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考える手術:38.プリザーフロマイクロシャントの手術テクニック

2025年2月28日 金曜日

考える手術.監修松井良諭・奥村直毅プリザーフロマイクロシャントの手術テクニック三浦悠作高知大学医学部眼科学講座プリザーフロマイクロシャント(PMS)は2022年にわが国で保険収載された濾過手術のドレナージデバイスである.強膜トンネルを介して前房内にチューブの先端を留置することで,結膜下に房水を濾過する仕組みとなっている.PMS手術は結膜切開・強膜露出をしたうえでマイトマイシンCを塗布し,房水を結膜下へ濾過することで濾過胞を形成するもので,コンセプトは線維柱帯切除術(TLE)と同様であるが,TLEと比較すると次のような特長がある.術中の強膜弁の作製・縫合や術後のレーザー切糸が不要なため,術後の惹起乱視が少なく,されるため,濾過胞がより円蓋部側に形成されることが多く,角膜輪部からの房水漏出をきたしにくく,術後の開放隅角緑内障の患者におけるPMSとTLEの前向きランダム化比較試験では,TLEに比べてPMSでは有意に低眼圧の発生頻度が低く,また術後早期の処置の頻度も低かった.一方で,術後1年での手術成功率は有意にPMSが低かった.総じて,PMSはTLEより眼圧下降効果が劣るものの,より低侵襲な濾過手術であり,minimallyinvasiveblebsurgery(MIBS)と称されることもある.聞き手:「プリザーフロマイクロシャント緑内障ドレ聞き手:TLEとの違いはどのような点でしょうか.ナージシステム」(参天製薬)はどのような手術ですか.三浦:術中の強膜弁の作製・縫合や術後のレーザー切糸三浦:プリザーフロマイクロシャント(Preser.oが不要なため,術後の惹起乱視が少なく,手技が簡便でMicroShunt:PMS)手術は,結膜切開・強膜露出をし手術時間が短いことがあげられます.また,強膜切開がたうえでマイトマイシンCCを塗布し,強膜トンネルをわずかなため,PMSを施行した象限への再手術(TLE介して前房内にチューブの先端を留置し,結膜下に房水やロングチューブシャント手術など)も可能です.さらを濾過する仕組みとなっていて,手術のコンセプトとしに,TLEでは強膜弁の後位端である角膜輪部から約ては線維柱帯切除術(trabeculotomy:TLE)と同様で3Cmmの位置で房水が濾過されますが,PMSではCPMSす.留置するデバイスであるCPMSは全長C8.5Cmm,外後端の角膜輪部から約C6Cmmの位置で房水が濾過され,径C350Cμm,内径C70Cμmの樹脂製のチューブです.濾過胞がより円蓋部側に形成されることが多く,角膜輪部付近の結膜からの房水漏出をきたしにくく,術後のコ(97)あたらしい眼科Vol.42,No.2,2025C2310910-1810/25/\100/頁/JCOPY考える手術ンタクトレンズの装用も可能です.聞き手:PMS手術がよい適応となるのはどのような患者でしょうか?三浦:TLEでは術中の線維柱帯の切除後に急激な眼圧下降をきたすため,無硝子体眼や強度近視眼などでは脈絡膜出血を生じる可能性があります.PMSでは強膜トンネル作製時にわずかに眼圧下降をきたすのみであり,術中の脈絡膜出血の危険性が低く,無硝子体眼や強度近視眼などの場合はCPMSが好適と考えます.また,TLEでは術後に低眼圧の頻度が高く,ときに低眼圧黄斑症を発症したり,また強膜弁の作製や縫合に伴う術後の惹起乱視が起こりやすいため,術後に視力低下の自覚症状が出現することもまれではありません.そのため,術前視力が良好な眼ではCTLEの手術適応のハードルが高くなりやすいのですが,PMSではそれらの頻度が高くないため,医師側からは手術を勧めやすく,患者側は受け入れやすいと思います.さらに,TLEでは感染予防の点から術後にコンタクトレンズの使用が制限されますが,PMSでは使用が可能であり,術後にもコンタクトレンズ装用の希望がある患者にも好適です.聞き手:PMS手術では,どのようなことに注意するべきでしょうか.三浦:もっとも頻度が高く,注意すべき術後合併症は低眼圧です.低眼圧の多くは自然軽快しますが,浅前房や脈絡膜.離,低眼圧黄斑症をきたすこともあります.その場合は粘弾性物質の前房内注入などの処置が必要となりますが,それでも改善が得られない場合は,房水流出抵抗を増加させるためにCPMSの内腔にナイロン糸をステントとして留置する必要があります1).過去の報告では術後の低眼圧はC2.69%,自験例ではC65.2%で発症しており,比較的高頻度で低眼圧が発症することがわかっ図1プリザーフロマイクロシャント(PMS)の閉塞と露出の例a:硝子体によるCPMS先端の閉塞.Cb:PMSの露出.ていますので,術中の予防的なステント留置が有効と考えます.9-0またはC10-0ナイロン糸をステントとしてPMS内腔に留置することで,術直後からの低眼圧の予防することが可能です2).また,そのステントの断端を角膜輪部付近に固定しておくことで,術後の眼圧上昇時にステントを抜去して眼圧下降を得ることが可能となります.ナイロン糸の径やステント抜去のタイミングについては検討が必要ですが,過去の報告や自験例から,術中のステント留置は術後の低眼圧予防に有効な方法と考えます.聞き手:低眼圧以外の合併症としては何がありますか.三浦:角膜内皮障害にも注意が必要です.PMSの先端と角膜内皮の距離が短いほど角膜内皮障害が発生しやすいとの報告があるため,虹彩寄りにCPMSを留置する必要があります.さらに,まれではありますがCPMSの閉塞や露出も起こりえます(図1).PMSの内径はわずかC70Cμmであり,硝子体やフィブリン,出血塊などによりCPMSの内腔が閉塞し,眼圧上昇をきたす場合があります.また,Tenon.が薄い高齢者やぶどう膜炎続発緑内障の患者ではCPMSが結膜上に露出する場合もあります.PMSはCTLEに比べて低侵襲ではあるものの,このようなさまざまな術後合併症が起こりうるため,それらに対応できる知識や技術は必要です.聞き手:多様化する緑内障手術のなかでのCPMSの位置づけを教えてください.三浦:現時点では,侵襲度においてはCiStentや線維柱帯切開術などの低侵襲緑内障手術(minimallyinvasiveglaucomasurgery:MIGS),PMS,TLEの順に高く,眼圧下降効果はCTLE,PMS,MIGSの順に低く,PMSは,侵襲度,眼圧下降効果においてCMIGSとCTLEの中間に位置する術式と考えられます.今後,長期的なPMSの有効性や安全性が明らかになれば,この位置づけも変化していく可能性はあります.文献1)MiuraCY,CFukudaCK,CYamashiroK:AbCinternoCintralumi-nalstentinsertionforprolongedhypotonyafterPreserFlomicroshuntimplantation.CureusC16:e60221,C20242)MiuraCY,CFukudaCK,CYamashiroK:ComparisonCofCout-comeswithandwithoutintrastentplacementduringPMSsurgery.SciRepC15:2981,C2025232あたらしい眼科Vol.42,No.2,2025(98)

