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硝子体手術のワンポイントアドバイス 77.網膜色素変性に伴う黄斑円孔に対する硝子体手術(中級編)

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,200913730910-1810/09/\100/頁/JCOPYはじめに網膜色素変性の黄斑合併症には, 胞様黄斑浮腫,黄斑上膜,黄斑円孔などがある.網膜色素変性に黄斑円孔を伴う頻度は 1%前後とされており,網膜色素変性患者では健常人よりも黄斑円孔を合併する頻度が高い. 例ツꀀ 27 歳,男性.右眼の中心視力低下を訴えて受診した.視力は右眼 0.3(0.35),左眼 0.35(0.8).眼底は両眼とも血管アーケードより周辺側は骨小体様色素沈着を伴う典型的な網膜色素変性を認めた.また,右眼黄斑部に網膜上膜を伴った黄斑円孔が生じていた.黄斑円孔縁はやや不規則で明確なツꀀ uid cuツꀀ は認めなかった(図1). 黄斑円孔閉鎖を目的とした硝子体手術を施行した.コアの硝子体を切除した後,トリアムシノロンで硝子体を可視化し,後極部から周辺部に向かって人工的後部硝子体 離を作製した.網膜面には肥厚した後部硝子体膜が強固に癒着しており,人工的後部硝子体 離の作製は通常の特発性黄斑円孔に比較して困難であった(図2a, b).インドシアニングリーンを黄斑部に塗布して内境界膜 離を施行し,その後眼内液-空気同時置換術,20% SF6(六フッ化硫黄)によるガスタンポナーデを施行した.円孔縁の網膜は通常の特発性と比較して伸展性がやや低下している印象があった.術後,黄斑円孔は閉鎖したが,矯正視力は 0.3 と不変であった(図3). 膜色素変性に伴う黄斑円孔の特 網膜色素変性に黄斑円孔が合併する機序としては, 胞様黄斑浮腫と硝子体牽引が指摘されている.筆者は今まで網膜色素変性に伴う黄斑円孔を 5 例経験し,4 例に硝子体手術を施行した.いずれも通常の特発性黄斑円孔例よりも若年で,そのうち 3 例は黄斑上膜様の肥厚した後部硝子体膜が網膜と強固に癒着していた.一般に網膜色素変性患者では若年時から硝子体の変性を認めることが多く,過去の報告でも黄斑円孔をきたした症例の多く(75)が黄斑上膜を合併している.視力予後は,比較的良好であったとする報告と,不良であったとする報告が混在している.筆者の経験では,黄斑円孔の閉鎖が得られても視力改善が予想よりも不良である例が多かった.視力不良の原因としては, 胞様黄斑浮腫,発症後長期間経過,黄斑部の網膜色素上皮機能不全,などが考えられる.網膜色素変性患者の経過観察を行う場合には,このような黄斑合併症の生じる可能性を十分に説明し,中心視力が低下した場合には早期に受診してもらうよう啓蒙しておくことが重要と考えられる.文献 1) 今川幸宏,片岡英樹,佐藤孝樹ほか:網膜色素変性に黄斑円孔をきたした 1 例.眼科手術 19:407-410, 2006硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載77ツꀀツꀀ ツꀀ網膜色素変性に伴う黄斑円孔に対する硝子体手術(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図 1 術前の右眼眼底写真骨小体様色素沈着を伴う典型的な網膜色素変性および黄斑上膜を伴った黄斑円孔を認める.図 3 術後の右眼眼底写真黄斑円孔は閉鎖したが,矯正視力は 0.3 と不変であった.図 2硝子体手術中の所見網膜面には肥厚した後部硝子体膜が強固に癒着しており(a),人工的後部硝子体 離の作製は通常の特発性黄斑円孔に比較してやや困難であった(b).

眼科医のための先端医療 106.ベーチェット病ぶどう膜炎に対する抗TNF-α抗体療法

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.10,200913690910-1810/09/\100/頁/JCOPYベーチェット病によるぶどう膜炎ベーチェット病で不の炎患で病病をとする患ですぶどう膜炎を体としぶどう膜炎の作をすと病を体炎と病を視力不良とす膜ぶどう膜炎にす年ベーチェット病ぶどう膜炎の患者のぶどう膜炎のす者ので病に年代に初診したベーチェット病患者例と年代の初診患者例を比較したと年代初診患者に比年代の患者初診よにる視力不良例の図1),および1年当たりの眼発作回数(2.8±2.6回vs2.2±2.2回)がともに減少していました1).しかし,コルヒチンやシクロスポリンの内服治療を行っても眼発作をくり返す症例が2割程度は存在するため2),現在でも内因性ぶどう膜炎のなかで最も注意すべき疾患です.モノクローナル抗体製剤年のによ患のにをモノクローナル抗体によロックする治療とモノクローナル抗体製剤とよす炎患に対するモノクローナル抗体治療で抗a抗体製剤が注目されています.インフリキシマブ(レミケードR,以下レミケード)は2カ月に1回点滴する抗TNF-aモノクローナル抗体製剤で,わが国では関節リウマチ,クローン病,ベーチェット病による網膜ぶどう膜炎で保険適用を受けており,乾癬,強直性脊椎炎に対しても現在審査中です.関節リウマチでは骨破壊の抑制のみならず骨修復がみられる症例があるなど,従来の抗リウマチ薬にはない高い治療効果をもち,世界ですでに100万人以上に使用されています.(71)◆シリーズ第106回◆ツꀀツꀀ ツꀀ眼科医のための先端医療ツꀀツꀀ ツꀀ=坂本泰二山下英俊蕪城俊克(東京大学医学部附属病院眼科)ベーチェット病ぶどう膜炎に対する抗TNF-a抗体療法p<0.01p<0.0136%(94眼)32%(64眼)32%(64眼)47%(97眼)49%(101眼)27%(71眼)22%(56眼)29%(76眼)1980年代261眼19%(38眼)21%(42眼)1990年代203眼37%(96眼)49%(129眼)p<0.01p<0.01:0.1未満:0.1以上0.7未満:0.7以上有効性評価期間観察期間1.0±2.20.2±0.4平均4.0±2.2平均3.8±1.9p=0.031p=0.0315mg/kg(n=7)98765432109876543210有効性評価期間観察期間10mg/kg(n=6)眼発作回数(回/14週)眼発作回数(回/14週)図2ベーチェット病ぶどう膜炎に対するレミケードの第II相前期試験の成績治験は5mg/kg投与群と10mg/kg投与群の2群で行われた.シクロスポリンとステロイドを中止してレミケードに切り替えた前後での眼発作回数を比較した.いずれの投与量でも著明な眼発作抑制を示した.(文献3より,一部改変)図11980年代と1990年代に初診したベーチェット病ぶどう膜炎患者の視力の比較1990年代の初診患者では1980年代に比べ,初診時・最終観察時ともに矯正視力が著明に改善した.ベーチェット病の視力予後は近年改善していると考えられる.(文献1より,一部改変)———————————————————————-Page21370あたらしい眼科Vol.26,No.10,2009ベーチェット病ぶどう膜炎に対するレミケード治療ベーチェット病ぶどう膜炎に対するレミケードの治験クロに膜ぶどう膜炎の作をす患者を対にクロよロドをしレミケードをするロトールでした初にた第相前期試験でレミケードよとにに作した図2).その後,第II相後期試験,第III相試験でも同様の効果が確認され,2007年1月にわが国で世界に先駆けてベーチェット病による網膜ぶどう膜炎(従来の治療で効果不十分な症例に限る)に対してレミケード治療が承認されました.レミケードは体重当たり5mg/kgを生理食塩水250mlに溶解し,2時間かけて点滴静注します.これを,0,2,6週目,それ以降は8週毎に投与していきます.治験終了後に多くの症例で眼発作の再燃がみられたことから,眼発作を抑制し続けるためにはレミケードを長期間使用し続ける必要があります.筆者らの施設に通院中の若年男性の患者は,すでに5年間以上レミケードを使用し続けていますが,最近でもレミケードの投与間隔を延ばすと網膜ぶどう膜炎型の眼発作を起こすため,レミケード治療を継続しています4).副作用と効果不良例への対策レミケードの副作用ににるど炎どどす副作用としナーどと炎のどです対策とし前にベルクの診のたのどののクーをにとのるにレミケード前抗ドを用するとナーのたのットをしとレミケードにしと験のる病どとし診するとですチでレミケードの効例るとベーチェット病にしの効果不良例するとすのよう効果不例に対し用のレミケードの体たでしたルの用ののどの法すしるとす文献1)YoshidaA,KawashimaH,MotoyamaYetal:ComparisonofpatientswithBehcet’sdiseaseinthe1980sand1990s.Ophthalmology111:810-815,20042)湯浅武之助:眼科からみた病像の変遷.厚生省特定疾患ベーチェット班会議調査研究班平成3年度業績集,p39-40,19923)OhnoS,NakamuraS,HoriSetal:Ecacy,safety,andpharmacokineticsofmultipleadministrationofiniximabinBehcet’sdiseasewithrefractoryuveoretinitis.JRheu-matol31:1362-1368,20044)TakamotoM,KaburakiT,NumagaJetal:Long-terminiximabtreatmentforBehcet’sdisease.JpnJOphthal-mol51:239-240,2007(72)ベーチェット病ぶどう膜炎に対する抗TNF-a抗体療法」を読んで年前のに患をしをとでる法のるうとしたののでしたにのをにしたモノクローナル抗体ですで治療不でた病どモノクローナル抗体によ治療にたで期治療効果をるとでしたしモノクローナル抗体にのにすたとモノクローナル抗体製でのをの製のにしすししモノクローナル抗体をるののようのとうでん剤のモノクローナ———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.10,20091371(73)ル抗体医薬の応用力の高さのほうが重要視されています.近年はさまざまな疾患関連物質情報が網羅的に得られるようになりました.その結果,疾患原因物質がつぎつぎに同定されています.それを制御する方法として,新たな化学物質を合成するよりもモノクローナル抗体を開発したほうが,はるかに安全・確実で簡単なのです.今後も続々と新規のモノクローナル抗体医薬が現れてくるでしょう.抗TNF-a抗体は,モノクローナル抗体医薬製品のなかでも比較的初期に臨床現場で使われだしたものです.蕪城俊克先生が本文中に要領よくまとめられたように,眼科領域では,ベーチェット病治療に効果を発揮していますが,一般的にはリウマチ治療に広く用いられ,リウマチ治療を変えたといわれています.ただし,広く使われるにつれて,予想されていない副作用も現れてきました.本文中に書かれているもの以外に,2009年8月11日付でリンパ腫に罹患する確率が3倍増加する可能性があるという緊急通知がなされました.われわれ医療者は,その点にも注意して,この優れた薬magicbulletを使用する必要があります.鹿児島大学医学部眼科坂本泰二☆☆☆

