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眼科専門医志向者“初心”表明

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089890910-1810/08/\100/頁/JCLS「眼科?眼科には進まないな,まずあり得ない.」これはポリクリで眼科をローテートしたときに,医学部6年生の私自身が口にした言葉です.当時の眼科のイメージは,QOL(quolityoflife)重視の人が選ぶ科,女性が多い,手術は細かくてダイナミックさに欠ける,といったもので,自分が進む科という認識はゼロでした.そんな私が眼科医になる決意をした場所はブラジル・アマゾンでした.国際医学研究会という学生団体に所属していたおかげで,医学部6年生の夏にブラジルを中心とした南米に約2カ月間の医療研修に行かせてもらい,貴重な体験を数多くさせてもらいました.現地の原住民の村を訪ねたり,アマゾン川流域の無医村地域をまわる巡回診療船に同乗したりといった活動のなかで,私は現地の世話人のなかに眼科医がいるという単純な理由でアマゾン川流域の翼状片の罹患率調査を行いました.調査といってもアンケートと肉眼での簡単な診察を行うだけのものでしたが,そのなかで一番驚いたのは,行く先々の村で眼科医が来たという噂を聞きつけてたくさんの村人が相談のために集まり,行列ができたことです.相談の内容は多岐にわたり,「眼が外を向いているのが気になっているが手術で治せるか?」「小さいころから片眼が見えないのだが見えるようになるか?」「老眼鏡くれ!」「何でも良いから点眼薬よこせ!」などなど.当時,医者は人の生死に関わる職業であるから生死に関わらない科の医者の身分は低い,という偏見が私にはあり,無医村に眼科医が行っても役に立たないに違いないと確信していた私にとって,この体験は非常に新鮮でした.そのときの「見えるって意外と大事かも」という素直な感動が,進むはずのなかった眼科の道へと私を進ませることになったのでした.あれから4年の月日が経ち,今では患者さんの眼と向き合い続ける忙しい毎日ですが,ふとした瞬間に,アマゾンに行っていなかったら何科の医者になってたんだろうなあ,などと思ったりしています.◎今回は慶應義塾大学の伴先生にご登場いただきました.自分も小さな頃は医師といったら生死を左右する職業だと思っていたのですが,眼科に出会って眼科医でなくてはならないというspecialityの高さに惚れました!「見える」を左右する眼科医は本当に魅力的だと思います.(加藤)☆本シリーズ「“初心”表明」では,連載に登場してくださる眼科に熱い想いをもった研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生を募集します!宛先は≪あたらしい眼科≫「“初心”表明」として,下記のメールアドレスまで.追って詳細を連絡させていただきます.Email:hashi@medical-aoi.co.jp(85)眼科医向者“初心”表明●シリーズ⑦眼科医の原点はアマゾンにあり!伴紀充(NorimitsuBan)慶應義塾大学医学部眼科学教室平成17年3月慶應義塾大学医学部卒業.学生時代はアメリカンフットボールに打ち込んでおり,眼科は自分とは一生無縁な科だと思っていた.北海道北見赤十字病院で2年間の臨床研修の後,平成19年4月より現職.(伴)編集責任加藤浩晃・木下茂本シリーズでは研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生に『なぜ眼科を選んだか,将来どういう眼科医になりたいか』ということを「“初心”表明」していただきます.ベテランの先生方には「自分も昔そうだったな~」と昔を思い出してくださってもよし,「まだまだ甘ちゃんだな~」とボヤいてくださってもよし.同世代の先生達には,おもしろいやつ・ライバルの発見に使ってくださってもよし.連載7回目の今回はこの先生に登場していただきます!アマゾン川流域での眼科調査の様子

後期臨床研修医日記6.愛媛大学医学部眼科学教室

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089870910-1810/08/\100/頁/JCLSい症例を診る機会も多く,非常に勉強になります.夕方からはクリニカルカンファレンスがあり,入院患者さんから興味深い症例を選んでプレゼンテーションを行います.治療に難渋している症例などでは,各専門の先生からさまざまなアドバイスをいただける貴重な場となっています.(篠崎友治)水曜日水曜は手術日です.おもに自分の担当患者さんの手術助手を務めますが,後期研修医2年目からは,自分の外来にきた白内障や翼状片の患者さんの手術を行うこともあります.自分の手術がある日は,DVDや本で何度も復習して手術に臨みます.思い通りに上手くできず,悔しい思いをすることが多いですが,それでも最後まで完投すると嬉しくて,ついつい口元が緩んでしまいます.指導医の先生方は,あまりの危なっかしさに気が気でないと思いますが,それでも辛抱強く優しく教えてくださり,頭の下がる思いです.落ち込むことも多いですが,いつか自分でも納得のいく手術ができる日を目指して頑張っていきます.木曜日木曜は網膜外来の日です.患者さんの数も多く,眼底(83)愛媛大学医学部眼科学教室では,この4月に5人の後期研修医が入局し,現在8名の後期研修医が働いています.大橋裕一教授をはじめ,各専門分野の先生方から指導を受け,多忙ながらも充実した研修生活を送っています.今回はそんな私たちの1週間を紹介させていただきます.月曜日月曜は手術日ですが,私は午前中外来で診療をしています.後期研修医2年目から週1回自分の外来をもたせてもらっているからです.多くは専門性の低い疾患が回ってきますが,ときに診断に困ることもあり,隣で診察している上級医の先生に助けを求めつつ,外来をこなしていきます.外来患者さんが多い日は午後にずれ込んでしまい,慌てて午後からの自分の担当患者さんの手術助手に入ることも度々です.夕方には各専門グループごとに病棟で回診を行い,治療方針を決定していきます.1日のスケジュールが終了したかと思うと,実は水曜日手術予定の患者さん達が入院してきているのに,まだ何も検査しておらず….患者さんと暗い消灯後の外来に降りて行き,検査をして,やっと1日が終了したこともありました.火曜日火曜は大橋教授を中心とした角膜外来の日です.まず午前8時よりearlybirdと名づけられた角膜の勉強会で1日が始まります.ここでは角膜の症例が提示されたり,抄読会や大学院生の先生が研究内容を発表したりします.聞きなれない用語や,むずかしい内容に眠気を誘われながら,必死に頭を働かせます.それが終わると,つぎは外来がスタートします.当院は角膜を専門とする先生が多く,8診を使っての外来となります.私は診察の横に付いて勉強したり,検査や問診などを行っています.特に教授の外来では,他院から紹介されてきた珍し後期臨床研修医日記●シリーズ⑥愛媛大学医学部眼科学教室篠崎友治坂根由梨野田恵理子▲病棟にて(向かって左から篠崎・坂根・野田)———————————————————————-Page2988あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008(84)り,術者の先生とムンテラを行ったりします.いかにわかりやすく患者さんに説明するかなど学べて,非常に参考になります.土・日曜日休日は後期研修医,前期研修医各1人ずつが当番でローテーションを組み,その日のオンコールの上級医と計3人で病棟患者の回診を行います.自分の担当以外の患者さんを診察したり,平日は慌ただしく聞きのがしたことを遠慮なく聞くチャンスでもあり,和気藹々としています.休日連絡のあった緊急入院や時間外外来については,上級医とともに対応します.外傷,網膜離など,さまざまな眼科救急の診療を学び,実践します.手術になる症例では,直介として手術に参加することで,手術操作の流れを再確認し,大変勉強になります.土曜日は,月1回関連病院で外来を行うこともあります.眼科診療には,所見をいかに見逃さないか,変化を読み取るかというように,自分の眼が頼りです.明日からの仕事に備えて,日曜日の夜は眼をしっかり休めるようにしています.(野田恵理子)写真や蛍光眼底撮影などの検査も多いため,非常に忙しい日となっています.しかし,ほとんどの患者さんが散瞳しているため,眼底の診察を練習するチャンスが多い日でもあります.眼底写真やOCT(光干渉断層計)を撮影しながら,自分なりに診断や所見を考えていくと良い勉強になります.夕方近くなって,ようやく休憩できると思ったら,月曜日と同じく,各専門グループの回診が始まります.終了後は医局でカンファレンスがあり,月に数回眼底写真を見ながら網膜疾患の勉強会を行ったり,緑内障の勉強会を行ったりしています.(坂根由梨)金曜日金曜は午前8時30分より総回診があります.回診に間に合うよう,自分の担当患者さんの診察を済ませ,プレゼンテーションに臨みます.なお,興味深い症例,治療に苦慮している症例については,次週のカンファランスで発表します.回診終了後は,外来で検査や診察に付きます.午後からは,次週の手術予定患者の入院日でもあるため,おもに入院した患者さんの術前検査を行った?プロフィール(50音順)?坂根由梨(さかねゆり)平成16年愛媛大学医学部卒業,愛媛県立中央病院と愛媛大学付属病院にて初期臨床研修,平成18年4月より愛媛大学医学部眼科学教室前期専攻医.篠崎友治(しのざきともはる)平成16年杏林大学医学部卒業,愛媛大学付属病院と愛媛県立中央病院にて初期臨床研修,平成18年4月より愛媛大学医学部眼科学教室前期専攻医.野田恵理子(のだえりこ)平成17年浜松医科大学卒業,愛媛大学付属病院にて初期臨床研修,平成19年4月より愛媛大学医学部眼科学教室前期専攻医.指導医からのメッセージ後期研修医の先生たちは,すでに2年間各科で研修を積んでおり,患者さんへの応対などは安心して見ていられます.ただ眼科研修の開始段階で,眼科経験がほとんどゼロの人から最長6カ月のプレ研修を終えている人まで多少レベルに違いがあります.(これは,研修医自身の問題ではなく現在の制度の問題であることは言うまでもありません.)日記のなかにも書かれていますが,眼科は「自分の目で見てナンボ」の世界で,スリットなどで所見をとることができるか否かは重要な問題です.一例一例をしっかり診ることで,診察技術はみるみるアップし,研修初期のわずかなレベルの差などまったく問題になりません.臨床や学会発表にどっぷりの研修医生活ですが,まさに「鉄は熱いうちに打て」です.いろいろな先輩に打たれながら,一流の眼科医へと逞しく成長していってください.愛媛大学医学部眼科学教室・医局長山口昌彦▲今年は5名が入局しました

