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低加入度数分節型眼内レンズの囊内固定方向の違いによる 立体視機能の比較

2023年11月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科40(11):1491.1495,2023c低加入度数分節型眼内レンズの.内固定方向の違いによる立体視機能の比較福田莉香子蕪龍大岩崎留己松本栞音古島京佳竹下哲二上天草市立上天草総合病院眼科CComparisonofStereopsisbyDi.erenceinIntracapsularFixationDirectionafterBi-aspheric,Segmented,RotationallyAsymmetricIntraocularLensImplantationRikakoFukuda,RyotaKabura,RumiIwasaki,KanonMatsumoto,KyokaFurushimaandTetsujiTakeshitaCDepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospitalC低加入度数分節型眼内レンズであるレンティスコンフォートおよび同トーリック(以下,LC,LCT)の.内固定方向の違いによる立体視機能について比較検討した.両眼ともCLCまたはCLCTを挿入したC49例C98眼を術翌日に散瞳し,前眼部解析装置OPDScanIIIの徹照像でトーリックレンズ軸が60.120°だった28例56眼を縦群,30°以下および150°以上だった21例42眼を横群とした.StereoCFlyTest(以下,Fly)で立体視機能を測定し,Flyの視差は対数変換(log秒)して,WelchC’sCttestを用いたC2群間比較を行った.5Cm矯正片眼視力は縦群と横群で有意差はなかった.遠見矯正下C40Ccm片眼視力も両群で有意差はなかった.遠見矯正下C40Ccm両眼視力は縦群が有意に良好だった(p<0.01).Flyは縦群がC1.94C±0.33(87秒),横群がC2.16C±0.45(145秒)で縦群は横群よりも良好だった(p<0.05).LC・LCTは両眼に挿入した場合,横方向に固定した場合よりも縦方向に固定した場合のほうが立体視が良好だった.CPurpose:TocomparethepostoperativestereoscopicfunctionofLentisComfortandLentisComfortToric(LC/LCT)intraocularlens(IOL)implantedCeyesCwithCdi.erentCintracapsularC.xationCdirections.CSubjectsandMeth-ods:ThisCstudyCinvolvedC98CeyesCofC49patients(verticalgroup[VG]:28patients;horizontalgroup[HG]:21patients)whounderwentcataractsurgeryandIOLimplantationfrom2018to2022.Postimplantation,stereopsiswasCmeasuredCusingCtheCStereoCFlyTest(Fly)C.CResults:ThereCwasCnoCsigni.cantCdi.erenceCinCmonocularCvisualCacuityat40CcmunderdistancecorrectionbetweentheVGandtheHG,andbinocularvisualacuityat40Ccmunderdistancecorrectionwasnotsigni.cant;Fly:1.94C±0.33(logseconds)fortheVGand2.16±0.45fortheHG(p<0.05)C.CConclusion:ThestereopsisoftheimplantedLC/LCTwasbetterintheVGthanintheHG,anddi.erencesinnearstereopsiswereobserveddependingonthedirectionofintracameral.xationofthelens.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(11):1491.1495,C2023〕Keywords:レンティスコンフォート,立体視,低加入度数分節型眼内レンズ.LentisComfort,stereopsis,bi-aspheric-segmented-rotationallyasymmetricintraocularlens.Cはじめに近年,明視域を拡張させる眼内レンズ(intraocularlens:IOL)が次々と開発され,白内障手術は屈折矯正および老視矯正としての意味合いが強くなった1).2019年発売のレンティスコンフォート(モデル名:LS-313MF15,参天製薬,以下CLC)は光学部上部が遠用部,下方に+1.50ジオプトリー(D)を加入した低加入度数分節型CIOLである.2020年には乱視矯正効果も併せもつレンティスコンフォートトーリック(モデル名:LS-313MF15T1-3,以下CLCT)が発売となり,幅広い症例に適用できるようになった.LC・LCTはループをもたないプレートハプティクス型IOLで,国内で保険診療適用のCIOLには類似した形状と光学特性をもつものはない2).トーリックモデルを含む単焦点IOLや回折型多焦点CIOLなど,同心円形状のレンズの場合は,.内固定の方向による収束点の位置に変化はない.LCTは弱主経線(軸マーク)が縦方向にあり,角膜倒乱視眼〔別刷請求先〕福田莉香子:〒866-0293熊本県上天草市龍ヶ岳町高戸C1419-19上天草市立上天草総合病院眼科Reprintrequests:RikakoFukuda,DepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospital,1419-19RyugatakemachiTakado,Kamiamakusa,Kumamoto866-0293,JAPANCノントーリックor直乱視右眼遠用部左眼加入度数部倒乱視右眼【加入度数部同側パターン】加入度数部【加入度数部両鼻側パターン】加入度数部左眼図1LCおよびLCTの.内固定方向のイメージノントーリックモデルまたは角膜直乱視眼の場合,加入度数部を下方にした縦方向に.内固定するのが一般的だが,角膜倒乱視眼ではIOLの軸マークが縦方向にあるため水平方向に倒した状態に固定する.その際,加入度数部の位置が左右同側のパターンと両耳側,または両鼻側のパターンが生じる.では水平に固定して乱視矯正を行う(図1)ため,加入度数部の位置が患者ごとに異なる.過去の報告で固定方向の違いによる視力へ影響はないとしたが3),視力が良好であるにもかかわらず日常視の違和感から不満を訴える患者も一定数存在する4).両眼CIOL挿入の際,立体視を含む両眼視機能の改善は患者満足度の向上につながる5).多焦点CIOLは単焦点CIOLよりも立体視は良好であり,満足度も高い6).一方で両眼多焦点CIOLであっても近用焦点の異なるCIOLインプラントの場合は立体視が低下するとの報告があり,両眼とも同じ光学設計であることが術後立体視を改善する要因となる7).しかし,LCTの場合,両眼の近用焦点が同程度であっても左右眼の.内固定方向の違いによって網膜像の遠用部と加入度数部の収束点の位置に違いが生じることになり,それが立体視機能にどのように影響するか疑問のあるところである.LCの.内固定方向の違いによる術後立体視機能の影響について比較検討した.CI対象および方法対象はC2018年C12月.2022年C5月に上天草総合病院で白内障手術を行い,両眼ともCLC・LCTを挿入したC49例C98眼(男性C15例,女性C34例,72.4C±4.7歳:平均C±標準偏差,以下同様).術翌日散瞳し,前眼部解析装置COPDCScanIII(ニデック)の徹照画像でIOLの固定方向がC60.120°だったC28例56眼を縦群,30°以下およびC150°以上だったC21例42眼を横群とし,後ろ向きに情報収集した.術後C3カ月以上経過観察し,視力検査(5Cmの片眼裸眼および片眼矯正,70Ccm,50Ccmの片眼遠方矯正下,40Ccmの片眼遠方矯正下および両眼遠方矯正下),自覚的屈折検査(乱視矯正は乱視表を用いた雲霧法),他覚的屈折検査(TONOREFII:ニデック),術後満足度のアンケートを行った.5Cm視力は単点灯式CLandolt環字づまり視標(イナミ)を用い,70Ccm,50Ccm,40Ccm視力はCCランドルト近距離・中距離視力表(テイエムアイ)をハロゲン球のペンライトMini-cCliplampe(HEINE社)で照射し測定した.術後の近見眼位検査で顕性の眼位ずれがないことを確認した後,StereoCFlyTest(STEREOOPTICAL社:以下,Fly)を用いて近見立体視の測定を行った.検査距離は40Ccmを保ち,circle視標のみを使用し,遠方矯正下にて測定した.表1対象者背景および群別比較(術後)縦群横群変数(28例56眼)(21例42眼)p値年齢(歳)C73.4±3.9C71.4±5.2C0.94性別男性C8/女性C20男性C7/女性C14C1.005Cm裸眼視力(logMAR)C.0.06±0.04C.0.04±0.09C0.135Cm矯正視力(logMAR)C.0.07±0.02C.0.06±0.04C0.3270Ccm視力C※(logMAR)C0.02±0.12C0.06±0.13C0.1250Ccm視力C※(logMAR)C0.10±0.15C0.18±0.16C0.0640Ccm視力C※(logMAR)C0.18±0.17C0.21±0.15C0.44両眼C40Ccm視力C※(logMAR)C0.05±0.09C0.18±0.14<0.01自覚等価球面値(D)C.0.04±0.31C.0.11±0.33C0.34他覚等価球面値(D)C.0.76±1.09C.0.73±0.45C0.87C※70cm,50cm,40cm,両眼C40Ccm視力は遠方矯正下.平均値±標準偏差性別以外CWelch’st検定性別のみCFisher’s正確検定術後アンケートは白内障患者の生活の質の評価尺度であるCCatquest-9SF8)(英語版)を用いて,日常生活に関する項目である「新聞・読書」「値札・ラベル」「裁縫等」の満足度について評価した.回答は「満足」「やや不満」「そこそこ不満」「大変不満」のC4件法とした.満足度の高い順に最大C4点からC1点ずつ減じたスコアの平均値でした.視力は小数視力表で測定し,統計解析の際は小数視力値をlogMARに変換した.自覚屈折値および他覚屈折値は球面度数から円柱度数(絶対値)のC2分のC1を引いた等価球面値(sphericalequivalent:SE)で解析した.近見立体視の視差は対数(log秒)に変換して統計解析を行った.統計解析はCRおよびCRコマンダーの機能を拡張した統計ソフトウェアのCEZRVer1.54を使用した9).Shapiro-Wilk検定にて正規性を確認し,Welch’st検定を用いて評価した.両眼視力値と立体視の相関分析にはCPearsonの関率相関係数を用いた.統計学的有意水準は5%未満(両側検定)とした.本研究は,上天草総合病院の倫理審査委員会の承認(承認番号C2021-001,2021/5/14)を得たのち,ヘルシンキ宣言10)に準拠して実施した.CII結果対象者の群別基本属性は縦群C73.4C±3.9歳(男性8名,女性C20名),横群C71.4C±5.2歳(男性C7名,女性C14名)で年齢(p=0.94)および性別(p=1.00)に有意差はなかった.5m片眼視力は縦群,横群の順に裸眼がC.0.06±0.04,C.0.04±0.09(p=0.13),矯正がC.0.07±0.02,C.0.06±0.04(p=0.32)でいずれも有意差はなかった.遠方矯正下のC70Ccm片眼視力はC0.02C±0.12,0.06C±0.13で有意差はなかった(p=0.12).同じく遠方矯正下のC50cm片眼視力はC0.10C±0.15,0.18C±0.16で有意差はなかった(p=0.06).さらに遠方矯正下の40Ccm片眼視力はC0.18C±0.17,0.21C±0.15でこれも有意差は(log秒)p<0.05*2.752.502.252.001.751.50図2術後立体視機能の群別比較グラフの縦軸はCFly(秒)を対数換算した(log秒).立体視は数値が低いほど良好となる.縦群はC1.94C±0.33(87.1秒),横群はC2.16±0.45(144.5秒)となり,縦群のほうが有意に良好な成績となった.なかった(p=0.44).遠方矯正下のC40Ccm両眼視力はC0.05C±0.09,0.18C±0.14で縦群のほうが有意に良好だった(p<0.01).屈折値は縦群,横群の順に自覚CSEはC.0.04±0.31D,C.0.11±0.33D(p=0.34),他覚CSEはC.0.76±1.09D,C.0.73C±0.45D(p=0.87)で有意差はなかった(表1).Flyは縦群がC1.94C±0.33(87.1秒),横群がC2.16C±0.45(144.5秒)で縦群のほうが有意に良好だった(p<0.05)(図2).両眼視力(logMAR)と立体視(log秒)の間には縦群で有意な相関を認め,視力がよいほど立体視も良好だった.横群では相関を認めなかった(全例;r=0.44,p<0.01,図3a,縦群;r=0.62,p<0.01,図3b,横群;r=.0.11,p=0.72,図3b).日常生活満足度は縦群,横群の順に,「新聞・読書」はC3.40±0.68,3.38C±0.87(p=0.96),「値札・ラベル」はC3.90縦群横群Welch’st検定a-0.1b-0.1000.10.10.30.3全例横群0.4r=0.440.4r=-0.11p<0.01p=0.720.50.52.752.251.751.252.752.251.751.25(log秒)(log秒)縦群横群縦群横群Pearsonの関率相関検定r:相関係数図3立体視機能と視力の相関a:縦群および横群の全例の結果を示す.両眼視力が良好になるほど立体視機能も良好となる.Cb:群別の相関を示す.縦群は両眼視力と立体視機能との相関を認めたが,横群は有意とはならなかった.■縦群■横群ったと考えられる.疋田ら12)は同心円状屈折型多焦点CIOL(点)p=0.96p=0.14p<0.05*によるC70Ccm,50Ccm,30Ccmの両眼加算視力は単眼視と比C4logMARlogMAR0.20.2較し平均C2段階良好となったと報告した.本研究の縦群40Ccm両眼視力も同様に,小数視力換算でC2段階程度良好となった.LCTの場合,参天製薬が公開しているトーリック21Welch’st検定図4日常生活満足度アンケートスコアの比較アンケートスコアが高いほど満足度も高い.文字視認である「新聞」や「値札・ラベル」では有意差は認めなかったが,奥行き知覚が必要な「裁縫等」では縦群の満足度が高かった.C±0.31,3.69C±0.48(p=0.14)で有意差はなかったが,「裁縫等」はC3.60C±0.50,3.00C±1.15(p<0.05)で縦群の満足度が高かった(図4).CIII考按LC・LCTは横固定よりも縦固定のほうが両眼視力および立体視が良好だった.LCの.内固定方向に根拠を示した報告はないが,LCの場合は縦方向に固定することが一般的である11).LC・LCTを両眼とも縦固定した場合,同時視の際には遠用部,加入度数部それぞれから投影される網膜像の収束点の位置はほぼ同じになり,左右眼で重なり(オーバーラップ)が生じることから視力の両眼加算効果が得られる.そのため縦群のほうが横群よりも両眼C40Ccm視力が良好だカリキュレーターでは,加入度数部が水平より下方になる向きに挿入するよう表示される.角膜乱視が倒乱視の場合は加入度数部が耳側や鼻側に大きく傾くケースが発生する.たとえば予定軸が片眼C1°,僚眼179°のような場合,加入度数部が両耳側もしくは両鼻側となる.そのため同時視をすると片眼の遠用部と僚眼の加入度数部の網膜像が重なり,不同視様状態となることから,両眼加算の有無が両眼視力に影響を与えたと推察する.両眼加算の有無は立体視機能にも影響を与えたと考えられる.立体視の成立条件は視力の左右差がないこと,不等像視がないことがあげられている13).LCの立体視について言及している報告は調べた範囲ではなかったが,多焦点CIOLでは明視域拡張によってもたらされる近方視力の向上により立体視もおおむねC80秒以上と報告されている14).本研究では縦群で類似した結果が得られた.LCTは縦群,横群の片眼視力には差がなかったものの,横群では網膜像のオーバーラップがなく両眼加算が得られなかったため立体視は劣っていたと思われる.これは「裁縫等」の奥行き知覚を必要とする日常生活動作の満足度が縦群のほうが良好だったことにも表れている.近方の立体視作業が必要な倒乱視の症例の場合は,同心円型の多焦点CIOLを選択するか,レンティスコンフォートを挿入したのちに近用眼鏡を処方する必要があるかもしれない.とはいえ,横群でも遠見矯正下でのC40Ccm両眼視力は小数視力換算でC0.66,立体視は秒換算でC144秒と,従来の単焦点CIOLに劣ることなく日常生活に影響はないと考える.筆者らは,LCおよびCLCT挿入後の慣れや満足度は若年層のほうが俊敏であると報告した4).若年層では角膜直乱視の割合が高いため,LCTの適応であっても縦方向へ.内固定する場合が多い.しかし,高齢者では加齢に伴う倒乱視化15)によって横方向に固定する例が多くなる.今回の研究では縦群と横群の年齢に有意差がなかったため,若年層のほうが見え方の慣れが早く満足度が高い理由が固定方向の違いによるものなのかは判断できなかった.両眼視力と立体視能について縦群では視力が良いほど立体視能も良いという相関が得られたのに対し,横群では相関がみられなかった.今回固定角度が30°以下およびC150°以上だった場合を横群としたが,そのなかには加入度数部が同方向(両眼とも右方もしくは左方)の症例と異方向(両耳側もしくは両鼻側)の症例が混在している.加入度数部の位相によって視力良好例と立体視良好例が異なる可能性がある.また,先述のように,両眼視力や立体視能が網膜像のオーバーラップに依存するのであれば,横群であっても加入度数部を同方向に挿入した場合は縦群と同等の両眼視力や立体視が得られるかもしれない.その場合,倒乱視症例では加入度数部の方向は上下よりも左右を優先すべきとなる.今回は症例数が少なかったため,横群での加入度数部位相の影響については検討できなかった.今後症例を増やして再検討する必要がある.分節状屈折型CIOLであるCLC・LCTは両眼に挿入した場合,横方向に固定した場合よりも縦方向に固定した場合のほうが立体視が良好だった.文献1)神谷和孝:眼内レンズ度数計算の現状と今後.視覚の科学C42:39-43,C20212)OshikaT,AraiH,FujitaYetal:One-yearclinicalevalu-ationofrotationallyasymmetricmultifocalintraocularlenswith+1.5dioptersnearaddition.SciRepC9:13117,C20193)川下晶,岩崎留己,蕪龍大ほか:低加入度数分節型トーリック眼内レンズの術後成績.あたらしい眼科C39:118-122,C20224)蕪龍大,川下晶,岩崎留己ほか:レンティスコンフォートR挿入後における満足度に影響する因子の検討.CIOL&RSC35:623-631,C20215)大木伸一,ビッセン宮島弘子,中村邦彦ほか:回折型多焦点眼内レンズ挿入眼後の立体視.IOL&RSC23:371-374,C20096)VaronCC,CGilCMA,CAlba-BuenoCFCetal:Stereo-acuityCinCpatientsCimplantedCwithCmultifocalCintraocularlenses:isCthechoiceofstereotestrelevant?CurrEyeResC39:711-719,C20147)ZhuCM,CFanCW,CZhangG:StereopsisCandCvisualacuity:CBilateralCtrifocalCversusCblendedCextendedCdepthCofCfocusCandCdi.ractiveCbifocalCintraocularClenses.CFrontCMed(Lausanne)C9:1042101,C20228)LundstromCM,CPesudovsK:Catquest-9SFCpatientCout-comesquestionnaire:nine-itemCshort-formCRasch-scaledCrevisionCofCtheCCatquestCquestionnaire.CJCCataractCRefractCSurgC35:504-513,C20099)KandaY:InvestigationCofCtheCfreelyCavailableCeasyCto-useCsoftware‘EZR’CforCmedicalCstatistics.CBoneCMarrowCTransplantC48:452-458,C201310)WorldCMedicalCAssociation,CWorldCMedicalCAssociation,CDeclarationCofHelsinki:EthicalCprinciplesCforCmedicalCresearchCinvolvingChumanCsubjects.CJAMAC27:2191-2194,C201311)井上康:低加入度数分節眼内レンズ・レンティスコンフォートR.眼科グラフィックC8:257-264,C201912)疋田朋子,清水公也,藤澤邦俊ほか:多焦点眼内レンズ挿入眼の視機能評価.IOL&RSC20:43-47,C200613)矢ヶ崎悌司:立体視検査法の問題点.神経眼科C23:416-427,C200614)ChangDF:ProspectivefunctionalandclinicalcomparisonofCbilateralCReZoomCandCReSTORCintraocularClensesCinCpatients70yearsoryounger.JCataractRefractSurgC34:C934-941,C200815)NambaCH,CSuganoCA,CNishiCKCetal:Age-relatedCvaria-tionsincornealgeometryandtheirassociationwithastig-matism:TheYamagataCStudy(Funagata)C.CMedicine(Baltimore)C97:e12894,C2018***

