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屈折矯正手術セミナー:放射状角膜切開術後の角膜力学的特性

2026年5月31日 日曜日

●連載◯312監修=稗田牧神谷和孝312.放射状角膜切開術後の角膜力学的特性岩本悠里高静花大阪大学医学部眼科学教室放射状角膜切開術(RK)後に角膜生体力学的強度の低下が生じることは知られている.動的CScheimplug像解析装置を用いた検討で,RK後眼の角膜生体力学的強度低下の機序が円錐角膜眼と異なることがわかった.●はじめに放射状角膜切開術(radialkeratotomy:RK)はC1980年代からC1990年代にかけて行われていた屈折矯正手術であり,前方角膜に放射状切開を加えることで角膜中央部を平坦にし,近視を矯正する.RKには術中の角膜穿孔,屈折の日内変動,遠視化や不正乱視の進行,切開が深い場合にみられる角膜内皮機能障害,角膜生体力学的強度低下など,さまざまな合併症があることが知られている1).これらを軽減する目的で,切開範囲を縮小したCminimallyCinvasiveRK(mini-RK)が導入されたが,今日ではより安全性の高い屈折矯正手術が普及し,RKが施行される機会はほとんどなくなった.一方で,RK施行からC20~30年を経て白内障手術の適応年齢に達する患者が増加していることから,RK後の角膜特性を改めて理解する必要性が高まっている.C●RK後の角膜生体力学的強度RK後に角膜生体力学的強度が低下することはこれまでにも知られていたものの,その具体的なメカニズムを定量的に評価した報告は限られていた2).一方,円錐角膜(keratoconus:KC)における角膜生体力学的特性については,角膜屈折矯正手術や角膜クロスリンキングの普及に伴い,多数報告されている.角膜の力学的特性を客観的に定量評価することの重要性が高まり,その評価手段として一定の空気圧を角膜に加え,その変形を動的に記録する超高速CScheimplugカメラ搭載の非接触式眼圧計(角膜厚計)CorvisST(Oculus社)がしばしば用いられている.圧縮空気が角膜に当たると[第一圧平時(Applanationtime1:A1)]角膜が変形し平坦になり,その後,最大陥凹時(HighestCConcavitytime:HC)を経て,再度角膜が平坦化し(A2),元の形状に戻る.そ(73)C0910-1810/26/\100/頁/JCOPYれぞれのタイミングにおける眼球や角膜の移動量を数値で表すことで,角膜生体力学特性の定量評価が可能である(表1).本稿では,このCCorvisSTを用いて評価したCRK後の角膜生体力学的特性について,KC眼や正常眼と比較しながら得られた知見を紹介する3).C●観察されたRK後眼の角膜の特徴CorvisSTによる解析では,RK後眼(RK群)は正常眼(N群)やCKC眼(KC群)とは異なる変形パターンを示した.その主な所見は以下のとおりである(図1).・偏位量が大きく,周辺部まで変形が及ぶ(RK群はCN群より偏位が大きい)・剛性の指標であるCSP-A1が低値(RK群,KC群ともN群より小さく,剛性低下を示唆)・中心部変形指標(DAR・IR)がCKC群と逆の傾向(KC眼のように中央部が大きく変形するわけではない)・水平方向の変形範囲はCRK群が最大(KC群とCN群の差は小さいが,RK群は明らかに広い)これらの所見は,RK後眼における角膜の生体力学的強度低下の機序がCKC眼とは本質的に異なることを示している.KC眼では角膜中央部の菲薄化が局所的な弱さとして表れるのに対し,RK後眼では切開の加わった角膜周辺部がより脆弱になり,空気圧に対して前方に偏移しやすい.そのため,中央部より周辺部の変形が目立つという特徴的なパターンを示すと考えられる.近年,近視が強いほど角膜変形量が大きくなることが報告されているが,今回の検討ではCRK後眼の術前情報がないため,この点は評価がむずかしい.加齢に伴い角膜は平坦化し変形しにくくなるとの報告4)もあり,術後変化・疾患特異的要因・加齢の寄与については,さらなる検討が求められる.あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026545表1CorvisSTの代表的な項目SP-A1(剛性パラメータ)加えられた力÷角膜頂点の偏移量.値が大きい=角膜剛性が強いDeformationAmplitude(DA)(変形振幅)角膜頂点の垂直方向の移動量DARatio(DAR)C2Cmm(変形振幅比)角膜頂点と頂点からC2Cmm地点におけるCDAの比角膜が柔らかい場合は中心部のみで変形.値が大きくなるCIntegratedRadius(IR)角膜陥凹カーブの曲率半径(Radius)の逆数(1/r)の積分柔らかい角膜では曲率半径が小さい.値が大きくなるN眼KC眼RK後眼第一圧平時(A1)最大陥凹時(HC)第二圧平時(A2)図1各群における角膜変形空気圧による角膜の偏位は,正常眼(N眼)よりもCRK後眼で大きく,より周辺部で発生した.角膜中央の垂直方向の変形はCKC眼でより大きく,急な下向きの凸形状を示した.一方,水平方向の変形はCRK後眼でより大きくなっていた.●mini-RKとの比較術式の違いによる影響を見るため,RK群を従来法とmini-RKに分類し比較したところ,mini-RK群は正常眼との差が小さく,各指標のばらつきも少なかった.切開範囲を縮小した術式の特性が,生体力学的影響の軽減として現れている可能性がある.近年,Marquesらは角膜・眼球の生体力学的強度が低い眼ほど近視方向への予測誤差を生じやすいと報告している5).今回得られたCRK後眼の特異的な力学低下が同様の誤差を引き起こすかは未解明であるが,RK後眼に特有の角膜生体力学を理解することは,IOL度数計算における予測誤差の方向性や大きさを評価し,より適切な計算式や補正の選択につながり,今後の白内障手術における精度向上のために重要である.C●おわりに動的CScheimplug像解析装置による定量評価により,RK術後眼の角膜生体力学的強度低下は,KC眼にみあられる中央部菲薄化によるものではなく,切開を受けた周辺部の脆弱化に起因する特有のメカニズムであることC546あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026が明らかとなった.RKは現在ほとんど行われていないものの,術後長期経過した患者が白内障手術などの治療対象となるケースは今後さらに増加すると予想される.RK後眼の角膜力学的特性の理解は,今後の臨床においても重要性を増すと考えられる.文献1)WaringCGOCIII,CLynnCMJ,CMcDonnellPJ:ResultsCofCtheCprospectiveevaluationofradialkeratotomy(PERK)study10yearsaftersurgery.ArchOphthalmolC112:1298-1308,C19942)HardinCJS,CLeeCCI,CLaneCLFCetal:CornealChysteresisCinCpost-radialCkeratotomyCprimaryCopen-angleCglaucoma.CGraefesArchClinExpOphthalmolC256:1971-1976,C20183)IwamotoCY,CKohCS,CInoueCRCetal:CornealCbiomechanicalCalterationsineyesafterradialkeratotomycomparedwithkeratoconus.CJCRefractCSurgC41:e822-e830,C2025.CErra-tum:41:e1160,C20254)GuoCY,CGuoCLL,CYangCWCetal:Age-relatedCanalysisCofCcornealbiomechanicalparametersinhealthyChineseindi-viduals.SciRepC14:21713,C20245)MarquesCJH,CBaptistaCPM,CRibeiroCBCetal:IntraocularClenspowercalculation:angleκandocularbiomechanics.JCataractRefractSurgC50:345-351,C2024(74)

眼内レンズセミナー:術翌日に判明した眼内レンズ支持部の完全破断

2026年5月31日 日曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋468.術翌日に判明した眼内レンズ支持部の加藤徹朗新横浜かとう眼科完全破断眼内レンズ固定が不良となるほどの重篤な損傷は,多くが術中に認知され,即座に処置される.しかし今回,術終了時にはレンズは良好に中心固定されていたにもかかわらず,術翌日に支持部の完全破断とそれに伴う大きな偏位を認めた症例を経験した.術中動画を確認したところ,術中すでに支持部根部に亀裂が生じており,これが術後に進行して完全断裂に至ったものと推測された.●はじめに眼内レンズ(intraocularlens:IOL)挿入時の破損は,白内障手術におけるまれだが重要な合併症である1).破損が起こると再挿入や追加処置が必要となり,手術時間延長や術後合併症のリスクが上昇する.現在主流のアクリル系CIOLは温度により柔軟性が変化し,とくに低温では硬化して挿入時応力が増加することで破損しやすくなる2).一方,体温近くまで加温すると柔軟性は向上し挿入しやすくなる.今回,加温されたCIOLで支持部に生じた亀裂が翌日に完全破断し,IOL摘出交換を要した症例を経験した.C●症例提示通常の白内障手術においてC2.4mm角膜切開でCClareonVivity(アルコン社)をCAutonoMeインジェクターで挿入した.手術終了時のレンズ位置は良好だったが(図1)翌日にはCIOLが下方に偏位していた(図2).再手術で,支持部と光学部の境界が完全に破断していることが確認され(図3),摘出後に再挿入を行い,術後経過は問題なかった.初回手術動画を見直すと,支持部根元に亀裂が確認され(図1)これが術後C1日で破断に進行したと考えられた.メーカーによると製品異常は確認できず,同ロットでの類似報告もないとのことであった.C●考按IOL破損には素材特性,温度条件,インジェクター操作など複数の因子が関与する.現在主流の疎水性アクリルCIOLは折りたたんで挿入するフォルダブルレンズであり,温度による柔軟性変化が大きい.これを示す指標であるガラス転移温度(Tg)は製品により異なるがC9~15℃程度で,これを下回るとレンズが硬くなり破損リスクが高まる.室温保管の(71)IOLでも,冷蔵保存された粘弾性物質を用いると温度低下により破損が生じうることが報告されている2).一方,加温による破損報告は少なく,多くの施設で加温して使用していると思われる.本症例でもCIOLを加温していた.使用したCAutonoMeは圧縮ガスを用いるプリロード型挿入システムであり4),温度上昇に伴いガス圧が上昇するとプランジャー速度も上昇する.簡易実験ではC24℃に比べC40℃で約C2倍,60℃で約C3倍の速度になった.加温によりプランジャー速度が増し,支持部根元に想定以上の負荷がかかり,亀裂が生じた可能性がある.添付文書ではC18~23℃の手術室で使用するよう記載されている.本症例は,加温によりCIOLの挙動が変化し破損につながった可能性を示唆するものである.疎水性アクリルCIOLは温度管理がとくに重要であり,添付文書に沿った温度での保管・操作が重要である.文献1)眞鍋洋一:プレート型眼内レンズの破損.あたらしい眼科41:1333-1334,C20242)LeeJY,KimJY:Opticfractureofthepreloadedintraocu-larlensduringinsertion.KoreanJOphthalmolC30:79-80,C20163)JungCGB,CJinCK-H,CParkH-K:PhysicochemicalCandCsur-facepropertiesofacrylicintraocularlensesandtheirclini-calsigni.cance.JPharmInvestigC47:453-460,C20174)OshikaT,SasakiN:One-yearmulticenterevaluationofanewChydrophobicCacrylicCintraocularClensCwithChydroxy-ethylCmethacrylateCinCautomatedCpreloadedCdeliveryCsys-tem.JCataractRefractSurgC48:275-279,C20225)YanW,BorkensteinAF,KhoramniaRetal:Videoanaly-sisCofCoptic-haptic-interactionCduringChydrophobicCacrylicCintraocularClensCimplantationCusingCpreloadedCinjectors.CBMCOphthalmolC23:515,C2023あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026C5430910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1初回手術時のIOL挿入直後の写真よく見ると後方支持部の根元に微細な亀裂がみられる.手術中は認識できず,IOL裏面の粘弾性吸引操作やIOLの回転操作も問題なく,中央固定も良好であり,手術を終了した.図2手術翌日の細隙灯顕微鏡写真IOLは大きく下方に偏位していた.図3再手術時の術中写真IOL支持部と光学部の移行部分で破断していた.破損したCIOLは前房内で切断して摘出した.支持部は下方隅角付近にあり,そのまま摘出した.

