●連載◯300監修=福地健郎中野匡300.緑内障におけるOCTAの経時的変化冨田遼名古屋大学医学部附属病院眼科緑内障診療において,OCTAには,視野検査やCOCTにはない新しい観点からの評価や,それらの欠点を補完する役割が期待されるが,現状では課題も多い.本稿では緑内障進行評価におけるエビデンスと課題を整理する.●はじめに非侵襲的に網膜や脈絡膜の血管像を描出できる光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyangiogra-phy:OCTA)が登場し,緑内障との関連について多くの報告がなされている.緑内障の進行評価は視野検査や光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)を用いるのが一般的だが,OCTAはそれらの欠点を補い,診療の質を向上させる役割が期待されている.しかし,糖尿病網膜症や加齢黄斑変性の診療ではCOCTAが広く活用されている一方で,緑内障における普及は限定的である.本稿では,おもに開放隅角緑内障の際の進行評価におけるCOCTAのエビデンスや課題を紹介する.C●緑内障におけるOCTAパラメータOCTAを用いたパラメータにはさまざまなものがあるが,本稿では誌面の都合上,進行評価に関して比較的エビデンスが多い視神経乳頭周囲や黄斑の毛細血管密度について扱う.OCTにより得られる視神経乳頭周囲の網膜神経線維層(retinalCnerveC.berlayer:RNFL)や,黄斑の神経節細胞層(ganglionCcelllayer:GCL),神経節細胞.内網状層(ganglionCcell-innerplexiformClayer:GCIPL)などの網膜内層厚は,とくに前視野緑内障や初期緑内障の進行評価において有用性が多く示され,すでに一般的に普及している.しかし,これらのパラメータでは緑内障が中期以降になると,さらなる菲薄化を検出しづらくなる「フロア効果」の影響を受け,進行評価が困難となる.一方,OCTAで得られる毛細血管密度はフロア効果の影響を受けづらく,黄斑の毛細血管密度ではフロアが明確に検出されなかったとする報告1)があるなど,中期以降のフォローに有用である可能性が示唆2)されている.実際に縦断データを用いた報告では,乳頭周囲における毛細血管密度の変化率は緑内障の病期を問わず視野進行眼で非進行眼より速かったのに対し,RNFL厚の変化(75)C0910-1810/25/\100/頁/JCOPY率は中等度から後期の緑内障では視野の進行眼と非進行眼との間に差を示さなかったという報告3)や,後期緑内障における中心視野の増悪は,黄斑のCGCIPLより血管密度と関連したとする報告4)があり,OCTパラメータがフロアに達した後のフォローの手段としてCOCTAが有効である可能性が示唆されている.このフロア効果に対するCOCTとCOCTAの差の理由として,OCTAで検出される血管密度の変化が厚みの変化に続く二次的な変化である可能性を示唆する報告がある.筆者らは,正常眼と開放隅角緑内障眼を対象とした縦断データを用いて,黄斑における毛細血管密度の減少はCOCTにおけるCGCL厚の減少後に生じる二次的変化である可能性を指摘した5).一方,その逆を示唆する報告6)もあるが,対象となる眼における緑内障の重症度によって,初期では厚みの変化が,やや進行した段階では毛細血管密度の変化が,それぞれ強調されやすいことがこれらの報告間の差に影響している可能性がある.なお,筆者らの報告はあくまでCOCTAで検出される血流の有り無しの判定により描出される「毛細血管密度」に関するものであり,レーザースペックルフローグラフィなどで観察される血流の動的要素とは異なるため,「血流変化は二次的変化である」とするものではないことを付記しておきたい.しかし,そもそも厚みの変化と毛細血管密度の変化が単純な前後関係にあるとは限らない.毛細血管密度の低下は,構造的損失とは無関係に視野障害の重症度と有意に関連することを示した報告7)や,緑内障における網膜の血流低下と視野欠損は密接に関連するが構造的欠損とはほとんど独立しているとする報告8)や,RNFL厚と毛細血管密度の進行が一致しない例が多い9)といった報告もあり,毛細血管密度と網膜厚の変化は,緑内障の進行評価において相補的な情報を提供している可能性がある.C●課題と展望OCTAパラメータが一般臨床に活用されるためにはあたらしい眼科Vol.42,No.6,2025717図1正常眼のOCTA(ZEISSPlexElite9000)による視神経乳頭周囲の毛細血管の描出課題も多い.毛細血管密度の長期的な変動はCOCTよりも大きいことが報告されており10),経時変化を評価する際には注意が必要である.さらに,現状ではCOCTAに正常眼データベースが搭載されていないことや,測定範囲やノイズの処理法などが機種間で統一されていないことも問題となる.