抗VEGF治療セミナー:糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF療法の毛細血管瘤退縮効果

2025年2月28日 金曜日

●連載◯152監修=安川力五味文132糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF療法の新井律樹毛細血管瘤退縮効果春田雅俊久留米大学医学部眼科学講座抗CVEGF療法は,糖尿病黄斑浮腫に対するすぐれた治療効果だけでなく,局所性黄斑浮腫の原因となる毛細血管瘤を退縮する効果も報告されている.糖尿病黄斑浮腫では,抗CVEGF療法に抵抗性を示す毛細血管瘤を選択的に局所光凝固する低侵襲治療を心がけることで,患者の視力を長期にわたって維持できる可能性がある.はじめに糖尿病黄斑浮腫は,毛細血管瘤(microaneurysm:MA)からの漏出による局所性黄斑浮腫と,広範な血液網膜関門の障害に伴うびまん性黄斑浮腫に大別される.糖尿病黄斑浮腫に対しては,抗血管内皮増殖因子(vas-cularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法,ステロイド眼局所投与,局所光凝固,硝子体手術などの治療の選択肢があるが,抗CVEGF療法が第一選択となることが多い.抗CVEGF療法は,糖尿病黄斑浮腫に対してすぐれた治療効果を示すだけでなく,局所性黄斑浮腫の原因となるCMAを退縮する効果もあることが報告されている.Ca図1糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF療法による毛細血管瘤の退縮効果a:治療前.インドシアニングリーン蛍光造影の後期で,毛細血管瘤(内)は過蛍光に描出されている.b:治療前の毛細血管瘤(.,aの内と同一)を含むCOCT斜めスキャン(aの→に沿うスキャン).c:導入期毎月C3回のアフリベルセプトC2Cmg硝子体内注射後C1カ月.インドシアニングリーン蛍光造影の後期で,aと同一の毛細血管瘤(内)は過蛍光を示していない.d:治療後の毛細血管瘤(.,cの内と同一)を含むCOCT斜めスキャン(cの→に沿うスキャン).毛細血管瘤は治療前と比べて退縮している.抗VEGF療法によるMAの退縮効果VEGFには血管新生や血管透過性亢進の作用があり,糖尿病網膜症におけるCMA形成の病態に深くかかわっている.健常なカニクイザルの硝子体腔にCVEGFの組換え蛋白質を注射するだけで,眼底に糖尿病網膜症に特徴的なCMAを形成することができる1).一方,糖尿病黄斑浮腫に対する抗CVEGF療法ではCMAは退縮傾向を示す.Sugimotoらは,導入期にC3回のアフリベルセプト2Cmg硝子体内注射をした糖尿病黄斑浮腫のC25眼では,治療開始C3カ月の時点で,平均CMA数がC49.6個から24.8個へと有意に減少し,MA数は中心窩網膜厚と有意な相関を示したと報告している2).また,インドシアCb(95)あたらしい眼科Vol.42,No.2,20252290910-1810/25/\100/頁/JCOPY図2糖尿病黄斑浮腫に対するファリシマブ硝子体内注射による毛細血管瘤の減少効果a:治療前.フルオレセイン蛍光造影の早期で,毛細血管瘤(黄色でマーキング)は過蛍光点として描出されている.b:導入期毎月C3回およびCtreat-and-extend法によるファリシマブ硝子体内注射の治療後1年.フルオレセイン蛍光造影の早期で描出される毛細血管瘤(黄色でマーキング)は,治療前と比べて減少している.ニングリーン蛍光造影の後期で描出されるCtelangiectat-iccapillaries(TelCaps)とよばれる径の大きなCMAを対象とした筆者らの報告で,導入期C3回の抗CVEGF療法を施行した糖尿病黄斑浮腫のC12眼では,治療開始C3カ月の時点でCTelCapsの数も径も有意に減少し,径の大きなCTelCapsほど残存する傾向を示した(図1)3).ファリシマブ硝子体内注射によるMAの退縮効果アンジオポエチン(angiopoietin:Ang)-2は,血管安定化に作用するCAng-1/Tie-2シグナルを阻害して,ペリサイトの脱落と血管の不安定化をもたらす.2022年から糖尿病黄斑浮腫に適用となったファリシマブは,1分子でCVEGFとCAng-2を同時に阻害することにより,血管新生および血管透過性を抑制し,血管の不安定化を是正すると考えられている.Takamuraらは,導入期C3回のファリシマブを硝子体内注射した糖尿病黄斑浮腫の28眼では,治療開始C3カ月の時点で,平均CMA数が投与前のC40.7%と有意に減少したと報告している4).VEGFに加えてCAng-2を同時に阻害することで,実際にCMAの退縮効果を促進できるかは興味をかき立てられる問題である(図2).抗VEGF療法によるMAの退縮効果を考慮した局所光凝固実臨床では,高価な抗CVEGF療法を大規模臨床試験のように毎月継続することは現実的ではない.DRCR.C230あたらしい眼科Vol.42,No.2,2025netによるプロトコールCIでは,ラニビズマブと併用するCMAに対する局所光凝固を即座に開始するよりも,半年遅延して開始したほうが,5年にわたってより良好な視力改善が得られている5).残念ながら糖尿病黄斑浮腫に伴うCMAを抗CVEGF療法のみで完全に消退させることは困難である.糖尿病黄斑浮腫では,抗CVEGF療法に抵抗性を示す毛細血管瘤を選択的に局所光凝固する低侵襲治療を心がけることで,長期に視力を維持できる可能性がある.文献1)TolentinoCMJ,CMillerCJW,CGragoudasCESCetal:Intravitre-ousCinjectionsCofCvascularCendothelialCgrowthCfactorCpro-duceretinalischemiaandmicroangiopathyinanadultpri-mate.OphthalmologyC103:1820-1828,C19962)SugimotoM,IchioA,MochidaDetal:Multiplee.ectsofintravitrealCa.iberceptConCmicrovascularCregressionCinCeyeswithdiabeticmacularedema.OphthalmolRetinaC3:C1067-1075,C20193)ItouJ,FurushimaK,HarutaMetal:Reducedsizeoftel-angiectaticCcapillariesCafterCintravitrealCinjectionCofCanti-vascularendothelialgrowthfactoragentsindiabeticmac-ularedema.ClinOphthalmolC17:239-245,C20234)TakamuraCY,CYamadaCY,CMoriokaCMCetal:TurnoverCofCmicroaneurysmsCafterCintravitrealCinjectionsCofCfaricimabCforCdiabeticCmacularCedema.CInvestCOphthalmolCVisCSciC64:31,C20235)ElmanCMJ,CAyalaCA,CBresslerCNMCetal:IntravitrealCranibizumabfordiabeticmacularedemawithpromptver-susCdeferredClasertreatment:5-yearCrandomizedCtrialCresults.OphthalmologyC122:375-381,C2015(96)

緑内障セミナー:グリーンレーザー内視鏡的毛様体光凝固

2025年2月28日 金曜日

●連載◯296監修=福地健郎中野匡296.グリーンレーザー内視鏡的毛様体光凝固谷戸正樹島根大学医学部眼科学講座グリーンレーザー内視鏡的毛様体光凝固(ECP)は,房水産生抑制により眼圧下降効果を図る新規緑内障術式である.レーザーファイバーと内視鏡ファイバーが同軸に配置された専用器具(MTレーザーファイバカテーテル)を用いることで経角膜的に行われる.おもな適応は,房水排出を促す従来手術(トラベクロトミー,トラベクレクトミー,チューブシャント手術)が無効な患者である.●グリーンレーザーECPの適応経強膜的毛様体凝固術(trans-scleralcyclophotocoag-ulation:TSCP)では,組織透過性が高いC810Cnmダイオードレーザーを用いた場合でも,眼外から照射されたレーザーエネルギーのC2/3が,毛様体色素上皮に至るまでの虹彩実質や血管などの中間組織に吸収される1).そのため組織破壊が大きく,安全性に問題があり,また効果の予測性にも劣るため,有効な視機能が残る患者に対しての適応には困難さがあった.難治緑内障に対する有効性と安全性のバランスがとれた治療法として,グリーンレーザーを光源とする専用カテーテル「MTレーザーファイバカテーテル」(ファイバーテック)を用いた内視鏡的毛様体光凝固(endoscopiccyclophotocoagulation:ECP)装置が開発され,2022年から臨床使用できるようになった(表1).光源として波長の短いC532nmグリーンレーザーを用いているため,海外で承認されているダイオードレーザーCECPと比較しても,より選択的な毛様体上皮の凝固が可能であると考えられる.グリーンレーザーCECPは,濾過手術やチューブシャント手術が効果不十分であった患者でも効果が期待できる2).房水産生能が旺盛な若年の原発開放隅角緑内障や小児緑内障は,良い適応と考えられる(表2).一方で,表1ECPと他の緑内障手術との比較血管新生緑内障,ぶどう膜炎,高齢者の緑内障などは,術前の眼圧レベルにかかわらず房水産生能が低下しているため,まずは従来手術による眼圧下降をめざすべきである.国外では,ECPは低侵襲緑内障手術としてしばしば白内障手術と同時に施行される3).しかし,房水産生を低下させることは“眼の加齢性変化”を促すことでもあるため,筆者は幅広い患者にCECPを行うことには慎重であるべきだと考えている.C●機器構成と手術手技挿入部サイズC20Gのカーブ形状を有するカテーテルを使用する(図1).カテーテル内にレーザーファイバーと眼内観察用の内視鏡ファイバー(イメージファイバー,ライトガイド)が同軸に配置されており(図2),解像度はC1万画素である.カテーテルを眼内内視鏡の光源・画像装置とレーザー凝固装置に接続して使用する(図3).レーザーは,ルミナス,ニデック,アルコン社の装置に接続することができる(2024年C11月現在).手術は通常のCTenon.下麻酔で行うが,術中・術後とも患者は強い痛みは訴えない.角膜サイドポートからプローブを挿入し,モニター観察下に毛様体上皮を凝固する.片方の角膜サイドポートから約C2/3周の凝固が可能であり(図4左),2カ所のサイドポートを作製することにより表2ECPのおもな適応トラベクロトミートラベクレクトミーチューブシャント経強膜的毛様体凝固グリーンレーザーCECP作用機序房水排出促進房水産生抑制房水産生抑制適応初期.後期難治緑内障難治緑内障光源C─C810Cnm・照射エネルギーのC2/3が中間組織で吸収・組織侵襲強いC532Cnm・組織深達度が浅い・毛様体表面を選択的に凝固・光源が広く普及よい適応要注意緑内障の特徴チューブシャント手術の効果不十分または施行不能房水産生能低下原発開放隅角緑内障血管新生緑内障病型若年開放隅角緑内障ぶどう膜炎小児緑内障高齢者(93)あたらしい眼科Vol.42,No.2,20252270910-1810/25/\100/頁/JCOPY図1ECP用カテーテル(MTレーザーファイバカテーテル)のプローブ形状(ファイバーテック提供)液晶カラーモニタ画像記録装置専用光源装置専用画像装置図3MTレーザーファイバカテーテルの機器構成(ファイバーテック提供)図5グリーンレーザーECPの術中所見角膜サイドポートから挿入したカテーテルで直視下に毛様体ひだ部を凝固する.毛様体突起の形状が大きく変化せず,表面が白くなる程度()の凝固が適切である.全周の毛様体凝固が可能となる(図4右).レーザー装置は連続発振となるよう凝固時間を最長(3.4秒)に設定する.凝固の強さは,毛様体上皮の表面が白く変色する程度(通常C200.300mW)で,塗り絵を塗るように凝固を行う(図5).凝固によるポップ(気泡)が出る場合はパワーが強すぎるかプローブが近すぎる.全周凝固を基本とするが,毛様体突起間や突起後端を凝固することは困難であるため,全周凝固を行っても毛様体上皮の表面積の半分程度の凝固となる.筆者は術後炎症予防のために,手術終了時にトリアムシノロンをCTenon.下注射している.術後は抗菌薬とステロイドの点眼をC1日C4回,2週間程度使用する.1回の治療で十分な眼圧下降C228あたらしい眼科Vol.42,No.2,2025図2MTレーザーファイバカテーテル断面の模式図図4MTレーザーファイバーカテーテルによるECPの凝固範囲2カ所の角膜サイドポートから全周の凝固を行うことができる.が得られない場合は,数カ月待ったのちにC2回目の凝固を考慮する.遷延性低眼圧が少ないこと,角膜サイドポートからアプローチできること,再手術が容易であることは,本術式の大きな利点である.なお,本稿には筆者の過去の総説4.8)と重複する記載・内容が含まれる.文献1)VogelCA,CDlugosCC,CNu.erCRCetal:OpticalCpropertiesCofChumanCsclera,CandCtheirCconsequencesCforCtransscleralClaserapplications.LasersSurgMedC11:331-340,C19912)TanitoM,ManabeSI,HamanakaTetal:AcaseseriesofendoscopicCcyclophotocoagulationCwithC532-nmClaserCinCJapaneseCpatientsCwithrefractoryCglaucoma.CEye(Lond)C34:507-514,C20203)YangCSA,CCiociolaCEC,CMitchellCWCetal:E.ectivenessCofCmicroinvasiveCglaucomaCsurgeryCinCtheCUnitedStates:CIntelligentCresearchCinCsightCregistryCanalysis.C2013-2019.COphthalmologyC130:242-255,C20234)谷戸正樹:内視鏡的毛様体光凝固術(ECP)の適応を教えてください.眼科手術37:517-519,C20245)谷戸正樹:MTLaserFiberCatheter(ファイバーテック).眼科66:471-477,C20246)谷戸正樹:MTレーザーファイバーカテーテル.IOL&RSC38:290-296,C20247)谷戸正樹:グリーンレーザー内視鏡的毛様体光凝固術.眼科手術37:186-190,C20248)谷戸正樹:内視鏡を用いた毛様体凝固術(グリーンレーザーECP).FrontiersinGlaucoma(印刷中)(94)

