‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

Paecilomyces lilacinus による角膜真菌症の1例

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1(93)11390910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(8):11391142,2008cはじめに角膜真菌症は難治性眼感染症の一つで,その原因菌としてはCandida,Aspergillus,Acremonium(Cephalosporium)およびFusariumなどが多く報告されている.今回,土壌中や空中などに存在する糸状菌の一つで,起炎菌としてまれなPaecilomyceslilacinusによる角膜真菌症を経験したので報告する.I症例患者:80歳,女性.主訴:右眼痛.既往歴:1985年頃に右眼鈍的外傷あり.平成1999年6月18日,外傷性白内障に対し近医にて白内障手術および眼内レンズ挿入術を施行される.全身的には高血圧症以外に特に異常はなく,糖尿病も指摘されていない.家族歴:特記事項なし.現病歴:2001年3月23日,右眼痛および充血を自覚し中濃厚生病院眼科を受診した.右眼視力は光覚弁なし,右眼眼圧は45mmHgであった.周辺部虹彩前癒着による右眼続発閉塞隅角緑内障と診断し,抗緑内障薬の点眼および内服を処方した.同年8月になり水疱性角膜症をきたしたため抗菌薬および低濃度ステロイド薬の点眼を追加した.その後,流涙を訴えていたが眼痛はなく定期的に通院を続けていた.同年12月12日,右眼痛を自覚し再診され,前房蓄膿を伴う角膜潰瘍が認められた.角膜擦過物から菌糸様成分が検出され,角膜真菌症と診断し即日入院となった.入院時所見:視力は右眼光覚弁なし,左眼0.15(0.7×+2.00D(cyl0.50DAx70°)で,眼圧は右眼21mmHg,左眼〔別刷請求先〕望月清文:〒501-1194岐阜市柳戸1-1岐阜大学医学部眼科学教室Reprintrequests:KiyofumiMochizuki,M.D.,DepartmentofOphthalmology,GifuUniversityGraduateSchoolofMedicine,1-1Yanagido,Gifu-shi501-1194,JAPANPaecilomyceslilacinusによる角膜真菌症の1例堀由起子*1望月清文*1末松寛之*2西村和子*3*1岐阜大学医学部眼科学教室*2JA岐阜厚生連中濃厚生病院検査室*3千葉大学真菌医学研究センターACaseofKeratomycosisduetoPaecilomyceslilacinusYukikoHori1),KiyofumiMochizuki1),HiroyukiSuematsu2)andKazukoNishimura3)1)DepartmentofOphthalmology,GifuUniversityGraduateSchoolofMedicine,2)DepartmentofClinicalLaboratory,JAGifuKoserenChunoGeneralHospital,3)ResearchCenterforPathogenicFungiandMicrobialToxicoses,ChibaUniversity外傷後に生じた水疱性角膜症に対して低濃度ステロイド薬点眼中の80歳,女性に,右眼角膜潰瘍が生じた.角膜擦過物から菌糸様成分が検出され,角膜真菌症と診断した.抗真菌薬による治療を行うも治療開始6日目で角膜穿孔を生じ,最終的に眼球摘出術が行われた.角膜擦過物の培養から角膜真菌症の起炎菌としてはまれなPaecilomyceslilaci-nusが分離同定された.An80-year-oldwomandevelopedkeratomycosiscausedbyPaecilomyceslilacinusinherrighteye.Shehadundergoneanuncomplicatedcataractsurgerywithimplantationofaposteriorchamberintraocularlensbecauseoftraumaticcataract.Bullouskeratopathywithsecondaryglaucomawaspresentduringthepastyearsandshehadbeentreatedwithbothtopicalocularhypotensivedrugsandlow-dosecorticosteroid.Althoughtreatmentwasiniti-atedwithantifungalagentsincludingpimaricin,uconazole,miconazole,anditraconazole,thecorneawasperforat-edatday6aftertreatment.Asmearpreparationfromcornealscrapingsrevealedfungallaments;thefungusculturedfromthescrapingswasidentiedasPaecilomyceslilacinus,onthebasisofgrossandmicroscopicexami-nations.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(8):11391142,2008〕Keywords:角膜真菌症,Paecilomyceslilacinus,角膜穿孔.keratomycosis,Paecilomyceslilacinus,cornealperforation.———————————————————————-Page21140あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008(94)12mmHgであった.右眼球結膜は充血し,角膜中央部から下方にかけて灰白色の辺縁不正な潰瘍があり,角膜実質深層部に羽毛状の淡い浸潤を伴っていた.角膜周辺部は盛り上がり,前房蓄膿を伴っていた(図1).なお,左眼には特に異常はなかった.全身所見:血液検査では,血沈1時間値が25mmと上昇していた以外には特に異常を認めなかった.またb-D-グルカン値は4.8pg/mlで正常範囲内であった.経過:入院後0.2%フルコナゾール点眼および5%ピマリシン点眼1時間毎に,0.2%フルコナゾール0.3ml結膜下注射,フルコナゾール200mg点滴およびイトラコナゾール50mg内服を開始した.なお,抗菌薬にはレボフロキサシン点眼4回および硫酸セフピロム2g点滴を併用した.しかし角膜潰瘍に縮小傾向は認められず前房蓄膿も増加したため,12月16日(入院4日目)に0.2%フルコナゾール点眼および結膜下注射を中止し,0.1%ミコナゾール(MCZ)点眼6回および1%ピマリシン(PMR)軟膏1回を開始した.12月18日(入院6日目)になり潰瘍中央部に角膜穿孔を生じ前房がほぼ消失し,角膜後面に眼内レンズが接していた.右眼視力はもともと光覚弁なしであったので患者および家族の同意を得た後,12月20日に眼球摘出術を施行した.病理学的所見:術中に採取した眼内液からは菌糸様成分は検出されなかった.摘出された眼球から標本を作製した.HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色では角膜潰瘍穿孔部を中心に好中球を主体とした炎症細胞が多数遊出していた.PAS(過ヨウ素酸フクシン)染色では,角膜実質中に菌糸様の構造物が多数確認された(図2).分離菌株の微生物学的性状:本症例から分離された菌は,ポテトデキストロース寒天における25℃培養で,はじめは白色,中心から次第に15日後には全体にライラック色のコロニーを形成した.スライド培養では,分子柄先端あるいは途中からは枝,ついでメトラが生じてその先端からフィアライドが35個生じ,それらの先端はなだらかに細くなって伸びていった.フィアライド先端からレモン形,平滑な分生子が連鎖状に形成されていた(図3).以上の所見からP.lilacinusと同定された.最小発育阻止濃度(minimuminhibitoryconcentration:MIC):本症例から分離されたP.lilacinusに対する各種薬剤のMICを阪大微生物病研究会臨床検査部にて測定した.アンホテリシンB(AMPH)では0.5μg/ml,フルコナゾールでは1μg/ml,MCZおよびPMRでは2μg/ml,イトラコナゾールでは4μg/mlであった.II考按P.lilacinusは広い分布をもつ土壌生息菌として知られ,空中浮遊菌としても存在し通常は病原性をもたない糸状菌の一つである.同菌による感染症の報告は1996年のHaldeら1)図3スライド培養分子柄は長く分生子は連鎖状に形成されている.図1右眼前眼部写真(2001年12月12日)角膜中央部から下方にかけて前房蓄膿を伴う灰白色の辺縁不正な潰瘍を認める.図2病理組織写真(PAS染色,×400)角膜実質中に菌糸様の構造物が多数みられる.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081141(95)による緑内障術後の眼内炎の報告以来各科領域で近年増加傾向にあり,皮膚科領域2)では皮膚深在性真菌症,内科領域3)では膿胸,耳鼻科領域4)では上顎洞炎をきたした報告がある.Paecilomyces属による眼感染症のわが国における報告は,筆者らが調べた限りでは,眼内炎3例57)および角膜真菌症5例811)であった.わが国における角膜真菌症の報告例5例に本症例を加えた6例についてみると(表1),全例が70歳以上の高齢者であり,高齢者の角膜真菌症に遭遇した際には本菌を念頭におく必要があろう.性別では男性4例,女性2例で,患側は両眼1例,右眼4例および左眼1例であった.角膜ヘルペスや兎眼性角膜症など何らかの角膜疾患あるいは障害が先行していた症例が5例で,糖尿病を有する例が3例あり,6例中3例で副腎皮質ステロイド薬による治療が行われていた.3例で緑内障を有していた.いわゆる「突き目」の症例は1例であった.使用された薬剤のなかで比較的有効と思われたものはチメロサール,MCZ,PMR,およびボリコナゾール(ブイフェンドR,VRCZ)であったが,全例で視力予後は不良であり,4例では角膜移植や結膜被覆術など外科的処置を要していた.外傷が先行して感染が起こる,いわゆる「農村型」12)の角膜真菌症は起炎菌としてAspergillusやFusariumなどの糸状菌が多く,強い前房所見や角膜実質深層に達する病巣を特徴とし,抗真菌薬への耐性から予後不良な経過となる場合が多い.P.lilacinusも糸状菌の一つであり,その角膜炎は重症でかつ難治性であることが多い10)という.本症例では,外傷性白内障の手術後に生じた水疱性角膜症が基礎にあり,しかも治療としてステロイド薬点眼を用いていたので,局所的な免疫不全状態が生じ感染しやすい状態にあったと考えられる.受診時に角膜擦過物から菌糸様成分が検出され角膜真菌症と診断し即日治療を開始したが,治療開始6日目で穿孔に至った.摘出眼球の病理学的検査において角膜実質中に菌糸様の構造物が多数確認されたことから,受診時すでに真菌による角膜実質の融解がかなり進行していたものと推定され,これが治療に抵抗した一因と考えられた.本症例において各種抗真菌薬の薬剤感受性を検討したところ,一般的に用いられる抗真菌薬はほとんど無効であった.椋本ら11)は,角膜穿孔をきたしたもののその後に結膜被覆術を施行し,VRCZの内服および点眼により角膜膿瘍の消失をみたP.lilacinus症例を報告している.VRCZはアゾール系の新しい抗真菌薬で,抗真菌スペクトラムが広く眼内移行性も良好13)でかつ既存の抗真菌薬では無効なFusarium属に対しても抗真菌作用がある14)という.よって,難治性であるPaecilomyces属による角膜真菌症の治療に使用してみる価値はあり,今後の報告が待たれるところである.今回,起炎菌としてまれなP.lilacinusによる角膜真菌症に対して抗真菌薬による治療を診断後ただちに行ったところ予後は不良であった.本菌種は土壌や空中などの環境に広く生息するので,今後は特に角膜上皮障害を有する高齢者において本菌種による眼感染症も念頭に少しでも早期の治療開始に心がけることが重要と思われた.文献1)HaldeC,OkumotoM:Ocularmycosis:Astudyof82cases.In:BonnEW(Ed):Proceedingsofthe20thInter-nationalCongressofOphthalmology,p705-712,ExcerptaMedicaFoundation,Munich,1966表1わが国におけるPaecilomyceslilacinusによる角膜真菌症の報告報告者(報告年)年齢(歳)性別患眼既往ステロイド薬の使用矯正視力使用薬剤備考初診時最終高槻ら(1984)70男右角膜ヘルペス糖尿病有0.02?AMPH,PMR,チメロサール,5-FC─横山ら(1990)90女両SCL連続装用糖尿病無0.70.01LSLSPMR,FLCZ,MCZ,ITCZ─陳ら*(2005)84男左白内障および翼状片術後緑内障有CF0.02PMR,MCZ,ITCZ全層角膜移植80男右農作業中ゴミが飛入緑内障無LS()LS()PMR,MCZ,ITCZ全層角膜移植椋本ら(2007)78男右兎眼性角膜症脳梗塞糖尿病無HM0.01PMR,FLCZ,VRCZ結膜被覆術本症例(2007)80女右水疱性角膜症外傷白内障術後,続発緑内障有LS()LS()PMR,FLCZ,MCZ,ITCZ眼球摘出*:種は同定されていない.PMR:ピマリシン,AMPH:アンホテリシンB,5-FC:フルシトシン,FLCZ:フルコナゾール,MCZ:ミコナゾール,ITCZ:イトラコナゾール,VRCZ:ボリコナゾール,SCL:ソフトコンタクトレンズ.———————————————————————-Page41142あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008(96)2)渡邊昌平:その他のまれな皮膚真菌症および類似近縁疾患.今村貞夫,小川秀興(編);皮膚科MOOK11,真菌症,p265-275,金原出版,19883)FenechFF,MalliaCP:PleuraleusioncausedbyPeni-cilliumlilacinum.BrJDisChest66:284-290,19804)RockhillRC,KleinMD:Paecilomyceslilacinusasthecauseofchronicmaxillarysinusitis.JClinMicrobiol11:737-739,19805)安藤展代,山本倬司,中嶋英子ほか:Paecilomyceslilaci-nusによる眼炎の1例.臨眼33:217-223,19796)大久保真司,鳥崎真人,東出朋巳ほか:白内障手術後に生じたPaecilomyceslilacinusによる眼内炎の1例.日眼会誌98:103-110,19947)渡辺圭子,山名敏子,猪俣孟ほか:虹彩面上白色塊を呈した真菌性眼内炎.臨眼39:1141-1144,19858)高槻玲子,内堀環,富吉幸徳ほか:Paecilomyceslilaci-nusによる角膜真菌症の1例.臨眼33:561-564,19849)横山利幸,小澤佳良子,佐久間敦之ほか:ソフトコンタクトレンズ連続装用中にPaecilomyceslilacinusによる重篤な角膜真菌症を生じた1症例.日コレ誌32:231-237,199010)陳光明,鈴木崇,宇野敏彦ほか:Paecilomyces属による角膜真菌症の2例.あたらしい眼科22:1397-1400,200511)椋本茂裕,井出尚史,嘉山尚幸ほか:角膜穿孔を生じたPaecilomyces属による角膜真菌症の1例.臨眼61:1049-1052,200712)石橋康久,徳田和央,宮永嘉隆:角膜真菌症の2病型.臨眼51:1447-1452,199713)HariprasadSM,MielerWF,HolzERetal:Determinationofvitreous,aqueous,andplasmaconcentrationoforallyadministeredvoriconazoleinhumans.ArchOphthalmol122:42-47,200414)小松直樹,堅野比呂子,宮大ほか:ボリコナゾール点眼が奏効したFusariumsolaniによる非定型的な角膜真菌症の1例.あたらしい眼科24:499-501,2007***

