‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

基礎研究コラム 28.Stiffness(硬さ)と細胞分化

2019年9月30日 月曜日

Sti.ness(硬さ)と細胞分化はじめに細胞外マトリックス(extracellularmatrix:ECM)は結合組織線維(コラーゲン線維,エラスチン線維),基質(グリコサミノグリカン,プロテオグリカン),蛋白質などから構成されており,細胞と細胞を埋めている物質をさします.適切なCECMはCES/iPS細胞などのような幹細胞から目的細胞に分化させるときに非常に重要となります.近年ではとくにそのCsti.nessに注目が集まっています.たとえば,間葉系幹細胞を培養するときに,基材のCsti.nessを変えることで分化制御できることが明らかになってきており,骨再生などの再生医療においても応用されています.CSti.nessと角膜健常な角膜上皮は角膜輪部から常に新しい上皮細胞が供給され,その恒常性が維持されています.角膜輪部が広範囲に障害されると角膜上皮細胞の供給が妨げられ,代わりに結膜上皮細胞が侵入します.しかし,角膜実質すなわちCECMが正常である場合,その透明性が維持されていることをしばしば経験します.Stevens-Johnson症候群,眼類天疱瘡および熱・化学外傷などによって引き起こされる角膜上皮幹細胞疲弊症では慢性炎症が持続しており,角膜上皮細胞の分化異常が生じます.近年の研究において,Notch1をノックアウトして慢性炎症を引き起こしたモデルでは,YAP(Y-chromosomeCalupolymorphism)が核内に移行し,ECMが正常より硬くなることで角膜上皮特異的蛋白であるケラチンC12の発現が低下し,角化上皮細胞のマーカーであるケラチンC1の発現が上昇し,分化異常をきたします1).また角膜輪部では角膜中央部と比べてCECMのCsti.nessが違うことが知られており2),石田学京都府立医科大学北澤耕司京都府立医科大学,BuckInstituteforResearchonAgingsti.nessを点眼によって実験的に変えることで,幹細胞マーカーの発現量が変わることが報告されています3).今後の展望上述したような機械的刺激を生物学的シグナルに変換することをメカノトランスダクションといいます.角膜上皮細胞は,コア転写因子によってその細胞恒常性が維持されていることが報告されており4,5),ECMのCsti.nessが転写因子の発現を制御していると考えられます.すなわち,このCECMの制御を人工的に操作することができれば,重症の難治角結膜疾患における異常細胞分化を制御することができ,健常な角膜上皮細胞に戻すという,一種のダイレクトリプログラミング治療も夢物語ではないかもしれません.文献1)NowellCCS,COdermattCPD,CAzzolinCLCetal:ChronicCin.ammationCimposesCaberrantCcellCfateCinCregeneratingCepitheliathroughmechanotransduction.NatCellBiol18:C168-180,C20162)FosterJW,JonesRR,BippesCAetal:Di.erentialnucle-arCexpressionCofCYapCinCbasalCepithelialCcellsCacrossCtheCcorneaCandCsubstratesCofCdi.eringCsti.ness.CExpCEyeCResC127:37-41,C20143)GouveiaRM,LepertG,GuptaSetal:Assessmentofcor-nealCsubstrateCbiomechanicsCandCitsCe.ectConCepithelialCstemCcellCmaintenanceCandCdi.erentiation.CNatCCommunC10:1496,C20194)KitazawaK,HikichiT,NakamuraTetal:OVOL2main-tainsCtheCtranscriptionalCprogramCofChumanCcornealCepi-theliumCbyCsuppressingCepithelial-to-mesenchymalCtransi-tion.CellCRepC15:1359-1368,C20165)KitazawaCK,CHikichiCT,CNakamuraCTCetal:PAX6Cregu-lateshumancornealepitheliumcellidentity.ExpEyeResC154:30-38,C2017図1細胞のsti.nessと細胞分化細胞外マトリックスのCsti.nessが変わることにより細胞分化が変わる.メカノトランスダクションの制御が今後の細胞分化制御に重要であるかもしれない.Elasticity+++Elasticity+角膜上皮幹細胞角膜上皮細胞Elasticity+/-異常角化上皮細胞(69)あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019C11710910-1810/19/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス 196.硝子体手術後の鼻側楔状視野欠損(初級編)

2019年9月30日 月曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載196196硝子体手術後の鼻側楔状視野欠損(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに硝子体手術後,急性期に視野異常をきたす病態としては,空気灌流による網膜傷害,網膜動脈閉塞症,虚血性視神経症,インドシアニングリーンによる網膜毒性などの報告がある.このうち,楔状の視野障害を生じるものとしては空気灌流によるものが知られているが,通常はインフュージョンポートの対側網膜が傷害されるので,視野欠損は下耳側に生じる.筆者らは原因不明の鼻側楔状視野障害を生じた4例を経験し報告したことがある1).●症例4例の原疾患は黄斑円孔2例,黄斑上膜1例,網膜分離症1例.手術は球後麻酔3例,Tenon.下麻酔1例.全例シャンデリア照明を使用した25ゲージ4ポートで硝子体手術を施行し,内境界膜.離の際にBBGを使用した.黄斑円孔の2例では液空気置換後にSF6ガスの注入を行った(表1).4例とも術後早期より鼻側視野障害を訴えた.Goldmann視野検査を施行したところ,黄斑を頂点とする楔状の鼻側視野障害を認めた(図1).術後も視野に変化は認めなかった.OCTアンギオグラフィー検査を行った黄斑円孔症例において,術後に明らかな網膜循環障害を疑う所見は認めなかった.●鼻側楔状視野欠損の原因視野障害の原因としては循環障害,麻酔の影響などが考えられるが,原因を特定することはできなかった.ただし,いずれも鼻側の楔状視野障害であり,なんらかの共通の原因が考えられる.4症例の特徴としては,症例3以外で緑内障の既往があったこと,全員女性であったこと,術後の眼底検査およびOCTにおいて視野障害を生じるような明らかな網膜病変を認めなかったこと,中心視野は保持されており,術後視力は比較的良好であったことなどがあげられる.(67)0910-1810/19/\100/頁/JCOPY表14症例のまとめ症例原疾患年齢性別術眼眼軸長麻酔眼合併症①黄斑上膜65歳女右23.99mm球後緑内障BRAO②網膜分離65歳女左25.62mm球後緑内障③黄斑円孔63歳女左22.85mmTenon.下なし④黄斑円孔67歳女左22.82mm球後緑内障図14症例の術後Goldman動的視野検査結果4例とも術後早期よりGoldmann視野検査で黄斑を頂点とする楔状の鼻側視野障害を認めた.①の耳側視野障害は網膜静脈分枝閉塞(BRVO)によるものである.今回のような鼻側に楔型視野狭窄をきたす疾患としては,圧迫性視神経症がある.圧迫性視神経症の原因としては頭蓋内病変(腫瘍や脳動脈瘤),眼窩内病変(甲状腺眼症や眼窩腫瘍,視神経腫瘍など)がある.今回,球後に注入された麻酔液が視神経を過度に圧迫し,もともとの緑内障素因が加わって視神経の循環障害を惹起した可能性も考えられる.しかし,今回の1例はTenon.下麻酔の症例であり,麻酔薬が一塊となり視野障害を起こすほど視神経を圧迫する可能性は低い.麻酔薬自体の視神経に及ぼす影響も否定はできないが,いずれにしても,このような合併症がまれに生じうることを念頭におき,術後に患者が視野欠損を自覚した場合には,視野検査を行うべきである.文献1)佐藤孝樹,大須賀翔,河本良輔ほか:25ゲージ硝子体手術後に鼻側に楔状視野障害を生じた4例.臨眼73:651-659,2019あたらしい眼科Vol.36,No.9,20191169

