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Cyclophorometerを用いた回旋複視の定量と手術

2019年8月31日 土曜日

Cyclophorometerを用いた回旋複視の定量と手術UsingaCyclophorometerforQuanti.cationofRotationalDeviationinRectusMuscleTranspositionSurgery林孝雄*はじめに回旋複視とは,左右の像が傾いて二重に見える症状であり,眼球の前後を軸とした回旋偏位,すなわち眼球の子午線(12時と6時を結ぶ線)が傾く状態が大きいときに自覚される.眼球上部(12時の位置)が耳側に傾く場合を外方回旋,逆に鼻側に傾く場合を内方回旋という(図1).回旋複視を矯正する方法は,プリズムなどの光学的治療法では不可能で,外眼筋の移動術が必要となる.回旋斜視に対する手術のうち,斜筋の手術は疼痛を伴うので全身麻酔を必要とするが,4直筋の移動術は局所麻酔下で行える.このとき,筆者らは回旋の矯正効果を術中に調べるために回旋偏位測定装置Cyclophorometer(南旺光学)を使用している.Cyclophorometerとは,自覚的な回旋偏位を測定する検査機器(図2)であり,頭部外傷による両側性滑車神経麻痺の患者の術中定量を目的として開発された1).本稿では,回旋斜視の種類,Cyclophorometerを用いた回旋複視の定量方法と麻痺性斜視の診断,および回旋斜視に対する術式の選択方法を示し,局所麻酔下での術中にCyclophorometerを用いた回旋斜視矯正手術について述べる.I回旋斜視の種類外方回旋している場合を外方回旋斜視,内方回旋している場合を内方回旋斜視といい,単眼のことも両眼のこ右眼左眼図1眼球の回旋眼球の子午線(12時と6時を結ぶ線)の上部が耳側に傾くのを外方回旋,鼻側に傾くのを内方回旋という.ともありうる.ただし,回旋偏位は,上下直筋あるいは斜筋の麻痺や過動などで起こるので,純粋な回旋のみの斜視はまれで,上下偏位や水平偏位を伴っていることが多い.上下筋の麻痺による回旋および上下斜視の状態を表1に示す.II回旋偏位の定量と麻痺筋の診断回旋斜視の定量方法は,自覚的検査法として大型弱視鏡検査,Maddox二重杆試験,ニューサイクロテストなどがあり,他覚的検査法には眼底写真撮影法などが一般的である.上下筋4筋の単独麻痺の場合,9方向むき眼位のどの部位で上下偏位や回旋偏位が大きいかがわかれば,麻痺筋の診断がつけられる.すなわち,それぞれの筋には最大作用部位(図3)があり,麻痺すればその部位での上下偏位や回旋偏位が最大値を示す.*TakaoHayashi:帝京大学医療技術学部視能矯正学科〔別刷請求先〕林孝雄:〒173-8606東京都板橋区加賀2-11-1帝京大学医療技術学部視能矯正学科0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(53)1023赤いBagolini緑のMaddox杆目盛りダイヤル線条レンズ(測定眼)(固視眼)図2Cyclophorometer固視眼側には赤いBagolini線条レンズ,測定眼側には緑のMaddox杆がそれぞれ垂直方向に配置されている.点光源を覗くと,赤いBagolini線条レンズ越しでは,固視が容易にできるように点光源が見え,その左右に赤い線が見える.緑のMaddox杆越しでは点光源は見えず,緑の線のみが見える.ダイヤルを回して赤と緑の両線が平行になったときの角度(°)が目盛りに表され,この値が自覚的な回旋偏位度となる.表1上下筋の麻痺による回旋および上下斜視回旋上下上直筋麻痺外方回旋斜視下斜視下直筋麻痺内方回旋斜視上斜視上斜筋麻痺外方回旋斜視上斜視下斜筋麻痺内方回旋斜視下斜視直筋と斜筋のそれぞれの麻痺により,回旋斜視のみではなく上下斜視も生じる.a上・下転作用(緑:上転,赤:下転)上直筋下斜筋下斜筋上直筋下直筋上斜筋上斜筋下直筋右眼左眼b回旋作用(青:内方回旋,茶:外方回旋)下斜筋上直筋上直筋下斜筋上斜筋下直筋下直筋上斜筋右眼左眼図3上下筋の最大作用部位a:上・下転作用では,上直筋の上転は外上転時,下直筋の下転は外下転時,下斜筋の上転は内上転時,上斜筋の下転は内下転時に,それぞれもっとも大きく働く.b:回旋作用では,上直筋の内方回旋は内上転時,下直筋の外方回旋は内下転時,下斜筋の外方回旋は外上転時,上斜筋の内方回旋は外下転時にもっとも大きく働く.自覚的斜視角(°)右眼固視ab+2+2+1R/L2R/L1R/L1Ex2Ex2Ex2+3+2+1R/L6R/L5R/L3Ex4Ex4Ex5+3+2+2R/L9R/L7R/L6Ex5Ex6Ex8左右R:右,L:左,Ex:外方回旋図4右眼滑車神経麻痺の大型弱視鏡検査所見右眼滑車神経麻痺では,左下での下転作用が弱くなるためR/L(右上斜視)9°と最大となっており,右下での内方回旋作用が弱くなるためEx(外方回旋)8°と最大となっている.図5大型弱視鏡検査の回旋偏位定量用視標大型弱視鏡では,自覚的な回旋偏位が測定できる.固視眼にaの視標,測定眼にbの視標を入れ,bの十字がaの緑4枠の隙間に傾きなく収まるように被検者の返答を聞きながら,検者がbを回旋させて回旋偏位量をみる.ab図6Hessスクリーンを利用した回旋偏位の測定aのようにHessスクリーンの固視点に点光源を置き,bのようにCyclophorometer越しに見させる.9方向むき眼位での固視点で行えば,それぞれの位置での回旋偏位が測定できる.表2回旋斜視に対する一般的な術式斜筋上下直筋水平直筋外方回旋斜視上斜筋前部前転術(原田-伊藤法)上直筋耳側移動術内直筋上方移動術下斜筋弱化術下直筋鼻側移動術外直筋下方移動術内方回旋斜視上斜筋弱化術上直筋鼻側移動術内直筋下方移動術下斜筋強化術下直筋耳側移動術外直筋上方移動術斜筋手術は全身麻酔下で,上下・水平直筋の移動術は基本的に局所麻酔下で行う.ab図7Cyclophorometerでの術中回旋偏位測定a:視能訓練士に洗眼直前に回旋偏位量を測定してもらう.ペンライトを上方にアームで固定して点光源とし,外方回旋側から緑と赤の線が平行になったところと,内方回旋側から同様に平行になったところの回旋偏位量を測定する.写真の症例は,上下偏位のない内方回旋9°の患者なので,緑のMaddox杆の上に付属のプリズムのアタッチメントを当て,緑と赤の線が上下にずれて一直線にならないように見せて,両線の平行具合がわかりやすいようにしている.b:下直筋を1.25筋幅耳側移動して仮縫合した状態で,清潔なリネンに触れないように再度回旋偏位を測定してもらう.このとき,外方回旋側から外方回旋偏位が2°,内方回旋側から内方回旋偏位が3°と,上述した約10°以内の融像域内に入っており,さらに,天井に印した横線も自覚的に傾いたり,ダブって見えたりしていないことを確認したので,そのまま仮縫合をほどき,本縫合をして手術を終了した.

