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写真:結膜リンパ腫

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???0910-181008\100頁JCLS(75)羽藤晋国立病院機構東京医療センター写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦287.結膜リンパ腫図2図1のシェーマサーモンピンク色の真性リンパ腫図1左眼結膜円蓋部の悪性リンパ腫サーモンピンク様の色調でやや膨隆している.病理組織診断でMALTリンパ腫と診断された.図3MALTリンパ腫(弱拡大)異型的なリンパ球がびまん性に増生している.濾胞内への浸潤傾向のため濾胞構造は不明瞭となっており,単調に増殖する像を示している.図4MALTリンパ腫(強拡大)腫瘍細胞は中型の大きさの核を有し,胞体は淡明である.核内に淡明の偽封入体構造(Dutcher体:矢印)を有する細胞が多数みられ,形質細胞への分化傾向を示している.Dutcher体は,核の湾入により細胞質が封入体のようにみえる構造である3).———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(00)リンパ増殖性疾患は良性か悪性,原発性か転移性,さらには病理組織の形態学的,免疫学的,分子生物学的所見により分類される.良性のリンパ増殖性疾患は反応性リンパ過形成(reactivelymphoidhyperpla-sia:RLH)とよばれ,悪性のリンパ増殖性疾患は悪性リンパ腫(malignantlymphoma)と総称される.結膜におけるRLHと悪性リンパ腫の臨床所見は非常に似ており,片眼あるいは両眼の球結膜あるいは結膜円蓋部にサーモンピンク色の隆起性の充実性病変として認められる(図1).異物感などの自覚症状はないことが多い.慢性結膜炎やアレルギー性結膜炎などの病名で長く治療されていることがある.特徴的な外観から他の結膜腫瘍と鑑別が必要なことは少ないが,悪性か否かは臨床所見から鑑別することは不可能であり,診断には腫瘍生検による病理組織診断が必須である.結膜はリンパ節を欠く節外組織であるが,粘膜に固有のリンパ装置(mucosa-associatedlymphoidtissue:MALT)をもっており,結膜の悪性リンパ腫は,ほとんどがMALTを基盤として発症するMALTリンパ腫である1).発育が緩徐で,粘膜局所に限局するなどの臨床的特徴を有することから,他のリンパ腫から独立したグループとして扱われる2,3).組織学的には,低悪性度,濾胞(胚中心)内への浸潤,形質細胞への分化傾向(Dutcher体の存在),B細胞タイプなどの特徴をもつ(図3~5)2,3).一般に悪性リンパ腫は単クローン性増殖であるのに対し,RLHは多クローン性増殖であるが,ときにMALTリンパ腫とRLHの鑑別は困難である.RLHをMALTリンパ腫の前駆病変であるとする考え方もある3).診断には通常の病理検査だけでなく,免疫組織学的検査やサザンブロットによる遺伝子再構成の有無,フローサイトメトリーが確定診断に用いられる.フローサイトメトリーを用いた表面マーカーの単クローン性増殖の証明は,感度,特異度とも良好であると報告されている4).悪性リンパ腫と診断されたら原発巣がないか全身検索を行う.MALTリンパ腫は胃や肺に生じやすいので,消化管内視鏡,胸部腹部CT(コンピュータ断層撮影),ガリウムシンチグラフィ,骨髄生検などが行われる.悪性リンパ腫の外科的完全切除は困難であるが,放射線感受性が高く化学療法にもよく反応する.放射線治療は30Gy程度の総線量が適当であるとされる4).MALTリンパ腫の予後は良好で,放射線治療を行ったMALTリンパ腫では5年生存率は91%であったとする報告がある5).文献1)ChoEY,HanJJ,ReeHJetal:Clinicopathologicanalysisofocularadnexallymphomas:extranodalmarginalzoneB-celllymphomaconstitutesthevastmajorityofocularlymphomasamongKoreansanda?ectsyoungerpatients.????????????73:87-96,20032)萩原正博:悪性リンパ腫.眼科臨床プラクティス14,眼病理組織像の読み方(丸尾敏夫ほか編),p107-109,文光堂,19943)吉野正:反応性リンパ組織過形成vsMALTリンパ腫.眼科臨床プラクティス8,今すぐ役立つ眼病理(石橋達朗ほか編),p107-109,文光堂,20064)?元暢:結膜の展望2003年度.眼科49:111-126,20075)UnoT,IsobeK,ShikamNetal:Radiotherapyforextran-odal,marginalzone,B-celllymphomaofmucosa-associat-edlymphoidtissueoriginatingintheocularadnexa:amultiinstitutional,retrospectivereviewof50patients.???????98:865-871,2003図5MALTリンパ腫(免疫染色)B細胞マーカーで陽性に染色され,B細胞タイプのリンパ腫であることがわかる.

結膜アレルギー重症化のメカニズムはここまでわかった─ゲノムからみた重症化因子─(再掲載)

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page10910-181008\100頁JCLSIアレルギー疾患と遺伝子20世紀後半から今日に至るまで,分子生物学的手法が遺伝学的解析に応用され,多くの単一遺伝子疾患による遺伝子病の原因遺伝子が同定されてきた.さらに今日のポストゲノムの時代に至ってはその原因遺伝子の特定は以前にも増して迅速に行えるようになってきた.しかし,このありふれたいわゆるcommondiseaseに関しての原因遺伝子や重症化因子にかかわる解析にはいまだ困難をきわめている.たとえば,疾患の原因となる特定の候補遺伝子を対象とした解析結果を解釈するうえだけでも,それぞれの報告により結果が異なる場合がある.結局のところ,われわれは,人種差,地域差を超えた包括的かつ十分な理解を得ることにいまだ難渋している.なぜ,それほど困難であるのか.一つには,アレルギー性結膜炎やアトピー性皮膚炎といったcommondiseaseは多因子疾患であり,遺伝因子と環境因子が複雑にからみあって発症することが原因であると考えられる.このような複雑な疾患の原因あるいは素因となる遺伝子をとらえるためにどのような方法がとられるのであろうか.まず,発症や重症化にかかわる原因遺伝子を特定するうえでは,症例対照研究,大家系や兄弟例を用いた罹患同胞対解析や連鎖解析といった遺伝学的方法が用いられる.これらの手法はきわめて重要な知見を与えてくれる.たとえば,一般的に解析の初期の段階で用いられる連鎖解析は,患者間で共通して遺伝しているマイクロはじめにアレルギー性結膜炎の有病率は高くほぼ5人に1人が罹患している.その病態は,軽度から重症のものまでさまざまであるが,重症化しやすいタイプの病態は,結膜の増殖性病変の有無,アトピー性皮膚炎の有無により春季カタル,アトピー性角結膜炎に分類される.これらの頻度は,アトピー性角結膜炎が13.9%,春季カタルが1.6%となっている(1996年,日本眼科医会アレルギー眼疾患調査研究班).重症例を含めアレルギー性結膜炎は,なぜこれほど有病率が高いのであろうか.いったいアレルギー性結膜炎は,遺伝的な素質によりなりやすかったりあるいはなりにくかったりするのであろうか.あるいは,環境要因として発症が規定されるのであろうか.同様に重症化のしやすさといったことは遺伝的にある程度きまっているのだろうか,それとも環境要因により規定されるのであろうか.ここで,重症化症例の特徴を考えてみると,重症例においては,喘息やアトピー性皮膚炎の合併例が多く,特にアトピー症状の悪化は眼症状の悪化につながりやすいことに思い至る.では,全身的なアレルギー疾患は同様な観点からどの程度わかっているのだろうか.このような素朴な疑問に答えるため,アレルギー性結膜炎のみならず,アレルギー疾患全般に対して多くの努力が費やされてきた.本稿では,これまでの道筋と成果をスナップショットし,分子遺伝学的病態としてどこまでわかってきたかに関して概略を提示してみたい.(29)???*DaiMiyazaki:鳥取大学医学部視覚病態学〔別刷請求先〕宮?大:〒683-8504米子市西町36-1鳥取大学医学部視覚病態学特集●眼アレルギーの知識はいまあたらしい眼科25(2):163~170,2008結膜アレルギー重症化のメカニズムはここまでわかった─ゲノムからみた重症化因子─?????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????宮?大*本誌Vol.25,No.2の特集「眼アレルギーの知識はいま」のうち,宮﨑大先生の論文(p.163~170)中に印刷工程で“文字(a,b,e,g)の脱落(p.166,168,169)”が生じました.宮﨑先生並びに読者諸先生には大変ご迷惑をおかけいたしました.深くお詫び申しあげますと共に,以下に訂正後の論文を「再掲載」いたします.再掲載———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008(30)伝子の特定にきわめて有効に活用できる.機能面では,SNPは,その生じた部位によって表現型への影響が異なり,特にアミノ酸変化が生じる翻訳部位や,遺伝子発現量に影響する調節領域に存在する場合,表現型へ大きく影響することになる.IIアレルギー疾患における染色体と遺伝子の関連これまでアレルギー疾患においてどのような染色体と遺伝子の関連が判明しているのであろうか.表1には,アトピー,喘息に関して,関連性がある,あるいはないと報告された遺伝子群の要約のアップデートをまとめてみた.関連性があると報告された遺伝子は,cholinergicreceptormuscarinic3(CHRM3),インターロイキン-4(IL-4),CD14,IL-13,b2アドレナジックレセプター(ADRB2),HLA-DRs,HLA-DQs,HLA-DBs,インターフェロンgレセプター1(IFNGR1),glutathioneS-transferase(GSTP1),FceRIb鎖,一酸化窒素合成酵素1(NOS1),STAT6,cysteinylleukotrienerecep-tor2(CYSLTR2),IL-4レセプター(IL-4R),RANT-ES,血小板活性化因子分解酵素(PAFAH),NOS2A,トロンボキサンA2レセプター(TBXA2R),インターフェロンgレセプター2(IFNGR2)である(表1にsと示した).一瞥してわかるのは,多くの候補遺伝子が調べられたにもかかわらず実際に有意な関連性が証明されたものはそれほど多くはないという点であろう.染色体でみた場合は,1番,5番,6番,11番,12番,13番,16番,17番,19番,21番に関連遺伝子が認められている.このなかで関連性が検出された遺伝子(s)が比較的多い染色体は5番と17番であり,それぞれ特徴的な遺伝子領域を含んでいる.しかも,興味深いことに5番と17番はNishimuraら1)によって報告されたアレルギー性結膜炎の関連染色体とも一致している.これらの候補領域にいったいどのような遺伝子があるのであろうか.まず,前述の5番染色体には,ヘルパーT細胞(Th)2型のアレルギー関連サイトカイン遺伝子が多く認められる.インターロイキンIL-3,IL-4,IL-5,IL-13は肥満細胞の分化/活性化/アポトーシス抑制,B細胞の活性化,IgEの産生,好酸球の活性化などに深くかサテライトマーカーといわれる単純なくり返し配列を標的として設置しそれを疾患のマーカーとして代用して解析する手法である.この手法をベースに,染色体11q13にはどうもアトピー関連遺伝子の一つが位置していることが判明し,実は11q13にある高親和性免疫グロブリンE(IgE)レセプター(FceRI)b鎖がアトピーと関連することが1994年に初めて報告され大きな注目を浴びた.高親和性IgEレセプターb鎖は,肥満細胞上に発現し,アレルゲン特異的な脱顆粒をひき起こすうえでの要となるIgEのレセプターサブユニットである.つぎに,全ゲノムを網羅的に解析し,関連する領域がないか調べられるようになってきた.その流れとして,アトピーや喘息患者の全ゲノムを対象にした連鎖解析の結果もいくつか報告されている.共通して認められた領域は,ほぼ5q,6p,12q,13qといった領域であるが,その他同定された染色体領域も含め,その結果は,必ずしも一致していない.おそらく環境背景が異なること,人種差などがその原因として考えられよう.アレルギー性結膜炎に関しては,発症は遺伝的に規定されているのだろうか.これに関しては,全ゲノム解析ではないが,喘息などアレルギー関連遺伝子の存在が推定されていた5,6,11,12,16,17番染色体を対象に罹患同胞対法で解析した報告がある1).その結果によれば,アレルギー性結膜炎との関連は,5,16,17番染色体に認められ,弱い関連が,6番染色体にあると報告された.一般に,連鎖解析のみでは,遺伝子同定まで至ることは困難である.このため,通常,連鎖不平衡を手がかりに,さらに候補領域を狭めることになる.連鎖不平衡解析は,異なった家系であっても共通の遺伝子変異がかかわっているとの前提(仮定)のもと,疾患と遺伝子変異の関連性を探る手法である.