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SITA-Standard プログラムの信頼度指標

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1(95)ツ黴€ 950910-1810/10/\100/頁/JCOPYツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ あたらしい眼科 27(1):95 98,2010cはじめに自動視野計を用いた視野検査は自覚的検査であり,その結果には被検者の応答性が大きく影響する.しかし,視野検査中の被検者応答の信頼性を直接知る方法は確立されていない.そこで,自動視野計では独自の固視監視システムに加えて,閾値測定とは別個に catchツ黴€ trial を行い偽陽性応答(false positiveツ黴€ errors:FP)・偽陰性応答(falseツ黴€ negativeツ黴€ errors:FN)を調べ,これを信頼度指標(reliabilityツ黴€ factor:RF)として数値化し,検査の信頼性の判定の基準としている1).Humphrey 視野計(Humphreyツ黴€ Filedツ黴€ Analyzer:HFA,ツ黴€ Carl Zeissツ黴€ Meditec)の全点閾値測定法(fullツ黴€ threshold:Full)では, そ の standardツ黴€ limit2)(境界値)は固視不良( xation losses:FL)は 20%,FP と FN は 33%に設定することが推奨(推奨境界値)されており,これらが臨床研究などの組み入れ・除外の基準として一般化している3).一方,網膜感度は検査時間の延長に伴い低下する傾向があり4,5),HFA では緑内障視野障害用に測定戦略が改良され,Swedishツ黴€ interactiveツ黴€ thresholdツ黴€ algorithm(SITA)プログラ〔別刷請求先〕鈴村弘隆:〒164-8607 東京都中野区中央 4-59-16中野総合病院眼科Reprint requests:Hirotaka Suzumura, M.D., Department of Ophthalmology, Nakano General Hospital, 4-59-16 Chuo, Nakano-ku, Tokyo 164-8607, JAPANSITA-Standard プログラムの信頼度指標鈴村弘隆*1吉川啓司*2木村泰朗*3*1 中野総合病院眼科*2 吉川眼科クリニック*3 上野眼科Reliability Factors in SITA-Standard ProgramHirotaka Suzumura1), Keiji Yoshikawa2) and Tairo Kimura3)1)Department of Ophthalmology, Nakano General Hospital, 2)Yoshikawa Eye Clinic, 3)Ueno Eye ClinicHumphrey 視野計(HFA)の全点閾値法(Full)と SITA(Swedishツ黴€ interactiveツ黴€ thresholdツ黴€ algorithm)-Standard(SITA-S)の両者により,中心 30-2 プログラムを用い連続的に視野検査がされた広義原発開放隅角緑内障(POAG)45例 45 眼について信頼度指標(RF)である固視不良(FL),偽陽性応答(FP),偽陰性応答(FN)の一貫性・一致性を調べた.一貫性は FL 93.3%,FP 100%,FN 95.6%に,一致性は FL 88.9%,FP 100%,FN 93.3%に認めた.さらに,各 RF の Full で推奨された境界値(推奨境界値)に対する SITA-S での RF の境界値を ROC 曲線(receiverツ黴€ operating characteristicツ黴€ curve)と回帰分析により予測したところ,FL(ROC 曲線:21.1%,回帰分析:20.7%),FP(回帰分析:14.7%)は RF の指標として Full と SITA の両者で同等に扱いうると考えた.一方,FN は SITA-S での境界値(ROC 曲線:6.0%)と Full の推奨境界値は大きく異なったが,平均偏差との関連性(Full:p<0.0001)があったことから,信頼度よりも視野障害の重症度の指標として位置づけられると考えた.In 45 eyes with primary open-angle glaucoma(POAG), we investigated the relationship of each reliability fac-tor(RF)betweenツ黴€ theツ黴€ C30-2ツ黴€ programツ黴€ withツ黴€ fullツ黴€ thresholdツ黴€ strategy(Full)andツ黴€ withツ黴€ SITA(Swedishツ黴€ interactive thresholdツ黴€ algorithm)-Standard(SITA-S).ツ黴€ Consistenceツ黴€ wasツ黴€ con rmedツ黴€ byツ黴€ moreツ黴€ thanツ黴€ 90%ツ黴€ andツ黴€ theツ黴€ correspondence rate was more than approximately 90% in each RF. Next, we estimated the limit of each RF in SITA-S as predict-ed by the ROC(receiver operating characteristic)curve and regression analysis. The predicted limits in SITA-S ofツ黴€ xationツ黴€ losses(FL)andツ黴€ falseツ黴€ positiveツ黴€ errors(FP)showedツ黴€ littleツ黴€ di erenceツ黴€ fromツ黴€ theツ黴€ standardツ黴€ limitsツ黴€ inツ黴€ Full.ツ黴€ Inツ黴€ con-trast,ツ黴€ theツ黴€ predictedツ黴€ limitsツ黴€ ofツ黴€ falseツ黴€ negativeツ黴€ errors(FN)inツ黴€ SITA-Sツ黴€ wereツ黴€ aboutツ黴€ 7%,ツ黴€ showingツ黴€ signi cantツ黴€ di erence from the standard limit in Full. As well, there was signi cant correlation in Full between FN and mean deviation(p<0.0001). It is suggested that FN relate with the visualツ黴€ eld damage severity, rather than with reliability, where-as FL and FP in SITA could be equally to Full evaluated.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)27(1):95 98, 2010〕Key words: 信 頼 度 指 標, 自 動 視 野 計,SITA-Standard, 全 点 閾 値 法, 緑 内 障.reliabilityツ黴€ factors,ツ黴€ automated perimeter, SITA-Standard, full-threshold, glaucoma.———————————————————————- Page 296あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(96)ムが開発,実用化された6).この測定法の変更は視野結果の評価法にも影響する可能性がある.そこで,筆者らはまず,Anderson 基準に注目し,Full と SITA 間で比較しツ黴€ Ander-son 基準が SITA でも適用可能であることを確認した7).さて,SITA では検査時間を短縮するための一環としてcatchツ黴€ trial に相当する視標呈示を減らしている.これに伴いSITA では RF の算出方法が Full から一部変更された6,8).すなわち,ツ黴€ FL の算出法に変更はないが,ツ黴€ FP は被検者の応答時間を基準とし,極端に速い,または,遅い応答は視標に対する正確な反応とみなさず,偽応答として処理し,その境界値も 15%に引き下げられた9).一方,FN は緑内障データベースに基づいて新たに設定された視覚確率曲線(frequencyツ黴€ of seeingツ黴€ curve:FOSC)が利用されている10,11)が,Full と同様に catchツ黴€ trial を行うため境界値は 33%に据え置かれている.しかし,各 RF の境界値の設定根拠は明確にされておらず,Full と SITA の両者で比較した検討もなされていない.そこで,今回,緑内障臨床や研究で標準的視野検査法となりつつある SITA-Standard(SITA-S)の RF を調べ Full と比較し,さらに,RF の境界値の設定について検討した.I対象および方法中野総合病院眼科,吉川眼科クリニック,上野眼科において,3 年以上継続的に経過観察され,HFA 中心 30-2 プログラム(C30-2)の Full を用いて原則として 6 カ月ごとに 3 回以上視野を測定し,その後,引き続いて C30-2 の SITA-Sによる視野測定を 3 回以上施行した広義の原発開放隅角緑内障を後ろ向きに抽出した.このうち,視神経乳頭および網膜所見と相応し,かつ,Anderson の基準12)を満たす緑内障性視野変化を認め,屈折が等価球面度数で 6.0 D 以上,矯正視力 0.8 以上,さらに,前眼部,中間透光体に視野検査結果に影響を及ぼす明らかな異常がなく,研究の目的に対し同意を得られた症例を対象として組み入れた.Full,SITA-S ともに経過観察中に明らかな視野障害の進行を認めた症例は対象から除外した.方法は Full と SITA-S による各 3 回の視野検査における信頼度指標(FL,FP,FN)および平均偏差(meanツ黴€ devia-tion:MD)を算出した.RF の境界値を Full では FLツ黴€ 20%,FPツ黴€ 33%,FNツ黴€ 33%,SITA-S では FLツ黴€ 20%,FPツ黴€ 15%,FNツ黴€ 33%とし9,13),Full,SITA-S 各々 3 回の検査中,各 RF が境界値を超えなかった数を調べた.その結果から,Full,SITA-S での数が同数なら,信頼性に「一貫性あり」,Full と SITA-S での差が 1 回なら,信頼性は「ほぼ一貫性あり」,Full と SITA-S での差が 2 回以上なら信頼性に「一貫性なし」と判定した.Full と SITA-S それぞれ 3 回の RF の代表値として,各RF の中央値を算出した.RF の中央値が Full, SITA-S のいずれか一方のみで境界値を超えていれば信頼性は「不一致」,Full, SITA-S の中央値がともに境界値未満,あるいは境界値以上なら信頼性は「一致」と判定した.つぎに,Full の各 RF の判定結果(境界値を超えるか否か)を基準として SITA における各 RF の receiver operating characteristicツ黴€ curve(ROC 曲線)を作成し,cut-oツ黴€ 値を求めた.Cut-oツ黴€ 値のうち感度・特異度が最も拮抗する値を最適予測値と定義した.さらに Full での境界値に対応するSITA-S の予測値を各 RF の中央値の直線回帰分析を用いて算出した.また,MD と各 RF の関連を直線回帰分析により調べた.解析は 1 例 1 眼とし,原則的に各症例の右視野結果を採用した.統計的検定は JMPツ黴€ 7.0.1(SASツ黴€ 日本)を用い,有意水準は 5%未満とした.II結果組み入れ基準を満たし解析の対象となったのは 45 例 45眼(平均年齢:62.2±12.8 歳,男性 19 例 19 眼,女性 26 例26 眼)であった.対象眼の MD は,Full と SITA-S の間で明らかな差はなかった(Full: 8.52±7.10 dB,SITA-S: 9.21±7.75 dB, Wilcoxon 検定,p=0.7195).信頼性が「一貫性あり」と判定されたのは,FP が 45 眼中 42 眼(93.3%)で最も高率を占め,FN(38 眼:84.4%),FL(34 眼:75.6%)が続いた.これに,「ほぼ一貫性あり」を合わせると FN は 45 眼中 43 眼(95.6%),FL は 45 眼中42 眼(93.3%)であったが,FP は全眼(100%)で「ほぼ一貫性あり」と判定された.一方,「一貫性がない」と判定されたのは FL,FN それぞれ 45 眼中 3 眼(6.7%)と 2 眼(4.4%)であったが,FP を「一貫性がない」と判定された症例は認めなかった(表 1).FL は Full,SITA-S による 3 回の中央値が 45 眼中 34 眼(75.6%)ではともに境界値未満,45 眼中 6 眼(13.3%)ではともに境界値を超えた.