Delle 8 症例の臨床的検討

2023年11月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科40(11):1486.1490,2023cDelle8症例の臨床的検討千代川聖道井上大輔原田康平草野真央上松聖典北岡隆長崎大学病院眼科CClinicalReviewof8DellenCasesMasamichiChiyokawa,DaisukeInoue,KoheiHarada,MaoKusano,MasafumiUematsuandTakashiKitaokaCDepartmentofOphthalmology,NagasakiUniversityHospitalCDelleは結膜隆起に隣接する角膜周辺部の部分的な菲薄化病変である.今回,当院にて経験したCdelleの症例を治療結果とともに調査した.長崎大学病院眼科にてCdelleと診断されたC8例C8眼(男性C4例,女性C4例,平均年齢C46.5±23.8歳)を対象とし,診療録から背景,治療法,経過について後ろ向きに調査した.背景は斜視手術後C2眼,緑内障手術後C2眼,輪状締結術後C2眼,硝子体手術後C1眼,Parinaud眼腺症候群C1眼であった.明らかな上皮障害はC7眼(88%)に認め,4眼(50%)において異物感や疼痛などの症状を認めた.Delleに対して追加治療を行った症例はC4眼(50%)であり,治療法としては保護用ソフトコンタクトレンズ装用C2眼,抜糸C1眼,ヒアルロン酸点眼C1眼であった.全症例でCdelleは改善し,上皮欠損や異物感などの症状が軽快した.CDellenCisCaCpartialCthinningCofCtheCcornealCperipheryCadjacentCtoCtheCconjunctivalCridge.CToCinvestigateCtheCdetailsof8dellencasesseenatourhospital,weretrospectivelyreviewedthediseasebackground,treatment,andfollow-upcourseinthosecasesviathepatient’smedicalrecords.Inallpatients,dellenoccurredintheperipheralcorneaneartheconjunctivalridge,anditdevelopedin2eyesafterstrabismussurgery,in2eyesafterglaucomasurgery,in2eyesafterencirclingsurgery,in1eyeaftervitrectomy,andin1eyewithParinaud’soculoglandularsyndrome.Ofthe8eyes,obviousepithelialdamagewasobservedin7(88%),symptomssuchasforeignbodysen-sationandpainwasobservedin4(50%),andadditionaltreatmentfordellenwasperformedin4(50%);i.e.,theuseofaprotectivesoftcontactlens(n=2eyes),theremovalofstitches(n=1eye),andtopicaladministrationofhyaluronicacideyedrops(n=1eye).Inallcases,dellenimprovedandothersymptomswererelieved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(11):1486.1490,C2023〕Keywords:角膜,Delle,Dellen,デレ,デレン.cornea,Delle,Dellen.はじめにDelle(ドイツ語,複数形はCDellen)は結膜隆起に接する角膜周辺部の菲薄化病変である.日常診療においては,翼状片や瞼裂斑,緑内障手術後などで角膜輪部付近の結膜が隆起し,隣接する角膜周辺部が局所的に菲薄化する病変として,しばしば経験する.DelleはC1911年,ErnstFuchsによって報告され,有症状のものは少なく,またC48時間以上続くことはまれであるとされている1).発生機序として明らかなものはなく,隆起性病変部に隣接して生じる涙液メニスカスがまわりの涙液量を減少させ,角膜上皮障害やCdelleの発症に関与しているとの報告もある2).一過性の原因に対しては,アイパッチ,保護用ソフトコンタクトレンズ(softCcontactClens:SCL)の装用,人工涙液の頻回点眼などがあり,一過性でない場合は隆起性病変の外科的切除も考慮される3).これまで本疾患の誘因となった原疾患の内訳や治療結果を報告した論文は少ない.今回,当院眼科にて経験したCdelleの症例について,疾患背景や治療経過を報告する.CI対象および方法2012年C1月.2021年C4月に長崎大学病院眼科にて診療を行った患者の診療録から,delle(ローマ字・日本語・複数形を含む)の記載を検索し,delleの所見を認めた症例を抽出した.Delle以外の周辺部の角膜潰瘍の症例は除外した.Delleと診断された症例の背景,治療法,経過について後ろ〔別刷請求先〕千代川聖道:〒852-8501長崎県長崎市坂本C1-7-1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科眼科・視覚科学分野Reprintrequests:MasamichiChiyokawa,M.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualSciences,GraduateSchoolofBiomedicalSciences,NagasakiUniversity,1-7-1Sakamoto,Nagasaki-shi,Nagasaki852-8501,JAPANC1486(116)向きに調査した.CII結果Delleと診断された症例はC8例C8眼(男性C4例,女性C4例)であり,年齢はC46.5C±23.8歳(14.80歳)であった.対象の背景を表1に示す.8眼中C7眼がなんらかの術後早期に発生したものであり,斜視手術後C2眼,緑内障手術後C2眼,輪状締結術後C2眼,硝子体切除術後C1眼であった.1眼はCParinaud眼腺症候群による高度な球結膜浮腫に伴うものであった.フルオレセインで染色される明らかな上皮障害はC7眼(88%)に認め,4眼(50%)において異物感や疼痛などの症状が認められた.Delleに対して追加治療を行った症例はC4眼(50%)であり,治療法としては保護用CSCL装用C2眼,抜糸C1眼,ヒアルロン酸ナトリウム点眼2眼であった(重複あり).全症例でdelleは改善し,上皮欠損や異物感などの症状が軽快した.代表的な症例をC2例提示する.CIII症例[症例1]80歳,女性.2013年C8月テーブルの角で右眼打撲し,外傷性眼球破裂のため近医より長崎大学病院眼科(以下,当科)に紹介された.左眼に異常はなかった.同日眼内レンズ摘出術,硝子体切除術,およびシリコーンオイル注入術を施行し,その後シリコーンオイル抜去術を施行した.2014年C1月眼内レンズ縫着術を施行したが,術後の結膜の炎症は以前の手術後よりも重度であり,一部浮腫のため隆起していた.術後C12日目,流涙,異物感の自覚症状あり,右眼鼻側結膜の隆起および隣接する周辺角膜にフルオレセイン染色で円形に染まる角膜上皮欠損部位を認め(図1a,b),delleと診断された.非ステロイド性抗炎症薬点眼薬および術後高眼圧のため使用していたプロスタグランジン系緑内障点眼薬を中止し,ステロイド点眼薬の点眼回数を減量し,ヒアルロン酸ナトリウムC0.3%点眼薬および保護用CSCL装用を開始した.術後C17日目(delleの診断からC5日目)の受診時にはCdelleは消失していた(図1c,d).術後C20日目に保護用CSCL装用を中止したところ,その翌日には同部位にCdelleが再発したが,疼痛や異物感などの症状はなかった.保護用CSCL中止のままヒアルロン酸ナトリウムC0.3%点眼薬を継続していたところ,術後29日目(delleの再発からC9日目)にCdelleは軽快した.[症例6]44歳,女性.右眼外眼筋炎後の右眼外直筋萎縮および外斜視に対して,2016年C12月に右眼外直筋後転を施行.その後残存した外斜視に対してC2017年C4月右眼上下直筋移動術および内直筋短縮術を施行した.術翌日より右眼鼻側結膜の浮腫は著明であった.術後C1カ月で眼痛の症状があり,鼻側結膜隆起に隣接する角膜周辺部に混濁しフルオレセイン染色で染色される円形の角膜潰瘍を認め(図2a,b),delleと診断した.人工涙液点眼を開始したが,delle出現からC2週間後,delleの悪化を認め保護用CSCL装用を開始した.Delle出現C3週間後delleの範囲は縮小し保護用CSCLを除去したが,delle出現C4週間後,眼痛の症状再燃しCdelleの悪化を認めた.保護用SCL再装用で症状が軽快するため,2週間ごとの保護用CSCL交換で経過観察を続けた.Delle出現からC13週間後,角膜の陥凹は残存するが,フルオレセイン染色での染色所見は軽快した.原因除去の観点から,隆起した結膜の除去も考慮したが,日中のみのCSCL装用で症状なく経過しており,術後2年時点で当科終診となった(図2c,d).CIV考按Delleをきたす結膜隆起の原因としては,強膜炎,瞼裂斑,翼状片,輪部悪性腫瘍,結膜下出血などの疾患,または斜視手術,白内障手術,緑内障手術後などの手術があげられる4).当院で確認できたCdelleは多くの症例で手術後の症例であり,術後以外の症例はCParinaud眼腺症候群のC1例のみであった.斜視手術後のC655人に対してCdelleの出現を調査した報告では,内直筋の再手術を行ったC184眼中C30眼(16.3%),筋移動術を行ったC37眼のうちC7眼(18.9%),外直筋後転と内直筋切除を組み合わせたC101眼のうちC4眼(4.0%)にCdelleを認めている5).また,斜視手術後のC51人の患者(102眼)のdelle発症率を調査した論文では,delleの発生率はC22.5%との報告もある6).症例C1では,同一眼で手術を繰り返しており,術後の炎症が強かった.症例C6では同一眼でC2度の手術を施行しており,2度目の手術は上下直筋移動術および内直筋短縮術であり,侵襲度の高い手術であった.両症例ともに複数回の手術後の発症であり,自覚症状も強く出現していた.また,当院でのCdelleの症例は手術後,もしくはCParinaud眼腺症候群が原因疾患であり,すべての症例において炎症が関与する症例であった.結膜下出血が原因となるCdelleのように炎症が関与していない疾患でもCdelleの報告はある7)が,delleの発症には結膜の隆起による涙液層の破綻のみではなく,術後などに出現する強い炎症も関与する可能性が考えられる.一般的に涙液層破綻によってCdelleは生じるが,症例C1,症例C2のように炎症が強い状態であれば,自覚症状の出現や遷延化や,繰り返す再発の原因になると考えられる.Delleは角膜実質の局所的な含水率の低下に基づいて生じた陥凹領域ともいわれ,組織学的にも角膜上皮,Bowman膜,実質の菲薄化がみられ,適切な治療を行わないと角膜穿孔にもつながる合併症である8).Delleは陥凹部の感度低下を認め7),無症状で上皮障害を伴わないことが多く,フルオレセイン染色で染まる場合と染まらない場合がある4).当院表1対象の背景症例性別年齢背景上皮障害自覚障害治療術後発症までの期間軽快までの期間備考疾患手術C1女性C80眼内炎硝子体手術++SCL装用12日5日間9日間再発ありC2男性C14裂孔原性網膜.離輪状締結術+.─6日3週間C3男性C14外傷性網膜.離輪状締結術不明+抜糸6日3週間C4女性C61緑内障線維柱帯切除術+.─12日1カ月C5男性C72緑内障インプラント挿入術+.ヒアルロン酸ナトリウム点眼6日1カ月C6女性C44斜視筋移動術+++SCL装用1カ月3カ月遷延C7女性C58斜視短縮後転術++抜糸1カ月1カ月C8男性C29Parinaud眼腺症候群C─++原疾患の治療2週間図1症例1の前眼部所見a,b:鼻側角膜輪部にフルオレセインで染色される円形のCdelleを認める.Cc,d:delle診断からC5日目,保護用CSCL装用で軽快した.では上皮障害をほとんどの症例で認め,自覚症状が強い症例で陥凹・潰瘍内のフルオレセイン染色液を吸い取り,その後もあった.陥凹部へのフルオレセイン染色液の貯留(pool-も染色状態にあるか否かによって,上皮障害の有無を確認しing)の影響もあり,実際に同部に上皮障害があったかの判ている.既報と臨床所見が異なる理由としては,今回の断は困難な場合もある.当院では判断困難な場合は綿棒などdelle症例は術後による炎症が症状出現に寄与していた可能図2症例2の前眼部所見a,b:鼻側の結膜隆起,および隣接する周辺角膜にフルオレセインで染色されるCdelleを認める.Cc,d:保護用CSCL装用を継続し,delleは改善した.性が考えられる.Delleの治療は角膜に涙液を補給し,角膜輪部の隆起を抑えることが重要である.辺縁部の隆起が炎症性のものであれば,ステロイド点眼や抗菌薬点眼を併用することで角膜輪部の結膜隆起を抑えるのに役立つ.角膜への涙液補給には眼帯装用も効果的である.治療はできるだけ早期に開始するのが望ましく,緑内障手術後の濾過胞が原因の場合は人工涙液の頻回投与も有効である7).今回の症例C1,6では保護用CSCL装用でも良好な経過を得ることができた.保護用CSCLを装用することによって,delleの角膜陥凹部に持続的な涙液の補.が可能となる.Delleは軽度であれば経過観察にて数週間程度で改善することが多いが,疼痛などの自覚症状が出ている症例に対しては,炎症を抑える各種点眼,人工涙液による涙液補充が有効であり,疼痛が強い症例や上記点眼による改善が得られない症例では,涙液を角膜に保持することができるCSCLを装用する治療法も効果的であると思われる.症例C1ではCSCL装用にて数日のうちにCdelleは改善,しかしCSCL装用を中止するとCdelleの再燃を認めた.SCL装用によってCdelleの表面に涙液が補われることでCdelleが改善したものの,SCL装用中止後も角膜輪部の炎症と結膜浮腫が残存していたために,delleが再燃したと考えられる.Delle再発時点では疼痛の自覚症状はなく,隆起性病変によって症状が出現していた可能性も考えられるが,このようにdelleが遷延する症例では治療を継続する必要がある.今回Cdelleの症例について,当院のカルテ検索システムで症例を検出したが,カルテにCdelleと記載している症例のみの症例検討となった.明らかに症状がなく,軽度の場合は抽出されなかった可能性がある.また,一般の眼科診療所では今回の検討よりも軽度なCdelleの症例が比較的多くみられる可能性もある.CV結論今回Cdelleの当院での原疾患などについて調査した.とくに症状の強い症例については保護用CSCLの使用によって,病態の改善,症状の軽減を得ることができた.また,delleの発症に関しては術後などによる炎症が関与する可能性も考えられた.文献1)FuchsA:Pathologicaldimples(C“Dellen”)ofCtheCcornea.CAmJOphthalmolC12:877-883,C19292)McDonaldJE,BrubakerS:Meniscus-inducedthinningoftear.lms.AmJOphthalmolC72:139-146,C19713)横井則彦:Dellen.あたらしい眼科C16:803-804,C19994)小玉裕司,赤木好男:Dellen(Fuchs’dimple).あたらしい眼科C3:359-360,C19865)MaiCGH,CYangSM:RelationshipCbetweenCcornealCdellenCandCtear.lmCbreakupCtime.CYanCKeCXueCBaoC7:43-46,C19916)FresinaCM,CCamposEC:Corneal‘dellenC’CasCaCcomplica-tionCofCstrabismusCsurgery.Eye(Lond)C23:161-163,C20077)BaumJL,MishimaS,Borucho.SA:Onthenatureofdel-len.ArchOphthalmolC79:657-662,C19688)KymionisCGD,CPlakaCA,CKontadakisCGACetal:TreatmentCofCcornealCdellenCwithCaClargeCdiameterCsoftCcontactClens.CContLensAnteriorEyeC3:290-292,C2011***