コンタクトレンズセミナー:トーリックソフトコンタクトレンズ(1)

2026年5月31日 日曜日

■■コンタクトレンズセミナーあたらしいコンタクトレンズ診療監修前田直之3.トーリックソフトコンタクトレンズ(1)山岸景子はじめに近年,メーカー各社からトーリックソフトコンタクトレンズ(SCL)があいついで発売され,今までは規格の不足や異物感で断念していたトーリックCSCLの処方に選択肢が広がっている.トーリックSCLのデザイントーリックCSCLにおいては,軸の方向によって度数が異なるため,適切な屈折矯正効果を得るためには,レンズの回転を抑えて位置を安定させる必要がある.そのためのレンズデザインとして,プリズムバラストデザインとダブルスラブオフデザイン,両者のデザインを組み合わせたハイブリッドデザインのC3種類がある.プリズムバラストデザイン:レンズの下方の厚みが「バラスト(重り)」となり,左右のバランスをとる役割をこなすと同時に,閉瞼時上転した角膜に載っているレンズが開瞼と同時に分厚い部分から外に押し出されるという性質(スイカの種理論といわれる)を利用してレンズの回転を抑える.ダブルスラブオフデザイン:レンズの上下の厚みを薄く,3時C9時方向の厚みを厚くして,上眼瞼と下眼瞼がレンズの薄い部分をくわえこむことによって回転を抑える.下眼瞼にレンズの分厚い箇所が来ないので異物感が少ないのが特徴である.ハイブリッドデザイン:プリズムバラストデザインの厚みをC4時C8時方向に配置し,下眼瞼に触れるC6時方向の厚みはわざと薄くして異物感を抑えてあるものや,ダブルスラブオフデザインをもとにC4時C8時方向をやや分厚くしてバラスト機能を設けたものなどである.最近はいろいろなデザインのトーリックCSCLが発売されているが,患者の眼瞼の形や瞼圧によって軸の安定性や装用感に変化が出るため,筆者は院内に常に数種類のトーリックCSCLを用意し,異物感やぶれ感が出るようであれば他の商品をトライアルするようにしている.トーリックSCLの選択素材の選択:プリズムバラストは下方が,ダブルスラブオフはC3時C9時方向がどうしても分厚くなる.Dk/t値は-3.00Dのレンズの中心部分で計算されているが,トーリックレンズの周辺部では厚みが中心部の倍以上の(69)C0910-1810/26/\100/頁/JCOPYかしはら山岸眼科クリニック厚みとなることもあり,当然ながらCDk/t値は低くなる.それゆえ基本的にはCDk/t値が高いシリコーンハイドロゲルレンズを第一選択としている.ただし,異物感が強い場合や視力が出にくい場合には,眼に合う形状を優先してCHEMAレンズを処方することもある.デザインの選択:プリズムバラストデザインとダブルスラブオフデザインは,それぞれ乱視の種類(直乱視か倒乱視か)や眼瞼の形状によって向き不向きがある.実際のところは患者ごとに装用テストをして判断することになるため,できればC1日使い捨て,2週間頻回交換タイプのそれぞれについてプリズムバラストデザインとダブルスラブオフデザインを準備しておくことが望ましい.ただし斜乱視についてはどちらのデザインでも軸が不安定になりやすいので,軸補正をすることをふまえて軸度がたくさん揃っているトーリックCSCLを選択するのも一法である(表1,2).トーリックSCLのフィッティングガイドマーク:トーリックCSCLにはレンズの回転の有無や回転安定性を確認するためにガイドマークが付いているが,製品によってガイドマークの位置が異なるので,確かめてから使用する.軸が何度であってもガイドマークの位置は変わらず,6時方向にガイドマークがあるものが多い.安定位置の確認:トーリックCSCLのフィッティングは装用後数分程度してから確認する.瞬目時にガイドマークの回転変動がC5°以内であれば理想的,10°以内は可としているが,瞬目でC15°以上回転変動すると瞬目によるぶれを感じて不快感が大きくなるので不可とし,他の製品に変更する.軸補正の理論:次に軸の安定位置を確認する.軸ずれがC15°を超えると視力が出にくくなり,30°を超えると円柱度数の補正効果はまったくなくなってしまう.この場合には正加反減の法則を用いて軸を補正する必要がある.もしもC6時方向にくるはずのガイドマークがC8時方向(時計回り)にずれている場合には,屈折検査の円柱軸に回転分の角度を追加したトライアルレンズに変更し,逆にガイドマークがC4時方向(反時計回り)にずれた場合には,回転分の角度を屈折検査の円柱軸から減じた軸度数に変更する(正加反減の法則).ただし,斜乱あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026C541表11日使い捨てトーリックレンズ製品概要素材商品名メーカーデザイン球面度数最大円柱度数軸度シードC1dayPureうるおいプラス乱視用CSEEDプリズムバラスト+2.0~-10.0-1.75*C1C*1*C220°.90°.160°.180°ワンデーアキュビュモイスト乱視用CJ&Jダブルスラブオフ+4.0~-9.0-2.25*C1C*1*C210°.20°.60°.80°.90°.100°.120°.160°.170°.180°ハイドロゲルデイリーズアクアコンフォートプラストーリックCAlconダブルスラブオフ+4.0~-8.0-1.75C*C320°.90°.160°.180°メダリストワンデープラス乱視用CB&LプリズムバラストC±0.0~-9.0-1.75C90°.180°バイオトゥルーワンデートーリックCB&LプリズムバラストC±0.0~-9.0-2.75C*1*C220°.90°.160°.180°ワンデーバイオメディックストーリックCCooperVisionプリズムバラストC±0.0~-10.0-1.75*C1C*C220°.90°.160°.180°1DAYメニコントーリックCMeniconプリズムバラストC±0.0~-10.0-1.75C90°.180°1DAYMagicトーリックCMeniconダブルスラブオフC±0.0~-10.0-1.75C15°.90°.165°.180°シリコーンハイドロゲルマイデイトーリックCCooperVisionプリズムバラスト+6.0~-10.0-2.25*C1C*1*C210°.20°.70°.80°.90°.110°.160°.170°.180°1DAYメニコンプレミオトーリックCMeniconハイブリッドC±0.0~-10.0-1.75C90°.180°プレシジョンワン乱視用CAlconハイブリッド+4.0~-8.0-2.25*C1C*1*C220°.90°.160°.180°ワンデーアキュビュオアシス乱視用CJ&Jダブルスラブオフ+4.0~-9.0-2.25*C1C*1*C220°.90°.160°.180°アクアロックスワンデーCUVシン乱視用CB&LプリズムバラストC±0.0~-8.0-2.75*C1C20°.90°.160°.180°デイリーズトータルワン乱視用CAlconハイブリッド+4.0~-8.0-2.25*C1C90°.180°*C1球面度数による*C2円柱度数による*C3+度数で唯一斜乱視がある商品表22週間頻回交換トーリックレンズ製品概要素材商品名メーカーデザイン球面度数最大円柱度数軸度ハイドロゲル2weekPureうるおいプラス乱視用CSEEDプリズムバラストC±0.0~-8.0-1.75C*C190°.180°2weekFineUVplusTORICCSEEDダブルスラブオフC±0.0~-9.0-1.75C*1*C290°.180°メダリストC66トーリックCB&Lプリズムバラスト-0.25~-9.0-2.75C10°.20°.80°.90°.100°.160°.170°.180°シリコーンハイドロゲルアキュビュオアシス乱視用CJ&JダブルスラブオフC±0.0~-9.0-2.25C*1*C210°.20°.60°.90°.120°.160°.170°.180°エアオプティクスプラスハイドラグライド乱視用CAlconハイブリッド+6.0~-10.0-2.25C*C120°.90°.160°.180°バイオフィニティトーリックCCooperVisionプリズムバラスト+5.0~-10.0-2.25*C1C*1*C210°.20°.90°.160°.170°.180°アクアロックス乱視用CB&LプリズムバラストC±0.0~-8.0-2.7520°.90°.160°.180°トータルC14乱視用CAlconハイブリッドC±0.0~-8.0-2.25C*C220°.90°.160°.180°フレッシュビューCS乱視用CRohtoプリズムバラストC±0.0~-10.0-2.25*C1C20°.90°.160°.180°2WEEKメニコンプレミオトーリックCMeniconハイブリッドC±0.0~-10.0-1.75C*C290°.180°*C1球面度数による*C2円柱度数による視に関しては軸度の規格が存在しない場合もあり,規格がある範囲でもっとも近い軸度を選択する.その他:トーリックCSCLを勧めるときには,球面レンズより価格が上がるため,高いレンズを売りつけられたと感じないようにトーリックCSCLを使うメリットを十分に理解してもらう必要がある.明室で検査していては,残余乱視があっても瞳孔径が小さいせいで違いを感じられない.暗めの部屋で近方視力を測定する,テストレンズを渡して実生活で違いを体験してもらうなど,患者が納得してトーリックCSCLを選ぶための工夫が必要である.文献1)MorganPB,WoodsCA,TranoudisIGetal:InternationalContactCLensCPrescribingC2023.CContactCLensCSpectrumC39:20-22,C24,C26-28,C20242)ChaoCC,CSkidmoreCK,CTomiyamaCESCetal:SoftCtoricCcon-tactlenswearimprovedigitalperformanceandvision―ArandomizedCclinicalCtrial.COphthalmicCPhysiolCOptC43:C25-34,C20223)ChaudhryM,SahSP,SharmaIPetal:DoesofferingonlytheCsphericalCcontactClensCtrialCtoCtheClowCastigmatsCmis-leadCtheCpractitioners?CIntCJCOphthalmolC14:1281-1284,C2021C