屈折矯正手術セミナー:円錐角膜の診断

2025年2月28日 金曜日

●連載◯297監修=稗田牧神谷和孝297.円錐角膜の診断柿栖康二堀裕一東邦大学医療センター大森病院眼科円錐角膜は角膜が局所的に前方へ突出・菲薄化する角膜変形疾患であるため,その角膜形状変化を捉えることが診断には重要である.重症例では形状変化が著明であるため診断は容易であることが多いが,早期円錐角膜では形状変化が微細であるため,診断には角膜形状解析検査が必須である.●はじめに円錐角膜とは,角膜が局所的に前方へ突出・菲薄化する角膜変形疾患であり,進行すると角膜不正乱視が惹起され,眼鏡矯正視力が低下する.円錐角膜の診断は,正常角膜と円錐角膜に明確な境界はないため,問診や検査結果などを総合的に評価して行うことが重要である.とくに早期円錐角膜では形状変化が微細であり,円錐角膜の可能性を意識していなければ,円錐角膜を疑うことは困難である.本稿では円錐角膜を疑うために必要な問診や検査,次に診断を行うために必要な角膜形状解析検査の読みかたについて述べる.C●円錐角膜を疑うために問診や屈折検査は表1,2で該当するか否かを確認する1,2).とくに斜乱視で眼鏡矯正視力が出ない患者は円錐角膜の初期である可能性があり,角膜形状解析検査の機器がない場合でも,ケラトメータの検査が診断の助けとなる(表2).細隙灯顕微鏡検査における角膜の突出,菲薄化の所見は重症例では判別が可能であるが,早期円錐角膜ではほぼ不可能である.一方CVogt’sstriae(図1)やCFleischerring(図2)は早期円錐角膜でも認めることがあるが,所見が微細であることや,Fleischerringはコバルトフィルターで診察を行う必要があるため,いずれの所見も円錐角膜を疑って診察を行わないと見逃しやすい.円錐角膜を疑ったら,次に角膜形状解析検査を行表1問診のポイント年齢発症時期は思春期が多く,30.40歳代で進行が停止することが多い.まれにC30.40代から発症することもある.性差さまざまな報告があり一定の見解はない.既往歴アトピー性皮膚炎,気管支喘息,アレルギー性結膜炎,眼を擦る癖がある,Down症候群,睡眠時無呼吸症候群(うつ伏せ寝)う,または専門施設へ紹介する.C●円錐角膜を診断するために角膜形状解析検査はその原理の違いから,プラチドリング,Scheimp.ug,前眼部光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)に大別でき,とくにScheimp.ugや前眼部COCTでは角膜の断面形状が撮影できるため,角膜前面と後面の解析が可能となる3).当院で採用している前眼部COCT(Anterion)を図3に示す.角膜形状解析検査には自動診断プログラムが搭載されており,診断の一助になるが,結果には偽陽性や偽陰性が必ず存在するため,実測値を自身で読み取る必要がある.前眼部COCTを用いて円錐角膜を診断するポイントは,①角膜前面の局所的な急峻化と非対称性な乱視である不正乱視,②角膜後面の局所的な前方突出,③同部位の菲薄化,を読み解くことである.また,角膜形状変化は角膜後面から生じるため,とくに早期円錐角膜では後面の形状変化を読み取ることが重要である4).C●症例33歳,男性.主訴は右眼ソフトコンタクトレンズ装用時の視力低下である.アトピー性皮膚炎の既往歴あり.右眼角膜乱視C3.5D,強主経線上の角膜屈折力C46.5D,軸C101°,視力(1.2×sph+1.0D(cyl.1.50DAx120°)であった.30代であること,アトピー性皮膚炎の既往があること,角膜乱視と強主経線上の角膜屈折力の結果,細隙灯顕微鏡検査でCVogt’sstriaeを認めたことから円錐角膜が疑われ,当院へ紹介となった.当院での前眼部COCTでは,角膜前面の下方が局所的に急峻化して表2ケラトメータ検査のポイント角膜乱視がC2D以上強主経線上の角膜屈折力がC45D以上乱視の軸が斜乱視や倒乱視,あるいは乱視の度数や軸に左右差がある(91)あたらしい眼科Vol.42,No.2,20252250910-1810/25/\100/頁/JCOPY図1Vogt’sstriae図2Fleischerring角膜実質菲薄部の歪みによって角膜実質深層からCDescemet膜角膜突出部周囲の角膜上皮深層へのヘモジデリン沈着.付近に生じる細やかな線状.図3前眼部OCT(Anterion)の基本画面左上から時計回りに,角膜前面の屈折力,角膜後面の屈折力,角膜厚,全角膜屈折力,角膜後面のCBestFitSphere(BFS),角膜前面のCBFS.BFSとは,その角膜にもっとも近似できる基準球面との差を表す値で,プラス表記されていれば基準球面よりも前方に,マイナス表記されていれば後方に位置することを表す.おり,上下で非対称性であること,角膜後面のやや下耳側が局所的に+48Cμmと前方突出していること,同部位に一致して角膜の菲薄化(489Cμm)を認めたこと(図3)より,円錐角膜の診断となった.C●おわりに円錐角膜は早期であるほど角膜形状変化は乏しいため,診断が困難である.問診,屈折検査,細隙灯顕微鏡検査などで総合的に評価を行い,円錐角膜が疑われたら角膜形状解析検査で診断を行うこと,または専門施設へC226あたらしい眼科Vol.42,No.2,2025紹介することが重要である.文献1)GassetCAR,CHinsonCWA,CFiasJL:KeratoconusCandCatopicCdiseases.AnnOphthalmolC10:991-994,C19782)SerdarogullariCH,CTetikogluCM,CKarahanCHCetal:Preva-lenceCofCkeratoconusCandCsubclinicalCkeratoconusCinCsub-jectsCwithCastigmatismCusingCpentacamCderivedCparame-ters.CJOphthalmicVisResC8:213-219,C20133)平岡孝浩:角膜形状解析.臨眼75:152-162,C20214)BelinMW,JangHS,BorgstromM:Keratoconus:Diagno-sisandstaging.CorneaC41:1-11,C2022(92)