外眼筋Plication手術

2019年8月31日 土曜日

外眼筋Plication手術ProcedureforRectusMusclePlication木村友剛*木村徹*はじめに水平斜視に対する手術において,筋強化手術のスタンダードは短縮術である.しかし,短縮術は後転術に比較して術操作がむずかしく,介助者にも慣れが必要で,一定のラーニングカーブが存在する術式である.たとえば,筋付着部や筋腹を切除した際には断端からの出血は避けられないが,とくに高齢者や抗凝固薬内服中の症例では出血が多く生じ,その後の術操作に支障をきたすことがある.また,強膜から切離した後の筋はていねいに扱う必要があるが,筋が菲薄化している症例では操作の途中で筋線維が裂けてしまい,強膜との縫合が困難になることがある.近年,短縮術と類似した術式であるCplicationの術後成績が相次いで報告されており,短縮術と比較してさまざまな利点をもつことがわかってきた.本稿では新しい術式であるCplicationについて概説する.CIPlicationの特徴Plicationでは筋を付着部から切離せず低侵襲であることに起因するさまざまな利点がある.術中の利点として,筋断端からの出血が生じないため術野の視認性が良好で,術操作が容易となる.また,術量が多い短縮術では,切離した筋を前方に引っ張りつつ強膜へ縫着するため,とくに介助者に慣れが必要であるが,plicationは術量が多くても比較的操作が容易である.術後の利点として,lostmuscleを生じる可能性がなくなる.また,切腱しないため前眼部虚血を回避できる可能性が示唆されており,3筋同時手術が可能であった症例も報告されている1).さらに,術後に過矯正が生じ修正を余儀なくされた場合でも,早期であれば筋と強膜との縫合をはずすことにより,ある程度の修正を行うことが可能である2).欠点としては,新しい術式のため長期経過が不明であることがあげられる.また,筋を切離しないため筋移動術を同時に行うことができない.したがって,回旋偏位をもつ斜視やCAV型の斜視に対しては,他の後転筋に対して移動術を組み合わせることで対処する必要がある.現段階でのCplicationの積極的な適応としては,前眼部虚血の発症リスクが高い高齢者や糖尿病患者に対する症例,3筋同時手術を行う必要性がある症例,術後の矯正量の予測がむずかしい非共同性斜視や再手術症例などが考えられる.CII手技筋を折りたたむ手技に関して大きく分けて二つの方法が報告されており,筋を結膜側に凸に折りたたむ方法2)と強膜側に凸に折りたたむ方法3)がある.どちらの方法が優れているかは,まだはっきりしていない.結膜側に凸となる方法のほうが前毛様体の循環を温存しやすく,前眼部虚血に対して有用であるとの主張がある一方,強*YugoKimura&*ToruKimura:木村眼科内科病院〔別刷請求先〕木村友剛:〒737-0029広島県呉市宝町C3-15木村眼科内科病院C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(47)C1017図1Plication術中所見a:付着部から予定量をマーキングしたあと,筋の中央と上下端のC3点で通糸する.筋付着部前端の強膜へ通糸したあと,2-1-1で結紮する.Cb:始めの結紮で筋が折りたたまれ,筋の上下端が付着部に寄っていることを確認したあと,介助者に結び目を把持してもらう.その後C1-1で緩みのないように結紮する.C-に当てはめて術量を決定した場合では,直線回帰式に当てはめるとCplicationでは外斜視でCRC2がC0.69,内斜視でCR2がC0.97,短縮術では外斜視でCRC2がC0.69,内斜視でCR2がC0.95であり,plicationは短縮術と同等の効果があると報告されている3).また,他施設での術後経過の報告においても,plicationは短縮術と同じ術量を採用している6.8).一方,当院では短縮術よりもC1,2Cmm程度少なめに定量を行っている9).理由として,短縮術は筋付着部のちょうど上下端の強膜に通糸しているのに対し,plicationでは筋の付着部前方の強膜に通糸しており,若干の前転効果が生じているためと考えている.したがって,若干の手技の違いによって差はあるがCplica-tionは短縮術と同程度の効果があるとみなしてよいと考えている.また,外斜視に対する後転短縮術では,術前眼位が大きくなるにつれC1Cmmあたりの矯正効果が大きくなることが知られている10).初川らの報告によると,後転短縮それぞれC1Cmmあたりの矯正効果は,術前眼位がC30プリズム以上の症例はC30プリズム以下の症例より約C1プリズム多くなることが示されている11).自験例においても術量C1Cmmあたりの矯正効果は,短縮術C50例では平均C3.1プリズム,plication57例では平均C3.7プリズムで,術前眼位との相関係数は短縮術がCRC2=0.23(p<0.001),plicationがCRC2=0.12(p=0.001)と正の相関を認めた.Plicationにおいても,大角度の外斜視では過矯正にならないような術量の決定に注意する必要がある.CIV術後眼位経過水平斜視に対する片眼手術においては,内外直筋の後転術と短縮術が基本的な術式であるが,近年,後転+短縮術と後転+plicationを比較した術後早期の成績が報告されている.術後C1年程度の経過観察期間では,外斜視においても,内斜視においても,術式の違いによる術後眼位には差がないとする報告が多い.術後成功率において,Hustonらは内斜視のCplicationがC95.5%,短縮が89.2%,外斜視のCplicationがC77.4%,短縮がC96.2%6),SonwaniらはCplicationがC55.6%,短縮がC63.6%8),筆者らはCplicationがC67%,短縮がC60%9)で,いずれの報告でも差を示さなかった.しかし,Alkharashiらは,plicationでは成功率が有意に劣っており,術後C6.12週の成功率はCplicationがC58%,短縮がC89%であったことを報告している12).一方で,plicationは短縮術と比較して有利な術後経過を示す可能性が報告されている.間欠性外斜視に対するCplicationは,短縮術と術C1年後の眼位と成功率には差がなかったが,術C1週間後と術C1カ月後の眼位の比較においてCplicationは平均C1.7プリズムの戻りがあったのに対し短縮術はC3.8プリズムの戻りがあり,plicationは短縮術よりも術後早期の戻り量が少ないことが示されている.そのため,plicationでは術直後の意図的な過矯正を大きくしなくてもよく,術後早期の複視を自覚する症例を減らすことが可能であったことが報告されている9).長期の眼位経過に関してまだ検討された報告はないが,積極的にCplicationを行う理由の一つになりうるかもしれない.また,外斜視術後の外転制限は,短縮術と同様に術量が多い場合は必発である.術後の外方視時に生じる複視に関して留意する必要があるが,術後眼位の戻りとともに軽減する.CV術後結膜創の経過Plicationの術量が多い症例では,術後に折りたたまれた筋が盛り上がってみえる.しかし,多くの症例で術後数カ月の経過で結膜の盛り上がりは平坦化し消退する(図2a,b).一方で,内直筋のCplicationを行った症例で,結膜の盛り上がりが残存した症例も存在する(図2c,d).CVI術後過矯正の修正Plicationの有利な点として,術後過矯正であった場合に,術後早期であれば縫合した結紮をはずすことで眼位の修正が可能であることがあげられている2).通常の短縮術後の再手術では,筋を強膜や結膜との癒着をはずして筋を十分露出したあとに後転するが,手技に手間がかかり,また術後眼位の予測は良好とはいえない.しかし,plication術後早期の再手術の場合は,手術時の侵襲が少なく容易に元に戻すことが可能である.一般的には,術後早期は眼位が安定せず,戻りが生じる可能性も(49)あたらしい眼科Vol.36,No.8,2019C1019術1週間後術2カ月後図2結膜創の変化a:内直筋C6Cmmのplication.術C1週間後.結膜下に折りたたまれた筋が盛り上がっている.Cb:術C2カ月後.結膜充血は改善し,結膜創はほぼ平坦化している.c:内直筋C7CmmのCplication,術C1週間後.結膜創の盛り上がりを認める.d:術C2カ月後.結膜創の盛り上がりが残存している.図3過矯正のため術後3日目に再手術を行った例a:筋付着部後方の結膜下に折りたたまれた筋を認める().b:筋上下端の縫合を切除することで,筋はほぼ正常な形でもとに戻った(:初回手術時に筋上下端に通糸した部位).図4過矯正のため術後1カ月で再手術を行った例a:筋付着部前端に吸収糸が残存しているが,折りたたまれた筋はすでに平坦化している().b:筋の表面の結合組織をはずし結紮した糸を除去したが,折りたたまれた筋同士が癒着している(:筋の付着部上下端).