すなわち 45 眼中 40 眼(88.9%)で信頼性は「一致」していた.同様に FP は 45 眼中 45 眼(100%),FN は 45 眼中 42 眼(93.3%)で Full と SITA-S の信頼性の結果は「一致」した(表 2).表 1信頼性の一貫性SITA-SFLFPFN境界値を超えなかった視野の数321032103210Full3210291102200022111214100021000000001038320200000000000———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,201097(97)ROC 曲線から求められた最適予測値は FL が 21.1%,FNは 6.0%であった.なお,FP は Full において異常を示す症例が 1 眼のみであったため ROC 曲線が描けなかった.FL の中央値における Full と SITA-S の直線回帰分析から得 ら れ た 回 帰 式 に Full に お け る 境 界 値 を 代 入 す る と,SITA-S の予測値は FL では 20.7%,FP は 14.7%であったが,FN は有意な回帰式が得られず予測値は算出できなかった(図 1).MD と Full,SITA-S そ れ ぞ れ の RF の 中 央 値 は FL(Full:p=0.2902,SITA:p=0.3244),FP(Full:p=0.6139,SITA:p=0.5449)で は 有 意 な 相 関 は な か っ た.FN は SITA-S では有意な相関がなかった(p=0.0744)が,Full では有意な相関を認めた(p<0.0001)(図 2).III考按HFA の SITA-S による視野検査結果の RF は Full の結果と一貫性・一致性があった.また,FL と FP についてはFull と SITA-S のそれぞれの境界値の設定は相応していた.SITA-S は視野測定戦略の変更により Full に比べ検査時間が短縮された.これと関連して RF の算出方法や境界値もFull から変更されたが,Full と SITA-S の間で RF を比べた報告は認めていない.そこで,Full と SITA-S で連続的に表 2信頼度指標の一致性SITA-SFLFPFN境界値20%>≧ 20%境界値15%>≧ 15%境界値33%>≧ 33%Full20%>34433%>44033%>420≧ 20%16≧ 33%01≧ 33%30図 1直線回帰分析による SITA-Sでの信頼度指標(RF)の予測値左:Fixation losses(FL) 回帰式:FL(SITA-S;%)=4.91517+0.7894778*FL(Full;%)(r2=0.3060, p<0.0001)に Full の FL 20%を代入すると SITA-S の FL は 20.7%であった.FL:固視不良,Full:全点閾値法,SITA-S:SITA-Standard.中央:False positive errors(FP) 回帰式:FP(SITA-S;%)=1.62425+0.3962773*FP(Full;%)(r2=0.494052, p<0.0001)に Full の FP 33%を代入すると SITA-S の FP は 14.7%であった.FP:偽陽性応答,Full:全点閾値法,SITA-S:SITA-Standard.右:False negative errors(FN) 回帰式:FN(SITA-S;%)=2.47778+0.1273936*FN(Full;%)(r2=0.071914, p=0.0749)は有意な相関が認められなかった.FN:偽陰性応答,Full:全点閾値法,SITA-S:SITA-Standard.SITA-SFLSITA-SFPFNSITA-S80%60%40%20%0%40%30%20%10%0%40%30%20%10%0%0%20%40%60%80%Full0%10%20%30%40%Full0%10%20%30%40%Full-30-25-20-15-10-5040%30%20%10%0%FNMD(dB):Full:SITA-S図 2False negative errorsと平均偏差Full(r2=0.4148)の FN(+)は MD と有意(p<0.0001)に関連したが,SITA-S(r2=0.0722)の FN(○)と MD には明らかな関連は認めなかった(p=0.0744).FN:偽陰性応答,MD:平均偏差.———————————————————————- Page 498あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(98)視野検査が行われ,しかも,視野障害の進行が明らかでなかった同一症例を用いて Full と SITA-S の RF を検討した.まず Full と SITA-S 間で RF の一貫性,一致性を調べた.一貫性は各 RF が境界値を超えなかった数を基準とし判定したが,「一貫性あり」と「ほぼ一貫性あり」を加えると FL,FP,FN の そ れ ぞ れ が 93.3%,100%,95.6% と な り Full, SITA-S で信頼性の結果は一貫していると考えた.RF の一致性は各 3 回の RF の中央値が境界値を超えるか否かにより検討したが,FLツ黴€ 88.9%,FPツ黴€ 100%,FNツ黴€ 93.3%と,いずれも高い一致性を認めると考えた.これらのことから,Fullと SITA の信頼性の指標は「一貫性」と「一致性」があり,strategy の違いは個々人の RF の傾向に大きく影響しないものと考えた.さて,SITA-S の FP,FN では算出法が Full とは異なるものの,境界値は FP では変更され,FN では従来通りの設定が推奨されている.そこで,今回,SITA-S における RFの境界値について ROC 曲線と直線回帰分析により検討した.ROC 曲線は検査の精度評価や 2 つの検査法の判別能の比較のため用いられる.今回は,Full での RF を基準としてROC 曲線を描き,SITA-S における RF の最適予測値を算出した.その結果,FL の最適予測値は 21.1%であり,Fullの推奨境界値である 20%とほぼ一致した.直線回帰分析でも SITA-S の予測値は 20.7%で同等のレベルにあった.FLは,Full と SITA-S でその算出法が同じ(Heijl-Krakau 法)であり,strategy の変更により影響を受ける要因は少ないと考えた.FP では境界値を超えた検査結果が非常に少なく ROC 曲線を描くことができなかったが,Full と SITA-S の直線回帰分析を行った結果,SITA-S の予測値は 14.7%であった.これは,SITA-S の境界値9)と同等のレベルで,この結果から,SITA-S での FP 算出法は検査時間の短縮に寄与するとともに,Full と同等の判定が得られる境界値に引き下げられていると推測した.一方,FN の ROC 曲線から求めた最適予測値は 6.0%と推奨境界値 33%と大きく解離していた.一般に緑内障では正常者に比べ網膜感度の変動や疲労現象が大きく,当初視認できた視標よりも明るい視標に対しても応答できず視野の重症度 に 比 例 し て FN が 高 値 を と る 傾 向 が ある14).しかし,SITA-S ではベイズ(Bayes)の定理に基づく FOSC を参考とし,FN が決定されるため視野障害の重症化による影響はFull に比べ少ないと考えられる10,15).今回の検討でも,Fullでは視野の重症度と FN に関連がみられたが,SITA-S では明らかな関連を認めず,視野測定戦略の変更が FN の境界値に影響すること,SITA では,最適予測値と推奨境界値に「大きなズレ」があることも含め,FN の RF としての意義が薄れていることが改めて確認できたものと考えた.SITA と Full の RF を比べたところ,両者の間には一貫性と一致性があり,Full を基準とした SITA の FL,FP の境界値の設定は妥当であり,SITA の FL,FP は Full のそれらと同様に取り扱うことができると考えた.しかし,FN は信頼度よりも視野障害の重症度の指標としての意義づけが高いものと考えられたため報告した.文献 1) 鈴村弘隆:自動視野計プログラムの選択.緑内障 3 分診療を科学する!(吉川啓司・松元俊編),p188,中山書店,2006 2) Anderson DR:Interpretation of a singleツ黴€ eld. Automated Static Perimetry, p91-161, Mosby-Year Book, St Louis, 1992 3) Iwase A, Suzuki Y, Araie M et al:The prevalence of pri-mary open-angle glaucoma in Japanese:The Tajimi Study. Ophthalmology 111:1641-1648, 2004 4) Heijlツ黴€ A,ツ黴€ Dranceツ黴€ SM:Changesツ黴€ inツ黴€ di erentialツ黴€ thresholdツ黴€ in patientsツ黴€ withツ黴€ glaucomaツ黴€ duringツ黴€ prolongedツ黴€ perimetry.ツ黴€ Brツ黴€ J Ophthalmol 67:512-516, 1983 5) 鈴村弘隆:反復閾値測定による緑内障の視疲労様変化について.日眼会誌 92:220-224, 1988 6) Bengtsson B, Olsson J, Heijl A et al:A new generation of algorithms for computerized threshold perimetry, SITA. Acta Ophthalmol Scand 75:181-183, 1997 7) 鈴村弘隆,吉川啓司,木村泰朗:Anderson 基準を用いた初期緑内障視野異常の検出.眼科 50:1967-1971, 2008 8) Olsson J, Rootzen H, Heijl A:Maximum likelihood estima-tion of the frequency of false positive and false negative answers from the up-and-down staircase of computerized threshold perimetry. Heijl A ed. Perimetry Update 1988/89,ツ黴€ p245-251, Kugler & Ghedini, Amsterdam, 1989 9) Heijl A, Patella VM:Essential Perimetry, third edition. Theツ黴€ eld analyzer primer. Statopac, p44-69, Carl Zeiss Meditec Inc, 2002 10) Olsson J, Heijl A, Bengtsson B et al:Frequency-of-seeing in computerized perimetry. Mills RP ed. Perimetry Update 1992/1993, p551-556, Kugler, Amsterdam, 1993 11) Olsson J, Bengtsson B, Heijl A et al:Improving estima-tion of false-positive and false-negative responses in com-puterized perimetry. Mills RP & Wall M eds. Perimetry Update 1994/1995, p219, Kugler, Amsterdam, 1995 12) Anderson DR, Patella VM:Interpretation of a singleツ黴€ eld. Automated Static Perimetry, second ed. p121-190, Mosby, St Louis, 1999 13) Anderson DR, Patella VM:Singleツ黴€ eld print out. Auto-mated Static Perimetry, second ed. p107-120, Mosby, St Louis, 1999 14) Katz J, Sommer A, Witt K:Reliability of visualツ黴€ eld results over repeated testing. Ophthalmology 98:70-75, 1991 15) Bengtsson B, Heijl A:False-negative responses in glau-coma perimetry:Indicators of patient performance or test reliabilityツ黴€ Invest Ophthalmol Vis Sci 41:2201-2204, 2000

