———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLS機種においても約5μmであり,従来のOCT3000に比べ2倍以上深さ分解能が向上している(高分解能化).さらにフーリエ演算により信号対雑音比が改善した(高感度化).また従来のOCTに比べ50倍以上高速に撮影できることから,固視微動に伴うアーチファクトが低減した.これらの結果,高画質な画像が得られ病変の詳細が同定可能である.撮影の高速化により短時間で3D画像も構築できる.2.3D画像の観察と解析各社のSD-OCTでは3D画像を立体的に観察したり,一定間隔の連続2次元断層像を順次に観察することで微細な病変を見落とさずに検出することができる.さらにOCTの3D画像から作成した眼底写真と他の検査データ(眼底写真,蛍光眼底造影,自発蛍光画像など)とを重ね合わせることによりOCTにおける局所の形態異常と他の検査で示された異常部位とを照合したり(レジストレーション),網膜色素上皮(RPE)や内境界膜レベルで注目したい層の境界線を抽出することもできる(自動セグメンテーション).このように,得られた画像を有用な診断情報として活用するため,各社のSD-OCTではそれぞれ特徴ある画像解析ソフトウェアを装備している.はじめに従来のタイムドメイン光干渉断層計(OCT)(OCT3000など)に加えて新しいスペクトラルドメイン(フーリエドメイン)OCT(SD-OCT)が実用化され,微細な網膜病変の描出力が向上し,短時間で3次元データの取得も可能となった.SD-OCTにより眼底疾患の診断や治療評価の精度が飛躍的に向上する可能性があり今後の普及が期待されている.現在,世界では少なくとも7社からSD-OCTの商用機が製品化されているが,わが国ではそのなかでもOptovue社のRTVue-100,CarlZeissMeditec社のCirrusHD-OCTならびにTOPCON社の3DOCT-1000がすでに複数の施設で導入されている.いずれの機種でも低侵襲に精度の高い断層画像を短時間で撮影できるが,測定方法や画像解析プログラムにはそれぞれにいくつかの特徴がある.本稿では,新しいSD-OCTの概要を実際の使用経験を踏まえて紹介する.ISDOCT共通の特徴1.病変描出力の向上,撮影の高速化各社の新しいSD-OCTの比較表を表1に示した.SD-OCTの原理の詳細は割愛するが,SD-OCTでは広帯域の光源を使用するため分解能が向上し,スキャン速度が格段に速くなったため高速撮影ができるようになった.これらのハードウェア面に関しては各社の機種間にほとんど差はない.実際,深さ方向の分解能はいずれの(27)603TakuakabayashiFuiGoi器565087122R.E7器特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):603612,2008網膜硝子体のOCT検査機器の使用経験(2)ComparisonofCommercializedApparatusesofSpectral-DomainOpticalCoherenceTomographyforRetinalImaging若林卓*五味文*———————————————————————-Page2604あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(28)ように誘導する.被検者からは固視灯が見えるため,それを固視し続けるように説明する.黄斑部以外の位置を撮影する場合は,固視灯を移動させるか,OCTの走査線を手動で移動させるとよい.マウスを用いてモニターII各種装置の特徴A.RTVue1001.RTVue100の仕様RTVue-100は最も早く米国食品医薬品局(FDA)の認可を取得したOptovue社製のSD-OCTである.測定器本体,コンピュータならびにコンピュータモニターから構成される(図1).加算平均化処理により,きわめて高画質な2次元断層像が得られるのが当機種の長所である.本装置の特徴については,<眼科手術>Vol.21,No.2,p207212も参照していただきたい.2.検査方法まず患者氏名や疾患などのデータを入力し,撮影モードを選択する.被検者の顔の高さに撮影台の高さを合わせる.