直像鏡と眼底カメラを用いた円錐角膜検出における 網膜徹照法の有効性

2023年11月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科40(11):1481.1485,2023c直像鏡と眼底カメラを用いた円錐角膜検出における網膜徹照法の有効性山口昌大*1山口達夫*2,3,4石田誠夫*4糸井素純*5平塚義宗*1*1順天堂大学医学部眼科学講座*2新橋眼科*3聖路加国際病院眼科*4石田眼科*5道玄坂糸井眼科医院CE.ectivenessofRetinalScatteringImageswithanOphthalmoscopeandaFundusCamerainKeratoconusDetectionMasahiroYamaguchi1),TatsuoYamaguchi2,3,4)C,NobuoIshida4),MotozumiItoi5)andYoshimuneHiratsuka1)1)DepartmentofOphthalmology,JuntendoUniversity,2)ShinbashiEyeClinic,3)StLuke’sInternationalHospital,4)IshidaEyeclinic,5)DougenzakaItoiEyeClinicC目的:眼底直像鏡を用いた網膜徹照法が円錐角膜(KC)の突出部を黒い陰影(ODS)として検出できることは知られていたが,映像として示された報告はなかった.筆者らは眼底カメラを用い,撮影法を工夫することによりCODSを記録できた.今回,Amsler-Krumeich分類(AK分類)の重症度と,直像鏡,眼底カメラ,前眼部光干渉断層計(OCT)の計測結果を比較し,検出限界を検討した.対象および方法:順天堂大学附属順天堂医院眼科およびコンタクトレンズ科,新橋眼科,石田眼科を受診し,角膜混濁,白内障,硝子体混濁を認めないCKCを対象に,前眼部COCT,直像鏡や眼底カメラでの網膜徹照像を比較し,AK分類の重症度別の検出率,角膜形状を測定した.結果:対象は25例45眼(男性C18例,女性C7例).AK分類はCStage1.4がそれぞれC24眼,9眼,5眼,1眼だった.片眼が円錐角膜だが,僚眼が角膜前面形状に異常を認めないCformefrustekeratoconus(FFK)6眼も対象とした.直像鏡での検出率はCFFK83%,Stage1がC83%,2以上はC100%だった.眼底カメラでの検出率はCFFK50%,Stage1がC76%,2以上はC100%だった.網膜徹照法によるCODSの形状は前眼部COCTの角膜形状と類似しなかった.結論:眼底カメラを用いた網膜徹照法はCODSを映像として記録することができた.直像鏡を用いた網膜徹照法は前面突出のない極初期のCKCを検出できる症例があった.角膜形状解析装置を保有しない眼科施設が直像鏡による網膜徹照法でCKCを初期に検出できる可能性が示唆された.CPurpose:Itisknownthattheretinalscatteringmethodusinganophthalmoscopecandetecttheprotrusionofkeratoconus(KC)asanannulardarkshadow(ADS)C,however,therehavebeennoreportsshowingavisualimage.WeCwereCableCtoCrecordCADSCbyCusingCaCfundusCcameraCwithCanCinnovativeCmethod.CInCthisCstudy,CweCcomparedCtheCseverityCofCADSCaccordingCtoCtheAmsler-Krumeich(AK)classi.cationCwithCtheCresultsCofCmeasurementCbyCophthalmoscope,funduscamera,andanteriorsegmentopticalcoherencetomography(AS-OCT)C,andexaminedthedetectionlimit.SubjectsandMethods:KCpatientswithoutcornealopacity,cataract,orvitreousopacitywhovisit-edCtheCDepartmentCofCOphthalmologyCandCContactCLensCofCJuntendoCUniversity,CShinbashiCEyeCClinic,CandCIshidaCEyeClinicwereexaminedbycomparingretinalscatteringimageswithanophthalmoscopeandafunduscameratotheAS-OCTcornealshape.ThedetectionratebyseverityofAKclassi.cationandcornealshapeweremeasured.Results:Thisstudyinvolved45eyesof25patients(18malesand7females);i.e.,24eyes,9eyes,5eyes,and1eyeCwithCStageC1,C2,C3,CandC4CAKCclassi.cation,Crespectively.CSixCeyesCwithCformeCfrustekeratoconus(FFK)C,CinCwhichC1CeyeChadCkeratoconusCbutCtheCcontralateralCeyeChadCnoCmorphologicalCchange,CwereCalsoCincluded.CTheCdetectionrateoftheophthalmoscopewas83%forFFK,83%forStage1,and100%forStage2andabove.ThedetectionCrateCofCtheCfundusCcameraCwas50%CforCFFK,75%CforCStageC1,Cand100%CforCStageC2CandCabove.CTheCshapeCofCtheCADSCwasCfoundCtoCnotCbeClikeCtheCAS-OCTCcornealCshape.CConclusions:UsingCanCophthalmoscope,CretinalscatteringimageswereabletorecordtheADSasavisualimageanddetectveryearlystageKCwithout〔別刷請求先〕山口昌大:〒113-8421東京都文京区本郷C2-1-1順天堂大学眼科学教室Reprintrequests:MasahiroYamaguchi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,JuntendoUniversity,2-1-1Hongo,Bunkyo-ku,Tokyo113-8421,JAPANCanteriorprotrusioninsomecases,thussuggestingthateyeclinicswithoutcornealtomographyimagingcandetectKCatanearlystagewithanophthalmoscope.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(11):1481.1485,C2023〕Keywords:円錐角膜,直像鏡,眼底写真,網膜徹照法,前眼部光干渉断層計.keratoconus,ophthalmoscope,fun-duscamera,retinalscatteringmethod,anteriorsegmentopticalcoherencetomography.Cはじめに円錐角膜(keratoconus:KC)は,両眼性進行疾患で,角膜中央部から傍中央部が菲薄化し前方突出することにより強度の近視性乱視と不正乱視が出現する.軽度の症例では自覚症状はほとんどない場合もあるが,中等度以上になると強い乱視のために眼鏡矯正視力が不良になり,ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)などによる矯正が必要になる.さらに進行すると手術加療が必要となることがある.角膜クロスリンキング(cornealcollagenCcross-linking:CXL)は進行抑制および視力改善効果を認めるため1),早期介入が予後に影響する.診断や病状進行を早期に,正確に判断し,手術加療が必要な状態になる前に予防していくことが,臨床上重要となる.現在の診療現場では,前眼部光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)などの角膜形状解析装置,角膜生体力学特性装置などを用いて,確定診断,進行判定を行っている2.7).しかし,これらの機械は高価で特殊な機器であり,一般眼科診療所,僻地医療,発展途上国で保有することはむずかしい.また,角膜形状解析装置のない施設は,角膜乱視があっても矯正視力が良好で,Vogt線条,Fleischerringなどの細隙灯顕微鏡所見を認めないと,円錐角膜と診断されずに放置されるリスクが存在する.実際,視力低下を自覚してから円錐角膜と診断されるまでには,4年ほどの時間差がある(糸井,2011)8).したがって,初期CKCをより簡便に,鋭敏に,かつ安価に検出できる検査法が普及すれば,早期発見,早期治療が可能となる.直像鏡の網膜徹照法は,KC突出部の黒い陰影(oilCdropsign:ODS)として検出できると報告されている9.11).しかし,直像鏡による網膜徹照法は画像として記録できず,客観的,定量的評価がむずかしい,という問題があった.筆者らは,眼底カメラを用いた網膜徹照法がCODSを記録できることを発見した(図1).直像鏡はスリット光,眼底カメラはリング光を眼底に投射している.それぞれに生じる徹照の異常は,光学的に異なる原理である.今回,眼底カメラを用いた徹照法による円錐角膜の画像を提示するとともに,Amsler-Krumeich分類(AK分類)の重症度と,直像鏡や眼底カメラで記録したCODSとを比較し,重症度別の検出限界および形状の相同性を検討したので報告する.CI対象および方法順天堂大学附属順天堂医院の眼科およびコンタクトレンズ科,石田眼科医院,および新橋眼科を受診した患者で,前眼部COCTでCKCと診断できた症例を対象とした.網膜徹照光を遮る可能性がある,角膜混濁,白内障,硝子体混濁などの症例は除外した.順天堂大学倫理委員会の承認および,本人同意を得て検査を施行できたC25例C45眼(男性C18例,女性7例)を対象とした.検者はC2名,それぞれC16年,53年の図1正常眼(a)と円錐角膜(b)の網膜徹照像正常眼は瞳孔領に黒い陰影は認めない.円錐角膜は瞳孔領に不整形の黒い陰影(oilCdropsign:ODS)を認める.表1Amsler-Krumeich重症度分類別の症例数表2重症度別の網膜徹照法の検出率所見眼数CStage1角膜の突出による近視/乱視度数<5CD角膜屈折力4C8D以下Vogt線条,瘢痕なし24眼CStage2近視/乱視度数5D.8CD角膜屈折力<5C3D瘢痕なし角膜厚>4C00Cum9眼CStage3近視/乱視度数8D.1C0D角膜屈折力>5C3D瘢痕なし角膜厚C200-400Cum5眼CStage4近視/乱視度数測定不可角膜屈折力>5C5D瘢痕あり角膜厚<2C00Cum1眼CFFK片眼円錐角膜の僚眼角膜形状の異常なし6眼CStage1がC24眼ともっとも多かった.片眼円錐の僚眼で,角膜前面形状に異常を認めなかったCFFK6眼を含んだ.FFK:formefrustekeratoconus.臨床経験をもつ角膜専門医であり,患者が円錐角膜であることをCODS検査前に認知していた.直像鏡は診察室を暗室,患者からC50Ccm離れ,視度C±0Dの条件下で,瞳孔領を照らし,ODSの有無を調査した.眼底写真は,順天堂医院がCVX-10(コーワ),新橋眼科,石田眼科医院がCTRC-NW6S(トプコン)を使用した.暗室条件下で,被験者を顎台に固定,虹彩にピントを合わせるために眼底カメラを検者側に目一杯引き,足りなければ患者に3Ccm程度下がってもらい,撮影した.前眼部COCTはCCASIA(トーメーコーポレーション)を使用し,中心角膜厚,角膜屈折力(Kmin,Kmax),前面角膜形状(axialpower)を測定した.AK分類の重症度別に,直像鏡および眼底カメラを用いた網膜徹照法の検出率を評価した.CII結果患者の年齢はC15.46歳,平均年齢はC35.5C±12.5歳,中心角膜厚はC462.6C±91.1um,角膜屈折力はKminC46.1±6.3D,Kmax48.9±7.3Dだった.重症度分類はCAK分類を用い,Stage1がC24眼,Stage2がC9眼,Stage3がC5眼,CStage4がC1眼だった.また,片眼円錐角膜の僚眼で角膜形状変化を認めないCformeCfrustekeratoconus(FFK)症例C6眼を含んだ(表1).