———————————————————————-Page11122あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(00)1122(116)0910-1810/09/\100/頁/JCOPY19回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科26(8):11221125,2009cはじめに現在,原発開放隅角緑内障(POAG)の治療にはラタノプロスト点眼薬が第一選択薬として使用されることが多く,眼血流に及ぼす作用に関しては,測定部位や測定方法により多少異なる結果が報告されているが,おおよそ不変あるいは増加作用があると考えられる1).しかし,ラタノプロストのノンレスポンダーの存在や局所副作用の問題などから,古くから使用されているチモロール点眼薬やチモロール点眼薬とドルゾラミド点眼薬の併用療法に切り替えられることがあり,海外ではチモロールとドルゾラミドの合剤(CosoptR)も使用されている.チモロール点眼薬単独では眼循環に影響を与えないとする報告が多い1).ドルゾラミド点眼薬は毛様体の炭酸脱水酵素を阻害2)して眼圧を下降させるとともに,その眼血流増加作〔別刷請求先〕小嶌祥太:〒569-8686高槻市大学町2-7大阪医科大学眼科学教室Reprintrequests:ShotaKojima,M.D.,DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,2-7Daigaku-machi,Takatsuki,Osaka569-8686,JAPANラタノプロスト単独点眼からチモロール・ドルゾラミド併用点眼へ切り替え時の眼圧,視神経乳頭血流の変化小嶌祥太杉山哲也柴田真帆植木麻理池田恒彦大阪医科大学眼科学教室ChangesinIntraocularPressureandOpticNerveHeadMicrocirculationResultingfromTimorol-DorzolamideCombinedTherapyafterLatanoprostTreatmentShotaKojima,TetsuyaSugiyma,MahoShibata,MariUekiandTsunehikoIkedaDepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege目的:今回筆者らはラタノプロスト単独点眼(L)からチモロール単独点眼(T),さらにドルゾラミド併用(T+D)に変更したときの,眼圧および視神経乳頭血流の変化を調べた.方法:対象は広義の原発開放隅角緑内障(POAG)7名10眼,Lで治療するも眼圧が16mmHg以上の症例とした.方法として4週間以上Lで治療を受けた後,Tで4週間,T+Dで4週間治療を行い,それぞれの切り替え直前および最終日に眼圧,血圧・脈拍,視神経乳頭血流(SBR値:レーザースペックル法)を測定した.また,眼圧と平均血圧から眼灌流圧を計算して検討した.結果:眼圧,平均血圧,脈拍,眼灌流圧はいずれもLと比較しT+Dで有意に低下していた.SBR値は変化しなかった.結論:POAGにおいては,Lと比較してT+Dは有意に眼圧が下降した.今回眼灌流圧が低下し,視神経乳頭血流が変化を示さなかったことより,T+Dによって末梢血管抵抗が減弱することが示唆された.Westudiedchangesinintraocularpressure(IOP)andopticnerveheadmicrocirculationaftertherapywithtimolol(T)onlyortogetherwithdorzolamide(T+D)afterlatanoprosttreatment(L).Subjectscomprised7prima-ryopen-angleglaucoma(POAG)patientswithIOP16mmHgorhigherdespitetreatmentwithL.After4weeksormoreofL,patientsreceivedTfor4-weeks,followedby4weeksofT+D.IOP,bloodpressure(BP),pulserateandopticnerveheadbloodow〔squareblurrate(SBR):laserspecklemethod〕weremeasuredattheendofthe4thweek.Ocularperfusionpressure(OPP)wascalculatedfromIOPandmeanBP.T+DcausedsignicantdecreasesinIOP,meanBP,pulserateandOPPbutinSBRcomparedwithL.T+DsignicantlydecreasedIOP.T+DdecreasedOPPbutbloodowintheopticnervehead,indicatingthatT+Ddecreasestheperipheralvascularresistanceanddilatesbloodvessels.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(8):11221125,2009〕Keywords:ドルゾラミド,チモロール,ラタノプロスト,原発開放隅角緑内障,視神経乳頭血流.dorzolamide,timolol,latanoprost,primaryopen-angleglaucoma,opticnerveheadbloodow.———————————————————————-Page2あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091123(117)用が報告3,4)されているが,変化がなかったとする報告5)もある.