モニターで撮影眼の瞳孔中心が光軸にくるようにジョイスティックを上下および前後方向に手動で動かして位置を調節し,モニター上に赤外眼底像が表示される図1RTVue100の外観表1従来のタイムドメインOCTと各社のスペクトラルドメインOCTの比較タイムドメインOCTスペクトラルドメインOCT機種名StratusOCT(OCT-3000TM)RTVue-100TMCirrusTMHD-OCT3DOCT-1000TM会社名CarlZeissMeditecOptovueCarlZeissMeditecTopcon光源SLDSLDSLDSLD波長(l),波長帯域(Δl)l=820nm,Δl=20nml=840nm,Δl=45nml=840nm,Δl=50nml=840nm,Δl=50nm深さ(軸方向)分解能10μm5μm5μm5μm横断面分解能20μm1020μm10-20μm<20μm2次元断層画像1つ当たりの最大Aスキャン数5124,0964,0964,0962次元断層像1つに要する撮影時間1.28秒0.039秒─0.040.05秒3D画像1つに要する撮影時間─2秒─*3.5(2.5)秒測定深度2mm22.3mm2mm*1.7(2.3)mmAスキャン速度400Aスキャン/秒26,000Aスキャン/秒27,000Aスキャン/秒*18,000(27,000)Aスキャン/秒重量(本体)──37.6kg26kg本体サイズW(幅)×D(奥行き)×H(高さ)cmW122×D86(設置面積)W101×D52(設置面積)W44×D65×H53W27×D51×H57SLD:スーパールミネセントダイオード.スペクトラルドメインOCTでは光源の広帯域化により高分解能な画像が得られ,Aスキャン速度の高速化により撮影時間が格段に短くなった.スペクトラルドメインOCTには,他にもSpectralis(Heidelberg社),SpectralOCT/SLO(OTI社),Copernicus(Optopol社),3DSD-OCT(Bioptigen社)などの商用機がある.*(カッコ内)は3DOCT-1000MarkIIのデータ.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008605(29)撮影モードにはいくつかのタイプがあり用途に応じて選択できる(表2).CrossモードではAスキャン1,024本からなる2つの2次元断層像(Bスキャン)が得られる(図2).走査幅は212mmまでの範囲で任意に設定できる.RTVue-100は約26,000Aスキャン/秒のスキャンレートであるため,2次元断層像1つ当たりの撮影時間はわずか0.039秒(=1,024/26,000)である.なお,RTVue-100では複数のBスキャン画像の加算平均処理を行うことにより(multiplescanaveraging法),上で適切な屈折値などを設定して撮影する.最新版では撮影を始めるとモニター上に網膜断層像が描出されるが,描出された画像をさらに鮮明にするためには屈折値を適切に調整し,さらにジョイスティックをやや引き気味にするとよい.最新版では,自動で断層像取得のための位置決めを行うボタンがついている.ジョイスティックの上部のスイッチを押すと撮影が完了する.慣れるとジョイスティックを左手に,マウスを右手に持って以上の操作を迅速に行えるようになる.図2RTVue100(Crossモード)の測定画面①モニター上に眼底像が表示されるように誘導し,②屈折値,走査幅,Pmotor(Polari-zationadjustment)およびZmotor(Z-posi-tionadjustment)などをマウスを用いて設定する.ジョイスティック上部の撮影ボタンを押すと③水平断層像および④垂直断層像が表示される.得られた画像の加算平均処理を行うと画質がさらに向上する.最後に⑤保存をクリックする.表2RTVue100の撮影モード撮影モード目的Aスキャン数Bスキャン数撮影時間(秒)網膜疾患Line単一のBスキャン(2次元断層像)1×1,02410.039Cross2つのBスキャン2×1,02420.078HDLine単一のBスキャン1×4,09610.156HDCross2つのBスキャン2×4,09620.3123DMacula黄斑部の3次元断層像101×5121012MM5黄斑部網膜厚測定(網膜全層,内層)22×668+12×400─0.78緑内障3DDisc視神経乳頭の3次元断層像101×5121012NHM4視神経乳頭形状解析,網膜神経線維層測定12×452,3×587,3×775─0.39MM7網膜厚測定(網膜全層,内層)1×467,15×400─0.58RNFL網膜神経線維層測定4×1,024─0.15———————————————————————-Page4606あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(30)単独のFD-OCT画像に比べノイズを低減し画質をさらに向上させることができるのが特徴である.3DMacula(rasterscan)モードでは,撮影範囲を決めて3D画像を取得できる.通常は中心窩を含む4mm平方の領域に水平Aスキャン512本からなる101枚のBスキャンを一定間隔(40μmごと)に2秒間で連続撮影できる.その結果,101枚のBスキャンから構築される3D画像が得られる(図3).また,RTVue-100ではさまざまな定量が可能である.