SV40 不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を用いた抗緑内障薬2剤併用時の角膜上皮細胞増殖抑制作用の比較

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1(89)11350910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(8):11351138,2008cはじめに緑内障は失明を伴う眼疾患であり,その要因には眼圧とそれ以外の因子(循環障害など)が考えられている.臨床においては,抗緑内障点眼薬による薬物治療が第一選択となるが,眼圧コントロールが困難な患者に対しては複数の抗緑内障点眼薬が追加される.しかし,点眼表層角膜症や眼瞼炎といった眼局所の副作用や,患者からのしみる,かすむ,眼が充血するといった訴えで点眼薬の中止および変更を余儀なくされ,眼圧コントロールと薬剤の選択がむずかしくなってきているのが現状である.近年,抗緑内障薬の角膜障害は,点眼薬中に含まれる主薬,保存剤だけでなく,角膜知覚,涙液動態および結膜といったオキュラーサーフェス(眼表面)の〔別刷請求先〕伊藤吉將:〒577-8502東大阪市小若江3-4-1近畿大学薬学部製剤学研究室Reprintrequests:YoshimasaIto,Ph.D.,SchoolofPharmacy,KinkiUniversity,3-4-1Kowakae,Higashi-Osaka,Osaka577-8502,JAPANSV40不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を用いた抗緑内障薬2剤併用時の角膜上皮細胞増殖抑制作用の比較長井紀章*1伊藤吉將*1,2岡本紀夫*3川上吉美*4*1近畿大学薬学部製剤学研究室*2同薬学総合研究所*3兵庫医科大学眼科学教室*4兵庫医科大学病院治験センターComparisonofSuppressionofCornealEpithelialCellLineSV40(HCE-T)ProliferationbyCombinedTreatmentUsingTwoTypesofAnti-GlaucomaEyedropsNoriakiNagai1),YoshimasaIto1,2),NorioOkamoto3)andYoshimiKawakami4)1)SchoolofPharmacy,2)PharmaceutialResearchandTechnologyInstitute,KinkiUniversity,3)DepartmentofOphthalmology,HyogoCollegeofMedicine,4)ClinicalResearchCenter,HospitalofHyogoCollegeofMedicine臨床において緑内障治療には多種類の抗緑内障薬の投与が行われ,抗緑内障薬併用は角膜障害をひき起こすことが知られている.本研究では,有効成分の異なる抗緑内障薬7種を用い,ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)に対する増殖抑制作用により抗緑内障薬2剤併用の角膜障害性の評価を行った.抗緑内障薬は市販製剤であるb遮断薬(チモプトールR),プロスタグランジン製剤(レスキュラR,キサラタンR),炭酸脱水酵素阻害薬(トルソプトR),選択的交感神経a1遮断薬(デタントールR),a,b受容体遮断薬(ハイパジールR),副交感神経作動薬(サンピロR)の7種を用いた.本研究の結果,抗緑内障薬2剤併用することで角膜上皮細胞増殖抑制作用の強さは各種単剤処理時と比較し増加し,その上皮細胞増殖抑制作用の増加は相加的であった.本研究は,角膜上皮障害がある患者への抗緑内障点眼薬の薬物選択を決定するうえで一つの指標となるものと考えられる.Thecombinationofanti-glaucomaeyedropsisfrequentlyusedinclinicaltreatment,anditisknownthatsuchcombinationcancausecornealepithelialcellsdamage.Inthisstudy,weinvestigatedtheeectsofthecombinedinstillationoftwoanti-glaucomaeyedropsontheproliferationofhumancornealepithelialcells(HCE-T).Sevenpreparationsofeyedrops〔b-blocker(TimoptolR),prostaglandinagent(ResculaR,XalatanR),topicalcarbonicanhy-draseinhibitor(TrusoptR),a1-blocker.(DetantolR),a,b-blocker(HypadilR)andparasympathomimeticagent(San-piloR)〕wereusedinthisstudy.Withthecombinationoftwoanti-glaucomaeyedrops,theinhibitionofcellprolifer-ationincreasedincomparisonwithuseofasingletypeofanti-glaucomaeyedrops,theincreasebeingadditiveineect.Incombinedtreatmentwithvarioustypesofanti-glaucomaeyedrops,theinhibitiontestforHCE-Tprolifer-ationmayprovideanusefulinformationforselectingtheanti-glaucomaeyedropstobeused.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(8):11351138,2008〕Keywords:緑内障,SV40不死化ヒト角膜上皮細胞,レスキュラR,デタントールR,サンピロR.glaucoma,hu-mancorneaepithelialcelllineSV40,ResculaR,DetantolR,SanpiloR.———————————————————————-Page21136あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008(90)状態が関与することが明らかとされ,臨床(invivo)と基礎(invitro)両方面からの観察が重要であることが報告された1).筆者らもまた,抗緑内障点眼薬がSV40不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)へ与える細胞増殖抑制作用が,正常ヒト角膜上皮細胞のものに非常に類似しており,さらに細胞増殖性,感受性にばらつきが少なく,HCE-Tが正常ヒト角膜上皮細胞の代わりにinvitro角膜障害試験に使用できることを明らかとした2).今回,このHCE-Tを用い,現在臨床現場で多用されているb遮断薬(チモプトールR),プロスタグランジン製剤(レスキュラR,キサラタンR),炭酸脱水酵素阻害薬(トルソプトR),選択的交感神経a1遮断薬(デタントールR),a,b受容体遮断薬(ハイパジールR),副交感神経作動薬(サンピロR)など,異なる抗緑内障点眼薬7種の2剤併用による角膜障害性を明らかにすべく,invitro角膜障害試験について検討を行った.I対象および方法1.使用細胞培養細胞は理化学研究所より供与されたSV40不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T,RCBNo.1384)を用い,100IU/mlペニシリン(GIBCO社製),100μg/mlストレプトマイシン(GIBCO社製)および5.0%ウシ胎児血清(FBS,GIBCO社製)を含むDMEM/F12培地(GIBCO社製)にて培養した.2.使用薬物抗緑内障点眼薬は市販製剤であるb遮断薬(0.5%チモプトールR),プロスタグランジン製剤(0.12%レスキュラR,0.005%キサラタンR),炭酸脱水酵素阻害薬(1%トルソプトR),選択的交感神経a1遮断薬(0.01%デタントールR),a,b受容体遮断薬(0.25%ハイパジールR),副交感神経作動薬(1%サンピロR)の7剤を用いた.表1には本研究で用いた抗緑内障薬の各種抗緑内障点眼薬に含まれる添加物を示す.また,表2には本実験で用いた各種抗緑内障薬の組み合わせについて示す.3.抗緑内障点眼薬による細胞処理法HCE-T(50×104個)をフラスコ(75cm2)内に播種し,80%コンフルーエンスとなるまで培養した3,4).この細胞を,0.05%トリプシンにて離し,細胞数を計測後,96wellプレートに100μl(10×104個)ずつ播種し,37℃,5%CO2インキュベーター内で24時間培養したものを実験に用いた.表3には抗緑内障点眼薬の添加量を示す.本実験では,表3に示した添加量を用い,培地およびPBS(リン酸緩衝液)で17段階希釈した薬剤(すなわち4128倍希釈)にて24時間培養後,各wellにTetraColorONE(生化学社製)20μlを加え,37℃,5%CO2インキュベーター内で1時間処理を行い,マイクロプレートリーダー(BIO-RAD社製)にて490nmの吸光度(Abs)を測定することで細胞増殖抑制を表した.