新しい治療と検査シリーズ 193.前眼部OCTによる解析:濾過胞の観察

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,200913670910-1810/09/\100/頁/JCOPY(隅角底,毛様体扁平部など)まで画像化できる.最新の機器ではスエプトソース(フーリエドメインの一種)という原理を使うことにより,きわめて短時間での撮影が可能となり,その結果として三次元の画像を得られる. 使用方法(検査法の実際のやり方)線維柱体切除術後の濾過胞を撮影する場合には,濾過胞のある部位を最大限に露出させるために,下鼻側あるいは下耳側を注視させ,圧力をかけないように上眼瞼を挙上させて撮影を行う(図1).この際に不要な圧をかけると,マッサージ効果により濾過胞の形状が変化してしまうため注意が必要である.強膜弁が画像の中心になるように検査を行うと,内部の形態がよく描出できる(図2).新しい治療と検査シリーズ(69) バックグラウンド前眼部 OCT(光干渉断層計)が登場したことにより,前眼部の微細構造を非侵襲的に取得できるようになった.前眼部 OCT は,従来の後眼部用 OCT を前眼部に応用した場合と比べて,より深い位置まで画像化できる利点がある.前房や隅角などの前眼部解析のスタンダードである超音波生体顕微鏡(UBM)1)と比較しても簡便に検査が可能というアドバンテージがある.非接触かつ高精度,さらに不透明組織と透明組織の両者の検査を行うことができるため,線維柱体切除術後早期から濾過胞の内部構造を描出することに適する2 4). 新しい検査法(原理)前眼部 OCT は低コヒーレンス光干渉という原理により,生体組織を非接触で描出できる.前眼部 OCT は 1.3 μm 光源(眼底用 OCT は 840 nm 光源)を使用するため,組織侵達度が高く,前眼部の深い部位にある不透明組織193.前眼部OCTによる解析:濾過胞の観察プレゼンテーション:川名啓介かわな眼科コメント:山本哲也岐阜大学大学院医学系研究科眼科学図 1前眼部OCTによる濾過胞の撮影法患者に下鼻側あるいは下耳側を注視させ,強膜弁と思われる部位が中心となり,さらに濾過胞の表面が測定軸と垂直になるようにする.上眼瞼をそっと挙上すると,広い部位の検査を行うことができる.図 2前眼部OCT画像左上:三次元再構築した濾過胞内部の水隙.右上:濾過胞の矢状断.濾過胞内部にマイクロシスト,網状の低輝度の部位,内部水隙,強膜弁が確認できる.前房中では虹彩根部の切除部位も明らかである.下:濾過胞の水平断.———————————————————————- Page 21368あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009 本方法の利点本方法の利点は,非接触(術後でも躊躇せず使用可能)かつ高解像度という点と,三次元画像化といえる.濾過胞内部の構造(内部水隙,強膜弁,マイクロシストなど)を可視化できる.内部水隙の立体的な広がりや強膜弁との関係を明らかにすることができる.さらに,三次元データを取得しているため,MRI(磁気共鳴画像)のようにいろいろな断面を作り出すことで,強膜弁や房水流出路の形状をいろいろな角度から解析することができる.濾過機能の推定や,レーザー切糸・ニードリングの必要性や,効果判定に有用である4).本方法を含めて,濾過胞を観察できる機器として,スリットランプ,UBM,前眼部 OCT,後眼部 OCT(+前眼部ユニット),共焦点顕微鏡がある.組織侵達度(深さ方向)の高い順に,UBM>前眼部 OCT>スリットランプ>後眼部 OCT(+前眼部ユニット)>共焦点顕微鏡となる.その他の特徴を表1に示した.スリットランプはおおよその内部構造の把握は可能であるが,定量性に欠ける.UBM は濾過胞を観察することができるが,熟練した検者でないと検査がむずかしく,接触式のため濾過胞を圧迫する可能性や,感染を起こす危険もある.さらに測定速度が比較的遅いために立体画像を得ることができない.後眼部 OCT(+前眼部ユニット)は前眼部 OCT よりも高精度の画像を得ることができるが,組織侵達度が低く,濾過胞の内部まで描出することはむずかしい.共焦点顕微鏡は組織レベルの解像度での検査が可能であるが,濾過胞の内部構造といった大きな構造を把握することは困難である.ツꀀツꀀツꀀツꀀ 1) Yamamoto T, Sakuma T, Kitazawa Y:An ultrasound biomicroscopicツꀀ studyツꀀ ofツꀀツꀀ lteringツꀀ blebsツꀀ afterツꀀ mitomycinツꀀ C trabeculectomy. Ophthalmology 102:1770-1776, 1995 2) Singh M, Chew PT, Friedman DS et al:Imaging of trabeculectomy blebs using anterior segment optical coherence tomography. Ophthalmology 114:47-53, 2007 3) Miura M, Kawana K, Iwasaki T et al:Three-dimensional anterior segment optical coherence tomography ofツꀀ ltering blebs after trabeculectomy. J Glaucoma 17:193-196, 2008 4) Kawana K, Kiuchi T, Yasuno Y et al:Evaluation of trabeculectomy blebs using 3-dimensional cornea and anteriorツꀀ segmentツꀀ opticalツꀀ coherenceツꀀ tomography.ツꀀ Ophthal-mology 116:848-855, 2009(70)表 1濾過胞の検査が可能な前眼部解析装置一覧機器スリットランプUBM前眼部 OCT後眼部 OCT(+前眼部ユニット)共焦点顕微鏡非接触○×○○×定量性×○○○○解像度×△○○○組織侵達×○△××三次元化××○○×操作性○×○△×UBM:超音波生体顕微鏡,OCT:光干渉断層計.一方で,研究目的を除けば,OCT が濾過胞観察に用いられる機会としては濾過機能が低下して次の処置を探るときが考えられる.たとえば,OCT で encap-sulation がどこからどこまで生じているとか,強膜フラップの下のどの位置で癒着が強いとかの情報が得られれば,beb revision 前の情報として大変に心強い.ところが,現状では,UBM と同様に,そこまで特異的に判定できることはほとんどない.今後そうした方面の進化が望まれる.川名氏は濾過胞内部構造の観察機器としての前眼部OCT の有用性について解説している.述べられているとおり,濾過胞内の微細構造,組織密度,強膜フラップや線維柱帯開口部などの詳細な観察が非侵襲的に可能である.三次元表示もできる.しかも,周術期にも非接触で観察できることは感染回避の観点からもUBM に比較して格段に有利である.こうしたことから,前眼部 OCT は濾過胞観察機器として今後とも使用されていくことは間違いない. 本方法に対するコメント

