———————————————————————-Page1(125)9910910-1810/09/\100/頁/JCOPYあたらしい眼科26(7):991996,2009cはじめに眼鏡に依存しない良好な遠方および近方視力が得られることを目的として開発された多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)は,屈折型および回折型とも,近年改良が進み,良好な術後成績が報告されている14).特に回折型は近方視を得やすい特徴を有するので,眼鏡依存度がより少ない5,6).一般に,多焦点IOLはその特徴的な見え方から,両眼かつ同種のものを挿入するのが理想的で,これまでの良好な報告も両眼挿入に基づいたものが多い710).しかし,実際には片眼性白内障や,すでに片眼に単焦点IOLあるいは別のタイプの多焦点IOLが挿入されているが,より良好な近方視力を希望し,回折型IOL挿入を希望する例がある.すでに,術前に異なるタイプの多焦点IOL挿入を予定し,片眼に屈折型,もう片眼に回折型を挿入した報告はある11)が,今回,僚眼の状況により,片眼のみに回折型IOLを挿入した例を経験したので,臨床成績を報告する.I対象および方法症例は,2006年12月から2007年12月までの約1年間に,東京歯科大学水道橋病院にて片眼のみに回折型多焦点IOLが挿入された9例で,男性5例,女性4例,平均年齢51.5±14.1歳であった.9例の内訳は,僚眼にすでに単焦点〔別刷請求先〕中村邦彦:〒188-0011東京都西東京市田無町3-1-13-102たなし中村眼科クリニックReprintrequests:KunihikoNakamura,M.D.,TanashiNakamuraEyeClinic,3-1-13-102Tanashi-cho,Nishitokyo-shi,Tokyo188-0011,JAPAN回折型多焦点眼内レンズの片眼挿入例の検討中村邦彦*1,2ビッセン宮島弘子*1吉野真未*1北村奈恵*1大木伸一*1*1東京歯科大学水道橋病院眼科*2たなし中村眼科クリニックNineCasesofUnilateralDifractiveMultifocalIntraocularLensImplantationKunihikoNakamura1,2),HirokoBissen-Miyajima1),MamiYoshino1),NaeKitamura1)andShinichiOoki1)1)DepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollegeSuidobashiHospital,2)TanashiNakamuraEyeClinicl目的:回折型多焦点眼内レンズ(IOL)が,僚眼の状況で片眼に挿入された例の術後成績を検討した.対象:良好な近方裸眼視力を得るために片眼に回折型多焦点IOL(回折IOL)が挿入された9例で,僚眼は単焦点IOL眼2例,屈折型多焦点IOL(屈折IOL)眼3例,透明水晶体4例で,術後片眼および両眼視力,見え方の差および満足度を検討した.結果:回折IOL眼の裸眼視力は遠方0.8以上,近方0.5以上で,また全例が両眼で遠方1.0以上,近方0.6以上と良好であった.僚眼が単焦点IOL例は回折IOL眼の夜間グレアと遠方の見え方に違いはあるが,近方視は満足していた.僚眼が屈折IOL例は屈折IOL眼にハローを訴えたが,中間は屈折IOL,近方は回折IOLの見え方に満足,僚眼が有水晶体例では回折IOL眼のぼやけた見え方を訴えたが近方視力は満足していた.結論:回折IOL片眼挿入は,僚眼の状態によって見え方に左右差は多少あるが,両眼にて日常生活に問題なく回折IOLの利点が生かせると思われた.Thisisareporton9patientswhounderwentunilateralcataractsurgeryanddiractivemultifocalintraocularlens(IOL)implantationtoachievebetternearvisualacuity(VA).Theirfelloweyeswereimplantedwithmonofo-calIOL(2cases),refractivemultifocalIOL(3cases)orclearlens(4cases).Allpatientsachieveduncorrectedbin-ocularVAofmorethan1.0forfardistanceand0.6fornear;uncorrectedVAofalldiractivemultifocalIOL-implantedeyeswasmorethan0.8forfardistanceand0.5fornear.Thepatientsexhibitedmildvisualsymptoms,duetovisualperformancedisparitybetweenthediractivemultifocalIOL-implantedeyeandthefelloweye,butallwereultimatelysatisedwiththeirbinocularvisualperformance;noinconveniencewasexperiencedindailylife.UnilateraldiractivemultifocalIOLimplantationcanbebenecialforpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(7):991996,2009〕Keywords:回折型多焦点レンズ,屈折型多焦点レンズ,片眼挿入.diractivemultifocallens,refractivemultifo-callens,unilateralimplantation.———————————————————————-Page2992あたらしい眼科Vol.26,No.7,2009(126)IOLが挿入されていた2例(単焦点群),すでに屈折型IOLが挿入されていた3例(屈折型群),透明有水晶体眼4例(透明水晶体群)であった.各症例の僚眼の状態および視力を表1に示す.全例,単焦点,屈折型,回折型の特徴を説明し,患者自身が回折型IOL挿入を強く希望した症例である.使用したIOLは,9例中8例が回折型非球面で光学部がシリコーン製のZM900TecnisTMMultifocal(AMO社)(図1a)で,挿入時は厚生労働省の承認を受けていなかったため,東京歯科大学水道橋病院倫理委員会の承認を得,患者にもその旨を説明して同意を得た.1例は回折型球面でアクリル製シングルピースのSD60D3ReSTORTM(Alcon社)(図1b)を承認後に使用した.手術は,IOLが保険適用外のため自費手術,自費診療となることを十分に説明し同意を得て行われた.術式は,点眼麻酔下にて超音波水晶体乳化吸引術を施行して無水晶体眼とし,ZM900はアンフォルダーシルバーTMインジェクターを用いて,SD60D3はモナークTMインジェクターを用いて,耳側角膜切開から水晶体内に挿入した.全例,術中,術後合併症は認めなかった.術後3カ月以降に,回折型IOL挿入眼の遠方裸眼および矯正視力,近方裸眼,遠方矯正下近方視力,両眼の遠方裸眼および近方視力,またコントラスト感度はVectorVison社製CSV-1000を用いて測定し,左右眼での見え方の違い,満足度を調べた.II結果回折型IOL挿入後の視力結果を表2に示す.症例8は,角膜乱視が2Dのため裸眼遠方視力0.8,近方視力0.5であったが,9例中6例は遠方裸眼視力1.0以上,近方裸眼視力1.0以上と非常に良好な結果であった.両眼裸眼視力を図2表1各群の僚眼の状態および視力僚眼の状態症例年齢,性別IOLの種類瞳孔径(mm)視力遠方近方明所暗所遠近遠近単焦点群156歳,女性SA60AT2.42.34.03.9遠方0.1(1.2×2.0D(cyl0.75DAx170°)近方裸眼1.0遠方矯正下0.1270歳,男性SA60AT2.31.93.73.3遠方1.2(1.5×cyl0.75DAx100°)近方裸眼0.1遠方矯正下0.1屈折型群329歳,男性ArrayTM2.82.75.34.9遠方1.0(1.5×+0.5D(cyl0.50DAx60°)近方裸眼0.4遠方矯正下0.7466歳,女性ReZoomTM2.82.44.64.5遠方1.2(矯正不能)近方裸眼0.4遠方矯正下0.4538歳,男性ReZoomTM2.82.55.04.8遠方1.5(矯正不能)近方裸眼0.8遠方矯正下0.8透明水晶体群651歳,女性2.42.24.34.0遠方0.5(1.2×0.75D(cyl0.75DAx100°)近方裸眼0.6遠方矯正下0.2735歳,男性2.92.74.84.8遠方1.5(矯正不能)近方裸眼1.0遠方矯正下1.0855歳,女性2.62.44.44.3遠方0.5(1.2×1.25D(cyl1.0DAx80°)近方裸眼0.6遠方矯正下0.2948歳,男性2.82.64.54.4遠方0.08(1.2×6.0D(cyl0.50DAx10°)(1.5×SCL)近方(0.9×SCL)図1回折型多焦点IOLa:AMO社ZM900TecnisTMMultifocal.b:Alcon社SD60D3ReSTORTM.