斜視診療での前眼部OCTの活用

2019年8月31日 土曜日

斜視診療での前眼部OCTの活用TheApplicationofAnteriorSegmentOpticalCoherenceTomographyforStrabismus鈴木寛子*稲垣理佐子**はじめに前眼部三次元光干渉断層計(3-dimensionalanteriorsegmentopticalcoherencetomography,以下,前眼部OCT)は測定光に長波長の赤外光が用いられ,透明組織だけでなく可視光では透過しない不透明組織の描出ができるよう開発された.現在では従来のtimedomain方式からFourierdomain(FD)方式に改良され,測定時間はtimedomain方式の10倍以上の速さとなり,短時間で高解像度の画像の撮影が可能となった.FD-OCTにはspectraldomain(SD)方式とswept-source(SS)方式がある.前眼部OCTはおもに角膜・前房の撮影では円錐角膜や角膜の移植後の評価,角膜潰瘍や角膜外傷の観察などに用いられる.角膜形状解析では,角膜の前面と後面を含む全体の形状解析,トーリックの眼内レンズを用いた手術の術前検査にも有用である.隅角の撮影では,前房隅角の定量測定を行い,閉塞隅角のスクリーニングや術前術後の観察や,水晶体・濾過胞・強膜の観察などにも使用されている.I前眼部OCTの斜視診療への応用斜視の診療では,数年~数十年前に一度斜視手術を受けたが,再び斜視になったため斜視を治したいと来院される患者がいる.しかし,以前の手術から年月が経過している場合,診療録が残っていなかったり,患者自身の記憶が曖昧であったりと,過去にどんな手術を受けたか,また以前はどんな斜視であったかがわからないという場面に遭遇する.その際には,まず過去の写真から以前の斜視の状態を確認する.検査では細隙灯顕微鏡を用い,結膜の瘢痕をみつけることで,以前手術を受けた筋を想定することができる.しかし,以前の手術が小切開で行われている場合や,瘢痕がきれいで目立たない場合は見逃す可能性がある.結膜に瘢痕がみられたとしても,前転されているのか,後転されているのか,後転量はどれくらいなのかの情報を細隙灯顕微鏡検査から知ることは不可能である.そこで,CTやMRI,超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscope:UBM)などを用いることで,手術を受けた外眼筋の情報を得る方法が行われる.しかし,CTは被爆の影響があること,MRIは時間と費用がかかること,UBMは接触性で小児には不可能であることなど,その使用には制限がある.近年,前眼部OCTが斜視の診療においても外眼筋の観察に利用されるようになってきた.2011年にLuiらは前眼部OCTで撮影した筋肉の低反射帯を外眼筋とし,斜視眼の筋付着部を術前に前眼部OCTで測定した値,術中に筋肉の付着部をカリパスで測定した値とに相関があることを報告した1).CTやMRIは外眼筋全体を撮影するのに対し,前眼部OCTでの外眼筋撮影は付着部付近に限られ,得られる画像はUBMの画像と似ている.また,前眼部OCTは非接触性であるため,患者に侵襲を与えず撮影可能で*HirokoSuzuki:浜松医科大学医学部眼科学講座**RisakoInagaki:浜松医科大学医学部附属病院眼科〔別刷請求先〕稲垣理佐子:〒431-3192静岡県浜松市東区半田山1-20-1浜松医科大学医学部眼科学講座0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(39)1009表1各機械の特徴特徴および長所短所CT外眼筋全体を撮影する被爆の影響がある画像が荒いMRI外眼筋全体を撮影するシネモードでは外眼筋の収縮伸展が評価できる眼球運動制限があっても撮影可能時間・費用がかかるUBM付着部の描出にすぐれる接触性である前眼部OCT短時間で撮影可能非接触性である付着部の描出にすぐれる小児でも可能眼球運動制限があると撮影不能斜視に関しては保険請求ができない図1外直筋(低反射帯)図2外直筋を後転し低反射帯が不鮮明図3内直筋図4上直筋図5下直筋図6右眼外直筋付着部計測図7眼底用のOCTに前眼部モジュールを設置図8眼底用のOCTに前眼部モジュールオプションをつけて撮影した外直筋b強膜岬外直筋d強膜岬内直筋図9計測方法a:外直筋側前眼部COCT写真.:強膜岬,:結膜上皮,*:外直筋.b:aのシェーマ.結膜上皮~強膜に垂線を引くように「結膜~強膜までの厚さ」を計測した.c:内直筋側前眼部COCT写真.:強膜岬,:結膜上皮,*:内直筋.d:cのシェーマ.結膜上皮~強膜に垂線を引くように「結膜~強膜までの厚さ」を計測した.(文献C13より改変引用)図10外直筋後転・前転術前後の前眼部OCT像a:外直筋術前,b:外直筋後転術後,c:外直筋前転術後.(文献C13より改変引用)図11内直筋後転・前転術前後の前眼部OCT像a:内直筋術前,b:内直筋後転術後,c:内直筋前転術後.(文献C13より改変引用)図12外斜視症例(88歳,男性)の細隙灯顕微鏡写真a:右眼外直筋側,b:右眼内直筋側.幼少期にC2回の斜視手術を受けているが,はっきりした結膜瘢痕は認めない.図13図12の症例の前眼部OCT像a:右眼内直筋側.隅角底よりC9.5Cmm後方に内直筋と思われる低反射帯を認める.Cb:右眼外直筋側.隅角底より7.7Cmm後方に外直筋と思われる低反射帯を認める.-’C