各薬剤とも培地中に含まれるpHインジケーターのフェノールレッドが中性を示すことを確認し,同実験を3表1各種抗緑内障点眼薬に含まれる添加物抗緑内障点眼薬添加物チモプトールR塩化ベンザルコニウム,リン酸二水素Na,リン酸水素Na,水酸化NaレスキュラR塩化ベンザルコニウム,ポリソルベート80,等張化剤,pH調節剤キサラタンR塩化ベンザルコニウム,リン酸二水素Na,リン酸水素Na,等張化剤トルソプトR塩化ベンザルコニウム,ヒドロキシエチルセルロース,D-マンニトール,クエン酸Na,塩酸デタントールR塩化ベンザルコニウム,濃グリセリン,ホウ酸,pH調節剤ハイパジールR塩化ベンザルコニウム,リン酸二水素K,リン酸水素Na,塩酸,塩化NaサンピロRパラオキシ安息香酸プロピル,パラオキシ安息香酸メチル,クロロブタノール,酢酸Na,ホウ酸,ホウ砂,pH調節剤表2各種抗緑内障薬の組み合わせチモプトールRレスキュラRキサラタンRトルソプトRデタントールRハイパジールRサンピロRチモプトールR○○○○○○レスキュラR○─○○○○キサラタンR○─○○○○トルソプトR○○○○─○デタントールR○○○○○○ハイパジールR○○○─○○サンピロR○○○○○○———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081137(91)7回くり返した.本研究では,細胞増殖抑制率は下記の計算式により算出した.細胞増殖抑制率(%)= (Abs未処理Abs薬剤処理)/Abs未処理×100また,得られた細胞増殖抑制率から50%細胞増殖抑制時希釈倍数を算出した.50%細胞増殖抑制時希釈倍数の算出はMicrosoftExcelによる0次式を用いて当てはめ,計算により得られた回帰曲線より求めた.II結果表4には種々抗緑内障点眼薬2剤併用処理における角膜上皮細胞増殖抑制効果について示した.いずれの抗緑内障薬も2剤を組み合わせることで単剤処理と比較し50%細胞増殖抑制時希釈倍数の上昇が確認された.しかしこの2剤併用処理時における50%細胞増殖抑制時希釈倍数の増加程度は薬物同士の組み合わせによって異なった.そこで,抗緑内障点眼薬2剤併用時の50%細胞増殖抑制時希釈倍数における各種抗緑内障点眼薬希釈倍数での単剤処理による角膜上皮細胞増殖抑制率について示した(表5).2剤併用に用いた各種抗緑内障薬のすべての組み合わせにおいて,角膜上皮細胞増殖抑制率の総和は2剤併用時の角膜上皮細胞増殖抑制率,すなわち50%と同等かそれ以上であった.III考按角膜上皮は56層の細胞層から構成され,基底細胞と表層細胞に大きく分けられる.このうち基底細胞は分裂増殖機能と接着機能を,表層細胞はバリア機能および涙液保持機能を担っている.この4つの機能のどれか1つでも破綻した際角膜上皮障害が認められるが,なかでも薬剤の影響を特に受けやすいとされているのが分裂機能とバリア機能である5).今回用いたHCE-Tによるinvitro角膜実験は,個体差やオキュラーサーフェスの状態の要因をすべて同一条件の状態で評価することが可能なため,薬剤自身が有する角膜上皮細胞分裂機能へ与える影響を検討するのに適している.本研究では,このHCE-Tを用い,同一条件下における抗緑内障点眼薬2剤併用が角膜分裂機能へ与える影響を検討するため,異なる7種の抗緑内障点眼薬を組み合わせることによる角膜上皮細胞増殖障害について検討を行った.結果から,いずれの抗緑内障薬も2剤を組み合わせることで単剤処理と比較し角膜上皮細胞増殖障害の増加が確認された.抗緑内障薬2剤併用が角膜分裂能へ与える要因として,薬物の主薬の影響のみならず,点眼薬に含まれる保存剤の影響があげ表3抗緑内障点眼薬の添加量培地PBS薬剤1薬剤2未処理25μl50μl0μl0μl単剤処理25μl25μl25μl0μl2剤併用処理25μl0μl25μl25μl表4各種抗緑内障薬単剤および2剤併用時における50%細胞増殖抑制時希釈倍数チモプトールRレスキュラRキサラタンRトルソプトRデタントールRハイパジールRサンピロRチモプトールR29.9122.295.834.836.330.331.2レスキュラR122.299.1─102.8105.9104.8105.2キサラタンR95.8─70.495.783.088.576.9トルソプトR34.8102.895.717.535.4─23.3デタントールR36.3105.983.035.423.226.124.9ハイパジールR30.3104.888.5─26.120.124.5サンピロR31.2105.276.923.324.924.57.49表5抗緑内障薬2剤併用による50%細胞増殖抑制時における各種抗緑内障点眼薬希釈倍数での単剤処理による角膜上皮細胞増殖抑制率の総和チモプトールRレスキュラRキサラタンRトルソプトRデタントールRハイパジールRサンピロRチモプトールR50.0%52.6%64.6%65.4%58.5%52.4%レスキュラR50.0%─68.8%71.0%66.4%66.1%キサラタンR52.6%─51.9%69.3%56.6%63.6%トルソプトR64.6%68.8%51.9%61.8%─56.6%デタントールR65.4%71.0%69.3%61.8%59.2%57.4%ハイパジールR58.5%66.4%56.6%─59.2%53.7%サンピロR52.4%66.1%63.6%56.6%57.4%53.7%———————————————————————-Page41138あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008(92)られ,2剤併用することにより角膜にさらされる主薬とそこに含まれる保存剤の量は相加的に増加し,これらが角膜分裂能への障害増加をひき起こすことが予想された.また,筆者らの今回の結果から,2剤併用に用いた各種抗緑内障薬のすべての組み合わせにおいて角膜上皮細胞増殖抑制率の総和は,2剤併用時の角膜上皮細胞増殖抑制率(50%)と同等かそれ以上となり,これら抗緑内障点眼薬2剤併用による角膜上皮細胞増殖障害の増加は相乗的ではなく相加的であることが明らかとなった.一方,これら2剤併用時の角膜上皮細胞増殖障害が,加算的に増加するのであれば2剤併用の50%細胞増殖抑制時希釈倍数時における各種抗緑内障薬細胞増殖抑制率の総和は約50%となるはずである.しかしながら,2剤併用の50%細胞増殖抑制時希釈倍数時における各種抗緑内障薬細胞増殖抑制率の総和は約5071%と2剤併用時の角膜上皮細胞増殖障害と比較し高かった.これらの結果は,薬物同士の組み合わせによっては,抗緑内障薬2剤併用による薬物自体の角膜上皮細胞増殖障害は単剤同士の角膜上皮細胞増殖障害の程度を単純に加算した値より軽減されることを示した.筆者らは以前の報告で抗緑内障点眼薬の角膜上皮細胞障害性は主薬の種類,含量や保存剤のみに起因するのではなく,界面活性剤などの添加物も強く関わることを明らかとした2).したがって,抗緑内障薬の2剤併用において抗緑内障薬の主薬や保存剤の量だけが影響するのではなく,含有される添加物や組み合わせといった他の要因にも注目する必要性が示唆された.今回用いた7種の抗緑内障薬のなかで細胞障害性を示すと考えられる添加物は塩化ベンザルコニウム,ポリソルベート80,パラベン類,ホウ酸などが考えられた.本研究において,2剤併用の50%細胞増殖抑制時希釈倍数時における各種抗緑内障薬細胞増殖抑制率の総和と比較し,2剤併用時の細胞増殖抑制率が顕著に(15%以上)軽減された抗緑内障薬の組み合わせは,レスキュラR×デタントールR,サンピロR,トルソプトR,ハイパジールRおよびデタントールR×チモプトールR,キサラタンRの6種類の組み合わせであった.これらはレスキュラR,デタントールR,サンピロRが含まれる組み合わせであり,レスキュラRには添付剤として界面活性剤ポリソルベート80が,デタントールRおよびサンピロRには保存剤のホウ酸が含有されていた.したがって,2剤併用による角膜上皮細胞増殖障害性は塩化ベンザルコニウムの毒性の総和で上昇するものと考えられたが,薬剤中に2つ以上の細胞毒性を示す添加物が混在する場合,2剤併用を行っても単剤での角膜上皮細胞増殖障害性を単純に合わせたものに比較し減少する傾向があるのではないかと考えられた.もちろん主薬同士の作用による角膜分裂能障害の緩和も考えられるため,今後添加物および主薬同士の組み合わせによる詳細な検討が必要と考えられる.以上,本研究では同一条件下において,抗緑内障点眼薬2剤併用時の薬剤自身が有する角膜上皮細胞増殖障害性の強さを明らかとした.これら角膜上皮細胞増殖障害性は,臨床においては涙液能低下などの他の作用により相乗的に角膜上皮細胞障害をひき起こすと考えられることから6),今回のinvitroの結果を基盤とした臨床結果のさらなる解析を行うことで,薬剤の選択が容易になるものと考えられた.これらの報告は今後の角膜研究および抗緑内障点眼薬投与時における薬物選択を決定するうえで一つの指標になるものと考えられた.文献1)徳田直人,青山裕美子,井上順ほか:抗緑内障薬が角膜に及ぼす影響:臨床とinvitroでの検討.聖マリアンナ医科大学雑誌32:339-356,20042)長井紀章,伊藤吉將,岡本紀夫ほか:抗緑内障点眼薬の角膜障害におけるinvitroスクリーニング試験:SV40不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を用いた細胞増殖抑制作用の比較.あたらしい眼科25:553-556,20083)ToropainenE,RantaVP,TalvitieAetal:Culturemodelofhumancornealepitheliumforpredictionofoculardrugabsorption.InvestOphthalmolVisSci42:2942-2948,20014)TalianaL,EvansMD,DimitrijevichSDetal:Theinu-enceofstromalcontractioninawoundmodelsystemoncornealepithelialstratication.InvestOphthalmolVisSci42:81-89,20015)俊野敦子,岡本茂樹,島村一郎ほか:プロスタグランディンF2aイソプロピルウノプロストン点眼液による角膜上皮障害の発症メカニズム.日眼会誌102:101-105,19986)大規勝紀,横井則彦,森和彦ほか:b遮断剤の点眼が眼表面に及ぼす影響.日眼会誌102:149-154,2001***

