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抗VEGF療法の実際(1)

2025年1月31日 金曜日

抗VEGF療法の実際(1)Real-WorldApplicationsofAnti-VEGFTherapy片岡恵子*はじめに新生血管型加齢黄斑変性(neovascularCageCrelatedCmaculardegeneration:nAMD)の現在の標準的治療は抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthCfac-tor:VEGF)薬の硝子体内投与である.抗CVEGF薬により滲出性変化を抑制することで,視力改善と長期にわたり改善した視力を維持できる時代となった.一方,実臨床では不十分な治療で視力が低下してしまう例もまだある.本稿では,長期にわたり良好な視力を維持することを目標として,実際どのように治療しているかを私見を交えて解説する.CI抗VEGF薬の選択現在,抗CVEGF薬はバイオシミラーを含めてC6種類が発売されているが,未治療のCnAMDにまずどの薬剤を使用するかは議論の分かれるところである.私見ではあるが,ラニビズマブ(ルセンティスもしくはラニビズマブCBS)は,日本人に多いポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalCchoroidalvasculopathy:PCV)においてポリープ状病巣の閉塞率がC35%程度とやや低いことや1),ブロルシズマブに関連する眼内炎症が高率であることなどを総合して2),第一選択薬としてはアフリベルセプト2Cmg(アイリーア)もしくはファリシマブ(バビースモ)を使用している.全身の抗CVEGF薬の全身暴露量を配慮し,Fc受容体をもたないラニビズマブ,もしくはCFc受容体を改変してあるファリシマブを脳梗塞など基礎疾患のある患者や高齢者に使用するようにしている3).ただし,抗CVEGF薬の全身暴露量と安全性に関しては未だ結論は出ていない.高濃度のアフリベルセプトC8Cmgを第一選択とするかどうかは,今後の臨床データ次第である.病型による薬剤の使い分けは行っていない.CII治療レジメン導入期とは,1カ月ごとにC1回,通常連続C3回(薬剤によってはC4回)の投与を行うことで視力の改善を図る時期とされる4).維持期とは改善した視力の安定化,維持を行う期間である.nAMDは完治しない疾患であることからも,維持期は生涯にわたり続くことを患者と共有しておく必要がある.現在,長期的に視力を維持できる方法として推奨されるのはCtreatCandextend投与法である.すでにシステマティックレビューおよびメタ解析の結果から必要時投与法(proCrenata:PRN)では視力成績が劣ると示されていることは知っておきたい5).実際の筆者の施設でのCtreat-and-extend投与法の例を図1に示す.眼底検査と黄斑全体もしくは病変全体をスキャンした光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)にて,網膜下液,網膜内液,網膜色素上皮下液の各C.uid,フィブリンや出血などの網膜下高輝度物質(subretinalChyperre.ectivematerial:SHRM)の有無により活動性を評価し,滲出性変化が消失したら延長を開始する.そのため,3回連続投与後も滲出が残る場合は引き続き毎月投与が必要になる症例もある.ま*KeikoKataoka:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕片岡恵子:〒181-8611東京都三鷹市新川C6-20-2杏林大学医学部眼科学教室C0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(49)C49図1Treatandextend投与の実際図2滲出性変化の有無a:網膜下液や硬性白斑,急峻に突出する網膜色素上皮.離がみられる.網膜色素上皮.離の内部には網膜色素上皮下液とともにリング状の構造がみられる.Cb:抗CVEGF薬を毎月連続C4回投与後C1カ月のCOCT.網膜下液は減少し,網膜色素上皮.離の丈は低くなったが,網膜色素上皮下液はまだ残存している.5回目の抗CVEGF薬を投与した.Cc:bのC1カ月後のCOCTである.網膜下液も網膜色素上皮下液も消失した.図3網膜色素上皮下液の増大は出血の前兆と考えられる症例a:抗CVEGF薬C3回目注射時.滲出性変化はみられない.Cb:aのC4週後に網膜色素上皮下液がわずかに増加した.この時点でC4回目の抗CVEGF薬を投与した.Cc:bからC8週後に網膜下および網膜色素上皮下出血が出現した.Cd:眼底写真でC1乳頭径程度の黄斑下出血がみられる.24回目投与26回目投与7週7~8週36回目投与1回目投与4~6週間隔(3年4カ月時点)8週間隔(3年8カ月時点)間隔間隔(5年時点)9週間隔図4Treatandextendにて治療をした症例a:治療開始時に網膜下高輝度物質(SHRM),網膜下液,網膜色素上皮下液がみられた.b,c:4.6週間隔で投与を継続してC24回目の投与時に滲出性変化は消失している(Cb).その後C8週間に投与間隔を延長したところ,26回目の投与時(Cc)に網膜色素上皮下液が再出現したため,いったんC7週へ短縮した.Cd:しばらくC7.8週間隔で投与を継続し,5年の時点で視力は(1.2)となり,OCTでもCellipsoidzoneが一部回復している.図5薬剤の切り替えが奏効した症例a,b:左眼,視力(0.8).a:6週ごとにアフリベルセプトC2.mgを投与しても網膜下液が残存した.この時点でブロルシズマブへ切り替えた.b:aのC6週後に網膜下液が消失し,網膜色素上皮.離の丈も減少した.図6疾患活動性がコントロールされず増悪が続いた症例10年間でアフリベルセプトC2Cmg81回,ファリシマブ4回,ブロルシズマブC3回,アフリベルセプトC8Cmgを3回施行したものの,すでに疾患活動性のコントロールがつかない状況まで悪化した.もっともよい視力は(1.2)まで上昇したが,滲出と出血を繰り返し,(0.1)まで悪化した.Ca:脂質を多く含む滲出性変化と網膜出血も少量みられる.Cb:が示す部位のCOCT画像では,網膜内液と中心窩から下方にかけて多峰性の網膜色素上皮.離が広範囲に広がっていることがわかる.-

抗VEGF薬の種類と特徴

2025年1月31日 金曜日

抗VEGF薬の種類と特徴TypesandCharacteristicsofAnti-VEGFDrugs政岡未紗*山城健児*はじめに新生血管型加齢黄斑変性(neovascularage-relatedmaculardegeneration:nAMD)は,高齢者における主要な失明原因の一つであり,新生血管の異常な増殖が関与する進行性の病態である.新生血管が脆弱なため,滲出液や出血がみられると視力低下や中心暗点が生じ,放置すれば不可逆的な視力喪失を招くため,早期の治療が不可欠である.その治療の中心として,血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)の働きを抑制する抗VEGF薬が用いられている.抗VEGF薬は,VEGFの過剰な作用を抑えることで新生血管の発生を防ぎ,漏出や炎症を抑える効果ももつ.2024年10月現在,わが国の臨床で使用可能な抗VEGF薬にはラニビズマブ,アフリベルセプト,ブロルシズマブ,ファリシマブがあり,それぞれ標的とするサイトカインや分子量,構造が異なるために,作用の持続期間や副作用のリスクなどにも異なる特徴がある.このようなさまざまな抗VEGF薬が登場してきたことで,導入期治療による視力改善だけではなく,その後の長期的な視力維持をめざすことができる時代となった.本稿では,わが国で現在使用可能な抗VEGF薬の種類と特徴を概説し,とくにnAMDの病態においてそれぞれの薬剤が果たす臨床的意義について解説する.I抗VEGF薬の種類わが国で使用可能な抗VEGF薬を表1に示す.以降では各薬剤の概要および分子構造,作用機序,留意点などについて述べる.1.ラニビズマブ(商品名:ルセンティス,ラニビズマブBS)2009年にルセンティス硝子体内注射液10mg/mlが発売され,2014年にルセンティス硝子体内注射用キット10.mg/mlが発売されている.ラニビズマブBSはルセンティスのバイオシミラー(バイオ後続品)であり,ラニビズマブBS硝子体内注射用キット10mg/mlが2021年に発売された.後発医薬品(ジェネリック医薬品)は有効成分の分子量が小さく構造が単純なため,先発医薬品と同一の有効成分を製造できるのに対して,バイオシミラーの有効成分は分子量が大きく構造が複雑なため,先行バイオ医薬品と比較した臨床試験で品質,安全性,有効性が同等性または同質性が証明されたあとに発売される.ラニビズマブは,VEGFの活動を阻害することで血管新生を抑制し,漏出や炎症を抑える抗体フラグメントである.以下に,その分子構造と作用機序を詳しく述べる.a.分子構造と作用機序(図1,2)ラニビズマブは,ヒト免疫グロブリン1(IgG1)抗体のfragmentantigenbinding(Fab)フラグメント(抗原結合部位)のみを含み,fragmentcrystallizable(Fc)領域が欠損している.このため,ベバシズマブなどのフルサイズ抗体と比較し,分子サイズが小さい(約48kDa)*MisaMasaoka&KenjiYamashiro:高知大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕政岡未紗:〒783-8505高知県南国市岡豊町小蓮高知大学医学部眼科学教室0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(41)41表1国内で使用可能な抗VEGF薬一般名RnibizumabラニビズマブA.iberceptアフリベルセプトBrolucizumabブロルシズマブFaricimabファリシマブRanibizumabラニビズマブA.iberceptアフリベルセプト製品名ルセンティスアイリーア2.mgベオビュバビースモラニビズマブBSアイリーア8.mg国内販売開始2009年2012年2020年2022年2023年2024年薬剤の分類Fab遺伝子組み換え蛋白製剤scFv二重特異性抗体Fab遺伝子組み換え蛋白製剤阻害する因子VEGF-AVEGF-APlGFVEGF-BVEGF-AVEGF-AAngiopoietin-2VEGF-AVEGF-APlGFVEGF-B分子量48.kDa97-115kDa26.kDa149.kDa48.kDa97-115kDa分子構造VLVHCLCH1CH2CH2CH3CH3VLVHVHVHVLVLCLCH1CH1CLCH2CH2CH3CH3VLVHCLCH1CH2CH2CH3CH3モル数の比11.723411.7用量0.5.mg2.0.mg6.0.mg6.0.mg0.5.mg8.0.mg価格¥103,229(キット)¥131,539(バイアル)¥137,292(キット)¥145,935(バイアル)¥130,951(キット)¥163,894(バイアル)¥74,282(キット)¥181,763(バイアル)製造会社ノバルティスファーマバイエルノバルティスファーマ中外製剤千寿製薬バイエルマウス抗VEGF-Aモノクローナル抗体Fab領域Fc領域VEGF:血管内増殖因子,Fab:fragmentantigenbinding,Fc:fragmentcrystallizable.図1ラニビズマブの分子構造遺伝子状の操作で,ヒトFabのフレームワークにマウス抗VEGF-A配列を挿入することでヒト化し,それの親和性を140倍に増強させた.VEGF-AVEGF-BPIGFAngVEGFR-1VEGFR-2Tie2ラニビズマブ脈絡膜血管内皮細胞図2ラニビズマブの作用機序ラニビズマブは,VEGFR-1とCVEGFR-2に結合するCVEGF-Aと結合してCVEGFの作用を阻害するため,CNVの形成および血管透過性が抑制される.VEGFR-1VEGFR-2VEGFR-1抗VEGF抗体(ヒトIgG1)アフリベルセプト2Fab領域456Fc領域VEGF:血管内増殖因子,VEGFR-1:VEGF受容体-1,VEGFR-2:VEGF受容体-2.図3アフリベルセプトの分子構造VEGFR-1およびCVEGFR-2は,細胞外の七つのCIgドメインと細胞内のチロシンキナーゼドメイン受容体である.アフリベルセプトは,VEGFR-1の第C2Igドメイン,VEGF-2の第C3IgドメインおよびヒトCIgG1のCFcをもつ遺伝子組換え融合糖蛋白質である.VEGF-AVEGF-BPIGFAngVEGFR-1VEGFR-2拡大Tie2アフリベルセプト脈絡膜血管内皮細胞図4アフリベルセプトの作用機序アフリベルセプトは,VEGFR-1とCVEGFR-2に結合するCVEGF-AおよびCVEGFR-1に結合するVEGF-B,PlGFに結合し,血管新生や血管透過性の亢進を抑制する.VEGF-Aに特異的かつヒト化抗ヒトVEGF-A高親和性を示すウサギでモノクローナル抗体ブロルシズマブ作製した抗体を選択V領域Fab領域(可変領域)相補性決定領域C領域リンカーペプチド(定常領域)一本鎖抗体フラグメントFc領域(scFv)VEGF:血管内増殖因子,Fab:fragmentantigenbinding,Fc:fragmentcrystallizable,V領域:Variableregion,C領域:Constantregion.図5ブロルシズマブの分子構造ブロルシズマブはヒト化抗ヒトCVEGF-Aモノクローナル抗体から作られた一本鎖抗体フラグメント(scFv)である.VHとCVLがリンカーペプチドで結合されている.VEGF-AVEGF-BPIGFAngVEGFR-1拡大VEGFR-2Tie2ブロルシズマブ脈絡膜血管内皮細胞図6ブロルシズマブの作用機序ブロルシズマブは,VEGFR-1とCVEGFR-2に結合するCVEGF-Aと結合してCVEGFの作用を阻害するため,CNVの形成および血管透過性が抑制される.抗VEGF-A抗体抗アンジオテンシン抗体V領域(可変領域)CrossMab技術でファリシマブ重鎖と軽鎖のV領域を交換VEGF:血管内増殖因子,Ang:アンジオテンシン,Fab:fragmentantigenbinding),Fc:fragmentcrystallizable,V領域:Variableregion.図7ファリシマブの分子構造ファリシマブは,CrossMAb技術を用いて創製されたヒト化二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)で,VEGF-Aと結合する抗CVEGF-AFabとCAng-2と結合する抗CAng-2Fabが同一分子内に存在する.さらに,IgG1分子のCFc領域は改変されている.VEGF-AVEGF-BPIGFAngVEGFR-1拡大VEGFR-2Tie2ブロルシズマブ脈絡膜血管内皮細胞図8ファリシマブの作用機序ファリシマブは,VEGFR-1とCVEGFR-2に結合するCVEGF-AおよびCVEGFの感受性を高めるCAng-2と結合してCVEGFの作用を阻害するため,CNVの形成および血管透過性が抑制される.