スペクトラルドメイン光干渉断層計と超音波角膜厚測定装置による中心角膜厚の比較

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1(91)ツ黴€ 910910-1810/10/\100/頁/JCOPYツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ あたらしい眼科 27(1):91 94,2010cはじめに角膜厚の測定装置として Mishima-Hedbys 法をはじめ超音波測定法(以下,US)や非接触型角膜内皮スペキュラー,角膜形状解析装置,光干渉断層計(以下,OCT)などがあ る1).ただし,測定方法により測定値が異なることが知られている1).Goldmann 圧平眼圧計は中心角膜厚(以下,CCT)を 520 μm と設定して考案されており,理論的には 520 μmより薄い場合は実際の眼圧は測定値より高く,それより厚い場合は実際の眼圧は測定値より低く算出される2).また,高眼圧症においては有意に角膜厚が厚く,正常眼圧緑内障では有意に角膜厚が薄いと報告3)され,薄い CCT は原発開放隅角緑内障の発症危険因子と報告4)されている.これらより,角膜厚の正確な測定は緑内障分野において重要な意味をもっている.一般的な US による角膜厚測定は接触式,侵襲性の検査であり,また,プローブを角膜に当てる角度およびその位置によって測定値が変化する可能性がある一方,OCT では非接触式,非侵襲性の検査であるため外来で使用しやすく,さらにより高精度な画像を簡便に得ることが可能である.最近スペクトラルドメイン OCT(以下,SD-OCT)が開発〔別刷請求先〕北善幸:〒153-8515 東京都目黒区大橋 2-17-6東邦大学医療センター大橋病院眼科Reprint requests:Yoshiyuki Kita, M.D., Department of Ophthalmology, Toho University Ohashi Medical Center, 2-17-6 Ohashi, Meguro-ku, Tokyo 153-8515, JAPANスペクトラルドメイン光干渉断層計と超音波角膜厚測定装置による中心角膜厚の比較徳江裕佳北善幸北律子富田剛司東邦大学医療センター大橋病院眼科/東邦大学医学部眼科学第 2 講座Comparison of Central Corneal Thickness Using Spectrum Domain Optical Coherence Tomography and Ultrasonic PachymetryYuka Tokue, Yoshiyuki Kita,Ritsuko Kita and Goji TomitaDepartment of Ophthalmology, Toho University Ohashi Medical Center/Second Department of Ophthalmology,ツ黴€ Toho University School of Medicineスペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)と従来の超音波角膜厚測定装置(US)を用いて中心角膜厚(CCT)を測定し,測定結果を比較検討した.対象は健常人 30 例 60 眼.SD-OCT は RTVue-100 を使用し,US は ECHO-SCANツ黴€ UD1800 を使用した.SD-OCT で測定した CCT は平均 528.7±31.8 μm であったのに対し,US で測定したCCT は 545.6±33.4 μm であり,SD-OCT による CCT が有意に薄かった(pairedツ黴€ t 検定:p<0.001).Pearson の積率相関係数=0.96(p<0.01)であった.級内相関係数(1,ツ黴€ 1)は SD-OCT が 0.922(p<0.01),US が 0.950(p<0.01)であり,両者とも非常に再現性が高かった.検査機器により CCT の測定値が異なることを認識する必要がある.Weツ黴€ comparedツ黴€ centralツ黴€ cornealツ黴€ thickness(CCT)asツ黴€ measuredツ黴€ byツ黴€ spectrumツ黴€ domainツ黴€ opticalツ黴€ coherenceツ黴€ tomogra-phy(SD-OCT)andツ黴€ ultrasonicツ黴€ pachymetry(US).ツ黴€ Theツ黴€ participantsツ黴€ wereツ黴€ 30ツ黴€ volunteers(60ツ黴€ eyes)withツ黴€ noツ黴€ ocular abnormalities.ツ黴€ Theツ黴€ devicesツ黴€ usedツ黴€ wereツ黴€ RTVue-100ツ黴€ forツ黴€ SD-OCTツ黴€ andツ黴€ ECHOSCANツ黴€ UD1800ツ黴€ forツ黴€ US.ツ黴€ Theツ黴€ resultsツ黴€ of CCT measurement were 528.7±31.8 μm with SD-OCT and 545.6±33.4 μm with US, SD-OCT yielding a signi cantlyツ黴€ thinnerツ黴€ value(pairedツ黴€ tツ黴€ test,ツ黴€ p<0.001).ツ黴€ Theツ黴€ Pearsonツ黴€ correlationツ黴€ coe cientツ黴€ wasツ黴€ 0.96(p<0.01).ツ黴€ Intra-classツ黴€ correlationツ黴€ coe cients(1,ツ黴€ 1)wereツ黴€ 0.922(p<0.01)forツ黴€ SD-OCTツ黴€ andツ黴€ 0.950(p<0.01)forツ黴€ US;reproducibility was extremely high in both groups. Since CCT measurements with SD-OCT yielded thinner values than with US, it is important to know the characteristics of each type of devices.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)27(1):91 94, 2010〕Key words:角膜厚,光干渉断層計,パキメータ.corneal thickness, optical coherence tomography, pachymeter.———————————————————————- Page 292あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(92)され,これまでのタイムドメイン OCT(TD-OCT)と比較し,高い解像度,計算時間の大幅な短縮など測定精度の向上が可能となった.現在,利用可能な前眼部 OCT は 4 種類(Visanteツ黴€ OCT,SL-OCT,SS-1000ツ黴€ CASIA,RTVue-100)であるが,そのなかで SD-OCT は RTVue-100(Optovue社)のみである.今回 SD-OCT を用いて健常人の CCT を測定し,US による CCT 測定結果と比較検討した.I対象および方法屈折異常以外の眼疾患がなく,コンタクトレンズ装用がなく,屈折矯正手術歴がない健常,日本人ボランティア 30 例60 眼(男性/女性:13 例/17 例)を対象とした.本研究は当院倫理委員会の承認を得て本研究の趣旨を十分にインフォームド・コンセントし,文書による同意を取得したうえで行った.平均年齢 29.3±4.12 歳(20 40 歳),平均眼軸長 25.3±1.46 m m,平均等価球面度数 3.96±2.64D,平均眼圧 12.2±1.76 mmHgであった.測定方法は, まず SD-OCT で CCT を測定した.SD-OCTは RTVue-100 に低倍率角膜アダプターを装着して使用した.測定モードはパキメトリーマップ(図 1)を用いて被検者に内部固視灯を固視させ CCT を測定した.本装置は840 nm波長を用いて角膜を6 mm幅で 8 方向スキャンする.今回は,その 12 時から 6 時方向の 1 方向の CCT を用いた.1 人の検者が同一の日に片眼につき 3 回測定を行いその平均を CCT とした.画質は Signalツ黴€ Strengthツ黴€ Index(SSI)が 30以上とした.つづいてオキシブプロカイン塩酸塩 0.4%にて点眼麻酔し,US を用いて CCT を測定した.US は ECHO-SCAN UD1800(NIDEK 社)に角膜厚測定用プローブを装着し使用した.SD-OCT と同様に 1 人の検者が同一の日に測定し,連続 10 回測定した平均値を 1 回とし片眼につき 3 回測定し,その平均を CCT とした.測定時にプローブの先を角膜の中心に合わせ水平に保ち測定した.プローブの先が中心からずれたときには再測定した.測定結果は平均値±標準偏差で示した.各方法における測定値の比較,相関関係,再現性を検討した.再現性の評価は両方法ともに 3 回 CCT を測定し,その検者内再現性を検討した.統計学的解析として CCT の測定値の比較には pairedツ黴€ t 検定,相関の検討には Pearson の積率相関係数,差の検討には Bland-Altmanツ黴€ plot,再現性の検討には級内相関係数(1, 1)を使用した.また, すべての検定で p<0.05 を統計学的に有意とした.図 1SD OCTのプリントアウト例角膜を6 m m幅で 8 方向スキャンし,今回は 12 時から 6 時の垂直 1 方向の CCTを用いた.———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,201093(93)II結果1. CCTの測定値CCT 測定値は RTVue-100(以下,SD-OCT 群)によるものが 528.7±31.8 μm,ECHOSCANツ黴€ UD1800(以下,US 群)によるものが 545.6±33.4 μm であり,SD-OCT 群の CCTが有意に薄かった(pairedツ黴€ t 検定)(p<0.001).両者の間には Pearson の積率相関係数が 0.96(p<0.01)とかなり強い正の相関があった.Bland-Altmanツ黴€ plot 分析による CCT の差(SD-OCT US)には,比例誤差はなかった(図 2).2. 測定機器の再現性級内相関係数(1,ツ黴€ 1)は,SD-OCT 群が 0.922(p<0.01),US 群が 0.950(p<0.01)であり,両者とも再現性が高かった.III考按白人を対象とした US による CCT の過去の報告では平均547 および 552 μm5,6)とされており,今回の US 群の CCTと同等の結果であった.US による CCT と比較して非接触型角膜内皮スペキュラーによるそれは有意に低値7,8)であるが,非接触型角膜内皮スペキュラーで測定した日本人正常眼の CCT は平均 517.5 μm であったと報告9)されている.今回使用した SD-OCT は TD-OCT と比較して赤外線の波長が短いため(SD-OCT は 840 n m,TD-OCT は 1,310 n m),より解像度の高い測定ができると思われるが,その反面,組織深達度が低い.解像度が高いという特徴を考慮すると角膜に関してより精密に分析することが可能と思われる.現在,SD-OCT で測定した CCT の報告はないが,今回の対象では SD-OCT による CCT は 528.7±31.8 μm という結果であり,US に比べ有意に薄かった.TD-OCT を用いた過去の報告10 14)(表 1)では,筆者らの結果と同様に OCT による CCT が US と比較し薄いとしているものが多い10 12,14)が,US による CCT 測定結果のほうが薄いとする報告13)もある.測定法による CCT の違いは,OCT と US だけに限ったものではない.スリットスキャン方式のオーブスキャンではUS と比較して CCT が厚い傾向がある8,15).この原因の一つとしてオーブスキャンは涙液層の厚みが含まれること16)やUS による CCT 測定では角膜前面から後面まででなく,Descemet 膜から前房の間のどこかを測定している可能性があることがあげられている17).これ以外にも,オーブスキャンや US に比較して非接触型角膜内皮スペキュラーによるCCT は有意に低値であったとの報告7,8)もあり,測定方法により違いがある.また,局所麻酔の点眼が CCT を増加させるとの報告18)もあり,筆者らは US の前に塩酸オキシブプロカインの点眼を施行しているので SD-OCT を測定するときよりも,US の測定時に角膜厚が実際に増加している可能性もある.今回のSD-OCT と US による CCT の違いは,SD-OCT が測定時,涙液層を含むことや US が角膜全層の測定をしていない可能性などの測定方法の違いや,局所麻酔の CCT への影響などが関係し,結果的に SD-OCT での CCT が薄くなったと考えられた.SD-OCT による CCT と US による CCT の相関は既報10)において高い相関があるが,今回も同様に高い相関があった.また,比例誤差もなく,CCT によらず測定値の差は同等に生じていると考えられた.再現性については,級内相関係数がどちらの測定機器も非常に高く,再現性は良好であることが示された.SD-OCTの測定速度は 20,000A-scan/秒であるのに対して TD-OCTは 200 2,000A-scan/秒であり,TD-OCT より SD-OCTは測定時間が短くなり,眼球運動による影響を受けにくいと考えられるが,TD-OCT での CCT は級内相関係数が 0.97と報告19)されており,筆者らの報告と同様に高い再現性であった.表1過去のTD OCTとUSによるCCTの比較の報告報告書TD-OCTUSKim HY ら10)499±32 μm525.3±33.5 μmBechmann M ら11)530±32 μm581±34 μmZhao PS ら12)527±34.1 μm542.3±36.7 μmLeung DY ら13)565±33 μm543±33 μmWong AC ら14)523±34 μm555±35 μm TD-OCT による CCT が US と比較し薄いとする報告が多い.図 2Bland Altman plotによるSD OCT群とUS群の差平均値= 16.87 μm,平均値+2 S D=2.93 μm,平均値 2 S D= 36.67 μm.CCT の差(SD-OCT US)には比例誤差はなかった. 100.00 -90.00 -80.00 -70.00 -60.00 -50.00 -40.00 -30.00 -20.00 -10.00 0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 450500550600650SD-OCTとUSの平均(?m)SD-OCT-USの差(?m)———————————————————————- Page 494あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(94)眼圧が緑内障の診断,治療の評価に重要な指標の一つであることを考えると,眼圧値に影響を与える角膜厚は正確に求める必要がある.SD-OCT の CCT 測定は目標を固定して測定でき,高い再現性が得られ,非接触式検査,非侵襲性であり有用である.今後,さまざまな方法で CCT が測定されると考えられるが,CCT は測定方法により違いがあることを認識する必要がある.本論文の要旨は第 19 回日本緑内障学会で発表した.文献 1) 中川智哉:角膜厚測定.眼科検査ガイド(眼科診療プラクティス編集委員編),p439-442,文光堂, 2004 2) 澤田明:角膜厚は眼圧測定値にどの程度影響するのか?あたらしい眼科 25(臨増):49-51, 2008 3) Copt RP, Ravi T, Mermoud A et al:Corneal thickness in ocular hypertension, primary open angle glaucoma, and normal tension glaucoma. Arch Ophthalmol 117:14-16, 1999 4) Gordon MO, Beiser JA, Brandt JD et al:The ocular hypertensionツ黴€ treatmentツ黴€ study:Baselineツ黴€ factorsツ黴€ thatツ黴€ pre-dict the onset of primary open-angle glaucoma. Arch Ophthalmol 120:714-720, 2002 5) Hahn S, Azen S, Ying-Lai M et al:Central corneal thick-ness in Latinos. Invest Ophthalmol Vis Sci 44:1508-1512, 2003 6) Dohadwala AA, Munger R, Damji KF et al:Positive cor-relationツ黴€ betweenツ黴€ Tono-penツ黴€ intraocularツ黴€ pressureツ黴€ andツ黴€ cen-tral corneal thickness. Ophthalmology 105:1849-1854, 1998 7) Suzukiツ黴€ S,ツ黴€ Oshikaツ黴€ T,ツ黴€ Okiツ黴€ Kツ黴€ etツ黴€ al:Cornealツ黴€ thicknessツ黴€ mea-surements:Scanning-slit corneal topography and noncon-tactツ黴€ specularツ黴€ microscopyツ黴€ versusツ黴€ ultrasonicツ黴€ pachymetry.ツ黴€ J Cataract Refract Surg 29:1313-1318, 2003 8) Laszlo M, Achim L, Berthold S et al:Scanning-slit and specular microscopic pachymetry in comparison with ultrasonic determination of corneal thickness. Cornea 20:711-714, 2001 9) Suzuki S, Suzuki Y, Iwase A et al:Corneal thickness in anツ黴€ ophthalmologyicallyツ黴€ normalツ黴€ Japaneseツ黴€ population.ツ黴€ Oph-thalmology 112:1327-1336, 2005 10) Kim HY, Budenz DL, Lee PS et al:Comparison of central corneal thickness using anterior segment optical coher-ence tomography vs ultrasound pachymetry. Am J Oph-thalmol 145:228-232, 2008 11) Bechmann M, Thiel MJ, Neubauer AS et al:Central cor-nealツ黴€ thicknessツ黴€ measurementツ黴€ withツ黴€ aツ黴€ retinalツ黴€ opticalツ黴€ coher-ence tomography device versus standard ultrasonic pachymetry. Cornea 20:50-54, 2001 12) Zhao PS, Wong TY, Wong WL et al:Comparison of cen-tral corneal thickness measurements by visante anterior segment optical coherence tomography with ultrasound pachymetry. Am J Ophthalmol 143:1047-1079, 2007 13) Leung DY, Lam DK, Yeung BY et al:Comparison between central corneal thickness measurements by ultrasound pachymetry and optical coherence tomogra-phy. Clin Exp Ophthalmol 34:751-754, 2006 14) Wong AC, Wong CC, Yuen NS et al:Correlation study of central corneal thickness measurements on Hong Kong Chinese using optical coherence tomography, orbscan and ultrasound pachymetry. Eye 16:715-721, 2002 15) Marsich MW, Bullimore MA:The repeatability of corneal thickness measures. Cornea 19:792-795, 2000 16) Liu Z, P ugfelder SC:Corneal thickness is reduced in dry eye. Cornea 18:403-407, 1999 17) Modisツ黴€ Lツ黴€ Jr,ツ黴€ Langenbucherツ黴€ A,ツ黴€ Seitzツ黴€ B:Scanning-slitツ黴€ and specular microscopic pachymetry in comparison with ultrasonic determination of corneal thickness. Cornea 20:711-714,2001 18) Namツ黴€ SM,ツ黴€ Leeツ黴€ HK,ツ黴€ Kimツ黴€ EKツ黴€ etツ黴€ al:Comparisonツ黴€ ofツ黴€ corneal thickness after the instillation of topical anesthetics. Proparacaine versus oxybuprocaine. Cornea 25:51-54, 2006 19) Sin S, Simpson TL:The repeatability of corneal and cor-neal epithelial thickness measurements using optical coherence tomography. Optom Vis Sci 83:360-365, 2006***

