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メタボリックシンドロームとカロリー制限-糖代謝を中心に-

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSIIインスリンシグナルとインスリン抵抗性インスリンはその受容体に結合後,内在のチロシン残基が自己リン酸化されて活性化する.活性化した受容体はその下流にあるinsulinreceptorsubstrate(IRS)やSrchomologyandcollagenprotein(Shc)などをリン酸化する.IRSは代謝作用を調節するphosphatidylinosi-tol-3kinase(PI3K)経路を,Shcは増殖作用を調節すIメタボリックシンドロームとは肥満を基盤として高血圧,糖代謝異常,脂質代謝異常が心血管疾患発症の背景に存在し,このような危険因子を合併した病態がメタボリックシンドロームとよばれている.国際的にさまざまな診断基準が発表されているが,メタボリックシンドロームはインスリン抵抗性が病態の中心に位置している.(9)9図1インスリンシグナルとその作用機構PI3K経路MAPK経路IRSShcインスリンインスリン受容体細胞膜蛋白*HaruyoshiYamaza,TakuyaChiba&IsaoShimokawa:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科生命医科学講座探索病理学〔別刷請求先〕山座治義:〒852-8523長崎市坂本1丁目12-4長崎大学大学院医歯薬学総合研究科生命医科学講座探索病理学特集●眼の病い─生活習慣病が原因あたらしい眼科25(1):914,2008メタボリックシンドロームとカロリー制限─糖代謝を中心に─RelationshipbetweenMetabolicSyndromeandCaloricRestrictioninGlucoseMetabolism山座治義*千葉卓哉*下川功*———————————————————————-Page210あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008(10)ぼ一定に保たれているが,インスリンがその中心的な役割を演じている.グルコースの細胞内への取り込みは,骨格筋や脂肪組織ではインスリン依存性にグルコース輸送体(glucosetransporter:GLUT)4が働くが,肝臓ではインスリン非依存性にGLUT2がその役割を担い,細胞内外のグルコース濃度の格差により糖の取り込み・放出を行う.インスリンはグルコキナーゼ(glucokinase:GK)や解糖系の調節酵素であるホスホフルクトキナーゼ-1,グリコーゲン合成酵素の遺伝子発現を増加させ,グリコーゲン分解や糖新生の律速酵素であるホスホリラーゼキナーゼやホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(phosphoenolpyrubatecarboxykinase:PEPCK),グルコース6-リン酸脱リン酸化酵素(glucose-6-phos-phatase:G6Pase)の活性や遺伝子発現を抑制する.以上のことから肝細胞内のグルコース濃度が減少して,間るmitogen-activatedproteinkinase(MAPK)経路を活性化して,インスリン作用を下流に伝達する(図1).インスリンシグナルは糖(グルコース)の細胞内への取り込みや糖新生に関与する遺伝子発現の調節など糖代謝に重要な働きをするが,この一連の反応が阻害されることによりインスリン抵抗性が生じると考えられている.一方,脂肪組織は,栄養過剰時に肝臓や脂肪組織で糖から合成された脂肪酸や中性脂肪を蓄積する機能に加え,脂肪細胞がサイトカインやホルモンなどのさまざまな生理活性物質を分泌することが最近明らかになった.このような生理活性物質は総称してアディポカインとよばれており,脂肪組織はエネルギー代謝の調節に関与する生体中では最大の内分泌臓器として非常に注目されている(図2).肥大化した脂肪細胞では,遊離脂肪酸やtumornecrosisfactor(TNF)-a,レジスチンなどのアディポカインの分泌が増加し,肝臓や骨格筋におけるインスリンシグナルを障害してインスリン抵抗性を惹起する.また,インスリン感受性の調節に関与するレプチンに対する抵抗性の出現や,抗動脈硬化作用やインスリン感受性を向上させる作用をもつアディポネクチンの分泌低下をひき起こし,病態の悪化を招く.III糖代謝とインスリン抵抗性糖はおもに脳や筋肉のエネルギー源として重要であり,血糖値はさまざまなホルモンや神経作用によってほ図3肝臓における糖代謝インスリンにより遺伝子発現が影響を受ける酵素を番号(インスリンにより抑制される酵素はイタリック,亢進する酵素は下線)で示している.