———————————————————————- Page 10910-1810/09/\100/頁/JCOPYI自己免疫性視神経症の分類・特徴・ 診断・治療 1. 分類広義の自己免疫性視神経症として,以下の視神経症が報告されている(表 1).a. p ANCA(MPO ANCA)陽性視神経症抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)は,発熱,体重減少,関節痛,筋肉痛などの全身症状を伴う,血管炎症候群に関与する自己抗体の一つである.ANCA は好中球の細胞質に作用して,種々の細胞質リソソーム酵素や活性酸素を放出させ血管壁を傷害し,血管炎をひき起こして血管閉塞をきたす(ANCA 関連血管炎).蛍光抗体間接法での染色像により,cytoplasmicツꀀ ANCA(c-ANCA)と perinuclear ANCA(p-ANCA)に分類され,近年では抗原の解明により,ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)はじめに本来「自己」を守るはずの免疫反応が,「自己」の組織を抗原として「自己抗体」を作り,過剰な免疫・炎症反応によって器質的障害を生じてしまう病態が,自己免疫疾患である.すでに膠原病を発症している場合もあるが,発症していなくとも,自己抗体の存在が証明されることより自己免疫の機序から視神経炎をきたしたと考える場合に,「自己免疫性視神経症」または「自己免疫性視神経炎」とよんでいる.臨床的には特発性視神経炎と酷似しているが,発症機序や副腎皮質ステロイド薬(以下,ステロイド)に対する反応性,予後の違いなどから,独立した疾患と考えられるようになった.1982 年の Dutton らによる抗核抗体高値の視神経炎の報告1)以降,各種の自己抗体陽性の視神経症が報告されてきた.さらに最近,視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)の原因抗体として抗アクアポリン 4(aquaporin-4:AQP4)抗体が同定され2),多発性硬化症(multipleツꀀ sclerosis:MS)の分類に大きな影響を与えているだけでなく,単独で生じる視神経炎の場合でも原因抗体となりうるか,注目されている.本稿では,自己免疫性疾患の臨床的特徴のほか,井上眼科病院(当院)での視神経炎の自験例において,自己抗体陽性例と陰性例,自己抗体陽性例のうち抗 AQP4抗体陽性例の臨床経過について,若干の知見を得たので報告する.(45)ツꀀ 1343 1 eツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ bツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 2Ma aツꀀツꀀツꀀ a aツꀀツꀀ aツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 273 0035ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 3 20 13 101ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 特集●多発性硬化症・視神経脊髄炎と抗アクアポリン4抗体 あたらしい眼科 26(10):1343 1349,2009自己免疫性視神経症Autoimmune Optic Neuropathy久保玲子*1若倉雅登*2ツꀀ 1自己免疫性視神経症の分類自己免疫性視神経症(狭義):膠原病に随伴した視神経炎自己免疫性視神経症(広義): 自己抗体を認めるが,膠原病を発症していない視神経炎〔例〕・p-ANCA 陽性視神経症・抗リン脂質抗体陽性視神経症・甲状腺関連抗体陽性視神経症・抗 SS 抗体陽性視神経症・抗 AQP4 抗体陽性視神経症———————————————————————- Page 21344あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(46)体は Sjogren 症候群の 48%に認められるが,他疾患における陽性率はきわめて低く,特異性が高い.e. 