眼感染アレルギー:コンタクトレンズ汚染と角膜炎

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,200913650910-1810/09/\100/頁/JCOPYコンタクトレンズ(CL)が普及する前,感染性角膜炎は高齢者特有の疾患であり,若年者にはまれなものであった.最近実施された感染性角膜炎サーベイランス1)によると,症例の年齢分布は明瞭な二峰性を示しており,20 代および 60 代にピークがみられた.また,20 代あるいはそれ以下の症例の約 9 割が CL に関連するものであった.CL というたった一つの要因により感染性角膜炎の発症年齢分布が一変してしまったわけである.このサーベイランスでは使用している CL の種類と起炎菌との関連についても興味深い結果が得られた.ソフトコンタクトレンズ(SCL)のなかでも頻回(2 週間など)交換型 SCL(FRSCL),あるいは従来型の SCL のようにレンズケアを必要とし,同じレンズを再装用するユーザーの感染性角膜炎の起炎菌にはグラム陰性桿菌が多いことが判明した.その多くは Pseudomonasツꀀ aerugino-sa および Serratiaツꀀ sp. の 2 菌種であるが,この 2 菌種は洗面所などの水周りを発端とする院内感染でも問題となっている環境菌である.家庭においても CL ケアを行う洗面所がこれらの菌に汚染され,手指を介して CL・CLケースあるいは多目的用剤(multi-purpose solution:MPS)に付着あるいは混入し,角膜の微細な上皮障害部分から感染が成立すると考えるのが妥当であろう. CL関連角膜感染症全国調査より日本コンタクトレンズ学会および日本眼感染症学会主導で CL 関連角膜感染症全国調査が行われた.本調査はコンタクトレンズ装用が原因と考えられる角膜感染症で入院治療をした症例を対象としたものである.平成 19年 4 月から 1 年間の中間報告2)では男性 129 例,女性104 例,合計 233 例が集積された.年齢は 9 90 歳(平均 28 歳)であった.このなかで FRSCL などレンズケアを行った後再装用をする SCL の装用者は 173 例(CLの種類が把握されている 216 例の 80.0%)と多くを占めていた.このほかにカラー CL 装用者が 11 例みられていた.CL の洗浄については毎日に加え週 4 6 回行っているものを含めても 107 例であり,レンズケアを必要とされるユーザーの数を大幅に下回っていることが確認できた.(67)眼感染アレルギーセミナー─感染症と生体防御─●連載監修=ツꀀツꀀ ツꀀ木下茂ツꀀツꀀ ツꀀ 大橋裕一22.ツꀀツꀀ ツꀀツꀀツꀀ ツꀀツꀀツꀀ ツꀀコンタクトレンズ汚染と角膜炎宇野敏彦松山赤十字病院眼科30 歳未満の感染性角膜炎のほとんどがコンタクトレンズ(CL)装用者である.CL は環境に普遍的に存在しているさまざまな微生物を眼表面にもち込む,いわば“キャリアー”として働く.また CL ケースは微生物の“保管庫”となり,ときにアカントアメーバの“えさ場”ともなりうる.図ツꀀツꀀ ツꀀ1CLケースに残ったMPS中のアカントアメーバシストMPS をスライドグラスに滴下し,無染色でそのまま観察した.シストが塊状となり多数存在していた.図ツꀀツꀀ ツꀀ2ツꀀツꀀ ツꀀ図1と同一症例のCLケースサフラニン染色を行い,細菌などの付着状況を確認した.赤く染色された部分は,細菌などの微生物による汚染があったと考えられる.———————————————————————- Page 21366あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009 CL・CLケース汚染の実態25 歳のアカントアメーバ角膜炎症例の CL および CLケースについて提示したい.図1はアカントアメーバ角膜炎症例の CL ケースに残っていた MPS を観察したものである.繊維状の異物とともにアカントアメーバのシストが多数塊状となっていた.本症例の CL ケースの汚染状況を確認したものが図2である.CL を保存する部分の底に菌(バイオフィルム?)の付着が認められた.CL ケースが高度に細菌およびアカントアメーバに汚染されていたことが確認された症例である.なお,本症例が角膜炎発症時に装用していた SCL を走査電子顕微鏡にて観察したところ,感染眼のみならず非感染眼の CLも多量のアカントアメーバの付着がみられていた.先の CL 関連角膜感染症全国調査でも 17 例(10.6%)が両眼性の角膜炎で入院加療されている.これまで両眼発症のアカントアメーバ角膜炎の報告もあり3),この要因として CL および CL ケースが両眼とも高度に汚染されていることがあげられよう. 染CLによる非感染性角膜炎?図3aは角膜中央部に淡い浸潤病巣をきたした症例で(68)ある.本症例の装用 CL の所見を図3bに示す.CL の角膜側に付着していた白色沈着物からは多数の糸状真菌が検出された.しかし,本症例は CL 装用を中止することにより速やかに消炎しており,真菌による感染は成立していなかったと推測される症例である.今後の慎重な検討が必要であるが,CL 装用者の角膜炎には角膜内に起炎菌が存在する病態とともに,汚染CL に付着している細菌などの微生物による二次的に起こる非感染性の角膜浸潤も加味されているように思われる.感染病巣は小さいが角膜実質表層全体がすりガラス状に淡い浸潤をきたしているような症例に遭遇することは多い.CL による機械的,あるいは多目的用剤(MPS)による化学的上皮障害の要因ももちろん否定はできないが,CL に付着している微生物より放出される“毒素”あるいは微生物に対する免疫反応が病態を修飾している可能性が高いと考えられる.文献 1) 感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス分離菌・患者背景・治療の現況.日眼会誌 110:961-972, 2006 2) 福田昌彦,コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査委員会:コンタクトレンズ関連角膜感染症の実態と疫学.日本の眼科 80:693-698, 2009 3) 石橋康久:アカントアメーバ角膜炎 37 自験例の分析.眼科 44:1233-1239, 2002☆ ☆ ☆図ツꀀツꀀ ツꀀ3a汚染CLによる非感染性角膜炎を疑った症例角膜中央部に境界不鮮明な淡い浸潤病巣を認めた.角膜浮腫はなく,前房内の炎症も軽微であった.図ツꀀツꀀ ツꀀ3bツꀀツꀀ ツꀀ装用していたCLの概観CL の角膜側に白色の沈着物を認めた.これを一部擦過後検鏡したところ,多数の糸状菌が確認された.