新生血管型加齢黄斑変性の診断

2025年1月31日 金曜日

新生血管型加齢黄斑変性の診断DiagnosisofNeovascularAge-RelatedMacularDegeneration森隆三郎*はじめに2024年の日眼会誌に「新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン」1)(以下,新ガイドラインと表記)が掲載された.これまでわが国では2008年の「加齢黄斑変性の分類と診断基準」2)および2012年の「加齢黄斑変性の治療指針」3)(以下,旧ガイドラインと表記)に基づいて加齢黄斑変性(age.relatedmaculardegeneration:AMD)の診断と治療が行われてきたが,今後は新ガイドラインを基に診療を行うことになる.新ガイドラインは日本網膜硝子体学会新生血管型加齢黄斑変性診療ガイドライン作成ワーキンググループにより作成され,画像も豊富で細かな解説もなされているので,PDFをダウンロードして一読することを推奨する.本稿ではカラー眼底写真,光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT),光干渉断層血管撮影(OCTangiogra-phy:OCTA)を中心に,新生血管型加齢黄斑変性(neo-vascularage-relatedmaculardegeneration:nAMD)の診断について新ガイドラインに則って解説する.I新ガイドラインで押さえるべきポイント1.AMD分類の改訂旧ガイドラインでは,AMDを萎縮型AMDと滲出型AMDに分類していたが,新生血管があるが滲出性変化がない状態のAMDが存在することから,新ガイドラインでは萎縮型(atrophic)AMDと新生血管型(neovascu-lar)AMDに分類している.表1新ガイドラインのMNVの分類分類,病型などMNVの位置(深さ)1型MNV網膜色素上皮下PCVポリープ状病巣あり2型MNV網膜色素上皮上から網膜下1+2型MNV網膜色素上皮上下に混在3型MNV(RAP)網膜血管から生じる2.「脈絡膜新生血管」を「黄斑新生血管」に従来は新生血管型AMDにみられる黄斑部の新生血管を脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)としていたが,黄斑部の網膜血管由来の新生血管も含まれることから,国際的にも黄斑新生血管(macu-larneovascularization:MNV)とすることが多くなっており4),新ガイドラインではCNVではなくMNVとしている.3.MNVの分類旧ガイドラインでは,滲出型AMDをポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)と網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)を特殊型,それ以外を典型AMDと分類し,治療については,その病型別に抗血管内皮増殖因子(vascu-larendothelialgrowthfactor:VEGF)薬硝子体内注射,光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT),および両者の併用療法が推奨治療として組み込まれてい*RyusaburoMori:日本大学医学部視覚科学系眼科学分野〔別刷請求先〕森隆三郎:〒101-8309東京都千代田区神田駿河台1-6日本大学病院眼科0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(31)31dc図11型MNVの所見(MNVはOCTで,網膜色素上皮の不整な隆起部位はOCTAで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に灰白色病巣()と網膜色素上皮.離(PED)を認める.().b:OCT.網膜色素上皮の不整な隆起と網膜色素上皮下にMNVを示唆する高反射病巣を伴う.brovascularPED()と漿液性網膜.離(SRF)を認める.c:OCTA.脈絡毛細血管板レベルのセグメンテーションの範囲にMNVを認め(),Bスキャンで網膜色素上皮下にMNVの血流が確認できる().d:フルオレセイン蛍光造影(FA)後期..brovascularPEDの蛍光漏出を認めるが,MNVの範囲は不明である.e:インドシアニングリーン蛍光造影(IA)後期.PED内にMNVを示唆する面状の過蛍光を認める().c図22型MNVの所見(subretinalhyperre.ectivematerial(SHRM)内のMNVをOCTAのBスキャンで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に出血を伴う灰白色病巣を認める().b:OCT.中心窩下に漿液性網膜.離(SRF,),網膜色素上皮上にMNVとフィブリンを示唆する高反射病巣(SHRM)を認める(,).c:OCTA.網膜外層レベルのセグメンテーションの範囲にMNVの血管を認め(),BスキャンでSHRM内のMNVの血流を確認でき,SHRM内のフィブリンとMNVは分離して捉えることができる().d,e:FA.早期(d)からMNVの血管網を鮮明に認め,後期(e)に旺盛な蛍光色素漏出に伴う過蛍光を呈するClassicCNV.図33型MNVの所見(軟性ドルーゼン上の網膜内浮腫をOCTで,網膜内MNVをOCTAで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に多発する軟性ドルーゼンを認めるが滲出の有無は不明.b:OCT.軟性ドルーゼンは隆起した網膜色素上皮内に高反射病巣として認め(),中心窩に網膜内浮腫(IRF,),網膜内に新生血管を示唆する高反射病巣()を認める.c:OCTA.網膜外層レベルのセグメンテーションの範囲にMNVを認め(),Bスキャンで網膜色素上皮上にMNVの血流が確認できる().d,e:FA(d)およびIA(e)で超早期に網膜血管と吻合するType3MNVを認める().c図43型MNVの所見(網膜浅層出血を伴う網膜色素上皮.離(PED)をOCTで,網膜内~下MNVをOCTAで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に網膜浅層出血を伴うCPEDを認める().b:OCT.上段に網膜内浮腫(IRF,),網膜内に新生血管を示唆する高反射病巣()を認める.下段に大型のCPED()を認める.Cc:OCTA.脈絡毛細血管板レベルのセグメンテーションの範囲にCMNV()を認め,Bスキャンで網膜色素上皮上にCMNVの血流が確認できる().図5PCVの所見(ポリープ状病巣をOCTとOCTAのマニュアル解析で確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に出血を伴う橙赤色病巣を認める().b:OCT.中心窩下に漿液性網膜.離(SRF,),網膜色素上皮上の急峻な立ち上がりを示すポリープ状病巣を認める().c:OCTA.セグメンテーションのラインを網膜色素上皮下から網膜下に設定し(),異常血管網()とポリープ状病巣()の両方が検出できる.Bスキャンで異常血管網()とポリープ状病巣()の血流を確認ができる.Cd:IA.異常血管網()とポリープ状病巣()を鮮明に認める.図6PCVの所見(網膜色素上皮裂孔を眼底自発蛍光とOCTで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部耳側に出血()と灰白色病巣伴う橙赤色病巣()を認める.Cb:FAF.RPE欠損部位は低蛍光として認める().c:OCT.中心窩下に漿液性網膜.離(SRF,),網膜色素上皮上の急峻な立ち上がりを示すポリープ状病巣()異常血管網を示唆するダブルレイヤーサインを認める().網膜色素上皮欠損部位(の範囲)の脈絡膜反射は高輝度として認める().Cd:FA.網膜色素上皮欠損部位は早期から過蛍光を示す().e:IA.網膜色素上皮欠損部位は境界鮮明な過蛍光を示し(),ポリープ状病巣()は鮮明に検出される.図7大型の網膜色素上皮.離(PED)の所見(OCTでPED辺縁のノッチの有無でMNVの有無を確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部にCPEDを認める().b:OCT.黄斑部に大型のCPEDを認めるが,PED内にCMNVを示唆する高反射病巣()とCPED辺縁にノッチを認めず(),MNVの存在は否定できる.Cc:FA後期.PED内は色素貯留(pooling)による過蛍光を認めるがCMNVの存在は不明.Cd:IA後期.PED内にCMNVを示唆する所見は認めず,PED内は下液に伴う蛍光遮断(block)による低蛍光を示す.dec図8PNV(type1MNV)(PNVと中心性漿液性脈絡網膜症との鑑別は,OCTAでMNVを確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に漿液性網膜.離(SRF)を認める().b:OCT;SRF()を伴う網膜色素上皮の扁平隆起()および脈絡膜中大血管の拡張を伴う脈絡膜肥厚を認める().c:OCTA.脈絡毛細血管板レベルのセグメンテーションの範囲にCMNVを認め(),Bスキャンで網膜色素上皮下にCMNVの血流が確認できる().d:FA後期.びまん性の蛍光漏出を認める.Ce:IA後期.MNVを示唆する面状の過蛍光を認める.-部の範囲となっている.OuterRetina層は,正常眼では網膜血管が存在しないため,血管が描出されればRPEから網膜側に隆起したCMNVの存在が示唆されるが,下縁がCBruch膜上部までの範囲で,RPEより上にMNVが存在するC2型CMNV(図2)だけでなく,RPEより下にCMNVが存在するC1型CMNVも描出される.つまり,自動層別解析のCOuterRetina層の画像は,MNVの有無を確認するためにある.ChoroidCapillary層は,Bruch膜上部から下部の範囲となっているが,RPEよりやや深い部分に存在するC1型CMNV(図1)やCPCVの異常血管網が検出される.MNVの存在の有無については,自動層別解析で得られる画像で簡便に確認できるが,MNVの正確な大きさや位置の深さについては,マニュアル解析で詳細に確認する必要がある.OCTAのマニュアル解析は,得られた画像を読影する際に,血流を示す赤色部位を表示したCBスキャンの画像を確認しながらセグメンテーションの幅を任意に設定し,それを上下にずらし解析する手段でCMNVがCRPEより上の網膜下にあるのかCRPEの下にあるのかを証明できるとする報告が以前よりある13).さらにCprojectionアーチファクトによる偽血管の有無を確認できる(projectionアーチファクトは,網膜内層血管がそれより深層に影となって映り込む現象で,実際にはその層には存在しない血管を描出してしまうので読影を困難にさせるアーチファクトの一つである14)).セグメンテーションの幅を任意に設定する(たとえばスキャン幅を大きくする)ことにより,部位により深さが異なるCMNVでも全体像を描出できる.カラー眼底で黄斑部に出血を伴う灰白色病巣を認め,OCTで高反射病巣(subretinalChyperre.ectivematerial:SHRM)の所見を認めた場合にCSHRM内のフィブリンとCMNVは一塊となり所見の分離はできないため,OCTAマニュアル解析をする.BモードでSHRM内の深部にCMNVの血流を確認し,フィブリンと分離して捉えることができる(図2).PCVのポリープ状病巣(図5)や3型MNV(図3,4)についてもCOCTABスキャンによる高度の検出が可能との報告もあり15,16),これが,MNVの存在を確認するのにすべての患者にCFAとCIAが必須とならない理由になる.おわりにPNVはCOCTAによる診断が容易となり,抗CVEGF薬注射やCPDTを施行する機会も多くなってきているが,PNVのCAMDとしての位置づけがわが国では明白でなかった.しかし,新ガイドラインには,アジア人のMNVは欧米とは異なる病態も多いことを考慮し,新生血管型CAMDにCPNVを含めたとする記載があり,躊躇なくCAMDとしての保険治療が可能となった.新ガイドラインにはCPNV以外にも多くの新しい情報が記載されている.これからは網膜疾患専門医でなくても,新生血管型CAMDを病型に分類し正しく診断する必要があるが,新ガイドラインには新生血管型CAMDに伴う所見の検出方法についても,多くの画像と検査機器ごとの所見の解説がわかりやすく提示されている.新ガイドラインを参照し,新生血管型CAMDの診断を確実なものとしたい.文献1)飯田知弘,五味文,安川力ほか;日本網膜硝子体学会新生血管型加齢黄斑変性診療ガイドライン作成ワーキンググループ:新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン.日眼会誌128:680-698,C20242)髙橋寛二,石橋達朗,小椋祐一郎ほか;厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性診断基準作成ワーキンググループ:加齢黄斑変性の分類と診断基準.日眼会誌112:1076-1084,C20083)髙橋寛二,小椋祐一郎,石橋達朗ほか;厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性治療指針作成ワーキンググループ:加齢黄斑変性の治療指針.日眼会誌C116:1150-1155,C20124)SpaideRF,Ja.eGJ,SarrafDetal:Consensusnomencla-tureforreportingneovascularage-relatedmaculardegen-erationdata:consensusonneovascularage-relatedmacu-larCdegenerationCnomenclatureCstudyCgroup.COphthalmologyC127:616-636,C20205)日本ポリープ状脈絡膜血管症研究会:ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準.日眼会誌109:417-427,C20056)WarrowCDJ,CHoangCQV,CFreundKB:PachychoroidCpig-mentepitheliopathy.Retina33:1659-1672,C20137)PangCE,FreundKB.Pachychoroidneovasculopathy.Ret-inaC35:1.9,C20158)CheungCCMG,CLeeCWK,CKoizumiCHCetal:Pachychoroiddisease.Eye(Lond)C33:14-33,C20199)YanagiY:Pachychoroiddisease:aCnewCperspectiveConCexudativemaculopathy.JpnJOphthalmolC64,C202010)SatoT,KishiS,WatanabeGetal:Tomographicfeatures38あたらしい眼科Vol.42,No.1,2025(38)-

