———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSスリット光で走査するするタイプのスリットスキャン式(ConfoScanR)が登場し,画像の解像度を向上させた2,3).最近になり,レーザー光で走査するタイプのレーザースキャン式(HeidelbergRetinaTomographⅡ─はじめに生体内の角膜の細胞の形態を直接観察するための方法として,1960年代の後半に,共焦点顕微鏡検査(コンフォーカルマイクロスコピー)が,Petranらによって初めて報告された1).コンフォーカルマイクロスコピーは,角膜内の組織や細胞の状態を,その瞬間(real-time)に,生体内の生きている状態(invivo)で,非侵襲的(non-invasive)に,観察することができるために,これまでにも数多く臨床的に応用されてきている2~5).ここでは,ドライアイに対して,コンフォーカルマイクロスコピーがどのような形で応用が可能かについて,これまでの報告をもとに若干の考察を加えながら述べさせていただくこととする.Iコンフォーカルマイクロスコピーコンフォーカルマイクロスコープは,光源から対物レンズを通過した光が角膜の焦点面を照射し,その反射光が同じ対物レンズを通り,ビームスプリッターで分かれた後に,検出部で観察されるという構造になっている.コンフォーカルマイクロスコピーは,これまで多くの改良が行われてきている.まず,最初に登場したのは,観察対象を円板上に並んだ多数のピンホール光で走査するタイプのタンデムスキャン式(Tandem[Advanced]ScanningConfocalMicroscopeR)である1).これは,生体内の角膜組織を直接観察するという点で画期的なものであったが,その解像度にやや問題があった.つぎに,(19)1627r16858235特集●ドライアイ最近の考え方あたらしい眼科25(12):1627~1631,2008ドライアイ診断のコンフォーカルマイクロスコピーの応用TheApplicationofInVivoConfocalMicroscopytotheDiagnosisofDryEye松本幸裕*図1レーザー生体共焦点顕微鏡レーザー生体共焦点顕微鏡である,HeidelbergRetinaTomographII(HeidelbergEngineering社製,ドイツ)は,角膜観察用アタッチメントであるRostockCorneaModule(同上)を装着することにより,角膜全層を観察することが可能となる.———————————————————————-Page21628あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(20)る報告が多い.まず,角膜上皮細胞に関しての検討であるが,角膜表層上皮細胞の密度はシェーグレン症候群(Sjogrensyn-drome:SS)に伴うドライアイにおいて減少するという報告が多い6~9).角膜表層上皮細胞の密度は,正常者では,833±223~1,528±341cells/mm2であるのに対して,Sjogren症候群では,741±306~993±105cells/mm2であると報告されている6~9)(図2,表1).また,角膜基底上皮細胞の密度に関しては,Sjogren症候群に伴うドライアイにおいて増加するという報告8,9)と変化しないという報告6,7)がある.角膜基底上皮細胞の密度は,正常者では,5,602±235~5,862±260cells/mm2であるのに対して,Sjogren症候群では,5,744±627~6,261±168cells/mm2であると報告されている6~9)(図RostockCorneaModuleR)が登場することになり,その解像度は飛躍的に向上した4,5)(図1).コンフォーカルマイクロスコピーにて,角膜内で観察されるものとしては,角膜上皮細胞,Bowman膜,角膜神経,角膜実質細胞,Descemet膜,角膜内皮細胞など多岐にわたる.その他,炎症細胞,血管,病原体や異物,沈着物など正常では見られないものも観察が可能である.IIドライアイへの応用1.角膜の観察コンフォーカルマイクロスコピーによるドライアイ患者の角膜の観察は,これまでにもいくつかの報告がある.角膜上皮細胞,角膜実質細胞,角膜神経などに関す表1Sjogren症候群(SS)における角膜表層上皮細胞密度報告者SS患者健常者p値Benitez-del-CastilloJMetal6)741±3061,528±341p<0.0001Benitez-del-CastilloJMetal7)971±2621,431±283p<0.002VillaniEetal8)965±961,486±134p<0.001VillaniEetal9)993±1051,512±131p<0.001(/mm2)表2Sjogren症候群(SS)における角膜基底上皮細胞密度報告者SS患者健常者p値Benitez-del-CastilloJMetal6)6,173±6345,783±841p=0.243Benitez-del-CastilloJMetal7)5,744±6275,858±702p=0.273VillaniEetal8)6,261±1685,862±260p<0.001VillaniEetal9)5,980±1935,602±235p<0.001(/mm2)ABSj?gren症候群患者健常者図2レーザー生体共焦点顕微鏡による角膜表層上皮細胞Aの健常者,BのSjogren症候群患者の画像を比較する限りにおいては,角膜表層上皮細胞の明らかな細胞密度の違いは認められないものの,Bの画像上方において,角膜表層上皮細胞の形態異常と大小不同を認める.また,Bの画像下方には,翼細胞が描出されている.ABSj?gren症候群患者健常者図3レーザー生体共焦点顕微鏡による角膜基底上皮細胞Aの健常者,BのSjogren症候群患者の画像を比較する限りにおいては,角膜基底上皮細胞の明らかな細胞密度の違いは認められない.Bの画像の右上方には,角膜神経線維が描出されている.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081629(21)3,表2).