直像鏡,眼底カメラともにCStage2以上の進行症例はC100%検出することができた.Stage1は直像鏡,眼底カメラと重症度眼数直像鏡陽性検出率眼底カメラ陽性検出率CFFKC6C583%C350%CStage1C24C2083%C1876%CStage2C9C9100%C9100%CStage3C5C5100%C5100%CStage4C1C1100%C1100%全体C45C4089%C3680%直像鏡,眼底カメラともにCStage2以上の進行症例はC100%検出している.Stage1以下の初期症例は直像鏡,眼底カメラの検出率が低下したが,FFKは直像鏡でC83%,眼底カメラはC50%検出した.もに検出率が低下し,直像鏡がC20/24(83%),眼底カメラがC18/24(76%)だった.FFKはさらに低下し,直像鏡が5/6(83%),眼底カメラがC3/6(50%)だった(表2).前眼部COCTのCaxialpower(keratometric)前面における突出部とCODSの形状を比較したが,一致は認めなかった.ODSが陰性だったCStage1のC4例は,角膜形状の平均値がCKmin43.7D,Kmax45.7D,角膜乱視C1.8Dだった.いずれも前眼部COCTで角膜中央下方の前後面に突出を認め,ODS陽性症例と角膜形状の違いは認めなかった.眼底カメラでCODSを撮影できたCFFK症例を提示する(図2).24歳,女性.14歳からソフトコンタクトレンズを使用し,18歳で視力低下を指摘され,円錐角膜の精査目的に順天堂大学附属順天堂医院コンタクト科を紹介受診となった.HCLを処方し,両眼の矯正視力は(1.2)と良好である.細隙灯顕微鏡所見は両眼ともに明らかな突出は認めず,Vogt線条,Fleischerringなどの円錐角膜特有の所見は認めなかった.前眼部COCTの角膜形状,眼底カメラの前眼部写真を図2に示す.右眼はCAmsler-Krumeich分類のCStage1,下方に限局する突出があり,Kmin42.0D,Kmax42.9D,最菲薄部角膜厚はC496Cumだった.直像鏡,眼底カメラのいずれでもCODSは瞳孔中心に検出したが,前眼部COCTの角膜前面形状パターンとは一致しなかった.左眼は角膜形状異常がないCFFK,Kmin42.2D,Kmax43.5D,最菲薄部角膜厚はC516umだった.ODSは瞳孔中央から上方に認めるが,角膜前面形状パターンとは一致しなかった.CIII考察円錐角膜は進行を認めた場合,角膜クロスリンキング(CXL)の進行抑制効果が報告されている1).さらに重度になると急性角膜水腫(Descemet膜破裂)を起こして一過性の角膜浮腫と視力低下をきたすことがある.急性角膜水腫の多くは数カ月で自然治癒するが,一部は角膜に瘢痕形成を残右眼左眼図2ODSを撮影できたFFK症例(24歳,女性)右眼はAmsler-Krumeich分類Stage1,下方に限局する突出があり,Kmin42.0D,Kmax42.9D,最菲薄部角膜厚はC496Cumだった.ODSは瞳孔中心に認めるが,角膜突出部とは一致しなかった.左眼は角膜前面形状に異常がないFFK症例,Kmin42.2D,Kmax43.5D,最菲薄部角膜厚は516umだった.角膜後面にわずかな突出を認める.ODSは瞳孔中央から上方に認めるが,角膜形状と一致しなかった.ODS:oildropsign,FFK:formefrustekeratoconus.す.急性水腫後の瘢痕形成も含めて,HCLによる視力矯正が困難,あるいは装用困難な症例は,深部表層角膜移植や全層角膜移植が行われる.円錐角膜は角膜移植の予後が良好とされているが,拒絶反応,内皮機能不全,縫合糸感染,創離開,再突出などの合併症が生じる可能性がある.術後C15年でC66%の症例は矯正視力C0.5以上と良好であるが,18.9%は0.1以下と報告されている12).したがって,早期発見,早期治療は円錐角膜患者の予後に大きく寄与する.角膜形状解析装置の開発は,円錐角膜の早期検出の歴史でもある.角膜形状解析装置(topographicCmodelingCsystem:TMS)は,ビデオカメラを用いて撮影したマイヤー像をコンピューターに取り込み,得られた画像から自動的にリング間の距離を測定し角膜屈折力を算出し,カラーコードマップを作製し,角膜屈折力をパターンとして視覚的に表示する.角膜前涙液層に反射する光をマイヤー像として利用するため,マイヤー像が正確に描出できるかが結果を左右される2).その後,光学断面を撮影して角膜の高さ情報を取得し,角膜前後面の解析が可能な装置が出現した.スリット光を使用したスリットスキャン式角膜形状解析装置,光干渉断層計を使用した光干渉式角膜形状解析装置である.これらの機器によって円錐角膜の早期診断は飛躍的に改善した2.7).直像鏡を用いた網膜徹照法はこれらの角膜形状解析装置の開発以前から,とくに欧米で臨床的に用いられていたが,画像として記録できる報告はなく,また,ODSの機序は報告されていない.網膜からの徹照光は淡いため,角膜実質の微細な変化が光の屈折による陰影として検出できるためと考えられるが,ODSと角膜突出部は必ずしも一致しないため,原理は不明である.Stage2以上の進行症例は直像鏡,眼底カメラともにC100%検出することができた.Stage1は直像鏡,眼底カメラともに検出率が低下するが,直像鏡のほうが眼底カメラより検出率は高かった(83%Cvs67%).極初期と考えられるCFFKはさらに低下するが,直像鏡が眼底カメラより検出できた(83%Cvs50%).直像鏡はスリット光,眼底カメラはリング光を眼底に投射している.それぞれに生じる徹照の異常は,光学的に異なる原理で生じている.この光学的な違いが結果に反映した可能がある.さらに,直像鏡は眼底カメラより光量が弱く,機械を介さずに検者が直接識別でき,淡い陰影を鋭敏に判断できるため,検出率が上がったと考える.初期円錐角膜と考えられているCFFKと正常眼た.この結果は,角膜形状解析装置を保有しない施設においの比較における感度,特異度はそれぞれ,ペンタカムや前眼て,直像鏡を用いた網膜徹照法が円錐角膜を早期検出するこ部COCTを用いた後面エレベーション値でC51.C91%,C55.とができ,その結果,早期治療が実現できる可能性が示唆さ97%,高次収差値でC55.C100%,C64.C97%と報告されていれた.る13).施設によってバラツキがあり,初期円錐角膜の検出方法に関するコンセンサスを得るに至っていない.筆者らの報利益相反:利益相反公表基準に該当なし告はCFFKがC6例と少数であるため,感度や特異度を算出するのはむずかしい.今後,症例数を増やして算出する必要がある.文献直像鏡は安価で持ち運びができるため,一般眼科施設だけ1)CWittig-SilvaCC,CChanCE,CIslamCFMCetal:CACrandomized,Cでなく,眼科のない僻地医療や発展途上国でも使用が可能でcontrolledCtrialCofCcornealCcollagenCcross-linkingCinCpro-ある.直像鏡を用いたCODSの検出に関して,イランからgressivekeratoconus:Cthree-yearCresults.COphthalmologyC300例の報告がある11).円錐角膜と診断された症例に関して121:C812-821,C2014ODS以外に,細隙灯顕微鏡所見,前眼部形状解析など多岐2)CMaedaCN,CKlyceCSD,CSmolekCMKCetal:CAutomatedCkera-toconusCscreeningCwithCcornealCtopographyCanalysis.Cの項目を診療録からレトロスペクティブに検出している.本InvestOphthalmolVisSciC35:C2749-2757,C1994報告と比較して検出率はC41%と低い.しかし,角膜混濁症3)CKanellopoulosCAJ,CAsimellisG:COCTCcornealCepithelialC例C112眼を含んでいる.CODSは中間透光体の混濁が存在すtopographicCasymmetryCasCaCsensitiveCdiagnosticCtoolCforCると検出できなくなる.これらを除外すると,少なくともearlyCandCadvancingCkeratoconus.CClinCOphthalmolC8:C2277-2287,C201460%は検出できていることになる.しかし,重症度ごとの4)CGallettiJD,RuisenorVazquezPR,MinguezNetal:CorC-比較や,CFFKなどの初期症例における検出率の検討はされnealCasymmetryCanalysisCbyCpentacamCscheimp.ugCていない.今回,筆者らは重症度分類別に比較し,CStageC1tomographyCforCkeratoconusdiagnosis:[C1]C.CJCRefractCやCFFKの極初期も割合は低いが検出できることを初めて報SurgC31:C116-123,C20155)CAmbrosioRJr,LopesBT,Faria-CorreiaFetal:IntegraC-告することができた.tionofScheimp.ug-basedcornealtomographyandbiome-今回,軽度から重度のすべてのステージで検討を行ったchanicalCassessmentsCforCenhancingCectasiaCdetection.CJが,CStage2以上の進行例は全例検出できた一方で,CFFKなRefractSurgC33:C434-443,C2017どの極初期症例の検出には限界があった.また,網膜徹照法6)CKohCS,CAmbrosioCRCJr,CInoueCRCetal:CDetectionCofCsub-clinicalcornealectasiausingcornealtomographicandbio-の問題点は,角膜,中間透光体,網膜などに混濁が存在するmechanicalCassessmentsCinCaCJapaneseCpopulation.CJと,光が干渉してしまい検出できない.瞳孔径に依存するたRefractSurgC35:C383-390,C2019め,高齢者,明所,縮瞳が強い症例などは検出できないこと7)CMaenoS,KohS,InoueRetal:Fourieranalysisonirreg-がある.本検討はC23例C45眼,FCFK6眼の少数報告である.ularcornealastigmatismusingopticalcoherencetomogra-phyinvariousseveritystagesofkeratoconus.AmJOph-また,形状異常を伴わない高度乱視症例との比較検討は,今thalmolC243:C55-65,C2022回行っていない.高度乱視症例が偽陽性になる可能性が考え8)糸井素純,久江勝,津田倫子ほか:ソフトコンタクトレられるため,今後,症例数を増やして検討したい.また,前ンズ長期装用者にみられた円錐角膜の角膜形状と患者背景.眼部COCTで円錐角膜と診断した症例を検査しているため,日コレ誌52:C250-257,C20109)CPathmanathanCT,CFalconCMG,CReckA:COphthalmoscopicC検者が事前に円錐角膜であることを知っていることから,情signofearlykeratoconus.BrJOphthalmolC78:C510,C1994報バイアスが生じた可能性がある.C10)CNarteyIN:COphthalmoscopicCsignCofCearlyCkeratoconus.CBrJOphthalmolC79:C396,C1995IV結論11)CNaderanM,JahanradA,FarjadniaM:Clinicalbiomicros-copyandretinoscopy.ndingsofkeratoconusinaMiddle直像鏡を用いた網膜徹照法により円錐角膜を診断し,眼底Easternpopulation.ClinExpOptomC101:C46-51,C2018カメラを用いて黒い陰影(CODS)を画像として記録できるこ12)CPramanikS,MuschDC,SutphinJEetal:Extendedlong-とを初めて報告した.直像鏡および眼底カメラを用いた網膜termCoutcomesCofCpenetratingCkeratoplastyCforCkeratoco-徹照法は角膜形状異常がない極初期のCFFKの検出率は低下nus.OphthalmologyC113:C1633-1638,C200613)CSantodomingo-RubidoCJ,CCarracedoCG,CSuzakiCACetal:したが,細隙灯顕微鏡で異常所見を認めないCStage1は,直Keratoconus:CAnCupdatedCreview.CContCLensCAnteriorC像鏡がC83%,眼底カメラはC67%を検出することが可能であEyeC45:C101559,C2022ることがわかった.CStage2以上は全例検出することができ(1C15)あたらしい眼科Vol.40,No.11,2C023C1485