特に最近では,一塩基多型SNP(singlenucleotidepolymorphism)のデータベースが整備され疾患遺伝子との関連性の解析が以前にもまして効率的に行われるようになってきた.SNPとは,数百から千塩基対に一カ所程度存在する多型である.SNPは連鎖解析に用いられるサテライトマーカーとは,大きく異なった特徴がある.すなわち,かなり高密度にゲノム上に分布し,かつ,populationにより特定のパターンの配列で存在するという点である.こヱ———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008???(31)表1アレルギー疾患と関連する遺伝子遺伝子病態染色体関連の有意性AGTアトピー1FCER1A*1気道過敏性,アトピー1FCER1G*2気道過敏性1CHRM3喘息,アトピー1sPTGS2喘息,アトピー1LELP1喘息,アトピー1IL-10喘息,アトピー1FCGR2Aアトピー1IL-12RB2アトピー1SELPアトピー1CTLA4喘息,アトピー2CD28喘息,アトピー2IL-1aアトピー2IL-1RAアトピー2IL-1b喘息,アトピー2SLC11A1アトピー2CCR5喘息,アトピー3BCL6アトピー3CD86喘息,アトピー3MUC4喘息,アトピー3TLR9アトピー3GYPAアトピー4IL-2アトピー4ADRB2喘息,アトピー5IL-4喘息,アトピー5sSPINK5アトピー5CD14アトピー5sIL-13アトピー5sIL-3喘息,アトピー5IL-5喘息,アトピー5ADRB2喘息5sLTC4S喘息,アトピー5IRF1喘息,アトピー5CSF2喘息,アトピー5HAVCR2アトピー5ITKアトピー5TAP1アトピー6HLA-DRs喘息6sHLA-DQsアトピー6sHLA-DBsアトピー6sEDN1アトピー6TNFアトピー6LTAアトピー6ARG1喘息,アトピー6TNF喘息,アトピー6HLA-Cアトピー6TNFアトピー6IFNGR1アトピー6s遺伝子病態染色体関連の有意性IL-6喘息,アトピー7NAT2アトピー8DEFB1喘息,アトピー8TLR4喘息,アトピー9PLAU喘息,アトピー10MS4A2喘息,アトピー11SCGB1A1アトピー11GSTP1喘息11sIL-18喘息,アトピー11GPR44喘息,アトピー11MUC2喘息,アトピー11MUC5AC喘息,アトピー11MUC5B喘息,アトピー11FCER1B*3アトピー11sTIMELESS喘息,アトピー12AICDAアトピー12NOS1喘息12sIFNGアトピー12STAT6喘息12sCYSLTR2アトピー13sARG2喘息,アトピー14IGHG1アトピー14RAGEアトピー14IL-16喘息,アトピー15IL-4Rアトピー16sCX3CL1喘息,アトピー16CARD15喘息,アトピー16SPNアトピー16IL-21Rアトピー16RANTES喘息,アトピー17sPAFAH喘息17sCCL2喘息17sCCL11喘息,IgE17sACEアトピー17NOS2Aアトピー17sPAFAH喘息,アトピー17LILRB4アトピー19TBXA2R喘息19sFCER2アトピー19C5R1喘息,アトピー19IFNGR2喘息21sCSF2RB喘息,アトピー22MIF喘息,アトピー22IL13RA1喘息,アトピーXCYSLTR1喘息,アトピーX*1高親和性IgEレセプターa鎖(FCER1A).*2高親和性IgEレセプターg———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008(32)意な関連を示したことと一致している.また,実際,春季カタルにおいてもIL-4の産生量が増大することが知られている.詳細は,福田ら2)のreviewに譲るが,重症性アレルギー性結膜炎の特徴である結膜のリモデリングをひき起こすうえで,IL-4は,線維芽細胞の増殖,遊走,アポトーシス抑制,Ⅰ型コラーゲン,Ⅲ型コラーゲン,フィブロネクチンなどの細胞外マトリックス成分の合成促進,TIMP-1,TIMP-2の産生促進といったきわめて重要な役割を果たす.アレルギー性結膜炎との関連が示されたもう一つの染色体は,6番染色体であり,ここにはHLA-DRs,DQs,DBsといったクラスII遺伝子群に加え,IFNGR1との関連性が報告された.クラスII遺伝子は,抗原提示細胞により提示されるアレルゲンがCD4T細胞上のT細胞レセプターを活性化するうえで必須の遺伝子であり,その多型がアトピーなどの発症に関連するであろうことは理解しやすい.最近では,松田らにより,IFNGR1が眼病変を伴うアトピー性皮膚炎やアトピー性白内障と関連することが報告され3),白内障発症はiNOSの増大によるものではないかと示された.この場合インターフェロンgとLPS刺激により水晶体上皮細胞で産生されるiNOSが白内障発症を誘導する可能性がある.一方,マウスアレルギー性結膜炎モデルでみた場合,IFN-gの阻害により好酸球浸潤が抑制されることも報告されている4).では,他の因子はどうであろうか.松田らの報告においては興味深いことに,眼症状をもつアトピー患者において肥満細胞の活性化に強く関与する高親和性IgEレセプターb鎖や,IL-13との関連性が認められなかった.このことは,アレルギー関連遺伝子群は,組織特異的な役割をもつものとそうでないものに分けられる可能性があることを示唆している.IIIアレルギー性結膜炎とサイトカインこのように,アレルギー発症に関連して重症化に寄与する可能性のある因子群が遺伝学的アプローチから判明しつつある.アレルギー性結膜炎の病態を理解するうえでもこれらの知見はきわめて重要であると考えられる.ただし,ここで留意すべき点がある.たとえば,有意な関連性が認められなかったと報告された遺伝子であってかわるサイトカイン群であり,このなかでTh2型細胞の活性化やIgEの産生に強く関与するIL-4,IL-13の関連性が報告された.さらに,5番染色体では,CD14とADRB2の関連性が報告された.CD14は,グリコシル?ホスファチジルイノシトール(GPI)結合型単鎖膜糖蛋白であり,リポポリサッカライド(LPS)とLPS結合蛋白の複合体のレセプターとして機能する.おもに単球やマクロファージ,Langerhans細胞や濾胞樹状細胞に発現し,細菌由来のLPS刺激に応答して免疫応答を制御する役割がある.意義としては,幼少時の細菌感染によりアトピーになりにくい体質になるといった現象に関連している可能性があろう.ADRB2は,内因性のカテコールアミンに反応するb-agonistのレセプターであり,喘息に特異的な因子と考えられる.17番染色体に位置する関連遺伝子は,RANTES,PAFAH,NOS2Aである.RANTESは,重要なCCケモカインの一つであり,そのレセプターCCR1,CCR3,CCR5を介してこれらを発現するマクロファージ,好酸球,肥満細胞,Th1型細胞を活性化する.血小板活性化因子(PAF)は,気管支喘息の種々の症状の発症に関与している.PAFAHは,PAFの分解をする酵素であり,喘息では,PAFの増大とともにPAFAHレベルの低下が知られている.InducibleNOsynthase(NOS2A,iNOS)は,一酸化窒素合成酵素であり,喘息の重症度,好酸球レベルとの相関が報告された.さらに興味深いことにiNOSは,染色体17q11.2-q12にあるCCchemo-kineclusterregionに存在する.ここには,eotaxin-1,MIP-1a,MCP-1,MCP-2,MCP-3,MCP-4,HCC-1,RANTES,I-309,など多くのCCケモカイン群が位置しており,eotaxin-1(CCL11)やMCP-1(CCL2)は喘息との関連が示唆されている.特に,春季カタルなど重症のアレルギー性結膜炎において増大が認められ,かつその病理像に大きく寄与していると考えられるCCケモカインは,eotaxin-1,MIP-1a,MCP-1,RANTESなどであり,これらの因子群の病態への関与が遺伝的にも示唆される.アレルギー性結膜炎に関してNishimuraら1)が報告したなかで残りの染色体領域は,6番と16番である.まず,16番染色体には,IL-4レセプター(IL———————————————————————–Page5あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008???(33)アレルギー性結膜炎の重症化を考えるうえでサイトカインおよびそれぞれの炎症細胞の関連性を図1にまとめた.このなかで肥満細胞は,即時相のかゆみや浮腫といった症状を生じさせる中心となる炎症細胞である.肥満細胞はさらにIL-4,IL-9,IL-10など多くのTh2型炎症性サイトカインを合成するのみならず,トリプターゼ,キマーゼなど好酸球や好中球浸潤,さらに結膜の乳頭形成などリモデリングにも関与する大量のプロテアーゼを放出する.また,活性化好酸球と同様,組織障害性のmajorbasicproteinも合成する.つまり,肥満細胞自体が重症化の重要な一翼を担っていることは想像に難くない.解析するモデルによりその寄与は異なると考えられるが,筆者らの作製した肥満細胞欠損マウスを用いたアレルギー性結膜炎においては,欠損により好酸球浸潤が有意に抑制され,肥満細胞を戻してやること(移入)も,現実として関連性がまったくないというわけではない.実際,報告により関連性の有無が異なる場合もある.これは環境因子,遺伝的背景両方が影響していると考えられよう.多因子疾患の場合,環境因子,遺伝的背景といったパラメータを制御したうえで解析する必要性もある.そこで,このためには細胞レベルの網羅的解析に加え,モデル動物による解析が必須であり,これらが遺伝学的アプローチの解析結果を補完しあうものとなろう.臨床でみた場合,実際春季カタルといった重症のアレルギー性結膜炎で増大するサイトカインは何であろうか.涙液中には,IFN-g,IL-1b,IL-2,IL-4,IL-6,IL-7,IL-6sR,IL-12,IL-13,eotaxin-1,eotaxin-2,MCP-1,MIP-1d,M-CSF(macrophage-colonystimulationfoctor)の増大が報告されている5,6).ここで図1アレルギー性結膜炎重症化のメカニズムB細胞Th2細胞好中球線維芽細胞肥満細胞好酸球IL-8IL-8MIP-1MIP-1αTNF-αGM-CSFMIP-1αRANTESEotaxin-1Eotaxin-1Eotaxin-1MCP-1IP-10MIGIL-4TNF-αIL-4IL-6IL-12GM-CSFTNF-αIL-5IL-4IL-6IL-10SOCS3CCR2CCR1CCR1CCR3CCR3CCR2CCR5CCR1CCR3CXCR1CXCR3CXCR2CXCR2CXCR4GATA3抗原提示細胞単球/マクロファージ———————————————————————-Page6———————————————————————-Page7———————————————————————-Page8???あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008(36)???????50:195-204,20066)LeonardiA,CurnowSJ,ZhanHetal:Multiplecytokinesinhumantearspecimensinseasonalandchronicallergiceyediseaseandinconjunctival?broblastcultures.????????????????36:777-784,20067)YoshikawaM,TamariM,HasegawaKetal:MarkedincreaseinCCchemokinegeneexpressioninbothhumanandmousemastcelltranscriptomesfollowingFcepsilonreceptorIcross-linking:aninterspeciescomparison.??????100:3861-3868,20028)MiyazakiD,NakamuraT,TodaMetal:Macrophagein?ammatoryprotein-1alphaasacostimulatorysignalformastcell-mediatedimmediatehypersensitivityreactions.?????????????115:434-442,20059)MiyazakiD,TominagaT,Kakimaru-HasegawaAetal:Therapeutice?ectsoftacrolimusointmentforrefractoryocularsurfacein?ammatorydiseases.?????????????,2007Sep25[Epubaheadofprint]文献1)NishimuraA,Campbell-MeltzerRS,ChuteKetal:Geneticsofallergicdisease:evidencefororgan-speci?csusceptibilitygenes.????????????????????????124:197-200,20012)福田憲,熊谷直樹,藤津揚一朗ほか:アレルギー性結膜膝下におけるリモデリング.日眼会誌111:699-710,20073)MatsudaA,EbiharaN,KumagaiNetal:Geneticpoly-morphismsinthepromoteroftheinterferongammareceptor1geneareassociated