テフロン製シースでガイドする新しい涙管チューブ挿入術

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1(85)11310910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(8):11311133,2008cはじめに涙管チューブ挿入術においては,単一管腔にチューブを挿入することが術後成績を向上させるために必要不可欠である.しかし,チューブに専用ブジーを装着して涙点から押し込んでいく従来の挿入方法では,チューブ挿入の大半は指先の感覚に頼った盲目的操作であり,直視下で行えるのは鼻内視鏡により観察可能な鼻涙管下部開口付近に限られる.筆者は,一方の涙点から挿入した涙道内視鏡による観察下で,他方の涙点からチューブを挿入する双手法を推奨してきた1,2)が,手技が複雑なため初回挿入の際の標準術式とはなりえなかった.双手法を用いることなくチューブを涙道内視鏡直視下で正確に挿入するために,シース誘導内視鏡下穿破法(sheath-guidedendoscopicprobing:SEP)3)を発展させ,テフロン製外筒(シース)を装着した涙道内視鏡により閉塞部を開放した後,涙道内視鏡のみ抜去し,残したシースをチューブ挿入のためのガイドとして使用した(シース誘導チューブ挿入法,sheath-guidedintubation:SGI).術後チューブ留置中に行った涙道内視鏡検査の結果をもとに,本法を用いて行ったチューブ挿入の正確性について検討した.I対象対象は2007年8月から12月の間に流涙もしくは眼脂を主訴に,筆者の施設を受診した症例のうち,涙管通水検査で通水がなく,涙道内視鏡検査により総涙小管閉塞もしくは鼻涙管閉塞が確認された症例とした.広範囲の涙小管閉塞を伴う症例,涙内癒着を伴う症例,鼻科的手術および外傷などによる骨性閉塞の症例は除外した.総涙小管閉塞の症例は〔別刷請求先〕井上康:〒706-0011玉野市宇野1-14-31井上眼科Reprintrequests:YasushiInoue,M.D.,InoueEycClinic,1-14-31Uno,Tamano,Okayama706-0011,JAPANテフロン製シースでガイドする新しい涙管チューブ挿入術井上康医療法人眼科康誠会井上眼科NewMethodofLacrimalPassageIntubationUsingTeonSheathasGuideYasushiInoueInoueEyeClinic新しいチューブ挿入方法であるシース誘導チューブ挿入法(sheath-guidedintubation:SGI)を総涙小管閉塞および鼻涙管閉塞の症例に対して試みた.89側にテフロン製外筒(シース)を装着した涙道内視鏡により閉塞部を開放した後(シース誘導内視鏡下穿破法,sheath-guidedendoscopicprobing:SEP),シースを涙道内に一時的に残し,チューブを挿入するためのガイドとして使用した.全側でSGIを用いたチューブ挿入を行うことができた.SEPとSGIを併用すれば,チューブ挿入の際の盲目的操作がなくなり,涙管チューブ挿入術の全過程が内視鏡直視下に行えるようになる.Sheath-guidedintubation(SGI),anewmethodoflacrimalpassageintubation,wastriedincasesofcommoncanaliculusobstructionandnasolacrimalductobstruction.Afterwideningtheblockedportionwiththedacryoendo-scopeequippedwithaTeonsheath(sheath-guidedendoscopicprobing:SEP),thesheathwastemporarilyretainedinthelacrimalpassageandusedasaguidefortubeinsertion.ThetubecouldbeinsertedusingSGIinallcases.TheuseofSEPandSGIincombinationmakesitpossibletocarryoutalllacrimalpassagereconstructionproceduresunderdacryoendoscopicobservation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(8):11311133,2008〕Keywords:涙管チューブ挿入術,シース誘導チューブ挿入法.lacrimalpassageintubation,sheath-guidedintubation(SGI).———————————————————————-Page21132あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008(86)30例30側,年齢1286歳(平均68.1±13.9歳),鼻涙管閉塞の症例は54例59側,年齢3586歳(平均69.5±10.7歳)であった.対象例の内訳を表1に示す.II方法1%塩酸リドカイン(キシロカインR)による滑車下神経ブロック,4%キシロカインRによる涙内麻酔,4%キシロカインR,0.1%エピネフリン(ボスミンR)混合液による鼻粘膜表面麻酔の後,16倍希釈ポビドンヨード(イソジンR)による涙洗浄を行った.シースを装着した涙道内視鏡(涙道ファイバースコープR:ファイバーテック社)を涙点から挿入しSEPを行い,鼻腔にシースの先端が達したら,シースは残したまま涙道内視鏡のみを抜去した.つぎに涙点側のシース端とPFカテーテルR(PF:東レ社)を連結し(図1a),鼻内視鏡下で鼻涙管開口部から出たシース先端を極小麦粒鉗子(永島医科器械)により引き出した.PFはシースに引かれてSEPで開放したスペースに正確に挿入された.シースとPFの連結を外した後(図1b),対側の涙点からのSEPによりシースを留置し,同様の操作でPF挿入を行った.すでに挿入されているPFと涙道内視鏡の間に粘膜がかみ込んで粘膜ブリッジを形成しないよう十分に注意を払った(図2).一連の手技のシェーマを図3に示す.シースは外径1.1mm,内径0.9mm,長さ45mmのテフロン製チューブ(ZEUS社,USA)を使用した3).またPFの留置状態は術後34週目に涙道内視鏡検査を行い確認した.表1症例の内訳総涙小管閉塞(30例30側)鼻涙管閉塞(54例59側)平均年齢(歳)68.1±13.969.5±10.7男女内訳男性8例8側女性22例22側男性15例18側女性39例41側*図2粘膜bridgeを形成しないように行う2回目のSEP:フルオレサイトで染色したチューブ.:先行したテフロン製シース.SEPシースにチューブを連結する鼻腔から引き出す図3Sheathguidedintubation(SGI)の手順ab図1Sheathguidedendoscopicprobing(SEP)a:シースの涙点側とチューブを連結する.b:鼻腔よりシースを引き出し,チューブとの連結を外す.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081133(87)III結果全例でSGIを用いてPF挿入を行うことができた.術後に行った涙道内視鏡検査で粘膜ブリッジ形成を認めた症例は,鼻涙管閉塞の症例において54例59側中2例2側(3.4%)であった.総涙小管閉塞の症例においては粘膜ブリッジ形成を認めなかった.内訳を表2に示す.粘膜ブリッジを認めた2側においては不適切に挿入された側のPFを抜去した後,再度SEPを行い単一管腔に再挿入することができた.シースによりSGIを行えばPFの修正は容易であった.粘膜ブリッジ形成に対するSGIのシェーマを図4に示す.IV考按涙道内視鏡を用いた涙管チューブ挿入術は,閉塞部の開放とチューブ挿入という2つのステップから成り立っている.内視鏡直接穿破法(directendoscopicprobing)による閉塞部の開放は涙道内視鏡直視下手術としての第一歩であった1).さらにSEPを用い,先行したシースと内視鏡先端の間にスペースを作ることで,閉塞部の開放を直視下にて行うことができるようになった.しかし,もう一方のステップであるチューブ挿入に関しては,双手法によるチューブ挿入は手技的に複雑であり,全例に適応することは困難であった.SEPに使用したシースをそのままチューブを引き出すガイドとして使用することで,連続性のなかった閉塞部の開放およびチューブ挿入という2つのステップに連続性をもたせることができ,本手術の手技はより無駄のない正確なものとなったと考えられる.涙道閉塞に対して,チューブ挿入を予定した症例数のうち,チューブ留置が完了した症例数の割合(手術完了率)は96%であったと報告されている1).SGIを用いた今回の結果は100%と良好であるが,全体としては大きな差はない.しかし,鼻涙管閉塞に関しては手術完了率78.1%との報告に対し4),今回の結果では100%と高い手術完了率を得ることができた.また,チューブ挿入直後もしくは後日行った涙道内視鏡検査で確認された粘膜ブリッジの形成率においても,自験例では21.5%であった5)が,SGIを用いた今回の結果では3.4%と大きく改善している.さらに粘膜ブリッジに対しても,従来行ってきた手技の複雑な双手法によるチューブ再挿入は不用になり,SGIで対応することが可能になった.今回の結果からも,本法を用いればさまざまな症例,特に鼻涙管閉塞の症例に対し,確実かつ正確にチューブ挿入を行うことができ,チューブ挿入時や挿入後の不具合の修正も容易になると考えられる.V結論SGIは,従来の専用ブジーを装着した状態でチューブを涙点から押し込んでいくというチューブ挿入の常識を根本から変える手技である.SEPとSGIを併用することで,チューブ挿入の際の盲目的操作がなくなり,涙管チューブ挿入術の全過程が内視鏡直視下に行えるようになる.したがって,今後新しい涙管チューブ挿入法として普及するものと期待している.文献1)鈴木亨:内視鏡を用いた涙道手術(涙道内視鏡手術).眼科手術16:485-491,20032)井上康,杉本学,奥田芳昭ほか:慢性涙炎に対する涙道内視鏡を用いたシリコーンチューブ留置再建術.臨眼58:735-739,20043)杉本学:シースを用いた新しい涙道内視鏡下手術.あたらしい眼科24:1219-1222,20074)鈴木亨,野田佳宏:鼻涙管閉塞症のシリコーンチューブ留置術の手術時期.眼科手術20:305-309,20075)藤井一弘,井上康,杉本学ほか:シリコーンチューブ挿入術による仮道形成とその対策.臨眼59:635-637,2005表2Sheathguidedintubationによる粘膜bridge形成率総涙小管閉塞(30例30側)鼻涙管閉塞(54例59側)粘膜bridge形成数(側)02粘膜bridge形成率(%)03.4粘膜bridge形成率合計(%)2.2挿入を確認挿入側のチューブを抜去し,再度SEPSGIにてチューブ再挿入図4粘膜bridgeに対するSGI***