多数のアメーバと細菌がコンタクトレンズに付着していたアカントアメーバ角膜炎の2 例

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———————————————————————- Page 1(85)ツ黴€ 850910-1810/10/\100/頁/JCOPYツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ あたらしい眼科 27(1):85 89,2010cはじめにアカントアメーバ角膜炎は 1974 年に英国で初めて報告され1),わが国では 1988 年に初めて報告2)された疾患で,近年その報告数が増加している.初期には角膜ヘルペスに類似した眼所見を呈し,確定診断がなされないまま進行すると重篤な視力障害をきたす.初期,進行例ともに難治であり,発症を予防することが最も重要とされる.アカントアメーバ角膜炎の発症要因として,243 例中 225 例(93%)がコンタクトレンズ(CL)の装用に起因する3)とされ,日本でも本症の 87%が CL 装用者であることが報告されている4).これらの患者の多くは CL の不適切な取り扱いが原因にあると考えら れ5),Stehr-Green らは,発症群において自家製の生理食塩水を保存液として用いている率が高いことを報告した6).渡邉らによっても,水道水を保存液として使用することや煮沸〔別刷請求先〕中村さや花:〒602-0841 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町 465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学Reprint requests:Sayaka Nakamura, M.D., Department of Ophthalmology, Kyoto Prefectural University of Medicine, 465 Hirokouji-agaru, Kawaramachi-dori, Kamigyou-ku, Kyoto 602-0841, JAPAN多数のアメーバと細菌がコンタクトレンズに付着していた アカントアメーバ角膜炎の 2 例中村さや花外園千恵稲富勉上田真由美塩田恒三木下茂京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学Two Cases of Acanthamoeba Keratitis with Numberous Acanthamoebic Cysts and Trophozoites and Various Bacteria Adhering to Soft Contact LensesSayaka Nakamura, Chie Sotozono, Tsutomu Inatomi, Mayumi Ueta, Tsunezo Shiota and Shigeru KinoshitaDepartment of Ophthalmology, Kyoto Prefectural University of Medecineソフトコンタクトレンズ(SCL)に多数のアカントアメーバと細菌の付着を認めたアカントアメーバ角膜炎 2 症例を経験したので報告する.症例 1:47 歳,女性,右眼,2 週間頻回交換 SCL 使用.症例 2:19 歳,女性,両眼,従来型カラー SCL 使用.2 症例とも SCL の洗浄・保存にマルチパーパスソリューション(MPS)を用いていた.眼痛,充血が出現し,角膜所見から前医にてアカントアメーバ角膜炎が疑われ,京都府立医科大学附属病院眼科を受診した.症例 1 では角膜掻爬物の直接鏡検でアカントアメーバのシストを検出,症例 2 では角膜掻爬物の培養検査にてアカントアメーバを検出し,両患者の使用していた SCL 表面全体に多数のアカントアメーバ,細菌を認め,SCL ケース内に残存していた MPS 中にも多数のアカントアメーバと細菌を認めた.アカントアメーバ角膜炎の発症には,MPS 中における細菌増殖とアメーバの増殖,SCL への高密度付着が強く関与している可能性が示唆された.We treated two cases of acanthamoeba keratitis, a 49-year-old female(Case 1)and a 19-year-old female(Case 2). Case 1 daily used scheduled-replacement soft contact lenses(SCL)(replaced every two weeks);Case 2 occa-sionally used colored SCL. Both cases disinfected and preserved their SCL with multipurpose solution(MPS). Both complained of pain and hyperemia, and were referred to the University Hospital at Kyoto Prefectural University of Medicine. The right eye in Case 1 and both eyes in Case 2 presented corneal stromal in ltration, edema, and radial keratoneuritis. Acanthamoeba was detected from the smear culture of corneal debridement in both cases. Bacteria andツ黴€ numerousツ黴€ trophozoites,ツ黴€ asツ黴€ wellツ黴€ asツ黴€ cystsツ黴€ ofツ黴€ Acanthamoeba,ツ黴€ wereツ黴€ presentツ黴€ onツ黴€ theツ黴€ surfacesツ黴€ ofツ黴€ theirツ黴€ SCL.ツ黴€ Their SCL storage cases and MPS were also contaminated with Acanthamoeba and bacteria. It is highly possible that the proliferation of bacteria and Acanthamoeba around the SCL induced the acanthamoeba keratitis.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)27(1):85 89, 2010〕Key words:アカントアメーバ角膜炎,ソフトコンタクトレンズ,マルチパーパスソリューション,細菌.acanthamoeba keratitis, soft contact lens, multi-purpose solution(MPS), bacteria.———————————————————————- Page 286あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(86)消毒をしないことの危険性が指摘されている7).CL の消毒にはさまざまな方法があるが,最近は煮沸を行わないコールド消毒が主流になっている.そのなかでも,CL の洗浄・すすぎ・消毒・保存を 1 本で済ませられるマルチパーパスソリューション(MPS)は,近年使用者が急増している.しかし,2003 年には武藤らによって,MPS を用いた消毒を行っていた SCL ユーザーがアカントアメーバ角膜炎を発症した8)ことが報告された.MPS を使用したコールド消毒が簡便な CL 消毒システムとして一般的になるなかで,MPS 使用者のアカントアメーバ角膜炎の発症が懸念される.今回筆者らはアカントアメーバ角膜炎の 2 症例を経験し,MPS を使用していたレンズケース内容液および SCL そのものの汚染状態を検討し興味ある結果を得たので,これを報告する.I症例〔症例1〕47 歳,女性.主訴:右眼)眼痛・充血.既往歴・家族歴:特記事項なし.現病歴:平成 19 年 10 月 17 日右眼痛を主訴に近医を受診し,抗菌薬および 0.1%フルオロメトロン点眼を処方されて症状は一時軽快した.しかし発症 9 日目に再び強い眼痛を生じ,毛様充血と偽樹枝状角膜炎を呈することからアカントアメーバ角膜炎が疑われ,発症 13 日目に京都府立医科大学附属病院眼科(以下,当科)に受診となる.2 週間頻回交換型SCL を毎日終日装用しており,MPS(ロート C キューブツ黴€ ソフトワンクールR)での洗浄・消毒を行っていたが,使用上の注意点である「こすり洗い」をしていなかった.レンズケースは毎日水道水を用いて洗浄していたが,同じく使用上の注意点である「レンズケースの乾燥」を実施していなかった.初診時(10 月 29 日),右眼視力 0.02(0.04×sph 5.0 D( cyl 1.25 Dツ黴€ Ax20°),強い毛様充血,角膜中央付近の実質浮腫と細胞浸潤,角膜上皮欠損(前医にて平成 19 年 10 月 26日角膜掻爬術施行)を認めた.微生物学的検査:10 月 31 日右眼角膜掻爬を施行,直接鏡検ではアカントアメーバを検出しなかったが,11 月 22 日 2度目の角膜掻爬と直接鏡検でアカントアメーバの変性シストを検出した.角膜掻爬物の培養検査ではいずれもアカントアメーバを認めなかった.使用していた SCL の一部を切り取って位相差顕微鏡で観察したところ,その凹面にはアカントアメーバの栄養型およびシストが高密度に付着しており,1,000×666 μm の範囲に 45 個体以上のアカントアメーバ栄養型を確認した(図 1).また,使用していた SCL ケースの内容液(MPS)中に,アカントアメーバ栄養型が多数存在した(図 2).SCL ケース内容液の細菌培養検査では,Chryseobacteri-umツ黴€ meningosepticum(2+),Myroidosツ黴€ spp.(2+),Coma-monasツ黴€ acidovorans(2+),Alcaligenesツ黴€ xylosoxidans(2+),Chryseobacterium indologenes(+)の発育を認めた.治 療 経 過:10 月 31 日 よ り,0.02% polyhexamethlene biguanid(PHMB)1 時間ごとの点眼,0.3%ガチフロキサシン点眼ツ黴€ 4 回/日,1%ピマリシン眼軟膏ツ黴€ 6 回/日,イトラコナゾール 100 mg/日 内服投与,ミコナゾール 400 mg/日 静脈内投与にて治療を開始した.PHMB は点眼時の刺激感が強く,点眼の継続が困難であったため 8 週目より PHMB を中止し,0.02%クロルヘキシジン点眼に変更した.角膜の輪状図 1 SCL表面に高密度に付着しているアカントアメーバSCL をスライドグラス上に凹面を上にして置き,カバーグラスで覆わず,位相差顕微鏡にて撮影した.左下はその拡大像である.特徴的な核,カリオソーム,棘状偽足を有して運動するアカントアメーバ栄養型(赤矢印で示す)を認める.アカントアメーバ栄養型は SCL 凹面に付着して運動している.———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,201087(87)混濁および自覚症状は徐々に軽快し,平成 20 年 4 月には矯正視力 0.9 に改善した.〔症例2〕19 歳,女性.主訴:両眼)充血,眼痛,羞明.既往歴・家族歴:特記事項なし.現病歴:平成 19 年 12 月 18 日に左眼充血,12 月 25 日右眼充血・眼痛が出現し,近医を受診,0.3%ガチフロキサシン点眼 6 回/日を処方された.症状が軽快せず,偽樹枝状角膜炎,実質への細胞浸潤を生じたため,1 月 24 日当科に紹介された.カラー SCL を週 2 日程度,終日装用し,MPS(ロート C キューブツ黴€ ソフトワンR)を用いて CL の洗浄・保存を行っていたが,こすり洗いをしていなかった.ケースを水道水で毎日洗っていたが,乾燥させていなかった.初診時,両眼に角膜実質浸潤,放射状角膜神経炎,角膜浮腫を認めた(図 3).微生物学的検査:1 月 28 日両眼角膜掻爬を施行,直接鏡検では病原体を検出しなかったが,培養検査にてアカントアメーバを検出した.位相差顕微鏡で CL を観察したところ,CL に付着する多数のアカントアメーバ栄養型およびシストを認め,CL ケース内容液(MPS)の直接鏡検でも多数のアカントアメーバ栄養型およびシストを認めた.SCL ケース内容液の細菌培養検査結果,Pseudomonas aeruginosa(3+),Serratiaツ黴€ marcescens(3+),Chryseobac-teriumツ黴€ indologenes(3+),Sphingobacteriumツ黴€ spiritivorum(3+)を検出した.治療経過:1 月 28 日当科にて両眼一度ずつ角膜掻爬を行い,1 月 29 日より 0.02% PHMB 点眼を両眼 1 時間ごとおよび 0.3%ガチフロキサシン点眼ツ黴€ 両眼 4 回/日,1%ピマリシン眼軟膏ツ黴€ 両眼 4 回/日,イトラコナゾール 100 m g/日ツ黴€ 内服投与,ミコナゾール 400 m g/日ツ黴€ 点滴投与にて治療を開始した.その後は薬物治療にて自覚症状,および角膜混濁は徐々に軽快した.平成 20 年 3 月に,視力は両眼とも矯正 1.0 に回復した.II考按MPS は CL の消毒と保存を目的として開発され,近年普及してきたものであるが,今回の症例では患者が MPS を入れて使用していた CL ケース内容液中にアカントアメーバの著しい増殖および多数の細菌を確認し,アカントアメーバがSCL に一様に高密度に付着している像を認めた.これまで図 2 コンタクトレンズ凹面に付着しているアカントアメーバ栄養型およびその周囲の細菌叢SCL の中央部を剃刀で切り取り,スライドグラス上に置き,カバーグラスで覆って位相差顕微鏡で撮影した.左図ではアカントアメーバ栄養型は細菌の菌塊に接着し,細菌を貪食している.右図はアカントアメーバ栄養型の 2 分裂前のステージで,アカントアメーバは SCL 上で分裂し増殖していると考えられた.図 3カラーSCL装用による両眼性アカントアメーバ角膜炎(症例 2)(a:右眼,b:左眼)ab———————————————————————- Page 488あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(88)にも患者の使用していた CL を光学顕微鏡で観察した報告9)や,走査型電子顕微鏡で観察した報告10)があり,アカントアメーバのシストが CL に接着している像のほか,細菌や真菌などが多数認められている.アカントアメーバ角膜炎の発症メカニズムに関しては,このように汚染された CL を装用することによってアカントアメーバが角膜に接触する率が高くなり,CL の長時間装用など何らかの原因でできていた角膜上皮障害部分からアカントアメーバが侵入し,角膜に感染が成立するのではないかと考えられている2,11).今回の 2 症例においても CL ケース内の MPS 中で多数の細菌とアカントアメーバを認め,SCL の一部を切り取って観察した 1,000×666 μm の範囲に 45 個体以上のアカントアメーバ栄養型が確認できた.アカントアメーバは SCL 表面全体に一様に存在しており,SCL の表面積を約 200 mm2として計算すると,SCL 表面には 1 枚当たり約 13,500 個体のアカントアメーバ栄養型が付着していたことになる.おびただしい数のアカントアメーバが付着した SCL を介して角膜表面にアカントアメーバが接触し,角膜への感染をきたしたと推察される.アカントアメーバは栄養型およびシストの両形態が同時に観察され,栄養型の分裂像も存在したことより,MPS 内で活発に増殖していたと考えられる.CL ケース内容液中にはアカントアメーバのほかに多種の細菌を認め,その病原性は低いと考えられたが,細菌が餌となってアメーバの増殖を促していたと推測される.CL の消毒方法に関する過去の報告では,規定されたとおりの適切なケア方法で 2 週間使用した disposableツ黴€ SCL では,健常者 18 例 36 眼中に 1 例もアメーバは検出されなかっ た12)という報告がある.一方で,角膜炎を発症していないCL 装用者の約 10%において,使用していた保存液がアカントアメーバによって汚染されていることが報告され,水道水との接触の機会があることや,煮沸消毒を行っていないことが指摘されている7).アカントアメーバは熱に弱く13),煮沸消毒は有効である.煮沸消毒をしないケア方法では CL 保存液中に餌となる細菌類も多く,アメーバが増殖しやすい条件になると考えられる.煮沸をしないコールド消毒としては,塩化ポリドロニウム製剤,PHMB 製剤,過酸化水素製剤,ポビドンヨード製剤などがあり,日本で市販されている MPS の多くは消毒成分として塩化ポリドロニウムあるいは PHMB が 0.7 1.1 ppm含まれている.PHMB はアカントアメーバ角膜炎の治療に用いられる消毒剤であるが,MPS 内の PHMB 濃度は低い.消毒剤のうち,アカントアメーバに対しては 2 ステップ使用の過酸化水素製剤が有効であるという報告16),ポビドンヨード製剤が有効であるという報告がある17)が,MPS を保存液として使用するだけでは角膜炎を予防できない可能性が高い.保存液の汚染は,CL 装用頻度によっても異なることが推測される.不定期にしか装用せず,保存液を毎日交換していない場合では,CL ケース内での細菌とアカントアメーバの増殖を助長する可能性がある.症例 2 はカラー SCL 使用者であるが,週に 1 2 回しか使用しないため,使用ごとに保存液を交換していても CL ケース内で微生物が増殖しやすいと考えられた.今回の 2 症例で使用していた MPS はいずれもロート CキューブR製品で,指で蓋を開閉するワンタッチ式ボトルであった.このような形状は CL 使用者には簡便で使いやすいという利点があるものの,ねじ式の蓋と比べて指が注ぎ口に触れやすく,ボトル内で微生物が増殖する危険を有する.今回は 2 症例ともに MPS の残量が少なく,使用開始時期を覚えていなかったことより,開封後長く経過するなかで MPSそのものが汚染された可能性が高いと考えられた.その後,本製品は改良され,現在は開閉の際に手指が注ぎ口に触れにくい形状となっている.MPS の汚染は角膜感染症に直結するということについて,医療関係者,CL 使用者,メーカーのすべてが認識しなければならない.今回の 2 症例ともに CL のこすり洗いとレンズケースの乾燥を行っていなかったが,CL のすすぎやこすり洗いを行うことで付着している微生物の量を減らすことができる14,15).アカントアメーバ角膜炎の予防のためには,MPS をはじめ,ケア方法に対するユーザーの認識を高める必要がある.今後は,消毒効果がより高く,簡便かつ安全な CL のケア用品の開発が期待される.文献 1) Naginton J, Watson PG, Playfair TJ et al:Amoebic infec-tion of the eye. Lancet 2:1537-1540, 1974 2) 石橋康久,松本雄二郎,渡辺亮子ほか:Acanthamoeba keratitis の 1 例─臨床像,病原体検査法および治療についての検討.日眼会誌 92:963-972, 1988 3) Radfordツ黴€ CF,ツ黴€ Lehmannツ黴€ OJ,ツ黴€ Dartツ黴€ JKツ黴€ etツ黴€ al:Acanthamoeba keratitis:Multicentre survey in England 1992-6. Br J Ophthalmol 82:1387-1392, 1998 4) 石橋康久,木村幸子:コンタクトレンズ装用による角膜感染症.あたらしい眼科 6:825-830, 1989 5) Radford CF, Bacon AS, Dart JK et al:Risk factors for acanthamoeba keratitis in contact lens users:a case-con-trol study. Br Med J 310:1567-1570, 1995 6) Stehr-Green JK, Bailey TM, Brandt FH:Acanthamoeba keratitis in soft contact lens wearers, a case-control study. JAMA 258:57-60, 1987 7) 渡邉亮子,石橋康久,本村幸子ほか:コンタクトレンズ装用者保存液からのアカントアメーバの培養について.日眼会誌 98:477-480, 1994 8) 武藤哲也,小林顕,三輪さおりほか:頻回交換レンズ(FRCL)のマルチパーパスソルーション(MPS)ケア症例に———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,201089(89)みられたアカントアメーバ角膜炎の一例.眼科 45:1871-1875, 2003 9) Johns KJ, Head WS, Parrish CM et al:Examination of hydrophilic contact lenses with light microscopy to aid in the diagnosis of Acanthamoeba keratitis. Am J Ophthal-mol 108:329-331, 1989 10) 石橋康久,渡邉亮子,加畑隆通ほか:アカントアメーバ角膜炎患者が装用しているコンタクトレンズの走査型電子顕微鏡による観察.日コレ誌 33:63-67, 1991 11) Clarke DW, Niederkorn JY:The Pathophysiology of Acanthamoeba keratitis. TRENDS in Parasitology 22:175-180, 2006 12) 李 ,岡田克樹,石橋康久ほか:使用済み Disposable Soft Contact Lens からのアカントアメーバの検出.眼紀 46:1136-1138, 1995 13) 石橋康久,河野恵子,本村幸子ほか:Acanthamoebaツ黴€ kera-titis に対するタップソークRおよび温度の影響.日コレ誌 30:257-260, 1988 14) 小野慎也,斉藤秀典,溝口晋弘ほか:Multipurpose Solu-tion の擦り洗いの回数および濯ぎ量の違いによる消毒効果の比較.日コレ誌 45:193-197, 2003 15) 宮田信之:マルチパーパスソリューションを用いたソフトコンタクトレンズ消毒における濯ぎ及び擦り洗いの必要性.横浜医学 54:17-24, 2003 16) Beattie TK, Tomlinson A, Seal DJ:Anti-Acanthamoeba e cacy in contact lens disinfecting systems. Br J Ophthal-mol 86:1319-1320,2002 17) 柳井亮二,植田喜一,田尻大治ほか:アカントアメーバおよびウイルスに対するポビドンヨード製剤の有効性.日コレ誌 47:37-41, 2005***

