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狭隅角には注意を要する薬剤

2023年1月31日 火曜日

狭隅角には注意を要する薬剤DrugsthatRequireCautionwhenUsedinNarrowAngleEyes石岡みさき*I狭隅角眼に使用する場合に注意を要する薬剤とは隅角が狭い眼は散瞳時に隅角が閉じてしまい眼圧が上がることがあり,いわゆる急性緑内障発作の状態となる.眼圧はときに40~80mmHgとなり,早急に眼圧を下げないと失明する可能性もある.狭隅角眼に使用する場合に注意を要する薬剤とは散瞳する薬剤のことである.眼科でおもに検査時に用いる散瞳点眼薬(表1)は眼科医であればなじみがあると思うが,散瞳する薬剤は点眼薬だけではなく内服薬にも多く存在し(表2),そのほとんどは眼科以外で使われているものである.そしてかなりの数の薬剤が狭隅角に要注意とされている.薬剤添付文書には「閉塞隅角緑内障に禁忌」と書かれていることが多いが,正確にいえば「閉塞隅角眼に禁忌」であり,広い意味では今回のタイトルのように「狭隅角眼」に要注意となる.II隅角のチェック方法1.眼科では眼科ではほぼ全症例を細隙灯顕微鏡で診察しているので,前房の深さから隅角の状態を推測している.習慣的に前房が深い,浅い,と判定しているが,図1のようなグレード分類は昔から知られている.細隙灯顕微鏡の診察で隅角が狭いと考えられる患者では隅角鏡を使い隅角のチェック(器質的に閉塞しているかどうかもみる)を行い,また最近では前眼部光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)での検査も行われている(図2).2.眼科以外の診療科では眼科以外の診療科での問診票には「緑内障といわれていますか?」という項目がよくある.狭隅角眼に要注意の薬剤を使用する場合に備えての質問項目と思われるが,多治見スタディ(用語解説参照)1,2)(表3)の結果では日本人の緑内障のほとんどが開放隅角のため,緑内障の診断がついていても散瞳して眼圧が上がることはそれほど多くないといえる.患者は病型を説明されていても覚えていないことが多く,緑内障の病型について他科や調剤薬局から問い合わせが来ることがある.日本眼科医会作成の緑内障病型説明カードを緑内障の診断がついた時点で渡しておくと役に立つ(図3).しかし,緑内障と診断がついている人だけが薬剤投与時に要注意となるわけではない.緑内障になっていない狭隅角の人も散瞳すると眼圧が上がる可能性はあるが,皆が眼科を受診しているわけではないからである.隅角が狭い眼は遠視が多く,遠視の人は子どものころより視力がよいため眼科を受診する機会が少ない.そのため眼科受診歴のない人のほうが狭隅角の可能性が高いともいえるので,眼科以外の診療科で狭隅角眼に要注意の薬を投与する際に緑内障の既往歴を尋ねても,眼圧の上がるリスクをすべて回避できるとはいえない.とはいっても,薬剤投与前に全員に眼科受診を勧めるのは現実的で*MisakiIshioka:みさき眼科クリニック〔別刷請求先〕石岡みさき:〒151-0064東京都渋谷区上原1-22-61Fみさき眼科クリニック0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(17)17表1散瞳する点眼薬・眼軟膏一般名先発品名アトロピン硫酸塩水和物日点アトロピン点眼液1%リュウアト1%眼軟膏フェニレフリン塩酸塩ネオシネジンコーワ5%点眼液トロピカミドミドリンM点眼液0.4%トロピカミド・フェニレフリン塩酸塩配合ミドリンP点眼液シクロペントラート塩酸塩サイプレジン1%点眼液表2狭隅角眼に要注意の薬ベンゾジアゼピン系(抗不安薬,抗てんかん薬)抗うつ薬抗パーキンソン薬のレボドパ,抗コリン薬低血圧治療薬麦角アルカロイド抗ヒスタミン薬(第一世代)鎮咳薬(第一世代の抗ヒスタミン薬を含むもの)感冒薬(第一世代の抗ヒスタミン薬を含むもの)鎮暈薬(第一世代の抗ヒスタミン薬を含むもの)鎮痙薬(抗コリン作用のあるもの)排尿障害治療薬気管支拡張薬(抗コリン作用のあるもの)散瞳点眼薬(別表参照)図1VanHerick法(用語解説参照)細くしたスリット光を角膜輪部に直角に当て(観察軸と60°の角度から光を入れる),角膜厚と前房深度を比較する方法.Grade1:前房の深度が角膜厚の1/4未満.隅角閉塞が起きやすいとされている.Grade2:前房の深度が角膜厚の1/4.Grade3:前房の深度が角膜厚の1/4から1/2.Grade4:前房の深度が角膜厚以上.a:強度近視眼.前房の深さは角膜厚より深いことがわかる.Grade4.b:遠視眼.前房の深さは角膜厚よりやや浅い.Grade3.筆者自身の眼である.表3多治見スタディによる緑内障有病率図2前眼部OCT図1bと同一眼(筆者の眼).OCTは接触せずに前眼部の画像解析が行えるので患者負担が少ない.筆者は自分の前房が浅いことは知っていたが,自らには隅角鏡検査は当然行えず,またOCTが高額で自分のクリニックでは導入していないため,西府ひかり眼科の野口先生にお願いして撮ってもらった.細隙灯顕微鏡で診察するとかなり前房が浅く見えるのだが,OCTでは隅角は開放していることが確認できて安心した.(西府ひかり眼科野口圭先生のご厚意による)図3緑内障連絡カード(表と裏)二つ折りにするとクレジットカードサイズになり財布などに入れやすい.図4ペンライトによる隅角のチェック方法角膜輪部耳側から真横に光を当てると,隅角が広い場合は前房内全体を照らすことができるが,隅角が狭いと虹彩にさえぎられ前房内を照らしにくくなる.a:近視眼に耳側から光を当てると虹彩全面に光が当たる.b:図1bの眼に同様に光を当てると,光源と反対側の鼻側の虹彩には光が当たっていない.表4久米島スタディにおける原発閉塞隅角の割合日本語病名英文病名略称定義%原発閉塞隅角症疑いprimaryangleclosuresuspectPACS機能的な隅角閉塞があるが,眼圧上昇およびその既往を疑わせる所見はなく,緑内障性視神経障害もなし8.8原発閉塞隅角症primaryangleclosurePACPACSの所見に加え,周辺虹彩前癒着や,眼圧上昇あるいはその既往を疑わせる所見はあるが,緑内障性視神経障害はなし3.7原発閉塞隅角緑内障primaryangleclosureglaucomaPACGPACの所見に加え,緑内障性視神経障害あり2■用語解説■多治見スタディ:岐阜県多治見市で行われた緑内障有病率調査.久米島スタディ:沖縄県久米島で行われた緑内障有病率調査.VanHerick法:細隙灯顕微鏡診察による角膜厚と前房深度を比較して隅角の広さを推測する検査法.

緑内障点眼薬に伴う副作用

2023年1月31日 火曜日

緑内障点眼薬に伴う副作用SideE.ectsofTopicalGlaucomaMedications三木篤也*はじめに緑内障のもっともメジャーな病型である原発開放隅角緑内障は,慢性進行性不可逆性の視神経症である.不可逆性であるから,多くの緑内障患者は,診断が下った時点から一生点眼を継続することになる.さらに,最近では多種多様な緑内障点眼薬が上市された結果,複数の点眼薬を使用している患者も多い.点眼薬に限らず,どのような薬剤でもある程度は副作用を生じるが,緑内障の場合,長期にわたり多数の点眼薬を使用することが多いため,副作用を生じる頻度が多いと考えられる.緑内障診療をするうえで,緑内障点眼薬の代表的な副作用とその対処法を知っておくことは重要である.CI角結膜上皮障害緑内障点眼薬を使用している患者では,角結膜上皮障害を中心とした眼表面疾患(ocularCsurfacedisease)を認めることが多い.点眼薬の成分そのもの,あるいは防腐剤などの添加物が原因になる.もっとも一般的に認められる角膜上皮障害については,点眼薬の角膜上皮ターンオーバーへの作用,眼表面の麻酔作用,防腐剤の作用などにより点状表層角膜症や角膜びらんなどの上皮欠損を生じる.とくに,多剤を長期にわたって使用している患者や,塩化ベンザルコニウムを中心とした防腐剤を含む点眼薬を使用している患者,ドライアイを合併している患者に角膜上皮障害がみられやすい.緑内障点眼薬を使用している患者に角膜上皮障害を認めた際には,点眼薬の毒性による角膜上皮障害なのか,ドライアイなのかの鑑別が必要である.両方を合併している場合も多いので,全例で明確に鑑別ができるわけではないが,典型例においては,ドライアイでは結膜上皮障害のほうが角膜上皮障害より優位であり,瞼裂部を中心に上皮障害が生じやすいのに対して,薬剤毒性では角膜上皮障害のほうが結膜上皮障害より優位であり,角膜全体にびまん性に上皮障害が広がることが多い(図1,表1).上皮ターンオーバーの異常から上皮障害を生じている場合は,渦巻き状の点状表層角膜症(ハリケーン角膜症)からCepithelialCcracklineとよばれる上皮に割れ目ができたように見える状態に進行することがある(図2).点眼薬の毒性により角膜上皮障害を生じている場合は,原因薬剤を中止し,人工涙液点眼をして眼表面から原因薬剤を洗い流すのが原則である.複数薬剤を使用していて,どの薬剤が原因であるか不明の場合には,すべての薬剤を中止するのが基本である.しかし,病状的にすべての薬剤を中止するのがむずかしい場合は,状況から考えて原因薬剤である可能性が高い薬剤を中止し(たとえばこれまで角膜上皮障害がなかった眼に最近薬剤を追加して上皮障害が生じた場合は最後に追加した薬剤が疑わしいし,塩化ベンザルコニウムを使用している薬剤など比較的上皮障害を起こしやすい薬剤と,防腐剤フリーなど上皮障害を起こしにくい薬剤がある),他の薬剤を継続することもある.しかし,いったん重症の上皮障*AtsuyaMiki:愛知医科大学医学部眼科学近視進行抑制学〔別刷請求先〕三木篤也:〒480-0015愛知県長久手市岩作雁又C1-1愛知医科大学医学部眼科学近視進行抑制学C0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(11)C11図1点眼薬(b遮断薬)による角膜上皮障害図2点眼薬(プロスタグランジン関連薬とb遮断薬併用)角膜優位でびまん性の点状表層角膜症を認める.による高度の角膜上皮障害角膜前面にびまん性の点状表層角膜症を認め,瞳孔下方にCepithelialcracksign(横方向に線状に角膜上皮が割れるよ表1薬剤毒性による角膜上皮障害とドライアイの鑑別うに上皮欠損を認める所見)を認める.薬剤毒性ドライアイ角膜Cvs結膜角膜優位結膜優位角膜内での分布びまん性瞼裂優位,しばしば集簇性対処法原因薬剤中止ドライアイ治療※ドライアイと薬剤毒性を合併している症例が多いことにも注意.図3点眼による眼瞼皮膚炎(右眼)図4プロスタグランジン関連薬点眼によるプロスタグラン痂皮を生じている.点眼をうまく眼球に入れられず,眼瞼ジン関連眼窩周囲症(PAP)に滴下してしまうことが多い高齢者,視野障害の強い患者上眼瞼溝の深化を認める.この患者ではそれ以外に睫毛のなどで生じやすい.伸長,産毛の増加,皮膚の色素沈着も認める.表2おもな緑内障点眼薬の副作用薬剤種別副作用プロスタグランジン関連薬PAP,睫毛伸長,色素沈着,結膜充血,黄斑浮腫EP2受容体作動薬結膜充血,黄斑浮腫Cb遮断薬気道閉塞,徐脈炭酸脱水酵素阻害薬角膜内皮機能低下Ca受容体作動薬結膜アレルギー,角膜浸潤,傾眠ROCK阻害薬結膜充血,眼瞼炎

点眼薬による眼不快感と角膜障害 (中毒性角膜症)