①:グルコキナーゼ,②:グルコース6-リン酸脱リン酸化酵素,③:ホスホリラーゼキナーゼ,④:グリコーゲン合成酵素,⑤:ホスホフルクトキナーゼ-1,⑥:ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ.グリコーゲングルコース1?リン酸グルコース6?リン酸グリセルアルデヒド3?リン酸1,3?ビスホスホグリセリン酸3?ホスホグリセリン酸2?ホスホグリセリン酸ホスホエノールピルビン酸ピルビン酸オキザロ酢酸アセチルCoA乳酸フルクトース6?リン酸フルクトース1,6?リン酸グルコースウリジン二リン酸グルコースジヒドロキシアセトンリン酸グルコースGLUT2細胞膜④①⑤③②⑥図2脂肪細胞から分泌されるおもなアディポカイン脂肪細胞の肥大化により,アディポネクチンの発現・分泌は抑制され,遊離脂肪酸やTNF-a,レジスチン,レプチンは亢進する.肥大化した脂肪細胞TNF?a遊離脂肪酸レジスチンレプチンアディポネクチン———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.1,200811(11)ウスを中心とした研究からその効果はくり返し実証され,カロリー制限による寿命延長効果に関する仮説が提唱されている2)が,実際のメカニズムについてはいまだ謎である(表1).しかし,カロリー制限動物における共通の特徴は,血中グルコースおよびインスリン濃度の減少およびインスリン感受性の亢進であり,少なくともげっ歯類においてはアディポネクチンの血中濃度の上昇とレジスチンやTNF-aの減少が観察されている.この表現型はメタボリックシンドロームとは反対であり,大変興味深いところである.筆者らはカロリー制限の寿命延長のメカニズムを解明する目的で,下垂体特異的に成長ホルモン(growthhormone:GH)をアンチセンス遺伝子によりその発現を抑制することにより,適度にGH-インスリン様成長因子(insulin-likegrowthfactor:IGF)-1系を抑制させた遺伝子改変ラットを用いて研究を行った3).この遺伝子改変ラットはカロリー制限をすることなく寿命の延長が確認されただけでなく,血中のグルコースやインスリン濃度が低下しており,アディポネクチンの血中濃度は上昇していた.さらに体重の変化や摂食量はカロリー制限下のラットと類似していた.以上のことは,カロリー制限による寿命延長効果は,GH-IGF-1系が重要であることを示唆している.Vカロリー制限における糖代謝カロリー制限ラットに糖負荷試験を行ったところ,大変興味深い結果が得られた(図4).血中グルコース濃度の変化から,カロリー制限ラットの耐糖能は対照群である自由摂食群よりも耐糖能の成績は良かった(図4a)が,そのときの血中インスリン濃度は対照群のような変化がみられず,ほぼ一定のままであった4)(図4b).ま接的にインスリン作用によりグルコースの取り込みが行われる.また空腹時は血中のインスリン濃度が抑制されることにより,肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生が亢進することにより肝細胞内のグルコース濃度が上昇し,グルコースが細胞外に放出されて血糖値が保たれている(図3).このように血糖値は,インスリンによるグルコースの細胞内への取り込みと糖新生の抑制のバランスによって維持されているが,インスリン抵抗性が生じるとインスリン作用の減弱によりこのバランスが崩壊し,耐糖能の障害が生じる.アディポカインの一つであるアディポネクチンは,肝臓や骨格筋においてアデノシン一リン酸(adenosinemonophosphate:AMP)キナーゼを活性化する.活性化したAMPキナーゼは,肝臓での糖新生の律速酵素であるPEPCKやG6Paseの発現を抑制し,骨格筋ではインスリン非依存性にGLUT4の細胞膜への移行を促進する.また脂肪細胞では,インスリン抵抗性に関与するTNF-aの分泌を抑制する.しかしアディポネクチンは脂肪細胞が肥大化するとその発現・分泌量が減少し,その結果,糖代謝のバランスの崩壊やインスリン抵抗性を増悪させる.IVカロリー制限食事をするときに満腹になるまで食べるよりも腹八分に抑えるほうが健康にいいとよくいわれるが,実験室レベルではそのことが実証されている.つまり,ラットやマウスなどのげっ歯類に摂食量の6070%の餌を与えると,自由に餌を摂取できる対照群(自由摂食群)よりも平均寿命や最大寿命が延長し,老化現象や疾患の発症を遅延または抑制できる1).特定の栄養素を制限するのではなく摂取量を抑制することからカロリー制限といっているが,その効果はげっ歯類にだけではなく,酵母から線虫,ショウジョウバエなどの下等生物,さらには現在進行中である米国でのサルを用いたカロリー制限でもげっ歯類と同様の生理学的変化が観察されている.