硝子体手術のワンポイントアドバイス62.高度の網膜壊死をきたした桐沢型ぶどう膜炎に対する硝子体手術(上級編)

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089850910-1810/08/\100/頁/JCLSはじめに桐沢型ぶどう膜炎は急性網膜壊死ともよばれ,網膜血管閉塞,滲出斑,網膜壊死,硝子体混濁,網膜離を特徴的な臨床所見とし,単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で生じる.治療としては,アシクロビルの静脈内注射や眼内注入などの薬物療法に加えて,硝子体混濁および網膜離に対する硝子体手術がある.最近は網膜離発症前あるいは発症後早期に硝子体手術を施行し良好な手術成績を得たとする報告が多いが,高度の網膜壊死をきたし,網膜全離や増殖硝子体網膜症に至った症例の手術成績は依然不良である1).高度の網膜壊死をきたした桐沢型ぶどう膜炎に対する硝子体手術桐沢型ぶどう膜炎の進行例では,いわゆるぼろ雑巾様の多発裂孔を伴う網膜全離に至ることが多い(図1a,b).本疾患では周辺の網膜壊死部の網膜硝子体癒着が(81)非常に強固なので人工的後部硝子体離作製時には,双手法が必要となる.筆者はシャンデリア照明あるいは顕微鏡同軸照明下で助手に強膜を圧迫させ,可能な限り人工的後部硝子体離作製を行った後,気圧伸展網膜復位術,眼内光凝固(あるいは経強膜冷凍凝固),周辺部輪状締結術,シリコーンオイルタンポナーデを行っている.周辺部に多量の硝子体が残存すると,それが基盤となって著明な前部増殖組織を形成し,房水産生低下をきたすので,可能な限り周辺部硝子体を切除するようにしている.タンポナーデ物質としては,ガスでも可能だが,術後に炎症が遷延して増殖性変化を惹起することが多い(図2a,b)ので,シリコーンオイルのほうが有用と考えている.期診断の重要性桐沢型ぶどう膜炎は,特徴的な臨床所見や前房水のpolymerasechainreaction(PCR)などで早期診断は比較的容易であるが,原因不明のぶどう膜炎と診断され,ステロイドを漫然と長期間投与され,高度の網膜壊死を伴う重症の網膜離に進行してしまう症例が,現実に存在する.本疾患に対する早期診断の重要性を最後に強調したい.文献1)水谷泰之,今村裕,南政宏ほか:高度な網膜壊死をきたした桐沢型ブドウ膜炎に対して硝子体手術を施行した1例.眼紀54:440-443,2003硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載62高度の網膜壊死をきたした桐沢型ぶどう膜炎に対する硝子体手術(上級編)池田恒彦大阪医科大学眼科aa1高度の網膜壊死をきたした桐沢型ぶどう膜炎の眼底写真a:後極部.網膜全離を認める.b:周辺部.ぼろ雑巾様の多発裂孔を認める.図2術後の眼底写真a:後極部.ガスタンポナーデで網膜を復位させたが,術後炎症が遷延し,黄斑上膜をきたした.b:周辺部.網膜壊死部に冷凍凝固と輪状締結を施行した.