2023年1月31日 火曜日

点眼薬による眼不快感と角膜障害(中毒性角膜症)Eye-Drop-InducedOcularDiscomfortandCornealDisorders(ToxicKeratopathy)近間泰一郎*はじめに点眼薬は,われわれにとって身近なものである.現代社会における眼に対するストレスは増加しており,ドラッグストアなどでも医師の処方箋なしに購入できる一般用医薬品(OTC医薬品)点眼薬を購入して,セルフメディケーションを行う人も多い.近年,医療用医薬品がOTC医薬品に転用されたスイッチOTC医薬品点眼薬も増加している.眼の痒み,ドライアイ症状,疲れ眼,コンタクトレンズ使用に伴う不快感などに対しては,眼科を受診せずにセルフケアでの対応も多いと推察される.点眼薬のさし心地は,使用者の点眼に対するコンプライアンスにも直結する.また,さし心地に求めるものが個々で異なることもある.具体的には,点眼に爽快感のみを求めたり,反対にしみることを不快に感じたり,眼表面の自覚的な潤いのみを必要としたりといった具合である.いずれにしても,使用者が期待する効果が得られ,視機能に障害が出ていなければ問題はない.一方で,医師から処方されている点眼薬は,基本的に眼疾患の治療を目的に処方されており,患者自身の裁量で使用するのではなく,指示通り点眼することが求められている.とりわけ,新規や追加で点眼薬を処方した際に眼不快感や角膜障害が出現した場合には,眼科医による迅速な対応が求められる.問題は,点眼薬使用によりそれまで感じたことがなかったかすみや眩しさ,異物感や痛みが生じている場合である.診察に際しては,それまで使用した市販薬も含めた薬剤の種類と,その使用法を丁寧に聴取することが必要である.近年,さまざまな病態に対する新しい薬剤が発売され,処方の選択肢が拡大したと同時に,同一疾患に対する併用可能薬剤も増加してきている.点眼薬は,主薬と賦形剤からなる.賦形剤には緩衝剤,防腐剤などが含まれ,主薬を標的部位に有効にかつ安全に到達させると同時に点眼薬としての安定化を目的に使用されている.眼科領域においても数多くの後発医薬品が上市されている.後発医薬品は先発医薬品と主薬は同じであるが,賦形剤は異なる場合がほとんどである.中毒性角膜症とは,主薬による直接的な作用,知覚神経や涙液分泌機能への影響を介する間接的な作用,あるいは防腐剤などの細胞毒性による種々の角膜障害(とくに上皮障害)のことである.臨床的には数種類の点眼薬の併用や頻回点眼による角膜上皮障害の出現をしばしば経験する.本稿では,点眼薬による眼不快感や角膜障害について,1)角結膜の知覚神経と自覚症状の生じるメカニズム,2)点眼薬の組成と賦形剤の役割,3)中毒性角膜症の臨床とその対応,について概説する.I角結膜の知覚神経支配と自覚症状の生じるメカニズム結膜の知覚神経は,三叉神経第1枝から分岐した涙腺*TaiichiroChikama:広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学(眼科学)〔別刷請求先〕近間泰一郎:〒734-8553広島市南区霞1-2-3広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学(眼科学)0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(3)3図1ヒトの角膜神経の三次元的シェーマ(文献2より引用)表1温度応答性TRPチャネルの性質とおもな発現部位,関連疾患受容体活性化温度閾値発現部位ほかの活性化刺激関連疾患CTRPV143℃<感覚神経・脳カプサイシン・酸カンフル・アリシン・脂質2-APB・NO・バニロトキシンレシニフェラトキシン直腸過敏症,炎症性腸疾患(IBD),過敏性腸症候群(IBS)機能的ディスペプシア(FD),食道炎,胃食道逆流症(GERD)炎症性膀胱痛,膀胱機能異常(過活動膀胱や神経因性膀胱)肺疾患(咳発作や気管支喘息)CTRPV252℃<感覚神経・脳・脊髄・肺・肝臓・脾臓・大腸膀胱上皮・筋肉・免疫細胞機械刺激・成長因子・2C-APBプロペネシド・リゾリン脂質消化管の弛緩異常に起因する疾患筋萎縮心筋症CTRPV332.39℃<皮膚・感覚神経・脳脊髄・胃・大腸2-APB・サイモール・メントールオイゲノール・カンフルカルバクロール・不飽和脂肪酸結腸直腸癌,Olmsted症候群温度感覚異常発毛異常(マウス)CTRPV427.35℃<皮膚・脳・膀胱上皮腎臓・肺・内耳血管内皮低浸透圧刺激・GSKC1016790・脂質機械刺激・4a-PDD短脊柱症,脊椎,骨幹端異形成症(SMD)Kozlowski型変容性骨異形成症,肩甲腓骨脊髄性筋萎縮症遺伝性運動感覚性ニューロパチータイプCIIC,膀胱機能異常呼吸機能異常,皮膚乾燥症CTRPM4Cwarm心臓・肝臓などカルシウム糖尿病,自己免疫性脳脊髄炎,多発性硬化症,脊髄障害肥満細胞のかかわる免疫異常C耐糖能異常味覚異常TRPM5味細胞・膵臓TRPM236℃<脳・膵臓免疫細胞などcyclicADP-ribose・HC2O2Cb-NAD+・ADP-ribose耐糖能異常,免疫異常,双極性障害,筋萎縮性側索硬化症様Parkinson病様神経疾患CTRPM8<25.2C8℃感覚神経・前立腺メントール・イシリン膜リン脂質温度感覚異常痛覚異常CTRPA1<1C7℃(?)感覚神経腸管エンテロクロマフィン細胞アリルイソチオシアネート・アリシンシナモアルデヒド・機械刺激?2-APB・カルバクロール・アリシンカルシウム・細胞内アルカリ化・HC2O2冷刺激異痛症家族性一過性疼痛症候群炎症性疾患呼吸器疾患哺乳類(ヒト,マウス,ラット)の場合を示す.リガンド応答性や活性化温度閾値は生物種によって異なることが報告されており,生理機能も多様であると予想される.アリシン(ニンニクの辛味成分),アリルイソチオシアネート(ワサビの辛味成分),シナモアルデヒド(シナモンの辛味成分),カルバクロール(オレガノの主成分),サイモール(タイムの主成分)(富永真琴:漢方医学37:166-175,2013)図2点眼薬の組成表2賦形剤の種類とはたらき可溶化剤有効成分の可溶化.塩形成による溶解または溶解補助剤(界面活性剤)による溶解.(塩形成)ナトリウム塩,カリウム塩(界面活性剤)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油pH調節剤有効成分に最適のCpHに調節する.水酸化ナトリウム,塩酸緩衝剤薬物や他の賦形剤の分解などによる点眼液の経時的なCpH変動を防止する.緩衝力が強すぎると点眼時の眼刺激性が高まる.ホウ酸,リン酸,酢酸塩ソルビトール,マンニト-ル等張化剤浸透圧の調整.涙液と等張な点眼液が望まれる.塩化ナトリウム,塩化カリウム,ホウ酸,グリセリン安定化剤薬物の加水分解や酸化分解の防止.加水分解はCpH調節,酸化分解は容器や包装の工夫により防止することも可能.(加水分解)エデト酸ナトリウム,クエン酸(酸化分解)亜硝酸ナトリウム防腐(保存)剤微生物汚染の防止塩化ベンザルコニウム,パラベン類,クロロブタノール図3中毒性角膜症の多彩な所見表3中毒性角膜症の原因となりうる主薬1.抗緑内障薬Cbブロッカー:上皮伸展抑制,角膜知覚低下,結膜杯細胞減少,涙液減少,偽類天疱瘡プロスタグランジン製剤:角膜上皮障害,眼瞼・虹彩色素沈着,睫毛異常ピロカルピン:結膜.短縮2.抗微生物薬(微生物に対する有効濃度と上皮細胞毒性を示す濃度との間に差がないもの)アミノグリコシド系,抗真菌薬(ピマリシン,アンホテリシンB),抗ウイルス薬(IDU)3.抗炎症薬非ステロイド性抗炎症薬:上皮細胞の増殖・分化に影響(ジクロフェナック)ステロイド:DNA合成阻害,増殖抑制4.表面麻酔薬:濫用による細胞障害性と沈着点眼薬素因(細胞脆弱性)糖尿病角膜を取り巻く環境ジストロフィ涙液・眼瞼幹細胞疲弊症知覚神経結膜での免疫系角膜上皮障害図4中毒性角膜症の発症機転表4先発医薬品と後発医薬品の賦形剤の違い賦形剤(赤字は防腐剤)CpH浸透圧薬価先発医薬品CA乾燥亜硫酸ナトリウム,塩化ナトリウム,結晶リン酸二水素ナトリウム,リン酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,パラオキシ安息香酸メチル,パラオキシ安息香酸プロピル7.5.C8.5約C0.8C82.00後発医薬品CB塩化ナトリウム,塩化ベンザルコニウム,結晶リン酸二水素ナトリウム,ポリソルベートC80,リン酸水素ナトリウム,pH調節剤6.5.C8.5約1C29.80後発医薬品CCホウ酸,ホウ砂,パラオキシ安息香酸メチル,パラオキシ安息香酸プロピル,乾燥亜硫酸ナトリウム7.5.C8.50.9.C1.1C28.60後発医薬品CDホウ酸,ホウ砂,塩化ナトリウム,塩化ベンザルコニウム,クエン酸ナトリウム,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油C607.5.C8.5約C0.9C28.60後発医薬品CEホウ酸,ホウ砂,エデト酸ナトリウム,等張化剤(防腐剤フリーとの記載あり)7.5.C8.50.9.C1.1C29.20主剤:リン酸ベタメタゾン(文献C15より引用追記)表5中毒性角膜症発症リスクのチェックポイント細隙灯顕微鏡検査・涙液機能評価(メニスカス,涙液層破壊時間)・上皮障害評価(角膜・結膜)・角膜を取り巻く環境因子(瞼球結膜,眼瞼,内皮など)・角膜知覚,Schirmerテスト問診(お薬手帳の活用)・全身疾患(糖尿病,膠原病,アトピー,脳外科疾患,癌など)・使用点眼薬(処方薬以外も)・内服薬(ステロイド,抗癌剤,向精神薬など)

序説:眼科医が知っておきたい薬剤の副作用

2023年1月31日 火曜日

眼科医が知っておきたい薬剤の副作用DrugSideE.ectsthatOphthalmologistsNeedtoKeepinMind辻川明孝*眼科診療では点眼薬,内服薬などの種々の薬剤を用いる.緑内障の点眼薬により,角膜上皮障害や黄斑浮腫が生じることもあれば,喘息が誘発されることもあるため,処方の際には注意が必要である.前もって患者に起こりうる副作用の情報を伝えておくことは重篤な状態に陥ることを防ぐとともに,トラブルの防止にもつなががる.とくに,喘息や不整脈は命にかかわることもある副作用であるため,事前にリスクに関する聴取は欠かせない.そして,聴取したことをカルテにきっちり記載しておくとこも重要である.近年,眼科で盛んに用いられるようになった抗VEGF治療にもさまざまな副作用がある.眼内炎,白内障,網膜.離,眼内炎症などの眼局所の副作用や脳卒中などの全身的な副作用が報告されている.そのため,治療開始前に十分な病歴の聴取,副作用の説明は重要である.多くの眼科医が実感しているように,抗VEGF治療により加齢黄斑変性などの視力予後は大きく改善した.しかし,脳梗塞の既往がある場合などでは,リスクとベネフィットを勘案したうえで,患者と相談しながら治療方針を決めることが重要である.眼科検査に用いる薬剤にも注意が必要である.診療の際に用いる散瞳薬は,狭隅角の場合には急性緑内障発作のリスクがある.忙しい日常臨床において,このような患者に誤って散瞳薬を用いないように対策を講じることが必要である.眼科日常臨床でよく施行する造影剤の副作用にも注意を要する.とくに,フルオレセインナトリウムでは,悪心・嘔吐,発疹などの軽度な副作用は比較的よく経験するが,ときには,アナフィラキシーショック,心停止に至ることもあり,死亡例も数年に1例は報告されている.このような副作用は完全に避けることはできないので,アナフィラキシーショックが生じた際に救急処置するための機器・薬剤を普段から準備しておき,発症した際の対応シミュレーションを定期的に行うことが重要である.一方で,他科で処方された薬剤によっても眼副作用が生じることがある.なかでもステロイドの副作用が頻度的に高い.内科や小児科からのステロイドの全身投与の際に副作用の評価を依頼されることはよくある.また,アトピー性皮膚炎に対して皮膚科から処方されたステロイド軟膏によって緑内障が生じ,視野障害がかなり進行してから初めて受診する患者は依然として経験する.エタンブトールに伴う視神経症,ヒドロクロロキンに伴う網膜症,アミオダロンに伴う角膜症など,他科で処方される薬剤の副作用に関しても頻度の高い眼合併症は理解してお*AkitakaTsujikawa:京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(1)1く必要がある.薬剤の副作用としてもっとも重篤なケースがStevens-Johnson症候群である.眼科で処方した抗菌薬でも発症しうるが,皮膚科からの眼症状に関する紹介で遭遇することが多い.結膜炎症に対する初期対応によって患者の眼科的な予後は大きく変わるので,眼科医として対応の方法をよく認識しておくことは非常に重要である.最後に,抗癌剤は種々の眼合併症を引き起こすことは以前から知られていた.ST-1に伴う角膜・涙道副作用はこれまでもよく経験してきた.近年,免疫チェックポイント阻害薬などの新しい抗癌剤が次々に上市されている.このような抗癌剤は黄斑浮腫や漿液性網膜.離など,網膜に副作用をしばしば引き起こす.腫瘍内科などから副作用の評価を依頼された場合にはわかりやすいが,視力低下や変視症などを自覚した患者が自発的に眼科を受診する場合もある.最近の癌治療は進歩しているため,一見元気そうであっても抗癌剤による治療を継続している患者もよく経験する.患者が抗癌剤の副作用と認識していない場合には,眼科医に内服していることを伝えてくれないので,医師側から積極的に質問する必要がある.診療において,薬剤を使う限り,薬剤の副作用は避けることはできない.本特集は眼科医として日常臨床で最低限意識しておきたい薬剤の副作用の理解を促すために企画した.2あたらしい眼科Vol.40,No.1,2023(2)