さらに糖尿病患者では網膜症がなくても毛細血管密度が減少することや,Alzheimer病も毛細血管密度に影響する可能性があるなど,全身疾患により影響を受ける可能性がある.OCTAには本稿で紹介した以外にも強度近視眼などにおける有用性も示されているほか,視神経乳頭周囲の深部血流や前眼部の血流を描出可能とするなど,緑内障診療において,既存の検査の弱点をカバーする役割や新たな視点からの評価に関する報告が多数なされている.今後の技術の進歩や知見の蓄積により,診療の質を向上させるツールとなることが期待される.文献1)MoghimiCS,CBowdCC,CZangwillCLMCetal:MeasurementC.oorsanddynamicrangesofOCTandOCTangiographyinglaucoma.COphthalmologyC126:980-988,C20192)YamaguchiCK,CTomitaCR,CKoyanagiCYCetal:AbilitiesCofCcircumpapillaryCretinalCnerveC.berClayerCthicknessCandCvascularCdensityCtoCdiscriminateCstagesCinCprimaryCopen-angleglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmolC262:C1221-1229,C20243)ShinCJW,CSongCMK,CKookMS:AssociationCbetweenCpro-gressiveretinalcapillarydensitylossandvisual.eldpro-gressionCinCopen-angleCglaucomaCpatientsCaccordingCtoCdiseasestage.AmJOphthalmolC226:137-147,C2021C718あたらしい眼科Vol.42,No.6,2025図2緑内障眼のOCTA(ZEISSPlexElite9000)による視神経乳頭周囲と黄斑の毛細血管の描出と,OCT(ZEISSCIRRUSHD-OCT5000)によるRNFLとGCIPL厚のdeviationmap網膜内層の菲薄化に対応した毛細血管密度の減少がみられる.4)LeeA,KimKE,SongWKetal:Progressivemacularves-seldensitylossandvisual.eldprogressioninopen-angleglaucomaCeyesCwithCcentralCvisualC.eldCdamage.COphthal-molGlaucoma7:16-29,C20245)TomitaCR,CSmithCCA,CDyachokCOMCetal:SequenceCandCdetectabilityCofCchangesCinCmacularCganglionCcellClayerCthicknessCandCperfusionCdensityCinCearlyCglaucoma.CInvestCOphthalmolVisSciC65:8,C20246)ShojiT,ZangwillLM,AkagiTetal:ProgressivemaculavesselCdensityClossCinCprimaryCopen-angleglaucoma:AClongitudinalstudy.AmJOphthalmolC182:107-117,C20177)YarmohammadiCA,CZangwillCLM,CDiniz-FilhoCACetal:CRelationshipCbetweenCopticalCcoherenceCtomographyCangi-ographyvesseldensityandseverityofvisual.eldlossinglaucoma.Ophthalmology123:2498-2508,C20168)HwangCJC,CKonduruCR,CZhangCXCetal:RelationshipCamongCvisualC.eld,CbloodC.ow,CandCneuralCstructureCmea-surementsCinCglaucoma.CInvestCOphthalmolCVisCSciC53:C3020-3026,C20129)WuJH,MoghimiS,NishidaTetal:Detectionandagree-mentofevent-basedOCTandOCTAanalysisforglauco-maprogression.CEye(Lond)C38:973-979,C202410)NishidaT,MoghimiS,HouHetal:Long-termreproduc-ibilityCofCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCinChealthyCandCstableCglaucomatousCeyes.CBrCJCOphthalmolC107:657-662,C2023(76)