眼科医のための先端医療91.感染症の新たな診断法の展開-PCR(Polymerase Chain Reaction)を用いた迅速診断-

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089830910-1810/08/\100/頁/JCLSはじめに眼感染症,特に細菌性眼感染症は他の臓器の感染症とは異なり,検体量の少なさから塗抹や培養での菌の検出が困難である場合が多いといえます.陽性率は各施設や検査機関によっても異なるため,同じ感染症であっても菌が判明する場合と判明しない場合に分けられてしまいます.すなわち,取り扱いも含め,菌の判別に経験を必要とします.そのなかでも特に検体量が少なく,迅速に菌を特定しなくてはいけない眼感染症に感染性眼内炎があげられます.前房水や硝子体からの培養陽性率が低い点,塗抹標本を判定することが困難である点から,治療を開始したくても的確な抗生物質を利用することができません.菌による毒素とその炎症によって網膜が短時間で著しく破壊されるため,いかに菌の曝露を最小限にとどめるかが予後を良くするための問題点です.これら感染症を専門としている眼科医以外は診察での経験数も限られているため診断・治療に苦慮する可能性があり,治療開始が遅れると失明の危険性が高い疾患です.山形県における眼内炎の現状本眼で)ししたでに山形病にた感染性眼内炎は眼原お感染に内性性後性感染性にし性症での原後後とでののにい検したとは体でで性はんでした病有病は体ででしたでのは内性で診でででのにるでした感染性診でとにした内性で後でた症ではに検出いした後ででたは内性で性で後性で感染性ででしたとし内性眼内炎にし後性眼内炎後はでたとにいとの診いとに後なるのではないといのな状においのために迅速なの検出でるとはでなにたのでるとでなでのの検出はにと現状ではにはるためににないは本眼た眼内炎ロ)にじにたおに用いるはマイでのでしいるとはとんな本でとるの出たとし検体のな診の性めいのをめるとでんたの出るではをしなでをるととん性でたとはにでをとになのになしとなん新しい検査法()はなにたるる診断に用い感染性眼内炎においはでに性性をるのし)ししはクをいめるのでのにるのでしたたにに用いるでおんでした内ではに)にとマイクロアレイを用いた病原体検出い(図1).これはガラス基盤上に固定化された多種類のDNAプローブに対して,蛍光標識させた検体DNAを反応させ得られた画像を自動検出器で取り込んで解析処理するものであり,一度に眼感染症に特徴的な菌をターゲットとして多種の病原体遺伝子を網羅的に調べることができます.しかも,比較的短時間(6~8時間)で菌のスクリーニングができます.菌の検出が困難である症例や,混合感染を起こしている症例に対して,(79)◆シリーズ第91回◆眼科医のための先端医療=坂本泰二山下英俊田邉智子(山形大学医学部情報構造統御学講座視覚病態学分野)感染症の新たな診断法の展開─PCR(PolymeraseChainReaction)を用いた迅速診断─———————————————————————-Page2984あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008この検査法は画期的であり,診断の補助につながります.ただし,感度が高い点と,定量ができないため,起因菌であるか否かの判断は臨床所見と,従来の塗抹・培養を平行させ考えていく必要があります.眼内炎におけるPCRの有効性と今後の展望眼内はといるためのないは眼内炎におい検出たでる性にの眼内炎におい用たになをるとになるとを用し検査においにる開に用いでののる性る症る性めい文献1)田邉智子,山本禎子,上領勝ほか:感染性眼内炎の予後に関しての検討.第60回日本臨床眼科学会抄録,p103,20062)薄井紀夫:初期治療プロトコール白内障術後急性細菌性眼内炎─初期治療プロトコール─抜粋.眼科プラクティス1,術後眼内炎,p29-33,文光堂,20053)PeymanGA,LeePJ,SealDV:Moleculardiagnosisofendophthalmitis:EndophthalmitisDiagnosisandManage-ment.p47-66,Taylor&Francis,LondonandNewYork,20044)鈴木崇,井上幸次:DNAマイクロアレイによる感染症診断.あたらしい眼科21:1499-1500,20045)鈴木崇:遺伝子医学を日常診療へ─遺伝子学的アプローチを用いた眼感染症診断.日本の眼科77:147-148,2004(80)感染症の新たな診断法の開─PCR(PolymeraseChainReaction)を用いた迅速診断─」を読んで■のは感染症とのいのといは有で新をたは感染症でたとはいたにるロのなはのをめしたしのをしししたとは文にのるはじでしになると状状のたのなののにの感染症はしたのではのは感染症はしといをいししではんに感染性眼内炎でといをるとは感染症にしいになのとはいになのでるし感染症とのいは今後でと感のなにるにはでるけになを田智子本文でいるに感染性眼内炎にしたとし現の法ではに炎をでんのためをにしいのをしをいクをを用いるいししの法では性をに出といいな用ので感染症とのいといはしん今たを用いたマイクロアレイ法は感染性眼内炎の炎を迅速にるとでの法はなを迅速にでるけでなをるとで性のを感染症のでるので感染症とのいといなめいるとい眼坂本泰二1:一つのPCR反応に複数のプライマー対を同時に使用し複数の遺伝子領域を同時にする.同時検出による迅速性なうえになンプルの有利用ができる.2:平上に多種類のDNA断を高度であらかじめスットしておき,発現している全遺伝子を蛍光標識した後に反応させる.3:反応したDNAの種類とその蛍光強度の強によって細胞内遺伝子の発現状況を調べる.検体採取DNA抽出MultiplexPCRDNAマイクロアレイ自動検出器解析??菌DNA増幅※1※2※3図1MultiplexPCRとDNAマイクロアレイを用いた病原体検出(文献4,5より改変)