サリン中毒の眼症状と治療

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page10910-181008\100頁JCLS事件も軍事的な出来事であり,また少数例のため,眼の臨床像に関し詳細な報告はなされていない4,5).そのような意味で,1994年6月に松本市で起きたサリン事件,1995年3月に起きた東京サリン事件は医学的な面で,貴重な事例となった6~15).IIサリンの特徴サリンの化学名はisopropylmethylphosphono?uori-dateで,常温で無色,無臭の液体で,水に溶けやすく揮発性が高いため溶剤中で保存される.作用は組織中のコリンエステラーゼの働きを抑制することにより,アセチルコリンが過度に蓄積し,発症する.皮膚や粘膜に少量でも直接接触すれば死に至る.空気中に散布されれば,呼吸器や結膜粘膜より2~7分以内に体内に吸収される.タブン,ソマン,サリン,VXガスのなかではサリンが一番気化しやすく,毒性ではタブンを1とすると,サリンは2倍,ソマンは4倍,VXは20倍といわれている.サリンは作製の容易さより,米国軍,ロシア軍に多量に保存されているといわれている.IIIサリンによる眼症状1.急性期の自覚症状(表1)急性期の自覚症状としては,訴えの多さの順に,1)暗い,2)見にくい,3)近くを見ると眼が痛い,4)眼痛,はじめに1995年3月20日に東京の都心部で起きた地下鉄サリン事件は,一般市民に対して猛毒ガスである「サリン」が使用されたきわめて異常な事件であった.事件当日,被害者が最も多かった場所が地下鉄築地駅であり,聖路加国際病院に近かったため,当院では,当日641人の患者を治療し,その後1週間で,1,410人の患者を診療した.眼科では,そのうちの約600人の患者を治療した.その際,患者から得られた眼症状と,手探りで見出した治療法を礎に述べてみる.Iサリンの歴史神経ガスは有機リン系の農薬の研究中に発見され,化学兵器として第2次世界大戦前から戦中にかけて開発された.1936年にタブン(Tabun),1937年にサリン(Sarin),1944年にソマン(Soman),第2次世界大戦後の1952年にVXガスが開発された1~3).いずれのガスも中枢ならびに末?神経系のアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害し,呼吸筋を麻痺させ,少量で死に至らせるものである.実際にサリンが用いられたのは,イラク軍がクルド人住民の大量虐殺を行ったときとされているが,詳細は不明である.その他,サリンは漏れやすいガスのため,米国国防省の発表では1950~1960年にかけて1,000件近い漏洩事故が起きており,1969年には沖縄で米国の兵士23人が中毒を起こしたとのことであるが,いずれの(69)???*TatsuoYamaguchi:聖路加国際病院眼科〔別刷請求先〕山口達夫:〒104-8560東京都中央区明石町9-1聖路加国際病院眼科特集●眼科における薬剤副作用あたらしい眼科25(4):491~496,2008サリン中毒の眼症状と治療???????????????????????????????????????????????????????????????????山口達夫*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(70)5)頭痛後頭部痛を訴える者が多かったが,縮瞳の軽減とともに改善した.6)見ようとしても集中力がない調節力の不全を主とした不定愁訴的な自覚症状である.縮瞳の軽減とともに改善した.7)異物感毛様充血や結膜充血によって生じたものと,少数例ではあるが,角膜や結膜にフルオレセインでびまん性表層性に染まる例に多くみられた.8)視野が狭い強度の縮瞳によって生じたもので,散瞳薬の点眼によって速やかに改善した.9)後頭部がしめつけられる縮瞳によるものであるが,事故後2週間以上経過し,後頭部痛が消失したあとでも認められ,不定愁訴的に長期(3カ月)にわたり自覚された.10)近くを見ると長続きしない急性期の「3)近くを見ると眼が痛い」に似た訴えであるが,事故後1~2カ月以上経過しても認められた.11)眼の違和感受傷後2週間以上経過し,他覚的な症状がなくても「眼の違和感」を訴える患者がいるが,原因は不明である.精神的なものも含めて不定愁訴的な訴えであり,事故後10年以上経過しても持続する.5)頭痛,6)見ようとしても集中力がない,7)異物感,8)視野が狭い,などがある.2.亜急性期の自覚症状受傷後2週間以上を経るとさらに,9)後頭部がしめつけられる,10)近くを見ると長続きしない,11)眼の違和感,が加わった.3.慢性期の自覚症状受傷後3カ月以上経過すると,12)羞明,13)眼の疲労感が長く自覚された.つぎにおのおのの症状について記す.1)暗い強度の縮瞳によって生じたもので,視覚が喪失する感覚により,患者はかなりの恐怖感を感じた.散瞳薬の点眼により徐々に軽減した.対光反応の出現とともにこの訴えはなくなった.2)見にくい縮瞳と毛様体筋の緊張によって生じたもので,散瞳薬の点眼によって軽減するが,緊張によって生じたものは改善に日数を要した.3)近くを見ると眼が痛い調筋力の変化によるものと思われた.対光反応の出現とともに改善した.4)眼痛毛様痛のほかに充血によって生じた眼表面の痛みも加わって生じたものである.散瞳薬の点眼によって軽減したが,特にミドリンP?(トロピカミド)はフェニレフリンを含むため,毛様充血や結膜充血を軽減させ効果的であった(図1).表1サリンによる急性期の眼の自覚症状1.急性期1)暗い2)見にくい3)近くを見ると眼が痛い4)眼痛5)頭痛6)見ようとしても集中力がない7)異物感8)視野が狭い2.亜急性期9)後頭部がしめつけられる10)近くを見ると長続きしない11)眼の違和———————————————————————-Page3———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(72)は0.55~0.56mmで時間の経過とともに減少傾向にあるが,サリンによるものか,溶剤によるものか,あるいは事故以前から認められたものであるかは不明であり,今後も精査を要すると思われた.アレルギー性結膜炎も同様である.調節力は緊張傾向を示す例が40%と多くあったが,受診のたびに変動を認めた.サリンに化学構造が近い有機リン農薬などの慢性中毒といわれた,いわゆる「佐久の奇病」でも石川16)は近視化を示すとしている.今回のサリンの症例は急性中毒であり,佐久の有機リン農薬は慢性中毒であるが,いずれにしても毛様体を中心に異常をきたしたものと考えられる.6.受傷後1年の眼所見(表4)受傷後1年が経過しても通院している患者は26人であったが,眼所見では,自覚症状としては眼疲労感(34.6%),視力低下(15.4%)などが主たるものであっことから縮瞳に伴い出現したものと考えられる.7)網膜電図の異常強縮瞳状態では,a波の遅延と反応の低下,b波の増強がみられたが,散瞳すると改善した.受傷後3カ月経過してもb波の形が不完全なsubnormalを示す症例がかなりあったのが,受傷後9カ月までにはほとんど改善した.しかしながら,2年経過してもいまだに波形の異常を示す症例が少数ではあるが認められる.8)視野強縮瞳では20~30?の求心性の狭窄を示した.散瞳状態になれば正常化したが,症例によってはMariotte盲点の拡大,I-2イソプターの低下がみられたがその後正常に復した.9)眼圧の低下眼圧は正常範囲であったが,やや低めであった11).10)調節力の不安定さ調節力は受傷後3~4日の時点ではほぼ正常であったが,受傷後2週間以上経過しても片眼のみ低下している例もあった.3カ月,6カ月と経過を追うと,全体的に緊張状態にある例が多く,また緊張と低下を行き来する不安定な症例もあった.11)角膜厚の増大,角膜浸潤1例であるが,両眼に軽度の角膜浸潤(実質前層)と角膜厚の増大を伴った症例を認めた.角膜中央部の角膜厚は0.560mmくらいで受傷後6カ月でも変化はないが,角膜浸潤は受傷後3カ月で消失した.これらの変化が本当にサリンによるものか否かは不明である.5.受傷後3カ月の眼所見(表3)事故後,当院眼科を受診した患者のなかから無作為に41人(全体の約1割)を抽出し,受傷後3カ月となる1995年6月末に眼科外来を受診してもらい検査を行った.受傷後3カ月の自覚症状としては,疲労感,不快感などの不定愁訴的な訴えが主なものであった.視力の低下はなかった.縮瞳は全体の29%に認められた.対光反応の欠如あるいは遅延は7%に認められた.網膜電図の変化が15.9%に認められたが,縮瞳が主な原因であると思われた.角膜厚の増加を示すものが1例2眼にあった.角膜厚表3サリンガス事故3カ月後の眼所見(41人)視力低下0/82眼(0%)縮瞳24/82眼(29.3%)(瞳孔径4mm以下または左右差0.5mm以上)対光反応の遅延6/82眼(7.3%)網膜電図の異常13/82眼(15.9%)視神経の異常4/82眼(4.8%)(うっ血:2眼,境界不鮮明:2眼)視野異常3/82眼(3.6%)角膜厚の増加2/82眼(2.4%)アレルギー性結膜炎2/82眼(2.4%)表4サリンガス事故後1———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???(73)くであり,点状表層角膜症に対しては眼軟膏,0.1%ヒアレイン点眼,1%コンドロン点眼を用いる.自覚症状のなかで,縮瞳に伴う「暗さ」,「視野狭窄」に対し患者の不安が強いので,散瞳剤を点眼すると少しずつ軽快することを伝え,精神的な不安感を和らげることは大事なことであると考える.おわりに従来,サリンによる被曝は偶発的事故によるものであり,また被曝した人数も少数であったことより,文献的にサリンによる眼症状の記載は少なく,記載されているのは縮瞳,充血,眼痛,視野の変化などであった.しかしながら,1995年3月に東京で起きたサリン事件では当院で多数例を観察することになり,サリンが多彩な臨床像を呈することが判明した.サリン中毒患者の急性期の自覚症状としては,「暗い」,「見にくい」,「近くを見ると眼が痛い」,「眼痛」,「頭痛」,「見ようとしても集中力がない」,「異物感」,「視野が狭い」,などであった.急性期の他覚症状としては,強度の縮瞳,毛様充血,結膜充血,視力低下,浅前房,角膜と結膜のびまん性表層性のフルオレセインの染色,網膜電図の変化,眼圧の低下,調節力の緊張などが主なものであった.なかでも強度の縮瞳がサリン中毒の特徴と思われた.その後の観察で,従来いわれていたよりも一部の症状は長期に及ぶことが判明した.た.他覚症状としては縮瞳(17.3%),対光反応の遅延(15.4%),網膜電図の異常(7.7%)などが主たるものであった.調節力の緊張が54.0%と比較的多数例に認められたが,サリン中毒によるものか否か断定することは困難であった.対光反応の遅延については,文献上,縮瞳が5~6週間続いたとのSidellら3)の報告があるが,筆者らは2名に縮瞳対光反応の欠如を認めた.7.受傷後13年の眼所見現在当院眼科に受診している患者は6名で,そのうち自覚症状を有している者は2名である.1名は強い羞明を自覚しており,体調の良いとき以外はまぶしさで窓のカーテンが開けられず,外出もままならないとのことである.体温調節も困難で自律神経失調症も伴っていると思われる.被曝前はまったく健康体であったとのことである.真面目な方で詐病の可能性はない.眼科的な検査では,現在のところ,異常な所見は認められない.もう1名は眼の疲労感,体の不調を訴えているが,眼科的な検査では異常は認められない.他の4名は自覚的にも他覚的にも異常を認めていない.IVサリン患者への眼科的治療(表5)サリン事件直後に筆者らが報告した6)ごとく,直接曝露では洗浄,洗眼し,ヨウ化プラリドキシム(pralidoxi-meiodine:PAM)または硫酸アトロピンの点滴を行う.ガスの吸引後,患者自身で来院し,全身状態がよく曝露7分以内であれば洗眼をまず行い,7分以上経過している場合には結膜充血がなければ洗眼は不要である.全身状態が悪ければPAMまたは硫酸アトロピンを点滴する.縮瞳に対しては,ミドリンP?点眼またはサイブレジンの点眼を行う.充血に対しては,毛様充血にはミドリンP?点眼を,結膜充血には0.02%フルメトロン点眼を行う.異物感では毛様充血,結膜充血に対しては上記のごと表5サリンの急性中毒患者の眼科的治療直接曝露洗浄,洗眼,PAMまたは硫酸アトロピン点滴ガスの吸引曝露7分以内──洗眼曝露7分以降──結膜充血なければ洗眼不要PAMまたは硫酸アトロピン点滴縮瞳ミドリンP(トロピカミド+フェニレフリン)点眼またはサイプレジン点眼充血毛様充血──ミドリンP点眼結膜充血──0.02%フルメトロン点眼異物感毛様充血──ミド———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(74)4)DunnM,SidellFR:Progressinmedicaldefenseagainstnerveagents.????262:649-652,19895)Rengstor?RH:Visionandocularchangesfollowingacci-dentalexposuretoorgano-phosphates.?????????????????14:115-118,19946)山口達夫,眞鍋洋一,大越貴志子ほか:サリン中毒患者の眼科での対応.日本の眼科66:343-349,19957)山口達夫:聖路加国際病院サリン患者診療報告会から.三.眼症状の取り扱い.日本医事新報3706:47,19958)MoritaH,YanagisawaN,NakajimaTetal:Sarinpoison-inginMatsumoto,Japan.??????346(8970):290-293,19959)YasudaA,YamaguchiT,ManabeK:SarinterrorisminTokyo.?????????????????????????37(Suppl):S943,199610)眞鍋洋一,山口達夫,大越貴志子ほか:サリン患者急性期の眼症状と経過.臨眼50:765-767,199611)KatoT,HamanakaT:Ocularsignsandsymptomscausedbyexposuretosaringas.???????????????121:209-210,199612)野原雅彦,中村道紀,中村公俊ほか:松本市における有機リン系ガス(サリン)中毒の眼症状の解析.臨眼50:769-774,199613)谷瑞子,秦誠一郎,清水敬一郎ほか:サリン曝露後にみられた瞼球癒着.臨眼50:1845-1848,199614)山口達夫:有機リン中毒(サリン中毒)地下鉄サリン事件の臨床と基礎(家城隆次編著),p50-57,診断と治療社,199715)野原雅彦,関島良樹,中島民江ほか:松本サリン事件後の健康診断における眼科所見.臨眼53:659-663,199916)石川哲:公害と眼,有機燐と眼.慢性有機燐中毒症の疫学,臨床及び実験的研究.日眼会誌77:1835-1886,1973筆者らが観察した症例は軽度~中程度の傷害によるものであったと思われ,これらの他覚症状も,さらに重症な症例では変わる可能性があると考えられる.また,溶剤が変われば臨床像が多少修飾されて変わる可能性があると考えられる.眼科的治療は,全身症状を伴わなければ,縮瞳と充血に対する処置を主に行えばよいと考えられる.受傷後2年が経過しても対光反応が不完全な患者は少数ながらおり,調節力が不安定な患者はかなりの数にのぼった.受傷後約13年が経過し,眼科的に積極的な治療を要する症例はないが,羞明や眼精疲労的な訴えは続いており,外傷後精神的ストレス症候群などの精神的な障害も含め,今後とも長期の観察が必要である.文献1)GrobD:Themanifestationsandtreatmentofpoisoningduetonervegasandotherorganicphosphateanticholin-esterasecompounds.???????????????????98:221-239,19562)GrobD,Harv

