●連載◯308監修=稗田牧神谷和孝308.ICL手術後の白内障病型変化神谷和孝昭和医科大学後房型有水晶体眼内レンズCICL挿入眼に発症する白内障病型は,従来は前.下白内障が一般的であったが,ホールCICLに移行してからは核白内障が増加していたことが国内多施設共同研究により明らかとなった.ICLは生体適合性が高い軟性素材であり,術後長期経過しても癒着は生じず,小切開創から容易に摘出できる.また,ICL摘出・水晶体再建術の予測性は高く,特別な計算式や補正も不要である.●はじめに後房型有水晶体眼内レンズCVisianICL(STAARSur-gical社)は,安全性や有効性が高いだけでなく術後視機能や満足度にも優れていることから,日本国内における屈折矯正手術の主流となっている.Shimizuら1)が開発したホールCICL(KS-AquaPORT)の導入により白内障の発症リスクは大幅に軽減しているが,わが国に導入されてから長期経過していることから,経年的な白内障を認めることも少なくない.通常,ICL挿入眼ではCICL摘出と同時に白内障手術を行うが,患者背景や白内障病型については不明な点が多い.本稿では,ICL摘出および水晶体再建術を要した患者の背景因子や白内障病型について,筆者を含むCICL研究会が実施した多施設共同研究で得られた知見を紹介し,さらにノンホールCICLとホールCICLの病型の違い,手術の実際についても概表1患者背景白内障手術時の年齢C49.8±6.8歳性別男性C46人:女性C37人ICLの種類ノンホールCICL群C50眼ホールCICL群C33眼裸眼視力(logMAR)C0.42±0.25矯正視力(logMAR)C0.09±0.30等価球面度数C.1.32±2.12D角膜内皮細胞密度C2,567±328cells/mm2平均角膜屈折力C44.05±2.03D眼軸長C28.49±1.97Cmm核硬化度G1:24眼,G2:40眼,G3:17眼,G4:2眼ICL挿入から白内障手術までの期間C7.7±5.2年C説する.C●患者背景患者背景を表1に示す.対象はC72例C83眼で,年齢はC49.8±6.8歳,ICL挿入から白内障手術までの期間はC7.7±5.2年,ノンホールCICL群がC50眼(60%),ホールICL群がC33眼(40%)であった.他の眼疾患として正常眼圧緑内障(6眼),黄斑前膜(2眼),網膜.離術後(3眼),単純糖尿病網膜症(1眼)が認められた2).白内障病型は前.下白内障が最多であり,ついで核白内障,皮質白内障の順であった(図1).C●ホールの有無による白内障病型の違いノンホールCICLおよびホールCICL群における白内障病型を図2に示す.ノンホールCICL群では前.下白内眼数302520151050NUCCORASCPSCASC+PSCNUC+COR図1ICL摘出および水晶体再建術を要した症例の白内障病型前.下白内障が最多であり,ついで核白内障,皮質白内障であった.NUC:核白内障,COR:皮質白内障,ASC:前.下白内障,PSC:後.下白内障,Non-hokeICLgroup:ノンホールCICL群,HoleICLgroup:ホールCICL群(文献C2より改変引用)(75)あたらしい眼科Vol.43,No.1,2026750910-1810/26/\100/頁/JCOPY眼数302520151050NUCCORASCPSCASC+PSCNUC+COR図2ホールの有無による白内障病型の違いノンホールCICL群では前.下白内障(ASC),ホールCICL群では核白内障(NUC)がもっとも頻度が高かった.NUC:核白内障,COR:皮質白内障,ASC:前.下白内障,PSC:後.下白内障,Non-holeICLgroup:ノンホールCICL群,HoleICLgroup:ホールCICL群.(文献C2より改変引用)障が最多であったが,ホールCICL群では核白内障が最多となっており,前.下白内障の発症が軽減していた.従来のCICLでは外傷性白内障や房水循環不全による前.下白内障がもっとも頻度が高かったが,ICL手術に習熟した術者が増加し,ホールCICL導入による代謝性白内障が大幅に軽減したことで,前.下白内障の発症が減少し,もともと対象となる強度近視による経時変化となる核性白内障が増加したのではないかと考えられる.前.下白内障の機序としては,水晶体上皮細胞の間葉系細胞への化生,線維芽細胞様細胞の増殖,コラーゲン線維の増殖などが示唆されている3).C●手術の実際ICLはコラマーという生体適合性に優れた軟性素材で構成されており,術後長期経過しても眼内における癒着はほぼ生じず,ICL摘出を選択しても約C3Cmmの角膜切開創から容易に摘出可能である4).実際の手術では,サイドポートから粘弾性物質をCICL前後に注入して角膜内皮細胞や水晶体を保護し,マニピュレーターを用いて手前のハプティクスの一端を虹彩面上に脱臼させ,眼内レンズ鑷子などを用いてできるだけレンズを幅広く把持したのち,ゆっくり引き抜く(図3).その後は耳側角膜切開による通常の白内障手術と同様となるが,やや創口が大きく前房が安定しない場合は先に軽くハイドレーションを行っておくとよい.ICL挿入眼に対する眼内レンズ度数計算に関しては,C76あたらしい眼科Vol.43,No.1,2026図3ICLの摘出方法ICLの素材は軟性のコラマーであり,約C3Cmmの創口から無理なくレンズを摘出可能である.通常の眼軸長測定やケラト値測定が可能であり,レーシック後と異なり,特別なCIOL度数計算式や補正は不要である.今回の多施設共同研究の結果でも,目標屈折度数に対して±0.5D,1.0D以内に入る割合がそれぞれ76%,94%と良好であった.ただし,ICL前面までを前房深度として誤計測することがあり,近年普及している前房深度をパラメータとして用いる計算式では,屈折誤差への影響は少ないものの注意したい5).文献1)ShimizuK,KamiyaK,IgarashiAetal:Earlyclinicalout-comesofposteriorchamberphakicintraocularlenswithaCentralHole(holeICL)implantationformoderatetohighmyopia.BrJOphthalmolC96:409-412,C20122)KamiyaK,ShimizuK,KitazawaYetal;JapanICLStudyGroup:Amulticenterstudyonclinicaloutcomesofsimul-taneousimplantablecollamerlensremovalandphacoemul-si.cationwithintraocularlensimplantationineyesDevel-opingcataract.OphthalmolTher14:337-350,C20253)KhalifaCYM,CMoshirfarCM,CMi.inCMDCetal:CataractCdevelopmentassociatedwithcollagencopolymerposteriorchamberCphakicCintraocularlenses:clinicopathologicalCcorrelation.JCataractRefractSurgC36:1768-1774,C20104)神谷和孝:手術のコツとトラブルシューティング.屈折矯正手術編,後房型有水晶体眼内レンズ.眼科C66:1035-1041,C20245)OuchiM:EvaluationCofCimpactCofCposteriorCphakicCIOLCimplantationonbiometryande.ectivenessofconcomitantuseCofCanteriorCsegmentCOCTConCIOLCpowerCcalculationCforcataractsurgery.JCataractRefractSurgC48:657-662,C2022(76)