間欠性外斜視の読書時の視線解析

2019年8月31日 土曜日

間欠性外斜視の読書時の視線解析TheAnalysisofReadingPerformanceinPatientswithIntermittentExotropia広田雅和*不二門尚**I間欠性外斜視と行反復間欠性外斜視は子供においてもっとも発症頻度の高い外斜視である1).間欠性外斜視患者は注意が散漫になったときや,屋外で強い太陽光を浴びたとき,疲労が蓄積したときに一眼が外方へ偏位する2,3).検査所見としては,輻湊近点の延長や融像幅の低下が報告されている.日常生活における間欠性外斜視の症状の一つに読書能力の低下があげられる4).間欠性外斜視患者を対象とした読書中の眼球運動解析については,衝動性眼球運動中の両眼共同性が健常者と比較して悪化することや,衝動性眼球運動後のドリフトが増大することが報告されている5).間欠性外斜視患者が読書中に自覚する症状の一つに読書中の行反復があげられる.健常者は読書中,行頭から行末まで文字を読んだ後,次の行頭へ視線を移動し続く文章を読み進める(図1a).一方で一部の間欠性外斜視患者は行末まで文字を読んだ後,次の行頭ではなく同じ行の行頭へ視線が戻ってしまう.行反復がしばしば起こる6)(図1b).筆者らのグループでは,300Hzで両眼の視線位置を記録可能なvideo-oculography(TobiiProTX300:Tobii社)を用いて間欠性外斜視患者が読書中に自覚する行反復を他覚的に定量評価した7).読書能力は年齢と相関があるため,対象は輻湊不全型間欠性外斜視と診断された8名(平均±標準偏差24.0±5.8歳;幅16~32歳)と年ab図1読書中の視線移動通常は行頭から行末まで文字を読んだ後,次の行頭へ視線を移動し続く文章を読み進める(a).一部の間欠性外斜視患者は行末まで文字を読んだ後,次の行頭ではなく同じ行の行頭へ視線が戻ってしまい,話のつじつまが合わなくなり,同じ行の行頭と行末を往復する行反復がしばしば起こる(b).齢をマッチングした健常者10名(26.1±3.8歳;20~34歳)とした.読書内容は横読みの日本語小説(芥川龍之介作『羅生門』)を採用した.視距離は60cm,フォントサイズは10.5ポイント,行幅は15°,行間0.47°,行数42行のコンテンツを計2ページ被験者に読書してもらい,読書中の眼球運動をVOGで記録した.VOGの測定誤差が±0.5°であることから水平眼球運動のみを解析対象とした.間欠性外斜視群と健常群を比較したところ,行反復が起きたときは特徴的な水平眼球運動がみられた(図2).間欠性外斜視患者は健常者よりも読書中の行反復回数が有意に多いことが示された(図3).加えて,間欠性外斜視群は健常群よりも改行に伴う衝動性眼球運動中の両眼共同性が悪く,水平眼位ずれ量が有意に開散側へ偏位し*MasakazuHirota:帝京大学医療技術学部視能矯正学科**TakashiFujikado:大阪大学大学院生命機能研究科特別研究推進講座〔別刷請求先〕広田雅和:〒173-8605東京都板橋区加賀2-11-1帝京大学医療技術学部視能矯正学科0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(33)1003図2読書中の行反復時の眼球運動同じ文章(Ca)を読書中,健常者は行末まで文章を読んだあと,次の行頭へ視線を移動させているが(Cb),間欠性外斜視患者は行頭と行末を視線が往復する行反復を起こしている(Cc).図4改行に伴う衝動性眼球運動中の両眼共同性縦軸のプラス表記はディスプレイの中央より右側,マイナス表記は左側をそれぞれ示している.間欠性外斜視患者(a)は健常者(Cb)よりも改行に伴う衝動性眼球運動中の両眼共同性が悪い.行反復回数(回)10864200.0-0.5-1.0-1.5-2.0-2.5-3.0水平眼位ずれ量(度)図6読書中の行反復回数と衝動性眼球運動中の水平眼位ずれ量の関係間欠性外斜視群において,読書中の行反復回数と開散方向への水平眼位ずれ量の間には有意な相関が認められた(R2=0.71,p=0.009,Singlelinearregressionanalysis).図7手術効果斜視手術を受けた間欠性外斜視患者は術後の行反復回数(術前C8回,術後C1回,Ca),水平眼位ずれ量(術前-3.03±0.75°,術後-0.96±0.54°,Cb)ともに術前よりも改善していた.図8スマートフォン読書中の眼位ずれ水平眼位ずれは正の値が内方偏位,負の値が外方偏位をそれぞれ示す.垂直眼位ずれは正の値が上方偏位,負の値が下方偏位をそれぞれ示す.上部のヒストグラムは水平眼位ずれの密度分布を示す.間欠性外斜視患者(Ca)はスマートフォン読書中に両眼視しているとき,両眼視しているときと一眼が外方偏位しているときがみられた.健常者(Cb)はスマートフォン読書中常に両眼視を維持していた.=****ab単眼視頻度(%)***100100***(T)Control(T)Control(T)Control50cm30cm20cmX(T)50cm30cm20cmスマートフォン視聴距離図9スマートフォンの視距離と単眼視頻度a:間欠性外斜視群(n=11)と健常群(n=15)の比較.すべてのスマートフォン視距離において,間欠性外斜視群は健常群よりも単眼視頻度が有意に高かった.Cb:間欠性外斜視群の群内比較.スマートフォン視距離20Ccmでは視距離C50Ccmよりも有意に単眼視頻度が高かった.***:p<0.001,Mann-WhitneyUtest.*:p<0.05,Wilcoxonsignedranktest.Cabc101010888666444222000020406080100020406080100単眼視頻度(%)図10スマートフォン読書中の単眼視頻度と読書速度の関係スマートフォン視距離C50Ccmでは有意差を認めなかった(RC2=0.12,p=0.29,Ca).一方で,視距離C30Ccm(R2=0.49,p=0.01,Cb)とC20cm(RC2=0.38,p=0.02,Cc)においては,スマートフォン読書中に単眼視している頻度と読書速度の間に有意な負の相関を認めた.cps:characterspersecond.020406080100読書速度(cps)806040200806040200