眼科専門医志向者“初心”表明

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.8,200811230910-1810/08/\100/頁/JCLS私は初め,手術のできる医師になりたいと考えていました.知識だけでなく,技術も磨きたいと考えていたからです.また一方で,治療により効果が如実に現れ,患者様の喜ぶ姿をみることができる科に進みたいとも考えていました.学生時代に将来進む道を考えた結果,私にとってのそれは,眼科でした.学生時代から眼科の講義や実習がとても楽しく,眼科に出会ってからは他の科に進むことが考えられなくなりました.そんな興味をもつことができる科で一生懸命知識や技術を勉強し,そのことで患者様の喜ぶ姿を見ることができれば自分の仕事に対しての遣り甲斐にも直結し,これ以上幸せなことはないと思ったからでした.また眼科のスペシャリティの高さも魅力的だと思います.眼底は他の科では絶対にみることができません.そしてスペシャリティが高いにもかかわらず,ほとんどの人々がたとえ眼科疾患にはならなくとも,近視や遠視,老眼,白内障など一生のうちになんらかの眼の不都合を訴えるため,眼科は人々の生活には欠かせない科であり,価値を見出しながら一生携わっていける科であると思います.現段階では,眼科研修が4月から始まったばかりで,将来具体的にどの分野にどのような形で進んでいくかはわかりませんが,これから多くの経験を積み,眼科医として進むことができるかとても楽しみです.眼科のなかでも専門分野を見つけて一人でも多くの患者様に喜んでいただける医師になることが将来の目標です.◎今回は神戸大学附属病院で研修中の本岡先生にご登場いただきました.「見える」「見えない」という如実な治療効果と多くの患者さんの喜ぶ姿に触れることができるのは眼科ならではです.しかし今の卒後研修制度では,自ら決めて眼科を選択しなければその経験ができません.すべての医学生が経験するポリクリ(学生実習)で直に患者さんに接し,その治療効果と喜ぶ姿に触れる機会を作れば,眼科の魅力に気づく人がより増えると思います.(加藤)☆本シリーズ「“初心”表明」では,連載に登場してくださる眼科に熱い想いをもった研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生を募集します!宛先は≪あたらしい眼科≫「“初心”表明」として,下記のメールアドレスまで.追って詳細を連絡させていただきます.Email:hashi@medical-aoi.co.jp(77)眼科専門医者“初心”表明●シリーズ⑧多くの患者様に喜んでいただけるようになりたい!本岡麻由(MayuMotooka)神戸大学医学部附属病院1980年兵庫県生まれ.香川大学医学部卒業.初期研修1年目に神戸朝日病院での内科研修を経て,現在2年目に神戸大学附属病院で研修中.(本岡)編集責任加藤浩晃・木下茂本シリーズでは研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生に『なぜ眼科を選んだか,将来どういう眼科医になりたいか』ということを「“初心”表明」していただきます.ベテランの先生方には「自分も昔そうだったな~」と昔を思い出してくださってもよし,「まだまだ甘ちゃんだな~」とボヤいてくださってもよし.同世代の先生達には,おもしろいやつ・ライバルの発見に使ってくださってもよし.連載8回目の今回はこの先生に登場していただきます!▲眼科病棟で先生方と

私が思うこと12.グーグリネス社会と眼科

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081121私が思うことシリーズ⑫(75)私は大学卒業後10年間余り大学に勤務していました.網膜離を専門にしていた関係で,網膜色素上皮の下液吸収に興味を惹かれ,摘出した網膜色素上皮を利用して生理学的な実験をしていました.研究も軌道にのり,学位を頂戴し,留学を果たしたころ,「このまま研究を続けていいものか?」という疑問が湧いてきました.というのも,アメリカで眼科の基礎的な研究をしているのはおもにPhDで,特に私の分野の研究仲間は大抵生理学教室のPhDでした.医学部を出たMDは研究もそこそこに臨床に専念しているのが普通だったのです.帰国後,民間病院を経て開業したのは留学先での印象が大きく影響しています.開業して早くも15年目に入りました.白内障手術,LASIK(laserinsitukeratomileusis)から硝子体手術に至るまで多くの手術症例に恵まれ,また,多くの優秀な職員,若い先生方に助けられて,眼科医として充実した毎日を過ごしています.一般社会なら引退も近い年齢になってしまいましたが,体力と気力の続く限り手術を続けていきたいと思っています.私は最近,日ごろ思いついたことをブログに書き連ねることにしています.私のブログ,Eye-Surgeon’sEyeはグーグルで検索していただければすぐ出てきますので,それをご覧いただければ私が何を考えているのかすぐにわかってしまいます(図1).先日,2008年の初めごろ,ブログの質問欄から学術講演を依頼されたことがありました.ブログに書いていることが面白いからと講演を依頼されました.このとき,依頼主はブログの著者が誰かはわからなかったそうです.これもネット社会ならではの出来事ではないでしょうか.ブログを通じて質問されたり,見学に来られたり,若い先生方との交流が進むのは楽しいものです.私が開業した頃から見ても,世の中はネットを中心に目まぐるしく変化しています.最近のネット社会が眼科,あるいは医療にどんな影響を与えているかをちょっと考えてみましょう.14年前にはインターネットがありませんでした.普及しだしたばかりの携帯電話を握り締めて,開業の場所探しや器械の交渉をしていたことが思い出されます.阪神大震災の後くらいから本格的なネット社会到来と騒がれ,メールやホームページがあたりまえのこととなってきました.しかし,ホームページを作ってはみたものの,当時はそれほど役に立たず閲覧者も少なかったよう0910-1810/08/\100/頁/JCLS坪井俊児(ShunjiTsuboi)医療法人聖明会坪井眼科1950年大阪生まれ.趣味はピアノ演奏,日本古代史研究,韓国ドラマ鑑賞など.移り気な性分のせいでライフワークとよべるものはない.フィジカルとメンタルの両面で向上を続けることを「一応」の目標としている.もちろんピアノ演奏のことである.(坪井)グーグリネス社会と眼科図1筆者のブログ“EyeSurgeon?sEye”の一例———————————————————————-Page21122あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008に思います.ところが検索エンジンのグーグルが登場して事情は一変しました.グーグル以降のネット社会をWeb2.0とよぶ人もいますが,私はグーグルに敬意を表してグーグリネス(グーグルらしい)社会とよぶことにします.グーグリネス社会で何が変わったか?一言でいえば,個人が情報の受け渡しをできるようになったということでしょう.政府機関や大学などが情報を独占し,それを小出しにしつつ社会を操作するということがだんだんできにくくなってきました.世の中情報ほど大切なものはありません.古代,暦法により民衆を支配した時代から,連綿とその手法は生きてきました.グーグリネス社会でそこに風穴が開くとすれば,想像もつかない変化が待っているのかもしれません.ここでは卑近な例としてわが国における医療法第69条(旧)の広告規制をあげます.医師は診療科名やベッドの有無,診療時間など決められたことしか広告できないという規制のことです.この規制は公式見解として,誇大広告から患者を守るために設けられているとされていますが,実際のところ,医師以外の新聞記者や評論家など,医学を本格的に学んだことも実際の医療現場に身を置いたこともない人の意見のみがクローズアップされてしまい,医療や医療制度にとって大きなマイナスになっていると思います.しかしネット上では医師であろうが誰であろうが何を書いてもよい.医師の発言のみ封じるということは技術的にも不可能です.グーグリネス社会では広告媒体としてもインターネットは既存のマスコミに肩を並べつつあり,いずれ凌駕するともいわれています.医師に対する広告規制は有名無実となりつつあります.このような現状を踏まえ,新しい医療法では広告規制が大幅に緩和されつつあります(現行医療法第6条の5).最近,私のところの診療所を初めて受診される患者さんの受診動機を調べたことがあります.その結果,ホームページをご覧になってからこられた患者さんの割合が増えてきています(図2).LASIKのみならず比較的年齢層の高い白内障でも同じような傾向があります.特に,ホームページを見て医療内容について質問される方が増えてきました.先日も,片眼白内障で近視の方に対して,白内障手術と同時に健眼のLASIKをお薦めしたところ,「白内障手術の際には多焦点IOL(眼内レンズ)を入れてください」と希望されました.そしてなんと,「屈折型ではなく回折型のレンズを入れてください.私は近くを重視したいから.」といわれたのには驚きました.必ずしも回折型が近方重視とは限りませんが,ご本人さんの強い希望がありましたので回折型の発売を待って手術を行い,結果的にすごく喜んでいただきました.グーグリネス社会では患者さんの意識や知識レベルが驚くほど進んできます.グーグルでは「邪悪であってはいけない.(中略)もし100人の平均的な人たちに尋ねれば,どちらが正しいか,ほとんどみんな一致すると思うよ.」(梅田望夫:ウェブ時代5つの定理,文藝春秋刊)という倫理が支配しています.それを実現するには,世の中の一人ひとりが自分の得意分野をネット配信することが大切になってくると思います.そしてそれが医師-患者間に応用されたとき,理想の医療が実現するとまでは言いませんが,今よりも随分風通しがよくなることだけは確かでしょう.坪井俊児(つぼい・しゅんじ)1975年大阪大学医学部卒業大阪大学病院研修医(外科,眼科)1977年近畿大学医学部眼科助手1979年大阪大学医学部眼科助手1984年ミネソタ大学眼科研究フェロー1987年大阪大学医学部眼科助手復職1988年(医)きっこう会多根記念眼科病院部長1994年坪井眼科開業2002年より近畿大学医学部眼科非常勤講師.医学博士.ブログhttp://eyesurgeon.exblog.jp/ホームページhttp://www.tsuboi-eye.co.jp/(76)2坪井眼科のホームページ

硝子体手術のワンポイントアドバイス63.Stickler症候群に伴う網膜剥離(上級編)

