———————————————————————-Page10910-1810/09/\100/頁/JCLSIINVGの診断(前緑内障期)1.前眼部新生血管の観察ポイント前緑内障期では,まず新生血管を見つけることである.これには,通常の細隙灯顕微鏡では十分に拡大率を上げて観察し,隅角鏡の使用も必須である.虹彩面の新生血管が不明瞭でも,隅角には新生血管が顕著にみられることがある.隅角検査はNVGの病期判定と鑑別診断にも欠かせない.新生血管は瞳孔縁に生じやすいが,眼底検査のために散瞳すると,観察困難となる(図1).また,散瞳剤による血管収縮のために,隅角の新生血管も不明瞭となるため,新生血管の観察は必ず散瞳剤使用前に行う.細隙灯顕微鏡でみると新生血管が微細で不明瞭な場合には,虹彩・隅角の蛍光造影検査が有用である.2.ハイリスク眼の同定NVGでは,前眼部新生血管はほとんどの場合網膜虚血により発症するため,原因となった網膜疾患の存在を確認する必要がある.NVGには3大原因疾患があり,日本では増殖糖尿病網膜症によるものが最も多い.しかし,増殖糖尿病網膜症では,網膜症ばかりに目を奪われがちである.眼底検査のために毎回散瞳後にのみ診察していると,前眼部新生血管の発見が遅れる可能性がある.また,検眼鏡的な網膜症の重症度と前眼部新生血管の有無は一致しないことも多い.たとえば,硝子体出血や増殖膜の形成がみられる重症網膜症眼に必ずしもI血管新生緑内障(neovascularglaucoma:NVG)とは?NVGは,隅角に生じた線維血管膜により房水流出抵抗が増大し,眼圧上昇が起こる続発緑内障である.前眼部新生血管は,網膜虚血をきたすさまざまな眼疾患で起こりうる.なかでも,増殖糖尿病網膜症,網膜中心静脈閉塞症,眼虚血症候群が原因として頻度が高い1).NVGは3つの病期に分けられる.前緑内障期では,虹彩(特に瞳孔縁)や隅角に新生血管がみられるが,眼圧上昇と周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechiae:PAS)がみられない.隅角の新生血管は,虹彩根部から立ち上がり,分枝しながら隅角色素帯レベルで円周方向に網状に伸展する.隅角の新生血管が著明となり線維血管膜が形成されると,隅角が開いているにもかかわらず,眼圧上昇をきたす(開放隅角緑内障期).さらに,虹彩と隅角の表面を覆う線維血管膜が収縮することによって,周辺部虹彩が線維柱帯に向かって引き上げられPASが進展していく.また,虹彩の前方偏位,散瞳やぶどう膜外反(瞳孔縁が遠心性に牽引されることによる)をきたすことがある(閉塞隅角緑内障期).NVGの病期を判定することは,治療方針の決定や予後の推測に非常に重要である.(41)323mmiiaie9208641131特集●続発緑内障は変わった!あたらしい眼科26(3):323329,2009血管新生緑内障はこう治すDiagnosisandTreatmentofNeovascularGlaucoma東出朋巳*———————————————————————-Page2324あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(42)糖尿病の合併が多く,眼底像も軽度の網膜中心静脈閉塞症や糖尿病網膜症と混同されやすい.網膜症の左右差が大きい場合や眼底所見に比べて視力障害が顕著な場合には本疾患を疑う必要がある.以上のように,NVGを前緑内障期で診断するには,ハイリスク眼であるかを念頭において,前眼部新生血管の有無を注意深く診察する習慣が必要である.IIINVGの診断(緑内障期)鑑別疾患と緑内障性視神経症の評価開放隅角緑内障期および閉塞隅角緑内障期では,他の緑内障病型との鑑別と緑内障性視神経症の程度の評価が重要である.開放隅角緑内障期の鑑別疾患として,Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎がある.これは,続発緑内障を起こし,隅角新生血管がみられることがある.この疾患の隅角新生血管は微細であり,その他の前眼部所見や眼底所見から鑑別可能である.また,正常でも隅角に血管がみられることがある.これは,比較的太く毛様体から立ち上がり,分枝・蛇行せず,網状となることはない.たとえば,正常隅角血管を有する原発開放隅角緑内障や落屑緑内障眼では,開放隅角緑内障期のNVGと鑑別が必要となる.さらに,落屑緑内障など他の緑内障病型にNVGが合併する場合もあり,他眼の所見を含めNVGが多発するわけではない.逆に,検眼鏡的に出血や白斑が目立たないために網膜光凝固が不足し,前眼部新生血管の発生を招くことがある.したがって,前眼部新生血管がみられた症例では,蛍光眼底造影により網膜虚血の存在を確認することが重要である.