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緑内障検査とOCT検査機器の使用経験

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLS業貿易),HRT(Heidelbergretinatomography)II(Heidelberg),GDxVcc(CarlZeissMeditec)を施行し,狭隅角の患者にはUBM(超音波生体顕微鏡)(TOMEYCORPORATION)を施行し,それに加えてOCTを撮影している.OCT3000では検査可能な被検者の最小瞳孔径が3.2mmとなったため,無散瞳でも検査可能ではあるが他の網膜疾患同様に狭隅角眼を除いて散瞳下での撮影を行っている.緑内障診断プログラムとしては,視神経乳頭解析(opticnerveheadanalysis),網膜神経線維層厚(RNFLthickness)およびRNFL厚マップ(RNFLthicknessmap)がある.そのなかで筆者らはFastRNFLthick-ness3.4を使用している.この解析プログラムは,乳頭中心から3.4mmの位置での視神経乳頭周囲のサークルスキャンによって得られ,視神経乳頭の耳側,上方,鼻側,下方の順で網膜神経線維の厚みが展開され表示される.RNFLthicknessaverage解析を使用すると,被検者の年齢に相当する正常者のRNFL厚の平均値との比較により視覚的に正常範囲内・境界域・異常を判別できる.黄斑部のOCTの撮影にも同様にいえることであるが,固視が不良である患者の画像を撮影しようとすると解析に耐えうる画像が時として得られないことがある.また,再現性をみるために複数回の撮影を終えていざ解析をしてみると案外再現性の低い印象をもつ結果しか得られないこともあるのが難点と考えられる.そのため,前述の他の機器の解析結果を参考にすることもある.こはじめに2006年に改訂された緑内障診療ガイドライン(第2版)では,緑内障を緑内障性視神経症として定義している.また,補足資料として緑内障性視神経乳頭・網膜神経線維層変化判定ガイドラインが追加された.このことから,緑内障の診断に関して視野の結果とそれに一致した視神経乳頭所見はもとより網膜神経線維層の変化をいかに的確に捉えて,緑内障性視神経症を確実に検出するかがよりいっそう重要とされる.熟練した緑内障専門医の主観的判定に頼らずとも,多様な診断機器を駆使し,その客観的なデータに基づいて一般の眼科診療医でも客観的に確定診断を下せる状況を整備することが望ましい.光干渉断層計(opticalcoherencetomograph:OCT)は網膜疾患を中心に診断する目的でOCT2000(CarlZeissMeditec)が導入されたが,より優れた画質と黄斑部網膜厚,視神経乳頭周囲線形線維厚,視神経乳頭形状解析などの緑内障診断に対応できる解析ソフトが標準装備されたOCT3000が普及した.さらに最近では,今後のOCT診断装置の中心とも目されるスペクトラルドメインが登場し,業界各社がより精度を高めるべくしのぎを削っているようである.今回はOCTのバイヤーガイドの一端に緑内障検査とOCT検査機器の使用経験を書かせていただく.当科では来院した緑内障の初診患者には視力・眼圧および一般的な検眼鏡検査に加え,単純眼底写真(広角),ステレオ眼底写真,ペンタカム(オクルス社製,中央産(71)647HsashTaedaauhsaSuyama9208641131特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):647654,2008緑内障検査とOCT検査機器の使用経験ExperienceofOpticalCoherenceTomographyinGlaucomaExamination武田久*杉山和久*———————————————————————-Page2648あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(72)の点ではOCT単独での診断は他の診断機器同様あくまでも診断補助としての有効性があるが,経過観察装置としては結果のばらつきを十分に考慮する必要がある.症例〔症例1〕患者は37歳,男性.アトピー性皮膚炎でステロイドの皮膚軟膏の使用に伴う右眼ステロイド緑内障疑いで当院を紹介受診.初診時右眼眼圧は45mmHgで,精査後に右眼のトラベクロトミーを施行し,眼圧は点眼のみで1315mmHgに安定した.その際の術前検査および術後3カ月の検査の比較をした.眼底写真では明らかな視神経乳頭陥凹は認めず,網膜神経線維層欠損(nerveberlayerdefect:NFLD)も図1初診時の右眼眼底写真全周のリムは保たれており,明らかなNFLDや乳頭出血は認めない.図2術前(a)および術後2カ月(b)のHRTII画像a:術前のHRTII画像では,高眼圧により視神経乳頭陥凹の拡大があるため,鼻側に正常範囲外の判定(印),耳下側で境界域の判定となっている.b:術後2カ月のHRTII画像では鼻側,鼻上側で境界域の判定となっている.ab———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008649(73)図3初診時(a)および術後2カ月(b)のGDxVcc画像a:初診時のGDxVcc画像では鼻上側および耳下側に正常範囲外の判定(矢印)となっている.b:術後2カ月のGDxVcc画像では上下象限で正常範囲外の判定.初診時に比較してややRNFL圧の菲薄化の悪化が認められる(赤の円の部分).ab———————————————————————-Page4650あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(74)図4初診時(a)および術後2カ月(b)のStratusOCT画像a:初診時のStratusOCT画像では鼻上側に正常範囲外の判定,それ以外の象限では境界域の判定となっている.b:術後2カ月のStratusOCT画像では上下象限で正常範囲外の判定.初診時に比較してややRNFL厚の菲薄化の悪化が認められる.ab———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008651(75)は上方から鼻上側および下方のRNFL厚の菲薄化が示された(図3a).StratusOCTの結果は右眼で上方のRNFL厚の菲薄化が示され,他の診断補助装置の結果と同様であった(図4a).約3カ月後の各検査の結果を比認めなかった(図1).術前のHRTIIではrimarea,rimvolumeおよびmeanRNFLthicknessが正常範囲外と判断され,Moorelds解析では鼻側が正常範囲外,耳下側が境界域と判断されている(図2a).GDxVccで図5初診時(a)および術後2カ月(b)のHamphrey静的視野検査結果a:初診時のHamphrey静的視野検査結果では高眼圧のためか全領域での感度低下を認める.b:術後2カ月のHamphrey静的視野検査結果では上下の鼻側比較暗点を認める.初診時に比較して視野の改善が認められる.ab図6初診時(a)および術後2カ月(b)のGoldmann動的視野検査結果a:初診時のGoldmann動的視野検査結果では鼻下側および耳下側で感度低下を認める(白矢印).b:術後2カ月のHamphrey静的視野検査結果では初診時同様に鼻下側および耳下側で感度低下を認め(白矢印),さらに鼻上側に感度低下域(黒矢印)を認める.ab———————————————————————-Page6652あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008較したところ,HRTIIの結果は初診時と比較して軽快しており,Moorelds解析でも正常範囲外の判定は認めなかった(図2b).それに対して,GDxVccおよびStratusOCTの結果は初診時に比較して視神経乳頭上方および下方のRNFL厚の菲薄化がより進行している結果となった(図3b,4b).視野検査はHamphrey静的視野結果を術前と術後で比較したところ術前の高眼圧の影響もあるせいか,術後で改善している(図5a,b)が,Goldmann動的視野では術前には認めなかった絶対暗点や上方の視野の感度低下領域の出現が認められ(図6a,b),StratusOCTおよびGDxVccの時間経過の結果を反映していると考えられた.StratusOCTに加えて現在当院外来にはTOPCON社製の3DOCT-1000(3Dスキャン)があり,黄斑部疾患(76)図7眼底写真耳上側および耳下側にNFLDを認める(矢印).図8HRTIIの画像耳上側および耳下側のリムの菲薄化を認める.図9Hamphrey静的視野結果下方に視野異常が強く,上方視野ではわずかに閾値低下を認める.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008653(77)のみならず緑内障症例の視神経乳頭およびNFLDを含むアーケード内の神経線維層の解析を行っている.撮影する固視位置の違いでDisk(視神経乳頭部),Fovea(中心窩)およびCenter(老人保健法の位置)と設定区分があるが,視神経乳頭の観察や乳頭周囲の神経線維層厚の測定はDiskで,NFLDの状態はFoveaまたはCenterで行い解析に利用している.〔症例2〕つぎに3Dスキャンで撮影された症例を呈示する.患者は58歳,女性.眼底写真上(図7)で耳上側および耳下側にNFLDを認める正常眼圧緑内障である.この症例のHRTII(図8)およびHamphrey静的視野結果(図9)とGoldmann動的視野(図10)と3Dスキャン(図11)を呈示する.眼底写真上のNFLDに一致してHRTIIで耳上側および耳下側のリムの菲薄化を認める.Hamphrey静的視野で下方に視野異常が強く,上方視野ではわずかに閾値低下を認める(図9).Gold-図10Goldmann動的視野結果下方視野に鼻側階段を認め,上方視野では中心視野に感度低下領域の出現が認められる.図113Dスキャンの画像a:3Dスキャンのディスプレイ画像.b:網膜断面でNFLDが明瞭に観察でき(赤の楕円),網膜面でもNFLDの走行が描出されている(矢印).c:NFLDの走行が黄斑付近まで明瞭に描出されている(矢印).d:NFLD(赤の楕円)や中心窩が立体的に描出されている.acbd———————————————————————-Page8654あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(78)mann動的視野でも下方視野に鼻側階段を認め,上方視野では中心視野に感度低下領域の出現が認められる(図10).NFLDの同部位の3Dスキャンでは得られた画像をマウスでいろいろな方向から確認できるためNFLDの位置や深さまで確認できる.図11aは3Dスキャンの解析結果の画面である.立体解析画像に注目すると図11bに示すようにNFLDの部位を網膜断面で観察したところNFLDが明瞭に認められ(赤の楕円),同一画像で網膜面に注目するとNFLDの走行が立体的に描出されている(矢印).図11cのように観察する方向を変えてみると,NFLDが黄斑部付近まで描出されている(矢印).さらに図11dのようにNFLD(赤の楕円)同様に中心窩の様子も明瞭に観察できる.また,モードを変更することでよりNFLDを鮮明にすることも可能である.この製品には緑内障診断ソフトなどの充実が今後期待される.