つぎに,角膜実質細胞に関しての検討であるが,表層部の角膜実質細胞の密度は,Sjogren症候群に伴うドライアイにおいて増加するという報告が多い6~9).表層部の角膜実質細胞の密度は,正常者では,970±105~1,107±210cells/mm2であるのに対して,Sjogren症候群では,1,226±70~1,348±220cells/mm2であると報告されている6~9)(図4,表3).また,深層部の角膜実質細胞の密度は,Sjogren症候群に伴うドライアイにおいて増加するという報告8,9)と変化しない6,7)という報告がある.深層部の角膜実質細胞の密度は,正常者では,702±79~798±42cells/mm2であるのに対して,Sjogr-en症候群では,808±117~854±45cells/mm2であると報告されている6~9)(図5,表4).角膜神経線維に関しては,角膜上皮下の角膜神経線維の数(または密度)は,Sjogren症候群に伴うドライア表3Sjogren症候群(SS)における角膜浅層実質細胞密度報告者SS患者健常者p値Benitez-del-CastilloJMetal6)1,348±2201,107±210p<0.05Benitez-del-CastilloJMetal7)1,322±1561,062±183p<0.01VillaniEetal8)1,275±331,098±80p<0.001VillaniEetal9)1,227±70970±105p<0.001(/mm2)表4Sjogren症候群(SS)における角膜深層実質細胞密度報告者SS患者健常者p値Benitez-del-CastilloJMetal6)808±117741±142p=0.659Benitez-del-CastilloJMetal7)815±131722±99p=0.921VillaniEetal8)854±45798±42p<0.01VillaniEetal9)836±65702±79p<0.001(/mm2)ABSj?gren症候群患者健常者図4レーザー生体共焦点顕微鏡による角膜浅層実質細胞BのSjogren症候群患者において,Aの健常者に比べて,角膜浅層実質細胞の細胞密度が多い傾向がある.ABSj?gren症候群患者健常者図5レーザー生体共焦点顕微鏡による角膜深層実質細胞Aの健常者,BのSjogren症候群患者の画像を比較する限りにおいては,角膜深層実質細胞の細胞密度の違いは明らかには認められない.Aの画像の左側には,角膜内皮細胞が描出されている.ABSj?gren症候群患者健常者図6レーザー生体共焦点顕微鏡による角膜神経線維Aの健常者,BのSjogren症候群患者の画像を比較する限りにおいては,角膜神経線維の密度の違いは明らかには認められない.ただし,BのSjogren症候群患者において,ビーズ形成が多い傾向がある.Aの画像の右下方には,角膜基底上皮細胞が描出されている———————————————————————-Page41630あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(22)3.付属器官の観察コンフォーカルマイクロスコピーによって,マイボーム腺の観察が可能であるとの報告がいくつかなされている12,13).そのなかで,マイボーム腺機能不全患者のマイボーム腺をコンフォーカルマイクロスコピーにて観察した結果,マイボーム腺の腺房密度の減少および腺房直径の拡大を認めたと報告されている13).また,それらはいずれも,マイボーム腺の腺構造の消失度および腺開口部の閉塞度に相関しているとされている.また,コンフォーカルマイクロスコピーによって,涙腺の観察が可能であるとの報告がなされている.そこでは,Sjogren症候群に伴うドライアイにおいて,涙腺の腺房密度の減少および腺房直径の拡大を認めたと報告されている(佐藤エンリケアダンほか:第32回角膜カンファランス,浦安,2008).おわりにコンフォーカルマイクロスコピーは,生体内の組織を細胞レベルまで観察することが可能な非常に有用な検査方法である.前述のとおり,組織を採取することなしに,生体内の組織の状態をそのまま観察することが可能であることより,invivobiopsyということができる.また,非侵襲的な検査であるために,くり返し検査を行うことが可能であり,疾患の診断目的に使用する以外イにおいて減少しているという報告が多い6~9)一方,変化しないという報告もある10,11).角膜上皮下の角膜神経線維の密度は,正常者では,769±88~787±105μm/mm2であるのに対して,Sjogren症候群では,508±128~511±106μm/mm2であると報告されている6,7)(図6,表5).また,角膜神経線維の形態異常については,Sjogren症候群に伴うドライアイにおいて,ビーズ形成(beadings)や蛇行(tortuosity)が多くなるという報告が多いものの6~9),輝度(reectivity)に関しては変化しないという報告が多い6~9)(表6~8).2.結膜の観察コンフォーカルマイクロスコピーによるドライアイ患者の結膜の観察は,これまでにほとんど報告されていない.Sjogren症候群に伴うドライアイにおいては,結膜上皮の基底細胞の密度は減少する一方,結膜上皮における炎症細胞数(または密度)は増加するという報告がある(若松タイスヒトミほか:第32回角膜カンファランス,浦安,2008).