眼瞼・結膜:Stevens-Johnson症候群と結膜変化

2019年9月30日 月曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人54.Stevens-Johnson症候群と結膜変化上田真由美京都府立医科大学特任講座感覚器未来医療学Stevens-Johnson症候群は,急性期に全身の皮膚と粘膜,そして眼表面の炎症を生じる.重度の眼表面炎症は,瞼球癒着や眼瞼結膜の瘢痕形成,角膜への結膜侵入,睫毛乱生など,結膜に瘢痕病変を生じさせる.慢性期においても軽度の眼表面炎症が継続し,結膜病変を進行させることがある.●はじめにStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnsonsyn-drome:SJS)は,突然の高熱,口内炎,皮膚の小さな発疹に続いて,全身の皮膚と粘膜に水疱とびらんを生じる急性の皮膚粘膜疾患である.中毒性表皮壊死症(toxicepidermalnecrolysis:TEN)の一部はSJSの重症型と考えられているが,眼科では,瘢痕性角結膜上皮症に至った慢性期の患者を診ることが多く,重篤な眼合併症を伴うSJSとTENを併せて広義のSJSと呼称している1).急性期に重篤な眼合併症(偽膜ならびに角結膜上皮欠損の両方を認める重篤な結膜炎)を伴うのはSJS/TEN全体の約40%と報告されているが2),その多くは慢性期に重篤な眼後遺症を生じる.重篤な眼後遺症としては,重症ドライアイのほかに,おもに次の結膜病変があげられる.①睫毛乱生,②瞼球癒着,③眼瞼結膜の瘢痕形成,④角膜への結膜侵入・角化.これらの重篤な後遺症は,視力障害の原因となる.本稿では,これらの慢性期の眼後遺症の結膜所見について詳細に記載する.●睫毛乱生(図1)慢性期SJSで認められる睫毛乱生は,一般に認められる睫毛乱生と比較するとかなり重症である.多くの場合,睫毛根部の位置が通常の睫毛ラインからはずれており,ひどい場合は眼瞼結膜から睫毛が生えている.睫毛乱生を放置しておくと睫毛接触による眼表面炎症を誘発するので,こまめに睫毛抜去する必要がある.重症の場合は睫毛根部切除術などの手術的治療も適応となる.●瞼球癒着(図2)慢性期SJSでは瞼球癒着を認めることが珍しくない.程度はさまざまで,重度の場合,上下の眼瞼も癒着していることがある.また,瞼球癒着は,慢性期であっても炎症が継続すれば進行する.瞼球癒着の解除手術につい(65)0910-1810/19/\100/頁/JCOPY図1睫毛乱生慢性期SJSでみられる睫毛乱生は,通常の睫毛乱生とは異なり,かなり重度である.この症例では,睫毛ラインの内側に多数の睫毛が生えているのに加えて,眼瞼結膜面からも睫毛が生えている.ては,軽度であれば羊膜移植,中等度から重度の場合は培養粘膜上皮移植が有効である.●眼瞼結膜の瘢痕化(図3)急性期に重篤な結膜炎を認めるSJSでは,結膜に偽膜を認めるほど強い炎症を生じる.治療とともに偽膜は出なくなり,強い結膜炎症も徐々に消退するが,慢性期には眼瞼結膜の瘢痕化が後遺症として残ることが多い.この眼瞼結膜の瘢痕が眼瞼縁に存在すると,瞬目のたびに角膜表面をこすって角膜上皮びらんの原因となり,また,患者に眼が開けられないほどの不快感を与える.最近,インドや欧米では,眼瞼縁の結膜瘢痕を除去し口腔粘膜を移植して眼瞼縁の不正を取り,角膜表面への摩擦を減少させる手術を行い,よい結果を得ている.●角膜への結膜侵入(図4)急性期に眼表面炎症のために角膜幹細胞(輪部に存在)が消失してしまった場合,角膜に結膜が侵入する.結膜上皮だけが角膜に入ってくる場合,結膜上皮と薄い結合組織が入ってくる場合,厚い結膜組織が角膜に侵入してくる場合など,程度はさまざまであるが,いずれもあたらしい眼科Vol.36,No.9,20191167図2瞼球癒着図3眼瞼結膜の瘢痕化図4角膜への結膜侵入瞼球癒着は慢性期SJSの代表的な所慢性期SJSのほぼすべての症例で,眼瞼結慢性期SJSで,角膜の結膜が侵入し見である.通常,眼瞼と眼球が結膜膜の瘢痕化を認める.a:眼瞼結膜が瘢痕ている症例は珍しくない.結膜侵入の結合組織を介して癒着するが(a),化して表面が不正になっている.b:眼瞼程度はさまざまである.a:結膜上皮その程度はさまざまである.bの症縁の結膜に瘢痕化を生じている.眼瞼縁結と薄い結膜組織が下方から角膜に侵入例では,眼瞼が角膜面に直接癒着し膜の瘢痕化は,瞬目のたびに角膜に瘢痕化している.b:かなり進行した症例でている.が当たるため,強い異物感の原因となる.あり,角膜全面が厚い結膜組織で覆われ,さらに結膜組織の表面は角化して皮膚のようになっている.to-CS)を装用することにより矯正視力が改善することも珍しくない3).厚い結膜組織が角膜に侵入している場合は,ハードコンタクトレンズだけでの矯正はむずかしく,培養粘膜上皮移植後と輪部支持型ハードコンタクトレンズの両方を行うことで,矯正視力が改善することがある.●病理組織所見(図5)眼表面形成術や眼瞼手術の際に廃棄される結膜組織や眼瞼組織を組織学的に解析したところ,結膜組織には正常結膜と比較して著しい炎症細胞浸潤が認められる.また,睫毛根部にも対照群(通常の眼瞼内反症)と比較して著しい炎症細胞浸潤が認められた4).このことは,SJSでは慢性期においても炎症が継続していることを示しており,この継続する炎症が,慢性期の眼表面所見の悪化の原因となっている可能性がある.●おわりにSJSは希少疾患であるが,発症後眼後遺症を生じた患強い角膜不正乱視となり,視力が著しく低下する.者は一生眼科に通う.また,古い症例では,急性期に原しかし,結膜上皮だけが角膜に入っている場合や結膜因不明といわれて診断がついていないこともある.眼科上皮と薄い結合組織が入っている場合は,京都府立医科医は,慢性期SJSの眼所見を見逃さず,的確に診断な大学グループが開発したSJS用の特殊なハードコンタらびに治療ができてほしいと願う.クトレンズ(輪部支持型ハードコンタクトレンズ:Kyo-1168あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019(66)