緑内障検査とOCT検査の機種一覧

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSの分解能は10μm,スキャン速度は400Aスキャン/秒である.豊富な解析ソフトを搭載しているのが特徴で,緑内障解析ソフトには視神経乳頭周囲RNFL厚解析ソフト(“RNFLThickness(3.4)”と“RNFLMap”)と視神経乳頭解析ソフト(“OpticDisc”)がある.それぞれの測定モードには通常モードと測定ポイントを減らして短時間で測定するFastモードがあるが,固視微動の影響が少ないFastモードで測定することが多い.“(Fast)RNFLThickness(3.4)”は視神経乳頭中心から直径3.46mmの部位の網膜をサークルスキャンすることによってRNFL厚を計測する.解析には連続3回測定の平均値を用い,RNFL厚のグラフ表示のほかに30°ずつ時計軸に12分割した平均値と4分割した平均値も表示される.また,3回目の測定時の眼底像と最もSignalStrength(信号強度)が弱いOCT画像1枚が表示される.SignalStrengthは基本的に5以上あれば信頼度が高いが,AnalysisCondenceLowと表示される場合は信頼度が低い.さらに平均RNFL厚をはじめとする11のパラメータも表示され左右眼の差も計算される.なお,それぞれの値は年齢を補正した正常眼のデータベースと比較され,正常眼の1%以上5%未満では黄色,1%未満では赤色に表示される(図1).“FastRNFLThickness(3.4)”の正常眼のデータベースのサンプル数は328眼(1885歳)であり,人種別の内訳は白人が63%,ヒスパニックが24%,黒人が8%と続き,アジア人はわずか3%である.問題点としては現在のソはじめに緑内障は網膜神経節細胞の細胞死によって生じる視神経症であり,わが国の中途失明原因の第1位を占める.組織学的には網膜神経線維層(retinalnerveberlayer:RNFL)の菲薄化や視神経乳頭陥凹の拡大が生じる.Opticalcoherencetomography(OCT)はその優れた分解能1)からこれらの解剖学的変化の定量が可能であり,解析することで緑内障の診断支援を行っている.解析を行ううえで重要なのは正常眼との比較である.特にRNFL厚は正常者でも加齢に伴い薄くなることが報告2)されており,RNFL厚を判定する際には同年代の正常眼との比較が必要になる.さらに,正常眼のRNFL厚は人種間で差があるという報告3)もあり,正常眼のデータベースのサンプルの内容にも注意が必要である.現在,OCTは多数の会社から発売されているが,第一世代(タイムドメイン方式)と第2世代(スペクトラルドメイン方式)に分類される.スペクトラルドメインOCTはタイムドメインOCTに比べ高速で高分解能の画像が取得できる.今回,緑内障解析ソフトを搭載しているタイムドメインOCT3機種,スペクトラルドメインOCT2機種について,それぞれの機種の特徴とソフトの内容について解説する.IOCT3000(StratusOCT):CarlZeissMeditec社タイムドメインOCTの代表的機種である.深さ方向(61)637Makotoanno9909585222特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):637645,2008緑内障検査とOCT検査の機種一AListofOpticalCoherenceTomographyDevicesinGlaucomaExamination菅野誠*———————————————————————-Page2638あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(62)図1OCT3000の“FastRNFLThickness(3.4)”の解析画面視神経乳頭周囲RNFL厚のグラフ表示や11のパラメータが表示され,正常眼との比較が行われる.(出典:CarlZeissMeditec社)図2OCT3000の“FastOpticDisc”の解析画面6本のラインスキャンから視神経乳頭のパラメータを計算する.(出典:CarlZeissMeditec社)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008639(63)ト(角膜方向への移動距離)も任意の値が入力可能である.課題としては6本のラインスキャンのみで各パラメータを算出しているため情報量が少なく精度不足の点は否めない.また,正常眼のデータベースも搭載されていない.IIOCTオフサルモスコープ(C7):ニデック社OCT3000と同じタイムドメイン方式のOCTで深さ方向の分解能は8μmである.OCT3000が深さ方向(Z軸方向)へのAスキャンを重ね,横方向(X-Y軸方向)に移動することによって網膜断層像(Bスキャン)を得るのに対して,OCTオフサルモスコープでは,はじめにX-Y軸方向に平面としてスキャンし(Cスキャン),その後深さ方向(Z軸方向)へ移動することによって画像を取得する.また,OCTオフサルモスコープは,OCTと同一光源,同一光軸で走査レーザー検眼鏡(scanninglaserophthalmoscope:SLO)の鮮明な眼底画像を同時に取得できる特徴ももつ.このためOCT画像とSLO画像を組み合わせて表示することも可能である.緑内障の解析ソフトには“RNFL”があり,視神経乳頭を中心にサークルスキャンをしRNFL厚を計測すフトでは,RNFLの境界は自動描線のみで決定され手動での補正ができない(境界エラーがある場合,訂正ができない),1回分のOCT画像しか表示されない(他の2回分のOCT画像は不明であり,境界エラーの有無を判定できない)点があげられる.次期ソフトではRNFLの境界を手動で補正できるようになる見込みである.“(Fast)RNFLMap”は視神経乳頭中心から直径2.96.8mmまでの位置でサークルスキャンを6回行い,視神経乳頭周囲のRNFL厚をマップ化して表示する.マップ表示のほかに,視神経乳頭中心から直径2.9mmと6.8mmの部位での8分割した平均RNFL厚も表示される.“(Fast)OpticDisc”は視神経乳頭を放射状に長さ4mm,6本のラインスキャン(30°間隔)を行うことで,12方向の横断面から視神経乳頭の形状解析をする.OCTの断層像で網膜色素上皮の終端を検出し,網膜色素上皮の終端を結んだラインから角膜方向に150μm平行移動したラインで陥凹径を,網膜色素上皮の終端から垂直方向に延ばしたラインを視神経乳頭縁としてそれぞれの値を算出する(図2).色素上皮の終端は自動で検出されるが手動での補正が可能であり,陥凹径のオフセッ図3OCTオフサルモスコープの“RNFL”の解析画面視神経乳頭周囲RNFL厚のグラフ表示や3回分のOCT像が表示される.(出典:ニデック社)———————————————————————-Page4640あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(64)ポイントと600ポイントの2種類があり“200”のモードでは短時間で測定できる.撮影すると連続6枚の画像がストックされ(図5),任意の画像1枚を選択して解析する.RNFLの境界は自動描線で行われるが手動での補正も可能である.日本人の正常眼486眼(1880歳)のデータベースが搭載されており,RNFL厚のグラフ表示の他に12分割と6分割した平均値も表示される.さらに平均RNFL厚のなど14のパラメータも表示され,左右眼の差も表示される.なお,それぞれの値は年齢を補正した正常眼のデータベースと比較され,正常眼の1%以上5%未満では黄色,1%未満では桃色に表示される(図6).IV3DOCT1000:トプコン社世界初のスペクトラルドメイン方式のOCTである.分解能は5μm,スキャンスピードは18,700Aスキャン/秒でOCT3000(400Aスキャン/秒)の約47倍である.眼底カメラを搭載しているのが特徴で,OCT像と眼底写真や蛍光眼底写真などを位置合わせする(regis-る.サークルスキャンの直径は3.1mmと3.4mmの2種類がある.解析には連続3回測定の平均が用いられるが,オートトラッキング機能を装備しており連続3回の測定は同じ位置で測定できる.RNFLの境界は自動描線で行われるが,手動での補正も可能である.平均RNFL厚のほかに部位ごとに4分割,8分割した平均値も表示される(図3).同一眼の経過観察にはRNFL厚の2回の差分を表示する機能(図4)があり便利であるが,正常眼のデータベースが搭載されておらず正常眼との比較はできない.IIIEZSCANNER:マイクロトモグラフィー社国産初のOCTでタイムドメイン方式を採用している.深さ方向の分解能は1020μm,スキャン速度は400Aスキャン/秒でOCT3000とほぼ同等の性能である.緑内障解析ソフトは視神経乳頭を中心にした直径3.46mmの位置の網膜をサークルスキャンしRNFL厚を計測する.撮影モードは横方向の測定ポイントが200図4OCTオフサルモスコープの“RNFL”の比較画面2回分のRNFL厚グラフとその差が表示される.(出典:ニデック社)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008641(65)図5EZSCANNERの視神経乳頭周囲RNFL厚の測定画面6回分のOCT像が自動的にストックされる.(出典:マイクロトモグラフィー社)図6EZSCANNERの視神経乳頭周囲RNFL厚の解析画面ストックした画像から任意の1回分のRNFL厚を解析する.(出典:マイクロトモグラフィー社)———————————————————————-Page6642あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(66)図73DOCT1000の視神経乳頭周囲RNFL厚の解析画面RNFL厚のグラフや4,12分割した平均値も表示され正常眼との比較が行われる.(出典:トプコン社)図83DOCT1000の視神経乳頭を中心とした3Dスキャン画面3次元画像と視神経乳頭周囲のRNFL厚のマップを表示している.また,RNFL厚のマップは眼底写真とregistrationも行っている.(出典:トプコン社)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008643(67)実しており,視神経乳頭周囲のRNFL厚(“RNFL3.45”)および視神経乳頭解析ソフト(“NerveHeadMap4:NHM4”)をはじめ,黄斑部の解析ソフト(“MaculaMap7:MM7”)も搭載しているのが特徴である.さらに視神経乳頭周囲を含む4×4mmの範囲を約2秒でスキャンし3次元化して表示する“3-DDisc”もある.それぞれのソフトでは経時変化の表示や比較解析機能も装備している.“RNFL3.45”は視神経乳頭中心から直径3.45mmの部位の網膜を0.16秒で4回連続サークルスキャンし平均化したRNFL厚を解析する.RNFL厚のグラフ表示とその下に2,6,16分割した平均値も表示され,正常眼との比較が行われる.平均RNFL厚や4,8分割した平均値は表内に表示される(図9).“NHM4”は視神経乳頭中心から放射状に長さ4mm,12本のラインスキャン(15°間隔)を行い24方向の横断面から視神経乳頭の形状解析をする.同時に直径2.54.0mmまでの6本のサークルスキャンを行い視神経乳頭周囲のRNFL厚のマップ表示もする.視神経乳頭解tration)機能も装備している.このため,眼底写真からOCTの撮影部位を特定でき,毎回同じ部位での撮影が可能になり経過観察に有用である.緑内障解析ソフトには視神経乳頭中心から直径3.4mmの網膜をサークルスキャンしてRNFL厚を測定するソフトがあり,RNFL厚のグラフ表示と4分割,12分割した平均値が表示される.日本人正常眼200眼以上のデータベースを搭載しており,正常眼の1%以上5%未満では黄色,1%未満では赤色に表示される(図7).さらに3DスキャンモードではRNFL厚のマップ表示も可能である(図8).また,同一眼の経過観察に便利な差分マップ表示機能もある.黄斑部についてもRNFL厚の測定は可能であるが,緑内障解析ソフトは搭載されていない.VフーリエドメインOCTRTVue100:Optovue社スペクトラルドメイン方式のOCTである.深さ方向の分解能は5μm,スキャン速度は26,000Aスキャン/秒でOCT3000の65倍である.緑内障解析ソフトは充図9RTVue100の“RNFL3.45”の解析レポート視神経乳頭周囲RNFL厚のグラフや2,6,16分割した平均値も表示され正常眼との比較が行われる.(出典:Optovue社)図10RTVue100の“NHM4”の解析レポート視神経乳頭のパラメータが左下の表にまとめられ,視神経乳頭周囲RNFL厚のマップとグラフが右下に表示される.(出典:Optovue社)———————————————————————-Page8644あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008前述した“RNFL3.45”のRNFL厚のグラフはスキャンビームの中心から直径3.45mmの位置のRNFL厚であり“NHM4”のものとは厳密には異なる.このため,“NHM4”モードでは視神経乳頭中心を多少ずれてスキャンしても,乳頭中心から直径3.45mmのRNFL厚の解析には影響しない利点がある.“MM7”は黄斑部の7×7mmの範囲で,長さ7mmのラインスキャンを水平方向に1本,垂直方向に0.5mm間隔で15本スキャンし,網膜内層の神経節細胞複合体(ganglioncellcomplex:GCC)層を測定しマップ化して表示する.GCC層は網膜神経線維層,神経節細胞層,内網状層の3層の合計からなり,緑内障では神経節細胞の減少に伴い菲薄化すると考えられている.GCC厚マップのほかに,DeviationマップやSignicanceマップが選択でき正常眼のデータベースと比較が行われる(図11).正常眼のデータベースであるが,サンプル数は“RNFL3.45”および“NHM4”のRNFL厚は330眼(1880歳),“MM7”のGCC厚は300眼以上(1880歳)であるが人種別の内訳などの詳細は公開されていない.今後,日本人の正常眼のデータベースが搭載される予定である.なお,正常眼との比較ではそれぞれのパラメータが正常眼の1%以上5%未満では黄色,1%未満では赤色に表示されるのはOCT3000と同様である.おわりに今回取り上げたOCTの緑内障解析ソフトの種類および正常眼のデータベースの搭載の有無について表1にま析をする際には,視神経乳頭縁を手動で決定し解析する.視神経乳頭縁の決定にはOCT画像で網膜色素上皮の終端から決定する方法や“3-DDisc”の画面から決定する方法などがある.視神経乳頭周囲のRNFL厚のマップには16分割した各セクション内の平均値も表示され正常眼との比較が行われる.さらに,計算で視神経乳頭の中心を求め,そこから直径3.45mmの位置でのRNFL厚が再計算されグラフ表示される(図10).なお,(68)図11RTVue100の“MM7”の解析レポート黄斑部GCC厚マップのほかに,DeviationマップやSignicanceマップが選択でき正常眼との比較が行われる.(出典:Optovue社)表1各種OCTの緑内障解析ソフトと正常眼のデータベースOCT測定方式緑内障解析ソフト正常眼のデータベース視神経乳頭周囲RNFL厚視神経乳頭解析黄斑部GCC厚OCT3000(StratusOCT)タイムドメイン○○×○OCTオフサルモスコープ(C7)タイムドメイン○×××EZ-SCANNERタイムドメイン○××○3DOCT-1000スペクトラルドメイン○××○RTVue-100スペクトラルドメイン○○○○RNFL:retinalnerveberlayer,GCC:ganglioncellcomplex(神経節細胞複合体).緑内障解析ソフト,正常眼のデータベースは2008年3月時点での搭載の有無.———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008645今回の執筆にあたり,画像の提供ならびに協力をいただいたCarlZeissMeditec社,ニデック社,マイクロトモグラフィー社,トプコン社,Optovue社(国内販売:中央産業貿易)の関係者の皆様に深謝します.文献1)HuangD,SwansonEA,LinCPetal:Opticalcoherencetomography.Science254:1178-1181,19912)VarmaR,SkafM,BarronE:Retinalnerveberlayerthicknessinnormalhumaneyes.Ophthalmology103:2114-2119,19963)BudenzDL,AndersonDR,VarmaRetal:DeterminantsofnormalretinalnerveberlayerthicknessmeasuredbyStratusOCT.Ophthalmology114:1046-1052,20074)MedeirosFA,ZangwillLM,BowdCetal:ComparisonoftheGDxVCCscanninglaserpolarimeter,HRTIIconfocalscanninglaserophthalmoscope,andstratusOCTopticalcoherencetomographforthedetectionofglaucoma.ArchOphthalmol122:827-837,20045)QuigleyHA,DunkelbergerGR,GreenWRetal:Retinalganglioncellatrophycorrelatedwithautomatedperimetryinhumaneyeswithglaucoma.AmJOphthalmol107:453-464,1989とめた.なお,紹介できなかったCarlZeissMeditec社のスペクトラルドメインOCTであるCirrusHD-OCTにも緑内障解析ソフトが搭載されるのをはじめ,他のOCTでも緑内障解析ソフトの追加や更新がされると思われる.緑内障の画像解析装置には多数の種類があるが,ScanningLaserPolarimeterのGDx-VCC,Con-focalScanningLaserOphthalmoscopeのHRTⅡ,タイムドメインOCTのOCT3000の緑内障の診断能力はほぼ同等4)とされている.基本性能が向上したスペクトラルドメインOCTは,視神経乳頭と乳頭周囲RNFL厚に加え黄斑部の網膜内層厚(GCC厚,RNFL厚)の解析も可能になり,緑内障解析ソフトの精度の向上が期待されている.現在,緑内障の診断および進行の判定は自覚的検査である視野検査で行っている.自動視野計で5dBの感度の低下の出現までに20%の網膜神経節細胞が減少している5)とされている.緑内障初期では構造的変化が機能的変化(機能障害)に先行すると考えられており,診断能力が向上したOCTがどの程度,pre-peri-metricな診断(リスクの把握)から緑内障管理まで対応できるかは今後の検証が待たれる.(69)

前眼部OCT検査の機器:使用経験

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLS時の前房内所見,結膜・涙液所見に分類して,それぞれに応じた具体的な症例を提示して述べていくことにする.すべての症例を網羅することはできないが,その有用性を認識していただければ幸いである.I角膜厚測定通常モードでもhighresolutionモードでも,任意の方向と部位でのZ軸方向の断層像が得られる.実際の前眼部を確認しながら撮影部位を決定できるので,混濁部位や浮腫を確認しながら撮影が可能である.また解析時には,得られた画像から選択した任意の2点間の距離を測定することができる.測定距離の両端には短い直交する線があって,角膜のカーブの接線に合わせることによって,できるだけ正確な角膜厚が測定できるようになっている.全層角膜移植後や表層角膜移植後の角膜厚の推移を,定量的に評価することにより,浮腫の軽減具合をみて術後のグラフト機能の改善の程度を判断したり,LASIK(laserinsitukeratomileusis)でのフラップ厚の測定機能を用いてLASIK後のフラップ厚や残存ベッド厚の測定を行ったり,角膜内皮移植術(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty:DSAEK)後のグラフト厚とホストの角膜厚などを測定することによって,術後評価にも使用可能である.DSAEKでは,術後の内皮機能の回復とともに角膜厚の減少する様子が捉えられ,術後経過の診察の一助となる(図3).はじめに前眼部OCT(光干渉断層計)検査の検査機器については前項で説明されているので,本稿では実際の臨床での使用経験について解説したい.当科ではZeiss社より販売されているVisanteTMOCTを使用した.撮影に関しては,網膜領域ですでに使用されているOCTに比較しても撮影速度が速く,手技が簡単かつ非接触で行えるためコメディカルでも十分に検査可能である.被検者側もまぶしさが少なく,自然な開瞼状態での撮影が可能である.なによりも得られる情報が,角膜厚・角膜混濁の深さ・虹彩癒着などの前房内の情報など多岐にわたり,これまで経験的に評価されてきたものを定量化するとともに,これまでにない非常に有用な情報も多く得られてきている.画像は,角膜全体が写る通常の撮影モードに加えて,撮影範囲は狭くなるがより高解像度なhighreso-lutionモード,そして角膜厚をマッピング表示できるpachymetrymapがある(図1).OCT画像による形態学的な評価が可能であることは当然のことである(図2)が,角膜厚や混濁の深さなどは,今まで経験的にしか判断できず,どうしても実際の術中所見との違いがあったのだが,前眼部OCTはこれらの値を数値化して,定量的・客観的に判断することを可能にしてくれる非常に優れた機器であり,今後の角膜診療においては必須のアイテムになっていくものと思われた.本稿では実際の臨床現場での使用例について,角膜厚測定,角膜厚マッピング,深さの定量化,角膜混濁(55)631AiraKubotaKohiishida:経器眼:980857411経器眼特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):631636,2008前眼部OCT検査の機器:使用経験UseExperienceofAnteriorOpticalCoherenceTomography久保田享*西田幸二*———————————————————————-Page2632あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(56)abc図1前眼部OCTによる正常角膜の画像a:通常モード,b:Highresolutionモード,c:Pachymetrymap.図2前眼部OCTによる隅角および角膜の形態学的評価a,b:ICE症候群でスリットでは隅角が閉塞しているように見えるが眼圧は11mmHg.c:前眼部OCTでは,虹彩癒着を認めるが隅角には隙間があることがわかる.d,e:ぶどう膜炎の角膜後面沈着物.前眼部OCTで角膜内皮面の突起物として認められる.deabc———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008633(57)II角膜厚マッピングVisanteTMOCTには,角膜の中央を基点として180°回転しながら角膜全体の厚みを測定し,マッピング表示できるモードがある.初期には8方向の断層像の測定から得られた厚みの測定でマッピング表示を行っていたが,現在では16方向の測定での表示となっており,より詳細な表示が可能となっている.この角膜厚のマッピこれまで角膜厚を測定するには,超音波を用いたパキメータによる測定が主だったが,プローブは検者の手で測定しており超音波の進む方向によって測定値が異なるため,誤差も大きかった.前眼部OCTでは,短時間で非接触での測定であり,複数回の測定でのばらつきはもちろんのこと,検者間でのばらつきも少なく一定した検査結果を得ることができる.図480歳,女性.右眼の角膜移植後のヘルペス性角膜炎初診時(a,b)および治療開始後1カ月(c,d)の前眼部写真および前眼部OCTのpachymetrymap.著明に浮腫が軽減していることがわかる.bacd図389歳,女性.DSAEK術後4カ月の前眼部写真(a)および前眼部OCTの画像(b)術前矯正視力(0.3),術後矯正視力(0.4)である.ab———————————————————————-Page4634あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(58)る.しかし,OCTの特性によって,コントラストのつきやすいものとそうでないものとがあり,アベリノ角膜変性症や帯状角膜変性(図5)などでは深さの定量化が比較的容易であるが,梅毒性角膜炎などのdiuseな混濁は写りにくい.撮影可能な症例については,LASIKのフラップ厚測定ツールにて,角膜表面から混濁までの距離と混濁から角膜内皮までの距離の測定が可能となり,特にPTKの適応を決めるときに有用である.IV前房内透見困難症例での前房内観察角膜混濁によって,前房内観察や隅角観察が困難な場合でも前眼部OCTでは虹彩癒着の有無や瞳孔癒着の有無などを観察することができる.複数回の角膜移植を受けている症例では隅角癒着やドナーとグラフトの創間に虹彩が癒着している症例などがあるが,角膜混濁などで細隙灯顕微鏡検査のみでは術前に詳細を把握することがング表示は,角膜全体での浮腫の程度や局在を瞬時に判断できるメリットがある.角膜感染症などでの浮腫の局在がわかりやすくなり,治療効果の判定がしやすくなる.図4に感染性角膜潰瘍の治療例を示した.初診時には,角膜厚が増大していたのが,治療に反応して次第に角膜厚が減少していく様子がわかる.これまではカルテに記載した所見を思い起こしながら治療効果の判定をしていたものが,具体的な数値をもって判断できることになり,実際に使ってみて非常に有用であった.III深さの定量角膜混濁の深さについてはこれまでは,スリット所見をもとにおおよその位置を推定して,LKP(lamellarkeratoplasty)やPTK(phototherapeutickeratectomy)の適応を決めていたため,どうしても手術適応を誤る可能性があった.角膜混濁を前眼部OCTで撮影できれば,混濁の深さに応じて手術適応を決めることも可能にな図588歳,女性.右眼の帯状角膜変性のPTK術前(a,b)および術後(c,d)の前眼部写真および前眼部OCTのhighresolutionモード術後の上皮下混濁が消失していることがわかる.acbd———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008635(59)また,角膜上皮の幹細胞が疲弊したStevens-Johnson症候群や眼類天疱瘡などの眼表面疾患では,結膜侵入や角膜実質混濁により前房内観察が非常に困難な症例がある.これまでは,全層角膜移植と輪部移植などが行われていたが,拒絶反応が高率に起こるため,近年では自己困難であった.このような症例についても,隅角や虹彩の状態を把握することができるため,虹彩をさわることが予想され術後の炎症が強くでる可能性がある場合には,術中からステロイドを投与することができるなど,より詳細な手術計画を立てることができる.図640歳,男性.左眼のアルカリ外傷3度の全層角膜移植を受けるも治癒せず.細隙灯顕微鏡検査では前房内は透見不能(a,b).前眼部OCTの通常モード(c)およびhighresolutionモード(d).一部に虹彩癒着を認めるが,全周性の癒着はないことがわかる.cabd図7涙液・結膜所見a:Highresolutionモードでの撮影.上下の涙液メニスカスの撮影が可能である.b:結膜弛緩症の症例.向かって左が下方であるが,上下ともに弛緩した結膜により涙液メニスカスの形成が不良である.ab———————————————————————-Page6636あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(60)ている像がわかるし,涙点プラグの挿入前後での涙液メニスカスの形成具合を評価することも可能である.おわりにすべての症例を提示することはできなかったが,前眼部OCTはこれまで経験則で行われていた診察所見を定量化してくれるだけでなく,新しい情報をも提供してくれる画期的な検査機器である.OCT技術が,これまで網膜領域で急速に普及してきたように,今後は角膜領域においても同様のことが起こってくるであろう.今後の改良によってますますその重要性・必要性は高まってくるものと思われるが,われわれ眼科医はこれらの機器の進歩に遅れないよう,得られる情報を十分に理解・活用していくことが大事である.細胞を用いた培養口腔粘膜上皮シート移植といった上皮のみを移植する術式が開発されてきた.このような手術を行う場合には,これまで手術中にしか確認できなかった隅角や前房の状態を,術前に把握しておくことが可能となる(図6).手術適応の有無を評価する助けにもなり,より正確な手術適応の判定が可能となる.V涙液量の定量化や結膜の評価自然な開瞼状態での撮影が可能であるため,上下の涙液メニスカスの撮影も可能である.この涙液メニスカスを定量化することによって,ドライアイの評価に使う試みもなされている(図7).また,前眼部OCTは結膜の状態を把握することも可能で,緑内障のブレブの状態や結膜腫瘍,結膜弛緩症なども撮影可能である.結膜弛緩症では,弛緩した結膜が涙液メニスカスの形成を阻害し外眼部外来手術マニュアル?????の手術を写真・イラストを多用しわかりやすく,読みやすく!【編集】稲富誠(昭和大学教授)・田邊吉彦(昭和大学客員教授)Ⅰ眼瞼の疾患1.霰粒腫(三戸秀哲井出眼科新庄分院)2.麦粒腫(三戸秀哲)3.眼瞼下垂(久保田伸枝帝京大学)4.眼瞼内反(根本裕次帝京大学)5.眼瞼外反─老人性(八子恵子福島医科大学)6.兎眼(八子恵子)7.睫毛乱生(柿崎裕彦愛知医科大学)8.眼瞼皮膚弛緩症(井出醇・山崎太三・辻本淳子井出眼科病院)9.眼瞼良性腫瘍(小島孚允さいたま赤十字病院)Ⅱ結膜・眼球の疾患1.翼状片(江口甲一郎江口眼科病院)2.眼窩脂肪脱出(金子博行帝京大学)Ⅲ涙器の疾患1.涙道ブジー(先天性狭窄)(吉井大国立身体障害者リハビリテーションセンター)2.涙小管炎(吉井大)3.涙点閉鎖(吉井大)B5判総122頁写真・図・表多数収載定価6,300円(本体6,000円+税300円)メディカル葵出版株式会社〒113─0033東京都文京区本郷2─39─5片岡ビル5F振替00100─5─69315電話(03)3811─0544■内容目次■(かっこ内は執筆者)