サプリメントサイエンス:AREDS解説

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089810910-1810/08/\100/頁/JCLS近年,滲出型加齢黄斑変性(wetage-relatedmacu-lardegeneration:wetAMD)に対する治療法として光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)や,脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)を成長させる血管内皮増殖因子(vascularendo-thelialgrowthfactor:VEGF)を阻害する抗VEGF療法が確立した.これらの治療を受けたAMD患者の視力予後は確かに自然経過に比して良好である.しかし,重度の障害を受けた網膜神経細胞の機能回復は困難であることから,より良い視機能の確保を目指して早期の介入による発症予防にも関心が集まっている.AMDの危険因子として年齢,性別(女性,ただし日本では男性),人種(白人),喫煙,肥満(bodymassindex:BMI高値),高脂肪食,遺伝子多型(APOE,CFH,CFB,C2,ABCA4,ABCE),抗酸化物質摂取不良,光曝露があげられる.このなかでも年齢と喫煙は多数の疫学調査からAMDとの関連が最も強い因子として認められている.また,食事との関連は,サプリメントを用いたAMDの発症コントロールを考えるうえで重要な情報である.AMDと酸化ストレス抗酸化サプリメントによるAMD発症の抑制が論じられるようになったのは,網膜が活性酸素により傷害を受けやすい状態にあることがわかってきたことも背景の一つである.網膜は光刺激につねに曝されており,酸素と光が同時に存在することで活性酸素の産生が促進されている.このメカニズムとして近年ではA2Eとよばれる蛍光物質の関与が示唆されている.A2Eは,網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)の加齢変化として注目されているリポフスチンの主要な構成成分である.視細胞外節に存在する視物質ロドプシンは光を吸収するとオプシンとall-trans-レチナールに分解される.RPE細胞はall-trans-レチナールが含まれる脱落した視細胞外節を貪食し,ロドプシンの構成成分である11-cis-レチナールを再生する.この生理的なロドプシンの代謝は視サイクル(visualcycle)とよばれる.この過程でall-trans-レチナールとリン脂質が反応することによりA2Eが生合成される.加齢とともにRPEの機能が低下すると貪食した視細胞外節を消化しきれず残渣としてリポフスチンが蓄積する.リポフスチンの主成分A2Eは光刺激(特にエネルギーの高い青色光)依存性に高度に酸化され,多量の活性酸素を発生させると考えられている.AMDに対するサプリメントのエビデンス1.AREDS米国国立眼研究所(NationalEyeInstitute:NEI)主導で行われたAREDS(Age-RelatedEyeDiseaseStudy,19921998)は11施設で延べ3,640人を対象に調査が行われた1).年齢は5580歳で平均69歳であった.参加者は無作為に4つのグループに分けられた.1)抗酸化ビタミン(ビタミンC500mg,ビタミンE400IU,bカロテン15mg)2)亜鉛80mg3)抗酸化ビタミン+亜鉛4)プラセボ亜鉛投与群には銅欠乏性貧血を防ぐために銅2mgが加えられた.またAREDSが開始した2年後に,喫煙者のbカロテン摂取による肺癌のリスクが有意に上昇することが明らかになったため,AREDS参加者で抗酸化ビタミンが投与されていた人のうち喫煙者は治験中止となった.評価はおもに眼底写真と視力検査によって行われた.結果は検査眼に中型(63125μm),または大型(77)サプリメントサイエンスセミナー●連載②監修=坪田一男2.AREDS解説栗原俊英*1,3石田晋*2,3*1慶應義塾大学医学部眼科学教室*2同医学部稲井田記念抗加齢眼科学講座*3同総合医科学研究センター網膜細胞生物学研究室加齢黄斑変性の発症要因に酸化ストレスが関与することは,黄斑が光刺激に曝露されていることや食習慣との関連を調査した疫学研究から示唆されていた.AREDSでは,抗酸化ビタミンと微量ミネラルの摂取が加齢黄斑変性の発症リスクを低下させることが実証された.現在,黄斑色素ルテインとオメガ3不飽和脂肪酸の効果を検証するためAREDS2が進行中である.———————————————————————-Page2982あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008(125μm以上)のドルーゼンが存在するか,片眼にAMDが存在する場合に,検査眼のwetAMDへの進行率が抗酸化剤+亜鉛投与群でプラセボ群と比較して5年間で25%減少するというものであった(図1).2.AREDS2AREDSの良好な結果を受けてNEIはさらなる詳細な検討を開始した.AREDS2とよばれるこの新しいスタディは,黄斑に存在するカロテノイドであるルテイン/ゼアキサンチン,およびオメガ3多価不飽和脂肪酸(polyunsaturatedfattyacid:PUFA)であるドコサヘキサエン酸(docosahexsaenoicacid:DHA)/エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoicacid:EPA)のAMD進行に対する影響を検討するものである.AREDS2は約100施設で5580歳のAMD患者4,000人を募集し,つぎの4群に分けて解析する予定である.1)ルテイン/ゼアキサンチン(10mg/2mg)2)DHA/EPA(350mg/650mg)3)ルテイン/ゼアキサンチン+DHA/EPA4)プラセボルテインおよびその光学異性体ゼアキサンチンはカロテノイドとよばれる天然色素の一種である.カロテノイドは天然に存在する色素で,化学式C40H56の基本構造をもつ化合物の誘導体である.カロテノイドは二重結合(78)を多く含むため,一重項酸素を消去する能力が高い.炭素と水素のみで構成されるものをカロテン,それ以外をキサントフィルという.ルテインとゼアキサンチンはキサントフィルであり,ほうれん草やケールといった緑黄色野菜に多く含まれ,ヒト体内では合成できない.約40種類のヒト体内に存在するカロテノイドのうちルテインとゼアキサンチンのみが選択的に黄斑部に取り込まれる.「黄斑」たる所以である.一方,PUFAは化学構造に基づいてオメガ3系とオメガ6系のおもに2つのグループに分類され,これらは動物の体内で合成することができない.オメガ3という表記は,その脂肪酸の最初の二重結合炭素が分子のメチル末端から数えて3つ目であることを意味する.EPAとDHAは代表的なオメガ3PUFAであり,魚の脂肪に多く含まれる.黄斑色素ルテイン/ゼアキサンチンやオメガ3不飽和脂肪酸DHA/EPAがAREDS2のサプリメントとして使用される妥当性について,疫学的2)ならびに生物学的根拠3,4)が報告されているが,次号以降に掲載の各論の解説に譲る.おわりにサプリメントのAMDに対する効果は,その生物学的な背景から大規模な疫学調査に至るまで科学的に検証されつつある.AREDSの結果は,抗酸化ビタミンと微量ミネラルの組み合わせが有効であることを示す画期的なデータであったが,さらに,オメガ3PUFAやルテインについてAREDS2の調査結果が待たれるところである.文献1)AREDSResearchGroup:Arandomized,placebo-con-trolled,clinicaltrialofhigh-dosesupplementationwithvitaminsCandE,betacarotene,andzincforage-relatedmaculardegenerationandvisionloss:AREDSreportno.8.ArchOphthalmol119:1417-1436,20012)SeddonJM,AjaniUA,SperdutoRDetal:Dietarycarote-noids,vitaminsA,C,andE,andadvancedage-relatedmaculardegeneration.EyeDiseaseCase-ControlStudyGroup.JAMA272:1413-1420,19943)KotoT,NagaiN,MochimaruHetal:Eicosapentaenoicacidisanti-inammatoryinpreventingchoroidalneovas-cularizationinmice.InvestOphthalmolVisSci48:4328-4334,20074)Izumi-NagaiK,NagaiN,OhgamiKetal:Macularpig-mentluteinisantiinammatoryinpreventingchoroidalneovascularization.ArteriosclerThrombVascBiol27:2555-2562,20070.40.350.30.250.20.150.10.050etAMDへの進行率経過(年)WetAMDへの進行率234567:プラセボ:亜鉛:抗酸化ビタミン:抗酸化ビタミン+亜鉛経過(年)プラセボ抗酸化ビタミン亜鉛抗酸化ビタミン+亜鉛20.1420.1120.1060.09830.1970.1570.1490.13940.2310.1850.1770.16550.2780.2260.2160.20260.3110.2540.2430.22970.3570.2960.2840.287図1AREDSの結果5年間の抗酸化サプリメントの投与でwetAMDへの進行がプラセボ群27.8%に対し,抗酸化ビタミン+亜鉛投与群20.2%で,進行の危険率は25%減少した.(文献1より改変)