抗VEGF治療:網膜色素線条に伴う脈絡膜新生血管の抗VEGF薬による管理

2019年9月30日 月曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二68.網膜色素線条に伴う脈絡膜新生血管の盛秀嗣関西医科大学眼科学教室抗VEGF薬による管理脈絡膜新生血管(CNV)を伴う網膜色素線条(AS)に対する抗CVEGF療法は,少ない治療回数でCCNVが退縮するにもかかわらず,視力予後は不良である.これは,CNV退縮後も脈絡膜の極端な菲薄化の進行により,網脈絡膜萎縮が拡大することが大きく関与している.はじめに網膜色素線条(angioidstreaks:AS)に伴う脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)に対しては,近年,抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法が用いられることが多い.本稿では,ASの特徴的所見とCASに伴うCCNVに対する抗CVEGF療法の問題点について紹介する.網膜色素線条に伴う脈絡膜新生血管とはASはC1889年にCDoyne1)により初めて報告された,男性に多い両眼性の疾患である.約半数の割合で全身の弾性線維の脆弱性を伴う病態を有し2),もっとも多いのは皮膚の弾性線維性仮性黄色腫を伴うCGroenblad-Strandberg症候群である.生下時は眼底に異常所見はなく,加齢に伴い以下の所見がみられるようになる.初期は視神経乳頭周囲の灰白色萎縮巣を認め,病期の進行に伴い,視神経乳頭から赤道部に向かうように放射状(ヒトデ状)の暗赤色~黒褐色の不規則な線条や黄斑部耳側に黄白色の点状病変である梨地状眼底を認める.まれに,視神経乳頭ドルーゼンや中間周辺部に黄白色の円形点状病変(cometlesion,視神経乳頭に向かう線状病変を伴うとCcometCtaillesionとよばれる)がみられる.病初期は無症状であり,40~50代の中年以降に検診などで偶然発見されることが多い.病理学的にはCBruch膜弾性板にカルシウムが沈着することでCBruch膜が肥厚または変性し,しばしば断裂を生じる.色素線条の拡大に伴いCBruch膜断裂部から続発性にCCNVが生じると,視力低下や変視症を認める.フルオレセイン蛍光眼底造影では色素線条は初期からCwindowdefectによる過蛍光を示し,後期には組織染を認める.CNVの多くは網膜下に生じるCGass分類C2型に属することから,CclassicCNVの所見を呈することが多い.インドシアニングリーン蛍光眼底造影ではCCNVは早期に造影されるが,後期には不明瞭となる.また,色素線条部は後期に(63)C0910-1810/19/\100/頁/JCOPYは組織染を示す.光干渉断層計では,CNVは網膜下の高反射物質として描出される.また,CNV以外にも,色素線条部のCBruch膜の断裂・波打ち様所見,cometlesionでの網膜外層の低反射像および網膜色素上皮(retC-inalpigmentCepithelium:RPE)直上の高反射像,梨地状眼底でのCBruch膜の石灰化によるCRPE-Bruch膜複合体の高反射像などの特徴的所見3)がみられる.通常,ASそのものに対する治療はなく,CNVが生じれば治療対象となる.網膜色素線条に伴う脈絡膜新生血管に対する抗VEGF療法過去2)には網膜光凝固術,経瞳孔的温熱療法,CNV抜去術,光線力学的療法などが行われていたが,視力維持の困難・再発率の高さなど治療後の成績が不良であることから,現在はほとんど行われていない.現在,おもな治療として抗CVEGF薬の硝子体内注射が行われているが,抗CVEGF薬は保険適用外の使用となるために,使用に際しては各施設で倫理委員会の承認が必要である.もともとCAS自身が比較的まれな疾患であることから,滲出型加齢黄斑変性(wetCage-relatedCmaculardegeneration:w-AMD)などの他疾患と比較して,治療成績の報告は少ない.抗CVEGF薬単独療法では,治療開始C1~2年の短期成績でみると視力改善の報告が多い4)が,一方でC4年後以降の長期成績では視力改善が困難であったという報告5)が散見される.当院でのC21例32眼の長期成績では,観察期間C91カ月(中央値)において治療回数はC3.5回(中央値)で,一方でCw-AMDにおけるCSEVEN-UP試験では観察期間C87.6カ月(平均値)において治療回数がC7.3回(平均値)であったことから,ASのCCNVに対する治療回数はCw-AMDと比較して少ないことがわかる.これはCASに続発するCCNVの多くがC2型CCNVであることから,RPE下に生じるC1型CCNVと比較して,抗CVEGF薬がCCNVに到達しやすく,CNVが退縮しやすいことも治療回数が少ない一因あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019C1165図1抗VEGF療法後に脈絡膜の菲薄化が進行したCNVを伴うAS症例(初診時71歳,男性)a:治療前(71歳)のCOCT像.中心窩下に網膜下高反射物質がみられた.中心脈絡膜厚(CCT)はC151Cμmとすでに薄かった.矯正視力C0.5.Cb:治療開始からC6年C6カ月後(77歳)のCOCT像.抗CVEGF薬投与をC4回行ったところ,CNVは平坦な線維性瘢痕に退縮したが,CCTはC56Cμmと極端な菲薄化を示した.矯正視力C0.1.図2抗VEGF療法によるCNVの退縮後に萎縮病変の拡大を認めたAS症例(初診時62歳,女性)a:治療前(62歳)の眼底写真.視神経乳頭周囲に色素線条および萎縮巣を認め,黄斑部近傍に網膜下出血とCCNVを認めた.Cb:治療開始からC7年C6カ月後(69歳)の眼底写真.抗CVEGF薬硝子体注射によりCCNVは沈静化したものの,萎縮巣の拡大を認めた.と考えられる.また,治療後ClogMAR視力(中央値)は治療前ClogMAR視力(中央値)と比較して,有意に悪化していた.治療回数が少ないにもかかわらず視力予後が不良である要因として,抗CVEGF療法による網脈絡膜萎縮の進行に加え,AS自身の特有の病態が大きく関与している可能性が高い.つまり,AS患者における経年的な脈絡膜の菲薄化の進行(図1)によるCRPEおよび脈絡膜萎縮病変の拡大(図2)も視力予後不良に関与していると推測される.ちなみに,当院における長期的な治療例の検討では,治療前中心脈絡膜厚(centralCchoroi-dalthickness:CCT)190Cμm(中央値)で,治療後はC96μm(中央値)と脈絡膜は極度に菲薄化し,萎縮拡大も全C1166あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019例に認めた.抗CVEGFの投与間隔については,w-AMDと同様に導入期にC3回注射し,その後の維持期は必要時投与(prorenata:PRN)を行うC3+PRN,もしくは,初回C1回のみ注射のあと維持期に入るC1+PRNで治療が行われている報告例が多いが,投与方法には一定の見解が得られていない.本症の治療については,今後,標準的投与方法の確立と同時に,萎縮拡大を抑制する治療方法も模索していく必要がある.文献1)DoyneRW:horoidalCandCretinalCchangesCtheCresultCofCblowsConCtheCeyes.CTransCOphthalmolCSocCUKC9:128,C18892)ChatziralliCI,CSaitakisCG,CDimitriouCECetal:angioidstreaks:AComprehensiveReviewFromPathophysiologytoTreatment,RetinaC39:1-11,C20193)PeterCI,RobertPF,FrankGHetal:MultimodalimagingincludingspectraldomainOCTandconfocalnearinfraredre.ectanceCforCcharacterizationCofCouterCretinalCpathologyCinCpseudoxanthomaCelasticum,CInvestCOphthalmolCVisCSciC50:5913-5918,C20094)BattagliaParodiM,IaconoP,LaSpinaCetal:Intravitre-albevacizumabfornonsubfovealchoroidalneovasculariza-tionCassociatedCwithCangioidCstreaks.CAmCJCOphthalmolC157:374-377,C20145)Martinez-SerranoCMG,CRodriguez-ReyesCA,CGuerrero-NaranjoCJLCetal:Long-termCfollow-upCofCpatientsCwithCchoroidalCneovascularizationCdueCtoCangioidCstreaks.CClinCOphthalmolC11:23-30,C2016(64)