慢性有機リン中毒-神経感覚器毒性を中心に-

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page10910-181008\100頁JCLSチオン,フェニトロチオン(図1b),ジプテレックス,クロルピリフォス(図1c)などが中心である.急性毒性では縮瞳,痙攣,肺水腫,発汗,腹痛,嘔吐,下痢,失禁,しびれ,などで代表され,ニコチン,ムスカリン作用が起こる.原因物質が明確な場合その診はじめに有機リン化合物(organophosphoruspesticide:以下,OPと略)はリンを含む有機化合物であるが,リンは本来生体にある安全なものから人を死に至らしめる毒性の強いものまである.2008年1月31日にメタミドフォス,ディプテレックスなどで中毒した症例が日本で発生し大問題になった.患者は急性中毒が中心であるが,視覚系毒性は慢性中毒でみられることが多い.OPは欧州先進国を中心に使用中止に向かう方向である.REACH(Registration,EvaluationandAuthorizationofChemicals,欧州化学物質規制)法案とよぶ.現在は感覚器毒性,精神・神経毒性が各国で深く研究され,従来のコリンエステラーゼ抑制によるcholinergicな変化よりも,有機リン剤のnon-cholinergicな毒性が詳しく研究されている.日本では毒性に対する認識が十分ではなく対策も甘い.さらに,一般医師への慢性毒性の情報伝達がきわめて不十分である.今回の総説はそのgapをできるだけ少なくしたいことを目的として総説的に解説する.I急性と慢性毒性表1に有機リン剤の歴史をまとめた.OPは第2次大戦で毒ガスとしてサリン,ソマン,タブン,VX(バリトキシン)など猛毒の有機リン化合物がつくられた.戦後それらの毒性が弱められ,農薬おもに殺虫剤一部は除草剤として用いられてきた.パラチオン(図1a),マラ(57)???*SatoshiIshikawa,MikioMiyata&MitsuguSakabe:北里大学北里研究所病院臨床環境医学センター〔別刷請求先〕石川哲:〒108-8642東京都港区白金5丁目9番1号北里大学北里研究所病院臨床環境医学センター特集●眼科における薬剤副作用あたらしい眼科25(4):479~490,2008慢性有機リン中毒─神経感覚器毒性を中心に─???????????????????????????????????????????????─???????????????????????????????????-??????????????─石川哲*宮田幹夫*坂部貢*表1有機リン剤の歴史第2次大戦時代:毒ガス,神経ガスとして製造.サリン,ソマン,タブン,VXなど.戦後:平和利用独シュラーダン(S),パラチオン,TEPP,殺虫剤として製造,使用.1970年代:有機塩素剤規制・パラチオン,TEPP,使用禁止,視覚系毒性の研究開始.1980年代:1970年前後から東大眼科で有機リン人体の神経毒性研究開始,日本・欧州学会発表石川哲(眼科),宇尾野公義(第3内科),瀬川昌也(小児科)浅間病院大戸建らとOP患者の神経毒性,診断基準設定を行い「佐久農薬眼症」の発表に至る1990年代:有機リン毒性研究の拡大,免疫系(過敏反応),内分泌系,遺伝子分析への研究発展.米国でエチルクロルピリフォス(CP)中心に免疫異常,小児の神経毒性,化学物質過敏症,シックビル症候群,湾岸帰還兵士症候群などが出現,規制される.2000年代:有機リン神経毒性研究さらなる進展・非コリンエステラーゼ(ChE)作用.酵素FAAH阻害ほか遺伝子研究neurotoxictargetesterase,paraoxonase研究などがなされる.2005年~:欧州で可塑剤,難燃剤(electronics関係),リン酸トリエステルなどの毒性問題出現.2007年~:REACH法案(2006-2007)欧州有機リン殺虫剤使用ほとんど不可とする.ヘリコプター散布禁止.などが盛り込まれた.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(58)はCPによるCS訴訟の急増によりエチルCPの使用規制を行った.日本でも同様である.化学的には,OPは不可逆的コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬に位置づけられる.II遅発性神経毒性とは有機リンの遅発性神経毒性の記載はかなり古い.表2aに要点をまとめてみた.1930年代から遅発性神経毒性が報告されている.人間は動物よりもOPに敏感であるとされ,特に思春期頃の女性がより敏感であるとされる.有機リンの亜急性,慢性の神経毒性で大切な物質はtri-ortho-cresyl-phosphate(TOCP)である.1930~1950年代米国,メキシコなどで,“ジャマイカ麻痺”といわれ重症の末?神経障害,特に下肢麻痺,下痢,自律神断は容易である.慢性毒性は微量,くり返し摂取による発症で,症状発現には長時間を要する.OP作用により体内での種々なエステラーゼ阻害が起こる.分解過程で酵素の遺伝的特異性が影響するので症状発現に個体差が発生する.慢性かつ低用量のOPに接した場合ハイリスク群は症状を示すが,逆に正常者は反応がない群も出てくる.しかし,酵素・代謝系の発達が未熟な小児への影響は大きく,特に神経系への毒性が重要である.母親の胎内でOPに曝露されると乳児,小児,思春期から成人していく過程で正常な精神神経機能発育に影響を与える場合がある.犯罪やうつ,自殺行為などとOP慢性毒性の因果関係が欧州,農業国カナダで深刻に討議されている.米国,日本で現在規制されているエチルクロルピリフォス(CP:シロアリ駆除剤)は中枢,末?神経系,免疫系,内分泌系,循環器系などの広範囲な臓器に異常をきたす(図1c).CPは低用量長期曝露により生体の過敏反応(low-dosageexposuresensitivitysyndrome:LESS)が発生した.米国ではCPにある程度の量・期間接すると過敏状態となり,その後,他の化学物質たとえばタバコ,香水,アルコール,フォルムアルデヒドなどに触れると極端な反応が出現することがある.これが,化学物質過敏症(multiplechemicalsensitivity:CS)である.米国でCH3OCH3OPSNO2CH3図1bフェニトロチオン(MEP)「スミチオン」C2H5OC2H5OPSNO2図1aエチルパラチオン・ホリドールC2H5OC2H5OPSNOClClCl図1cエチルクロルピリフォス表2a遅発性神経毒性─歴史的考察─1930年代はtri-ortho-cresylphosphate(禁酒法時代)1953年以後mipafox(末?神経障害)などTriarylphosphates:潤滑油,可塑剤に多く用いられた.JohnsonMK:BiochemJ.111:487-495,1969視覚系毒性─1970年代日本でmalathion中心に報告(石川ら).他の遅発性神経毒性惹起物質:DFP,EPN,トリクロルフォン,DDVP,leptophos,fenthionほか.エジプトおよびUSA,メキシコなどで発症例報告.全体的に遅発性毒性はつぎの順序で敏感であるという.ヒト>ニワトリ>ウシ>ブタ>ウサギ>ラット>モルモット,動物の年齢にもよるが,一応思春期女性を中心に毒性発現の強さが人ではみられるという.表2b有機リン剤の神経系中心の作用機序・病態ステージ———————————————————————-Page3———————————————————————-Page4———————————————————————-Page5———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(62)れ重ねられた所見で,良い再現性がある.図7(患者でCS症状あり)は4回の同じ検査の重ね合わせ図であるが,6月8日散布前は正常の大きさを示すが,8月4日にヘリコプター散布でOP剤を浴びた後,縮瞳症状が長期にわたり残留している例である.つまり,一度散布を浴びただけで,瞳孔に残存する症状はなかなか消えないことを明瞭に示すものである.この詳細は50年以上歴史のある27回国際瞳孔学会(2007年10月:Interna-題である5,23~26).OPによる平衡機能障害(めまい)も慢性例での顕著な症状である:重心動揺計(EGG)検査で異常所見が得られやすい27).最近の重心動揺計では障害を前庭性か中枢性かに自動的に判別可能である.OP患者の調査ではこの機能障害は中枢性異常を示すことが多い.輻湊・調節異常も早期に最も出やすい症状である.調節緊張と調節性輻湊痙攣,すなわちAC/A比(accom-modativeconvergence/accommodation)の一過性増加と,その後の低下なども重要所見である.これらは,最近Tri-IRISC,9000が浜松フォトニクスより発売され,正確に判定が可能になった.眼症状の最後にOP中毒診断上重要な瞳孔所見について述べる.瞳孔所見:Iriscorderによる赤外線瞳孔計検査を行う.患者は急性期には縮瞳する例が多いが,OP剤により,縮瞳しない物質もある.また,時間が経つと,正常に戻るが長期を要する.対光反応の測定結果で基線が動き非常に不安定な波形を示す例もいる.特に自律神経失調を示す例に多い.つぎに瞳孔につき少し詳しく説明を加える.瞳孔は初期縮瞳(いわゆるpinholepupil),慢性期は縮瞳したままゆっくりと正常化する例とがある.対光反応でのdynamicsを分析すると異常を証明できる.光刺激で,反応遅鈍,縮瞳?散瞳系の遅延,同時に調節性輻湊障害をきたす.以下その例を示す.図6(コントロール)は散布を受けていない健常者の3回(7月11日,8月24日,11月16日のほぼ同時刻に15分暗順応下)測定さ図6健常者(非曝露40歳,女性)の3つの異なる日時に計測された光刺激による瞳孔反応正常コントロールとする.記録データをsuperimposeすると,すぐれた再現性を認める.0123456780100時間(1/60sec)200300:8月24日:7月11日:11月16日瞳孔径(mm)———————————————————————-Page7———————————————————————-Page8???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(64)脂質の過酸化,抗酸化機構を障害する.その結果,チトクローム?のミトコンドリアから細胞質への流出,cas-pase-3の活性化を促し,最終的にはアポトーシスを招く39).AchE阻害作用とは別の作用で有機リン剤クロルピリフォスはラット脳神経細胞のアポトーシスをひき起こす40).Paraoxonはコリン作動作用をまだ示さない程度の低用量でcaspase-3の活性化を示し,関連する細胞をアポトーシスへと導く41).携帯電話から発生する900MHzの電磁波は子宮内膜のアポトーシスを促進する可能性がある42).以上の研究から明らかなように電磁波曝露とアポトーシスは明らかで,カルシウム代謝への関与が述べられている43).e.アセチルコリンに対する作用有機リン剤によるアセチルコリン代謝異常にも関与する.急性中毒期と慢性中毒期では症状が表現上逆転する可能性がある.たとえば,下痢と便秘,徐脈と頻脈など.16Hz,147MHz,915MHzはAchE活性を変調させる44).海馬アセチルコリンの減少が32Hz変調の800MHz負荷で認められる45).曝露期間やアセチルコリン過敏性体質も考慮すべき点である.f.NMDA受容器に対する作用抗NMDA受容器作動薬がパラオキソン誘導の神経毒性を減少させ,アポトーシスを低減する46).ムスカリン性アセチルコリン受容器とNMDA受容器が関与する神経機構が,有機リン剤による急性中毒症状発現に関与し,有機リン剤による痙攣発作にはNMDA受容器関与が決定的な働きをする47)変動磁場でない静磁場でさえも培養海馬細胞のNMDA受容器サブユニット発現に修飾を加え細胞機能に影響を及ぼす.300Hz電磁波は,海馬細胞内カルシウム増加を通じてNMDA受容体活性の異常を生じる.以上のごとく,OPと電磁波の問題は今後さらに詳細が判明すると考えられる48~52).7.個体側要因,特に感受性差環境化学物質曝露の生体影響評価の際に濃度,量,期間のほかに個体側要因,すなわち遺伝子と関係する感受性差は重要である.体内に取り込まれた生体異物(xeno-biotics)を代謝し体外に排泄する過程の主役は異物代謝酵素群である.これには,酸化,還元,加水分解に主とし序には有機リン剤との相互作用が種々な面で重なり合う.a.血液脳関門の開大有機リン剤はムスカリン作用で酸化窒素増加,過酸化亜硝酸の増加をきたし,血液脳関門が拡大し脳に毒物の流入を進める28).915MHz電磁波曝露でラット脳血液関門は血清アルブミンやフィブリノーゲンの分子も通過するほどに開大する29).特に矩形波が脳血液関門を拡大するという.そのために,squarewave電磁波によるナノ粒子化した薬剤の脳内導入法が臨床治療として用いられている30).b.OxidativestressとDNA障害28)OPにより酸化ストレスとDNA障害がひき起こされ発癌や神経疾患の原因となりうることも知られてきた.農作業従事者は血中有機リン代謝産物とともに過酸化脂質も高い.酸化的ストレスマーカーである活性酸素の増加と還元型グルタチオンの減少が認められている.したがって電磁波影響も発現しやすい31).有機リン剤が活性基の増加と抗酸化能の変調を招くことも知られており,50Hz連続曝露でマウス肝臓のグルタチオン-?-転移酵素活性異常,つまり過酸化脂質の増加とグルタチオンの減少が認められている32).900MHz曝露でモルモット脳に酸化的ストレス増加,ある種のビタミンレベル低下をきたす.これら変化はOP作用機序と同一である33~35).c.カルシウム代謝有機リン剤,電磁波曝露によるカルシウム代謝の異常は種々なる報告がある.神経組織のホメオスターシスに乱調をきたすとされる.有機リン剤ジクロルフォスはミトコンドリアのカルシウム摂取を高める.その結果,酸化的ストレスの発生をきたしアポトーシスの原因となる8).パラオキソンは細胞内カルシウム貯蔵を減少させる36).そして50Hz電磁波照射は細胞内遊離カルシウム量を増加させ37),300Hz照射は,上述のごとく海馬細胞内カルシウム濃度を上げNMDA受容器の活動にも影響を及ぼす38).d.アポトーシス低濃度DDVP(ジクロルボス)はラット模———————————————————————-Page9———————————————————————-Page10???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(66)canineopticnerveandretinatreatedbyorganophosphatepesticide.?????????????????16:877-881,197710)IshikawaS,MiyataM:Developmentofmyopiafollowingchronicorganophosphatepesticideintoxication:Anepide-miologicalandexperimentalstudy.NeurotoxicityoftheVisualSystem(edbyMeriganWH,WeissB),p233-254,RavenPress,NewYork,198011)ImaiH,MiyataM,Uga,Setal:Retinaldegenerationinratsexposedtoorganophosphatepesticide(Fenthion):???????????30:453-465,198312)石川哲:環境汚染物質などによる眼症特に有機リン剤の視覚毒性について(第99回日眼学会総会特別講演).日眼会誌100:417-432,199613)Symposium,onoculare?ectsoforganophosphateexpo-sure.??????????????14:103-154,1994:以下主要論文のみ.1.RengstorffRH:Visionandocularchangesfollow-ingaccidentalexposure(Sarin)toorganophosphates,p115-118,2.Oculare?ectsoforganophosphates:ahis-toricalperspectiveofSakudisease.p119-130,3.Hamer-nikKL:Proposedprotocolsforthedeterminationofpotentialoculare?ectsoforganophosphoruspesticides.p131-134,4.BoyesWK:E?ectsoforgano-phosphatesonthevisualsystemofrats.p135-143,5.SummaryandCommentary,p153-15414)WangAG,LiuJH,TengMMetal:Positronemissiontomographyscanincorticalvisuallossinpatientswithorganophosphateintoxication.?????????????106:1287-1291,199915)HojoS,IshikawaS,KumanoHetal:Clinicalcharacteris-ticsofphysician-diagnosedpatientswithmultiplechemi-calsensitivityinJapan.???????????????????????,2007.電子版doi:10.1016/j.ijheh.2007,09.00716)WinrowCJ,HemmingML,AllenDMetal:Lossofneu-ropathytargetesteraseinmicelinksorgano-phosphateexposuretohyperactivity.?????????33:477-485,200317)QuistadGB,SparksSE,CasidaJE:Fattyacidamidehydrolaseinhibitionbyneurotoxicorganophosphoruspes-ticides.??????????????????????173:48-55,200118)DeodatiF,BechacG,PhilippotVetal:Bilateraluveitiscausedbyorganophosphorusinsecticides.???????????????????????77:857-859,197719)IshikawaS,MiyataM,OkuwakiTetal:AnalysisofHLAantigensinBehcet?sdisease―Apossibleimplicationofenvironmentalchemicals.????????????????4:81-87,198620)増田寛次郎ほか:佐久および守口地方の奇病児童の眼圧.眼臨65:472,197121)所敬,大塚任:実験的慢性有機燐中毒犬の屈折及び眼圧の推移.日眼会誌77:1237-1245,197322)JarvinenT,PateDW,LaineKetal:Cannabinoidsinthetreatmentofglaucoma.??????????????95:203-220,200223)MisraUK,NagD,MisraNKetal:Maculardegenerationassociatedwithchronicpesticideexposure.??????1レニウム)などの内服と抗コリン剤,副交感神経遮断薬pri?niumbromide(Padrin?),コリオパン?などを用いる.おわりに世界の農林業,害虫駆除作業から有機リン化合物を全廃するのが理想である.EUでは有機リン剤がほとんど使われなくなった.日本は依然として使われている.ハイリスク群の人は,体重1kg当たりで10ngでも体に影響が出る可能性があるのが有機リン化合物である.愁訴で始まり,ときに深刻な視覚障害,精神神経症状を示す患者が診療に訪れて来ることは決してまれではない.これら患者に接したときには,有機リン剤との接点を必ず聞いてほしい.本症を早期に治療すれば,劇的に改善する例が多いことをぜひ知ってほしい.———————————————————————-Page11あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???36)SunX,LiuXB,MartinezJRetal:E?ectsoflowconcen-trationsofparaoxononCa(2+)mobilizationinahumanparotidsalivarycell-lineHSY.??????????????45:621-638,200037)KomazakiS,TakanoKJ:Inductionofincreaseinintracel-lularcalciumconcentrationofembryoniccellsandacceler-ationofmorphogeneticcellmovementsduringamphibiangastrulationbya50-Hzmagnetic?eld.????????????????????????????????????307:156-162,200738)ManikondaPK,RajendraP,DevendranathDetal:In?uenceofextremelylowfrequencymagnetic?eldsonCa2+signalingandNMDAreceptorfunctionsinrathip-pocampus.?????????????413:145-149,2007,EpubDec28.200639)KaurP,RadotraB,MinzRWetal:Impairedmitochondri-alenergymetabolismandneuronalapoptoticcelldeathafterchronicdichlorvos(OP)exposureinratbrain.????????????????28:1208-1219,200740)CaughlanA,NewhouseK,NamgungUetal:Chlorpyrifosinducesapoptosisinratcorticalneuronsthatisregulatedbyabalancebetweenp38andERK/JNKMAPkinases.???????????78:125-134,200341)SalehAM,VijayasarathyC,MasoudLetal:ParaoxionindusesapoptosisinEL4cellsviaactivationofmitochon-drialpathway.??????????????????????190:47-57,200342)OralB,GuneyM,OzgunerFetal:Endometrialapoptosisinducedbya900MHzmobilephone:preventativee?ectsofvitaminEandC.????????23:957-973,200643)Santini,MT,Ferrante,A,RainaldiGetal:Extremelylowfrequency(ELF)magnetic?eldsandapoptosis:areview.??????????????????81:1-11,200544)DuttaSK,DasK,GhoshBetal:Dosedependenceoface-tylcholinesteraseactivityinneuroblastomacellsexposedtomodulatedradio-frequencyelectromagneticradiation.???????????????????13:317-322,199245)TestylierG,TonduliL,MalabiauRetal:E?ectsofexpo-suretolowlevelradiofrequency?eldsonacetylcholinereleaseinhippocampusoffreelymovingrats.????????????????????23:249-255.200246)WuX,TianF,OkagakiPetal:InhibitionofN-methyl-D-aspartatereceptorsincreasesparaoxon-inducedapopto-sisinculturedneurons.??????????????????????208:57-67,200547)DekundyA,KaminskiRM,ZielinskaEetal:NMDAantagonistsexertdistincte?ectsinexperimentalorgano-phosphateorcarbamatepoisoninginmice.??????????????????????219:114-121,200748)ManikondaPK,RajendraP,DevendranathDetal:In?uenceofextremelylowfrequencymagnetic?eldsonCa2+signalingandNMDAreceptorfunctionsinrathip-pocampus.?????????????413:145-149,200749)HiraiT,YonedaY:Functionalalterationsinimmatureculturedrathippocampalneuronsaftersustainedexpo-(67)(8266):288,198224)KamelF,HoppinJA:Associationofpesticideexposurewithneurologicdysfunctionanddisease.???????????????????????112:950-958,200425)MeierHL,GlossCL,PapirmeisterBetal:Histaminereleasebyesteraseinhibitors.Theregulationofhistaminereleasefromhumanleukocytesofallergicandnon-allergicindividualsbytheserineesterase-inhibitors-diisopropyl-?uorophosphatesandpinacolylmethyl-phosphoro-?uoridate.??????????????????????????????77:218-221198526)ReichertBL,Abou-Doni&———————————————————————-Page12???あたらしい眼科Vol.25,No.4,200853)石川哲,宮田幹夫,坂部貢:電磁波過敏症が初発症状と考えられた7症例.平成15~17年度厚生労働科学研究費補助金「シックハウス症候群の診断・治療法及び具体的方策に関する研究報告書」,p30-45,200654)PrangNSvonBael:GenetischeSusceptbilit?tGegen?berUmweltgiften.?????????????????????????????9:38-45,200155)木村穣,松坂恭成,猪子英俊ほか:平成18年度厚生労働科学研究費補助金・シックハウス症候群の診断・治療法及び具体的方策に関する研究報告書」,単年度報告書,p170-180;綜合研究報告書,p273-305,2006suretostaticmagnetic?elds.??????????????75:230-240,200450)石川哲,角田和彦:有機リン系殺虫剤が影響したと思われる症例の経過に関する調査研究.平成15~17年度厚生労働科学研究費補助金「シックハウス症候群の診断・治療法及び具体的方策に関する研究報告書」,綜合研究報告書,p15-26,200651)石川哲,宮田幹夫:有機リン神経毒性研究に関する文献的考察.同上,p27-45,200652)石川哲,宮田幹夫:電磁波と生体:文献的考察─最近の研究を中心として.同上,単年度報告書,p46-52,2006(68)