抗AQP4抗体陽性視神経症2005 年に,視神経と脊髄を病変の主座とする炎症疾患である NMO の原因抗原として,アストロサイトの足突起に多く存在する AQP4 が特定された2).これは視神経にも高密度に存在するため,抗 AQP4 抗体が存在した場合には,視神経に炎症や浮腫をきたすと考えられる.さらには二次的に,狭い視神経管内では容易に圧迫による血液・髄液の循環不全を起こすため,治療に抵抗して視神経萎縮に至りやすいといわれる10).パルス治療をくり返しているうちに視神経に不可逆性変化をきたしてしまうため,初回のパルス治療への反応が不良であった場合には,早期に血漿交換を行うことが提唱されている11).わが国では,抗 AQP4 抗体の測定開始は 2007 年頃からであり,これまで経過不良であった視神経炎症例のなかに,この抗 AQP4 抗体陽性の視神経症が含まれていた可能性がある.2. 特徴自己免疫性視神経症の臨床的特徴を表 2 に示す12,13).3. 診断発症経過などの問診,一般眼科検査,神経眼科的検査〔対光反応および swingingツꀀツꀀ ashlightツꀀ test による相対的瞳孔求心路障害(RAPD)など〕,血液検査などを行う法で PR3-ANCA(c-ANCA,対応抗原 proteinase 3)と MPO-ANCA(p-ANCA, 対 応 抗 原 myeloperoxi-dase)として,検出かつ定量される.特に p-ANCA(MPO-ANCA)は,おもに毛細血管などの微小血管レベルに作用するため視神経の栄養血管障害を起こし,両眼性・難治性の視神経炎となりやすい.報告ではステロイドパルス治療に無反応である症例が多く,また両下肢の痺れや膀胱症状などの脊髄障害を伴っていることもある3).b. 抗リン脂質抗体陽性視神経症抗リン脂質抗体は,抗カルジオリピン抗体,ループスアンチコアグラント,梅毒反応偽陽性(Wassermann 反応陽性+TPHA 陰性)の 3 つの形で検出される.動静脈血栓症や習慣流産,血小板減少症などと関連し,全身性エリテマトーデス(SLE)患者に出現率が高い.中小血管に好発する血栓症を特徴とするために眼症状を呈することがあり,時期をおいた片眼ずつの視力低下が突発し,一過性黒内障発作をくり返す症例が多い4).c. 甲状腺関連抗体陽性視神経症視神経症を惹起する可能性がある甲状腺関連抗体としては,抗サイログロブリン抗体と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体があげられる.これらの抗体が高値を示すが,画像診断で外眼筋肥大や眼窩脂肪増大などが否定されるもので,自己抗体の関与が推察される橋本脳症(Hashi-moto’sツꀀ encephalopathy)5)と同様に血管炎を基盤に発症するとされており,圧迫が原因であるいわゆる甲状腺眼症の視神経症とは,発症機序が異なると考えられてい る6).d. 抗SS抗体陽性視神経症以前より原発性 Sjogren 症候群に発症した視神経炎がいくつか報告されており7),その発症頻度は 3 4%といわれ,視神経炎で初発することもある.原発性 Sjogren症候群の 10 30%は乾燥症状がないため,視神経炎で発症した際に自己免疫性と診断されにくい.この抗 SS抗体陽性視神経症とは,抗 SS-A または SS-B 抗体が陽性であるのみで,Sjogren 症候群を発症していない視神経炎を指す8).特に抗 SS-A 抗体が高値の場合は,全身性の血管炎を起こすことがあり,抗 SS-A 抗体が陽性のMS は予後不良であるという報告もある9).抗 SS-B 抗表 2自己免疫性視神経症の特徴1. 急激な視力低下で発症.眼窩部痛を伴うことが多い.片眼発症が多いが,経過中に僚眼にも発症することがある2. 易再発性.再発をくり返すうちに不可逆性の視機能障害(視力低下,視野欠損)を残しやすい3. 視神経乳頭所見は,乳頭型,球後型のいずれの形もとるが,経過中に蒼白化していくことが多い4. 中年女性に多い5. 種々の自己抗体が証明される(広義の自己免疫性視神経症)6. すでに自己免疫性疾患を有している場合もある(狭義の自己免疫性視神経症)7. ステロイドパルス療法に応答する例が多く,第一選択であるが,ステロイド依存性になりやすい8. MRI で脱髄所見はない(特発性視神経炎との鑑別)———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091345(47)例やくり返す再発例には,免疫抑制薬などの他治療の併用や変更も検討する.