たとえば,MM5モードでは網膜厚(硝子体網膜境界視細胞内節外節境界部)および網膜内層厚(硝子体網膜境界内網状層)の計測が可能であり,NHM4では視神経乳頭陥凹(Cup)面積や乳頭辺縁部(Rim)面積などが自動解析できる.3.実際の使用経験a.2次元断層像RTVue-100のLineモードで撮影した健常眼および各網膜疾患における黄斑部の2次元断層像では網膜内のすべての層構造が明瞭に描出された(図4,5).加算平均処理を行うことできわめて高画質な2次元断層像が得図3RTVue100による健常眼の3次元網膜断層像3DMaculaモードを用いて,中心4×4mmの範囲で101枚のBスキャンから3D画像を構築した.OCTによる眼底写真(A,D,G)に対応した水平断層像を連続的に観察したり(B,E,H),3D画像の切断面を描出(C,F,I)することができる.ABCDEFGHI図4RTVue100による健常眼の2次元網膜断層像A:StratusOCT(OCT3000)による水平断層像.深さ分解能約10μm,撮影時間1.28秒.B:RTVue-100による水平断層像.深さ分解能約5μm,撮影時間0.039秒.網膜内の層構造が明瞭であり,特に外境界膜(ELM),視細胞内節外節境界部(IS/OS),網膜色素上皮(RPE)の高反射ラインが明確に区別できる.C:Bの拡大像.ABC———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008607(31)ミネッセンスダイオード)を用いて撮影する眼底画像上に結果を重ねられるのが本装置の特徴であり,病変のレジストレーションが容易である.られ,特に網膜外層の外境界膜(ELM),視細胞内節外節境界部(IS/OS),RPEなどの高反射ラインの分離が容易に行えた.また本装置では最長12mmまでの2次元断層像を取得することができ,広い病変を一度にスキャンしながら解像度の高い画像を得ることができる(図6).b.3D画像3DMaculaモードで撮影した3D画像では連続した2次元断層像を水平方向,垂直方向,鉛直方向(Cスキャンもしくはenface像)に観察したり,立体画像の切断面を描出することができた(図3).中心性漿液性脈絡網膜症の症例では,蛍光眼底造影検査での蛍光漏出部と3DOCT画像所見とを照合することができた(レジストレーション)(図7).B.CirrusHDOCT1.CirrusHDOCTの仕様CirrusHD-OCTはCarlZeissMeditec社製のSD-OCTである.測定器本体とコンピュータの操作画面が一体化し,コンパクトな仕様となっている(図8).被検者と検者の位置関係が90°となるため,検者は被検者を常に確認しながら測定操作が行える.SLD(スーパール図5RTVue100で撮影した代表的な網膜疾患の2次元網膜断層像A:黄斑上膜(硝子体黄斑牽引症候群),B:先天網膜分離症(X染色体性若年網膜分離症),C:特発性脈絡膜新生血管,D:ポリープ状脈絡膜血管症(色素上皮離を伴う).ABCD図6網膜色素変性例での2次元断層像8mm長でのスキャンを行うことで,変性部と健常な黄斑部の断層像を同時に描出できる.AB図7RTVue100で撮影した中心性漿液性脈絡網膜症の3D画像(レジストレーション)蛍光眼底造影検査での蛍光漏出部(A)と3D画面での赤外眼底画像所見(B)とを照合.B図の上下の緑線に一致した部位の断層像(C,D)で,中心窩の下液はより下方の漏出点周囲の網膜下液と連続しており,漏出点では色素上皮離(矢頭)が観察される.ABCD———————————————————————-Page6608あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(32)6mm平方の領域に,水平Aスキャン512本からなる128枚のBスキャン(もしくは水平Aスキャン200本からなる200枚のBスキャン)を一定間隔に撮影できる.CirrusHD-OCTは充実した3次元解析ソフトウェアを有しており,得られた3D画像からカラー網膜厚マップやカラーセグメンテーションマップ(内境界膜と網膜色素上皮を分離して3D表示)を作成したり,カラー網膜厚マップを眼底像へオーバーレイ(重ね合わせ表示)することができる.また,キャリパー機能で任意の部位を計測することもできる.最近になり,新しく緑内障解析ソフト(視神経線維層の測定および正常眼データベース)が導入された.また,OCT3000からデータベース(患者情報)のインポートも可能となった.疑似カラー表示された画像は,OCT3000の疑似カラーデータを見慣れた者にとって,最も違和感が少ないイメージとなっている.2.検査方法まず患者氏名やIDなどのデータを入力し,撮影モードを選択する.被検者の顔の高さに撮影台の高さを合わせる.つぎにマウスを用いてモニター上の‘Chinrest’をクリックすると,撮影眼の瞳孔中心が光軸にくるように自動調節される(電動チンレストアライメント機能)(図9).