急性後天性共同性内斜視

2019年8月31日 土曜日

急性後天性共同性内斜視AcuteAcquiredComitantEsotropia吉田朋世*仁科幸子*はじめに最近,若年者において,スマートフォンなどのデジタルデバイスの使用と関連すると思われる急性後天性共同性内斜視の報告が散見される1~6).これらの症例は,これまでの急性後天性共同性内斜視の概念に当てはまらず,デジタルデバイスの使用制限のみで改善する例も報告されており,注目を集めている.しかし,実際に,内斜視発症にデジタルデバイスが直接的に関与しているのかどうか,まだ確証が得られていない.こうした背景のもと,現在,日本弱視斜視学会の主導で,急性内斜視に対するデジタルデバイスの影響について多施設研究が進められている.『あたらしい眼科』36巻6号(前号)ではデジタルデバイスと急性後天性共同性内斜視の関係について解説したが,本稿では,改めて本疾患の概念,症状,診断,鑑別点をまとめて解説する.最後に,デジタルデバイス機器が頻用される情報化社会において,本疾患の増加の懸念と課題について述べる.I急性後天性共同性内斜視とは生後6カ月以降に発症する後天性内斜視のうち,突然発症し,発症日が明らかに特定できる共同性内斜視を急性後天性共同性内斜視(acuteacquiredcomitanteso-tropia:AACE)とよぶ.この中には,調節性要因が原因のもの,器質疾患に続発するものなども含まれるが,狭義のAACEの定義は,「急性に発症し,調節性要因を含まない共同性の内斜視」とされている.本疾患の特徴を表1に示す.一般に10~20歳代に起こることが多い7)が,幼小児でも発症することがある.成人の症状として「突然生じる複視」が特徴的で,診断に有用である.しかし,小児の場合は複視を十分に訴えることができず,すぐに抑制がかかるため,眼位異常や片目つぶりなどの症状がいつ頃起こったか,何か誘因があったか,症状の変動があるかを保護者に問診し,過去の写真や動画を参考にして発症時期を特定することが重要である.診察時には周期性内斜視,開散麻痺もしくは開散不全,麻痺性斜視,重症筋無力症など,他の急性に発症する斜視との鑑別を念頭に置く必要がある.AACEの発症機序について詳しくはわかっていないがが,一般にBurianらの分類によって,片眼遮閉などにより融像が遮断されて起こるタイプ,心身のストレスが誘因となる原因不明のタイプ,近視に伴って起こるタイプの3種類に分けている8).これらのほかに,頭蓋内病変に伴って発症するもの9,10)や,急性の調節性内斜視,decompensatedmono.xationsyndrome(代償不全型の単眼固視症候群),周期性内斜視,器質疾患に続発する急性内斜視を広義のAACEとして分類する報告もある11).さらに,近年では3D映画の視聴12)やスマートフォンなどの小型機器(デジタルデバイス)の使用による急性内斜視1~4)も報告されている.以下,AACEについて,分類別にその特徴を紹介し,診断,治療について述べる.*TomoyoYoshida&*SachikoNishina:国立成育医療研究センター眼科〔別刷請求先〕吉田朋世:〒157-8535東京都世田谷区大蔵2-10-1国立成育医療研究センター眼科0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(25)995表1急性内斜視の特徴-ab図1近視によって起こった急性内斜視(15歳,男児)a:術前眼位,内斜視C40プリズム,立体視(-),融像(+).b:術後眼位,正位,立体視C50秒.Cab図2頭蓋内病変によって起こった急性内斜視(2歳,女児)a:共同性内斜視,35プリズム,外転制限を認めない.Cb:頭部CCTにて小脳腫瘍(pilocyticastrocytoma)を検出した.-一方,Williamsらによって報告された脳腫瘍による急性内斜視では,脳腫瘍の治療後にC6例中C4例が斜視手術を必要としたが,術後C1例も融像を獲得できなかった10).筆者らの経験した症例を図2に示す.内斜視を主訴に来院したC2歳女児で,問診にて他の症状はなく,1歳頃から内斜視が進行したとのことであった.共同性内斜視で斜視角はC35プリズムと一定であり,交代固視良好で,外転制限や眼振を認めなかった.調節麻痺下精密屈折検査にて両眼+0.5Dと遠視は軽度であった.前眼部~眼底に異常はなく,他に全身の神経症状も認めなかったが,頭部CCTで小脳腫瘍が見つかり,脳神経外科で治療を行った.その後,内斜視に対し手術治療を行い,良好な眼位を維持しているが,両眼視・融像は検出されない.C5.3D映像・デジタルデバイスに関連したAACEその他の原因によって起こるCAACEのうち,最近,注目を集めているのはC3D映像やデジタルデバイス(スマートフォン,携帯ゲーム機,タブレットなど)の使用を契機に発症したと考えられるタイプである.1988年に筑田らは,3D映画の視聴後に急性内斜視を発症し,治療に手術を要したC4歳男児の症例を報告している12).立体映画を見るために左右眼分離の状態で両眼視をしようと努力した結果,調節と輻湊のバランスが崩れ,内直筋の過剰な緊張を引き起こし内斜視を発症したのではないかと推測される.このように,両眼視機能の確立していない低年齢児や,融像の崩れやすい素因をもつ例では,3D映像視聴によるCAACEの発症もありえると思われる.デジタルデバイスの過剰使用による急性内斜視の発症については前号でも詳しく取りあげたが,ここで代表症例について解説する.2016年にCLeeらが初めて報告したCAACEのC12症例1)は,年齢7~16歳で,少なくとも4カ月以上,1日にC4時間以上スマートフォンを使用した例であった.全例神経や筋肉の麻痺のない共同性斜視で,遠見・近見ともに同等の斜視角であり,さまざまな程度の近視がある点はCBurian分類CIII型と共通していたが,いずれも近視は適矯正で視力良好であり,これまでのCAACEのタイプとは異なると論じている.この報告では,スマートフォンと急性内斜視の関係を直接的には証明できていないが,スマートフォンの使用制限を指示したのみで明らかに斜視角が減少したことから,その関与が示唆された.筆者らの施設でもスマートフォン,ゲーム機,タブレットの過剰使用が契機と思われた小児の急性内斜視,内斜視・外斜視の増悪例を経験したため詳細を報告している2).低年齢の急性内斜視例では,使用制限後も斜視角が減少せず,手術治療を要した.その後,Mehtaらも,過剰なスマートフォン使用によって急性内斜視をきたしたC16歳男児のC1例を報告している3).この例はコンタクトレンズを紛失してC1カ月間,近視を非矯正のままC1日C8時間以上スマートフォンを使用した後にCAACEを発症し,近視の矯正とスマートフォンのC1日C1時間未満の使用制限にて複視が改善した.また,Kaurらはスマートフォンを過剰使用した後に調節けいれんを起こしたC3例について報告している4).これらの症例は,1週間~1カ月の間,1日C4時間以上スマートフォンを使用した結果,調節けいれんおよび複視をきたし,そのうちC2例には小角度であるが内斜視も認めた.3例中C2例はスマートフォンの使用制限およびシクロペントラート点眼により症状が改善し,1例はスマートフォンの使用制限のみで症状の改善を得た.これらの報告のCACCEは,いずれも前述したCBurianらの分類には当てはまらず,中枢神経系疾患や他の器質疾患とも関連しないものであった.このような症例の発症機序に関して,Leeらは,もともと融像幅が狭く,もしくは潜在的な内斜視があった症例がスマートフォンを近い距離で過剰に使用することで,融像を保てず内直筋のバランスを崩し,急性内斜視をきたすのではないかと論じている.携帯電話やスマートフォン使用時のほうが書籍読書時の距離よりも近いことが報告24)されており,また携帯ゲーム機を長時間使用した場合,有意差はなかったものの一部の症例で近見眼位の内斜化を認めたとの報告25)もあることから,長時間近距離でデジタルデバイスを使用することで,過剰な輻湊反応が誘発され眼位の内斜位化を起こし,融像が崩れて内斜視を発症したと考えられる.998あたらしい眼科Vol.36,No.8,2019(28)表2問診のポイントにあると思われる.デジタルデバイスに依存しやすい若年者が使用を続けることで,今後CAACEや調節けいれんを呈する症例が増加することが懸念される.今後の課題として,デジタルデバイスがどのようにACCEの発症に関与するか,過剰使用をしてもCAACEを発症しない人が大多数であることから,どのような要因が発症に影響するのか,調査を続けていく必要がある.とくに,不可逆的な影響を受けやすい幼少児に対しては,注意を喚起すべきと思われる.おわりに急性後天性共同性内斜視の原因は未だ不明のものが多いが,なかには致命的な中枢神経系疾患が含まれていることもあり,慎重に鑑別診断を行う必要がある.また,昨今急増しているデジタルデバイスと関連する内斜視についても念頭に置きたい.さまざまな背景について問診を十分に行い,手術治療を検討する前に,デジタルデバイスの使用制限を指示して症状や眼位の変化を診る必要がある.文献1)LeeCHS,CParkCSW,CHeoH:AcuteCacquiredCcomitantCeso-tropiarelatedtoexcessivesmartphoneuse.BMCOphthal-mologyC16:37,C20162)吉田朋世,仁科幸子,松岡真未ほか:Informationandcom-municationtechnology機器の使用が契機と思われた小児斜視症例.眼臨紀11:61-66,C20183)MehtaCA,CGreensherCJE,CDahlCGJCetal:AcuteConsetCeso-tropiaCfromCexcessiveCsmartphoneCuseCinCaCteenager.CJPediatrOphthalmolStrabismusC55:e42-e44,C20184)KaurCS,CSukhijaCJ,CKhannaCRCetal:DiplopiaCafterCexces-sivesmartphoneusage.Neuro-OphthalmologyC2018:1-4,C20185)西川典子,伊藤はる奈,石子智士ほか:PATにより術量を決定した近視を伴う急性内斜視のC5症例.眼臨紀C8:424-427,C20156)荒木俊介,三木淳司:急性内斜視.あたらしい眼科C33:C1707-1712,C20167)山寺克,木村亜紀子,増田明:後天共同性内斜視の特徴と治療成績.眼臨紀10:223-226,C20178)BurianCHM,CMillerJE:ComitantCconvergentCstrabismusCwithacuteonset.AmJOphthalmol45:55-64,C19589)AndersonWD,LubowM:AstrocytomaofthecorpuscalC-losumCpresentingCwithCacuteCcomitantCesotropia.CAmJOphthalmolC69:594-598,C197010)WilliamsCAS,CHoytCS:AcuteCcomitantCesotropiaCinCchil-drenCwithCbrainCtumors.CArchCOphthalmolC107:376-378,C198911)BuchH,VindingT:Acuteacquiredcomitantesotropiaofchildhood:aCclassi.cationCbasedConC48Cchildren.CActaCOhthalmologicaC93:568-574,C201512)筑田昌一,村井保一:立体映画を見て顕性になった内斜視の一例.日本視能訓練士協会誌16:69-71,C198813)SwanKC:Esotropiafollowingocclusion.Archivesofoph-thalmology(Chicago,Ill:1929)C.37:444-451,C194714)VonCNoordenGK:BinocularCvisionC&CocularCmotility.C199015)OhtsukiH,HasebeS,KobashiRetal:Criticalperiodforrestorationofnormalstereoacuityinacute-onsetcomitantesotropia.AmJOphthalmolC118:502-508,C199416)BurianHM:MotilityClinic:SuddenonsetofconcomitantconvergentCstrabismus.CAmCJCOphthalmolC28:407-410,C194517)FranceschettiA:LeCstrabismeCconcomitantaigu[AcuteCconcomitantstrabismus]C.COphthalmologicaC123:219-226,C195218)HoytCS,GoodWV:Acuteonsetconcomitantesotropia:CwhenCisCitCaCsignCofCseriousCneurologicalCdisease?CBrJOphthalmol79:498-501,C199519)ParksMM:Themono.xationsyndrome.TransAmOph-thalmolSocC67:609-657,C196020)SavinoCG,CAbedCE,CRebecchiCMTCetal:AcuteCacquiredCconcomitantCesotropiaCandCdecompensatedCmono.xationsyndrome:aCsensory-motorCstatusCassessment.CCanJOphthalmolC51:258-264,C201621)VonCGraefeA:UeberCdieCvonCMyopieCabhangigeCFormCconvergirendenCSchielensCundCderenCHeilung.CArchivCfurCOphthalmologieC10:156-175,C186422)BielschowskyA:DasCEinwartsscheinCderCMyopen.CBerCDeutscheOphthGesellC43:245-248,C192223)GilbertCAL,CKooCEB,CHeidaryG:EvaluationCandCmanage-mentCofCacuteCacquiredCcomitantCesotropiaCinCchildren.CSeminOphthalmolC32:8-13,C201724)野原尚美,松井康樹,説田雅典ほか:携帯電話・スマートフォン使用時および書籍読書時における視距離の比較検討.あたらしい眼科32:163-166,C201525)太田陸,原直人,古川珠紀ほか:ゲーム機器が近見反応に与える影響の検討.眼臨紀10:28-31,C201726)BurkeCJP,CFirthAY:TemporaryCprismCtreatmentCofCacuteCesotropiaCprecipitatedCbyCfusionCdisruption.CBrJOphthalmol79:787,C199527)DawsonEL,MarshmanWE,AdamsGG:Theroleofbot-ulinumCtoxinCACinCacute-onsetCesotropia.COphthalmologyC106:1727-1730,C199928)WanMJ,MantagosIS,ShahASetal:Comparisonofbot-ulinumCtoxinCwithCsurgeryCforCtheCtreatmentCofCacute-onsetCcomitantCesotropiaCinCchildren.CAmCJCOphthalmolC176:33-39,C20171000あたらしい眼科Vol.36,No.8,2019(30)