また,比較的高齢な症例に対しては,炎症血管壁での血栓形成を防ぐ目的で,抗血小板凝集剤を併用することが多い.II症例検討1. 症例当院を受診した,初診時原因不明であった視神経症症例に対し,抗 AQP4 抗体を含む自己抗体などの血液検査(表 4)を行い,初診後 6 カ月以上経過を観察できた100 例(男性 27 例,女性 73 例)を検討した.前医での初診時所見などを確認できなかった症例が存在し,それぞれの検討項目において母数が変動している.抗 AQP4(表 3).自己免疫性視神経症に対する特異的な血液検査の詳細を表 4 に示した.筆者らは血管炎の指標として,von Willebrand 因子の定量を治療前後に行い,ステロイド投与量などの治療方針の指標の一つとしている.4. 治療血管炎が基盤にあると考えられるため,原則としてステロイドパルス療法を第一選択とする.一般的には治療反応は良好であるが,ステロイドの減量や中止後に再発をくり返すステロイド依存性の高い症例や,初発でも無効な重症例も存在するため,治療法の選択に苦慮する.当院におけるパルス治療の標準的なプロトコールを図1 に示す.自己免疫性視神経症の場合は,パルス療法のあとは再発予防目的で,副作用が顕性にならない限り 6カ月以上にわたってステロイド薬の維持量を投与している場合が多い.しかし,安易にステロイドの増量をはかったり,パルス治療をくり返す姿勢は慎むべきで,無効表 3診療・検査項目■問診・症状…視力低下,頭痛・眼窩深部痛・動眼痛の有無・既往歴… 他院での治療歴,ステロイド投与歴,糖尿病,骨粗鬆症など・家族歴… 脱髄性疾患,膠原病など自己免疫性疾患,糖尿病など■診察・RAPD(相対的瞳孔求心路障害)の有無・視神経乳頭の形状… 左右差, disc 辺縁の不明瞭化, 小乳頭など・他疾患の検索…副鼻腔炎,眼窩内腫瘍,散瞳下で眼底疾患■検査・視力・眼圧・中心フリッカー検査・精密視野検査…動的視野( Goldmann 視野など) …視力不良例に有用静的視野( Humphrey 視野計,Octopus 視野計など)…視力良好例に有用・血液検査…自己抗体の検索(表 4)・MRI 撮影ツꀀ … 眼窩内病変・脊髄病変・視神経炎症部位の検索 Short T1 inversion recovery(STIR)法 T1 強調画像脂肪抑制造影(特に視神経炎の再発時)…脳内の脱髄巣の検索 Fluid attenuated inversion recovery(FLAIR)画像T2 強調画像表 4自己免疫性視神経症に対する血液検査項目血沈/CRP/von Willebrand 因子…炎症の存在抗核抗体…膠原病全般リウマトイド因子… リ ウ マ チ 性 疾 患 な ど抗 DNA 抗体… 全身性エリテマトーデスなど抗 ds-DNA-IgG 抗体p-ANCA(MPO-ANCA)… p-ANCA 陽性視神経症抗カルジオリピンb2GP I 複合体抗体… 抗リン脂質抗体陽性 視神経症血清梅毒反応(ガラス板法, TPHA 法)ループスアンチコアグラント抗サイログロブリン抗体… 甲状腺関連抗体陽性 視神経症抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体抗 SS-A 抗体・抗 SS-B 抗体… 抗 SS 抗体陽性視神経症抗 AQP4 抗体… 抗 AQP4 抗体陽性 視神経症図 1ステロイドパルス治療の標準プロトコールツꀀ ルプ ドツꀀ ロンツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ プ ドツꀀ ロンツꀀツꀀツꀀ 経ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 治療ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ ———————————————————————- Page 41346あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(48)と有意差は認めなかった.視力低下がなく,痛みのみで受診した症例は,(+)群41例中7例(17%),( )群46 例中 8 例(17%)に存在した.