わたしの工夫とテクニック 白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルの試作

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1(83)ツ黴€ 830910-1810/10/\100/頁/JCOPYはじめに角膜混濁が強く範囲の広い症例は白内障手術にとって難症例である1 3).しかし,通常の白内障手術に比べて経験する機会は少ないので,手術のコツなどを習得するには時間を要する.角膜混濁の症例を多数経験できれば,混濁の部位や範囲によって各手術操作の難易度がわかり,実際の臨床で有益と考える.現在,眼科領域の手術教育にはウエットラボ用の豚眼が広く利用されている.今回,安全かつ簡単な方法でウエットラボ用の豚眼で角膜混濁モデルを試作したので,その方法について解説する.角膜混濁の作製方法ウエットラボ用の豚眼を用意し,ジアテルミーを用いて角膜混濁を作製した.1. ジアテルミー装置今回使用したジアテルミーは,超音波白内障手術器械の一つである OS3R(Oertli 社,Switzland)に標準装備されている装置である.このジアテルミー(500 kHz)には,結膜止血や前 切開を目的としたエレクトリックカプスロトミーなど用途別に異なる電極がある.それぞれの電極の先端の直径は異なるので,凝固斑の大きさも違ってくる.結膜止血用ジアテルミーの出力は最大 8.0 W,カプスロトミー用のモードは REGULAR:6.5 W と HIGH:9.9 W の 2種類がある.どれを選択しても角膜上皮を凝固することができる.高周波電流による熱凝固なので,他のジアテルミー装置でも代用は可能である.2. 豚眼角膜の混濁作製電極の先端を角膜上皮に軽く圧迫した状態で,フットスイッチを押し凝固した.凝固斑ができたら先端を角膜から離し,適当な間隔をあけ連続して凝固斑をつくり,角膜の混濁を作製した.一つの凝固斑は数秒で作ることができる.電極の先端を角膜上皮に押し付けたまま円を描くように操作しても,横にずらしても凝固による混濁を作ることが可能である.ただし,強く凝固しすぎると,角膜が収縮して透明部にしわができるので注意が必要である.数分で,ジアテルミーを使用することにより,角膜上のさまざまな部位に適当な範囲の混濁を自在に作製することができた.具体的に試作した角膜混濁モデルを写真で示す(図 1,2).*Satoru Joko:武蔵野赤十字病院眼科〔別刷請求先〕上甲覚:〒180-8610 武蔵野市境南町1-26-1武蔵野赤十字病院眼科あたらしい眼科 27(1):83 84,2010わたしの工夫とテク ックツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ 白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルの試作Trial Manufacture of Corneal Opacity Model in Pig Eyes for Use in Cataract Operation Practice上甲覚*ジアテルミーを用いて,白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルを試作した.短時間(数分)で,ジアテルミー凝固斑の集合からなる混濁を,角膜上のどの部位にも適当な範囲の広さで,自在にしかも簡単に作製することができた.この人工的に作った角膜混濁部位では前房中の視認性が悪いので,角膜混濁症例に対する白内障手術手技の習得に有用なモデル眼になると考えた.要約図 1 角膜上皮に凝固斑をつくるため電極の先端を押しあて,約2分で混濁が角膜中央部に出来上がった前眼部写真(カプスロトミー用の電極を使用)———————————————————————- Page 284あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(84)通常の照明下にて顕微鏡から前房中をみると,人工的に作った角膜混濁部位下は視認性が悪い.おわりにこれまで,豚眼の白内障モデルとして,硬い水晶体核をつくり手術の練習効果を向上させる報告がある4 7).本法による角膜混濁モデルに水晶体の硬化を併用すると,より実践的なウエットラボを行うことが可能となり,さらに角膜混濁症例に対する白内障手術手技の習得に有用と考えられた.文献 1) 上甲覚:Hansen 病性ぶどう膜炎患者の白内障手術(1)術前の基礎.あたらしい眼科 26:343-344, 2009 2) 上甲覚:Hansen 病性ぶどう膜炎患者の白内障手術(2)実践編.あたらしい眼科 26:491-492, 2009 3) 上甲覚,堀江大介:片眼失明のハンセン病性ぶどう膜炎患者の白内障手術成績.臨眼 63:465-469, 2009 4) 黒坂大次郎:ウエットラボ用の豚眼白内障モデル(1)核処理の練習用.あたらしい眼科 15:1553-1554, 1998 5) 八田史郎,松浦一貴,長田正夫ほか:代用核素材(昆布豆)と摘出豚眼を用いた超音波水晶体乳化吸引術の練習方法.眼科 41:815-821, 1999 6) Mekada A, Nakajima J, Nakamura J et al:Cataract sur-geryツ黴€ trainingツ黴€ usingツ黴€ pigツ黴€ eyesツ黴€ツ黴€ lledツ黴€ withツ黴€ chestnutツ黴€ ofツ黴€ vari-ous hardness. J Cataract Refract Surg 25:622-625, 1999 7) 德田芳浩:豚眼実習における模擬核の作り方─カートンNRによる核の作製─.眼科手術 20:85-87, 2007図 2 電極の先端を角膜上皮に押し付けた状態で横にずらして,角膜上部に混濁を作製☆ ☆ ☆