緑内障:Prostaglandin-associated periorbitopathy(PAP)の濾過手術への影響

2019年9月30日 月曜日

●連載231監修=山本哲也福地健郎231.Prostaglandin-associatedperiorbitopathy内藤知子グレース眼科クリニック(PAP)の濾過手術への影響プロスタグランジン(PG)製剤は緑内障治療における第一選択薬であるが,上眼瞼溝深化(DUES)などの眼瞼の形質変化が整容的に問題となる場合がある.一方,上眼瞼と眼球に挟まれる結膜下に房水流出路を作製する濾過手術にDUESが与える影響については,これまで明らかにされていない.今回,DUESが濾過手術に与える影響を調査したので報告する.●はじめにプロスタグランジン(prostaglandin:PG)製剤は,眼圧下降効果に優れ,全身副作用がなく,さらに点眼回数も少ないことから,緑内障点眼加療において第一選択薬とされており,わが国では現在,ビマトプロスト,ラタノプロスト,タフルプロスト,トラボプロストの4種類のPG製剤が臨床使用されている.PG製剤に特有の副作用としては,眼瞼や虹彩の色素沈着,睫毛伸長がよく知られているが,それ以外にも,上眼瞼溝深化(deepen-ingoftheuppereyelidsulcus:DUES),上眼瞼下垂(upperlidptosis),皮膚の退縮(involutionofdermato-chalasis),下方強膜の露出(inferiorscleralshow),眼瞼硬化(tighteyelids)などがあり,それらを総称してprostaglandin-associatedperiorbitopathy(PAP)として報告されている1)(図1).一方,緑内障に対しもっとも広く行われている手術治療は,濾過手術である線維柱帯切除術である.線維柱帯切除術は,強膜弁下に輪部組織の切除を行い,上眼瞼と眼球に挟まれる結膜下に房水流出路を作製することが一般的であるが,これまでDUESが濾過手術の術後成績に与える影響については明らかにされていなかった.最近筆者らは,DUESと線維柱帯切除術の成績との関連を調べるため,術前にDUESが認められた患者〔DUES(+)群〕と,認められなかった患者〔DUES(-)群〕の2群で,術後成績をKaplan-Meier法にて比較した.●試験の概要対象は,初回線維柱帯切除術を施行した原発開放隅角緑内障患者とし,上方強角膜切開白内障手術や硝子体手術などによる結膜瘢痕がある症例は解析対象から除外した.両眼に線維柱帯切除術を施行した患者では,先に施行した眼を解析対象とし,1患者につき1眼を組み入れ(61)0910-1810/19/\100/頁/JCOPY図1左眼のみPG製剤点眼中著しいDUESがみられるだけでなく,眼瞼も非常に硬くなっている.(本人の同意を得て掲載)た.DUESの判定方法については,上眼瞼の写真を3人の眼科医が評価し,その判定結果が一致し,さらに患者自身が,PG製剤使用前より上眼瞼がくぼんだ,などの自覚があった場合に「DUESあり」と判定した.眼圧再上昇(死亡)の定義は,術後1カ月以降に,①2回以上連続して眼圧が15mmHg以上,②緑内障点眼薬を追加,③緑内障手術(ニードリングを除く)を施行した,のいずれか一つに該当した時点を「眼圧再上昇」とした.●結果選択されたのは74例74眼で,DUES(+)群が18例18眼,DUES(-)群が56例56眼であり,年齢・性別・術前眼圧・meandeviation(MD)で有意差を認めなかった.点眼薬別のDUES発現率は,ビマトプロスト群(69.2%),トラボプロスト群(31.3%),タフルプロスト群(9.1%),ラタノプロスト群(8.8%)であり,ビマトプロスト群では他の3剤に比較し,DUESをきたしている症例が大幅に多かった(図2).一方,Kaplan-Meier法による術後24カ月時点での生存率は,DUES(+)群で34.7%,DUES(-)群で74.3%であり,DUES(+)群は眼圧再上昇を認めた患者割合が有意に高かった(p<0.0001,log-ranktest)(図3).濾過手術後の眼圧再上昇にいずれの因子が影響あたらしい眼科Vol.36,No.9,20191163■:DUES(+)群■:DUES(-)群1.0ビマトプロスト69.230.88.891.29.190.931.368.80.80.6ラタノプロスト0.4タフルプロスト0.2トラボプロスト0.0図2PG種類別DUES発現率(%)種類によりばらつきがあり,ビマトプロストではとくに高い.図3DUES(-)群とDUES(+)群における線維柱帯切除術の成績DUES(+)群では生存率が有意に低い.下方視直後30秒後図4DUESの著しい症例の線維柱帯切除術後下方視直後に比較し,30秒後の濾過胞は,硬い上眼瞼の圧迫からはずれただけで,マッサージしなくとも大きくなっている.しているのかを調べるため,多変量ロジスティック回帰分析にて,ビマトプロスト・ラタノプロスト・トラボプロスト・タフルプロスト・b遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬・ブリモニジン・年齢・性別・術前眼圧・MD・PG製剤点眼歴・術前点眼スコアを説明変数に組み入れて,ステップワイズ法による変数選択を実施したところ,ビマトプロストのみが有意に関連する因子となった(p=0.0368).●PAPでなぜ濾過手術の成績が不良になるのか今回,DUES(+)群では,とくに術後成績が不良となることが判明した.その要因として推測されるのは,結膜の慢性的な炎症のほかには,PAPによる眼瞼硬化があげられる.あくまで仮説であるが,硬くなった上眼瞼自体が「自己圧迫眼帯」として作用し,濾過胞を圧迫,その結果,濾過胞の形成・維持が不良となるのではないだろうか.実際,DUESの著しい症例に線維柱帯切除術を行ったとき,術後に下方視させるだけで,眼瞼1164あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019(愛媛大学・溝上志朗先生のご厚意による)上から眼球マッサージをしなくとも,硬い上眼瞼の圧迫からはずれた瞬間に濾過胞が膨らんでくる所見に遭遇することがある(図4).そして,このような症例では,レーザー切糸をしながら型通りに術後管理していても結膜の癒着が術後早期から進み,濾過胞の形成不全に至ることが多い.近い将来に線維柱帯切除術を視野に入れている患者では,DUESを含めたPAPの発現をできるだけ回避しながら緑内障点眼治療を進めることが望ましいことが示唆された.文献1)SakataR,ShiratoS,MiyataKetal:Incidenceofdeepen-ingoftheuppereyelidsulcusinprostaglandin-associatedperiorbitopathywithalatanoprostophthalmicsolution.Eye(Lond)28:1446-1451,20142)MikiT,NaitoT,FujiwaraMetal:E.ectsofpre-surgicaladministrationofprostaglandinanalogsontheoutcomeoftrabeculectomy.PLoSONE12:e0181550,2017(62)