写真セミナー:DSAEK後の移植片機能不全に対するネルテペンドセル治療

2026年5月31日 日曜日

写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史504.DSAEK後の移植片機能不全に対する荻野麟太郎国際医療福祉大学市川総合病院眼科ネルテペンドセル治療図2図1のシェーマ①DSAEKグラフト②虹彩縫合図1ネルテペンドセル治療前角膜上皮,実質ともに浮腫を認め,DSAEK後移植片機能不全の状態である.虹彩は11時方向で2カ所縫合され,瞳孔形成されている.図3ネルテペンドセル治療1カ月後角膜浮腫は改善している.(67)あたらしい眼科Vol.43,No.5,20265390910-1810/26/\100/頁/JCOPYDescemet膜.離角膜内皮移植(Descemetstrippingautomatedendothelialkeratoplasty:DSAEK)は,角膜内皮障害に対する標準治療として広く普及している.しかし術後,角膜内皮細胞の早期消耗,移植片不全,拒絶反応後の細胞減少などにより二次的水疱性角膜症(bullouskeratopathy:BK)をきたすことがあり,その治療選択は従来は再移植が主であった.そこへ2023年,ドナー角膜組織由来の培養ヒト角膜内皮細胞を前房内に注射することでBKの治療を行うネルテペンドセル(ビズノバ)が登場した.ネルテペンドセルは,角膜内皮細胞を補充するために開発された細胞注射製剤であり,従来の角膜移植に代わる低侵襲治療として注目されている.培養したヒト角膜内皮細胞を前房内に注入し,細胞が角膜内皮面に定着・単層形成することで,障害された角膜内皮のポンプ機能を再建する.手術は前房内への細胞注射と短時間の仰臥位保持を中心とするため,DSAEKやDescemetmem-braneendothelialkeratoplasty(DMEK)に比べ侵襲が小さく,角膜組織の提供を必要としない利点がある.治療後は角膜厚の減少,浮腫の改善,視力向上が期待され,とくに角膜内皮細胞減少が主因の水疱性角膜症では有望な選択肢となる.ネルテペンドセルは再生医療を用いた新しい治療法として,角膜内皮疾患の治療体系を大きく変える可能性をもつ.症例は60代の女性.30年以上前に左眼の虹彩炎から続発緑内障を発症し,左眼にレーザー虹彩切開術,周辺虹彩切除術,水晶体再建術を施行された.その後,BKを発症し,左眼矯正視力(best-correctedvisualacu-ity:BCVA)0.02となり,東京歯科大学市川総合病院(以下,当院)に紹介となった.当院にて9年前に周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)解除+虹彩整復後にDSAEK施行し,術後BCVAは0.6まで回復した.しかし8年後に移植片機能不全を起こし,BCVAは再び0.02まで低下した(図1,2).再移植も検討したが,ネルテペンドセルによる治療を施行することとなった.Tenon.下麻酔後,角膜輪部に1.2mmの切開を作製し,木下型Descemet膜ポリッシャーを用いてDes-cemet膜を温存しながら約8mm径の範囲で角膜内皮および異常基質(guttaeなど)を研磨除去した.その後,ROCK阻害薬を含む灌流液で前房を灌流し,創を10-0ナイロン糸で縫合した.続いて前房を虚脱させたのち,培養角膜内皮細胞(300μl)を26ゲージ鋭針を用いて前房内へ注入した.注入直後から3時間の腹臥位とした.手術中にDSAEK後のDescemet膜の.離は認めず,黄斑浮腫の合併もなかった.術後1カ月からBCVA0.5と著明な視力回復を認めた(図3).角膜内皮細胞も術前のエラーから術後3カ月で2,500/mm2と著明な回復を認めた.ネルテペンドセルはDSAEK後の移植片機能不全に対して有効であった.文献1)KobayashiA,MoriN,YokogawaHetal:Earlyclinicaloutcomesofculturedhumancornealendothelialcellinjec-tion(Vyznova)forbullouskeratopathy:Initialclinicalexperience.Cornea2025Sep3,aheadofprint.

反復低出力赤色光療法

2026年5月31日 日曜日

反復低出力赤色光療法RepeatedLow-LevelRed-Light(RLRL)Therapy五十嵐多恵*はじめに反復低出力赤色光(repeatedClow-levelred-light:RLRL)療法(以下,レッドライト治療)は,従来の「best治療」〔低濃度アトロピン,近視管理用眼鏡,MiSightなどの多焦点ソフトコンタクトレンズやオルソケラトロジー(orthokeratology,以下,オルソK)〕を超える可能性を秘めた「beyondthebest」の治療として位置づけられる.とくに,強度近視における眼軸短縮効果は革新的である.しかし,長期的安全性に関する議論が続いており,今後は視細胞レベルでの検証や大規模多施設試験が求められている.本療法はC650CnmC±10Cnm前後の単一波長赤色光を眼底に照射するもので,基本的にC1回C3分,1日C2回,週5日間のプロトコールで行われる.レッドライト治療装置は,中国国内ではC20種類を超える機器が流通してきたが,EyerisingInternational社のEyerising(アイライジング)近視治療用機器(図1)のみが,中国以外の各国で医療機器として認可され,ISO13485認証を取得している.CI臨床試験の成果Jiangらによる軽度.中等度近視児を対象としたC1年間のランダム化比較試験(randomizedCcontrolledtrial:RCT)では,8.13歳の近視(C.1.00.C.5.00D)の中国人小児C264人を,レッドライト治療群(1,600ルクス/650nm/2.0mW/C1日C2回C3分/週C5日)と,単焦点眼鏡(single-visionCspectacles:SVS)群に割当て比較した1).この結果,眼軸長の延長がC69.4%抑制され,等価球面屈折度の進行はC76.6%抑制された.75%以上のコンプライアンス良好群(平日C5日のうちC4日間実施した群)のみを抽出した場合,近視進行抑制効果は眼軸長でC76.8%,近視度数でC87.7%であった.さらに追跡研究では,2年間でC75%の近視度数および眼軸長の抑制効果が確認され,中等度のリバウンドがあるものの臨床的有効性が支持された(図2)2).CII3年間の長期成績レッドライト治療のC3年間の長期効果に関するデータもリアルワールドスタディから報告されている.Chenらによる中国C3施設のリアルワールド多施設コホート研究では,7.18歳の近視児C362例を対象に最大C3年以上のレッドライト治療の有効性と安全性が検討された.その結果,3年以上の治療において年間眼軸長伸長が0.10Cmm以下である「良好な近視抑制」を達成した割合はC72.5%であり,平均眼軸長伸長はC0.06Cmm/年であった.治療効果はC1.2年の成績と比較するとやや低下する傾向がみられたものの,3年間にわたり臨床的に有意な抑制効果が維持された.安全性に関しては,視力低下や網膜電図(electroretinogram:ERG)異常などの視機能障害は認められず,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)でごく少数の症例に楕円体帯の微小な不連続が認められたものの,視機能への影響はなく*TaeIgarashi:東京都立広尾病院眼科〔別刷請求先〕五十嵐多恵:〒150-0013東京都渋谷区恵比寿C2-34-10東京都立広尾病院眼科(1)(61)C5330910-1810/26/\100/頁/JCOPY(mm)0.80.6眼軸長の変化メーカーHPhttps://www.eyerisinginternational.com/0.40.20.001361224(カ月)時間使用説明動画https://vimeo.com/803740195図2レッドライト治療の眼軸伸展抑制効果とリバウンド図1Eyerising(アイライジング)近視治療用機器と使用説明動画の二次元バーコード動画サイトに説明動画が公開されている.(画像提供:EyerisingInternational)RLRL2年継続群()の眼軸伸展抑制効果は,SVS2年継続群()と比較して,約C75%であった.1年目でCRLRLを中断した群()では,中断後に赤線の継続群よりも速い眼軸伸展が観察された3).リバウンドの程度はCSVS2年継続群()のC2年目の進行速度より速いものの,1年目の進行速度と同程度であることから,中程度と判断された.なお,2年目にCSVSからRLRLに切り替えた群()では,最終的にC2番目に高いC22.6%の眼軸伸展抑制効果を得ることができた.(文献C2より引用)眼軸長の変化(mm)0.300.250.200.150.100.050.00-0.05-0.10baseline126期間(カ月)図3異なるレッドライト出力における眼軸長伸展抑制効果Low-LevelCRed-LightTherapy(LRL)群では,EyerisingCInter-national社製より低い,いずれの出力条件においても対照群(単焦点眼鏡装用)と比較して有意な眼軸長伸展抑制が認められている.(文献C10より引用)期安全性の確保が重要であり,副作用を最小限に抑える観点から,より低出力条件の有効性を検討する必要性も示唆されている.CX光安全性に関する議論市場にはCGroup1(低出力)とCGroup2(高出力)の機器が流通しており,EyerisingInternational社製デバイスは後者に分類される.Group2では光強度が強く,抑制効果が高いとされる一方,安全域を超えるとの指摘がある.米国の研究者らは「Group2機器は安全域を逸脱する可能性がある」と報告し,Group1機器を販売するメーカーを推奨した11).とくにCGroup2機器は瞳孔径が大きい場合,数秒で最大許容露光量に達するとのシミュレーションが発表されている.これに対してCGroup2機器のCEyerisingメーカー側は反論を発表し,臨床試験での高い有効性と安全性を強調している12).議論は続いており,動物実験や補償光学走査型レーザ検眼鏡(adaptiveCopticsCscanningClaserCophthalmo-scope:AO-SLO)などを用いて視細胞レベルで安全性を検証する必要が指摘されるようになった.注目されるなかでCAO-SLOを用いた調査結果の第一報がCLiaoらによってC2025年CJAMACophthalmology誌に掲載された13).「錐体密度減少」の懸念が提起されたが,この報告は,後方視的研究で両群の錐体密度のベースラインデータが提示されていないこと,統計学的問題(両眼を独立対象とした解析,有意水準未調整の多重比較など),画像解釈の不備などが散見されるため,結論には慎重さが必要である.また,レッドライトで網膜に.胞様の変化が生じると指摘されているが網膜の層レベルの解釈に対する誤りも指摘されている14).北京同仁病院の多数例を対象としたよりエビデンスレベルの高いC2年間のRCTでは,治療群と対照群の錐体密度に差はなく,安全性を裏づける結果が公表されるとの予定もある15).いずれにしても安全性に関しては,今後の研究の蓄積による科学的根拠に基づいた判断が必要である.CXIレーザー安全性規格の専門家の見解と国際規制規制面では,中国がC2023年にレッドライト治療機器をCClassIII(高リスク)に再分類し,2024年以降新規販売を制限した.20社以上が臨床試験や医師監督なしに販売していたことが背景にある16).ただし,既存ユーザーの継続使用は認められ,EyerisingInternational社製デバイスはC11万人以上が使用を継続している.一方でオーストリアのCSchulmeister博士はCEyerisingInternational社製デバイスの安全性を再評価し,「網膜損傷リスクはごくわずかであり,瞳孔収縮を考慮すれば安全マージンはさらに広がる」と結論づけた.実験ではEyerisingのC5倍の強度・時間でも網膜障害は検出されなかったと述べた17).このため中国では近年,レッドライト機器対する規制分類がCClassIIIへ再分類されたが,この規制変更は各国の規制判断に直接影響するものではないと解釈されている.現在,EyerisingInterna-tional社製デバイスは,欧州では医療機器規則(medicaldeviceregulation:MDR)に基づくCCEマークを取得したCClassIIa医療機器として承認されており,オーストラリアCTGA,英国CMHRA,ニュージーランドCMed-Safe,トルコCTMMDAなどにおいても同様にCClassIIa医療機器として登録されている.また,マレーシア,ベトナム,コロンビア,サウジアラビアなどではCClassCB医療機器として承認され,UAEではCClass2医療機器として登録されているほか,オマーンでは輸入承認が与えられている(表1).なお,シンガポール,インド,韓国,エクアドルでは現在,承認申請が進行中である.このように,EyerisingInternational社製レッドライト治療機器は,複数の国・地域の規制当局により医療機器として承認されている.CXII各国における臨床研究の状況近年,レッドライト治療は世界各国で臨床研究が進められている.アジア太平洋地域では日本,マレーシア,ベトナムなどで臨床導入または臨床研究が行われており,韓国,インド,タイ,台湾などでも近視進行抑制を目的とした臨床試験が開始されている.また,欧州・中東地域においても,英国やトルコでは臨床使用が開始されている一方,フランス,スペイン,ポルトガル,ノルウェー,ポーランド,イタリア,オランダ,イスラエル,サウジアラビアなど多くの国で臨床試験が進行中で536あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026(64)表1Eyerisingレッドライトデバイスの各国規制状況(2026年3月時点)国・地域規制当局分類C/承認状況中国国家薬品監督管理局(NMPA)ClassIII(再分類)欧州連合CEマーク(医療機器規則MDR)ClassIIa医療機器オーストラリアCTGAClassIIa医療機器英国CMHRAClassIIa医療機器ニュージーランドCMedSafeClassIIa医療機器トルコCTMMDAClassIIa医療機器マレーシアCMedicalDeviceAuthorityClassB医療機器ベトナム保健省ClassB医療機器コロンビアCINVIMAClassB医療機器サウジアラビアSaudiFoodandDrugAuthority(SFDA)ClassB医療機器アラブ首長国連邦(UAE)CEmiratesDrugEstablishmentClass2医療機器オマーン保健省輸入承認シンガポール,インド,韓国,エクアドルでは現在,承認申請が進行中である.このように,EyerisingInternational社製レッドライト治療機器は複数の国・地域の規制当局により医療機器として承認されている.C-’C