眼内レンズセミナー:初心者のための眼内レンズ強膜内固定術の習得法

2025年2月28日 金曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋453.初心者のための眼内レンズ強膜内固定術赤田真啓京都大学大学院医学研究科眼科学の習得法眼内レンズ(IOL)の強膜内固定術は,無縫合で施行可能という簡便さから,広く施行される手術となっている.しかし,一般的な白内障手術と比べて患者数が少なく,手技の習得には依然として課題がある.本稿では,おもにこれから強膜内固定術を習得しようと考えている術者を対象に,手技習得のために知っておくべき事項について解説する.●はじめに眼内レンズ(intraocularlens:IOL)強膜内固定術は,無水晶体眼や水晶体脱臼,IOL脱臼例などに対して行われる.強膜内固定術はさまざまな方法が知られているが,現在もっとも一般的に施行されている山根らによる方法1)を前提に解説する.●IOLハプティクスの30G針への挿入この手術の肝となる行程は,IOLハプティクスを内腔の広い30G針(ない場合は27G針)に挿入する行程である.術前のシミュレーションがきわめて重要な行程でもある.まず主創口からIOLを挿入する.IOL挿入時に先行ループを直接30G針に挿入する手法も知られているが,筆者は原法に則り先行ループは虹彩上に乗せることとしている.後方ループは眼外に出しておき,IOLが眼底に落下することを防ぐ.この際に分散型粘弾性物質を用いると,角膜内皮保護を図ることができると同時に,粘弾性物質にIOLが張り付いて落下しにくくなる.虹彩上にIOLを乗せたのち,眼内鑷子を用いて先行ループをつかむ.この際,老人環などでハプティクスの先端が見えづらい場合がある.ブラインドで無理につかもうとすると隅角を損傷することがあるため注意を要する.この場合は後方ループを少し引くと,先行ループの先端が見えてくるため,つかみやすくなる(図1).必要に応じてneedlestabilizerを用いて両30G針を刺入する2).30G針の屈曲部まで刺入してしまうと針先の向きがわかりづらくなり,網膜を損傷する可能性があるため,深く刺しすぎないよう注意する.ハプティクスを把持する位置は,先端に近すぎると挿入する部分が少なくなるため挿入しづらく,遠すぎるとコントロールがむずかしくなるので,適切な位置をつかむ必要がある.(89)図1眼内鑷子によるIOLの先行ループの把持a:先行ループが見えづらく把持しづらい状態.b:後方ループを引くことで(),先行ループがよく見える状態(.)となり,安全に把持できる.ハプティクスを30G針に挿入するにあたってとくに重要なのが,両者のなす角度を適切に合わせることである.熟練した術者であれば困難な角度でも挿入することは可能だが,初心者はいかにしてあらかじめ入れやすい角度にもっていくかが手技の成否を分ける.事前のセッティングを誤るときわめて困難になりうる(図2a).ハプティクスを30G針に入れやすい角度にするには,主創口と30G針を刺入する位置の角度を適切な角度にしておかねばならない.ここを70.90°程度にしておくと,ちょうどハプティクスを30G針に挿入しやすい位置関係になる(図2b).小瞳孔の場合は,30G針で虹彩をよけるようにして周辺部で挿入するようにしたほうが角度を合わせやすい.主創口の位置そのものは頭側,耳側,ベントいずれでも可能だが,30G針を刺入する位置との相対的な位置関係にはくれぐれも注意されたい.硝子体ポートを設置する場合は,これらと干渉しないよう,あらかじめ設置位置を計画しておく必要がある.ハプティクスの挿入時には針を少し傾けて,ハプティクスを針の内壁に沿わせるようなイメージで行うとよい.ハプティクスに過度な力を加えると変形の原因となり,ひいてはIOL偏位の原因となるため注意されたい.先行ループを30G針に挿入したのち,後方ループのあたらしい眼科Vol.42,No.2,20252230910-1810/25/\100/頁/JCOPYabc図2眼内レンズハプティクスと30G針の位置関係a:主創口と30G針挿入位置が不適切な場合.b:主創口と30G針挿入位置が適切な場合.c:その際の後方ループ挿入時.挿入の前に先行ループを眼外に出してフランジで固定することは推奨されない.先行ループを先に固定してしまうと,後方ループ挿入時の自由度が下がり,難度が上がってしまう.両方の30G針を用いた,いわゆるダブルニードルの状態で行うことが重要である.主創口と先行ループを挿入する30G針を刺入する位置の角度が適切であれば,後方ループも自然とスムーズに挿入可能な位置関係になる(図2c).30G針を引き抜いてハプティクスを眼外に出す際は,途中で針から抜けてしまわないよう注意する.先に出したループが眼外に出すぎないよう少し戻しておくと,あとから抜くループが抜け落ちるリスクを減らせる.必要に応じて両端を剪刀で処理し,フランジを作製する.ハプティクス先端を焼灼するパクレンとハプティクスが直接接触しないようにしたほうが,きれいなフランジとなる.術後フランジが結膜上に出てくると,レンズの安定性を損ねるばかりではなく感染にもつながりうるため,適切な大きさのフランジを強膜内に確実に埋め込むことが必要である.●その他の手技IOL脱臼例では,脱臼しているIOLを強膜内固定に使用しない場合は摘出する必要がある.摘出にあたっては,IOLカッターによるさまざまな分割法が知られているほか,インジェクターやレンズグラバーを用いた方法などがある.IOL落下例でない場合は,IOLの摘出も含め前眼部のみで手術を行うことも不可能ではない.しかし,毛様体扁平部周辺の硝子体処理が不十分になる可能性があり,原則として本手術は硝子体の処理に慣れた術者が施行することが望ましい.合併症としてとくに注意すべきものに裂孔原性網膜.離がある.これは30G針による網膜の損傷,不十分な硝子体処理による網膜の牽引によって発生すると考えられる.また,術後の虹彩捕獲,逆瞳孔ブロックを予防するため,上方に周辺虹彩切除をしておくとよい.●おわりに強膜内固定術は無水晶体眼や水晶体脱臼,IOL脱臼例の視機能回復に重要な役割を果たす手術である.その安全な施行にあたっては事前準備がきわめて重要である.強膜内固定術練習用の模型眼も販売されているので,必要に応じてこれらも活用し,十分な練習を積んだうえで手術に臨むべきと考える.文献1)YamaneS,SatoS,Maruyama-InoueMetal:Flangedintrascleralintraocularlens.xationwithdouble-needletechnique.Ophthalmology124:1136-1142,20172)YamaneS,Maruyama-InoueM,KadonosonoK:Needlestabilizerfor.angedintraocularlens.xation.Retina39:801,2019

コンタクトレンズセミナー:英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く 医療用コンタクトレンズ(2)