屈折矯正手術:RayOne trifocal IOL

2019年9月30日 月曜日

監修=木下茂●連載232大橋裕一坪田一男232.RayOnetrifocalIOL荒井宏幸みなとみらいアイクリニックCRayOnetrifocalは光学特性が近方に強いC3焦点レンズである.アポダイズ構造を使用せずに光学部C4.5Cmmに16本の回折構造により近方C3.5D中間C1.75Dの加入を得ている.近方重視の症例には選択肢にあれば便利な多焦点レンズであり,インジェクターも使いやすい.世界で初めて眼内レンズを製作したCRayner社の意欲作である.●時代は2焦点から3焦点へ世界的にはC2000年頃より徐々に普及しはじめた多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)であるが,日本ではC2009年に先進医療として認められて以降,実施施設数は増加の一途をたどり,887施設が登録している(2019年C5月現在).当初の多焦点CIOLは加入度数が大きいものが多く,コントラスト感度の低下やハロー・グレアなど光学的な不具合の出現率も高かった.レンズの光学設計技術の進歩とともに,光学的ロスを中間視力に分配できるようになり,3焦点の実現と光学的な不具合の低下という二つの課題を解決するC3焦点CIOLが登場することになったのである.C●RayOnetrifocalIOLの特徴英国のCRayner社はC1949年にCDr.Ridleyが世界で初めてCIOLを開発したメーカーであり,現在でも多くのラインアップのCIOLを発売している.RayOnetrifocalIOLはC2017年にCCEマークを取得し臨床使用されるようになった.RayOnetrifocalIOLの概要を図1に,細隙灯顕微鏡写真を図2に示す.遠用部レンズ長径12.5mm回折型3焦点(中心4.5mm)光学部径6.0mm非球面レンズ26%含水アクリル加入度数近方+3.5中間+1.75球面+0D~+30D(0.5Dステップ)プリロードシステム回折部図1RayOnetrifocalIOLの概要外観の特徴は大きなループである.水晶体.赤道部との接触部分が大きいため,.内での安定性が良好になっている.また,ループ内に空隙を設けクローズドループとすることで水晶体.の直径の個体差や術後の.収縮に対応し,レンズ位置の安定性に寄与している.IOL光学部の周辺形状はスクエアエッジとなっている1).加入度数は近方が+3.5D,中間が+1.75Dである.近方加入度数の適切な加入度数がどの程度なのかという議論はあるが,国内の状況においては術後の近方視力は重要であり,高加入度数の設定は近方視力重視の症例に使いやすい.IOL光学部の中心C4.5CmmにC16本の回折格子が作られており,回折部の外側は単焦点となっている.この光学設計により,瞳孔径による光量配分はC4.5mmまではC3カ所の焦点に均一な光量をもたらし,4.5mmを越えると遠方重視の配分へと変化する.同様の加入度数をもつCFineVision(PhysIOL社)の光量配分を比較したものを図3に示す.FineVisionは光学面全面に回折構造をもち,アポダイズ設計となっているため,瞳孔径の拡大に伴い遠方への光量配分が大きくなる設計となっている.こうした光学設計の違いは,個々の症例の瞳孔径と希望する見え方のスタイルにより,どのCIOLを選択するべきかの理論背景になる重要な指標であろう.また,他の新設計CIOLと同様に光学的ロスを低く制御しており,瞳孔径C3Cmmでの光学的ロスはC11%に図2RayOnetrifocalIOLの細隙灯顕微鏡写真(59)あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019C11610910-1810/19/\100/頁/JCOPYRayOne.FineVision.実線点線15%●とても満足38%●満足●普通●やや不満●不満46%n=27押さえられている.これは術後の良好なコントラスト感度に大きく寄与している.インジェクターはプリロードシステムである.インジェクター全体が保存液に浸かった状態で出荷されている.角膜切開C2.2Cmmからの挿入が可能で,プッシュ型のインジェクターであるが,挙動は非常になめらかで挿入に関してのストレスはない2).素材は親水性アクリルである.多くの親水性CIOLが米国のCBenzR&D社から素材供給を受けているのに対して,Rayner社の親水性素材は英国のCContamac社製であり,独自のパテント素材を用いている.着色レンズの設定はなく,クリアーレンズである.また,現時点では乱視用は準備されていない.C●RayOnetrifocalIOLの成績当院にてCRayOneCtrifocalIOLを挿入したC19例C27眼における裸眼視力の結果を図4に示す.平均年齢は62.2歳,男性C5例C6眼,女性C14例C21眼である.乱視C1162あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019図5RayOnetrifocalIOL挿入術後の満足度1.21.01.011.081.111.031.180.80.730.750.660.640.6視力0.540.60.680.590.650.40.190.20.15━遠方━中間━近方0.20.0術前1D1W1M3M6M観察時期n=27図4RayOnetrifocalIOL挿入眼の片眼での裸眼視力の推移の変化用CIOLの設定がないため,13眼に対してフェムトセカンドレーザーによる弧状角膜切開(arcuratekeratecto-my:AK)を施行している.片眼でのデータは安定しており,観察期間を通じて良好な経緯であった.本稿では両眼視でのデータは割愛するが,両眼裸眼視力は術後C6カ月において遠方C1.2,近方C0.92,中間C0.9と良好な結果が得られている.術後満足度の分布を図5に示す.高い満足度が得られているが,不満領域の回答がゼロであったことが注目される.多焦点CIOLの満足度調査では,通常は約C3~5%程度の不満症例が存在することが多い.今回,不満症例が出なかったのは,コントラスト感度の低下が少ないためではないかと推測している.C●今後の付加価値IOLのゆくえEDoF(焦点深度拡張型)レンズの登場により,付加価値CIOLの普及は加速度的に拡大した.最近では低加入度数のCIOLが保険適応となったことも注目されている.私見であるが,今後はCEDoFおよび低加入CIOLは保険診療で使用する発展型単焦点CIOLとして位置づけられ,中等度以上の加入をもつCIOLは自費診療の対象となるのではないかと考えている.高機能型のCIOLは今後も発展することが予想され,より自然な見え方での視力改善が期待される.常に向上心を保ちながら勉強し,光学特性を見きわめながらCIOLの選択をしてゆくことが大切であろう.文献1)NanavatyMA,ZukaiteI,SalvageJ:Edgepro.leofcom-merciallyCavailableCsquare-edgedCintraocularlenses:PartC2.JCataractRefractSurgC45:847-853,C20192)NanavatyMA,Kubrak-KiszaM:Evaluationofpreloadedintraocularlensinjectionsystem:Exvivosutudy,JCata-ractRefractSurgC43:558-563,C2017(60)

