写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史加山結万481.“金粉療法”後の角膜混濁東京歯科大学市川総合病院眼科図2図1のシェーマ①角膜実質深層の深さの混濁②金粉図1初診時の前眼部所見両眼の角膜実質深層の深さの混濁,浮腫,周辺部血管新生を認めた.図3図1の前眼部光干渉断層計所見角膜実質深層のCDescemet膜近くにまで及ぶ角膜混濁と一致した浮腫を認める.図4術後所見右眼深層層状角膜移植と白内障手術後.抜糸後,乱視が強いためCcompressionsutureを施行した.移植からC3年が経過.RV=1.0×HCL,左眼深層層状角膜移植後C1.5カ月.LV=(0.7C×.7.75D(cyl.2.25DCAx140°).(77)あたらしい眼科Vol.41,No.6,2024C6810910-1810/24/\100/頁/JCOPY症例は60代の女性.他院にて両眼LASIK治療の際に,「金粉療法」なるものを受けた.術後10年で両眼霧視を自覚.角膜混濁が徐々に広がり,整容面でも気になるようになったため東京歯科大学市川総合病院眼科を受診した.「金粉療法」は標準治療にはなく詳細は不明だが,すでに閉院した都内の自費診療のクリニックで老視に効果があると「金粉療法」を勧められ,LASIKと同時に角膜周辺部実質内に金色粉末を注入されたと推察された.初診時視力は右眼C0.4(n.c.),左眼0.7(0.9C×cyl.1.75DAx160°),眼圧は右眼C10mmHg,左眼9mmHg,角膜内皮細胞密度は右眼2,296Ccells/Cmm2,左眼C2,447Ccells/mmC2であった.前眼部は両眼角膜周辺部実質に金粉が埋め込まれ,同部位より中央にかけて実質深層までの混濁と角膜浮腫,周辺部血管侵入を伴う実質炎を認めた.右眼の混濁は瞳孔領にかかっていた.中間透光体はCEmery-Little分類で右眼C3,左眼C2の核白内障も認めた.角膜内皮機能が残存しているため,深層層状角膜移植の方針となった.手術では可能なかぎり輪部組織を残しつつ,角膜実質に面状に埋め込まれた金粉を周辺部角膜が薄くなりすぎないよう加減しながら除去した.病理組織検査で異物型巨細胞,Touton型巨細胞を伴う肉芽腫形成と,その周囲のリンパ球浸潤,線維化を認めた.その後,白内障手術と,連続縫合抜糸後の乱視が強いためCcompressionsutureを施行した.移植からC3年後,右眼視力はC1.0C×HCLで経過し,角膜混濁の拡大はなかった.同様に左眼深層層状角膜移植を施行し,術後C1.5カ月で左眼視力(0.7C×sph.7.75D(cly.2.25DAx140°)に改善し,今後白内障手術を予定している.角膜内金属沈着にはさまざまな原因がある.角膜鉄片異物により角膜実質に沈着する角膜鉄症や,かつての放射状角膜切開術後や角膜移植後による角膜上皮基底部への鉄の沈着,また,銀が角膜のCBowman膜,実質およびCDescemet膜内に沈着し,変色の原因となった宝飾品加工職の症例報告がある1).ほかには眼内異物によりDescemet膜に銅が沈着する角膜銅症や,かつてのトラコーマ治療で硝酸銀点眼により銀が実質深部からCDesC-cemet膜に沈着する角膜銀症,そして,かつての関節リウマチの金製剤内服療法を原因として,角膜周辺実質深部に金が沈着する角膜金症が知られている.本症例のように直接角膜に「金粉」を入れた例はまだ報告がなく,目的も不明で実際に金であるか真偽は不明であるが,角膜実質内に埋められた金色粒子に対する慢性免疫反応により,肉芽組織の形成を経て線維性の組織が生じたと考えられる2).過去に関節リウマチの治療で金コロイド筋肉注射をされた症例では,角膜上皮,実質に黄褐色沈着物を認めたが,病理所見では炎症反応を認めず,本症例のような拡大する角膜混濁は認めなかった3).希少ではあるが,本症例のような角膜実質に金粉が埋め込まれた症例では,実質炎により角膜混濁が瞳孔近くまで拡大する前の早期に,手術で可能なかぎり除去するべきである.混濁が拡大した場合でも,深層層状移植でCDescemet膜近くまで混濁を除去すれば,整容面と視機能の改善が期待できる.文献1)DudejaL,DudejaI,JanakiramanAetal:Ocularargyro-sis:Acasewithsilverdepositsincorneaandlens.IndianJOphthalmolC67:267-268,C20192)遠藤一彦,松田浩一,安彦善裕ほか:医用金属材料の腐食と生体反応.Zairyo-to-KankyoC46:682-690,C19973)SinghCAD,CPuriCP,CAmosCRSCetal:DepositionCofCgoldCinCocularstructures,althoughknown,israre.Acaseofocu-larCchrysiasisCinCaCpatientCofCrheumatoidCarthritisConCgoldCtreatmentispresented.EyeC18:443-444,C2004