多焦点ソフトコンタクトレンズによる近視抑制

2026年5月31日 日曜日

多焦点ソフトコンタクトレンズによる近視抑制MyopiaControlUsingMultifocalSoftContactLenses二宮さゆり*はじめに近視進行抑制目的のソフトコンタクトレンズ(myopiaCcontrolCsoftCcontactlenes:MCSCL)は,2015年頃より本格的に普及しはじめ,現在では小児に対するCCL処方の約C3割を占めているという国際調査も報告されている1).とくにCMiSightC1day(CooperVision,以下,MiSight)は世界C30カ国以上の国でCMCSCLとして承認を受け販売されており,もっとも広く普及しているCMCSCLと推測される.他にCACUVUECAbilitiC1-Day(JohnsonC&CJohnsonVision)やCNaturalVueCEnhancedCMultifocalC1Day(VTI),MYLO(mark’ennovy)のような多焦点CSCLも多く登場し,実臨床における選択肢となってきている.ここではわが国における光学的治療手段として初めて認可を得て販売されはじめたCMiSightを中心に,近視抑制効果が期待され,現時点で入手可能な多焦点CSCLについて述べたい.CIMiSight1dayわが国初のCMCSCLとしてC2025年C8月に厚生労働省より認可を受けたCMiSightは,2026年C2月より販売開始となった.MiSightの処方に際しては,製品特性および近視進行管理手順の適切な理解のため,取り扱う医療機関はメーカーによる講習受講が必須となっている.C1.レンズ設計と原理MiSightは中心に遠用度数があり,周辺に向かって+2.00D加入部と遠用部が交互に配置されたC2重焦点デザインである(図1).制作範囲はC.10.00.Dまでである.網膜中心窩に明瞭な像を維持しつつ,周辺網膜に近視性デフォーカスを誘導することを目的としており,周辺網膜像の焦点位置が眼軸成長を制御するという軸外収差理論に基づいた光学設計となっている.C2.海外の臨床試験結果MiSightはC7年という長い期間をかけた研究結果が報告されている.最初のC3年間で抑制効果を調べ,つぎの3年間で持続効果を確認し,最後のC1年間はリバウンドの有無を調べている.治験開始時の年齢はC8~12歳,等価球面値.0.75~C.4.00D,乱視度数C0.75D以下の子どもを対象としており,コントロール群にはCMiSightと同素材の単焦点CSCLであるCProclear1day(以下,Proclear)が用いられた.抑制効果を調べた最初のC3年間の比較では,眼軸長でC52%,屈折でC59%の近視抑制効果が示された(図2).また,3年間の近視進行度数の分布を調べた結果は非常に興味深く,図3に示すように,MiSight装用群のC41%はC.0.25D以下しか変化しなかった2).これはCMiSightを装用したC4割の子どもにおいて,3年間ほとんど屈折度数が変化しなかったことを示しており,臨床的に注目すべき結果である.持続効果を確認したつぎのC3年間で示されたことは,MiSight群では引き続き抑制効果が持続したことに加え,単焦点SCLからCMiSightに切り替えられた群でも切り替え後*SayuriNinomiya:伊丹中央眼科〔別刷請求先〕二宮さゆり:〒664-0851兵庫県伊丹市中央C1-5-1伊丹中央眼科(1)(53)C5250910-1810/26/\100/頁/JCOPY遠用度数図1Dualfocusdesign中心に遠用度数があり,周辺に向かって+2.00D加入部と遠用部が交互に配置された二重焦点デザインになっている.Ca(D)b(mm)0.000.7眼軸伸長0.2-1.25-0.250.60.5屈折変化-0.500.4-0.750.3-1.000.1-1.5000122436(月)0122436(月)時間時間図2MiSightと単焦点SCLの近視進行比較(3年間)屈折変化(Ca)でC59%,眼軸伸長(Cb)でC52%の近視抑制効果が示された.(文献C2より改変引用)161412108642眼数3年間の屈折の変化図3近視進行度数分布の比較(3年間)MiSight装用群のC41%はC3年間ほとんど近視が進行しなかった(-0.25.D以内).(文献C2より改変引用)図4治験開始時10歳の男児(MiSight群)治験レンズ装用開始後の眼軸長伸長は明らかに鈍化している.屈折変化(D)(mm)0.000.25単焦点眼鏡SEED1dayPureEDOF-0.22±0.03(Middle)0.2-0.2±0.08眼軸伸長0.15SEED1dayPureEDOF(Middle)-0.25-0.11±0.030.10.050-0.500612(月)0612(月)時間時間図5SEEDEDOF(Mid)と単焦点眼鏡の比較(1年間)屈折変化でC59%,眼軸伸長でC49%程度の近視抑制効果がみられた.(文献C5より改変引用)Log(RetinalImageQuality)-1-2-3-4-50+1.00+2.00defocus(D)図6SEEDEDOF(Mid)の光学性EDOFの網膜像ピーク位置.網膜像のピークはやや近方寄りで,とくに瞳孔径が小さいほど近方寄りになる.~~~表1多焦点ソフトコンタクトレンズ(SCL)3種の特長比較製品名CMiSightC1CdayCSEEDC1dayPureCEDOF(Middle)CBio.nityCMultifocalCHiCadd+2.50D販売会社クーパービジョンシードクーパービジョン中心遠用のC2重焦同心円状に交互に配置された+2.00D加入ゾーンが近視性軸上軸外収差を生む遠・中・近方の度数が年輪状に連続的に配置し,CEDOF効果とともに近視性の軸上・軸外収差を生む設計中心遠用度数,外側に+2.50D加入部分があり,C2焦点性が強いデザイン光学性制作度数C.0.25~C.10.00D+5.00~C.12.00D+6.00~C.10.00D素材ハイドロゲルCOma.lconCA含水率:6C0%Dk/L:2C2.8C※ハイドロゲルSBI(両性イオン素材)含水率:5C8%Dk/L:4C2.9C※シリコーンハイドロゲルCcom.lconCA含水率:4C8%Dk/L:1C28C※直径/ベースカーブCφC14.2Cmm/8.7CmmCφC14.2Cmm/8.4CmmCφC14.0Cmm/8.6Cmm算出最大加入度数(Cinvitro測定)約+2.8.D~+3.0D約+2.3.D~+2.4D約+2.0.D~+2.1D近視進行抑制効果(対照群,期間)屈折:59%,眼軸長:52%(単焦点SCL,3年間)屈折:58%,眼軸長:50%(単焦点眼鏡,1年間)屈折:43%,眼軸長:36%,(単焦点SCL,3年間)適応条件など.自分でレンズ装脱が可能な小学生以上の子ども.アレルギー性結膜炎などでオルソケラトロジーによる治療が困難な症例.乱視が強い場合は,見え方が許容できること.オルソケラトロジー治療の卒業後(1C5歳前後~).確実なレンズケアが守れること※単位:×10-9(cm・mlOC2/sec・ml・mmHg)(.3.00.Dの場合)EDOF:焦点深度拡張型(extendedCdepthCoffocus)C.それぞれの特徴を理解し,症例にあったレンズ選択をすることが求められる.~-