一方,白内障手術や硝子体手術など観血的手術後に網膜症が増悪し,NVGが発症することがある.当科でのNVG症例の約3割は,先行する内眼手術が誘因であったと考えられた.特に糖尿病網膜症を有する眼では,網膜光凝固が不十分であると,白内障手術や黄斑浮腫・硝子体出血などに対する硝子体手術の術後にNVGが発症することは珍しくない.したがって,糖尿病網膜症を含め虚血性網膜疾患の既往のある眼の手術後は,NVGのハイリスク眼として注意深く経過観察する必要がある.網膜中心静脈閉塞症では,虚血型において発症3カ月以内にNVGを発症しやすいので,発症後の時間経過を念頭においた経過観察が必要である.さらに,原発開放隅角緑内障に網膜中心静脈閉塞症が合併することもまれではない.特に若年者や両眼性の場合には基礎疾患の精査も必要である.眼虚血症候群では,内頸動脈閉塞によって眼灌流圧が低下し房水産生が低下しているので,隅角の新生血管が伸展しても眼圧が上昇しにくく要注意である.高血圧や図1血管新生緑内障眼の虹彩新生血管と散瞳の影響51歳,女性,右眼増殖糖尿病網膜症による血管新生緑内障(前緑内障期).非散瞳時(左)よりも散瞳時(右)には,特に瞳孔縁の新生血管の観察が困難である.矢印と丸は同一部位を示す.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009325(43)圧下降薬のみによる眼圧コントロールには限界がある.特に閉塞隅角期では新生血管を抑制できても薬物療法のみで眼圧下降が得られる可能性は低く,眼圧が下降しても前眼部新生血管が持続すれば隅角閉塞が進行しやがて高眼圧となる.網膜光凝固では新生血管の消退までに時間がかかる症例が少なくない.高眼圧の状態ではどれだけ光凝固を追加しても新生血管が消退しないことがある.さらに,高眼圧による角膜浮腫,白内障,硝子体出血などにより経瞳孔的網膜光凝固が困難な場合も少なくない.トラベクレクトミーをはじめとする緑内障手術は,新生血管の活動性がある状態では,術中・術後出血や術後炎症により手術成績は不良である.毛様体破壊術は,速効性でないこと,定量性がないことが問題であり,濾過手術不成功例・非適応例に対する術式とされることが多い.以上の問題点によって,従来の治療法では高眼圧が遷延し,それによって視神経障害が進行してしまう症例が少なくなかった.VNVGの新たな治療方針1.血管内皮増殖因子とその抑制NVGにおける眼圧上昇の原因である前眼部新生血管の形成には,血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)が深く関与している.これに関する最初の報告は,1994年にさかのぼる3).Aielloらは,増殖糖尿病網膜症による虹彩新生血管を有する眼において前房水中のVEGF濃度が上昇していることを報告した.その後,サル眼の硝子体にVEGFを注入すると虹彩新生血管が惹起されることや,網膜中心静脈閉塞症によるNVGにおける虹彩新生血管の消長に前房水中VEGF濃度が密接に相関していることなどが報告された.したがって,VEGFを抑制することによるNVGの治療の可能性が期待されていた.抗VEGF薬として最初に市販された薬剤は,Avas-tinR(bevacizumab)である.これは,VEGFに対するヒト化マウス抗体であり,転移性大腸癌の治療に対して2004年2月に米国食品医薬品局に認可された.眼疾患では,MacugenR(pegaptanib,VEGFのアイソフォームの一つであるVEGF165を特異的に阻害するRNAアプタマー)とLucentisR(ranibizumab,VEGFに対するて慎重に診断する必要がある.閉塞隅角緑内障期では,PASをきたす疾患との鑑別が必要である.これには,原発閉塞隅角緑内障,ぶどう膜炎,内眼手術既往などがある.NVGでは,血液眼関門の破綻により前房内の細胞やフレアが増加するため,ぶどう膜炎と誤診してしまう可能性がある.また,PASと隅角新生血管が併存する場合には,PASの形成が新生血管によるのか他の原因によるのか鑑別が困難な場合がある.NVGでは眼圧にのみ気をとられて,緑内障性視神経症の評価がおろそかになりやすい.視神経乳頭の観察と視野検査は治療開始前に必須である.しかし,著明な白内障や硝子体出血などにより評価困難な場合がある.また,糖尿病網膜症での汎網膜光凝固や網膜中心静脈閉塞症では著明な視野障害をきたしうるので,緑内障性の視野障害の程度を正確に評価できない場合が少なくない.その場合,視神経乳頭所見と対比して緑内障性視神経症の程度を判定する.