眼科病棟の高齢入院患者における点眼手技の研究

2022年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科39(12):1704.1708,2022c眼科病棟の高齢入院患者における点眼手技の研究森本綾華*1三木篤也*2,3中川里恵*1西田幸二*2,4*1大阪大学医学部附属病院看護部*2大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)*3愛知医科大学医学部近視進行抑制学*4大阪大学先導的学際研究機構生命医科学融合フロンティア研究部門CInvestigationofEyeDropInstillationTechniquesinElderlyInpatientswithEyeDiseasesAyakaMorimoto1),AtsuyaMiki2,3),RieNakagawa1)andKoujiNishida2,4)1)DepartmentofNursing,OsakaUniversityHospital,2)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,OsakaUniversityGraduateSchoolofMedicine,3)DepartmentofMyopiaControlResearch,AichiMedicalUniversityMedicalSchool,4)IntegratedFrontierResearchforMedicalScienceDivision,InstituteforOpenandTransdisciplinaryResearchInitiatives,OsakaUniversityC眼科病棟の入院患者における点眼手技の巧拙およびそれに関連する背景因子について検討を行った.2020年C9月1日.2021年C5月C31日に大阪大学医学部附属病院西C7階病棟に眼疾患の治療目的で入院した患者のうち,65歳以上の176名を対象とし,16項目の点眼手技を,チェック表を用いて看護師が「できている」「指導があればできる」「できていない」のC3段階で評価した.その後,定量的評価が困難なC4項目を除いたC12項目の評価結果と,年齢および性別,病名との相関を統計学的に検討した.12項目すべてが「できている」であった者はC44名(40.7%)で,平均年齢が65.3歳であったのに対し,それ以外の患者の平均年齢はC72.0歳であり,有意に年齢が高かった(p=0.0151).性別では男性(60.4%)が女性(39.6%)よりも有意に「できている」の割合が高かった.緑内障患者が緑内障以外の患者より有意で「できている」の割合が高かった.CWeanalyzedthetechniquesofeyedropinstillationandassociatedbaselinefactorsininpatientswitheyedis-eases.CInCthisCstudy,CnursesCevaluatedCtheCinstillationCtechniquesCofCtheCinpatientsCwhoCunderwentCophthalmologicCtreatmentsfromSeptember1,2020toMay31,2021atOsakaUniversityHospitalusingthree-levelscoringof16parameters.Scoresof12parametersexcluding4parametersthatwerenotsuitableforquantitativeanalysiswereretrospectivelycollectedandstatisticallyanalyzed.Forty-fourpatients(40.7%)showeda“good”instillationtech-niqueinall12parameters.Themeanageofthepatientswhoshowedagoodtechniqueinall12parameters(i.e.,65.3years)wassigni.cantlyhigherthanthatofthepatientswhoshowedbadtechniqueinany1of12parameters(i.e.,C72.0Cyears,Cp=0.0151).CMalepatients(60.4%)performedCbetterCthanCfemalepatients(39.6%).CPatientsCwithCglaucomaperformedbetterthanthepatientswithotheroculardiseases.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(12):1704.1708,C2022〕Keywords:点眼,高齢者.eyedrop,elderlypeople.はじめに日本人の平均寿命は内閣府の統計データによるとC2018年時点で男性C81.3年,女性C87.3年であり,2019年の高齢化率はC28.4%にも上る1).また,2016年の健康寿命は男性72.1歳,女性C74.8歳である2).厚生労働省の「平成C29年の患者調査の概況」によると,65歳以上の入院患者は入院患者全体のC73.2%,75歳以上でC53.2%であり,外来通院している患者では,65歳以上の患者が外来患者全体のC50.6%,75歳以上でC28.9%となっている3).患者の高齢化は眼科領域においても例外ではなく,眼科医会によるとC2007年時点で日本にはC145万人の視覚障害患者が存在すると推定されているが,その視覚障害者の半数は70歳以上であり,60歳以上でC72%を占めていると推定されている4).高齢化が進むなかで白内障などの一時的に点眼治療が必要な患者だけでなく,緑内障など長期に点眼治療が必要な患者も高齢化しており,点眼管理が医師の指示どおり行えているかどうか疑問である.高齢者の服薬管理の研究は過去に行われており,加齢に伴〔別刷請求先〕三木篤也:〒480-1195愛知県長久手市岩作雁又C1-1愛知医科大学医学部眼科学講座Reprintrequests:AtsuyaMiki,DepartmentofOphthalmology,AichiMedicalUniversityMedicalSchool,1-1YazakoKarimata,Nagakute,Aichi480-1195,JAPANC1704(136)い罹患する疾患数が増えるため処方される薬の種類も増え,複数の薬の服薬自己管理が必要であるといわれている5).厚生労働省のC2019年の統計によると,服薬中の薬がC7種類を超えるケースはC65.74歳でC13.5%,75歳以上でC24.5%であり6),高齢者が多剤を服用していることがわかる.高齢化に伴う認知機能の低下,理解力の低下,身体機能の低下に加え,多剤服用によりさらに服薬自己管理が困難になっていると示唆され,また,服用期間が長期になることで服薬忘れや自己中断も起きていることが示されている5).眼科領域においても自己点眼が必要な高齢患者が多く,緑内障患者の多くは点眼薬が多剤処方されており,点眼管理が困難になっていることが考えられる.また,処方された点眼薬を指示回数どおり実施しているだけでは不十分であり,正しく点眼できていることが重要である.眼疾患の治療において点眼は,手術患者の術前無菌化,術後感染予防,消炎などに重要であり欠かすことのできない治療法の一つである.しかし,超高齢社会である現代において眼科疾患を有する患者も高齢化している.生方らは白内障手術を受けた患者に限定して点眼手技を評価し,点眼容器を持つ手が安定しないことが確実な点眼ができない要因であり,げんこつ点眼法の指導が自己点眼の習得に有効であると考察している7).鈴木はC75歳以上の後期高齢者では老年症候群,フレイル,認知症が増加すると述べている.また,60歳以上の患者で点眼アドヒアランスが不良であり,60歳以上の高齢者に積極的な点眼指導を行う必要性を述べている8).これらのことから,75歳以上の後期高齢者においては,視力障害の程度にかかわらず自己点眼が困難になることが少なくないと考える.これからますます増加する高齢眼科疾患患者に対し,早期に正しい点眼手技を獲得してもらうことは眼科看護の重要な課題であると考える.しかし,高齢の眼科疾患を有する患者の看護ケアとして点眼手技に着目した先行研究や,自己点眼の評価についてのガイドラインもなく,各施設でそれぞれの経験に基づいてチェックリストや判断基準を作成している現状がある.これらのことから,眼科病棟の入院患者における点眼手技の巧拙およびそれに関連する背景因子を検討することで,その後の自己点眼確立に向けての介入の検討に役立てることができると考える.そのような背景から,今回筆者らは,眼科病棟入院中の高齢患者において,点眼手技およびそれに相関する因子の検討を行った.CI対象および方法対象は,2020年9月1日.2021年5月31日に大阪大学医学部附属病院西C7階病棟(当科)に眼疾患の治療目的で入院したC65歳以上の患者のうち,「点眼手技チェック表」に基づいて看護師が点眼手技の評価を行ったC176名(平均年齢C69.1±14.7歳)である.内訳は女性C83名(47%),男性C93名(53%),病名は緑内障C118名(67%),その他C58名(33%)であった.当科では,点眼継続の必要があるすべての入院患者に対して,独自に作成した「点眼手技チェック表」に基づいて点眼手技の評価を行っている.点眼手技チェック表はC16項目からなり(表1),それぞれ看護師がC3段階(できている,指導があればできる,できていない)のスコアで評価している.チェック表を後ろ向きに収集し,定量的評価が困難なC4項目を除いたC12項目を解析の対象とした.「できている」を良好,「指導があればできる」および「できていない」を不良として,それぞれの項目について点眼手技が良好であった患者の割合(良好率)と,年齢および性別,病名と各項目の良好率との相関を統計学的に検討した.また,12項目すべてが「良好」の群と,一つでも「不良」があった群のC2群に分けてC2群の頻度と,相関する因子の検討を行った.解析は統計ソフトウェアCJMPPro15.2.0(SASInstituteInc)を用いて行った.連続変数は線形回帰分析,名義変数はCt検定を用い,p値C0.05未満を有意とした.本研究は臨床研究法を遵守し,ヘルシンキ宣言に則って行った.本研究は大阪大学医学部附属病院倫理委員会の承認を受け,研究内容を公表し被検者に拒否の機会を与える(オプトアウト)形で行った.CII結果点眼手技チェック表の各項目の良好者数と良好率を表2に示す.良好者が少ない項目は「8.眼球,瞼,睫毛と点眼薬が接していない」でC139名(78.9%)であり,もっとも良好者が多い項目は「13.後片付けを行う」でC168名(95.4%)であった.項目C8以外は良好者がC80%以上あった.病名と相関した項目はC7項目あり(表3),年齢と相関したのはC3項目であった(表4).すべての項目が良好であった患者はC91名(51.7%),どれか一つでも不良であった患者はC85名(48.3%)という結果になった.性別,年齢,疾患のすべてが点眼手技すべての項目の巧拙と有意に相関した.性別は男性C55名(60.4%)が女性C36名(39.6%)よりも有意に良好であった.また,年齢においては良好群がC66.3C±1.5歳,不良群C72.0±1.6歳であり(表4),年齢が若いほうが有意に良好であり,疾患では緑内障患者が緑内障以外の患者より有意に良好であった(表5).CIII考察眼科入院患者において,当科独自点眼手技チェック表を用いて客観的な評価を行った.点眼手技チェック表の各項目のなかで良好者が少ない項目は「8.眼球,瞼,睫毛と点眼薬が接していない」でC139例(78.9%)であり,もっとも良好者が多い項目は「13.後片付けを行う」でC168例(95.4%)表1「点眼手技チェック表」の項目1.点眼薬の種類を判別できる.2.手をきれいに洗う.3.アイコットンを清潔に使用する.4.アイコットンで目頭から目尻の方向に拭く.5.アイコットンの同じ面でC2度拭きしない.6.点眼薬の蓋は上向きに置く.7.安全に下眼瞼のみを引っ張る.8.眼球,瞼,睫毛と点眼薬が接していない.9.点眼薬はC1滴を点眼する.10C①.点眼時の体位(仰臥位・坐位・その他)10C②.坐位以外の体位で実施する理由(例・開眼困難,頸部拘縮)11.溢れた点眼液をアイコットンで拭き取る.12.複数の点眼薬使用時,5分間隔をあける.13.後片付けを行う.14.(頻回点眼時のみ)点眼表にチェックを入れる.15.正しく点眼薬を保管している(冷蔵庫や交換日など).表2各項目における良好患者数と良好率項目良好者数(良好率)C1.点眼薬の種類を判別できる.160名(C90.9%)C2.手をきれいに洗う.146名(C82.9%)C3.アイコットンを清潔に使用する.156名(C88.6%)C4.アイコットンで目頭から目尻の方向に拭く.158名(C89.7%)C5.アイコットンの同じ面でC2度拭きしない.144名(C81.8%)C6.点眼薬の蓋は上向きに置く.154名(C87.5%)C7.安全に下眼瞼のみ引っ張る.161名(C91.4%)C8.眼球,瞼,睫毛と点眼薬が接していない.139名(C78.9%)C9.点眼薬はC1滴を点眼する.164名(C93.1%)C10C①C.点眼時の体位(座位を良好とする)152名(C86.3%)C11.溢れた点眼液をアイコットンで拭き取る.163名(C92.6%)C13.後片付けを行う.168名(C95.4%)表3疾患と相関した項目項目緑内障緑内障以外p値C3.アイコットンを清潔に使用する.109名(C69.9%)47名(C30.1%)C0.0409C4.アイコットンで目頭から目尻の方向に拭く.112名(C70.9%)46名(C29.1%)C0.0026C5.アイコットンの同じ面でC2度拭きしない.103名(C71.5%)41名(C28.5%)C0.0117C8.眼球,瞼,睫毛と点眼薬が接していない.101名(C72.7%)38名(C27.3%)C0.0031C9.点眼薬はC1滴を点眼する.114名(C69.5%)50名(C30.5%)C0.0211C11.溢れた点眼液をアイコットンで拭き取る.115名(C70.5%)48名(C29.5%)C0.0010C13.後片付けを行う.116名(C69.1%)52名(C30.9%)C0.0163C表4年齢と相関した項目項目良好症例良好症例の年齢不良症例不良症例の年齢p値C2.手をきれいに洗う.146名C68.0±1.2歳30名C74.1±2.6歳C0.0401C7.安全に下眼瞼のみ引っ張る.161名C68.2±1.1歳15名C78.1±3.7歳C0.0120C10C①C.点眼時の体位(坐位・仰臥位・その他)152名C67.6±1.2歳23名C78.3±3.0歳C0.0011*10①は坐位を良好,仰臥位・その他を不良とした.表5すべての項目の巧拙に関与する因子カテゴリー良好不良p値性別女性36名(C39.6%)47名(C55.3%)C0.0049年齢C66.27±1.51歳C72.04±1.56歳C0.0088緑内障疾患緑内障以外71名(C60.2%)47名(C39.8%)C0.002220名(C34.5%)38名(C65.5%)であった.「8.眼球,瞼,睫毛と点眼薬が接していない」以外の項目の良好者はC80%以上あった.海外における既報では,点眼手技は1)1滴だけを正確に滴下する,2)眼球(眼瞼などでなく)に滴下できる,3)点眼瓶を汚染せず滴下できる,のC3つを主要な因子として評価している.それ以外に,手洗い,点眼後の閉瞼や涙点閉鎖を含めて評価することもある.その中では点眼瓶汚染がもっとも多くみられ,一滴滴下がそれに次ぐが,眼球をはずすことは比較的少ないとされている12).今回の項目C8の結果は,良好率は高いが既報と同様の傾向がみられた.「9.点眼薬はC1滴を点眼する」に関しては,既報とは異なりC164例(93.1%)が良好であった.既報は海外の研究結果であったため,背景の違いも考えられるが,細かな背景について情報が取れていないため理由は不明である.今回使用した点眼手技チェック表は病棟独自で作成したものであり,点眼した位置などの項目が含まれていないため,点眼手技チェック表の項目追加の検討の余地があると考える.点眼手技のすべての項目で良好な結果を示した患者はC51.7%であり,過去の同様の研究と比較すると概して点眼手技が良好である.年齢においては加齢により点眼手技が有意に悪化することが示された.これは既報でも点眼手技不良ともっとも関連する因子は高齢である12)とされており同様の結果が得られた.また,それ以外に,点眼手技不良と関連する因子として女性,関節炎,視野障害,低教育などがあげられている12).女性のほうが不良であることは理由は不明だが本報告と一致する.関節炎,視野,教育については評価できておらず,今後の検討が必要である.疾患別では緑内障患者と非緑内障患者では緑内障患者の点眼手技が良好であったが,緑内障患者は有病歴が長く点眼に対する慣れがあることが考えられる.当院は大学病院であるため,今回検討した患者の半数以上が網膜,角膜疾患を有する患者であったことから,疾患別に細かな解析をしていくことで違った結果が得られる可能性がある.既報ではC78%の研究で,何らかの介入が点眼手技改善に役立つとされており,おもな介入方法としては,dosingaid,single-usebottle,点眼手技教育がある.本研究では,Cdirectobservationで点眼手技を評価したが,既報では,患者の自己評価は,客観的評価と比較して点眼手技を過大評価しているため,本研究のような客観的評価が点眼手技の研究には必要である13).しかし,directobservationの場合,評価者により評価がばらつくおそれがあるため,videorecord-ingのほうがよいとされており,今後の検討が必要である12).術後管理を適切に行うためには点眼手技を正しく評価し,患者に合った指導が必須であり,とくに高齢者では注意が必要だということが今回の研究で示唆された.今回は患者の学歴や理解度などの検討は行っていないが,今回検討した以外の背景因子についても検討を行うことで,患者に合った点眼指導につなげていくことができると考える.利益相反森本綾華,中川里恵,西田幸二:該当なし三木篤也:株式会社シード,株式会社メニコン(いずれもカテゴリーFクラスCIII)文献1)https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/html/zenbun/s1_1_1.html(2022年C3月C6日閲覧)2)https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/html/zenbun/s1_2_2.html(2022年C3月C6日閲覧)3)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/kanja-01.pdf(2022年C3月C6日閲覧)4)https://code.kzakza.com/2018/05/gankaikai_popu/(2022年3月6日閲覧)5)坂根可奈子:高齢者の服薬自己管理を査定する服薬アドヒアランス評価ツールの開発.島根大学大学院医学系研究科看護学専攻博士後期課程,博士学位論文6)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa19/dl/gaikyou2019.pdf(2022年C3月C9日閲覧)7)生方美恵子,芳賀智子:眼科手術を受ける患者の確実な点眼手技の習得に向けた取り組み.日農医誌64:1-65,C20158)鈴木隆雄,石崎達郎,磯博康ほか:後期高齢者の保健事業の在り方に関する研究.平成C27年度厚生労働科学研究特別研究9)池田博昭,佐藤幹子,塚本秀利ほか:点眼アドヒアランスに影響する各種要因の解析,薬学雑誌121:799-806,C200110)葛谷雅文,遠藤英俊,梅垣宏行ほか:高齢者服薬コンプライアンスに影響を及ぼす諸因子に関する研究,日老医誌C37:363-370,C200011)KashiwagiCK,CMatsudaCY,CItoCYCetal:InvestigationCofCvisualCandCphysicalCfactorsCassociatedCwithCinadequateCinstillationCofCeyedropsCamongCpatientsCwithCglaucoma.CPLoSOneC16:e0251699,C202112)DavisSA,SleathB,CarpenterDMetal:Dropinstillationandglaucoma.CurrOpinOphthalmolC29:171-177,C201813)StoneJL,RobinAL,NovackGDetal:Anobjectiveeval-uationCofCeyedropCinstillationCinCpatientsCwithCglaucoma.CArchOphthalmolC127:732-736,C2009***