眼感染アレルギー:アトピー眼瞼炎の治療

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089790910-1810/08/\100/頁/JCLS顔面の皮膚は躯幹や四肢に比べて薄く,皮下組織を除いて<表皮・真皮>で約2.0mmである.眼瞼ではさらに薄く0.55mm程度であり,体で最も皮膚の薄い部位に属する.表皮が薄いことより外界からの刺激を受けやすく,アレルゲンの侵入をきたしやすい.また,ステロイド軟膏や免疫抑制薬軟膏の副作用が生じやすい.一方,真皮の結合組織はきわめて粗で多量の基質が存在するため,眼を強くこすったりすると眼瞼浮腫が急激かつ高度に生じる.トピー眼瞼炎アトピー眼瞼炎は軽微,軽度,中等度,重度に分類できる.軽微においては軽い乾燥症状を呈するのみである.軽度では乾燥症状に軽度の紅斑・鱗屑を認める.中等度では中等度までの紅斑・鱗屑に少数の丘疹や掻破痕を認める.重度では,苔癬化を伴う紅斑,丘疹の多発,高度の鱗屑,痂皮の付着,小水疱,びらん,多数の掻破痕,痒疹結節などを認める(図1a).重度の眼瞼炎においては,眼瞼内反または外反,閉瞼障害などが生じる(図1b).また,患者の眼瞼皮膚には黄色ブドウ球菌が高率に定着していることが知られており,眼をこすることにより結膜内に播種され,細菌性結膜炎を起こす.さらに,アトピー眼瞼炎患者は,ヘルペス性眼瞼炎を発症しやすい.眼瞼ヘルペスを発症した場合,両眼性の角膜ヘルペスを合併することが多い.トピー眼瞼炎の初期治療アトピー眼瞼炎の治療の基本は,抗原の除去,スキンケアによる皮膚バリアー機能の維持,痒感の抑制,清潔である.抗原除去のためには,こまめな洗顔が必要である.ぬるま湯や刺激性の少ないアトピー性皮膚炎用の石鹸を使用する.近年,アトピー性皮膚炎患者皮膚においては,皮疹部のみでなく,無疹部においても皮膚のバリアー機能が低下していることが指摘されている.バリアー機能の維持には保湿剤を使用する.保湿剤にはエモリエント効果をもつ眼科用白色ワセリン(プロペトR眼軟膏),モイスチャライザー作用をもつ尿素軟膏(ケラチナミンR軟膏),セラミドを含有したジェル(アピットジェルR)を用いる.保湿剤と非ステロイド系消炎軟膏を併用することもあるが,NSAID系の軟膏は接触皮膚炎を起こすことが多く注意が必要である.膿性滲出液などがみられるときは黄色ブドウ球菌などの二次感染が疑われ,オフロキサシン軟膏(タリビッドR眼軟膏)を併用する.バリアー破壊の最も大きな原因は患者自身の掻破行動なので,患部を冷却したり,第二世代抗ヒスタミン薬の内服を用いる.内服処方時には,インペアード・パフォーマンスに注意をする.アトピー眼瞼炎患者の掻破行動には嗜好的側面も強く,精神的ケアーも重要である.(75)眼感染アレルギーセミナー─感染症と生体防御─●連載⑦監修=木下茂大橋裕一7.アトピー眼瞼炎の治療海老原伸行順天堂大学医学部眼科アトピー眼瞼炎の治療の基本は皮膚バリアー機能の維持である.バリアー破壊の最大の原因は痒みによる患者自身の眼掻破行動である.ゆえに,痒みを取ることがアトピー眼瞼炎の最大の治療目的になる.止痒・消炎のために保湿剤・ステロイド軟膏・タクロリムス軟膏・第二世代抗ヒスタミン薬内服を効果的に使用する.アトピー眼瞼炎の治療はアトピー眼症の発症・増悪を阻止する.図1重症アトピー眼瞼炎a:高度のびらん・多数の掻破痕・痒疹結節を認める.b:完全に閉瞼ができない.a———————————————————————-Page2980あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008テロイド軟膏の使い方ステロイド軟膏を少量でも漫然と長期間使用すると副作用が生じる.皮膚萎縮・毛細血管拡張・黄色ブドウ球菌による伝染性膿痂疹や,ヘルペスウイルスによるカポジ水痘様発疹症の誘発などである.さらに軟膏が結膜内に入り高眼圧や白内障が誘発される.ステロイド軟膏を使用しているときは必ず眼圧測定をする.眼瞼炎治療には,medium~weakのものを少量・短期間使用する.また,初診時にすでにステロイド軟膏を使用している場合は,急に中止すると急激な悪化(topicalcorticoster-oidwithdrawalsyndrome)を発症することがあるので,徐々に効力の弱いものに漸減していく.ステロイド軟膏とプロペトR眼軟膏を1:1,1:2,1:3と比率を変えて,混合して処方するのもよい.クロリムス軟膏強力な免疫抑制作用をもつタクロリムス軟膏(プロトピックR)が注目されている(図2).タクロリムス軟膏の特徴は,①ステロイドの分子量(300~400)に比較して,分子量(822.05)が大きいため正常皮膚よりは吸収されず,炎症の生じている皮膚のみより吸収される.すなわち,消炎後,皮膚のバリアー機能が回復するとともに吸収率が低下する.ゆえにステロイド軟膏にみられる皮膚萎縮をはじめとする副作用が認められない.②中止してもリバウンド現象を認めない.③0.1%タクロリム(76)ス軟膏はstrongクラスと0.03%タクロリムス軟膏(小児用)はmediumクラスのステロイド軟膏と同等の効果をもつ.④ステロイド軟膏と比較して強い即効性の止痒効果がある.問題点としては,その刺激性のためにびらん・掻破痕がある部位に塗布すると灼熱感が強いことである.特に眼瞼皮膚に使用するときは,なるべく結膜内に入れないこと.角結膜感染症がある場合は使用を控えること.眼科医による細隙灯顕微鏡や眼圧検査を定期的に施行することなどである.おわりに今まで重症のアトピー眼瞼炎の治療は,mediumやweakのステロイド軟膏を少量使用することが主流であった.しかし,タクロリムス軟膏の登場により治療法も変わりつつある.たとえば,びらんの強い症例では,verystrongやstrongestのステロイド軟膏を本当に短期間(2~3日間)使用した後,タクロリムス軟膏に切り替える方法.最初からタクロリムス軟膏を使用し,徐々に保湿剤へ変更していく方法などがある(図3).実際,海外においては,重症のアトピー眼瞼炎に0.1%タクロリムス軟膏を使用し,自覚・他覚所見の著明な改善が報告されている1).タクロリムス軟膏の登場により,アトピー眼瞼炎の治療も変わりつつあり,アトピー眼症の発症率の低下が期待される.文献1)NiveniusE,vanderPloegI,JungKetal:Tacrolimusointmentvssteroidointmentforeyeliddermatitisinpatientswithatopickeratoconjunctivitis.Eye21:968-975,2007びらん,掻破痕,紅斑が軽度中等度びらん,掻破痕,紅斑が高度Verystrongステロイド外用薬タクロリムスタクロリムス保湿剤保湿剤2~3日5~7日7~10日図3タクロリムス軟膏の使用方法図2タクロリムス軟膏による治療a:治療前,b:治療後.0.1%タクロリムス軟膏2回/日,1週間塗布により眼瞼炎が改善された.(東京逓信病院・江藤隆史先生のご厚意による)a