高眼圧による視神経のダメージを把握しておくことは治療方針の決定や視機能予後の推測に不可欠であるので,視神経乳頭の観察と視野検査は可能な限り行うべきである.IVNVGの治療方針従来の治療法とその問題点NVGは続発緑内障であるため,緑内障に対する眼圧下降療法に加えて,原因療法としての前眼部新生血管の抑制を並行して進める必要がある2).前緑内障期であれば,前眼部新生血管の抑制によって眼圧上昇の防止を図る.網膜虚血が原因である場合,前眼部新生血管抑制のための治療は,経瞳孔的網膜光凝固術が主体である.しかし,中間透光体の混濁などによってこれが困難である場合,白内障手術や硝子体手術を行い,術中あるいは術後に網膜光凝固を追加する.網膜冷凍凝固など眼底透見性に依存せずに網膜を凝固する方法の有用性も報告されている.一方,眼圧下降療法は,薬物・手術療法ともに他の緑内障病型と基本的に共通である.しかし,NVGは最も難治性の緑内障の一つとされ,視機能予後は一般に不良とされている2).その原因として従来の治療法が抱える問題点があげられる.まず,眼———————————————————————-Page4326あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(44)うるので,これらの疾患の発症後間のない症例あるいはコントロール不十分な症例には投与を控えている.当科でのbevacizumabの具体的な投与法を紹介する.当科ではできるだけ入院にてbevacizumabの硝子体内投与を行っている.注入器具として,デッドスペースが少なく針が短いインスリン注射用29ゲージ針付きシリンジを使用している.Bevacizumabは当院薬剤部にて100mg/4mlのバイアルから必要量を無菌的にシリンジに分注し冷蔵保存している.注射前に散瞳し,点眼麻酔の後にイソジンRで瞼縁を含めた皮膚消毒を行う.洗眼後開瞼器をかけて,手術用あるいは処置用顕微鏡下で1%キシロカインRを注射予定部位付近に少量結膜下注射する.数分待ってキャリパーで輪部から3.5mm(眼内レンズ挿入眼または無水晶体眼)あるいは4mm(有水晶体眼)をはかり,注射針を毛様体扁平部から硝子体内に進め,bevacizumab1.25mg(0.05ml)を注入する.薬液の逆流を防ぐために刺入時はなるべく斜めに強膜を通るようにする.注射針の抜去後,すぐに結膜上から刺入部を鑷子などで十分に圧迫する.硝子体内注射直後にはしばしは眼圧上昇が起こるが,通常は一過性である.しかしNVG眼では眼圧上昇が高度かつ遷延化する可能性があるので,高眼圧症例ではサイドポートをつくり前房水を抜くことで眼圧を正常化させている.その後,手動弁の確認(網膜中心動脈閉塞症の除外),抗生物質の点眼あるいは軟膏点入を行い,眼帯を装用させる.前房ヒト化マウス抗体断片)が,それぞれ2004年12月と2006年6月に滲出型の加齢黄斑変性症に対して米国食品医薬品局に認可され,最近日本でも同疾患に対して使用が認可された.しかし,NVGに対して適応とされる薬剤は,日本に限らず現時点では存在しない.このような状況にもかかわらず,2006年3月のAvery4)の報告以降NVGに対する抗VEGF薬の使用が続々と報告されてきた.2.抗VEGF薬の使用法2008年6月末現在のPubMedの検索では,前緑内障期を含むNVG眼に対する抗VEGF薬の投与が記載されている論文は26報あり,ranibizumabの1報以外はすべてbevacizumabが使用されていた.NVGに対する抗VEGF薬の投与経路は,ranibizumabの1報では硝子体内投与であり,bevacizumabでは硝子体内投与が22報と多数を占め,前房内投与が4報みられた.抗VEGF薬の投与量は,ranibizumabの1報は0.5mgであり,bevacizumabの硝子体内投与では0.125mgが1報,1.0mgが4報,1.25mgが15報,1.5mgが2報,2.5mgが1報であり,加齢黄斑変性症などの他疾患に対する硝子体内投与量と同様の用量であった.Bevacizumabの前房内投与では1.0mgが1報,1.25mgが3報あり,硝子体内投与と同様の用量であった.当科では,適応外使用であるbevacizumabの眼疾患に対する使用について,学内倫理委員会での承認を経て,2007年より網膜硝子体疾患に対するbevacizumabの使用を開始した.