———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.3,20093650910-1810/09/\100/頁/JCLS過日,三宅養三先生から長年のERG研究の集大成である「ElectrodiagnosisofRetinalDiseases」の御著書をお送りいただき,先生のボストンから帰られてからのご努力と快進撃を拝見しているだけに,数々のすばらしい発見に至る過程を行間に感じつつ拝読させていただきました.普段からも研究の成果がいかにして達成されたかを私たちに熱くお話しいただく機会が多かったのですが,実際の場面での三宅先生ご自身の感動や葛藤など,もっと人間くさい部分が知りたいなと思っていたところに,本書を読む機会をいただきました.珍しい名前の本だなと思いつつも読ませていただくと,三宅先生が東京医療センター・感覚器センター所長になられてから特に親交の深かった大出尚郎,篠田啓,角田和繁,木村至の4人の先生と,ElectrodiagnosisofRetinalDiseasesを見ながらの座談会形式で話が進みます.座談会形式は言葉のキャッチボールに妙味がありますが,話し言葉のほうが大切なことが頭に入りやすく,そのうえ肝心の話よりもそれにまつわる話題,たとえば論文採用に至るまでの経緯とか,誰かが違うことを主張したがそれが間違っていたとか,自分の発表が先を越されたとか,中心となる話よりもさまざまなエピソードを交えて教えていただけ,忘れにくいという特徴があります.本書はまさにそのような一冊です.また,じっくり腰を落ち着けて本を読む時間がなくて,診療の合間合間の時間ができたときに読んでも,丁寧な図の説明と語句の解説も要所要所に入っていますので,ページを開けたところから読んでも理解できる,すなわち座談会に途中から参加しても理解できるというような不思議な本です.内容は先生がいかにして成果をあげるに至ったかの回想が中心で,特に黄斑部局所ERGの発展,そして圧巻はなんといっても夜盲の部分,名古屋大学の伝統が三宅先生によって見事に花開き,新しいclinicalentityとしての先天停止性夜盲不全型の発見のくだりで読者は知らず知らず三宅ワールドに引き込まれます.またoccultmaculardystrophyの発見と最初の患者さんを高級レストランに招待して眼底を検査させてもらったなんて,私だとちょっと引いてしまう話ですが,三宅先生は妙なこだわりなくさらっとやってのけられる.本書にはその他多くの研究の経過も書かれていますので,読者の抱えている病名不明の疾患をもう一度考えてみるのに非常によい参考書にもなると思います.本書は若い眼科医に向けた先生の期待,メッセージがふんだんに散りばめられています.これから研究を始める人,あるいは,始めているが迷いの中にある若い眼科医に勇気を与え,研究とは運・鈍・根だよと,だんだん洗脳(?)されていきます.決してくさらず,じっくり,流行に流されず,でも時代遅れでなく,一つのことを究めた先には晴れ晴れとした喜びがあるということを教えていただいているのだと思いました.そう思ってみると,本書の中程にあり本のタイトルにもなっている「臨床ERG,運・鈍・根」の部分は本当は先生がもっとも若い人に伝えたかったことだとわかります.私は三宅先生は何でも自分でやってみないと気が済まないご性格と思っていますが(それって私もそうなんですが),これは一歩間違うと若い人に嫌われる.でもリサーチマインドに溢れ,次々に成果を発表されるお弟子さんがたくさんおられるのは,先生のその姿勢は若い人に感動を与えているからだと思います.たとえ自分独りでも,あることをずっと続けるのが新しい発見につながる,外からみれば何てバカなことをやっているのかと思えることもある,でも自分のポリシーでやっていかねば新しいことな(83)■3月の推薦図書■臨床ERG,運・鈍・根三宅養三+大出尚郎・篠田啓・角田和繁・木村至著(銀海舎)シリーズ─86◆宇治幸隆三重大学大学院医学系研究科神経感覚医学講座眼科学———————————————————————-Page2366あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009んてできないですよっていうこと.それって“鈍”,“根”ですよね.新しい研究テーマは未知のことだからこそテーマになるのに,すぐに結果を求める若い人がいます.しかし,最初からわかっていることなら研究する必要がない.あくまで未知のことを明らかにしたいという意欲が大切で,それが三宅先生には楽しくて楽しくてたまらないというのが伝わってきます.こう言うと病気をおもしろおかしくみているのではという不快感につながりそうですが,そうではなく根底に患者さんへの深い思いやりを持たれて研究を進めてこられたことが多くの逸話からよくわかります.偶然から「そうだ」っていうひらめきが生まれるのも,普段からいつも網を張っていなければ運良く出るものではないので,“運”も実は努力の賜っていうことかと私は思いました.発見しても,すぐに発表するのではなく,何度でも確かめ,経過を見て確信を持てるようになって発表するという流れが読みとれます.特に論文査読の内輪話にそれが表れていますが,結局自分が間違いがないと確信すればどんどん押し通すという力強さはその念押しからくるのだと確信しました.そして,ERGの仕事は終わったとは言わせない.まだまだ新しいことが発見されずに眠っている,だから若い人よ頑張れという先生の思いがひしひしと伝わり,読み終わった後も余韻として残っています.本書はERGの研究者だけでなく,あらゆる分野の研究者に,研究の楽しさとそれに至る苦労,そして喜びを感じさせてくれる本です.多くの人に読んでいただきたいと願っています.「臨床ERG,運・鈍・根MyMemoriesof40YearsERGs」B5並製,212頁,定価6,300円(税込),2008年10月,(株)銀海舎刊.☆☆☆(84)☆☆☆