シンナー中毒性視神経症,メチルアルコール中毒性視神経症

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page10910-181008\100頁JCLSIシンナー,メチルアルコールの毒性1.シンナー中毒性視神経症シンナーの主成分であるトルエンは,脂質とは親和性があり,容易に脳血液関門を通過し脳内に取り込まれる.水に難溶であるため,汗や尿として排出することはできず,チトクロームP450により酸化されるが,その際に発生する5%のエポキシドが残留し深刻な細胞毒性を発揮する.視神経は生化学的に大脳白質と似た性質をもち,灰白質に比べて水分と蛋白質の含量が少なく,脂質に富むのが特徴であり,特に髄?に脂質が多く含まれるために,脂質と結合したトルエンが重篤な病変をきたす2).2.メチルアルコール中毒性視神経症メチルアルコールは消化管から吸収された後に肝臓でホルムアルデヒド,蟻酸に代謝される.この両者はともに強い神経毒性を有するが,特に蟻酸は細胞内ミトコンドリアの酸化的リン酸化を阻害し,低酸素による前述の代謝性アシドーシスをきたすとされる6).さて,急性期に死亡したメチルアルコール中毒性視神経症4例の組織病理所見6)では,篩状板後方で限局性の髄?の崩壊がみられ,軸索自体は保たれる.この選択的な髄?の崩壊は,遠位視神経の分水嶺領域での組織毒性の無酸素状態によってひき起こされると考えられている.また眼球の直近の視神経では脱髄に伴う順行性の軸はじめにシンナー(thinner)は単一の成分からなるのではなく,トルエン,ノルマルヘキサン,メチルアルコール,キシレンなど数種類の有機溶媒の混合された溶剤であり,塗料や接着剤の薄め液として使用されるためこの名で総称される1,2).その組成は目的やメーカーによっても異なる3).ときに経口的にも摂取されるが,通常吸入・吸引により経気道的に体内に入り,容易に脳血液関門を通過して中枢神経を障害する.眼科臨床的に問題となるのは,この中枢神経症状である酩酊状態や浮遊感あるいは多幸感を期待して摂取されるシンナー・ボンド類による慢性の中毒性視神経症である.シンナー中毒性視神経症の原因物質はおもにトルエンと考えられている1)が,後述する気相分析および眼底所見からメチルアルコールの関与が疑われる報告もみられる4,5).また,エチルアルコールと誤ってメチルアルコールを誤飲すると,半日から1日程度の無症候が続いた後,急激な代謝性アシドーシスにより頭痛,腹痛,呼吸困難,循環不全などの全身症状とともに急激で重篤な視力低下をきたす.これがメチルアルコールによる急性の中毒性視神経症である.本稿では,これら慢性と急性の2つの中毒性視神経症について最新の文献も交えて解説する.低濃度の有機溶媒の長期曝露の報告は欧米では比較的多くみられるが,わが国ではまれであり,これについての記述は最小限にとどめさせていただいた.(49)???*OsamuMimura:兵庫医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕三村治:〒663-8501西宮市武庫川町1-1兵庫医科大学眼科学教室特集●眼科における薬剤副作用あたらしい眼科25(4):471~477,2008シンナー中毒性視神経症,メチルアルコール中毒性視神経症???????-????????????????????-????????????????????????三村治*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(50)れらの有機溶媒はメチルアルコールよりも視神経への毒性自体ははるかに小さいと考えられる.Eells12)およびEellsら13)はラットにメチルアルコールを投与し,36時間後に蟻酸血症,代謝性アシドーシス,視覚障害を発生させ,メチルアルコール中毒モデルを作製した.このラットではフラッシュ刺激の視覚誘発電位やERG(網膜電図)で振幅低下が確認され,病理学的にも網膜色素上皮,光受容器内節,視神経のミトコンドリアの崩壊と空胞化が証明された.このような実験モデルを用いてMuthuvelら14)はfor-matedehydrogenaseの急速静注療法がメチルアルコールの代謝産物である蟻酸の解毒に有効であるとしている.II疫学1.シンナー中毒わが国では,刑務所で受刑者が作業用のシンナーを吸引して酩酊状態になったことをきっかけに,1967年頃から青少年の間に「シンナー遊び」として流行しだした.1972年毒物および劇物取締法の改正により非合法化されたが,今なお青少年の間に根強く残る非行慣習である.シンナーは,依存性の薬物のなかでも最も入手が容易でかつ安価であることから,あまり金銭的に余裕のない青少年や繁華街に行くことのない地方の青少年でも中毒が蔓延したことによる.わが国で報告されたシンナー中毒性視神経症62例の発症年齢のまとめを図1に示した.最も若い者は14歳で発症しており,大部分が10索輸送の圧迫性障害により浮腫が生じる.また1例ではあるが,37歳の剖検例で篩状板直後の両側性の視神経中心の壊死がみられ,中枢側の視神経や視路にはまったく壊死がみられず,やはり血液供給の問題であるという報告7)もみられる.3.基礎実験Lundら8)はラットに低濃度ではあるが,2週間1日6時間20ppmのトルエン(4-????-butyltoluene)を反復吸入させたモデル動物を作製し,フラッシュ光刺激での誘発電位の振幅変化を検討し,吸入中止後約1カ月でも有意の変化を見出している.しかしLamら9)は4週間4-????-butyltolueneの0,20,40ppm濃度の1日6時間の吸引後のフラッシュ光刺激では有意の変化はなかったとしている.このように低濃度のトルエンでの視覚障害は実験的には必ずしも証明されたとはいえないが,Nylenら10)はラットに1,000ppmの高濃度のノルマルヘキサン,トルエンおよび両者の同時の吸引を1日21時間4週間行わせた.2日後,3カ月後,1年後に検討を行ったが,フラッシュ光誘発電位ではノルマルヘキサン吸入2日後に振幅の低下をみたのみで,トルエンとの同時投与やそれ以降には変化を認めていない.さらにNylenら11)は8週間1日21時間の1,000ppmのトルエンの吸引と飲料水として5.7~8.0%のエチルアルコール溶液の投与を組み合わせて行った.その結果,聴覚脳幹反応(ABR)はトルエン投与で有意の減弱を認めたもののフラッシュ光誘発電位では変化はみられなかった.こ12345671415161718192021年齢(歳)(例)2223242526272829~0図1わが国で報告されたシンナー中毒性視神経症62例の発症年齢吸引期間(年)(例)204681012<1123456789>10模———————————————————————-Page3———————————————————————-Page4———————————————————————-Page5———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(54)10)NylenP,HagmanM,JohnsonAC:Functionoftheaudito-ryandvisualsystem,andofperipheralnerve,inratsafterlong-termcombinedexposureton-hexaneandmethylatedbenzenederivatives.I.Toluene.?????????????????74:116-123,199411)NylenP,HagmanM,JohnsonAC:Functionoftheaudito-rysystem,thevisualsystem,andperipheralnerveandlong-termcombinedexposuretotolueneandethanolinrats.?????????????????76:107-111,199512)EellsJT:Methanol-inducedvisualtoxicityintherat.????????????????????257:56-63,199113)EellsJT,HenryMM,LewandowskiMFetal:Develop-mentandcharacterizationofarodentmodelofmethanol-inducedretinalandopticnervetoxicity.????????????????21:321-330,200014)MuthuvelA,RajamaniR,SheeladeviR:Therapeuticresponsetosingleintravenousbolusadministrationoffor-matedehydrogenaseinmethanol-intoxicatedrats.????????????161:89-95,200615)HovdaKE,HunderiOH,TafjordABetal:Methanolout-breakinNorway2002-2004:epidermiology,clinicalfea-turesandprognosticsigns.????????????258:181-190,200516)PaasmaR,HovdaKE,Tikkerberietal:MethanolmasspoisoninginEstonia:outbreakin154patients.?????????????45:152-157,200717)赤木泰:シンナー中毒による視神経症の1例.眼紀51:508-511,200018)高槻玲子,小川憲治:Uhtho?現象を呈したシンナー中毒による視神経症の1例.臨眼40:547-551,198619)北村知子,菅澤淳:視力回復が良好であったシンナー中毒性視神経症の1例.眼臨90:1001-1003,199620)益田徹,木村徹,木村亘ほか:網膜有髄神経線維が消失したシンナー中毒視神経症.臨眼41:911-914,198721)児玉和宏,山内直人,松森基子ほか:シンナー依存症にみられた視力障害の1例.臨床精神医学16:757-763,198722)清川広恵,澤田惇,安達惠美子:シンナー中毒性視神経症10例の臨床症状.神経眼科13:32-36,199623)PoblanoA,LopeHuertaM,MartinezJMetal:Pattern-visualevokedpotentialsinthinner-abusers.????????????27:531-533,199624)KiyokawaM,MizotaA,TaksohMetal:Patternvisualevokedcorticalpotentialsinpatientswithtoxicopticneu-ropathycausedbytolueneabuse.????????????????43:438-444,199925)VrcaA,Bozicevic?D,Karacic?Vetal:Visualevokedpotentialsinindividualsexposedtolong-termlowconcen-trationsoftoluene.????????????69:337-340,199526)StelmachMZ,O?DayJ:Partlyreversiblevisualfailurewithmethanoltoxicity.????????????????????20:57-64,199227)HalavaaraJ,ValanneL,Set?l?K:Neuroimagingsupportstheclinicaldiagnosisofmethanolpoisoning.?????????????認)で,パルス療法とそれに引き続き体重kg当たり1mgのプレドニゾロン内服11日間投与を行い,全例で視機能の回復をみた報告41)があるが,これら視機能の改善をみた症例はむしろ例外的であるといえる.おわりに急性メチルアルコール中毒は,その特徴的な全身および眼所見からまず診断に迷うことはないため,本稿では特に日本人に多いシンナー中毒について重点的に記載した.シンナーは非合法的な手段で得られていることが多く,また患者本人も薬物使用を強く否定することが多いため,シンナー中毒の存在を常に念頭に置いておかなければ青少年の急性の視力障害を誤診する可能性がある.青少年の原因不明の視力障害をみたときには,尿中馬尿酸の測定を行うとともにもう一度丁寧な問診をシンナー使用に関して行うべきである.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???(55)35)HsuHH,ChenCY,ChenFHetal:Opticatrophyandcerebralinfarctscausedbymethanolintoxication:MRI.??????????????39:192-194,199736)永沢光,和田学,小山信吾ほか:視神経病変をMRIにて描出できたメタノール中毒の1例.臨床神経45:527-530,200537)北惠詩穂里,神崎資子:視神経障害をきたしたシンナー中毒の1例.神経内科61:362-366,200438)小林賢,小沢信介,金本尚志ほか:ステロイドパルス療法が著効した亜急性シンナー中毒性視神経症の1例.眼臨98:484-487,200439)橋本恵子,細木敬三,松本浩子ほか:星状神経節ブロックを併用したシンナー中毒性視神経症の1例.眼臨85:2124-2128,199140)岡田幸,政岡則夫,橋本恵子ほか:シンナー中毒性視神経症における星状神経節ブロックの効果.眼紀43:1257-1262,199241)SodhiPK,GoyalJL,MehtaDK:Methanol-inducedopticneuropathy:treatmentwithintravenoushighdoseste-roids.????????????????55:599-602,2001??44:924-928,200228)松井寛,野田佐知子,早坂征次ほか:摂取後11日目に緑内障様視神経萎縮がみられたメチルアルコール中毒の1例.眼臨85:2129-2131,199129)FujiwaraM,KikuchiM,KurimotoY:Methanol-inducedretinaltoxicitypatientexaminedbyopticalcoherencetomography.????????????????50:239-241,200630)RosenbergNL,Klieinschmidt-DeMastersBK,DavisKAetal:Tolueneabusecausesdi?usecentralnervoussystemwhitematterchanges.??????????23:611-614,198831)藤田憲一,古賀良彦,武正建一ほか:画像診断で大脳,小脳および脳幹の萎縮を呈した慢性トルエン中毒の1例.臨床神経32:421-425,199232)水野谷恭子,宮崎泉,金井塚道節ほか:シンナー中毒による視力障害の1例.眼臨87:1023-1029,模

Stevens- Johnson症候群と眼障害

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———————————————————————-Page10910-181008\100頁JCLSSJS/TEN,30%以上がTENとされ,わが国でもこの概念に基づいて,厚生労働省・橋本公二研究班により診断基準が作成された(表1,2).皮膚科的には重症度の異なるSJSとTENであるが,両者の眼所見は類似しており,眼科的所見のみで両者を鑑別することは困難である.しかも眼科で診察するSJSおよびTEN患者の多くは慢性期患者であり,鑑別ポイントである急性期の罹患面積を知ることはほぼ不可能である.このため眼科ではSJSとTENを包括してSJSとはじめにStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnsonsyn-drome:SJS),その重症型である中毒性表皮壊死融解症(toxicepidermalnecrolysis:TEN)は,突然の高熱,咽頭痛に続いて全身の皮膚・粘膜にびらんと水疱を生ずる急性の全身性皮膚粘膜疾患で,小児を含めてあらゆる年齢に,性差なく発症する.発症前に薬剤投与歴のある症例が多く,重篤な薬剤副作用でもある.後遺症として最も多いのが眼障害であり,著しい視力障害とドライアイが生涯にわたって持続する.発症時は全身管理が主体となり眼病変への対応が遅れやすいが,発症初期より適切な眼科治療を行うことが予後改善のために重要である.I重症薬疹とは重症薬疹とは,皮膚以外の臓器に重篤な症状を発現する薬疹であり,生命を脅かしうるものである1).SJS,TEN,薬剤性過敏症症候群(drug-inducedhypersensi-tivitysyndrome:DIHS)の3つが代表疾患であるが,このうちDIHSは眼合併症を伴わないのに対して,SJSとTENは半数以上で重篤な眼合併症をきたす.SJSとTENが同一疾患か否かについて長く議論されてきたが,Roujeauらの研究によりSJSとTENは重症度の異なる同一スペクトラムの疾患であることが明らかとされた2).具体的には,皮膚のびらん面積が全体表面積の10%未満をSJS,10%以上30%未満をoverlap(43)???*ChieSotozono:京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕外園千恵:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学特集●眼科における薬剤副作用あたらしい眼科25(4):465~469,2008Stevens-Johnson症候群と眼障害???????????????????????????????????????????-????????????????外園千恵*表1Stevens-Johnson症候群の診断基準概念発熱を伴う口唇,眼結膜,外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹および皮膚の紅斑で,しばしば水疱,表皮?離などの表皮の壊死性障害を認める.原因の多くは,薬剤である.主要所見(必須)1.皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変(出血性あるいは充血性)がみられること.2.しばしば認められるびらんもしくは水疱は,体表面積の10%未満であること.3.発熱.副所見4.皮疹は非典型的ターゲット状多形紅斑.5.角膜上皮障害と偽膜形成のどちらかあるいは両方を伴う両眼性の非特異的結膜炎.6.病理組織学的に,表皮の壊死性変化を認める.但し,TENへの移行があり得るため,初期に評価を行った場合には,極期に再評価を行う.主要項目の3項目を全てみたす場合SJSと診断する.———————————————————————-Page2———————————————————————-Page3———————————————————————-Page4———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???(47)classi?cationofcasesoftoxicepidermalnecrolysis,Ste-vens-Johnsonsyndrome,anderythemamultiforme.?????????????129:92-96,19933)SotozonoC,AngLP,KinoshitaSetal:Newgradingsys-temfortheevaluationofchronicocularmanifestationsinpatientswithStevens-Johnsonsyndrome.?????????????114:1294-1302,20074)KawasakiS,NishidaK,KinoshitaSetal:Conjunctivalin?ammationinthechronicphaseofStevens-Johnsonsyndrome.???????????????84:1191-1193,20005)外園千恵:瘢痕性角結膜上皮症でのMRSA感染.あたらしい眼科22:643-645,20056)木下茂,外園千恵,稲富勉ほか:再生医学による重症角膜疾患の新規治療法開発への戦略的研究.最新医学62:132-180,2007り,以下のURLでみることができる.一般向け:http://www.info.pmda.go.jp/juutoku_ippan/juutoku_ippan.html医療関係者向け:http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/juutoku_index.html文献1)橋本公二:重症薬疹とは.アレルギー・免疫14:414-421,20072)Bastuji-GarinS,RzanyB,RoujeauJCetal:Clinicalお申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.メディカル葵出版年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科HFFNl??DHK月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体4.522円+税)(送料362円)増刊号6,300円(本体8.222円+税)(送料426円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体52.:62円+税)(送料弊社負担)最新情報を,整理された総説として提供!眼科手術HFFNl??DHG■毎号の構成■季刊/1・4・7・10月発行A4変形判総140頁定価2,520円(本体4.622円+税)(送料382円)年間予約購読料10,080円(本体;.822円+税)(6冊)(送料弊社負担)日本眼科手術学会誌【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・眼感染アレルギーなど)/新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■【特集】あらゆる眼科手術のそれぞれの時点における最も新しい考え方を総説の形で読者に伝達.【原著】査読に合格した質の高い原著論文を掲載.【その他】トピックス・ニューインストルメント他