Essilor Stellestによる近視管理

2026年5月31日 日曜日

EssilorStellestによる近視管理MyopiaManagementUsingEssilorStellestLenses松村沙衣子*IStellestの原理近視は単なる屈折異常ではなく,眼軸長の過剰伸長により強度近視に進展すると近視性黄斑症,網膜.離,緑内障などの重篤な視機能障害リスクが増大する.現在は近視有病率の増加や近視発症の低年齢化から,世界中において小児期の近視進行抑制が医学的・社会的急務である.そのなかで,近視進行抑制治療として臨床的有用性が示された治療法の一つに,近視管理用眼鏡(多分割レンズ)が位置づけられている.Stellestは,近視進行抑制を目的に開発された近視管理用眼鏡レンズであり,highlyasphericallenslettarget(HALT)テクノロジーを採用している.ステレストは中央9mmに単焦点矯正ゾーンを有し,周辺部には11リングにわたり配置された多数の高度非球面レンズレットを組み込む構造で,レンズ全体として1,021個の高プラスレンズレットを配置している(図1).眼鏡は,コンタクトレンズ(contactlens:CL)治療に比べ侵襲性が低く,装用ハードルが低い一方で,従来の単焦点眼鏡(single-visionlens:SVL)は中心視の矯正はできても,周辺網膜上での像位置(周辺デフォーカス)を十分に制御できず,眼軸伸長が生じるという限界があった.HALTテクノロジーの概念的特徴は,周辺網膜に近視性デフォーカスを付加するという設計であり,これにより,中心視の視力を保ちつつ,周辺網膜領域に対して眼軸伸長を抑制する視覚刺激を与えることで,近視進行抑制効果が得られると考えられている(図2).近視性デフォーカスによる眼軸伸長抑制は,動物モデルや臨床研究により支持されてきた理論であり,網膜上に提示される焦点位置が眼球成長を制御する重要な因子であることが示されている.さらに,レンズレットの強さ(asphericity)が異なる設計(highlyasphericallens-lets:HAL,slightlyasphericallenslets:SAL)を比較することで,デフォーカス量の違いが治療効果の差につながるという用量反応(dose-response)が示されている.中国・温州で実施された二重盲検RCTにて,8~13歳の近視児にHAL,SAL,通常SVLを2年間装用させ比較した.その結果,HALとSALはいずれもSVLより近視進行(sphericalequivalentrefraction:SER)と眼軸長伸展を有意に抑制し,効果はHALでより大きかったことが報告されている1).IIStellestの近視進行抑制効果1.StellestのRCTの有効性Stellestに関しては,複数のランダム化比較試験(ran-domizedcontrolledtrial:RCT)で有効性が示されている.もっとも重要なエビデンスは,中国・温州で実施された二重盲検3群RCT(2年)である.対象は.0.75Dから.4.75Dの近視をもつ8~13歳の小児であり,157名が完遂した1).脱落はHAL3.6%,SAL5.4%,SVL7.3*SaikoMatsumura:東邦大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕松村沙衣子:〒143-8540東京都大田区大森西6-11-1東邦大学医学部眼科学講座(1)(45)5170910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1Highlyasphericallenslettarget(HALT)レンズ9.0mmの中心領域のクリアゾーンは遠方の屈折異常を矯正し,周辺には高次非球面微小レンズ1,021個を11リングに配置したデザインである.(画像提供:Essilor)図2HALTレンズの近視進行抑制HALTテクノロジーは,中心視の視力を保ちつつ,周辺網膜領域に対して眼軸伸長を抑制する近視性デフォーカスを付加するという設計である.(画像提供:Essilor)a(D)0b(mm)0.8等価球面度数変化量-0.40.6眼軸長変化量0.40.2-0.8-1.2-1.60061218(月)24061218(月)24時間時間図3HALTレンズの二重盲検3群RCT(2年)の結果a:2年間の近視進行はChighlyCasphericallenslets(HAL)C.0.66D,slightlyCasphericallenslets(SAL)C.1.04D,single-visionlens(SVL)C.1.46Dであり,HALはCSVLよりC0.80D,SALはC0.42D有意に抑制した.Cb:2年間の眼軸長伸長はCHAL0.34Cmm,SAL0.51mm,SVL0.69Cmmであり,HALはCSVLよりC0.35Cmm有意に抑制した.(文献C1より改変引用)処方可能であり,強度近視家族歴や本人・家族の希望が強い場合も適応となりうる.眼鏡の作製範囲は球面度数+2.00D~.12D,円柱度数≦C.4Dである.C3.禁忌または慎重処方両眼視機能異常(斜視・弱視・眼振など),調節異常(偽近視含む),症候群や眼疾患に伴う近視,二次性近視,円錐角膜,先天白内障術後などは原則禁忌であり,不同視は慎重判断が必要とされる.C4.処方前検査(推奨される評価項目)・問診(既往歴,家族歴,近視発症年齢・進行速度,治療歴)・屈折検査(他覚・自覚)・視力検査(裸眼・矯正,近見も含む)・遮閉試験(遠方・近方)・調節麻痺下屈折検査・眼軸長測定(推奨)・両眼視機能評価(Bagolini線状レンズ,立体視など)・追加検査〔細隙灯顕微鏡,眼底検査,必要に応じ光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)など〕調節麻痺はシクロペントラートC1%をC2回点眼後C45~60分を推奨している.これは,近視進行評価の精度確保のためきわめて重要であり,非調節麻痺下オートレフのみでは誤差が大きくなる可能性が示唆されている.BaoらによるC1年報告では,HAL,SALとCSVLのC3群間で近見視力や斜位,調節ラグに差がなかったことが示されているが,とくに近見時の両眼視異常(輻湊不全,外斜位優位)や調節ラグが強い場合は,近業時の症状や装用継続性に影響しうる可能性があるため,初回に眼位評価や両眼視機能を評価することは重要である.C5.Stellestの推奨眼鏡フレーム推奨される眼鏡フレームは,頻繁な調整にも耐えられる金属製またはプラスチック製のフルリムフレームが望ましい.サイズは瞳孔中心がフレーム開口部の中央付近に位置するものが適しており,レンズ全体が枠内に収まる必要はないが,上眼瞼を十分に覆える高さを確保したフレーム(垂直幅C30~38Cmm程度)が推奨される.CIVStellestの定期検査のチェックポイント装用開始後の経過観察をC2週間後,その後はC6カ月ごとに行うことを基本としている.C1.装用開始2週間後この時点では適応評価が重要であり,視力低下・眼精疲労・頭痛などの有無,装用時間(1日C12時間以上,毎日),レンズ度数の適切性,センタリングを確認する.過矯正の除外をするために,単なるレンズ度数測定ではなく,装用下で自覚的屈折やオーバーレフを推奨される.とくに重要なのは,フィッティング確認であり,Stellestはレンズレット構造を用いるため,視線が中心ゾーンからはずれた状態が続くと,コントラストの低下より装用離脱にもつながる.フレームのフィッティングとレンズ中心(瞳孔中心)合わせを丁寧に行い,装用時の違和感・視覚症状(ぼやけ,ピント調整困難,複視など)を拾い上げる.C2.6カ月ごとのフォローアップ6カ月ごとの定期検査では,2週間後と同様,症状確認に加え,調節麻痺下屈折値や眼軸長測定による治療評価が推奨される.8歳未満や進行が速い場合には,受診ごとに視機能評価を行うことが望ましいとされる.C3.レンズ交換の基準片眼または両眼で等価球面度数が.0.50Dを超えて進行した場合は,レンズ交換を検討する.経済的負担も考慮し,購入日からC6カ月以内であればC1回の保証交換制度を活用することが望ましい.さらに,Stellestの効果を最大化するにはクリアゾーン中心が瞳孔中心に一致することが重要であり,センタリング許容範囲は水平・垂直ともにC1Cmm以下とされる.この条件を満たさない場合は,再加工やフレーム調整を行う.C4.治療抵抗性の確認一定期間経過しても近視進行が十分に抑制されない場合は,装用時間不足,フィッティング不良や中心ズレ,520あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026(48)近業過多・屋外活動不足などの環境因子を順に確認する.これらを改善しても効果が不十分な場合には,低濃度アトロピン点眼との併用療法も検討する.C5.治療終了の考え方近視管理用眼鏡は現時点のエビデンスでは中止後のリバウンドは生じにくく,理由を問わず中止可能とされている.一方で,近視進行が停止するまで継続することが望ましく,一般に進行停止の目安はC18歳C±2歳とされる.6カ月ごとのフォローアップで屈折度数や眼軸長に変化がC2回連続して認められない場合は装用終了を検討し,代替となる屈折矯正法(SVL,累進屈折力眼鏡,CLなど)を提示する.終了後も可能であればC6カ月ごとに屈折度数と眼軸長を追跡し,再進行がみられた場合は装用再開を考慮する.CVStellestによるPremyopia(前近視)への介入エビデンス近視発症年齢の低年齢化が進むなか,近視発症前段階であるCPremyopia(前近視)において眼軸伸長を抑制し,近視発症を遅らせる戦略が報告されている.前近視は,調節麻痺下屈折値が>.0.50Dかつ≦+0.75Dであることに加え,両親の近視,屋外活動不足,過度な近業などの近視進行リスク因子を有する状態と定義される.屈折は近視域に至らないものの遠視リザーブ(hyperopicreserve)が乏しく,眼軸伸長が加速している集団であり,近視へ移行するリスクが高い.Stellestは,度なし(plano)設計を含めたCHAL技術を応用し,前近視段階から網膜に近視性デフォーカス刺激を与えることで眼軸伸長を抑制することを目的としている.Stellestの前近視に対する有効性については,RCTおよび実臨床データの双方から報告されている.Zhangらは,6.0~9.9歳の低遠視リザーブ小児(調節麻痺下屈折値C0.00~+2.00D)108名を対象にCHAL群とSVL群をC12カ月間比較するCRCTを実施した.全体解析では屈折変化および眼軸伸長に有意差は認められなかったが,装用時間を考慮した解析では週C30時間以上装用した群でCHAL群の眼軸伸長がCSVL群より有意に小さく(0.11CmmCvs0.27Cmm),装用時間が長いほど効果が高いCdose-response関係が示された6).さらにCWangらは,4~9歳の非近視児(調節麻痺下屈折値>.0.50Dかつ≦+0.75D)に対するCplanoHALの装用効果を後ろ向きに解析し,105名を対象に介入前後の眼軸伸長速度を比較した7).その結果,眼軸伸長速度は介入前の+0.44Cmm/年から介入後の+0.13Cmm/年へ低下し,年間差C.0.31Cmm/年と有意な抑制効果が示された.また装用時間が長いほど抑制効果が大きく,1日C6時間以上装用した群で眼軸伸長抑制がより顕著であった.以上より,Stellestは前近視小児においても,十分な装用時間が確保されれば眼軸伸長を抑制し,近視発症を遅らせる可能性が示唆される.CVI低濃度アトロピンとの併用療法近視進行抑制治療は単独療法では十分な抑制が得られない症例も存在し,近年は併用療法の有用性が報告されている.Simらの前向きコホート研究では,低濃度アトロピン(0.01%またはC0.025%)でC6カ月間にC0.5D以上進行したC6~11歳小児C50例に対し,ステレストを追加し経過を観察した8).その結果,併用開始前の進行は0.60D/0.24mm(6カ月)であったのに対し,併用後はC6カ月で.0.06D/0.06mm,12カ月でC.0.15D/0.14Cmmへと著明に抑制された.CVIIHALTの応用性HALTテクノロジーは,児童・生徒期近視の進行抑制に対して確立したエビデンスが蓄積されつつあるが,近年では「高リスク近視」や「特殊な病態に伴う近視」に対しても応用可能であることが示唆されている.C1.未熟児網膜症関連近視に対するHALTの有効性未熟児網膜症(retinopathyCofpremature:ROP)既往児に生じる近視は,一般的な児童・生徒期近視とは異なる特徴を持ち,強度近視へのリスクが高い9).前眼部の発育異常(角膜曲率の増加,前房の浅さ,水晶体厚増大,短眼軸長など)から起こる屈折性近視であり,児童・生徒期以降は眼軸伸長を伴う進行性近視として経過する症例も認められる.Parrozzaniらは,ROP既往を有する早産児における近視(myopiaCofprematurity:(49)あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026C521等価球面度数変化量a0.300.23-0.50.20-10.0006(月)12612時間StandardlensesHALTlenses図4HALTレンズの未熟児網膜症既往の近視小児への有効性a:12カ月後の近視進行は単焦点群C.0.93±0.34Dに対し,HALT群C.0.32±0.20Dと有意に抑制された.Cb:眼軸長伸長は単焦点群C0.46C±0.09Cmmに対し,HALT群C0.12C±0.05Cmmと大幅に抑制された.(文献C10より改変引用)–

