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コンタクトレンズ:読んで広がるコンタクトレンズ診療 レンズケアはむずかしい?

2022年12月31日 土曜日

提供コンタクトレンズセミナー読んで広がるコンタクトレンズ診療4.レンズケアはむずかしい?■はじめに現在,さまざまなコンタクトレンズ(CL)ケア用品が登場しているが,レンズケアについて記述した教科書は多くない.また,レンズケアに関する研究も数多く行われているが,その多くは英語論文であり,日本語論文は少ない.このため,レンズケアはフィッティングなどと比較して学びづらい状況にある.そこで本稿では,レンズケアの概要をわかりやすく解説する.C■不適切なCLケアによるトラブル涙液に含まれる蛋白質・脂質がレンズに付着すると,レンズのくもりだけでなく,レンズの酸素透過性の低下,角膜への機械的刺激の増加を生じる.その結果,くもりによる視力低下や,眼瞼結膜のアレルギー反応や機械的刺激の増加に伴う装用感の悪化など,さまざまな症状を引き起こす.また,CL装用による機械的刺激や角膜低酸素によって角膜上皮のバリア機能が破綻すると,CLに付着した微生物が増加した際に,角膜感染症を発症しやすくなる.C■レンズケアの目的と工程レンズケアの目的は,①レンズに付着した蛋白質・脂質・微生物を除去し,②衛生的に保存・装用するとともに,③レンズの特性を失わないことである.そのため,レンズの洗浄・消毒のみならず,清潔に取り扱うための手指洗浄やケースの乾燥・洗浄もレンズケアの工程に含まれる.レンズケアの工程と注意点を図1に示す.C■手指洗浄レンズケアではハンドソープを用いた手指洗浄が必須である.手指洗浄の目的は,手指からの汚れをレンズに付着させないことである.レンズの洗浄・消毒は正しくできているにもかかわらず,不十分な手指洗浄が原因でレンズがくもることは珍しくない.見落としがちではあるが,レンズケアの一環として手指洗浄をしっかりと指導したい.糸井素啓京都府立医科大学大学院医学研究科視覚再生機能外科学道玄坂糸井眼科レンズの装用前に丁寧に手指を洗浄するSCLのすすぎに水道水の使用は禁止洗浄後,水分を拭き取り乾燥させるレンズをはずす前にも手指を洗浄するこすり洗いを必ず行うSCLのすすぎに水道水の使用は禁止過酸化水素剤・ポビドンヨードによる消毒では中和を行う図1レンズケアの工程手指洗浄やレンズケースの乾燥も,レンズケア工程の一つである.C■洗浄と消毒レンズケアの工程には,付着した汚れを除去することを目的とした「洗浄」と,病原微生物の除去を目的とした「消毒」がある.わが国では,ソフトCCL(SCL)のケアには洗浄と消毒が必要とされている一方で,ハードCL(HCL)は洗浄のみで消毒は必要ないとされている.これは,HCLの素材が水分を含まないため微生物が繁殖しづらいことが理由として考えられる.しかし,オルソケラトロジーレンズのような特殊形状CHCLはレンズ内面の汚れを落としづらく,洗浄だけでは汚れや微生物が十分に除去できない可能性がある.そのため,2017年のオルソケラトロジーガイドラインでは,ポビドンヨード剤による消毒が推奨されている.HCLの洗浄方法は,こすり洗いとつけおき洗いのC2種類に大別され,こすり洗いを行う場合は専用クリーナーとCHCL用の保存液が,つけおき洗いを行う場合は洗浄保存液が必要となる.物理的洗浄であるこすり洗いは,化学的洗浄であるつけおき洗いに比較して洗浄効果が優れており,HCLのケアではこすり洗いが原則となる1).ほかにも,蛋白汚れや脂質汚れが目立つ場合は,それぞれ蛋白除去剤や,アルコール入りの洗浄液を使用する.(65)あたらしい眼科Vol.39,No.12,2022C16330910-1810/22/\100/頁/JCOPY表1SCL消毒方法の比較種類主成分消毒力注意点細菌真菌アカウントアメーバCPHMBCMPSアレキシジン△.○C△C×製品ごとの消毒力の差が塩化ポリドロニウム大きい過酸化水素剤過酸化水素C○C○C△中和を要する中和を要するポビドンヨード剤ヨウ素C◎C◎C○甲状腺機能障害の既往があると禁忌図2乾燥時のレンズケースの置き方左はCSCL,右はCHCLのレンズケース.いずれも清潔なティッシュペーパーで十分に水分を拭き取り,8時間以上乾燥させる.現在,SCLの消毒方法は,C①CMPS(multipurposesolution)またはCMPDS(multipurposeCdisinfectingsolution),②過酸化水素,③ポビドンヨードのC3種に大別され,それぞれ消毒力が異なる(表1).MPSは,洗浄から保存までをC1本で行えるため利便性に優れているが,製品ごとの消毒力の差が大きく,他の方法に比較して消毒力が劣っている.しかし近年は,MPSに比べて消毒力の高いCMPDS2)が新しく登場している.過酸化水素とポビドンヨードは,いずれもCMPSよりも消毒力に優れているが,それぞれ中和が必要なため,利便性に劣る.とくに過酸化水素は,中和をしないで装用すると強い痛みとともに角膜上皮障害を引き起こすため,使用方法について,丁寧な指導を行うことが望ましい.また,アカントアメーバのシストにはC3種とも十分な消毒効果を示さない3)ことに注意を要する.上述のC3種の消毒方法は,消毒効果と生体安全性,利便性がそれぞれ異なるため,患者の希望と感染リスクに応じて選択する.■レンズケースのケアケース消毒後に,残留した微生物がケース内に増加すると,レンズに汚れ・微生物が再付着する可能性が高くなり,眼感染症の危険因子となる4).また,レンズケース内の汚染が長期にわたると,菌同士が強固に接着したバイオフィルムを形成し,細菌の除去がより困難となる.そのため,レンズケースは水洗い後に乾燥させて水分を除去し,1.2カ月ごとに交換することが望ましい(図2).C■おわりに安全かつ快適なCCL装用を続けるには,適切なレンズの取り扱いとレンズケアが欠かせない.そのため,各種ケア方法の特徴に基づいて患者に適したレンズケア方法を選択するだけでなく,手指消毒の徹底,こすり洗いの遵守,レンズケースの乾燥・交換などの基礎的な対策の有効性をくり返し説明することが望ましい.文献1)糸井素純:安全性を優先したコンタクトレンズのケア.あたらしい眼科28:1665-1671,C20112)水野洋平:消毒成分配合CMPDSの消毒効果.日本コンタクトレンズ学会抄録集,20223)KobayashiT,GibbonL,MitoTetal:E.cacyofcommer-cialCsoftCcontactClensCdisinfectantCsolutionsCagainstCAcan-thamoeba.JpnJOphthalmolC55:547-557,C20114)山崎勝英:レンズケース内の消毒.日コレ誌C28:163-166,C2020C

