———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLS胞はアレルギー反応全体を制御しているので,高度な増殖性病変にはアレルギー反応全体を制御するT細胞を標的とした治療法が選択されるのは合理的である.シクロスポリンはVKCを唯一の適応疾患として,世界ではじめて点眼薬として広く使用されるようになった.免疫抑制点眼薬にはその薬理作用が完全に解明されていない部分があるが,臨床例の蓄積からVKCおよびAKCの重症例への効果が明らかになってきている.その実情について,海老原伸行先生が解説される.抗アレルギー点眼薬はアレルギー性結膜疾患の治療薬のベースに位置するものであり,I型アレルギー反応が眼アレルギー共通の発症機序であるため,マスト細胞の反応を制御する化学伝達物質遊離抑制点眼薬とマスト細胞から放出される化学伝達物質のヒスタミンの結膜局所における反応をブロックするヒスタミン拮抗点眼薬が車の両輪と考えられる薬剤である.旧ガイドライン以降,抗アレルギー点眼薬の種類は増加して,現在9種類になっている.化学伝達物質遊離抑制とヒスタミン拮抗を併せもつ点眼薬が選択肢に加わることによって,疾患ごとの病態や時期に合わせた使い分けが容易に行えることが期待される.このようなdualaction点眼薬について,その存在意義と使用法を高村悦子先生にわかりやすい解説をお書きいただいた.重症例では,巨大乳頭切除や輪部病変切除など眼科領域のアレルギー疾患はオキュラーサーフェスを舞台に病変を生じるいわゆるアレルギー性結膜疾患であり,アレルゲンによって生じる病態であることから,近年の地球環境の急激な変化が疫学を含めた臨床像に何らかの負の影響を与えていることも懸念されている.眼アレルギーを取り巻く状況にはいくつかの大きな変化があるが,まず診療ガイドラインの改訂があげられる.1995年に日本眼科医会アレルギー眼疾患調査研究班によって,わが国ではじめて「アレルギー性結膜疾患の診断と治療のガイドライン」が作成された.アレルギー性結膜疾患という全体の概念など,眼アレルギーの臨床の進歩に大きな意味のあるガイドラインであったが,ほぼ10年が経過して,見直しが行われた.2006年2月に新しく作成された「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン」(日眼会誌110:99-140,2006)では,多くの議論があった春季カタル(VKC)とアトピー性角結膜炎(AKC)の定義が改訂され,国際的に広く使用されている分類に近いものになった.ガイドラインの治療では,新しく臨床応用された免疫抑制点眼薬について,ステロイド薬との異同,VKC治療における位置づけが触れられている.VKCの特徴である結膜増殖性病変や角膜組織障害は種々の炎症細胞と角結膜構成細胞の相互作用によって形成される.T細(1)135*EiichiUchio:福岡大学医学部眼科学教室序説あたらしい眼科25(2):135136,2008眼アレルギーの知識はいまCurrentRequiredandUsefulKnowledgeonOcularAllergy内尾英一*———————————————————————-Page2136あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008(2)抗原提示細胞との免疫反応を獲得免疫とよぶのに対して,生体が生まれながらにもっている免疫系を自然免疫とよび,高等動物を含むあらゆる動物がもつ非特異的免疫系である.1990年代後半からのToll様受容体,Nod蛋白質,RIG-I(病原微生物に対するセンサー)などの研究から,自然免疫についての詳細が明らかになりつつある.粘膜免疫組織でもある結膜におけるアレルギー・免疫反応についての基礎研究も最近大きな進展をみせている.この領域の研究者である宮崎大・上田真由美両先生が結膜アレルギーのメカニズムについての研究成果や今後の治療との関わりも含めて解説される.さらに,眼アレルギーを全身の各領域におけるアレルギーの一つと捉え,アレルギー学会の認定するアレルギー専門医制度について,内尾が解説させていただいた.アレルギー専門医は眼科医にとって,診療の幅や知識を深めるだけでなく,眼科専門医以外に手に入れられる可能性が意外に大きく,アレルギー科標榜というメリットもあることをご理解いただければと思っている.21世紀に入り,治療薬,診断の両面で大きな変化と進歩をみせている眼アレルギーの現状について,それぞれ専門の先生方にわかりやすく詳しい解説をお書きいただいた.本特集によって,読者の眼アレルギーについての知識の再確認(rearmation)だけでなく再活性化(refreshment)にお役に立てれば幸いである.の外科的治療は,治療効果の迅速性から臨床的な重要性は依然として大きい.アレルギー素因という背景が解決されていない以上,術後再発抑制を含めた効果的な治療戦略が求められる.外科的治療の経験が豊富な藤島浩先生が実際のテクニックについて,プラクティカルなコツを伝授してくださる.新しいガイドラインでは,アレルギー性結膜疾患の診断について,確定診断,準確定診断および臨床診断とにクラス分けを行い,臨床症状,Ⅰ型アレルギー素因の証明,眼局所(結膜)でのⅠ型アレルギー反応の証明のすべてに当てはまる症例を確定診断群とすることになった.眼局所のI型アレルギー証明法として,現在最も注目を浴びているのが,涙液における免疫グロブリンE(IgE)検査法である.原理的には免疫クロマトグラフィー法を用い,総IgE値ないし抗原特異的IgE値をターゲットとするものがある.アデノウイルス結膜炎診断キットで眼科医にとってなじみのある方法となった免疫クロマトグラフィー法キットが導入されれば,感染性結膜炎との鑑別診断などで診断精度の向上が期待される.涙液を用いたアレルギー学的検査法は,庄司純先生が検討データを含めて述べられる.ヘルパーT細胞におけるTh1/Th2理論はアレルギー学に大きな影響を与えたエポックメーキングとなった.現在はこれにさらにTh3を加えた大きなバランスで腫瘍性疾患を含めた疾患の病態をヘルパーT細胞から捉える見方が有力である.ヘルパーT細胞が