———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.9,200812610910-1810/08/\100/頁/JCLS虚血性網膜疾患網膜で低下)をけるの網膜にる性網膜性の血管新生で網膜網膜網膜血管網膜の虚血の血管新生で血管因子()の網膜血管新生に関与る)およのの)網膜虚血性網膜疾患のをるにでに)のをる血管新生因子を生るをるにるで網膜のに虚血を血管新生因子を生るので低酸素誘導因子(HIF)のをるのに子低酸素誘導因子()低酸素ににる因子のによにに)にによ)aとbの2つのサブユニットからなり,分子量120kDaのaサブユニット(HIF-1a)によって活性が調節されています.HIF-1aは通常酸素下では,酸素依存性分解(ODD)ドメイン内の特定のプロリン残基が酸素依存性に水酸化されることがきっかけとなりユビキチン・プロテアソーム系により急速に分解されます.一方,低酸素状態では,HIF-1aは安定化して核内に移行し,HIF-1b(別名ARNT)とヘテロダイマーを形成してHRE(hypoxiaresponseelement)とよばれる特異的なDNA配列(ACGTを中心に含むシークエンス)に結合し,HREを有する遺伝子群の転写を開始します(図1).HIF-1aとHIF-1b(ARNT)はいずれもbHLHドメインとPASド(73)◆シリーズ第93回◆眼科医のための先端医療=坂本泰二山下英俊栗原俊英(慶應義塾大学医学部眼科)虚血性網膜疾患における低酸素誘導因子(HIF)の役割HHHHHHHIF1b/ARNTHIFabHLHPASODDO2P標的遺伝子6.DNA結合5.ヘテロダイマー形成4.安定化1.水酸化2.ユビキチン化3.分解低酸素下細胞質核内通常酸素下図1酸素環境変化によるHIFの調節経路HIFaは通常酸素下では酸素依存性にODDドメイン内の特定のプロリン残基が特異的な酵素により水酸化される(1).その水酸化がきっかけとなりユビキチン化され(2),プロテアソームで急速に分解される(3).低酸素下では水酸化されないため安定化し(4),核内へ移行してHIF-1b/ARNTとヘテロダイマーを形成して(5),標的遺伝子のHREに結合して転写を開始する(6).HIF:hypoxia-induciblefactor,bHLH:basichelix-loop-helix,PAS:Per-Arnt-Sim,ODD:oxygen-dependentdegradation,OH:hydroxyl,P:prolylresidue,Ub:ubiquitin,ARNT:arylhydrocarbonreceptornucleartranslocator,HRE:hypoxiaresponseelement.———————————————————————-Page21262あたらしい眼科Vol.25,No.9,2008メインという構造をもっていますが,同様の構造をもつ類似の因子としてHIF-2a(別名EPAS1/HLF/HRF/MOP2),HIF-3a,IPAS(HIF-3aのスプライシングバリアント)が後に発見されています.HREをもちHIFの標的となる遺伝子には血管新生促進因子〔VEGFやその受容体(Flt-1)など〕のほかに,造血因子(エリスロポエチン,トランスフェリンなど)や糖代謝にかかわる因子(GLUT-1;グルコーストランスポーター1,アルドラーゼなど)があり,低酸素状態で生体が生存するために必要な遺伝子調節がHIFを介して行われていることがわかってきました.HIFの網膜血管新生への関与のよに網膜をる虚血性網膜疾患で血管新生子をるのに役割をるaの遺伝子改変動物では発生期における生理的な網膜血管新生が正常に形成されなかったり8),酸素誘導網膜症(OIR)モデルで発症する病的血管新生が抑制されたりします9).また,HIFで調節される代表的な造血因子であるエリスロポエチンが糖尿病網膜症で,VEGFとは独立して血管新生に関与していることがわかり10),HIFは虚血性網膜疾患の病態メカニズムにおける中心的な因子である可能性が出てきました.今後の展望にの血管の網膜経のにでる)血管新生のるの後けるaは発生期を除き,生理的な環境下では分解されてしまいますが,病的な状態(虚血状態)にあるとVEGF以外にも血管新生促進作用のあるさまざまな遺伝子の転写を開始します.虚血網膜疾患においてHIFを阻害することは病態生理学的にもより適切な治療に成り得る可能性があります.現在,癌治療などを対象にしたHIF阻害薬や,貧血治療などを対象にしたHIF安定化薬が研究開発されています.HIFをうまくコントロールできるようになれば,夜盲や視野狭窄を伴う網膜光凝固は将来不要になるかもしれません.稿を終えるにあたり,ご校閲いただきました慶應義塾大学医学部石田晋准教授,小沢洋子先生に深謝いたします.