■オフテクス提供■コンタクトレンズセミナー英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く12.強膜レンズ(2)松澤亜紀子聖マリアンナ医科大学,川崎市立多摩病院眼科土至田宏順天堂大学医学部附属静岡病院眼科英国コンタクトレンズ協会の“ContactCLensCEvidence-BasedCAcademicReports(CLEAR)”の第C7章は強膜レンズについてである1).強膜レンズに関する第C7章1)の後半で,フィッティングの評価方法や強膜レンズの課題,今後の展望について取りあげている.強膜レンズのフィッティング評価強膜レンズは,結膜上に安定し,角膜や角膜周辺部に接触しないように,レンズの動きを最小限にすることが原則である.レンズ装用直後の中央部涙液クリアランス(lensvault)がC500Cμmよりも多い場合や,100Cμmよりも少ない場合は,レンズ頂点からレンズエッジまでの高さ(lensCsagittaldepth,以下,レンズCsag)の異なるトライアルレンズに変更する必要がある.また,レンズ下の気泡の有無も重要である.約C200~400Cμm程度の適切な中央部涙液クリアランスが得られたら,レンズが安定するまで約C30分間待ったのち,以下の評価項目を確認する.①レンズ下涙液層の厚み:レンズ下涙液層の厚みを細隙灯顕微鏡で観察する際には,細くしたスリット光を斜めC45°から照射し,角膜やレンズ自体の厚みを参考にして評価する.レンズ自体の厚みが中央部と周辺部で異なる場合があるため,角膜中央,上方,下方でのレンズ下涙液層の厚みを観察する.また,レンズ下涙液層の厚みを正確に評価するには,前眼部光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)やCScheimp.ug画像を参考にするとよい.C②Landingzoneの評価:landingzoneの観察は,細隙灯顕微鏡のディフューザー光で低倍率から始め,各象限で必要に応じて倍率を上げ,血管の途絶や圧迫の有無,エッジリフトの評価を行う.また,レンズをはずしたあとの充血や結膜への圧迫,結膜ステイニングの有無を観察する必要がある.定期検査の際には,フルオレセインを結膜.に滴下し,フルオレセインがClandingzoneに入り込むことを確認することで,レンズエッジの微妙な浮き上がりやレンズ装用時の涙液交換の評価が可能である.③レンズの動きとセンタリング:レンズの水平方向や垂直方向の偏心は,細隙灯顕微鏡の目盛りやCOCTで定量が可能である.強膜レンズは,吸着力があるので瞬目や眼球運動によるレンズの動きは少ないが,fenestraC-(59)C0910-1810/24/\100/頁/JCOPYtion(開窓)のあるレンズでは吸着力が落ちるため,わずかにレンズの動きが大きくなる.そのほか,レンズが過度に動く原因としては,中央部涙液クリアランスが多い場合や,landingzoneのアライメントが悪い場合があげられる.レンズの平均偏心は耳側よりも下方で大きく,水平方向に約C0.1~1.0mm,垂直方向に約C0.2~1.7Cmmであることが報告されているが,これらの値は,Clandingzoneの設計,強膜の形状,中央部涙液クリアランス,および装着時間によって大きく異なる.④定期検査の頻度と検査項目:定期検査の頻度は,患者の基礎疾患や重症度,病状によって異なるが,初めてのレンズ処方後の検診はC1~3週間後に行うことを推奨している.すでに装用している場合にも,3~6カ月を目安に定期検査を行う.定期検査の際には,通常の診察に加えて,数時間レンズを装用したあとのレンズフィッティングや日中の曇り,角膜浮腫,眼圧などの潜在的な合併症をスクリーニングできるように予定する.強膜レンズの課題①光学性能:強膜レンズは,重力や眼瞼,強膜形状の影響により,下耳側に偏心することが多い.下方偏心は,非対称なレンズ下涙液により,小さな基底下方のプリズム効果を引き起こすことがあり,片眼のみのレンズ装用者にとって問題となることがある.また,残余乱視は,レンズのたわみによっても発生することがある.これらの光学的影響は,トーリックまたはClandingCzoneのカスタマイズによりレンズの偏心を抑えること,中央部涙液クリアランスを狭めることによって最小限に抑えることができる.