緑内障点眼薬3 種類2 製剤から4 種類2 製剤への 配合点眼薬切替─多施設共同観察試験

2023年11月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科40(11):1476.1480,2023c緑内障点眼薬3種類2製剤から4種類2製剤への配合点眼薬切替─多施設共同観察試験上田晃史*1,4坂田礼*2,4安達京*3宮田和典*1白土城照*2大内健太郎*5相原一*2,4*1宮田眼科病院*2四谷しらと眼科*3アイ・ローズクリニック*4東京大学医学部附属病院*5大塚製薬株式会社CAMulticenterObservationalStudyofSwitchingFixed-CombinationEyeDropsfromTwoFormulationsofThreeEyeDropstoTwoFormulationsofFourEyeDropsfortheTreatmentofGlaucomaKojiUeda1,4),ReiSakata2,4),MisatoAdachi3),KazunoriMiyata1),ShiroakiShirato2),KentaroOuchi5)andMakotoAihara2,4)1)MiyataEyeHospital,2)YotsuyaShiratoEyeClinic,3)EyeRoseClinic,4)TheUniversityofTokyoHospital,5)OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.C目的:FP受容体作動薬(以下,FP)と炭酸脱水酵素阻害薬・b遮断薬配合点眼薬(以下,CAI/b)の併用療法を,カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼薬(以下,CAR/LAT)とブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BRM/BRZ)の併用療法へ変更した際の有効性と安全性を検討すること.対象および方法:2カ月以上FPとCA/bを併用してC15CmmHg以上で管理されていた患者を対象とした.FP+CAI/bをCCAR/LAT+BRM/BRZへ変更し,変更前と変更後C3カ月目の眼圧を比較検討した.結果:原発開放隅角緑内障C42眼,高眼圧症C2眼を検討対象とし,点眼変更前後の眼圧はそれぞれC17.5±2.2CmmHg,15.4±3.2CmmHgで,変更後にC2.0±2.8CmmHg(p<0.001)の眼圧下降を認めた.1例で皮疹を認めた.結論:点眼変更によって,重篤な副作用は認めずに眼圧は有意に低下した.CPurpose:ToCevaluateCtheCsafetyCandCe.cacyCofCswitchingCfromCprostaglandinCFreceptor(FP)agonistCandCcarbonicanhydraseinhibitor/bblocker.xedcombination(CAI/b)eyedropstocarteolol/latanoprost.xedcombi-nation(CAR/LAT)andCbrimonidine/brinzolamideC.xedcombination(BRM/BRZ)eyeCdropsCforCtheCtreatmentCofCglaucoma.CMethods:ThisCstudyCinvolvedCglaucomaCorCocularChypertensionCpatientsCwithCanCintraocularCpressure(IOP)of≧15CmmHgwhohadbeentreatedwithFPreceptoragonistandCAI/beyedropsforatleast2monthsbeforeswitchingtoCAR/LATandBRM/BRZeyedrops.IOPatpreswitchandat3-monthspostswitchwascom-pared.CResults:ThisCstudyCinvolvedC42CpatientsCwithCprimaryCopenCangleCglaucomaCandC2CpatientsCwithCocularChypertension.CMeanCIOPCwasC17.5±2.2CmmHgCbeforeCswitchCandC15.4±3.2CmmHgCatC3-monthsCpostCswitch,CthusCshowingasigni.cantdecreaseof2.0±2.8CmmHg(p<0.001).Askinrashwasobservedin1case.Conclusion:IOPsigni.cantlydecreasedafterswitchingfromFPreceptoragonistandCAI/btoCAR/LATandBRM/BRZ,andnoserioussidee.ectswereobserved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(11):1476.1480,C2023〕Keywords:眼圧,カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼薬,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,原発開放隅角緑内障.intraocularpressure,carteolol/latanoprost.xedcombination,brimonidine/brinzolamide.xedcom-bination,primaryopenangleglaucoma.Cはじめにを行っていくため1,2),病期の進行とともに点眼数が増えて緑内障点眼治療は目標眼圧をめざして単剤や多剤併用点眼いく.そしてC2本以上の点眼薬を使用する際には,点眼アド〔別刷請求先〕坂田礼:〒113-8655東京都文京区本郷C7-3-1CRC棟A北C339(秘書室)東京大学医学部附属病院眼科Reprintrequests:ReiSakata,M.D.,Ph.D.,TheUniversityofTokyoHospital,7-3-1HongoBunkyo-ku,Tokyo113-8655,JAPANC1476(106)8週間以上カルテオロール・ラタノプロスト配合点眼液+ブリモニジン・ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液観察期間12週間・有害事象処方変更日12週後(±4週:8~16週)・眼圧・眼圧・患者背景図1対象患者8週以上プロスタグランジン点眼液(FP)と炭酸脱水酵素阻害・Cb遮断配合点眼液(CAI/Cb)を併用し,眼圧15CmmHg以上で管理されていた原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者に対して,両点眼薬をカルテオロール・ラタノプロスト配合点眼液(CAR/LAT)とブリモニジン・ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液(BRM/BRZ)へ変更しC12週間の経過観察を行った.ヒアランスを維持させるために配合点眼薬を選択することが推奨されている3).配合点眼薬のメリットとして,1日の点眼回数が減ることや洗い流し効果を軽減させるための点眼間隔を開ける必要がないことなどがある.配合点眼薬は,FP受容体作動薬(以下,FP)とCb遮断薬の組み合わせ(以下,FP/Cb),炭酸脱水酵素阻害薬とCb遮断薬の組み合わせ(以下,CAI/Cb)が当初認可されたが,2019年にCa2刺激薬とCb遮断薬の配合点眼薬(以下,Ca2/b),2020年に炭酸脱水酵素阻害薬とCa2刺激薬(以下,CAI/Ca2)の配合点眼薬がそれぞれ上市された.CAI/Ca2の登場により,CFP/bと併用することでC2製剤C4成分の治療が可能となった.このCFP/Cb+CAI/a2の配合点眼薬は,最小限の点眼本数で最大に近い効果を得ることと,点眼アドヒアランス維持の両立が期待できる組み合わせである.CFP/b配合点眼薬のCb遮断薬はチモロールまたはカルテオロールが配合されているが,FP/チモロールC1回点眼では,本来のチモロールC2回点眼あるいは持続タイプのゲル化チモロールC1回点眼と比較して終日での眼圧下降は劣る可能性が高い.一方,FP/カルテオロールC1回点眼は,基剤としてアルギン酸を含有し,持続的な作用が維持できるカルテオロールと同様であるため,1回点眼でも終日の眼圧下降が維持できる.今回,原発開放隅角緑内障(primaryCopenCangleCglau-coma:POAG)または高眼圧症患者を対象として,FPとチモロール含有CCAI/CbのC2製剤C3成分の併用療法を,カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼薬(以下,CAR/LAT)とブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BRM/BRZ)のC2製剤C4成分の併用療法へ変更した際の有効性と安全性を検討した.CI対象および方法研究デザインは,国内C3施設による多施設共同後ろ向き観察研究である.組み入れ基準として,8週間以上CFPとCAI/bを併用し,15CmmHg以上で管理されていたCPOAGまたは高眼圧症患者のうち,2021年C9月C30日までにさらなる眼圧下降が必要とされ,両点眼薬をCCAR/LATとCBRM/BRZの併用療法に変更した患者を対象とした(図1).除外基準は,1)緑内障手術(レーザー含む)の既往のある患者,2)処方変更前にビマトプロスト点眼液を使用していた患者,3)処方変更後に他の緑内障点眼薬を併用,あるいは緑内障手術(レーザー含む)を実施した患者,4)点眼薬を遵守できなかった患者とした.処方変更日と処方変更C12週後(C±4週:8.16週)に,Goldmann圧平眼圧計で測定した眼圧を,対応のあるCt検定を用いて比較検討した.両眼とも選択基準を満たした症例については処方変更日の眼圧値が高い眼を有効性評価対象眼とし,眼圧が両眼とも同じ場合は右眼とした.主要評価項目は,処方変更日から処方変更C12週後までの眼圧下降値(平均)とし,副次評価項目は,同じ期間の眼圧値,眼圧下降率,そして期間中の安全性の評価とした.眼圧下降値および眼圧下降率の取扱いは以下のとおりとした.・眼圧下降値=(処方変更日の眼圧測定値)C.(12週時の眼圧測定値)・眼圧下降率(%)=(12週時の眼圧下降値)/(処方変更日の眼圧測定値)×100本検討はヘルシンキ宣言の教義を遵守し,宮田眼科病院の倫理委員会(承認CID:CS-368-017)によって承認された.本研究は,新たに試料・情報を取得することはなく,既存の診療録のみを用いた調査研究であるため,研究対象者から文書または口頭による同意取得は行わず,あらかじめ情報を通知もしくは公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保障する方法(オプトアウト)による手続きを行った.統計解析は,SASVersion9.4(SASInstituteInc.)を使用し,両側で有意水準は5%とした.表1患者背景合計眼数44眼処方変更日時点での年齢C65.0±11.2歳性別男性:26人,女性:18人表2点眼変更前のFPとCAI/bの組み合わせ症例数(割合)ラタノプロスト+ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩23(C52.3%)タフルプロスト+ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩10(C22.7%)トラボプロスト+ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩5(1C1.4%)ラタノプロスト+ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩4(9C.1%)タフルプロスト+ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩1(2C.3%)トラボプロスト+ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩1(2C.3%)25II結果2044名C44眼(POAG42眼,高眼圧症C2眼)が検討対象となった.患者背景を表1,点眼変更前のCFPとCCAI/Cbの処方の組み合わせを表2に示す.処方変更日から変更C12週後までの平均眼圧値は,それぞれC17.5C±2.2CmmHg(95%信頼区間,平均眼圧(mmHg)151016.8,18.1),15.4C±3.2CmmHg(95%信頼区間,14.5,16.4)で,変更後の平均眼圧下降値はC2.0C±2.8CmmHg(p<0.001)であった(図2).眼圧下降率は,11.4C±15.6%(p<0.001)であった.処方変更C12週目で処方変更日の眼圧値からC10%,20%,30%以上の眼圧下降率を達成した症例数は,それぞ50処方変更日処方変更後12週時れC29眼(66%),15例(34%),3例(7%)であった.点眼変更後,発疹(全身だが詳細不明)を認めた症例がC1例あったが,重篤な副作用は認められなかった.CIII考按本検討ではCFPとCCAI/Cbの併用療法で管理していた緑内障・高眼圧症の患者に対して,CAR/LATとCBRM/BRZへの併用療法に変更したところ,3カ月目で平均C2.0CmmHg(11.4%)と有意な眼圧下降を示した.点眼変更後に発疹を認めた症例があったが,点眼中止後に回復を認め,容認性も良好と考えられた.今回の研究結果からC2製剤C3成分を,Ca2を加えたC2製剤C4成分に変更することで,点眼本数や点眼回数を増やすことなく治療の強化を行うことが可能であることが示された.緑内障進行を遅延させる確実な方法は眼圧下降しかないが,眼圧をC1CmmHg下げることでも視野進行を抑制することができるとされている5).点眼治療において,第一選択薬として用いられることが多いCFPは,単剤のなかでもっとも眼圧下降効果が強い点眼薬であるが,多くの患者はこれを含めた多剤併用管理となっていることが多い2).FPに他点眼図2点眼変更前後の眼圧値処方変更日から処方変更C12週時までの眼圧値(平均)は,それぞれC17.5C±2.2CmmHg,15.4C±3.2CmmHgで,眼圧下降値(平均)はC2.0C±2.8CmmHg(p<0.001)であった.薬を追加して治療強化を行っていく場合,ほとんどの研究において追加後に有意な眼圧下降効果を認めているが6.10),点眼本数が増えるほど,点眼アドヒアランスが落ちることが懸念される.したがって,治療強化の際には配合点眼薬を選択して患者の負担軽減を図る必要がある.今回使用したCCAR/LATと,LATの眼圧下降効果を比較した研究では,CAR/LATがCLATより強力な眼圧下降を認めており,1日C1回点眼のまま治療を強化できることが示されている11).また,BRM/BRZはCbを含有しない配合点眼薬として,全身既往歴のある患者にも処方する場面が増えてくると考えられが,BRM/BRZの第CIII相臨床試験12)ではBRZ単独療法からCBRM/BRZへの変更によって,3.7C±2.1mmHgの眼圧下降が得られており(変更前C20.7+/.2.0mmHg,変更後C18.2+/.2.8CmmHg),対照であるCBRZ群に比べ有意な眼圧下降が得られている.今回は点眼変更後にC44例中C15例(34%)の症例で,点眼変更前からC20%以上の眼圧下降,そしてC3例(7%)でC30%以上の眼圧下降を認めている.この理由として,チモロールがカルテオロールに変更になったこと,新規のCa2が加わったこと,そして処方内容を一新したことによって点眼アドヒアランスが上がったことなどが考えられる.FPとチモロール点眼薬C2回の併用とCFP/チモロール配合点眼薬C1回の眼圧下降効果を検討したメタ解析13)では,多剤併用のほうが配合点眼薬よりも眼圧下降効果が高いことが示されているが,この理由は言及したとおりである.また,チモロールは長期連用で眼圧下降効果が減弱するいわゆるCtachyphylaxisがあるため14),切替前にチモロールの効果が減弱していた可能性も否定できない.また,第一選択治療としてのCa2の眼圧下降率はC20.25%とされており15),FP単剤にCBRMを追加した場合も有意な眼圧下降を認め(変更前眼圧C16.0C±4.0mmHg,追加後眼圧C14.6C±3.2CmmHg)8),これが眼圧下降に影響した可能性がある.さらに,点眼切り替えで処方内容が一新されたことで患者への説明がしっかりと行われ,患者の点眼への意識が一時的に高まったことも眼圧下降によい影響を及ぼしたと考えられた.副作用について,点眼変更後,発疹を認めた症例がC1例あったが,点眼中止に至るような副作用は認めなかった.処方変更後に加わったCa2は,点眼開始後しばらくしてからアレルギー性結膜炎が発症する場合もあるが,今回は調査期間が短かったためこのような症例はなかった.本研究の限界として,患者の選択バイアスがあったことをあげる.まず今回はC2製剤C3成分で眼圧C15CmmHg以上の患者を対象としたため点眼変更の有効性をはっきりと認めたが,一方でわが国では,点眼使用下でC15CmmHg未満で管理されている緑内障患者が多いのも事実である.そのような患者に対する点眼治療強化についての知見は少なく,仮に点眼変更の効果がない場合は,低侵襲緑内障手術などの手術療法に切り替えていかざるをえない.このような問題点は今後検討し解決していく必要があると考えられた.つぎに,処方変更後C12週まで経過を追えた患者を対象とした研究であったことから,12週までになんらかの理由で点眼が中止された症例の検討が行えていない.また,今回の検討では点眼変更前後で非選択的Cb遮断薬を使用している.カルテオロールはCISA(intrinsicsympathomimeticactivity)作用を有し16),チモロールよりも循環器系への影響が少ないが,非選択性Cb遮断薬自体は喘息や慢性閉塞性肺疾患に対しては処方禁忌であり,このような患者における点眼処方の組み立て方は別途検討が必要である.最後に,点眼変更前後のCFPやCCAIが統一されていない問題があげられる.点眼変更前はC61%がラタノプロストであったが,CAIはC14%しかブリンゾラミドを使用していなかった.前後で同じ成分で切り替えていない症例も含まれたため,今回示した眼圧下降幅(率)も過小あるいは過大評価されている可能性は否定できない.しかし,本研究は,緑内障の日常診療でよく遭遇する処方の組み合わせを想定し,それを現状でもっとも効率的な組み合わせのC2製剤C4成分に切り替えた後の有効性や安全性を検討することを主眼としたため,今回の結果はおおむね実臨床を反映した結果であると考えられた.まとめると,2製剤C3成分のCFPとCCAI/Cbの併用療法から,2製剤C4成分のCFP/CbとCCAI/Ca2の併用療法に変更したところ,ほとんどのケースで問題なく切り替えを行うことができ,3カ月目で有意な眼圧下降を認めた.緑内障点眼治療において治療を強化する際,点眼回数を増加させずに点眼アドヒアランスを維持したままさらなる眼圧下降が得られる配合点眼薬C2製剤を組み合わせる処方は有効であると考えられる.利益相反:上田晃史FII,坂田礼FII,RII,安達京FII,宮田和典FIV,RIV,白土城照FII,大内健太郎E,相原一FII,RIII文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-117,C20222)DjafariCF,CLeskCMR,CHarasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)内藤知子:緑内障配合薬のアップデート.あたらしい眼科C38:173-174,C20214)LeskeCMC,CHeijlCA,CHusseinCMCetal:FactorsCforCglauco-maCprogressionCandCtheCe.ectCoftreatment:theCearlyCmanifestCglaucomaCtrial.CArchCOphthalmolC121:48-56,C20035)朴華,井上賢治,井上順治ほか:多施設による緑内障患者の治療実態調査C2020年版─正常眼圧緑内障と原発開放隅角緑内障.あたらしい眼科C38:945-950,C20216)LiF,HuangW,ZhangX:E.cacyandsafetyofdi.erentregimensCforCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularhypertension:aCsystematicCreviewCandCnetworkCmeta-analysis.ActaOphthalmolC96:277-284,C20187)MaruyamaCK,CShiratoS:AdditiveCe.ectCofCdorzolamideCorCcarteololCtoClatanoprostCinCprimaryCopen-angleCglauco-ma:aCprospectiveCrandomizedCcrossoverCtrial.CJCGlauco-maC15:341-345,C20068)宮本純輔,徳田直人,三井一央ほか:0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液追加投与後の眼圧下降効果と副作用.あたらしい眼科C33:729-734,C20169)MizoguchiCT,COzakiCM,CWakiyamaCHCetal:AdditiveCintraocularCpressure-loweringCe.ectCofCdorzolamide1%/timolol0.5%C.xedCcombinationConCprostaglandinCmono-therapyCinCpatientsCwithCnormalCtensionCglaucoma.CClinCOphthalmolC5:1515-1520,C201110)松浦一貴,寺坂祐樹,佐々木慎一:プロスタグランジン薬,Cbブロッカー,炭酸脱水酵素阻害剤のC3剤併用でコントロール不十分な症例に対するブリモニジン点眼液の追加処方.あたらしい眼科31:1059-1062,C201411)YamamotoCT,CIkegamiCT,CIshikawaCYCetal:Randomized,Ccontrolled,CphaseC3CtrialsCofCcarteolol/latanoprostC.xedCcombinationCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.AmJOphthalmolC171:35-46,C201612)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科C37:1299-1308,C202013)QuarantaL,BiagioliE,RivaIetal:ProstaglandinanalogsandCtimolol-.xedCversusCun.xedCcombinationsCorCmono-therapyCforopen-angleCglaucoma:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.CJCOculCPharmacolCTherC29:382-389,C201314)BogerWP:Shortterm.“escape”andClongterm“drift”.CtheCdissipationCe.ectsCofCtheCbetaCadrenergicCblockingCagents.SurvOphthalmolC28:235-240,C198315)GeddeCSJ,CVinodCK,CWrightCMMCetal:PrimaryCopen-angleglaucomapreferredpracticepattern.OphthalmologyC128:71-150,C202116)佐野靖之,村上新也,工藤宏一郎ほか:気管支喘息患者に及ぼすCb遮断点眼薬の影響CCarteololとCTimololとの比較.現代医療C16:1259-1264,C1984***