萎縮型加齢黄斑変性の診断と治療

2025年1月31日 金曜日

萎縮型加齢黄斑変性の診断と治療DiagnosisandTreatmentOptionsforGeographicAtrophyAssociatedwithAge-RelatedMacularDegeneration上田奈央子*はじめにわが国を含めアジアでは,萎縮型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)は新生血管型AMDと比較すると頻度が低く,これまで有効な治療法がなかったこともあり,臨床の現場においては欧米ほど重要視されていないのが現状である.また,疾患頻度が低いことからまとまった症例数を対象とした研究がむずかしく,アジア人における本疾患の知見は限られていた.しかし,人口増加と高齢化が進行しているアジアにおいて,今やAMD患者数は欧米をしのいで世界一であり,今後さらに増加することが見込まれている.新生血管型AMDは抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬の出現により予後が大きく改善した一方,萎縮型AMDに特徴的な所見である地図状萎縮(geographicatrophy:GA)の病態は不明な点も多く,長く治療薬の開発が困難であった.しかし昨今,二つの薬剤でGAの拡大を抑制する効果が示され,ようやく待望の治療薬が登場した.アジアにおいて,今後GAの治療戦略をどう考えていくかは喫緊の課題である.I疾患概念萎縮型AMDは,典型的には加齢に伴い黄斑部にドルーゼンが蓄積し,視細胞,網膜色素上皮(retinalpig-mentepitheliopathy:RPE),脈絡膜毛細血管板が変性・萎縮してGAに至る疾患である(図1).GAはいったん発症すると経時的に拡大し,中心窩に及ぶと重篤な視力障害を引き起こす.欧米では新生血管型AMDと同頻度でみられ,成人の失明原因として重要な疾患と認識されている.GAはもともと眼底所見の用語であるが,近年では後期AMDにみられる黄斑新生血管(macularneovascularization:MNV)を伴わない萎縮(わが国でいうところの萎縮型AMD)に限定して用いることが提唱されている1).新生血管型AMDにおいてもしばしば黄斑部に萎縮を認めるが,このような萎縮はGAとは区別される2).日本人の萎縮型AMDにおいて,ドルーゼンに関連して生じると考えられる従来のGAとは特徴が異なるサブタイプがあることが報告されている.パキコロイドの特徴をもつことから“パキコロイドGA”とよばれ,従来のGAとは臨床的特徴だけでなく遺伝的背景も異なることが示唆されている3).日本人のGAの約2割がこのタイプである4).II診断わが国の萎縮型AMDの診断基準を表1に示す2).1.眼底所見GAは,典型的には黄斑部に境界明瞭な単発性あるいは多発性の病変としてみられ,ドルーゼンを伴う(図1).脈絡膜が薄く豹紋状眼底となる症例が多い.しばしばreticularpseudodrusen(subretinaldrusenoiddepos-its)を伴い(図2),石灰化ドルーゼンやクリスタリン様*NaokoUeda:京都大学大学院医学研究科眼科学〔別刷請求先〕上田奈央子:〒606-8507京都市左京区聖護院河原町54京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(23)23図1網膜色素上皮.離(PED)から発症したGAa~c:大きなドルーゼン様PED.a:眼底カラー写真で色素異常()を伴うドルーゼン様PEDを認める.b:眼底自発蛍光で上方にreticularpseudodrusenが低蛍光に描出されている.c:スペクトラル・ドメイン(SD)-OCTではPED内部は均一な中等度反射を示し,網膜内にはhyperre.ectivefoci()とよばれる大小多数の高反射像を認める.d~f:4年後.ドルーゼン様PEDは消失しGAが生じている.d:眼底カラー写真ではGA()の境界がややわかりづらい.e:眼底自発蛍光では境界明瞭な低蛍光領域として描出される(内).f:SD-OCTでは網膜外層と網膜色素上皮の萎縮を認める.表1日本の萎縮型加齢黄斑変性診断基準視力規定なし年齢50歳以上の症例において,中心窩を中心とする直径6,000μm以内の領域に以下の特徴を満たす地図状萎縮を認める眼底所見<必須所見>以下のすべてを満たすものを地図状萎縮とする①直径250μm以上②円形,卵円形,房状または地図状の形態③境界明瞭④網膜色素上皮の低色素または脱色素変化⑤脈絡膜中大血管が明瞭に透見可能<参考所見>以下の所見が診断の参考になる①中心窩との位置関係は問わない②同一眼に複数の萎縮を認めることがある③両眼性のことがある④軟性ドルーゼン,reticularpseudodrusen,色素沈着を伴うことがある⑤漿液性網膜色素上皮.離,ドルーゼン様網膜色素上皮.離から生ずるものがある画像所見1)光干渉断層計所見①網膜色素上皮ラインの菲薄化②Ellipsoidzone,interdigitaionzone,外顆粒層の消失③外境界膜ラインの途絶④脈絡膜信号の増強2)眼底自発蛍光所見①萎縮部の境界鮮明な低蛍光②萎縮部周囲の不規則な過蛍光除外規定先天性/遺伝性疾患,強度近視眼における網脈絡膜萎縮,慢性中心性漿液性脈絡網膜症,外傷性網膜・脈絡膜打撲壊死の陳旧期,網膜色素上皮裂孔,光凝固瘢痕,加齢黄斑変性の他病型重症度分類1)重症:中心窩を含む地図状萎縮を認めるもの2)中等症:中心窩を含まないもので,①.⑤の因子を一つ以上認めるもの3)軽症:中心窩を含まないもので,①.⑤の因子を一つも認めないもの①多発性地図状萎縮,②両眼性地図状萎縮,③1乳頭径以上の地図状萎縮,④僚眼に黄斑新生血管をもつもの,⑤大型のドルーゼン(直径125μm以上)またはreticularpseudodrusenまたは色素沈着を認めるもの(文献2を参考に作成)図2Reticularpseudodrusen(subretinaldrusenoiddeposits)の各種画像所見a:眼底カラー写真.黄白色の網膜下沈着物として見られ,中心窩に近いものは点状(dot),周辺部では網状(ribbon)となる.Cb:眼底自発蛍光では低蛍光.Cc:Redfree画像では高反射.Cd:フルオレセイン蛍光造影(FA)では造影されない.Ce:インドシアニングリーン蛍光造影(IA)の後期像で,過蛍光の背景に低蛍光領域として描出される.Cf:IR(infrared)画像では低反射である.Cg:OCTではRPE上の高反射所見として描出される().左図は右図の内拡大図.図3GAに伴うさまざまな所見a:カラー眼底写真では,石灰化ドルーゼン()やクリスタリン様沈着()は光沢を伴う輝度の高い黄白色網膜下病変としてみられる.Cb:IR画像でクリスタリン様沈着()は強い高反射となる.Cc:aの部分のSD-OCT画像.石灰化ドルーゼン内部に点状の高反射像を認める().d:bの部分のCSD-OCT画像.クリスタリン様沈着は,Bruch膜レベルに線状の高反射所見としてみられる().e:SD-OCT画像.網膜外層にCouterretinaltubulationとよばれる環状構造を認める().EZ:視細胞内接外節接合部,ELM:外境界膜,RPE:網膜色素上皮.図4AMDに見られる黄斑部萎縮のOCT所見による分類以下の所見をすべて満たすものはCcompleteRPEandouterretinalatrophy(cRORA)と定義される.①C250Cμm以上のChypertransmission(後方の脈絡膜信号の増強)領域.②C250Cμm以上のCRPEラインの菲薄化や消失.③視細胞変性所見(IZ/EZ/ELMラインの消失,外顆粒層の菲薄化).④CRPE裂孔の所見がない.IZ:interdizaitationzone,EZ:ellipsoidzone,ELM:externallimitingmembrane.Cb図5Di.usetricklingtypeGAa:超広角カラー眼底写真.黄斑部を越える大きなCGAを認め,特徴的な多房性の形状を示す.広範囲にCreticularpseudodrusenを認める.Cb:SD-OCTではCBruch膜とCRPEの乖離所見(内)およびCreticularCpseudodrusen()を認める.Cc,d:眼底自発蛍光(Ccは超広角)では,周辺部にびまん性に過蛍光を認め,GAと正常との境界部分に強い過蛍光がみられる.図6パキコロイドGAに特徴的な所見a:眼底カラー写真によるパキコロイドCGA(の中央)の所見.小さく単発性で円形のものが多い.ドルーゼンに乏しく,脈絡膜が厚いためCGAでない部分は後方の脈絡膜血管の透見性が不良である.Cb:眼底自発蛍光では境界明瞭な低蛍光.Cc:IA後期像で脈絡膜血管透過性亢進()を認める.Cd:深部強調(enhanced-depthCimaging:EDI)OCT画像.はCOCTスキャン範囲を示す.脈絡膜大血管の拡張(pachyvessel)を認める().-

早期・中期加齢黄斑変性の診断

2025年1月31日 金曜日

早期・中期加齢黄斑変性の診断DiagnosisoftheEarlyandIntermediateStagesofAge-RelatedMacularDegeneration櫻田庸一*はじめに本稿における早期加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)および中期AMDの診断に関しては,「新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン」1)に基づいて解説を行う.Iドルーゼン分類と加齢黄斑変性ドルーゼンは,一般的に加齢に伴い網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)とBruch膜の間に沈着し,脂質やアポリポ蛋白BおよびE,補体性成分を含むとされており,その大きさによりよび方が異なる(表1).小型ドルーゼンは生理的な加齢性変化であり,後期AMDの危険性は少ないとされている.なお,小型ドルーゼンは以前はharddrusen(硬性ドルーゼン)ともよばれていた.近年,ドルーゼンの呼称はサイズを用いた表現に変わってきているため,硬性ドルーゼンの呼称は使われなくなりつつある.63.μm以上の大きさを有するドルーゼンは,軟性ドルーゼンともよばれる.軟性ドルーゼンは,大きさにより中型と大型の二種に大別される.大きな大型ドルーゼン表1ドルーゼンの大きさによる分類小型ドルーゼン63.μm未満中型ドルーゼン63.μm以上125μm未満大型ドルーゼン125μm以上であるほど後期AMDの発症リスクが高いとされている2).ドルーゼンは大きさだけでは定義されないタイプもあり,これらのドルーゼンでは後期AMDのリスクも異なるため,マルチモーダルイメージングによる正確な診断が求められる3).II定義と診断早期AMDは,長径63~125.μmのドルーゼンが一つ以上あるものと定義されている.診断に関しては,眼底写真での診断が一般的ではあるが,光干渉断層計(opti-calcoherencetomography:OCT)を含めたマルチモーダルイメージングで診断を行うことが正確な診断につながると考えられる.一般的に,視神経乳頭に流入する網膜静脈の直径は125μmとされており,この静脈径の半分以上(63μm)かつ静脈径以下(125μm)の大きさのドルーゼンを有するようであれば,早期AMDと診断することができる.中期AMDは大型ドルーゼンが1個以上みられる,もしくはRPE異常がみられるものと定義されている.また,これらとは独立してreticularpseudodrusenがみられれば,中期AMDと定義される.診断に関しては早期AMDと同様,眼底写真での診断が一般的であり,視神経乳頭に流入する静脈径(125.μm)以上のドルーゼンがあれば,中期AMDと診断できる.しかし,125.μm以上の大きさを有し,眼底後極やアーケード血管に沿って散在することが多いパキドルーゼン*YoichiSakurada:山梨大学大学院医学工学総合研究部眼科学講座〔別刷請求先〕櫻田庸一:〒409-3898山梨県中央市下河東1110山梨大学大学院医学工学総合研究部眼科学講座0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(17)17表2大型ドルーゼンとパキドルーゼンのマルチモーダルイメージングによる比較評価項目大型ドルーゼンパキドルーゼンカラー眼底写真大きさ125Cμm以上125Cμm以上色調白色~黄色黄色辺縁不明瞭~明瞭明瞭形状円形円形~不整などさまざまCOCTドルーゼンの局在網膜色素上皮下に位置網膜色素上皮と一塊脈絡膜厚薄い~正常厚いCIA後期像低蛍光過蛍光図1パキドルーゼンのマルチモーダルイメージング72歳,女性.左眼,視力(1.2),PCVの僚眼.Ca:カラー眼底写真で右眼黄斑周囲に黄色のドルーゼンを認める.Cb:インドシアニングリーン蛍光造形の後期像では黄斑全体に過蛍光が観察され,パキドルーゼンに相当する部位にも過蛍光が観察される.c:中心窩やや下方のCOCT水平断ではドルーゼンに相当する部位に網膜色素上皮と一塊となった隆起が認められる.図2網膜色素脱失症例のマルチモーダルイメージング68歳,男性.左眼,視力(1.0),PCVの僚眼.Ca:カラー眼底写真では中心窩周囲に色素脱失がみられる.Cb:眼底自発蛍光では,色素脱失に相当する箇所が低蛍光となっており,網膜色素上皮障害が示唆される.Cc:OCT垂直断.Cd:OCT水平断.OCTでは,黄斑部を通り垂直断でCellipsoidzoneの途絶が中心窩の上方と下方に認められる.図3Reticularpseudodrusendotタイプのマルチモーダルイメージング80歳,男性.左眼,視力(1.2),2型CMNVの僚眼.Ca:カラー眼底写真では,中心窩上方に多数のCreticularpseudodrusenが散在している.Cb:近赤外光反射では,ドルーゼンが網膜色素上皮の上にあるため,一つひとつのドルーゼン様物質が低反射として明瞭に描出される.Cc:眼底自発蛍光では,ドルーゼン様物質が低蛍光として描出されるが,近赤外光反射のほうがより鑑別しやすいことがわかる.Cd:OCTの水平断では,中心窩耳側に網膜色素上皮の上にドルーゼン様物質(一つ)がみられる.図4Reticularpseudodrusenribbon/con.uentタイプのマルチモーダルイメージング80歳,女性.右眼,視力(1.0).a:カラー眼底写真では,中心窩周囲にCdotタイプのドルーゼン様物質がみられ,また耳側から耳側上方にかけて癒合したドルーゼン様物質が黄色の帯状にみえる.Cb:眼底自発蛍光のみでは,ドルーゼン様物質にみられる明らかな低蛍光は認められず,眼底自発蛍光だけでの診断はむずかしい.Cc:OCTの水平断では網膜色素上皮の上に無数の棘のようなドルーゼン物質が認められる.Cd:近赤外光反射では,dotタイプのドルーゼン様物質の低反射が認められるが,近赤外光反射だけではCribbon/con.uentタイプの診断はむずかしい.表3DotタイプとRibbon/con.uentタイプのマルチモーダルイメージングによる比較評価項目DotタイプRibbon/con.uentタイプカラー眼底写真外観・形状円形・点状黄色帯状眼底自発蛍光点状低蛍光明らかな特徴なし近赤外光反射点状低蛍光明らかな特徴なしCOCTドルーゼンの局在網膜色素上皮上網膜色素上皮上脈絡膜厚薄い薄い図5DrusenoidPEDの典型例70歳,男性.左眼,視力(0.5).a:カラー眼底写真では黄斑部全体に広がるドルーゼンが集簇癒合し,中心窩には遊走した色素上皮のため,色素沈着がみられる.Cb:OCTの水平断では,網膜色素上皮(RPE)が隆起したCRPE.離が認められ,中心窩近傍のCRPEは非薄化し,RPEを光が通過するChyperCtransmissionが認められる.