2025年2月28日 金曜日

■オフテクス提供■コンタクトレンズセミナー英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く14.医療用コンタクトレンズ(2)松澤亜紀子聖マリアンナ医科大学,川崎市立多摩病院眼科土至田宏順天堂大学医学部附属静岡病院眼科英国コンタクトレンズ協会の“ContactCLensCEvidence-BasedCAcademicReports(CLEAR)”の第C8章は医療用コンタクトレンズを取りあげている.今回はその第C2回として,慢性疾患に対するレンズや視覚リハビリテーションのためのレンズ,医療用着色レンズについて解説する.はじめにコンタクトレンズ(CL)は,屈折異常の矯正だけでなく,円錐角膜や眼表面疾患に対する医療用として使用されることがある.今回は医療用CCLについての第C2回で1),慢性疾患に対するCCLや視覚リハビリテーションのためのCCL,医療用着色レンズに関する部分を解説する.なお,わが国ではC2025年C1月現在未承認である強膜レンズやハイブリッドレンズについても記載されている.慢性疾患に対するコンタクトレンズ①慢性移植片対宿主病(chronicgraftversushostdisease:cGVHD)cGVHDによる中等度以上のドライアイ症状のある患者を対象とした研究では,シリコーンハイドロゲル(SiHy)レンズを夜間装用し,1週間後およびC1カ月後に視力と眼表面疾患指数(ocularCsurfaceCdiseaseindex:OSDI)スコアが改善した.また,ソフトCCL(SCL)は,持続的に上皮欠損を修復する効果や上輪部角結膜炎様の症状を管理できる効果も期待できる.一方,強膜レンズを装用したCcGVHD患者では,痛みや羞明などの症状,視力とCOSDIスコア,生活の質(qualityoflife:QOL)が改善した.また,強膜レンズを夜間装用し遷延性上皮欠損が治癒した報告もあり,SCLよりも利点があるとしている.C②Sjogren症候群Sjogren症候群の患者では,SiHyレンズの装用により視力やCOSDIスコア,角膜染色スコアが改善し,自己血清点眼よりも効果的であるが,SCL装用に伴う感染性角膜炎を生じることが危惧される.また,強膜レンズの装用によってドライアイ症状とCQOLが改善するが,インプレッションサイトロジーでは,強膜レンズの装用により炎症反応は増加しており,強膜レンズ装用と炎症の関係については,さらなる研究が必要である.③Stevens-Johnson症候群(Stevens-Johnsonsyndrome:SJS)SJSの眼症状の治療にCSCL装用がメリットを示したとする報告もあるが,細菌性角膜炎などの合併症の多くはCSCLが原因であるとされており,SJSの治療および管理のためには強膜レンズの使用が増加している.SJS患者の大多数は強膜レンズの装用により痛みと羞明が軽減し,OSDIスコアやCQOLが改善した.また,SJS患者は角膜混濁だけでなく角膜不正乱視によっても視覚的な影響を大きく受けており,高次収差に対する対策も必要である.④アトピー性角結膜炎/アレルギー皮膚関連疾患に対する強膜レンズの使用により,痛みと羞明が軽減し,視力が改善した.また,強膜レンズを1年以上日中に装用することで,アトピー性角結膜炎を管理することができ,視力,結膜充血,浮腫,角膜上皮欠損の改善が認められた.⑤上輪部角結膜炎(Superiorlimbickeratoconjunctivitis:SLK)/糸状角膜炎SLKに対する医療用CCLは,瞬目による上眼瞼の摩擦から輪部を保護することでCSLKを改善し,再発を予防できる.進行したCSLKでは,強膜レンズによって眼瞼結膜から角膜をより効果的に保護する必要がある.また,点眼などで効果がなかった重篤な糸状角膜炎に対しては,医療用CCLが用いられる.医療用CCLの装用により,上皮の治癒促進,眼瞼の摩擦からの角膜保護,上皮神経終末の刺激を防ぎ痛みを和らげる効果が得られる.⑥眼類天疱瘡治療用CSCLで上皮が完全に治癒しなかった,持続性上皮欠損を伴う眼類天疱瘡に対し,強膜レンズを夜間装用することで,上皮欠損の治癒と視力の改善が認められた.ただし,強膜レンズの夜間装用には角膜浮腫や感染性角膜炎などの合併症のリスクがある.⑦神経麻痺性角膜症CLによる神経麻痺性角膜症の治療は,角膜損傷の進(87)あたらしい眼科Vol.42,No.2,2025C2210910-1810/25/\100/頁/JCOPY行を防ぎ,上皮治癒を促進することができるため推奨されている.しかし,SCLでも強膜レンズでも,適切な注意を払わずに扱うと二次感染や眼瞼下垂の合併症を引き起こすことがある.そのため,涙液貯留層にステロイドや防腐剤が入らないようにするとともに,再上皮化したらすぐに日中のみの装用に移行し,予防的抗菌薬点眼を中止することが推奨されている.⑧角膜ジストロフィ角膜ジストロフィの多くが,再発性角膜びらんと関連しており,上皮欠損の管理には高弾性率CSiHyレンズが有利であることが示唆されている.また,膠様滴状角膜ジストロフィの患者にCSCLを夜間装用することで角膜混濁の進行が遅くなり,手術を遅らせることが可能であった.一方,後部多形性角膜ジストロフィのC37%に円錐角膜様の角膜不正乱視を生じるため,視覚リハビリテーション目的にCCLを使用する場合がある.視覚リハビリテーションのためのコンタクトレンズ一部の眼疾患では,眼鏡による矯正方法では十分な視力を得られないことがある.このような場合には,医療用CCLが最高視力や良好なCQOLを提供するための視覚リハビリテーションに不可欠である.それぞれの疾患や重症度に応じて,ハードCCL(HCL),特殊CSCL,ハイブリッドレンズ,ピギーバック,強膜レンズを選択する.強い屈折異常の患者は,眼鏡装用時に生じる過大なプリズム効果や像の拡大,縮小をCCL装用によって軽減できる可能性がある.とくに不同視や無水晶体眼はCCL装用のよい適応である.①角膜拡張症(円錐角膜・ペルーシド角膜周辺部変性症・球状角膜)視覚リハビリテーションのために医療用CCLを必要とする患者の多くは,角膜拡張症などの不正乱視の患者である.これらの患者は不規則な角膜形状のため視力や視機能が低下しており,HCLや強膜レンズなどの硬質なレンズを装用することで,光学的に規則的な屈折面を形成し,視力や視機能向上が可能となる.HCL不耐症の場合やドライアイの患者には,強膜レンズを選択すると,最高視力に変化はないものの,快適性が向上するため,角膜移植を選択するリスクを減少させることができる.②手術後や外傷,感染などによる不正乱視角膜移植後には,術後の遷延性角膜上皮欠損,創口からの前房水漏出,ドライアイ,糸状角膜炎などの治療を行うために,バンデージCSCLを使用する.一方,角膜移植後の不正乱視や不同視の場合には医療用CCLにより矯正を行うが,角膜内皮機能が不十分な場合には角膜浮腫を生じることがあるため,強膜レンズを選択しないほうがよい.レーシックなどの屈折矯正術後には,残存屈折異常を矯正するだけでなく,高次収差および不正乱視の矯正のためにCHCLや強膜レンズを選択する.また,外傷後の不正乱視では,角膜に瘢痕や凹凸がある場合があるため,HCLや強膜レンズを選択すると最高視力が得られる場合がある.医療用着色レンズ医療用着色レンズは,外傷後の虹彩欠損や眼白皮症などによる羞明やグレアの軽減,外傷後の角膜混濁などに対する整容目的に使用される(図1).羞明を訴える患者は,視力が正常であっても視機能とCQOLに大きな影響を生じている可能性があり,医療用レンズの装用により羞明とCQOLを改善することが可能である.おわりに今回はCCLEARの第C8章を要約し解説した.医療用CLはさまざまな疾患の治療や視覚リハビリテーションに使用され,大変有用な医療機器であること再確認する必要がある.文献1)YacobsDS,CarrasquilloKG,CottrellPDetal:CLEARC─CMedicalCuseCofCcontactClenses.CContactCLensCandCAnteriorCEye44:289-329,C2021

写真セミナー:デルモリポーマ

2025年2月28日 金曜日

写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史松村健大489.デルモリポーマ福井大学医学部眼科学教室図2図1のシェーマ①隆起した腫瘤図1前眼部写真左眼の耳側結膜に腫瘤を認める.図3MRI所見腫瘤は脂肪性の病変であり,眼窩脂肪との連続性は認められない.図4摘出標本所見摘出された腫瘍は,おもに間質膠原線維と脂肪組織で構成されていた(ヘマトキシリン・エオジン染色).(85)あたらしい眼科Vol.42,No.2,2025C2190910-1810/25/\100/頁/JCOPY生下時から,左眼の耳側結膜に腫瘤を認めていた12歳の女児の症例を提示する.小児科での診察にて経過観察となっていたが,最近,瞼裂部において腫瘤が隆起している状態が気になってきたため,近医眼科を受診したところ,眼窩脂肪ヘルニアと診断された.手術による切除を希望し,当院へ紹介受診となった.診察では左眼の耳側結膜にピンク色.黄色の腫瘤を認めた(図1,2).腫瘤は表面平滑で隆起しており,上耳側から下耳側の範囲で扇状に外眥部へ進展していた.腫瘤表面に毛は認めなかった.また,圧迫によって腫瘤の眼窩内への移動は認められなかった.前眼部はほかに異常を認めず,中間透光体および眼底には異常を認めなかった.外耳の奇形,顔面の非対称,頸椎の異常は認められず,そのほか,全身に特記すべき異常はなかった.眼窩CMRIでは,腫瘤は脂肪性の病変であり,眼窩脂肪との連続性は明らかではなかった(図3).臨床所見から,腫瘤は眼窩脂肪ヘルニアではなく,デルモリポーマが疑われた.異物感などの自覚症状はなかったが,整容的な理由で患者および両親が切除を希望したため,腫瘍減量目的と病理組織学的診断のため,全身麻酔にて,腫瘍切除術を行った.手術では,異所性上皮と腫瘍を.離し,切除は腫瘍内部にとどめ,上皮は切除せずに温存した.腫瘍は,眼球耳側で上直筋から下直筋の間で扇状に広がっており,外直筋を損傷しないように慎重に.離した.最後に切開を行った結膜部を吸収糸で縫合した.切除された標本の病理検査では,腫瘍はおもに間質膠原線維と脂肪組織で構成されており,悪性所見は認められなかった(図4).異所性上皮は切除していないが,上皮下の病理所見はデルモリポーマとして矛盾のないものであった.術後は眼球運動障害や複視,眼瞼下垂,ドライアイなどの合併症を認めず,再発も認めていない.外来通院にて経過観察を継続している.デルモリポーマや輪部デルモイドは,分離腫に分類される先天良性腫瘍である.輪部デルモイドは角膜輪部の下耳側に発生することが多いが,デルモリポーマは上耳側の結膜円蓋部に発生することが多く,結膜デルモイドとよばれることもある.デルモリポーマは病理組織学的に密な結合組織に囲まれた成熟脂肪組織からなり,毛,皮脂腺,汗腺などを含んだ重層扁平上皮で覆われている.また,これらの腫瘍はCoculo-auriculo-vertebralCspec-trumに合併することがある1).Oculo-auriculo-verte-bralspectrumは,Goldenhar症候群や半側小顔面症としても知られており,第C1および第C2鰓弓の発達異常が原因で,耳の奇形,下顎骨形成不全,頸椎の異常,輪部デルモイドあるいはデルモリポーマといった異常がみられる.デルモリポーマはとくに治療を行わずに経過観察される場合もあると思われるが,腫瘍が瞼裂より露出する場合や異物感などの自覚症状がある場合は手術適応となることがある.しかし,過剰な切除やそれに伴う瞼球癒着によって,術後に眼瞼下垂,複視を伴う眼球運動障害,乾性角結膜炎などの合併症を生じることがあるため,手術には配慮を要する2,3).結膜を温存した腫瘍部分切除による合併症の回避や,結膜移植などによる再建の有用性が報告されている4,5).文献1)KhongCJJ,CHardyCTG,CMcNabAA:PrevalenceCofCoculo-auriculo-vertebralCspectrumCinCdermolipoma.COphthalmol-ogyC120:1529-1532,C20132)BeardC:Dermolipomasurgery,or,“anounceofpreven-tionisworthapoundofcure”.OphthalmicPlastReconstrSurgC6:153-157,C19903)FryCL,LeoneCRJr:Safemanagementofdermolipomas.ArchOphthalmol112:1114-1116,C19944)SaCHS,CKimCHK,CShinCJHCetal:DermolipomaCsurgeryCwithCrotationalCconjunctivalC.aps.CActaCOphthalmolC90:C86-90,C20125)ChoiCYJ,CKimCIH,CChoiCJHCetal:EarlyCresultsCofCsurgicalCmanagementCofconjunctivalCdermolipoma:partialCexci-sionandfreeconjunctivalautograft.BrJOphthalmolC99:C1031-1036,C2015C