抗精神薬,抗不安薬の眼科副作用

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page10910-181008\100頁JCLSいる抗精神病薬としてフェノチアジン系のものがあげられる.代表的なものはクロルプロマジンで,これはドパミンD2遮断作用薬としては最も歴史が古い.古典的薬物ではあるが,今も統合失調症をはじめ,躁うつ病など広く用いられてきた薬剤で,眼副作用としては角膜,水晶体や網膜,ぶどう膜への物質沈着が知られる1,2).筆者は羞明を主訴に来院した,統合失調症で10年以上本剤を投与されていた女性例で,角膜〔特に内皮側〕に細かなやや黄色がかった白色物質が多数沈着している症例をみたことがあるが,この例では水晶体や網膜には異常がなく,視力や網膜電図(ERG)にも異常はなかった.しかし,皮膚には全体に色素沈着がみられた.網膜色素変性類似の網膜症の報告が比較的多いのがチオリダジンである2).自覚的には無症状で眼底に明確な異常はみられないのにERGの律動様小波に異常が現れる軽度のものから,夜盲や視力視野異常の明確なものまで,種々の例が報告されている.網膜変性がなぜ生ずるかについては諸説あるが,D2/D4受容体遮断作用との関係が提唱されている3).このほか,フェノチアジ系薬物の副作用としてoculo-gyriccrisis(眼球上転発作)やping-ponggazeなどの異常眼球運動の報告が散見される.II抗コリン作用と閉塞隅角緑内障閉塞隅角緑内障の急性発作の契機に抗コリン作用を有した薬物投与が関わることがある.精神神経疾患治療薬はじめに厚生労働省が発表した平成17年患者調査によると,精神性疾患を主傷病として通院している患者数は303万人に及ぶ.平成11年は204万人であるから,6年間に100万人増加したことになる.これは,主傷病であるから,大半が精神科か心療内科通院の患者である.実態調査ではないが,気分障害(うつ病,躁うつ病)の潜在患者は人口の5%あると推定されていることからみても,不眠症,不安神経症,身体表現性障害などで各科で薬物処方を受けいている患者は,おそらく500万人を超えるであろう.2005年の精神神経疾患治療薬(広義の向精神薬)の推定市場規模は3,210億円に上り,循環器用剤につぐ規模である.筆者がある一日に診た患者(72名)のうち,抗不安薬,睡眠導入薬を含む精神神経疾患治療薬を処方されている患者は21名29%に上った.筆者がおもに神経眼科外来を行っているという特殊性もあろうが,おそらく一般眼科に通院している患者でも,こうした精神神経疾患治療薬を処方されている患者はまれでなく,それゆえ,われわれは眼科的副作用や眼科関連の愁訴に留意しなければならない.以下,抗精神病薬,抗不安薬,睡眠導入薬において,起こしうる眼副作用を検討する.I抗精神病薬薬物やその代謝物質の沈着などの眼副作用が知られて(39)???*MasatoWakakura:井上眼科病院〔別刷請求先〕若倉雅登:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院特集●眼科における薬剤副作用あたらしい眼科25(4):461~464,2008抗精神薬,抗不安薬の眼科副作用???????????????????????????????????????????????????????????若倉雅登*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(40)III調節障害多くの精神科関連薬の添付書類の副作用に「目のかすみ」の記載がある.これは,ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断作用による調節障害を意味していると考えられるが,各薬物の開発,治験段階で,「目のかすみ」については関心が乏しく,マイナーな副作用として処理されてしまっていると考えられる.それゆえ,「目のかすみ」が調節障害によるものか,その他の理由かもわからないし,実際の調節がどれだけ障害されるのかのデータは皆無といってよい.しかし,日常臨床では,こうした精神科関連薬服用者が,目のかすみ,視力低下,眼精疲労を自覚して眼科を訪れる場合は決してまれでないことを,筆者は経験的に知っている.しかも,この自覚症状の一つの特徴は,初期には,常時同じようにかすむのではなく,時々そのようなことを強く自覚することである.また,投与薬物に変更があったときにも,しばしばみられる.つまり,自覚症状に日内変動や日差などの動揺があるのが特徴であり,おそらく薬物の血中濃度や組織内濃度に関連しているのではないかと考えられる.一般に,眼科医は精神神経疾患治療薬によるこうした副作用を知らないか,意識のなかにないので,このような訴えに対し,単に眼精疲労などとして処理し,患者に内服薬の内容を尋ねることもしないことが多い.精神神経疾患治療薬の使用状況をみると,米国では単剤,または2剤までの処方が多いの対し,日本では多剤大量処方が多くなされ批判されている.これは統合失調症において特に顕著である6~8)が,同様の傾向は他の精神疾患でも普通にみられ,また非精神科医による抗うつ薬,不安薬,睡眠導入薬のみだりな処方も困ったものである.筆者は,薬物投与量の軽減や変更で,視覚の不定愁訴ともいえる自覚症状が改善された例を数多く経験している.「目がかすむ」といった自覚症状は一般には軽視されがちではあるが,患者自身にとっては実は非常に不愉快で,仕事などへの影響も多大であるため,一般眼科医は,そうした不定愁訴のある患者に対して精神神経疾患治療薬が投与がなされていないか,多剤投与の傾向がないかに関心をもつべきで,場合によっては処方医師に情で抗コリン作用を有するものを表1に示す.すべての薬物で緑内障発作を生じたことが確認されているわけではないが,狭隅角の症例では注意すべきである4,5).なお,抗ヒスタミン薬,感冒薬,鎮咳薬,胃腸薬,抗不整脈薬,散瞳薬など日常的に用いられる多くの医薬品や一般薬にも抗コリン作用があるので,このことは精神神経疾患治療薬に限ったことではない.このような薬物誘発性閉塞隅角緑内障の発現頻度は知られていないが,臨床経験上も決して高頻度とは思えない.それゆえ,こうした薬物を使用する可能性の高い比較的高齢者の狭隅角眼では,単に薬物投与を禁止することはそれらの薬物投与の必要性が高ければ現実的でないと考えられる.そこで,眼圧上昇のリスクがあることを患者に理解させ,レーザー虹彩切開をしておく,場合によっては白内障手術をしたうえで眼圧の定期的チェックが行われるという方針がとられるべきであろう.表1抗コリン作用を有するおもな精神科関連用剤1.三環系抗うつ剤アモキサピン(アモキサン),アミトリプチリン(トリプタノール),イミプラミン(トフラニール),クロミプラミン(アナフラニール),ドスレビン(プロチアデン)2.四環系抗うつ剤マプロチリン(ルジオミール)3.精神賦活剤メチフェニデート(リタリン)4.ベンゾジアゼピン・チエノジアゼピン系トリアゾラム(ハルシオン),ニトラゼパム(ベンザリン,ネルボン),フルニトラゼパム(サイレース,ロヒプノール),フルラゼパム(ダルメート,ベノジール),プロチゾラム(レンドルミン),リルマザホン(リスミー),ロルメタゼパム(エバミール,ロラメット)アルプラゾラム(コンスタン,ソラナックス),エチゾラム(デパス),クロチアゼパム(リーゼ),クロナゼパム(リボトリール,ランドセン),クロルジアゼポキシド(コントール,バランス),ジアゼパム(セルシン,ホリゾン),フルタゾラム(コレミナール),ブロマゼパム(レキソタン),ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)5.SSRIパロキセチン(パキシル),フルボキサミン(デプロメール,ルボックス),セルトラリン(ジェイゾロフト)6.その他ゾピクロン(アモバン),トリヘキシフェニディール(アーテン),ピペリデン(アキネトン),プロフェナミン(パーキン),レボドパ製剤(———————————————————————-Page3———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(42)は9例あり,うち7例は改善を示した.特に1,2カ月間服用の2例と2年服用の1例では薬物中止後,完全に回復した.眼瞼痙攣患者はもともと女性に多い疾患であるが,エチゾラムおよびベンゾジアゼピン誘発眼瞼痙攣ではその傾向がより強く出た.眼瞼痙攣の発症機序はなお不明ではあるが,エチゾラムおよびベンゾジアゼピンが作用するGABA-A(g-ami-nobutyricacid-A)の脳内受容体が劣化することが原因ではないかと推定される.特に女性に対してのエチゾラムおよびベンゾジアゼピン系薬物の長期服用は,眼瞼痙攣発症の危険因子となることは,すべての医師が知っておくべきである.文献1)HullDS,CsukasS,GreenK:Chloropromazine-inducedcornealendothelialphototoxicity.?????????????????????????22:502-508,19822)OshikaT:Ocularadversee?ectsofneuropsychiatricagents.Incidenceandmanagement.????????12:256-263,19953)FornaroP,CalabriaG,CoralloGetal:Pathogenesisofdegenerativeretinopathiesinducedbythioridazineandotherantipsychotics:adopaminehypothesis.???????????????105:41-49,20024)TripathiRC,TripathiBJ,HaggertyC:Drug-inducedglaucomas:mechanismandmanagement.????????26:749-767,20035)LachkarY,BouassidaW:Drug-inducedacuteangleclo-sureglaucoma.????????????????????18:120-133,20076)三澤仁,加藤温,落合理路ほか:抗精神病薬の多剤併用療法の実態.日本精神科病院協会雑誌24:74-77,20057)石郷岡純:抗精神薬と気分安定併用療法の現状と今後の課題.臨床精神薬理8:181-190,20058)稲垣中,冨田真幸:日本における新規抗精神病薬と多剤大量処方.臨床精神薬理6:391-401,20039)若倉雅登:眼瞼けいれんと顔面けいれん.日眼会誌109:667-680,200510)若倉雅登,井上治郎:眼瞼痙攣患者における2006年ドライアイ診断基準の適用.臨眼(印刷中)11)山本紘子:瞬目─この無視されてきた重要問題,薬物性ジストニーと眼瞼痙攣.神経眼科20:43-48,200312)WakakuraM,TsubouchiT,InouyeJ:Benzodiazepine-andthienodiazepine-inducedblepharospasm.????????????????????????????75:506-507,2004アで,これらの抗精神薬11)に加え,筆者らは,ベンゾジアゼピン系,チエノジアゼピン系薬物が,しばしば眼瞼痙攣を惹起することを報告した12).この研究結果を以下に要約するが,その前に,チエノジアゼピンやベンゾジアゼピン系薬物は日本では非常に多く処方されている事実を述べておきたい.すなわち,チエノジアゼピンもベンゾジアゼピンも抗不安薬,睡眠導入薬として用いられ,日本では1,000億を超える市場で,単純計算で少なくとも800万人以上がこれらの薬物を内服していることになる.チエノジアゼピンとしてはデパス?=エチゾラム,リーゼ?などがあり,ベンゾジアゼピン系は抗不安薬としてレキソタン?,ソラナックス?,ワイパックス?,セルシン?など,睡眠導入薬としてハルシオン?,リスミー?,レンドルミン?,ベンザリン?,ユーロジン?,サイレース?,ロヒプノール?など多数の製品がある.米国ではうつ病や身体表現性障害の第一選択薬として選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)が通常単剤処方として用いられるのに対し,日本ではまずチエノジアゼピンやベンゾジアゼピン系薬を選択する医師が多く,しかも単剤より多剤投与が多いという指摘がある.不眠に対してはチエノジアゼピンやベンゾジアゼピン系薬を「軽い薬」と称して内科を含め多くの科の医師が処方している実態がある.さて,筆者らの研究は254例の眼瞼痙攣患者の発症前の服薬歴を調査し,血管圧迫が原因(中枢神経系の異常ではない)と考えられる片側顔面痙攣61例を対照(コントロール)として比較検討したものである.254例(男女比67:187)の模