前眼部OCT検査の機器:機種一覧

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLS方向5~20μm,縦横方向10~60μm程度と高精度の画像が得られる.光ファイバーを使用しているため,測定機本体の形の自由度が高い.すなわち眼科でよく使用する機器と同じような形,たとえばスリットランプやオートレフのような筐体にすることができるので操作性が良い,ということもあげられる.非侵襲であり,かつ操作性が良いので,眼科医のみならず,コメディカルでも操作可能である.II前眼部OCTと後眼部OCTの違い大きく2つの違いがある.それは,測定光の波長と測定レンジである.後眼部において網膜は薄く,比較的均一な厚さで半透明な組織である.一方,前眼部の測定対象には,不透明組織(結膜,強膜,ぶどう膜)と透明組織(角膜,前房,水晶体)の両方が存在する.そのため至適な光波長が異なる.前眼部では1,310nm,後眼部では840nmという波長が多く使われる.また,前眼部と後眼部のOCTは観察対象の形態がまったく異なる.最初に開発された後眼部(眼底用)OCTは,主として黄斑の形態を知ることを目的としていた.すなわち,広さが4×4mm,奥行き2mm程度の測定レンジがあれば十分であった.そのため眼底用OCTをそのまま前眼部に応用すると,測定範囲が不十分である.両側の隅角を含めた角膜と,同時に虹彩,水晶体をはじめに眼科には,手軽に眼球の光学切片を切り出せる,スリットランプという診療機器がある.眼科医の手足ともいうべき機器であり,これなしでは眼科診療を行うことは不可能である.しかし,スリットランプには可視光を使うという原理上の弱点も存在する.たとえば,スリットランプでは不透明組織(結膜・強膜)の内部構造を正確に知ることはできないし,隅角も接触レンズを使用しないと観察することができない.熟練した眼科医と研修医では得られる情報量の間に雲泥の差がある.そこで,眼球の組織切片を非接触で可視化し,客観的に定量評価する方法として光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)が考案された1).初期のOCTは眼底に特化し,黄斑円孔や後部硝子体の病態理解に多大な貢献をした.それから約10年後に前眼部への応用が考案され,前眼部OCTの論文報告が行われた2).2005年に前眼部OCT,VistaneTM(CarlZeissMeditec)が商用化され,それにより角膜3)や隅角4),また屈折矯正手術5)や緑内障6)に関して新しい知見が得られた.I前眼部OCTの特徴前眼部OCTの特徴は,その非接触性・高精度画像・容易な操作性にある.超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscopy:UBM)と異なり,赤外光を利用した測定なので,組織に接触する必要がない.そのうえ,UBM(解像度50μm)より解像度が高く,垂直(奥行き)(47)623eisueaanaTetsuroOsia:機眼:3058575111機眼特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):623~629,2008前眼部OCT検の機器:機種一AnteriorSegmentOpticalCoherenceTomography:DeviceOverview川名啓介*大鹿哲郎*———————————————————————-Page2624あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(48)線維柱帯切除術後),ドライアイなどがあげられる.V機器による差2008年2月現在,3種類の前眼部OCT(広義)が商用利用可能である.詳細を表1に示す.最大の違いは波長と撮影原理の差である.OCTに多く用いられる波長には,840nmと1,310nmという2つの帯域が存在する.840nmはもともと眼底用に用いられていたもので,軸方向の解像度は高いが,組織深達度は低い.隅角は直接描出不可能である.一方,1,310nmは軸方向の解像度では840nmに劣るが,組織深達度が高いため前眼部の重要な構成要素である隅角や強膜が可視化できるという利点がある.さらに1,310nm波長は水での吸収が840nmよりも大きいため,測定光の強度を増やして,画質を高めるということが可能である.一般的な前眼部OCTは1,310nm波長を用いる.もう一つの撮影原理に注目すると,従来用いられていたtime-domain方式と近年新しく開発されたFourier-domain方式という2つの方式がある.Time-domain方式では測定速度が200~2,000A-scan/秒だが,Fouri-er-domain方式では20,000A-scan/秒以上の速度をもつ.Time-domain方式では1画像を得るのに0.125秒から2秒程度必要である.それに比べてFourier-domain方式では1画像を得るのにその10分の1程度の時間で可能であるため,眼球の動きによる影響を受け測定するためには最低12mm以上の測定幅が必要である.角膜,前房,虹彩を同時に撮影するために奥行き方向でも大きな撮影範囲が必要である.III前眼部OCTでわかること前眼部OCTにより涙液メニスカス・角膜・虹彩・水晶体前面・隅角・強膜・毛様体扁平部の高精度な断面画像が得られる.新しい機種では3次元画像も得られる.また,それらの定量解析も可能である.角膜の混濁があっても,内部の性状やその奥の変化の把握が可能である.角膜に関する手術(屈折矯正手術・角膜移植術)時には,層間の液体貯留や角膜浮腫の程度,移植片とホストの接合部などの評価が可能である.虹彩は前・後上皮層に分離可能である.隅角においては強膜岬,線維柱帯が明瞭に認識できる.さらにコントラストが高いため周辺部虹彩前癒着や隅角の機能的閉塞などの判定が可能となる.隅角の各種パラメータも半自動解析可能である.AOD(angleopeningdistance),TISA(trabecularirisspacearea),ARA(anglerecessarea)など,今までUBMで得られていたようなパラメータの算出が可能である.特にTICL(trabeculaririscontactlength)は前眼部OCTのみで解析可能である.IV前眼部OCTが有効な疾患角膜(屈折矯正手術前後,円錐角膜,角膜変性症,角膜移植前後),緑内障(閉塞隅角症,閉塞隅角緑内障,表1前眼部OCT3機種の詳細機種SL-OCTTMVisanteTMRTVue-100TM会社名HeidelbergEngineeringCarlZeissMeditecOptovue日本代理店JFCセールスプランカールツァイスメディテック中央産業貿易株式会社形式Time-domainTime-domainFourier-domain波長(nm)1,3101,310840スピード(A-scan/秒)2002,00026,0001撮影時間(秒)10.125~10.01~0.15スキャン幅(mm)4~1510~162~12スキャン深度(mm)最大74~82~2.3奥行き解像度(μm)25μm以下185縦横解像度(μm)非公開6015備考Haag-Streittypeスリットランプに装着光学系固定式調節負荷可能CAMにて前眼部撮影CAM:corneaanteriormodule.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008625(49)一方,SL-OCTは従来のスリットランプに撮影部をマウントしているため,スリットランプを操作するような感覚で前眼部の画像を得ることができる(図5).隅角や角膜の自動解析が可能である(図6,7).しかしながら,測定時間が比較的長いために,患者の眼球運動が入らないように注意する必要がある.隅角解析ソフトウェアはVisanteTMとほぼ同様である.RTVue-100+CAM(corneaanteriormodule)は840nm光源の眼底用OCT+前眼部撮影レンズという構成である(図8).広義の前眼部OCTに分類される.前眼部専用OCTではないため,組織深達度がほかの機種よにくく,3次元化も可能となる.ある部位の特定の1断面を見るためだけであればtime-domain方式の速度で十分であるが,断面だけでなく立体的な構造を把握する場合にはFourier-domain方式が望ましい.前眼部OCTではまだtime-domain形式のものが多いが,徐々にFourier-domain方式のものが増えてくると思われる.これは眼底用OCTの変遷と同じ傾向といえる.VI機器別の特徴VisanteTMは標準モード(16×6mm)とハイレゾモード(10×3mm)での撮影が可能である(図1).各々のモードで1画像から4画像を同時に取得できるモードが存在する.標準モードは,主として前眼部のアウトラインを捉えたいときに使用する(図2,3).前房深度測定や狭隅角の半自動解析が可能である.このモードではphakicIOL(眼内レンズ)挿入時のシミュレーションを行うことも可能である.ハイレゾモードは,角膜や隅角を拡大して観察したいときに用いる.これは屈折矯正手術後の評価に適する.最近,標準・ハイレゾモードともにノイズを取り除きコントラストを上昇させるモードが追加された(エンハンスモード).これにより,強膜岬や線維柱帯をより精細に判定することが可能となった.さらに,角膜の中心を軸として8~16個の撮影を行い,角膜厚のマッピングを行うという機能(パキメトリーマップ)も存在する(図4).また,調節付加機能があり,そのときの水晶体位置,虹彩の状態を判定可能である.撮影時には光源を含んだ撮影部分を固定し,被検者の頭部を動かすという方法で撮影を行う.顎台が動いて位置を合わせるという独特の操作方法である.図1VisanteTMOCTの外観図2VisanteTMOCTの表示画面中央に角膜,虹彩,隅角の断面像が表示される.上方には測定プロトコル,左下には位置決定用のカメラ画像が表示される.解OCT:Opticalcoherencetomography,光干渉断層計.低干渉性の光により非侵襲生体計測を行う機器.Timedomain:時間領域.Fourier-domainとともにOCTの原理の一つ.一つの測定光である一部分の情報を得る手法.Fourierdomain:Fourier領域.一つの測定光で奥行き方向すべての情報を得る手法.Time-domainより高速に画像を取得できる.———————————————————————-Page4626あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(50)図3VisanteTMOCTの4断面撮影モード中央に4方向の画像が表示される.下の列に表示されている画像群のうちで,任意のものを選択保存し,解析することができる.図4VisanteTMOCTの角膜厚マップ(パキメトリーマップ)左にカラーマップ,右に各測定部位の値が表示される.中心2mm,2~5mm,5~7mm,7~10mm領域の最大・最少・平均値が算出可能である.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008627(51)り低く,逆に解像度は高いという特徴がある.角膜に関しては他の前眼部OCTよりも詳細に描出できる(図9).上皮と実質の境界がはっきり識別できる場合が多い.さらにFourier-domainであるため,4mm領域の3次元画像(101枚/2秒)を構築できる.VisanteTMと同様にパキメトリーが可能で,8枚の画像から算出する(図10).しかしながら,測定レンジが狭いため前房全体のバイオメトリー(隅角角度・前房深度測定)には不向き図5SLOCTの外観本体はコンパクトで,スリットランプにマウントして使用する.図6SLOCTの隅角解析各種隅角パラメータの算出が可能である.ACA,ARA,750,ODlight図7SLOCTの前房生体計測,角膜厚測定(パキメトリー)任意断面の生体計測が行える.PachymetryProleAutomaticBiometry→図8RTVue100+CAM(corneaanteriormodule)の外観眼底用OCTに右に示した前眼部撮影用レンズをマウントして撮影を行う.———————————————————————-Page6628あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(52)である.角膜をより精細に見るということに適しているため,屈折矯正手術の評価に向くと考えられる.操作感覚は他の眼底用OCTとほとんど同じである.VII前眼部OCTの限界以上のように,前眼部OCTは前眼部解析(角膜,虹彩,隅角,毛様体扁平部)に関して容易で高精度であるが,光の特性による限界がある.完全な不透明組織では1~2mm程度の組織深達度である.そのため前眼部では毛様体体部が描出不能である.毛様体腫瘍や,胞の把握といった深い病変に対してはUBMが適するといえる.おわりに前眼部OCTの役割は何であろうか.非接触・高精度であるため,詳細な病変の観察に適する.また,スクリーニング用途としても有望である.特に角膜疾患,閉塞隅角緑内障などの前眼部の病変の詳細な描出が可能であり,UBMの代用となりうるのではないだろうか.今後の眼科診療において,重要な機器となっていくと思われる.図10RTVue100+CAMの角膜厚マップ(パキメトリーマップ)中心2mm,2~4mm,4~6mm領域の角膜厚が表示できる.図9RTVue100+CAMの表示画面上:角膜解析画面,上皮層と実質が分離可能である.中:隅角解析画面.前眼部専用OCTより高解像度だが,隅角底は描出されない.下:屈折矯正手術後にみられた層間の水隙がみられる.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008629sonofopticalcoherencetomographyandultrasoundbio-microscopyfordetectionofnarrowanteriorchamberangles.ArchOphthalmol123:1053-1059,20055)LiY,NettoMV,ShekharRetal:ALongitudinalStudyofLASIKFlapandStromalThicknesswithHigh-speedOpticalCoherenceTomography.Ophthalmology114:1124-1132,20076)MullerM,HoeraufH,GeerlingGetal:Filteringblebevaluationwithslit-lamp-adapted1310-nmopticalcoher-encetomography.CurrEyeRes31:909-915,2006文献1)HuangD,SwansonEA,LinCPetal:Opticalcoherencetomography.Science254:1178-1181,19912)RadhakrishnanS,RollinsAM,RothJEetal:Real-timeopticalcoherencetomographyoftheanteriorsegmentat1,310nm.ArchOphthalmol119:1179-1185,20013)LiY,ShekharR,HuangD:Cornealpachymetrymappingwithhigh-speedopticalcoherencetomography.Ophthal-mology113:792-799.e2,20064)RadhakrishnanS,GoldsmithJ,HuangDetal:Compari-(53)

