———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.3,20083410910-1810/08/\100/頁/JCLSマウスヒトキメラ抗体の開発が成功して以来,今日ではつぎつぎに抗体医薬が開発され眼科領域においても抗体治療が脚光を浴びています.抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体(ベバシズマブ)や抗tumornecrosisfactor-a(TNF-a)抗体(インフリキシマブ)がその代表です.今後10年間で医療市場には○○マブといった製剤が溢れかえっているかもしれません.本稿では,抗体療法の標的として今後注目されている補助シグナルを解説し,新規補助シグナル分子とそのリガンドを標的とする抗体治療の動物実験における結果や,眼内における補助シグナル分子の役割を解説しながら抗体を用いた免疫治療の可能性について述べていきます.補助シグナルとは免疫応答はT細胞,B細胞,抗原提示細胞である樹状細胞,マクロファージなどの相互作用によるネットワークにより調節されています.多種多様な免疫の相互作用は抗原特異的レセプターを介するシグナル(第1シグナル)に加え,数多くの細胞表面分子間を介したシグナルにより決定されます.このようなシグナルを総称して補助シグナルといい,広義にはインテグリンファミリーによる多くの接着分子群,さらにはサイトカインやケモカインにより誘導されるシグナルも補助シグナルに含まれます.補助シグナルは特に抗原提示細胞とT細胞においてよく調べられ,免疫反応を増大させる活性型補助シグナルと減弱させる抑制型補助シグナルがあり,それぞれの局面でふさわしい免疫応答が誘導され,収束することで恒常性が保たれ免疫反応を調節しています(図1).補助シグナルによる免疫療法補助シグナル分子を人為的に調節することにより自己免疫疾患,臓器移植,アレルギー,癌,感染症などの原因となる抗原特異的T細胞の制御が可能になるため,現在では新規免疫治療薬としての補助シグナル分子の臨床研究が行われています.ヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)では最も古典的な補助シグナル経路であるCD28-CD80/86経路を阻害することにより病気の発症を抑制することができます1)が,CD28分子がほぼ恒常的に健常人や眼Behcet病の患者リンパ球に発現しているため臨床応用がむずかしいとされています.しかし,近年発見された新規の補助シグナル分子であるinducibleco-stimulator(ICOS)は,CD28と比較して抗原刺激を受けたことのないT細胞上にはほとんど発現がみられず,活性化に伴って発現が上昇することからICOSは病気がすでに起こっている状態において重要であると考えられていま(67)シリーズ第87回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊(東京医科大学眼科)補助シグナルによる免疫制御と眼免疫とのかかわり図1T細胞と抗原提示細胞の相互作用に関する補助シグナル分子群舁浴蛆???T??CTLA-4CD28ICOSPD-1BTLACD274-1BBOX40RANKCD40B7-1(CD80)B7-2(CD86)B7RP-1B7-H1HVEMCD704-1BBLOX40LTRANCECD40LB7-DCB7-H3B7-H4???B7-CD28familyTNF-TNFRfamily———————————————————————-Page2342あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008す.実際,筆者らはICOSが炎症時にのみ炎症局所の病原T細胞に発現していることから,そのリガンドの抗体である抗B7RP-1抗体を投与し,EAUの発症期にICOS/B7RP-1経路を阻害することでEAUの完成後における臨床症状と病理組織所見の軽減化,インターフェロン(IFN)-g産生の抑制効果,病原T細胞の増殖反応低下などを認めました2).また,眼炎症のある活動期Behcet病患者末梢血CD4+T細胞上のICOSは非活動期Behcet病患者や健常人のそれに比べ有意に発現が高く3),今後の難治性ヒトぶどう膜炎の治療において可能性が示唆されました.さらに,他の活性型補助シグナル分子であるOX40/OX40Lにおいては,マウス角膜移植モデルでこの経路を阻害することにより有意に生着が延長されることがわかりました4).そしてOX40-OX40L経路は動脈硬化発症に直接関与することも証明されているので,免疫疾患のみならず生活習慣病などの治療にも応用範囲は広くなると思われます5).眼局所における補助シグナル分子の役割本シリーズ第61回における東京医科歯科大学の杉田直先生の眼色素上皮細胞の免疫学的抑制機構において,マウス虹彩色素上皮細胞に古典的な補助シグナル分子であるCD86が発現し,cytotoxicTlymphocyte-associ-atedantigen(CTLA)-4を発現している活性化T細胞を抑制しサイトカイン産生を制御していることが掲載されましたが,これも眼局所において補助シグナル分子が関与している例です6).また,近年筆者らは新規の抑制型補助シグナル分子PD-1のリガンドであるPDL1がヒト網膜色素上皮細胞に発現し眼局所における免疫抑制機構に関与していることを認めました7).