緑内障:線維柱帯切除術の効果の限界と可能性

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,200913630910-1810/09/\100/頁/JCOPYツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 線維柱帯切除術(trabeculectomy:TLE)は,観血的に眼内から眼外への房水流出路をつくり,その濾過効果によって眼圧下降を図る術式である.現在ある眼圧効果療法の手段のなかでは,最も大きな眼圧下降が短期間でほぼ確実に得られることは周知の事実である.ところが,TLE にはいくつかの問題点がある.低眼圧症などの合併症以外に,長期間の濾過効果を得られないケースもあり得るということがあげられる.人体には生来に創傷治癒機構が備えられていて「自然44に4傷は治る」が当たり前だが,TLE はその自然な生体反応に相反する手術である(図1).つまり,十分な濾過効果を得るために,切開して作製された強膜弁が治らず444に4,ずっと解離している必要がある.逆にいえば,「いかに傷が治りにくいか」が術後の長期の眼圧コントロールを左右する.そもそも手術療法とは,「解剖学的に元の状態に近い組織構造に戻して(骨折手術など),その生理機能を維持させる」もしくは「余計なもの(癌など)を取り除いて,その臓器の生理機能の悪化を防ぐ」という理論に基づくものが多い.そのなかでは,TLE という手術療法は,「元の状態に戻っては困る」というユニークな手術とも考えられる. えてツꀀ 悪に4444みたTLEの術後成績TLE の術後成績の報告は多いが,術中のマイトマイシンC 併用などによって,短期-中期的に良好な眼圧下降が得られていることは間違いない事実である.しかしながら,術後数カ月後にマイトマイシンC の薬効が消失した後の長期的な眼圧コントロールに着目した場合,一旦は目標眼圧に到達しても,約 30%の確率で目標眼圧を維持できない結果となる(図2).実際に,TLE 後の数年後に,濾過胞再建術や再度 TLE を要する症例を経験することもしばしばである.したがって,TLE は万4能ではなく44444,術後の長期にわたる眼圧下降を確保するには,何らかの工夫が必要になる.(65)●連載112緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄ツꀀツꀀ ツꀀ 山本哲也112.ツꀀツꀀ ツꀀツꀀツꀀ ツꀀツꀀツꀀ ツꀀ線維柱帯切除術の効果の限界とツꀀツꀀ ツꀀ可能性金本尚志広島大学大学院医・歯・薬学総合研究科 視覚病態学(眼科学)緑内障の手術療法において,線維柱帯切除術に勝るものは存在せず,比較的安全に適切な眼圧下降が得られることは周知の事実である.しかしながら,創傷治癒のために眼圧下降効果が有限であっても何ら不思議なことではなく,それに対する対処法の開発が現在進行形で検討されている.:Criteria A:Criteria B:Criteria C1.00.80.60.40.20.010020経過期間(週)3040生存率強膜弁の作製房水の結膜下への濾過強膜弁の閉鎖眼圧の再上昇眼圧の下降図ツꀀツꀀ ツꀀ2有水晶体に対するTLE後の眼圧の生存率Criteria A:眼圧 18 mmHg 以下・20%眼圧下降率.Criteria B:眼圧 15 mmHg 以下・25%眼圧下降率.Criteria C:眼圧 12 mmHg 以下・30%眼圧下降率.術後 1 年後から生存曲線の低下がみられ,術後 3 年後には生存率が大きく低下してくる. (文献 1 より)図ツꀀツꀀ ツꀀ1濾過手術と創傷治癒自然な生体反応としては,創傷治癒機構によって,創である強膜弁はいずれ閉鎖してしまうはずである(点線).しかし,それでは TLE で得られた眼圧下降効果が持続しない.———————————————————————- Page 21364あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009 過胞維持のための工夫創傷治癒に伴って濾過効果が減弱してきた際に,濾過機能を復活させる観血的処置としてニードリングがある.つまり,針などを用いて結膜下瘢痕組織を切開し,癒着した強膜弁を開放する手法である.短期的には明らかな効果があるが,長期的にみると,約 50%以下の確率で目標眼圧を維持できなくなる.創傷治癒の理論を考えると当たり前ともいえるが,それに反して長期の良好な眼圧コントロールを得ることが一部の症例にみられることは確かである(図3).したがって,濾過胞再建術を検討する前に,可能であればぜひトライすべきである.一方で,分子生物学的アプローチに基づく濾過効果持続の可能性も検討されている.その一つに,ROCK 阻害薬があげられる.ROCK 阻害薬は線維柱帯房水流出路を増大させる点眼薬である3)が,別の薬効も期待できるかもしれない.すなわち,TLE 後の濾過胞での創傷治癒を抑制する効果である.ROCK 阻害薬が Tenonツꀀ 由来の線維芽細胞の機能を抑制することは基礎実験などですでに証明されている4).したがって,TLE 後にROCK 阻害薬の点眼を併用することが,濾過効果を維持して,長期的な眼圧コントロールに貢献するかもしれな い(図4).(66)おわりに主として TLE の負の側面に着目して述べてきたが,だからといって TLE がダメなわけでは,もちろんない.なにしろ,TLE に匹敵する治療法はほかにはないのだから.実際に,小生自身も困ったら TLE を即座に選択する.しかしながら,患者が超音波白内障手術のように1 回きりの手術を希望するのは当然で,その期待に応えるために,万全を期して,術中・術後療法を含めたTLE に臨みたい.そのためには,TLE の手術ストラテジー全体を今後進化させる必要があるのかもしれない.文献 1) Fontana H, Nouri-Mahdavi K, Lumba J et al:Trabeculec-tomy with mitomycin C:outcomes and risk factors for failure in phakic open-angle glaucoma. Ophthalmology 113:930-936, 2006 2) Rotchford AP, King AJW:Needling revision of trabe-culectomy:Bleb morphology and long-term survival. Ophthalmology 115:1148-1153, 2008 3) Honjo M, Tanihara H, Kameda T et al:Potential role of Rho-associated protein kinase inhibitor Y-27632 in glau-comaツꀀ ltration surgery. Invest Ophthalmol Vis Sci 48:5549-5557, 2007 4) Honjo M, Tanihara H, Inatani M et al:E ects of rho-associated protein kinase inhibitor Y-27632 on intraocular pressure and out ow facility. Invest Ophthalmol Vis Sci 42:137-144, 20011.00.80.60.40.20.0123経過期間(年後)生存率45線維芽細胞MMCROCK阻害薬濾過胞の瘢痕化TGF?b筋性線維芽細胞図ツꀀツꀀ ツꀀ3ニードリング施行後の眼圧の生存率実線:TLE 後 3 カ月以内にニードリングを施行した群.点線:TLE 後 3 カ月以降にニードリングを施行した群.施行後 1 年後には大きく生存率が低下するが,数年経ても目標眼圧を維持している症例が約 20 40%存在する. (文献 2 より)図ツꀀツꀀ ツꀀ4ROCK阻害薬と創傷治癒Tenonツꀀ 由来線維芽細胞は,房水からもたらされた TGF-b(transforming growth factor-b)によって,アクチンなどの強固な瘢痕組織を形成する筋性線維芽細胞に誘導される.ROCK阻害薬は,術後中期-後期の濾過胞瘢痕化の役割を担う筋性線維芽細胞の機能を抑制する.MMC:マイトマイシンC.☆ ☆ ☆

屈折矯正手術:ボストンレンズによるケラテクタジアの矯正

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,200913610910-1810/09/\100/頁/JCOPYレーシック(laserツꀀ inツꀀ situツꀀ keratomileusis:LASIK)などのレーザー屈折矯正術後の合併症にケラテクタジア(keratectasia,角膜拡張症)がある.術後に角膜が脆弱化し菲薄化,前方突出する状態で,角膜の不正乱視により裸眼視力および矯正視力の低下をもたらす.現在,角膜トポグラフィなどを用いた術前のスクリーニングで危険因子が指摘されているが,危険因子がなくても発症したという報告もあり,完全に予防することは困難と思われる1 4).発生率は報告によって異なるが 0.04 0.09%程度と報告されている2,4).円錐角膜と同様,軽度のケラテクタジアであれば眼鏡矯正にて視力矯正は可能だが,進行すると眼鏡矯正は困難になる.この場合,ハードコンタクトレンズ(HCL)による矯正が選択肢となる.ただし,HCL のフィッティングは,角膜突出部と角膜周辺部の間に角膜曲率半径の差が大きいため容易ではない.また,もともとドライアイ患者が多いことや,レーシック術後のドライアイがある場合もあり,装用感が優れず継続的な装用が困難な場合がある.また,患者がレーシック後にコンタクトレンズから解放されると期待している背景があるため,コンタクトレンズ装用が精神的に受けいれられない場合もあり処方に苦慮する.ケラテクタジアのコンタクトレンズによる屈折矯正の手順としては円錐角膜の屈折矯正と同じく,眼鏡矯正ができない場合は球面 HCL を,それがむずかしければ非球面の HCL,ピギーバックを試してみる.筆者らの施設では,従来の方法でもレンズ装用が不可能な患者に対してボストンスクレラルレンズの処方を行っている.ボストンレンズは治療用強角膜レンズで,ガス透過性HCL と同じ素材で作製されており,現在の素材では Dk値は 85×10 11(cm2/sec)・(ml O2/ml×mmHg)であ(63)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載113監修=木下茂大橋裕一坪田一男113.ツꀀツꀀ ボストンレンズによるケラテクタジア の矯正小島隆司慶應義塾大学医学部眼科/ 名古屋アイクリニックケラテクタジアでは,角膜不正乱視とドライアイなどの背景から通常のハードレンズ装用が困難なことが多い.ボストンレンズは角膜と直接レンズが触らないために装用感に優れ,かつ不正乱視矯正効果もある.ただし,レンズの装用方法が通常のコンタクトレンズと異なるため適切な装脱練習が必要である.角膜移行部涙液強膜ハプティクス光学部液体の貯留部位図 1ボストンレンズの断面図図 2ボストンレンズ装用後のスリットランプ写真スリットランプで観察するとレンズと角膜の間にスペース(vault)が確認できる.———————————————————————- Page 21362あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009る.図1に示したようにボストンレンズは強膜の部分で眼球と接し,角膜とレンズの間には液体が貯留する.この液体は装用時に生理食塩水が貯留しており,徐々に涙液に置換されていく.ボストンレンズの特徴は大きく分けて 2 つある.第 1 は,HCL として角膜の不正乱視を矯正する効果があること,第 2 は,レンズと角膜の間に貯留した液体の効果で眼表面の上皮障害改善,消炎効果をもつことである.この特長を生かして,表1にあげたような疾患が適応となる4).筆者らはレーシック後ケラテクタジア 3 例 4 眼に対して,屈折矯正目的でボストンレンズの処方を行った.すべての患者に対してはじめに通常の球面 HCL,非球面の HCL 処方を行うも,異物感および乾燥感が強く継続的な使用は困難であった.HCL による矯正視力,ボストンレンズによる矯正視力を表2に示すが,ボストンレンズにおいても同等の視力が得られた.また,装用後の異物感,乾燥感は従来の HCL に比べて軽度で日常装用に十分耐えるうるものであった.ボストンレンズの欠点は,通常のレンズと装用方法が異なるため装用練習に時間的,精神的負担がかかることである.しかし,レンズの装用はレンズの見た目に比べてはるかに簡単であり,筆者らの施設では視能訓練士とともに患者とマンツーマンでできるようになるまで根気よく指導をしている.今回の患者 3 名のうち,2 名は 2回の装用練習で問題なく装用できるようになったが,1名は練習に 7 回来院してもらい最終的に自分で装用できるようになったことを経験した.レーシック後のケラテクタジアは今後レーシック患者の増加に伴って増える可能性が考えられる.術前の涙液,眼表面状態からレーシック術後に HCL を使用していくことは困難な場合があるため,ボストンレンズは一つの屈折矯正オプションになりうると思われた.* ボストンレンズは国内未承認コンタクトレンズのため名古屋アイクリニック(名古屋市熱田区)にて院内倫理委員会の承認を得て処方を行っています.なお,Boston Founda-tion for Sight よりボストンレンズの提供を受けるには規定のトレーニングを受ける必要があります.文献 1) Binder PS, Lindstrom RL, Stulting RD et al:Keratoconus and corneal ectasia after LASIK. J Cataract Refract Surg 31:2035-2038, 2005 2) Randleman JB, Trattler WB, Stulting RD:Validation of the Ectasia Risk Score System for preoperative laser in situ keratomileusis screening. Am J Ophthalmol 145:813-818, 2008 3) Klein SR, Epstein RJ, Randleman JB et al:Corneal ectasia after laser in situ keratomileusis in patients without apparent preoperative risk factors. Cornea 25:388-403, 2006 4) 中村友昭:特集ケラテクタジア角膜形状による予防法.IOL&RS 22:152-163, 2008 5) Rosenthalツꀀ P,ツꀀ Croteauツꀀ A:Fluid-ventilated,ツꀀ gas-permeable scleral contact lens is an e ective option for managing severe ocular surface disease and many corneal disorders that would otherwise require penetrating keratoplasty. Eye Contact Lens 31:130-134, 2005(64)☆ ☆ ☆表 1ボストンレンズの適応疾患1.角膜不正乱視(重症円錐角膜など)2.重症眼表面疾患(Stevens-Johnson 症候群など)3.兎眼4.重症ドライアイ表 2眼鏡・HCL・ボストンレンズの矯正視力の比較症例自覚屈折矯正視力眼鏡HCLボストンレンズ1Sph 8 D, Cyl 2 D Ax30°0.41.01.02Sph 1.5, Cyl 5 D Ax80°0.81.21.03Cyl 3 DAx90°0.71.21.04Sph 1 D, Cyl 2 D Ax120°1.21.21.2