視力や視野を検討した結果,両眼性での初発は(+)群 3%,( )群 2 0 % と抗体の測定は金沢医科大学神経内科学講座へ依頼し た14).各項目の群間の統計学的な有意差はc2検定を用いた.2. 結果自己抗体陽性群 51 例,男女比 8:43 例〔以下,(+)群〕と自己抗体陰性群 49 例,男女比 19:30 例〔以下,( )群〕を比較(表 5)すると,(+)群の発症年齢は 8 74 歳,平均年齢は 41.0 歳,( )群の発症年齢は 14 75 歳,平均年齢は 39.8 歳であった.女性の比率は,(+)群 84%,( )群 61%で有意差を認めた(p<0.01).平均年齢には差はなく,初発年齢分布では(+)群 は 3 0歳代と 50 歳代の二峰性を,( )群は 30 歳代を中心とした一峰性を示した(図 2).発症時に眼窩深部痛や運動痛を自覚した率は,(+)群41例中32例(78%),( )群46例中30例(65%)図 2初発年齢の分布ツꀀツꀀツꀀツꀀ (症例 )ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ (+)群:(-)群70歳代表 5自己抗体陽性群と陰性群の比較有意差(+)群( )群症例症例数51 例49 例女性**84%(43/51 例)61%(30/49 例)平均年齢─41.0 歳(8 74 歳)39.8 歳(14 75 歳)発症時,眼窩深部痛・動眼痛自覚─78%(32/41 例)65%(30/46 例)初診時,痛みのみで視力良好─17%( 7/41 例)17%( 8/46 例)両眼性初発時* 3%( 1/33 例)20%( 7/34 例)最終的─43%(22/51 例)43%(21/49 例)視神経乳頭発作時所見異常なし─45%(15/33 例)24%( 8/34 例)腫脹・発赤─55%(18/33 例)76%(26/34 例)視神経乳頭最終所見異常なし**16%( 8/51 例)43%(21/49 例)軽度退色─27%(14/51 例)41%(20/49 例)蒼白***57%(29/51 例)16%( 8/49 例)視力最低視力(0.1)以下─57%(24/42 例)56%(19/34 例)最終視力(1.0)以上*49%(25/51 例)69%(34/49 例)(0.1)以下**29%(15/51 例) 8%( 4/49 例)治療ステロイドなし─20%(10/51 例)24%(12/49 例)パルス治療─80%(41/51 例)73%(36/49 例)抗血栓治療─16%( 8/51 例) 2%( 1/49 例)免疫抑制薬併用─ 8%( 4/51 例) 4%( 2/49 例)パルス治療反応なし─28%(11/40 例)11%( 4/36 例)再発率(1 眼につき)1.0 回(1 4 回)0.3 回(1 2 回)再発症例**41%(21/51 例)16%( 8/49 例)視野異常残存*84%(36/43 例)60%(24/40 例)*:p<0.05,**:p<0.01,***:p<0.0001.─:有意差なし.———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091347(49)野異常が残存した割合は,(+)群で 84%,( )群 で60%であり,(+)群に多く視野異常を残した(p<0.05).自己抗体の種類についての検討では,抗 AQP4 抗体陽性群(AQP 群),抗サイログロブリン抗体あるいは抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体陽性群(甲状腺群),抗核抗体陽性群(N 群),抗 SS-A 抗体あるいは抗 SS-B 抗体陽性群(SS 群),抗 DNA 抗体陽性群(DNA 群)の 5群に分類した(表 6).複数の抗体を有する症例が存在し,各群に重複症例を含む.自己抗体陰性群も表に加えた.内訳は,AQP 群 14 例,男女比 2:12 例,甲状腺群25 例,男女比 4:21 例,N 群 23 例,男女比 1:22 例,SS群10例,男女比1:9例,DNA群4例,男女比1:3 例.AQP 群の 50%,甲状腺群の 44%,N 群の 61%,SS群の 70%,DNA 群の 25%で,複数の自己抗体が陽性であった.SS 群と DNA 群は症例数が少ないため,単純に比較することはできないが,女性の比率は AQP 群 86%,甲状腺群 84%,N 群 96%,SS 群 90%,DNA 群 75%と,いずれも女性優位であり,平均年齢はそれぞれ 40.9 歳,42.6 歳,39.2 歳,43.3 歳,52.3 歳で,これらの群間に( )群に多かったが,経過中に両眼性となった率は両群とも 43%で,同率であった.