眼研究こぼれ話 1.はじめに

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,201071眼研究こぼれ話(71)私は 1975 年家族と共にワシントン D.C. にある米国国立衛生研究所(Nationalツ黴€ Institutesツ黴€ ofツ黴€ Health,以下NIH と略す)内の国立眼研究所(National Eye Insti-tute,以下 NEI と略す)に留学してから約 3 年間,桑原先生の研究室で,水晶体の超微細構造を透過型と走査型の電子顕微鏡を用いて解析し,白内障の成因について研究する仕事をしておりました.桑原先生(通称Dr.ツ黴€ Kuwabara)には,NIH においての眼科的研究はもちろんのこと,日本と米国の風俗習慣の違い,日常生活におけるものの考え方の違いなど,いろいろな社会的なことも教えていただきました.ハロウィンの子供たちの仮装やもてなし方,クリスマスの大きなターキーの焼き方やさばき方,ドールハウスの歴史や実際のつくり方,ワシントンの国立動物園の稀少な動物を見る楽しみ,自宅で催すオープンハウスでの人のもてなし方など,日本ではなかなか経験できないことを数多く教えていただき,大変勉強になり楽しかったことを覚えています.Dr. Kuwabara は,研究でも日常生活でも,いろいろなことに興味をもたれ,積極的に社会に目を向ける方でした.研究室では写真を納得がいくまでご自分の手で現像,焼付けをされていましたし,日常生活では愛用のカメラを常に持ち歩き,目に付いた瞬間をまめに撮影され,その写真を見ながら社会のさまざまなことを説明してくださいました.その後 1980 年ごろ,Dr. Kuwabara が,故郷松山の新聞に書かれていた若かりし頃の米国の研究生活についての「こぼれ話」(実に今から約半世紀前のことです!)を 108 篇も毎回送ってきてくださいました.その文面からは医学研究に対する情熱が感じられると同時に,それを取り巻く社会情勢の厳しさなど,私達留学生には計り知れない米国の現実を知ることができました.このたび,この貴重な「こぼれ話」を久しぶりに読み直す機会があり,懐かしさと同時に新鮮さが感じられました.私と同時期に NEI で仕事をされていた玉井信先生(前東北大学眼科教授),大西克尚先生(前和歌山医科大学眼科教授),田中稔先生(順天堂大学浦安病院眼科教授)の先生方にこのエッセイの転載について相談したところ賛同をしてくださり,関係各位のご協力を得て,「あたらしい眼科」の誌上に再登場することがここに実現したところです.この 30 年前(当時 58 歳)に先生が書かれた「こぼれ話」を,当時の新聞に掲載された原文のまま皆様にお届けいたします.電子顕微鏡によって身体の組織の超微細構造が次々に映し出され,生化学的,生理学的な研究へと発展していくことで,人体のさまざまな変化を捉えていくことに情熱をかけた時代の風を感じていただくと共に,一流の研究者が世界中から集まるハーバード大学,NIH の中で,世界眼病理学会の第一人者としてご活躍されていた Dr.ツ黴€ Kuwabara のお人柄に触れていただけたらと思います.全 108 話からの選ばれた 30 篇の珠玉のエッセイをどうぞお楽しみください. 公立昭和病院 参与幸田富士子今月より,かつて眼病理学の世界的権威であった桑原登一郎先生のエッセイ集,「眼研究こぼれ話」の掲載が始まります.これは,ある地方新聞の紙上に連載されていた先生のお原稿の中から,「あたらしい眼科」編集委員間の投票のうち,特に人気のあった 30 篇を選出したものです.原本は,先生の愛弟子であられた幸田富士子先生からご提供いただいたもので,先生のご協力なしにこの企画はあり得ませんでした.この場を借りて厚く御礼を申し上げます.残念ながら,私自身は先生にお会いする機会はありませんでしたが,どのエッセイからも先生が常日頃持ち続けられていた未知への探究心がうかがわれます.科学者としてのスタンスを改めて学ぶいい機会かと思います.これからの 2 年半,毎月届けられるエッセイをどうかお楽しみにお待ちください. 愛媛大学医学部眼科学 教授大橋裕一桑原登一郎先生の「眼研究こぼれ話」の連載に寄せて———————————————————————- Page 272あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010眼研究こぼれ話(72)私は,自身が 1979 年に米国留学したときに,桑原登一郎先生のお名前を初めて知りました.当時,米国在住の日本人のようなお名前で世界に誇れる先生は Jinツ黴€ Hツ黴€ Kinoshita そして Toichiroツ黴€ Kuwabara のお二人でした.このお二人は National Eye Institute の重鎮として数多くの研究者を指導しておられましたので,米国留学する日本人は「おまえは Toichiro を知っているか」とよく聞かれたものです.桑原先生は語学が決して堪能であったわけではないと聞き及んでおりますが,先生の講演はいつも米国人の聴衆で一杯であったようです.皆さんが Toichiro の講演内容を知りたくて,Toichiro の英語を勉強したという逸話もあるくらいです.先生の視覚研究についてのお考えが伝わる機会を幸田富士子先生,大橋裕一先生からいただき,編集主幹として喜びに耐えません.今の時代に読んでも新鮮な話ばかりであり,特に若い世代の研究者には役に立つ何かがあるように思います. 京都府立医科大学眼科学 教授木下茂■「眼研究こぼれ話」(桑原登一郎 著)30篇の構成一覧■① はじめに② 眼とカメラの比較F3.5 ていどの明るさ③ 恩師コーガン教授ハーバード大ハウ研究所で④ テニュア米の医学研究システム⑤ 角膜の生化学印象深いキノシタ君の研究⑥ 角膜の透明度研究生物,物理に 2 学説⑦ 電気生理学の研究富田,金子両氏の偉業⑧ 眼の反射装置の研究動物の眼が光るのは…⑨ 医学研究の実績小さな蓄積の上に⑩ 国立衛生研究所(NIH)最高私設と非能率が同居⑪ NIH の臨床研究アルソップ氏の遺稿⑫ 角膜表面の構造ウジムシが住める水膜⑬ レンズの構造老化の次に来る白内障⑭ レンズの構造核が消える眼の細胞⑮ 医学講義について生徒が先生を“採点”⑯ 網膜の構造(上)コンピューター配線のよう⑰ 網膜の構造(下)黄斑部に頼る視力⑱ 網膜の光障害照明は薄暗くてもよい⑲ 中心性網膜症の研究太陽を見つめる危険性⑳ 冬眠動物の細膜期間中は完全に“盲目” 光凝固療法眼の手術にメスの効果 医学研究者の質金銭で解決できぬ問題 ビタミン E の研究老化を防ぐ効果 緑内障の治療効果あるマリファナ 網膜血管の研究落葉の栞にヒント 糖尿病性網膜症幽霊細胞が直接的原因 ハロウィーンのお化け「第三眼」持つハ虫類 フリーデンウォールド賞視覚研究家の中から 偉大な学者たちノーベル賞受賞者の中で 結びご愛読を感謝して☆ ☆ ☆

眼研究こぼれ話 桑原登一郎先生の「眼研究こぼれ話」の連載に寄せて

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,201071眼研究こぼれ話(71)私は 1975 年家族と共にワシントン D.C. にある米国国立衛生研究所(Nationalツ黴€ Institutesツ黴€ ofツ黴€ Health,以下NIH と略す)内の国立眼研究所(National Eye Insti-tute,以下 NEI と略す)に留学してから約 3 年間,桑原先生の研究室で,水晶体の超微細構造を透過型と走査型の電子顕微鏡を用いて解析し,白内障の成因について研究する仕事をしておりました.桑原先生(通称Dr.ツ黴€ Kuwabara)には,NIH においての眼科的研究はもちろんのこと,日本と米国の風俗習慣の違い,日常生活におけるものの考え方の違いなど,いろいろな社会的なことも教えていただきました.ハロウィンの子供たちの仮装やもてなし方,クリスマスの大きなターキーの焼き方やさばき方,ドールハウスの歴史や実際のつくり方,ワシントンの国立動物園の稀少な動物を見る楽しみ,自宅で催すオープンハウスでの人のもてなし方など,日本ではなかなか経験できないことを数多く教えていただき,大変勉強になり楽しかったことを覚えています.Dr. Kuwabara は,研究でも日常生活でも,いろいろなことに興味をもたれ,積極的に社会に目を向ける方でした.研究室では写真を納得がいくまでご自分の手で現像,焼付けをされていましたし,日常生活では愛用のカメラを常に持ち歩き,目に付いた瞬間をまめに撮影され,その写真を見ながら社会のさまざまなことを説明してくださいました.その後 1980 年ごろ,Dr. Kuwabara が,故郷松山の新聞に書かれていた若かりし頃の米国の研究生活についての「こぼれ話」(実に今から約半世紀前のことです!)を 108 篇も毎回送ってきてくださいました.その文面からは医学研究に対する情熱が感じられると同時に,それを取り巻く社会情勢の厳しさなど,私達留学生には計り知れない米国の現実を知ることができました.このたび,この貴重な「こぼれ話」を久しぶりに読み直す機会があり,懐かしさと同時に新鮮さが感じられました.私と同時期に NEI で仕事をされていた玉井信先生(前東北大学眼科教授),大西克尚先生(前和歌山医科大学眼科教授),田中稔先生(順天堂大学浦安病院眼科教授)の先生方にこのエッセイの転載について相談したところ賛同をしてくださり,関係各位のご協力を得て,「あたらしい眼科」の誌上に再登場することがここに実現したところです.この 30 年前(当時 58 歳)に先生が書かれた「こぼれ話」を,当時の新聞に掲載された原文のまま皆様にお届けいたします.電子顕微鏡によって身体の組織の超微細構造が次々に映し出され,生化学的,生理学的な研究へと発展していくことで,人体のさまざまな変化を捉えていくことに情熱をかけた時代の風を感じていただくと共に,一流の研究者が世界中から集まるハーバード大学,NIH の中で,世界眼病理学会の第一人者としてご活躍されていた Dr.ツ黴€ Kuwabara のお人柄に触れていただけたらと思います.全 108 話からの選ばれた 30 篇の珠玉のエッセイをどうぞお楽しみください. 公立昭和病院 参与幸田富士子今月より,かつて眼病理学の世界的権威であった桑原登一郎先生のエッセイ集,「眼研究こぼれ話」の掲載が始まります.これは,ある地方新聞の紙上に連載されていた先生のお原稿の中から,「あたらしい眼科」編集委員間の投票のうち,特に人気のあった 30 篇を選出したものです.原本は,先生の愛弟子であられた幸田富士子先生からご提供いただいたもので,先生のご協力なしにこの企画はあり得ませんでした.この場を借りて厚く御礼を申し上げます.残念ながら,私自身は先生にお会いする機会はありませんでしたが,どのエッセイからも先生が常日頃持ち続けられていた未知への探究心がうかがわれます.科学者としてのスタンスを改めて学ぶいい機会かと思います.これからの 2 年半,毎月届けられるエッセイをどうかお楽しみにお待ちください. 愛媛大学医学部眼科学 教授大橋裕一桑原登一郎先生の「眼研究こぼれ話」の連載に寄せて———————————————————————- Page 272あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010眼研究こぼれ話(72)私は,自身が 1979 年に米国留学したときに,桑原登一郎先生のお名前を初めて知りました.当時,米国在住の日本人のようなお名前で世界に誇れる先生は Jinツ黴€ Hツ黴€ Kinoshita そして Toichiroツ黴€ Kuwabara のお二人でした.このお二人は National Eye Institute の重鎮として数多くの研究者を指導しておられましたので,米国留学する日本人は「おまえは Toichiro を知っているか」とよく聞かれたものです.桑原先生は語学が決して堪能であったわけではないと聞き及んでおりますが,先生の講演はいつも米国人の聴衆で一杯であったようです.皆さんが Toichiro の講演内容を知りたくて,Toichiro の英語を勉強したという逸話もあるくらいです.先生の視覚研究についてのお考えが伝わる機会を幸田富士子先生,大橋裕一先生からいただき,編集主幹として喜びに耐えません.今の時代に読んでも新鮮な話ばかりであり,特に若い世代の研究者には役に立つ何かがあるように思います. 京都府立医科大学眼科学 教授木下茂■「眼研究こぼれ話」(桑原登一郎 著)30篇の構成一覧■① はじめに② 眼とカメラの比較F3.5 ていどの明るさ③ 恩師コーガン教授ハーバード大ハウ研究所で④ テニュア米の医学研究システム⑤ 角膜の生化学印象深いキノシタ君の研究⑥ 角膜の透明度研究生物,物理に 2 学説⑦ 電気生理学の研究富田,金子両氏の偉業⑧ 眼の反射装置の研究動物の眼が光るのは…⑨ 医学研究の実績小さな蓄積の上に⑩ 国立衛生研究所(NIH)最高私設と非能率が同居⑪ NIH の臨床研究アルソップ氏の遺稿⑫ 角膜表面の構造ウジムシが住める水膜⑬ レンズの構造老化の次に来る白内障⑭ レンズの構造核が消える眼の細胞⑮ 医学講義について生徒が先生を“採点”⑯ 網膜の構造(上)コンピューター配線のよう⑰ 網膜の構造(下)黄斑部に頼る視力⑱ 網膜の光障害照明は薄暗くてもよい⑲ 中心性網膜症の研究太陽を見つめる危険性⑳ 冬眠動物の細膜期間中は完全に“盲目” 光凝固療法眼の手術にメスの効果 医学研究者の質金銭で解決できぬ問題 ビタミン E の研究老化を防ぐ効果 緑内障の治療効果あるマリファナ 網膜血管の研究落葉の栞にヒント 糖尿病性網膜症幽霊細胞が直接的原因 ハロウィーンのお化け「第三眼」持つハ虫類 フリーデンウォールド賞視覚研究家の中から 偉大な学者たちノーベル賞受賞者の中で 結びご愛読を感謝して☆ ☆ ☆