眼内レンズ:Surgical Media Center(SMC)

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,200913590910-1810/09/\100/頁/JCOPY眼内レンズや白内障手術方法の進歩により白内障術後視機能は向上した.そのため,若手術者は早い段階での手術手技のスキルアップを求められ,指導医にとっても頭の痛いところである.自分の手術手技を録画し確認することは重要であるが,通常の録画で超音波ハンドピースの動きは観察できるが,フットペダルの動きまで確認することは不可能である.車の運転でもハンドルだけでなくアクセル,ブレーキの動きが重要なのと同様に,白内障手術においてもフットペダルの動きは白内障手術手技の向上に重要なポイントとなる.Surgical Media Center(SMC, AMO 社)を使用すると,これまで観察が不可能であった超音波パワー,吸引,流量などの動きを手術動画と同じ画面で閲覧することができる.すなわち,フットペダルの動きを客観的にグラフ化し可(61)松島博之獨協医科大学眼科眼内レンズセミナー 監修/大鹿哲郎278.ツꀀツꀀ ツꀀツꀀツꀀ ツꀀSurgicalツꀀツꀀ ツꀀMediaツꀀツꀀ ツꀀCenter(SMC)白内障手術技術をスキルアップするためには,録画した自分の手術手技を確認することが重要である.SMCを使用すると通常の録画では得ることのできない超音波パワー,吸引圧,流量などの詳細な情報を手術動画と同時に閲覧できるため,効果的である.図 1SMC接続方法手術顕微鏡,フェイコマシンのケーブルを SMC コンバータに接続後コンピュータにつなぐと手術画像と術中超音波パワー,吸引,流量の情報をウィンドウ上に同時に表示できる.図 3SMC表示例(核破砕吸引)分割後の核片をチョップして破砕操作しているが,超音波と吸引を急速に発振し核片の一部を破砕した後,吸引だけで核片を把持しながら分割していることを画面情報から読み取ることができる.図 2SMC表示例(溝掘り)左グラフ上段より超音波パワー(黄),吸引圧(青),流量(緑)を示す.他にボトル高,フットペダル位置,超音波積算値などの情報も得ることができる.画面情報より,溝掘り操作では低い吸引圧で,超音波が規則正しく発振している様子がわかる.1324———————————————————————- Page 2視化するので,これまで捉えることのできなかった術者の隠れた操作を評価することができる.SMC のセットアップには専用ソフトウェアの入ったコンピュータとコンバータが必要で,このソフトウェアは SovereignR,SovereignR Compact,次世代の WHIT-ESTAR SignatureRにも対応する.手術顕微鏡,フェイコマシンのケーブルを SMC コンバータに接続し,コンピュータにアウトプットすると手術画像と同時に超音波パワー,吸引圧,流量,ボトル高,フットペダル位置,超音波積算値などの情報をウィンドウ上に表示することができる(図1).図2, 3に実際に表示されたウィンドウを示す.超音波パワー,吸引,流量がグラフ化されて表示されるので経時的に変化を観察することができる.図2は溝掘り操作を示すが,グラフをみると,吸引圧が低い状態で超音波が規則正しく発振している様子がわかる.図3は分割後の核片をチョップ破砕操作しているところであるが,一時的に超音波と吸引を急速に発振し核片の一部を破砕した後,吸引だけをかけて核片を把持しながら破砕していることをグラフから読み取ることができる.このように動画だけではわからなかった情報が可視化されるところに SMC の利点がある.隠れた手術手技を可視化できる SMC は教育にも効果的である.図4に豚眼を使用したウェットラボ教育方法の例を示す.フェイコチョップの手技を示したものだが,特に超音波パワーの波形(黄色)に着目してほしい.熟練者では鋭角な超音波発振の後吸引がかかった状態を保ち,核片をしっかり把持していることがわかるが,初心者では最初の超音波発振の後にしばらく超音波の波形が続いており,フットペダルの切り替えがうまくいっていないことがわかる.動画だけではわからない情報がSMC から得ることができ,術中の波形を解析することで術者の欠点を明確にし,的確な手術指導ができる.SMC はまだ新しく,応用方法にはさらなる検討は必要であるが,筆者の印象で SMC は,現在は一般化され簡便さから広く普及している車のナビゲーションシステムのようなイメージがある.今後ソフトの改良と使用方法の検討が進めば,臨床や教育現場で新たな可能性を見いだすことができる有効なマテリアルと考えている.図 4SMCによる初診者と熟練者の手術手技比較初診者(左)では無駄な超音波発振が続いているのに対し,熟練者(右)では無駄な超音波発振をせず効率よく核片を破砕していることが,SMC 画面情報のグラフ波形から読み取れる.初心者熟練者

コンタクトレンズ:私のコンタクトレンズ選択法(ニチコン・ローズK2※PG)

