頃に発症し,30歳頃に進行停止することが多い.重症度によって治療方法や予後が大きく異なる.ごく軽症で調節力が十分ある若年者では裸眼視力が良好なことがあり,この場合は基本的には眼鏡やハードコンタクトレンズ装用による矯正で十分に視機能改善することが多い.しかし,円錐角膜が進行し急性水腫を生じた場合や,角膜混濁が強い重症例では,角膜移植が必要になることもある1).また,10代後半から急速に進行する場合があり,2年間の経過で角膜屈折力の急峻化,近視屈折度数,乱視屈折度数がC1D増加するような場合は,筆者らの施設では最近では進行予図1Pentacam(Oculus社)Pentacamで測定し,BelinABCDProgressionDisplayモードを選択すると,自動的にスコア換算してくれる.防目的に角膜クロスリンキング治療が行われている2).このため,円錐角膜が進行しているかどうか,つまり角膜クロスリンキング治療の適応になるかどうかと,角膜クロスリンキング治療後は効果判定,つまり角膜クロスリンキング治療が有効であったかどうかの判定が非常に大切となる.円錐角膜重症度判定としては,古くからAmsler-Krumeich分類が広く知られているが,乱視,近視度数,角膜屈折力,角膜厚,角膜混濁などを総合的に評価しなければならず,臨床現場では使用しにくく,進行判定,重症度判定が困難であることが多い.今回,Pentacam(Oculus社,図1)にCBelinCABCD進行判定ソフトが搭載された.本ソフトはC4項目の評価項目(A:最薄部角膜C3Cmm径の前面角膜曲率半径,B:最薄部角膜C3Cmm径の後面角膜曲率半径,C:最薄部角膜厚,D:矯正ClogMAR視力)を重症度スコアに自動換算し,時系列に比較することができる.A,B,Cを測表1Belin円錐新分類ABCD分類CACBCCCDCARC(3CmmZone)CPRC(3CmmZone)CThinnestPachμmCBDVACScarringCSTAGE0>7C.25Cmm(<C46.5D)>5C.90Cmm>4C90Cμm=20/20(=1.0)-STAGEI>7C.05Cmm(<C48.0D)>5C.70Cmm>4C50Cμm<2C0/20(<1C.0)-,+,++STAGEII>6C.35Cmm(<C53.0D)>5C.15Cmm>4C00Cμm<2C0/40(<0C.5)-,+,++STAGEIII>6C.15Cmm(<C55.0D)>4C.95Cmm>3C00Cμm<2C0/100(<0C.2)-,+,++STAGEIV<6C.15Cmm(>C55.0D)<4C.95CmmC≦300Cμm<2C0/400(<0C.05)-,+,++自動換算してくれるので,Amsler-Krumeich分類よりも利便性が高い.また,最薄部を測定するため,病変をより正確にとらえていると考えられる.(89)あたらしい眼科Vol.36,No.12,2019C15650910-1810/19/\100/頁/JCOPY図2円錐角膜症例の角膜形状解析(TMSR:Tomey)a:角膜クロスリンキング術前.b:角膜クロスリンキング術後C1年.角膜形状解析検査では,術前と術後C1年を比較して角膜屈折力は変化しておらず,進行予防できていると考える.図3BelinABCDProgressionDisplayモードABCDの評価項目ごとにスコアを自動換算しグラフ化して表示してくれる.Dは手入力する.BE(baselineexam,肌色の棒)が角膜クロスリンキング術前の角膜の状態である.角膜クロスリンキング術後C1年(黄色の棒)では,A(前面角膜曲率半径のスコア)は低下している.C(角膜厚のスコア)は増加しており,角膜厚は薄くなっていることがわかる.定し,自動的に重症度スコアに換算し,それらを時系列に棒グラフで表示するので,視覚的にとらえることが可能である.また,正常眼,円錐角膜眼のそれぞれC80%信頼区間,95%信頼区間の線が表示され,進行しているかどうかを参照することができる.角膜後面の形状まで測定することができ,かつもっとも薄い部分での前面角膜曲率半径,後面角膜曲率半径,角膜厚を測定する.円錐角膜は中心部ばかりが菲薄化しているわけではなく,類縁疾患であるペルーシド角膜変性症のように下方突出が多いため,最薄部の計測をすることは理に適っていると考える.そのため,Belin円錐新分類はより正確な分析が可能であるとされている3).円錐角膜眼のC95%信頼区間を超えてCAスコアが増加しているものは,円錐角膜が進行していると判定することができる.また,角膜クロスリンキング治療後は,角膜前面角膜曲率半径が大きくなり,平坦化するが,角膜厚は薄くなるという変化をするため,Aスコアは減少,Cスコアは増加するという変化が認められ,BelinCABCDProgressionCDisplayでCABCDそれぞれの変化をみて,角膜クロスリンキング治療効果を判定することができると考えている(図2,3).文献1)GomesCJAP,CTanCD,CRapuanoCCJCetal:GlobalCconcensusConkeratoconusandectaticdiseases.CorneaC34:359-369,C20152)木下茂,稗田牧:角膜疾患外来でこう診てこう治せ.改訂第C2版,メジカルビュー社,p182-189,p224-225,C20153)BelinCMW,CDuncanJK:Keratoconus:TheCABCDCGrad-ingSystem.KlinMonblAugenheilkd233:701-707,C20161566あたらしい眼科Vol.36,No.12,2019(90)