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.8,200811190910-1810/08/\100/頁/JCLSはじめに若年者の硝子体に高度の液化変性を認める症例は,網膜硝子体ジストロフィを考える必要がある.おもな網膜硝子体ジストロフィとしては家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR),Goldmann-Favre病,Wagner病,Slickler症候群などがある.いずれも肥厚したベール状の硝子体膜や周辺部の網膜血管の形成不全,白線化などを伴うことが多い.これらの網膜硝子体ジストロフィではしばしば難治性網膜離をきたし,進行も速いことが多い.Stickler症候群の全身および眼合併症Stickler症侯群は,眼および全身の結合組織に異常をきたす常染色体優性遺伝疾患で,2型プロコラーゲン遺伝子の突然変異が原因とされている.軟骨や硝子体ゲルには2型コラーゲンが豊富に発現しているために,特徴ある関節症状や眼症状をきたす.頻度は約1万人に1人程度である.全身症状としては感音性難聴,口蓋裂,下顎低形成,骨端異形性,関節炎に類似した変性が認められる.眼所見としては,重篤で進行性の近視,硝子体の液化変性,硝子体索状物(図1),網膜裂孔,網膜離(図2)があげられる.本症侯群では約50%に裂孔原性網膜離が発症するといわれている.(73)Stickler症候群に伴う網膜離の特徴Stickler症候群に伴う網膜離は,裂孔への硝子体牽引が高度であり,通常の強膜バックリング手術では復位困難な症例が多い.硝子体手術を施行する場合も,赤道部よりやや後極側から周辺にかけて肥厚した硝子体膜が面状に網膜と強固に癒着しており,硝子体カッターの吸引や硝子体鑷子による牽引だけでは人工的後部硝子体離作製が困難であることが多い.筆者は双手法を用いて赤道部までは人工的後部硝子体離を作製し(図3),さらにその周辺側の残存硝子体に対しては輪状締結術を行う方針としている.また,Stickler症候群では,しばしば精神発達遅滞を合併しているため,網膜離の発見が遅れ,より重症化してしまうことが多い.若年者の網膜硝子体ジストロフィの経過観察時には,このような点も十分に考慮に入れたうえで,定期的な眼底検査を施行することが重要である.文献1)曽和万紀子,植木麻理,堂島りつ子ほか:網膜離をきたしたStickler症候群の2例.臨眼59:1125-1129,2005硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載63Stickler症候群に伴う網膜離(上級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1自験例の左眼眼底写真網膜離は認めないが,下方に硝子体索状物を認めた.←図2自験例の右眼眼底写真下方に裂孔を認め,2象限に及ぶ網膜離と肥厚した後部硝子体膜を認めた.→図3右眼硝子体手術中所見面状の強固な網膜硝子体癒着を認めたため,双手法で人工的後部硝子体離を作製した.

眼科医のための先端医療92.新生血管を網膜内に誘導するには?

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.8,200811150910-1810/08/\100/頁/JCLS網膜新生血管の伸長方向網膜網膜にる新生血管は網膜に向子にて伸長する網膜内の血は向にん子血網膜のるに「」て網膜による図すに血管新生をする新のんにすすてす血管新生はにするストスでるをる分血をする「」新生血管を血網膜内に誘導を本的にするで新の能です方で生には新生血管網膜のを伸長新血をするてす生網膜血網膜では新生血管伸長する方向ので?本では生網膜の新のをに新生血管を網膜内に誘導するで細胞分子メカニズムにてす網膜アストロサイトによる細胞外マトリックスの足場形成生のマス網膜には血管に網膜細胞のるにて状にるてす網膜に新生血管を誘導する細胞は内のアストロサイトを網膜内にす網膜にアストロサイトは血管内皮子を分するにロクによる細胞外マトリックスを形成新生血管の内皮細胞するの足場をすのよにアストロサイトは網膜に新生血管を誘導するにに細胞でアストロサイトすでに構築ットクをて網膜の血管網形成す生新生マスでは状に新生血管伸長てすの網膜には血管てに分てんのアストロサイトではにて内の誘導る明子をックアトマスの網膜アストロサイトではロク子のするにロクの細胞外る細胞外マトリックス形成んのアストロサイトはをけてるに新生血管網膜内に伸長するですの新生血管伸長するの足場を形成するにはによる細胞外マトリックスの制御でるすにに成マスでは網膜アストロサイトにけるのはのにはのック制御てるす網膜網膜のアストロサイトにての細胞外マトリックスの形成てるのにてはのるです内皮細胞糸状仮足の形成を制御するシグナル分子生マス網膜では新生血管のにする内皮細胞にての糸状仮足形成のをするサて新生血管の伸長方向てす網膜アストロサイト分するにはのアイムす細胞外マトリックスにするよトではよ形成するにて内皮細胞の糸状仮足伸長すアイムの生は的スイシグによるルでの制御にてによるのによてをけてるてすトではのよにマトリックスメイをアイムに生るのに生る網膜の外に向て伸長する糸状仮足るよにす方◆シリーズ第92回◆眼科医のための先端医療=坂本泰二山下英俊植村明嘉(神戸市立医療センター中央市民病院眼科)新生血管を網膜内に誘導するには?———————————————————————-Page21116あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008神経発生において軸索誘導を制御するシグナル分子群が,血管新生では内皮細胞糸状仮足の伸長を阻害する因子として働くことがわかってきました.網膜血管発生ではこれまでにNetrin-UNC5Bシグナルの関与が報告されています6)が,このほかにもいくつかのシグナル分子が状況に応じて使い分けられ,不適切な方向に伸長する糸状仮足を退縮させていることが予想されています.こうしたシグナル分子たちが,虚血性網膜症における新生血管ではどのように作用しているのかについては,今のところまったくわかっていません.機能的網膜血管の再構築に向けて細胞外マトリックスシグナル分子を血網膜にける新生血管のを生のにするで網膜内に新生血管を誘導て機能的血管網を再構築するは能るで生網膜血網膜のにをに新生るにす文献1)UemuraA,KusuharaS,KatsutaHetal:Angiogenesisinthemouseretina:amodelsystemforexperimentalmanipulation.ExpCellRes312:676-683,20062)UemuraA,KusuharaS,WiegandSJetal:Tlxactsasapro-angiogenicswitchbyregulatingextracellularassem-blyofbronectinmatricesinretinalastrocytes.JClinInvest116:369-377,20063)GerhardtH,GoldingM,FruttigerMetal:VEGFguidesangiogenicsproutingutilizingendothelialtipcelllopodia.JCellBiol161:1163-1177,20034)RuhrbergC,GerharderH,GoldingMetal:Spatiallyrestrictedpatterningcuesprovidedbyheparin-bindingVEGF-Acontrolbloodvesselbranchingmorphogenesis.GenesDev16:2684-2698,20025)LeeS,JilaniSM,NikolovaGVetal:ProcessingofVEGF-Abymatrixmetalloproteinasesregulatesbioavailabilityandvascularpatterningintumors.JCellBiol169:681-691,20056)LuX,leNobleF,YuanLetal:ThenetrinreceptorUNC5Bmediatesguidanceeventscontrollingmorphogen-esisofthevascularsystem.Nature432:179-186,2004(70)「新生血管を網膜内に誘導するには?」を読んででよるのはのに血管てす血のですにのに血管てすにて網膜をはて内の形成に血管てすのにては血管新生に子でるのを明す長にて的てのてのは血管内皮子でるてを制するでんの血管新生を的で制でるでは能で網膜にするはの生てるす血管新生のには血管新生を明するはをにけるではて本はよのですては生にける網膜新生血管誘導の新てすに生網膜の細胞外マトリクスをする血管新生てのにるのメカニズムはすてすには明でで図1網膜新生血管の伸長方向を制御するメカニズムアストロサイトが形成する細胞外マトリックスは,血管内皮細胞が接着・遊走するための足場を提供すると同時に,VEGF164および188による濃度勾配の形成にも寄与する.マトリックス結合ドメインをもたないVEGF120は拡散して血管径を増大させる.Netrinなど糸状仮足の形成を阻害するシグナル分子は,新生血管が誤った方向に伸長するのを是正していると考えられる.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081117(71)ていました.植村明嘉先生たちは,ついにそのメカニズムを解明されましたが,それはTlxやGFAP(glialbrillaryacidicprotein)といった比較的単純な原理原則に帰着するものでした.複雑にみえる生命現象も,実は単純な原理原則の組み合わせにすぎないことをこのことは教えてくれます.血管新生治療は,現在臨床に大きなインパクトを与えていますが,研究者はつぎの大きな峰を目指しています.たぶんそれは,網膜新生であり機能的血管の再構築でしょう.治療という観点からいえば,これらの研究はまだ揺籃期にすぎませんが,そのなかから必ず決定的因子が発見されるでしょう.植村先生たちの研究は,そのために大きな貢献をすると思われる重要なものです.鹿児島大学医学部眼科坂本泰二☆☆☆眼科領域に関する症候群のすべてを収録したわが国で初の辞典の増補改訂版!〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544メディカル葵出版株式会社A5判美装・堅牢総360頁収録項目数:509症候群定価6,930円(本体6,600円+税)眼科症候群辞典<増補改訂版>内田幸男(東京女子医科大学名誉教授)【監修】堀貞夫(東京女子医科大学教授・眼科)本書は眼科に関連した症候群の,単なる眼症状の羅列ではなく,疾患自体の概要や全身症状について簡潔にのべてあり,また一部には原因,治療,予後などの解説が加えられている.比較的珍しい名前の症候群や疾患のみならず,著名な疾患の場合でも,その概要や眼症状などを知ろうとして文献や教科書を探索すると,意外に手間のかかるものである.あらたに追補したのは95項目で,Medlineや医学中央雑誌から拾いあげた.執筆に当たっては,眼科系の雑誌や教科書とともに,内科系の症候群辞典も参考にさせていただいた.本書が第1版発行の時と同じように,多くの眼科医に携えられることを期待する.(改訂版への序文より)1.眼科領域で扱われている症候群をアルファベット順にすべて収録(総509症候群).2.各症候群の「眼所見」については,重点的に解説.3.他科の実地医家にも十分役立つよう歴史・由来・全身症状・治療法など,広範な解説.4.各症候群に関する最新の,入手可能な文献をも収載.■本書の特色■