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,200913570910-1810/09/\100/頁/JCOPY角膜移植後の患者に十分な視力を回復させるためには,術後角膜乱視への矯正が必要となりコンタクトレンズ(CL)の処方は,角膜に対しての安全性や可逆性などを考えると有用な方法である.実際角膜移植後の不正乱視の発生起因としては,① 宿主角膜と移植角膜の曲率半径の相違② 縫合部周辺の角膜形状③ 創傷治癒の違い④ 縫合糸による牽引 などさまざまな要因が関与していると考察される.このように非常に複雑な形状である移植後眼1)に対して,CL の処方は有用2)でありながら実際の処方にはレンズが不安定になったり,矯正が不十分であったりと苦慮させられる.今回は,そういった症例に対して,新しい角膜移植後用ガス透過性ハード CL(RGPCL):Rose K2TM PG(post graft)レンズを紹介する.円錐角膜などの不正乱視眼の患者を対象に,ローズ Kインターナショナル社のデザインによる RGPCL がRose KTMレンズである.このレンズを改良し,角膜移植後用として新しくデザインされたものが,Roseツꀀ K2TM PG である.レンズ材料は従来の Rose KTMレンズと同様で米国:Polymerツꀀ Technology 社の Boston 材料(Dk値 100)を使用している.レンズデザインを図1に示す.従来の Roseツꀀ KTMレンズと比較して,標準レンズ直径を大きくし逆形状多段カーブ(リバースジオメトリック)デザインにすることで,角膜上でのレンズセンタリングや装用感,さらに収差を軽減し視機能の向上を目的に考慮されたデザインとなっている.受注規格は表1に示す. 際の処方をしてみてレンズベースカーブ(BC)の選択は,フィッティングガイドでは第一選択は角膜曲率半径平均値より 0.3 m mスティープとなっているが,実際の処方傾向から考察してみると,移植片が抜糸済みか否かでかなり選択に違い(59)が出る.縫合糸がない移植片では平均して約 0.40 m mほどのスティープ選択となり,縫合糸が残存している症例では,現時点では平均化がむずかしくトライ&エラーでの選択が必要かと考える.またエッジクリアランスの評価には多少の慣れが必要だろうが,最適な周辺部のフィッテイングが選択できるように 5 段階のエッジリフト高を選択指定できることは有効な手段といえる.レンズ直径の標準規格は 10.4 m mであるが,経験値からみて約 6 割強は 10.0 m m以上のサイズ選択であった.処坂田実紀ワキタ眼科コンタクトレンズセミナー 監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純 私のコンタクトレンズ選択法304.ツꀀツꀀ ツꀀツꀀツꀀ ツꀀニチコン・ローズ K2TMツꀀツꀀ ツꀀPG 面 学部(BC)ベベルベベルリバース部リバース部図 1 リバースジオメトリックデザイン:内面形状イメージ(断面)表 1Rose K2TM PGレンズ受注規格ベースカーブ(BC)5.70 9.30 mm(0.1step)直径(DIA)標準 10.4 mm(9.4 11.0 mm)度数(power)+5.00ツꀀ 25.00 Dエッジリフト5 段階選択可0.50-0.5-0.1-1.5-2.0-2.0-1.5-1.0-0.500.5log(Rose KTM PG視力)log(以前使用CL視力)(n=33)図 2 Rose K2TM PGレンズ対数視力vs以前使用CL対数視力t 検定の結果:危険率 p=0.0004,統計学的に有意差あり.———————————————————————- Page 21358あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(00)方後の視力は,以前使用していた CL と比較しても良好な結果を示した(図2).文献 1) Gruenauer-Kloevekorn C, Kloevekorn-Fischer U, Duncker GI:Contactツꀀ lensesツꀀ andツꀀ specialツꀀ backツꀀ surfaceツꀀ designツꀀ after penetrating keratoplasty to improve contact lensツꀀ t and visual outcome. Br J Ophthalmol 89:1601-1608, 2005 2) 柳井亮二,植田喜一:特殊コンタクトレンズを用いたコンタクトレンズ処方.日コレ誌 48:240-245, 2006症例1:2006/12 全層角膜移植前 C L(左):ピギーバック法(RGPCL+SCL)矯正視力 0.9後 C L(右):Rose K2TM PG8.40/+1.5D/10.4 mm矯正視力 1.0症例2:2006/9 深層角膜移植前 C L(左):非球面 RGPCL矯正視力 0.8後 C L(右):Rose K2TM PG7.90/ 3.75D/10.4 mm矯正視力 1.0症例3:1999/9 全層角膜移植前 C L(左):Rose KTM矯正視力 0.3後 C L(右):Rose K2TM PG600/ 16.5D/9.6 mm矯正視力 0.7

写真:生体共焦点顕微鏡を用いた前眼部観察:マイボーム腺

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,200913550910-1810/09/\100/頁/JCOPY(57)写真セミナー 監修/島﨑潤横井則彦305.ツꀀツꀀ ツꀀツꀀツꀀ ツꀀ生体共焦点顕微鏡を用いた前眼部観察:ツꀀツꀀ ツꀀマイボーム腺←ツꀀ 図 1マイボーム腺腺房像(37 歳,男性)腺房は密に配列され,外側は 1 列の高輝度陰影,内部は低輝度陰影を示す.本症例はマイボーム腺開口部にcapping が少量散在するが,分泌圧出試験は良好.図 3マイボーム腺機能不全症例の腺房像(70 歳,男性)腺房の拡張変化と思われる.腺小葉基底部付近は部分的に高輝度陰影がみられる.本症例はマイボーム腺開口部周囲の血管拡張,瞼縁の不整を認め,開口部の閉塞変化が強い.分泌物圧出試験1)は gradeツꀀ 3,BUT(涙液層破壊時間)は 1 秒と短縮している.①図 2図1のシェーマ①:マイボーム腺腺房.図 4 (重症)マイボーム腺機能不全症例の腺房像(67 歳,女性)図1,3と同様の観察深度でも腺房構造が不明瞭.点在する滴状の高輝度陰影は,変性萎縮した腺房と思われる.本症例のマイボーム腺開口部は閉塞変化が強く,分泌物圧出試験は grade 3.瞼縁は不整で,BUT は 4 秒と短縮し,図3症例と臨床像は類似するが,腺機能の低下は著しいことを示唆する.久保田久世東北大学大学院医学系研究科 神経・感覚器病態学講座・視覚科学分野———————————————————————- Page 21356あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(00)マイボーム腺は眼瞼後葉に存在する皮脂腺の一種で,中央に 1 個の導管があり,その周囲に円形の腺組織(腺房)が集合して配置しており,大小の小葉を形成している2).腺房の外側はやや好塩基性の細胞が一列に配列しており,内部は淡明で胞体を有する細胞が充満している.さらに分化した細胞は,中央で変性し脂質を導管へ排出する.マイボーム腺開口部から分泌される油脂は涙液油層を構成し,涙液の蒸発を防ぐとともに涙液層の安定性を高める働きをもつ.マイボーム腺機能不全は,分泌物に量的あるいは質的な異常を生じて蒸発亢進型ドライアイを生じる疾患であり,成因は不明であるが閉塞型では病理学的には導管上皮の角化異常をきたしていると考えられている3).マイボーム腺の機能評価としては,細隙灯顕微鏡での観察や分泌物圧出試験1),マイボメーター4)などが用いられており,マイボーム腺の組織構造を生体観察する方法としては,マイボグラフィ法と前述症例提示した,レーザー生体共焦点顕微鏡がある.近年マイボグラフィシステムの発展は目覚ましく,低侵襲でより鮮明な観察像が得られるようになった.しかし,マイボグラフィ法では腺小葉の形態としてとらえており,全体的な残存機能評価には有効であるが,腺房や導管内部レベルの解析は困難である.レーザー生体共焦点顕微鏡 Heidelbergツꀀ Retinaツꀀ Tomo-graph II は,元来視神経乳頭の三次元画像を取り込み,形態解析するための走査型顕微鏡検査であるが,2005年に Kobayashi らによってこれに角膜観察用アタッチメントを装着することにより,角膜の層別観察以外にもマイボーム腺構造も低侵襲的に,生体観察が可能であると報告された5).光源はダイオードレーザー 670 nm,ツꀀ デジタル解像度(X-Y 軸)384/384 pixels(1 μm/pixel),撮像範囲は 400×400 μm であり,検査法は点眼麻酔下で先端部光学レンズ部分(滅菌カバーあり)を眼瞼結膜面に接触させ観察する.焦点深度は 50 105 μm で,マイボーム腺構造として導管・腺房・間質の描出,炎症性細胞浸潤についての観察が可能である.近年マイボーム腺機能不全症例では,健常者と比べ有意に腺房の密度低下と腺房径拡大がみられることが報告されており6),前述の図1,3,4の比較にても同様の結果であった.この検査によって組織障害の重症度と腺機能の予備能が評価できる.今後さらなる臨床研究によって,マイボーム腺のより詳細な組織障害の変化,また治療前後の評価についてもリアルタイムにとらえることができる可能性があり,今後の発展が期待できる.文献 1) Shimazaki J, Goto E, Tsubota K et al:Meibomian gland dysfunction in patients with Sjogren syndrome. Ophthal-mology 105:1485-1488, 1998 2) 加瀬諭,小幡博人,林暢紹ほか:眼瞼部眼瞼後葉.眼科プラクティス 8,いますぐ役立つ眼病理(石橋達朗ほか編),p38-55,文光堂, 2006 3) Obata H:Anatomy and histopathology of human meibo-mian gland. Cornea 21:S70-74, 2002 4) Komoro A, Yokoi N, Kinoshita S et al:Assessment of meibomian gland function by a newly-developed laser meibometer. Adv Exp Med Biol 506:517-520, 2002 5) Kobayashi A, Yoshita T, Sugiyama K:In vivoツꀀ ndings of theツꀀ bulbar/palpebralツꀀ conjunctivaツꀀ andツꀀ presumedツꀀ meibomi-anツꀀ glandsツꀀ byツꀀ laserツꀀ scanningツꀀ confocalツꀀ microscopy.ツꀀ Cornea 24:985-988, 2005 6) Matsumoto Y, Sato EA, Tsubota K et al:The application ofツꀀ inツꀀ vivoツꀀ laserツꀀ confocalツꀀ microscopyツꀀ toツꀀ theツꀀ diagnosisツꀀ and evaluationツꀀ ofツꀀ meibomianツꀀ glandツꀀ dysfunction.ツꀀ Molツꀀ Vis 14:1263-1271, 2008