網膜・硝子体のOCT検査機器の使用経験(3)-Cirrus HD-OCTの使用経験-

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSI当科におけるOCTの歴史光干渉断層計(OCT)は,眼組織の断層像を非侵襲的に描出できる機器である.1997年に最初のOCT2000がHumphrey社(現在はCarlZeissMeditec社)から発売され,その国内第1号機が当科に導入された.筆者らはOCT2000を用いてさまざまな眼疾患の病態を観察してきた.OCT2000はタイムドメイン方式を用いており,深さ方向の分解能が20μmであったが,後継モデルのOCT3000では10μmへとより精密化された1).2006年にフーリエドメイン方式(スペクトラルドメイン方式,SD-OCT)を用いた3DOCT-1000がトプコン社から発売され,深さ分解能は5μmとなり,そのスピードと画像の美しさに感動した.その後2007年にCarlZeissMeditec社から同方式のSD-OCT「CirrusHD-OCT」(図1)が発売された.現在当科では,OCT3000,3DOCT-1000,CirrusHD-OCTを用いて外来診療を行っている.以下,おもに用いているCirrusHD-OCTについて臨床使用経験を述べる.IICirrusHD-OCTの特徴①CirrusHD-OCTはスペクトラルドメイン方式を用いたOCTである.性能については別項の機種一覧にあるとおりで,波長840nmのSLD(スーパールミネッセンスダイオード)を用いており,深さ方向分解能は5μmである(表1).高速なscanで軽快な操作感である.(37)613ratanabeSiisi371-85113-39-15特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):613621,2008網膜・硝子体のOCT検査機器の使用経験(3)CirrusHD-OCTの使用経験TheClinicalEvaluationofCirrusHD-OCTforRetinaandChoroid渡辺五郎*岸章治*図1CirrusHD-OCTの外観本体は非常にコンパクトな筐体にまとまっている.表1CirrusHD-OCTとOCT3000の性能比較OCT3000CirrusHD-OCT解像度Z軸(縦方向)810μm56μmX-Y(横断面)1020μm10μmA-Scan本数(@B-Scan)128/256/512200/512/4,096スキャンパターン・Line・Circle・Radial・5LineRaster・MacularCube200×200/512×128・OpticDiscCube200×200スキャン時間400A-scans/sec25,00027,000A-scans/sec最小瞳孔径3.2mm3mm———————————————————————-Page2614あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(38)IIIScan方法と解析モニター画面左下のLSO画面上にあるscanline(CubeScanでは四角)を任意の場所に動かしてscan位置を決める.内部固視灯の位置も自由に移動できる.①5LineRaster:1ライン4,096A-scanの分解能で5本同時にscanする(図3).高速で計測できる最もスタンダードなscanである.標準では6mmのscan長で0.25mm間隔のscanであるが,バージョン3からはscan長が3mm,6mm,9mmから選択でき,各ラインの間隔も0から1.25mmまで変えられるようになった.またscan方向の角度を自由に変えられるようになったため,病変部とfoveaの陥凹とか視神経乳頭とfoveaの陥凹といったscanが可能となった.通常は,標準状態でscanすれば問題ないのだが,ライン間隔が0.25mmだとまれにfoveaをはずすことがあった.どうしてもfoveaの陥凹をscanしたい場合は,間隔を狭めてやるとよりfoveaのヒット率が高くなる.②MacularCubeScan200×200:6×6mmの四角形の中を水平方向200A-scanで垂直方向に200本計測する(図4,下から上へ).OCT3000が512A-scanであるので当然1枚ずつの分解能は低いが,高速に3D②LSO(livescanningophthalmoscope,いわゆるSLOのような画面)で眼底をリアルタイムに確認しながら断層像が得られるために眼底とのレジストレーションが容易であることがあげられる(図2).③筐体が非常にコンパクトであり,おそらく現存するOCTのなかでも最小である(図1).現在さまざまな検査機器が氾濫している外来において省スペースという大きな恩恵にあずかれるだろう.④Scan方法は,ソフトウェアバージョン2までは「5LineRaster(いわゆるlinescanを水平方向に5本同時に計測)」,「MacularCube200×200」,「MacularCube512×128」であったが,バージョン3からは,5LineRasterのscanのバリエーションが増えて,「OpticDiscCube200×200」が追加された.詳細は後述する.⑤最近の高分解能OCTはグレイスケール表示でより高精細さをだしているが,OCT2000から培ってきたZeiss社の疑似カラー表示は見慣れているせいか他のメーカーのものより美しく感じる.⑥顎台の工夫:従来からの眼科の検査機器は被検者との対面操作のものが多かったが,CirrusHD-OCTはHumphrey視野計と同様に横向き操作である.工夫された顎台により側方からの操作でも測定しやすくなっている(図2,後述).以上のような特徴がある.図2CirrusHD-OCTの顎台右眼を撮るときは顎を左側にのせる.左眼は右側にのせて計測する.PCのモニター上で上下左右と前後に動かすことができる.図35LineRasterの測定画面左上の前眼部モニターで瞳孔領の中心に合わせる.左下のLSO画面でリアルタイムに眼底像を確認しながら測定する.LSO画面上の5本線を動かすことにより任意の位置の断層像が得られる.右側は,そのとき撮っている5枚(1枚4,096A-scan)のOCT画像.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008615(39)する(下から上へ).解析は基本的には200×200と同様である.④OpticDiscCube200×200:バージョン3からの新機能.視神経乳頭を中心にCubeScanを行う.網膜神経線維層厚をNormativedataと比較できる.IVCirrusHD-OCTとOCT3000の比較図5は健常者のCirrusHD-OCTとOCT3000の画像である.図5a,bは上段がCirrusHD-OCT(scan長は6mm),下段はOCT3000(StratusOCT)である.Cir-rusHD-OCTは網膜の層構造がはっきりしていて,高精細化された画像である.OCT3000(scan長5mm)ではscan速度が遅いために固視微動や眼球運動の影響を受けやすく,図5aでは基線のブレが目立つ.図5cは図5aの中心窩陥凹付近を拡大したものである.このくらい拡大すると,違いはさらに明らかとなる.RPEレベルでは,OCT3000ではIS/OSライン(視細胞内節と外節の境界部)とその下のRPEだけであるのに対し,CirrusHD-OCTでは,その上の外境界膜が可視化されており,RPEも2本のラインとして描出されている.V顎台の工夫従来からの眼科の検査機器は被検者と対面して機器をscanが行えるメリットがある.バージョン3からは中央のCrossScanだけは1,024A-scanとなった.解析方法としてはMacularThicknessとAdvancedVisual-izationがある.MacularThicknessは文字どおり網膜厚計測とセグメンテーションからなる.メジャーを用いて任意の部位を計測できる.セグメンテーションは網膜の最表層を内境界膜(ILM)セグメントとし,網膜色素上皮(RPE)セグメントとの差分をILMRPEとして表示している.たとえば,糖尿病黄斑浮腫では通常RPEは滑らかな面であるがILMセグメントに隆起があり,その結果ILMRPEでは浮腫の位置がはっきりわかる.加齢黄斑変性のドルーゼンや網膜色素上皮剥離(PED),脈絡膜新生血管(CNV)などに関してはOCT3000に比べると精度は高いようだがまだ信頼性には問題があるのでマニュアル補正(バージョン3から可能)をしたほうがよいと思われる.AdvancedVisualizationは,scanした部分の任意の部位の垂直断・水平断・C-scanが表示される.バージョン3からはようやく3D表示ができるようになった.現状ではお世辞にもきれいとはいえない画像であるので,今後の改良に期待するしかない.③MacularCubeScan512×128:6×6mmの四角形の中を水平方向512A-scanで垂直方向に128本計測図4MacularCubeScanの測定画面左下のLSO画面の中のCubeを動かして測定する.右画面は,SLO画面の黄色の線(中央横),白い線(中央縦),ピンクの線(上横),青い線(下横)の順で表示されている.図5CirrusHD-OCTとOCT3000の画像の比較a:37歳,健常男性.上がCirrusHD-OCT,下がOCT3000.b:33歳,健常男性.上がCirrusHD-OCT,下がOCT3000.c:中心窩陥凹付近の拡大像.acb———————————————————————-Page4616あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(40)から剥がれているのがわかる.従来RPE層と考えられていた高反射ラインは3層に分離されており,一番上が視細胞内節と外節の境界部(IS/OSline),一番下がRPE,真ん中のラインはまだ解明されていないが,Verhoe膜とする説と視細胞外節外縁とする説などがある.SD-OCTは深部方向の分解能が高いために脈絡膜の血管構造が見えている.ジョイスティックで操作するものが多かった.CirrusHD-OCTはHumphrey視野計と同様に側方からの操作であるが,顎台が非常によくできていて側方からの操作がしやすくなっている(図2).顎台の操作はすべてモニター上で行われる(図3,4).具体的にはまず,画面左上の前眼部観察用モニターをクリックすることで上下左右に顎台が動く.その後モニター横にある「Chinrest」ボタンで前後方向の調整をする.それだけで良好なLSO画像と断層像が得られ,ほとんどの被検者に対応できる.被検者は顎と額をくっつけていれば自動的に顎台のほうが動くために,高齢者でも簡便によい画像が計測できる.今までの機器では通常被検者に対して検者が機器を操作して合わせていたのに対し,少し高圧的な感じもするがCirrusHD-OCTでは被検者の顔を動かして測定する.これが逆に効を奏したようである.VI症例1.健常者37歳,男性,右眼.図6の上は疑似カラー表示.網膜神経線維層をはじめ網膜の層構造がはっきりわかる(図6).グレイスケール表示にすると層構造はよりはっきりする(下図).この症例では後部硝子体膜がfovea図637歳,健常男性のCirrusHD-OCT画像上は疑似カラー表示,下図はグレイスケール表示.疑似カラー表示グレイスケール表示網膜神経線維層RPE脈絡膜血管後部硝子体膜RPECirrusHD-OCTRPEラインの乱れ網膜の層構造が明瞭???Bruch膜?図8症例1のOCT上図はOCT3000.色素上皮のラインの上に中高反射の脈絡膜新生血管がある.下図はCirrusHD-OCT.新生血管の下のBruch膜が見えている.図7症例1:加齢黄斑変性カラー:中心窩下に灰白色病巣と網膜下出血.FA:クラシック脈絡膜新生血管(CNV)を示している.IA:CNVからの蛍光漏出がある.abc———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008617(41)ドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)でも脈絡膜新生血管(CNV)と思われる蛍光漏出がある(図7b,c).この症例をOCTできってみると,図8のようになる.上2.加齢黄斑変性(AMD)〔症例1〕51歳,男性,右眼,視力0.7.中心窩に灰白色病巣と網膜下出血がある(図7a).フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)で境界明瞭な蛍光漏出があり,イン図11糖尿病黄斑浮腫のセグメンテーション(1)右側下からRPEセグメント,ILMセグメント,ILMRPEセグメントが表示される.図9症例2:加齢黄斑変性カラー:中心窩下に灰白色病巣.FA:小さなクラシック新生血管.IA:FAで見られたのとほぼ同じ大きさの蛍光漏出.abc外境界膜RPEtype2CNVOCT3000CNVとフィブリンが一塊CNV周囲のフィブリン図10症例2のOCTOCT3000では新生血管を思わせる中高反射帯が一塊となって見える.CirrusHD-OCTでは図9の蛍光漏出点と同じ大きさのタイプ2新生血管とフィブリンなどの滲出物が分離して見える.ab———————————————————————-Page6618あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(42)図はOCT3000,下図はCirrusHD-OCTである.OCT3000でもRPEのラインの上のCNVがわかるが,Cir-rusHD-OCTのほうがよりはっきりしている.CirrusHD-OCTでは,CNVと正常網膜の境界がよくわかる.またfovea耳側のCNVの下に細い高反射ラインがあり,おそらくBruch膜と思われる.〔症例2〕70歳,女性,右眼,視力0.2.眼底で中心窩に灰白色病巣がある(図9a).FA早期では,カラー写真よりも小さな範囲で蛍光漏出がある(図9b).IAではFAとほぼ同じ大きさでCNVからの蛍光漏出が認められる(図9c).この症例をOCT3000で見ると,RPEのラインの上に大きな高反射塊があり,Gassのいうタイプ2CNVであることがわかる(図10a).しかし,これは眼底で見た灰白色病巣に一致しているがFAやIAの蛍光漏出部位とは一致しない.そこでCirrusHD-OCTで見てみると,RPEラインの上に高反射塊があるのでタイプ2で間違いはないようだが,OCT3000でみえた高反射塊はすべてがCNVではなく2層に分かれて見えている(図10b).おそらく高反射塊の中心の図12糖尿病黄斑浮腫のセグメンテーション(2)a:カラー.黄斑部に毛細血管瘤や硬性白斑が散在している.b:FA.胞様黄斑浮腫とやや上方に多く浮腫からの蛍光漏出がある.c:RPEセグメント.ほぼスムーズなRPE.d:ILMRPE.中心窩の上方に強く浮腫があるのがわかる.abcd図13ポリープ状脈絡膜血管症のOCT(1)中心窩を含みRPEの不規則な隆起と漿液性網膜剥離がある.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008619小さい範囲のものがCNVでその周囲にある高反射塊はフィブリンなどの析出物であろうと思われる.そう考えると蛍光造影の読影と一致する.実際FAの後期には眼底での灰白色病巣に一致して過蛍光が拡大していたのでこの解釈で間違いないだろう.3.セグメンテーションを用いた解析a.糖尿病黄斑浮腫FAで黄斑上方を中心に黄斑浮腫がある(図12a,b).MacularCube200×200で測定して,セグメンテーションを行った(図11,12c,d).RPEセグメントはほぼフラット,ILMRPEセグメント(ILMセグメントからRPEセグメントを差し引いたもの,つまり神経網膜の厚み)では,FAと一致した部位の浮腫が高反射ゾーンとして描写されている.b.ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)黄斑部に漿液性網膜剥離と凸凹した扁平なRPEの隆(43)図14ポリープ状脈絡膜血管症のOCT(2)RPEセグメント(下図)はおそらく異常血管網からの滲出による凸凹なRPEを表している.図15黄斑円孔の3D表示(1)AdvancedVisualizationで解析すると,左上図のように3D表示ができるようになった.———————————————————————-Page8620あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008からRNFL(網膜神経線維層)厚を求める(図17).詳しくは緑内障の項を参照されたいが,正常データとの比較や経時変化を追ってみていくことができる(図18).起がある(図13).B-scan上はdoublelayersign2)がはっきりわかる.セグメンテーションではILMセグメントは病巣部の隆起のみであるが,RPEセグメントは凸凹とRPEが隆起しているのがよくわかる(図14).4.ソフトウェアバージョン3からの新機能a.3D構築(3Dvolumerendering)MacularCubeで測定して解析をAdvancedVisual-izationにすると,3D構築した画像が表示できる(図15).眼底のプロジェクション画像を3D画像の底面に配置してみるとオリエンテーションがつきやすい(図16).残念なことに現時点のバージョンでは3D表示ができるというだけで,美しい画像ではなく,臨床的にあまり有用とはいえない.今後の改良に期待するしかない.b.OpticDiscCube200×200視神経乳頭を中心にCubeScanを行い,そのデータ(44)図16黄斑円孔の3D表示(2)3D表示の拡大画面.立方体の底にLSO画面を表示してある.図17OpticDiscCubeMacularCubeと同様に200Aline×200本のCubeを測定する.———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008621診療報酬の改正によって眼底三次元解析が算定できるようになった今,OCTは大学病院などの研究機関だけにとどまらず,一般の開業医の間にも急速に広まっていくはずである.文献1)松本英孝:光干渉断層計(OCT).眼科49:1405-1417,20072)SatoT,KishiS,WatanabeGetal:Tomographicfeaturesofbranchingvascularnetworksinpolypoidalchoroidalvasculopathy.Retina27:589-594,20073)板谷正紀:光干渉断層計の進化がもたらす最近の眼底画像解析の進歩.臨眼61:1789-1798,2007まとめ以上CirrusHD-OCTの特徴を述べてきたが,今まで使用してきたOCTのなかでは最も使いやすい.SD-OCTになり測定時間が速く,分解能があがった.得られた美しい画像と解析方法の多様化は眼底疾患の理解を深め,患者への説明に有用であり,今後の診療において強力な武器となることは間違いない.SD-OCTはまだ発展途上で今後もソフトウェアのバージョンアップをはじめさまざまな改良がなされていくであろう.しかし,高分解能の見返りとしてデータの大容量化が起こっており,データの保存方法は深刻な問題である.肥大化したデータは光磁気ディスクへのバックアップが現実的にむずかしいために今後の検討課題となる.(45)図18緑内障解析画面左右眼の解析結果を同時に表示できる.

網膜・硝子体のOCT検査機器の使用経験(2)

