———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010610910-1810/10/\100/頁/JCOPY新しい治療と検査シリーズ(61) バックグラウンド原発閉塞隅角症・緑内障は有痛性の急激な眼圧上昇(急性発作)という発症形態をとる点において特異である.急性発作は著しい眼圧の上昇のため早期に適切な外科的治療を施さなければ視機能の重篤な障害を生じうる.発症前の急性発作眼の眼球形態の詳細はよくは知られていないが,発症時および発症他眼のデータから正常眼,慢性の原発閉塞隅角眼と比べても前房が浅く,隅角が狭いことが知られている.また,慢性原発閉塞隅角緑内障においても眼圧変動が大きいことが知られており,外来受診時に必ずしも眼圧が高いとは限らない.中心前房深度がそれほど浅くない慢性原発閉塞隅角緑内障は,原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障と診断されてしまう可能性がある.急性発作の予防,慢性原発閉塞隅角緑内障の正しい診断のためには隅角鏡検査,超音波生体顕微鏡検査(UBM)などを用いた隅角診断が欠かせない.しかしながら,隅角鏡や UBM は熟練した医師による診断が不可欠であり,接触検査であるために点眼麻酔の使用も必要であり時間もかかる.そのためスクリーニングや短時間で大勢の患者を診察するような外来においては施行が困難な場合がある.前眼部 OCT(光干渉断層計)は毛様体が描出されない,光学補正の正確さが不明であるといった欠点はあるものの,短時間で,非接触かつ熟練を要することなく隅角の検査が可能である点で優れているが,機器が高価である.周辺前房深度の測定は隅角自体の評価ではないが,細隙灯顕微鏡のみで施行可能な簡便な検査であり非常に有用である.具体的には,周辺角膜厚と周辺前房深度を比較する Vanツ黴 Herick 法で 2 度以下(周辺前房が角膜厚の1/4 以下)であれば狭隅角,機能的隅角閉塞である可能性が高く臨床において非常に有用な方法である.しかし194.走査式周辺前房深度計:SPACプレゼンテーション:新垣淑邦酒井寛琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野コメント:栗本康夫神戸市立医療センター中央市民病院眼科表 1SPACのまとめ名称測定原理測定方法測定時間測定結果の判定走査式周辺前房深度計(SPAC)光学測定Scheimp ugの原理による補正内蔵細隙灯による自動走査式撮影および周辺前房深度測定数分自動判定Grade 判定:1 121(非常に狭い),12(非常に広い)P:閉塞の可能性S:閉塞の疑い距離0.02.83.23.64.04.44.85.25.6深さ2.91.701.401.080.940.850.770.460.35厚さ0.56半径8.3LGrade=6Flash=off距離0.00.81.21.62.02.42.83.23.64.04.44.85.25.6△△△△△△△△△××××深さ2.21.571.481.381.301.120.990.920.800.650.490.400.230.07厚さ0.59半径7.8LGrade=4SFlash=off図 1正常眼図 2原発閉塞隅角眼———————————————————————- Page 262あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010ながら,Vanツ黴 Herick 法は主観的な分類であり評価者により判定が異なる可能性がある.経時的変化の観察にも向かない. SPAC走 査 式 周 辺 前 房 深 度 計(SPAC)は, 山 梨 大 学 のKashiwagi らが開発した自動式の周辺前房深度測定機である1,2).CCD カメラを用いて細隙光による撮影を行い,Scheimp ug の原理を用いた光学補正により周辺前房深度を計測する.また,閉塞隅角患者のデータベースに基づいたアルゴリズムを使用した内蔵ソフトウェアにより隅角の広狭をグレード分類する.さらに,グレード分類の組み合わせにより隅角閉塞の可能性が診断され出力される. SPACの使い方SPAC の使用方法はきわめて簡便である.スリット光が自動に角膜全面を走査して角膜中心部を推定しそこを基点として自動で耳側周辺前房を撮影,計測する.撮影は右眼→左眼の順に両眼同時に行われ 1 分以内で終了する.表示された結果のプリントアウトの正常眼(図1)および原発閉塞隅角眼(図2)を示す.正常眼では 8 点,閉塞隅角眼では 13 点で,周辺前房が測定されているが基準を下回った測定点には狭い(△),非常に狭い(×)の表示がある.Grade は正常眼が 6,原発閉塞隅角眼は4 である.原発閉塞隅角眼の判定は「S」であり,4S と表示され,SPAC 上隅角の閉塞が疑われることがわかる.中心前房深度, 角膜厚, 角膜曲率半径も表示される. 本方法の良い点非接触,全自動で検査が行われるため,検査を医師が行う必要がない点が優れる.客観的な数字データが示される点,周辺前房を何カ所にもわたって測定し判断してくれる点も医師が行う Van Herick 法と比べ有利である.隅角鏡検査,UBM などを行う前に臨床現場でのスクリーニングに使用するのに適した検査ではないかと考えられる3).ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴 1) Kashiwagi K, Abe K, Tsukahara S:Quantitative evalua-tion of changes in anterior segment biometry by peri-pheral laser iridotomy using newly developed scanning peripheral anterior chamber depth analyser. Br J Ophthal-mol 88:1036-1041, 2004 2) Kashiwagi K, Tsumura T, Tsukahara S:Comparison between newly developed scanning peripheral anterior chamber depth analyzer and conventional methods of evaluating anterior chamber con guration. J Glaucoma 15:380-387, 2006 3) Wong HT, Chua JL, Sakata LM et al:Comparison of slitlamp optical coherence tomography and scanning peripheral anterior chamber depth analyzer to evaluate angleツ黴 closureツ黴 inツ黴 Asianツ黴 eyes.ツ黴 Archツ黴 Ophthalmol 127:599-603, 2009(62)周辺部の前房深度が同程度であっても症例により隅角の形状は異なっており,中間周辺部の前房が浅くても隅角は開放している症例もあれば,その逆もある.本機器では,肝心の隅角閉塞の有無がわからない.もう一点は,本機器では虹彩の厚さおよび裏面,毛様体の様子がわからないことである.これは,本機器は隅角閉塞メカニズムの判定に使えないことを意味する.SPAC は,あくまでも一次スクリーニングのための検査機器であって,UBM の代わりにはならない.原発閉塞隅角症・緑内障の診療において,前眼部画像診断機器は二つの目的で使用される.第一に隅角閉塞とそのリスクの判定,第二は隅角閉塞の原因となるメカニズムの判定である.SPAC は隅角閉塞のスクリーニングにおいて威力を発揮する検査機器ではあるが,本欄は批判的なコメントをという趣旨なので,本機器が有する二つの問題点をあげる.一つは,SPACでは,前房の最周辺部,すなわち隅角そのものを計測できないことである.本機器で測定できる中心 中間 本方法に対するコメント ☆ ☆ ☆