実験的自己免疫性視神経炎

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———————————————————————- Page 11350あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(00)より確立されてきた5).EAE は,病的 T 細胞が主体となった中枢神経系自己免疫病とも定義づけることができる.これは,抗原となる脳脊髄蛋白の MBP や proteolipidツꀀ protein(PLP)を免疫した後に,所属リンパ節や脾細胞から T 細胞を回収して正常の同系マウスに投与すると,EAE が発症するためである.EAE の病態解明および治療の歴史は長く,インターフェロン(IFN)-b療法をはじめとしてかなりの数に及ぶ免疫制御療法が開発され,MS の治療に応用されてきた.II実験的自己免疫性脳脊髄炎の一分症 としての実験的視神経炎 1990 年代になって,EAE の作製過程で,脳脊髄中の蛋白である PLP をマウスに免疫することにより,約 17日目に視神経炎をひき起こすことが報告された6).ヒトMS と同様に,齧歯類でも脳脊髄炎と一緒に視神経炎が発症することが証明されたのである.組織病理所見では,視神経に好中球と単核球が浸潤しており,脱髄を伴うヒト視神経炎併発型 MS の視神経炎所見と類似していた6).マウス視神経炎の発症と相関して,血清中マウス抗体価が上昇していることから,液性免疫である B 細胞系も関与していることがうかがえる.一方 PLP と同様,脳脊髄中の蛋白である myelinツꀀ oli-godendrocyte glycoprotein(MOG)を BN ラットに免疫すると,脳脊髄炎のほかに 3 週間以内に 90%で視神経はじめに日本をはじめとするアジア諸国の多発性硬化症では,視神経炎と脊髄炎をきたすタイプが多く,このタイプは視神経脊髄炎型多発性硬化症(optic-spinal multiple sclerosis:OSMS)ともよばれている.また欧米では,OSMS の概念とまたがるような形で Devic 病,またはneuromyelitis optica(NMO)ともよばれている1).近年,NMO 患者から特異抗体である NMO-IgG が発見され,そのリガンドである抗原としてアクアポリン 4(AQP4)が同定された2,3).抗 AQP4 抗体陽性視神経炎は,重症化しやすく,通常の視神経炎に比べてステロイド大量療法に抵抗性である4).このように,臨床において重要な疾患の病態を解析し,新しい治療法を考案することは非常に重要である.そこで本稿では,現在まで作製されてきた実験的視神経炎を振り返ってみるのと同時に,臨床との類似点,相違点について論じていきたいと思う.I多発性硬化症と実験的自己免疫性脳脊髄炎多発性硬化症(multipleツꀀ sclerosis:MS)は自己免疫病の一種であり,その原因抗原は myelin basic protein(MBP)をはじめとする脳脊髄蛋白であることが知られている.MS は難治性であり,眼科領域では視神経炎も併発するため,MS の病態の解明および治療法の確立に動物モデルは欠かせない.実際 MS の動物モデルは,実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis:EAE,用語解説に示す)として以前*Takeshi Kezuka:東京医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕毛塚剛司:〒160-0023 東京都新宿区西新宿 6-7-1東京医科大学眼科学教室実験的自己免疫性視神経炎Experimental Autoimmune Optic Neuritis毛塚剛司*特集●多発性硬化症・視神経脊髄炎と抗アクアポリン4抗体 あたらしい眼科 26(10):1350 1354,20090910-1810/09/\100/頁/JCOPY1350ツꀀ (52)———————————————————————- Page 2あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091351(53)しているため,MOG の免疫反応性は他の脳神経蛋白に比べて高いのかもしれない.これらのことより,MOGは,乏突起膠細胞のマーカーとなっており,脊髄に多いのも特徴の一つである.MOG の特徴を表 1 に示す.IV実験的視神経炎とヒト視神経脊髄炎 との相違マウス視神経炎をひき起こす原因抗原には,現在のところ AQP4 は含まれていない.ヒト NMO と非常によく似た病理形態を示す視神経炎を併発する EAE は MOGによるものである.神経内科領域では,脊髄で星状膠細胞(astrocyte)上に発現する AQP4 が標的になり星状膠細胞が死滅すると考えられている4,12,13).MOG は先ほど述べたように乏突起膠細胞上に発現しており,MOG をマウスに免疫することにより免疫学的機序から MOG を含有する乏突起膠細胞が壊され,炎症をひき起こすと考えられる.MOG 免疫によるマウス視神経炎は,視神経から視交叉に病変がわたるように,抗 AQP4 抗体陽性視神経炎との相関性が高い9).おそらく抗 AQP4 抗体陽性視神経炎では,星状膠細胞が抗 AQP4 抗体によりダメージを受けるのと同時に乏突起膠細胞もダメージを受け,MOG 抗原が視神経内に散布されると思われる.散布された MOG 抗原は,マクロファージによって貪食され,マクロファージ上で抗原提示を行い,T 細胞に抗原特異的な反応を起こさせることが予想される.一方,AQP4 が直接視神経を攻撃して炎症を起こさせるエビデンスはまだ証明されていない.Vマウス視神経炎がひき起こされる メカニズム マウス視神経炎では,発症メカニズムが完全に解明されているわけではない.現在まで支持されている学説を述べるに留めたい.EAE では病的 T 細胞が発症のトリガーになっていると述べたが,MOG 抗原ペプチドを認識する T 細胞受容体を遺伝子導入したマウスでは,視神経炎の自然発症率が 6%程度であった14).一方,B 細胞と深い関係にある Igツꀀ heavyツꀀ chain(IgH)を遺伝子導入したマウスに先ほどの遺伝子導入マウスと交雑したモデルでは,視神経炎の自然発症率が 60%近くに上昇し炎をひき起こすことが証明された7).同様にマウスにおいても MOG 抗原の部分ペプチドを免疫することにより視神経炎が発症し,その発症は EAE より早期に起こることが報告された8).MOG によるマウス EAE は,脳実質より脊髄,視神経および視交叉に多く炎症が起こり,ヒト NMO とよく似た病変部位となる8).マウス視神経炎は,ルクソール髄鞘染色を行うと,視神経の病変部位に沿って染色されない部位が認められる.実験的視神経炎の発症には,視神経炎マウスから得られた病的 T 細胞を注入することにより正常マウスに移入,つまり発症させることができる8).しかし,マウス視神経炎は,完全に T 細胞が発症のきっかけである可能性が高いが,発症そのものは B 細胞系,つまり液性因子が重要な役割を占めていると考えられている.T 細胞と B 細胞との関係,視神経炎の惹起抗原に対しては,つぎの項目で詳しく述べる.III実験的視神経炎を惹起する自己抗原炎症を起こすために中枢神経系で重要とされる蛋白自己抗原は,MBP,PLP,MOG などである9).中枢神経系のミエリン蛋白中の MBP の占める割合はおおよそ30%くらいで,PLP は 50%前後である10).MOG は,乏突起膠細胞(oligodendrocyte)やミエリン鞘の外表面に存在する.MOG の含有量は大変少なく,中枢神経系のミエリン蛋白中の 0.05%にしかすぎない10).この3つの蛋白抗原の免疫的重要性を確認するために MS 患者の末梢血を用いて解析を行った研究がある11).これによると,MS 患者の末梢血由来単核球の免疫反応性は,MBPに対しては 24 人中 5 人,PLP に対しては 24 人中 2 人,MOG に対しては 24 人中 12 人と MOG がとりわけ高率であった11).MBP や PLP は,ミエリン鞘にある内在性蛋白である一方,MOG は乏突起膠細胞の外表面に存在表 1実験的視神経炎を惹起するMOG蛋白の生化学的特徴・末梢神経系ではみられず,中枢神経系のみでみられる・ミエリン生成物の 0.05%にすぎない・ミエリン鞘と乏突起膠細胞表面にみられる・乏突起膠細胞の表面マーカーである・強い免疫原性をもつ———————————————————————- Page 31352あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(54)おける視神経炎の病理組織を図 1,2 に示す.視神経炎を高発症させたマウスから採取した脾細胞を培養し,その上清中のサイトカインを検索したところ,IL-17 が高値を示し,IFN-gもやや上昇していた.その一方,抑制性サイトカインとされる IL-10 の産生はあまり認められなかったことを確認している17).VI実験的視神経炎を用いた先進的治療近年では,難治性視神経炎のメカニズムの解析も行わた15).このことから,マウス視神経炎の発症には T 細胞だけではなく,B 細胞も重要な役割を担っているといえる.B 細胞は,活性化されプラズマ細胞となると抗体を産生するため,抗 MOG 抗体の存在も病態形成には欠かせない存在であると思われる.