涙道内視鏡施行時の滑車下神経ブロックにより一過性の 著しい視力低下を生じた1 例

2022年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科39(12):1700.1703,2022c涙道内視鏡施行時の滑車下神経ブロックにより一過性の著しい視力低下を生じた1例嶺崎輝海柴田元子熊倉重人後藤浩東京医科大学医学臨床系眼科学分野CACaseofTransientVisualLossCausedbyInfratrochlearNerveBlockforLacrimalDuctEndoscopyTeruumiMinezaki,MotokoShibata,ShigetoKumakuraandHiroshiGotoCDepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversityC滑車下神経ブロックによって一時的に視力障害を生じたC1例を経験したので報告する.症例:93歳,男性.左側急性涙.炎を生じたため東京医科大学病院眼科に紹介となった.抗菌薬の局所および全身投与によって炎症を消退させたあとに涙道内視鏡検査を施行した.滑車下神経ブロックはC30CG針で内眼角腱頭側にC19Cmmの深さまで刺入し,2%リドカインをC1Cml投与したあとに涙道内視鏡を挿入した.その直後から左眼の視力低下の訴えがあり,光覚の消失,直接対光反射の消失,開瞼不全,全方向への眼球運動障害が確認された.麻酔薬の投与からC2時間後には矯正視力は0.2まで改善し,翌日には矯正視力はC0.8まで回復,最終的にはC1.2となった.滑車下神経ブロックでは球後に麻酔薬が移行し,一時的ではあるが視機能が障害される可能性があることに留意する必要がある.CWereportacaseoftransientvisualdisturbancecausedbyinfratrochlearnerveblock.A93-year-oldmanwasreferredCtoCtheCDepartmentCofCOphthalmology,CTokyoCMedicalCUniversityCHospitalCdueCtoCacuteCdacryocystitisCinChislefteye.Inthateye,in.ammationwasimprovedbytreatmentwithlocalandsystemicantibiotics,andlacrimalductendoscopywassubsequentlyperformed.Infratrochlearnerveblockwasperformedbyinsertinga30CGneedletoadepthof19Cmmattheuppersideoftheinnercanthusandinjecting1CmlCof2%lidocaine,withalacrimalductendoscopeCthenCinserted.CAfterCtheseCprocedures,CtheCpatientCcomplainedCofCreducedCvisionCinChisCleftCeye,CandCexaminationsshowedlossoflightsensation.Twohoursafteradministeringanesthesia,thecorrectedvisualacuity(VA)inCthatCeyeCimprovedCtoC0.2.CTheCnextCday,CtheCcorrectedCVACinCthatCeyeCrecoveredCtoC0.8,CandC.nallyCreturnedCtoC1.2.CItCshouldCbeCnotedCthatCretrobulbarCpassageCofCanCanestheticCoccursCafterCinfratrochlearCnerveCblock,andmaycausetransientvisualdisturbance.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(12):1700.1703,C2022〕Keywords:滑車下神経ブロック,球後麻酔,涙道内視鏡.infratrochlearblock,retrobulbaranesthesia,lacrimalendoscope.Cはじめに滑車下神経ブロックは,涙.部に分布する三叉神経の枝である滑車下神経をブロックすることによる麻酔手技で,涙道内視鏡を行う際の疼痛抑制に有効な麻酔法である.しかし,滑車下神経が走行している眼窩内には眼球のほか,血管,筋,神経などのさまざまな組織が存在するため,ブロックに伴い合併症を生じる可能性がある.今回,滑車下神経ブロックによって球後に麻酔薬が移行し,一時的に全方向への眼球運動障害と著しい視力障害を生じたC1例を経験したので報告する.CI症例患者:93歳,男性.主訴:左側下眼瞼腫脹.現病歴:20XX年CX月から左側下眼瞼腫脹を自覚し前医を受診したところ,急性涙.炎と診断され,東京医科大学病〔別刷請求先〕嶺崎輝海:〒160-0023東京都新宿区西新宿C6-7-1東京医科大学教育研究棟C12階眼科医局Reprintrequests:TeruumiMinezaki,DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversity,6-7-1Nishi-Shinjuku,Shinjuku-ku,Tokyo160-0023,JAPANC1700(132)図1初診時の顔面写真図2滑車下神経ブロック施行1時間後の顔面写真左側涙.部に一致して発赤と圧痛を伴う隆起がみられる.左側の開瞼不全がみられる.Cab図3局所麻酔10分後の眼底写真と光干渉断層血管撮影a:眼底に新たな異常所見はみられない.b:網膜血管は正常に描出されている.院眼科を紹介受診した.初診時所見:視力は右眼C1.0(1.2C×.0.50D),左眼C0.7(1.0C×.1.50D),眼圧は右眼C10mmHg,左眼15mmHgであった.左側涙.部に一致して発赤と圧痛を伴う隆起がみられた(図1).その他,眼瞼,結膜,角膜および眼底に異常所見はみられなかった.既往歴:高血圧に対して降圧薬を内服,10年前に両眼白内障手術を施行,両眼緑内障に対してドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩配合点眼を使用.経過:セフェム系抗菌薬であるセフジニルの内服とレボフロキサシン点眼液C1.5%を処方したが疼痛が増強したため,初診翌日に涙.穿刺を施行した.穿刺部へのオフロキサシン眼軟膏塗布と涙.洗浄を施行し,疼痛と腫脹は軽快した.初診からC1カ月後の受診時には発赤は消退していたため,左側涙道内視鏡検査を施行した.検査に先立ち,滑車下神経ブロックを施行した.内眼角腱頭側にC30ゲージ(G)針をC19Cmmの深さまで垂直に刺入し,逆血がないことを確認後にC2%リドカインをC1Cml投与した.眼球運動障害ならびに視力障害が出現していないことを確認後,上涙点から内視鏡を挿入し,涙.鼻涙管移行部の閉塞を穿破したあとに涙管チューブを挿入した.滑車下神経ブロックからC5分ほど経過した頃に患者から左眼の視力低下の訴えがあったため確認したところ,光覚が消失していた.また,直接対光反射の消失,開瞼不全,さらに全方向への眼球運動障害がみられた(図2).眼底検査では明らかな動脈閉塞などの異常所見はみられず,光干渉断層血管撮影でも明らかな血管閉塞は認めなかった(図3).治療前の前医の静的視野検査で両眼鼻側階段状視野欠損があったが(図4),滑車下神経ブab図4前医で施行された静的視野検査両眼の鼻側階段状視野欠損がみられた.Cab図5左眼動的視野検査a:滑車下神経ブロックC2時間後では水平半盲がみられる.Cb:前医の静的視野検査でみられた鼻側階段と同様の鼻側階段が動的視野検査でも確認される.ロック施行からC2時間の時点の左眼動的視野検査では水平半盲がみられ(図5a),左眼視力はC0.2(矯正不能)まで回復し,開瞼不全と眼球運動障害も改善傾向にあることが確認されたため帰宅となった.翌日の診察時には左眼視力は矯正C0.8まで改善し,開瞼不全と眼球運動障害はみられなかった.術後1カ月の左眼の矯正視力はC1.2で,動的視野検査では前医の静的視野検査で確認された鼻側階段の状態を呈するのみで,新たな視野障害は検出されなかった(図5b).CII考按滑車下神経ブロックは涙道内視鏡による涙管チューブ挿入術や涙.鼻腔吻合術を行う際の疼痛抑制に有用な麻酔法である.滑車下神経ブロックの対象となる滑車下神経は三叉神経第C1枝の枝である鼻毛様体神経の終枝であり,涙.へ分布している滑車下神経はCT字型をしている内眼角腱の水平部と垂直部の交差部後方約C10Cmmを走行するとされる1).ブロックの方法は内眼角腱の直上にある窪みを刺入部とし,26.30CG針を使用することが多いが,3/4インチ針を使用すると全長がC19Cmmとなるため,滑車下神経自体を損傷する可能性や,前篩骨孔に到達して前篩骨動脈を損傷する可能性がある2).一方,滑車下神経ブロックによる合併症に関する報告は多くなく,筆者らが調べた限りでは,滑車下神経自体を損傷した報告はないようである.また,注射針刺入部近くに存在する内直筋に麻酔が作用して一過性に術後複視を自覚することはあるが1,2),不可逆性の合併症を生じた報告はないようである3.5).本症例でみられた光覚消失,対光反射消失,開瞼不全,眼球運動障害は球後麻酔の際にみられる現象であり,麻酔効果である.眼窩は骨壁に囲まれた空間であるため,今回の症例にみられた一過性の障害は,滑車下神経ブロックによって投与されたリドカインが球後まで浸透したことが原因と考えられる.しかし,日常診療でしばしば行われる滑車下神経ブロックでこのような症状をきたすことは一般的ではない.今回の現象の誘因としては,患者が高齢者であり,また,術前のCCTでは涙.の拡張以外に明らかな眼窩組織の変化はみられなかったが,涙.炎の既往により眼窩軟部組織の変性が生じ薬液が浸透しやすくなっていた可能性のほか,投与の際に内眼角腱頭側から垂直方向に注射針を刺入したつもりが球後方向へ向いていた可能性,刺入位置が耳側にずれていた可能性,3/4インチ針を使用したためにリドカインが眼球後方まで容易に浸透してしまった可能性などが考えられた.その結果,刺入部に近い頭側の視神経に薬液が多く浸透したために,滑車下神経ブロックC2時間後の動的視野検査では頭側の視神経に薬効が残存し,下方の水平半盲がみられたと考えられる.このように,患者によっては滑車下神経ブロックにより球後麻酔と同じ麻酔効果が生じることがあると認識しておく必要があり,園田らが推奨するように2)合併症の軽減のためにC1/2インチ針を使用することが望ましいと考えられる.通常,涙道内視鏡施行後は施行眼に眼帯を装着し,数時間ではずすことが一般的である.2%リドカインの半減期は約2時間であり,眼帯をはずしたときに内直筋に麻酔効果が残存していたときには複視を自覚するため,麻酔の効果がなくなるまで眼帯装用時間を延長することはある.しかし,本症例のようにリドカインが球後にまで浸透して薬効が残存していた場合は,患者は眼帯をはずした際に著しい視力低下を自覚することになり,視力の回復にも時間を要する可能性がある.このようなトラブルを避けるためにも,術前に滑車下神経ブロックで視力低下が起こる可能性があることを説明し,内視鏡終了時に球後麻酔と同様の効果を生じていないか確認することが重要であると考えられた.文献1)宮久保純:麻酔:滑車下神経ブロック.眼科手術C22:C368-369,C20092)園田真,田松裕,島田和:涙道手術における麻酔.眼科グラフィックC3:425-430,C20143)Villar-QuilesCRN,CGarcia-MorenoCH,CMayoCDCetal:CInfratrochlearneuralgia:ACprospectiveCseriesCofCsevenCpatientsCtreatedCwithCinfratrochlearCnerveCblocks.CCepha-lalgiaC38:585-591,C20184)KimSH,ShinHJ:E.ectsofaninfratrochlearnerveblockonCreducingCtheCoculocardiacCre.exCduringCstrabismussurgery:arandomizedcontrolledtrial.GraefesArchClinExpOphthalmolC256:1777-1782,C20185)KacarCK,UzundereO,Sal.kFetal:E.ectsofaddingacombinedCinfraorbitalCandCinfratrochlearCnerveCblockCtoCgeneralCanaesthesiaCinCseptorhinoplasty.CJCPainCResC13:C2599-2607,C2020C***

緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用調査

2022年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科39(12):1694.1699,2022c緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用調査中牟田爽史*1井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CSurveyontheUseofBrand-NameandGenericEyeDropsforGlaucomaSoshiNakamuta1),KenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用状況,使用理由を調査した.対象および方法:井上眼科病院に通院中で後発医薬品の存在する緑内障点眼薬を使用中のC504例を対象とした.お薬手帳や点眼薬実物から使用薬剤を判断した.先発あるいは後発医薬品の使用理由をアンケートで調査した.結果:対象者は男性C222例,女性C282例,年齢はC68.9±10.8歳,使用薬剤数はC2.5±1.3剤だった.先発医薬品のみ使用C134例(26.6%),後発医薬品のみ使用353例(70.0%),両方とも使用C17例(3.4%)だった.先発医薬品の使用理由は,安心・安全C65.6%,薬局の推奨C12.6%など,後発医薬品の使用理由は,薬局の推奨C59.2%,価格が安いC25.9%などだった.結論:先発医薬品のみ使用は26.6%で,薬剤への安心感や安全性から選択していた.後発医薬品のみ使用はC70.0%で,薬局の推奨や経済的観点から選択していた.CPurpose:Toinvestigatetheuseofbrand-nameandgenericeyedropsforglaucoma.PatientsandMethods:CTheCstudyCinvolvedC504CoutpatientsCseenCatCInoueCEyeCHospitalCwhoCusedCcurrentlyCavailableCbrand-nameCandCgenericglaucomamedications.Thetypeofmedicationusedwasinvestigatedviaanalysisofthemedicationinstruc-tionsheetortheactualmedicationbottles.Thereasonsforuseweresurveyedviapatientquestionnaire.Results:CTherewere222malesand282females,(meanage:68.9±10.8years),andthemeannumberofmedicationsusedwas2.5±1.3.Ofthe504patients,134(26.6%)wereusingonlybrand-namemedications,353(70.0%)wereusingonlyCgenericCmedications,Cand17(3.4%)wereCusingCboth.CReasonsCforCusingCbrand-nameCmedicationsCincludedCsafetyandsecurity(65.6%)andpharmacyrecommendation(12.6%),whileasforuseofthegenericmedications,pharmacyrecommendation(59.2%)andlowerprice(25.9%)weretheprimaryreasons.Conclusions:Ofthe504patients,26.6%CusedConlyCbrand-nameCmedicationsCand70.0%CusedConlyCgenericCmedications,CwithCtheCprimaryCreasonsforusebeingsafetyandsecurityintheformerandpharmacyrecommendationorcostinthelatter.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(12):1694.1699,C2022〕Keywords:緑内障点眼薬,先発医薬品,後発医薬品,薬物選択.glaucomaeyedrops,brand-name,generic,choiceofmedication.Cはじめに近年,厚生労働省は保険財政の改善と患者負担の軽減を考えて先発医薬品ではなく後発医薬品の使用を推奨している.後発医薬品は先発医薬品と同じ有効成分を含有し,効能・効果,用法・用量は原則同一であるが,添加剤(防腐剤を含む)は異なる.後発医薬品は先発医薬品の独占的販売期間(有効性・安全性を検証する再審査期間および特許期間)が終了した後に発売される.厚生労働省の後発医薬品推奨の姿勢は診療報酬にも反映されている.医療機関では薬剤を処方する際に一般名で処方するとC5.7点が加算される(2022年C2月現在).また,調剤薬局では後発医薬品調剤体制加算があり,後発医薬品の使用割合によりC15.28点が加算される.このような施策により後発医薬品の使用割合は年々増加しており,2005年C32.5%,2007年C34.9%,2009年C35.8%,2011年C39.9%,2013年46.9%,2015年C56.2%,2017年C65.8%,2020年C78.3%と〔別刷請求先〕中牟田爽史:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:SoshiNakamuta,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC1694(126)報告されている1).2022年C2月現在,緑内障点眼薬の後発医薬品はC16種類存在する.このように後発医薬品は多数使用されるようになったが,患者がどのような考えで後発医薬品あるいは先発医薬品を選択しているかは不明である.また,後発医薬品を使用している患者の特徴も不明である.そこで今回,患者が使用している緑内障点眼薬を調査し,先発医薬品あるいは後発医薬品の使用理由と患者背景を解析した.CI対象および方法2021年C9月.2022年C2月に井上眼科病院に通院中で,後発医薬品の存在する緑内障点眼薬を使用中で以下の方法により使用薬剤を確認できたC504例を対象とした.男性C222例,女性C282例,平均年齢はC68.9C±10.8歳(平均C±標準偏差),24.93歳であった.使用している緑内障点眼薬はC2.5C±1.3剤,1.6剤であった.配合点眼薬はC1剤とした.外来受診時にお薬手帳あるいは点眼薬実物を持参しているかを患者に問い合わせ,いずれかを持参しており,使用薬剤を正確に確認できた症例を対象とした.対象眼に関しては両眼に点眼薬を使用している症例では使用点眼薬数が多い眼を採用し,左右同数の場合は右眼を採用した.各々使用薬剤が先発医薬品か後発医薬品かを確認後に,先発医薬品あるいは後発医薬品を使用している理由を対面式アンケートで調査した(図1).なお,井上眼科病院では後発医薬品の存在する緑内障点眼薬はすべて一般名で処方しており,患者が調剤薬局で先発医薬品あるいは後発医薬品のいずれかを自由に選択できるようにしている.また,緑内障点眼薬はすべて院外処方で対応している.緑内障点眼薬のうち先発医薬品,後発医薬品ともに存在する点眼薬は,イソプロピルウノプロストン点眼薬,ラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,ビマトプロスト点眼薬,チモロール点眼薬,持続性チモロール点眼薬,カルテオロール点眼薬,持続性カルテオロール点眼薬,ニプラジロール点眼薬,ベタキソロール点眼薬,ブリンゾラミド点眼薬,ブリモニジン点眼薬,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬,トラボプロスト/チモロール配合点眼薬,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬で,先発医薬品のみ存在する点眼薬はタフルプロスト点眼薬,ドルゾラミド点眼薬,ブナゾシン点眼薬,リパスジル点眼薬,オミデネパグイソプロピル点眼薬,ピロカルピン点眼薬,ジピベフリン点眼薬,タフルプロスト/チモロール配合点眼薬,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬,ブリモニジン/チモロール配合点眼薬,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬で,後発医薬品のみ存在する点眼薬はレボブノロール点眼薬である(2022年C2月現在).つぎに先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例で性別,平均年齢,使用薬剤数,カテゴリー別使用薬剤を比較した.さらに男女間での先発あるいは後発医薬品のみ使用症例,平均年齢,使用薬剤数,カテゴリー別使用薬剤を比較した.若年者(65歳未満)と高齢者(65歳以上)で先発あるいは後発医薬品のみ使用症例,性別,使用薬剤数,カテゴリー別使用薬剤を比較した.カテゴリー別使用薬剤はラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,ビマトプロスト点眼薬をプロスタグランジン関連薬(以下,PG関連薬),チモロール点眼薬,持続性チモロール点眼薬,カルテオロール点眼薬,持続性カルテオロール点眼薬,ニプラジロール点眼薬,ベタキソロール点眼薬をCb遮断薬(Ca遮断薬を含む),ブリンゾラミドを点眼炭酸脱水酵素阻害薬(以下,CAI),イソプロピルウノプロストン点眼薬をイオンチャネル開口薬,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬,トラボプロスト/チモロール配合点眼薬をCPG関連薬/Cb遮断薬配合点眼剤,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬をCCAI/Cb遮断薬配合点眼剤,ブリモニジン点眼薬をCa2刺激薬と分類した.平均年齢と使用薬剤数の比較には対応のないCt検定を,先発医薬品・後発医薬品の使用割合,性別,カテゴリー別使用薬剤の比較にはCc2検定とCFisherの直接確率検定を使用した.有意水準はp<0.05とした.患者には本研究の主旨を口頭で説明し,アンケート調査の際に文書で同意を得た.本研究は井上眼科病院倫理審査委員会で承認された(承認番号C202202-2).CII結果先発医薬品のみ使用C134例(26.6%),後発医薬品のみ使用C353例(70.0%),両方とも使用はC17例(3.4%)であった.先発医薬品の使用理由は「安心,安全」93例(69.4%),「後発品(ジェネリック医薬品)よりも効果があると思う」17例(12.7%),「薬局にすすめられた」14例(10.4%),「後発品(ジェネリック医薬品)よりも使いやすいと思う」4例(3.0%)などであった(図2).後発医薬品の使用理由は「薬局にすすめられた」209例(59.2%),「金額が安くなる」92例(26.1%),「その他」43例(12.2%)などだった(図3).その他の症例をさらに解析したところ「役所や保険組合の推奨」25例(7.1%)と「医師の推奨」11例(3.1%)が多かった.先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例を比較すると,性別,使用薬剤数,カテゴリー別薬剤は同等だった(表1).平均年齢は先発医薬品のみ使用症例C71.3C±10.2歳が後発医薬品のみ使用症例C67.9C±10.9歳に比べて有意に高かった(p<0.01).男女で比較すると,先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例の割合,平均年齢,使用薬剤数は同等だった(表2).カテゴリー別薬剤では,Cb遮断薬,CAI,イオンチャネル開口薬,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼剤,CAI/Cb遮断薬配合点眼剤,Ca2刺激薬は先発あるいは後発医薬品の後発品よりも使いやすいと思う4例(3.0%)薬局にすすめられた14例(10.4%)後発品よりも効果があると思う17例(12.7%)その他43例(12.2%)先発品よりも使いやすいと思う3例(0.8%)先発品よりも効果があると思う6例(1.7%)金額が安くなる92例(26.1%)図2先発医薬品の使用理由図3後発医薬品の使用理由表1先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例の比較先発医薬品のみ後発医薬品のみp値男性:女性49(C36.6%):C85(C63.4%)164(C46.5%):C189(C53.5%)Cp=0.0525平均年齢C71.3±10.2C67.9±10.9Cp=0.0022*使用点眼薬数C2.4±1.2C2.5±1.3Cp=0.3968使用点眼薬別PG関連薬89(C27.6%)233(C72.4%)Cb遮断薬(Ca遮断薬を含む)27(C32.9%)55(C67.1%)CCAI24(C23.3%)79(C76.7%)イオンチャネル開口薬4(4C4.4%)5(5C5.6%)Cp=0.7509PG関連薬/Cb遮断薬配合剤20(C28.6%)50(C71.4%)CCAI/b遮断薬配合剤30(C27.8%)78(C72.2%)Ca2刺激薬24(C29.6%)57(C70.4%)CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,PG:プロスタグランジン.*p<0.05表2性別による比較男性女性p値先発医薬品のみ:後発医薬品のみ49(C23.0%):C164(C77.0%)85(C31.0%):C189(C69.0%)Cp=0.0525平均年齢C68.3±11.5C69.3±10.2Cp=0.3464使用点眼薬数C2.6±1.2C2.4±1.3Cp=0.1296使用点眼薬別(先発品:後発品)PG関連薬32(C20.5%):C124(C79.5%)57(C34.3%):C109(C65.7%)Cp=0.0061*Cb遮断薬(Ca遮断薬を含む)10(C27.0%):C27(C73.0%)17(C37.8%):C28(C62.2%)Cp=0.3509CCAI9(1C8.8%):3C9(8C1.3%)15(C27.3%):C40(C72.7%)Cp=0.3559イオンチャネル開口薬2(5C0.0%):2(5C0.0%)2(4C0.0%):3(6C0.0%)p>C0.9999PG関連薬/Cb遮断薬配合剤9(3C0.0%):2C1(7C0.0%)11(C27.5%):C29(C72.5%)p>C0.9999CCAI/b遮断薬配合剤12(C25.5%):C35(C74.5%)18(C29.5%):C43(C70.5%)Cp=0.6716Ca2刺激薬13(C36.1%):C23(C63.9%)11(C24.4%):C34(C75.6%)Cp=0.3288CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,PG:プロスタグランジン.*p<0.05表3若年者と高齢者の比較若年者(.64歳)高齢者(65歳.)p値先発医薬品のみ:後発医薬品のみ30(C20.5%):C116(C79.5%)104(C30.5%):C237(C69.5%)Cp=0.0267*男性:女性69(C47.3%):C77(C52.7%)144(C42.2%):C197(C57.8%)Cp=0.3199使用点眼数C2.4±1.3C2.5±1.2Cp=0.4693使用薬剤別(先発品:後発品)PG関連薬16(C17.2%):C77(C82.8%)73(C31.9%):C156(C68.1%)Cp=0.0087*Cb遮断薬(Ca遮断薬を含む)7(3C1.8%):1C5(6C8.2%)20(C33.3%):C40(C66.7%)p>C0.9999CCAI5(2C1.7%):1C8(7C8.3%)19(C23.8%):C61(C76.3%)p>C0.9999イオンチャネル開口薬1(2C5.0%):3(7C5.0%)3(6C0.0%):2(4C0.0%)Cp=0.5238PG関連薬/Cb遮断薬配合剤6(2C5.0%):1C8(7C5.0%)14(C30.4%):C32(C69.6%)Cp=0.7824CCAI/b遮断薬配合剤5(1C3.9%):3C1(8C6.1%)25(C34.7%):C47(C65.3%)Cp=0.0243*Ca2刺激薬9(2C7.3%):2C4(7C2.7%)15(C31.3%):C33(C68.8%)Cp=0.8064CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,PG:プロスタグランジン.*p<0.05み使用症例は同等だった.PG関連薬は後発医薬品のみ使用症例が男性(79.5%)のほうが女性(65.7%)に比べて有意に多かった(p<0.05).若年者(146例)と高齢者(341例)で比較すると性別,使用薬剤数は同等だった(表3).後発医薬品のみ使用症例が若年者(79.5%)のほうが高齢者(69.5%)に比べて有意に多かった(p<0.05).カテゴリー別薬剤では,Cb遮断薬,CAI,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼剤,Ca2刺激薬は先発あるいは後発医薬品のみ使用症例は同等だった.PG関連薬は後発医薬品の使用症例が若年者(82.8%)のほうが高齢者(68.1%)に比べて有意に多かった(p<0.05).CAI/Cb遮断薬配合点眼剤は後発医薬品の使用症例が若年者(86.1%)のほうが高齢者(65.3%)に比べて有意に多かった(p<0.05).CIII考按今回の調査で後発医薬品の使用症例はC73.4%(後発医薬品のみ使用C70.0%+先発・後発医薬品両方とも使用C3.4%)であった.厚生労働省が発表したC2020年の後発医薬品使用割合C78.3%よりは少なかったが近い割合であった.今回は具体的な使用薬剤の解析ではなく症例ごとの解析を行った影響も考えられる.先発医薬品と後発医薬品の特徴を以下に述べる2).後発医薬品の存在する先発医薬品は開発から長期を経過しており,医師の使用経験や薬剤の情報(効果・副作用など)が多く,供給も安定している.今回のアンケート調査でも先発医薬品の使用理由は安心,安全がC69.4%と圧倒的に多かった.眼圧下降効果や副作用などに問題のない症例では薬剤を変更する必要はないと考えられる.一方,後発医薬品は先発医薬品に比べて価格が安いことが最大の利点である3,4).今回のアンケート調査でも後発医薬品の使用理由は薬局にすすめられたC59.2%,金額が安くなるC26.1%の順であった.薬局からの推奨は調剤薬局での後発医薬品調剤体制加算の取得のためと考えられる.しかし,後発医薬品は先発医薬品と添加剤が異なり,先発医薬品から後発医薬品への変更による眼圧下降効果減弱や副作用出現が懸念される.発売してからの期間も短く,効果や副作用の情報が少なく,また供給が安定していないことも問題点である.後発医薬品の効果と安全性は,先発医薬品から切り替えた症例で報告されている5.10).ラタノプロスト点眼薬5.9),ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬10)の先発医薬品から後発医薬品への切り替えでは眼圧下降効果の維持と高い安全性が報告されている.症例により眼圧下降効果は異なるが,有効成分は同一のため後発医薬品の眼圧下降効果減弱はあまり考慮しなくてよいと考えられる.仮に後発医薬品を使用して副作用が出現した場合でも先発医薬品に戻せば副作用も軽減・消失するので,後発医薬品の経済的優位性を考慮し,先発医薬品から後発医薬品への切り替えは試みてもよいと思われる.今回の詳細な検討では,平均年齢は先発医薬品のみ使用症例が後発医薬品のみ使用症例に比べて有意に高かった.その理由として年齢が高いほうが緑内障罹病期間や先発医薬品を使用している期間が長く,病状が安定しているためあえて後発医薬品へ変更しなかったのではないかと考えられる.男女の比較ではCFP受容体作動薬は後発医薬品の使用割合が男性のほうが女性に比べて有意に多かった.その理由としてCPG関連薬では眼瞼色素沈着や上眼瞼溝深化などの美容的副作用が出現することがあり11,12),とくに女性は後発医薬品へ変更した際に新たにこのような副作用が出現することを避ける傾向があると考えられる.若年者と高齢者の比較では,PG関連薬とCCAI/Cb遮断薬配合点眼剤は後発医薬品の使用症例が若年者のほうが高齢者に比べて有意に多かった.その理由として高齢者のほうが緑内障罹病期間や先発医薬品を使用している期間が長く,病状が安定している点と,若年者のほうが経済的に余裕がない点が考えられる.今回の調査の問題点として,お薬手帳や点眼薬実物を診察時に持参している人を対象としたため,使用薬剤を管理する意識の高い人が対象になっている可能性がある.しかし,先発医薬品あるいは後発医薬品のどちらを使用しているかを正確に把握するのは問診ではむずかしいため,お薬手帳や点眼薬実物で確認する方法とした.また,対象患者の利用している調剤薬局は同一でなく,調剤薬局によって先発医薬品と後発医薬品の調剤の方針が異なる可能性がある.患者の利用した調剤薬局をすべて調査することはできないと考えた.さらに以前は先発医薬品のみ使用していたので,一般名処方で先発医薬品でも後発医薬品でも使用できるようになり,患者から後発医薬品でもよいのかと質問されることが多くなった.その際は「後発医薬品でも問題がない場合がほとんどです」と答えるが,これが医師の推奨としてとらえられた可能性がある.今回緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用状況と使用理由を調査した.先発医薬品のみ使用C26.6%,後発医薬品のみ使用C70.0%だった.使用理由は先発医薬品は安心・安全C65.6%,調剤薬局からの推奨C12.6%など,後発医薬品は調剤薬局からの推奨C59.2%,価格が安いC25.9%などだった.今後ますます後発医薬品が使用されると考えられるため,先発医薬品だけではなく後発医薬品の効果・安全性も調査する必要がある.本論文は第C126回日本眼科学会総会で発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)福田正道:緑内障点眼薬後発品(いわゆるジェネリック)の特性.臨眼68:7-12,C20142)菅原仁,島森美光,吉町昌子ほか:点眼剤の後発医薬品使用促進に関わる薬剤費の比較研究.JpnCJCDrugCInformC14:62-68,C20123)冨田隆志,池田博昭,櫻下弘志ほか:Cb遮断点眼薬の先発医薬品と後発医薬品におけるC1日あたりの薬剤費の比較.臨眼63:717-720,C20094)神山幸輝,阿部貴至,唐澤健介ほか:緑内障治療に用いる点眼剤の先発医薬品と後発医薬品における製剤学的性質および経済性に関する比較研究.レギュラトリーサイエンス学会誌C10:99-108,C20205)木村格,木村亘,横山光伸ほか:正常眼圧緑内障におけるラタノプロスト点眼液C0.005%ジェネリック医薬品の使用経験.新薬と臨牀61:1141-1144,C20126)櫻井寿也,田野良太郎,山本裕弥ほか:ラタノプロスト点眼液C0.005%ジェネリック医薬品の使用経験.新薬と臨牀60:1225-1228,C20117)東條直貴,林篤志:ラタノプロスト点眼液C0.005%の先発品からジェネリック品への切替効果.新薬と臨牀C63:C1471-1474,C20148)井上賢治,増本美枝子,若倉雅登ほか:防腐剤無添加ラタノプロスト点眼薬の眼圧下降効果と安全性.あたらしい眼科C28:1635-1639,C20119)大塚光哉,澁谷法子,本多祐樹ほか:ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩点眼液の先発医薬品から後発医薬品への切り替え効果.新薬と臨牀70:143-147,C202110)岩崎直樹,楠部亨,黒澤誠治ほか:ラタノプロスト点眼液C0.005%「わかもと」の眼圧下降効果と安全性.新薬と臨牀50:615-618,C201311)InoueCK,CShiokawaCM,CHigaCRCetal:AdverseCperiocularCreactionsto.vetypesofprostaglandinanalogs.EyeC26:C1465-1472,C201212)InoueCK,CShiokawaCM,CWakakuraCMCetal:DeepeningCofCtheCupperCeyelidCsulcusCcausedCbyC5CtypesCofCprostaglan-dinanalogs.JGlaucomaC22:626-631,C2013***