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.7,2009993(127)に示す.3群とも遠方1.0以上,近方0.6以上と良好であった.片眼と両眼でのコントラスト感度の結果を表3に示す.両眼での測定結果はすべて,正常範囲内にあった.各群の左右眼の見え方の差および満足度を表4に示す.それぞれ特有の見え方の差を訴えていたが,日常生活に支障がある例はなく,満足度は高かった.III考按多焦点IOLが先進医療として承認され,患者にその情報が広まるとともに,両眼性白内障例以外では,片眼挿入を希望する例が増えることが予想される.筆者らの施設では,両眼に同じタイプの多焦点IOLを挿入することを基本としているが,今回の症例のように,両眼挿入できない状態で回折型IOLを希望する例がある.症例数は限られるが,僚眼の状態によって単焦点挿入後,屈折型挿入後,透明水晶体に分け,臨床成績に差があるか,それぞれ特有の問題があるか,さらに,両眼に回折型IOLを挿入した結果と比較した.1.僚眼に単焦点IOLが挿入されている症例近年の眼軸長測定装置の進歩12)とIOL度数計算式の改良13)によるIOL度数決定の精度や,小切開白内障手術の導入による医原性乱視軽減により正視狙いで単焦点IOLを挿入した場合,遠方裸眼視力は格段に向上した.このように単焦点IOL挿入後,きわめて良好な遠方視力が得られても,近方視力が十分でなく,眼鏡を必要とすることに不満をもつ例がある.これまでは片眼に単焦点IOLがすでに挿入されている例では,もう片眼に多焦点IOLを挿入すると左右の見え方の違いや両眼視への影響が危惧され,多焦点IOL挿入を見合わせることが多かった.しかし,多焦点IOLが普及し,その利点が確認されると,患者側の希望により,片眼に多焦点IOL挿入を検討しなくてはならない機会が増えてくる.実際に片眼のみ回折型IOLを挿入した症例では,単焦点IOLとの遠方の見え方の違いを自覚しているが,良好な近方視力に満足していた.遠方の見え方について,使用した回折型IOLは,ZM900は非球面,SD60D3はapodiza-表2回折型IOL挿入後の遠方および近方視力僚眼の状態症例回折型IOL瞳孔径(mm)回折型IOL挿入眼視力明所暗所遠近遠近単焦点IOL群1ZM9002.72.64.54.3遠方0.8(1.2×cyl0.75DAx20°)近方裸眼0.9遠方矯正下1.02ZM9002.31.93.42.8遠方1.0(矯正不能)近方裸眼0.7遠方矯正下0.7屈折型IOL群3ZM9002.72.65.85.6遠方1.0(1.5×+0.50D(cyl0.50DAx180°)近方裸眼1.2遠方矯正下1.24ZM9002.62.24.54.1遠方1.2(1.5×cyl0.50DAx110°)近方裸眼1.0遠方矯正下0.85SD60D32.72.55.04.5遠方0.8(1.5×+1.25D(cyl0.50DAx160°)近方裸眼1.0遠方矯正下0.8透明水晶体群6ZM9002.42.34.64.3遠方1.2(矯正不能)近方裸眼1.0遠方矯正下1.07ZM9003.32.95.05.0遠方1.2(矯正不能)近方裸眼1.0遠方矯正下1.08ZM9002.62.14.74.5遠方0.8(1.2×+0.50D(cyl2.0DAx180°)近方裸眼0.5遠方矯正下0.89ZM9002.72.54.64.5遠方1.5(矯正不能)近方裸眼1.0遠方矯正下1.00.1症例234屈折型群透明水晶体群:遠方:近方単焦点群5678910.51.02.0視力図2両眼裸眼視力———————————————————————-Page4994あたらしい眼科Vol.26,No.7,2009(128)tionによりコントラスト感度の改善が図られており3,14),以前のものより単焦点IOLとの見え方の違いを感じなくなっている可能性が高いと思われる.片眼に単焦点IOLが挿入されている症例で近方視の向上を望む場合,回折型IOL挿入以外の対処法として,屈折型IOLの選択15)と,単焦点IOLによるモノビジョン法16)がある.