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLS機種においても約5μmであり,従来のOCT3000に比べ2倍以上深さ分解能が向上している(高分解能化).さらにフーリエ演算により信号対雑音比が改善した(高感度化).また従来のOCTに比べ50倍以上高速に撮影できることから,固視微動に伴うアーチファクトが低減した.これらの結果,高画質な画像が得られ病変の詳細が同定可能である.撮影の高速化により短時間で3D画像も構築できる.2.3D画像の観察と解析各社のSD-OCTでは3D画像を立体的に観察したり,一定間隔の連続2次元断層像を順次に観察することで微細な病変を見落とさずに検出することができる.さらにOCTの3D画像から作成した眼底写真と他の検査データ(眼底写真,蛍光眼底造影,自発蛍光画像など)とを重ね合わせることによりOCTにおける局所の形態異常と他の検査で示された異常部位とを照合したり(レジストレーション),網膜色素上皮(RPE)や内境界膜レベルで注目したい層の境界線を抽出することもできる(自動セグメンテーション).このように,得られた画像を有用な診断情報として活用するため,各社のSD-OCTではそれぞれ特徴ある画像解析ソフトウェアを装備している.はじめに従来のタイムドメイン光干渉断層計(OCT)(OCT3000など)に加えて新しいスペクトラルドメイン(フーリエドメイン)OCT(SD-OCT)が実用化され,微細な網膜病変の描出力が向上し,短時間で3次元データの取得も可能となった.SD-OCTにより眼底疾患の診断や治療評価の精度が飛躍的に向上する可能性があり今後の普及が期待されている.現在,世界では少なくとも7社からSD-OCTの商用機が製品化されているが,わが国ではそのなかでもOptovue社のRTVue-100,CarlZeissMeditec社のCirrusHD-OCTならびにTOPCON社の3DOCT-1000がすでに複数の施設で導入されている.いずれの機種でも低侵襲に精度の高い断層画像を短時間で撮影できるが,測定方法や画像解析プログラムにはそれぞれにいくつかの特徴がある.本稿では,新しいSD-OCTの概要を実際の使用経験を踏まえて紹介する.ISDOCT共通の特徴1.病変描出力の向上,撮影の高速化各社の新しいSD-OCTの比較表を表1に示した.SD-OCTの原理の詳細は割愛するが,SD-OCTでは広帯域の光源を使用するため分解能が向上し,スキャン速度が格段に速くなったため高速撮影ができるようになった.これらのハードウェア面に関しては各社の機種間にほとんど差はない.実際,深さ方向の分解能はいずれの(27)603TakuakabayashiFuiGoi器565087122R.E7器特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):603612,2008網膜硝子体のOCT検査機器の使用経験(2)ComparisonofCommercializedApparatusesofSpectral-DomainOpticalCoherenceTomographyforRetinalImaging若林卓*五味文*———————————————————————-Page2604あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(28)ように誘導する.被検者からは固視灯が見えるため,それを固視し続けるように説明する.黄斑部以外の位置を撮影する場合は,固視灯を移動させるか,OCTの走査線を手動で移動させるとよい.マウスを用いてモニターII各種装置の特徴A.RTVue1001.RTVue100の仕様RTVue-100は最も早く米国食品医薬品局(FDA)の認可を取得したOptovue社製のSD-OCTである.測定器本体,コンピュータならびにコンピュータモニターから構成される(図1).加算平均化処理により,きわめて高画質な2次元断層像が得られるのが当機種の長所である.本装置の特徴については,<眼科手術>Vol.21,No.2,p207212も参照していただきたい.2.検査方法まず患者氏名や疾患などのデータを入力し,撮影モードを選択する.被検者の顔の高さに撮影台の高さを合わせる.モニターで撮影眼の瞳孔中心が光軸にくるようにジョイスティックを上下および前後方向に手動で動かして位置を調節し,モニター上に赤外眼底像が表示される図1RTVue100の外観表1従来のタイムドメインOCTと各社のスペクトラルドメインOCTの比較タイムドメインOCTスペクトラルドメインOCT機種名StratusOCT(OCT-3000TM)RTVue-100TMCirrusTMHD-OCT3DOCT-1000TM会社名CarlZeissMeditecOptovueCarlZeissMeditecTopcon光源SLDSLDSLDSLD波長(l),波長帯域(Δl)l=820nm,Δl=20nml=840nm,Δl=45nml=840nm,Δl=50nml=840nm,Δl=50nm深さ(軸方向)分解能10μm5μm5μm5μm横断面分解能20μm1020μm10-20μm<20μm2次元断層画像1つ当たりの最大Aスキャン数5124,0964,0964,0962次元断層像1つに要する撮影時間1.28秒0.039秒─0.040.05秒3D画像1つに要する撮影時間─2秒─*3.5(2.5)秒測定深度2mm22.3mm2mm*1.7(2.3)mmAスキャン速度400Aスキャン/秒26,000Aスキャン/秒27,000Aスキャン/秒*18,000(27,000)Aスキャン/秒重量(本体)──37.6kg26kg本体サイズW(幅)×D(奥行き)×H(高さ)cmW122×D86(設置面積)W101×D52(設置面積)W44×D65×H53W27×D51×H57SLD:スーパールミネセントダイオード.スペクトラルドメインOCTでは光源の広帯域化により高分解能な画像が得られ,Aスキャン速度の高速化により撮影時間が格段に短くなった.スペクトラルドメインOCTには,他にもSpectralis(Heidelberg社),SpectralOCT/SLO(OTI社),Copernicus(Optopol社),3DSD-OCT(Bioptigen社)などの商用機がある.*(カッコ内)は3DOCT-1000MarkIIのデータ.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008605(29)撮影モードにはいくつかのタイプがあり用途に応じて選択できる(表2).CrossモードではAスキャン1,024本からなる2つの2次元断層像(Bスキャン)が得られる(図2).走査幅は212mmまでの範囲で任意に設定できる.RTVue-100は約26,000Aスキャン/秒のスキャンレートであるため,2次元断層像1つ当たりの撮影時間はわずか0.039秒(=1,024/26,000)である.なお,RTVue-100では複数のBスキャン画像の加算平均処理を行うことにより(multiplescanaveraging法),上で適切な屈折値などを設定して撮影する.最新版では撮影を始めるとモニター上に網膜断層像が描出されるが,描出された画像をさらに鮮明にするためには屈折値を適切に調整し,さらにジョイスティックをやや引き気味にするとよい.最新版では,自動で断層像取得のための位置決めを行うボタンがついている.ジョイスティックの上部のスイッチを押すと撮影が完了する.慣れるとジョイスティックを左手に,マウスを右手に持って以上の操作を迅速に行えるようになる.図2RTVue100(Crossモード)の測定画面①モニター上に眼底像が表示されるように誘導し,②屈折値,走査幅,Pmotor(Polari-zationadjustment)およびZmotor(Z-posi-tionadjustment)などをマウスを用いて設定する.ジョイスティック上部の撮影ボタンを押すと③水平断層像および④垂直断層像が表示される.得られた画像の加算平均処理を行うと画質がさらに向上する.最後に⑤保存をクリックする.表2RTVue100の撮影モード撮影モード目的Aスキャン数Bスキャン数撮影時間(秒)網膜疾患Line単一のBスキャン(2次元断層像)1×1,02410.039Cross2つのBスキャン2×1,02420.078HDLine単一のBスキャン1×4,09610.156HDCross2つのBスキャン2×4,09620.3123DMacula黄斑部の3次元断層像101×5121012MM5黄斑部網膜厚測定(網膜全層,内層)22×668+12×400─0.78緑内障3DDisc視神経乳頭の3次元断層像101×5121012NHM4視神経乳頭形状解析,網膜神経線維層測定12×452,3×587,3×775─0.39MM7網膜厚測定(網膜全層,内層)1×467,15×400─0.58RNFL網膜神経線維層測定4×1,024─0.15———————————————————————-Page4606あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(30)単独のFD-OCT画像に比べノイズを低減し画質をさらに向上させることができるのが特徴である.3DMacula(rasterscan)モードでは,撮影範囲を決めて3D画像を取得できる.通常は中心窩を含む4mm平方の領域に水平Aスキャン512本からなる101枚のBスキャンを一定間隔(40μmごと)に2秒間で連続撮影できる.その結果,101枚のBスキャンから構築される3D画像が得られる(図3).また,RTVue-100ではさまざまな定量が可能である.たとえば,MM5モードでは網膜厚(硝子体網膜境界視細胞内節外節境界部)および網膜内層厚(硝子体網膜境界内網状層)の計測が可能であり,NHM4では視神経乳頭陥凹(Cup)面積や乳頭辺縁部(Rim)面積などが自動解析できる.3.実際の使用経験a.2次元断層像RTVue-100のLineモードで撮影した健常眼および各網膜疾患における黄斑部の2次元断層像では網膜内のすべての層構造が明瞭に描出された(図4,5).加算平均処理を行うことできわめて高画質な2次元断層像が得図3RTVue100による健常眼の3次元網膜断層像3DMaculaモードを用いて,中心4×4mmの範囲で101枚のBスキャンから3D画像を構築した.OCTによる眼底写真(A,D,G)に対応した水平断層像を連続的に観察したり(B,E,H),3D画像の切断面を描出(C,F,I)することができる.ABCDEFGHI図4RTVue100による健常眼の2次元網膜断層像A:StratusOCT(OCT3000)による水平断層像.深さ分解能約10μm,撮影時間1.28秒.B:RTVue-100による水平断層像.深さ分解能約5μm,撮影時間0.039秒.網膜内の層構造が明瞭であり,特に外境界膜(ELM),視細胞内節外節境界部(IS/OS),網膜色素上皮(RPE)の高反射ラインが明確に区別できる.C:Bの拡大像.ABC———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008607(31)ミネッセンスダイオード)を用いて撮影する眼底画像上に結果を重ねられるのが本装置の特徴であり,病変のレジストレーションが容易である.られ,特に網膜外層の外境界膜(ELM),視細胞内節外節境界部(IS/OS),RPEなどの高反射ラインの分離が容易に行えた.また本装置では最長12mmまでの2次元断層像を取得することができ,広い病変を一度にスキャンしながら解像度の高い画像を得ることができる(図6).b.3D画像3DMaculaモードで撮影した3D画像では連続した2次元断層像を水平方向,垂直方向,鉛直方向(Cスキャンもしくはenface像)に観察したり,立体画像の切断面を描出することができた(図3).中心性漿液性脈絡網膜症の症例では,蛍光眼底造影検査での蛍光漏出部と3DOCT画像所見とを照合することができた(レジストレーション)(図7).B.CirrusHDOCT1.CirrusHDOCTの仕様CirrusHD-OCTはCarlZeissMeditec社製のSD-OCTである.測定器本体とコンピュータの操作画面が一体化し,コンパクトな仕様となっている(図8).被検者と検者の位置関係が90°となるため,検者は被検者を常に確認しながら測定操作が行える.SLD(スーパール図5RTVue100で撮影した代表的な網膜疾患の2次元網膜断層像A:黄斑上膜(硝子体黄斑牽引症候群),B:先天網膜分離症(X染色体性若年網膜分離症),C:特発性脈絡膜新生血管,D:ポリープ状脈絡膜血管症(色素上皮離を伴う).ABCD図6網膜色素変性例での2次元断層像8mm長でのスキャンを行うことで,変性部と健常な黄斑部の断層像を同時に描出できる.AB図7RTVue100で撮影した中心性漿液性脈絡網膜症の3D画像(レジストレーション)蛍光眼底造影検査での蛍光漏出部(A)と3D画面での赤外眼底画像所見(B)とを照合.B図の上下の緑線に一致した部位の断層像(C,D)で,中心窩の下液はより下方の漏出点周囲の網膜下液と連続しており,漏出点では色素上皮離(矢頭)が観察される.ABCD———————————————————————-Page6608あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(32)6mm平方の領域に,水平Aスキャン512本からなる128枚のBスキャン(もしくは水平Aスキャン200本からなる200枚のBスキャン)を一定間隔に撮影できる.CirrusHD-OCTは充実した3次元解析ソフトウェアを有しており,得られた3D画像からカラー網膜厚マップやカラーセグメンテーションマップ(内境界膜と網膜色素上皮を分離して3D表示)を作成したり,カラー網膜厚マップを眼底像へオーバーレイ(重ね合わせ表示)することができる.また,キャリパー機能で任意の部位を計測することもできる.最近になり,新しく緑内障解析ソフト(視神経線維層の測定および正常眼データベース)が導入された.また,OCT3000からデータベース(患者情報)のインポートも可能となった.疑似カラー表示された画像は,OCT3000の疑似カラーデータを見慣れた者にとって,最も違和感が少ないイメージとなっている.2.検査方法まず患者氏名やIDなどのデータを入力し,撮影モードを選択する.被検者の顔の高さに撮影台の高さを合わせる.つぎにマウスを用いてモニター上の‘Chinrest’をクリックすると,撮影眼の瞳孔中心が光軸にくるように自動調節される(電動チンレストアライメント機能)(図9).被検者からは固視灯が見えるため,それを固視し続けるように説明する.モニター上で適切な屈折値を設定し‘Optimize’をクリックする.モニター上に鮮明な網膜断層像が描出されたのを確認して‘Capture’をクリックすると撮影が完了する.これらの操作はほとんどマウスのみで行え,習熟が比較的容易であることが長所である.CirrusHD-OCTの撮影モードを表3に示した.5Linerasterモードでは共焦点眼底画像で測定部位をリアルタイムに観察しながら,2秒以内でAスキャン4,096本からなる高解像度Bスキャンが5つ得られる.3D画像を構築するコンボスキャンでは中心窩を含む図8CirrusHDOCTの外観図9CirrusHDOCTの測定画面①撮影モードを確認,②Chinrest,③屈折値の設定,④Optimize,⑤Captureの順序で撮影を行う.表3CirrusHDOCTの撮影モード撮影モード目的Aスキャン数Bスキャン数網膜疾患5Lineraster5つのBスキャン(2次元断層像)5×4,0965MacularCube512×128Combo黄斑部(6×6mm)の3次元断層像512×128128MacularCube200×200Combo黄斑部(6×6mm)の3次元断層像200×200200———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,20086093.実際の使用経験a.2次元断層像5Linerasterモードで撮影した健常眼における黄斑部の2次元断層像では網膜内のすべての層構造が明瞭に描出された(図10).また各網膜疾患でも病変が鮮明に描出できた(図11).b.3D画像コンボスキャンで撮影した3D画像では連続した2次元断層像を水平方向,垂直方向,鉛直方向(Cスキャンもしくはenface像)に観察できた(図12).また,得られた3D画像からカラー網膜厚マップを作成し疑似カラー画像で表現できた.この結果は眼底像にさらにカラ(33)図10CirrusHDOCT(5Linerasterモード)で撮影した高解像度2次元断層像図11CirrusHDOCTで撮影した代表的な網膜疾患の2次元網膜断層像A:黄斑円孔,B:黄斑上膜,C:中心性漿液性脈絡網膜症,D:糖尿病黄斑浮腫.ABCD図12CirrusHDOCT(コンボスキャンモード)の解析プログラム(Advancedvisualization)OCTで撮影した共焦点眼底画像(①)で病変を確認しながら,撮影した連続2次元断層像を水平方向(②),垂直方向(③),鉛直方向(Cスキャンもしくはenface像)(④)に順次観察できる.図13CirrusHDOCT(コンボスキャンモード)の解析プログラム(Macularthicknessanalysis)ドルーゼンを認めた症例.①共焦点眼底画像と網膜厚マップの重ね合わせ画像,②網膜厚,③3D網膜厚マップ,④内境界膜レベルのセグメンテーションマップ,⑤網膜色素上皮レベルの3Dセグメンテーションマップ.———————————————————————-Page8610あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008断層像とカラー眼底を同時撮影できる[OCT+fundus]を選択し,さらにスキャンモード(表4)や走査幅を設定する.同時に,被検者の顔の高さに撮影台の高さを合わせる.モニターで撮影眼の瞳孔中心が光軸にくるようーセグメンテーションマップを作成し病変を3次元的に描出できた(図13).また,CirrusHD-OCTではすでに撮影既往のある被検者に関しては,自動的に前回測定位置をスキャンできるRepeatScanとよばれる機能を有しているため,2回目以降のスキャンを簡便化しフォローアップを容易に行うことができた(図14).C.3DOCT10001.3DOCT1000の仕様3DOCT-1000はTOPCON社のSD-OCTであり,SD-OCTと無散瞳眼底カメラが一体化し無散瞳撮影が可能である(図15).最近,3DOCT-1000よりさらに高分解能で高速撮影が可能な3DOCT-1000MarkIIが発売された.2.検査方法まずモニター上で患者氏名やIDなどのデータを入力し,‘スキャン開始’をクリックする.マウスを用いてモニター上で撮影条件を設定する.撮影の際は基本的に(34)図153DOCT1000の外観図14近視性脈絡膜新生血管のCirrusHDOCT画像A:治療前.2次元断層像ではやや低輝度の新生血管と網膜下液を認め,疑似カラーで表示した3D網膜厚マップでは新生血管に一致した網膜肥厚を認める.B:ベバシズマブ硝子体内投与後1週間.C:ベバシズマブ硝子体内投与後2カ月.新生血管は縮小し,網膜下液が消失した.3D網膜厚マップでも治療効果が一目瞭然である.ABC表43DOCT1000の撮影モード撮影モード目的Aスキャン数Bスキャン数網膜疾患Linescan単一のBスキャン(2次元断層像)1×1,024,1×2,048,1×4,0961Crossscan2つのBスキャン2×1,024,2×2,04823Dscan黄斑部の3次元断層像512×128,256×256,512×64,512×32128,256,64,32Radialscan黄斑部の同心円測定6×1,024,6×2,0486———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008611けるように説明する.なお,屈折値はカメラに設置された調節ダイアルを手動で調整する.モニター上の網膜断層像と眼底画像が鮮明に描出されたのを確認し,ジョイスティック上部の撮影スイッチを押すと撮影が完了する.CrossscanモードではAスキャン1,024本もしくは2,048本からなる2つの2次元断層像が得られる(図にジョイスティックを手動で動かして位置を調節してモニター上に眼底像が表示されるように誘導し,被検者の眼底のアライメントと奥行きを調整する.被検者からは固視灯(大小を調節可能)が見えるためそれを固視し続(35)図18ポリープ状脈絡膜血管症の3DOCT1000画像上段:治療前.眼底写真ではポリープ状病巣に一致した赤橙色隆起性病変を認め,2次元断層像(垂直方向)および3Dマップではポリープ状病巣とそれに伴う網膜色素上皮離を認める.下段:PDT(光線力学的療法)後1カ月.ポリープ状病巣とそれに伴う網膜色素上皮離が軽減している.aabcabcbcdef図163DOCT1000(Crossscanモード)による2次元網膜断層像中心性漿液性脈絡網膜症の症例.①カラー眼底写真,②2次元網膜断層像,③患者およびスキャン情報,④網膜厚が表示される.図17黄斑円孔の3DOCT1000画像A:眼底写真,B:2次元網膜断層像,C:3Dマップ.OCTの断層画像が無散瞳カラー眼底画像のどの部位に相当する所見かを正確に把握することができる.ABC———————————————————————-Page10612あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008ることができるのが当機種の最大の長所である.b.3D画像3Dscanモードで得られた3D画像から,疑似カラーで表示した3D網膜厚マップを作成できた(図17C).また,治療前後の経過を2次元断層像および3D網膜厚マップで評価することができた(図18).なお,当機種では網膜色素上皮や内境界膜レベルだけでなく,視細胞内節外節境界部レベルでもセグメンテーションを行うことができる.III問題点と今後の展望今回紹介した各社のSD-OCTは同等に高い性能を有している.このため画像データとしては非常に有用であるが,一方でSD-OCTでは病変描出力が向上し緻密な3次元測定が可能となった分,データ量が複雑で膨大となることが問題点としてあげられる.撮影自体は速くても3D画像の構築や解析にはいくぶん時間がかかり,外来の診察中に有用な情報のみを短時間で見ることは現時点では容易ではない.膨大なデータのなかからいかに効率よく有用な情報を抽出し表示するかは今後の課題である.また画像解析ソフトウェアの開発も発展途上であり,今後はSD-OCTの性能を最大限に活用し臨床に生かせる経過観察用プログラムなどの開発も進めば,真に有用な臨床診断装置として進化していくものと考えられる.16).2次元断層像1つ当たりの撮影時間は約0.040.05秒である.なお,当機種でも複数(4枚もしくは8枚)のBスキャン画像の加算平均処理を行うことにより画質がさらに向上する.加算平均処理は撮影終了直後に速やかに行うことができる.3Dscanモードでは,撮影範囲を決めて3D画像を取得できる.具体的には中心窩を含む3mm,4.5mmもしくは6mm平方の領域に512×128,256×256,512×64または512×32(水平×垂直)の格子状Aスキャンを行って3D画像を得る(図17).3DOCT-1000も充実した3次元解析ソフトが開発されてきており,得られた3D画像からカラー網膜厚マップやカラーセグメンテーションマップを作成できる.また,同一患者の左右眼を比較したり,同一眼の経時的変化を表示できるため,治療経過を容易に把握することができる.TOPCON社の画像ファイリングシステム(IMAGEnet)と専用ソフトウェアを使用すれば結果を診察室で閲覧,解析することができ他の検査結果とともに一元管理ができる利点もある.3.実際の使用経験a.2次元断層像Crossscanモードで撮影した黄斑部の2次元断層像では他機種と同等に網膜内のすべての層構造が明瞭に描出された(図16,17B).OCTの断層画像が無散瞳カラー眼底画像のどの部位に相当する所見かを正確に把握す(36)

網膜・硝子体のOCT検査機器の使用経験(1)