斜視と眼窩角

2019年8月31日 土曜日

斜視と眼窩角Strabismus-RelatedAbnormalBiorbitalAngle矢ヶ﨑悌司*はじめに斜視は共同性斜視と非共同性斜視に大別されるが,非共同性斜視は別名麻痺性斜視ともよばれ,そのほとんどが神経原性斜視,機械性斜視に分類される.非共同性斜視ではその原因は明確に診断されるため,治療方針を立てるのはむずかしくない.一方,共同性斜視は基本的には眼球運動に異常はなく,視方向に関係なく斜視の程度はほぼ一定であるため,診断を下すのに時間はかからない.その原因については,屈折異常,調節・輻湊の異常,外眼筋自体の異常,先天的な両眼視異常,解剖学的異常などが考えられているが,不明であることも少なくない.解剖学的異常としては,外眼筋の位置異常が指摘されることが多いが,外眼筋は眼窩内に存在しており,眼窩の形態異常と斜視との関連についてはあまり考察されていない.下鼻側の骨膜から発する下斜筋以外の外眼筋は,総腱輪を起始部として眼窩壁に沿って前方に走行している.そのため眼窩の解剖学的異常は外眼筋の走行にも大きくかかわり,斜視の原因となりうる.本稿では眼窩の構造,発生,異常構造について解説し,斜視との関連について解説する.Iヒトの眼窩の解剖ヒトの眼窩は,篩骨,蝶形骨,上顎骨,涙骨,前頭骨,口蓋骨,頬骨の七つの骨の壁からなっている.内側壁は篩骨,蝶形骨,上顎骨,涙骨が関与し,上壁は前頭骨と蝶形骨の一部,下壁は上顎骨,前頭骨,口蓋骨,外側壁は蝶形骨と頬骨によって構成されている(図1).眼窩後端部には視神経孔があり,視神経が頭蓋内に走行し,眼動脈も頭蓋内から通っている.眼窩壁には上眼窩裂および下眼窩裂という骨間隙があり,上眼窩裂では動眼神経,滑車神経,外転神経,眼神経(三叉神経第1枝),上眼静脈が通過している.下眼窩裂では上顎神経(三叉神経第2枝)の枝である眼窩下神経,頬神経,下眼静脈が通過している1).日本人の正常成人の眼窩の大きさは,幅約4cm,高さ約3.5.cm,深さ約5.cmで,容積は男子で約23.6.cm3,女子で約20.9cm3とされているが,乳幼児の眼窩の容積については不明である2,3).しかし,海外では生後数カ月の正常乳幼児の眼窩容積は,男児で約15.cm3,女子で約13.cm3であり,15歳男子の約26.cm3,女子の約24cm3と比較して1.7~1.8倍に発達すると報告されている4).この傾向はアラブ人種5),中国人種6)でも同様であることから,日本人でも同程度に発達すると思われる.IIヒトの眼窩の発生眼窩の原基は,中胚葉起源の胎児頭腹側外側に出現する第一鰓弓である.胎生期の眼窩の方向はほとんど外側に向いている.眼窩の方向の発生学的変化は不明であるが,視神経の方向から類推は可能である.両眼の視神経間の角度は胎芽期37~42日では180°とほぼ外側に向いている.胎芽期の終わり(8週)には84°と前方に向いて*TeijiYagasaki:眼科やがさき医院〔別刷請求先〕矢ヶ﨑悌司:〒494-0001愛知県一宮市開明郷中62-6眼科やがさき医院0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(19)989眼窩の構成①篩骨②蝶形骨③上顎骨④涙骨⑤前頭骨⑥ロ蓋骨⑦頬骨.視神経管.上眼窩裂.下眼窩裂図1右眼窩の構成図2正常眼窩のMRI水平断両眼の眼窩界壁深部のなす角度である両眼窩角はC90°が正常値である.図3正常児の両眼窩角の経年変化年齢ごとの平均値.上下の破線はC95%信頼区間を示す.(文献C10より改変)100%80%60%40%20%0%birth1M2M3M4M5M6M7M8M9M10M月齢図4新生児の眼位(文献C11より改変)図6Apert症候群の外斜視図5Apert症候群のMRI水平断両眼窩角は大きい値を示している.図7乳児外斜視図8乳児外斜視の両眼窩角両眼窩角は大きい値を示している.図9A型斜視と外眼筋の位置異常図10V型斜視と外眼筋の位置異常’C’C–