加齢黄斑変性の病態

2025年1月31日 金曜日

加齢黄斑変性の病態PathogenesisofAge-RelatedMacularDegeneration小沢洋子*,**はじめに加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)は慢性進行性の疾患であり,超高齢社会においては視機能障害の上位を占める.ドルーゼン(図1a)や網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)異常は将来のAMD発症リスクが高いことから,わが国では前駆病変,海外ではearlyAMDとよばれる.新生血管型AMD(図1b)あるいは萎縮型AMD(図1c)は,海外ではlateAMDとよばれる.いずれにせよ,病態が徐々に進行して最終的に発症することを反映している.新生血管型AMDと萎縮型AMDが混在する症例も報告されており,発症の根底にある基盤病態にはある程度の共通性があると考えられる.その一方で,最近ではドルーゼンだけでなく厚い脈絡膜を意味するパキコロイドとAMDの関連が注目され,病態の進行過程は画一的ではないと考えられている.I発症前から発症後まで続く基盤病態黄斑部に新生血管や滲出性変化,萎縮巣を生じると視機能低下をきたし,自覚症状を訴えて受診してAMDと診断される.しかし,自覚症状の出現は比較的急性だとしても,病変の形成は長年の変化の蓄積による.徐々に変化が進行し,一定ラインを超えたために症状を自覚し,受診して診断されたと考えたほうがよい.すなわち,診断がついたAMDは氷山の一角を見ているようなものである(図2).RPEで処理しきれなくなった脂質の異常沈着から生じるとされるドルーゼンや,眼底の色調変化から判断するRPE異常といった前駆病変をもつ患者のなかには,無症状の者もいるが,すでに歪視や視力低下などの自覚症状をもつ者もいる.前駆病変を呈するということは,すでに病態が存在するということである.すなわち,一見眼底は正常範囲と思われるときから,何年にもわたって徐々に変化が進行することになる.最初は眼に見えないような変化しか起こさない基盤病態が,長年の間には蓄積してやがて病変として顕性化していく.そしてその基盤病態は発症してからも続くので,病状の進行や治療後の再発を引き起こす.このような長い経過を示すという点では,ドルーゼン関連であれ,パキコロイド関連であれ共通しているが,その過程で働く分子などのメカニズムが異なるというのが,最近の考え方である.IIドルーゼンに関連するメカニズムドルーゼンはどのように形成されるのか.なぜ,AMD発症につながるのか.これまでの基礎研究や病理学的研究などの結果からは,RPEの機能不全に伴う代謝異常,異常沈着物,マクロファージなどの炎症性細胞の浸潤,炎症性サイトカインの分泌などが関係することが知られる1).RPEは元来,脂質二重膜で構成される視細胞外節を貪食して処理し,視物質の再生をするための脂質代謝機構をもつ.また,脈絡血流から脂質を含む栄養素を網膜側に輸送する働きももつ.これらが破綻すれYokoOzawa:*藤田医科大学東京先端医療研究センター臨床再生医学講座**藤田医科大学羽田クリニックアイセンター〔別刷請求先〕小沢洋子:〒144-0041東京都大田区羽田空港1-1-4HanedaInnovationCityZoneA藤田医科大学東京先端医療研究センター臨床再生医学講座0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(11)11図1加齢黄斑変性(AMD)の眼底像a:ドルーゼンを呈する前駆病変.Cb:新生血管に伴う滲出性変化を呈する新生血管型CAMD.本症例は出血と漿液性網膜.離,硬性白斑を伴っている.c:脈絡膜血管を透見できる境界明瞭な病巣をもつ萎縮型AMD.本症例はドルーゼンを伴っている.新生血管型AMD/萎縮型AMDROS除去能病的刺激によるROS過剰産生ROSとそれによる酸化ストレス蓄積図3酸化ストレス蓄積のメカニズム活性酸素種(reactiveCoxygenspecies:ROS)は生理的にも発生するが,通常は除去機構が働き恒常性を保つ.しかし,病的刺激によりCROS産生が過剰になると,ROSとそれによる細胞・組織障害,すなわち酸化ストレスが蓄積する.図2加齢黄斑変性(AMD)の基盤病態一見,正常眼底と思われる時期から眼底に弱いが遷延する慢性炎症があると,その影響が蓄積して前駆病変を形成し,やがて新生血管型もしくは萎縮型加齢黄斑変性を発症する.発症後も弱いが遷延する慢性炎症は続き,進行や再発につながりうる.図4炎症と酸化ストレスの関係慢性炎症と過剰な酸化ストレスは相互作用し相乗的に働いて影響を増強させる.ROS:活性酸素種.図5パキコロイド眼のOCTA画像(a)とOCT画像(b)脈絡膜が厚い,太い脈絡膜中大血管がある,などの特徴を呈する.点線は脈絡膜のライン.PPE新生血管型AMDパキコロイド↓萎縮型AMDCSC図6パキコロイドが関連した加齢黄斑変性(AMD)の発症のメカニズムパキコロイドの状態が続き,血管透過性が亢進して組織の変化が蓄積すると,やがてCpachychoroidCpigmentepitheliopathy(PPE)や中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)をきたす.さらに時間をかけて,新生血管型もしくは萎縮型加齢黄斑変性(AMD)を発症しうる.表1加齢黄斑変性のおもなリスク因子・加齢・喫煙・高脂肪食・メタボリックシンドローム・遺伝子の一塩基多型(補体・脂質代謝関連遺伝子など)・過剰な光暴露図7hyperre.ectivefoci(HRF)を呈する新生血管型加齢黄斑変性の眼底写真とOCT画像HRFをで示す.はフィブリンと思われる所見,は滲出性網膜.離,は網膜色素上皮.離を示す.—-