屈折型IOLは,近方視力は単焦点IOLに勝るが,回折型IOLより劣る.グレア,ハローについては,以前よりも改善しているが単焦点IOL,回折型IOLより自覚しやすい17).今回のような近方視への要求度が高い症例では,屈折型IOLでは近方視に物足りなさを覚えるのに加え,ハロー,グレアを強く自覚するので,僚眼の単焦点IOLの見え方と比較して利点を得にくいことが危惧される.単焦点IOLによるモノビジョン法は,不同視を生じるので左右で3Dの差をつけて挿入することは困難で,両眼同時期の手術で計画的に行う場合と比較して近方視への不満が生じる可能性が高い.屈折型多焦点IOLにてモノビジョン法を施行することも考えられるが,屈折型多焦点IOLを近方視狙いにて挿入することになるので,グレア,ハローの自覚が強くなることが危惧される18).したがって,単焦点IOL挿入後,遠方の表3コントラスト感度僚眼の状態症例IOLの種類片眼両眼3cpd6cpd12cpd18cpd3cpd6cpd12cpd18cpd単焦点IOL群1ZM9003136184.54370259.5SA60AT4370259.52ZM9004350259.561705013SA60AT6150259.5屈折型IOL群3ZM900435025761703513ArrayTM61501274ZM9003136184.561702513ReZoomTM6150259.55SD60D361502578570359.5ReZoomTM6199359.5透明水晶体群6ZM9004399184.57199509.54370259.57ZM9008599357859970258599509.58ZM9006150184.585703513617035139ZM9006136124.58570359.56170359.5表4見え方の左右差と満足度僚眼の状態症例見え方の左右差満足度単焦点IOL群1夜間,多焦点IOL挿入眼に軽度グレア満足2遠方の見え方に左右差満足屈折型IOL群3屈折型IOL挿入眼に夜間軽度ハローあり満足4満足5満足透明水晶体群6中間距離が見にくい近方視は満足7多焦点IOL挿入眼が少しぼやける満足8満足9満足———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.7,2009995(129)みならず近方視力を要求する症例に対しては,回折型IOLで対処するのが,患者にとって最も受け入れやすい方法と思われる.2.僚眼に屈折型IOLが挿入されている症例片眼に屈折型IOL,もう片眼に回折型IOLを挿入することによって,屈折型IOL挿入眼での良好な遠方視と中間視,回折型IOL挿入眼での良好な近方視により全距離での見え方に満足を期待して行うことが報告されている19).近年,この方法をmixandmatchあるいはcustommatchとよんでいるが,屈折型IOLと回折型IOLを片眼ずつに挿入することに至った症例でも,遠方,中間,近方すべての見え方に満足していた.しかし,どの症例も屈折型IOL挿入眼に片眼性ハローを自覚しており,計画的に全例に適応するべきか疑問がある.屈折型IOL挿入眼の視力に影響する重要な要素に瞳孔径がある.現在使用されているReZoomRでは2.1mm以下の瞳孔径では近用ゾーンが機能せず単焦点IOLとほぼ同じ機能になる.また,加齢とともに瞳孔径は縮小することが知られており,高齢者では,十分な瞳孔径を得られず,ReZoomRを挿入する利点はあまりないことが多い20).明所遠方視での瞳孔径が2.1mm以下の症例では単焦点IOLと比較して屈折型IOLの利点はなく,暗所でのグレア,ハローだけが強く自覚することになるので,屈折型IOLではなく単焦点IOLと回折型IOLの組み合わせのほうが良い可能性が高いと思われる.したがって,屈折型IOLと回折型IOLを組み合わせて挿入する場合は瞳孔径を測定したうえで適応を決めることが望ましく,瞳孔径が測定できない場合でも少なくとも年齢に鑑みて適応を判断するのが良いと考えられる.また,片眼に回折型IOLを挿入してその遠方視に不満がない場合は,両眼とも同種のIOLのほうが違和感はないので,あえて屈折型IOLを僚眼に挿入する利点はなく,回折型IOLを挿入するほうが無難であると思われる.3.僚眼が有水晶体眼である症例片眼が透明水晶体で,片眼性白内障に対し回折型IOLを挿入した症例は,回折型IOL挿入眼にわずかにコントラスト感度の低下に起因すると思われる症状を自覚しているが,良好な遠方視力と近方視力に満足していた.