弱視とERG

2019年8月31日 土曜日

弱視とERGTheUseofERGsonChildrenwithAmblyopia長谷岡宗*佐藤美保**はじめに日常診療では,矯正視力不良や視力検査不能な小児がしばしば受診する.通常の眼科一般検査で器質的疾患がみられない場合,斜視や不同視,形態覚遮断などによる弱視の可能性を考えながら経過をみる.視力発達途中の低年齢児では,成長に伴う視力改善を待つ場合もあるが,知的障害や発達障害があり,正確な視力検査ができるのがいつになるかわからない場合もある.一方,仮に弱視となる要因があって,屈折矯正や弱視治療を十分に行っても期待するような視力の改善が得られない場合には,本当に弱視だけなのか,見逃している器質的疾患がないのか考える.とくに小児では詳細な眼底検査が困難であること,網膜変性疾患があっても特徴的な所見がまだ現れていないことなどのために,正確な診断に難渋する.そのような場合に,網膜機能を客観的に評価するためには網膜電図(electroretinogram:ERG)検査が有効である.しかし,小児におけるERGの検査にはしばしば鎮静を必要とすることから,外来での実施が困難であった.しかし,最近,LKC社からRETevalRComplete(以下,RETevalRC)という手持ち式皮膚電極で記録可能な装置が発売となり,本装置を用いて弱視疑いの小児の網膜電図を記録することが比較的容易になった(図1).また,RETevalRCは無散瞳でも記録が可能であること,持ち運べるため測定場所を選ぶことなく記録できることが特徴である.I記録の方法RETevalRCは,センサーストリップというシール型電極を顔に貼って検査を行うため,このシールさえ貼ることができればほとんどの症例で測定が可能である.このような皮膚電極ERGの測定で重要なのが固視をいかにして確認するかである.RETevalRCでは図2のように測定中にモニターを通して固視の観察が可能である.また,国際臨床視覚電気生理学会(InternationalSoci-etyforClinicalElectrophysiologyofVision:ISCEV)が提案する標準ERG波形がすべて記録できるようになっており,詳細な網膜機能の評価が可能である.装置は232gと小型で軽量なため片手で簡便に持つことができ,座位・仰臥位などいずれの姿勢でも測定可能である.II判定上の注意点記録に際しては無散瞳や暗順応なしでも可能となっているが,その結果の評価については,まだ確立していない.とくに小児においての正常反応は未確定であるため,できる限り散瞳をして,暗順応をしたうえでの測定が望ましい.外来で小児を記録する場合,時間を短縮するためには明順応でできる検査から始めてもよい.振幅の数値は,通常の角膜電極の1/5になる(潜時は変化なし)1)こと,小児の正常値が確定していないことから,振幅の数値で評価する場合は注意が必要である.なお,センサーストリップを貼る位置は,下眼瞼縁から*TakashiHaseoka:浜松医科大学医学部附属病院眼科**MihoSato:浜松医科大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕長谷岡宗:〒431-3192浜松市東区半田山1-20-1浜松医科大学医学部眼科学講座0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(13)983図1RETevalRa:本体,b:センサーストリップを貼る位置,c:センサーストリップ外側,d:センサーストリップ内側.図2RETevalRCで測定中の写真固視をしっかり観察することが可能である.Ca右眼左眼a波b波a波b波msμVmsμVmsμVmsμV114.8-47.245.671.2113.3-46.441.759.7214.2-47.841.565.0214.1-32.643.450.814.5-47.541.668.113.7-39.542.555.3604020016012402200μVμV-20-20-40-60-80b-40-60-80050100150050100150msmsms23.327.0μV20.554.2ms23.327.0μV20.554.2125.0(67%)16.7(■%)5040302015024030μV20μV100-10100-10020406080100020406080100msms図3症例1のフラッシュERG(a)とフリッカーERG(b)c12ms13.213.4a波μV-60.6-66.6右眼ms48.738.2b波μV78.483.01213.513.3a波μV-60.7-57.4左眼ms43.345.0b波μV72.278.313.3-63.643.580.713.4-59.144.275.340200-20140122020-20μVμVμV-40-40-60-80-60-80-100-100050100150050100150msmsd右眼左眼msμVmsμV23.427.020.454.023.427.020.454.011221150502240403030μV2020101000-10-10020406080100020406080100msms図4症例2の右眼OCT(a,b)とフラッシュERG(c),フリッカーERG(d)図5症例3の右眼眼底写真(a,b)とOCT(c,d)-=--=-ams右眼μVms左眼μV1119.313.61135.815.62121.918.2290.711.2120.615.9113.313.41160260240402020μVμV00-20-20-40-40050100150050100150msms検査#2:フラッシュ:3.0cd・s/m2,色度(0.33,0.33),0.1Hz背景光:0.0cd/m2右眼左眼ba波b波a波b波msμVmsμVmsμVmsμV118.7-39.938.627.3b118.4-40.039.326.5218.2-37.138.223.5218.0-43.039.231.518.5-38.438.425.418.2-41.539.329.011404022202000μVμV-20-20-40-40-60-60-80-80050100150050100150msms図6症例3の杆体応答:減弱(a),フラッシュERG:陰性型(negative)(b),錐体応答:減弱(c),フリッカー応答:減弱(d)図7症例4のフリッカーERGフリッカー応答は良好である.

調節麻痺薬使用に関する再考

2019年8月31日 土曜日

調節麻痺薬使用に関する再考ReconsiderationontheUseofCycloplegia若山曉美*はじめに調節麻痺薬使用による屈折検査は,弱視や斜視の診断や治療に不可欠である.とくに小児では視覚発達の時期であり,調節麻痺薬の使用は正確な屈折値を検出するために必須となる.おもに調節麻痺薬として副交感神経遮断薬であるアトロピン硫酸塩(以下,アトロピン)とシクロペントラート塩酸塩(以下,サイプレジン)が使用されている.両薬剤は副交感神経末端でアセチルコリンと競合阻害して神経伝達を遮断し調節麻痺作用を引き起こす.調節麻痺薬の施設基準について実施した日本弱視斜視学会の多施設共同研究によるアンケート調査1)では,アトロピン使用率はC86.2%(100/116施設),サイプレジン使用率はC96.6%(112/116施設)と両薬剤ともに使用率は高く,小児の眼科診療において調節麻痺薬の使用が不可欠であることを示している.一方,アトロピンを使用しない理由として「副作用が気になるため」との回答が多く,調節麻痺薬の使用の必要性を理解しているものの副作用の発生が懸念されていることがわかる.調節麻痺薬による副作用発生率や症状に関してさまざまな報告がある.副作用の症状としてアトロピンでは顔面紅潮や発熱など2~4),サイプレジンでは眠気や運動失調や視覚幻覚などが報告されている5~7).しかし,これらの報告は各施設で実施された後ろ向き研究であり,より詳細に調節麻痺薬使用による副作用発生率や症状について検討する必要がある.そこで筆者らは,日本弱視斜視学会の多施設共同研究としてC15歳以下の小児に対する調節麻痺薬による副作用の発生率や症状に関するC1年間の多施設共同前向き研究を実施した8).本稿では,おもな研究成果について述べる.CI調査内容調査は,日本弱視斜視学会の多施設共同前向き研究として,倫理委員会の承認を得てC9施設でC1年間(2016年4月C1日~2017年C3月C31日)の調査を実施した.対象はC15歳以下で屈折検査のために調節麻痺薬を使用した者とした.調査項目は,副作用発生率,年齢,副作用症状,副作用を起こした症例の全身疾患の有無とした.CII調節麻痺薬の点眼方法アトロピンの点眼方法は,9施設中C6施設がC1日C2回7日間,3施設がC1日C2回C5日間で実施していた.過去に実施した調節麻痺薬使用に関するアンケート調査でも1日2回7日間,1日2回5日間の実施が全体の65%と多かった1).サイプレジンの点眼方法は,9施設中C8施設でC2回点眼(点眼間隔C5~15分),1施設がC1回点眼であった.検査は点眼後C40~90分後に実施していた.過去のアンケート調査ではC5分間隔でC2回点眼し,60分後に検査を実施するが全体のC54.6%と多かった1).*AkemiWakayama:近畿大学病院眼科〔別刷請求先〕若山曉美:〒589-8511大阪狭山市大野東C377-2近畿大学病院眼科C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(9)C979表1アトロピン点眼濃度別の使用年齢と副作用発生濃度使用年齢(歳)副作用年齢(歳)副作用発生率(%)1%(n=391)C0.5%(n=329)C0.25%(Cn=80)C1.0%眼軟膏(n=11)C5.6±2.2C4.2±1.6C1.7±0.8C3.2±1.54.9±2.1(Cn=49)3.7±1.4(Cn=16)1.3±0.9(Cn=6)12.5(C49/391)4.9(C16/329)7.5(6/80)0(0/11)嘔吐微熱(%)(%)図1アトロピン点眼による副作用症状図2サイプレジン点眼による副作用症状(文献C8より改変)(文献C8より改変)発生率(%)(%)252520201515発生率10551.2%00月別(月)図3アトロピン点眼による月別の副作発生率図4サイプレジン点眼による月別の副作発生率(文献C8より改変)(文献C8より改変)456789101112123月別(月)456789101112123