眼内レンズ:低加入度数分節眼内レンズ「レンティスコンフォート」の新インジェクター

2019年9月30日 月曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋394.低加入度数分節眼内レンズ大鹿哲郎筑波大学医学医療系眼科「レンティスコンフォート」の新インジェクターレンティスコンフォートの挿入用に,新しいインジェクターが登場した.鑷子による眼内レンズのハンドリングが不要で,プリロードタイプに準じた簡便さを有する.また,強角膜切開創2.2mmから挿入可能となり,以前より小さな創口に対応する.●はじめにレンティスコンフォート(参天製薬)は親水性の素材からなる眼内レンズであり1),保存液に浸った状態で保管・出荷されることから,疎水性眼内レンズのように完全なプリロード型のインジェクターを作ることは困難である.したがって,これまでは術者が鑷子でレンズを取り出し,インジェクターに装.する必要があった.今回,術者によるレンズのハンドリングを不要とした新しいインジェクターが開発されたので,紹介する.●挿入準備新インジェクターは,眼内レンズに触ることなく,眼内レンズ固定器具をそのままインジェクターに装.するタイプである(図1).保存容器から取り出した眼内レンズ固定器具をインジェクター側面の開口部に差し込む(図2.①②).一方向でしか噛み合わないので,上下左右を間違えることはない.装.したのち,インジェクター内部を粘弾性物質で満たす(図2.③).プランジャーを前進させ,眼内レンズを前方に押していく(図2.④).●挿入操作強角膜の場合2.2mmの創口からカートリッジ先端を前房内に挿入し(図3.①),眼内レンズを押し出していく(図3.②).眼内レンズが水平に出るように方向を調整しながら,プランジャーを押す(図3.③).通常はインジェクターの回転操作は必要なく,単純に押し出していくだけでよい.眼内レンズの前方部分が.内に入ったら(図3.④),(57)0910-1810/19/\100/頁/JCOPY図1新インジェクターへのレンティスコンフォートの装.方法(イラスト)インジェクターを引き抜く.プランジャーは押し出しすぎないほうがよい.プランジャーの先端部は若干太くなっており,この部分が眼内に深く入ってしまうと,創口から抜き出しにくくなる.手前部分の挿入方法にはいくつかのバリエーションがあるが,一つの方法を示す.T字フックで手前のホールを引っかけ(図3.⑤),まず左に振って左の肩を.内に挿入し,次に右に戻しながら右の肩を.内に挿入する.眼内レンズ裏の粘弾性物質は必ず洗浄する(図3.⑥).レンズが大きく,.内での安定性はきわめて良好である(図3.⑦).文献1)OshikaT,AraiH,FujitaYetal:One-yearclinicalevalu-ationofrotationallyasymmetricmultifocalintraocularlenswith+1.5dioptersnearaddition.SciRep,inpressあたらしい眼科Vol.36,No.9,20191159図2挿入準備(インジェクターへの装.)①保存容器から取り出した眼内レンズ固定器具を,インジェクター側面の開口部に差し込む.②インジェクターに装.したところ.③インジェクター内部を粘弾性物質で満たす.④プランジャーを前進させる.図3挿入操作①2.2mmの強膜膜創からカートリッジ先端を前房内に挿入する.②プランジャーを押して眼内レンズを挿入する.③先行部分を.内に挿入する.④手前部分は虹彩上に置く.⑤T字フックで手前のホールを引っかけ,左右に振りながら両肩を.内に挿入する.⑥眼内レンズ裏の粘弾性物質を洗浄する.⑦挿入終了.

コンタクトレンズ:羞明のメカニズム

2019年9月30日 月曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一59.羞明のメカニズム堀口浩史東京慈恵会医科大学眼科学講座●コンタクトレンズと羞明0-1.2コンタクトレンズセミナーに羞明のメカニズム?多くの人が訝しむような,一見すると関連がない話題のようだが,実はその両者には密接な関係がある.なぜならコンタクトレンズ(CL)は,羞明の惹起に重要な二つの感覚系に大きく関与するからである.羞明を惹起する感覚系として最初にあげられるのは当然,視細胞を起点とした視覚系である.明るいものを見たときにまぶしさが光感受性細胞の相対反応曲線LogRelativeSensitivity1-0.6生じることは誰もが体験していることであり,とくに反論の余地はないであろう.CLは屈折異常を矯正して,網膜での結像を可能にする.さらに,着色や素材により特定の波長を抑制することも可能である.実際多くのCLは,短波長から紫外線領域の光を抑制する設計となっている.もう一つの重要な感覚系は,眼周囲における疼痛などの知覚系を担当する三叉神経系からの体性感覚系である.鋭敏な感覚をもつ手指よりもさらに高密度な神経をもつといわれている角膜,まさにその上にCLは装用される.治療用CLの装用によって疼痛が軽減されることは,CLと三叉神経の関連性を直接的に表しているといえよう.●羞明の定義と役割眼科学領域では「羞明=まぶしさ」であり,一般的に体験する感覚であるが,定義することは容易ではない.太陽など,強い光源による短期的なまぶしさや不快感は誰もが体験するものである.このとき羞明は,眼球,とくに網膜にとって有害な要因に対する忌避のために生じていると考えられる.つまり,組織侵襲からの忌避の起点となる体験であり,羞明と疼痛は類似している.疼痛の定義は,実質的または潜在的な組織損傷に伴う不快な感覚・情動体験である.この疼痛の定義や,短波長光が羞明や組織障害を生じやすいという先行研究から(図1),羞明は「組織障害の可能性がある視覚体験に伴う不快な感覚・情動体験」と定義が可能である.あえて「可能性」としているのは,網膜障害が直接羞明を惹起する(55)0910-1810/19/\100/頁/JCOPY図1羞明と組織障害と光の波長の関係波長が短い光は,等エネルギーであっても羞明を惹起しやすい.この傾向はレーザーによる網膜障害と一致する.ヒトの場合,短波長光はS錐体,杆体,メラノプシン含有神経節細胞を効果的に刺激する.反応した細胞を起点に視覚情報処理が行われるため,視覚系の羞明はこれらの細胞が重要な役割を担っている可能性が高い.わけではないからである.日食のたびに報告される日光網膜症は,そのわかりやすい例である.日光網膜症は,簡易な遮光板・フィルターで十分に抑制できなかった太陽光により生じる網膜障害である.網膜が不可逆的な障害を受けていても羞明が生じないため,長時間光源を観察してしまう.つまり,組織侵襲からの忌避という羞明の役割が正しく機能しないのである.●羞明のメカニズム関連する既報から羞明は,a)視覚入力,あるいは三叉神経入力を起点とした二つの感覚系により惹起され,さらに,b)この二つの感覚系の相互作用により増強する,ということが導かれる.これらの感覚系への入力から,ヒト脳神経のどのような経路で羞明が生成されるのであろうか.未だに不明な点は多いものの,筆者らは先行研究と自験例から,羞明のメカニズムに関する神経回路の仮説を立てた.この神経回路は,網膜の光受容器からの視覚系と角膜・虹彩・硬膜などに存在する侵害受容器からの体性感覚系という二つの下位回路により構成さあたらしい眼科Vol.36,No.9,20191157図2羞明の神経回路(堀口浩史:神経眼科2009,あたらしい眼科2013)れる(図2).この神経回路モデルでは,1934年にLeb-ensohnが定義した狭義の羞明ともいえる光眼痛症(pho-to-oculodynia)から,広義の羞明である「まぶしさ」まで,さまざまな体験の幅を含む羞明を,できるだけ包括的に扱えるようになっている.疼痛を伴わない視覚入力から発生する羞明は,S錐体やメラノプシンが関与している可能性が高く(図1),これらの入力系が適切に視覚情報から羞明を惹起できない場合,前述した日光網膜症のような不可逆的な網膜障害が発生すると考えられる.●おわりに現在,直接的な羞明の治療法は存在しないため,対症療法的に遮光眼鏡が用いられる.遮光眼鏡は特定の波長を抑制することで羞明を軽減するが,それ以外の機能はない.また,見た目の問題から装用を敬遠されることもある.CLであれば整容的にも大きな問題なく視覚入力を制御でき,さらに対乾燥素材であれば三叉神経入力を軽減することが可能である.2018年には米国食品医薬品局(FDA)で調光CLも認可されており,今後,羞明の制御には眼鏡よりもCLが主流となる時代が来るかもしれない.新たなデバイスの開発や羞明のメカニズムの解明が進めば,今後,原因不明の白内障術後不適応症候群のような病態に対しても積極的な加療が可能になることも期待できる.羞明は視覚体験に基づく主訴であるため,眼科医でなければ原因を特定できない可能性が高い.羞明を安易に不定愁訴として扱わず,器質的・機能的にあらゆる可能性を考慮して診察にあたるのが眼科医の責務であると考える.PAS121