MiYOSMART(DIMS)による近視抑制

2026年5月31日 日曜日

MiYOSMART(DIMS)による近視抑制MyopiaManagementUsingMiYOSMARTDefocusIncorporatedMultipleSegments(DIMS)Lenses平岡孝浩*IDIMSレンズの原理Defocusincorporatedmultiplesegments(DIMS)レンズ(MiYOSMART,HOYA)は,小児近視進行抑制を目的として開発された特殊眼鏡であり,中心視の明瞭な矯正と周辺網膜への近視性デフォーカス付与を同時に実現する光学設計を特徴とする.従来の単焦点眼鏡では,中心窩に焦点があう一方で,周辺網膜では相対的に遠視性デフォーカスが生じる可能性があり,この周辺部遠視性デフォーカスが眼軸長伸長を促進するシグナルとして作用するという仮説が提唱されている.この概念は動物実験およびヒト研究により支持されており,近視進行抑制戦略の理論的基盤となっている1,2).DIMSレンズはこの理論に基づき,中央に単焦点矯正領域を配置し,その周囲に多数の小型セグメントを配置した二重構造をもつ.中央領域は通常の眼鏡と同様に遠用視力を確保するための単焦点矯正を行い,周辺部では+3.5Dの加入度数をもつ微小セグメントを介した光が同時に網膜へ投影される.この設計により,装用者は常に明瞭な中心視を保ちながら,周辺部網膜には近視性デフォーカス刺激が付与される.微小セグメントは直径約1mm程度の小さな領域として多数(約400個)配置され,視線移動に依存せず持続的な光学刺激が維持される点が特徴である(図1)3).この「同時視型デフォーカス」は多焦点コンタクトレンズ(contactlens:CL)の光学設計と類似するが,眼鏡であるため角膜へ影響を及ぼすことはなく,装用開始・中止が容易で安全性が高いという利点を有する.また,視線方向に依存しないため,日常生活での自然な視行動下でも周辺部近視性デフォーカスが維持される可能性がある.DIMSレンズは香港理工大学(TheHongKongPoly-technicUniversity:HKPU)とHOYAにより共同開発されたが,HKPUは一連の臨床研究を実施し,その有用性を実証している.つぎにその要点を解説する.IIHKPUによる一連の研究成果HKPUで施行されたDIMS研究の比較を表1に示す.1.ランダム化比較試験(2年間)DIMSレンズの有効性を最初に示したのは,香港で実施された二重盲検ランダム化比較試験(randomizedcontrolledtrial:RCT)である.8~13歳の近視児童をDIMS群と単焦点眼鏡群に割り付け,2年間追跡した結果,DIMS群では屈折進行および眼軸長伸長のいずれもが有意に抑制された4).具体的には,2年間の平均屈折進行量はDIMS群で約.0.4D,単焦点群で約.0.9Dであり,進行抑制率は52%と報告された.また,眼軸長変化においてもDIMS群約0.21mm,単焦点群約0.53mmであり,62%の抑制効果が認められた4).さらに,DIMS群では2年間でほぼ進行がみられなか*TakahiroHiraoka:筑波大学医学医療系眼科〔別刷請求先〕平岡孝浩:〒305-8575つくば市天王台1-1-1筑波大学医学医療系眼科(1)(37)5090910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1Defocusincorporatedmultiplesegments(DIMS)デザインと光学特性中央に単焦点矯正領域,周囲に多数の微小セグメントを配置した二重構造をもつ.中央部は通常の眼鏡と同様に遠用視力を確保し,周辺部では+3.5Dの加入をもつ微小レンズにより近視性デフォーカスが網膜へ同時に投影される.周辺部では単焦点像と微小レンズ像が重なって網膜に投影されるが,各微小レンズは網膜前方に結像するため複像は生じない.(文献C3より改変引用)表1香港理工大学(HKPU)で施行されたDIMS研究の比較表研究研究目的デザイン・対象追跡期間おもな評価項目おもな結果臨床的意義DIMS2年間CRCT4)DIMSの近視抑制効果検証二重盲検CRCT8~1C3歳中国人小児C160例2年SER・眼軸長近視進行C52%抑制眼軸長伸長C62%抑制DIMSの有効性を初めてCRCTで証明視機能研究3)DIMS装用が視機能へ与える影響上記CRCT参加児2年視力・両眼視・調節機能DIMSとCSVで視機能差なし長期装用でも視機能に悪影響なし周辺屈折解析5)周辺屈折と近視進行の関連上記CRCTサブ解析2年相対的周辺部屈折DIMS群は周辺部の遠視性デフォーカス増加を抑制DIMSは周辺屈折分布を修飾することにより近視進行抑制に寄与3年追跡研究7)抑制効果の持続性検証上記CRCT完了児C128例の追跡調査3年SER・眼軸長DIMS継続群で効果持続SVC→CDIMS群でも抑制開始効果は継続・新規導入後も有効周辺屈折変化研究8)CSVC→CDIMS変更時の周辺屈折変化3年追跡調査のサブ解析3年周辺屈折・眼軸長SV群は遠視性デフォーカス増加DIMS装用後は対称性の屈折分布DIMSは眼球周辺部の屈折異常を修正することにより眼球成長パターンを修飾6年長期研究9)長期有効性と安全性RCT後のコホート追跡6年SER・眼軸長・安全性長期でも抑制効果維持中止後リバウンドなし長期使用の安全性・持続性確認DIMS:defocusincorporatedmultiplesegments,RCT:randomizedcontrolledtrial,SER:sphericalequivalentrefraction,SV:singlevisionspectacles.った児童が約C20%存在し,近視進行抑制効果には個人差があるものの,高い反応性を示す症例が存在することも示された4).C2.周辺屈折解析による機序的裏づけ上記のCRCT対象者において,周辺屈折を詳細に解析したところ,単焦点眼鏡群では鼻側周辺網膜において相対的遠視化が進行するのに対し,DIMS群ではこの変化が抑制されることが報告された5).周辺部における遠視性デフォーカスは眼球伸長刺激として作用するため,この結果はCDIMSの作用機序を支持する5).この遠視化は眼球が後方に向かって長軸方向へ伸長するプロレート形状変化を反映すると考えられ,DIMSレンズは周辺屈折分布を修飾することで眼球成長パターンに影響を与える可能性が示唆された.さらに追加研究では,ベースラインの周辺屈折特性と近視進行抑制効果との関連が検討され,周辺部の遠視性デフォーカスが強い児童ほどCDIMSによる抑制効果が大きい可能性が示された6).これは,近視管理における個別化治療の必要性を示す重要な知見であるといえる.C3.視機能への影響同CRCTでは詳細な視機能評価も実施されており,長期装用による視力,両眼視機能,立体視,調節機能などの変化が検討された.その結果,2年間の装用後も主要な視機能に群間差は認められず,DIMSが視機能に悪影響を及ぼす証拠は示されなかった3).この研究では測定を単焦点補正下で行うことで,DIMS特有の光学像質の直接影響を排除し,視覚機能そのものの変化を評価している.その結果,視機能の発達変化は年齢に伴う自然な変化の範囲内であり,安全性の観点からも臨床導入を支持する結果となった.C4.延長研究および切替研究(3年)2年CRCT終了後の延長研究においては,DIMS継続群と単焦点からCDIMSへ切り替えた群の評価が行われた.継続群ではC3年目も抑制効果が維持され,単焦点からCDIMSへ切り替えた群では切替後に近視進行速度の低下が確認された7).また,切り替え後には鼻側遠視性デフォーカスが減少し,より(耳鼻側で)対称的な周辺屈折分布へ変化したことが報告されている8).C5.長期追跡(6年間)長期追跡研究では,最大C6年間の装用効果が評価された9).DIMSを継続装用した群では,6年間の累積眼軸伸長は約C0.60Cmmと比較的低く,年間進行率は安定して低い水準に保たれていた.また,最初のC3年間と後半3年間で進行速度に有意差はなく,効果が早期のみでなく持続する可能性が示された.さらに,装用を中止した群においても急激な進行増加は認められず,いわゆるリバウンド現象の明確な証拠は示されなかった9).視機能についてもC6年時点で正常範囲が維持されており,長期安全性が支持された.まとめると,HKPUによる一連の研究により,DIMSレンズの臨床的有用性が多角的に示された.CIII思春期近視患者における有効性上述のCHKPUによる研究は,8~13歳のおもに小学生を対象として行われたが,12~18歳の中高生を対象とした研究結果が近年中国から報告された10).近視患者120名をCDIMS眼鏡群と単焦点眼鏡群に無作為に割り付け,2年間追跡した前向きCRCTであり,DIMSの屈折進行抑制効果と両眼視機能への影響を検討している.その結果,2年間の近視進行量はCDIMS群C.0.72±0.32D,単焦点群.1.25±0.45Dであり,DIMSは約C42%の進行抑制効果を示した.また眼軸伸長もCDIMS群C0.41C±0.18mm,単焦点群C0.65C±0.25Cmmと有意に少なかった.臨床的に有意な外斜位増大,立体視低下,輻湊不全の発生率もCDIMS群で低かった.副作用は軽微で,短期間のゴースト像以外に重大な有害事象は認められなかった.以上より,DIMS眼鏡は思春期の近視患者においても近視進行および眼軸伸長を抑制するとともに,両眼視機能の変化をより良好に維持する可能性が示唆された10).CIVDIMSとアトロピン点眼併用療法による近視進行抑制DIMSはその特徴的な光学設計により眼軸長伸長を抑(39)あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026C511表2DIMS眼鏡とアトロピン点眼の併用療法の比較表研究(地域・デザイン)介入(比較)対象期間主要結果(AL)主要結果(SER)重要ポイント中国・後ろ向き観察11)CDIMS+0.01%ATP併用CvsDIMS単独CvsSV単独7~1C2歳,Cn=10712カ月C0.28vs0.41vs0.52Cmm0.49CvsC0.79CvsC1.07DCDIMS+0.01%ATP併用はDIMS単独よりCAL進行を抑制(上乗せ効果を確認)DIMS+0.025%DIMS+0.025%ATP併用スペイン・RCT12)CATP併用CvsCSV+0.025%4~1C6歳,2群比較12カ月C0.07CvsC0.18Cmm(差C0.11mm)C.0.09vs.0.19D(差C0.10D)C群で有効性が高い(とくに眼軸長伸長抑制効果が有意ATP併用に大きい)イタリア・前向き観察13)0.01%ATP単独/DIMS単独/CDIMS+0.01%ATP併用/SV単独6~1C8歳,Cn=14612カ月全治療群においてSV単独群よりAL進行が少ないDIMS+0.01%ATP併用は各単独群よりCSER進行が少ない非ランダム化試験ではあるが多変量解析による補正後もCDIMS+0.01%ATP併用群の有効性が確認DIMS:defocusincorporatedmultiplesegments,ATP:atropine,RCT:randomizedcontrolledtrial,AL:axiallength,SER:sphericalequivalentrefraction,SV:singlevisionspectacles.この差は短期的には小さくみえるが,小児期を通じて累積するとすれば相当量の相加効果となりうるため,さらに長期の研究結果が待たれる.CVDIMSと脈絡膜近年では,近視進行の制御において脈絡膜の役割が注目されている.近視性デフォーカス刺激は脈絡膜肥厚を誘導し,眼軸伸長を抑制する可能性が示されており,脈絡膜厚や血流は近視進行のバイオマーカーとして研究されている14).中国で行われた前向き研究では,DIMS装用児において脈絡毛細血管板のC.owvoids(血流欠損領域)が大きいほど眼軸伸長が大きく,.owvoidsは独立した近視進行予測因子となることが示された15).この結果は,脈絡膜循環状態がCDIMS治療の反応性に影響する可能性を示唆している.さらに,台湾の比較研究では,DIMS装用後に脈絡膜厚が増加し,その変化はオルソケラトロジーと同程度で,低濃度アトロピン単独より大きいことが報告された16).これはCDIMSが光学的刺激を介して脈絡膜構造を変化させ得ることを示している.また,成人を対象とした短期研究では,DIMSを含むデフォーカスレンズ装用後に脈絡膜厚の変化が速やかに生じ,日内変動の影響を受けつつも単焦点レンズより脈絡膜菲薄化が抑制されることが示された17).この所見は,DIMSによる近視抑制の初期反応として脈絡膜が重要な役割を担う可能性を支持する.以上より,DIMSの近視抑制効果は,周辺部近視性デフォーカス刺激により脈絡膜厚および血流が変化し,それが強膜リモデリングを介して眼軸長伸長を抑制する経路で発現している可能性が示唆される.脈絡膜パラメータは治療効果の予測およびモニタリングに有用となる可能性があり,今後の個別化近視管理における重要な評価項目と考えられる.CVI適応患者これまでの研究報告から,以下の条件を参考に適応を判断する.1.積極的に推奨する条件・学童期~思春期(6~18歳)・年間C0.5D以上の近視進行が確認されている・家族歴に強度近視がある・日中の眼鏡装用時間が可能・コンタクトレンズ装用が困難または希望しないとくに低年齢ほど近視進行速度が速いため,早期導入の意義が大きい.C2.慎重を要する条件・斜視や両眼視機能に異常があるもの・調節機能に著しい異常があるもの・視力矯正が安定しない屈折異常者・眼鏡装用時間が極端に短い症例DIMSは装用時間依存性があり,装用時間が短いと十分な効果が得られない.C3.禁忌弱視,角膜疾患,網膜疾患など器質的疾患を有するもの.CVII処方前の検査1.屈折検査調節麻痺下屈折測定は必須である.完全矯正値を正確に決定し,過矯正や低矯正を避ける必要がある.乱視度数・軸の安定性も確認する.C2.眼軸長測定極力実施する.眼軸長はもっとも信頼性の高い近視進行指標であり,治療効果判定にも不可欠である.C3.両眼視機能評価斜位,融像,立体視,調節力,調節ラグを評価する.多焦点光学設計に近いため,極端な両眼視異常がある場合は慎重に判断する.CVIII定期検査のチェックポイント1.フォロー間隔通常C6カ月ごとの評価が推奨される.進行が速い症例(41)あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026C513では3~4カ月間隔も検討する.C2.屈折値・眼軸長眼軸伸長が年C0.2Cmm以上の場合は抑制不十分と判断し,装用状況確認や併用療法を検討する.C3.装用状況装用時間,学校生活での見え方,学習時の支障を確認する.装用時間不足が疑われる場合はまずコンプライアンス改善を優先する.C4.副作用・適応違和感,頭痛,視覚疲労などを確認する.多くは適応により軽減するが,必要に応じ調整する.CIXまとめと展望DIMSレンズは周辺近視性デフォーカス理論に基づく近視管理眼鏡であり,複数のCRCTにより屈折進行および眼軸伸長を有意に抑制することが示されている.長期追跡では効果持続とリバウンドの欠如が示され,安全性も支持されている.さらに,低濃度アトロピンとの併用により抑制効果が増強する可能性がある.適切な患者選択,正確な処方前評価,定期的フォローを行うことで,DIMSは小児近視管理における有力な第一選択となりうると考えられる.また,最近では,従来のCDIMSの設計を改良した「第二世代CDIMS」が提案されている.これらのレンズは,中央光学領域の大きさや近視性デフォーカス度数,デフォーカス領域の割合を調整することで,近視抑制効果の最適化をめざした設計となっている.前向きクロスオーバー研究では,遠見視力や多くの視機能指標に関して第一と第二世代で有意差は認められず,第二世代設計でも視覚性能はおおむね維持された.すなわち,デフォーカス強度や領域を拡大しても日常視覚機能はおおむね維持可能であることを示している18).さらに,第二世代CDIMSの生理学的作用を検討した研究では,短期的な脈絡膜厚変化が評価された.その結果,装用C1時間後には変化は認められなかったものの,1週間後には有意な脈絡膜肥厚が生じ,2週間後まで持続した19).脈絡膜肥厚は近視性デフォーカス刺激に対する生理学的反応として知られており,眼軸伸長抑制と関連する可能性がある.今後は実臨床において長期の近視進行抑制効果の比較が行われる予定であり,第二世代CDIMSのより高い有効性が証明されれば市場に登場してくると考えられる.文献1)SmithCELC3rd,CHungCLF,CHuangJ:RelativeCperipheralChyperopicdefocusalterscentralrefractivedevelopmentininfantmonkeys..VisionResC49:2386-2392,C20092)MuttiDO,SinnottLT,MitchellGLetal:Relativeperiph-eralrefractiveerrorandtheriskofonsetandprogressionofmyopiainchildren..InvestOphthalmolVisSciC52:199-205,C20113)LamCCSY,CTangCWC,CQiCHCetal:E.ectCofCdefocusCincor-poratedCmultipleCsegmentsCspectacleClensCwearConCvisualCfunctioninmyopicChinesechildren..TranslVisSciTech-nolC9:11,C20204)LamCSY,TangWC,TseDYetal:DefocusincorporatedmultipleCsegments(DIMS)spectacleClensesCslowCmyopiaprogression:a2-yearrandomisedclinicaltrial..BrJOph-thalmolC104:363-368,C20205)ZhangCHY,CLamCCSY,CTangCWCCetal:DefocusCincorpo-ratedmultiplesegmentsspectaclelenseschangedtherela-tiveCperipheralrefraction:aC2-yearCrandomizedCclinicalCtrial.CInvestOphthalmolVisSci.61:53,C20206)ZhangCH,CLamCCSY,CTangCWCCetal:MyopiaCcontrolCe.ectCisCin.uencedCbyCbaselineCrelativeCperipheralCrefrac-tionCinCchildrenCwearingCdefocusCincorporatedCmultiplesegments(DIMS)spectacleClenses.CJCClinCMedC11:2294,C20227)LamCS,TangWC,LeePHetal:Myopiacontrole.ectofdefocusincorporatedCmultipleCsegments(DIMS)spectacleClensCinCChinesechildren:resultsCofCaC3-yearCfollow-upCstudy..BrJOphthalmolC106:1110-1114,C20228)ZhangHY,LamCSY,TangWCetal:ChangesinrelativeperipheralCrefractionCinCchildrenCwhoCswitchedCfromCsin-gle-visionClensesCtoCdefocusCincorporatedCmultipleCseg-mentslenses..OphthalmicPhysiolOptC43:319-326,C20239)LamCSY,TangWC,ZhangHYetal:Long-termmyopiacontrole.ectandsafetyinchildrenwearingDIMSspecta-clelensesfor6years..SciRepC13:5475,C202310)ChaiM,WuY:ImpactofopticalcorrectionwithordinaryspherocylindricalCspectacleClensesCversusCdefocusCincorpo-ratedmultipleCsegments(DIMS)spectacleClensesConCocu-larCalignmentCandCbinocularCvisualCfunctionCinCteenagersCwithmyopia..BMCOphthalmolC25:575,C202511)HuangCZ,CChenCXF,CHeCTCetal:SynergisticCe.ectsCofCdefocus-incorporatedCmultipleCsegmentsCandCatropineCinC514あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026(42)-