乳幼児の屈折スクリーニング

2019年8月31日 土曜日

乳幼児の屈折スクリーニングRefractiveScreeningforPreschoolChildren林思音*はじめに眼科医が視機能を評価する際にもっとも頻用する検査値は,おそらく矯正視力である.Landolt環などの指標を用いて,屈折を矯正しつつ最高矯正視力を検出する.しかしながら,乳幼児ではこれがうまくできないため,眼科医は困惑してしまう.たとえ測定できても,年齢ごとに視力の基準値が変化し,かつ個人差があるため,その評価に苦しむ.では自覚的な検査がむずかしい乳幼児ではどのように視機能を評価するか.その代表的な検査法が他覚的屈折検査(以下,屈折検査)である.したがって,乳幼児の視覚スクリーニングを屈折検査を用いて行うことは理にかなっている.最近ではフォトスクリーナーなどが登場し,乳幼児でも屈折を容易にスクリーニングできるようになってきた.本稿では,乳幼児の屈折値の読み方を,とくにスクリーニングで用いる場合に焦点を当てて紹介する.I乳幼児の屈折の特徴乳幼児の屈折の特徴は,年齢ごとに正常値が変化することと,検査の際に調節が介入すること,そして同じ屈折異常であっても年齢ごとに視力に影響する程度が変化するということである.乳幼児の屈折値は,角膜,水晶体,および眼軸長の成長とともに大きく変化する.新生児期は軽い遠視を示し,生後3カ月頃に平均等価球面度数は+3.0~+4.0D前後となり,遠視のピークを迎える.そして,学童期頃に正視化していくといわれている.また,乳幼児では調節の介入が強い.指標を覗き込むような検査機器ではさらに調節の影響を受けやすく,得られた値は近視化する.そのため,正確な検査を行うためにはアトロピン硫酸塩点眼液やシクロペントレート点眼液などの調節麻痺薬を使用する.しかし,スクリーニングでは調節麻痺薬の使用がむずかしいため,常に調節の存在を念頭におく必要がある.強い屈折異常が存在する場合,屈折異常弱視(両眼の屈折異常が強い)もしくは不同視弱視(片眼の屈折異常が強い)が生じる.不同視が弱視の原因である頻度は,年齢によっても異なるが,弱視全体の2/3を占めるといわれており,屈折が弱視の重要ファクターであることがわかる.ここで弱視の有無を評価する際のポイントは,同じ屈折度数でも年齢により弱視の発症のしやすさが異なるということである.3歳までは,強い屈折異常があっても弱視になりにくいが,屈折異常に左右差があると弱視を発症しやすい.一方,3歳以上では,強い屈折異常そのものが弱視の原因となる.そこで以下に,3歳以上と3歳未満とに分けて,どのように屈折値を視覚スクリーンングに用いるかについて解説する.とくに,3歳6カ月で行われることが多い三歳児眼科健診では屈折スクリーニングが重要と考えられるため,詳しく解説する.*ShionHayashi:山形大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕林思音:〒990-9585山形市飯田西2-2-2山形大学医学部眼科学講座0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(3)973図1三歳児眼科健診の流れ(一般的に行われている方法)図2フォトスクリーナー(SpotVisionScreener)(http://welchallyn.jp/product/visionscreener/visionscreener.htmlより)図3携帯型屈折検査機器(レチノマックススクリーン)(http://www.jfcsp.co.jp/products/righton/1728より)-表1米国小児眼科学会が定める弱視リスクファクター基準表2現行のSVSの屈折異常判定の基準値年齢(月齢)リスクとなる屈折異常値乱視遠視近視不同視12~3031~48>48>2.0D>4.5D>-3.5D>2.5D>2.0D>4.0D>-3.0D>2.0D>1.5D>3.5D>-1.5D>1.5D屈折値以外のリスクファクター全年齢恒常性斜視8Δ以上中間透光体の混濁年齢(月齢)不同視乱視近視(等価球面値)遠視(等価球面値)6~1212~3636~72≦1.5≦1≦1≦2.25≦2≦1.75≦2≦2≦1.25≦3.5≦3≦2.5(D:ジオプター)(文献9より引用)(文献8より引用)表3日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会が推奨するSVSの屈折基準値年齢(月齢)不同視乱視近視(等価球面値)遠視(等価球面値)6~12未満12~36未満36~72≦5≦1.5≦1.5スケールオーバー≦3≦2スケールオーバー≦5≦2スケールオーバー≦3≦2.5(D:ジオプター)(文献9より引用)–

序説:弱視と斜視のカレントトピックス

2019年8月31日 土曜日

弱視と斜視のカレントトピックスCurrentTopicsofAmblyopiaandStrabismus仁科幸子*佐藤美保**弱視や斜視の病態や解析法は,多くの眼科医にとって難解な部分が多く,一般的な症例の診断や治療はできても,非定型的な場面に出くわすと途方に暮れることがある.また,最近の大きな変化として,先進の検査機器や検査方法が急速に小児眼科や斜視の分野でも用いられるようになっていることに着目したい.本特集では,診療に役立つ新しい情報を総括するために,過去2年間の弱視斜視の分野のトピックスの中から,専門外の医師や視能訓練士の方々にも知っておいていただきたい内容をピックアップしてみた.それらの背景や今後の発展を含めて,専門の先生方にわかりやすく解説していただくように企画した.弱視のトピックスとして,近年,3歳児健診における弱視の見逃しをなくすために屈折検査の必要性が強調されているが,ようやく導入する自治体が増えてきている.また,新たな手持ち自動判定機能付きフォトスクリーナー装置SpotTMVisionScreenerは小児科医にも急速に普及しているが,乳幼児の視覚スクリーニングにどのように利用していくか,また,眼科との連携をどうするかが大きな課題となっている.山形大学の林思音先生は,3歳児健診における本装置の有用性や精度について自治体と連携して研究を進めておられるので,乳幼児の屈折スクリーニングの現状と課題を示していただいた.第2のトピックスは,小児の弱視斜視診療に必須の精密屈折検査に用いる調節麻痺薬(アトロピン硫酸塩点眼,シクロペントラート点眼薬)の使用法と注意すべき副作用について日本弱視斜視学会が行った多施設研究である.その結果について,近畿大学の若山曉美先生に解説していただいた.第3のトピックスとして弱視と紛らわしい眼底疾患の鑑別を取りあげる.RETevalは皮膚電極で無散瞳,さらに暗順応なしでERGが記録できる装置である.さらにISCEVプロトコールに従ってさまざまな条件下での記録が可能である.そのため,小児にも簡便に外来で網膜電図(ERG)を記録・分析することが可能となった.その利用法について浜松医科大学の長谷岡宗先生と佐藤美保が解説した.いずれも明日からの診療に役立つ情報が満載であり,ぜひ目を通していただきたい.斜視のトピックスとしては,まず,斜視の原因に対する新たな知見である眼窩角と斜視の関連性について,眼科やがさき医院の矢ヶ﨑悌司先生に興味深いご研究の成果を解説していただいた.次に,近年,スマートフォンなどのデジタルデバイスの過剰使用との関連が指摘されている急性内斜視の話題である.デジタルデバイスの使用との因果*SachikoNishina:国立成育医療研究センター眼科**MihoSato:浜松医科大学医学部眼科学講座0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(1)971