このことから,カロリー制限による抗老化・寿命延長作用には進化論的に保存された機構の関与が示唆される.1935年,MacCayらがカロリー制限により実験動物の寿命が延長することを初めて報告して以来,ラット・マ表1カロリー制限のメカニズムに対する仮説仮説脂肪仮説代謝仮説スス仮説グルースインスリン仮説仮説ルメシス仮説———————————————————————-Page412あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008(12)けるインスリン感受性の亢進にはアディポネクチンが大きく関与していることが考えられる.カロリー制限ラットの肝臓において,糖新生の律速酵素であるPEPCKの遺伝子発現および酵素活性は,摂食直後に一時的に減少するが,カロリー制限では自由摂食群よりも高い状態にある8).また,GKや解糖系とクエた,グルコースを投与したカロリー制限ラットにおいて,肝臓や骨格筋でのインスリン受容体のリン酸化レベルも有意に上昇しなかった5).このことはカロリー制限では糖代謝においてインスリン非依存性のシステムが存在することを示唆するものであり,今後の研究課題である.さらに18カ月齢から4カ月間カロリー制限を行ったラットの糖負荷試験では,耐糖能の改善がみられ(図4c),グルコース濃度がピークとなるグルコース投与後15分の血中インスリン濃度は,対照群よりも低値であった6)(図4d).またカロリー制限ラットのインスリン負荷試験では,対照群よりも早く血中グルコース濃度が減少した4)(図5).以上のことから,カロリー制限は耐糖能を改善するとともにインスリン感受性を亢進するといえる.そしてアディポネクチンは,カロリー制限によってその血中濃度が上昇すること7),18カ月齢から4カ月間カロリー制限を行ったラットにおいても血中濃度が上昇する(未発表データ)ことから,カロリー制限にお図4耐糖能試験におけるカロリー制限の影響生後6週よりカロリー制限を行った6カ月齢のラットのグルコース濃度(a)とインスリン濃度(b)の変化.18カ月齢より4カ月間カロリー制限を行ったラットのグルコース濃度(c)とインスリン濃度(d)の変化.(文献4,6より改変)180a12060204060時間(分)グルコース濃度(mg/d?)80100120:対照群:カロリー制限群:対照群:カロリー制限群:対照群:カロリー制限群00250c2001501005030時間(分)グルコース濃度(mg/d?)6090対照群カロリー制限群005d4321対象インスリン濃度(ng/m?):0分:15分0120b10040206080102030時間(分)インスリン濃度(ng/m?)40506000図5インスリン負荷試験におけるカロリー制限の影響(文献4より改変)12010040206080204060時間(分)グルコース濃度(mg/d?)80100120:対照群:カロリー制限群00———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.1,200813(13)カロリー制限においてはショウジョウバエや哺乳類においても,その相同蛋白質の発現が上昇している報告がある14,15).この蛋白質は,グルコース濃度の減少により活性が上昇し16),またインスリン/IGF-1シグナル伝達系との関連も示唆されており16,17),カロリー制限のメカニズムを解明する分子の一つであることが示唆されている.Sir2の哺乳類相同蛋白質であるSirT1は,転写共役因子peroxisomeproliferationactivatedreceptor(PPAR)gcoactivator(PGC)-1aと相互作用して脱アセチル化をすることにより,絶食時の糖代謝関連酵素の遺伝子発現を制御していること,PGC-1aはFoxO1と相互作用してインスリンによる糖新生を制御している18)ことから,これらの分子の関係はカロリー制限での転写制御に重要な役割を演じていることが推察される.厚生労働省によると,中高年の男性の2人に1人,女性の5人に1人がメタボリックシンドロームもしくはその予備軍といわれている.食生活を含む生活習慣の欧米化に伴い,患者および予備群はさらに増加することが十分に予想されることから,その予防対策は急務である.カロリー制限の特徴はメタボリックシンドロームと反対の状態にあり,カロリー制限の抗老化・寿命延長機構を解明することは,メタボリックシンドロームへの治療法・予防法の開発につながっていくであろう.