新しい治療と検査シリーズ183.加齢黄斑変性に対するステロイド併用光線力学的療法

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.8,200811110910-1810/08/\100/頁/JCLSPDT後における炎症反応と血管新生のどちらにも対抗できるものであり,合目的的であるといえる.実際の治療方法TA投与はTA20mgまたは40mgの後部Tenon下注射を行う方法と,TA4mgまたは25mgの硝子体内注射を行う方法が報告されている.海外では硝子体内注射の報告が多いが,わが国では安全性と副作用の点から,Tenon下注射20mgを行う方法が広く用いられている.薬剤の投与時期にはPDT前投与,同時投与,後投与などさまざまな議論があり,確定された時期はないが,まずTAのTenon下注射を行っておいて,一定の間隔(たとえば7日)後にPDTを行う方法(PPP:Pharmacology-Pause-Photodynamictherapy,Yan-nuzzi)は,理論的には良い方法であり,筆者らもこの方法を用いている.本方法の良い点(表1)TAは徐放性薬剤であり,一度投与すると数週~数カ月の間,投与した局所での濃度が高まった状態を維持できるとされている.TAをPDTよりも前に投与することによって,術前にあらかじめ網膜浮腫,網膜離などの滲出の軽減が得られ,術後の視機能の回復には好都合である.胞様黄斑浮腫(CME)がみられる場合,ベルテポルフィンが胞様腔に貯留し,PDTの際に感覚網膜を障害する可能性が指摘されている(Yannuzzi).新しい治療と検査シリーズ(65)バックグラウンド加齢黄斑変性に対する光線力学的療法(PDT)は一般的治療法となり,わが国では約80%の視力維持率を得ることが可能になったが,視力改善率は20~30%と限界があり,PDTを行っても再燃・悪化する症例がある.PDTの効果を高め,よりよい視力改善を得るため,また,より少ない治療回数で脈絡膜新生血管(CNV)を退縮させ安定化させる手段が期待されている.新しい治療法これらの目的を達成するため,薬物によってPDTの効果を高める薬物併用PDTが種々の薬剤とPDTの組み合わせで試みられている.併用が検討されている薬物はステロイド薬,抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬である.ステロイド薬としてはトリアムシノロン・アセトニド(TA),anecortaveacetae(未認可)があるが,実際使用されているのはTAである.ステロイド薬は抗血管新生作用,抗浮腫作用,抗炎症作用,抗線維化作用を併せもつとされ,抗血管新生作用の作用機序として,細胞外基質メタロプロテナーゼやVEGFの発現抑制,基底膜分解の抑制,細胞内接着因子(ICAM)-1の発現抑制,エンドスタチンの発現増強,抗浮腫効果の作用機序として細胞膜安定化作用,血液網膜関門の安定化,抗炎症作用の作用機序として単球,白血球,マクロファージの遊走と活性化の阻害,炎症性サイトカインの局所集積の抑制効果が考えられている.一方,PDT後には,一過性に網膜離,網膜浮腫など滲出が増加することが知られており,白血球浸潤の増加および炎症性サイトカインの発現増加,網膜色素上皮細胞やマクロファージからのVEGF発現の一時的増強が起こることも知られている.以上のことから,ステロイド薬をPDTに併用することは,加齢黄斑変性の過程自体による血管新生と183.加齢黄斑変性に対するステロイド併用光線力学的療法プレゼンテーション:髙橋寛二関西医科大学枚方病院眼科コメント:湯澤美都子日本大学医学部視覚科学系眼科学分野表1期待されるステロイド併用PDTの利点作用機序の点から臨床的効果の点から1.抗炎症作用2.抗血管新生作用3.抗浮腫作用4.抗線維化作用1.より良好な視力回復2.より強いCNV縮小3.治療回数の減少4.PDTの副作用抑制5.PDT抵抗例への対処———————————————————————-Page21112あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008TA前投与によってCMEをあらかじめ軽減できれば,PDT時の感覚網膜の障害が抑制される可能性があり,PDTの副作用抑制という点でも有用であると考えられる.TA投与による炎症性および血管新生性サイトカインの発現抑制によって,PDT後の新生血管の再増殖抑制や抗線維化作用が発揮された場合,術後視機能の良好な回復と治療回数の減少につながる可能性が高い.トリアムシノロン併用PDTの臨床報告は2003年のSpaideの報告に始まり,多数の報告があるが,Ariasら(2006年)のpredominantlyclassicCNVに対するPDT単独療法との前向きランダム化試験では12カ月後の平均視力,病変サイズの縮小,中心窩厚においてTA併用群が有意に良好な効果を示し,TA併用群で治療回数が有意に少なかったと報告している.ただし,欧米と異なり(66)(PEDPDT前VD0.5FAIAPEDRAP病巣bumpsign網膜出血液性色素上皮離RAP病巣(網膜血管と合)hotspot胞様黄斑浮腫(CME)CTPEDの光PEDの過光12カ月後VD0.7FAIAPEDCME消失CT図1網膜血管腫状増殖(RAP)に対するTA併用PDT有効例(治療前)眼底所見,画像診断からYannuzzi分類stageIIのPEDを伴うRAPと診断した.初回PDTの1週間前にトリアムシノロン20mgのTenon下注射を併用した.右眼視力0.5.図2図1の症例のTA併用PDT12カ月後1回の治療でRAP病巣と網膜出血,色素上皮離,胞様浮腫は消失し,右眼視力は0.7に改善し,12カ月維持された.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081113(67)わが国では,PDT単独療法で十分な治療効果が得られるポリープ状脈絡膜血管症が多いため,TA併用PDTの使用は加齢黄斑変性でPDTに抵抗する例や網膜血管腫状増殖などの難治例に限定される傾向があることも事実である.1)SpaideRF,SorensonJ,MarananL:Combinedphotody-namictherapywithvertepornandintravitrealtriamcino-loneacetonideforchoroidalneovascularization.Ophthal-mology110:1517-1525,20032)KaiserPK:Verteporntherapyincombinationwithtri-amcinolone:publishedstudiesinvestigatingapotentialsynergisticeect.CurrMedResOpin21:705-713,20053)AriasL,Garcia-ArumiJ,RamonJMetal:Photodynamictherapywithintravitrealtriamcinoloneinpredomimantlyclassicchoroidalneovascularization,one-yearresultsofarandomizedstudy.Ophthalmology113:2243-2250,20064)LeeYA,HoTC,ChenMSetal:Photodynamictherapycombinedwithposteriorsubtenontriamcinoloneacetonideinjectioninthetreatmentofchoroidalneovascularization.Eye:1-7,2008後ベバシズマブ投与群では中心窩の網膜厚の減少と視力の改善が得られたのに対し,トリアムシノロン併用PDTでは同様に網膜厚は減少するものの,視力の改善はみられていない.トリアムシノロンは網膜色素上皮に対して毒性をもつと報告されている.抗VEGF作用はベバシズマブやラニビズマブのほうがトリアムシノロンより強く,これらの抗VEGF薬併用PDTでは視力改善が得られたという報告もある.今後はPDT抵抗性の加齢黄斑変性や網膜血管腫状増殖に対しては,トリアムシノロン併用PDTよりはこれらの抗血管新生薬の単独投与あるいはPDTとの併用療法が主流になると考えられる.加齢黄斑変性の中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)に対して,抗炎症作用と抗血管新生作用を有するステロイド薬を,それとは作用機序の異なる光線力学的療法(PDT)前に投与することは理にかなっている.理由は髙橋寛二先生が記載されたとおりであるが,PDT後に生じる照射野に一致した脈絡膜毛細血管板の虚血が血管内皮増殖因子(VEGF)の発現,ひいてはCNVの再発を増加させると考えられている点に対しても,VEGFの発現を抑制できるステロイドはPDTの回数を減少させるうえに有用であると考えられる.しかし,トリアムシノロンの硝子体内投与併用PDTとベバシズマブ(アバスチンR)の硝子体内投与の結果を比較したWeigertらの報告を読むと,6カ月本方法に対するコメント☆☆☆

サプリメントサイエンス:ルテイン(Lutein)