アーメド緑内障バルブ挿入時における結膜被覆困難症例の検討

2022年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科39(12):1690.1693,2022cアーメド緑内障バルブ挿入時における結膜被覆困難症例の検討小岩千尋*1春日俊光*1浅田洋輔*2朝岡聖子*3林雄介*2,3松田彰*2*1順天堂大学医学部附属練馬病院眼科*2順天堂大学医学部附属順天堂医院眼科*3順天堂大学医学部附属静岡病院眼科CClinicalOutcomesofAhmedGlaucomaValveImplantationwithIntraoperativeConjunctivalClosureProblemsChihiroKoiwa1),ToshimitsuKasuga1),YosukeAsada2),SatokoAsaoka3),YusukeHayashi2,3)andAkiraMatsuda2)1)DepartmentofOphthalmology,JuntendoUniversityNerimaHospital,2)DepartmentofOphthalmology,JuntendoUniversitySchoolofMedicine,3)DepartmentofOphthalmology,JuntendoUniversityShizuokaHospitalC目的:アーメド緑内障バルブ(AGV)挿入術において,手術部位の結膜被覆に難渋した症例について後ろ向きに検討した.対象および方法:順天堂附属病院でC2017.2020年にCAGVを挿入したC155例C165眼中,術中に結膜被覆が困難であったC5例C5眼の臨床経過を検討した.結膜被覆困難例は全例,線維柱帯切除術不成功のためアーメドCFP7を全例耳下側に挿入した症例で,原発開放隅角緑内障C4眼,落屑緑内障C1眼であった.結果:平均観察期間はC13.4(8.24)カ月であった.全例で術後C6カ月以内に結膜上皮欠損は解消したが,その後C2眼でインプラントが露出し,インプラント抜去と耳上側への再挿入を施行した.露出したC2眼では結膜を引き寄せて手術創の被覆をめざしたのに対し,露出がなかったC3眼では完全被覆を断念し,輪部側のパッチ組織を覆わない状態で手術を終了した.結論:AGVの結膜被覆困難例ではプレート側の被覆を優先し,輪部側に無理に引き寄せない方法が好ましいと考えられた.CPurpose:ToevaluatetheclinicalcourseofcasesinwhichconjunctivalclosureatthesurgicalwoundsitepostAhmedCglaucomavalve(AGV)implantationCwasCdi.cult.CPatientsandMethods:InCthisCretrospectiveCstudy,CweCreviewedthemedicalrecordsof5cases(n=5eyes)inwhichconjunctivalclosureatthesurgicalwoundsitepostAGVimplantationwasdi.cult.Results:Themeanfollow-upperiodwas13.4months(range:8-24months).All5eyeshadahistoryoffailedtrabeculectomyandtheAGVbeingimplantedattheinferior-temporalquadrant.In2eyes,theconjunctivawaspulledtightlytofullycoverthesurgicalwound,thusresultinginexposureoftheAGV,soCtheCexposedCAGVCwasCremovedCandCaCnewCFP7CAGVCwasCreinsertedCatCtheCsuperior-temporalCquadrant.CInC3Ceyes,CtheCconjunctivaCwasCsecuredCtoCtheCpatchCtissueCtoCavoidCtension,CandCnoCAGVCexposureCwasCobservedCinCthoseeyes.Conclusions:Incaseswithconjunctivalclosuredi.cultypostAGVimplantation,itappearspreferabletoCgiveCpriorityCtoCcoveringCtheCplateCandCnotCforciblyCpullingCtheCconjunctivaCtowardCtheClimbalCsideCinCorderCtoCavoidAGVexposure.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(12):1690.1693,C2022〕Keywords:緑内障,アーメド緑内障バルブ,チューブ露出,プレート露出,合併症.glaucoma,Ahmedglaucomavalve,tubeexposure,plateexposure,complications.Cはじめに緑内障ロングチューブ手術の一つであるアーメド緑内障バルブ(AhmedCglaucomavalve:AGV)挿入術は,血管新生緑内障,続発緑内障,線維柱帯切除術が不成功に終わったなどの難治性緑内障に対して施行される術式である.わが国ではC2012年にバルベルト緑内障インプラント(BaerveldtglaucomaCimplant:BGI)が保険適用となり,2014年にはAGVによるチューブシャント手術が認可された.AGVは眼圧の調整弁が付いているため,BGIと比較し,速やかな眼圧下降が望ましい重症緑内障患者に施行されることが多い1).AGV挿入術では,術中に強膜パッチの結膜被覆に難渋することをときに経験するが,これまでに術中に強膜パッチを結膜で被覆することができなかった症例の経過について検討した報告は少ない2).本研究では,順天堂大学附属病院で経〔別刷請求先〕小岩千尋:〒177-8521東京都練馬区高野台C3-1-10順天堂大学医学部附属練馬病院眼科Reprintrequests:ChihiroKoiwa,M.D.,DepartmentofOphthalmology,JuntendoUniversityNerimaHospital,3-1-10Takanodai,Nerima-ku,Tokyo177-8521,JAPANC1690(122)表15例5眼の背景年齢眼科手術白内障術前緑内障観察期間症例(歳)性別病型既往(回)同時手術点眼数(剤)インプラント露出(カ月)1C71女原発開放隅角緑内障C2なしC4あり(チューブ,プレート)C24C2C90女落屑緑内障C3なしC3なしC15C3C59女原発開放隅角緑内障C1ありC3あり(チューブ)C10C4C77男落屑緑内障C1ありC3なしC10C5C71男原発開放隅角緑内障C2なしC4なしC8C験したC5例C5眼の結膜被覆困難症例を対象として,AGV挿入術後の重篤な合併症であるインプラント露出2.14)の有無の観点から臨床経過をレトロスペクティブに検討した.CI対象および方法1.対象順天堂大学附属病院でC2017年C6月.2020年C8月にCAGVを挿入したC155例C165眼のうち,術中に手術部位(強膜パッチ部位)を結膜で被覆することが困難であったC5例C5眼の臨床経過をレトロスペクティブに検討した.結膜被覆困難の定義はCGe.enらの論文に準じて,手術終了時にパッチ組織を結膜で被覆できなかった眼とした2).平均年齢はC73.6C±10.1歳(59.90歳),平均観察期間はC13.4C±5.8カ月(8.24カ月),病型は原発開放隅角緑内障C4眼,落屑緑内障C1眼で,全例耳上側の線維柱帯切除術(trabeculectomy:TLE)の術後であった.落屑緑内障のC1例は,鼻上側にもCTLEを施行していた.AGVのプレートは全例で耳下側に固定し,チューブは毛様溝に挿入した.術前の緑内障点眼使用数は平均C3.4±0.49剤(3.4剤)であった.なお,本研究は順天堂大学医学部の倫理委員会の承認(承認番号C16-287)を得て施行した.C2.手術方法有水晶体眼は耳側角膜切開による白内障手術を併施した.順天堂医院におけるCAGV導入初期に手術を施行したC1眼(症例1)では,耳下側の結膜を輪部から約C6Cmmの位置で円周状にC3時からC7時にかけて切開した.以後の症例(症例2.5)では,結膜は輪部切開を基本として,耳下側を右眼の場合はC9時からC5時,左眼の場合はC3時からC7時にかけて輪部切開し,両側に放射状の減張切開を加えた.プレートの留置は直筋間とし,角膜輪部からC8Cmmの位置にC8-0ナイロン糸で強膜に固定したあとにトリアムシノロンアセトニドをプレート下へ散布した.粘弾性物質で虹彩と眼内レンズ間の空間を確保し,角膜輪部よりC2.5Cmmの強膜からC23ゲージ針で穿刺後,チューブを毛様溝に挿入した.一眼のC1/8の大きさで作製しておいた保存強膜片をチューブ被覆のために必要十分な大きさにトリミングした後でC10-0ナイロン糸を用いて固定し,その後結膜をC8-0バイクリル糸で縫合した.AGVは全例でCFP7を使用し,全例同一術者(A.M.)が執刀した.術後点眼はC0.5%モキシフロキサシン塩酸塩点眼液をC1日C4回,0.1%ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼液をC1日C6回から開始し,術後C2カ月を目安に漸減終了した.CII結果5例C5眼の特徴について表1に示した.5例のうちC4例は耳上側にCTLEをC1回,症例C2は鼻上側と耳上側に計C2回のTLEを施行していた.また,症例C3,4は,AGV挿入術と水晶体再建術との同時手術であった.全例で術後C6カ月以内に結膜上皮が伸展して上皮欠損は解消した.3眼はインプラント露出なく経過したが,2眼でインプラントの露出が生じ,2眼ともCAGVの抜去と耳上側への再挿入を施行した.1眼(症例1)では,術後C22カ月でチューブとプレートの露出(図1)を,別のC1眼(症例3)では術後C8カ月でチューブ露出を生じた.露出を認めたC2眼では可能な限り結膜を引き寄せて被覆をめざしたのに対し,露出がなかったC3眼では手術時の完全被覆を断念し,輪部側の強膜パッチ組織を覆わない状態で手術を終了していた.術前緑内障点眼使用数は,チューブとプレートが露出した症例C1でC4剤,チューブが露出した症例C3でC3剤であった(表1).全例において,他の合併症は認めなかった.CIII考按本研究では,術中に強膜パッチ部位を結膜で被覆することが困難であったC5例C5眼の臨床経過をレトロスペクティブに検討した.結膜被覆困難の原因はさまざまであるが,共通点として手術部位の結膜組織が薄く,進展性に乏しい状態であったことがあげられる.AGV挿入術後のインプラント露出は,重要な合併症の一つである.TVTstudy3)ではチューブシャント術後の晩期合併症として,インプラントの露出をC5%に認めたと報告して図1プレート露出・チューブ露出を認めた症例(71歳,女性.症例1)a:結膜輪部から約C6Cmmの位置に円弧上の結膜切開創(.)を作製してCAGVプレートを挿入した.輪部側から結膜を引き寄せて,強膜パッチの被覆を試みるも,結膜裂創を生じ完全な被覆を断念した(.).b:術後C22カ月でプレート露出(.)とチューブ露出(.)を生じた.図2インプラント露出を生じなかった症例(77歳,男性.症例4)a:右眼耳下側の輪部に設置した強膜パッチを結膜で覆わない状態(.)で手術を終了した.Cb:術後C1年,耳下側の強膜パッチは結膜上皮で被覆されている(.).いる.国内では沼尾ら4)がCAGV挿入術後のプレートの露出・脱出をC17%に認めたと報告している.Ge.enら2)は,AGV挿入術後にC8.9%の症例で平均C996C±735日後にインプラント露出を認めたとし,結膜離開を生じたインプラント挿入部位は鼻下側(57.1%),耳下側(46.2%),耳上側(24.6%),鼻上側(16%)の順に多かったと報告している.しかし,本検討でも全例で耳上側のCTLE術後であったためチューブ挿入箇所に耳下側を選択したように,下側を選択するのはすでに耳上側に濾過手術を施行している場合が多いことが理由として考えられ,下方挿入例で露出が多いのは多重手術によるバイアスがかかっている可能性がある.本検討では結膜被覆困難症例のみを扱っているが,同時期に手術をした165眼のうちインプラント露出を生じたのは,前述のC2眼を含めC4眼(2.4%)と既報より少ない結果であった.インプラント露出のリスク因子として既報では,若年症例5)や多重手術後の症例6)があげられている.インプラント露出は眼内炎のリスクであり,すみやかに修復術を行う必要がある.Levinsonら7)は,初回のCAGVFP7挿入例でチューブまたはプレートの露出がC3.8%に生じ,とくに鼻下側への挿入で露出が起こりやすいと報告した.さらに,露出を生じた症例のうち,16.3%が同時に眼内炎症を引き起こしており,下方で露出した症例が上方挿入例よりも眼内炎症を起こしやすかったとしている.Pakravanら8)は,抜去を要するインプラント露出が下方挿入例で有意に多かったとし,Rachmielら9)は下方挿入例で結膜創部離開が有意に多く,チューブやプレートの露出につながったと報告している.現在では,筆者らは耳上側のCTLE術後であっても,可能な限り瘢痕化濾過胞部位を再度切開して耳上側にCAGVを挿入することを原則に手術を施行しており,瘢痕化濾過胞部位への挿入が術後成績に与える影響を現在検討している.修復術を行う際には強膜パッチ組織を含めて修正を行うことが推奨されているが10),糖尿病罹患症例,術前の緑内障点眼薬使用数が多い症例,多重手術後症例は,露出修復術後の成績が不良であることが報告されており11),赤木ら12)は計C8回の内眼手術既往がある患者において,同一眼でC2度のインプラント露出を生じた症例を報告している.今回のインプラント露出のC2症例は糖尿病ではなかったが,露出部位の結膜の状態が不良であったため,修復術ではなく耳下側のインプラント摘出と耳上側への再挿入術を施行した.1例は術後C9カ月,もうC1例は術後C10カ月が経過しているが,現時点で合併症なく経過している.また,症例C1のように順天堂医院におけるCAGV挿入術導入初期において,結膜は輪部から約6Cmmの位置で円弧状に切開していたが,プレート近傍の結膜切開はプレート露出のリスクになるのではと考え,この症例の経験をきっかけに現在では全例で輪部からのCfornixbaseの切開を行っている.過去の報告でインプラント露出の原因として眼瞼との摩擦,チューブやプレートの動きが指摘されており2,13),とくに耳側下方に挿入された症例では,第一眼位における瞼裂内の強膜パッチの露出部位が上方挿入例と比較して広いこと,結膜.の奥行きが耳上方より狭いことから,インプラント露出のリスクがより高い可能性が示唆されている14).本検討におけるインプラント露出症例においても,結膜を輪部側に引き寄せたことにより結膜に機械的なストレスがかかり,摩擦に対する脆弱性が生まれた可能性が考えられた.また,チューブ露出を認めたC2症例ではプレート近傍の結膜が薄い状態が持続し,最終的にチューブを固定していたC10-0ナイロン糸が時間の経過とともに強膜からはずれたことでプレート近くのチューブが強膜パッチを破って露出に至った.一方で,結膜での完全被覆を断念したC3例では,プレート側の被覆を優先し結膜組織を牽引することなく結膜組織をパッチ組織に固定し,時間をかけて結膜上皮の進展を待つ方針がよい結果を生んだと考えられた.本研究は少数例でのレトロスペクティブなものであり,今後さらなる検討が必要である.CIV結論手術時に結膜を輪部側に引き寄せることで結膜が菲薄化し,インプラント露出をきたした可能性が考えられた.AGVの結膜被覆困難症例においてはプレート側の被覆を優先し,輪部側に無理に引き寄せない被覆方法が好ましいと考えられた.文献1)ChristakisCPG,CKalenakCJW,CZurakowskiCDCetal:TheCAhmedversusBaerveldtstudy:one-yeartreatmentout-comes.OphthalmologyC118:2180-2189,C20112)Ge.enCN,CBuysCYM,CSmithCMCetal:ConjunctivalCcompli-cationsCrelatedCtoCAhmedCglaucomaCvalveCinsertion.CJGlaucomaC23:109-114,C20143)GeddeCSJ,CHerndonCLW,CBrandtCJDCetal:PostoperativeCcomplicationsintheTubeversusTrabeculectomy(TVT)CstudyCduringC.veCyearsCofCfollow-up.CAmCJCOphthalmolC153:804-814,Ce1,C20124)沼尾舞,平井鮎奈,權守真奈ほか:アーメド緑内障バルブ挿入術の短期成績.臨眼C75:1067-1071,C20215)ChakuCM,CNetlandCPA,CIshidaCKCetal:RiskCfactorsCforCtubeexposureasalatecomplicationofglaucomadrainageCimplantsurgery.ClinOphthalmolC10:547-553,C20166)ByunCYS,CLeeCNY,CParkCK:RiskCfactorsCofCimplantCexposureCoutsideCtheCconjunctivaCafterCAhmedCglaucomaCvalveimplantation.JpnJOphthalmolC53:114-119,C20097)LevinsonCJD,CGiangiacomoCAL,CBeckCADCetal:GlaucomaCdrainagedevices:riskCofCexposureCandCinfection.CAmJOphthalmolC160:516.521,C20158)PakravanM,YazdaniS,ShahabiCetal:SuperiorversusinferiorAhmedglaucomavalveimplantation.Ophthalmol-ogyC116:208-213,C20099)RachmielCR,CTropeCGE,CBuysCYMCetal:Intermediate-termCoutcomeCandCsuccessCofCsuperiorCversusCinferiorCAhmedCGlaucomaCValveCimplantation.CJCGlaucomaC17:C584-590,C200810)GeddeCSJ,CScottCIU,CTabandehCHCetal:LateCendophthal-mitisCassociatedCwithCglaucomaCdrainageCimplants.COph-thalmologyC108:1323-1327,C200111)HuddlestonSM,FeldmanRM,BudenzDLetal:Aqueousshuntexposure:aCretrospectiveCreviewCofCrepairCout-come.JGlaucomaC22:433-438,C201312)赤木忠道,須田謙史,亀田隆範ほか:2回の緑内障インプラント露出に対してインプラント摘出と再留置術を要した続発緑内障のC1例.臨眼C73:573.580,C201913)LankaranianD,ReisR,HendererJDetal:Comparisonofsinglethicknessanddoublethicknessprocessedpericardi-umCpatchCgraftCinCglaucomaCdrainageCdevicesurgery:aCsingleCsurgeonCcomparisonCofCoutcome.CJCGlaucomaC17:C48-51,C200814)SidotiPA:InferonasalCplacementCofCaqueousCshunts.CJGlaucomaC13:520-523,C2004***