被検者からは固視灯が見えるため,それを固視し続けるように説明する.モニター上で適切な屈折値を設定し‘Optimize’をクリックする.モニター上に鮮明な網膜断層像が描出されたのを確認して‘Capture’をクリックすると撮影が完了する.これらの操作はほとんどマウスのみで行え,習熟が比較的容易であることが長所である.CirrusHD-OCTの撮影モードを表3に示した.5Linerasterモードでは共焦点眼底画像で測定部位をリアルタイムに観察しながら,2秒以内でAスキャン4,096本からなる高解像度Bスキャンが5つ得られる.3D画像を構築するコンボスキャンでは中心窩を含む図8CirrusHDOCTの外観図9CirrusHDOCTの測定画面①撮影モードを確認,②Chinrest,③屈折値の設定,④Optimize,⑤Captureの順序で撮影を行う.表3CirrusHDOCTの撮影モード撮影モード目的Aスキャン数Bスキャン数網膜疾患5Lineraster5つのBスキャン(2次元断層像)5×4,0965MacularCube512×128Combo黄斑部(6×6mm)の3次元断層像512×128128MacularCube200×200Combo黄斑部(6×6mm)の3次元断層像200×200200———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,20086093.実際の使用経験a.2次元断層像5Linerasterモードで撮影した健常眼における黄斑部の2次元断層像では網膜内のすべての層構造が明瞭に描出された(図10).また各網膜疾患でも病変が鮮明に描出できた(図11).b.3D画像コンボスキャンで撮影した3D画像では連続した2次元断層像を水平方向,垂直方向,鉛直方向(Cスキャンもしくはenface像)に観察できた(図12).また,得られた3D画像からカラー網膜厚マップを作成し疑似カラー画像で表現できた.この結果は眼底像にさらにカラ(33)図10CirrusHDOCT(5Linerasterモード)で撮影した高解像度2次元断層像図11CirrusHDOCTで撮影した代表的な網膜疾患の2次元網膜断層像A:黄斑円孔,B:黄斑上膜,C:中心性漿液性脈絡網膜症,D:糖尿病黄斑浮腫.ABCD図12CirrusHDOCT(コンボスキャンモード)の解析プログラム(Advancedvisualization)OCTで撮影した共焦点眼底画像(①)で病変を確認しながら,撮影した連続2次元断層像を水平方向(②),垂直方向(③),鉛直方向(Cスキャンもしくはenface像)(④)に順次観察できる.図13CirrusHDOCT(コンボスキャンモード)の解析プログラム(Macularthicknessanalysis)ドルーゼンを認めた症例.①共焦点眼底画像と網膜厚マップの重ね合わせ画像,②網膜厚,③3D網膜厚マップ,④内境界膜レベルのセグメンテーションマップ,⑤網膜色素上皮レベルの3Dセグメンテーションマップ.———————————————————————-Page8610あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008断層像とカラー眼底を同時撮影できる[OCT+fundus]を選択し,さらにスキャンモード(表4)や走査幅を設定する.同時に,被検者の顔の高さに撮影台の高さを合わせる.モニターで撮影眼の瞳孔中心が光軸にくるようーセグメンテーションマップを作成し病変を3次元的に描出できた(図13).また,CirrusHD-OCTではすでに撮影既往のある被検者に関しては,自動的に前回測定位置をスキャンできるRepeatScanとよばれる機能を有しているため,2回目以降のスキャンを簡便化しフォローアップを容易に行うことができた(図14).C.3DOCT10001.3DOCT1000の仕様3DOCT-1000はTOPCON社のSD-OCTであり,SD-OCTと無散瞳眼底カメラが一体化し無散瞳撮影が可能である(図15).最近,3DOCT-1000よりさらに高分解能で高速撮影が可能な3DOCT-1000MarkIIが発売された.2.検査方法まずモニター上で患者氏名やIDなどのデータを入力し,‘スキャン開始’をクリックする.マウスを用いてモニター上で撮影条件を設定する.撮影の際は基本的に(34)図153DOCT1000の外観図14近視性脈絡膜新生血管のCirrusHDOCT画像A:治療前.2次元断層像ではやや低輝度の新生血管と網膜下液を認め,疑似カラーで表示した3D網膜厚マップでは新生血管に一致した網膜肥厚を認める.B:ベバシズマブ硝子体内投与後1週間.C:ベバシズマブ硝子体内投与後2カ月.