近視抑制治療の評価法

2025年2月28日 金曜日

近視抑制治療の評価法HowtoAssesstheE.cacyofTreatmentsfortheControlofMyopia五十嵐多恵*I小児の近視管理に重要なパラメータ小児の近視管理を行ううえで,屈折度数と眼軸長はどちらも重要なパラメータである.国際近視機関(interna-tionalmyopiainstitute:IMI)は,近視の診断はサイプレジン調節麻痺下屈折検査による屈折検査で実施し,近視進行のモニターは屈折検査と眼軸長計測結果を用いることを推奨している1)(図1)2).実際に海外では,屈折度数と眼軸長による近視進行管理の指標が作成されており,近視抑制治療の評価が簡便に行われるようになっている(図2)3).近視の診断に関しては,たとえば眼軸長が長い症例でも,角膜曲率が平坦で角膜屈折力が弱い場合は眼球全体としては正視となる(図1)2).眼軸長はあくまでも屈折度を形成する要素の一つであり,近視の診断は,屈折度数を形成するその他の要素である角膜屈折力,水晶体屈折力を含む総合的な評価値を用いるべきである.このため,小児期の近視の診断は調節麻痺下屈折検査による屈折度数で行うことが前提であるが,眼軸長を用いる場合は,眼軸長単独ではなく角膜曲率半径を組み合わせた「axiallength(AL)/cornealradiusofcurvature(CRC)比>2.9.3.1」による定義を用いるほうが,より正確に近視を診断できる4).II眼軸長による評価がより正確一方で屈折検査は再現性が低く,自覚的屈折検査では標準偏差(standarddeviation:SD)±0.50D,非調節麻痺下他覚的屈折検査ではSD±0.57D,調節麻痺下自覚的屈折検査ではSD±0.17Dの誤差が報告されており,近視の進行を定期的に評価するうえで無視できない誤差量である5.7)(図1).しかし,非接触型の光学的眼軸長計測の再現性は高く,誤差範囲は小児でも眼軸長で50μm以下であり8),屈折度数で換算すると多くてもSD±0.12D以下の誤差で,報告によっては非調節麻痺下自覚的屈折検査よりも10倍正確である.さらに,眼軸長計測であれば調節麻痺薬による副作用の問題がなく,計測時間も短時間である.以上から,近視の進行をモニターするうえでは眼軸長がより適している.III小児期の屈折と眼軸に関する前提知識図3にさまざまな屈折の小児の眼の眼軸の伸展形式を示す9).「正視化過程にある遠視」が正常な小児の眼であり,小児の正常な屈折度数は,正視ではなく年齢に応じた軽度の遠視である.一般的に成人のgullstrandの模型眼では,眼軸長1mmの伸展は,屈折度数に換算すると3.0Dもしくは2.7Dに相当する.しかし,近視進抑制治療のターゲットとなるような年齢の低い小児では,そのような単純換算ができない.6歳までの小児において,年間1mmの眼軸長の伸展は屈折度に換算してわずか0.45Dの変化にしか相当しない10).発育に伴う眼軸長の伸展に対して,水晶体や角膜の屈折力が弱まることで代償が生じる幼少期では,同じ眼軸伸展量であっ*TaeIgarashi:東京都立病院機構広尾病院眼科〔別刷請求先〕五十嵐多恵:〒150-0013東京都渋谷区恵比寿2-34-10東京都立病院機構広尾病院眼科0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(77)211図1小児の近視を診断し,進行を管理するうえで重要視すべきパラメーター1.DIAGNOSINGMYOPIA(図左側):図中のAおよびBには二つの正視眼が示されている.たとえば,両者ともに屈折度数が+0.5Dであったとしても,眼軸長はAが23.5mmであり,Bが25.1mmである.Aでは角膜屈折力が44.2Dである一方で,Bは38.9Dであり,BはAよりも長い眼軸長だが,角膜曲率が平坦であり角膜屈折力が弱いため,眼球全体としては正視となっている.2.MONITORINGPROGRESSION(図右側):再現性の観点から,近視の進行をモニターするうえでは,屈折度よりも眼軸長が適している.(文献2より引用)図2屈折度数と眼軸長による近視進行管理の指標屈折度数に関する治療について上図の「Best」欄では,9歳より低年齢では年間.0.5Dまで,9.11歳では.0.37Dまで,12歳以降は.0.25Dまで年間近視進行を抑制できている場合が該当する.「Next-Best」「Lesse.ective」「Note.ective」も順に示されている.眼軸長に関しても年齢別に検討されており,7-10歳では,無治療の近視では年間0.3mmを超えて眼軸長が伸展するが,正視眼の眼軸伸展に相当する0.2mmにまでに年間伸展量に抑えよう,11歳以降は正視眼の0.1mmを目標に抑制しよう,そして最終的に26mmを超えないように治療を行おう,との指標が無作為化比較試験のデータをもとに作成されている.(文献3より引用)Axiallength(mm)2524.52423.52322.52221.5Age(years)図3さまざまな屈折の小児の眼の眼軸の伸展形式屈折異常によって眼軸長の年間当たりの伸展量は異なる.長眼軸眼であればあるほど伸展速度は速くなる.(文献C9より改変引用)Cba図4年間眼軸伸展量による治療効果判定表a:ドイツ人小児のための治療効果判定表CKaymakらは,ドイツでは正視眼に該当するC50パーセンタイルまでの小児のデータから正視眼における年齢ごとの年間眼軸伸展量を算出し,有効性の評価表を作成した.濃い実線が,ドイツ人小児の正視眼における年齢別の眼軸伸展量であり,薄い実線が信頼区間の上限である.薄い実線までが治療有効と判断する許容範囲とされている.青で示す単焦点眼鏡の対照群の眼軸伸展量と異なり,黄色で示すCDIMS眼鏡群は,3年間継続して有効な眼軸伸展抑制効果を維持している(文献C11より改変引用).b:HAAG-STREIT社製CLS900CMyopiaAMMCの治療効果判定表.HAAG-STREIT社製CLS900MyopiaAMMCやCOCULUS社製CMyopiaMasterでは治療効果判定表が搭載されており,治療効果が自動的に判定される.Axiallength(mm)27262524232221図5OCULUS社製MyopiaMasterのパーセンタイル曲線を用いた眼軸長管理2万C5,000眼近い中国人小児の眼軸長データをもとにパーセンタイル曲線が作成されている.将来的な無治療での屈折度数の予後予測が,サイプレジン調節麻痺下屈折度数,角膜曲率,性別,眼軸長などデータに基づき算出され,95%信頼区間±1.85Dの幅で表示される(①).初診時に近視進行抑制治療を実施する動機づけとなる.この症例は,無治療では通常よりも早い眼軸伸展が認められたが,併用療法実施以後は進行速度が低下したことが視覚化されており,患者への説明も容易である.(文献C13より改変引用)表1近視を管理する眼軸長計測装置の概要比較項目近視治療用白内障手術用機種名CMyopiaMasterCMYAHCAL-ScanM+MyopiaViewerMV-1(オプションソフト)レンズスターCMYOPIAAPS+AMMCライセンスCOA-2000+AxialManagerCAL-Scan+MyopiaViewerMV-1(オプションソフト)製造元/販売Oculus社製,販売CNikonVisio社製,販売CTopconNIDEK社製CHAAG-STREIT社製,販売ジャパンフォーカスTOMEY社製NIDEK社製価格550万円380万円385万円+30万円(MV-1)408万円+24万円560万円+45万円550万円(Aあり)480万円(A無)+30万円(MV-1)機能眼軸長測定方式(フルオートトラッキング)タイムドメイン(×)タイムドメイン(×)タイムドメイン(○)タイムドメイン(×)フーリエドメイン(○)タイムドメイン(○)角膜形状解析C×○C×△(オプション)C△C×レフラクトメーターC○C×××××近視管理機能屈折度数推移のグラフ化(トレンド解析)C○C○C○〇〇C○眼軸長推移のグラフ化(トレンド解析)C○C○C○〇〇C○眼軸長パーセンタイル曲線(データ引用元)中国人CBrienHoldenVisionInstituteデータ欧州人Tidemanらコホート研究欧州人Tidemanらコホート研究欧州人中国人Tidemanらコホート研究CDr.HakanKaymak日本人令和C3年度児童生徒の近視実調査報告書欧州人Tidemanらコホート研究軸性近視,屈折性近視の成分分析C○C×××××年間眼軸伸展量の自動計算C○C○C×〇C○C×予後予測C○C○C×〇C××治療効果判定表C○C××〇C××治療歴管理C○C×〇〇C○〇生活習慣管理C○C×〇〇C○〇患者レポート出力C○C○C○C○C○C○その他計測機能角膜曲率半径(mm)C○C○C○C○C○C○前房深度(mm)C×××○C○C○水晶体厚(mm)C×××○C○△CAモード測定では可中心角膜厚(mm)C○C××○C○C○角膜横径(mm)C○C○C×○C○C○瞳孔径(mm)C○C○C○C○C○C○C図6Tomey社製の眼軸長計測機器であるOA-2000に搭載可能な眼軸長トレンド解析ソフトウェアAxialManager日本人データを用いた眼軸長管理が可能となっている.(文献C14より改変引用)①⑤図7OCULUS社製MyopiaMasterに搭載されたGullstrandRefractiveAnalysisSystemによる軸性近視と屈折性近視の鑑別と成分分析初診時にC7.9歳の年齢で,等価球面度数がC.2.5D程度の近視であった(①).7.9歳の年齢相当の模型眼では+1.64Dの遠視が正常であるため,4Dを超えて近視化している(②).各屈折要素の状態を確認してみると,明らかな軸性近視を生じていない.(③)将来的な眼疾患のリスクを軽減するために抑制治療の対象となる近視は軸性近視である.一方で,角膜の屈折度数は近視化が進行しており(④),この症例がここC1年あたりで近視が進行した原因は,角膜に原因がある可能性がある.角膜屈折力は平均よりも強めであり(⑤),角膜形状解析などの精査を行い,経過観察する方針とした.(文献C15より引用)–

