眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋森井香織460.落下IOL摘出鑷子森井眼科クリニック眼内レンズ(IOL)が硝子体中に完全に脱臼し,網膜上に落下している患者にしばしば遭遇する.その落下IOLを安全に摘出するために,新しく硝子体鑷子を考案したので,形状や手術手技などを紹介する.●はじめに加齢によるCZinn小帯の脆弱化が原因で,白内障手術後に眼内レンズ(intraocularlens:IOL)が脱臼する患者にしばしば遭遇する1,2).IOLが後房内に留まる場合には,前房からアプローチする手術で摘出し,新しいIOLを縫着または強膜内固定することが可能である3,4).しかし,IOLが完全に脱臼して硝子体中に落下した場合には,硝子体手術による摘出が必要となる5,6).現在,硝子体手術で広く使用されている内境界膜(internallimitingmembrane:ILM)鑷子は,ILMの把持と除去を目的として設計されており7),厚みのあるアクリルCIOLを確実に掴むのには適していない.そのため,手術中にCIOLが鑷子から滑り落ち,網膜を損傷する可能性があった.この問題を解決するため,脱臼したIOLを安全かつ確実に摘出するための新しい「落下CIOL摘出鑷子」を開発した.図1に落下CIOL摘出鑷子と従来のCILM鑷子の先端形状を示す.C●デバイスの説明新しい「落下CIOL摘出鑷子」には,従来のCILM鑷子に以下のような改良を施した(図2).1.把持部分の延長:鑷子先端の把持部分をC3.3Cmmとし,従来のCILM鑷子よりも大幅に長く設計した.これによりCIOLを確実に掴むことが可能である.2.先端形状の改良:レンズが滑り落ちないように片側にギザギザをつけ,開き角度をC16.13°,開き幅を1.4Cmmに拡大した.これにより,厚みのあるアクリルレンズにも対応できるようになった.3.シャフトの延長:長眼軸眼にも対応するため,シャフトをC30Cmmと長くした.C●手術手技手術は,Tenon.下麻酔を行ったのち,硝子体手術用のポートを強膜に作製し,IOL摘出用に角膜を切開(3Cmm)する.硝子体が残存した状態でCIOLを引き上げると,IOLと硝子体が絡まり,網膜を牽引し網膜.離のリスクが生じるため,まず硝子体切除を行う.硝子体切除後,右手の硝子体カッターを落下CIOL摘出鑷子に持ち替え,ダイレクトに落下CIOLの支持部の根本を把持し,虹彩直下まで引き上げる.IOLにCSommerringや水晶体.が付着している場合は,落下CIOL摘出鑷子でIOLを把持した状態で硝子体カッターを挿入し,SomC-merringや水晶体.を除去し,IOLのみの状態にしてIOLを虹彩直下まで引き上げる.落下CIOL摘出鑷子でIOLを後房に把持した状態で,前房内に粘弾性物質を充.し,Sinskey逆フック(イナミ)またはダブルフック(イナミ)を反対側の角膜サイドポートからCIOL後面に図1落下IOL摘出鑷子とILM鑷子の先端形状の比較ILM鑷子と落下CIOL摘出鑷子を同条件下で撮影し,拡大縮小なしで比較した.ILM鑷子の先端は短く繊細に設計されており,ILMを安全に把持・除去するための特性をもつ.(81)あたらしい眼科Vol.42,No.9,2025C11610910-1810/25/\100/頁/JCOPY図2落下IOL摘出鑷子の先端形状挿入し,IOLループと光学部をこのフックで虹彩上に引き上げた後,落下CIOL摘出鑷子をCIOLから離し,硝子体ポートから抜去し,角膜切開創から挿入し,IOLループを把持し眼外に摘出する(図3).筆者が落下CIOL摘出鑷子を用いて行った手術では,すべてC1アクションでCIOLをしっかり把持することができた.IOLの周囲にCSommerringや水晶体.があるものも,1アクションでCIOLを把持でき,IOLを把持したまま安全に硝子体カッターによる処理が行えた.その後もCIOLを把持したまま,虹彩上までCIOLを引き上げることが可能であった.全例で網膜硝子体に重大な合併症を認めなかった.C●おわりにILM鑷子は,ILMを安全に.離するために,先端が小さく繊細に作製されている.20ゲージ硝子体手術の時代は鑷子類も大きく,さまざまな形状のものがあり,それらを利用してCIOLを把持,摘出することができたが,スモールゲージ硝子体手術になり,硝子体切除の効率もよくなった結果,多様な鑷子は不要となり,ILM鑷子に一本化された.現在のCIOLの主流であるアクリルCIOLは厚みがあり,ILM鑷子では把持しにくいため,図3手術手技①硝子体切除後,落下CIOL摘出鑷子で直接落下CIOLの支持部の根本を把持する.②把持したまま持ち上げる.③虹彩後面までCIOLを持ち上げ,鑷子で把持したまま,角膜サイドポートからダブルフックをCIOL後面に挿入し,IOLを虹彩上に引き上げる.かつての硝子体手術の器具のようなCIOLをしっかり把持できる鑷子をイメージして本鑷子を考案した.「落下IOL摘出鑷子」は,硝子体手術におけるCIOL摘出の安全性と効率性を大幅に向上させ,脱臼したCIOLの摘出に関連する合併症を減少させる可能がある.文献1)KimSS,SmiddyWE,FeuerWetal:Managementofdis-locatedCintraocularClenses.COphthalmologyC115:1699-1704,C20082)LeeGI,LimDH,ChiSAetal:RiskfactorsforintraocularlensCdislocationCafterphacoemulsi.cation:aCnationwideCpopulation-basedCcohortCstudy.CAmCJCOphthalmolC214:C86-96,C20203)NoguchiS,NakakuraS,TabuchiHetal:Directintraocu-larlensextractionusinganewlydevelopedlens-grabbingforceps.JClinMedC13:2938,C20244)FukuokaCS,CKinoshitaCT,CMoritaCSCetal:IntraocularClensCextractionCusingCtheCcartridgeCpull-throughCtechnique.CJCataractRefractSurgC47:e70-e74,C20215)DikciS,YilmazT:Vitreoretinalsurgeryinpatientswithintraocularlensdislocationintothevitreous.AnnMedResC28:2128-2133,C20216)SellaS,RubowitzA,Sheen-OphirSetal:Parsplanavit-rectomyforposteriorlydislocatedintraocularlenses:riskfactorsCandCsurgicalCapproach.CIntCOphthalmolC41:221-229,C20217)FerraraM,Rivera-RealA,HillierRJetal:ArandomisedcontrolledCtrialCevaluatingCinternalClimitingCmembraneCpeelingCforcepsCinCmacularCholeCsurgery.CGraefesCArchCClinExpOphthalmolC261:1553-1562,C2023