視路障害をきたす全身薬

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———————————————————————-Page10910-181008\100頁JCLS5)眼底所見では多くの例は視神経乳頭に異常のない,いわゆる“球後視神経炎”類似の所見で,まれに視神経乳頭の発赤や出血をみることもある.6)眼球運動時の眼球後部痛はない(視神経炎との大きな違い).7)視覚誘発電位検査で異常所見(潜時延長・振幅低下)がみられる.2.MRI画像所見の特徴視神経疾患のうち炎症・脱髄・浸潤・外傷の例は,発症時にはMRI(磁気共鳴画像)のSTIR(shortTIiner-sionrecovery)法で視神経内に高信号を示すが,薬剤障害例では等信号のままである.薬剤障害でも時間が経ち視神経萎縮になると,STIR法で視神経は高信号を示す.*上記の条件1.と2.を満たす視神経疾患は薬剤による障害のほかに,栄養(ビタミンB1,B12,葉酸)欠乏性視神経症とシンナー中毒があるので,詳細な問診と血液検査が必要である.Leber病も類似するが,瞳孔の対光反応障害が軽微で,左右眼の発症間隔は多くは1~6カ月間あり同時発症ではない.3.代表的な薬剤1)Ethambutolエタンブトール(エサンブトール?,エブトール?)エタンブトール(EB)は抗結核薬で,EBによる視神はじめに近年,きわめて有用な薬剤効果を有する種々多彩な全身薬が開発され,次々に臨床応用されている.話題の分子標的薬をはじめ,免疫抑制薬,抗癌薬の多くは眼科以外の診療科で難治の症例に使用され,ときに重篤な視覚障害を生じて眼科へコンサルトされるケースがある.使用薬の効果に期待しつつ,副作用に早く気づきその被害を最小限に抑えるために,われわれも幅広い薬剤情報の知識が必要である.本稿では視路のなかでも,特に視神経と視覚中枢に対して悪影響を及ぼす可能性のある代表的な全身薬につき報告例を中心に述べる.I薬剤による視神経障害1.基本的な眼症状と眼所見全身に投与された薬剤による視神経障害と診断するうえで心得ておくべき,重要で基本的な眼症状と眼所見は以下のものがある.1)発症は急性または亜急性である.肝臓や腎臓の機能不良例では薬剤の血中濃度の意外な上昇や蓄積により,薬剤の中止後も悪化進行する例がある.2)必ず両眼性で,視機能障害は(既往の眼疾患や屈折状態に差がないときに)左右眼が同程度で,悪化や改善は両眼が同時に変化する.3)瞳孔の対光反応に異常がみられる.4)視機能障害として,視野は中心暗点を示し,中心フリッカー値が低下し,色覚異常がみられる.(33)???*YuzoNakao:近畿大学医学部堺病院眼科〔別刷請求先〕中尾雄三:〒590-0132堺市原山台2-7-1近畿大学医学部堺病院眼科特集●眼科における薬剤副作用あたらしい眼科25(4):455~460,2008視路障害をきたす全身薬??????????????????????????????????????????????????????????????????????????中尾雄三*———————————————————————-Page2———————————————————————-Page3———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(36)(Riddoch現象)や盲であることの否定(Anton徴候)を伴うこともある.皮質盲の原因としては両側後頭葉の梗塞が最も多く,他に脳出血,悪性高血圧,子癇,悪性腫瘍の転移や播種,感染,外傷,変性,ミトコンドリア病(MELAS),Creutzfeldt-Jakob病がある.最近の話題では,薬剤が関与する視覚中枢障害として可逆性後部白質脳症症候群(reversibleposteriorleucoencephalopa-thysyndrome:RPLS)と進行性多巣性白質脳症(pzro-gressivemultifocalleucoencephalopathy:PML)がある.RPLSは急性発症の頭痛,意識障害,痙攣,視覚障害(重複半盲,皮質盲)があり,原因としては異常高血圧を背景とする高血圧脳症,子癇,腎臓疾患があり,また薬剤(免疫抑制薬,抗癌薬)による影響の報告もある.MRI所見では?uidattenuatedinversionrecovery(FLAIR)画像で両側後頭葉を中心に高信号域がみられる.症状と画像所見は多くの例で可逆性であり,高血圧治療など適切な全身管理により改善する24).PMLは成人の約70%に不顕性感染しているJCウイルスが原因で,AIDS(後天性免疫不全症候群)をはじめ免疫不全疾患(状態)で発症する.JCウイルスは脳のオリゴデンドロサイトにおいて増殖し,細胞溶解を経て脱髄をひき起こす.重篤な視野障害,異常行動,痴呆,運動麻痺を示し,予後は不良である25).薬剤による視覚中枢障害の基本的な眼症状と眼所見は以下のものがある.1)両眼のすべての視機能は喪失する(不完全な障害であれば部分的に視機能が残存する).2)後頭葉障害に特有の症状(Riddoch現象,Anton徴候)を合併することもある.3)瞳孔の対光反応は異常がない.4)眼底所見は多くの例で異常がない.5)視覚誘発電位検査で異常所見(反応消失)がみられる.2.MRI画像所見の特徴両側後頭葉領域において,血管外への水漏出による浮腫(vasogenicedema)ではT2強調画像やFLAIR画像で高信号,虚血や神経細胞障害による浮腫(cytotoxic11)Tacrolimusタクロリムス(FK506)(プログラフ?,プロトピック?)肝臓移植後にタクロリムスでの治療中に両側性の視神経症を生じ,中止後にも視機能は回復しなかった17).12)Methotrexateメトトレキサート(メソトレキセート?,リウマトレックス?)乾癬性関節炎に対してメトトレキサート使用中に球後視神経症を生じステロイド治療は無効であった.メトトレキサート中止6週間後に視野は改善しはじめ,6カ月後にはさらに回復した18).13)Ibuprofenイブプロフェン(ブルフェン?)イブプロフェンを3週間服用後に球後視神経炎を発症し,中止とステロイド点滴により視機能は改善した19).14)Amiodaroneアミオダロン(アンカロン?)アミオダロンは強力な抗不整脈薬で,眼関連の副作用として角膜色素沈着(70~100%),水晶体混濁(50%)であるが,視神経症の発生は服用者の1.8%で,服用後1~7カ月に発生した.視神経乳頭の浮腫があり,視力低下,視野異常,色覚異常は服用中止後に約半数で回復した20).15)Disul?ramジスルフィラム(ノックビン?)慢性アルコール依存症に対する治療薬のジスルフィラム服用で両側性の視神経症を生じ,中止により視機能は良く回復した21).16)Sildena?lシルデナフィル(バイアグラ?)勃起不全治療薬のシルデナフィル服用24時間以内に非動脈炎性虚血性視神経症が発生し,光覚にまで視力低下した例があった.高血圧症,糖尿病,高脂血症を合併していた22).17)Metronidazoleメトロニダゾール(フラジール?)トリコモナス症治療薬のメトロニダゾールを8カ月間服用後に視神経症を生じたが,中止後は速やかに視機能は改善した23).II薬剤による視覚中枢障害1.基本的な眼症状と眼所見両側性の広範な視覚中枢の障害によりさまざまな形の重複半盲が生じ,両側の完全な障害では両眼の視覚の喪失による皮質盲がみられる.動く物体は認識できること———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???(37)ンクリスチン,P=プレドニゾン)療法との併用も行われている.リツキシマブ点滴後に発生したRPLS例があった32).8)Bevacizumabビバシズマブ(アバスチン?)ビバシズマブは抗vascularendothelialgrowthfactor(VEGF)抗体で,転移性直腸癌の患者へのビバシズマブとフルオロウラシルの治療によりRPLSが発生した33).9)Natalizumabナタリズマブ(タイサブリ?)ナタリズマブは米国では多発性硬化症の治療に用いられ,PMLを発生したため一旦は使用禁止となった.発生頻度は約0.1%と推定されるが,致命的なPMLの発生に注意が必要である25).(ナタリズマブは日本では未承認である.)おわりに薬剤による視神経障害は多くの視神経疾患(特に視神経炎)と類似し,視覚中枢障害は全身衰弱,心因,詐病との鑑別を要するため,まず問診で可能性のある薬剤の使用を確認し,瞳孔対光反応,電気生理学的検査,画像検査などの他覚的検査を中心に正確に診断する.薬剤による障害の事実を当該科の主治医に伝えてただちに薬剤の使用を中止し,次善の薬剤への変更を考慮してもらうなど慎重に対応することが肝要である.文献1)原田勲:新抗結核剤Ethambutolによる視神経炎の2症例.眼紀14:278-284,19632)金嶋良憲,伊藤正,朝見知恵ほか:エタンブトール視神経症の診断基準.あたらしい眼科22:1439-1442,20053)大鳥利文,中尾雄三,当麻信子ほか:視神経疾患の診断治療における中心フリッカー値測定の意義について.臨眼27:301-310,19734)LesselS:Histopathologyofexperimentalethambutolintoxication.?????????????????????????15:765-769,19765)中尾雄三:抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎.神経眼科25:(印刷中),20086)IkedaA,IkedaT,IkedaNetal:Leber?shereditaryopticneuropathyprecipitatedbyethambutol.?????????????????50:280-283,20067)RuckerJC,HamiltonSR,BardensteinDetal:Linezolid-associatedtoxicopticneuropathy.?????????66:595-598,2006edema)では拡散強調画像で高信号が認められる.3.代表的な薬剤1)Cyclosporineシクロスポリン(サンディミュン?,ネオラール?)心臓移植後のシクロスポリン使用により意識障害と皮質盲を生じ,MRIで両側後頭葉に病変を確認した.シクロスポリン減量に従って症状は改善したが,自動視野計の視野異常とMRIの異常所見は数カ月間認められた26).2)Tacrolimusタクロリムス(FK506)(プログラフ?,プロトピック?)骨髄移植後にタクロリムス治療中に急性に皮質盲を生じ,MRIでは両側後頭葉白質に異常所見を認めた.薬剤中止の8日後には回復した27).3)Fingolimod(FTY720)フィンゴリモドフィンゴリモドは,再発性多発性硬化症の治療薬として治験中の新規経口免疫調節薬である.眼科的副作用としては?胞様黄斑浮腫がよく知られているが,5.0mg投与群で後部可逆性白質脳症症候群(posteriorrevers-ibleencephalopathysyndrome:PRES)が発生した28).4)Cisplatinシスプラチン(ランダ?,ブリプラチン?)骨肉腫へのシスプラチン使用中に視覚障害,高血圧,痙攣,意識障害をきたし,MRIでは両側後頭葉白質に可逆性の異常所見を認めた29).5)Vincristineビンクリスチン(オンコビン?)横紋筋肉腫に対してビンクリスチンを使用中に皮質盲を生じた30).6)Cytarabineシタラビン(キロサイド?,Ara-C?)白血病に対してシタラビン点滴治療後にRPLSの発生をみたが,投与量は従来報告されているよりも低量で,しかも点滴終了から長期間後に発症した.脳神経毒だけでなく,アレルギー反応が関わっている可能性が考えられた31).7)Rituximabリツキシマブ(リツキサン?)リツキシマブはB細胞の表面に存在するCD20に対するモノクローナル抗体の分子標的薬であり,日本での健康保険適用はCD20陽性の低悪性度または濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫で,単独またはCHOP(C———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(38)200622)PomeranzHD,BhavsarAR:Nonarteriticischemicopticneuropathydevelopingsoonafteruseofsildena?l(via-gra):areportofsevennewcases.?????????????????25:9-13,200523)McGrathNM,Kent-SmithB,SharpDM:Reversibleopticneuropathyduetometronidazole.???????????????????????????35:585-586,200724)HincheyJ,ChavesC,AppignaniBetal:Areversibleposteriorleukoencephalopathysyndrome.????????????334:494-500,199625)AksamitAJ:Reviewofprogressivemultifocalleukoen-cephalopathyandnatalizumab.???????????12:293-298,200626)DrachmanBM,DeNofrioD,AckerMAetal:Corticalblindnesssecondarytocyclosporineafterorthotopichearttransplantation:acasereportandreviewofthelitera-ture.???????????????????????15:1158-1164,199627)StegRE,KessingerA,WszolekZK:CorticalblindnessandseizuresinapatientreceivingFK506afterbonemar-rowtransplantation.??????????????????????23:959-962199928)KapposL,AntelJ,ComiGetal:Oral?ngolimod(FTY720)forrelapsingmultiplesclerosis.?????????????355:1124-1140,200629)ItoY,ArahataY,GotoYetal:Cisplatinneurotoxicitypresentingasreversibleposteriorleukoencephalopathysyndrome.?????????????????????19:415-417,199830)MerimskyO,LoewensteinA,ChaitchikS:Corticalblind-ness─acatastrophicsidee?ectofvincristine.????????????????3:371-373,199231)SaitoB,NakamakiT,NakashimaHetal:Reversiblepos-teriorleukoencephalopathysyndromeafterrepeatinter-mediate-dosecytarabinechemotherapyinapatientwithacutemyeloidleukemia.????????????82:304-306,200732)MavraganiCP,VlachoyiannopoulosPG,KosmasNetal:Acaseofreversibleposteriorleucoencephalopathysyn-dromeafterrituximabinfusion.????????????(Oxford)43:1450-1451,200433)AllenJA,AdlakhaA,BergethonPR:Reversibleposteriorleukoencephalopathysyndromeafterbevacizumab/FOL-FIRIregimenformetastaticcoloncancer.???????????63:1475-1478,20068)SamarakoonN,HarrisbergB,EllJ:Cipro?oxacin-inducedtoxicopticneuropathy.??????????????????????????35:102-104,20079)ColleySM,ElstonJS:Tamoxifenopticneuropathy.??????????????????????????32:105-106,200410)DelvalL,KlasterskyJ:Opticneuropathyincancerpatients.Reportofacasepossiblyrelatedto5?uorouraciltoxicityandreviewoftheliterature.????????????60:165-169,200211)MartinM,Weber-V?rszegiJ,FlammerJ:Toxicopticneuropathyduetocisplatintherapy:acasereport.?????????????????????????222:244-247,200512)ForoozanR,BuonoLM,SergottRCetal:Retrobulbaropticneuritisassociatedwithin?iximab.????????????????120:985-987,200213)tenTusscherMP,