近視性不同視の治療

2025年2月28日 金曜日

近視性不同視の治療TreatmentofAnisometropicMyopia松村沙衣子*はじめに不同視(anisometropia)は両眼の屈折力の差が1ジオプター(D)以上である状態と定義されており,重症化した不同視は眼精疲労や両眼視機能低下などの症状を引き起こす.そのなかでも就学児で増加する近視性不同視(anisomyopia)は,経時的に有病率や進行量が増加することが知られており,近年では不同視近視の進行量と眼軸長(axiallength:AL)伸長進行量の関連性や不同視の種類による進行度の傾向も注目されている.不同視の有病率は非近視群よりも近視群で高いとされ,世界的規模で近視が増加しているなか,わが国においても近視性不同視の小児を診療する機会は増えている.現在,世界中で近視抑制治療の普及が拡大しているが,近視性不同視に対する治療的介入法は確立されているとはいいがたい.本稿では,小児における不同視の有病率および進行パターン,近年明らかになりつつある治療的介入の有効性について解説する.I不同視の定義と有病率不同視とは,屈折異常が両眼で異なる状態であり,等価球面度数(sphericalequivalent:SE)の差が1D以上の場合に不同視と定義される.不同視についての報告は,近視やその他の屈折異常の報告に比較して少なく,眼の成長において屈折異常がどのように不均衡を引き起こすかについては,いまだに不明な点が非常に多い.不同視が大きくなると,両眼視機能の低下や斜視の顕性化などが生じ,症状として頭痛や眼精疲労が現れることもある.不同視の有病率は年齢に依存しており,幼児では1.6.4.3%と比較的低いのに対し1.3),成人では9.15%程度と増加する4.7).高齢者の不同視については白内障を含めた加齢に伴う眼疾患が関連している可能性があり,小児における不同視とは病態が異なると考えられる.本稿では小児の不同視,とくに近視性不同視を中心に概説する.6カ月,5歳,12.15歳の計1,827人の非調節麻痺下屈折値での不同視の有病率を調査した米国の研究では,SEの両眼間の差が1.00D以上の不同視は6カ月,5歳,12.15歳でそれぞれ1.96%,1.27%,5.77%であり,乳児や未就学児と比較し中学生において高い有病率を認めた(図1)1).わが国の小学生350人を対象とした5年間の縦断研究においても,球面不同視(球面度数差が1.00D以上)の有病率は6歳では1.43%であったのが11歳では3.14%に増加した.さらに,乱視性不同視(円柱度数差≧1.00D)の有病率も6歳時の2.6%から11歳時の4.3%へと増加していた8).シンガポールでの7.9歳の小児1,979人を対象とした縦断研究でも同様であり,不同視の有病率は3年間の追跡期間中に3.6%から9.9%に増加し,近視小児と非近視小児を比較すると,近視小児のほうが不同視の有病率が有意に高かった9).II不同視の進行パターン6.12歳の小児469人を対象とし,米国で行われた*SaikoMatsumura:東邦大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕松村沙衣子:〒143-8540東京都大田区大森西6-11-1東邦大学医療センター大森病院眼科0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(69)203不同視の有病率(%)30%25%20%15%10%5%0%乳児(6カ月)未就学児(5歳)中学生(12~15歳)年齢(歳)図1小児の年齢別の不同視の有病率両眼の等価球面度数の差がC0.50D以上またC1.00D以上の不同視の有病率は,乳児や未就学児では低く,12.15歳の中学生において増加傾向を認める.(文献C1より改変引用)a右眼左眼近視度が近視度が近視眼遠視眼大きい眼小さい眼0.00年間近視進行量(D)-0.25-0.50-0.75両側近視両眼性近視性不同視片眼性近視性不同視(BAM)(UAM)*:p<0.05**:p<0.01b近視が近視が***:p<0.001大きい眼弱い眼近視眼正視眼0.003年間の屈折変化(D)-0.50-1.00-1.50-2.00不同視なしの両眼近視性不同視片眼性近視性不同視近視眼(BAM)(UAM)図2不同視のない両眼近視眼,両眼性近視性不同視(BAM),片眼性近視性不同視(UAM)の近視進行量の比較a:1年間の近視進行量.不同視のない両眼近視眼の年間近視進行量はC.0.49Dであり,BAMでは近視度が大きい眼の年間近視進行量は.0.45D,近視度が小さい眼はC.0.37Dであり,両眼間の近視の差はC0.08Dであった.その一方でCUAMでは,近視眼の年間近視進行量はC.0.39Dであり,正視眼のC.0.22Dと比較して有意差を認め,両眼間の近視の差はC0.17Dと大きかった.Cb:3年間の近視進行量.UAMは不同視のない両眼近視眼や両眼性近視性不同視と比較し,両眼間の屈折の差が拡大する傾向があるが,3年間の変化ではより顕著に拡大する.(文献C11より改変引用)a0.80.6近視眼0.4近視眼正視眼等価球面度数の進行量(D)0.2正視眼0.0-0.2-0.4-0.6-0.8-1.0装用前6カ月装用後6カ月装用前6カ月装用後6カ月図3UAMにおける眼鏡装用前6カ月と装用後6カ月の近視進行量の比較a:SEの進行量の比較.UAMの近視眼の眼鏡装用C6カ月前のCSEの増加(C.0.38D)は,正視眼の増加(C.0.04D)よりも有意に大きかった.装用後のC6カ月間におけるCSEの増加については,両眼間に有意差は認められなかった.眼鏡装用前では近視眼が正視眼よりも進行するが,眼鏡装用後では進行量はほぼ同程度になる.Cb:ALの伸長量の比較.近視眼の眼鏡装用C6カ月前のCAL伸長量の増加は,正視眼の増加よりも有意に大きかった.眼鏡装用後のC6カ月の正視眼のCAL伸長量は,装用前の眼軸伸長量と比較し,有意に増加していた.一方で,眼鏡装用後の近視眼のCAL伸長量は,装用前と比較し,有意に減少していた.装用後のC6カ月間での両眼間のCAL伸長量の増加は有意な差を認めなかった.(文献C12より改変引用)少したが,0.01%アトロピン点眼群の眼間差は,ベースラインのC0.41C±0.25mmからC2年後のC0.42C±0.27Cmmとほぼ変化しなかった.この研究では対照群がないため近視進行抑制の程度は評価できないが,両眼点眼による治療は両眼の近視抑制となるため,0.01%アトロピン点眼群においては不同視の差は変わらなかったという可能性も考えられる14).CVオルソケラトロジーによる不同視治療オルソケラトロジー(以下,オルソCK)は,近視性不同視の管理に有効な手段であり,単焦点眼鏡の装用と比較して,ALの両眼間の差を減少させることが報告されている.UAMとCBAMにおけるオルソCKの研究結果をそれぞれ示す.C1.UAMに対するオルソKの有効性8.15歳のCUMAをもつC25名の小児を対象とした後ろ向き研究では,治療眼の1年後のAL伸長量(0.08Cmm/年)は未治療眼(0.39Cmm/年)と比較し有意に抑制されていた.しかし,1年の経過でC25名中のC16名(64%)が未治療眼に近視を発症したとも報告している15).31名のCUMA患児に対するC2年間の後ろ向き研究においても,ALの両眼間の差はベースライン(0.83C±0.45Cmm)と比較し,2年後には(0.59C±0.49Cmm)著しく減少していた16).また,この研究では,オルソCKレンズを長期間装用すると,不同視の大きい小児では,不同視が小さい小児より顕著なCALの両眼間の差の減少が得られたことも報告されている.筆者らの臨床経験においても,オルソCKを処方したUMAの小児のCALの眼間差はベースラインのC1.07CmmからC2年後にはC0.47Cmmへと著しく減少し,不同視の改善が認められた(図4).図からわかるように,2年間のCAL伸長量は治療眼でC0.15mm/2年,未治療眼で0.75Cmm/2年であり,両眼間の差が小さくなった理由は治療眼のCAL伸長量が抑制される一方で,未治療眼のAL伸長量が自然経過にしたがったためと考えられる.未治療の場合は,近視度が大きい眼の進行量が大きく不同視の眼間差が拡大するため,治療アウトカムを不同視における両眼間の差の縮小とすれば本治療法は成功であるが,症例によっては正視眼が近視化することには留意する必要がある.同様に,FuらはC1年間の追跡調査後にCUAM患者の48.1%がCBAMを発症したこと17),Chenらは,平均15.5カ月の追跡調査後にCUAM患者のC32%がCBAMを発症したことを報告している15).この研究ではCBAMを生じた後は,両眼のオルソCK治療を開始し,新たに近視になった眼におけるオルソCK治療後の年間CAL伸長量(0.20mm/年)は,同じ眼におけるオルソCK治療前の伸長量(0.49Cmm/年)よりも有意に遅くなったことを報告している.筆者らの症例においても,3年目から新たに近視化した眼に対してもオルソCKの処方を行い,その後のCAL伸長量は新たに治療した眼でC0.01Cmm/年,治療継続眼でC0.05Cmm/年と両眼間の差(0.51Cmm)の拡大なく経過している(図4).このことからも,UAMで単眼のオルソCKレンズ治療を受けている子どもには,正視眼の近視進行の可能性が高いことを十分に説明すべきであろう.また,もし正視眼が近視になった場合,オルソCKレンズは依然として良好な治療法であると考えられる.C2.BAMに対するオルソKの有効性両眼に近視がある不同視の場合においても,オルソCK治療で良好な結果が示されている.BAMの子どもC102人を無作為に眼鏡群とオルソCK群に割り当て,1年の経過を観察した中国の前向き介入研究では,オルソCK群において近視度の大きい眼のCAL伸長量(0.06C±0.15mm)は近視度の小さい眼の伸長量(0.15C±0.15Cmm)と比べ有意に少なくなっており,1年間の治療によりCALの両眼間の差は有意に減少した(0.47C±0.32mmからC0.38±0.28mm).一方,眼鏡群ではCAL伸長量は両眼でほぼ同等であり,1年間の治療でCALの眼間差に有意な減少は認められなかった(図5)18).また,BAMの両眼にオルソCKレンズ,0.01%アトロピン点眼,0.05%アトロピン点眼で治療した後ろ向き研究では,オルソCK群(0.53C±0.29CmmからC0.44C±0.27Cmm)においてC0.01%アトロピン点眼群(0.41C±0.25CmmからC0.42±0.27mm)やC0.05%アトロピン点眼群(0.42C±0.20CmmからC0.34C±0.19mm)と比較して,2年後の(73)あたらしい眼科Vol.42,No.2,2025C20798th2795th左眼:0.01%AT+オルソK開始2690th75th2550th2425th10th23右眼:オルソK開始25ndth22右眼0.01%AT開始右眼21左眼20眼軸長(mm)6789101112131415(歳)年齢※治療によるAL変化量初診時:右眼23.72mm,左眼24.79mm(両眼間の差;1.07mm),1年後:右眼23.95mm,左眼24.81mm(両眼間の差;0.86mm),2年後:右眼24.47mm,左眼24.94mm(両眼間の差;0.47mm)右眼にオルソK開始,3年後:右眼24.48mm,左眼24.99mm(両眼間の差;0.51mm)図4UAMの近視眼に対してオルソケラトロジー(オルソK)治療を行った自験例9歳,女児.UAMによる眼精疲労の症状にて,左眼の近視眼にオルソCK治療+0.01%アトロピン(AT)点眼の併用療法,右眼の正視眼にC0.01%CAT点眼開始となった.治療開始からCALの両眼間の差は順調に改善し,症状の改善を認めたが,治療C2年後には右眼も近視眼による視力低下を認め,左眼同様にオルソCKの開始となり,現在はCALの両眼間の差の悪化は認められていない.図5BAMにおける眼鏡装用群とオルソケラトロジー(オルソK)群の1年間の近視進行量の比較オルソCK群では,近視度の大きい眼のCAL伸長量は,近視度の小さい眼の伸長量と比べ有意に少なく,1年間の治療によりALの不同視は有意に改善した.一方,眼鏡群では,AL伸長量は両眼でほぼ同等であり,1年間の治療でCALの不同視の改善は認められなかった.(文献C18より改変引用)–