写真:炎症性結膜母斑

2019年9月30日 月曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦加藤久美子424.炎症性結膜母斑三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座眼科学図2図1のシェーマ①軽度の色素沈着と充血,浮腫②栄養血管図1初診時の前眼部所見(13歳,男児)軽度の色素沈着と充血,浮腫,そして栄養血管を認めた.図3エピナスチン点眼開始後炎症は消失し,病変は縮小した.図4別症例の初診時の前眼部所見(6歳,男児)充血と浮腫,栄養血管を認めた.図5図4の症例の6年後病変の拡大は認めなかった.(53)あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019C11550910-1810/19/\100/頁/JCOPY炎症性結膜母斑は,Folbergらにより命名された疾患で,小児や青年期に発症する良性疾患である1).Zamirらによると,炎症性結膜母斑の患者24名のうち18名はアレルギー性結膜炎やアトピー性角結膜炎,春季カタルなどの何らかのアレルギー疾患を伴っており,炎症性結膜母斑とアレルギー反応との間に何らかの関連があるのではないかと考えられている2).炎症性結膜母斑は角膜輪部近傍に位置していることが多く,周辺部角膜に及ぶこともある2).充血と浮腫を伴い,色素に乏しいという点が典型的な結膜母斑と異なる.炎症の活動性により,病変が増大・肥厚あるいは縮小するのも特徴的である.炎症性結膜母斑を切除して組織学的検査を行うと,母斑組織内に好酸球,組織球,肥満細胞など炎症細胞の浸潤が認められる2).本疾患は良性疾患ではあるが,経時的に観察して悪性黒色腫と鑑別していく必要がある.非典型的な病変である場合や,Dellenの形成,コンタクトレンズを装用する際に障害になるといった機能的な問題がある場合,また,整容上の問題がある場合には切除の適応となる2).症例はC13歳の男児である.細隙灯顕微鏡検査では,左眼角膜輪部に炎症所見を伴う隆起性病変を認めた(図1,2).上眼瞼結膜にはアレルギー性結膜炎を疑う濾胞の形成を認めた.炎症性結膜母斑およびアレルギー性結膜炎と診断し,エピナスチンの局所投与を開始した.1カ月後に再診したところ,隆起性病変は縮小していた(図3).図4はC6歳の男児で,同じく炎症性結膜母斑であるが,図1~3の症例よりもさらに色素に乏しい症例である.抗アレルギー薬点眼を継続しながらC6年にわたり経過観察を行ったが,季節により病変の隆起性に若干の変動はあるものの,明らかな病変の拡大は認めなかった(図5).炎症性結膜母斑について紹介した.本疾患は良性疾患であり,経過観察のみで問題はないが,抗アレルギー薬を点眼することにより病変は縮小するため,抗アレルギー薬の使用は有益であると考える.文献1)FolbergCR,CJakobiecCFA,CBernardinoCVBCetal:BenignCconjunctivalmelanocyticlesions.Clinicopathologicfeatures.COphthalmologyC96:436-461,C19892)ZamirE,MechoulamH,MiceraAetal:In.amedjuvenileconjunctivalnaevus:clinicopathologicalCcharacterisation.CBrJOphthalmol86:28-30,C2002

水晶体関連緑内障に対する緑内障手術のコツ(術式の選択,白内障同時手術など)