文献1)KuriharaT,OzawaY,NagaiNetal:AngiotensinIItype1receptorsignalingcontributestosynaptophysindegra-dationandneuronaldysfunctioninthediabeticretina.Diabetes57:2191-2198,20082)IshidaS,UsuiT,YamashiroKetal:VEGF164-mediatedinammationisrequiredforpathological,butnotphysio-logical,ischemia-inducedretinalneovascularization.JExpMed198:483-489,20033)NgEW,ShimaDT,CaliasPetal:Pegaptanib,atargetedanti-VEGFaptamerforocularvasculardisease.NatRevDrugDiscov5:123-132,20064)Photocoagulationtreatmentofproliferativediabeticretin-opathy:thesecondreportofdiabeticretinopathystudyndings.Ophthalmology85:82-106,19785)EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudyResearchGroup:Earlyphotocoagulationfordiabeticretinopathy.ETDRSreportnumber9.Ophthalmology98:766-785,19916)SemenzaGL,WangGL:Anuclearfactorinducedbyhypoxiaviadenovoproteinsynthesisbindstothehumanerythropoietingeneenhanceratasiterequiredfortran-scriptionalactivation.MolCellBiol12:5447-5454,19927)WangGL,JiangBH,RueEAetal:Hypoxia-induciblefac-tor1isabasic-helix-loop-helix-PASheterodimerregulat-edbycellularO2tension.ProcNatlAcadSciUSA92:5510-5514,19958)ScortegagnaM,DingK,OktayYetal:Multipleorganpathology,metabolicabnormalitiesandimpairedhomeo-stasisofreactiveoxygenspeciesinEpas1-/-mice.NatGenet35:331-340,20039)MoritaM,OhnedaO,YamashitaTetal:HLF/HIF-2alphaisakeyfactorinretinopathyofprematurityinassociationwitherythropoietin.EMBOJ22:1134-1146,200310)WatanabeD,SuzumaK,MatsuiSetal:Erythropoietinasaretinalangiogenicfactorinproliferativediabeticretinop-athy.NEnglJMed353:782-792,200511)NishijimaK,NgYS,ZhongLetal:Vascularendothelialgrowthfactor-Aisasurvivalfactorforretinalneuronsandacriticalneuroprotectantduringtheadaptiveresponsetoischemicinjury.AmJPathol171:53-67,2007(74)***———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.9,20081263(75)虚血性網膜疾患における低酸素誘導因子(HIF)の役割」を読んで今の栗原俊英生による低酸素での子にのでを生で低酸素にるのよるを子でで生のをるにる低酸素でのをるにaであるとも考えられます.生体がいかに合理的かつ巧妙なメカニズムでその組織を維持しているということが栗原先生のわかりやすい総説で理解できました.さらに,本来は生理的な状態で発生期以外では分解されるHIFaが糖尿病網膜症などの眼科の疾患では血管新生をひき起こす血管内皮増殖因子(VEGF)の誘導することにより大変重篤な病態を惹起することも皮肉な感じがします.現代の生命科学は生命現象をきちんと整理してその生物学的なメカニズムを明らかにし,かつ,臨床応用という人類のためにその成果を利用するところまで進歩してきました.また,血管新生一つとっても,VEGF以外にもいろいろな因子が関連することが生物学的に示されてきています.しかし,栗原先生が今回呈示されたように,眼科では抗VEGF抗体が糖尿病網膜症などの血管新生の病態でVEGFの作用を抑制し治療に有効であることが示されたことから,病態の中心となる分子,すなわち治療薬の開発のターゲット分子にはVEGFが設定されていることがわかります.眼科におけるこのような情報は生体における低酸素→血管新生というメカニズムの解明に大きなインパクトを与えたと考えます.治療薬はヒトで効果がみられて初めてその価値が出てくるのですから.今後の研究の方向を栗原先生はHIFを制御することにより眼科の領域のみでなく,多くの分野での低酸素の関連する病態に対する治療薬の開発に有意義であることを示されました.このような研究で眼科領域の研究者がリーダーシップをとっていることは大変喜ばしいことですし,誇らしいことです.また,眼科の臨床レベルの高さを眼科以外に強くアピールすることができると考えます.今後のこの分野でのますますの研究の発展が期待されます.山形大学医学部情報構造制御学講座視覚病態学分野山下英俊☆☆☆