②細菌性角膜炎:ソフトコンタクトレンズ装用における細菌性角膜炎のリスク要因は,不衛生,夜間のレンズ装用,水道水への曝露であり,強膜レンズ関連の細菌性角膜炎を調査した正式な分析はないが,これらと同じリスク要因が当てはまる可能性が高い.③角膜浮腫:現代の強膜レンズは,円錐角膜や健康なあたらしい眼科Vol.41,No.12,2024C1443眼では約C2%,角膜移植後では平均で約C4%の角膜浮腫が生じる.これまで強膜レンズ装用により生じる角膜浮腫を軽減させるために,強膜レンズの酸素透過性を高くすることや定期的なレンズつけはずし,装用時間の短縮,涙液交換と酸素供給を改善させるデザインなど,さまざまな方法で対処されてきたが,レンズ下涙液層の厚さを最小限に抑えることが有効であるとされている.④分泌物の貯留:レンズ下涙液中の分泌物貯留は装用直後から数時間後に発生し,約C26~46%に認められるが,この分泌物は細隙灯顕微鏡やCOCTで観察できるものの正確な病因や組成は不明である.おもな症状はレンズ装用中の霧視であるが,1日C1~2回のレンズの取りはずしで改善される.また,レンズ下涙液の影響により,角膜上皮が「bogging」という状態になる.これは,レンズ除去後にフルオレセイン染色が不均一となる角膜表面の凹凸である.角膜上皮細胞の脱落を促す瞬きがない状態で,角膜上皮細胞が生理食塩水に長時間さらされることにより生じると考えられている.⑤圧迫と吸着(1)結膜弛緩:圧迫と吸着の双方が結膜弛緩の原因とされているが,レンズ下涙液の厚い部位で観察されることが多い.美容上の問題を除いて,結膜弛緩の長期的な生理学的影響は不明であるが,結膜の癒着による輪部血管新生およびパンヌスの発生に関する懸念が示されている.⑥圧迫と吸着(2)眼圧:強膜レンズ装用に伴う眼圧の変化は,短時間のレンズ装用ではほとんどないものの,装用C8時間後には平均C5.8mmHgの眼圧上昇が認められた.強膜レンズの取りはずし後の眼圧測定においては,レンズ装用による角膜厚や角膜形状の変化により,眼圧が過大評価される可能性があることを考慮する必要がある.⑦レンズの装脱着:レンズの取り扱いのむずかしさは,ハードコンタクトレンズ装用者(40%)と比較して強膜レンズ装用者(63%)のほうが高く,これが強膜レンズ脱落のおもな理由となっている.そのため,最初はゴム製のプランジャーを使ったほうがスムーズなレンズの装脱着が可能である.レンズの装脱着の際には,石鹸による手洗いが必須であり,装着の際にレンズを満たす溶液には,防腐剤を含まないものを使用する必要がある.強膜レンズの可能性①高次収差の矯正:円錐角膜に多い,コマ収差などの回転対称ではない高次収差を矯正するには,レンズの動きや回転を最小限に抑えられるトーリック,またはカスタマイズされたClandingzoneをもつ強膜レンズが適している.カスタマイズされた前面矯正デザインの強膜レンズでは,高次収差が大幅に減少し,視力が改善されたと報告があり,今後も発展する可能性がある.②ロービジョン対策:強膜レンズに埋め込まれた反射望遠鏡システムが開発されており,瞬きに反応して拡大なしとC3倍の拡大を迅速に切り替えることができるため,ロービジョン対策としての潜在的な用途がある.③スマートレンズ:スマートデバイスの分野では,多機能の仮想現実や拡張現実,涙液バイオセンシングに使用される小型化された電子部品を組み込んだレンズの設計が可能となっている.近年,強膜レンズに埋め込まれた人工虹彩が,さまざまな照明条件下での視覚シミュレーションに基づいて,レンズの透過率と有効瞳孔サイズを能動的に変更することにより,焦点深度を拡大し,球面収差などの光学収差を低減する可能性が示唆された.また,埋め込み型ディスプレイを組み込んだスマート強膜レンズが開発中であり,このデバイスはロービジョンのリハビリテーションや視覚拡張への応用が期待されている.結論強膜レンズは,角膜不正乱視や眼表面疾患の治療だけでなく,ロービジョン対策やスマートレンズなど,さまざまな用途への応用が期待されている.だからこそ,エビデンスに基づくガイドラインの作成が必要であろう.文献1)BarnettM,GoureyG,FadelDetal:CLEAR.Sclerallens-es.ContLensAnteriorEyeC44:270-288,C2021