発作時に視神経乳頭に異常所見を認めなかった率は,(+)群 45%,( )群 24% と,(+)群で高かったが,有意差は認めず,経過中の最低視力が(0.1)以下であった率は,(+)群 57%,( )群 56%と差はなかった.パルス治療を施行したのは(+)群 80%,( )群 7 3%.パルス治療に反応しなかった率は,(+)群 28%,( )群 11%で,有意差は認めなかったが,(+)群に多い傾向があった.観察期間 6 カ月 10 年間での再発は,(+)群で計 50回,平均 1.0 回(1 4 回),( )群で計 15 回,平均 0.3回(1 2 回)であった.再発率は(+)群 41%,( )群16%で,有意差を認めた(p<0.01).最終視力については,(1.0)以上は(+)群で 49%,( )群で 69%,(0.1)以下は(+)群で 29%,( )群で 8%であり,それぞれ有意差を認めた(p<0.05,p<0.01).経過中の最低視力と最終視力,および発症時の視神経乳頭形態と最終視力には,両群ともに相関関係は認めなかった.経過後の視神経乳頭所見は,(+)群 の57%,( )群の 16%で蒼白化しており,(+)群に有意に多かった(p<0.0001).視野検査において最終的に視表 6各種自己抗体の症例比較AQP 群甲状腺群N群SS 群DNA 群( )群症例数14 例25 例23 例10 例4例49 例複数自己抗体保有率50%( 7 例)44%(11 例)61%(14 例)70%(7 例)25%(1 例)─女性86%(12 例)84%(21 例)96%(22 例)90%(9 例)75%(3 例)61%(30 例)平均年齢40.9 歳(16 72 歳)42.6 歳(16 72 歳)39.2 歳(8 72 歳)43.3 歳(19 70 歳)52.3 歳(30 74 歳)39.8 歳(14 75 歳)両眼性64%( 9 例)36%( 9 例)48%(11 例)40%(4 例)50%(2 例)43%(21 例)パルス治療施行93%(13 例)76%(19 例)82%(19 例)80%(8 例)50%(2 例)73%(36/49例)再発率(1 眼につき)1.8 回0.7 回1.0 回1.2 回0.3 回0.3 回再発回数1 4 回1 4 回1 3 回1 3 回1回1 2 回最終視神経所見・蒼白化93%(13 例)52%(16 例)61%(14 例)70%(7 例)50%(2 例)16%(8 例)最終視力(1.0)以上21%(3 例)60%(15 例)61%(10 例)60%(6 例)50%(2 例)69%(34 例)(0.1)以下64%(9 例)20%(5 例)26%(6 例)20%(2 例)0%(0 例)8%(4 例)MS・NMO の症例数 MS123114 NMO411100MS:多発性硬化症,NMO:視神経脊髄炎.———————————————————————- Page 61348あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(50)パルス治療に反応不良な症例は,有意差はないものの,抗体陽性群に 28%と多く存在した.当然ではあるが,反応不良例ではパルス治療を複数回試行していた症例が多かった.再発率,再発頻度の結果から,抗体陽性例の場合は高率に再発し,かつ,くり返す可能性が高いといえる.視力経過は,自己抗体陽性群でも半数は視力良好であったが,ほとんどの症例で視野異常を残していたように,視力経過が良好な例でも後遺障害をきたす.さらに,陽性群では約 30%の症例で視力経過が不良であり,パルス治療への反応不良例の存在と,再発頻度の高さが関係していると考えられる.パルス治療に抵抗する抗 AQP4 抗体陽性視神経症に対して,早期の血漿交換治療の有効性が報告されてお り11),自己抗体陽性例で初回のパルス治療に反応不良な場合には,これらの治療や免疫抑制薬など,パルス治療以外の方法を検討する必要性が示唆される.