写真:免疫チェックポイント阻害薬を使用中に生じたSjögren症候群様の角結膜上皮障害

2022年12月31日 土曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦463.免疫チェックポイント阻害薬を使用中に富永千晶福岡秀記京都府立医科大学眼科生じたSjogren症候群様の角結膜上皮障害図1前眼部所見(ディフューザーによる観察)軽度の結膜充血を認める.図2前眼部所見(フルオレセイン染色のブルーフリーフィルターによる観察)角膜下方に点状表層角膜症を認める(中央).耳側鼻側結膜に高度の点状染色がみられる(左右).図3図2のシェーマ①結膜上皮障害②角膜下方の点状表層角膜症(63)あたらしい眼科Vol.39,No.12,2022C16310910-1810/22/\100/頁/JCOPY症例は67歳の男性.中咽頭癌肺転移に対して2020年4月より京都府立医科大学附属病院(以下,当院)耳鼻咽喉科で化学療法が開始された.2020年5月から11月までニボルマブを投与され,2021年5月からはペンブロリズマブ+シスプラチン,2021年C10月からはペムブロリズマブ単剤が使用開始となった.2022年6月頃より両眼の痛みを生じたため,当院眼科へ紹介となった.それまでドライアイの既往はない.SchirmerテストCI法では右眼C5Cmm,左眼C0Cmmと著明に低下していた.また,角膜よりも結膜優位の上皮障害を認め,Sjogren症候群様のドライアイであった(図1~3).血液検査では抗CSS-A抗体,抗CSS-B抗体,抗核抗体,リウマチ関連因子はすべて陰性であった.0.1%フルメトロン点眼(両眼C1日C4回)で治療を開始し,経過観察中である.免疫チェックポイント阻害薬(immuneCcheckpointinhibitor:ICI)は,免疫チェックポイント分子へのシグナル伝達を阻害して免疫応答を増強する,比較的新しい癌の治療薬である.ICIは,T細胞上に発現するCcytoC-toxicT-lymphocyteCantigen-4(CTLA-4)やCpro-grammedCcelldeath-1(PD-1),抗原提示細胞や癌細胞表面上に発現するCprogrammedCcellCdeathCligandC1(PD-L1)を標的とする特異的な抗体である1).従来から使用されている抗癌剤や分子標的治療薬は,癌細胞そのものを治療標的としており,腫瘍内に異なる遺伝学的背景をもった複数の治療抵抗性のクローンが残存する可能性があり,効果にも限界があった.ICIはCT細胞免疫を介して,非自己と認識した癌細胞を攻撃することができ,生存率向上に寄与するため,使用の適応は拡大している.しかし,その一方で,治療を契機に免疫を正常に調整できなくなり,自己免疫疾患や炎症性疾患様の副作用を生じる事象が報告されている2).これらは免疫関連有害事象(immune-relatedCadverseevents:irAE)とよばれる.ICI使用による眼毒性は比較的まれとされているが,なかでもドライアイ,ぶどう膜炎は多く報告されている3).その理由として,ICIはCCD8陽性CT細胞のリンパ球浸潤とCIL-2の分泌を誘発し,涙腺のサルコイドーシス様の肉芽腫性炎症につながるという説と,ICIのなかでもとくに抗CPD-1抗体薬が眼表面へのCT細胞の浸潤を引き起こすとされている説が提唱されている4).ほとんどの症例がCICI開始後C6カ月以内にCirAEを発症していた.重度のドライアイを生じた例ではCICIの中止を余儀なくされている.irAEによる眼障害は,症状,眼所見,視力によりCGrade分類されており,それぞれ異なった治療が示されている(CTCAEGrade)1).もっとも重度のCGrade4ではCICIの投与中止と,ステロイド全身投与が推奨されている.重度のドライアイに対してはシクロスポリンの局所投与が効果的であったとの報告もある5).ニボルマブやペムブロリズマブなどの抗CPD-1抗体が腫瘍細胞に対するT細胞の作用を促進することを考えると,シクロスポリンは反対に抑制するためと考えられる.わが国で承認されている抗CPD-1抗体のCICIはニボルマブ,ペムブロリズマブであり,本症例においても使用されていた.irAEはCICI使用中止後も生じることもあり,他科との連携が重要と考えられる.文献1)岩田大樹:チェックポイント阻害薬と眼副作用-抗CPD1抗体,抗CPD-L1抗体,抗CCTLA-4抗体治療に伴う眼副作用.あたらしい眼科39:179-186,C20222)ParkRB,JainS,HanHetal:Ocularsurfacediseaseasso-ciatedCwithCimmuneCcheckpointCinhibitorCtherapy.COculCSurfC20:115-129,C20213)Abdel-RahmanO,OweiraH,PetrauschUetal:Immune-relatedCocularCtoxicitiesCinCsolidCtumorCpatientsCtreatedCwithCimmuneCcheckpointinhibitors:aCsystematicCreview.CExpertRevCAnticancerTherC17:387-394,C20174)HoriJ,KunishigeT,NakanoY:Immunecheckpointscon-tributeCcornealCimmuneprivilege:ImplicationsCforCdryCeyeCassociatedCwithCcheckpointCinhibitors.CIntCJCMolCSciC21:3962,C20205)NguyenAT,EliaME,MaterinMAetal:CyclosporinefordryCeyeCassociatedCwithNivolumab:ACcaseCprogressingCtocornealperforation.CorenaC35:399-401,C2016

眼科の先達に学ぶ:5.清水 弘一 先生

2022年12月31日 土曜日

岸章治前橋中央眼科ここに『論文論』という本がある.これは清水弘一教授が「臨床眼科」誌(医学書院)に,論文の書き方と学会の発表の仕方をコラムで連載したものを集めて私家版(1992年)にしたものである.表紙は銀色,表題は松葉色で,著者名は凹加工されている.見返しは若草色である.これは清水先生の美的センスによるもので,エッセイ集『べらどんな』も同じスタイルである.序文は,清水先生の恩師である鹿野信一教授が寄せている.曰く「清水弘一教授は御承知の通り,東大の中でも該博の智識と,独英仏は当然として,ラテン語,ギリシア語まで堪能な方であり,医学研究の上でも独特の鋭い観察と考え方で数多くの名論文を発表されている.そのベテランが展開された“論文論”である.よい本となるのは当然だと思う」.清水先生には言語学者,エッセイストとしての側面があった.『論文論』は短い断片からなっており,それぞれに「なぜ論文を」「白い紙面」「ひとり相撲」「お子様ランチ」「赤い糸」「君がため」「悪魔の弁護士」などの魅力的なタイトルがつけられている.これらの話は,門下生ならあの時,教えられた話だと思い当たるであろう.略歴恩師清水弘一先生は,昭和8年2月に満州国奉天省撫順市で出生.昭和22年7月に内地に引き揚げ愛媛県立大洲中学校に編入.昭和26年3月に愛媛県立大洲高等(57)0910-1810/22/\100/頁/JCOPY清水弘一先生(1992年)学校を卒業し,4月に東京大学教養学部理科二類に入学.昭和28年4月東京大学医学部医学科に進学し,昭和32年3月に卒業.東京大学医学部附属病院で1年間インターンをされ,入局直前の昭和33年4月に奥さま(岡田玄子さま)と結婚.奥さまは高校の同級生とお聞きした.お茶の水女子大出で才色兼備の方だった.奥さまは清水先生が亡くなるまで,先生の最大の理解者で応援者であった.昭和33年7月に東京大学眼科に入局,同時に文部教官助手となった.入局後は萩原朗教授・鹿野信一助教授に師事.昭和35年に文部省留学生としてドイツ国ボン大学に留学(1年間).昭和39年7月東京大あたらしい眼科Vol.39,No.12,20221625図1『論文論』表紙(1992年)学眼科講師,昭和46年9月東京大学眼科助教授.そして昭和47(1972)年4月,39歳で群馬大学眼科教授として赴任.平成10(1998)年3月に定年退官された.群馬大学での在任期間は26年に及んだ.1998年のMacu-laSocietyで日本人としては初のArnallPatzMedalが授与された.受賞者はGoldberg,Green,Hayrehと続き,数年後に,Yannuzzi,Coscasが受賞している.定年後は帝京大学や埼玉医科大学で客員教授をされていた.昨年(2021年12月),ご家族に見守られて88歳で逝去された.学会活動清水先生の国内におけるおもな特別講演は,日本眼科学会宿題報告として,昭和45年に「蛍光眼底造影をめぐる諸問題」,昭和52年に「光凝固をめぐる諸問題」をされている.日本に最初にアルゴンレーザーが輸入されたのは昭和48年で,群馬大学と広島大学に設置された.昭和50年代では,汎網膜光凝固(panretinalphoto-coagulation:PRP)により増殖糖尿病網膜症が鎮静化し,新生血管が退縮することは新知見だった.学会ではPRPを暴挙と考える意見も出ていた.日本眼科学会特別講演としては,平成元年に「糖尿病網膜症」を,日本臨床眼科学会特別講演は,平成5年に「赤外蛍光造影」をされている.清水先生のおもな研究テーマは,東京大学時代の前半は前房隅角だったが,その後,蛍光眼底造影に移った.蛍光眼底造影は黎明期であり,先生は自分でフルオレセインを被検者に注射し,自分で撮影をしていたという.群馬大学に来てからも蛍光眼底造影がおもな研究手段であり,そこから糖尿病性網膜症の病態,光凝固による治療,家族性滲出性硝子体網膜症や高安病の網膜血管病態,血管鋳型による三次元的な眼血管構築などに広がった.蛍光眼底造影は私が入局当初(1976年)はトプコンの画角30°のカメラを使っていたが,2,3年後にキャノンが60Zという画角が60°で解像力のよいカメラを開発した.このカメラを使って後極だけでなく,周辺の造影写真もとれるようになった.撮影は最初に後極部,次に中間周辺部,さらに最周辺部がとられ,各部の造影写真を貼り合わせてパノラマ蛍光眼底写真が作成された.これにより,糖尿病網膜症は後極だけを見ていたのではだめで,中間周辺部に無灌流領域(nonperfusionarea:NPA)が初発すること,NPAの境界に新生血管が生じること,NPAが拡大すると,乳頭新生血管が生じること,さらに拡大すると血管新生緑内障になることが示された.それを集大成したのが,1981年のOphthalmolo-gy誌に出た“Midperipheralfundusinvolvementindiabeticretinopathy”である.これは糖尿病網膜症を語るうえで金字塔というべき業績であった.外国の学会では,画面一杯にパノラマ蛍光眼底が映し出されると聴衆が唸り,講演が終わると大拍手が起こった.清水先生は得意満面であった.このパノラマは村岡兼光先生のグループの労力のもとに作成された.外国人が見学に来たが,laborintensive(手間がかかりすぎる)なので,自分たちには無理だと言っていた.この技術は群馬大学のお家芸となり,インドシアニングリーン蛍光造影にも応用された.ここでは高橋京一先生らによって,脈絡膜血管の可塑性に関する新知見が次々に発表された.最近,群馬大学から出ているパキコロイド病における渦静脈のリモデリングのアイデアは,この知見に立脚したものである.清水先生はたくさんの単行本(モノグラム)を出版した.これらの本は編集代表としてではなく,自ら執筆したものである.最初の本は昭和40年の『前房隅角図譜』(鹿野信一先生と共著)である.当時,先生は32歳である.昭和42年に「蛍光眼底造影」を英文で出版(34歳!),昭和48年には「蛍光眼底微小血管造影」をやはり英文で出版している.このころ,清水先生は東京で図2『べらどんな』表紙(1981年)国際蛍光眼底造影の学会を主催されている.先生は若いときから世界のリーダーと目されていた.外国人は音に聞くShimizuが現れたらあまりに若いのでびっくりしたそうである.清水先生は,海外の学会には「戦いに行くような覚悟で臨む」と語ってくれたことがある.「日本はアメリカの植民地ではない」とも言った.背筋をピンと伸ばし,堂々と世界のリーダーたちと渡り合う姿はサムライのようであった.ドイツの学会では日本人のShimizuが完璧なドイツ語を話すので,米国人が驚いたそうである.先生は欧米の網膜の教授たちに多くの友人がいたが,なかでも“TheRetinalCirculation”を著したPaulHenkind(1932~1986年)は,ほぼ同い年であり,お互いに尊敬しあう親友であった.1978年に京都で国際眼科学会が行われたとき,清水先生は倉敷でRetinaWorkshopを主催した.海外から50人ほどの著明な研究者が参加した.清水先生は「手紙で一本釣りしたら,Shimizuのためならと,皆さん手弁当で来てくれたんだ」と言っていた.フィレンツェのBlancato教授の弟子のフランチェスコの話では,清水先生がベニスに来たとき,食事会でダンテの『神曲』をそらんじたそうである.単行本は,昭和52年には『光凝固』(野寄喜美春先生との共著),昭和53年に“StructureofOcularVessel”(氏家和宣先生との共著),昭和57年に『レー図3『べらどんなの妹』の見返し(1984年)「眼科にもささやかなロマンが」と書き入れて贈呈してくださった.ザー光凝固』(野寄喜美春先生との共著),昭和59年に『糖尿病網膜症』(野寄喜美春先生との共著),昭和61年に『眼底出血』(野寄喜美春先生・猪俣孟先生との共著),昭和62年に『レーザー眼治療』(野寄喜美春先生との共著),平成4年に『レーザー眼治療(英文)』(野寄喜美春先生との共著)が刊行された.清水先生は臨床研究の大切さをいつも強調していた.「MDがPhDのまねをしてどうする」というのが口癖だった.ClinicalScienceを究めた人が海外でも尊敬されるのだと言っていたが本当だった.私が師事した眼病理学のMarkTso教授も病理所見の解釈にはMDのセンスを生かせといつも言っていた.病気を直接見ることができるのはMDの特権である.「病気は神様が作った実験だと思え」と清水先生はよく言っていた.抗VEGF薬が出てから,治験が大はやりである.清水先生は製薬会社から持ち込まれる治験の依頼はすべて断っていた.見返りの研究費が欲しいのは山々であるが,どうしても嘘をつくことになるし,それに使う時間も惜しいということだった.「ダメなことに時間を使うと大事なことをする時間がなくなる」とよくおっしゃっていた.図4PaulHenkindが描いた清水先生の似顔絵(1976年)臨床講義清水先生の臨床講義は学生に強烈な印象を与えた.私もそうだが,先生の講義を聴いて眼科を選んだひとは多いのではないか.講義は金曜日の午後1時から2時半までである.1時を3分ほど過ぎると先生が颯爽と臨床講堂に入ってくる.皆が注目しているなかで,先生は黙って黒板に前の机の上に,チョークを白・赤・黄・緑・青とキチンと並べる.その後,学生に対峙するのだが,いきなり講義の主題には入らない.外国の学会に行った話,医学部の予算配分,病院建築がどのように進んでいるかなどの話をした.いわゆる「枕を振る」のである.聞き手がその気分になったところで本題に入る.主題はいつも一つである.白斑とか出血,そして回数が進んでくると脈なし病や網膜.離が話題になってくる.階段教室なので前が広くあいている.先生は竹の竿をぶらぶらさせ歩きながら話をした.大事なところでは,竿を立てて大きな目でこちらを睨むのであった.今思うと歌舞伎役者が見得を切るのに似ていた.「未熟児網膜症は無血管野の虚血が原因である.治療は目玉焼き」といって鋭い眼光のまま口元をニッとするのであった.講義はいつも面白くわかりやすかった.予備知識なしでちゃんと理解できるのであった.最終回の話題は「医原病」であっ図5外来暗室で(1989年頃)た.ステロイド緑内障,スモン,クロロキン網膜症などを解説したあとで強調されるのが,「加害者である医師はすべて善意の人だった」という話である.そして,「医師は善人であるだけでは十分でなく,賢くなければならない」「だから諸君は将来医者になってもしっかり勉強しなさい」と強調して講義が終わった.医局員の教育昭和51(1976)年5月,私が連休明けに初出勤した日,清水先生は“Adler’sPhysiologyoftheEye”を人数分用意して待っていた.新人を前にして,先生は「泳ぎができない人を泳がせる方法はプールに放り投げることである」と言い,そのまま我々を外来に連れて行き,いきなり新患をもたせたのであった.カルテに描く眼底のスケッチは,最初のころは直像鏡しか使えなかったので乳頭とその周辺だけであったが,夏が終わる頃には倒像鏡で眼底全体が描けるようになった.新人は出勤第1日目から古参の医局員と一対一で組んで仕事をする,この兄弟子と弟弟子の関係を,オーベン,ネーベンという.オーベンはカルテの記載の仕方,ムンテラのコツ,手術の手ほどきなど眼科の現場に関係するすべてを教える.それと並行して,新人相手にクルズスが20回ほど行われた.クルズスでは,視力測定,検影法,ボンノスコープの使い方,直像鏡,倒像鏡,スパルトの見方,Goldmann視野計,眼圧測定法(シェッツとアプラネーション),蛍光造影法,網膜電図などのレクチャーがあった.もっとも詳しかったのは,蛍光造影写真の現像と紙焼きであった.Adlerの輪読会は最初のうちは清水先生がつき合ってくれたが,あとは自分たちでということ図6筆者(岸)の教授選出後の祝杯(1996年3月,眼科研究室)だった.当時は日本語のよい本がなかったし,日本語をいう意味からは非能率であるが,若い医者にとっては毎読むのは安直だという風潮があった.丸善が定期的に本回添削を受けることができるし,紹介医は上医診を期待を持ってきた.洋書は2,3万した(当時は1ドル=360しているのでそれに応えることができる.暗室には10円).今の感覚では6万円の本を買うようなものである.個ほどのカーテンで仕切った診察ブースが並んでいる.先生は「本は高いと思うな.高いと思うなら,そのお金暗室全体を見渡せる角に広めのブースがあり,そこで教をあげるから本を書いてみろ」とよく言っていた.授診が行われた.暗室の奥には眼底カメラ,光凝固装置Tolentino,Schepensの“Vitreoretinaldisorders”,などが並んでいた.蛍光眼底造影は年間2,000件行われYano.の『眼病理』,Hoganの『電顕組織学』を読んだた.大部屋なので会話は筒抜けである.医局員は先輩やことは,その後大いに役立った.群馬大学では眼科全般後輩のムンテラを聞きながら,互いに学んでいくのであに対応できる医師の育成をめざしていたので,医局員をる.先生は声が大きいので週2回の教授診の間,すべて専門別に分けることはしなかった.先生は信長のようなの会話が否応なしに入ってきた.先生は貴重な経験を皆ところがあり,いつも「下剋上」と言っていた.学問ので共有しよう考えていた.あるとき1診のベルがチリン世界で弟子は師の縮小再生産であってはならず,それをと鳴った.全員集合の合図である.このとき小口病の金超えなければならないということであった.先生からは箔眼底を初めて見せてもらった.清水先生は個室診療の疾患の考え方,論文の書き方,発表の形式に至るまで指弊害をよく語っていた.私もある大学の外来を見学した導された.「三毛猫は三毛猫でもみな違う,簡単に文献ことがあるが,完全な個室であった.静かな空間で,患を信じるな,権威者はほどほどに,病気から学べ」とい者のプライバシーは保たれるであろうが,どんな診察がうのが口癖だった.行われているかチェックの仕様がないし,他からも学べないであろう.清水先生は,貴重な症例を個人が温めて診療スタイル人に見せないのを「院内開業」とよび,ほとんど憎んでいた.先生の眼底スケッチは,それをまとめて本にした群馬大学眼科の外来の特徴は,上医診と大部屋スタイいほど秀逸であった.先生は絵心があり,色鉛筆を何色ルであり,いまでもその伝統が踏襲されている.若い医も使い,スケッチ自体が美しく,洗練されていた.何よ者は自分勝手に患者を帰すことはできない.所見をとりもスケッチに解釈が示されていた.たとえば,網膜.り,1,2診(教授+講師または助教授+講師)に出し,離では裂孔からどのように.離が進展したか,硝子体がコメントと指示を仰ぐことになる.これは患者の回転とどう関与しているか,裂孔からの色素細胞がどう散布さ図7筆者(岸)の日本眼科学会特別講演に来られた清水先生ご夫妻(2014年)れ,網膜表面に膜ができたかが詳細に描かれていた.1970年代は硝子体手術も眼内レンズもない時代である.私の入局の3年前(1973)にアルゴンレーザーが導入されていたが,西独Zeissのキセノン光凝固も現役だった.先生は「アルゴンは眼底に焦げ目をつける器械,キセノンは病気を治す器械」といっていた.キセノンは未熟児網膜症や網膜.離,ときに糖尿病網膜症にも使われていた.この装置は「象」とよばれており,箪笥くらいの大きな本体から太い筒が出ていた.網膜.離はもっぱらバックリング手術で清水先生が全例執刀していた.先生の手術日には,我々は病棟から手術場まで「象」を引きずっていった.教養の大切さ清水先生は,「ひとは表芸(仕事)だけではだめで,裏芸(教養)の深さが人間の価値を決めるのだ」といつも語っていた.先生はそれを「べらどんな」やワインのコラムで自ら示した.私が新人のころ,医局にはワイン屋が時々来て,試飲会を行っていた.当時はドイツワインが主流だった.タバコをふかしながら,『べらどんな』を書いているときの先生は本当に楽しそうだった『べらどんな』は昭和52(1977)年に「臨床眼科」誌(金原出版)のコラムとして始まった.最初のコラムは「シャーロック・ホームズと眼科学」である.このシリーズは平成9(1997)年,先生の定年退官の前年に第6巻でいったん完結した.その後もコラムの連載が続き,亡くなる1年ほど前(2020)まで続いた.今回,『べらどんな』シリーズを改めて読んで,洒脱な文章にちりばめられた先生の才能と教養の深さに驚かされた.新人のころ,先生から「クリムト展が三越に来ているから見に行くとよい」といわれた.清水先生は高校時代にドイツ語の先生がいたので,学生向けのゲーテの『ファウスト』をドイツ語で読み,大学に進学してからは,レクラムの文庫本を手に入れて,好きな箇所を何度も読み返したという.トーマス・マンも長編『ファウスト博士』を書いた.教養学部のドイツ語の先生がこれの翻訳をしていたので,その勧めで,800ページある原著を3カ月かけて通読し,いまでも愛読書のひとつであるという.あるとき,『ジャン・クリストフ』のフランス語版を示して学生時代に読んだといわれたときはびっくりした.私は和訳でさえ途中で投げ出してしまったのだから.『論文論』の「赤い糸」では,ワーグナーのライトモチーフが紹介されている.先達に学ぶ「少年よ,大志を抱け」というが,私はまったくそんなことはなかった.平凡に生きたいと思っていたのである.清水先生は私に強烈なimprintingを与えた.元々,開業しようとも出世しようとも思っていなかったので,ずっと大学に在籍した.清水先生はいつも私を支援してくれ,留学もさせてくれた.大学にいれば,日本眼科学会,日本臨床眼科学会に演題を出さなければならない.そして「今場所が終われば,来場所をめざして稽古に励む」生活が清水先生の下で22年間続いたのであった.それだけで完結する論文は存在せず,論文をひとつ仕上げれば,次になにをすべきかが自然に提起されるのである.先生は世界のShimizuであった.海外の権威を有り難がったりはしなかった.弟子は知らず知らずに影響を受けたのである.最後に心に残った先生の名言を紹介する.「世の中,金で解決できることは所詮たいしたことではない」.

Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症の眼障害

2022年12月31日 土曜日

Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症の眼障害OcularComplicationofStevens-JohnsonSyndrome/ToxicEpidermalNecrosis松本佳保里*外園千恵*はじめにStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnsonsyn-drome:SJS)と中毒性表皮壊死症(toxicepidermalnecrosis:TEN)は,おもに薬剤への暴露により全身の皮膚粘膜で炎症が惹起され,全身の発疹,粘膜のびらん・水疱形成,熱発などの全身症状や結膜充血,角結膜上皮欠損,偽膜形成などの眼病変を生じる疾患として知られる.慢性期には粘膜病変の瘢痕化や癒着が進行し,全身に重篤な後遺症がみられる場合があり,継続した通院治療が必要な疾患である.本稿では,SJS/TENの基本的な臨床像や適切な医療費助成を得るポイントについて述べる.ISJS/TENの臨床像SJS/TENは,高熱を伴う全身性の紅斑・びらん・水疱から発症し,眼病変として結膜充血,角結膜上皮欠損,偽膜形成を特徴とする(図1).その他,粘膜病変では口唇・口腔粘膜や鼻粘膜,上気道粘膜,消化管粘膜など全身の粘膜に壊死性変化がみられ,重篤な後遺症を残すことがある.わが国では,発症後は速やかに被疑薬を中止し,全身管理および抗炎症のため全身ステロイド治療を開始することが推奨されているが,治療開始後も皮疹や粘膜病変が悪化することがあり,細やかな管理が必要である.眼病変に関しては,全身症状と同時もしくは数日早く両眼の結膜充血がみられる場合が多く,充血に加えて角結膜上皮欠損や偽膜が生じていると視力予後が不良となる.このため,SJS/TENが疑われる場合は,必ずフルオレセイン染色を用いた診察が必要である.上皮欠損が広範囲に及ぶと瞼球癒着や輪部機能不全を生じ,重篤な眼後遺症に陥る可能性がある.また,次項で述べる診断基準とは別に,重症度分類が作成されており,「眼表面(角膜・結膜)の上皮欠損(びらん),あるいは偽膜形成が高度なもの」はスコアにかかわらず眼所見のみで重症と判断されるため,眼科医による診察はSJS/TENの診断・治療において非常に重要である.II診断基準わが国では,2004年に厚生労働省の調査研究班が結成され,2005年に初めてSJS/TENの診断基準が確立された.その後,診療指針の策定や多施設調査の結果を踏まえて,2016年に「重症多形滲出性紅斑診療ガイドライン」が作成された1).SJSの診断基準は主要所見の5項目と4項目の副所見で構成されており,副所見を考慮したうえで主要所見をすべて満たす場合にSJSと診断する(表1).臨床像で述べたように,SJS/TENは治療開始にもかかわらず,しばしば病態が悪化するため,初期の評価だけでなく全経過を通して評価する.また,わが国では表皮.離面積が10%以上の症例をTENと定義しているが,欧米では10%以上30%未満の症例をSJS/TENオーバーラップ症例,30%以上の症例をTENと定義している.*KaoriMatsumoto&ChieSotozono:京都府立医科大学大学院医学研究科視機能再生外科学〔別刷請求先〕松本佳保里:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視機能再生外科学0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(51)1619図1SJS/TENの急性期眼所見aba:結膜充血.球結膜および眼瞼結膜に著明な充血がみられる.Cb:偽膜形成.睫毛鑷子で引っ張ると偽膜がはがれてくる.Cc:角膜上皮欠損.角膜中央に上皮欠損がみられる.d:結膜上皮欠損().結膜上の偽膜を除去すると上皮欠損がみられる場合がある.表1SJSの診断基準主要所見(必須)1.皮膚粘膜移行部(眼,口唇,外陰部など)の広範囲で重篤な粘膜病変(出血・血痂を伴うびらんなど)がみられる.2.皮膚の汎発性の紅斑に伴って表皮の壊死性障害に基づくびらん・水疱を認め,軽快後には痂皮,膜様落屑がみられる.その面積は体表面積のC10%未満である.ただし,外力を加えると表皮が容易に.離すると思われる部位はこの面積に含まれる.3.発熱がある.4.病理組織学的に表皮の壊死性変化を認める.5.多形紅斑重症型(erythemamultiforme[EM]major)を除外できる.副所見1.紅斑は顔面,頸部,体幹優位に全身性に分布する.紅斑は隆起せず,中央が暗紅色のC.atatypicalCtargetsを示し,融合傾向を認める.2.皮膚粘膜移行部の粘膜病変を伴う.眼病変では偽膜形成と眼表面上皮欠損のどちらかあるいは両方を伴う両眼性の急性結膜炎がみられる.3.全身症状として他覚的に重症感,自覚的には倦怠感を伴う.口腔内の疼痛や咽頭痛のため,種々の程度に摂食障害を伴う.4.自己免疫性水疱症を除外できる.副所見を考慮のうえ,主要C5項目をすべて満たす場合にCSJSと診断する.(文献C1より引用)緩徐な進行・中等症進行性・重症急速進行性・最重症反応不良(重篤な眼障害)反応不良ステロイド増量不可PSL:プレドニゾロン図2急性期全身治療アルゴリズム(文献C1より引用)-2145711172126(日)病日図3急性期SJSの治療例64歳,男性.病日C4日に当院皮膚科を受診し当科紹介となった.当科初診時に結膜上皮欠損がみられ翌日から偽膜が出現した.ステロイドパルス療法を開始後も病日C7日までは眼病変は増悪したため,ベタメタゾン点眼・眼軟膏が増量された.その後は全身所見,眼所見に合わせてステロイド量は漸減された.全身所見の改善により終了(-)週2回程度で経過観察(+)毎日診察(眼科併診)充血の消褪により終了(ステロイドパルス療法など全身管理)+0.1%ベタメタゾンまたはデキサメタゾン点眼あるいは眼軟膏1日6回以上図4急性期眼科治療アルゴリズム図5SJS/TENの慢性期眼所見a:結膜.短縮,睫毛脱落,眼瞼縁の不整.涙点は急性期の炎症により自然閉鎖している.b:著明な涙液減少および角膜上皮欠損がみられる.Cc:角膜混濁,血管侵入,瞼球癒着.涙点プラグ挿入によりドライアイの治療を行っている.d:眼表面の角化が進行している.表2視覚障害認定で利用できる制度年金の受給障害基礎年金,障害厚生年金医療費の軽減1,2級を対象とした医療費助成制度補装具費の支給白杖,遮光眼鏡など支援事業の利用就労支援,自立訓練などその他の制度交通費の割引,税金の減額など表3医薬品副作用被害救済制度による給付の種類と給付額給付の種類区分給付額医療費健康保険等による給付の額を除いた自己負担分通院のみの場合1カ月のうちC3日以上月額C36,900円(入院相当程度の通院治療を受けた場合)1カ月のうちC3日未満月額C34,900円医療手当入院の場合1カ月のうちC8日以上月額C36,900円1カ月のうちC8日未満月額C34,900円入院と通院がある場合月額C36,900円障害年金*1級の場合年額C2,804,400円(月額C233,700円)2級の場合年額C2,244,000円(月額C187,000円)障害児療育年金1級の場合年額C877,200円(月額C73,100円)2級の場合年額C702,000円(月額C58,500円)遺族年金年金の支払はC10年間(ただし,死亡した本人が障害年金を受けたことがある場合,その期間がC7年に満たないときはC10年からその期間を控除した期間,その期間がC7年以上のときはC3年間)年額C2,452,800円(月額C204,400円)遺族一時金7,358,400円葬祭料212,000円*通常の視覚障害年金と別に副作用被害救済として給付される.(独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページより引用)

抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎

2022年12月31日 土曜日

抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎Anti-Aquaporin4Antibody-PositiveOpticNeuritis河合愛実*石川均**はじめに視神経脊髄炎(neuromyelitisopticaspectrumdisor-ders:NMOSD)は,中枢に存在する水分子チャンネルアクアポリン(aquaporin:AQP)4に対する特異的な自己抗体である抗AQP4抗体が関与する自己免疫疾患である.国際診断基準は,抗AQP4抗体が陽性で視神経炎や脊髄炎,脳症候群による神経症状を呈する疾患と,抗AQP4抗体陰性または抗AQP4抗体検査結果が不明で,中枢神経系の病変に由来する主要臨床症候を示す関連疾患を,NMOSDと総称している(図1)1).NMOSDは,血清中の抗AQP4抗体が血液脳関門の破綻により中枢神経のアストロサイト上のAQP4に結合し,補体を活性化することでアストロサイトの細胞死を引き起こす.よって,多発性硬化症(multiplesclero-sis)のようなオリゴデンドロサイトを中心とした中枢神経の炎症性脱髄性疾患とは区別される1,2).わが国におけるNMOSDの有病率は10万人あたり2~4人で,性差は9割を女性が占める.好発年齢は,30~40歳代前半であり,しばしば小児や高齢でも発症する1).INMOSDの所見・症状1.抗AQP4抗体陽性視神経炎1,2)抗AQP4抗体陽性視神経炎診療ガイドラインによる診断基準を示す(表1)1).急性期の所見は,視力や中心フリッカ値の低下,MRI冠状断shortTIinversionrecovery(STIR)法および脂肪抑制T2強調像で罹患視神経に高信号,ガドリニウム造影法で造影効果を呈する.対光反射は,片眼性は相対的瞳孔求心路障害(rela-tivea.erentpupillarydefect:RAPD)陽性,両眼性は両眼の対光反射が減弱する.また,視野障害は中心暗点のほか,両耳側半盲,水平半盲,非調和性同名半盲などさまざまである.視機能障害は他の視神経炎と異なり,両側同時の発症や光覚弁以下の視力低下,視力回復不良,再発しやすいといった重篤な経過を示すことが多い.視神経乳頭は最終的に萎縮を呈する.光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)では網膜神経線維層や網膜神経節細胞層など網膜内層厚が経時的に菲薄化する.抗AQP4抗体陽性視神経炎を含むわが国の難治性視神経炎の特徴は,石川ら3)が2019年に全国の疫学調査結果をまとめているので参考にされたい.2.脊髄炎脊髄病変は,脊髄中心部に脊髄長軸方向に長く生じることが多い.病変レベルに一致した文節性の温痛覚障害,病変レベル以下の全感覚障害,対麻痺あるいは四肢麻痺,膀胱直腸障害が生じる.高位頸髄病変では呼吸不全をきたし人工呼吸器などによる全身管理が必要となる.後遺症として,病変レベルに有痛性強直性攣縮,温痛覚過敏,自発痛,帯状絞扼感,しびれが生じる.3.脳症候群脳病変は,無症候性病変を含めるNMOSDの大半に*ManamiKawai:北里大学医学部眼科学教室**HitoshiIshikawa:北里大学医療衛生学部視覚機能療法学〔別刷請求先〕河合愛実:〒252-0373神奈川県相模原市南区北里1-15-1北里大学医学部眼科学教室0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(43)1611NMOSDの主要臨床症候1.視神経炎2.急性脊髄炎3.他の原因では説明できない吃逆あるいは嘔気,嘔吐を起こす最後野症候群のエピソード4.急性脳幹症候群5.NMOSDに典型的な間脳のMRI病変を伴う症候性ナルコレプシーあるいは急性間脳症候群6.NMOSDに典型的な脳MRI病変を伴う症候性大脳症候群AQP4抗体陽性NMOSDAQP4抗体陰性あるいはAQP4抗体検査結果不明のNMOSD1.最低一つの主要臨床症候がある1.1回以上の臨床的増悪で最低二つの主要臨床症候があり,以下の条件2.AQP4抗体陽性をすべて満たす3.他疾患の除外a.最低1つの主要臨床症候は,視神経炎,3椎体以上の横断性急性脊髄炎,最後野症候群b.空間的多発(二つ以上の異なる主要臨床症候)c.該当病巣のMRI所見が下記の条件*も満たす2.AQP4抗体陰性あるいはAQP4抗体検査が未実施3.他疾患の除外*AQP4抗体陰性およびAQP4抗体検査結果不明のNMOSDのMRI追加要件1.急性視神経炎は,脳MRIが(a)正常または非特異的白質病変のみ,(b)視神経MRIでT2高信号病変やT1強調ガドリニウム造影病変が視神経の1/2以上に伸展,または視交叉病変がある2.急性脊髄炎は,3椎体以上に連続性する髄内MRI病変,または急性脊髄炎に合致する既往歴を有する患者において3椎体以上に連続する局所性の脊髄萎縮がある3.最後野症候群は,背側延髄/最後野の病変がある4.急性脳幹症候群は,脳室上衣周囲の病変がある図1視神経脊髄炎(NMOSD)の国際診断基準(2015)表1抗AQP4抗体陽性視神経炎の診断基準2)1.血清抗アクアポリン4抗体陽性1.突然発症する片眼または両眼の重度の視力障害2.眼球運動痛,眼痛,眼窩痛,頭痛3.中心暗点,水平半盲,耳側半盲,同名半盲などの重度の視野障害4.急性期には頭部MRI冠状断STIR法およびT2強調像で罹患視神経に高信号5.副腎皮質ステロイド治療に抵抗性1.他の血清自己抗体が陽性である抗核抗体,リウマチ因子,甲状腺関連自己抗体(抗TSH受容体抗体,抗サイログロブリン抗体,ペルオキシダーゼ抗体),抗SS-A抗体,抗SS-B抗体など〕2.脊髄MRIで3椎体以上の脊髄病変3.発症時に脳MRI病変が多発性硬化症基準を満たさない4.10~70代での女性に幅広く分布してみられる主要項目5項目のうち3項目と必須項目を満たす.(文献2より引用)表2生物学的製剤の特徴一覧商品名ソリリスエンスプリングユプリズナリツキサン標的蛋白メカニズム補体CC5抑制IL-6受容体拮抗CD19抑制CD20抑制投与方法2週ごとの点滴4週ごとの皮下注射6カ月ごとの点滴6カ月ごとにC2週間間隔でC2回点滴単剤の再発予防効果100%軽減74%軽減72.8%軽減C─おもな副作用感染症(とくに髄膜炎菌感染)感染症感染症感染症薬価604,716円C/瓶1,532,660円C/本3,495,304円C/瓶118,714円C/瓶年間医療費約C63,000,000円約C20,000,000円約C21,000,000円約C950,000円はいいいえ図3NMOSDの医療費助成までの流れ出典:特定非営利活動法人CMSキャビンホームページ(https://www.mscabin.org/nmosd/nmosdiryohi/)より一部改変(閲覧日C2022/9/14)左眼右眼図4Goldmann視野右眼の中心暗点と左眼は周辺視野が残存している.右眼左眼図5OCT両眼ともに黄斑と視神経乳頭周囲の網膜内層厚が菲薄化している.