オルソケラトロジーによる近視抑制

2026年5月31日 日曜日

オルソケラトロジーによる近視抑制OrthokeratologyforMyopiaControl稲澤かおり*はじめに昨今は小児の近視進行抑制が注目されており,2025年に日本で初めて近視進行抑制薬として承認を受けたリジュセアミニ点眼液0.025%が発売されて以来,さらに世間の認識も広がり,受診される患者も増加している.本誌でも多くの近視抑制方法が紹介されるが,オルソケラトロジー(orthokeratology,以下,オルソK)はそのなかでも歴史的には古く,多くの患者に使われているものである.オルソKの歴史,原理,処方方法,併用療法などについて述べる.IオルソKの歴史1950年頃からハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)装用患者が近視の屈折度数が軽減し,乱視が改善されることを経験的に知る眼科医たちにより論じられるようになったようであるが,意図的に「屈折異常の矯正」として報告されたのは,1962年Jessen.1)によってである.その後,多数のカーブをもつリバースジオメトリーレンズへと進化するとともに,高酸素透過性レンズ素材が用いられるようになり,現在の第3世代オルソKとよばれるレンズへと進化した.2002年には米国食品医薬品局(FoodandDrugAdministration:FDA)によって初めて近視矯正機器としての承認を受けた.2009年には日本でも厚生労働省により承認されるに至った.II近視抑制のエビデンス2004年にCheungら.2)により,片眼だけオルソKを装用していた11歳男児が僚眼と比較して眼軸長の伸展が有意に抑制されていると報告した.これを皮切りに,2005年Choら.3),2009年Wallineら.4)によるパイロットスタディ,2011年にはKakitaら.5)により非無作為化比較試験,2012年にはHiraokaら.6)により長期の非無作為化比較試験,Santodomingo-Rubido.7)らによる欧州白人を対象とした非無作為化比較試験が報告された.2012年世界初の無作為化比較試験がCho.8)らにより報告され,その後2015~2016年にかけて,もっともエビデンスレベルが高いメタ解析論文が4編報告された.9~12).いずれの報告もオルソKは眼鏡,ソフトコンタクトレンズ(softCL:SCL)装用患者より有意に眼軸長の伸展を抑制し,安全性も許容できるものであるとしており,また,欧米人よりアジア人のほうが抑制効果は大きいと結論づけている.IIIオルソKの原理現在,日本でもオルソKは表1に示すとおり4社のレンズが近視矯正機器として厚生労働省より承認されている.いずれもリバースジオメトリーデザインとよばれる四つのカーブより構成されている(図1).すなわち,中央部からベースカーブ(basecurve:BC),リバースカーブ(reversecurve:RC),アライメントカーブ.*KaoriInazawa:稲澤クリニック〔別刷請求先〕稲澤かおり:〒565-0824大阪府吹田市山田西2-4A1-112稲澤クリニック(1)(29)5010910-1810/26/\100/頁/JCOPY表1各社のオルソケラトロジー(オルソK)レンズ名称メニコンオルソケラトロジー(旧αオルソK)マイエメラルドブレスオーコレクトアイメディ・オルソケー販売業者メニコンテクノピアシードアイメディ製造業者アルファコーポレーションEuclidSystemCorporation東レレインボーオプチカル研究所アイメディ承認年度2009201020122016ここから選ぶFlatK+TargetPFlatK+TargetPフィッティングマスターAverageK+TargetP①Bacecurve(BC)②Reversecurve(RC)③Alimentcurve(AC)メニコン・マイエメラルドFittingcurve(FC)ブレスオー・アイメディ④Peripheralcurve(PC)図1リバースジオメトリーデザイン(画像提供:メニコン,一部改変)図2軸外収差理論に基づく眼軸長伸展抑制機序a:眼鏡やコンタクトレンズで矯正すると,周辺網膜では遠視性デフォーカスができる.これが信号になり,眼軸長伸展が起こる.b:オルソKでは,角膜中央部は平坦化され中間部角膜は急峻になる.このため,周辺網膜での遠視性デフォーカスが軽減され,眼軸長伸展は抑制される.(文献14より引用)1ファーストレンズ装用センタリングのチェックNOYESそのまま継続(ⅰ)フルオレセインパターン(ⅱ)角膜形状解析YESNO同心円が望ましいBull’seyepatternTPのみ変更AC/FC変更or/and①角膜離心率レンズ径変更②角膜径図3オルソKレンズ処方のフローチャートTP:目標矯正度数,AC:アライメントカーブ,FC:フィッティングカーブ.(文献C16より改変引用)00.51ベースカーブが同じでも図4角膜離心率は角膜周辺部の扁平化を示す指標完全な球体では離心率C0.0で,周辺がフラットになるにつれC1.0に近づいていく.標準的な角膜ではC0.2~0.7の範囲で,平均値は約C0.5である.図5トーリック(Tc)レンズ処方例装用前所見:K値はCKf45.50D,Ks47.50D.レフ値はCSC.4.75D,CC.1.50D,A179.処方レンズ:45.75/46.75/C.4.75/10.5(メニコンオルソK).レンズ装用C2週間後視力C1.5.(E値大きくなる)標準的E値(E値小さくなる)図6患者用レンズケア説明フライヤー図7レンズ表面の光沢図8レンズの刻印滑らかさがなく,ヌメっとした汚れが固着している.白い沈着物が付着している.たい.CVII近視進行抑制としてのオルソKの立ち位置2026年C2月現在,オルソCKは近視矯正機器として厚生労働省より承認されてはいるものの,近視進行抑制機器としては治験施行中である.しかし,全国多数の施設でオルソCKの処方が実際には行われており,近視進行抑制効果も広く認知されていることが現状である.オルソCKの利点はいくつかあげられるが,近視進行抑制に加えて,日中裸眼で生活できること,夜間の装用なので保護者がいるときの装用が安心であることなども利点だと考える.筆者の施設ではC6歳からオルソCKを装用している患者がいるが,低年齢でレンズ装用が可能な例にはファーストチョイスとしてよいと考えている.CVIIIリジュセアミニからの切り替えや併用併用療法については,オルソCKとC0.01%アトロピン点眼の併用について,2018年およびC2020年にCKinoshi-taらが報告している18,19).眼軸長変化量の平均値は,2年間で併用群C0.29Cmm,単独群C0.40Cmmで有意差を認め,併用療法はオルソCK単独群と比べてC28%の眼軸伸長抑制の相加効果を認めた.等価球面屈折値で対象を分けて,2年間の眼軸長変化量をC2群間で比較したところ,C.1.00~.3.00Dの軽度近視においては,オルソCK単独療法の抑制効果が比較的弱く,併用療法はより効果的であったが(併用群C0.30Cmm,単独群C0.48Cmm,38%抑制),C.3.01~.6.00Dの強めの近視群においては,オルソCK単独療法の抑制効果が十分に強く,併用療法と同等(併用群C0.27Cmm,単独群C0.25Cmm)で有意差は認められなかった.一方で,2025年にCHuらは以下の報告をしている.20).7~16歳のオルソCKを装用している患児を対象として年齢と等価球面度数(sphericalCequivalent:SE)について,年齢はC11歳以上と以下,SEはC.3.00D以下とC.3.00D超のC4群に分けて,眼軸長伸展の抑制効果について検討した.結果は,HH群(高年齢C×強めの近視)が3年間の眼軸長伸展はC0.18C±0.27Cmmともっとも良好であり,LL群(低年齢C×軽度近視)がC3年間の眼軸長伸展はC0.59C±0.35Cmmともっとも不良であった.また,HH群では眼軸長短縮も認められており,2年間でC23.9%,3年間でC20.5%に平均短縮量C.0.16~C.0.17Cmmであった.高年齢+強めの近視では,角膜リモデリングが安定しており,周辺網膜への近視性デフォーカスができることが考察されている.また,眼軸長の短縮については,脈絡膜の肥厚だけでは説明できない量であり,硝子体腔や眼球全体の可塑的変化の可能性を示唆している.Kinoshitaら,Huらによる二つの報告は矛盾しておらず,C.3.00Dを超えるやや近視が強い場合にはオルソKの近視抑制効果が十分なので併用療法をする必要性は低く,C.3.00D以下の軽度近視の場合はオルソCKのみでは近視抑制効果が不十分で,低濃度アトロピン点眼併用の効果も認められるため,併用したほうがよいと考えられる.実際の臨床では,軽度近視のほうがレンズ装用早期から裸眼視力が向上することが多いため,併用療法は不要かと思ってしまいがちになるが,眼軸長を定期的にトレースして管理することが必要である.上記の報告は,0.01%アトロピン点眼によるものであり,2025年に発売されたリジュセアミニ点眼液C0.025%ではさらなる効果が期待できる可能性もある.また,オルソCKとレッドライト療法(repeatedClow-levelCred-lightCthera-py:RLRL療法)との併用が有効な例も報告されており.21),今後さらなる検討が必要である.おわりに上述のとおり,近視抑制治療のなかでオルソCKだけでもまだまだ検討の必要があり,今後ますます進化していくものと考えられる.また,小児近視進行抑制は多くのエビデンスが蓄積されつつある一方で,「どの治療を,どの児に,どのように行うべきか」という臨床的治療方針は未だ経験則に依存しているのが現状である.今後,近視抑制のテーラーメイド医療を確立することが喫緊の課題であり,将来に近視が原因で緑内障を発症したり,ひいては失明するような子供達を少しでも減らすことに寄与していければと願っている.文献1)JessenG:OrthofocusCtechniques.CContactoC6:200-204,C1962C(35)あたらしい眼科Vol.C43,No.5,2026C507—