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSradialscan(128A-scan/line)で約2秒と高速化した.またその疑似カラー表示は現在でもOCTのスタンダードとなっている.世界で最も普及したOCTであり,現在でも臨床の現場において第一線で活躍している.2.OCTOphthalmoscope,OCTC7(NIDEK社)OCT3000は汎用性が高く,使いやすいが,眼底モニター用の画面は写りが悪く,眼底の異常部位を観察しながらのOCT撮影には不向きであった.OCT-Ophthal-moscopeは光源波長820nmのスーパールミネッセンスダイオード(SLD)を用い,同一光源でOCT画像と走はじめに1997年光干渉断層計(OCT)の登場は眼科医に対し大きなインパクトを与えた.これまで解剖学的に証明され,検眼鏡的に所見として認識されていたことが非侵襲的・他覚的に画像として観察できるようになり,現在では治療のみならず,患者への説明,さらには学会などでの発表の際にも大活躍している.最近ではさらに高速化・高解像度化が進み,生体顕微鏡の様相を呈し,網膜硝子体専門医にとって,ますます黄斑部疾患の理解への武器となってきている.登場以来10年が経ち,黄斑部疾患を専門としない眼科医にもその存在は十分認識され,今後臨床におけるさまざまな場面で必要になってくることは疑いない.当科では外来で各種OCTを使用しており(図1),本稿では新旧各種のOCTの使用経験から,それぞれの機種の特徴などについて解説する.IタイムドメインOCT1.OCT3000,StratusOCT(Zeiss社)OCT2000が登場し,これまで見ることのできなかった生体での網膜断層像の観察が可能となった.さまざまな黄斑部疾患での理解が深まったが画質,操作性の面から診療時の補助的な役割をもつにすぎなかった.OCT2000は深さ分解能が約20μmであるのに対し,OCT3000は約10μm以下と,ほぼ倍になり網膜の層構造がより明瞭に観察されるようになった(図2a).撮影時間も高解像度のlinescan(512A-scan)で約1秒,6本の(21)597Ichiroaruo子601251特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):597602,2008網膜・硝子体のOCT検査機器の使用経験(1)ImpressionofOpticalCoherenceTomographyDevicesforRetina-VitreousDisorder丸子一朗*図1外来風景左下に3D-OCT,右横にOCT3000,中央奥にCirrusOCTおよび陰になっているがOCT-Ophthalmoscopeが見える.その他トプコン眼底カメラやハイデルベルグ社HRA2も見える.———————————————————————-Page2598あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(22)リットである.深さ分解能は約9μmでほぼOCT3000と同等かそれ以上である(図3).OCT-Ophthalmo-scopeのもう一つの特徴は,網膜の断層像(B-scan)ではなく,前額断(C-scan)として観察できることで,これにより病変の広がりを3次元的に捉えることが可能となった.ただし,実際には病変のさまざまな部位の画像を取得するには検者の技術を要する.OCT-Ophthalmo-scopeでは疑似カラーではなくグレースケール表示のほうが,詳細な観察が可能である.IIフーリエドメインOCT,スペクトラルドメインOCTタイムドメインOCTは光干渉を時間領域で行うのに対して,フーリエドメインOCTはフーリエ空間で行うことで高速化・高解像度化を実現した.単純にいうと1回の計測で網膜の一点の情報を得るタイムドメインに対し,1回の計測で深さ方向(いわゆるA-scan1本分)すべての情報を取得できる.フーリエ解析を行って算出するすべてのOCTをフーリエドメインOCTとよぶため,現行のOCT(3D-OCT,CirrusOCTなど)は,その一つにすぎないことから最近ではスペクトラルドメインOCTの呼称が使われるようになった.スペクトラルドメインOCTは一定の波長光源からの光が網膜に照射され生じた干渉波を分光器でスペクトル分けし,フーリエ解析する方式である.現在市販されていて,当科で高頻度に使用している3D-OCTとCirrusOCTについて特査型レーザー検眼鏡(SLO)画像を取得することが可能である.OCT画像とSLO画像がpixeltopixel(1対1)で対応していて,SLO画像上の実際の眼底における部位の網膜断層像を観察できることがこの装置の最大のメ表13DOCTvsCirrusOCTDevice3D-OCTCirrusOCT撮影スピード約27,000A-scan/秒例)3Dscan(256×256)3.5秒27,000A-scan/秒例)Cubescan(256×200)2秒解像度5μm5μmモード3DscanCrossscanCubescan5linerasterscan画像解析時間がかかる外部ソフトで詳細に観察可早いPeelingモードあり眼底カメラ無散瞳カメラ内蔵なし眼底モニター撮影時には眼底確認は困難共焦点画像で眼底確認良好中間透光体影響は最小限影響大その他ジョイスティック採用で操作性は良好顎台を動かすので調整困難例あり図2正常眼の各OCT像a:OCT3000,b:OCT-C7(OCT-Ophthalmoscope),c:3D-OCT,d:CirrusOCT.abcd———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008599(23)合は問題ないが,radialscanやcrossscanでは,撮りたい部位と外れてしまうことも少なくないので,この点については改善が望まれる.つぎに典型的な症例を提示しながら,3D-OCTの特徴を解説する.a.中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)CSCは網膜最外層である網膜色素上皮(RPE)の脆弱部位から網膜下に浸出液が漏出して漿液性網膜離(SRD)が生じる疾患である(図3).この疾患を上述したIS/OSlineとELMに注目してみてみると,SRDのない部分ではRPEの内側に(眼球内側)IS/OSline・ELMがともに明瞭に観察される.SRDのある部位では,ELMは観察されることが多いが,IS/OSlineは多くの場合不明瞭になる.OCTは機械の仕様上物質の成分の境界面を強く描出するため,境界面が傾いている場合や境界面自体の反射が減退すると画像が粗くなることがある.そのためSRDのある部位では,IS/OSlineが不鮮明になると考えられる.しかし,その場合にも実際に視細胞の内節・外節が消失しているわけではないので,ELMは変わらず観察される.もちろんSRDが遷延し実際に内節・外節や視細胞そのものが障害された場合,SRDが消失してもOCT上のIS/OSlineやELMが消失したままになることもある.この場合の視力予後は不良である.このようにELMとIS/OSlineの明瞭な描出が可能かどうかは,視力予後の判定に有用とされている.b.白内障手術後の?胞様黄斑浮腫(CME)現在では,プロスタグランジンなどの術後炎症の関与が知られているが,なかには物理的要因の関与もあるとに解説する.両者の違いについて表1にもまとめた.1.3DOCT(TOPCON社)2006年夏に発売されたスペクトラルドメインOCTの商業ベースで世界初の製品である.B-scan測定時間は0.05秒とタイムドメインと比較して大幅に短縮された.A-scanレートは1秒当たり18,700本(現在は27,000本)である.同時に高解像度化も実現され,深さ分解能は5μm程度とされている.通常のB-scanモード(linescan)では1,024または2,048A-scanの高解像度で撮影できる.Radialscanモードでは6方向のB-scanを瞬時に撮影できる.また後から追加されたcrossscanモードでは,同じ部位を瞬時に任意の枚数だけ撮影し,それを加算することでさらにコントラストを上げ詳細な断層像を得ることが可能となった.正常眼における3D-OCTcrossscan像(図2c)では,網膜層構造が詳細に観察可能であり,最近注目されている視細胞の内節・外節境界(IS/OSline)および外境界膜(ELM)がOCT3000やOCT-Ophthalmo-scopeよりもはっきりと描出されている.3Dscanモードでは6mm四方の部位に対して256A-scanを256本連続撮影することができる(その他512×128,1,024×64も選択可).測定時間は約3.5秒である.測定データをパソコンで処理すれば簡単に3D画像として眼底を観察できる.また無散瞳眼底カメラが一体化されており,撮影部位の正確な特定が可能で,眼底撮影後には任意の病変部位の断層像を簡単に観察できる.付属のソフトではないが,市販の3D解析ソフトAmira4(MercuryComputerSystems)を使えば3D画像を任意の部位でスライスし断面像として観察可能で,それを動画ファイルとして保存できる.付属ソフトのアップグレードによって今後は,撮影直後に直接解析や動画ファイル作成が可能になる予定である.実際の使用においては,操作上はジョイスティックがついているため,感覚的に細隙灯顕微鏡や眼底カメラなどと同様である.ただし,眼底観察には通常の赤外光を使用しているため,眼底は暗く実際にはどの部位の撮影をしているかを判断するのは困難であることが多い.3Dscanモードで黄斑部全体を一度に撮影してしまう場図33DOCTによる中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)の典型例中心窩網膜下に漿液性網膜離がみられる.視細胞の内節・外節境界(IS/OSline)が離部では不明瞭になっているのがわかる.漿液性網膜剥離IS/OSline———————————————————————-Page4600あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(24)は3D画像,中央は水平立体断面像,右は水平断面像である.種々の表示法を合わせることで,黄斑浮腫や網膜離の存在が立体的に観察できる.さらに上述のように元データを市販の3次元解析ソフトウェアで処理することで,動画としても観察できる.2.CirrusOCT(Zeiss社)現在でも最も普及しているOCTであるOCT3000を作っているZeiss社が,スペクトラルドメインOCTとして2007年に発売したOCTである.これまでの蓄積されたノウハウやブランド力もあり,最も注目されている製品であろう.撮影スピードはA-scanレートが1秒当たり27,000本とされ,解像度についても深さ分解能は5μm程度とほぼ3D-OCTと同様かそれ以上であり,遜色はない.撮影モードとしては3次元画像を構成可能なcubescanモードとB-scan5本分を同時に撮影できる5linerasterモードがある.Cubescanモードは,6mm四方をB-scan200枚分同時に撮影可能であり,撮影後の解析で3D画像が得られる.また現在の解析ではCirrusOCTの一つの特徴である内境界膜や網膜色素上皮を分離してセグメンテーションマップ(またはpeeling画像)を得ることができる(図6).現在のソフトウェアでは,画像を操作するなされている.図4は白内障手術後1カ月で視力低下をきたした症例の中心窩3D-OCT所見である.中心窩陥凹が消失し,胞様所見を伴った黄斑浮腫が観察される.細矢印(↓)のように硝子体牽引が明瞭に描出され,黄斑浮腫の原因と考えられる.このように3D-OCTでは網膜の層構造だけでなく,硝子体の観察も可能であり,病態を理解するうえで注目されている.c.黄斑部牽引症候群(VMTS)後部硝子体離(PVD)の発生時に後部硝子体膜が黄斑部を前方に牽引されひき起こされる.OCTによる検討で,黄斑浮腫やときに網膜離を伴うことが指摘されている.図5はVMTS症例の3D-OCT像である.左図43DOCTによる白内障手術後1カ月の?胞様黄斑浮腫における硝子体牽引細矢印(↓)のように硝子体牽引が明瞭に描出される.胞様黄斑浮腫5黄斑部牽引症候群(VMTS)症例の3DOCT像左は3D画像,中央は水平立体断面像,右は水平断面像である.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008601(25)ど詳細に観察することはできないが今後アップグレードされる予定である.5linerasterモードでは0.25mmごとの高解像度B-scanが得られる.実際に撮影された正常眼におけるB-scanは非常に高解像度であり,網膜各層,IS/OSおよびELMまで詳細に観察可能である(図2d).デフォルトではOCT3000と同様に親しみやすい疑似カラーを採用しているが,グレースケールでも表示可能である.撮影部位は任意に操作が可能で,撮りたい位置をマウスで指定すればよい(図7).眼底観察にはSLO(共焦点眼底観察)方式を導入しており病変の位置などをモニターで確認しながら撮影できる.これは非常に優位な点であり,操作性も良好でOCT撮影中に新しい異常部位を発見することもしばしばある.ただし,現在までのところ当科ではこのモードは水平断でしか観察できない.バージョンアップによって垂直断でも観察できるようになる予定である.実際の使用については,被検者に顎と額をつけてもら図6CirrusOCTでの正常眼における網膜表面や網膜色素上皮を分離したセグメンテーションマップ(またはpeeling画像)RPEILM-RPEILM図7CirrusOCTにおける実際の5linerasterモードでの測定画面画面左下のSLO画像上で眼底観察は可能であり,マウスで撮影部位を自由に移動可能である.———————————————————————-Page6602あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(26)operculumや中心窩周囲の浮腫(図8下)が詳細に観察される.3.その他a.RTVue100(オプトビュー社)毎秒26,000A-scan,深さ分解能5μmで,他のスペクトラルドメインOCTとほぼ同等.3Dscan,crossscanなどほぼすべての機能を搭載.画像解析ソフトも充実し,特に緑内障関係の解析ソフトがそろっている.アタッチメントによって前眼部OCTとしても機能する.b.SpectralisHRA+OCT(ハイデルベルグ社)眼底SLOのHRA2と一緒になったスペクトラルドメインOCT.HRA2がついているので造影検査と同時にOCT画像を取得することができる.造影検査での異常部位のOCT像を簡単にみることができる.スキャンスピードは毎秒40,000A-scanと最速である.さらにHRA2ですでに定評のあったアイトラッキング機能がそのままOCTにも導入され画像の鮮明さを増している.加算平均により作成されるOCT画像は非常に美しい.III今後の展望低価格帯の光源800nmを用いたOCTではなく,長波長を用いた光源を利用した高深達OCTが注目されている.また今のところまだ開発段階であるが,フーリエドメインOCTの異なる形であり,光源の波長が変化することで干渉波を得るスウェプトソースOCT(SS-OCT)や元は天体望遠鏡でのレンズのゆがみを補正するために開発された補償光学を用いたOCTなどの出現の可能性がある.い検査をするのであるが,本体は固定されているので,眼球の位置を合わせる際には,顎台が動くことによって調整される.この場合顔自体が動かされることになり,検査中被検者が無理な体勢になっていることもあるので注意を要する.またすべての操作がマウスによって行われるので,微妙な調整は困難なこともある.顎台の調整には,初期段階の顎台の位置が,欧米人に合わせてあるのか大きくずれていることが多く,被検者にもよるが時間がかかることも多い.一度顎台の調整が済めば,その後の操作は問題ないのでこの点についてはもう少し改善が望まれる.黄斑円孔広く一般にOCTの有用性を再認識させられた疾患である.CirrusOCTでは,stage2における硝子体と中心窩の牽引との関係(図8上)やstage3でのpseudo-図8CirrusOCTによる黄斑円孔stage2およびstage3