緑内障:緑内障進行と特殊視野検査

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089770910-1810/08/\100/頁/JCLS緑内障の早期検出のため,従来の自動視野計と異なる視標刺激を用いた視野検査法が多数報告されている.網膜内において視覚情報は処理され,網膜神経節細胞レベルですでに伝達される情報が分けられていることから,それぞれの神経節細胞をターゲットにした視覚刺激を用いた視野計が考案されている.網膜神経節細胞は外側膝状体への投射部位の違いからP細胞とM細胞に分けられる.P細胞は「色,高解像度・低コントラスト」の情報を伝達することから,その機能検査に各種の色視野計,high-passresolutionperimetryが開発されている.M細胞は「動き,低解像度・高コントラスト」の情報を伝達することから,フリッカー視野計などが開発されている.また,持続する光刺激に対し持続的に応答するX型の細胞と刺激のOn・O時のみに応答するY型の細胞がある.P細胞はおもにX型であるが,M細胞はX型とY型があり,M-Y細胞の機能検査を目的としたfre-quencydoublingtechnology(FDT)視野計が開発されている.従来の視野計で異常が検出されなくとも,FDT視野計で異常が検出されるなら,その部位に将来,従来の視野計でも異常が生じる可能性が高いこと1)が報告されている.さらに,神経節細胞には光刺激のOn中心の受容野をもつ細胞とO中心の細胞があることから,筆者はO刺激を強調したO視野計2),On刺激を強調したOn視野計3)を報告している.彩飽和度視野計4)色視野計としては黄色背景に青色の刺激光を表示するblueonyellow視野検査が広く行われている.筆者はさらに色情報と明度情報を分けて検査する目的で色彩飽和度視野検査(PCST)を開発した.本検査は5つの明度の異なる無彩色と1つの有彩色を同時に一定時間表示し,有彩色を識別させるものである(図1).PCSTは6色の色相について,別々に閾値を測定する.緑内障患者について,Humphreyeldanalyzer(HFA)自動視野計とPCSTの相関を検討し,3年間経過を観察したところ,つぎの傾向が認められた.・青紫色はPCST上で早期に異常として出るが,HFA上の異常はすぐには出ない.・赤色,緑色はHFA視野上の暗点が出てからPCST上の色覚異常が出る.・紫色の異常があれば,HFA上は現在異常がなくとも3年後に異常が出る率は有意に高い.O視野計2,3)本検査はコンピュータと液晶ディスプレイを用いて,白色背景上に境界不鮮明な黒色(消灯刺激)の視標を急(73)●連載緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄97.緑内障進行と特殊視野検査小暮諭こぐれ眼科クリニック/山梨大学医学部眼科緑内障性視野障害の評価に,各種網膜神経節細胞の機能に特化した視野計が開発されており,その有用性が報告されている.開発中の新しい検査として,P細胞系の検査としては色彩飽和度視野計,M細胞系の検査としてはO視野計を紹介する.これらの特殊視野検査は緑内障性視野障害の多角的評価を可能にしている.図1色彩飽和度視野計検査画面同時に表示された6つの視標のなかから1つの有彩色の部位を答える.———————————————————————-Page2978あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008速に表示し,約1秒かけて緩やかに消去するものである(図2).HFA視野上は同じような,視野障害でもO視野,On視野上は異なる欠損を示すこと3)も確認されている(図3,4).(74)殊視野検査の意これらの視野検査は緑内障の早期診断を目的とされることが多い.しかし,中等度緑内障患者の実際の見え方の評価や,今後の進行予測,病型の分類など,多くの可能性を秘めており,今後の研究が期待される.文献1)KogureS,TodaY,TsukaharaS:Predictionoffuturesco-tomaonconventionalautomatedstaticperimetryusingfrequencydoublingtechnologyperimetry.BrJOphthal-mol90:347-352,20062)小暮諭,飯島裕幸,柏木賢治ほか:OFF視野計の開発および緑内障眼における結果.あたらしい眼科20:693-696,20033)小暮諭,飯島裕幸,柏木賢治ほか:緑内障眼におけるFDT視野感度,OFF刺激感度,ON刺激感度の相関.あたらしい眼科23:519-521,20064)KogureS,ChibaT,SaitoSetal:Predictingglaucomatoussensitivitylossusingperimetriccolorsaturationtest.JpnJOphthalmol47:537-542,2003図2O視野検査画面境界不鮮明な黒色(消灯刺激)視標を提示し感度閾値を測定する.O?OnFDTHFA53歳,女性NTG視力1.235dB≦2520151050図3症例1O視野・FDT視野ともに不良であるが,On視野の結果は良好であった.NTG:正常眼内緑内障.(文献3より)O?OnFDTHFA32歳,男性POAG視力1.2MD=-4.22dB35dB≦2520151050図4症例2O視野・On視野ともほぼ同じであるが,FDT視野は不良であった.POAG:原発開放隅角緑内障,MD:平均偏差.(文献3より)☆☆☆