その一環として,慎重な適応の決定と十分なインフォームド・コンセントの取得の下に,NVGに対してbevacizumabの硝子体内投与を行っている.NVGに対するbevacizumab硝子体内投与の適応は,NVGの病期,他の治療〔抗緑内障薬,汎網膜光凝固(panretinalphotocoagulation:PRP),白内障手術・硝子体手術・緑内障手術など〕の既往を踏まえたうえで,前眼部新生血管の活動性,観血的手術の必要性,眼圧,緑内障性視神経症の程度,残存視機能などを総合的に判断し決定している(図2).Bevacizumab全身投与による副作用である血圧上昇,心筋梗塞,脳梗塞などは,硝子体内から全身への薬剤の移行によって理論的に起こりNoNoYesNoNoYesNoYesYesYes*:白内障手術,硝子体手術,濾過手術適応なし適応ありPRP優先#適応なしPRP優先#適応あり#:PRP追加困難な場合はbevacizumab投与を考慮前眼部新生血管高眼圧緑内障性視神経症視機能残存観血的治療の必要性*図2当科における血管新生緑内障に対するbevacizumab硝子体内投与の適応———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009327(45)当科では,2008年12月まで50例63眼のNVGに対してbevacizumab硝子体内投与を行い,眼局所あるいは全身性の合併症はみられなかった.初回投与例連続26例29眼(経過観察期間6カ月以上)について検討したところ,投与後16日で新生血管の明らかな退縮が全例にみられた(図3).しかし,新生血管の再発は,1.57.5カ月後に7眼(24%)にみられ,PRPの追加とbevacizumab再注入によって消退した.また,bevaci-zumab硝子体内投与後(9.2±11.1日,148日,中央値5日)に初回マイトマイシンC併用トラベクレクトミーを施行した連続21症例21眼(経過観察期間6カ月以上,使用群)と当科においてbevacizumab使用開始以前にNVGに対して施行された初回トラベクレクトミー連続症例32例32眼(非使用群,bevacizumab使用群と患者背景に有意差なし)とを比較すると,術翌日の前房出血は使用群で5眼(24%),非使用群で20眼(63%)と使用群で有意に少なかった(p<0.01).7日を超える前房出血の持続は使用群で0眼,非使用群で8眼(25%)穿刺を行わない症例では,眼圧測定と診察(細隙灯顕微鏡・眼底検査:視神経での血流確認,出血,網膜離などの合併症の有無)を行う.術後は,数日間抗生物質の点眼を行う.原則として翌日に術後診察を行っている.3.抗VEGF薬の効果NVGに対する抗VEGF薬の効果として,過去の報告511)では前眼部新生血管の速やかな退縮,眼圧下降,緑内障手術時の出血性合併症の抑制などがあげられている.前眼部新生血管の退縮は,多くは1週間以内に明らかとなり翌日にみられる症例もある.前眼部新生血管の退縮および眼圧下降効果は,PRPよりも速効性と確実性の点で優れる.しかし,前眼部新生血管の再発は起こりうる.眼圧下降による観血的手術の回避は開放隅角期では期待できるが,閉塞隅角期ではむずかしい.NVGの原因疾患や抗VEGF薬の種類,投与法(硝子体内投与vs前房内投与など)による効果の相違は今のところ明らかではない.図3Bevacizumab硝子体内投与による前眼部新生血管の消退65歳,女性,右眼増殖糖尿病網膜症による血管新生緑内障(開放隅角緑内障期).左:初診時.右:Bevacizumab硝子体内投与後1週.Bevacizumab硝子体内投与により虹彩,隅角の新生血管が著明に退縮した.———————————————————————-Page6328あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(46)と予想される症例では濾過手術の術中あるいは術後に白内障手術あるいは硝子体手術の併用を考慮する.小切開手術の普及とbevacizumabによる出血性合併症の抑制効果を考えると,濾過手術との同時手術あるいは濾過手術前後での併用が従来ほど濾過手術の成績に悪影響を与えない可能性がある.当科でのbevacizumab眼内投与後のトラベクレクトミー症例のうち術中に白内障・硝子体手術の併用が4眼(19%)に行われたが,いずれも術後眼圧経過は良好であった.以上のように,bevacizumabの眼内投与による速やかな前眼部新生血管の退縮によって,隅角閉塞進展の抑制による難治・進行例の減少,濾過手術の出血性合併症の抑制と成績向上,さらにNVGの予後改善が期待される(図4).今後,bevacizumab以外の抗VEGF薬が頻用されるようになった場合,その薬剤との効果の比較も注目される.しかし,bevacizumab投与後に前眼部新生血管の再発を見逃すと難治化させる恐れがあり,濾過手術後では眼圧上昇の原因となる.注意深い経過観察に加えてPRPの追加やbevacizumabの再投与,濾過手術などの他の治療法について,その適応やタイミングを適切に判断する必要がある.しかし,現時点ではそのガイドラインは存在しない.NVGに対するbevacizumabの眼内投与について,現時点では大規模な多施設臨床治験は報告されておらず,現在多く用いられている1mg程度のbevacizumabは過剰量であるとの指摘もあり,今後安全性など未知の問題が生じてくる可能性もある.