網膜・硝子体のOCT検査機器:機種一覧

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———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSとしては画期的な画像であった(図1).解像力(Z軸)は20μm.2.OCT3000(CarlZeissMeditec社)2005年に解像力(Z軸)が10μmに向上したOCT3000が導入され,OCT2000の画像に比べより詳細なものが得られるようになった(図2).操作も非常に簡便になり現在日本のみならず海外でも,最も普及していると思われる機種である.B-scan(断層像)を得るのに約1.3秒を要する.解像度が上がったことにより視細胞層内節外節境界部(IS/OS)ラインに相当する高反射ラインが観察できるようになり,IS/OSラインと視力との研究が進んだ.3.OCTOphthalmoscope(NIDEK社)2004年にNIDEK社から発売.これまでのOCTの断層像であるB-scanに加えて,新たに断面像であるC-scanの撮影が可能になった(図3).このことで,網膜疾患を立体的に考えることが可能になった.解像度はB-scanが9μm,C-scan(断面像)が18μmで,B-scanの解像度はOCT3000と同程度である.最も解像度の良い画像を得るには,B-scan(断層像)が約1秒,C-scan(断面像)が0.5秒を要する.得られたOCT画像は,これまでのOCTと同様のカラースケールでの表示の他に,グレースケールでの表示も可能である.また実際の測定画像では,左側にSLO画像が,右側にOCTIOCTの歴史光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は網膜の光学的断層像を撮影する装置である.現在の眼科の診療には欠かせない検査となり,2008年には眼底三次元画像解析として保険点数請求が可能になった.当たり前のように使用しているOCTだがその歴史は実はまだ浅い.1991年にFujimotoらがはじめてOCTの画像を報告し,実際に製品化され日本に導入されたのが1997年である.その断層像からさまざまな臨床研究報告が行われ,B-scan画像は親しみやすいものになっていった.2004年には新たなscan画像であるC-scan(前額断)が得られるOCT-Ophthalmoscope(OCT/SLO)がNIDEK社から発売された.2006年には大きな転機を迎えた.すなわち,測定方法を従来からあるタイムドメイン方式から,スペクトラルドメイン方式へと世代交代したことである.TOPCON社の3D-OCTがそれにあたり,さらなる詳細な眼底画像所見が得られるようになった.本稿では,各OCTの概要などにつき触れたい.II機種の紹介:タイムドメイン方式1.OCT2000(Humphrey社,現CarlZeissMeditec社)1997年に日本に導入された最初のOCTである.現在のOCT画像に比べると相当粗いものだが,発売当時(13)589MasaakiSaitoTomohiroIida::601251特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):589595,2008網膜・子体のOCT検査機:機種一OpticalCoherenceTomographyforRetina-VitreousDisorder:DeviceOverview齋藤昌晃*飯田知弘*———————————————————————-Page2590あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(14)画像が同時に映し出され,さらにはこの左右の画像がpixeltopixelで1対1対応しているといった最大の特徴がある.この1対1対応によって,SLOでの眼底所見と,OCTのC-scan(断面像)の詳細な関係がわかるようになった.測定の際には患者側から斜め右方向に検者が位置し,かつ撮影画像は瞬目による影響を受けやすく,測定にはある程度の熟練を要する.III機種の紹介:スペクトラルドメイン方式スキャン速度は2040Hzであり,400HzのタイムドメインOCTよりも50100倍もの高速化が可能にな図2AOCT3000の外観図1OCT2000のscan画像中心性漿液性脈絡網膜症例:カラー眼底写真(a)でみられる漿液性網膜離はOCT2000のscan画像(b)では低反射領域としてみられる.ab図2BOCT3000のscan画像中心性漿液性脈絡網膜症例:眼底写真(a).OCT3000ではOCT2000に比べより詳細なscan画像(b)が得られる.ab———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008591(15)も撮影され,この上に実際にスキャンされたラインが示されるので,より親しみやすい画像になり,かつ眼底所見と対比しやすい.3D画像を得るには,まず3Dモードでの撮影が必須である.このモードの最大の欠点は1り,現在のOCTの主流である.1.3DOCT1000(TOPCON社)2006年にTOPCON社から発売され撮影の簡便さと,高解像度の画像は一躍注目を浴びた(図4).解像度は5μmにまで上がり,外境界膜が検出できるようになった.Crossscanモードでは,B-scan(断層像)の測定はわずか0.040.05秒と非常に速くなり,瞬目などの影響も受けにくく撮影は容易になった.得られたB-scan画像は加算平均処理を行う(4または8枚)ことにより,画質はさらに良くなる.OCTと同時にカラー眼底写真図3AOCTOphthalmoscopeの外観図3BOCTOphthalmoscopeの測定画面表示Bscan矢印:OCTB-scan画像.矢頭:OCT画像で,赤い線がスキャンされた部位.細矢印:モーションアーチファクト測定.ラインがまっすぐであればアーチファクトが少ない良い画像.図3COCTOphthalmoscopeの測定画面表示Cscan矢印:OCTC-scan画像.矢頭:SLO画像.左右のSLO画像とOCT画像はpixeltopixelで1対1対応している.図3DOCTOphthalmoscopeの測定画像ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)例SLO像とC-scan画像は1対1対応し,IA所見と合わせ,ポリープ状病巣(矢頭)はC-scanで網膜色素上皮離部位の突出として捉えられる.(文献4より改変)baca:SLO像.b:OCTC-scan画像.c:IA像.———————————————————————-Page4592あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(16)解像度は5μmである.外観は測定本体と,コンピュータ操作画面が一体化し,これまでのOCTに比べコンパクトになり省スペース化が図れる(図5).これまでのOCTと違った点は,5ラインラスターモードといったスキャン長6mmの水平方向の高解像度なB-scan画像を,約2秒以内で等間隔(0.25mm)に5枚同時に得られる撮影モードがある点である.画面上に出てくるこの5つのラインは,撮影中に共焦点眼底画像を見ながら位置を自由に変えることができる.一度の撮影で等間隔に5つの異なった部位の高解像度の画像が得られることから,確実な病変の観察が可能になり,何度も撮り直す必要がなくなるといった利点がある.これまでは,5ラインラスターモードはスキャン長6mm,間隔0.25mm,水平方向のみの撮影であったが,新たなバージョン3では,スキャン長が3mm,6mm,9mmから選択でき,そのスキャンラインの間隔も0から1.25mmまで変更可能になり,さらには角度も自由に変えられるようになり,さまざまな網膜疾患に対応できるようになった.3D画像を得るには,MaculaCubeモードで撮影することで可能である.さらに3D網膜厚マップや,網膜色素上皮の3Dセグメンテーションマップといった新たな画像解析も容易にかつ短時間でできる.スキャンの撮影に23秒を要する点である.固視の悪い症例や,体動の多い高齢者には現実的に困難である.さらに得られた3次元データはボリュームレンダリング法を用いて3Dの構築を行う.通常のラインモードの撮影は,無散瞳カメラと同様に気軽に撮影できる点も親しみやすい点である.2.CirrusHDOCT(CarlZeissMeditec社)CirrusHD-OCTは2007年に日本に導入され,3DOCT-1000と同様,スペクトラルドメイン方式を用い,図4A3DOCT1000の外観図5ACirrusHDOCTの外観図4B3DOCT1000の3D画像ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)症例:3Dモードで撮影し,その場で3D画像が得られる.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008593(17)クな特徴として,前眼部観察用レンズを使用することにより,前眼部OCTとしても利用可能である.B-scanの測定時間は0.039と他の機種と比べて最も速い.複数のB-scan画像を加算平均処理することによって画質が向上する.撮影モードにはたくさんの種類があり,網膜3.RTVue100(Optovue社)米国でFDA(米国食品医薬品局)に最初に認可されたスペクトラルドメイン方式を用いたOCTである(図6).深度解像度は5μm,横方向解像度15μmと他のスペクトラルドメインOCTと同様のスペックをもつ.ユニー図5BCirrusHDOCTの5LineRasterポリープ状脈絡膜血管症(PCV)症例の水平断層像.図5CCirrusHDOCTのMacularthicknessanalysis加齢黄斑変性(2型脈絡膜新生血管)の症例.3D網膜厚マップ内境界膜レベルでのセグメンテーションマップ網膜色素上皮レベルでのセグメンテーションマップ———————————————————————-Page6594あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(18)疾患のみならず緑内障疾患にも対応している点は広く受け入れられやすい点である.4.SpectralisOCT(Heidelberg社)2008年に認可が下りたばかりの最新のOCTである(図7).OCTの解像度は深度解像度3.5μm(デジタル),横方向解像度14μmと非常に優れた解像度をもつ.この機種の最大の特徴は,操作がより簡便で,解像度の高い同社のHeidelbergRetinaAngiograph2(HRA2)とOCTが同時に組み込まれたことである.これによって,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA),インドシアニングリーン(ICG)蛍光眼底造影(IA),そしてOCTの撮影が同時に行える.近年非侵襲的な検査として注目されている,自発蛍光(FAF)の観察も可能であり,これとOCTの組み合わせもできる.測定の際に非常に優れた機能である,TruTrackTM─デュアルビームアイトラッキングシステム─が備わっている点も見逃せない.このデュアルビームアイトラッキングシステムとは,絶えず動くであろう眼球に対して,同一部位をスキャンすべく追跡機能をとり備えた画期的なシステムである.この際図6BRTVue100のCrossLineモードポリープ状脈絡膜血管症(PCV)症例の水平断層像(a),垂直断層像(b).図6ARTVue100の外観図6CRTVue100の3DMacularモード図4Bと同様の症例,CrossLineモードに比べると画質は劣るが,断層像(b,c)に加えて,断面像(a)や,3D画像の切断面(d)も同時に描出できる.cbad———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,20085952)板谷正紀,尾島優美子,吉田章子ほか:フーリエドメイン光干渉断層計による中心窩病変描出力の検討.日眼会誌111:509-517,20073)HangaiM,OjimaY,GotohNetal:Three-dimensionalimagingofmacularholeswithhigh-speedopticalcoher-encetomography.Ophthalmology114:763-773,20074)SaitoM,IidaT,NagayamaD:Cross-sectionalandenfaceopticalcoherencetomographicfeaturesofpolypoidalchoroidalvasculopathy.Retina28:459-464,2008に加算する画像の枚数も設定でき,得られた画像は非常に画質に優れている.FA,IA,FAF所見とOCT所見との詳細な比較が可能である.おわりにOCTは非侵襲的な簡便な検査である.OCTの解像度の開発は現在もなお進歩している.さらなるOCTの臨床研究の進歩によって,より低侵襲な診断,治療予測が可能になると思われる.OCTは眼科医にとってなくてはならない存在になっている.文献1)岸章治:OCT眼底診断学.エルゼビア・ジャパン,2006(19)図7ASpectralisOCTの外観図7BSpectralisOCTの画像:正常眼得られたOCT画像は,あたかも組織切片のように画質に優れている.図7CSpectralisOCTの画像:PCVa:インドシアニングリーン(ICG)蛍光眼底造影(IA),b:OCT画像(加算平均処理).IAでポリープ状病巣がはっきりと描出され,その部位のOCT画像が詳細かつ正確に得られる.ab