屈折矯正手術:カスタム照射と高次収差

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089750910-1810/08/\100/頁/JCLS従来型のLASIK(laserinsitukeratomileusis)などの屈折矯正手術では,術後の高次収差が増加し,特に夜間の視機能の低下が問題であった.高次収差の増加は,偏心照射や非効率なレーザー照射によってひき起こされ,特にコマ収差や球面収差が術前より増加する.非効率なレーザー照射は,照射面と非照射面との境界角膜の急峻化を起こし,topographyではinstantaneusmapでredringとして認識される(図1).近年,eyetrackingシステムなどによる偏心照射を抑制するプログラムやwavefront-guidedLASIKやtopography-guidedLASIKなどのカスタム照射により,術後の高次収差を抑制し,視機能の質(visionofquali-ty)を向上させる試みが盛んとなっており,各機器でさまざまなカスタム照射のproleが開発されている.ニデック社製EC-5000を用いたカスタム照射には,照射面と非照射面との段差を補正するOATz(optimizedaspherictreatmentzone),topography-guidedでretreatmentに使うCATz(customizedaspherictreat-mentzone),そして,OPD-Scanから得られた波面収差のデータから中央部も周辺部も非球面で照射するOPDCAT(OPD-guidedcustomizedaspherictreat-ment)の3種類のproleが選択可能である.OPDCATはOATzと比べ,有効に照射することで,照射量を少なくすることができる利点がある(表1).しかしながらOPDCATによるwavefront-guidedLASIKの効果について,Venterは,術前の全高次収差が0.3μm以上の症例では,術後,有意に高次収差を減弱させることができるが,0.3μm未満の症例では,術後の高次収差が増加すると報告している1).また,筆者らが報告したOATz症例とOPDCAT症例で術前の全高次収差が0.4μm未満の低収差群と術前の全高次収差が0.4μm以上の高収差群との比較でも,OATz群,OPDCAT低収差群で,術後,全高次収差と各収差が有意に増加したのに対し,OPDCAT高収差群では,全高次収差,コマ収差などが,術前と同等で,矢状収差が,術前より減弱したという結果が得られている(図2).その他の機種としては,(71)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載監修=木下茂大橋裕一坪田一男98.カスタム照射と高次収差湖﨑亮湖崎眼科現在のカスタム照射による屈折矯正手術は,低次収差についての矯正はかなり精度が高いが,術後の高次収差を低く抑えるのは困難である.今後,均一なap作製や,さらなる各種のカスタム照射の改良により,将来的に,術後の高次収差を低く抑え,visionofqualityの高い屈折矯正手術が開発されることを望む.レーザー照射角膜図1Redringの原理とシミュレーションのmap非効率なレーザー照射により,照射面と非照射面の境界部位(黄色○,矢印)が急峻になるため,topographyではinstant-aneusmapで,急峻な境界部位が高屈折に表示される(redring).表1-6Dの矯正をした場合の切除深度の比較照射条件OZ/TZSpherical6.0/8.0mmProfile#5104.7m4.5/8.0mm77.1m6.0/7.0mm89.1m6.5/7.5mm106.5mOATzOPDCAT112.5m107.0m92.7m89.5mほぼ同じ5%0%19%浅いOPDCATではOATzより約4%浅く,より総照射エネルギーを少なく抑えることができる.———————————————————————-Page2976あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008Binderらは,IntraLaseレーザーでapを作製し,StarS4(Visx社),LADARVision4000(Alcon社),Alle-gretto(WaveLight社)を比較したところ,全高次収差では,StarS4が,他機種と比べ,最も術前後の変化が少なく,球面収差については,LADARVision4000が,他機種と比べ,最も術前後の変化が少ないかったものの,すべての機種で,術前に比べ平均の全高次収差は増加したと報告している.さらに彼らは,術前の高次収差が高い症例では,術後の高次収差を減弱できた症例もあるものの,総評としては術後の高次収差の増加を防ぐのは困難と結論している3).また,Technolas217s(Bausch&Lomb社)においても,術後,全高次収差とコマ収差が増加すると報告されており4),現状のカスタム照射では,術前の高次収差が高い症例では,術後の高次収差を減弱できる場合があるが,基本的には,術後の高次収差を低く抑えるには困難と考えるべきであろう.また,術後の高次収差に影響する因子としては,LASIKの機器自体の精度および照射proleの影響のみならず,作製するapの影響も忘れてはならない5,6).その意味で,精度の高いapを作製するフェムト秒レーザーが注目されている.ただし,各照射proleの比較をするには,瞳孔径や,測定する波面センサーの統一を行い,同条件で比較検討する必要があり,今後の報告が待たれるところである.現在のカスタム照射による屈折矯正手術は,defocusやcylinderの低次収差についての矯正はかなり精度が高いが,高次収差のコントロールは不十分である.しかしながら,均一なap作製ができるフェムト秒レーザーもさらに改良が加えられ,各種のカスタム照射も改良が進んでおり,将来的には,術後の高次収差を低く抑え,visionofqualityの高い屈折矯正手術が開発されるであろう.文献1)VenterJ:Wavefront-guidedcustomablationformyopiausingtheNIDEKNAVEXlasersystem.JRefractSurg24:487-493,20082)湖﨑亮:円錐角膜と高次収差.あたらしい眼科24:1473-1477,20073)BinderPS,RosensheinJ:Retrospectivecomparisonof3laserplatformstocorrectmyopicspheresandspherocyl-indersusingconventionalandwavefront-guidedtreat-ments.JCataractRefractSurg33:1158-1176,20074)BuhrenJ,KohnenT:Factorsaectingthechangeinlow-er-orderandhigher-orderaberrationsafterwavefront-guidedlaserinsitukeratomileusisformyopiawiththeZyoptix3.1system.JCataractRefractSurg32:1166-1174,20065)MedeirosFW,StapletonWM,HammelJetal:WavefrontanalysiscomparisonofLASIKoutcomeswiththefemto-secondlaserandmechanicalmicrokeratomes.JRefractSurg23:880-887,20076)ChengZY,HeJC,ZhouXTetal:EectofapthicknessonhigherorderwavefrontaberrationsinducedbyLASIK:abilateralstudy.JRefractSurg24:524-529,2008(72)図2OATz群とOPDCAT群との術前後の高次収差の比較対象は,近視矯正手術を行った129眼で,瞳孔径6mmの眼球の高次収差を測定(波面センサーKR-9000PW).3次,4次の高次収差をベクトル解析2)し,術前と術1カ月後で各群の比較検討をした.OATz群とOPDCAT症例で術前の全高次収差が0.4μm未満の低収差群では,術前より,術後1カ月の収差量がすべての項で増加した.一方,術前の全高次収差が0.4μm以上の高収差群では,全高次収差,コマ収差,tetrafoil,secondaryastigmatismで術前後の変化はなく,矢状収差が減弱したが,球面収差は,他の群と同様に術後で増加した(*p<0.01,Pairedt-test).(2007年,第30回日本眼科手術学会発表)全高次収差矢状収差コマ収差TetrafoilSecondary球面収差RMS(μm)astigmatism0.80.60.40.20:OATzPre:OATz1Mn.c.n.c.n.c.n.c.**************:OPD(低収差)Pre:OPD(低収差)1M:OPD(高収差)Pre:OPD(高収差)1M☆☆☆

眼内レンズ:回折型多焦点レンズ

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089730910-1810/08/\100/頁/JCLS多焦点眼内レンズは,回折型(図1)と屈折型レンズに大別される.回折型は,光の回折を利用して,入射光を遠見と近見に分ける構造になっている(図2).個々のレンズによって差はあるものの,回折型と屈折型多焦点レンズにはおよその特徴に違いがある.回折型多焦点レンズでは,遠見視力だけでなく,近見視力も非常に良好である.たとえば,アルコンのReSTORRでは,自験例における裸眼や矯正の近見視力の平均は0.8以上である(図3).近見作業に関しては,裸眼でもかなり細かい作業が可能と考えられる.通常屈折型では,回折型ほどの近見視力は得られない.一方,多焦点レンズの欠(69)点として,コントラスト感度の低下があるが,それは回折型のほうが大きいとされる.他の欠点である夜間のグレアやハロー症状に関しては,定量的な比較が困難であり,現在のところ臨床的にどちらが良いかわかっていない.しかし,光学的シミュレーションの結果では,回折型レンズ挿入眼におけるグレアやハローのほうが軽度ということがいわれている.多焦点レンズであればこれらの欠点は避けられないので,各レンズでどの程度のコントラスト感度の低下やグレア・ハロー症状があるのか,今後は定量的な比較をする必要がある.眼鏡装用頻度に関しても,ReSTORR挿入患者では,林研林眼科病院眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎263.回折型多焦点レンズ回折型多焦点レンズは,眼内への入射光の回折を利用して,遠点と近点からの光が中心窩に焦点が合うように設計された眼内レンズである.一般に遠見だけでなく,近見視力が非常に良好という利点があるが,コントラスト感度の低下が起こりうる.また,瞳孔径やレンズの偏心・傾斜に近見視力が影響されにくいという利点もある.図1回折型多焦点レンズ挿入眼新しい回折型多焦点レンズのアルコンReSTORRを挿入している.遠見からの入射光回折型レンズ表面中心窩近見からの入射光回折型レンズ表面中心窩→図2回折型多焦点レンズの原理a:遠点からの入射光はレンズ表面で回折した後,光の干渉によって遠見用の光と近見用の光に収束する.遠見用の光は中心窩に焦点が合うが,近見用の光はハローの原因となる.b:近点からの入射光はレンズ表面で回折した後,光の干渉によって遠見と近見の光に収束する.近見用の光は中心窩に焦点が合うが,遠見用の光はハローの原因となる.———————————————————————-Page2近用眼鏡を装用しているものは6.1%にすぎなかった.乱視の影響は遠見視力のほうが大きいため,遠用眼鏡の装用頻度は,つねに使用しているものが21.2%,ときどき装用するものが9.1%であった.屈折型レンズでは,近見視力がさほど良くないので,近用眼鏡を必要とする頻度が高い.また,単焦点レンズでは88%が近用眼鏡を常用している.このように,回折型多焦点レンズでは,全体として眼鏡装用を必要とする頻度が低い.近用部が周辺に位置する屈折型多焦点レンズでは,瞳孔径が小さいと近見視力が不良になるのに対し,回折型レンズでは瞳孔径と視力の相関は軽い.そのため,瞳孔径の小さな患者,たとえば高齢者,落屑症候群の患者,糖尿病患者眼などでも良好な近見視力が得られやすいという利点がある.また,レンズが偏心すると,屈折型レンズでは遠見視力が不良になるが,回折型レンズは偏心の影響が少ない.さらに,自験例では,屈折型,回折型レンズともに,レンズ傾斜量は視力と相関しなかった.このように,回折型レンズではレンズ偏心量に視力が影響されにくいという利点もある.多焦点レンズは,遠見だけでなく,近見視力も良いという絶対的な利点がある.その一方で,臨床的に重要でないものもあるが,コントラスト感度の低下,グレア・ハロー症状,中間距離視力の低下などの欠点もある.要するに,利点と欠点があるので,利点が大きく,欠点が少ないものが良い多焦点レンズである.特に回折型レンズは,利点も欠点も大きいとされる.欠点に目をつぶらず,きちんと比較していくことが患者の利益につながる.小視力距離差あり差なし多焦点レンズ群(S60)単焦点レンズ群(S60T)図3回折型多焦点レンズの遠方矯正下全距離視力遠方矯正して乱視や屈折誤差の影響を排除すると,その多焦点レンズの特性がわかる.回折型レンズでは,遠見・中間距離視力は単焦点レンズと差がなく,近見視力がきわめて良好である.

