写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦397.輪部デルモイドに対する表層角膜移植術福岡秀記京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図1輪部デルモイドに対する表層角膜移植後眼(術後約2年)図3図1のフルオレセイン染色画像上皮欠損などはなく経過良好である.図4輪部デルモイド術前のスリット写真角膜輪部耳下側の黄白色の隆起した腫瘍表面に毛髪を認める.(69)あたらしい眼科Vol.34,No.6,20178270910-1810/17/\100/頁/JCOPY輪輪部デルモイドは,角膜と強膜にまたがって発生する充実性の隆起病変である.色調は黄白色で角膜輪部耳下側に好発する.先天性の腫瘍であり,乳幼児期から存在する.組織学的には分離腫とされ,しばしば外胚葉由来である角化上皮,脂腺,毛髪などの組織と,中胚葉由来の線維性組織,血管組織,脂肪組織などからなる1).輪部デルモイドの解剖学的なグレードは大きく3分類される.直径5mm未満のものをグレード1,角膜の大半を覆うがDescemet膜までは含んでいないものをグレード2,角膜全体を含み眼表面上皮から虹彩色素上皮まで影響を及ぼしているものをグレード3としている.大半の症例はグレード1に相当する2).腫瘍の隆起や異所性の毛髪による涙液の異常,dellenによる異物感を症状とすることがある3).輪部デルモイドは,全身疾患を伴うことがしばしばある.副耳・耳瘻孔を伴い,常染色体優性の遺伝形式を示すものをGoldenharsyndromeとよぶ.他の全身疾患としては,第一,第二鰓弓に由来する脊椎異常,歯牙欠損,下顎骨欠損や眼瞼欠損を伴うこともあるため,輪部デルモイドを診断した場合,前述の合併症を念頭に置いた全身検査が必要である.輪部デルモイドを診断する際に注意すべきことは,弱視の有無である.腫瘍は出生時より存在していると考えられることや,腫瘍の大きさが大きいほど角膜乱視が大きく,等価球面度数が僚眼と比較し遠視傾向が強いとの報告があり,早期の屈折異常弱視や不同視弱視の治療が必要である4).具体的には,乳幼児期からの1日数時間程度の健眼遮閉,可能であれば屈折矯正のための眼鏡処方を行い,弱視の程度に応じて健眼遮蔽時間を変更する.外科的治療は,表層角膜移植術が第一選択である.単純切除のみでは,術後に偽翼状片が発生するためである.手術は腫瘍全体をカバーし,かつ瞳孔領にかからないサイズの角膜移植用トレパンを使用し,サイド面に切開を入れた後,サージカルスリットで角膜の厚みと腫瘍の深さを見ながらゴルフメスで表層切除を行い,欠損部分に保存角膜を移植する.外科的治療には角膜乱視軽減効果を期待できないこと5),乳幼児では周術期の形態覚遮断弱視の危険性があることなどにより手術を急ぐ必要はなく,おもに整容的な目的で小学校入学前に手術に踏み切ることが多い.整容面を気にしない場合には,10代後半以降に局所麻酔で手術を行ってもよい.海外からは,保存角膜を用いる替わりに多重の羊膜移植を行う報告6),自己結膜輪部(角膜上皮ステムセル)移植7),偽翼状片予防にマイトマイシンCを術中使用する報告8),角膜部位へ侵入した腫瘍部位への入墨術7)などの報告がある.文献1)MansourAM,BarberJC,ReineckeRDetal:Ocularcho-ristomas.SurvOphthalmol33:339-358,19892)MannI:Developmentalabnormalitiesoftheeye.2nded,Lippincott,Philadelphia,p357-364,19573)RobbRM:Astigmaticrefractiveerrorsassociatedwithlimbaldermoids.JPediatrOphthalmolStrabismus33:241-243,19964)羽藤晋,横井匡,東範行ほか:角膜輪部デルモイドの屈折異常と弱視に関する検討.あたらしい眼科27:1149-1152,20105)外園千恵,井田直子,西田幸二ほか:冷凍保存角膜を用いた輪部デルモイドと弱視の治療.臨眼51:179-182,19976)PirouzianA,HolzH,MerrillKetal:Surgicalmanage-mentofpediatriclimbaldermoidswithsuturelessamnioticmembranetransplantationandaugmentation.JPediatrOphthalmolStrabismus49:114-119,20127)JeongJ,SongYJ,JungSIetal:Newsurgicalapproachforlimbaldermoidsinchildren:simpleexcision,cornealtattooing,andsuturelesslimboconjunctivalautograft.Cor-nea34:720-723,20158)LangSJ,BohringerD,ReinhardT:Surgicalmanage-mentofcorneallimbaldermoids:retrospectivestudyofdi.erenttechniquesanduseofMitomycinC.Eye(Lond)28:857-862,2014