何よりもbevacizumabの眼内投与は適応外使用であることから,慎重な使用と厳重な経過観察が不可欠である.と使用群で有意に少なかった(p=0.012).このほか,bevacizumab使用群において,脈絡膜出血や高度の硝子体出血などの合併症はみられなかった.さらに,トラベクレクトミー術後の眼圧コントロールを比較すると,1カ月以降の術後眼圧が2回連続して21mmHgを超える,観血的緑内障手術・毛様体破壊術の追加,光覚喪失・眼球癆を死亡と定義した場合,術後点眼加療の有無にかかわらずbevacizumab使用群のほうが有意に生存率が良好であった(1年生存率=点眼あり:使用群95.2%,非使用群68.5%;点眼なし:使用群90.5%,非使用群43.3%).4.抗VEGF薬の位置づけ抗VEGF薬であるbevacizumabの眼内投与は,前眼部新生血管抑制のための薬物療法という新しいカテゴリーに位置づけられる(表1).根本的に網膜虚血を解消するわけではないので,PRPの代替療法ではないが,新生血管退縮や眼圧下降には速効性があり,中間透光体混濁の影響を受けないというPRPよりも優れた特徴がある.さらに,硝子体手術や濾過手術の術前処置として出血性合併症の抑制に有効である.NVGの治療において従来はとにかくPRPの徹底が最優先とされ,周辺部網膜の徹底した光凝固のために硝子体手術が施行された.しかし,たとえば無治療・高眼圧・進行した視神経障害をもつ重症例では,bevacizumabの眼内投与に引き続き比較的早期に濾過手術を行うことが,高眼圧の持続による視神経障害の進行抑制の観点からは望ましいかもしれない.硝子体手術既往がトラベクレクトミー術後成績悪化の因子である12)ことからも濾過手術の先行が有利と思われる.濾過手術後にPRPが不足している症例では,術後に経瞳孔的にPRPを追加するが,それが困難表1血管新生緑内障治療における抗VEGF薬の位置づけ前眼部新生血管抑制眼圧下降薬物療法抗VEGF薬(VEGF抑制)眼圧下降薬(房水産生抑制)手術療法網膜光凝固・冷凍凝固(網膜虚血解消)濾過手術(房水排出促進)毛様体破壊術(房水産生抑制)VEGF:vascularendothelialgrowthfactorPRP:panretinalphotocoagulation2.濾過手術の出血性合併症抑制と成績の改善1.悪循環を速やかに断ち隅角閉塞進行を防ぐ図4血管新生緑内障治療における抗VEGF薬への期待———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009329文献1)BrownGC,MagargalLE,SchachatAetal:Neovascularglaucoma.Etiologicconsiderations.Ophthalmology91:315-320,19842)Sivak-CallcottJA,O’DayDM,GassJDetal:Evidence-basedrecommendationsforthediagnosisandtreatmentofneovascularglaucoma.Ophthalmology108:1767-1776,20013)AielloLP,AveryRL,ArriggPGetal:Vascularendotheli-algrowthfactorinocularuidofpatientswithdiabeticretinopathyandotherretinaldisorders.NEngJMed331:1480-1487,19944)AveryRL:Regressionofretinalandirisneovasculariza-tionafterintravitrealbevacizumab(Avastin)treatment.Retina26:352-354,20065)DavidorfFH,MouserJG,DerickRJ:Rapidimprovementofrubeosisiridisfromasinglebevacizumab(Avastin)injection.Retina26:354-356,20066)MasonJO3rd,AlbertMAJr,MaysAetal:Regressionofneovascularirisvesselsbyintravitrealinjectionofbevacizumab.Retina26:839-841,20067)GheithME,SiamGA,deBarr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