しかし,回折型多焦点IOLの特徴として,遠方と近方にピークがあるため,中間距離が見えにくく感じやすく21),今回,同様の訴えをした症例があった.瞳孔径が十分に確保できる症例では屈折型多焦点IOLの近用ゾーンが有効に機能して回折型と比べても遜色のない近方視が得られるので,屈折型多焦点IOLを選択したほうが中間視も良好で良い可能性がある.特に若年者では僚眼の有水晶体眼に調節機能が十分にあり近方視に困らないので,IOL眼での近方視を強く求めない限り屈折型多焦点IOLを挿入したほうが自然な見え方で満足度が高いと思われる.僚眼の屈折が,症例9のような近視例では,日常生活はコンタクトレンズを使用しており,遠方,近方視は問題なく,コンタクトレンズを装用しない場合でも,回折型IOL眼の視力が良好なため,両眼視力で問題はなかった.有水晶体眼が正視でない場合,どのような屈折矯正をするか術前に十分検討することで,回折型IOL挿入の適応が異なると思われる.4.回折型IOL両眼挿入例との比較片眼のみ回折型IOLを挿入した例は,僚眼の条件が異なるものの,両眼視力は遠方0.8以上,近方0.5以上で,すでにわが国で報告されている両眼とも回折型IOLを挿入した両眼視力結果と比較して同等以上であった3).この理由は,従来の報告に比べ,今回の症例のほうが年齢の若いこと,片眼の回折型IOL挿入眼の結果そのものが良好であったので両眼視力を上げているためで,片眼挿入のほうが良好ということではないと考えている.近年,多焦点IOLの挿入法としてstagedimplantationが推奨されている22).まず片眼に回折型多焦点IOLを挿入した場合は,その見え方に不満がない場合はもう片眼にも回折型多焦点IOLを挿入し,もし遠方の見え方に不満があれば瞳孔径に鑑みて屈折型多焦点IOLか単焦点IOLを挿入する方法である.これまでも両眼に同種の多焦点IOLを挿入することによる良好な結果は多々報告されてきており,片眼に挿入された多焦点IOLで患者がその見え方に満足するのであれば,あえて異なる種類のIOLを他眼に挿入して見え方の左右差を生じさせることの利点はないということに基づいている.今回はどの症例も満足していたが,多焦点IOLの片眼挿入は普遍的な方法ではないと思われる.また,症例によっては左右の見え方の違いに順応できず,同種のIOLへの交換を希望する場合もあることを念頭において行う必要があると考えられる.新世代の多焦点IOLの登場により,これまで対象外とされていた症例も適応とされるものもでてきた.しかし,多焦点IOLの本質は患者のqualityoflifeの向上にあり,両眼挿入にしても,片眼挿入にしても個々の患者のライフスタイルに合わせ選択していくことが重要と思われる.文献1)KohnenT,AllenD,BoureauCetal:Europianmulti-centerstudyoftheAcrySofReSTORapodizeddiractiveintraocularlens.Ophthalmology113:578-584,20062)SouzaCE,MuccioliC,SorianoESetal:Visualperfor-manceofAcrySofReSTORapodizeddiraciveIOL:Aprospectivecomparativetrial.AmJOphthalmol141:827-832,20063)ビッセン宮島弘子,林研,平容子:アクリソフRApodized回折型多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズ挿入成績の比較.あたらしい眼科24:1099-1103,2007———————————————————————-Page6996あたらしい眼科Vol.26,No.7,2009(130)4)中村邦彦,ビッセン宮島弘子,大木伸一ほか:アクリル製屈折型多焦点眼内レンズ(ReZoom)の挿入成績.