Leber遺伝性視神経症

2022年12月31日 土曜日

Leber遺伝性視神経症LeberHereditaryOpticNeuropathy上田香織*I概要Leber遺伝性視神経症(Leberhereditaryopticneu-ropathy:LHON)はミトコンドリア遺伝子の点変異を原因とし,若年の男性を中心に発症する視神経疾患である.約9割の患者で原因遺伝子としてm.3460,m.11778,m.14484が検出される.視機能は著明に低下するものの,大部分の患者では完全な失明には至らないこと,一部の患者では自然回復がみられることなど,他の視神経疾患にはみられないような特徴の多い疾患である.確立された治療法はないが,内服薬や電気刺激で網膜神経節細胞の機能を保存,ないし回復させる試みがある.II疫学LHONは10~30歳代の男性を中心に発症する希少疾患である.日本での最新の疫学調査は2019年に行われ,1年間の新規発症者は69名(男性62名,女性7名),総患者数は2,491名(男性2,333名,女性158名),有病率は1:50,000程度と推計された1).この結果は諸外国での調査結果とおおむね同等である.LHON患者は男性が圧倒的に多い.上述の疫学調査でも年間新規発症者,総患者数ともに男性が90%を超えていた.さらに男性の発症割合については近年ますます上昇傾向にあることが示唆されているが2),この理由は明らかではない.過去には性染色体の関与が推測され研究されていたが,LHONとの関連について今日まで証明されていない.LHONの原因遺伝子としておもに検出されるm.3460,m.11778,m.14484は三大変位とよばれる一方で,10%未満の希少変異についても報告例が増えつつある.III所見LHONを発症すると片眼に視力低下をきたしたのち,数週~数カ月の間隔をおいて他眼でも視力低下を生じることが典型的である.視力は(0.01)程度にまで低下し,以降は安定する場合が多く,光覚消失にまで至る患者はまれである.また,視神経疾患ではあるが,限界フリッカ値(critical.ickerfrequency:CFF)も正常範囲ないし軽度低下するのみであることが多い.視野は中心暗点となるが,発症早期で視野検査を行うと,視力は低下していても視野がおおむね保たれていることがある.また,一見中心暗点にみえる領域でも,検査条件を変更することによりある程度の感度が残存している場合があり,患者本人も感度の残存する部分に視線をずらしてものを見ている.視神経疾患ではあるが対光反射が保たれることも,LHONの大きな特徴的所見といえる.網膜神経節細胞のなかでも内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsicallyphotosensitiveretinalganglioncell:ipRGC)が残存すると予測されている3).おもな眼底所見として視力低下などの自覚症状をきたす前より視神経乳頭の発赤と乳頭周囲の毛細血管の拡張*KaoriUeda:神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野〔別刷請求先〕上田香織:〒650-0017神戸市中央区楠町7-5-1神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(37)1605図1典型的なLHON症例で比較的発症早期のもの(視力0.02)a:視神経乳頭は発赤し,乳頭周囲の毛細血管の軽度拡張・蛇行所見がみられる.ほかには器質疾患は認めない.Cb:蛍光造影検査にて異常所見を認めない.Cc,d:眼科部拡大造影CMRIにて,T2画像(c)および造影(d)ともに異常所見を認めない.~図2発症ごく早期で右眼(1.5)左眼(0.02)と視力に差がある症例a:眼底所見は図C1と同様の所見である.Cb:OCTではすでに左眼で網膜内層の菲薄化が確認できる.c:Humphrey視野検査(Sita-standard,C30-2,視標サイズIII)の結果では両眼ともに視野はまだほぼ保たれている.図3図1と同一症例の経時変化発症半年後(Ca),2年後(Cb)のもの.視神経乳頭は徐々に蒼白化し萎縮していることがわかる.図4図1と同一症例の視野と固視a:Goldmann視野検査にて中心暗点を呈している.Cb:Humphrey視野検査にてC30-2/視標サイズCVで検査すると上方に残存視野が確認できる.Cc:固視位置の検索結果(水色で囲まれた範囲に視線が動き,固視位置は十字で示されている):残存視野の位置に対応した部位で固視しようとしていることがわかる.表1LHONの認定基準(文献C10より改変引用)’C’C’C

黄斑ジストロフィ

2022年12月31日 土曜日

黄斑ジストロフィMacularDystrophy林孝彰*はじめに黄斑ジストロフィ(maculardystrophy)の呼び名は,「眼科用語集第6版」では「黄斑ジストロフィ」,指定難病の名称は「黄斑ジストロフィー」となっているが,本稿では,「黄斑ジストロフィ」で統一する.黄斑ジストロフィは,眼底の黄斑部に両眼性,進行性の病変を呈する遺伝性疾患の総称と定義されている.黄斑ジストロフィは,一種の症候群であり,多数の細かな疾患に分類され,また原因遺伝子も多岐にわたる.難病とは,発症機序が不明,治療法が確立していない,希少疾患である,長期の療養を要するという四つの条件を満たすことで認定されてきた.2014年5月23日に持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律として「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が成立し,2015年1月1日に施行された.以降,指定難病とよばれ,患者数が一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと,客観的な診断基準が成立していることの2条件が新たに加わった.2021年11月1日現在,338疾患が指定難病の対象となっている.黄斑ジストロフィは,2015年7月1日に指定難病(告示番号301)として認定された.医療費助成とは,難病法に基づき,患者の医療費負担の軽減を目的として,その治療にかかる医療費の一部を助成する制度である.難病法による医療費助成の対象となるのは,原則として,指定難病と診断され,かつ病状が一定程度以上の場合に限られる.一定程度とは,個々の指定難病の特性に対して,医学的に日常生活または社会生活に支障があると判断される程度をいう.本稿では,指定難病である黄斑ジストロフィの診断基準・ガイドライン,診断の考え方,難病申請のポイント,疾患管理について解説する.I概要・診断基準黄斑ジストロフィの概要・診断基準ならびに「臨床調査個人票」は,難病情報センターのホームページ(https://www.nanbyou.or.jp/entry/5461#301)からダウンロード可能である.同様の診断基準の内容は,「黄斑ジストロフィの診断ガイドライン」1)に詳細に記載されているので参照していただきたい.「臨床調査個人票」は,指定難病の公的診断書に該当し,この記載に基づいて指定難病の診断のみならず,医療費助成の対象になりうるか判定される.黄斑ジストロフィを診断するために,A:症状,B:検査所見,C:鑑別診断,D:家族歴の4項目について評価する.「A:症状」として,両眼視力低下(急性の視力低下は除外する)に該当することが重要である.「B:検査所見」では,①眼底写真による両眼黄斑部の対称性の萎縮性病変,黄斑分離,あるいは沈着物存在の有無,②フルオレセイン蛍光造影検査(.uoresceinangiography:FA)または眼底自発蛍光(fundusauto.uorescence:FAF)における病巣に一致した異常蛍光の有無,③電気生理学的検討では,全視野刺激網膜電図検査(electroretinography:ERG)におけ*TakaakiHayashi:東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科〔別刷請求先〕林孝彰:〒125-8506東京都葛飾区青戸6-41-2東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(27)1595表1黄斑ジストロフィの「臨床調査個人票」に記載されている診断カテゴリーの項目■De.nite1:Aを満たし,かつBのうち3項目以上を満たし,Cの鑑別すべき疾患を除外できる■De.nite2:Bの4項目をすべて満たし,Cの鑑別すべき疾患を除外できる.かつ,現在視力が良好でも,黄斑部萎縮の進行により将来視力が低下する可能性が高い.■De.nite3:検査所見の特徴からそれぞれの病型の診断の要件を満たす.該当する病型には.を記入する.■1)卵黄状黄斑ジストロフィ(ベスト病)■2)Stargardt病■3)オカルト黄斑ジストロフィ■4)錐体ジストロフィおよび錐体杆体ジストロフィ■5)X連鎖性(X染色体)若年網膜分離症■6)中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィ■De.nite4:Probableであるが,明らかな家族歴がある.四つのいずれかを満たせば,De.nite(診断確実例)と診断する.-図1卵黄状黄斑ジストロフィ症例の右眼眼底写真およびフルオレセイン蛍光造影写真a:BEST1変異(p.T2A)をヘテロ接合で認めた38歳時の右眼卵黄期の眼底写真.b:フルオレセイン蛍光造影写真(後期像)で,卵黄様病変に一致したブロックによる低蛍光を認める.c:14年後の52歳時には,萎縮期の眼底所見となっている.図2卵黄状黄斑ジストロフィ症例(44歳,女性)の左眼光干渉断層計所見BEST1変異(p.V81M)を認めた症例.卵黄様病変は,インターデジテーションゾーンの下方で網膜色素上皮の上方に局在している.図3成人発症卵黄状黄斑ジストロフィ症例の右眼眼底写真および眼底自発蛍光像a:PRPH2遺伝子にヘテロ接合変異(p.G167S)を認めた44歳時の眼底写真.1/2乳頭径以下の小さな卵黄様病変を認める.b:50歳時の眼底自発蛍光では中心窩にわずかな自発蛍光所見がみられる.c:54歳時の眼底写真では,パターンジストロフィ様の所見を呈している.図4Stargadt病症例(6歳,女児)の左眼超広角眼底自発蛍光像a:6歳時,黄斑部の低蛍光所見とその周囲に輪状の過蛍光がみられ,peripapillarysparingが観察される.Cb:5年後のC11歳時には,黄斑部の自発蛍光が消失し,その範囲は視神経乳頭周囲まで拡大している.図5オカルト黄斑ジストロフィ症例(80歳,女性)の右眼眼底写真および眼底自発蛍光像a:RP1L1遺伝子にヘテロ接合変異(p.R45W)が検出されている症例の眼底写真.黄斑部に色調異常がみられる.Cb:眼底自発蛍光では明らかに過蛍光を示す黄斑部所見を認める.図7X連鎖性若年網膜分離症症例(16歳,男子)の右眼超広角眼底像RS1変異陽性若年網膜分離症と診断された症例.眼底に,図6X連鎖性若年網膜分離症症例(7歳,男児)の左眼小口病に類似した金箔様反射がみられる.眼底写真RS1変異陽性若年網膜分離症と診断された症例.黄斑部に,車軸状変性を認める.abc図8中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィ症例(41歳,男性)の左眼眼底写真,眼底自発蛍光像,フルオレセイン蛍光造影像a:PRPH2遺伝子のヘテロ接合変異(p.R172Q)を認めた症例の眼底写真.黄斑部の萎縮病巣内に脈絡膜中大血管が透見される典型病巣を認める.Cb:眼底自発蛍光では,黄斑部の低蛍光,その辺縁にはリング状の過蛍光がみられる.Cc:フルオレセイン蛍光造影では,初期には病変に一致してCwindowdefectによるまだらな過蛍光所見を認める.■用語解説■遺伝学的検査・遺伝子診断:黄斑ジストロフィの原因となる生殖細胞遺伝子変異(単に変異)を突き止める検査である.通常,末梢静脈血から白血球を分離,DNAを抽出し試料として解析に用いる.多くの遺伝性疾患が保険収載されている現状があるものの,黄斑ジストロフィに対する遺伝学的検査は保険収載されていないため,診断基準に組み込まれていない.遺伝子サイズが小さいCRS1遺伝子を調べる場合,RS1のエクソン領域(蛋白質翻訳領域とほぼ同義)をポリメラーゼ連鎖反応(polymeraseCchainreaction;PCR)法で増幅し,直接塩基配列を決定する.一方,錐体ジストロフィなどでは原因遺伝子が多岐にわたるため次世代シークエンサを用いた網羅的遺伝子解析が行われる.遺伝子変異:本稿で述べた変異とは,生殖細胞遺伝子変異をさす.生殖細胞遺伝子変異は,次世代に遺伝する.生殖細胞とは,精子や卵子の形成過程において受精能力を有している細胞である.-