全身用剤による角膜障害

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page10910-181008\100頁JCLSではTS-1?投与開始から眼症状を自覚するまでの期間は平均3.1カ月であった2).自覚症状としては霧視が多く,羞明,流涙,異物感,開瞼困難を訴えることもある.診断のポイントは問診によって抗癌薬を内服しているかを聞き出すことと,つぎに述べる特徴的な角膜上皮障害を認めるかである.TS-1?による角膜上皮障害の特徴は両眼性であること,epithelialcrackline*1を伴うことが多いことである.結膜充血は認めず,結膜上皮障はじめに角膜に影響を及ぼす全身投与薬としては,表1のような薬剤があげられる.なかでも最近の日常診療で出会う可能性が高いのは,抗癌薬のテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル剤(TS-1?:ティーエスワン)と抗不整脈薬のアミオダロンである.特に前者は近年,涙液を介して角膜上皮障害を生じる薬剤として非常に注目されている.本稿では抗癌薬TS-1?による角膜上皮障害とアミオダロン角膜症について解説する.I抗癌薬による角膜上皮障害角膜に影響を及ぼす抗癌薬としては5-フルオロウラシル(5-FU)系の薬剤が重要であるが,そのなかで最も注意が必要なのは,TS-1?である.TS-1?は1999年に厚生省により認可された新しい経口抗癌薬であり,5-FUのプロドラッグであるテガフールに5-FUの分解酵素阻害薬ギメラシルと消化管毒性を軽減するためのリン酸オテラシルカリウムを配合したものである1)(図1).現在,国内では胃癌,結腸・直腸癌,頭頸部癌,非小細胞肺癌,手術不能または再発乳癌,膵癌で保険適用が承認されている.経口で投与でき,同じ5-FU系抗癌薬であるテガフール・ウラシル配合カプセル剤(UFT?)と比較しても高い5-FUの血中濃度が長時間得られることから,その有用性は高く,近年投与患者数が増加(2005年の年間使用患者数は約10万人)している薬剤である.眼のおもな副作用は角膜上皮障害である.筆者らの調査(27)???*YukaHosotani:兵庫医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕細谷友雅:〒663-8501西宮市武庫川町1-1兵庫医科大学眼科学教室特集●眼科における薬剤副作用あたらしい眼科25(4):449~453,2008全身用剤による角膜障害??????????????????????????????????????????細谷友雅*表1角膜に影響を及ぼす全身投与薬角膜に沈着するもの適応症アミオダロンクロロキンクロファジミン金製剤インドメタシンナプロキセンクロルプロマジンキナクリンタモキシフェン不整脈マラリア,慢性関節リウマチHansen病慢性関節リウマチ炎症炎症精神病マラリア乳癌角膜上皮障害を起こすものフルオロウラシル製剤(5-FU)シタラビン悪性腫瘍急性白血病,膀胱腫瘍*1Epithelialcrackline:薬剤性角膜障害に特徴的な所見とされる,角膜中央やや下方に水平方向に生じるひび割れ状のラインのこと.樹枝状角膜炎と鑑別が必要であるが,terminalbulbを認めず,全体的に混濁して周辺にSPK(点状表層角膜症)を認めることが特徴である.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(28)ロジー*2による診断を兼ねた上皮?離が治療としても有効であった.本症が疑われた場合はまず内科や外科の主治医に連絡し,抗癌薬の中止が可能な状況か相談することが望ましいが,全身的な理由で投与中止が不可能な患者も多い.筆者の経験では角膜上皮障害が完治した症例は,薬剤投与が中止できた症例,あるいはUFT?への変更を行った症例に限られていた.以下に代表的な症例を示す.〔症例1〕72歳,男性.胃癌術後の肝転移に対してTS-1?が投与され,投薬開始より9カ月後に左眼の羞明,かすみを訴え受診した.視力はVD=0.3(0.7×sph-2.25D?cyl-3.00DAx65?),VS=0.5(矯正不能)であり,両眼に角膜上皮障害を認めた(図3a~d).右眼には角膜中央の一部を除いて,輪部を含むほぼ全面に角膜上皮障害を認め,左眼にはepithelialcracklineを伴う角膜全面の上皮障害を認めた.高度の角膜上皮障害を呈することとは対照的に,両眼ともに結膜上皮障害,充血を認めなかった.涙液中5-FUのwashoutを目的とした防腐剤フリーの人工涙液頻回点眼などの治療を行った.TS-1?内服は全身的な必要性から続行された.点眼で一時所見が改善し,自覚症状も軽減したが再度増悪し,治癒を得られないまま永眠された.害がないことも特徴である.上皮の異形成をきたし,不正乱視による視力低下を伴う症例や涙小管狭窄を呈する症例も報告されている.筆者の経験では,上下眼瞼に隠れた部分の角膜にのみ変化を認める症例があり,一見して片眼性の病変と思われても,僚眼の眼瞼に隠れた部分にも病変がないかをしっかりと観察することが必要である.鑑別疾患として,点眼薬による角膜上皮障害やドライアイがあげられるが,前者は詳細な問診を行うことで鑑別可能である.後者は結膜上皮障害を伴うことが多いこと,ドライアイでは涙液減少を認めるが,TS-1?による角膜上皮障害では涙液量は十分であることから鑑別可能である.発症の機序としては,涙液中に分泌された5-FUが角膜上皮細胞を障害すると考えられる(図2).5-FUは細胞のDNA,RNA合成を阻害することで抗腫瘍効果を発揮するが,角膜上皮の基底細胞は活発に分裂しているため,この細胞分裂が阻害されて角膜上皮障害をきたす.また,外傷などで広範囲に角膜上皮が障害されると輪部の幹細胞の分裂が活発になることが知られているが,幹細胞の位置する輪部上皮基底細胞にも増殖抑制が生じていることが推察される.治療は防腐剤を含まない人工涙液を1日6~10回点眼し,眼表面に滞留する5-FUを洗い流すのが基本である.ヒアルロン酸点眼液は,薬剤の眼表面での滞留時間を延長させる可能性があり,筆者は使用していない.上皮の異形成を認めた症例では,インプレッションサイト*2インプレッションサイトロジー:眼表面の細胞診の方法である.セルロース膜を用いて角膜や結膜の最表層上皮を採取し,PAS(過ヨウ素酸フクシン)染色などを行う.図1TS-1?の特徴テガフールは体内で5-FUに分解される.ギメラシルは5-FUの分解を抑制し,高い5-FU血中濃度を維持することが可能である.テガフール:5-FUのプロドラッグギメラシル:5-FUの分解酵素阻害薬オテラシルカリウム:消化管での5-FU活性抑制⇒消化管毒性軽減この3剤の合剤抗癌作用↑テガフール5?FU体内での分解が阻害され血中5-FU濃度が上昇ギメラシル(=分解阻害薬)体内で分解———————————————————————-Page3図3症例1の初診時前眼部写真a:右眼.矯正視力は0.7で結膜充血を認めない.b:右眼のフルオレセイン染色.中央部を残しほぼ全域に角膜上皮障害を認める.c:左眼.視力0.5(矯正不能)で結膜充血を認めない.d:左眼のフルオレセイン染色.全面に角膜上皮障害を認めepithelialcracklineを伴う.(文献2より)〔症例2〕65歳,男性.胃癌術後の再発予防にTS-1Rが投与されており,投薬開始より4カ月後に両眼のかすみを訴えて受診した.視力はVD=1.0(矯正不能),VS=0.4(1.0p×sph-0.25D..cyl-2.00DAx100°)であり,両眼にepithelialcracklineを伴う角膜上皮障害を認めた(図4a~d).両眼ともに結膜上皮障害,充血は認めなかった.TS-1Rの内服を中止し,人工涙液の頻回点眼を行ったところ,所見と自覚症状は改善した.〔症例3〕74歳,女性.胃癌術後の再発予防にTS-1Rが投与されており,投薬開始より5カ月後の近医受診時,左眼の角膜上方に点状表層角膜症を認めた.投薬開始14カ月後には両眼の角膜に点状表層角膜症を伴う,フルオレセイン染色性の異なる地図状の異常上皮を認め(図5a,b),視力障害も出現した.TS-1Rの投与を中止し,人工涙液の頻回点眼を行ったが,2カ月待っても視力改善が得られないため,兵庫医科大学病院眼科を受診した.視力はVD=0.5(1.0×cyl-1.50DAx60°),VS=0.1(矯正不能).異常上皮による角膜不正乱視を認めた(図6).輪部は保たれており,結膜充血を認めなかった.治療を兼ねてインプレッションサイトロジーを施行した.処置後,異常上皮の範囲は縮小し,視力も改善した.異常上皮の起源が角膜上皮か結膜上皮かを同定することはできなかった.IIアミオダロン角膜症アミオダロン(アンカロンR)は,難治性不整脈に優れた効果を示す治療薬であり,1962年に開発されて以来,現在でも頻用される治療薬である.しかし,眼科的には———————————————————————-Page4図4症例2の初診時前眼部写真a:右眼.視力は1.0で結膜充血を認めない.b:右眼のフルオレセイン染色.Epithelialcracklineを伴う角膜上皮障害を認める.c:左眼.矯正視力1.0pで結膜充血を認めない.d:左眼のフルオレセイン染色.Epithelialcracklineを伴う角膜上皮障害を認める.図5症例3の前眼部フルオレセイン染色写真角膜にフルオレセイン染色性の異なる地図状の異常上皮を認める.a:右眼.矯正視力は1.0.b:左眼.視力は0.1(矯正不能).———————————————————————-Page5図6症例3のフォトケラトスコープ写真図7アミオダロン角膜症角膜の下方2/3に集束する褐色の色素沈着を認める.異常上皮の存在する部分に一致して,マイヤーリングの乱れを認める.左眼は中央のリングにも乱れを認める.有名な角膜症をはじめ,白内障,視神経症などの合併症が報告されており,視力低下の原因となることもある.このうち角膜症は,アミオダロン投与開始1~3カ月後に出現し,発症率は約6~9割といわれている.両眼性で,角膜下方1/3の上皮内に褐色の線状色素沈着を認める4,5)(図7).角膜上皮の基底細胞内にリポフスチンを含む沈着物が認められるが,発症機序はいまだ不明である.自覚症状はほとんどないことが多く視力も低下しないが,まれに羞明,色視症,虹視症を訴えることがある.診断のポイントは薬剤内服歴の聴取である.初期のアミオダロン角膜症は,健常者にみられるHudson-Stahli線との鑑別がむずかしいことがあるが,アミオダロン角膜症の色素沈着は『猫ひげ状』あるいは『箒で掃いたような』と表現され,Hudson-Stahli線よりも細かい分岐が多い.経過とともに角膜中央よりもやや下方に中心をもつ渦状,放射線状の色素沈着がみられるようになる.鑑別疾患としてFabry病,他の薬剤性角膜障害などがあげられるが,家族歴の有無や内服既往歴の聴取が鑑別に役立つ.色素沈着のみで特に症状がなければ,経過観察としてよい.通常は角膜症のみでは視力低下はきたさないが,視力障害を認める場合は視神経症を合併していないか注意が必要である.角膜の色素沈着はアミオダロン内服を中止すると軽減する.稿を終えるにあたり,ご校閲いただいた市立豊中病院眼科部長細谷比左志先生および三村治教授に深謝いたします.文献1)ShirasakaT,ShimamotoY,OhshimoHetal:Developmentofanovelformofanoral5-fluorouracilderivative(S-1)directedtothepotentiationofthetumorselectivecytotoxicityof5-fluorouracilbytwobiochemicalmodulators.AnticancerDrugs7:548-557,19962)細谷友雅,外園千恵,稲富勉ほか:抗癌薬TS-1Rの全身投与が原因と考えられた角膜上皮障害.臨眼61:969-973,20073)EsmaeliB,GolioD,LubeckiLetal:Canalicularandnasolacrimalductblockage:anocularsideeffectassociatedwiththeantineoplasticdrugS-1.AmJOphthalmol140:325-327,20054)川本晃司,近間泰一郎,西田輝夫:日常みる角膜疾患アミオダロン角膜症.臨眼60:672-674,20065)金井要,村山耕一郎,米谷新:生体共焦点顕微鏡を用いたアミオダロン角膜症の観察.臨眼56:1094-1098,

消毒液,洗浄液による角膜障害

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———————————————————————-Page10910-181008\100頁JCLSれれば上皮?離は修復するが,界面活性剤作用や蛋白変性作用により内皮細胞にまで浸透する可能性が高く,予後は内皮機能の修復状態に左右される.初期治療を適切に行うことが重要であり,以下に治療について述べる.1.急性期治療誤用した場合は洗眼後すぐに角膜白濁をきたすことがほとんどであり,直後に気づくことが多い.異変に気づいた場合はすぐに生理食塩水などで洗眼を少なくとも15分は行う.そのあとpHを確認するが,ヒビテン?の場合は浸透度が高いと考えられるため,pHが中性域に入っていても最低1時間は洗浄したほうがよい.洗眼後に角膜上皮損傷の範囲を確認し,重症度を判定する.注意点として受傷早期にフルオレセインで染色できないことがあるため,直後に上皮損傷が確認されていなくても翌日以降に再度染色し上皮損傷の範囲を確認する必要がある.はじめに筆者らは眼感染症の予防のために手術の際には消毒液にて洗浄し,コンタクトレンズ感染症の予防のためにコンタクトレンズは消毒剤の入った洗浄液で洗浄している.本稿では,このように日常的に用いられる消毒液や洗浄液によって生じる可能性のある角膜障害について述べる.I消毒薬による角膜化学腐蝕消毒薬の誤用で起こった化学腐蝕の原因として,高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(ヒビテン?)やヒビテンアルコール?があげられる1).一般的に化学腐蝕の程度は接触時間,薬剤のpH,直後の処置の有無によって異なり,角膜上皮障害の範囲と程度,薬剤の浸透度が経過および治療予後に直接関与する.特に角膜上皮のstemcell損傷の有無が上皮修復に大きく影響するため2),フルオレセイン染色を用いて上皮損傷の範囲を確認し,どのように修復されるかを推測する(表1).Grade1,2では予後良好であるが,Grade4は予後がきわめて不良である.Grade3では初期治療により予後が左右される.ヒビテン?で起こった症例はGrade3であることが多いため,初期治療が適切に行わ(21)???表1急性期の重症度分類Grade結膜所見角膜所見1結膜充血角膜上皮欠損なし2結膜充血角膜上皮欠損あり(部分的)3a結膜充血あるいは部分的壊死全角膜上皮欠損,輪部上皮一部残存3b結膜充血あるいは部分的壊死全角膜上皮欠損,輪部上皮完全消失4半周以上の輪部結膜壊死全角膜上皮欠損,輪部上皮完全消失結膜および角膜の障害範囲により重症度が分類される.(文献2より)*YoNakamura:四条ふや町中村眼科〔別刷請求先〕中村葉:〒600-8005京都市下京区立売東町24番地みのや四条ビル2F四条ふや町中村眼科特集●眼科における薬剤副作用あたらしい眼科25(4):443~447,2008消毒液,洗浄液による角膜障害??????????????????????????????????????????????????中村葉*———————————————————————-Page2———————————————————————-Page3———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(24)2.MPS消毒a.原因MPSによる角膜障害は,MPSに含まれる消毒成分が原因と考えられている6,7).MPSには,ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)もしくは塩化ポリドロニウムのいずれかが配合されているが,PHMBのほうが角膜障害を起こすリスクが高いことが報告されている8).消毒中にSCLに吸着した消毒成分が,SCL装用時に排出され角膜を障害することで発生する可能性が高い.消毒成分の吸着および排出動態は,MPSの消毒成分とSCL素材の違いで異なるため,その組み合わせによって角膜障害の程度も異なる8).b.所見MPSによる角膜障害は角膜の前面もしくは周辺に,びまん性の点状表層角膜症としてみられる.ドライアイなどによる上皮障害とは違い,障害されるのは角膜のみで球結膜に点状の染色はみられない.この角膜障害は,過酸化水素消毒剤による角膜障害と異なり,患者が無自覚である場合が多く,SCL上からでは細隙灯顕微鏡を用いても検出できないほど深度の浅いものが多い.したがって,MPSを使用しているSCL装用者の場合,自覚はなくともSCLをはずしフルオレセインで染色して観察することが望ましい.c.治療一時的にレンズの装用を中断し,上皮の修復を促すように人工涙液の頻回点眼により軽快する場合が多い.さらに,前述したようにMPSの消毒成分とSCL素材により障害の程度が異なるため,相性を検討しMPSの種類の変更を行うことが原因の除去につながる.より障害性の低いものを選択するのがよいが,角膜に対する安全性が高いMPSは消毒効果が低くなる傾向にあることが報告されており9),安全性と消毒効果のバランスを考慮したうえで変更する必要がある.d.症例MPSの種類を変更することで,角膜障害が改善した症例である.〔症例〕37歳,男性.初診時:シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(SHSCL)装用者で,PHMBを含むMPSを使用していとが多いが,ヒビテン?を使用する場合には,界面活性剤を含まないこと,アルコール希釈していないことおよび濃度について確認することが必要である.IIコンタクトレンズケア用品による角膜障害ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用者において,洗浄消毒剤との関連が疑われる角膜障害が観察される場合がある.SCLケア用品による角膜障害としては,過酸化水素消毒剤による角膜障害4),マルチパーパスソリューション(MPS)による角膜障害5)などがあげられる.1.過酸化水素消毒過酸化水素消毒剤は強い酸性であるためSCL消毒後の中和が必要であるが,中和を忘れた場合,あるいは中和時間が不足した場合,残留した過酸化水素が重度の点状表層角膜症を起こす.この角膜障害は,眼刺激症状,充血,疼痛といった自覚症状を伴うが,レンズの装用を一時中断し上皮の修復を促すように人工涙液の頻回点眼および消炎により軽快する.図6平成19年12月より改訂された2種類のヒビテン?のラベル線で囲んだ部分に眼への使用に関しての注意事項が記されている.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???(25)4)針谷明美:過酸化水素消毒の誤用.あたらしい眼科21:771-772,20045)丸山邦夫,横井則彦:マルチパーパスソリューション(MPS)による前眼部障害.あたらしい眼科18:1283-1284,20016)LebowKA,SchachetJL:Evaluationofcornealstainingandpatientpreferencewithuseofthreemulti-purposesolutionsandtwobrandsofsoftcontactlenses.?????????????????29:213-220,20037)JonesL,MacdougallN,SorbaraLG:Asymptomaticcor-nealstainingassociatedwiththeuseofbala?lconsilicone-hydrogelcontactlensesdisinfectedwithapolyaminopro-pylbiguanide-preservedcareregimen.?????????????79:753-761,20028)工藤昌之,糸井素純:O2オプティクスと各種ソフトコンタクトレンズ消毒剤との組み合わせによる安全性.あたらしい眼科24:513-519,20079)Santodomingo-RubidoJ,MoriO,KawaminamiS:Cyto-toxicityandantimicrobialactivityofsixmultipurposesoftcontactlensdisinfectingsolutions.??????????????????????26:476-482,2006た.自覚症状はなかった.SHSCLをはずしフルオレセインで染色すると,角膜全面に点状染色があった.障害は角膜のみで球結膜に点状の染色はなかった(図7).経過:SHSCLの装用を一時的に中断し,人工涙液の頻回点眼で経過を観察した.翌日には,角膜障害は改善していた.MPSの種類を変更し,SHSCLの装用を再開して経過を観察したが,角膜上皮障害は再発しなかった(図8).文献1)中村葉,稲富勉,西田幸二ほか:消毒薬による医原性化学腐蝕の4例.臨眼52:786-788,19982)木下茂:化学腐蝕,熱傷.角膜疾患への外科的アプローチ(真鍋禮三,北野周作監修),p46-49,メジカルビュー社,19923)外園千恵:眼外傷.あたらしい眼科22(臨増):218-220,2005図7PHMBを含むMPS使用者の角膜障害角膜の全面にびまん性の点状染色があった.図