そこで今回,広義のPOAG患者においてラタノプロスト単独点眼からチモロール単独点眼,さらにドルゾラミド併用に変更したときの,眼圧や視神経乳頭血流の変化を調べた.I対象および方法対象は大阪医科大学附属病院眼科に受診中の広義のPOAGで,ラタノプロスト単独点眼にて治療するも眼圧が16mmHg以上である7名(平均年齢59.9±14.0歳,男性4名,女性3名)である.糖尿病など重篤な全身疾患をもつ症例,眼血流に影響を及ぼす可能性のある薬剤(bブロッカー,Ca拮抗薬,炭酸脱水酵素阻害薬,アスピリン,ニトログリセリンなど)を使用している症例は対象から除外した.また,視力や視野が著しく不良または固視が不良で安定した血流測定が困難であった眼は除外し計10眼にて検討した.他科からの処方は試験期間中,原則として変更しないこととした.本研究の実施にあたっては大阪医科大学倫理委員会の承認を得たうえで,対象者には説明して文書による同意を得た.これら対象患者にラタノプロスト点眼を4週間以上行った(L)後に,チモロール点眼を4週間行い(T),最後にチモロール+ドルゾラドミド点眼4週間(T+D)行った.それぞれの点眼切り替え直前および最終日に眼圧,血圧・脈拍,視神経乳頭血流を測定した.測定はすべて午前9時から11時までの間に行った.視神経乳頭血流はレーザースペックル法を用いて,0.5%塩酸トロピカミド散瞳下にて,血流速度および組織血流量の指標であるsquareblurrate(SBR)値6)を測定した.測定部位として視神経乳頭耳側の表在血管の見えない部位を選んだ.また,平均血圧と眼圧から眼灌流圧を次式により算出し検討した.平均血圧=拡張期血圧+1/3(収縮期血圧拡張期血圧)眼灌流圧=2/3平均血圧眼圧統計学的検討は各群間にて対応のあるt検定を用い,有意水準はp<0.05とした.II結果眼圧はLと比較し,Tでは有意な変化は生じなかったが,T+Dでは有意に低下し,その差は平均2.1mmHgであった(表1,図1).平均血圧はLと比較し,Tでは有意な変化は生じなかったが,T+Dで有意に低下した(表1).脈拍はLと比較し,Tでは有意な変化は生じなかったが,T+Dで有表1ラタノプロスト単独点眼(L)から,チモロール単独点眼(T),チモロール+ドルゾラミド併用点眼(T+D)へ変更したときの各パラメータの変化とLに対する有意差ラタノプロスト(L)チモロール(T)チモロール+ドルゾラミド(T+D)眼圧(mmHg)15.4±2.016.3±2.7(0.0947)13.3±2.3(0.0082)**平均血圧(mmHg)102.1±16.4102.6±13.2(0.8652)95.1±15.0(0.0036)**脈拍(拍/分)72.1±10.366.7±8.8(0.1601)67.4±8.2(0.0098)**眼灌流圧(mmHg)53.1±8.951.8±5.9(0.4562)50.6±8.2(0.0264)*SBR7.00±1.897.12±1.89(0.6956)7.52±2.46(0.1568)平均±標準偏差.()内はLに対する有意差(p値).**:p<0.01,*:p<0.05,(pairedt-test),n=10.101520ラタノプロストチモロールチモロール+ドルゾラミド眼圧(mmHg)**図1ラタノプロスト単独点眼(L)から,チモロール単独点眼(T),チモロール+ドルゾラミド併用点眼(T+D)へ変更したときの眼圧の変化眼圧はL(15.4±2.0mmHg)と比較し,T(16.3±2.7mmHg)では有意な変化は生じなかった(p=0.0947)が,T+D(13.3±2.3mmHg)で有意に低下した(平均±標準偏差,**:p=0.0082,n=10).404550556065*ラタノプロストチモロールチモロール+ドルゾラミド眼灌流圧(mmHg)図2LからT,T+Dへ変更したときの眼灌流圧の変化眼灌流圧はL(53.1±8.9mmHg)と比較し,T(51.8±5.9mmHg)では有意な変化は生じなかった(p=0.4562)が,T+D(50.6±8.2mmHg)で有意に低下した(平均±標準偏差,*:p=0.0264,n=10).———————————————————————-Page31124あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(118)意に低下した(表1).眼灌流圧はLと比較し,Tでは有意な変化は生じなかったが,T+Dで有意に低下した(表1,図2).視神経乳頭SBR値はLと比較し,Tでは有意な変化は生じず,T+Dでも減少しなかった(表1,図3).III考按今回の筆者らの結果では,開放隅角緑内障眼においてラタノプロスト点眼と比較してチモロール+ドルゾラミド点眼は有意に眼圧を下降させた.さらに,チモロール単独点眼よりもチモロール+ドルゾラミド併用点眼が平均眼圧が下降したことから,今回の対象群においてはドルゾラミドが眼圧下降に効果的であった.これらのことから,ラタノプロストとチモロール点眼では差がなく,ドルゾラミドの追加が有効であると考えられ,ラタノプロストやチモロール点眼で十分な眼圧下降効果が得られない場合に,従来の報告どおりドルゾラミドの追加が有効であると考えられた.さらに今回ラタノプロスト点眼と比較してチモロール点眼では血流の有意な変化は認められず,これはラタノプロストやチモロール点眼が血流に変化を与えにくいという過去の報告1)と合致する.つぎにドルゾラミドとチモロール併用による眼血流への影響に関して4週間のラタノプロスト点眼とドルゾラミド+チモロール点眼との血流の比較をした研究7)では,POAGにおいてラタノプロスト点眼ではpulsatileocu-larbloodow(POBF)に変化を及ぼさなかったものの,ドルゾラミド+チモロール点眼ではPOBFが有意に増加したと報告されている.ここでPOBFは脈絡膜血流由来とされているが明確ではない.また,colordopplerimaging(CDI)で測定した球後血流には変化がなかったが,網膜血流の一部が蛍光色素による測定で増加したという報告8)もあり,部位によって血流の変化は一定していない.