低濃度アトロピン点眼による近視進行抑制

2026年5月31日 日曜日

低濃度アトロピン点眼による近視進行抑制MyopiaControlwithLow-ConcentrationAtropineEyeDrops中村葉*I低濃度アトロピン点眼とはアトロピン硫酸塩点眼はこれまで調節麻痺薬や散瞳薬として検査や治療に用いられてきたが,近視進行抑制作用のあることが確認され,治療として応用されてきている.健康保険適用として一般的に使用される1%濃度のアトロピン点眼薬は高い効果を示す一方で,羞明や調節麻痺作用,投与中止後に近視進行が加速するリバウンド現象といった副作用が顕著である.そのため,世界各国で0.05%以下の低濃度アトロピン点眼薬の研究が行われてきた.わが国において,リジュセアミニ点眼液0.025%(参天製薬)が2024年12月厚生労働省の承認を受け,2025年4月から処方できるようになった.II低濃度アトロピンの近視抑制機序アトロピンを点眼すると近視進行が抑制されることは以前から知られていたが,近視進行抑制効果の機序については未だ不明な点が多い.アトロピンはムスカリン受容体阻害薬であり,M1~M5のすべてのムスカリン受容体を阻害する.以前から考えられていたM3受容体を介した調節麻痺作用によるものではなく,非調節性のメカニズムが存在することが明らかとなってきている.網膜のさまざまな細胞にさまざまなムスカリン受容体が発現しており1),網膜細胞のM4受容体抑制によりアマクリン細胞からのドーパミン分泌増加が生じて眼軸長伸長抑制作用をきたす機序やγ-アミノ酪酸受容体(gamma-aminobutyricacidreceptor:GABA)受容体,セロトニン経路との相互作用,またはM2受容体を介しての強膜線維芽細胞への直接的な作用などが考えられており,複数の経路が関連する可能性も示唆されている2).III低濃度アトロピンによる近視進行抑制に関する研究報告0.05%以下の低濃度アトロピン点眼を使用した研究は多く報告されている.Atropineforthetreatmentofmyopia(ATOM)studyというシンガポールの研究が2006年に報告され,1%アトロピン点眼では効果は大きいがリバウンド現象が大きいこと,その後の追試によって0.01%が有効性・安全性が高いと結論づけた3,4).その後各国で0.01%アトロピン点眼の追試が行われ,日本におけるATOM-Jにおいても有効性が確認された5).香港で行われた0.01,0.025,0.05%に濃度を振ってのランダム化比較試験low-concentrationatropineformyopiaprogression(LAMP)studyでは,濃度依存性に効果やリバウンド,副作用の出ることが明らかとなり6),この三つの濃度のなかでは0.05%が有効性・安全性の点から至適濃度であると結論づけている.ただし,濃度が高くなると羞明感や近見障害,およびリバウンド現象が出やすくなり,効果と副作用のバランスが大切である.*YoNakamura:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学,四条烏丸眼科小室クリニック〔別刷請求先〕中村葉:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学(1)(21)4930910-1810/26/\100/頁/JCOPYインフォームド・コンセントランダム化投薬期間Ⅱ点眼有効性の検証期間リバウンドの確認期間図1ORANGEstudyの試験デザイン~a1b101p<0.00010.8-0.50.6-10.4-1.50.2p<0.0001p<0.0001-20プラセボ群0.01%リジュセアプラセボ群0.01%リジュセア(n=99)アトロピンミニ点眼液(n=99)アトロピンミニ点眼液点眼群0.025%群点眼群0.025%群(n=99)(n=101)(n=99)(n=101)a2プラセボ群0.01%アトロピン点眼群リジュセアミニ点眼液0.025%群症例数9999101投与前の実測値.3.144±0.1132.3.014±0.1122.3.078±0.1043変化量.1.643±0.0602.1.303±0.0610.1.006±0.0606b2プラセボ群0.01%アトロピン点眼群リジュセアミニ点眼液0.025%群症例数9999101投与前の実測値24.584±0.083024.613±0.073324.598±0.0821変化量0.739±0.02420.631±0.02460.505±0.0243図2プラセボ群に対する0.01%アトロピン点眼およびリジュセアミニ0.025%点眼の有効性a1,2:投与24カ月後における調節麻痺下他覚的等価球面度数の変化量.リジュセアミニ点眼液0.025%はプラセボ群よりも変化量が小さかった(p<0.0001,MMRM分散分析).b1,2:投与24カ月後における眼軸長の変化量.リジュセアミニ点眼液0.025%はプラセボ群よりも変化量が小さかった(p<0.0001,MMRM分散分析).0.0-0.5-1.0-1.50(月)測定時点図32年点眼継続後,中止期間1年後の等価球面度数の変化リジュセアミニ点眼液C0.025%からプラセボ変更群のC3年目の変化量:C.0.750±0.0700D.プラセボ継続点眼群の3年目の変化量:C.0.396±0.0701D.3年目にリジュセアミニ点眼液C0.025%からプラセボに変更となった群では,3年間プラセボであった群よりもわずかに近視進行の速度が大きくなっており(),リバウンド現象を認めるが有効性は保たれている.表1副作用他覚的等価球面度数の変化量プラセボ群(n=99)0.01%アトロピン点眼群(n=99)リジュセアミニ点眼液C0.025%群(n=101)全体(n=299)羞明1(1C.0%)4(C4.0%)11(C10.9%)16(C5.4%)視力障害C0C0.3(.3C.0%).3(1C.0%)調節障害C01(C1.0%).1(.1C.0%).2(0C.7%)霧視C0C0.2(.2C.0%).2(0C.7%)眼瞼湿疹C0C0.1(.1C.0%).1(0C.3%)グレアC0C0.1(.1C.0%).1(0C.3%)瞳孔反射障害C0C0.1(.1C.0%).1(0C.3%)頭痛C01(C1.0%).2(.2C.0%).3(1C.0%)多汗症C01(C1.0%)C0.1(0C.3%)リジュセアミニ点眼液C0.025%群のうち中止に至った症例はC2例(2.0%)であり,理由は羞明C1例,グレアC1例であったC.C図4リジュセアミニ点眼液0.025%表2患者・保護者への説明事項近視の改善効果はない・視力矯正のための方法は別途必要である(眼鏡など)近視が進行する小児期に始めることが重要である治療開始後には治療効果・安全性の確認のため,定期的な検診が必要である・近視を急激に進行させる危険性があるため,自己判断で中止しない・近視進行が安定するC10代後半までの治療継続が推奨される・C100%近視進行を止めるものではなく,経過によっては他の治療法が選択肢として入ってくる可能性がある副作用として羞明,霧視が現れる可能性がある・慣れが生じる可能性が高いが,症状回復までは落下のおそれのある遊具(自転車など),屋外活動を避けること・必要に応じてサングラスや調光レンズ眼鏡を使用する表3近視症例の無治療時の調節麻痺下他覚的等価球面度数の表4近視症例の無治療時の眼軸長の平均年間伸長量平均年間進行量開始時年齢例数平均値±標準偏差5~7歳C11C.1.546±0.595D/年8~9歳C41C.1.005±0.504D/年10~1C1歳C31C.0.783±0.561D/年12~1C5歳C13C.0.635±0.574D/年開始時年齢例数平均値±標準偏差5~7歳C11C0.722±0.177mm/年8~9歳C41C0.466±0.178mm/年10~1C1歳C31C0.366±0.209mm/年12~1C5歳C13C0.283±0.142mm/年a(mm)26眼軸長2422678910111215年齢2510255075909598b眼軸長262422678910111215(歳)年齢2510255075909598図5日本人の眼軸長のパーセンタイル曲線a:男児.Cb:女児.京都府の公立小中一貫校における合計C981名の眼軸長測定結果のグラフ.今回の京都府の結果は全国調査結果の中でほぼ平均的な近視割合を示していた.男児は女児と比較してC1年生時より眼軸が長いが,女児のほうが年間伸長量は大きかった.男女とも近視眼のC2,3年生では年間眼軸伸長量はC0.31~0.37Cmmであり,その後学年があがるごとに平均C0.03Cmmずつ伸長量が減少していた.(文献C10より引用)図60.025%低濃度アトロピン点眼を開始した10歳男児の眼軸長の経過(OA-2000)10歳時不同視のため左眼眼軸長C23.73Cmmと比較して右眼眼軸C24.99Cmmと長い.0.025%アトロピン点眼C1年後までの経過をグラフに示す.両眼点眼しており,点線で示されている点眼をしない場合の経過と比較すると抑制されていることがわかる.初回時右眼屈折度.2.5Dであり,1年後も進行していない.–