StevensJohnson症候群(重症薬疹)の鑑別と眼科的対応DiagnosisandOcularManagementofStevens-JohnsonSyndrome駒井清太郎*外園千恵*はじめにStevens-Johnson症候群(Stevens-JohnsonCsyn-drome:SJS)は,高熱や全身倦怠感に加えて,皮膚や口唇,口腔,眼,外陰部など全身の粘膜に紅斑,びらん,水疱を多発する重篤な疾患である.壊死性の組織障害を特徴とし,表皮.離が全身のC10%未満のものをSJS,10%以上に及ぶものを中毒性表皮壊死症(toxicepidermalCnecrolysis:TEN)と分類するが,両者は連続した疾患スペクトラムと考えられており,本稿ではこれらを区別せず,SJSとして取り扱う.SJSは全身性の疾患として非常に重篤であり,致死率も高く報告されている.眼科領域では,急性期に眼合併症を認める割合は約C60%とされており,そのうちの半数近くで重篤な眼障害に進展し,視力に大きな影響を及ぼす可能性がある1).かつては,重篤な全身状態のために眼科的介入が遅れ,慢性期に最重度の眼障害を呈した状態で紹介されるケースもしばしばみられた.こうした背景から,SJSにおける眼病変の重症度とその早期対応の重要性が強く認識されるようになってきた.2005年に改訂された重症多形滲出性紅斑の診療ガイドラインでは,眼所見が重症度評価スコアに加えられ,それを受けて発症直後に眼科へのコンサルトが増加し,眼科医が急性期の治療にかかわる機会も増えている.急性期においては,全身的なステロイドパルス療法の有効性や,局所へのステロイド投与による消炎効果が報告されており,炎症の早期制御が視機能予後においてきわめて重要とされている.しかし,SJSは比較的まれな疾患であり,多くの眼科医にとって急性期の治療経験は限られている.また,発症早期には全身状態が不安定で,専門施設への迅速な紹介がむずかしいことも少なくない.そのため,普段あまり経験のない眼科医が急性期のCSJS患者に直面した際に適切な対応に戸惑うことも想定される.こうした背景を踏まえ,本稿では急性期SJSにおける眼科的管理の実際を整理し,臨床現場において突発的に対応を求められる状況においても適切な判断と対応が行えるよう,その一助となることを願う.慢性期に移行したCSJSでは,眼表面に瘢痕性変化を残し,重篤な視機能障害を引き起こすことが多く,患者の生活の質(qualityoflife:QOL)を著しく低下させる.これまで,慢性期眼合併症に対する外科的治療は難渋し,視力回復は困難であると考えられてきた.しかし近年,再生医療の応用や特殊なコンタクトレンズ(contactlens:CL)の導入など,治療法の選択肢が広がり,患者が自立した生活を送るための視機能回復も現実味を帯びてきた.SJSは若年者にも発症しうる疾患であり,視機能障害はその後の人生に大きな影響を及ぼす.本稿では,SJSの急性期治療におけるアプローチと,慢性期の治療戦略の進歩について概説することで,患者の長期的な視機能維持とCQOL向上をめざした診療に貢献することを目的とする.*SeitaroKomai&ChieSotozono:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕駒井清太郎:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学(1)(67)C10010910-1810/25/\100/頁/JCOPY図1急性期SJSの眼所見上眼瞼結膜に偽膜の形成がみられる.角膜上皮欠損はフルオレセイン蛍光造形により観察される.図2急性期SJSにおける偽膜除去結膜上に形成される偽膜は,鑷子などを用いて組織に対して愛護的に除去する.図3慢性期SJSにおける眼瞼結膜の瘢痕化と眼瞼縁の不整眼瞼結膜の瘢痕化や角化は軽症例にもみられ,眼表面との摩擦を増加させて慢性的な炎症を引き起こす.-図4瞼球癒着の解除を目的としたCOMET術前後の前眼部所見a:術前の前眼部写真.角膜上に高度の瞼球癒着を認める.b:COMET後C6カ月.瞼球癒着が解除され,瞳孔領が確認できる.Cc:COMET後C9年.瞼球癒着の解除部位は癒着の再発なく長期的に維持されている.図5輪部支持型コンタクトレンズ輪部支持型コンタクトレンズを装用した慢性期CSJSの前眼部写真.レンズは角膜輪部で支持され,不正乱視の矯正による視力向上と,眼表面摩擦の低減や涙液の保持による眼表面環境の改善が期待される.アイや眼痛のため,一般的なCHCLの装用は困難なことが多い.一方,欧米で使用される強膜レンズは直径が16.23Cmmと大きく,癒着性変化により結膜.が短縮している患者では装用自体がむずかしい.輪部支持型CCLは直径C13.14Cmmとやや小さく,角膜輪部を支持部とするため装用時の刺激が少なく,涙液交換が十分に行なわれる設計となっている.また,輪部支持型CCLの装用が視力を改善するだけではなく,慢性期CSJSの眼表面障害におけるサイトカインの減少や眼表面炎症の抑制に寄与することが明らかになってきている15.17)(図5).上述したCCOMETと輪部支持型(limbalrigid)CLを併用することで,角化や癒着を伴う最重症の眼の視力回復が可能になってきた14).おわりに本稿では,SJSにおける眼障害に対して,急性期・慢性期の管理から,慢性期における眼表面再建の課題から新たな治療戦略までを概説した.急性期には適切かつ十分な消炎治療を行うとともに,急激に変化しうる眼所見を的確に評価し,早期に対応することが求められる.とくに,眼所見は全身治療方針の決定に影響を与えることがあるため,眼科医が果たす役割はきわめて重要である.一方で慢性期においては,多因子的かつ複雑な病態が想定されることから,各要素を丁寧に評価し,個々に応じた管理を行うことが求められる.従来の外科的手法の限界を踏まえたうえで,着実に成果を上げつつある新たな治療戦略として登場した輪部支持型CCLやCCOMETといったアプローチは,眼表面環境の改善と視機能の維持・向上に寄与する治療手段として確立されつつある.今後は,これらの治療法を個々の病態に応じて適切に選択・組み合わせることで,長期的な治療成績の向上およびCQOLの改善がいっそう期待される.