総論:OCTの基礎

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSII光干渉断層計(OCT)の原理光は波の性質を有するため,眼内へ入った光は眼底の各層で反射して返ってくるが,層の深さにより反射する時間がずれ,層により反射の強さが異なるため,時間の遅れと異なる光強度という形で反射光は眼底形態の情報を含む.つまり,眼底反射光には,時間のずれと反射強度が異なるという組織の性質が反映されているのである.これを読み取れば,眼底の断層像が構築できる.直接読み取ることは,現時点の技術では不可能であるため,光のコヒーレンス(可干渉性)という波の性質に着目し反射波の時間的遅れを検出し画像化している.すなわち,撮影光をビームスプリッターで半分に分け,片方は参照ミラーに反射させる.眼底反射光と参照ミラーから反射する光を干渉させると,「ビームスプリッター」と「眼底のある点A」の距離と「ビームスプリッター」と「参照ミラー」の距離が同じ場合,光波は振幅が大きくなるため,これだけを検出すれば,点Aの距離とその反射強度がわかる(図1).そして,この点A(Aスキャン)を深さ方向にずらしてスキャンしていくと,眼底の各深さにおける反射強度の分布が描き出せる.これを横方向へくり返す(Bスキャン)と断層像になる(図1).IIIタイムドメインとフーリエドメインタイムドメインOCTは,上記したAスキャンを深さはじめに近年,スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)の製品が7社から発売され(国内認可4社,1社申請中),われわれユーザーにとって選択肢が増えたことはたいへん良いことではあるが,どれが自分の目的に合うかわからず購入に際して迷われることが多いようである.本稿では,OCTの購入を考える際に役に立つであろうと思われるOCTの基礎的な知識を順序だてて述べる.各論にて諸先生方が述べられる内容の理解にも役立てていただきたい.OCTの進化の歴史はいかに速く,いかに良い画像を得るかという歴史であり,では一体どのような進化が今日の製品群に込められているかという観点から書き進める.I光干渉断層計概観1990年に山形大学の丹野らがOCTの原理を提案し,1991年にマサチューセッツ工科大学(MIT)のFujimo-toらがOCTの画像化に成功し,5年後の1996年(国内では1997年)にHumphrey社(現在CarlZeissMed-itec社)から最初の眼底用商用モデルOCT2000が発売された.最初に開発されたのはタイムドメイン(time-domain)という検出方式をとったが,OCTが市場に出て10年目に至り,フーリエドメイン(Fourier-domain)とよばれる異なる検出技術の一つであるスペクトラルドメイン(spectral-domain)方式を用いた新しいOCT製品群の登場に至った.(3)579::606850754特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):579587,2008論:OCTの基礎BasicKnowledgeofOpticalCoherenceTomography板谷正紀*———————————————————————-Page2580あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(4)強度の情報を計算で求めてしまう(図2).よって,スペクトラルドメインOCTは,深さ方向の機械的走査が不要となるため,高速になる.各スペクトラルドメインOCT製品はAスキャン速度が1755kHzであり,400HzのタイムドメインOCTよりも43138倍高速に撮影可能となり,信号感度(シグナル/ノイズ比)も数十倍高くなる.なお,フーリエドメインOCTは,波長固定光源と分光器を用いてフーリエ空間で検出するスペクトラルドメ方向へ機械的に走査することで,光波の干渉を実空間(時間領域)で行う方法である.CarlZeissMeditec社のOCT2000,OCT3000,マイクロトモグラフィー社のEGスキャナー,ニデック社のOCT-OphthalmoscopeC7は,すべてタイムドメインOCTであった.これに対し,フーリエドメインOCTは,光波の干渉をフーリエ空間(周波数領域または波長領域)で行う.すなわち,1回のAスキャンに含まれる波長を分光器を用いフーリエ変換によりスペクトル分解して,一気に深さと反射図2スペクトラルドメインOCTの原理参照光と測定光でズレがある部分の干渉光は波長が変化しているので,スペクトル分解することでこれらを分離してそれぞれ検出することができる.CCDCCDの読み出し速度=Aスキャン速度フーリエ変換測定光光源光源参照ミラー分光器光源光源CCD参照光用のミラーを移動⇒AスキャンBスキャン参照光ミラーの位置干渉光強度参照ミラー測定光参照光図1OCTの原理参照光と光路長が一致すると振幅が増大し,CCDに捉えられる.これにより各点の距離と反射光強度が求められる.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008581(5)2.XY面分解能(lateralresolution)XY面分解能は,眼球をカメラと見なしたときの開口数(numericalaperture:NA)で決まる.眼では瞳孔径がNAにあたる.これは眼底カメラと同じことである.NAが大きいほどXY面分解能は高くなる.すなわち,瞳孔径が大きいほど,また光ビーム径が大きいほど,NAは大きくなる.すなわち,瞳孔径を大きくすれば(解剖学的に限界はあるが),XY面分解能は高くなることになる.しかし,実際には,瞳孔径が1.52mmを超えると,眼光学系の収差(aberration)の影響が強くなり,網膜面上に小さな集光スポット(結像)を形成することができないため,XY面分解能は制限を受けることになる.このように角膜や水晶体の収差が眼底OCTのXY面分解能を不良にする最大の攪乱因子であり,実際に従来のOCT診断装置のXY面分解能は20μm程度であった.これは,SD-OCTになっても変わらない.すなわち,現状では,どのメーカーのSD-OCTもXY面分解能は大差ない.参考までに,研究レベルでは,この眼光学の収差を光学的に解消する補償光学(adaptiveoptics:AO)の研究が進み,その成果がOCTに適用され,XY面分解能が著しく向上したAO-OCTが報告されている.理論的には2.2μmまで向上することが可能とされる.XY面分解能の向上は,AOなしでは線として描出される視細胞内節外節境界部(IS/OS)や外境界膜が,AOを適用すると波線,すなわち視細胞ごとの終端としての点の並びとして描出されることが示された.現在では,視細胞1インOCTと光源の発信波長を高速に変化させることにより光波の干渉を同じくフーリエ空間で行う方式である波長走査型OCT(sweptsourceOCT:SS-OCT)とがあるが,近年製品化されたのはすべてスペクトラルドメインOCTのほうである.IVOCTのBスキャン画像の質を決める因子1.深さ分解能(Z方向分解能)(axialresolution)OCTによる画像の分解能(resolution)は,深さ分解能(axialresolution)とXY面分解能(lateralresolu-tion)に分けられる(図3).眼底に入る光に平行な方向の分解能が深さ分解能である.この方向をZ方向ともいうためZ方向分解能ともいう.一方,眼底に入る光に垂直な面がXY面である.単にOCTの分解能をいうとき深さ分解能を指す場合が多い.OCTの深さ分解能は光源によって決まる.すなわち,光源の波長帯域が広ければ広いほど深さ分解能は高くなる.波長帯域とは,どれだけ広い範囲の波長を含んでいるかということである.OCTの発展の歴史は,深さ分解能の向上の歴史でもあった.OCT3000が用いたスーパールミネッセント・ダイオード(superluminescentdiode:SLD)は,波長幅が約20nm(ナノメートル)であり,それに応じて深さ分解能は約10μmであった.研究レベルでは,2001年,マサチューセッツ工科大学のFujimotoと英国Cardi大学のDrexlerは100nm以上の広い波長帯域をもつフェムト秒レーザー(チタン・サファイアレーザー:titanium-sapphirelaser)を光源として使用し,深さ分解能3μmの超高分解能OCT(ultrahighresolutionOCT:UHR-OCT)を実現し,外境界膜,視細胞内節外節境界部など網膜の微細な層構造が光学顕微鏡組織像に近い高精細さで描出することに成功したと報告した.近年,実用化されたスペクトラルドメイン光干渉断層計(spectral-domainOCT:SD-OCT)の製品は,50nm前後のSLDを使用しているため深さ分解能はメーカー公表値で57μmであり,どのメーカーも大差ないことになる.しかし,ポーランドのOPTOPOL社は,通常のSD-OCTCOPERNICUSに加え,深さ分解能を3μmにしたSD-OCTを開発した.図3眼底における深さ分解能(Z)とXY分解能———————————————————————-Page4582あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(6)を待たずしてもすでにOCT2000で描出されていたことになる.ただ,スペックルノイズがあるが故に,これら微細な構造が隠されていたということである.加算平均処理とはいかなる方法であろうか?画像を重ね合わせ,重ね合わせた枚数で割ると実体は元と変わ個1個の構造を描出できるまでに進んだ.いずれ,現在のSD-OCT製品にも実用化される可能性がある.3.スペックルノイズ(specklenoise)深さ分解能が向上すると網膜の層構造の描出が向上することはよく知られるようになったが,深さ分解能に匹敵してBスキャンの解像力に関係する重要な因子にスペックルノイズがあることはまだ一般には知られていない.OCTの画像が,ブツブツとしたノイズの多い画像であることはお気づきのことと思う.スペックルノイズは,レーザー光で物体を照明すると出現する斑点模様のことである(図4).レーザー光がコヒーレント光であるために生じる独特の現象であり,Rodenstock社のscan-ninglaserophthalmolsope(SLD)に認められたブツブツのノイズもスペックルノイズである.OCTは,スペックルノイズに埋もれている画像なのである.OCTにおけるスペックルノイズの影響の大きさ,言い換えるとスペックルノイズを除去するといかに画像が良くなるか,を最初に示したのが,2005年のSanderらの報告である1).粗いOCT2000の画像を9枚加算平均(multi-pleB-scanaveraging)してスペックルノイズを取り除くとSD-OCT並の画像に変身することが示された(図5).この画像では,IS/OSのみならず外境界膜に相当する高反射ラインもきれいに描出されている.これの意味するところは,IS/OSや外境界膜は,何もSD-OCT図4スペックルノイズ図5加算平均処理(multipleB-scanaveraging)によるスペックルノイズ除去効果(文献1より)A:OCT2000による1枚の断層像.B,C:OCT2000の断層像を9枚加算平均処理し,スペックルノイズを除去した画像.疑似カラー(B),グレースケール(C).図6スペックルノイズを減らすための加算平均法(multipleB-scanaveraging)を説明する模式図スペックルノイズは重ね合わせる枚数で除した強さに弱まる.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008583(7)ンOCTの高速性が重要となってくる.当科の坂本らは,スペクトラルドメインOCTを用いると,実際の臨床現場で,さまざまな眼底疾患に対し,高確率に加算平均によるスペックルノイズ除去が可能であることを示した2).スペックルノイズがあってもIS/OSや外境界膜などの微細な構造が可視化されるSD-OCTにおいてスペックルノイズが除去されると一体どのような画像が得られらないが,虚像であるノイズはランダムであるため,重ね合わせた枚数で除した分だけノイズシグナルは希釈される(図6).しかし,実際には,スペックルノイズを取り除くには,まったく同じ部位でBスキャンを何枚も撮影することが必要であり,撮影速度の遅いタイムドメインOCTでは困難であった.ここで,スペクトラルドメイ図7スペクトラルドメインOCT画像において加算平均法でスペックルノイズを取り除く効果の実例(文献2より)PDT(光線力学的療法)後のポリープ状脈絡膜血管症.Bruch膜が明瞭に可視化され,線維化した脈絡膜新生血管(*)がBruch膜内に存在することがわかる.網膜色素上皮上で波打つ視細胞層が描出される.NFL:網膜神経線維層,RPE/BM:網膜色素上皮層/Bruch膜,OPL:外網状層,ONL:外顆粒層,IS/OS:視細胞内節外節境界部.図8加算平均法の失敗例A:4枚スキャンのうち1枚の撮影のみ眼が動いたため重ね合わせがうまくいかず,亡霊のような画像(矢印)がかぶっている.B:糖尿病網膜症の同一眼における加算平均法の失敗と成功例.———————————————————————-Page6584あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(8)ることにもなった.ヒトの眼が,健常な状態でも常に動いていることは,特にXY方向や回旋方向において知られていたし,日常臨床で経験することであった.HeidelbergEngineering社のHRT2では,XY方向の固視微動追尾機構(eyetrackingsystem)が装備され,診断における固視微動の問題を解決していた.SD-OCTによりBスキャン画像がリアルタイムに観察可能になると,Z方向(光の入射方向)にも高速に微動していることが可視化された.固視微動の問題は,タイムドメインOCTでは,1枚のBスキャン画像の波打つ歪みとして認められた.OCT3000には,アラインメント機能(alignment)があり,網膜色素上皮の高さを揃え直線化することで,歪みを解消していた.より問題となるのは,黄斑部網膜厚や視神経周囲網膜神経線維厚を計測するときに,スキャンラインが歪む,あるいはサークルスキャンや放射スキャンにおける中心(中心窩や乳頭中心)がずれる,といった問題が生じ(図9),計測値が同じ日に同じ検者が検査しても数値が異なるリスクがあることである.ましてや,経過観察において,撮影日が異なる,検者が異なる場合,そのリスクは大きい.そして,固視の不良な患者ほどこのリスクは高まる.緑内障など緩やかな変化を捉えるには,このリスクは致命的となりうる.スペクトラルドメインOCTで高速化し,1枚のBスキャン画像の歪みは解消され,OCT3000と同じスキャンプロトコーるのであろうか?実例は,坂本らの報告に示されているが,たとえば中心性漿液性脈絡網膜症やポリープ状脈絡膜血管症においてはBruch膜分離によるBruch膜外層が明瞭に可視化される(図7).Optovue社のRTvue-100,トプコン社の3DOCT-1000,HeidelbergEngineering社のHRA-OCTSpec-tralisは,加算平均処理を導入しているので注目されたい.ここで,加算平均処理においてもう一つ問題になるのは,後述する固視微動である.SD-OCTの撮影速度をもってしても固視の悪い患者では,同一部位でBスキャンを得ることがむずかしく,加算平均処理を行うと,かえってぼやけた画像になってしまう(図8).HRA-OCTSpectralisは3次元的に固視微動を追尾して撮影するeyetrackingシステムを導入し固視微動の問題を解決し,加算平均処理の成功率を向上させた.100枚重ねることも可能となった.これにより,SD-OCTのスペックルノイズフリーの画像を見ることが可能になり,実に驚くべき病変の情報が描出されるに至っている.他社もeyetrackingシステムを導入したところも現れており,スペックルノイズの観点から各製品を見ることはきわめて重要と考える.4.Aスキャン数(densityofA-scan)Aスキャンが並んでBスキャンが構成される.Aスキャンの数はBスキャンの画質を決める.理論上,11μm間隔でAスキャンすると理想的なpixelspacing(1ピクセル当たりに相当する距離)が実現される.しかし,それより密にAスキャンを行うと隣同士のノイズが打ち消し合う効果が生まれ,Bスキャンの画質は向上する.SD-OCTは,高速であるため,2,048本,4,096本など高密度のAスキャンを短時間で行うことで容易に画質の高いBスキャンを実現することができる.多くの製品では,このhighdensescanを採用しており,この観点でも各製品を見られたい.5.固視微動(eyemovement)スペクトラルドメインOCTの登場は,固視微動を可視化し,固視微動の問題の大きさをクローズアップさせ図9固視微動によるスキャンラインの歪みやスキャン中心(中心窩や乳頭中心)のずれ———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008585(9)の眼底用OCT製品は,すべて800890nmに中心波長をもつSLD光源を用いているため,どの製品もほぼ同等の深達力である.スペクトラルドメインOCTの場合は,レファランスを硝子体側に置くか脈絡膜側に置くかで,多少脈絡膜など深部の鮮明さが異なる.Bruch膜内病変や篩状板を観察するには,脈絡膜側に置いたほうが良い.Optovue社のRTvue-100は,この切り替えができるが,多くは硝子体側に置いている.一方,前眼部型OCTが用いる光源の中心波長は1,300nmである.一般に,波長が長くなるほど光の組織透過性は高くなるが,逆に水における光の吸収が高くなる.1,300nmは,硝子体による吸収で減衰するため眼底には使用できないが,強膜や虹彩を透過し,その後面までを描出できるため,前眼部型OCTに最適な中心波長と考えられている.Vソフトウェア1.疾患解析ソフトウェアスペクトラルドメインOCTは,深さ分解能や撮影速度ではほぼ同様である.上記したように,スペックルノイズや固視微動などの攪乱因子をいかに扱うか,あるいは操作性で製品の個性が決まってきている.もう一つ製品を選ぶにあたって重要なのが,疾患解析ソフトウェアの優秀さである.しかし,残念ながら,まだ疾患解析ソフトウェアを開発中の製品が多い.各社,正常人データを採取し,内部正常データを確立し,独自のスキャンプログラムや解析プログラムを開発している.Optovue社のRTvue-100は,すでに黄斑および視神経乳頭の解析ソフトウェアが完備し,一歩先んじている.特に緑内障解析プログラムは,スペクトラルドメインOCTだから可能になる新しい考え方に基づいたものを採用しており,期待される.CarlZeissMeditech社のCirrusやトプコン社の3DOCT-1000は,正常データを確立し,OCT3000と同等のことはできるようになったが,それ以上の新しい解析ソフトウェアは,今後出てくると思われる.現時点では,比較がむずかしい.2.セグメンテーションまだ聞き慣れない言葉であるが,OCT2000より用いルを用いる範囲では,上記したリスクは解消された.しかしながら,3次元撮影が可能になったことで,ここに新たな固視微動の問題が生じている.すなわち,どのメーカーの製品でも,3次元撮影に2秒程度あるいはそれ以上の時間がかかるため,固視微動による3次元像の歪みが生じる.また,中心窩を中心にして3次元スキャンを行った場合,2秒の間に中心がずれたり,スキャン予定範囲をはみ出したりする.すなわち,OCT3000において2次元のBスキャンで起こったのと同じ問題が,スペクトラルドメインOCTでは3次元において起きる.真に3次元を生かすためには,固視微動の問題を解決する必要があり,それには2つの方法がある.一つは,スキャン速度をさらに10倍高速化すること.二つめは,眼球運動を追いかけて(追尾して)スキャンも移動しながら行うこと(eyetracking).現時点で,撮影速度を10倍にする技術の実用化はすぐにはできないため,製品レベルで行われているのは,eyetrackingのほうである.最初にeyetrackingを行ったのは,HeidelbergEngineering社のHRA-OCTSpectralisで,同時撮影するSLO画像のパターンからX,Y,Zの3方向にeyetrackingを行っている.続いて最近トプコン社がX,Y2方向のeyetrackingを搭載した.Eyetrackingにより同一部位を撮影できると,眼球が動いても予定どおりの範囲をスキャンでき,中心もぶれないため,常にほぼ同じ計測値が期待できる.Spec-tralisには,フォローアップ機能が付いており,撮影日や検者が異なっても,毎回初回検査と同じ部位を自動的にスキャンしてくれる.将来的に,eyetrackingなしの検査データは信頼性が低く,治験などでは使用できないということになるかもしれない.Eyetrackingにより,同一部位が撮影可能になると,先述した加算平均によるスペックルノイズ除去の成功率が著しく高まることもくり返しておく.6.深達力(penetration)眼球組織のどの深さまでを明瞭に撮影できるかが深達力である.これは神経網膜の病変や色素上皮の状態や眼軸長や中間透光体など患者側の条件にも左右されるが,OCT側では,光源の中心波長により決まる.これまで———————————————————————-Page8586あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(10)(IS/OS)の前縁までを網膜厚として計測していたため実際には外節分だけ短く計測していた(図10の①).Optovue社のRTvue-100も当初IS/OSの前縁までを網膜厚として計測していたが,最新のバージョンでは網膜色素上皮の後縁(図10の③)へ変更になった.CarlZeissMeditech社のCirrusやトプコン社の3DOCT-1000は網膜色素上皮の前縁までを網膜厚として計測する.理想的には,網膜色素上皮の前縁まで(図10の②)が本当の神経網膜と考えられるが,実際には網膜色素上皮とIS/OSに挟まれているもう1本の高反射ラインがセグメンテーションエラーの原因となりやすい.高分解能になったが故の悩みでもある.妥協策として,厚みにばらつきの少ないと考えられる網膜色素上皮層を含む網膜色素上皮の後縁(③)の採用が増えそうである.セグメンテーションが高度化すれば,網膜色素上皮の前縁(図10の②)に回帰する可能性もある.ここも注目してられてきた画像処理用語であり,「画像の注目する部分を抽出する」という意味である.網膜の前縁と網膜色素上皮前縁をセグメンテーションすると神経網膜の厚みが計測できるわけである.セグメンテーションにおける問題は,エラーである.OCT3000でセグメンテーションエラーが調べられているが,4292%もの画像にエラーが生じているとされる(表1).セグメンテーションエラーは,網膜厚や網膜神経線維厚の自動計測において重大な問題になる.スペクトラルドメインOCTになり,深さ分解能が高くなり,鮮明な画像になったことで,セグメンテーションエラーが減ることが期待されるが,まだデータはない.スペクトラルドメインOCTにおける問題は,たとえば512×128の3次元スキャンにおいて,128枚ものBスキャンが存在し,セグメンテーションエラーを自分の眼で確認することはほぼ不可能であることである.セグメンテーションに用いるアルゴリズムは,多かれ少なかれ製品により異なり,その精度に注目すべきである.セグメンテーションエラーが多いと,撮影が異なると得られるデータも異なるリスクがある.スペクトラルドメインOCTは,深さ分解能が向上したため,今まで計測対象にならなかった層が自動計測可能になっている.Optovue社のRTvue-100は,黄斑部の「神経線維層+神経節細胞層+内網状層」の厚みを計測可能とし,それぞれ神経節細胞の軸索,細胞体,樹状突起が存在する部位であることから,ganglioncellcomplexとよんでいる.トプコン社の3DOCT-1000は,黄斑部の網膜神経線維層の自動計測を実現している.今後各社追随したり,新しい計測対象が現れることが予想される.しかし,むずかしい計測対象ほどセグメンテーションエラーが多くなることが予想され,留意すべきである.実は,単純な網膜厚の計測に問題がある.網膜厚の定義の問題である.OCT3000は,視細胞内節外節境界部図10複数ある網膜厚の定義①:OCT3000,Optovue社のRTvue-100の前バージョン.②:トプコン社の3DOCT-1000やCarlZeissMeditech社のCirrus.③:RTvue-100の最新のバージョン,HeidelbergEngineering社のHRA-OCTSpectralis,3DOCT-1000変更予定.理想的には,②が本当の神経網膜厚と考えられるが,実際には網膜色素上皮とIS/OSに挟まれているもう1本の高反射ライン(青矢印)がセグメンテーションエラーの原因となる.次善の策として③を採用する機種が増えている.表1OCTの計測エラーの報告例報告エラーの発生率(%)UCSD:Bartsch(2004)42Duke:Ray(2005)43USC:Sadda(2006)92———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008587(11)影),IA(インドシアニングリーン蛍光眼底造影),IR,autouorescence,redfreeのどれとも同時撮影が可能であり,臨床的意義が高い.おわりにSD-OCTという技術は1つであり各製品において共通の技術であるが,そこに画質に関わるさまざまな因子や臨床的なさまざまな観点が,修飾技術として施され,各診断機器としてわれわれの手にはいるところに並んでいる.どの装置が自分にとって本当に役に立つかを判断するにあたり,ここで列挙した基礎知識が少しでも役に立てば幸いである.文献1)SanderB,LarsenM,ThraneLetal:Enhancedopticalcoherencetomographyimagingbymultiplescanaverag-ing.BrJOphthalmol89:207-212,20052)SakamotoA,HangaiM,YoshimuraN:Spectral-domainopticalcoherencetomographywithmultipleB-scanaver-agingforenhancedimagingofretinaldiseases.Ophthal-mology,2007Nov29;[Epubaheadofprint].製品を見ていただきたい.3.レジストレーションこれも,聞き慣れない言葉であるが,画像処理用語であり,「異なる画像間の重ね合わせ」という意味である.OCT画像は,眼底のどの部位を撮影しているかわかることは非常に重要である.OCT3000は,IR(近赤外)画像で眼底をモニターしたが眼底像が不明瞭でどこを撮影しているか不明瞭になることが多い.Optovue社のRTvue-100は,IR画像を踏襲し同じ問題を抱える.トプコン社の3DOCT-1000は,撮影はIR画像で行うが,OCT撮影後にカラー眼底写真を撮影し,血管などを目印に画像的にレジストレーションを行いOCT画像とカラー眼底写真を重ね合わせることができる.カラー眼底写真は歪みがないためメリットであるが,OCTと眼底写真は同時には撮影できないことはデメリットである.CarlZeissMeditech社のCirrusやHeidelbergEngi-neering社のSpectralisは,SLO画像と機械的にレジストレーションするが,OCTとSLOを同時に撮影できる点はメリットである.特に,Spectralisは,HRA2で定評のある高画質の上,FA(フルオレセイン蛍光眼底造

序説:新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイド

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSに眼科医になった比較的若い世代にとっては,OCTは眼科診療で当たり前の診断機器になっているのではないだろうか.2004年に登場したOCT-Ophthalmoscopeは,眼底の断層像(B-scan)だけでなく網膜面に水平な断面像(C-scan)の観察や,走査型レーザー検眼鏡(SLO)所見とOCT像の1対1対応ができるようになった.しかし,これらTD-OCTは原理的に画像取得に時間を要し,広範囲の情報を取得することには限界があった.2006年夏に3DOCT-1000が世界初のSD-OCTとして市販化され,その年の秋のAmericanAcad-emyofOphthalmology(AAO)では7社がSD-OCTを展示し,一気にOCT市場は戦国時代に突入した.現在,わが国ではSD-OCTだけでも4社の製品が認可されている.SD-OCTでは,画像の取得が高速化したことで3次元情報を得ることができ,また高感度・高分解能から微細な病変を可視化できるようになった.さらには前眼部OCTの市販化で,角膜疾患,水晶体疾患や緑内障への応用が進んでいる.平成20年度診療報酬改定で,眼底三次元画像解析が保険収載され,今後OCTの普及はさらに加速するものと思われる.われわれユーザーにとっては機種選びの選択肢が増えたことは嬉しいことであるが,一方で,どの機種が自分の診療の目的に合って近年の眼科画像診断の進歩は著しい.その第一にあげられるのが光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)である.1991年にFujimotoらがOCTの画像化に成功し,1997年に最初の眼底用商用モデルOCT2000が国内発売された.OCTの登場は網膜硝子体疾患の診断に革命的変化をもたらしたが,2006年にはそれまでのtime-domainOCT(TD-OCT)からspectral-domainOCT(SD-OCT)へ進歩し,さらに2007年には前眼部OCTが国内発売され,眼科画像診断学には大きな波が押し寄せてきている.OCTの進化は今現在も続いている.研修医のときに,眼底病変を観察するときには,「その病変が病理学的にどうなっているのかを考えながら診察せよ」と教わった.OCT2000の登場は,まさに眼科医の夢であった検眼鏡所見に対応した眼底の断面を組織切片をみるかのように観察することを可能にした.網膜硝子体界面病変や,各種疾患での感覚網膜の変化,さらには網膜下病変の断層像を非侵襲的に取得できるようになり,病態の解釈,診断,治療方針の決定や効果判定に画期的な進歩がもたらされた.2002年には,より解像度に優れソフトウェアの充実したOCT3000が市販され,臨床研究だけでなく日常診療にも広く普及するようになり,緑内障診断にも有用なツールとなった.この頃(1)577T●序説あたらしい眼科25(5):577578,2008新しい光干渉断層計(OCT)ーProductInformationforCustomersofOpticalCoherenceTomography飯田知弘*山下英俊**———————————————————————-Page2578あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(2)のもつ機能を最大限引き出すためには,その理論を理解しておくことが大切である.総論としてOCTの理論をわかりやすく述べていただいた後,各論として網膜硝子体,前眼部,緑内障それぞれに関して,機種一覧と使用経験を経験豊富な先生方に執筆していただいた.この特集がOCTを使った診療のお役に立つことは間違いないと考える.いるのか,機種ごとにどのような特徴,すなわち画質はどうなのか,使い勝手はどうなのか,解析ソフトはどうなのか,など購入・使用するに当たっての悩みは多い.そこで,今回の特集では現在市販されているOCTに関する最新情報を提供していただいた.機種間の比較を行い,実際の使用に際してOCTお方:おとりつけの,また,そののない場合は社あてごください.メディカル葵出版年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科HFFNVol.25月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・眼感染アレルギーなど)/新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■株式会社〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544://www.medical-aoi.co.jp