加齢黄斑変性の疫学とリスク因子

2025年1月31日 金曜日

加齢黄斑変性の疫学とリスク因子EpidemiologyandRiskFactorsofAge-RelatedMacularDegeneration佐々木真理子*はじめに2014年に報告された約13万人を対象としたメタ解析によれば,加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegen-eration:AMD)は先進国における視覚障害の主要な原因の一つであり,45~85歳の有病率は8.7%で,2040年までに約3億人が罹患すると推定されている(図1)1).日本を含むアジアでは,欧米に比べて有病率は高くないものの,人口が多く高齢化が進んでいるため,将来的にはアジア人がAMD患者の多数を占めると予想されている.このため,アジアにおけるAMDの疫学は,公衆衛生上,世界的に重要な課題となっている.一方,近年では,マルチモーダルイメージング(複数の画像診断機器を用いて眼所見を多角的に評価する診断法)の普及により,AMDの病態理解が急速に進み,その概念が大きく変化している.とくに,2013年に中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouschorioretinopa-thy:CSC)やポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalcho-roidalvasculopathy:PCV)を含む,厚い脈絡膜に関連する病態を総称した疾患群であるパキコロイド疾患(pachychoroiddisease)の概念が導入され,AMDの病態理解に大きな変化をもたらした.アジア人のAMDに脈絡膜病態が深く関与していることも疫学的に明らかとなっている.これらの病態理解と治療効果,長期予後についての知見が深まったことから,最近,わが国では新生血管型AMDの診療ガイドラインが更新された2).本稿では,これまでの眼科疫学の知見に加え,アジア人のAMDの病態に深く関与するパキコロイド疾患に関する研究についてもとりあげ,AMDの疫学研究の現状と今後の課題について考察する.IAMDの病期分類1995年の国際分類では,AMDを加齢黄斑症(age-relatedmaculopathy:ARM)として初期と後期に分類していた3).初期ARMは,軟性ドルーゼン(.63μm)や網膜色素上皮の異常がみられるもので,後期ARMは,脈絡膜新生血管が関与する滲出型と地図状萎縮(geo-graphicatrophy:GA)を認める萎縮型に分けられている.2000年以前の疫学研究では,この分類のように早期・後期の2段階に分けたものが多い.近年では,Beckman分類4)(表1)が世界的に多く用いられている.おもな相違点として,「大型(125μm<)のドルーゼンありかつ/または何らかのAMD色素異常あり」を中期AMDとし,「小型(≦63μm)のドルーゼン(drupelets)ありかつAMD色素異常なし」を正常な加齢変化としたことがあげられる.最近,更新されたわが国の新生血管型AMDの診療ガイドラインではBeckman分類を参考にしているが,網膜下ドルーゼン様沈着物(subretinaldrusenoiddeposit:SDDs,reticu-larpseudodrusen)のみられるものを中期AMD,線維性瘢痕や.胞様黄斑変性に伴う網膜外層の萎縮性変化によって高度の視力低下がみられるものを末期AMDに分類している(図2).AMDには多くの分類があるため,*MarikoSasaki:慶應義塾大学医学部眼科学教室,東京医療センター眼科〔別刷請求先〕佐々木真理子:〒160-8582東京都新宿区信濃町35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(3)3AMDの地域別有病率早期AMD後期AMD1086有病率(%)204102007585455565年齢(歳)7585AMDの地域別患者数の予測早期AMD後期AMD150155050020142020203020402014202020302040年年図1世界におけるAMDの地域別有病率と予測患者数(文献1より改変引用)患者数(百万人)10表1Beckman分類(AMDclinicalclassi.cation)臨床分類基準AMD分類の定義明らかな加齢変化なしドルーゼンなしかつCAMD色素異常*なし正常な加齢変化あり小型(≦6C3Cμm)のドルーゼンあり,かつCAMD色素異常*なし初期CAMD(EarlyAMD)中型(63~1C25Cμm)のドルーゼンあり,かつAMD色素異常*なし中期CAMD(IntermediateAMD)大型(1C25Cμm<)のドルーゼンあり,かつ/または何らかのCAMD色素異常*あり後期CAMD(LateAMD)滲出型AMD,かつ/または何らかの地図状萎縮あり*AMD色素異常:他の疾患に起因するものではない,中型あるいは大型のドルーゼンを伴う色素沈着あるいは色素脱失(文献C4より改変引用)診断早期パキコロイド疾患に伴う・脈絡膜血管変化・網膜色素上皮異常*2中型ドルーゼン*1中期・大型ドルーゼン*1・網膜下ドルーゼン様沈着物・網膜色素上皮異常*2後期黄斑新生血管(MNV)末期MNVに伴う線維性瘢痕,.胞様黄斑変性,萎縮性変化治療・禁煙指導・食生活の改善・禁煙指導・食生活の改善・サプリメント摂取抗VEGF薬長期管理と治療継続*4.7合併症*8に対する治療僚眼の発症予防・禁煙指導・食生活の改善・サプリメント摂取抗VEGF薬/PDT併用療法レーザー光凝固*3*1:中型ドルーゼン:長径63.μm以上125.μm未満,大型ドルーゼン:長径125.μm以上.*2:黄斑新生血管(MNV)を伴わない網膜色素上皮.離(PED)を含む.*3:網膜外層およびRPEを不可逆的に障害するため,中心窩に近いMNVの治療には適さない.*4:治療方法はtreat.and.extend法,もしくは固定投与法,prorenata(PRN)法を行う.*5:治療不応例や不十分例に対しては,抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の切り替えまたは抗VEGF薬/光線力学的療法(PDT)併用療法を考慮する.*6:疾患活動性の乏しい線維性瘢痕や.胞様黄斑変性,萎縮性変化は経過観察を考慮する.*7:両眼視力不良例ではロービジョンケアを行う.*8:黄斑下血腫,硝子体出血,眼内炎など.図2新生血管型加齢黄斑変性の診療フローチャート(文献C2より引用)萎縮型AMD(GA)Eventsper1000observationsEventsper1000observationsStudyEventsTotalWeightⅣ,Random,95%CIⅣ,Random,95%CITheKumejimaStudy030686.3%0.00[0.00;1.20]TheSingaporeIndianEyeStudy033646.3%0.00[0.00;1.10]TheHongKongEyeStudy015655.6%0.00[0.00;2.35]TheNagahamaStudy155956.4%0.18[0.00;1.00]TheTsuruokaMetaboiomicsCohortStudy139886.2%0.25[0.01;1.40]TheHisayamaStudy126635.8%0.38[0.01;2.09]TheFukunagaStudy115564.8%0.64[0.02;3.58]TheThailandNationalSurvey7107886.2%0.65[0.26;1.34]TheCentralIndiaEyeandMedicalStudy335915.4%0.84[0.17;2.44]TheShihpaiEyeStudy110583.6%0.95[0.02;5.25]TheHandanEyeStudy650485.4%1.19[0.44;2.59]TheIndeyeFeasibilityStudy17842.7%1.28[0.03;7.09]TheKNHANES29204196.2%1.42[0.95;2.04]TheSingaporeChineseEyeStudy533334.7%1.50[0.49;3.50]TheINDEYEStudy942664.6%2.11[0.97;4.00]TheBeijingEyeStudy934673.9%2.60[1.19;4.92]TheSingaporeMatayEyeStudy1031883.5%3.14[1.51;5.76]TheUralEyeandMedicalStudy2558994.0%4.24[2.74;6.25]TheAravindComprehensiveEyeStudy2349173.5%4.68[2.97;7.01]TheJiongningEyeStudy1420051.6%6.98[3.82;11.69]TheBnakiapurRetinaStudy1918601.1%10.22[6.16;15.91]TheSn-RAMStudy5847912.0%12.11[9.21;15.62]Total(95%CI)97213100%1.57[1.04;2.10]Tau2<0.0001:Chi2=172.55,df=21(P<0.01);I2=88%051015新生血管型AMDEventsper1000observationsEventsper1000observationsStudyEventsTotalWeightⅣ,Random,95%CIⅣ,Random,95%CITheKumejimaStudy430685.5%1.3[0.36;3.33]TheSingaporeIndianEyeStudy1433645.0%4.16[2.28;6.97]TheHongKongEyeStudy815654.0%5.11[2.21;10.05]TheNagahamaStudy2855955.2%5.00[3.33;7.22]TheTsuruokaMetaboiomicsCohortStudy239885.8%0.50[0.06;1.81]TheHisayamaStudy3226633.5%12.02[8.23;16.92]TheFukunagaStudy715564.1%4.50[1.81;9.25]TheThailandNationalSurvey20107885.7%1.85[1.13;2.86]TheCentralIndiaEyeandMedicalStudy535915.5%1.39[0.45;3.25]TheShihpaiEyeStudy1410582.1%13.23[7.25;22.10]TheHandanEyeStudy1150485.5%2.18[1.09;3.90]TheIndeyeFeasibilityStudy147841.4%17.86[9.80;29.78]TheKNHANES100204195.7%4.9[3.99;5.95]TheSingaporeChineseEyeStudy2133334.6%6.30[3.90;9.62]TheINDEYEStudy4442664.3%10.31[7.50;13.82]TheBeijingEyeStudy4834673.7%13.84[10.23;18.31]TheSingaporeMatayEyeStudy1131885.1%3.45[1.72;6.17]TheUralEyeandMedicalStudy4958994.9%8.31[6.15;10.97]TheAravindComprehensiveEyeStudy649175.7%1.22[0.45;2.65]TheJiongningEyeStudy920054.4%4.49[2.05;8.50]TheBnakiapurRetinaStudy1318603.8%6.99[3.73;11.92]TheSn-RAMStudy3747914.7%7.72[5.44;10.63]Total(95%CI)97213100%5.20[3.97;6.43]Tau2<0.0001;Chi2=238.51,df=21(P<0.01);I2=91%510152025Study:研究名,Events:有病数,Eventsper1000observations:1000人当たりの有病数.図3アジアにおける萎縮型AMDと新生血管型AMDの有病率(文献C5より改変引用)Pachychoroid・InnerchoroidalattenuationRPEdysfunctiondegenerationQuiescentPNVDilatedlargechoroidalvesselsleakageleakageMNVFocaloBRBbreakdownoBRBbreakdownAngiogenicfactor(s)+neovascularizationduetoRPEdamage?DevelopmentofpolypoidallesionsPolypoidallesionsAneurysmaldilatationleakageDi.useoBRBbreakdown図4パキコロイド疾患(Pachychoroiddiseases)(文献C10より引用)C病院またはクリニックからの報告により知られている11).一方で,一般住民集団を対象とした研究で用いられる眼底写真のみではCPCVを診断することは困難であるため,現在までにCPCVの有病率を推定した研究は二つしかない.久山町研究では,50歳以上のC2,663人を対象にインドシアニングリーン蛍光造影検査を行い,1.2%に後期CAMDを認め,PCVはC0.4%であったと報告した12).CBeijingEyeStudyでは,50歳以上のC3,468人を対象に臨床的診断基準と光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)での診断基準を組み合わせ,PCVの有病率をC0.5%と推定した13).PNVの発生率と有病率に関するデータは限られているが,最近の日本の研究では,AMDに続発するCMNV症例のうち,PNVの推定有病率は約C25%,ポリープ状病巣を伴うCMNVの推定有病率は約C40%であった14).前述のように,東アジアでは萎縮型CAMDの有病率は非常に低いが,ドルーゼンを原因とせず,パキコロイドに伴う地図状萎縮(pachychoroidgeographicatrophy:GA)15)という新たな概念も提唱され,日本人のCGAの22.8%に認められた.後期CAMDでは,パキコロイドの概念に基づき分類が行われつつあるが10),その早期段階である早期CAMD,中期CAMDについては研究途上である.アジア人では白人に比べてパキドルーゼンが多く,SDDが少ないことが報告されている16).また,日本人のパキドルーゼンの有病率は,70歳以上でC10%に達し,軟性ドルーゼンとSDDの合計よりも有病率が高い17).パキドルーゼンは軟性ドルーゼンと同様に中期CAMDに分類されるが,MNVのリスクをもたらすかについては,相反する報告があり結論されていない.さらに,パキコロイドに伴う脈絡膜血管変化やCPPEを含むCRPE異常を早期病変と捉えるかについては,現時点ではコンセンサスが得られていない18).CIII危険因子AMDは加齢や遺伝的感受性などを背景として,環境や生活習慣などが相互に影響し発症する多因子疾患と考えられている19).遺伝的感受性の影響は大きく,後期AMDの推定遺伝率は約C71%であり,ゲノムワイド関連研究では,CFHとCARMS2HTRA1の二つの主要遺伝子座に,AMDに強く関連する変異が同定されている20).年齢や遺伝的感受性の影響は大きいが,これらが“避けられない因子”であることに対し,喫煙,食事・栄養摂取などの生活習慣は,変更することによりCAMDを予防できる“避けられる因子”として重要である.パキコロイド疾患に関する研究はまだ十分ではないため,ここではおもにCAMDに関連する避けられる因子について述べる.C1.喫煙喫煙はCAMDのもっとも重要な避けられる危険因子であり,AMDのリスクをC2~4倍高める21).また,禁煙はCAMDのリスクを低下させ,禁煙C20年後にはCAMDのリスクが非喫煙者と同程度になる22).喫煙は,循環への影響,低酸素状態,炎症の惹起,酸化ストレスの増加などにより,AMD発症リスクを高める可能性がある.久山町研究では,男性の性別と喫煙習慣がCPCV発症の有意な危険因子であると報告している12).C2.食事AMDの発症と食事因子との関連は,疫学研究で積極的に検討されており,多くの報告がされている.とくにメタ解析では,ほうれん草やケールなどに含まれるルテインやゼアキサンチンを多く含む食品,魚油やC~-3系長鎖多価不飽和脂肪の摂取量が多いことと,後期CAMDのリスク低下の関連が示されている23).また,抗酸化ビタミンとミネラルを含むサプリメントによる後期CAMDの発症抑制効果を検討したCAge-ReratedEyeDiseaseStudy(AREDS)およびCAREDS2の結果を受けて,中期CAMDに対しては,ビタミンCC,ビタミンCE,銅・亜鉛,ルテイン・ゼアキサンチンを含むサプリメントが推奨されている.さらに,AREDSおよびCAREDS2の統合解析では,果物や野菜,魚,オリーブオイル,ナッツ,豆類,全粒粉などを豊富に含み,乳製品や肉類は控えめで,赤ワインを適量摂取する地中海食に後期CAMDへの進展抑制効果が認められた24).同8あたらしい眼科Vol.42,No.1,2025(8)様に,サプリメントでは効果がみられなかった萎縮型AMDや早期CAMDへの進展にも抑制効果が認められた.この研究では摂取の効果に人種差があることも示唆されている.国内の研究では,症例対照研究でCAMD患者にC~3脂肪酸,Ca-トコフェロール,亜鉛,ビタミンCD,ビタミンC,Cbカロテンの摂取量が少ないことが報告されている25).筆者らは,鶴岡メタボロームコホート研究において,飽和脂肪酸の摂取量が多いほど早期~中期CAMDの有病割合が低いことを報告した26).一般に欧米では飽和脂肪酸の摂取がCAMDのリスク因子と考えられているため,この結果はそれに矛盾するものであった.しかし,わが国では飽和脂肪酸の摂取量が全体的に低いため,欧米の報告との比較はむずかしい.飽和脂肪酸摂取量が多いことも少ないこともリスクになりうる可能性が示唆された27).鶴岡メタボロームコホート研究ではさらに,主成分分析により食パターンの解析を行い,“米以外のパン・麺・そばなど多様な主食を多く摂取する群”において中期CAMDが少ない傾向にあることを報告している28).米食が高Cglycemicindex(GI)食であることが影響した可能性が示唆された.C3.身体活動いくつかのメタ解析で,身体活動と早期CAMDおよび後期CAMDとの間に予防的関連があることが報告されている29).週にC3時間程度の低~中強度の身体活動を活発な生活習慣と分類しており,少量の身体活動で十分な効果が得られる可能性が示唆されている.C4.その他の危険因子心血管危険因子とCAMDの関連は多くの研究で示されている30).白内障手術歴のCAMDの進行促進における関与については研究によってばらつきがある31).日光曝露とCAMDの関連については研究間で一貫した結果が得られていない.おわりにアジア人のCAMDに脈絡膜病態が関与することについては,広くコンセンサスが得られている.筆者らは,長野県佐久地域の一般住民C1,293人を対象に脈絡膜厚とAMDの関連を検討し,脈絡膜厚の増加に伴い中期AMDのリスクが増加したことを報告した32).この結果は日本人のCAMDの病態形成において,初期から脈絡膜が関与していることを示唆している.しかし,現在のAMDの病期分類は脈絡膜病態の概念を取り入れておらず,アジア人のCAMDの病態や進展を正確に評価することが困難である18).たとえば,大型のドルーゼンは中期AMDに含まれるが,後期CAMDへの進展リスクが異なると考えられる軟性ドルーゼンやパキドルーゼンは同等に評価されている.さらに,脈絡膜病態が関与すると考えられるドルーゼンを伴わない単独の色素上皮異常が評価されていない32,33).このような定義に関するコンセンサスの欠如が,AMD全体を評価する疫学研究の実施を困難にし,パキコロイド疾患の有病率や危険因子に関する情報の乏しさを招いている.今後これらの問題を解決し,アジア人のCAMDについての発症・進展やその危険因子を明らかにすることが,AMDの疫学研究の重要な課題である.そのゴールに向けて,欧米人からの報告が多い疫学研究結果の解釈において,アジア人やパキコロイド病態の視点から評価を加える必要がある.文献1)WongCWL,CSuCX,CLiCXCetal:GlobalCprevalenceCofCage-relatedCmacularCdegenerationCandCdiseaseCburdenCprojec-tionCforC2020CandC2040:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.LancetGlobHealth2:e106-e116,C20142)飯田知弘,五味文,安川力ほか;日本網膜硝子体学会新生血管型加齢黄斑変性診療ガイドライン作成ワーキンググループ:新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン.日眼会誌128:680-698,C20243)BirdAC,BresslerNM,BresslerSBetal:Aninternationalclassi.cationandgradingsystemforage-relatedmaculop-athyCandCage-relatedCmacularCdegeneration.CTheCInterna-tionalCARMCEpidemiologicalCStudyCGroup.CSurvCOphthal-mol39:367-374,C19954)FerrisCFLC3rd,CWilkinsonCCP,CBirdCACetal:ClinicalCclassi.cationCofCage-relatedCmacularCdegeneration.COph-thalmology120:844-851,C20135)RimCTH,CKawasakiCR,CThamCYCCetal:PrevalenceCandCpatternCofCgeographicCatrophyCinasia:TheCAsianCEyeCEpidemiologyCConsortium.COphthalmologyC127:1371C-1381,C20206)RudnickaCAR,CKapetanakisCVV,CJarrarCZCetal:Incidence(9)あたらしい眼科Vol.42,No.1,2025C9—

序説:明日から実践! みんなの加齢黄斑変性診療2025

2025年1月31日 金曜日

明日から実践!みんなの加齢黄斑変性診療2025StartPracticingTomorrow!Age-RelatedMacularDegenerationClinicforEveryonein2025古泉英貴*加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegenera-tion:AMD)はわが国の重要な社会的失明原因であるが,欧米とは病態や臨床像が大きく異なる.そのような背景があるなか,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)・光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)などの診断機器が大きく貢献し,日本人を含めたアジア人種に多いPachychoroidの重要性が認識されるようになった.治療に関しても,ここ数年の間に第二世代とよばれる抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬も複数登場し,病態に応じて最適な治療を選択する時代が到来している.さらに,以前では対象とならなかった萎縮型AMDの治療も,まさにわれわれの手に届くところまで来ている.そのような時代の変遷に応じるべく,2024年9月には日本網膜硝子体学会のワーキンググループにより,「新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン」が発表された.このように現在,多くのパラダイムシフトが起きている.そこで本号ではとくに日本人のAMDの病態を正しく理解し,それに基づいた適切なマネジメントを行うことを目標に特集を企画した.難解な基礎研究の話題はできるだけ避け,一般眼科医が明日からの診療で即実践できる内容となっている.正しい診療を行うためにはまず,わが国における疫学とリスク因子を理解しておく必要があり,佐々木真理子先生(慶應義塾大学)に詳しく解説いただいた.つぎに,小沢洋子先生(藤田医科大学東京・先端医療研究センター)にAMDの病態について,基盤病態から病期の進行に至る流れを実臨床を意識して解説していただいた.診断編として,早期・中期AMDを櫻田庸一先生(山梨大学)に,萎縮型AMDを上田奈央子先生(京都大学)に,新生血管型AMDを森隆三郎先生(日本大学)に,先述のガイドラインにも触れながら,多数の画像所見を用いてわかりやすく解説していただいた.治療編として,抗VEGF薬の種類と特徴について政岡未紗先生・山城健児先生(高知大学)に,実際の使い方について片岡恵子先生(杏林大学)と井上麻衣子先生(横浜市立大学)に,抗VEGF時代における光線力学療法(photodynamictherapy:PDT)の位置づけについて松本英孝先生と星野順紀先生(群馬大学)に,日本人の新生血管型AMDの病型や病態を意識し,私見を含めた臨床的見地から解説いただいた.現在のAMD治療はいうまでもなく対症療法であり,究極の目標は予防により発症・進行させないこ*HidekiKoizumi:琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(1)1とである.その重要性に関しては今回のガイドラインでも強調されているが,日本人のAMDの病態から考えられる予防法について,サプリメントの位置づけも含めて安川力先生(名古屋市立大学)に詳しく解説していただいた.本特集はAMDの専門家だけでなく,眼科臨床にかかわるすべての先生方にとって必読の内容となっている.一とおり目を通していただくことで正しく疾患を理解し,より多くの患者に利益をもたらしていただくことを願っている.2あたらしい眼科Vol.42,No.1,2025(2)