新生血管は縮小し,網膜下液が消失した.3D網膜厚マップでも治療効果が一目瞭然である.ABC表43DOCT1000の撮影モード撮影モード目的Aスキャン数Bスキャン数網膜疾患Linescan単一のBスキャン(2次元断層像)1×1,024,1×2,048,1×4,0961Crossscan2つのBスキャン2×1,024,2×2,04823Dscan黄斑部の3次元断層像512×128,256×256,512×64,512×32128,256,64,32Radialscan黄斑部の同心円測定6×1,024,6×2,0486———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008611けるように説明する.なお,屈折値はカメラに設置された調節ダイアルを手動で調整する.モニター上の網膜断層像と眼底画像が鮮明に描出されたのを確認し,ジョイスティック上部の撮影スイッチを押すと撮影が完了する.CrossscanモードではAスキャン1,024本もしくは2,048本からなる2つの2次元断層像が得られる(図にジョイスティックを手動で動かして位置を調節してモニター上に眼底像が表示されるように誘導し,被検者の眼底のアライメントと奥行きを調整する.被検者からは固視灯(大小を調節可能)が見えるためそれを固視し続(35)図18ポリープ状脈絡膜血管症の3DOCT1000画像上段:治療前.眼底写真ではポリープ状病巣に一致した赤橙色隆起性病変を認め,2次元断層像(垂直方向)および3Dマップではポリープ状病巣とそれに伴う網膜色素上皮離を認める.下段:PDT(光線力学的療法)後1カ月.ポリープ状病巣とそれに伴う網膜色素上皮離が軽減している.aabcabcbcdef図163DOCT1000(Crossscanモード)による2次元網膜断層像中心性漿液性脈絡網膜症の症例.①カラー眼底写真,②2次元網膜断層像,③患者およびスキャン情報,④網膜厚が表示される.図17黄斑円孔の3DOCT1000画像A:眼底写真,B:2次元網膜断層像,C:3Dマップ.OCTの断層画像が無散瞳カラー眼底画像のどの部位に相当する所見かを正確に把握することができる.ABC———————————————————————-Page10612あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008ることができるのが当機種の最大の長所である.b.3D画像3Dscanモードで得られた3D画像から,疑似カラーで表示した3D網膜厚マップを作成できた(図17C).また,治療前後の経過を2次元断層像および3D網膜厚マップで評価することができた(図18).なお,当機種では網膜色素上皮や内境界膜レベルだけでなく,視細胞内節外節境界部レベルでもセグメンテーションを行うことができる.III問題点と今後の展望今回紹介した各社のSD-OCTは同等に高い性能を有している.このため画像データとしては非常に有用であるが,一方でSD-OCTでは病変描出力が向上し緻密な3次元測定が可能となった分,データ量が複雑で膨大となることが問題点としてあげられる.撮影自体は速くても3D画像の構築や解析にはいくぶん時間がかかり,外来の診察中に有用な情報のみを短時間で見ることは現時点では容易ではない.膨大なデータのなかからいかに効率よく有用な情報を抽出し表示するかは今後の課題である.また画像解析ソフトウェアの開発も発展途上であり,今後はSD-OCTの性能を最大限に活用し臨床に生かせる経過観察用プログラムなどの開発も進めば,真に有用な臨床診断装置として進化していくものと考えられる.16).2次元断層像1つ当たりの撮影時間は約0.040.05秒である.なお,当機種でも複数(4枚もしくは8枚)のBスキャン画像の加算平均処理を行うことにより画質がさらに向上する.加算平均処理は撮影終了直後に速やかに行うことができる.3Dscanモードでは,撮影範囲を決めて3D画像を取得できる.具体的には中心窩を含む3mm,4.5mmもしくは6mm平方の領域に512×128,256×256,512×64または512×32(水平×垂直)の格子状Aスキャンを行って3D画像を得る(図17).3DOCT-1000も充実した3次元解析ソフトが開発されてきており,得られた3D画像からカラー網膜厚マップやカラーセグメンテーションマップを作成できる.また,同一患者の左右眼を比較したり,同一眼の経時的変化を表示できるため,治療経過を容易に把握することができる.TOPCON社の画像ファイリングシステム(IMAGEnet)と専用ソフトウェアを使用すれば結果を診察室で閲覧,解析することができ他の検査結果とともに一元管理ができる利点もある.3.実際の使用経験a.2次元断層像Crossscanモードで撮影した黄斑部の2次元断層像では他機種と同等に網膜内のすべての層構造が明瞭に描出された(図16,17B).OCTの断層画像が無散瞳カラー眼底画像のどの部位に相当する所見かを正確に把握す(36)