実際,抗 MOG 抗体そのものでも中枢神経系に直接作用させれば,ラットEAE を惹起することができるという報告もなされている9).T 細胞と B 細胞が協調し合うという視神経炎の動物モデルについては,他施設からも同様の報告がなされている.Oligodendrocyte 特異的蛋白(oligodendrocyte-speci cツꀀ protein:OSP)は中枢神経系のミエリン鞘に存在する蛋白質であるが,これをマウスに免疫することにより,視神経炎を併発した脳脊髄炎をひき起こすことがで きる16).OSP由来ペプチドであるOSP55-80とOSP179-207 が CD4 陽性 T 細胞を介した病変をひき起こす抗原部位であり,OSP に誘導された抗体の多くがOSP22-46 に対するものであることが証明されてい る16).実験的視神経炎は,病的細胞からのサイトカイン産生による分類でも解析が進められている.Bettelli らはインターロイキン(IL)-17 および IFN-g産生CD4陽性T細胞が発症に関わっていると述べている15).IL-17 を産生する Th17 細胞は,EAE や Behcet 病などのぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(experimentalツꀀ autoimmuneツꀀ uveoretinitis)の発症に深く関与する Th1 細胞や,アレルギー疾患に深く関与する Th2 細胞とも異なる性質をもっており,自己免疫疾患の発症に重要なサイトカインと考えられている.今まで知られてきたTh1-Th2バランス理論ではなく,Th17 という新しく発見されたメカニズムが働き,T 細胞と IgH 産生に関与する B 細胞と中枢神経病変を生じる抗原が相互に作用して,マウス脳脊髄炎および視神経炎を形成し,ヒト MNO のモデルとなりうると考えられている.筆者らも高発症モデルとして,マウスに MOG ペプチドを免疫する際に dimethyl sulfoxide(DMSO)を混和させることによって,視神経炎の発症率を 80 90%まで引き上げることを報告している17).この動物モデルに図 1マウス正常眼の組織所見視神経には炎症細胞はない.図 2 MOGペプチドを強化免疫したマウス視神経の病理組織所見 視神経に強い細胞浸潤を認める.網膜に細胞浸潤はない.———————————————————————- Page 4あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091353(55)神経炎の治療戦略ははじまったばかりで,超えなければならないハードルもいくつかある.それは,免疫抑制物質や免疫調節細胞による制御は,抗 AQP4 抗体陽性視神経炎の特徴でもある T 細胞と B 細胞のどちらも行わなければならないのである.言い換えれば,細胞性免疫だけではなく,液性免疫も制御しなければならないことになる.現在臨床で行われている抗 AQP4 抗体陽性視神経炎の治療は,ステロイド大量点滴療法で T 細胞とB 細胞を抑制させる一方,産生されてしまった AQP4抗体自体を血漿交換療法で除去しており,理にかなった方法ともいえる.しかし,この方法は疾患特異的ではなく,より患者に負担をかけない免疫治療の開発が望まれている.おわりに抗 AQP4 抗体陽性視神経炎に代表される難治性視神経炎の発症メカニズム解析は,臨床的にも,動物を用いた実験モデルでもここ数年で多くの進歩を遂げている.いくつかの研究成果は,ヒト視神経炎のさらなる病態解析および治療に応用可能なレベルにまで達しつつある.動物モデルを用いて難治性視神経炎の細胞治療や遺伝子治療,生物製剤などの先進的な治療がうまく行えるようになれば,ヒト視神経炎においても急激な発症から短期間で失明させてしまうことが回避できるようになるかもしれない.現在行われているステロイド大量療法と血漿交換療法に代わる,患者にとってやさしい治療の開発のために,実験的視神経炎が研究室レベルからベッドサイドへと応用されることを期待したい.れ,治療への応用レベルにまで到達しつつある.当然のことながら,治療の開発研究には動物モデルが必須であり,現に視神経炎の動物モデルを用いて遺伝子治療を行う試みもなされている.Guy ら18,19)は,抗酸化作用をもつヒトカタラーゼ遺伝子含有アデノウイルスベクターをマウスの眼内に注入することにより,マウス視神経炎併発脳脊髄炎を抑制することに成功している.さらに,カタラーゼとともに,extracellular superoxide dismutase(ECSOD)の両遺伝子を導入したアデノウイルスベクターを眼内注入した群では 72%で脱髄化が抑制されたと報告されている20,21).抗酸化作用を有する SOD2 による遺伝子治療により,ミトコンドリア関連酸化ストレスを抑え,マウス視神経脳脊髄炎モデルを寛解させたという報告もみられる22).筆 者 ら も ACAID(anteriorツꀀ chamber-associated immuneツꀀ deviation;前房関連免疫偏位)という免疫制御システムを用いて視神経炎が抑制可能か否か検討している23).眼内には,ACAID という特異な免疫制御機構が存在し,眼内を免疫寛容の状態に保っている24).元から存在する眼内免疫制御機構をうまく応用して治療を試みようという取り組みである.マウス視神経炎の発症には,先ほど述べた MOG ペプチド免疫の際に DMSO を混和させ,マウス視神経炎の発症率が 80 90%まで上昇することを確認した23).前房内に MOG ペプチドを注入し,1 週間経過後に MOG ペプチドの強化免疫を行い,2 週間後に耳介内に MOG ペプチドを注入して遅延型過敏反応を測定した.すると MOG ペプチドに対する遅延型過敏反応が抑制され,ACAID が成立した.同時に視神経の状態を病理組織学的に検討したところ,陽性対照群が 100%視神経炎を生じていたのに対し,前房注入群では陽性対照群と比較して有意に抑制されていた.眼内免 疫 制 御 シ ス テ ム は,transforming growth factor(TGF)-bや神経ペプチドなどの免疫抑制物質が重要な役割を演じており,神経ペプチドの一種である CGRPを抗原提示細胞であるマクロファージや樹状細胞に作用させることにより免疫制御細胞を作製することができる.筆者らは,CGRP を作用させた免疫制御細胞を用いてマウス実験的視神経炎を軽減させる試みを行い,一定の効果を上げることができた25).しかし,まだ実験的視 語解説実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE):多発性硬化症(MS)の動物モデルとして開発された.脳脊髄蛋白であるmyelinツꀀ basicツꀀ protein(MBP),proteolipidツꀀ protein(PLP),myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)などを足蹠にアジュバントとともに免疫することにより,MS と同様に歩行困難になり,重症の場合には死に至る.———————————————————————- Page 51354あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(56)expression in periventricular organs. Neuroscience 94:239-250, 1999 14) Bettelliツꀀ E,ツꀀ Paganyツꀀ M,ツꀀ Weinerツꀀ HLツꀀ etツꀀ al:Myelinツꀀ oligoden-drocyte glycoprotein-speci c T cell receptor transgenic mice develop spontaneous autoimmune optic neuritis. J Exp Med 197:1073-1081, 2003 15) Bettelli E, Baeten D, Jager A et al:Myelin oligodendro-cyte glycoprotein-speci c T and B cells cooperate to induce a Devic-like disease in mice. J Clin Invest 116:2393-2402, 2006 16) Kaushansky N, Zhong MC, Rosho NK et al:Epitope speci city of autoreactive T and B cells associated with experimental autoimmune encephalomyelitis and optic neuritis induced by oligodendrocyte-speci c protein in SJL/J mice. J Immunol 177:7364-7376, 2006 17) 毛塚剛司,松永芳径,臼井嘉彦ほか:実験的自己免疫性視神経炎モデルの開発.第 46 回日本神経眼科学会総会,新潟,2008 18) Guy J, Qi X, Hauswirth WW:Adeno-associated viral-mediatedツꀀ catalaseツꀀ expressionツꀀ suppressesツꀀ opticツꀀ neuritisツꀀ in experimental allergic encephalomyelitis. 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