サルコイドーシスとBehçet病

2022年12月31日 土曜日

サルコイドーシスとBehcet病SarcoidosisandBehcet’sDisease鈴木佳代*南場研一*はじめにぶどう膜炎の原因疾患は約C40種類ほどあるが,2016年に行われた全国C66施設におけるぶどう膜炎の原因疾患の統計では,サルコイドーシスは全体のC10.6%で第C1位を占めており,Behcet病も全体のC4.2%を占めている1).どちらの疾患も,眼科医が診断に大きく寄与する全身疾患であり,本稿ではこれらの疾患について診断や指定難病申請,治療のポイントについて概説する.CIサルコイドーシス1.概要サルコイドーシスは全身多臓器に肉芽腫を形成する原因不明の疾患であり,肺門部縦隔リンパ節,肺,眼,皮膚のほか,全身のほとんどの臓器に発症する.その多彩な臓器病変から,さまざまな臨床症状を呈し,生命予後や機能予後を左右する場合もあり,十分な治療と管理が必要な疾患である.ぶどう膜炎などの眼病変は,サルコイドーシス臓器病変のなかで肺病変に次いで多く,眼科受診を契機として本症と診断されることも多い.C2.眼所見サルコイドーシスを強く示唆する眼所見としては,前眼部や隅角,後眼部の六つの眼所見があげられている(表1).このうちC2所見以上があれば,サルコイドーシスの眼病変を疑う.これらの眼所見のうち,豚脂様角膜後面沈着物(図1a),虹彩結節(図1b),隅角結節(図表1眼サルコイドーシスを強く示唆する眼所見1.肉芽腫性前部ぶどう膜炎(豚脂様角膜後面沈着物,虹彩結節)2.隅角結節または周辺虹彩前癒着3.塊状硝子体混濁(雪玉状,数珠状)4.網膜血管周囲炎(とくに静脈)および血管周囲結節5.多発する蝋用の網脈絡膜滲出斑または光凝固斑様の網脈絡膜萎縮巣6.視神経乳頭肉芽腫または脈絡膜肉芽腫*上記C6項目中C2項目以上を満たす.C1c)はサルコイドーシスの眼病変において感度が高い眼所見であるが2),ステロイド点眼薬(ベタメタゾンなど)で容易に縮小・消失してしまうため,治療開始前にこれらの所見がないか,しっかり観察する必要がある.とくに隅角の観察は重要である.しかし,これらの眼所見はサルコイドーシス以外の他のぶどう膜炎でもみられるため,たとえ複数の所見がみられたとしても,結核性ぶどう膜炎やヘルペス性ぶどう膜炎,ヒトCT細胞白血病ウイルス(humanCT-cellCleu-kemiavirus:HTLV)-1関連ぶどう膜炎など他疾患の鑑別を考慮しなければならない.とくに,眼内リンパ腫は,腫瘍細胞の眼内浸潤が炎症細胞のようにみえるため,仮面症候群とよばれ,ぶどう膜炎として加療されることが多い疾患である.C3.診断サルコイドーシスは,組織診断群と臨床診断群が指定*KayoSuzuki&KenichiNamba:北海道大学大学院医学研究院眼科学教室〔別刷請求先〕鈴木佳代:〒060-8638札幌市北区北C15条西C7丁目北海道大学大学院医学研究院眼科学教室C0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(21)C1589図1サルコイドーシスでみられる眼所見a:豚脂様角膜後面沈着物(),b:虹彩結節(),c:隅角結節().表2サルコイドーシスの特徴的検査所見1.両側肺門縦隔リンパ節腫脹2.血清アンギオテンシン変換酵素活性高値または血清リゾチーム高値3.血清可溶性インターロイキンC2受容体高値4.67GaシンチグラフィまたはC18F-FDG/PETにおける著明な集積所見5.気管支肺胞洗浄液のリンパ球比率上昇またはCCD4/CD8比の上昇*上記C5項目中C2項目以上を満たす.表3サルコイドーシスの重症度分類1.臓器病変数1または2臓器病変1点3臓器病変以上2点2.治療の必要性(全身ステロイド,免疫抑制薬)必要はあるが治療なし1点治療予定または治療あり2点3.サルコイドーシスに関連した各種臓器の身体障害の認定の程度身体障害3級または4級1点身体障害1級または2級2点合計スコアによる判定合計スコア1重症度I2CII3またはC4CIII5またはC6CIV図2Behcet病でみられる眼所見a:前房蓄膿(),b:網膜出血()を伴う閉塞性血管炎(),c:網脈絡膜萎縮(黄点線).表4Behcet病の主症状と副症状(1)主症状C①口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍C②皮膚症状(a)結節性紅斑様皮疹(b)皮下の血栓性静脈炎(c)毛.炎様皮疹,.瘡様皮疹C③眼症状(a)虹彩毛様体炎(b)網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)(c)以下の所見があれば(a)(b)に準じる(a)(b)を経過したと思われる虹彩後癒着,水晶体上色素沈着,網脈絡膜萎縮,視神経萎縮,併発白内障,続発緑内障,眼球癆C④外陰部潰瘍(2)副症状C①変形や硬直を伴わない関節炎C②副睾丸炎C③回盲部潰瘍で代表される消化器病変C④血管病変C⑤中等度以上の中枢神経病変表5Behcet病の重症度分類StageCI眼症状以外の主症状のみられるものCIICStageIの症状に眼症状として虹彩毛様体炎が加わったものStageIの症状に関節炎や副睾丸炎が加わったものCIII網脈絡膜炎がみられるものCIV失明の可能性があるか,失明に至った網脈絡膜炎およびその他の眼合併症を有するもの活動性,ないし重度の後遺症を残す特殊型(腸管型,血管型,神経型)であるものCV生命予後に危険のある特殊型(腸管型,血管型,神経型)であるもの慢性進行性の神経型であるもの

網膜色素変性

2022年12月31日 土曜日

網膜色素変性RetinitisPigmantosa横田聡*I診断基準の紹介網膜色素変性診療ガイドライン1)において,網膜色素変性(retinitispigmantosa)は,視細胞および網膜色素上皮を原発とした進行性の広範な変性がみられる遺伝性の疾患群である,とされている.同ガイドラインに,診断基準が提示されており,「進行性の疾患」であり,「自覚症状」は夜盲・視野狭窄・視力低下・羞明の一つ以上を認め,「眼底所見」では網膜血管狭小・粗造な網膜色調・骨小体様色素沈着・多発する白点・視神経萎縮・黄斑変性の二つ以上を認め,「網膜電図」で減弱型・陰性型・消失型のいずれかとなり,炎症性または続発性でないものを指定難病としての網膜色素変性(症)と診断する(図1)II診断の考え方遺伝子変異が原因で網膜の視細胞および色素上皮細胞が広範に変性する.初期には夜盲と視野狭窄を自覚し,徐々に進行する.進行には個人差が大きく,生涯良好な視力を保つ例も少なくない.遺伝子変異が原因であるために,両眼に対称性に発症し進行するケースが多い.現時点では治療は確立されてはいないが,合併する白内障や黄斑浮腫に対しては治療法があり,通常の治療が行われている.原因遺伝子は何十も報告されており,その原因となる遺伝子によっても遺伝形式はさまざまである.今後,遺伝子検査や遺伝情報を取り扱う遺伝カウンセリングの広がりが期待されている.III難病申請のポイント申請にあたって記載を依頼されることがある「臨床調査個人票」について記載内容を縦覧する.なお,臨床個人調査票はwebからも手に入れることができる(https://www.nanbyou.or.jp/entry/5467#90).新規/更新の欄は,初回は新規,2回目以降は更新にチェックを入れる.初回と更新では必須となる項目が一部異なる.他の疾患の申請の際と同様に,基本情報欄では姓名・住所のほか,出生市区町村や出生時氏名の記載が必要になる.本人以外の家族歴の有無や発症年月も記載する.社会保障の項目では要介護認定を受けているか,受けている場合は要介護度の記載も必要となる.生活状況については,自覚的な状態について移動,身の回りの管理,普段の活動,痛み/不快感,不安/ふさぎ込みの各項目についてチェックボックスで回答する.続いて診断基準に関する事項の記載となる.診断は遺伝形式を臨床診断で記載する.症状はガイドラインの診断基準の通り,夜盲・視野狭窄・視力低下・羞明(または昼盲)の各症状について,あり・なしで回答する.検査所見は,眼底所見について,網膜血管狭小・粗造な網膜色調・骨小体様色素沈着・多発する白点・視神経萎縮・黄斑変性について,あり・なしで回答する.網膜電図ならびに光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT)像は,新規のときのみ必要で,異常の有無*SatoshiYokota:神戸市立神戸アイセンター病院〔別刷請求先〕横田聡:〒650-0047神戸市中央区港島南町2-1-8神戸市立神戸アイセンター病院0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(17)1585図1網膜色素変性(自験例)粗造な網膜色調と網膜血管の狭小化を認めた.眼底自発蛍光ではアーケード付近から周辺部は低蛍光,傍中心窩には過蛍光を認めた.OCTでは過蛍光の内側に一致した範囲でellipsoidzone(EZ)の残存があるが,それより周辺部ではEZが追えなくなっていた.網膜電図の波形が消失していた.視野検査(HFA10-2)ではEZ残存部位に相当する範囲で網膜感度が保たれていた.表1網膜色素変性の診断基準I自覚症状夜盲視野狭窄視力低下羞明(または昼盲)II臨床検査所見(1)眼底所見網膜血管狭小粗造な網膜色調骨小体様色素沈着多発する白点視神経萎縮黄斑変性(2)網膜電図の異常(減弱型,陰性型,消失型)(3)眼底自発蛍光網膜色素上皮萎縮による過蛍光または低蛍光(4)OCT中心窩におけるEZの異常(不連続または消失)進行性であり,上記I自覚症状のうち1つ以上がみられ,II-(1)眼底所見で上記のいずれか2つ以上がみられ,II-(2)網膜電図で上記の所見がみられ,炎症性(感染性)または続発性でないこと,これらすべてを満たす場合に指定難病としての網膜色素変性と診断する.表2重症度分類I度矯正視力(0.7)以上,かつ視野狭窄なしII度矯正視力(0.7)以上,視野狭窄ありIII度矯正視力(0.7)未満,(0.2)以上IV度矯正視力(0.2)未満矯正視力・視野ともに良いほうの眼の測定値で判断する.視野狭窄は中心の残存視野がGoldmann視野計のI/4視標で20°以内のものをいう.重症度分類II度以上のものが医療費助成の対象となる.重症度分類で一定以上に該当しなくても,高額な医療を継続することが必要な場合には医療費助成の対象とするとの留意事項があるが,網膜色素変性疾患のみで該当することは現時点での通常の診療においては考えにくい.