さらに正常細胞のみならず,ヒト網膜芽細胞腫の細胞株においてもPDL1の発現を認め,ケモカインを介して抗腫瘍T細胞反応を抑制している可能性や,活性型補助シグナル分子であるCD40を発現させることによって癌免疫療法の可能性があることもわかりました8).このように免疫細胞のみならず眼局所の細胞に補助シグナル分子が発現していることは大変興味深く,今後の研究の進展が期待されます.補助シグナル研究のめざすもの抗原特異的なシグナル(第1シグナル)を阻害する治療は,その病気の抗原が同定されている場合は可能ですが,応用がきわめて限られています.また,CD3などのT細胞受容体(TCR)などの治療法も試みられていますが,サイトカインストームやアポトーシスによるT細胞破壊で起きる免疫不全などが問題とされています.これに対して補助シグナル分子の阻害は抗原特異性,主要組織適合抗原複合体(MHC)拘束性がなくどのような免疫応答にも使用できる可能性があります.また,活性型の補助シグナル分子が存在しない状況において,T細胞は抗原を認識したうえでの抗原特異的不応答状態になるため補助シグナルの欠如によるT細胞不応答はT細胞が活性化されないだけでなくその後につづく同一抗原刺激に対しても無反応となるため,抗体を用いた補助シグナル阻害は免疫療法を行ううえで抗体治療中だけでなく投与後も効果が持続するという利点があり,今後の臨床応用が期待されています.実際,T細胞の活性化に必須である補助シグナル分子のCD28を介するシグナルを阻害するCTLA-4-Ig融合蛋白質のアバタセプトは2006年に米国で承認され,わが国でも第Ⅱ相臨床試験が進行しています.補助シグナル分子の研究は抗体医薬の臨床応用が究極の目標でありますが,それだけでなく眼局所における補助シグナル分子が各眼疾患の病態や病因の解明に大きなヒントを与えつつあります.今後,補助シグナル分子の基礎研究と臨床応用へのトランスレーションが眼疾患の解明や治療にさらなる進歩をもたらすことを期待したいと思います.文献1)FukaiT,OkadaAA,SakaiJetal:Theroleofcostimula-torymoleculesB7-1andB7-2inmicewithexperimentalautoimmuneuveoretinitis.GraefesArchClinExpOphthal-mol237:928-933,19992)UsuiY,AkibaH,TakeuchiMetal:TheroleoftheICOS/B7RP-1Tcellcostimulatorypathwayinmurineexperimentalautoimmuneuveoretinitis.EurJImmunol36:3071-3081,20063)臼井正彦:実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)のトランスレーショナルリサーチ.日眼会誌111:137-159,20074)HattoriT,UsuiY,OkunukiYetal:BlockadeofOX40ligandprolongscornealallograftsurvival.EurJImmunol37:3597-3604,20075)WangX,RiaM,KelmensonPMetal:Positionalindenti-cationofTNFSF4,encodingOX40ligand,asagenethatinuencesatherosclerosissusceptibility.NatGenet37:365-372,20056)杉田直:眼科医のための先端医療眼色素上皮細胞の免疫学的抑制機構.あたらしい眼科23:63-64,20067)UsuiY,OkunukiY,HattoriHetal:Functionalexpres-(68)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008343(69)ulatorymoleculesonhumanretinoblastomacellsY-79:functionalexpressionofCD40andB7H1.InvestOphthal-molVisSci47:4607-4613,2006sionofB7H1onretinalpigmentepithelialcells.ExpEyeRes86:52-59,20088)UsuiY,OkunukiY,HattoriTetal:Expressionofcostim-■「補助シグナルによる免疫制御と眼免疫とのかかわり」を読んでかは抗ざのりとのに「抗の」にるとわすの抗抗です抗抗ののは療をよに眼療をもものとわすか抗抗はに作用るので眼局所の免疫制御療には作用のかにりす抗抗ではに抗抗ににでるもりす臼井嘉彦るよに補助シグナルを制御するとでよりめ細かでをに療をとです細は本文によすのですの抗療はより局をわわのにはと研究分をとです分子のをかにする研究には用すは所とる免疫をもでり分子のにおける作用はのかするとかでんで分子のにおけるの作用をるめには療にですで分子をすよとはわかはにるものではりんか抗療によりににお分子をするととのですは抗の療に療研究にをもすものですと抗抗を用の眼をの眼の制御にのよにかかわるかにのわかりすでるはでものをはるかにするをわわにもすでのを用に療法にるでの文はの眼の用をにするものとす文献1)HaerDA:Cytokinesandinterventionalimmunology.NatureRevImmunol7:423,2007鹿児島大学医学部眼科坂本泰二☆☆☆