基礎研究コラム:78.内因性光感受性網膜神経節細胞と緑内障

2023年11月30日 木曜日

内因性光感受性網膜神経節細胞と緑内障吉川匡宣内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRCG)とは眼内において光を感受することができる細胞は視細胞だけでしょうか?2002年に発見された内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsicallyCphotosensitiveCretinalCganglioncells:ipRGC)はこれまでの常識を大きく覆すものでした.このCipRGC1)は光感受性視物質であるメラノプシンを発現することで光刺激を直接受容することが可能です.種により異なるものの,ヒトでは全網膜神経節細胞のC0.2~0.8%程度を占めることが報告されています.ipRGCの大きな特徴は,眼外からの光刺激を生体リズム中枢である視交叉上核へ伝達することで光同調において重要な役割を果たすことです.ヒトの体内時計の周期は個人差があるもののC24時間よりもわずかに長く,体外環境のC24時間とはずれがあります.この体内時計と体外時刻のずれの補正(光同調)にはCipRGCへの青色光刺激(460~480Cnm)が必要であるであることがわかっています.実際に,メラノプシン遺伝子を破壊したマウスは光同調障害を引き起こすことが報告されています.また,ipRGCは中脳視蓋前域オリーブ核などへ投射することで対光反射にも関与していることがわかっています(図1).ipRGCによる対光反射の特徴は青色光刺激後の遷延する対光反射で,これを利用することでCipRGCの機能(光感受性)を評価することが可能です.ipRGCの光感受性は2005年に動物実験で上記の対光反射と関連すること,2010年にヒトでCpost-illuminationCpupilresponse(PIPR)2)として評価可能であることが報告されました.筆者らも持続的対光反射測定機器CRAPDx(KonanMedical社)を用いて緑内障患者のCPIPRを測定し,視野重症度が強いほどCipRGC機能が低下していることを明らかにしました.これはドナー眼の実験研究で示された緑内障眼におけるCipRGC密度低下を支持する結果といえます.緑内障患者におけるipRGC障害の影響それでは緑内障患者ではCipRGCの障害から生体リズムの乱れが生じているのでしょうか.緑内障患者を対象とした筆者らのコホート研究において,生体リズム指標として広く用いられている尿中メラトニン代謝産物濃度が緑内障患者で低く,さらに緑内障重症度とも相関していたことが明らかとなりました.この緑内障患者におけるメラトニン分泌低下は,緑内障が生体リズムの乱れ(光同調障害)を引き起こす可能性を示唆するものです.さらに緑内障患者では血圧日内変動奈良県立医科大学眼科学教室よしかわ眼科クリニック図1内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の投射経路ipRGCの脳内への投射経路は複数存在し,おもなものとして生体リズム中枢である視交叉上核への経路があり,上頸神経節を経て松果体に達しメラトニン分泌を制御しています.また,中脳視蓋前域オリーブ核への経路も存在します.Edinger-Westphal核,毛様体神経節を経て虹彩に伝達され,対光反射に関与しています.その他,視覚情報に関与する外側膝状体,膝状体間葉にも投射しています.SCN:視交叉上核,SCG:上頸神経節,P:松果体,OPN:中脳視蓋前域オリーブ核,EW:Edinger-Westphal核,CG:毛様体神経節,LGN:外側膝状体,IGL:膝状体間葉.リズムの障害3),生体リズムの乱れが寄与する睡眠障害,認知機能障害,うつ症状などと関連していたことも報告されています.しかし,緑内障と生体リズム障害に関する研究は横断解析が多く,今後の縦断研究で因果の方向を明らかにすることが必要です.今後の展望緑内障患者ではCipRGC障害が生じ,血圧や睡眠などの生体リズムの乱れと関連している可能性があります.今後,ipRGCに着目した緑内障・生体リズム研究が,緑内障の新たなメカニズム解明や新規治療に発展する日が訪れるかもしれません.文献1)BersonCDM,CDunnCFA,CTakaoM:PhototransductionCbyCretinalCganglionCcellsCthatCsetCtheCcircadianCclock.CScienceC295:1070-1073,C20022)KankipatiCL,CGirkinCCA,CGamlinPD:Post-illuminationCpupilCresponseCinCsubjectsCwithoutCocularCdisease.CInvestCOphthalmolVisSciC51:2764-2769,C20103)YoshikawaCT,CObayashiCK,CMiyataCKCetal:IncreasedCNighttimeCBloodCPressureCinCPatientsCwithGlaucoma:CCross-sectionalAnalysisoftheLIGHTStudy.Ophthalmol-ogyC126:1366-1371,C2019(89)あたらしい眼科Vol.40,No.11,2023C14590910-1810/23/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス: 246.Meridional foldに関連する網膜裂孔(初級編)