白内障手術併用マイクロフックAb Interno トラベクロトミー の患者背景別奏効率

2022年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科39(12):1685.1689,2022c白内障手術併用マイクロフックAbInternoトラベクロトミーの患者背景別奏効率池田瑞希白戸勝北村裕太馬場隆之千葉大学医学部附属病院眼科CTheOutcomeofCombinedCataractSurgeryandMicrohookAbInternoCTrabeculotomybyPatientBackgroundCMizukiIkeda,SuguruShirato,YutaKitamuraandTakayukiBabaCDepartmentofOphthalmologyandVisualScience,ChibaUniversityGraduateSchoolofMedicineC目的:白内障手術併用マイクロフックCabinternoトラベクロトミー(PEA+IOL+μLot)の奏効率を患者背景別に検討する.対象および方法:初回手術として施行されたCPEA+IOL+μLotの連続症例C126例C171眼(平均年齢C71.4C±9.1歳)を対象とし,最終受診時の眼圧がC18CmmHg以下かつC15%以上下降を認めた場合を奏効と定義し,1年後の奏効率を年齢別,性別,病型別,術前眼圧別,術前点眼スコア別に検討した.結果:術後平均経過観察期間はC10.3C±8.5カ月(1.39カ月),病型は広義原発開放隅角緑内障(POAG)69例C100眼,原発閉塞隅角緑内障(PACG)3例C3眼,続発緑内障(SG)54例C68眼であった.病型別の奏効率はCPOAG45.0%,SG67.6%であり,POAGはCSGと比べ有意に奏効率が低かった(p<0.05).術前眼圧別ではC20mmHg以下でC51.3%,21mmHg以上30mmHg以下でC60.0%,31CmmHg以上でC66.7%であり,有意ではないものの術前眼圧が高くなると奏効率が上昇する傾向がみられた.年齢,性,術前点眼スコアによる差はみられなかった.結論:PEA+IOL+μLotはCPOAGに対してCSGで奏効率が高く,術前眼圧が高くなると奏効率が上昇する傾向がみられた.CPurpose:ToinvestigatetheoutcomeofcombinedcataractsurgeryandmicrohookabinternoCtrabeculotomy(μLOT)[phacoemulsi.cation(PEA)+intraocularClensimplantation(IOL)+μLOT]C.Methods:ThisCretrospectiveCstudyinvolved171eyesof126consecutivecases(meanage:71.4C±9.1years)thatunderwentPEA+IOL+μLOT.Asuccessfulsurgicaloutcomewasde.nedasa.nalIOPof≦18CmmHgandanintraocularpressure(IOP)reduc-tionCrateCof15%CorCmore,CandCwasCreviewedCbyCpatientCage,Csex,CdiseaseCtype,CpreoperativeCIOP,CandCmedicationCscore.CResults:TheCmeanCfollow-upCperiodCwasC10.3±8.5months(range:1-39months)C.COfCtheC171Ceyes,C100CwereprimaryCopen-angleCglaucoma(POAG,Cn=69cases)C,C3CwereprimaryCangle-closureCglaucoma(PACG,Cn=3cases),and68weresecondaryglaucoma(SG,n=54cases).Successratebydiseasetypewas45%forPOAGand67.6%forSG,whichwassigni.cantlyhigherthanthatofPOAG(p<0.05)C,andbypreoperativeIOPwas51.3%intheC≦20CmmHgCgroup,60%CinCtheC21CmmHg-30CmmHgCgroup,Cand66.7%CinCtheC≧30CmmHgCgroup.CTheCsuccessCrateCtendedCtoCincreaseCasCtheCpreoperativeCIOPCincreased.CNoCrelationshipCwasCfoundCbetweenCsuccessCrateCandCpatientage,gender,andpreoperativemedicationscore.Conclusions:PEA+IOL+μLOThadahighersuccessrateinSGthaninPOAG,andthesuccessratetendedtobehighwhenthepreoperativeIOPwashigh.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(12):1685.1689,C2022〕Keywords:緑内障,谷戸式Microhook,線維柱帯切開術,MIGS.glaucoma,Tanitomicrohookabinterno,tra-beculotomy,minimallyinvasiveglaucomasurgery.Cはじめに管に導き,主経路からの房水流出を促進させる目的で行われ線維柱帯切開術(以下,トラベクロトミー)は線維柱帯とる手術である.濾過胞を形成する線維柱帯切除術と比較するSchlemm管内皮を機械的に切開することで房水をCSchlemmと,視力低下に直結する低眼圧黄斑症,脈絡膜.離,濾過胞〔別刷請求先〕池田瑞希:〒260-8677千葉市中央区亥鼻C1-8-1千葉大学医学部附属病院眼科Reprintrequests:MizukiIkeda,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,ChibaUniversityGraduateSchoolofMedicine,1-8-1Inohana,Chuo-ku,Chiba260-8677,JAPANC感染など重篤な合併症をきたす割合が低い反面,本手術のみで緑内障による視野の進行を抑制するだけの眼圧下降を得ることはむずかしく,術後も緑内障治療用点眼を併用することが多い.線維柱帯の切開方法は,強膜弁を作製し,Schlemm管を開放してからトラベクロトームでC120°切開する方法や,5-0ナイロン糸をC360°通し,全周切開する眼外アプローチと,ゴニオプリズムを用い,線維柱帯を直視下にマイクロフックで切開する眼内アプローチに大別される1).眼外アプローチは虹彩前癒着が存在しても線維柱帯を切開できる反面,手技が煩雑で難易度が高い.眼内アプローチは簡便で手術時間が短く患者の負担が少ない反面,角膜の視認性が悪いとうまく切開できない.また,虹彩前癒着があると切開が困難な場合がある.それぞれ長所,短所があるが,眼内アプローチは簡便であり白内障手術と同一創から切開できるため近年急速に普及している.緑内障を合併した患者の白内障手術では,術後眼圧を下降させ,緑内障治療用点眼の本数を減らす目的で,眼内アプローチからのトラベクロトミーを併用するケースが増えている2).しかし,併用したものの十分な眼圧下降を得られないケースにもしばしば遭遇する.筆者らは白内障手術を同時に行ったマイクロフックCabinternoトラベクロトミーの奏効率を病型別,患者背景別に比較し,効果の得られやすい背景を検討した.CI対象および方法2017年C10月C24日.2020年C11月C24日に千葉大学医学部附属病院で同一術者により初回手術として行われた白内障手術併用マイクロフックCabinternoトラベクロトミーの連続症例C126例C171眼を対象とした.内訳は男性症例C86眼,女性症例C85眼,年齢はC71.0C±9.1歳(平均値C±標準偏差),病型は広義原発開放隅角緑内障(primaryCopen-angleCglauco-ma:POAG)100眼,原発閉塞隅角緑内障(primaryCangleCclosureglaucoma:PACG)3眼,落屑緑内障(exfoliationglaucoma:EG)48眼,ステロイド緑内障C6眼,ぶどう膜炎続発緑内障C14眼であった(表1).症例を患者背景により次のようにグループ分けした.年齢(65歳未満とC65歳以上),性別,病型,術前眼圧(21CmmHg未満,21CmmHg以上C31CmmHg未満,31CmmHg以上),点眼スコア(5以上とC6以上).点眼スコアはC1剤C1点,配合剤点眼C2点,炭酸脱水酵素阻害薬内服C2点とした.観察ポイントは手術前日,手術後C1カ月,3カ月,6カ月,1年,最終受診時とし,術後眼圧がC18CmmHg以下かつ術前よりC15%以上下降を認めた症例を生存とした.最終受診時における生存率を手術奏効率とし,それぞれの患者背景別に比較,検討した.手術方法は次のとおりである.耳側角膜切開(2.8Cmm)で水晶体超音波乳化吸引術,眼内レンズ挿入を施行後,前房に粘弾性物質(ヒアルロン酸C0.3アルコン)を投与し隅角を広げる.患者の頭部を術者と逆側に向けると同時に顕微鏡を術側と逆側に傾け,術眼の視軸と顕微鏡の光軸をC45°ほどずらした状態で隅角鏡(ヒルサージカルゴニオプリズム)を角膜に乗せ,隅角を観察する.白内障手術と同一創からストレートマイクロフック(イナミ)を前房に挿入し,鼻側から下方にかけて可能な限り広範囲に(90°以上)線維柱帯を切開する3).前房から粘弾性物質を吸引し,耳側のC2.8Cmm角膜創をC10-0ナイロン糸(マニー)で縫合する.最後に角膜サイドポートから眼内灌流液(BSS)を注入し,眼圧を高めた状態で終刀した.眼圧推移における術前後の比較はCpairedt-test,奏効率の比較にはCc2testを用い,いずれもCp<0.05を有意水準とした.CII結果術後平均経過観察期間はC10.3C±8.5カ月(1.39カ月)だった.全症例の眼圧経過は術前,術後C1カ月,3カ月,6カ月,1年でそれぞれC19.9C±5.9,15.4C±4.2,14.9C±3.7,15.5C±3.5,C16.6±4.6CmmHgであり(表2),いずれの時点でも有意な眼圧下降を認めた(p<0.05).また,術後眼圧C18CmmHg以下,15%以上の眼圧下降を成功とした場合の生存率は術後C1カ月,3カ月,6カ月,1年でそれぞれC69.0%,57.3%,53.8%,50.3%となった(図1).最終受診時の眼圧下降率はC21.8%,手術奏効率はC54.4%だった.追加手術を要した症例は23眼で,Express手術はC19眼,線維柱体切除術はC4眼であった.患者背景別の手術奏効率を表1に示す.年齢別,性別,術前眼圧別,術前点眼スコア別の検討では有意な差はみられなかった.有意ではないが,術前眼圧別では眼圧が上昇するにつれ奏効率が上昇する傾向にあった.病型別では広義POAGのみ奏効率がC45.0%と低く,その他はC66.7.71.4%と高かった.症例数の多いCEGおよび続発緑内障全体では有意差を認めた.CIII考按今回,白内障手術を併用したマイクロフックCabCinternoトラベクロトミーの術後眼圧を患者背景別に検討した.全症例の最終受診時の眼圧下降率はC21.8%,手術奏効率はC54.4%であった.既報を参照すると(表3)術後眼圧はC12.18mmHg程度であり,術後C1年の奏効率は約C50.80%程度である4.6).術者によって切開範囲が異なること,報告により症例の傾向が異なるため結果にばらつきがあるが,おおむね眼外法で施行されるトラベクロトミーと同等の成績と考える.表1患者背景n(眼)奏効率(%)Cp年齢<6C5C29C58.6C0.69C65≦C142C53.5性男C86C60.4C0.12女C85C48.2広義CPOAGC100C45CPACGC3C66.7C0.59C病型PEGC48C66.7C67.6C0.01C0.41C0.090.005SteroidCSGC6C68C66.7CUveitisC14C71.4C<2C1C119C51.3術前眼圧21≦IOp<3C1C40C60C0.36C31≦C12C66.7C0.37点眼スコア5以下C82C53.7C0.886以上C89C55.1病型別のCp値はCPOAGとの比較,術前眼圧のCp値は<21との比較.表2術前および術後1,3,6,12カ月の眼圧,点眼スコアn(眼)眼圧(mmHg)p値点眼スコアp値術前C171C19.9±5.9C5.7±1.34p<C0.0001術後C1カ月C169C15.4±4.16p<C0.0001C2.94±2.08p<C0.0001術後C3カ月C160C14.9±3.66p<C0.0001C3.99±1.72p<C0.0001術後C6カ月C88C15.5±3.54p<C0.0001C3.26±1.66p<C0.0001術後1年C58C16.6±4.62p<C0.0001C3.28±1.61p<C0.0001また,本研究では術前眼圧が高い症例で奏効率が高い傾向C1.0にあること,病型別では続発緑内障のほうが広義CPOAGよC0.8り奏効率が良いことが示された.線維柱帯-Schlemm管を介0.20.0術後日数(日)171118989892929292図1手術後1年間の生存曲線群ではC21.79CmmHgと術前平均眼圧が続発緑内障より低く,トラベクロトミーが奏効しづらいのではないかと考える.さらに本研究,既報ともに続発緑内障のほうが術後平均眼圧が低く,これも理由として考えられる.広義CPOAGのほうが続発緑内障よりトラベクロトミー後の眼圧が高めになること050100150200250300350生存確率する主経路の房水流出は過去の報告で示されているとおり,眼圧に依存して流出量が増える性質をもっている.トラベクロトミーで線維柱帯の一部を開放すると,眼圧の高い症例ほど主経路を介した房水流出が増えるため,眼圧下降率が高くなる.そのため手術の奏効率が上昇したものと考えた.本研究では術前眼圧が高いほど眼圧下降率が高い(図2)一方で,術前眼圧が低いほど術後眼圧が低くなる(図3)傾向が示されており,既報と一致する結果となった7).続発緑内障のほうが広義CPOAGより奏効率が高かったことに関しては表4に示すとおり,既報でも同様の結果となっている8,9).既報はトラベクトーム,トラベクロトミー(眼外法)と本研究と術式が異なるが,眼圧下降のメカニズムは同様であり,参考になりうるものである.理由の一つとして,広義CPOAGには正常眼圧緑内障も含まれるため,術前平均眼圧が広義CPOAG群ではC18.51CmmHgであり,続発緑内障0.60.4表3既報との比較術式Cn(眼)術前眼圧(mmHg)術後眼圧(mmHg)奏効率(%)成功基準C3)Tanito,etal(2C017)PEA+IOL+μLOTC68C16.4±2.910カ月C11.8±4.51年82%CIOP≦18CmmHg15%以上の低下C4)Yachna,etal(2C013)PEA+IOL+μLOTCorμLOTC246C21.6±8.62年C15.3±4.62年22%CIOP≦18CmmHg20%以上の低下C5)Mori,etal(2C020)PEA+IOL+μLOTorμLOTC69C28.4±7.81年C17.8±6.31年74%C5≦IOP≦20CmmHg20%以上の低下C6)Tojo,etal(2C021)PEA+IOL+μLOTCorμLOTC61C24.1±9.21年C12.5±3.91年59%CIOP≦18CmmHg20%以上の低下本研究CPEA+IOL+μLOTC171C19.9±6.01年C16.6±4.61年54%CIOP≦18CmmHg15%以上の低下1506050術後眼圧(mmHg)眼圧下降率(%)40030-5020-10010-150051015202530354045-200術前眼圧(mmHg)術前眼圧(mmHg)図2術前眼圧と眼圧下降率の散布図図3術前眼圧と術後眼圧の散布図表4病型別の既報との比較0術式病型Cn(眼)術前眼圧(mmHg)術後眼圧(mmHg)奏効率(%)成功基準CTingJLM,etal8)(C2012)PEA+IOL+TrabecutomeCPOAGC263C19.9±5.4C15.6±3.287%CIOP≦21CmmHg20%以上の低下CSG(PEG)C45C21.7±8.4C14.2±3.191%C9)ChinS,etal(2C012)Trabecutomy(withmetaltrabeculotome)CPOAGC1631%CIOP≦18CmmHg30%以上の低下CSGC1950%本研究CPEA+IOL+μLOTCPOAGC100C18.4±4.2C15.3±6.068%CIOP≦18CmmHg15%以上の低下CSGC68C21.7±7.3Cは興味深く,Schlemm管から房水静脈に至る経路に何らか者背景から症例を選んで施行することが重要と考える.の異常があることが推測される.白内障手術併用マイクロフックCabinternoトラベクロト利益相反:利益相反公表基準に該当なしミーは術前眼圧の高い症例,続発緑内障でより高い奏効率を得られる傾向が示された.一般的にこの術式の奏効率が線維柱帯切除術など他の緑内障手術に劣ることを考慮すると,患文献1)TanitoCM,CSanoCI,CIkedaCYCetal:Short-termCresultsCofCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomy,CaCnovelCminimallyCinvasiveCglaucomaCsurgeryCinCJapaneseeyes:initialCcaseCseries.ActaOphthalmolC95:e354-e360,C20172)TanitoCM,CIkedaCY,CFujiharaCECetal:E.ectivenessCandCsafetyCofCcombinedCcataractCsurgeryCandCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomyCinCJapaneseCeyesCwithglaucoma:Creportofaninitialcaseseries.JpnJOphthalmolC61:457-464,C20173)TanitoM:MicrohookCabCinternoCtrabeculotomy,CaCnovelCminimallyCinvasiveCglaucomaCsurgery.CClinCOphthalmolC12:43-48,C20184)YachnaA,SonMKP,MehrdadMetal:ClinicalresultsofabinternotrabeculotomyusingthetrabeclotomyforopenangleCglaucoma:TheCMayoCClinicCseriesCinCRochester,CMinnesota.AmJOphthalmolC156:927-935,C20135)MoriCS,CMuraiCY,CUedaCKCetal:ACcomparisonCofCtheC1-yearCsurigicalCoutcomesCofCabCexternoCtrabeculotomyCandmicrohookabinternotrabeculotomyusingpropensityscoreanalysis.BMJOpenOphthalmolC5:e000446,C20206)TojoCN,COtsukaCM,CHayashiCACetal:ComparisonCofCtra-bectomeCandCmicrohookCsurgicalCoutcomes.CIntCOphthal-molC41:21-26,C20217)TanitoCM,CSugiharaCK,CTsutsuiCACetal:E.ectsCofCpreop-erativeCintraocularCpressureClevelConCsurgicalCresultsCofCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomy.CJCClinCMedC10:C3327,C20218)TingJLM,DamjiKF,StilesMCetal:Abinternotrabec-ulectomy:outcomesCinCexfoliationCversusCprimaryCopenCangleCglaucoma.CJCCataractCRefractCSurgC38:315-323,C20129)ChinS,NittaT,ShinmeiYetal:Reductionofintraocularpressureusingamodi.ed360-degreesuturetrabeculoto-mytechniqueinprimaryandsecondaryopenangleglau-coma:apilotstudy.JGlaucomaC21:401-407,C2012***