全症例中の NMO 5 症例は全例が視神経炎で初発し,のちに後頸部や背中の痛み,手足のしびれなどの脊髄炎の症状が出現したため精査,診断確定となった.眼症状のみならず,全身症状への注意も必要である.抗核抗体とは,細胞の核成分に対する抗体を意味するため特異性はなく,現在では,各種核成分を対応抗原とする数多くの抗核抗体が知られている.今回検討した自己抗体のなかでは,抗 DNA 抗体,抗 SS-A 抗体,抗SS-B 抗体が抗核抗体にあたり16), 実 際 N 群,SS 群,DNA 群は重複例が多かった.原理的には, SS 群, DNA群では全例が抗核抗体も陽性のはずだが,その割合は60%,25%であった.これは,抗体価の程度と検出感度によるものと推察される.自己抗体間での検討では,性差,平均年齢で群間の差はなかったが,抗 AQP4 抗体が陽性の場合は,両眼性(64%),易再発性(平均再発率 1.8 回),視力経過不良〔最終視力(0.1)以下が 64%〕と際立って不良な結果を示した.以上より,視神経炎症例に対しては,より早期に自己抗体検査を施行し,自己免疫性か否かを判定する.自己免疫性である場合には,積極的なパルス治療と慎重なステロイドの減量を行う.その副作用などの全身管理も必は差はなかった.経過中に両眼に罹患した率は AQP 群 64%,甲状腺群36%,N 群 48%,SS 群 40%,DNA 群 50%で,AQP群で多く,平均再発率は 1.8 回,0.7 回,1.0 回,1.2 回,0.3 回とばらつきがあった.ステロイドパルス治療を行ったのは AQP 群 93%,甲状 腺 群 76%,N 群 82%,SS 群 80%,DNA 群 50% であった.最終的な視神経乳頭所見は,AQP 群 93%,甲状腺群52%,N 群 61%,SS 群 70%,DNA 群 50%で蒼白となり,最終視力が(1.0)以上はそれぞれ 21%,60%,61%,60%,50%,(0.1)以 下 は 64%,20%,26%,20%,0%で,抗 AQP 群の視力経過が明らかに不良であった.全 100 症例中に NMO は 5 例存在し,抗 AQP4 抗体陽性例は 4 例で,そのうち 3 例は両眼の最終視力(0.1)以下と,予後不良であった.3. 考察自己免疫性視神経症では,自己抗体が検出されなかった視神経炎に比し,女性の比率が圧倒的に高かった.両群の発症平均年齢に差は認めず,年齢分布では 30 歳代が最も多く,ついで 20 歳代であり,幅広い年齢層に発症する可能性が示唆された.発症時の症状として,視力低下の自覚以外に眼窩深部痛や運動痛が 70%前後と,両群とも高頻度に認められた.両群に,発症時に球後神経炎の形態をとる症例がそれぞれ 45%,24%,視力低下のない症例がともに 17%存在するため,臨床においては上記の眼痛所見に注意を払う必要がある.視神経炎は初発時片眼性でも,多くの症例が最終的に両眼に発症するため,自覚症状がなくとも僚眼の所見も必ず同時に得ておくべきである.治療は,両群ともほとんどの症例でパルス治療を行っていた.自己抗体陰性例(特発性)に対してのパルス療法は絶対適応ではない15)が,顕著な視力低下や,早期の社会復帰の必要性などによる選択結果であった.一方,抗体陽性群でも,視力低下が比較的軽度な場合や炎症の活動性が低い場合は,パルス療法を選択しなかった.———————————————————————- Page 7あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091349要とされ,特に抗 AQP4 抗体が陽性の場合には,さらに厳密かつ長期の管理を要する.まとめ今回は,自己抗体の存在と自己抗体の種類に焦点を当てて,自己免疫性視神経症を検討した.女性に多く,易再発性,視力経過不良といった,従来の自己免疫性視神経症の特徴が再確認できた.抗 AQP4 抗体陽性視神経症は,さらにその特徴を顕著に有することがわかった.視神経炎をみた場合には,自己免疫性の可能性,特に抗 AQP4 抗体陽性視神経症の可能性を,常に意識して対応する必要がある.文献 1) Duttonツꀀ JJ,ツꀀ Burdeツꀀ RM,ツꀀ Klingeleツꀀ TG:Autoimmuneツꀀ retrob-ulbar optic neuritis. 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