コンタクトレンズ:遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方方法(2)

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.7,20089710910-1810/08/\100/頁/JCLS筆者は,「老視は,個人差はあるが,だいたい43歳から始まる」と説明している.過矯正のコンタクトレンズ(CL)を装用している患者は,30歳代からでも老視を体験している.「文字を読むときに少し離して見るようなことがあれば老眼(老視)のはじまりと思ってください」と説明すると,「そう言えば,思い当たることがある」と答えてくれることが多い.もちろん,眼鏡装用だけで解決できるのであれば,話は簡単であるが,CLを長年使用してきた患者にとって眼鏡の装用には抵抗があることは間違いない.CLで老視を解決する方法には多種多様の方法があり,いろいろな方法を説明し,患者が満足するために試行錯誤しなければならない.眼科医もかかりつけ医として,患者の視力を長年管理するつもりで,老視対策を早くから準備しておくべきである.その準備の一つとして,あらかじめCLの度数を近見重視に合わせておくと遠近両用CLに移行しやすい.蛇足になるが,老視のCL処方には,短くても1時間30分はかかるが,CL再診(127点)だけで診察しろというのは無理である.他科の医師も,初めて診察する患者が「再診の包括化」になることには唖然としており,他の科にも広がるのではないかと危惧している.たとえば,感冒や高血圧で内科を受診しても,「再診の包括化」になるのではないかと危惧している.近視,老視は,治らないので病気ではないと言う人もいるが,高血圧も治らないのではないか.(67)視(遠視)度数による満足度の違い近視(遠視)度数によって遠近両用CLの満足度が異なる.これを踏まえて説明することは大事である.高度~極度近視,軽度近視(2.00程度),ほとんど正視,遠視に分けて説明する(図1).1.中等度・高度・極度の近視(-3.00D以上の近視)CL装用者の多くは,このグループに入り,遠近両用CLの良い適応となる.CL経験者が多く,裸眼では生活しにくいため,CLの有難さがわかっているからである.特に,高度以上の近視では喜ばれる.今まで使用していたCLが,近見視力優先にしている場合は,遠近両用CLへの移行はさらに容易である.2.軽度近視(-1.0D~-2.5D程度の近視)老視の程度と近視の度数によって異なるが,裸眼でちょうど手元が見える場合,遠見のときだけ眼鏡をかけて用が済み,安上がりであり,確実に見える方法である.それでもCLを装用したいということであれば,CLの装脱が簡単ではないことを説明しながら遠近両用CLを処方する必要がある.3.正視(±0.5D程度の遠視,近視を含む)最も成功率の低いケースである.成功率が低いことを十分説明してから,検査をすすめる.正視では,遠見視力が良いのに遠近両用CL(同時視タイプ)を装用するとかえって遠見視力が低下する.近見視力は良くなっても,遠見視力低下の不満のほうが大きくなる.特に,CL装用が未経験の患者の場合,成功率は低い.友達が遠近両用CLを使っていてすごくいいと聞いたと言って渡邉潔ワタナベ眼科コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純図1S面度数による遠近両用CLの適応不適応のことが多い遠視正視軽度近視度近視高度近視極度近視適応比較的適応適応———————————————————————-Page2972あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008(00)くる患者には,正視では成功率が低いことを説明しておく.4.遠視(特に遠視度数が+2.00D以上)遠視眼は,遠近両用CLの比較的よい適応である.もともと,起床時から就寝時まで眼鏡かCLを装用しているほうが楽であることを自覚している場合は,特に遠近両用CLの満足度が高い.ただし,+2.00Dより軽い遠視の場合は,正視と同じ不満が出てくることがある.水晶体眼への装用単焦点の眼内レンズを挿入した白内障術後の偽水晶体眼に遠近両用CLを装用させてはどうかと,眼科医であれば誰でも考えることである.筆者も,アキュビューRバイフォーカルが発売されてすぐに20例ほどの患者に装用してもらったが,2.の軽度近視のケースと同じで満足度は低かった.遠近両用眼内レンズと比べて,圧倒的に悪い結果がでた.理由は,遠近両用眼内レンズの場合は,白内障があった状態からの比較であり,少々視力がでなくても,それ以上の視力を体験していないため,遠見も近見もよく見えると満足する.しかし,遠近両用CLの場合は,単焦点CLや眼鏡では遠見視力がよく見えるため,遠近両用CLを装用すると見えにくいと感じてしまうからであろう.遠近両用CLの優位点としては,度数の変更が簡単であることがあげられる.に適応となる種筆者の診療所の200m南には,大阪一の高級クラブが密集している場所がある.遠近両用CLが非常に喜ばれるのは,これらの“クラブのママ”達である.彼女達クラスになると,年齢も45~60歳くらいで,老視もかなり進行している.しかし,商売柄,日本経済新聞も読まなくてはならないし,お客の名刺を読めなくてはならず,かと言って老眼鏡もかけられないという事情がある.遠見視力といっても,自分で運転することも少なく,5m先の人の顔が見えれば満足である.お客とゴルフに行くときは,単焦点の遠見優先のCLを装用し,仕事場に戻れば遠近両用CLにつけ替えればよい.最初にこのように説明すると,遠近両用CLを試して愛用してくれている人達が多い.毎日使い捨て・シリコーンハイドロゲルの遠近両用CL“クラブのママ”達の要望は,乱視用CLも毎日使い捨てがあるのだから,遠近両用も毎日使い捨てをつくって欲しいということである.毎日使い捨てにすると爽快な装用感が維持できる.なかには,頻回交換レンズを毎日使い捨てにする患者もいるが,コストが馬鹿にならない.そろそろ,毎日使い捨ての遠近両用CLが発売されるであろう.また,メーカー各社は,シリコーンハイドロゲルの素材の遠近両用CLも開発にかかっているはずである.乱視用と同じように,デザインの違いと素材の違いで,シェアを取るメーカーとそうでないメーカーがはっきり分かれてしまうかもしれない.究極は,毎日使い捨てのシリコーンハイドロゲルの遠近両用CLであろうが,デザインの良いものである必要がある.素材だけでは,選択順位は決まらないということである.