Preserflo MicroShuntの6カ月成績とnylon stentによる術後脈絡膜剝離予防策の検討

2024年12月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科41(12):1476.1481,2024cPreser.oMicroShuntの6カ月成績とnylonstentによる術後脈絡膜.離予防策の検討城下哲夫貞松良成さだまつ眼科クリニックCSix-monthOutcomesafterPreser.oMicroShuntImplantationandPreventionofPostoperativeChoroidalDetachmentwithaNylonStentTetsuoJoshitaandYoshinariSadamatsuCSadamatsuEyeClinicC目的:プリザーフロマイクロシャント(Preser.oMicroShunt:PFM)の術後C6カ月成績および術後の過剰濾過対策としてのCnylonstentの有用性の検討を行う.対象および方法:さだまつ眼科クリニックにおいてC2023年C1.8月にPFM挿入術を施行したC45例C51眼を対象とした.診療録から後ろ向きに眼圧,緑内障薬の点眼数,6カ月生存率,角膜内皮細胞密度,併発症について検討した.成功基準は術前からC20%以上の眼圧下降とした.結果:術前眼圧C24.7±7.5CmmHgはC6カ月後C14.1±4.6CmmHgへ有意に下降した.術後C6カ月の生存率はC76.5%であった.角膜内皮細胞密度の平均減少率は.2.8±0.1%であった.術後合併症としてもっとも多かったのは脈絡膜.離でC14眼(27.5%)に認め,うちC2眼は外科的介入を要した.脈絡膜.離(CD)発生の有無における患者背景の群間比較では,平均年齢,術前眼圧,眼圧下降幅に有意差が認められた.術中にC10-0nylonstentをCPFM内腔に挿入し対策を講じることで低眼圧の発生率はC31.0%からC4.5%へ有意に減少した.結論:PFM挿入術は術後有意な眼圧下降を認めたが,脈絡膜.離の合併症には注意する必要があり,その対策として,とくに高齢で術前眼圧の高い症例にはCnylonstentは有用な可能性がある.CPurpose:ToCevaluateCtheC6-monthCpostoperativeCoutcomesCofCPreser.oMicroShunt(PFM,CSantenCPharma-ceuticalCCo.,Ltd.)implantationCandCtheCe.ectivenessCofCnylonCstentingCinCglaucomaCpatients.CSubjectsandMeth-ods:Thisretrospectivestudyinvolved51eyesof45glaucomapatientsthatunderwentPFMimplantationatSad-amatsuCEyeCClinic,CSaitama,CJapanCbetweenCJanuaryCandCAugustC2023.CTheCmedicalCrecordsCofCallCcasesCwereCreviewedCtoCinvestigateCintraocularpressure(IOP),CnumberCofCglaucomaCmedicationsCused,CsurvivalCrateCatC6-monthspostoperative,cornealendothelialcell(CEC)density,andpostoperativecomplications.Thesuccesscrite-rionwasa.20%IOPreductionfromthatatbaseline.Results:At6-monthspostoperative,themeanpreoperativeIOPof24.7±7.5CmmHghadsigni.cantlydecreasedto14.1±4.6CmmHg,andthesurvivalratewas76.5%.Theaver-agedecreaseofCECdensitywas2.8±0.1%,andthemostcommoncomplicationwaschoroidaldetachment(CD);Ci.e.,CDobservedin14(27.5%)ofthe51eyes,2ofwhichrequiringsurgicalintervention.InthecomparisonoftheincidenceCofCCDCbetweenCtheCinvestigatedCfactors,Csigni.cantCdi.erencesCwereCobservedCinCtheCmeanCageCofCtheCpatients,preoperativeIOP,anddegreeofIOPreduction.Duringsurgery,10-0nylonstentingintothePFMlumensigni.cantlyCreducedCtheCincidenceCofCover-.ltrationCfrom31.0%Cto4.5%.CConclusion:PFMCimplantationCsigni.cantlydecreasedtheIOP,yetcarefulattentionmustbepaidtothepossibledevelopmentofCD.Nylonstent-ingmaybeane.ectivepreventivemeasure,especiallyinelderlypatientsandthosewithhighpreoperativeIOP.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)41(12):1476.1481,C2024〕Keywords:緑内障手術,プリザーフロマイクロシャント,脈絡膜.離,低眼圧,ナイロンステント.glaucomaCsurgery,Preser.oMicroShunt,choroidaldetachment,hypotony,nylonstenting.C〔別刷請求先〕城下哲夫:〒344-0035埼玉県春日部市谷原新田C2213-1さだまつ眼科クリニックReprintrequests:TetsuoJoshita,M.D.,SadamatsuEyeClinic,2213-1Yaharashinden,Kasukabe-city,Saitama344-0035,JAPANC1476(92)はじめに緑内障手術において線維柱帯切除術(trabeculectomy:LET)はC1968年に報告され,以来効果的な手術として知られている1.3)が,同時にその合併症リスクも高い4).わが国でC2023年C8月より使用可能となったプリザーフロマイクロシャント(Preser.oMicroShunt:PFM)は,長さC8.5Cmm,外径C350Cμm,内腔C70Cμmのデバイスで,生体適合性材料であるスチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体(polystyrene-isobuthlene-styrene:SIBS)で作られている5,6).PFMを用いた濾過手術はCLETに比べ術後早期の低眼圧のリスクは有意に低いという報告がある7,8)が,一方でLETに比べCPFMで術後早期の低眼圧が有意に多く,脈絡膜.離(choroidaldetachment:CD)も多い傾向にあるという報告9)もある.今回,PFMのC6カ月成績を後ろ向きに検討した.CI対象と方法2023年C1.8月にCPFM単独,または白内障同時手術を当院で施行した緑内障患者連続C45例C51眼を対象とした.眼圧は原則としてCGoldmann圧平眼圧測定を用い,一部測定が困難で測定結果に信頼性が低かったものにおいてはアイケア手持眼圧計(iCareIC100,IcareFinlandOy)を用いて測定した.角膜内皮細胞密度はスペキュラマイクロスコープ(TOMEYEM-4000,トーメーコーポレーション),角膜厚は前眼部COCT(CASIA2,トーメーコーポレーション)を用いて測定した.手術室において,点眼麻酔後,術野消毒・ドレーピングし術野を確保した.2%キシロカインCEで結膜下浸潤麻酔を行い角膜輪部側より結膜を切開,Tenon.を展開し強膜を露出させ,2%キシロカインCEでCTenon.下麻酔を行った.止血を確認したのち,0.04%マイトマイシンC(MitomycinC:MMC)を強膜にC4分間塗布し,生理食塩水C20Cmlで洗浄した.角膜輪部からC3Cmmの位置から専用のダブルステップナイフを用いて強膜トンネルを作製し前房内に穿孔,同トンネル内にCPFMを挿入した.PFMの先端が前房内にあることを確認し,PFM後端からの房水の逆流を確認したのち,PFM後方露出部を矢状方向に強膜上に沿わせた状態でTenon.と結膜を角膜輪部にC9-0バージンシルク縫合糸を用いてC2針縫合した.手術終了時にデキサメタゾンリン酸エステルナトリウムC1.65Cmg(デカドロン)の結膜下注射を行った.白内障同時手術の場合は,まずに先にC12時よりC2.3Cmmの角膜切開にて白内障手術を施行し,前房内の粘弾性物質(ヒアルロン酸CNa1.1眼粘弾剤C1%CMV「センジュ」)を十分に洗浄除去したのち,PFMの手順へ進んだ.連続症例C30眼目以降のC22眼においては全眼,術中にCPFMの後端より10-0ナイロン糸(以下,nylonstent)を挿入し,術後の眼圧に応じて術後平均C5.4C±9.3日目(1.42日目)に抜去した.術眼の緑内障点眼薬は術後から中止し,術後眼圧に応じて再開した.術後はモキシフロキサシン(ベガモックス点眼液0.5%)をC2週間,デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム(サンテゾーン点眼液C0.1%)をC6カ月間,ブロムフェナクナトリウム(ブロナック点眼液C0.1%),レバミピド(ムコスタ点眼液CUD0.2%)をC3カ月間継続した.検討項目は術後眼圧経過,薬剤スコア,累積生存率,角膜内皮細胞密度および併発症とした.CD発生の有無における患者背景の群間比較項目は,病型,角膜厚,術前からの眼圧下降幅,術前眼圧,平均年齢,Cnylonstentの有無,白内障同時手術の有無とした.CNylonstentの有無,およびCPFM単独/白内障同時手術における術翌日眼圧,CD発生率,低眼圧発生率を比較した.全観察点で(術前,術後C1日,1,2,3週日,1,2,3,4,5,6,7およびC8カ月)で診察と眼圧測定を行った.薬剤スコアは緑内障の単剤をC1点,配合剤はC2点,経口炭酸脱水酵素阻害薬はC1錠C2点として計算した.解析方法として,術後眼圧と薬剤スコアの推移にはCone-wayanalysisofvariance(ANOVA)とCDunnettの多重比較検定を行い,生存率は既報7)と同じように緑内障治療薬の追加なしで術前からC20%以上の眼圧下降を成功,これをC2回連続した観察点で満たさない場合,または手術室での追加緑内障手術を要した場合を死亡としてCKaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成した.CD発生の有無,nylonstentの有無,PFM単独/白内障同時手術における患者背景の群間比較にはCt検定,Fisherの直接確率計算法,nylonstentの有無およびCPFM単独/白内障同時手術におけるCCDと低眼圧発生頻度の比較にはCFisherの直接確率計算法を用いた.有意水準はp<0.05とした.本研究は臨床研究法を遵守しヘルシンキ宣言に基づき,手術前にインフォームド・コンセントを得て,豊栄会研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:H023R504).CII結果対象の連続C45例C51眼を後ろ向きに検討した.患者背景を表1に示す.病型の内訳は,原発開放隅角緑内障(primaryCopenCangleglaucoma:POAG)23眼,落屑緑内障(exfolia-tionglaucoma:EXG)19眼,EXG以外の続発開放隅角緑内障(secondaryCopenCangleglaucoma:SOAG)で硝子体手術後の眼圧上昇C3眼,新生血管緑内障C2眼,抗精神病薬内服によると思われる続発閉塞隅角緑内障C2眼,ぶどう膜炎緑内障1眼,原発閉塞隅角緑内障C1眼であった.全症例の術後平均観察期間はC4.0C±2.2カ月であった.全症例の眼圧経過は術後C8カ月を除いた全期間において術前C24.7C±7.5CmmHgから有意に下降し,術後C6カ月目ではC14.1±4.6CmmHgまで減少した(p<0.001,ANOVA+Dun-nett’stest,図1).全症例の薬剤スコアは術前C3.8C±0.8から術後C6カ月目ではC0.5C±1.2に減少した(p<0.001,pairedtest).術後C6カ月の角膜内皮細胞密度の測定ができたC14眼において角膜内皮細胞密度の平均減少率は.2.8±0.1%であった(p=0.286,pairedt-test).図2にCKaplan-Meier生命表解析を用いた生存曲線を示す.表1患者背景眼数年齢(歳)男:女病型(POAG:EXG:others)術前眼圧(mmHg)術前薬剤スコア術前角膜内皮細胞密度(cells/mmC2)術前中心角膜厚(μm)術後観察期間(カ月)IOL:phakiaPFM単独手術:白内障同時手術PFM挿入位置鼻上側:耳上側:鼻下側ナイロンステント挿入無硝子体眼緑内障手術歴あり45例51眼C73.7±10.5(48.88)33:1823:19:9C24.7±7.5(16.42)C3.8±0.8(2.5)C2314±438C525±37C4.0±2.239:1243:848:2:122眼7眼11眼(mean±SD)(Range)薬剤スコアは炭酸脱水酵素阻害薬をC1錠C2点,配合剤点眼をC2点とした.POAG:原発性開放隅角緑内障,EXG:落屑緑内障,PFM:プリ術後C6カ月の生存率はC76.5%であった.術後併発症として頻度が高かったのはCCDで,51眼中C14眼(27.5%)に認めた.うちC9眼(17.6%)は経過観察またはベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン点眼液0.1%),アトロピン硝酸塩水和物(日点アトロピン点眼液C1%),粘弾性物質(ophthalmicCviscosurgicaldevice:OVD)(オペガン0.6眼粘弾剤1%)の前房内注入(1眼)で消退,3眼(5.9%)はそれぞれ術後C8カ月目,2週目,1週目時点で経過観察可能な範囲のCCDが残存し,2眼(3.9%)は重篤なCCDとなり外科的な介入を要した.その他の術後併発症は,高眼圧(16CmmHg<)がC12眼(23.5%),低眼圧(<6CmmHg)が10眼(19.6%),前房出血がC10眼(19.6%),浅前房がC7眼(13.7%),複視がC4眼(7.8%),PFMの挿入位置不良がC2眼(3.9%)であった.