2019年9月30日 月曜日

水晶体関連緑内障に対する緑内障手術のコツ(術式の選択,白内障同時手術など)GlaucomaSurgeryStrategiesforCasesofLens-AssociatedGlaucoma:SelectionofProceduresandCombinedLensandGlaucomaSurgery東出朋巳*はじめに水晶体関連緑内障では,水晶体が病態の主因である場合には,水晶体再建術が原因治療としての手術治療の主役となる.しかし,症例によっては周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)による隅角閉塞などのため,水晶体再建術のみでは眼圧下降が得られず,緑内障手術を併用あるいは追加する必要がある.さらに,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)眼あるいは人工的無水晶体眼においても,IOL(亜)脱臼,先天白内障術後などでは続発緑内障を引き起こす可能性があり,緑内障手術が適応となりうる.本稿では,水晶体関連緑内障における緑内障手術の選択と手術手技の実際について病型あるいは病態ごとに筆者の考えを述べる.I原発閉塞隅角症.原発閉塞隅角緑内障「緑内障診療ガイドライン第4版」における本病型の治療方針として,第一選択はレーザー虹彩切開術による瞳孔ブロックの解除である.しかし,角膜浮腫・混濁などによりレーザー虹彩切開術が施行困難な場合には周辺虹彩切除術が考慮される.一方,水晶体再建術は,瞳孔ブロック,プラトー虹彩機序の両方に有効な治療とされ,症例によっては第一選択の手術治療となる.観血的緑内障手術のなかでは,房水流出路再建術である隅角癒着解離術,線維柱帯切開術,濾過手術では線維柱帯切除術などが選択されるが,単独よりも水晶体再建術と同時あるいは水晶体再建術後に二期的に施行されることが多い.水晶体再建術に対して緑内障手術を同時あるいは二期的に行うべきかについては,本病型では水晶体再建術単独での眼圧下降を期待できるので,手術侵襲の点からも基本的には<水晶体再建術→術後の眼圧コントロールの確認→必要に応じて緑内障手術の追加>の方針となる.同時手術を考慮するのは,PASが広範囲の場合(半周あるいは3/4周),落屑物質や色素沈着により房水流出抵抗が高いと推測される場合,緑内障性視神経症が高度である場合などである.1.隅角癒着解離術水晶体再建術との併用で行われることが多い.本病型では,術前の隅角検査でPASに見える部位でも水晶体摘出後に再度観察するとPASがないことがしばしばあること,水晶体摘出後には前房が深くなり眼内操作がより安全にできることが水晶体摘出後に隅角癒着解離を行うメリットである.しかし,隅角の視認性を優先して隅角癒着解離を先に行う考えもある.水晶体摘出術後に行う場合には,隅角鏡下での良好な視認性の確保のために,水晶体摘出術はできるだけ低侵襲で速やかに行う必要がある.水晶体摘出術が難航したり,Zinn小帯断裂や後.破損などの合併症が生じた場合は,さらなる合併症や術後炎症のリスクを考慮して無理に本術式を同時に施行するべきではない.*TomomiHigashide:金沢大学附属病院眼科〔別刷請求先〕東出朋巳:〒920-8641金沢市宝町13-1金沢大学附属病院眼科0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(45)1147図1隅角癒着解離術の術中所見原発閉塞隅角緑内障:超音波乳化吸引術後,森ゴニオレンズ下で永田式隅角癒着解離針を使用,針の先端を線維柱帯表面に当てて擦るようにやさしく下方()へ押し下げる.の方向へ向かって操作を繰り返す.癒着解離済部には線維柱帯の色素帯が観察できる.図2線維柱帯切開術・眼内法の術中所見専用器具(線維柱帯ナイフ,37-0082,シャルマン)で線維柱帯上縁を一部切開して,器具の先端を押し下げるようにしてCSchlemm管内を露出させ()5-0ナイロン糸を挿入するスペースを作る.図3アーメド緑内障バルブ・毛様溝挿入の前眼部写真続発閉塞隅角緑内障(小眼球症),周辺虹彩切除部および瞳孔領からチューブが確認できる().後の前房出血は硝子体出血となるので,術後の安静や止血剤の内服などを指示する.前.切開できない場合や水晶体が落下している場合は,緑内障手術を行ったあとに硝子体切除を行い,パーフルオロカーボンを注入して水晶体を拳上させて,超音波乳化吸引によって水晶体を摘出する.C2.濾過手術併用の場合水晶体(亜)脱臼よりもCIOL(亜)脱臼において併用される場合が多いので,その項に記述する.C3.二期的緑内障手術IOL(亜)脱臼と同様であり,その項に記述する.CIII水晶体に起因する開放隅角緑内障(水晶体融解緑内障など)基本的に水晶体摘出術単独が第一選択の手術治療となる.その後に薬物治療によって眼圧コントロールが不十分な場合に緑内障手術を二期的に行うこととなる.IOL眼の開放隅角緑内障に適応となる術式の中から,緑内障性視神経症の程度などを考慮した目標眼圧によって術式を選択する.CIVIOL(亜)脱臼眼での緑内障IOLによる虹彩捕獲により眼圧上昇をきたす場合(続発閉塞隅角緑内障),IOLの位置異常による色素散布に続発する色素緑内障(続発開放隅角緑内障),もともと落屑緑内障がありCIOL(亜)脱臼を伴う場合などがある.IOLの位置の正常化が第一であるが,症例によって緑内障手術を先行,同時あるいは二期的に行う.このなかで,比較的頻度が高いCIOL(亜)脱臼を伴う落屑緑内障について述べる.C1.緑内障手術先行IOLの位置異常が軽度で視機能障害があまりないと考えられる場合や,薬物治療下にもかかわらず高眼圧で緑内障性視神経症が高度である場合に考慮する4).線維柱帯切開術と濾過手術の可能性がある.線維柱帯切開術の場合,粘弾性物質の注入と吸引を含む多くの前房内操作を必要とする眼内法では,IOLの位置異常をさらに悪化させる可能性がある.とくに前房洗浄の際に灌流ボトルの位置が高いまま前房に圧をかけると,症例によってはIOLが落下する危険がある.灌流ボトルを下げ,灌流と同時に吸引を行い,前房内圧の変動を最小限にする.メタルプローブを使う眼外法ではプローブの回転以外に前房内操作が必要ないので,瞳孔から硝子体が少し脱出しているような症例でも施行可能である.前房出血が硝子体に回る可能性があるので,術前によく縮瞳させ,線維柱帯切開は下方で行うようにしている.濾過手術では,虹彩切除を伴う通常の線維柱帯切除術では,虹彩切除部から硝子体が脱出する可能性がある.脱出硝子体を切除することで対応できるが,それによりCIOLの位置異常が悪化するおそれがある.エクスプレスはこの問題を回避することができる.C2.緑内障同時手術IOLの位置異常により視機能障害をきたし,かつ眼圧下降を急ぐ必要がある場合に考慮する.IOLの摘出,経毛様体扁平部硝子体切除,IOL強膜内固定に加えて緑内障手術を行う.IOLは眼内にあるものを再利用できればよいが,シングルピースのために縫着や強膜内固定に向かなかったり,ハプティクスが劣化していて途中で破損したりすることがあるので,基本的に摘出している.フォーダブルレンズは上方の角膜小切開創からCIOLカッターで半切して摘出する.ポリメタクリル酸メチル樹脂(polymethylCmethacrylate:PMMA)レンズは摘出用の創口が大きくなるので,下方に強角膜切開創を作製して摘出している.硝子体切除とCIOL強膜内固定は水晶体(亜)脱臼の項と同様である.線維柱帯切開術を併用する場合は,水晶体(亜)脱臼の項と同様にCIOLの処理の前に行う.線維柱帯切除術・エクスプレスの場合,円蓋部基底結膜切開,強膜弁作製,マイトマイシンCC塗布と洗浄まではすませておく.その後,IOLの摘出,27ゲージ経毛様体扁平部硝子体切除,IOL強膜内固定を行う.2カ所のC30ゲージ針の刺入のみで行えるCFlangedC.xation法は濾過胞(作製)への影響を最小限にできる点において優れている.(49)あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019C1151図4IOL亜脱臼を合併した落屑緑内障に対してバルベルト緑内障インプラント毛様体扁平部挿入+IOL摘出・IOL強膜内固定を行った症例左上:術前前眼部写真.IOLが下方に偏位している.右上:前眼部COCT所見.IOLが下方に偏位していることがわかる().下:術後C1年の前眼部写真.チューブは保存強膜で被覆されている(左下,→).結膜下にCIOLハプティクスのフランジが確認できる(右下,→).図5先天白内障術後の緑内障に対する線維柱帯切開術の術中所見先天風疹症候群による左眼先天白内障に対して生後C2カ月時に水晶体摘出術を施行された.15歳時の線維柱帯切開術の術中所見である.耳側アプローチで下方から眼外法にてメタルプローブを使用した.プローブ回転時に浅前房となり,粘弾性物質を注入した.その吸引の際に硝子体脱出を認めたため,2手法にて瞳孔領から前部硝子体切除を施行した.2003年の手術であり,20ゲージ硝子体カッターが使用されている.C-