●連載◯162監修=安川力五味文142パキコロイド所見に基づく抗VEGF治療鎌尾浩行木村修平川崎医科大学眼科学C1教室レジメの選択現在,新生血管型加齢黄斑変性に対する抗CVEGF治療は,長期的な視力維持の観点から薬剤や治療レジメが選択されている.そこで本稿では,筆者が考えるパキコロイド所見に基づく治療レジメ選択を紹介する.はじめに新生血管型加齢黄斑変性(neovascularCage-relatedCmaculardegeneration:nAMD)は画像解析の進歩により病態理解が大きく進んだ.とくに黄斑新生血管(mac-ularneovascularization:MNV)の発症は,網膜色素上皮細胞(retinalpigmentCepithelium:RPE)-Bruch膜の機能低下に伴うドルーゼンの蓄積が基盤となるとされていたが,2013年にパキコロイドの概念が提唱されたことで,脈絡膜循環障害もCMNV発症の一因と考えられるようになった.このためCnAMDの病型はドルーゼンタイプとパキコロイドタイプに分類され,両者の間で遺伝的背景や抗CVEGF治療への反応性に違いがあることが報告されている.パキドルーゼンドルーゼンはCRPEとCBruch膜の間に沈着する細胞外沈着物で,とくに直径C125Cμm以上の軟性ドルーゼンはnAMDや地図状萎縮の前駆病変として臨床的に重要である.この軟性ドルーゼンには補体関連蛋白,アミロイドCbなど多様な成分が含まれ,これらが慢性炎症を惹起しCMNVの形成に関与すると考えられている.一方,パキコロイドは脈絡膜血流のうっ滞によるCHaller層の脈絡膜血管拡張,Sattler層と脈絡毛細血管板の菲薄化を伴う脈絡膜肥厚,脈絡膜血管透過性亢進を特徴とする.パキコロイドタイプのCMNVは脈絡毛細血管板の菲薄によるCRPEの虚血性障害を介して発症すると考えられているが,軟性ドルーゼンのような前駆病変の存在は不明であった.この点に関して,Kangらは典型CAMD患者と比較し,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalCchoroidalvasculopathy:PCV)患者においては軟性ドルーゼンとは外観が異なる,境界明瞭で直径C125Cμm以上のドルーゼン様沈着物の頻度が高いことを報告した.その後,Spaideがこのドルーゼン様沈着物を「パキドルーゼン」と命名し,脈絡膜肥厚と関連する新たなドルーゼンとして位置づけ,直径C125Cμm以上の大きさ,境界明瞭の黄白色病変,孤立性または散在性に後極に分布(網膜血管アーケード周辺に分布)をパキドルーゼンの特徴として報告した.しかし,パキドルーゼンが軟性ドルーゼンと同様にCMNV発症の危険因子であるか否かは明確でない.Teoらは片眼性CnAMD患者を対象に僚眼のCMNV発症について検討し,軟性ドルーゼンでは100%がCMNVと共局在したのに対し,パキドルーゼンではC29%にとどまったと報告しており,パキドルーゼンはCMNV発症に直接的に関与しない可能性がある.パキドルーゼンと抗VEGF治療パキドルーゼンを有するCnAMD症例は,他のドルーゼン群と比較して抗CVEGF治療に対する反応が良好との報告がある.Fukudaらは片眼性CPCV患者の僚眼をパキドルーゼン,軟性ドルーゼン,subretinaldrusenoiddeposit(SDD.以前のCpseudodrusen),ドルーゼンなしに分類し,アフリベルセプト硝子体内注射(intravit-reala.ibercept:IVA)の治療成績を比較した.その結果,導入期後の再発率はパキドルーゼン群で有意に低かった.また,筆者らの片眼性CnAMD患者を対象にした研究でも,パキドルーゼン群はCIVA3回投与後の再発率が有意に低かった1).以前より,PCVとCtypicalAMD,またはパキコロイド関連CMNVと非パキコロイド関連MNVを比較した研究で,パキコロイドタイプであるPCVやパキコロイド関連CMNVで抗CVEGF治療の有効性が高いことが示されている.このことからパキドルーゼンを有する症例において治療反応性が高いことは妥当である.一方でパキコロイドの概念が登場した当初,ドルーゼンなしはパキコロイドの特徴的な臨床所見の一つとされ,軟性ドルーゼンとCSDDはドルーゼンタイプ,パキドルーゼンとドルーゼンなしはパキコロイドタイプと考えられていた.