術後の追加処置としては,9眼(17.6%)でCneedling(1回3眼,2回4眼,3回2眼),5眼(9.8%)で濾過胞再建とPFM短縮,2眼(5.7%)で重篤なCCDのためCtappingとシリコーンオイル(siliconoil:SO)置換,1眼(2.0%)でCOVDの前房内注入(1回),1眼(2.0%)で挿入位置修正を行った.患者背景の群間比較では,CD群とCCDが発生しなかった群でそれぞれ,平均年齢がC80.9C±6.6歳とC70.9C±10.6歳(p=0.0018*),術前眼圧がC29.6C±7.5CmmHgとC22.8C±6.7CmmHg(p=0.00765*),術前からの眼圧下降幅がC21.9C±9.1CmmHgとC13.1C±7.2CmmHg(p=0.00069*)であった.Nylonstent群と非挿入群ではそれぞれ,平均年齢がC69.4C±11.9歳とC76.9C±3.8mmHg±6.11),術翌日眼圧がC2表)(*0.00993=3歳(pC.8.001)7mmHg(p<0C.3±と7.3ザーフロマイクロシャント.C24.7±7.53025(表2),CD発生率はCNylon眼圧(mmHg)15.1±4.52014.1±4.6*15********10**5pre171421285684112140168196234観察期間(日)(mean±SD)眼数515151392345423830221791図l眼圧経過術C7カ月後まで有意に下降した(*p<0.001,ANOVA+Dunnett’stest)生存率(%)100806040200050100150生存期間(日)図2Baselineより20%以上眼圧下降6カ月生存率生存率はC76.5%であった.表2患者背景(CD発生群と非発生群)EXGCPOAG角膜厚(μm)平均年齢(歳)術前眼圧(mmHg)術前からの眼圧下降幅(mmHg)術翌日眼圧(mmHg)Cnylonstent(+)白内障同時手術CD群CDが発生(n=14)しなかったp値群(n=37)8(57.1%)11(29.7%)4(28.6%)19(51.4%)C533.7±32.0C522.0±38.5C80.9±6.6C70.9±10.6C29.6±7.5C22.8±6.7C21.9±9.1C13.1±7.2C7.7±4.0C9.8±4.33(21.4%)19(51.4%)1(7.1%)7(18.9%)0.106+0.21+0.318*C0.0018*C0.00765*C0.00069*C0.129*C0.0658+0.419+NS群NSを入れな(n=22)かった群p値(n=29)5(22.7%)14(48.3%)11(50.0%)12(41.4%)C514.4±36.5C533.4±35.3C69.4±11.9C76.9±8.3C25.4±8.1C24.1±7.1C13.7±8.2C16.8±8.9C11.6±3.8C7.3±3.75(22.7%)3(10.3%)0.0829+0.581+0.0674*C0.00993*C0.567*C0.212*C0.000174*C0.268+PFM単独白内障同時群(n=43)手術群p値(n=8)18(41.9%)1(12.5%)C0.231+20(46.5%)3(37.5%)C0.715+526.1±36.9C520.8±39.0C0.712*C75.6±9.4C63.4±11.3C0.00194*C25.0±7.4C22.6±7.8C0.406*C16.3±8.9C11.0±8.0C0.111*C8.7±3.9C11.6±5.4C0.08*17(39.5%)5(62.5%)C0.268+(mean±SD)+:Fisher’sexacttest,*:t-testCD:脈絡膜.離,NS:ナイロンステント,PFM:プリザーフロマイクロシャント,EXG:落屑緑内障,POAG:原発性開放隅角緑内障.stent群がC13.6%,非挿入群がC37.9%(p=0.0658)(表3),術表3Nylonstentの有無およびPFM単独/白内障同時手術によ翌日の低眼圧発生率はCnylonstent群がC4.5%,非挿入群がるCDと低眼圧発生頻度の比較31.0%(p=0.0302*)(表3)であった.白内障同時手術群のCD発生率はC12.5%,PFM単独群がC30.2%(p=0.419)(表2)であった.CIII考按術後の眼圧変化としては,1眼しかなかった術後C8カ月を除いた全観察期間において有意に眼圧下降が得られた(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest,図1).術翌日はC10CmmHgCD発生有低眼圧発生有(<6mmHg)nylonstent(C.)nylonstent(+)11/29(C37.9%)3/22(C13.6%)9/29(C31.0%)1/22(C4.5%)p値C0.0658+0.0302+PFM単独白内障同時手術13/43(C25.5%)1/8(C12.5)8/43(C18.6%)2/8(C25.0%)p値C0.419+0.647++:Fisher’sexacttest以下まで下降し,術後C1カ月目まで徐々に上昇して安定しCD:脈絡膜.離,PFM:プリザーフロマイクロシャント.た.この傾向は既報7,8)と一致した.術後C6カ月の角膜内皮細胞密度の測定ができたC14眼において角膜内皮細胞密度の平均減少率は.2.8±0.1%であった(p=0.286).Bakerらは術後C1年での角膜内皮細胞密度の平均減少率はCPFMとCLETで差はないとしており7),少なくとも短期でのCPFMによる角膜内皮細胞の明らかな減少は認められないといえる.しかし,PFMの挿入角度によって,角膜内皮に近く固定されたものは角膜内皮細胞の減少が危惧されるため,挿入位置の修正が必要になることもあるだろう.今回の症例にも術翌日にCPFMの先端が角膜内皮近くに挿入されていたため,再手術にて挿入角度を修正した症例があった.今回C51眼中C14眼(27.5%)にCCDを認めた.既報のCCDの発生頻度C4.6.11%C7.10)に比べて多い結果であった.PFM施行後のCCD発生リスクについての報告は未だないが,Iwa-sakiらはCLET施行後のCCD発生のリスクファクターとして,EXG,大幅な眼圧下降,厚い角膜厚をあげている11).今回EXGの有無でCCD発生率に有意差は認められず(p=0.106),角膜厚においてもCCD発生の有無に差はなかった(p=0.318)(表2).術前から術翌日の眼圧下降幅においては,CD発生群C21.9C±9.1CmmHgに対しCCDが発生しなかった群でC13.1C±7.2CmmHgと有意差を認めた(p<0.001)(表2).やはり大幅な眼圧下降はCCD発生のリスクといえよう.PFMはその構造上,高い眼圧のほうが下降幅は大きくなる.そこで術前眼圧を比較するとCCD発生群C29.6C±7.5CmmHgに対し発生しなかった群C22.8C±6.7CmmHgと有意差を認めた(p<0.01)(表2).術前眼圧が高いことはCCD発生のリスクとして考慮する必要がある可能性がある.また,平均年齢においてCCD発生群C80.9C±6.6歳に対しCCDが発生しなかった群でC70.9C±10.6歳と有意差を認めた(p<0.01)(表2).高齢であることもCD発生のリスクファクターとなり得る.今回の対象の平均年齢はC73.7C±10.5歳と既報C7.10)に比べ高齢であったことはCDの発生率が高いことに影響している可能性がある.低眼圧に対してCOVDの前房内注入はCPFMの閉塞を危惧し,当初は選択を避けていたが,その後,白内障同時手術を経験していく中でCOVDは使用可能と判断し,低眼圧傾向とCDの出現早期からCOVDの前房内注入をするようにすることで以降の症例では術後にコントロール不良なCCDにまでは発展することなく経過した.LupardiらはCPFM術後の過剰濾過に対し,PFM内腔に10-0ナイロン糸を挿入することで低眼圧を改善・予防した12,13).また,LukeらはCPFM内腔にC8-0ポリアミド糸を挿入することで術後の低眼圧を予防した14).今回Cnylonstent群では非挿入眼に比し術翌日の眼圧は有意に上昇し,低眼圧の発生率はC31.0%からC4.5%まで有意に減少した(p=0.0302)(表3).CDの発生率は有意差はないもののC37.9%からC13.6%へ減少傾向を示した(p=0.0658)(表3).しかし,Cnylonstentの有無による術前眼圧と術前眼圧下降幅に差はなかった(表2).今回Cnylonstentの使用は無作為に割り付けていたが,平均年齢はCnylonstentを入れなかった群で有意に高かった.そこでCnylonstentを入れなかったC29眼を対象にCCD発生の有無で平均年齢,術前眼圧,術前からの眼圧下降幅,角膜厚,術翌日眼圧,EXGの有無に統計的差があるかを検討したところ,それぞれ平均年齢C81.9C±4.3歳,73.9C±8.7歳(p=0.0084*,t-test),術前眼圧C28.3C±6.8CmmHg,21.6C±6.1CmmHg(p=0.0108*,t-test),術前眼圧からの眼圧下降幅C21.3C±9.4mmHg,14.1C±7.5CmmHg(p=0.0306*,t-test)と有意差を認めた.角膜厚(p=0.705,t-test),術翌日眼圧(p=0.703,t-test),EXGの有無(p=0.264,Fisher’sCexacttest)については有意差は認められなかった.このことからも高齢で術前眼圧が高いことは術後CCD発症のリスクとなる可能性が高いといえるだろう.術翌日眼圧はCnylonstentを入れた群で有意に高かった(表2).Nylonstentによって大幅な眼圧下降は抑制できると期待できる.CNylonstentは低眼圧や大幅な眼圧下降に伴うCCDについては予防策となるかもしれない.今回経験した症例の結果からは,とくに高齢で術前眼圧が高い患者にはCnylonstentが有用な可能性が期待できる.しかし,nylonstentによるPFMの長期の成功率への影響は未知数であり,今後さらに多数,長期の検討が必要である.文献1)CairnsJE:Trabeculectomy.CpreliminaryCreportCofCaCnewCmethod.AmJOphthalmolC66:673-679,C19682)GeddeSJ,FeuerWJ,ShiWetal:TreatmentoutcomesintheCprimaryCtubeCversusCtrabeculectomyCstudyCafterC1Cyearoffollow-up.OphthalmologyC125:650-663,C20183)CaprioliJ,DeLeonJM,AzarbodPetal:TrabeculectomycanCimproveClong-termCvisualCfunctionCinCglaucoma.COph-thalmologyC123:117-128,C20164)EdmundsB,ThompsonJR,SalmonJFetal:TheNationalsurveyoftrabeculectomy.III.earlyandlatecomplications.EyeC16:297-303,C20025)KerrCNM,CAhmedCIIK,CPinchukCLCetal:PRESERFLOCMicroShunt.In:MinimallyCinvasiveCglaucomaCsurgery(SngCCCA,CBartonK),p91-103,CSingapore,CSpringer,C20216)GreenCW,CLindCJT,CSheybaniA:ReviewCofCtheCXenCgelCstentCandCInnFocusCMicroShunt.CCurrCOpinCOphthalmolC29:162-170,C20187)BakerCND,CBarnebeyCHS,CMosterCMRCetal:Ab-externoCMicroShuntversustrabeculectomyinprimaryopen-angleglaucoma:one-yearCresultsCfromCaC2-yearCrandomized,Cmulticenterstudy.OphthalmologyC128:1710-1721,C20218)FeaAM,La.GL,MartiniEetal:E.ectivenessofMicro-Shuntinpatientswithprimaryopen-angleandpseudoex-foliativeCglaucoma.COphthalmolCGlaucomaC5:210-218,C2022C9)BohlerAD,TraustadottirVD,HagemAMetal:Hypoto-nyCinCtheCearlyCpostoperativeCperiodCafterCMicroShuntCimplantationCversustrabeculectomy:aCregistryCstudy.CActaOphthalmolC102:186-191,C202310)TannerA,HaddadF,Fajardo-SanchezJetal:One-yearsurgicaloutcomesofthePreserFloMicroShuntinglauco-ma:aCmulticentreCanalysis.CBrCJCOphthalmolC107:1104-1111,C202311)IwasakiCK,CKakimotoCH,CArimuraCSCetal:ProspectiveCcohortstudyofriskfactorsforchoroidaldetachmentaftertrabeculectomy.IntOphthalmolC40:1077-1083,C202012)LupardiCE,CLa.CGL,CCiardellaCACetal:Ab-externoCintra-luminalCstentCforCprolongedChypotonyCandCchoroidalCdetachmentCafterCPreser.oCimplantation.CEurCJCOphthal-molC33:63-66,C202313)LupardiCE,CLa.CGL,CMoramarcoCACetal:SystematicCPreser.oCMicroShuntCintraluminalCstentingCforChypotonyCpreventionCinChighlyCmyopicpatients:aCcomparativeCstudy.JClinMedC12:1677,C202314)LukeCJN,CReinkingCN,CDietleinCTSCetal:IntraoperativeCprimaryCpartialCocclusionCofCtheCPreserFloCMicroShuntCtoCpreventCinitialCpostoperativeChypotony.CIntCOphthalmolC43:2643-2651,C2023***