2023年11月30日 木曜日

246Meridionalfoldに関連する網膜裂孔(初級編)池田恒彦大阪回生病院眼科●はじめに鋸状縁(oraserrata)は網膜の最前端にあたり,毛様体扁平部上皮に接するところで突起を形成している.これは歯状突起とよばれ,歯状突起の問で毛様体扁平部が後方に向かって湾入しているところを弯(orabay)とよぶ1).鋸状縁には種々の形態異常が知られており,Cmeridionalfold(鋸状縁の歯状突起,あるいは弯の中央部から後極に向かって放射状に伸びる堤防状の隆起)やCmeridionalcomplex(meridionalfoldと毛様突起が同一子午線上にあるもの)など2)は,硝子体手術時の強膜圧迫によってしばしば観察される.Meridionalfoldは硝子体牽引が増強すると高さが増し,その後極に網膜裂孔が形成されることがある3).C●症例提示45歳,男性.右眼の裂孔原性網膜.離を指摘され,手術目的で紹介となった.初診時,右眼は鼻上側~下方や鼻上側~耳側にかけて広範な網膜.離を認め,鼻上側の弁状裂孔(図1:)に加えて,耳側周辺部にかなり長い歯状突起を認め,それに囲まれた長いCorabayの延長上にCmeridionalfold(図1:)を認めた.さらにmeridionalfoldの後極寄りに小裂孔(図1:..)が観察された.硝子体手術の術中所見として,上方の通常の裂孔に加えて,このCmeridionalfoldの後極寄りの小裂孔辺縁にも網膜硝子体癒着を認めた(図2:)ため,硝子体カッターで牽引を可能な範囲で解除した.その後,気圧伸展網膜復位術,眼内光凝固,ガスタンポナーデを施行し,網膜の復位を得た.C●Meridionalfoldに関連する網膜裂孔前述したようにCmeridionalfoldには歯状突起から生じるものと,orabayの延長上に生じるものがあり,前者が約C80%を占めるとされる2).前者は後者よりも一般に長く,かつ高くなる傾向がある.Meridionalfoldに関連する裂孔は,通常Cfoldの延長線上のやや後極に生じることが多く,裂孔のサイズは一般に小さい.網膜.(87)C0910-1810/23/\100/頁/JCOPY図1提示例の右眼眼底写真鼻上側の弁状裂孔()に加えて,耳側Corabayの延長上にCmeridionalfold()を認め,さらにCmeridionalfoldの後極寄りに小裂孔(..)を認めた.図2提示例の術中所見Meridionalfoldの後極寄りに小裂孔を認め,その辺縁にも網膜硝子体癒着()を認めた.離の裂孔不明例や,網膜.離の範囲と裂孔の位置が理論的に合わないケースなどでは,このようなCmeridionalfoldに関連する小裂孔が原因となっている可能性があるので,十分な術前眼底検査を行う.また硝子体手術時にmeridionalfoldを認めた場合には,その後極に裂孔がないか注意深く観察する必要がある.文献1)StraatsmaBR,LandersMB,KreigerAE:Theoraserrataintheadulthumaneye.ArchOphthalmolC80:3-20,C19682)SpencerCLM,CFoosCRY,CStraatsmaBR:MeridionalCfolds,Cmeridionalcomplexes,andassociatedabnormalitiesoftheperipheralretina.AmJOphthalmolC70:679-714,C19703)RutninCU,CSchepensCL:FundusCappearanceCinCnormalCeyes.II.Thestandardperipheralfundusanddevelopmen-talvariations.AmJOphthalmolC64:840-852,C1967あたらしい眼科Vol.40,No.11,20231457

考える手術:23.多焦点眼内レンズ挿入眼への硝子体手術

2023年11月30日 木曜日

考える手術.監修松井良諭・奥村直毅多焦点眼内レンズ挿入眼への硝子体手術佐藤尚人鈴木眼科グループ戸塚駅前鈴木眼科近年,国内のみならず世界的なトレンドとして,多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)の挿入手術は増加傾向にある.さらに手術目的として,屈折矯正は当然のこととして,老視矯正手術としての需要も増えつつある.自費診療や選定療養対象レンズのみならず,保険適用となる低加入度数分節型や高次非球面IOLなど,広義の多焦点IOLも含めると,現在非常に多くの白内障手術において,多焦点IOLが選択されている.今後も多焦点IOLが挿入されている患者の人口は増えていくことが予想され,とくに屈折矯正の観点から多焦点IOL一方で,以前より改善はされているものの,単焦点IOLと比較すると,患者自身がコントラスト感度の低下や不快光視現象を自覚する頻度が高い.われわれ硝子体手術の術者も,そのようなレンズの特徴によって,術中の視認性が低下してしまうことをしばしば経験する.多焦点IOL挿入眼に対して硝子体手術を行う場合は,その点に留意する必要がある.対策としては,通常よりさらに術中視認性を向上させる工夫を心がける.具体的には,なるべく可視化剤を使用する,周辺部処理のみならず,黄斑部観察にも広角観察系を用いて膜.離を行うことなどが有用である.本稿では,多焦点IOL挿入眼において硝子体手術が必要となった場合に,どのような点に注意して手術をすればよいかについて述べる.聞き手:多焦点IOL挿入眼の患者に硝子体手術をするがけています.まずは,後.についてお話しましょう.際,何となく全体的に見づらく感じます.何か対策はあ前部硝子体を切除する際や後.を切除する場合は,多焦りますか?点IOLにみられるリング状の構造や回折格子のため,佐藤:多焦点IOLが挿入されていると,術野における観察しづらいことがあります(図1a).そのような場合観察像のコントラストが低下する場合があるため,すべは顕微鏡の照明を直照明のみにするなど,徹照法を用いての手技において,通常より視認性をよくすることを心ることが有用です.前眼部での光反射を極力抑えること(85)あたらしい眼科Vol.40,No.11,202314550910-1810/23/\100/頁/JCOPY考える手術によって,後.付近の構造が見やすくなります(図1b).また,眼内は広角観察系を用いて観察することが主流ですが,やはりそれでも通常よりコントラストが落ちる場合があるため,「硝子体観察を容易にするためにトリアムシノロンを用いる」「周辺部観察の際は,通常より像を拡大する」「場合に応じてIOLの外側の虹彩との隙間部分から観察する」ことなどを意識しています.視認性を良好に保つために,前眼部の状態も常に意識しながら眼内観察を行うことが重要です.聞き手:黄斑円孔の手術などで,黄斑部を観察する際にとくに見づらいのですが,どうすればよいでしょうか?佐藤:黄斑部の膜.離は,通常,拡大レンズなど直像のレンズを用いる先生も多いと思われますが,やはり直像レンズは多焦点IOLの影響を受けやすく,屈折率の異なるレンズ境界部位でとくに見づらさを感じます.対策としては,より影響を受けにくい倒像の広角観察系を用いることで,視認性が改善します.よって普段から広角観察系での黄斑部操作にも慣れておくことが有用だと思います.また,もしある角度が見づらければ,ライトパイプなどで眼球の角度を調節すると,光の入射角が変化して見やすくなることも多いです.インドシアニングリーンやブリリアントブルーなどの染色剤も,注入してから少し時間をおいてから除去する,5%グルコースで溶解するなど工夫して,より組織染色のコントラストを強調することを意識しています.聞き手:多焦点IOL挿入眼に硝子体手術を施行する場合に,他に気をつけていることはありますか?佐藤:まず多焦点IOLが挿入されている患者は,多焦点IOLにこだわりをもっているケースが多いです.なぜなら通常よりも高額な手術を受けているからです.硝子体手術後も裸眼で見えることを期待しているケースが多くみられます.しかし,残念ながら現時点で,縫着や強膜内固定を行うことができる多焦点IOLは一般的でありません.もし硝子体手術後に多焦点IOLが偏位してしまった場合は,眼内に再度挿入できるのは,基本的に単焦点IOLとなってしまいます.極端に最周辺部まで硝子体を切除することによって,Zinn小帯を障害し,のちにIOL偏位をきたした事例も報告されており,硝子体切除範囲にも注意が必要です.一方で網膜.離など硝子体郭清をしっかりと行うことが望ましい場合もあり,悩ましいところですが,術前に患者にしっかり説明をして,術後にIOL偏位が起こりうる可能性についても同意を得ておくことが重要だと考えています.術後IOLの位置が変化して,レフ値が変化する可能性については,単焦点IOLと比較して,多焦点IOLのほうが広い範囲で焦点が合うため,自覚症状として問題にならないケースが多いですが,一つの可能性として事前に説明することは必要だと考えます.最後に他院で多焦点IOLが挿入されていて,それがどのような種類のレンズか不明である場合は,空気置換を行うべきかという判断は慎重に行っています.親水性アクリルのレンズの場合は,空気置換後にカルシウム沈着を起こしたといった事例もあるため,挿入されているレンズが不明である場合は,網膜.離などの空気置換が必須である疾患を除き,可能であれば空気置換を避けるように心がけています.図1多焦点眼内レンズ挿入眼における後.の見え方a:レンズ表面の反射や回折格子により,後.観察が困難である.b:徹照法を用いることで,後.観察がしやすくなる.1456あたらしい眼科Vol.40,No.11,2023(86)

抗VEGF治療:Pachychoroid Neovasculopathyの治療

2023年11月30日 木曜日

●連載◯137監修=安川力五味文117PachychoroidNeovasculopathy山本学大阪公立大学大学院医学研究科視覚病態学の治療Pachychoroidneovasculopathy(PNV)はパキコロイド関連疾患の一つとされ,脈絡膜の異常を伴ったC1型黄斑新生血管を伴うのが特徴とされる.本稿では,PNVの特徴およびその病態に基づいた治療を,これまでのエビデンスをもとに概説する.はじめにPachychoroidCneovasculopathy(PNV)はパキコロイド関連疾患,またはパキコロイドスペクトラム疾患群(pachychoroidspectrumdiseases:PSD)とよばれる一連の疾患群の一つとされる.Pachychoroidとは,その名の通り脈絡膜の肥厚を意味し,中心性漿液性脈絡網膜症(centralCserouschorioretinopathy:CSC)や滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD),その特殊型のポリープ状脈絡膜血管症(polyp-oidalCchoroidalvasculopathy:PCV)といった疾患に関連する病態として着目されるようになった.PSDの定義は報告によってまちまちであるが,CSCに代表される脈絡膜血管の拡張や脈絡膜血管透過性亢進といった脈絡膜の異常を伴うとされ,最近では脈絡膜血管(おもに中大血管)の拡張を重視し,脈絡膜厚の肥厚は必ずしも必須の所見ではないとされる傾向にある.PSDの中でも脈絡膜新生血管を伴うものをCPNVとし,CSCやAMD,PCVと区別するようになっている.CPNVの診断PNVはその病態から欧米人と比較してアジア人に多く,最近のわが国の報告でもCPNVの比率はCAMDのC20%程度にみられるとされる1).PNVでは,光干渉断層計(opticCcoherencetomography:OCT)でCType1黄斑新生血管(macularneovascularization:MNV)に伴う網膜色素上皮の不整隆起がみられ,漿液性網膜.離のような滲出性病変を伴うことが多い.インドシアニングリーン蛍光造影は脈絡膜血管の透過性亢進やCMNVの診断に有用であるが,MNVは光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)が描出に優れている(図1,2).CPNVの治療PNVはCCSCにみられるような脈絡膜異常と,AMDにみられるCMNVという二つの要素をもつため,治療も(83)C0910-1810/23/\100/頁/JCOPYIA図1PNVの画像眼底は漿液性網膜.離に一致して網膜色素上皮異常がみられ,眼底自発蛍光(FAF)では網膜.離部に異常過蛍光がみられる.フルオレセイン蛍光造影(FA)ではCMNVからの漏出,インドシアニングリーン蛍光造影(IA)では脈絡膜血管の拡張と異常透過性亢進を認める.その二つの方向性から考えることができる.CSC,とくに慢性CCSCの治療として考えると,脈絡膜血管の透過性亢進を抑制する目的としては,光線力学的療法(pho-todynamicCtherapy:PDT)が有効であることが知られている.慢性CCSCに対しては,保険適用外であるが照射量や照射時間,ベルテポルフィンの投与量を半減したPDTにより漿液性網膜.離の改善や脈絡膜厚の減少が期待でき,治療として確立されている.このため,PNVに対してもCPDTにより,視力の改善や漿液性網膜.離の消失,脈絡膜厚の減少など病態の改善に寄与できたとする報告が多数なされている2).一方,PNVにおけるCMNVの病態に着目すると,あたらしい眼科Vol.40,No.11,20231453OCTOCTA図2OCTおよびOCTAの治療前後図C1と同一症例におけるアフリベルセプト硝子体内注射併用光線力学的療法の治療前後のCOCTおよびCOCTA画像.上段が治療前で,OCTでは漿液性網膜.離とCMNVを疑う網膜色素上皮の隆起を認め,OCTAではCMNVが描出されている.下段は治療C3カ月後で,網膜.離は消失し,MNVも範囲が縮小し目立たなくなっている.AMD治療として代表的な抗CVEGF薬が適応として考慮され,その有用性も検証されている.PNVに対するベバシズマブ,ラニビズマブ,アフリベルセプトの有効性を比較した検討では,平均C30カ月の経過で網膜厚は3群とも有意に減少する一方で,脈絡膜厚はベバシズマブで有意な減少はみられなかったがラニビズマブ,アフリベルセプトで有意に減少し,アフリベルセプトが他の2薬より少ない回数で治療が可能であったと報告している3).いずれにしても,抗CVEGF薬はCPNVの治療に有効であると考えられる.また,PDTと抗CVEGF薬の併用療法も,PNVに対してより高い治療効果を示す可能性がある.Matsumotoらは,PNVに対しアフリベルセプト併用照射エネルギー半減CPDTを施行し,視力改善や中心窩網膜厚,中心窩脈絡膜厚といった解剖学的な改善がC1年間維持されたことを報告している4).また,Takeuchiらは,PNVに対しアフリベルセプト併用投与量半減CPDTを施行した半年間の結果を検討し,年齢が若い,治療歴がない,MNVのサイズが小さいもので効果が高い可能性があると考察している5).PNVに対しては,VEGF薬とCPDTの併用はその病態からも理にかなっており,推奨されうる(図2).CPNV治療の今後これまで述べてきたように,PNVの治療はCPDT,抗VEGF薬,もしくはその併用療法で効果が認められてC1454あたらしい眼科Vol.40,No.11,2023いるが,どの治療がもっとも推奨されるかは現在のところ不明である.PNVの病態は網膜色素上皮細胞や脈絡膜循環などのさまざまな要素が関連しているため,AMDやCCSCに対する治療と同様に,各病態の特性に応じた治療法を選択していく必要があると考えられる.文献1)MiyakeM,OotoS,YamashiroKetal:Pachychoroidneo-vasculopathyCandCage-relatedCmacularCdegeneration.CSciCRepC5:16204,C20152)MatsumotoCH,CHiroeCT,CMorimotoCMCetal:E.cacyCofCtreat-and-extendCregimenCwithCa.iberceptCforCpachycho-roidCneovasculopathyCandCtypeC1CneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.CJpnCJCOphthalmolC62:144-150,C20183)KarasuCB,CAkbasCYB,CKaskalCMCetal:LongCtermCresultsCofthreeanti-vascularendothelialgrowthfactoragentsinpachychoroidCneovasculopathy.CCutanCOculCToxicolC41:C145-154,C20224)MatsumotoCH,CMukaiCR,CKikuchiCYCetal:One-yearCout-comesCofChalf-.uenceCphotodynamicCtherapyCcombinedCwithCintravitrealCinjectionCofCa.iberceptCforCpachychoroidCneovasculopathywithoutpolypoidallesions.JpnJOphthal-molC64:203-209,C20205)TakeuchiJ,OtaH,NakanoYetal:PredictivefactorsforoutcomesCofChalf-doseCphotodynamicCtherapyCcombinedCwithCa.iberceptCforCpachychoroidCneovasculopathy.CGrae-fesCArchCClinCExpCOphthalmol2023(onlineCaheadCofprint)(84)