さて今回の結果では,4週間のドルゾラミド+チモロール点眼によってラタノプロスト点眼と比較して有意な視神経乳頭血流の変化は生じなかった.この原因としてチモロール点眼を8週間行ったことにより血圧が低下9)し,その結果眼灌流圧が低下したことが考えられる.眼灌流圧が低下したにもかかわらず視神経乳頭血流は変化しなかったことから,チモロール+ドルゾラミドによる末梢血管抵抗減弱の可能性が示唆された.一方,レーザースペックル法を用いてドルゾラミドとブリンゾラミドの点眼の視神経乳頭血流への影響を調べた報告5)では,両剤とも2週間点眼にて健康成人の視神経乳頭循環に影響がなかったとしている.ただ,この報告は非緑内障眼が対象であり,点眼期間も2週間であったため,ドルゾラミドの視神経乳頭循環に及ぼす効果も今回より少なかったのではないかと推測できる.ドルゾラミドの投与により組織血流が増加するが,そのメカニズムは明確にされておらず,炭酸脱水酵素阻害作用により細胞内間隙のpHが上昇して血管径が拡大されるという推測もされるが,ドルゾラミドの細胞外pH非依存性動脈拡張作用10)も報告されている.いずれにしても今回対象となったラタノプロスト単独点眼で16mmHg以上の広義のPOAG症例においては,ラタノプロスト点眼と比較してチモロールとドルゾラミド併用点眼により有意に(約2mmHg)眼圧が下降した.さらに,この併用療法では視神経乳頭の末梢血管抵抗が減弱する(血管拡張作用がある)ことが示唆された.今後は視野などに及ぼす臨床的意義をさらに検討する必要があると思われる.最後に本研究の欠点として,無治療時の眼圧・循環器系因子などの詳細なデータが取られていないことから,広義のPOAGといえどもラタノプロストに対して眼圧下降反応性が悪いとは限らない対象であること,n=10しかないことがあげられる.今後のさらなる詳細な研究には対象群のベースラインデータが必要である.文献1)富所敦男:1.緑内障.V疾患と眼循環NEWMOOK眼科(大野重昭,吉田晃敏,水流忠彦編集主幹,張野正誉,桐生純一,玉置泰裕編),7巻,p164-172,金原出版,20042)MarenTH,ConroyCW,WynnsGCetal:Ocularabsorp-tion,bloodlevels,andexcretionofdorzolamide,atopicallyactivecarbonicanhydraseinhibitor.JOculPharmacolTher13:23-30,19973)TamakiY,AraieM,MutaK:Eectoftopicaldorzol-amideontissuecirculationintherabbitopticnervehead.JpnJOphthalmol43:386-391,19994)ArendO,HarrisA,WolterPetal:Evaluationofretinalhaemodynamicsandretinalfunctionafterapplicationofdorzolamide,timololandlatanoprostinnewlydiagnosedopen-angleglaucomapatients.ActaOphthalmolScand45678910ラタノプロストチモロールチモロール+ドルゾラミドSBR†図3LからT,T+Dへ変更したときの視神経乳頭循環の変化視神経乳頭SBR値はL(7.00±1.89mmHg)と比較し,T(7.12±1.89mmHg)では有意な変化は生じず(p=0.6956),T+D(7.52±2.45mmHg)でも減少しなかった(平均±標準偏差,†:p=0.1568,n=10).———————————————————————-Page4あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091125(119)81:474-479,20035)廣石悟朗,廣石雄二郎,長谷川裕平ほか:炭酸脱水酵素阻害点眼薬による視神経乳頭循環への影響.臨眼62:733-737,20086)新家眞,玉置泰裕,永原幸ほか:眼内循環.レーザースペックル法による生体眼循環測定.装置と眼科研究への応用.日眼会誌103:871-909,19997)JanulevicieneI,HarrisA,KagemannLetal:Acompari-sonoftheeectsofdorzolamide/timololxedcombinationversuslatanoprostonintraocularpressureandpulsatileocularbloodowinprimaryopen-angleglaucomapatients.ActaOphthalmolScand82:730-737,20048)HarrisA,Jonescu-CuypersCP,KagemannLetal:Eectofdorzolamidetimololcombinationversustimolol0.5%onocularbloodowinpatientswithprimaryopen-angleglaucoma.AmJOphthalmol132:490-495,20019)NelsonWL,FraunfelderFT,SillsJMetal:Adverserespiratoryandcardiovasculareventsattributedtotimololophthalmicsolution,1978-1985.AmJOphthalmol102:606-611,198610)JosefssonA,SigurdssonSB,BangKetal:Dorzolamideinducesvasodilatationinisolatedpre-contractedbovineretinalarteries.ExpEyeRes78:215-221,2004***