白内障術後4カ月に角膜浮腫を生じたDescemet膜剝離の1例

2024年12月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科41(12):1472.1475,2024c白内障術後4カ月に角膜浮腫を生じたDescemet膜.離の1例柚木麻衣*1,2田尻健介*1吉川大和*1,3向井規子*1,4喜田照代*1*1大阪医科薬科大学眼科学教室*2近畿大学奈良病院眼科*3よしかわ眼科医院*4市立ひらかた病院眼科CACaseofDescemetMembraneDetachmentthatCausedCornealEdemaFourMonthsafterCataractSurgeryMaiYunoki1,2),KensukeTajiri1),YamatoYoshikawa1,3),NorikoMukai1,4)andTeruyoKida1)1)DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalandPharmaceuticalUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityNaraHospital,3)YoshikawaEyeClinic,4)DepartmentofOphthalmology,HirakataCityHospitalC目的:白内障術後C4カ月に角膜中央にCDescemet膜.離を認め,Descemet膜下貯留液の排液および前房内C20%六フッ化ガス(SF6)注入が奏効したC1例を報告する.症例:84歳,女性.2020年に両眼の白内障手術を耳側角膜切開で施行され術後経過は良好であった.術後C4カ月に右眼に角膜浮腫を認めた.経過観察されたが角膜浮腫は増悪し,術後7カ月に大阪医科薬科大学病院眼科を紹介受診した.初診時,角膜中央に角膜浮腫およびCDescemet膜.離を認め視力は(0.5)に低下していた.角膜内皮面に切開創付近からCDescemet膜.離の方向へ管状構造をもつ帯状の瘢痕を認めた.Descemet膜.離が拡大し視力が(0.3)に低下したため術後C9カ月にCDescemet膜下貯留液の排液および前房内C20%CSF6注入術を施行した.術後速やかに角膜浮腫は消退し再発なく経過している.結論:切開創付近の角膜内皮面に管状の瘢痕が生じ,Descemet膜下に房水が貯留したことがCDescemet膜.離を生じた原因と考えられた.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofCDescemetCmembranedetachment(DMD)withClate-onsetCcornealCedemaCthatCwassuccessfullytreatedwithanovelsurgicalprocedure.Case:Thisstudyinvolvedan84-year-oldfemalepatientwhounderwentbilateralcataractsurgeryin2020withanuneventfulpostoperativecourse.However,at4-monthspostoperative,cornealedemadevelopedinherrighteye,and3monthslatershewasreferredtoourdepartmentfortreatmentastheconditionhadworsened.Uponinitialexamination,cornealedemaandDMDwereobservedintheCcentralCcorneaCofCherCrightCeye,CandCvisualCacuityChadCdecreasedCtoC20/40.CWeCobservedCaCband-shapedCscarCwithatubularstructureonthecornealendothelialsurfacefromthetemporalcornealincisionmadefortheDMD.Thus,drainageofDescemetsubmembrane.uidandinjectionof20%SF6CintotheanteriorchamberwasperformedCatC9-monthsCpostoperative.CPostCsurgery,CtheCcornealCedemaCquicklyCdisappearedCandCthereCwasCnoCrecurrence.CConclusion:Inthiscase,wetheorizethattheDMDwascausedbythetubularscarthatappearedonthecornealendothelialsurfaceneartheincision,andthataqueoushumoraccumulatedundertheDescemetmembrane.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)41(12):1472.1475,C2024〕Keywords:Descemet膜.離,白内障手術,角膜浮腫,20%CSF6ガス.Descemetmembranedetachment,cata-ractsurgery,cornealedema,20%sulfurhexa.uoride(SF6)gas.はじめにDescemet膜.離は白内障手術でときおり認められる術中合併症である.通常は切開創を起点として生じ,Descemet膜.離の範囲が大きい場合は角膜浮腫により重篤な視力低下を生じる.長期間CDescemet膜.離が治癒しない場合は,不可逆的な変化により水疱性角膜症となる1).今回筆者らは,白内障手術を施行しC4カ月後に角膜中央に限局する角膜浮腫およびCDescemet膜.離を認め,Des-cemet膜下貯留液の排液および前房内C20%六フッ化ガス(sulfurChexa.uoridegas:SF6gas)(以下,SF6ガス)注入〔別刷請求先〕柚木麻衣:〒569-8686大阪府高槻市大学町C2-7大阪医科薬科大学眼科学教室Reprintrequests:MaiYunoki,M.D.,DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalandPharmaceuticalUniversity,2-7Daigaku-machi,Takatsuki,Osaka569-8686,JAPANC1472(88)が奏効したC1例を経験したので報告する.CI症例患者:84歳,女性.既往歴:特記事項なし.現病歴:2020年,近医にて両眼の白内障手術を耳側角膜切開で施行され視力は右眼(0.9),左眼(1.0)に改善した.術後の右眼角膜内皮細胞密度は角膜中央部でC2,900個/mm2であり,ステロイド点眼は漸減された.ドライアイの治療を目的にC0.1%フルオロメトロン点眼をC1日C2回で継続していたが,術後C4カ月の近医再診時に角膜浮腫を認めた.0.1%ベタメタゾン点眼をC1日C4回に変更されたものの視力低下が進行し,術後C7カ月に大阪医科薬科大学病院眼科を紹介受診した.初診時所見:右眼の角膜中央からやや上方にかけて角膜浮腫を認め(図1),角膜内皮面に角膜切開創から角膜浮腫の方向に帯状の瘢痕形成を認めた(図2).角膜内皮細胞密度は角膜中央では測定できず,下方でC2,207個/mm2であった.前眼部光干渉断層計(HeidelbergCSpectralis,HeidelbergEngineering社)で撮像した前眼部光干渉断層撮影像では角膜中央からやや上方にかけてCDescemet膜.離を認めた.視力は右眼C0.15(0.5×sph.0.5D(cyl.2.0DAx105°),左眼0.4(0.7×sph.0.5D(cyl.1.25DAx90°),眼圧は右眼C10.7mmHg,左眼C9.0CmmHgであった.図1初診時の右眼前眼部写真(フルオレセイン染色)右眼の角膜中央からやや上方にかけて角膜浮腫を認める.図2初診時の右眼前眼部写真角膜内皮面に角膜切開創から角膜浮腫の方向に連なる帯状の瘢痕形成を認める(.).図3再診時の前眼部光干渉断層撮影像(CASIA2)両図とも角膜中央にCDescemet膜.離を認める.上図では創口近くの角膜内皮面に管状構造を認める.下図で管状構造が.離したDescemet膜上にも存在することがわかる.図4Descemet膜下貯留液の排液および前房内SF6ガス注入後8カ月の前眼部写真Descemet膜.離および角膜浮腫を認めない.角膜切開創から角膜中央やや上方にかけて帯状の瘢痕は残存している.治療経過:0.1%ベタメタゾン点眼をC1日C6回に変更したが角膜浮腫は増悪し,術後C8カ月には視力は(0.3)に低下した.術後C9カ月に当院に導入された前眼部光干渉断層計(CASIA2,トーメーコーポレーション)で撮像した前眼部光干渉断層撮影像ではCDescemet膜.離は拡大傾向であり,初診時に認めていた帯状の瘢痕部に一致して角膜内皮面に角膜切開創から角膜浮腫の方向へ連なる管状構造を認めた(図3).同月に前房内CSF6ガス注入およびCDescemet膜下貯留液の排液を施行した.最初に前房水を採取し,眼圧調整のうえで角膜上皮を掻爬しCDescemet膜を視認したその後C32CG針を用いて前房内にC20%CSFC6ガスを注入した.そのままシリンジに陰圧をかけながらベベルダウンで前房内からCDes-cemet膜を刺入しCDescemet膜下貯留液の排液を試みたが,シリンジ内のC20%CSFC6が逆流しCDescemet膜.離が拡大してしまった.そのためCDescemet膜下の貯留液とCSFC6ガスは角膜上皮側からCDescemet膜下腔に刺入しなおして排液および排気を完遂した.前房内をC20%CSFC6ガスで全置換し,10分間CDescemet膜を角膜実質に圧着させC0.4%ベタメタゾン結膜下注射を施行,治療用ソフトコンタクトレンズを装用させ術後は仰臥位安静とした.手術中は適宜スリット照明でDescemet膜.離の状況を確認した.術翌日,管状構造は残存していたがCDescemet膜.離は接着していた.術後速やかに角膜浮腫は消退しCDescemet膜.離は再発することなく(図4),2カ月後には管状構造に内腔は確認されなくなった.前房水ポリメラーゼ連鎖反応(polymeraseCchainreaction:PCR)検査は単純ヘルペスウイルス(herpessimplexvirus:HSV),水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zostervirus:VZV)およびサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)は陰性であった.前房内CSFC6ガス注入後約C3年目の現在,Descemet膜.離の再発はなく右眼矯正視力は(0.9)と良好である.角膜内皮細胞密度は中央およびC6方向の測定点で約C1,300個/mmC2である.CII考案一般に,白内障手術に伴って生じるCDescemet膜.離は,手術中もしくは術後数日に発症が確認される2).しかし,まれではあるが白内障手術を行って数週間以上が経過してから遅れてCDescemet膜.離が生じたという報告があり,Schny-der角膜ジストロフィ症例3)や梅毒性角膜白斑の症例4),とくに基礎疾患のない症例5)で術後C3.4週後に生じたと報告されている.本症例では術直後は視力良好であったが術後C4カ月頃に視力低下が生じており過去の報告に比較して発症が遅いと考えられた.Descemet膜.離の位置は通常,強角膜切開創および角膜切開創を起点にして生じるため,Descemet膜.離は切開創と連続して認められる1).本症例では切開創から離れた角膜中央部にCDescemet膜.離が限局していた.Schnyder角膜ジストロフィの症例で角膜切開創に連続しない遅発性CDes-cemet膜.離の報告3)があるが,本症例には角膜ジストロフィの所見は認められなかった.角膜切開創からCDescemet膜.離部へは角膜内皮面に管状構造をもつ瘢痕様の所見が認められた.本症例はかなり極端なCdeep-seteyesであり術中に前房内の視認性が不良となりやすい比較的白内障手術難症例であることから,角膜創付近に術直後から無症候性かつ限局性のCDescemet膜.離を生じていた可能性を考えている.管状構造が形成された過程については二つの仮説を考えている.一つは角膜内皮移植の術式の一つであるCDescemet膜移植においてドナー角膜から.離したCDescemet膜は内皮面を外側にしたデスメロールを形成するが6),弁状に.離していたCDescemet膜がデスメロールを形成しながら癒合し管状になった場合,二つ目はCDescemet膜.離部のCDescemet膜側同士が中央に寄りながら癒着し管状構造を形成した場合である.Descemet膜.離を広範に生じるような症例ではCDes-cemet膜と角膜実質との間に接着異常が存在する可能性がある.Schnyder角膜ジストロフィでは電子顕微鏡像で角膜実質とCDescemet膜との間に脂質沈着を疑う多数の空間の存在が報告されている7).本症例はCDescemet膜下貯留液の排液時にCDescemet膜.離を拡大させてしまった.シリンジにかけた陰圧に比較してCSFC6ガスの膨張が強かったためと考えている.本症例に特筆した既往歴は認めなかったがCDes-cemet膜と角膜実質間の接着の脆弱性を考えている.本症例におけるCDescemet膜.離の発症機序についての仮説を立てて考察してみた.白内障手術後,視力に影響を与えない大きさのCDescemet膜.離は角膜切開創近くに生じていた.Descemet膜.離は管状構造を形成しながら瘢痕化した.管状構造がCDescemet膜下と前房を交通しており,白内障術後遅発性にCDescemet膜.離が角膜中央部に限局して生じた.画像で確認は困難だが管状構造内に弁状の構造がありDescemet膜下貯留液は吸収量より供給量が勝ることで.離の拡大が生じた.発症が術後C4カ月であるが,術後ドライアイ治療のためにステロイド点眼を継続しており,瘢痕形成に時間を要した可能性がある.白内障手術中に範囲の広いCDescemet膜.離が生じた場合は前房内気体注入が考慮される..離範囲が数Cmm程度であれば空気注入で十分であるが1),広範囲であれば長期間貯留し膨張するCSFC6ガス8)やパーフルオロプロパンガス(per-.uoropropaneCgas)9)を選択する..離を何度も繰り返す場合はCDescemet膜縫着10)を検討する.一方で広範囲のCDes-cemet膜.離が自然治癒した報告5,11)もあり明確な指針はない.本症例は管状構造の残存による再発の可能性が考えられたため,SFC6ガスを用いて前房内ガス注入を施行した.Des-cemet膜.離は前房内に大きく開放しておらず,前房内ガス注入だけではCDescemet膜下の貯留液が残存する可能性を考慮し積極的に排液を行った.本症例では細隙灯顕微鏡検査で帯状の瘢痕およびCDes-cemet膜.離が確認できたが,管状構造とCDescemet膜.離の観察にはCCASIA2による網羅的な角膜断層像が有用であった.原因不明の角膜浮腫に対してCCASIA2による前眼部光干渉断層撮影像は病態解明の一助となるであろう.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)佐々木洋:Descemet膜.離.臨眼58:28-33,C20042)MackoolCRJ,CHoltzSJ:DescemetCmembraneCdetachment.CArchOphthalmolC95:459-463,C19773)勝部志郎,安田明弘,舟木俊成ほか:白内障術後に遅発性Descemet膜.離を生じたCSchnyder角膜ジストロフィのC1例.あたらしい眼科36:1579-1583,C20194)西村栄一,谷口重雄,石田千晶:両眼性CDescemet膜.離を繰り返した梅毒性角膜白斑合併白内障症例.IOL&RS24:100-106,C20105)CouchCSM,CBaratzKH:Delayed,CbilateralCDescemet’sCmembraneCdetachmentsCwithCspontaneousresolution:CimplicationsCforCnonsurgicalCtreatment.CCorneaC28:1160-1163,C20096)MellesCGRJ,CLanderCF,CRietveldFJR:TransplantationCofCDescemet’sCmembraneCcarryingCviableCendotheliumCthroughCaCsmallCscleralCincision.CCorneaC21:415-418,C20027)FreddoCTF,CPolackCFM,CLeibowitzHM:UltrastructuralCchangeintheposteriorlayersofthecorneainSchnyder’scrystallinedystrophy.CorneaC8:170-177,C19898)GaultCJA,CRaberIM:RepairCofCDescemet’sCmembraneCdetachmentCwithCintracameralCinjectionCof20%CsulfurChexa.uoridegas.CorneaC15:483-489,C19969)MacsaiMS,GainerKM,ChisholmC:RepairofDescemet’CsCmembraneCwithCdetachmentCwithCper.uoropropaneCgas(C3F8).CorneaC17:129-134,C199810)AmaralCE,PalayDA:TechniqueforrepairofDescemetmembraneCdetachment.CAmCJCOphthalmolC127:88-90,C199911)MinkovitzCJB,CSchrenkCLC,CPeposeCJSCetal:SpontaneousCresolutionCofCanCextensiveCdetachmentCofCDescemet’sCmembranefollowingphacoemulsi.cation.ArchOphthalmolC112:551-552,C1994***