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.8,200811090910-1810/08/\100/頁/JCLSルテインおよびゼアキサンチンは,カロテノイドとよばれる天然色素の一種である.カロテノイドは天然に存在する色素で,化学式C40H56の基本構造をもつ化合物の誘導体である(図1).炭素と水素のみで構成されるものをカロテン,それ以外をキサントフィルという.ルテイン,ゼアキサンチンはキサントフィルである.約40種類のヒトの体内に存在するカロテノイドのうち,ルテインとゼアキサンチンのみが選択的に黄斑部に取り込まれる.ルテインとゼアキサンチンはヒト体内では合成できない.ルテインを摂取すれば一定量がゼアキサンチンに転化されるため,ルテインの摂取は黄斑色素の補給に効果的である.また,ルテインとゼアキサンチンは,ほうれん草やケールといった緑黄色野菜に多く含まれる1)(図1)ことが知られている.ルテインは,エネルギーが大きく毒性の高い青色光(440nm付近)に近い446nmに最も高い光吸収能をもち2),光刺激に対するフィルター機能をもつ.さらに,カロテノイドであり二重結合を多く含むため,一重項酸素を消去する能力が高い.視細胞外節にも多く存在するルテインは抗酸化物質として働き,外節を貪食する網膜色素上皮細胞を保護している可能性がある.近年,加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)患者では黄斑色素光学密度(macularpigmentopticaldensity:MPOD)が低下していることが報告され,病態との関連が考えられている3).EyeDiseaseCase-ControlStudy(EDCCS,1986~1990)によれば,食事によりルテイン/ゼアキサンチン6mg/日を摂取することはAMDのリスクを43%軽減させ,これがAMDの予防と最も相関があると報告された4).ただし,一般的な食事で摂取される量は1日約1.7mgにすぎない.LuteinAntioxidantSupplementationTrial(LAST,1999~2001・前向き無作為二重盲検プラセボ対照試験)では,2施設でdryAMD患者90名に対し調査され,ルテイン単独投与群およびルテインに抗酸化ビタミンとミネラルを併用した群でMPODの増加,コントラスト感度の増加,視力の改善が認められると報告された5).また,現在米国で進行中のAge-RelatedEyeDiseaseStudy(AREDS)2では,約100の施設で55~80歳の(63)サプリメントサイエンスセミナー●連載③監修=坪田一男3.ルテイン(Lutein)永井香奈子小澤洋子慶應義塾大学医学部眼科ルテインは,青色光に対するフィルター効果に加え,強い抗酸化作用を有する.最近では抗炎症効果をもつことも明らかとなり,加齢黄斑変性(AMD)など,炎症が関与する病態を抑制するサプリメントとして期待されている.すでに大規模調査AREDS2では,ルテイン投与によるAMD進行の抑制効果の検討が始まっている.表1AgeRelatedEyeDiseaseStudy2(AREDS2)現在進行中NEI(NationalEyeInstitute)が実施する無作為化臨床試験AREDSカテゴリ-3(中~大型ドルーゼン群)およびカテゴリ-4(対側眼が進行期AMD群)にあたる被検者を対象投与群①プラセボ②ルテイン/ゼアキサンチン③w-3脂肪酸(EPA/DHA)*④②+③*EPA:エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoicacid),DHA:ドコサヘキサエン酸(docosahexsaenoicacid).C40H56O2HOOH食物ケール(生)ほうれん草(生)ロメインタス(生)ロコリー(生)とうもこし(でたもの)(生)オン(生)トマト(生)39.512.22.31.71.00.30.10.1mg/100g図1ルテインの構造式と食物中のルテイン含有量———————————————————————-Page21110あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008AMD患者4,000人を募集し,ルテイン/ゼアキサンチンおよびオメガ(w)3多価不飽和脂肪酸(polyunsatu-ratedfattyacid:PUFA)投与のAMD進行に対する影響を検討中である(表1).最近筆者らは,マウス脈絡膜新生血管(CNV)モデルを用いた研究により,抗酸化剤ルテインが,nuclearfactor(NF)-kBの活性化抑制を介し,vascularendo-thelialgrowthfactor(VEGF),白血球走化因子,接着分子といった炎症関連分子の発現を抑制し,CNVの誘導を抑制することを明らかにした6)(図2,3).この結果は,ルテインがAMDに対して抗炎症作用,抗血管新生作用を有する可能性を示唆し,AREDS2の意義を生物学的に支持する知見となった.さらに,別の実験から網膜神経細胞内でも抗酸化作用を有することが示唆され(佐々木・小沢ら,論文投稿中),ルテインは視機能保護に有用であると考えられる.AMDは,炎症病態が継続するなかで,VEGFの発現が誘導されることが発症の一因とされる.ルテインのような抗酸化作用をもつ機能性食品因子により,この先行する炎症を抑制し,病態の進行を予防することが次世代の治療戦略として有望視されている.文献1)SommerburgO,KeunenJE,BirdACetal:Fruitsandvegetablesthataresourcesforluteinandzeaxanthin:the(64)macularpigmentinhumaneyes.BrJOphthalmol82:907-910,19982)SnodderlyDM,AuranJD,DeloriFC:Themacularpig-ment.II.Spatialdistributioninprimateretinas.InvestOphthalmolVisSci25:674-685,19843)TrieschmannM,BeattyS,NolanJM:Changesinmacularpigmentopticaldensityandserumconcentrationsofitsconstituentcarotenoidsfollowingsupplementalluteinandzeaxanthin:theLUNAstudy.ExpEyeRes84:718-728,20074)SeddonJM,AjaniUA,SperdutoRDetal:Dietarycarote-noids,vitaminsA,C,andE,andadvancedage-relatedmaculardegeneration.EyeDiseaseCase-ControlStudyGroup.JAMA272:1413-1420,19945)RicherS,StilesW,StatkuteLetal:Double-masked,pla-cebo-controlled,randomizedtrialofluteinandantioxidantsupplementationintheinterventionofatrophicage-relat-edmaculardegeneration:theVeteransLASTstudy(LuteinAntioxidantSupplementationTrial).Optometry75:216-230,20046)Izumi-NagaiK,NagaiN,OhgamiKetal:Macularpig-mentluteinisantiinammatoryinpreventingchoroidalneovascularization.ArteriosclerThrombVascBiol27:2555-2562,20072ルテインによる実験的脈絡膜新生血管の抑制機序ルテイン()ルテイン()(×10-13m3)**p<0.001**p<0.001図3ルテインによる脈絡膜新生血管の抑制(マウスレーザー誘導脈絡膜新生血管モデル)(文献6より改変)☆☆☆

眼感染アレルギー:眼の自然治癒力

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.8,200811070910-1810/08/\100/頁/JCLS眼は元来炎症が起きにくいところである.とはいっても…なかなかピンとこないと思う.私たち眼科医は,日頃その限度を超えて(例外的に?)病気になった眼ばかりを見るので,かえってその自己防御機構に気づきにくいからである.眼が外部刺激に対して炎症が起きにくいのには訳がある.怪我の跡が瘢痕化したりケロイドになっても,背中の皮膚なら問題ないかも知れないが,眼では大問題である.たとえ治っても,視覚にとって最も大事な「視路の透明性」,「網膜の高次神経機能」が維持できなければ失明である.したがって眼はそもそも,(限度内の異物刺激や感染であれば)必要以上の炎症を起こさず二次的な組織破壊を回避するようにできている.これは免疫・炎症システムのなかで実は特別なことで,欧米人は「眼の免疫特権(immuneprivilege)」などという言い方をする.Immuneprivilegeは,「通常の炎症反応が起こってはかえってそれに伴う組織障害・機能障害が問題になるような臓器で,その機能を守るためにそもそも生体が備えるしくみ」とまとめることができる1).このしくみのおかげで,ちょっとした怪我なら,私たちの眼は何事もなかったかのようにきれいに治る.「眼は気づかない自然治癒力をもっている」という訳である.房関連免疫偏位について眼のimmuneprivilegeは,単純に解剖学的血液・眼バリアによる受動的なものだけではなく,いくつかの要因により能動的に形成されている.なかでもanteriorchamberassociatedimmunedeviation(前房関連免疫偏位,ACAID)といわれる眼固有の免疫トレランス誘導機構はこれまで多くの研究者によって詳しく研究されてきた1).前房内に何らかの要因で異物抗原が入ると,まず眼局所抗原提示細胞(マクロファージ)によって末梢リンパ臓器(脾臓)に運ばれる.眼由来マクロファージは,脾臓で炎症抑制性の抗原特異的サプレッサーT細胞(善玉細胞)を優先的に誘導するため,眼内の異物抗原に対して過剰な炎症を起こすことなく眼の透明性が保たれる.いわば全身レベルで眼炎症をコンロトールしており,角膜移植の成功率が他臓器移植に比べて高いのもこのためといわれている1).房だけでなく硝子体にも防御機構がある前述の眼immuneprivilegeの観点から考えると,眼球に関連した免疫偏位は特に前房にはこだわらないと考えるのが自然である.Jiangらはアロ抗原を用いた実験系で,硝子体腔による免疫偏位の存在を報告した2).筆者らは可溶性抗原においても同様の免疫偏位が誘導されることを確認し,これを硝子体腔関連免疫偏位(vitre-ouscavityassociatedimmunedeviation:VCAID)と命名した3).VCAIDの実験は,マウス硝子体腔に可溶性抗原(卵白アルブミン:OVA)を入れた後,7日後に皮下にアジュバンドとともに注射し,強制的にOVA特異的な免疫反応を惹起する.さらに7日後,invitroでOVAにあらかじめ曝露させた抗原提示細胞を耳朶に注射する.細胞性免疫が活性化されると耳朶の厚さが増加するので,耳介厚を指標として細胞性免疫の活動性を定量化できる.前房だけでなく,硝子体内に可溶性抗原が曝露されても,その抗原に対する細胞性免疫が特異的に抑制された4).(61)眼感染アレルギーセミナー─感染症と生体防御─●連載⑧監修=木下茂大橋裕一8.眼の自然治癒力園田康平九州大学大学院医学研究院眼科学眼はそもそも限度内の外部刺激に対し,必要以上の炎症を起こさない.このしくみの一部として「眼球関連免疫偏位,eyeassociatedimmunedeviation(EyeAID)」がある.これは眼球内の異物に対する過剰な炎症反応を抑える,代表的眼の恒常性維持機構である.EyeAIDのメカニズムをよく知りそして上手に利用することで,眼炎症管理がやりやすくなると考えられる.———————————————————————-Page21108あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008VCAID成立におけるヒアロサイトの役割ACAIDにおいては,抗原を前房内で認識する抗原提示細胞が重要である.硝子体腔での抗原提示細胞の候補としては,①全身循環をしている血管内のマクロファージなど,②硝子体内に固有に存在する細胞,③それ以外の細胞が考えられる.そこで,greenuorescentpro-tein(GFP)骨髄キメラマウスに抗原を投与した際の,硝子体の細胞の動向を調べた3).このキメラマウスは,骨髄細胞がすべてGFPトランスジェニックマウス由来であるため,蛍光顕微鏡下で容易に同定できる.抗原を硝子体内に投与しても,強い炎症がなければ,流血中から骨髄由来細胞が新たに硝子体内に入ることはなかった.また,網膜色素上皮細胞や網膜のグリア細胞が硝子体内に流入していく所見もない.このことから,硝子体内の抗原認識は硝子体内の固有の細胞により行われている可能性が高いことになる.硝子体内の固有の細胞は広義のヒアロサイトであり,ヒアロサイトの重要な機能の一つとしてVCAIDにおける抗原認識および抗原提示があるのではないかと考えている.わりに:眼球関連免疫偏位(EyeAID)の概念この分野の研究はACAIDが始まりであった.しかし,眼球に関連した免疫偏位は特に前房にこだわらない(62)と考えるべきである.硝子体腔をはじめ,前房から最も離れた部位である網膜下に抗原を注入しても,同様の全身免疫偏位を誘導できる4).ACAIDに始まった研究は今や前房から硝子体腔,そして眼球全体に拡大されつつあり,今後はむしろ「眼球関連免疫偏位,eyeassociat-edimmunedeviation(EyeAID)」というように考えるべきであろう.角膜移植拒絶反応,内眼手術後炎症,ぶどう膜炎,さらに将来予想される幹細胞移植後の炎症反応等々,EyeAIDのメカニズムをよく知りそして上手に利用することで,将来眼炎症管理がやりやすくなると考えられる.文献1)StreileinJW:Ocularimmuneprivilege:therapeuticopportunitiesfromanexperimentofnature.NatRevImmunol3:879-889,20032)JiangLQ,JorqueraM,StreileinJW:Subretinalspaceandvitreouscavityasimmunologicallyprivilegedsitesforreti-nalallografts.InvestOphthalmolVisSci34:3347-3354,19933)SonodaKH,SakamotoT,QiaoHetal:Theanalysisofsystemictoleranceelicitedbyantigeninoculationintothevitreouscavity:vitreouscavity-associatedimmunedevia-tion.Immunology116:390-399,20054)WenkelH,StreileinJW:Analysisofimmunedeviationelicitedbyantigensinjectedintothesubretinalspace.InvestOphthalmolVisSci39:1823-1834,1998☆☆☆