硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載195195中心窩網膜と神経再生(研究編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに中心窩は光のストレスを受け続けているにもかかわらず,細胞が枯渇することなく,終生その形態と機能を維持している.また,中心窩は,無血管で低酸素かつ陥凹するという組織幹細胞がもつ解剖学的な特徴を有している.筆者らは中心窩網膜に幹細胞様の未分化な細胞が存在し,神経再生が起こっているのではないかという仮説のもとに,サル眼の網膜を用いて免疫組織学的に検討した1).●サル眼中心窩網膜の免疫染色カニクイザルの中心窩陥凹を含む網膜の凍結組織切片を作製し,glial.brillaryacidicprotein(GFAP),nes-tin,neuron-speci.cclassIIIb-tubulin(TUJ-1),Ki67,arrestin4などを用いて免疫染色を行い,蛍光顕微鏡および共焦点顕微鏡を用いて観察した.その結果,中心窩のMullercellconeの内層に一致してGFAP陽性細胞が明瞭に観察された(図1).また,このGFAP陽性部位は,外網状層と外顆粒層の境界部の深層毛細血管網にも連続してみられた.中心窩網膜の最内層では一層のTUJ-1陽性細胞がみられ,それが周囲の神経節細胞層と連続していた.また,GFAP陽性部位の最内層はTUJ-1と共染色された.また,視細胞層にもradial方向に走行するGFAP陽性細胞がみられた(図2).Nestin陽性細胞は網膜外層を中心に発現がみられ,一部GFAPと共染色された.Mullercellconeの外層ではnestinと錐体のマーカーであるarrestin4が共染色されたが,中心窩外は染色性が弱かった(図3).傍中心窩の神経節細胞層と内顆粒層にはKi67陽性細胞が散在性に認められた(図4).●中心窩には未分化な細胞群が存在するMullercellconeは単一の細胞の集合ではなく,内層のGFAP陽性部位と外層のnestin陽性部位に分けられた.形態的に内層のGFAP陽性細胞はastrocyte,視細胞層に伸びたGFAP陽性細胞はradialgliaの可能性が示唆された.Mullercellcone外層のnestin陽性部位は(81)0910-1810/19/\100/頁/JCOPY図1サル眼中心窩のGFPA(赤)とnestin(緑)の免疫二重染色GFAPはMullercellconeの内層(白矢頭)に,nestinは外層を中心に発現がみられた.周囲の内顆粒層と外網状層の境界部にはMullercellconeのGFAP陽性部位に連続した形で,GFAP陽性細胞が伸びていた(白抜き矢頭).(文献1より引用改変)図2中心窩内層のGFPA(赤)とnestin(緑)の免疫二重染色共焦点顕微鏡所見.中心窩内層ではGFAP陽性の垂直方向に伸びる細胞が中心窩浅層まで連続している所見が観察された(白矢頭).(文献1より引用改変)図3中心窩のnestin(緑)とarrestin4(赤)の免疫二重染色Nestinとarrestin4は中心窩の視細胞層で強い共染色像がみられた(白矢頭)が,その周囲は弱かった.(文献1より引用改変)図4Ki67(赤)の免疫染色傍中心窩の網膜最内層に散在性のKi67陽性所見を認めた(白矢頭).また,内顆粒層と思われる部位にも一部陽性所見を認めた(白抜き矢頭).(文献1より引用改変)周囲の視細胞層とは異なり,nestinとarrestin4の共染色部位が明瞭に観察されたことより,中心窩の視細胞層には未分化な錐体細胞が存在する可能性が示唆された.中心窩ではこれらの未分化な細胞群が周囲の感覚網膜にニューロンを供給し,中心窩の形態維持および再生に関与している可能性がある.これらの結果は,黄斑円孔の閉鎖機序など黄斑疾患の病態解明につながる新しい知見と考えられる.文献1)IkedaT,NakamuraK,OkuHetal:Immunohistologicalstudyofmonkeyfovealretina.SciRep9:5258,2019.doi:10.1038/s41598-019-41793-yあたらしい眼科Vol.36,No.8,20191051