膠様滴状角膜ジストロフィ

2022年12月31日 土曜日

膠様滴状角膜ジストロフィGelatinousDrop-LikeCornealDystrophy前野紗代*大家義則*はじめに膠様滴状角膜ジストロフィ(gelatinousdrop-likecor-nealdystrophy:GDLD)はCTACSTD2遺伝子の機能喪失性変異1)による角膜上皮バリア機能低下を本態とする重篤な角膜ジストロフィの一つである.常染色体潜性遺伝性疾患で,わが国での有病率はC1/33,000であり2),欧米諸国よりも比較的高いと報告されている3).バリア機能低下に伴う膠様滴状物の角膜上皮下への沈着や角膜混濁を生じるために角膜移植を必要とする場合が多いが,遺伝子変異へのアプローチではないために移植後にも同様病変の再発が必発である.また,膠様隆起病変出現による羞明,異物感,眼痛などの刺激症状を生じることも多い.本稿では,GDLDの診断基準,病型分類,難病申請と疾患管理について述べる.CI診断1.診断基準GDLDの診断基準は厚生労働省難病政策班(角膜難病の標準的診断法および治療法の確立を目指した調査研究)によって作成され,日本眼科学会にて承認されている.現在のところ,難病情報センターのホームページなどで閲覧が可能である.これは症状,検査所見,鑑別診断,眼外合併症,遺伝学的検査から構成され,de.nite,probable,possibleのいずれかに分類される(表1).また,重症度分類はおもに良好なほうの眼の視力によって分類される(表2).C2.臨床所見GDLDは,膠様滴状物の角膜上皮下への沈着を生じ,次第に角膜混濁,血管進入を伴い,徐々に視力低下を生じる.血管侵入が起きると同部位周辺の脂肪漏出が生じやすくなり,黄色の脂肪沈着が併発する.両眼性であり,灰白色隆起性の角膜上皮直下のアミロイド沈着物の集簇(桑の実状)は特徴的所見であるが,初期には臨床表現型は多様性に富む.TACSTD2蛋白はタイトジャンクションのクローデイン(claudin:CLDN)1およびC7と結合する.GDLDで生じるCTACSTD2遺伝子機能喪失性変異ではCLDN,ZO-1,オクルーディンなどの細胞間タイトジャンクションを構成する蛋白の発現低下や発現位置異常があることが報告されている4).角膜上皮細胞タイトジャンクション形成不全により,角膜上皮浸透性が亢進し,それに伴い,涙液中のラクトフェリンなどが角膜上皮下に浸透し,上皮下にアミロイド沈着を生じる5)(図1).バリア機能低下を表している細隙灯顕微鏡所見がdelayedCstainingであり,GDLDでは角膜上皮欠損がないにもかかわらずフルオレセインが角膜実質に浸透し,診断的価値がある.C3.病型分類角膜所見によってCtypicalCmulberryCtype(図2a),*SayoMaeno&YoshinoriOie:大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科(眼科学)〔別刷請求先〕前野紗代:〒565-0871大阪府吹田市山田丘C2-2大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科(眼科学)C0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(11)C1579表1GDLDの診断基準A.症状1.視力低下2.羞明3.異物感4.流涙B.検査所見1.両眼の角膜中央部から瞼裂に灰白色隆起性の角膜上皮直下のアミロイド沈着物の集簇(桑の実状とよばれる)を認める.2.透過性の亢進から角膜上皮障害がないにもかかわらず,フルオレセイン染色後数分後に蛍光が観察されるCdelayedstainingを認める.3.角膜周辺部に表層の血管侵入を認める.C.鑑別診断以下の疾患を鑑別する.1.二次性アミロイドーシス(注1)2.Climaticdropletkeratopathy(注2)D.眼外合併症なしE.遺伝学的検査TACSTD2遺伝子に異常を認める(注3).<診断のカテゴリー>診断基準でCde.niteのものが難病指定の対象.De.nite:(1)Aのいずれか+B1+Dを満たし,Cを除外したもの(2)Aのいずれか+B2またはCB3+D+Eを満たし,Cを除外したもの(注4).注C1.睫毛乱生症や眼瞼内反症により睫毛が角膜上皮に接触する場合や,円錐角膜の突出の頂点付近の角膜上皮直下のアミロイドを認める場合があり,本疾患の角膜所見に類似する場合がある.注C2.40歳以上の男性に多く,黄色から灰白色の隆起状角膜病変により視力が低下する疾患.通常砂漠や極寒地域にみられ,紫外線や乾燥が原因と考えられている.注3.TACSTD2はシングルエクソン遺伝子であり,検索が容易であること,また本邦患者において同祖性が存在しCQ118X変異(創始者変異)が病因染色体のC80%以上を占めること,さらに非典型例もこの創始者変異により発症することから診断的価値は高い.注4.本症においては,B1は非常に特徴的な所見であり,診断に苦慮することはない(典型例).B1を認めない非典型例においては,A.Cのいずれかの組み合わせとCEの遺伝子検査をもって診断する.表2GDLDの重症度分類以下でⅢ度以上の者を対象とする.I度:罹患眼が片眼で,僚眼(もう片方の眼)が健常なものII度:罹患眼が両眼で,良好な方の眼の矯正視力C0.3以上III度:罹患眼が両眼で,良好な方の眼の矯正視力C0.1以上,0.3未満IV度:罹患眼が両眼で,良好な方の眼の矯正視力C0.1未満注1.健常とは,矯正視力がC1.0以上であり,視野異常が認められず,また眼球に器質的な異常を認めない状況である.注2.CI.III度の例で,続発性の緑内障などで良好なほうの眼の視野狭窄を伴った場合には,1段階上の重症度分類に移行する.注3.視野狭窄ありとは,中心の残存視野がCGoldmannI/4視標でC20°以内とする.注C4.乳幼児等の患者において視力測定ができない場合は,眼所見等を総合的に判断して重症度分類を決定することとする.図1切除角膜の病理組織沈着物は赤色を呈し,角膜上皮下にアミロイド沈着を認める.コンゴレッド染色(C×20).図2角膜所見(混濁)によるGDLDの病型分類a:typicalmulberrytype(:膠様隆起病変).b:bandkeratopathytype.Cc:stromalopacitytype.SCL装用開始VD=0.06SCL装用1カ月VD=(0.1)SCL装用3年VD=(0.2p)図3治療用SCL装用効果TypicalmulberrytypeのCGDLD症例.治療用CSCL装用を開始し,病変・視力の改善を得られた症例(:膠様隆起病変).術前(角膜移植歴なし)表層角膜移植術1カ月後表層角膜移植術3年後表層角膜移植術5年後図4角膜移植後経過(再発)a:角膜移植歴なし.表層角膜移植術前.Cb:表層角膜移植術C1カ月後.Cc:表層角膜移植術C3年後.実質角膜混濁および血管侵入を認める.Cd:表層角膜移植術C5年後.実質混濁増悪,膠様隆起病変,血管侵入により角膜透明性を失っており,2回目の角膜移植術施行へ至った.図5感染性角膜炎発症例a:感染発症前(治療的角膜切除術後).b,c:角膜傍中央部に上記欠損を伴う浸潤病変(:浸潤巣)を認める.-