自閉症スペクトラム障害の小児に認めた眼球乾燥症の1 例

2022年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科39(12):1681.1684,2022c自閉症スペクトラム障害の小児に認めた眼球乾燥症の1例輪島羽慈*1横川英明*1小林顕*1黒田文人*2杉山和久*1*1金沢大学附属病院眼科*2金沢大学附属病院小児科CACaseofXerophthalmiainaChildwithAutismSpectrumDisorderHagukuWajima1),HideakiYokogawa1),AkiraKobayashi1),MondoKuroda2)andKazuhisaSugiyama1)1)DepartmentofOphthalmology,KanazawaUniversityHospital,2)DepartmentofPediatrics,KanazawaUniversityHospitalC緒言:自閉症スペクトラム障害の小児における偏食によるビタミンCA欠乏性眼球乾燥症のC1例を報告する.症例:12歳,男児.両眼の先天白内障に対する手術(1歳時とC7歳時)および心因性弱視の既往があった.右眼痛を自覚し,近医にて右眼角膜潰瘍の診断で抗菌薬点眼が開始されたが,難治のため金沢大学附属病院眼科に紹介となった.初診時,細隙灯顕微鏡にて,右眼の角膜潰瘍,両眼の点状表層角膜症と結膜の角化を認めた.自閉症スペクトラム障害があり,詳細な問診にて極端な偏食が判明した.ビタミンCA欠乏症(血清ビタミンCA5CIU/dl)と診断してビタミンCA筋肉内注射を行ったところ,角膜に重篤な後遺症を遺さず,眼球乾燥症が改善した.結論:日本を含む先進国において,ビタミンCA欠乏性眼球乾燥症はまれではあるが,重度の偏食にて発生することが明らかとなった.眼科医による正しい診断が,小児科医や内科医による全身的な治療の方針決定に役立つ疾患であると考えられた.CPurpose:Toreportacaseofxerophthalmiainachildwithautismspectrumdisorder(ASD)C.CaseReport:CA12-year-oldboywithahistoryofASD,psychogenicamblyopia,andcongenitalcataractwasreferredtoourhos-pitalfortreatmentofapainfulcornealulcerinhisrighteye.Healsohadsuper.cialpunctatekeratopathyandcon-junctivalkeratosisinbotheyes.ThepatientwasdiagnosedasxerophthalmiaduetovitaminAde.ciencycausedbyCanCunbalancedCdiet.CIntramuscularCvitaminCACe.ectivelyCandCrapidlyCcuredCbothCtheCcornealCulcerCandCocularCdrynessCwithoutCanyCseriousCocularCsequelae.CConclusions:AlthoughCvitaminCACde.ciencyCisCnowCquiteCrareCinCadvancedcountries,includingJapan,ophthalmologistsshouldbeawarethatitdoeshappenincaseswithasevereunbalancedCdiet.CDiagnosisCofCthisCdiseaseCbyCanCophthalmologistCcanChelpCpediatriciansCand/orCphysiciansCwhenCselectingapropertherapy.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(12):1681.1684,C2022〕Keywords:ビタミンCA欠乏,偏食,眼球乾燥症,角膜潰瘍.vitaminAde.ciency,unbalanceddiet,xerophthal-mia,cornealulcer.CはじめにビタミンCA欠乏症は不十分な食事摂取による栄養失調をきたしやすいアフリカや南アジアなど発展途上国で生じやすい疾患で,ビタミンCAやCb-カロテンを含有する食品を日常的に摂取していないことが原因とされる1.4).これらの国ではC1.4億人以上の未就学児がビタミンCA欠乏状態であり,毎年C25万以上が失明に至る幼少期の視覚障害の原因の一つとして知られる1,5).一方,わが国を含む先進国での真性ビタミンCA欠乏症はまれであるが,摂取した食物の消化,吸収,代謝障害がある場合や,精神科疾患を背景とした続発性ビタミンCA欠乏症の報告は散見される1,4,6.10).精神的疾患に由来した極端な偏食や摂食障害は近年増加傾向にあり,ときに重篤な栄養障害に陥り眼合併症をきたす.今回筆者らは自閉症スペクトラム障害に伴う偏食が原因と考えられるビタミンCA欠乏性眼球乾燥症のC1例を経験したので報告する.CI症例患者:12歳,男児.主訴:右眼痛.現病歴:X年某日に右眼が急に痛くなり近医眼科を受診した.右眼の角膜全面に点状表層角膜炎,角膜中央に潰瘍,混濁を認め,前房にフィブリンの析出を認めたため,ガチフロ〔別刷請求先〕輪島羽慈:〒920-8641金沢市宝町C13-1金沢大学附属病院眼科Reprintrequests:HagukuWajima,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KanazawaUniversityHospital,13-1Takara-machi,Kanazawacity,Ishikawa920-8641,JAPANC図1初診時の前眼部所見a:右眼.角結膜は乾燥しており光沢を失い角化している.結膜充血,角膜中央に円形の潰瘍を認め,前房内がフィブリン析出により混濁している.Cb:右眼のフルオレセイン染色.角膜潰瘍部分が染色され,びまん性の角化,点状表層角膜症,結膜には皺襞を認める.Cc:左眼.角結膜上皮は角化により光沢を失い,表面は粗造である.Cd:左眼のフルオレセイン染色.右眼同様に角結膜の乾燥所見がみられ,角膜全体に点状表層角膜症がみられる.キサシンC0.3%C1日C8回,オフロキサシン眼軟膏C1回が処方された.近医再診時,右眼角膜全体の混濁が増悪し,前房透見不能となり,前眼部所見の明らかな増悪を認めたため,同日金沢大学附属病院眼科(以下,当科)を受診した.初診時所見:視力,眼圧ともに,上転位のまま動かず患児の拒否が強いため測定不可能だった.細隙灯顕微鏡検査でも正位での診察は非常に困難だった.両眼ともに結膜は充血し,結膜上皮は乾燥し粗造な印象で角化を認めた.両眼とも角膜は全体にすりガラス状であり点状角結膜障害を認め,右眼には瞳孔領にかかるように径C2.3Cmm程度の潰瘍を認めた.前房は深く前房内炎症については不詳,両眼とも眼内レンズ挿入眼であった.眼底は角膜混濁と診察拒否により観察困難であった.フルオレセイン染色では右眼の角膜中央に斑状の染色域を認め,結膜は点状に染色された(図1).既往歴:両眼の先天白内障のためC1歳時およびC7歳時に白内障手術施行歴あり.5歳時に斜視手術を受けている.もともと心因性視力障害で紹介医を定期通院していた.当科を受診するC2年半前は,矯正視力で右眼C1.0,左眼C0.1であった.自閉症スペクトラム障害で当院小児科に定期通院している.反復性陰部膿瘍のため複数回の入院歴あり.家族歴:特記すべき事項なし.生活歴:過度な偏食のため白飯,塩鮭,ヒレカツ,フライドポテト,特定銘柄の市販のお茶を摂取するという生活をC5年以上続けていた.母親の話では目が見えなくなった当科受診C2年半前頃から閉瞼した状態で生活しており,手づかみで食事をしている.受診時も母親が手をひき歩行している.初診時血液検査所見:血液検査で軽度の貧血(HbC11.8Cd/dl[正常値C12.2.15.7]),白血球の上昇(14.39C×103/μl[同4.0.10.7]),CRPの上昇,クレアチニンキナーゼの低下(16IU/l[同C51.270]),低アルブミン血症(3.8Cg/dl[同C3.8.4.7])を認めた.眼脂培養の提出は患児の拒否が強く施行できなかった.図2治療開始後3週間の前眼部所見a:右眼.結膜充血は消失し,角結膜は光沢を有する.点状表層角膜症は消失し,潰瘍は瘢痕を残さず治癒した.Cb:左眼.右眼同様,前眼部所見の改善を認めた.II治療および経過角膜潰瘍に対する初期治療としてガチフロキサシンC0.3%点眼液C8回,セフメノキシム塩酸塩点眼液C8回,トブラマイシン点眼液C8回,アトロピン点眼液C2回を開始した.過度の偏食歴があることから,ビタミンCA欠乏症を疑い,全身的な評価が必要と考え同日に当院小児科に紹介した.血清ビタミンCA値C5CIU/dl[正常値C97.316],血清亜鉛値C57Cμg/dl[同C80.130],血清葉酸値C1.5Cng/ml[同C2.4.9.7Cng/ml],25OHビタミンCD16.6Cng/ml[同C20Cng以上/ml]と著しい低値を認め,ビタミンCA欠乏症による両眼の眼球乾燥症と右眼角膜潰瘍と診断した.診断後より,ビタミンCA10万単位/日C7日間(累計C70万単位)の筋肉内注射による投与を開始した.ポラプレジンク錠,葉酸,アルファカルシドールの内服も開始し,薬物治療と並行して栄養サポートチームの介入による栄養指導を開始した.食生活の改善は患児の強いこだわり行動で難航し,まずは白飯にビタミン剤を混入することから始めた.ビタミンCA筋肉内注射開始後C7日目には血清ビタミンCAは正常域内となり,内服での補充に移行した.ビタミンCA補充後C21日目には前眼部所見は改善し,角膜,結膜ともに清明となった(図2).しかし所見,疼痛の自覚症状改善後も両眼の閉瞼状態は変わらず,視力は治療前と同様測定不可能だった.点眼薬を終了後も角結膜障害の再発は認めず,当科初診からC3カ月後当科通院終了とした.CIII考按ビタミンCAは,レチノール,レチナール,レチノイン酸などの脂溶性ビタミンの総称である.Cbカロテンからレチナールが生成され,亜鉛を補酵素として血液中で蛋白質との複合体を形成し,小腸上皮で吸収され肝臓に貯蔵される.ビタミンCAは幅広い生理機能に関与しており,上皮組織の保持による感染予防,遺伝子の発現調節,細胞増殖や分化制御などの役割を担っている.レチナールはロドプシンの成分として杆体細胞や錐体細胞に含まれることで,正常な視覚機能が維持される11).ビタミンCA欠乏症に伴う眼合併症では眼痛,眼球掻痒感,羞明,開瞼障害,夜盲,視野狭窄が先行し,晩期症状として眼球乾燥症,角膜潰瘍,角膜軟化症,角膜穿孔を生じる1,3,4,6.8).これらは杯細胞が減少し,ムチン産生が低下することで結膜上皮の角化をきたすことによるもので,角結膜の光沢を失い,BitotC’s斑をみるようになる.またビタミンCAは尿路上皮の免疫系に働きかけることで尿路上皮を安定化させ,小児の再発性尿路感染症の予防効果があるとされている12).ビタミンCA欠乏症の原因として,ビタミンCA摂取不足,消化管疾患やその手術後の吸収障害や胆道系障害,肝硬変などの蛋白合成低下,血液透析など腎障害由来のものなどがある8,13).発展途上国では公衆衛生が深く関与し,ビタミンCAやCbカロテン含有食物が入手困難であることや貧困のため日常的に摂取していないことが多いため,真性ビタミンCA欠乏症に至る.また近年先進国においても本症例のように過度な偏食や摂食障害,神経性食欲不振症などの精神科領域の疾患に併発し発症する例が過去にも報告されている9,10,14).自閉症スペクトラム障害(autismCspectrumdisorder)は神経発達障害の総称であり,社会性コミュニケーションや相互作用の障害,限定的な興味や行動を特徴とし,易刺激性や感覚過敏,ときに知的障害を有する.遺伝や環境因子が関与し,男性に多く,有病率はC2.75%以上とされるが近年世界的に増加傾向である15).自閉症スペクトラム障害の患児は食に強いこだわりをもつがゆえに,健常児と比較して偏食の割合が高く,全身的な合併症を有することもあり,診察や検査,治療への協力が得にくいため発見や治療が遅れることがあると考えられる.本症例では,長年の偏食により摂取されるべきビタミンA量が極端に低下し,ビタミンCA欠乏症に至ったと考えられる.本症例の角膜潰瘍の原因が感染性か非感染性であったかについては明確に判別することはむずかしい.しかしかろうじて観察できた細隙灯顕微鏡所見からは,円形の角膜上皮欠損が認められ,軽度の感染症を併発しているものと推測された.患児はC5年以上の偏食歴から長期のビタミンCA欠乏状態であったことが予想され,当科受診C2年半前の左眼視力低下時には,すでに両眼にビタミンCA欠乏性眼球乾燥症をきたしていた可能性があり,今回の右眼角膜潰瘍による眼痛が,眼球乾燥症発見の契機となったのではないかと推察される.またわが国での自閉症スペクトラム障害に伴うビタミンCA欠乏眼球乾燥症の既報では,4.7歳での症例報告が多い.こうした年齢の児では診察,検査の協力を得られないことが少なくないが,本症例のように青年期以降であっても病歴,症状の聴取がむずかしい患児の特性を理解することが大切であると感じた.本症例は他科や他職種との連携を行うことで治療開始後,速やかに症状と所見は改善し,角膜混濁など後遺症も認めなかった.また治療前にみられた反復性尿路感染についても栄養状態が改善されたことで現在まで再発はない.眼痛発症から比較的早期の治療介入が有効であり,全身状態の改善も得られたと考える.今回,自閉症スペクトラム障害による偏食が原因とされるビタミンCA欠乏性眼球乾燥症を経験した.全身的,精神的疾患を背景とする栄養障害の重篤化が眼科領域での合併症を契機に発見されうることを念頭に診療に臨むことが望ましい.文献1)MatternRM,DingJ:KeratitiswithKocuriapalustrisandRothiaCmucilaginosaCinCvitaminCACde.ciency.CCaseCRepCOphthalmolC27:72-77,C20142)LongoCDL,CFauciCAS,CKasperCDLCetal:VitaminCACde.ciency.In:HarrisonC’sCprinciplesCofCinternalCmedecine(18thedition)C.p601,McGraw-Hill,NewYork,20113)PhillipsSM,JensenC:Micronutrientde.cienciesassociat-edwithmalnutritioninchildren.In:Uptodate(https://Cwww.uptodate.com/contents/micronutrient-de.ciencies-associated-with-malnutrition-in-children,CAccessedCon2022May11)4)HsuCHY,CTsaiCIL,CKuoCLLCetal:HerpeticCkeratouveitisCmixedCwithCbilateralCpseudomonasCcornealCulcersCinCvita-minCACde.ciency.CJCFormosCMedCAssocC114:184-187,C20155)母子保健改善のための微量栄養素欠乏に関する援助研究:ビタミンCA欠乏症.JICA,2003(https://www.jica.go.jp/Cjica-ri/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jica/.eld/pdf/2003_05a.pdf)6)SteinemannCTL,CChristiansenSP:VitaminCACde.ciencyCandCxerophthalmiaCinCanCautismCchild.CArchCOphthalmolC116:392-393,C19987)LaiCKL,CNgCJY,CSrinivasanS:XerophthalmiaCandCkerato-malaciasecondarytodiet-inducedvitaminAde.ciencyinScottishadults.CanJOphthalmolC49:109-112,C20148)佐々木優美,山腰友珠,佐藤英津子:強皮症によるビタミンCA欠乏症により夜盲を呈した一症例.眼臨紀C1:1205-1209,C20089)山本総一郎,中尾功,平田憲ほか:ビタミンCA欠乏症に伴い,両眼眼球乾燥症をきたしたC1例.眼科C55:1543-1547,C201310)井之川宗右,中島史絵,重安千花ほか:自閉症スペクトラム障害の偏食によるビタミンCA欠乏により眼球乾燥症をきたしたC1例.眼臨紀8:905-909,C201511)林孝彰:代謝異常ビタミンCA欠乏症.臨眼61:65-69,C200712)YilmazCA,CBahatCE,CYilmazCGGCetal:AdjuvantCe.ectCofCvitaminCAConCrecurrentClowerCurinaryCtractCinfections.CPediatrIntC49:310-313,C200713)安藤友梨,杉本光生,水口忠ほか:透析患者にみられたvitaminA欠乏症のC2例.眼臨紀C4:1103,C201114)平野耕治:摂食障害が原因と考えられるビタミンCA欠乏性眼球乾燥症のC1例.眼科C61:7:763-769,C201915)SasayamaD,KugeR,ToibanaYetal:TrendsinautismspectrumCdisorderCdiagnosesCinCJapan,C2009CtoC2019.CJAMANetwOpenC4:e219234,C2021***