文献1)PowerCWJ,CGhoraishiCM,CMerayo-LlovesCJCetal:AnalysisCofCtheCacuteCophthalmicCmanifestationsCofCtheCerythemaCmultiforme/Stevens-JohnsonCsyndrome/toxicCepidermalCnecrolysisCdiseaseCspectrum.COphthalmologyC102:1669-1676,C1995C2)SotozonoCC,CUetaCM,CNakataniCECetal:PredictiveCfactorsCassociatedwithacuteocularinvolvementinStevens-John-sonSyndromeandtoxicepidermalnecrolysis.AmJOph-thalmol160:228-237,C20153)UetaM,InoueC,NakataMetal:Severeocularcomplica-tionsCofCSJS/TENCandCassociationsCamongCpre-onset,acute,andchronicfactors:areportfromtheinternationalophthalmologycollaborativegroup.FrontMed(Lausanne)C10:1189140,C20234)UetaM,KaniwaN,SotozonoCetal:IndependentstrongassociationCofCHLA-A*02:06CandCHLA-B*44:03withcoldCmedicine-relatedCStevens-JohnsonCsyndromeCwithCseveremucosalinvolvement.SciRepC4:4862,C20145)AkpalaCCO,CErfaniCYJ,CYoungCJCetal:Stevens-JohnsonCsyndromeandtoxicepidermalnecrolysis-likeeruptionsinpatientsCtreatedCwithCimmuneCcheckpointinhibitors:aCsystematicreview.IntJDermatolC63:e397-e404,C20246)QinCK,CGongCT,CRuanCSFCetal:ClinicalCfeaturesCofCSte-vens-JohnsonCsyndromeCandCtoxicCepidermalCnecrolysisCinducedCbyCimmuneCcheckpointCinhibitorCversusCnon-immunecheckpointinhibitordrugsinChina:across-sec-tionalCstudyCandCliteratureCreview.CJCIn.ammCResC17:C7591-7605,C20247)ArakiCY,CSotozonoCC,CInatomiCTCetal:SuccessfulCtreat-mentCofCStevens-JohnsonCsyndromeCwithCsteroidCpulseCtherapyCatCdiseaseConset.CAmCJCOphthalmolC147:1004-1011,C20098)MienoCH,CUetaCM,CKinoshitaCFCetal:CorticosteroidCpulseCtherapyCforCStevens-JohnsonCsyndromeCandCtoxicCepider-malnecrolysispatientswithacuteocularinvolvement.AmCJOphthalmolC231:194-199,C20219)MatsumotoCK,CUetaCM,CInatomiCTCetal:TopicalCbeta-methasoneCtreatmentCofCStevens-JohnsonCSyndromeCandCtoxicepidermalnecrolysiswithocularinvolvementintheacutephase.AmJOphthalmolC253:142-151,C202310)IyerCG,CPillaiCVS,CSrinivasanCBCetal:MucousCmembraneCgraftingCforClidCmarginCkeratinizationCinCStevens.Johnsonsyndrome:results.CorneaC29:146-151,C201011)長野広実,渡辺彰英,奥拓明ほか:難治性眼表面疾患に伴う眼瞼の異常に対する手術治療.日眼会誌C128:672-679,C202412)KomaiCS,CInatomiCT,CNakamuraCTCetal:Long-termCout-comeCofCcultivatedCoralCmucosalCepithelialCtransplantationCforfornixreconstructioninchroniccicatrisingdiseases.BrJOphthalmolC106:1355-1362,C202213)InatomiCT,CNakamuraCT,CKojyoCMCetal:OcularCsurfaceCreconstructionCwithCcombinationCofCcultivatedCautologousCoralCmucosalCepithelialCtransplantationCandCpenetratingCkeratoplasty.AmJOphthalmolC142:757-764,C200614)AzizaCY,CImaiCK,CItoiCMCetal:StrategicCcombinationCofCcultivatedoralmucosalepithelialtransplantationandpost-operativeClimbal-rigidCcontactClens-wearCforCend-stageCocularsurfacedisease:aretrospectivecohortstudy.BrJ1006あたらしい眼科Vol.42,No.8,2025(72)