緑内障:Heads-up surgeryと OCTを用いた緑内障手術

2023年11月30日 木曜日

●連載◯281監修=福地健郎中野匡281.Heads-upsurgeryとOCTを用いた杉原一暢島根大学医学部眼科学講座緑内障手術Heads-upsurgery(HUS)は,顕微鏡の鏡筒を覗く代わりに大型の専用ディスプレイを見ながら行う手術である.網膜・角膜領域では有用性が多く報告されているが,緑内障領域では限定的な活用にとどまっている.緑内障手術中のCHUSとCOCTの活用について概説する.●はじめにHeads-upsurgery(HUS)は,角膜疾患・白内障・網膜疾患の手術では,術中光干渉断層計(opticalCcoher-encetomography:OCT)による移植片のアダプテーションの確認,CCCマーカー,トーリックマーカー,黄斑円孔の確認をはじめとした多彩なデジタル支援技術や,教育面での有用性との親和性もあり,使用する術者や導入する施設が増えてきており,眼科手術における一つのトピックとなっている.とくに硝子体手術においては,内境界膜.離時に黄斑円孔形成の有無や,翻転した内境界膜の位置確認,また強膜内固定術では眼内レンズの偏位の確認など,多くの有用性が報告されている.しかし,画面のハレーションや,ディスプレイがC1台だと助手の座る位置が限られる,手術室が狭いとディスプレイを置く位置に難渋する,OCTを操作する人員が必要,などいくつかのデメリットも存在している.緑内障手術では,単純なCHUSは使用できるが,術中COCTはまだまだ活用できていないのが現状である.C●HUSの手術顕微鏡顕微鏡はCAlcon社のCNgenuityとCZeiss社のCARTE-VO800が使用可能である.多少のタイムラグがあるとされるが,硝子体手術での報告では,通常の手術操作の範囲内では気にならないとしている1).これらの顕微鏡にCZeiss社のCRescan700を組み合わせることでCHUSにおける術中COCTが使用可能となる.本稿における画像はすべて当院で手術を行ったCARTEVO800とCRes-can700による術中画像である.C●緑内障手術におけるHUSとOCTの活用緑内障手術における術中COCTの活用はいくつか既報があるが,強膜フラップの確認や,エクスプレスや緑内障チューブシャント手術のチューブ位置確認,ブレブの広がりの確認などにとどまっており,正直にいうと「術(81)中COCTがあると非常に便利な手術ができる」というわけではない.実際に緑内障手術で活用しようとすると,いくつかの困難に直面する.たとえば,隅角手術では隅角レンズを使用するため,手術部位にCOCTでピントを合わせるのが困難で,どうしても解像度が下がってしまう.球後麻酔を行い眼球運動を抑制する硝子体手術とは異なり,隅角手術では眼球運動や隅角鏡の押し手によって眼球が動いてしまう.また,角膜や硝子体と違い,観察部位に少量の出血があるだけで,解像度が一気に低下してしまう.そのような限定的な条件の中でも,いくつかの挑戦を行ったので紹介する.C●隅角鏡下のSchlemm管の同定外来で前眼部COCTを撮影するとCSchlemm管や集合管が確認できることがあるが,MicrohookCabCinternoCtra-beculotomyの術中は前房内の粘弾性物質や隅角鏡の圧迫のためか,Schlemm管の同定はむずかしかった(図1).マイクロフックが金属製品のため,隅角切開の瞬間は観察がむずかしい.切開後に確実に線維柱帯が切開されてCSchlemm管が開放されていることは確認できる(図2:).切開の瞬間はマイクロフックを動かすと眼球が動くため,切開部分をCOCTで見ながら切開するのは至難の業である.切開後の開放確認にとどめることをお勧めする.CiStentinjectW挿入後に術中COCTで確認すると,隅角部に埋め込まれた本体が確認できる(図3:).深く埋没していないことは確認できるが,金属製品のため詳細はわからない.Ahmed緑内障バルブ挿入時の自己強膜弁作製を術中OCTで撮影した(図4).十分な厚さのフラップが作製されている.しかし,OCTがなくても「見ればわかる」ので,有用性という意味ではあまり利点がない.C●おわりにHUSおよび術中COCTは硝子体手術の分野では活用あたらしい眼科Vol.40,No.11,202314510910-1810/23/\100/頁/JCOPYされてきているが,緑内障手術においては有用性が低く,観察時間は単なる手術時間の延長を意味している.HUSはスタッフに対する手術教育という面では多くの利点があるが,術者に対するメリットはまだまだ少ない.ただし,今後は緑内障手術も含めて眼科手術はロボット手術化,遠隔手術化していく可能性もあり,緑内図1前房内を粘弾性物質で置換後,隅角鏡越しにOCT撮影図2赤矢印部分でSchlemm管が切開されフラップでできていることがわかる図3赤矢印部分にiStentinjectWが埋没していることがわかる図4翻転したフラップが確認できる障術者もCHUSに慣れていく必要があるかもしれない.文献1)TaKimD,ChowD:Thee.ectoflatencyonsurgicalper-formanceCandCusabilityCinCaCthree-dimensionalCheads-upCdisplayCvisualizationCsystemCforCvitreoretinalCsurgery.CGraefesArchClinExpOphthalmolC260:471-476,C20221452あたらしい眼科Vol.40,No.11,2023(82)

屈折矯正手術:円錐角膜に対する眼内レンズ度数計算

2023年11月30日 木曜日

●連載◯282監修=稗田牧神谷和孝飯島敬282.円錐角膜に対する眼内レンズ度数計算新百合ヶ丘眼科,北里大学病院円錐角膜眼に対する眼内レンズ(IOL)度数計算において,進行例はケラト値の過大評価により遠視ずれを生じて予測性が低下する.以前はCSRK/式を用いるのが主流であったが,近年は円錐角膜用の補正式として,Kane円錐角膜式やCBarrettTrueK円錐角膜式があり,SRK/T式より予測性が向上している.●はじめに円錐角膜眼に対する眼内レンズ(intraocularlens:IOL)度数計算は予測性が低いことが知られている1,2).本稿では,これまでの円錐角膜眼に対するCIOL度数計算に関する既報や現状について紹介する.C●円錐角膜眼における屈折誤差IOL度数計算式の選択について,2018年に神谷らが各CIOL度数計算式(SRK/T式,Haigis式,Ho.erQ式,Holladay1式,Holladay2式,SRKCII式)の予測性を比較したところ,SRK/T式がもっとも良好であったことを報告している1).また近年,正常角膜眼に対してCBar-rettCUniversalII式はCSRK/T式より予測性が高いことが知られているが,円錐角膜眼に用いても向上しないことが報告されている2)(表1).そして,どの計算式でも円錐角膜の病期が中等度以上になると,ケラト値の過大評価により遠視ずれを生じ予測性が低下する.ケラト値を過大評価している要因として,神谷らは,円錐角膜の角膜後面屈折力は円錐角膜の病期が進行するほど大きくなって,角膜前面換算屈折力と角膜全屈折力の乖離が大きくなることを報告している3).C●円錐角膜用の補正式の登場2020年以降に円錐角膜用の補正式としては,Kane円錐角膜式やCBarrettTrueK円錐角膜式がCSRK/T式より予測性が高いことが報告され4,5),オンラインで使用可能となっている.Kane円錐角膜式の度数計算の必須入力項目は眼軸長,ケラト値,前房深度,A定数,性別で,オプションは水晶体厚,角膜厚,目標屈折の範囲は.6.0~+2Dで,「Keratoconus」というタグを押してから度数計算を行う.BarrettCTrueK円錐角膜式の度数計算のパラメータとして,必須入力項目は眼軸長,ケラト値,前房深度,A定数,オプション項目は水晶体厚,whiteCtoCwhite(WTW)で,角膜後面屈折は予測値(Predicted)か実測値(Measured)を選択できる.目標屈折の範囲はC.10~+10Dで,Historyを「Keratoconus」に選択してから度数計算を行う.予測屈折に対する±1.0D以内の割合は,Kane円錐角膜式は軽度の場合はCSRK/T式とほぼ同等だが,進行例表1円錐角膜眼に対するIOL度数計算の既報著者眼数病期の内訳度数計算式予測屈折に対する±1.0D以内の割合CKamiyaetal1)101眼病期1:65眼病期2:20眼病期3:8眼病期4:8眼CSRK/TMild:C80%Moderate:32%Severe:C0%CSavinietal2)41眼病期1:21眼病期2:13眼病期3:7眼CSRK/T病期C1:80.95%病期C2:53.85%病期C3:14.29%CBUII病期C1:76.19%病期C2:23.08%病期C3:14.29%CKane円錐角膜病期C1:90.5%病期C2:56.8%病期C3:48.0%CKaneetal4)146眼病期1:84眼病期2:37眼病期3:25眼SRK/T病期C1:88.1%病期C2:48.6%病期C3:20.0%CBUII病期C1:89.3%病期C2:54.1%病期C3:16.0%CSRK/TC84%57眼Kane円錐角膜C79%Vandevenneetal5)病期1:36眼病期2:17眼病期3:4眼CBTK円錐角膜(Predicted)C88%BTK円錐角膜(Measured)C90%BUII:BarrettUniversalII,BTK円錐角膜:BarrettTrue円錐角膜.(79)あたらしい眼科Vol.40,No.11,202314490910-1810/23/\100/頁/JCOPYになるとCSRK/T式より予測性が向上している4).Bar-rettTrueK円錐角膜式もCSRK/T式より予測性は向上しているが,角膜後面屈折力は実測値を用いても,予測値の場合とほぼ同等の予測性であることが報告されている5)(表1).C●症例提示軽度の円錐角膜眼に対して白内障手術を施行した症例を示す.患者はC62歳,女性.術前矯正視力C0.15(0.5C×sph.2.00D(cyl.1.50DA50°),IOLMaster700(CarlZeiss社)で生体計測を行い,K1:44.06D,K2:46.32D,眼軸長C24.43Cmm,前房深度C3.37Cmmであった.トポグラフィ画面を図1に示す.近方狙いで,AQ-110NV(STAAR社)+20.5Dを挿入した.予測屈折はCKane円錐角膜式で.2.55D,BarrettCTrueK円錐角膜式でC.2.3D,SRK/T式でC.2.18Dであった.術後C1カ月の矯正視力はC0.2(1.0C×sph.2.00D(cyl.1.50DCA15°×IOL)であった.予測誤差はそれぞれC.0.20D,C.0.45D,C.0.57Dで,3式ともにほぼ同等の予測性で屈折誤差も小さかった.次に,進行した円錐角膜眼に対して白内障手術を施行した症例を示す.患者はC52歳,男性.術前視力はC0.02(0.3C×sph.14.0D),IOLMaster700で生体計測を行い,K1:51.85D,K2:56.33D,眼軸長C26.03Cmm,前房深度C3.23Cmmであった.トポグラフィ画像を図2に示す.近方狙いで,PU6A(興和)+6.0Dを挿入した.予測屈折はCKane円錐角膜式でC.2.33D,BarrettCTrueK円錐角膜式で.4.5D,SRK/T式でC.5.44Dであった.術後1カ月の矯正視力はC0.3(1.0C×sph+1.00D(cyl.3.00DCA70°×IOL),予測誤差はそれぞれ+1.83D,+4.00D,+4.94Dで,3式ともに遠視ずれを生じたが,Kane円錐角膜式やCBarrettTrueK円錐角膜式はCSRK/T式より遠視ずれが軽減した.C●おわりに円錐角膜用の補正式であるCKane円錐角膜式やCBar-rettTrueK円錐角膜式は,進行例でCSRK/T式より遠視ずれが小さくなって予測性が向上するが,補正式でIOL度数計算しても遠視ずれの症例があることに注意して度数決定したほうがよい.文献1)KamiyaCK,CIijimaCK,CNobuyukiCSCetal:PredictabilityCofCIntraocularClensCpowerCcalculationCforCcataractCwithCkera-toconus:AccuracyCofCintraocularClensCpowerCformulasCmodi.edCforCpatientsCwithkeratoconus:ACmulticenterCstudy.SciRepC8:1312,C20182)SaviniCG,CAbbateCR,CHo.erCKJCetal:IntraocularClensCpowerCcalculationCinCeyesCwithCkeratoconus.CJCCataractCRefractSurgC45:576-581,C20193)KamiyaCK,CKonoCY,CTakahashiCMCetal:ComparisonCofCsimulatedkeratometryandtotalrefractivepowerforker-atoconusCaccordingCtoCtheCstageCofCAmsler-KrumeichCclassi.cation.SciRepC8:12436,C20184)KaneJX,ConnellB,YipHetal:AccuracyofintraocularlensCpowerCformulasCmodi.edCforCpatientsCwithCkeratoco-nus.Ophthalmology127:1037-1042,C20205)VandevenneCMMS,CWebersCVSC,CSegersCMHMCetal:CAccuracyofintraocularlenscalculationsineyeswithker-atoconus.JCataractRefractSurgC49:229-233,C20231450あたらしい眼科Vol.40,No.11,2023(80)