インターネットの眼科応用 12.Health2.0

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010690910-1810/10/\100/頁/JCOPYHealth 2.0という概念「Health 2.0」という言葉をご存じでしょうか.Web 2.0 にインパクトを受けて新しい医療サービスを志向する動きが,まず 2006 年秋,米国の“Open Healthcare Manifesto”で最初に登場しました.マシュー・ホルト氏は「Health 2.0 とは,単純に Web 2.0 の技術を医療に応用することだと考えるべきだ.これはアウトカムや医療の質や医療改革と関係はない.」と述べ,あくまでも,Web2.0 技術の応用領域に Healthツ黴€ 2.0 の対象範囲を限定すべきと主張しました.また,医師であるスコット・シュリーブ氏は「Health 2.0 とは単に IT 技術だけの問題ではなく,広く医療全体を変革するムーブメントであると考えている.」と主張しています.彼にとってHealthツ黴€ 2.0 とは,まさにこれまでの医療のあり方全体を根底的に変える「運動」なのだといえます1).いずれにせよ,「Health 2.0」の世界では,医療を患者からの情報発信をベースに構築します.「Web 2.0」とは,インターネット上に世界中の個人が情報を発信し,蓄積された膨大な量の集合知にいつでもアクセスできる状態をいいます.Web 2.0 社会では,生産者よりも消費者が優位となり,この潮流を「情報革命」と表現します.近年提唱された「Healthツ黴€ 2.0」という概念を医療に関しても適用すべき,と欧米を中心に広がっています.自らの体験をインターネットに投稿し,経験を共有し,医師や医療機関に頼らない健康情報の獲得方法は,利用者に高いインターネットリテラシーを求めます.日本でも,「TOBYO」(図1)という闘病ブログを見れば,患者同士の経験の共有がどれだけの説得力をもって患者に届くかは容易に想像がつきます.「網膜 離」と入力すると,30 件の闘病ブログがヒットし,治療経過が患者目線で記されています2).「Health 2.0」の世界では,患者は,自分自身の健康情報をインターネット上で管理し,自分自身が病気になったときは,インターネット上の情報から自分に最適な医療機関や治療法を選択します.譬えると,ラーメン屋を選ぶ際も,医療を受ける際も同じインターネットの使い方をします.この行動の根本にあるのは,サービスを消費する際には,消費する本人が必要あるときに自分で情報を検索し,意思決定し,アクセスして,消費し,結果に対しても責任をもちたい,という考え方があります.私は,日本で「Healthツ黴€ 2.0」が根付くかどうかは二つの点で懐疑的です.一つは,日本人は,非常に商品の質に敏感であり,かつ,公平性を意識する国民性をもつからです.美味しい寿司屋があると聞けば,飛行機に乗って東京からでも大阪からでも北海道まで行く人がいます.それだけ,国内はあらゆるモノに対してフリーアクセスといえます.仮に,国内のすべての医療機関が飲食店のように格付けされ,医師すらも格付けされたとします.自分や自分の家族が癌になった場合,日本で一番の医者に診てほしいと思う気持ちは,誰にもあるでしょう.日本人の心情として,200 番目の医師に診てもらって,結果が悪かった場合,納得できるでしょうか?「もっといい医者に診てもらえれば良かった」と,死を受け入れられない可能性があります.また,日本で一番(と(69)インターネットの眼科応用第12章Health2.0武蔵国弘(Kunihiro Musashi)むさしドリーム眼 科シリーズ⑫図 1TOBYOのトップページ———————————————————————- Page 270あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010インターネット口コミ情報で認定された)の医師に診てもらえるのは,殺到する患者のなかから限られた人だけになりますが,その選別が「価格」であったり「抽選」であったりする場合,その結果を受け入れることができるでしょうか.日本人は医療に対して公平性を強く求めます.「Health 2.0」の世界観が普及すると,医療の現場が疲弊し,医療崩壊を促進させる恐れがあります.二つ目は,患者が自分自身で健康管理し,健康や治療についての相談がインターネットで完結するようになると,医療機関を受診する機会が全体的には減少するでしょう.また,ドラッグストアなどでの薬で済ませようとする患者がさらに増えるでしょうし,受診者が減少し,経営的に苦しくなる医療機関が増える可能性があります.前述した医療崩壊とは別の「医療機関崩壊」もしくは選別が始まります.以上の理由で,日本の医療現場には「Healthツ黴€ 2.0」はなじまないと考えますが,インターネットが社会に与えたインパクトは当然,医療界だけではありません.世の中の多くの企業がこの変化に対応したように,医療界全体で,もしくは各医療機関,医師各個人が対応せねばなりません.臨床の現場の仕事が徐々にインターネット上に移行し,じわりじわりと医師-患者間の関係にも変化を与えるでしょう.自己管理される医療情報「Health 2.0」の社会では,患者は生誕時からの健康情報をウェブ上に入力します.受診歴から手術歴,治療歴を患者自身がウェブ上に入力して,健康管理のツールとします.医療機関はその管理記録を見ることで,患者自身が気付かなかった病態を把握できるかもしれません.Google Health がその代表例です.Google Healthの利用者は,健康意識が高い,という評価となり,有利な医療保険を契約できる,という試みがアメリカでは始まっています.アメリカの先進性を感じます.ひとつ,面白いデータを紹介します.ライフログという言葉があります.人生のすべての出来事をデジタル情報で保存する場合,どれくらいの容量があれば足りるのか,試算した人がいます.テキストで保存する場合は,12 GB 必要になり,人生の記録は数本のメモリースティックがあれば十分です.音声保存の場合は 40 TB必要で,動画保存の場合は 700 TB あれば足りるそうです3).大容量のサーバーが安価になったため,人生をすべて動画で保存することは,あながち夢物語でもなさそうです.自動保存形式であれば,入力の手間は省けま(70)す.健康情報に関しても,医師との会話もどの病院に通院したかも,検索方法さえ確立すれば,後から把握することが可能です.「Health 2.0」の社会の究極の電子カルテといえます.ある有名な SF 漫画で,片方の眼球が外界の情報をデジタル保存できる装置に取り換えられて,インターネットの情報や過去のデータを,その模擬眼球に表示できる主人公がいました4).人間の網膜に映った画像を保存できる時代が来るかどうかはわかりませんが,録画や通信が可能な,ウェアラブル小型カメラは技術的にはすでに可能でしょう.21 世紀の医療者は,学会の場で医療界に発信するだけでなく,インターネットを使って生活者に発信することが求められます.インターネットを情報探索の道具として使うだけでなく,患者と自分を繋ぐ道具として活用しないといけません.インターネット環境は,パソコンではなく,携帯電話や iPhone であったり,ゲーム機のような端末になるかもしれません.手入力ではなく,音声入力,画像自動録画のような手法になるかもしれません.今の世の中は情報革命の真っただ中です.医療者の感覚よりも世間の動きは速いようです.「Health 2.0」の波は日本にも今以上に普及することは間違いありません.「Health 2.0」に医療者が対応する方法は前号でも取り上げましたが,二つある,と考えます.1) 医療者が,インターネットに散乱する医療情報の格付けをします.2) 医療プロフェッショナル向けの情報を,インターネット上の閉じた空間で共有し,医療者の医療知識の底上げを図ります.次号では,2)の具体例を紹介します.【追記】NPO 法人 MVC(http://mvc-japan.org)では,医療というアナログな行為と眼科という職人的な業を,インターネットでどう補完するか,さまざまな試みを実践中です.MVCの活動に興味をもっていただきましたら,k.musashi@mvc-japan.org までご連絡ください.MVC-online からの招待メールを送らせていただきます.先生方とシェアされた情報が日本の医療水準の向上に寄与する,と信じています.文献 1) http://www.tobyo.jp/tobyoblog/2007/349.html 2) http://www.tobyo.jp/ツ黴€ 3) 中尾彰宏:第 3 回日本遠隔医療学会 WEB 医療分科会「遠隔医療における WEB の役割」,2009 4) http://www.buichi.com/works/goku/index_goku.html

硝子体手術のワンポイントアドバイス 80.Uveal effusionに対する強膜開窓術(初級編)

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010670910-1810/10/\100/頁/JCOPYはじめに硝子体手術ではないが,今回は uvealツ黴€ e usion に対する強膜開窓術について述べる.Uveal e usion は 1963年に Schepens らによって初めて報告された疾患で,体位変換によって網膜下液が移動する滲出性網膜 離を特徴とする1)(図1).Gass はその病態について強膜の肥厚による経強膜的な蛋白拡散障害が原因で,脈絡膜内に組織液が貯留し,二次的に滲出性網膜 離が発症すると考えた2).強膜が主病因であるとの仮説に基づき考案された強膜開窓術は内外での追試により有効性が認められ,現在では uveal e usion 治療の第一選択となっている. Uveal e usionに対する強膜開窓術全周の結膜を切開し,4 直筋に制御糸をかけ,各象限に一辺が約 4 5 mm の強膜半層弁を作製する(図2).その後,弁下の強膜をブロック状に切除し,脈絡膜を露出させる(図3).このとき,症例によっては少量の脈絡膜上腔液が排出されることがある.強膜開窓時の注意点としては,脈絡膜を穿孔しないことである.通常はゴルフ刃を用いて丁寧に行えば穿孔する危険は少ないが,過度に眼球を圧迫しないように心がける.最後に強膜弁を2 糸縫合する(図4).一般に強膜開窓部位は 4 象限に施行するが,2 象限で治癒することも多い. 後再発例に対する対 強膜開窓術後に,強膜弁周囲に Tenonツ黴€ が癒着し,(67)その結果 uvealツ黴€ e usion が再発することがある.再発例に対する治療としては以下のような方法が考えられる.1) 強膜開窓部位が 2 カ所の場合は,再手術時に 4 カ所に増やす.2)強膜開窓部位をより大きくする.3)強膜切除部位の縁をジアテルミーで凝固する.4) 強膜弁作製部位に 0.04%マイトマイシンを 3 分間塗布する.筆者らは,強膜開窓部位の瘢痕癒着により再発をくり返した難治性 uvealツ黴€ e usion の 1 例に対し,術後の瘢痕癒着目的で羊膜パッチを併用した強膜開窓術を行い良好な結果を得ている3).文献 1) Schepens CL, Brockhurst BJ:Uveal e useion 1. Clinical picture. Arch Ophthalmol 70:189-201, 1963 2) Gassツ黴€ JDM,ツ黴€ Jallowツ黴€ S:Idiopathicツ黴€ serousツ黴€ detachmentツ黴€ ofツ黴€ the choroid, ciliary body and retina(Uveal e useion syn-drome). Ophthalmology 89:1018-1032, 1982 3) 戸成匡宏,植木麻理,岡本加苗ほか:羊膜パッチ併用強膜開窓術が奏効した難治性 uveal e usion の 1 例.眼臨99:736-739, 2005硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載80ツ黴€ツ黴€ ツ黴€Uvealツ黴€ツ黴€ ツ黴€e usion に対するツ黴€ツ黴€ ツ黴€強膜開窓術(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図 2強膜半層切開ゴルフ刃を用いて強膜半層弁を作製する.図 3強膜開窓術弁下の強膜をブロック状に切除し,脈絡膜を露出させる.図 4強膜弁縫合強膜弁を 2 糸縫合する.図 1 Uveal e usionの眼底写真偽乳頭浮腫を伴う全象限にわたる滲出性網膜 離を認め,体位によって網膜下液が移動する.