レッドライト治療による近視抑制

2025年2月28日 金曜日

レッドライト治療による近視抑制RepeatedLow-LevelRed-LightTherapyforMyopiaControlinChildren李惇馥*はじめに中国では,可視光線による光治療機器がC2008年から弱視治療用として認可を受けて,中国国内の病院で使用されていた.2012年には,弱視治療に対する光治療の有効性が国際誌でも報告されている1).2014年に本機器で用いられる赤色光に,近視眼での過剰な眼軸伸展を抑制する効果があることが偶発的に発見された.その後,中国から長波長の可視光線である赤色光が高い近視進行抑制効果を有するという研究結果が報告されている2.5).中国国内ではレッドライト治療に対する近視進行抑制効果の知見が集積したことから,この光治療装置は,弱視治療用だけでなく近視治療用としても中国の国家食品薬品監督管理局(ChinaCFoodandCDrugCAdministration:CFDA,現在はCNationalCMedicalCProductsCAdministra-tion:NMPA)に承認された.2024年C10月現在,本機器は日本では未承認であるが,30カ国以上で医療機器として許可されており(図1),全世界ですでにC15万人以上の小児に使用されている.CIレッドライト治療の近視進行抑制効果と副作用1.レッドライト治療の初年度の成績2021年以降,レッドライト治療の近視進行抑制効果に関する研究結果が報告されるようになり1.4),中山眼科センターのCHeらのグループが,レッドライト治療に対する大規模な多施設共同無作為化比較試験での非常に良好なC12カ月の中間成績を報告し話題となった2).この研究は,8.13歳の近視(.1.00..5.00D)の中国人小児C264人を,レッドライト治療群(1600ルクス/C650.nm/2.mW/1日2回3分/週5日)と,単焦点眼鏡(single-visionspectacles:SVS)群に割り当てた比較試験である.1年後,SVS群の眼軸伸展量はC0.38Cmmであったのに対し,レッドライト治療群ではC0.13Cmmの伸展であった.また,SVS群の近視進行量は.0.79Dであったのに対し,レッドライト治療群では.0.20Dであった.レッドライト治療の近視進行抑制効果はCSVS群と比較して,眼軸長でC69.4%,近視度数でC76.6%もの高い効果が得られた.75%以上のコンプライアンス良好群のみを抽出した場合,近視進行抑制効果は眼軸長でC76.8%,近視度数でC87.7%であった.一般的に,近視の進行は不可逆性と考えられる眼軸伸展を特徴とするが,レッドライト治療群ではCSVS群と比較して有意な眼軸伸展抑制が得られるだけでなく,12カ月間の治療後にC0.05Cmm以上の眼軸長の短縮がC21.6%の患児で観察された.C2.レッドライト治療の2年目の成績とリバウンドさらにCHeらのグループは,1年間の比較試験の続報として,2年目のフォローアップスタディをC2022年に報告した3).2年目フォローアップスタディでは,1年目のレッドライト治療群・SVS群はぞれぞれレッドライトC2年継続群,レッドライト-SVS変更群,SVS2年*JunfukuLee:東京科学大学眼科学教室〔別刷請求先〕李惇馥:〒113-8519東京都文京区湯島C1-5-45東京科学大学眼科学教室C0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(65)C199地域承認状況安全基準(IEC60825-1:2014)ヨーロッパCEマーククラスⅡaイギリスMHRA(医療品・衣料製品規制庁)クラスⅡaニュージーランドMedsafe(医薬品医療機器安全当局)クラスⅡaオーストラリアTGA(保健省薬品・医薬品行政局)クラスⅡa中国CFDA(中国食品薬品監督管理総局)クラスⅢトルコTMMDA(薬品・医療機器庁)クラスⅡaマレーシアMDA(医療機器庁)クラスBメーカーHP使用説明動画https://www.eyerisihttps://vimeo.com/nginternational.com/803740195図1近視治療用機器Eyerising(アイライジング)とその承認状況レッドライト治療装置は中国国内ではさまざまな機器が流通している.EyerisingInternational社(オーストラリア)のCEyerising近視治療用機器は,中国,オーストラリア,英国,欧州(EU),ニュージーランド,トルコ,マレーシアの世界C7地域ですでに医療機器として認可され,ISO13485認証を取得している機器である.文献C2.5において有効性と安全性が詳細に評価されている.動画サイトに説明動画(上記QRコード)が公開されている.-(mm)0.8SVS-SVSSVS-RLRL0.6RLRL-SVSRLRL-RLRL0.40.20.0期間図2レッドライト治療の眼軸伸展抑制効果とリバウンド赤色のレッドライト(repeatedClow-levelred-lightCtherapy:RLRL)2年継続群の眼軸伸展抑制効果は,青色の単焦点眼鏡(single-visionCspectacles:SVS)2年継続群と比較して約C75%であった.黄色のC1年目でレッドライト治療を中断した群では,中断後に赤色の継続群よりも速い眼軸伸展が観察された.リバウンドの程度は,青色のCSVS2年継続群のC2年目の進行速度より速いものの,青色のCSVS2年継続群のC1年目の進行速度と同程度であることから,中程度と判断された.なお,緑色の2年目に単焦点眼鏡からレッドライト治療に切り替えた群では,最終的にC2番目に高いC22.6%の眼軸伸展抑制効果を得ることができた.(文献C3より引用)眼軸長の変化01361224(カ月)PhaseonePhasetwo0.8-0.05ChangesinAL(mm)0.60.200.150.40.100.20.050.000.0012-0.10baseline1month3months6monthsTime(Months)図3異なるレッドライト出力での眼軸長伸展抑制効果の違いすべての異なる出力のレッドライト治療(low-levelCred-lighttherapy:LRL)群において,Control群(単焦点眼鏡装用)と比較して,有意な眼軸長伸展抑制効果が認められた.三つの出力間で平均眼軸長伸展量に有意差は認めなかったが,より高い出力のほうが効果的であることが示唆された.(文献C7より引用)Time(months)OKgroupOK-RLRLgroup図4オルソケラトロジー単独治療群vsレッドライト併用療法群での眼軸長伸展量の比較オルソケラトロジー治療C1年目(フェーズC1)に,0.30Cmm以上眼軸長が伸展したC7-15歳までの患児を,オルソケラトロジー単独治療群(OK,Cn=45)とレッドライト併用療法群(OK-RLRL,Cn=55)に分け検討した.OK-RLRL群ではCOK群よりも眼軸長伸展が有意に低いのみならず,過剰な眼軸長伸展は完全に抑制された(OK-RLRL群;C.0.10±0.16CmmCvsOK群;0.30C±0.19.mm,p<0.001).(文献C9より引用)C-