■オフテクス提供■コンタクトレンズセミナー英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く18.コンタクトレンズ装用に伴う合併症(3)糸井素啓道玄坂糸井眼科英国コンタクトレンズ協会の“ContactCLensCEvidence-BasedCAcademicReports(CLEAR)”の第C9章はコンタクトレンズ装用に伴う合併症についてである1).今回はそのC3回として,代謝性合併症(角膜低酸素),メカニカルストレス,毒性および過敏症について紹介する.CContactlens-induceddryeyeContactClens-inducedCdryeye(CLIDE)は,コンタクトレンズ(CL)装用中にのみ症状が現れ,レンズをはずすと改善するドライアイの一種である.おもなリスク因子には,レンズの素材・デザイン・装用時間,環境要因(湿度の低下や長時間の画面作業),患者要因(性別・人種・眼表面疾患の有無)などがあり,発症率はC15~55%と報告されている.CLIDEの主要な機序は,涙液層がCCLの前後で二分割されることで涙液が菲薄化し,レンズ上およびレンズ下の涙液層がそれぞれ不安定化することである.これにより,眼表面温度の上昇やCCLの湿潤性低下が生じ,さらにCCLと眼瞼・眼表面の摩擦が増加し,眼表面の炎症を誘発する可能性が指摘されている.似た単語としてCcontactClensCassociatedCdryCeye(CLADE)があり,これはCCL装用前からドライアイ症状を有する装用者をさし,裸眼でのドライアイ症状の有無によってCCLIDEと鑑別される.筆者は,いずれも後述のCcontactClensdiscomfort(CLD)と類似した概念に感じられたため,FionaStapleton先生にその区別について尋ねた.先生によると,「CLIDEは涙液層がCCLによって分割されることに着目した概念であり,一方CLDは涙液層の不安定化に加えて摩擦や炎症などの機序も考慮した概念である.中心と捉えているメカニズムに差がある.つまりCCLDのほうがより包括的であり,現状ではCCLIDEはCCLDの一部とみなされる」とのことであった.CMeibomianglanddysfunctionincontactlenswearマイボーム腺機能不全(meibomianCglandCdysfunc-tion:MGD)とは,マイボーム腺機能のびまん性の異常により涙液層の変化や眼刺激症状を引き起こす疾患であ(69)C0910-1810/25/\100/頁/JCOPYる.MGDのおもな臨床徴候には,マイボーム腺の消失,分泌物の変化,眼瞼縁の異常が含まれ,このような異常の出現はCCLの装用中止につながることが多く,CL装用感の悪化を予測する指標として注目を集めている.CL装用者におけるCMGDの有病率は約C37%と報告されているが,非装用者との統計的差異は認められていない.また,CL装用によるマイボーム腺の構造変化を示す決定的な証拠はなく,CL装用がマイボーム腺の形態にどのような影響を与えるのかについては見解が分かれている.一方,CL装用によるマイボーム腺からの分泌物であるマイバムの融点上昇や分泌量の変化が報告されており,マイボーム腺の分泌機能に変化が生じる可能性が指摘されている.MGDの管理について,眼瞼衛生や温罨法,薬物療法の有効性が述べられているが,レンズやケア用品の変更が有効かどうかについては言及されていない.CContactlensdiscomfort(CLD)CLDは「視力低下の有無を問わず,装用時間の短縮や中止を引き起こす要因となる眼の不快感」と定義されており,CL装用中止の主要因とされている.CLDの有病率はC31~58%に達すると推測されており,その原因にはCCL因子と環境因子が考えられる.CL因子としてはC1)レンズ素材,2)デザイン,3)装用スケジュール,4)レンズケアがあり,環境因子としては1)年齢や性別,2)全身疾患や点眼コンプライアンス,3)涙液を含む眼表面の状態,4)湿度や大気があげられる.CLDの治療においては,a)人工涙液の点眼に加え,レンズと眼瞼および角膜の摩擦を減少させるために,b)親水性が高く滑らかなレンズ素材の選択,c)センタリングが良好なデザインの選択,d)レンズケアの変更またはC1日使い捨て型への変更,そしてCe)加湿などの環境因子のリあたらしい眼科Vol.42,No.6,2025C711スク管理がおもな対策となる.さらに,わが国ではなじみの薄い治療法であるが,マヌカハニーやインテグリン拮抗薬,ホットアイマスク,リポソームスプレーなどが紹介されており,場所が変われば治療も異なるという印象を受けた.Stapleton先生にCCLDがなぜこんなにも注目されているのか聞いたところ,「近年では,CL分野における技術革新により,感染症などの重篤な合併症は従来よりも減少傾向にあり,それに伴い,CL装用においては“安全性”だけでなく,“快適性”の維持・向上がより重視されるようになってきています.今後は上述の治療の効果判定のために,“不快感”を客観的に評価する手法に関心が集まっています」とおっしゃっていた.CLDの治療が本当にCCL装用中止者を減らしているのかも含めて,今後の研究動向に注目したい.CComplicationswithspecialtycontactlenses強膜レンズとオルソケラトロジーレンズというC2種類の特殊レンズに関する合併症がまとめられており,以下にそれぞれのまとめ部分を抜粋する.・強膜レンズ合併症の頻度は,治療目的か屈折矯正目的かで異なり,個別のリスクとベネフィットを検討する必要がある.細菌性角膜炎のような重篤な合併症はまれであり,後ろ向き研究ではC0.5~1.6%と報告されている.「日中の曇り(fogging)」はもっとも頻度が高い視覚的合併症であり,涙液貯留層の厚さや後面の濡れ性の最適化により軽減可能である.高酸素透過素材の使用により低酸素症は臨床的に問題とならないレベルに抑えられている.水疱やマクロシストといったメカニカルストレスに伴う合併症は一過性であり,装用を中止すれば回復することが多い.装用中止のおもな原因は,視力の改善が不十分な場合,日中の曇りが持続する場合,適合が困難な場合,既存疾患の悪化などである.全体として,強膜レンズは眼表面疾患や角膜不正に対して安全で有効な選択肢とされている.・オルソケラトロジーレンズオルソケラトロジーレンズは夜間に装用し角膜を物理的に変形させる作用があるが,重篤な合併症が生じることは珍しく,感染性角膜炎を除き,ほとんどの合併症は軽度であると報告されている.さらに,感染性角膜炎の頻度も,ソフトCCLの連続装用と同程度と報告されている.合併症としてはハードCCL装用時にみられるものが多く,オルソケラトロジーレンズ特有のものはない.その他誌面の都合で割愛したが,第C9章にはほかにも上記合併症の診断表や今後の研究課題が紹介されている.診断表は「外来での使用を考慮して,情報を減らしてコンパクトにした」とCStapleton先生もおっしゃっており,とても実用的な内容になっている.興味がある方はぜひ原文を確認していただきたい.おわりにCLEAR第C9章は,他の章と比較しても非常にわかりやすくまとまっていると感じる.そのため,なるべくその魅力が減じないように注意を払って紹介してきたが,もし興味をもった方がいれば,ぜひ原文を読んでいただきたい.本稿が皆様にとってCCL分野のもつおもしろさ・奥深さに触れるよいきっかけとなったのであれば,嬉しく思います.文献1)StapletonF,BakkarM,CarntNetal:CLEARC─CContactlensCcomplications.CContactCLensCAnteriorCEyeC44:330-367,C2021C