第10回眼科DNAチップ研究会報告書

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.27,No.1,2010650910-1810/10/\100/頁/JCOPYはじめに今年(2009年)で第10回を迎える眼科DNAチップ研究会が第63回日本臨床眼科学会にて2009年10月9日に行われた.一般演題4題,教育講演1題,そして特別講演1題と内容の豊富なプログラムであり,バイオインフォマティクスに関する高度な研究内容を聞くことができた.本研究会は発足当時に眼科DNAチップ研究会と名づけられ,研究会では毎回高度な研究内容が発表されてきた.現在に至るまでにバイオインフォマティクス的研究手法は進化しており,対象は初期には遺伝子が主であったが,現在ではトランスクリプトーム解析,プロテオーム解析,グライコーム解析,メタボローム解析などに拡大発展している.本研究会では「DNAチップ」に限らずに幅広く研究会を発展させたいと考えており,幅広いバイオインフォマティクス分野における演題を募集している.一般講演京都大学の中西秀雄先生は「DNAチップを用いた変性近視感受性遺伝子へのアプローチ」について発表された.強度近視は環境因子とともに遺伝因子の関与が指摘されており,家系を用いた連鎖解析によってこれまで多数の近視感受性領域が報告されているが,現時点では具体的な近視感受性遺伝子は明らかになっていない.近年の科学技術・バイオインフォマティクスの進歩ならびに公的データベースの充実に伴い,一塩基多型(SNP)を用いた大規模な全ゲノム関連解析(GWAS)が可能となり,眼科領域でも加齢黄斑変性症,落屑症候群における遺伝子多型の強い関連が明らかになっている.本講演ではアジア人において特に重要な疾患である強度近視の感受性遺伝子を明らかにすべく,演者らが行ったGWASの具体例を示しながら,今後の方針とともにその理想と現実を概説された.京都府立医科大学の上田真由美先生は「Steavens-Johnson症候群(SJS)とEP3遺伝子多型の相関ならびにEP3機能の解析」について発表された.全遺伝子アプローチによる遺伝子解析(GWAS)にて,SJSにおいてEP3遺伝子領域との相関が確認され,iselectカスタムチップとダイレクトシークエンスにてEP3遺伝子領域の6SNPsとの相関が確認された.遺伝子機能解析においては,結膜上皮にEP3遺伝子の発現が確認され,またEP3アゴニストはpolyIC刺激下の結膜上皮細胞のCXCL11,CCL20,IL6の産生を抑制し,さらに結膜弛緩症や翼状片患者の結膜上皮に発現していたEP3蛋白が慢性期SJS患者の結膜では消失していた.以上よりEP3が眼表面炎症制御に関与している可能性があることを示された.京都府立医科大学の池田陽子先生は「原発性開放隅角緑内障(POAG)の疾患マーカー解析」について発表された.POAG症例と緑内障専門医が判定した正常者を500KAymetrixチップにて解析し,得られた一塩基多型(SNPs)と既報の緑内障遺伝子情報を踏まえて作成したカスタムチップにて別集団POAG,正常者間を解析し,結果をマンテルヘンゼル法で統合解析を行って最終的に6個の有意なSNPsを得た.これらのSNPsはPOAGの発症関連マーカーになる可能性があることを示された.山形大学の柏木佳子先生は「コチレニンA投与した網膜芽細胞腫細胞株における網羅的遺伝子発現解析」について発表された.分化誘導および増殖抑制効果をもつ新しい抗腫瘍薬として考えられているコチレニンAを網膜芽細胞腫細胞株WERI-Rb-1に投与したのちにマイクロアレイ解析を行った結果,TNF(腫瘍壊死因子)シグナル関連因子,細胞周期を抑制するp21・Cip1遺伝子,および視細胞特異的発現遺伝子であるphospho-deesterase6AのmRNAの発現が上昇した.一方で,(65)第10回眼科DNAチップ研究会報告西塚弘一*1山下英俊*1木下茂*2*1山形大学医学部眼科学講座*2京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学第63回日本臨床眼科学会専門別研究会2009年10月9日(金)福岡国際会議場———————————————————————-Page266あたらしい眼科Vol.27,No.1,2010神経芽腫マーカーであるN-myc遺伝子のmRNAの発現は減少した.また,WERI-Rb-1にコチレニンAを投与することにより細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導,細胞形態変化が観察された.これらの結果より,コチレニンAが網膜芽細胞腫細胞株において細胞周期を抑制しアポトーシスを誘導することが確認され,抗腫瘍薬への応用の可能性があることを示された.教育講演山形大学の田宮元先生は「ヒト疾患感受性遺伝子同定のためのバイオインフォマティクス手法」について講演された.現在,最も広く行われている一定の統計尺度を閾値としてゲノム全体をカバーする高密度一塩基多型(SNP)を用いたケース・コントロール関連解析(SNP-GWAS)において,解析に必要な遺伝統計処理・情報処理を解説された.つぎにSNP-GWASデータは直ちに集団ベース連鎖解析に適用可能であることを示され,最終的にはSNP間の相互作用モデルや環境との相互作用モデルに基づく解析をゲノムワイドに行うための新しい遺伝統計手法である罰則付回帰解析について紹介していただいた.一方で,最近明らかにされつつあるSNP-GWASの前提とされていたCDCV(CommonDisease/CommonVariant)仮説がなかなか成立し得ないことを集団遺伝学的な側面からわかりやすく解説され,また新しい遺伝モデルとしてCDRVs(CommonDisease/RareVariant)仮説とそこから導かれる研究戦略といった最(66)新のバイオインフォマティクス手法について概説していただいた.特別講演九州大学の秦淳先生は「久山町研究を基盤とした脳梗塞のゲノムワイド関連遺伝子研究」について講演された.脳梗塞関連遺伝子の探索のために,九州大学病院を含む7つの医療機関を受診した脳梗塞患者群と久山町住民検診から選択した対照群を用いて大規模な患者対照研究を行った.ゲノムワイド関連解析および連鎖不均衡解析の結果2つの脳梗塞関連遺伝子が同定された.一つ目はプロテインキナーゼCエータ(PKCh)をコードするPRKCH遺伝子で,PKChのアミノ酸置換をもたらすSNP(Val374Ile)は脳梗塞のうちラクナ梗塞との有意な関連が示され,機能解析においてもPKChはヒト冠動脈の動脈硬化巣に発現し,アミノ酸置換によりその酵素活性が変化した.二つ目はアペリン受容体(APJ)をコードするAGTRL1遺伝子で,プロモーター領域に位置するSNP(-154/A)は脳梗塞と関連し,invitro実験により塩基の違いによりプロモーター活性が変化した.さらに1988年の循環器健診を受診した久山町住民を14年間追跡した成績においてもPRKCHのIle/Ile型,AGTRL1のGG型では他の型と比べて脳梗塞の発症リスクが有意に高いことが示された.以上のような久山町研究における疫学データを基盤としたゲノムワイド関連遺伝子研究について講演された.☆☆☆

眼科医のための先端医療 109.眼表面疾患と上皮間葉系移行の関与

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.27,No.1,2010630910-1810/10/\100/頁/JCOPY上皮間葉系移行(EMT)とはとのでをとはとのは葉葉と葉と上ののでで上皮系(葉)の間葉系「」とはのので上皮間葉系移行()とのではででは病関与と表のの移で上皮系と間葉系のをとののをと疾患関与とのとでのはんでととのでは上皮を間とでで眼では上皮下)()と)は眼表面の疾患で関与とをはb(transforminggrowthfactor-b)などのサイトカインが関与しているといわれ,今後は新たな治療法の開発につながることが期待されています.翼状片とEMTとののの眼とのとののとと眼表面のと上皮上皮のととの行上皮EMTと眼とととの移との上皮のb-カテニンやa平滑筋アクチンなどの発現が認められました.翼状片の先端部が角膜に癒着しているのは,こうしたEMTを起こした上皮細胞が実質に浸潤することが関与していると言えます.移植片宿主病(GVHD)とEMT移移の眼表面とのととととののGVHDのEMT関与と本の4眼表面の上皮EMTとの関与EMTTGbなどのサイトカインが関与していますが,発症機序についてはまだ不明なことが多いです.EMTを防ぐ方法が開発されれば,すべての骨髄移植患者に対して,あらかじめGVHDの発症を予防することができるかもしれません.EMTの意義疾患の行関与とはと()◆シリーズ第109回◆ツ黴€ツ黴€ ツ黴€眼科医のための先端医療ツ黴€ツ黴€ ツ黴€=坂本泰二山下英俊榛村重人(慶應義塾大学医学部眼科)眼表面疾患と上皮間葉系移行の関与———————————————————————-Page264あたらしい眼科Vol.27,No.1,2010利益なことばかりかはわかりません.たとえば,角膜上皮の前駆細胞も一部ビメンチンのような間葉系マーカーを発現していたり,間葉系細胞にみられるN-cadherinも発現していることがわかっています5).上皮細胞と間葉系細胞には一定の期間だけでも相互方向に行き来することができるのかもしれません.また,このことが恒常性を維持するうえで重要である可能性もあります.EMTが成体において果たす役割が明らかになるまで,今後の研究が期待されます.文献1)SaikaS,MiyamotoT,IshidaIetal:TGFbeta-Smadsig-nallinginpostoperativehumanlensepithelialcells.BrJOphthalmol86:1428-1433,20022)Casaroli-MaranoRP,PaganR,VilaroS:Epithelial-mesen-chymaltransitioninproliferativevitreoretinopathy:inter-mediatelamentproteinexpressioninretinalpigmentepithelialcells.InvestOphthalmolVisSci40:2062-2072,19993)KatoN,ShimmuraS,KawakitaTetal:Beta-cateninacti-vationandepithelial-mesenchymaltransitioninthepatho-genesisofpterygium.InvestOphthalmolVisSci48:1511-1517,20074)OgawaY,ShimmuraS,KawakitaKetal:Epithelialmes-enchymaltransitioninhumanocularchronicgraft-ver-sus-hostdisease.AmJPathol175:2372-2381,20095)HigaK,ShimmuraS,MiyashitaHetal:N-cadherininthemaintenanceofhumancorneallimbalepithelialpro-genitorcellsinvitro.InvestOphthalmolVisSci50:4640-4645,2009(64)「眼表面疾患と上皮間葉系移行の関与」を読んでは榛村重人上皮と間葉系の移行()と眼のと関とを翼状片移植片宿主病()をはののではをのはでのでとのををとはでののをのをのはでのとん榛村はとでを上皮と間葉ではをののので移行をでとでのののの意ののをのでははでをでんでのは翼状片と眼とのの病関与とはでとの疾患の面とで榛村「のを上皮と間葉系行」とはのとのののと眼でのので読山眼山下英俊☆☆☆