表7Sjogren症候群(SS)における角膜上皮下神経の輝度報告者SS患者健常者p値Benitez-del-CastilloJMetal6)2.6±0.82.6±0.8p=0.879VillaniEetal8)2.1±0.81.9±0.9p=0.083VillaniEetal9)2.0±0.72.0±1.0p=0.874(/分類)表8Sjogren症候群(SS)における角膜上皮下神経のビーズ形成報告者SS患者健常者p値Benitez-del-CastilloJMetal6)387±62198±65p<0.0001Benitez-del-CastilloJMetal7)364±64192±61p<0.001VillaniEetal9)333±64196±1p<0.001(/100μm)表6Sjogren症候群(SS)における角膜上皮下神経の蛇行報告者SS患者健常者p値Benitez-del-CastilloJMetal6)3.2±0.81.1±0.5p<0.0001VillaniEetal8)2.7±0.71.2±0.7p<0.0001VillaniEetal9)2.7±0.51.3±0.6p<0.001(/分類)表5Sjogren症候群(SS)における角膜上皮下神経数報告者SS患者健常者p値Benitez-del-CastilloJMetal6)2.8±1.24.6±0.8p<0.0001Benitez-del-CastilloJMetal7)2.7±1.24.6±0.8p<0.001VillaniEetal8)3.3±0.85.1±0.8p<0.0001VillaniEetal9)3.2±0.75.0±0.8p<0.001TuiskuISetal10)5.9±2.26.1±2.5p=0.782TuominenISJetal11)5.4±1.85.0±1.4p=0.584(/画像)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081631(23)dierencesinthenormalhumancornea:alaserscanninginvivoconfocalmicroscopystudy.BrJOphthalmol91:1165-1169,20076)BenitezdelCastilloJM,WasfyMAS,FernandezCetal:Aninvivoconfocalmaskedstudyoncornealepitheliumandsubbasalnervesinpatientswithdryeye.InvestOph-thalmolVisSci45:3030-3035,20047)BenitezdelCastilloJM,AcostaMC,WassMAetal:Relationbetweencornealinnervationwithconfocalmicroscopyandcornealsensitivitywithnoncontactesthe-siometryinpatientswithdryeye.InvestOphthalmolVisSci48:173-181,20078)VillaniE,GalimbertiD,ViolaFetal:ThecorneainSjgren’ssyndrome:aninvivoconfocalstudy.InvestOphthalmolVisSci48:2017-2022,20079)VillaniE,GalimbertiD,ViolaFetal:Cornealinvolve-mentinrheumatoidarthritis:aninvivoconfocalstudy.InvestOphthalmolVisSci49:560-564,200810)TuiskuIS,KonttinenYT,KonttinenLMetal:AlterationsincornealsensitivityandnervemorphologyinpatientswithprimarySjgren’ssyndrome.ExpEyeRes86:879-885,200811)TuominenISJ,KonttinenYT,VesaluomaMHetal:Cor-nealinnervationandmorphologyinprimarySjgren’ssyndrome.InvestOphthalmolVisSci44:2545-2549,200312)MessmerEM,TorresSuarezE,MackertMIetal:Invivoconfocalmicroscopyinblepharitis.KlinMonatsblAugenheilkd222:894-900,200513)MatsumotoY,SatoEA,IbrahimOMAetal:Theapplica-tionofinvivolaserconfocalmicroscopytothediagnosisandevaluationofmeibomianglanddysfunction.MolVis14:1263-1271,2008に,治療前後の評価を目的としても用いることが可能である.ドライアイに対するコンフォーカルマイクロスコピーの応用は以前より行われているものの,ドライアイによってひき起こされる生体組織内での反応がいまだに十分に解明されているとはいえないというのが現状である.今後,コンフォーカルマイクロスコピーを用いたドライアイの研究が進められることによって,さらにドライアイの病態が解明されることはもとより,将来的には,ドライアイの診断基準の一つとして,また,改善度の評価方法の一つとして応用されてくることを期待するものである.文献1)PetranM,HadravskiM,EggerMDetal:Tandem-scan-ningreected-lightmicroscope.JOptSocAm58:661-664,19682)MustonenRK,McDonaldMB,SrivannaboonSetal:Nor-malhumancornealcellpopulationsevaluatedbyinvivoscanningslitconfocalmicroscopy.Cornea17:485-492,19983)KaufmanSC,MuschDC,BelinMWetal:Confocalmicroscopy.AreportbytheAmericanAcademyofOph-thalmology.Ophthalmology111:396-406,20044)EckardA,StaveJ,GuthoRF:InvivoinvestigationsofthecornealepitheliumwiththeconfocalRostockLaserScanningMicroscope(RLSM).Cornea25:127-131,20065)NiedererRL,PerumalD,SherwinCetal:Age-related