あたらしい眼科25:103-108,20085)MesterU,HunoldW,WesendahlTetal:Functionalout-comesafterimplantationofTecnisZM900andArraySA40multifocalintraocularlenses.JCataractRefractSurg33:1033-1040,20076)SchmidingerG,GeitzenauerW,HahsleRetal:Depthoffocusineyeswithdiractivebifocalandrefractivemulti-focalintraocularlenses.JCataractRefractSurg32:1650-1656,20067)Pineda-FernandezA,JaramilloJ,CelisVetal:Refractiveoutcomesafterbilateralmultifocalintraocularlensimplan-tation.JCataractRefractSurg30:685-688,20048)BlaylockJF,SiZ,VickersC:VisualandrefractivestatusatdierentfocaldistancesafterimplantationoftheReSTORmultifocalintraocularlens.JCataractRefractSurg32:1464-1473,20069)平容子,ビッセン宮島弘子,小野政祐:アクリソフRApodized回折型多焦点眼内レンズ挿入例におけるアンケート調査による視機能評価.あたらしい眼科24:1105-1108,200710)CillinoS,CasuccioA,DiPaceFetal:One-yearoutcomeswithnew-generationmultifocalintraocularlenses.Oph-thalmology115:1508-1516,200811)PeposeJS,QaziAM,DaviesJetal:VisualperformanceofpatientswithbilateralvscombinationCrystalens,ReZoom,andReSTORintraocularlensimplants.AmJOphthalmol144:347-357,200712)LeeAC,QaziMA,PeposeJS:Biometryandintraocularlenspowercalculation.CurrOpinOphthalmol19:13-17,200813)NarvaezJ,ZimmermanG,StultingRDetal:AccuracyofintraocularlenspowerpredictionusingtheHoerQ,Hol-laday1,Holladay2,andSRK/Tformulas.JCataractRefractSurg32:2050-2053,200614)中村邦彦:回折型眼内レンズの術後成績.あたらしい眼科24:163-167,200715)JacobiPC,DietleinTS,LukeCetal:Multifocalintraocu-larlensimplantationinprepresbyopicpatientswithuni-lateralcataract.Ophthalmology109:680-686,200216)井上俊洋,清水公也,新田任里江ほか:白内障術後のモノビジョンによる満足度.臨眼54:825-829,200017)RenieriG,KurzS,SchneiderAetal:ReSTORdiractiveversusArray2zonal-progressivemultifocalintraocularlens:Acontralateralcomparison.EurJOphthalmol17:720-728,200718)北原健二,柴琢也:眼内レンズのデザイン,材質と特性─3光学的特性.眼内レンズを科学する(小原喜隆,西起史,松島博之編),p16-19,メディカル葵出版,200619)NakamuraK,Bissen-MiyajimaH,OkiSetal:PupilsizesindierentJapaneseagegroupsandtheimplicationsforintraocularlenschoice.JCataractRefractSurg35:134-138,200920)LaneSS,MorrisM,NordanLetal:Multifocalintraocularlenses.OphthalmolClinNorthAm19:89-105,200621)大木伸一,ビッセン宮島弘子,上野里都子ほか:多焦点眼内レンズの焦点深度.日本視能訓練士協会誌36:81-84,200722)ビッセン宮島弘子:多焦点眼内レンズ.p138-139,エルゼビアジャパン,2008***