提供コンタクトレンズセミナー読んで広がるコンタクトレンズ診療9.円錐角膜へのハードコンタクトレンズ処方糸井素啓京都府立医科大学(その1)■はじめに近年,円錐角膜眼に対する強膜レンズ(強角膜レンズ),ハイブリッドレンズなどの特殊なコンタクトレンズを用いた視力矯正の有効性が報告されている1).しかし,一部の強度乱視用のソフトコンタクトレンズを除き,強膜レンズなどの特殊なコンタクトレンズは厚生労働省から製造・販売の認可を受けていない.そのため,わが国では円錐角膜眼の不正乱視に対する屈折矯正にはHCLが第一選択となっている.円錐角膜眼へのハードコンタクトレンズ(HCL)処方のポイントを,2回に分けて解説する.C■レンズデザインの選択円錐角膜眼に対しては,おもに球面レンズとよばれる二つないしは三つの球面カーブで構成されたレンズと,多段カーブレンズとよばれる四つ以上のカーブで構成されたレンズのC2種類がある(図1).多段カーブレンズは「角膜中央部と周辺部の曲率差が正常眼に比較して大きい」という円錐角膜眼の特徴的な角膜形状を模したデザインであり,球面レンズではレンズが脱落してしまうような重症例であっても良好な装用感を得ることができる.また,角膜形状に合わせて処方できるため,角膜への物理的ストレスを生じにくく,レンズ後面と角膜頂点部の摩擦に起因する上皮障害を軽減することが可能である.以上のような特徴により,重症例=多段カーブレンズという印象をもつ人が多いが,重症例であっても球面レンズのほうが好ましい場合がある.一つは,角膜の突出部が中心から離れている場合(図2a,b)である.一般に多段カーブレンズは球面レンズと比較して光学径が狭くデザインされており,センタリングが不良になれば瞳孔領をレンズの光学域が覆えず,視力低下や複視などを生じやすい.そのため,角膜の突出部が中心から離れている場合は,多段カーブレンズより球面レンズがよい適応となることが多い.また,頻度は少ないが,角膜全体(71)C0910-1810/23/\100/頁/JCOPY道玄坂糸井眼科多段カーブレンズ球面レンズ図1球面HCL(マイルドII,サンコンタクトレンズ)と多段カーブHCL(エムカーブ,サンコンタクトレンズ)のレンズデザイン多段カーブレンズは球面レンズに比較して,オプチカルゾーンを狭くすることで,周辺部に位置するカーブ数を増やしたデザインとなっている.が突出しているような最重症例(図2c)も多段カーブレンズのよい適応とはならない.突出範囲が大きい眼では,オプチカルゾーンの小さい多段カーブレンズが円錐部におさまらず,結果的に不安定な処方になりやすい.レンズデザインについては,重症度のみならず突出部位の大きさや位置に応じて柔軟に使い分けることが望ましい.C■ベースカーブの選択第一選択となるベースカーブ(basecurve:BC)はレンズのデザインによって異なる.球面レンズは,前眼部OCTに内蔵されたCHCL処方プログラムを用いると,精度の高いCBC選択が可能となる2)(図3).また,前眼部OCTがない場合は,Placido型角膜形状解析装置から得られるマイヤーリング像が参考となる(図4).一方,多段カーブレンズは,メーカー間のデザイン差が非常に大きいため,メーカーのフィッティングマニュアルを参考にするが,すでに球面CHCLを装用している場合は,そあたらしい眼科Vol.40,No.5,2023C649図2多段カーブレンズより球面レンズのほうがよい適応となる症例前眼部COCTから得られたCInstantaneousCPowermap(Ca~c)とスケール(Cd).突出部位が暖色系で示されており,突出部位のなかでスケールでもっとも上方に示されている色の部分が頂点となる.突出部の頂点が中心から離れている場合(Ca,b)や突出範囲が広い場合(Cc)は,球面レンズのほうが安定したフィッティングが得られることが多い.軽度中等度重度若干の歪みを認めるのみリングの崩れが著明だが,外側のリングが投影外側のリングが投影されるされないBC:7.90mmBC:7.60mmBC:7.30mm図4マイヤーリング像に基づいた重症度分類とBC選択の目安マイヤーリング像に基づいて重症度をC3分類3)し,それぞれの重症度に応じてファーストトライアルレンズのCBCを選択する.次回は,引き続き「円錐角膜眼へのCHCLを処方」について,フィッティングの評価方法を中心に解説する.文献1)Santodomingo-RubidoCJ,CCarracedoCG,CSuzakiCACetal:Keratoconus:AnCupdatedCreview.CContCLensCAnteriorのフルオレセイン染色パターンに問題がなければ,球面CEyeC45:101559.C2022HCLのCBCも参考になる.筆者はエムカーブ(サンコン2)ItoiCM,CItoiCM,CHarigayaCACetal:CornealCRGPCcontactタクトレンズ)であれば球面レンズよりC0.6~0.9Cmm程Clens.ttingsoftwareforkeratoconusbuilt-inanteriorseg-mentCopticalCcoherenceCtomography.CEyeCContactCLens度小さいCBCから開始することが多い.いずれの方法にC48:503-508,C2022おいてもファーストトライアルレンズはあくまでも目安3)前田直之,岩崎直樹,細谷比左志ほか:円錐角膜の角膜形であり,以後のフルオレセインパターンの評価によるト状分類と臨床所見.臨眼45:1737-1741,C1991ライアンドエラーがもっとも重要である.図3前眼部OCTに内蔵された球面レンズの処方補助プログラムファーストトライアルレンズのCBCが,レンズの直径別に表示されている.