しかし,前述のC2研究においては,パキドルーゼン群とドルーゼンなし群の間でCIVAの有効性に有意差があり,ドルーゼンなし群がパキコロイドタイプと一致しない可能性がある.(65)あたらしい眼科Vol.42,No.12,202515430910-1810/25/\100/頁/JCOPY軟性トルーゼンFAIA図1軟性ドルーゼンとパキドルーゼンの眼底写真と蛍光眼底造影インドシアニングリーン蛍光造影(IA)で軟パギドルーゼンFAIA性ドルーゼンは低蛍光(),パキドルーゼンは過蛍光()を示す.FA:フルオレセイン蛍光造影.表1ドルーゼンとIA所見による新たなnAMD分類の脈絡膜厚と抗VEGF治療の再発率,および推奨する抗VEGF治療軟性ドルーゼンCSDDドルーゼンなしパキドルーゼン従来のCnAMD分類非パキコロイドタイプパキコロイドタイプ筆者らの考えるCnAMD分類非パキコロイドタイプパキコロイドタイプCIA点状過蛍光なし点状過蛍光あり脈絡膜厚C224.5CμmC151.6CμmC213.8CμmC267.2CμmC273.7Cμm再発率/年78.1%年87.5%年86.2%年65.5%年46.4%年推奨する抗CVEGF治療CTAECmodi.edTAEorPRNSDD:subretinaldrusenoiddeposit,IA:インドシアニングリーン蛍光造影,nAMD:新生血管型加齢黄斑変性,TAE:treatandextend,PRN:prorenata「再発率/年」は,IVAをC3回投与後に休薬し,導入期終了からC1年以内にC.uidの再発を認めた割合を示す.IAの点状過蛍光あり群は,再発率が低く,脈絡膜肥厚などパキコロイドタイプに特徴的な臨床所見を示した.(文献C1と文献C2の結果を再構成)パキドルーゼンとIAの点状過蛍光軟性ドルーゼンとパキドルーゼンの鑑別方法の一つにインドシアニングリーン蛍光造影(indocyanineCgreenangiography:IA)所見があり,軟性ドルーゼンは低蛍光を示すのに対し,パキドルーゼンは(点状)過蛍光を呈する(図1).このCIAの点状過蛍光は最初の報告で,中心性漿液性脈絡網膜症において高頻度に認め,脈絡膜血管透過性亢進領域に存在することが示された.パキドルーゼンはC125Cμm以上の大きさを基準に定義されることが多く,これより小さい点状過蛍光はドルーゼンなし群に分類されていた.そこで筆者らはドルーゼンなし群をこの点状過蛍光の有無で分類し,IVAの有効性を検討したところ,点状過蛍光あり群は有意に脈絡膜が厚く,IVAの有効性が高いことが示され,同じCIAで過蛍光を示すパキドルーゼン群と類似した特徴を示すことを報告した2).IAの点状過蛍光を有する症例で抗CVEGF治療の反応が良好である理由は明らかでないが,筆者らC1544あたらしい眼科Vol.42,No.12,2025はC.uidの由来の違いが起因すると考えている.点状過蛍光がある症例におけるC.uidは,MNV由来の滲出液に加えて,脈絡膜血管透過性亢進(点状過蛍光)由来の漏出液に起因する可能性がある.このためC.uidはRPE-Bruch膜の障害が進行する前に出現し,結果として再発が少なくなると推察される.以上より筆者らはIAの点状過蛍光を有するCnAMD症例をパキコロイドタイプと分類し,抗CVEGF治療の方法はCprorenata(PRN)法もしくはCmodi.edtreatandextend(modi.edTAE)法を用いている(表1).文献1)KamaoCH,CMitsuiCE,CDateCYCetal:ClinicalCcharacteristicsCofCunilateralCmacularCneovascularizationCpatientsCwithCpachydruseninthefelloweye.JClinMedC13:3757,C20242)KamaoH,GotoK,DateYetal:ClinicalcharacteristicsofpunctateChyper.uorescenceCspotsCinCtheCfellowCeyeCofCpatientsCwithCunilateralCmacularCneovascularizationCwithCnodrusen.JClinMedC13:5394,C2024(66)