文献1)WeindruchR,WalfordRL:Thereductionofaginganddiseasebydietaryrestriction.CharlesCThomasPublish-er,Springeld,IL,USA,19982)MasoroEJ:Overviewofcaloricrestrictionandaging.MechAgeingDev126:913-922,20053)ShimokawaI,HigamiY,UtsuyamaMetal:Lifespanextensionbyreductioningrowthhormone-insulin-likegrowthfactor-1axisinatransgenicratmodel.AmJPathol160:22592265,20024)YamazaH,KomatsuT,ChibaTetal:Atransgenicdwarfratmodelasatoolforthestudyofcalorierestric-tionandaging.ExpGerontol39:269272,20045)山座治義,小松利光,樋上賀一ほか:長寿ラットにおけるグルコースインスリン機構;カロリー制限とGHIGF1系抑制の影響.基礎老化研究29:2529,20056)ParkS,KomatsuT,HayashiHetal:Calorierestrictioninitiatedatmiddleageimprovedglucosetolerancewith-outaectingagerelatedimpairmentsofinsulinsignalinginratskeletalmuscle.ExpGerontol41:837-845,2006ン酸回路の橋渡しをするピルビン酸デヒドロゲナーゼの活性は,摂食後一時的に上昇するがその変化は自由摂食群に比べて小さく,解糖系を調節するピルビン酸キナーゼの活性も含めて,カロリー制限では低い状態に保たれている8).糖代謝関連の多くの酵素はインスリンの制御を受けている(図3)ことから,カロリー制限での肝臓における糖代謝は,カロリー制限の特徴である低インスリン血症と深く関連している.カロリー制限におけるグルコースの細胞内への取り込みは低インスリン血症にもかかわらず,自由摂食群よりも亢進していた.また臓器別では,骨格筋や白色脂肪組織,褐色脂肪組織などのGLUT4を発現するインスリン感受性臓器において,摂食前後に関係なくグルコースの取り込みが亢進していた9)ことから,インスリン感受性の高い状態であるカロリー制限では,グルコースを効率よく利用して血中グルコース濃度を常に低く保つことができる.さらにカロリー制限では,摂食直後は炭水化物をエネルギー源として利用し,その後は脂質を利用するという代謝のシフトが生じている10).このように,低インスリンおよび低グルコース状態やインスリン感受性の亢進,エネルギー代謝のシフトなどのカロリー制限の特徴は,カロリー制限の抗老化・寿命延長機構を明らかにする糸口になると考えられる.おわりにカロリー制限の抗老化・寿命延長機構にはまだ謎が多い.前述のようにカロリー制限では血中アディポネクチン濃度が上昇しているが,アディポネクチンのシグナルの下流に位置するAMPキナーゼは,GLUT4を細胞膜に転移させてインスリン非依存性にグルコースを細胞内に取り込むことができ,カロリー制限における重要な分子の一つと考えられている.しかし,筆者らの最近の研究により,少なくともカロリー制限下の肝臓と骨格筋ではAMPキナーゼの活性が有意に高いとは言えない11)ことから,カロリー制限でのアディポネクチンのシグナルは別の経路を活性化していることが考えられる.また酵母や線虫において,Sir2とよばれるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性脱アセチル化酵素の発現量を増加させることによりその寿命が延長し12,13),———————————————————————-Page614あたらしい眼科Vol.25,No.1,20087)YamazaH,KomatsuT,ToKetal:Involvementofinsu-lin-likegrowthfactor1intheeectofcaloricrestric-tion:regulationofplasmaadiponectinandleptin.JGeron-tolABiolSciMedSci62:27-33,20078)DhahbiJM,MotePL,WingoJetal:Caloricrestrictionaltersthefeedingresponseofkeymetabolicenzymegenes.MechAgeingDev122:1033-1048,20019)WetterTJ,GazdagAC,DeanDJetal:Eectofcalorierestrictiononinvivoglucosemetabolismbyindividualtis-suesinrats.EndocrinolMetab39:E728-E738,199910)McCarterRJ,PalmerJ:Energymetabolismandaging:alifelongstudyofFisher344rats.EndocrinolMetab26:E448-E452,199211)ToK,YamazaH,KomatsuTetal:Down-regulationofAMP-activatedproteinkinasebycalorierestrictioninratliver.ExpGerontol42:1063-1071,200712)KaeberleinM,McVeyM,GuarenteL:TheSIR2/3/4complexandSIR2alonepromotelongevityinSaccharo-mycescerevisiaebytwodierentmechanisms.GnesDev13:2570-2580,199913)TissenbaumHA,GuarenteL:Increaseddosageofasir-2geneextendslifespaninCaenorhabditiselegans.Nature410:227-230,200114)WoodJG,RoginaB,LavuS:Sirtuinactivatorsmimiccaloricrestrictionanddelayageinginmetazoans.Nature430:686-689,200415)CohenHY,MillerC,BitternmanKJetal:Calorierestric-tionpromotesmammaliancellsurvivalbyinducingtheSIRT1deacetylase.Science305:390-392,200416)LinSJ,DefossezPA,GuarenteL:RequirementofNADandSIR2forlife-spanextensionbycalorierestrictioninSaccharomycescerevisiae.Science289:1319-1332,200017)YamazaH,ChibaT,HigamiY:Lifespanextensionbycaloricrestriction:anaspectofenergymetabolism.MicroscResTechniq59:325-330,200118)RodgersJT,LerinC,HaasW:NetrientcontrolofglucosehomeostasisthroughacomplexofPCG1-aandSIRT1.Nature434:113-118,2005(14)お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.メディカル葵出版年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科HFFNVol.25月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・眼感染アレルギーなど)/新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■株式会社〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544http://www.medical-aoi.co.jp

太っていなくてもメタボリックシンドローム?  -内蔵脂肪症候群とアディポネクチンの発見

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSの増加はそのまま糖尿病患者数の増加へとつながった.国際糖尿病連盟(InternationalDiabetesFederation:IDF)が予測した将来の2025年,わが国を含めた東アジアや南アジアにおける糖尿病患者数は,肥満大陸の北Iわが国における肥満および2型糖尿病患者の動向近年,欧米諸国同様にわが国においても過栄養や運動不足といった環境因子の変化により肥満が増加している.米国における肥満患者〔bodymassindex:BMI≧30,BMIは体重指数の意味で体重(kg)/身長2(m)2〕は1990年頃より著しい増加がみられた(図1)が,わが国においても同じ頃より,特に40歳代以降の男性肥満患者(BMI≧25)の増加は顕著となった(図2).アジア人はあまり極端な体重の増加がなくても糖尿病になりやすいと考えられている.すなわち大雑把に上記のBMI≧30(身長170cmで体重87kg)の米国人とBMI≧25(身長170cmで体重72kg)の日本人がほぼ同じ割合で糖尿を発症すると考えられていたが,こうした肥満(3)3*KazuhisaMaeda&IichiroShimomura:大阪大学大学院医学系研究科内分泌代謝内科学〔別刷請求先〕前田和久:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科内分泌代謝内科学特集眼の病い生活習慣病が因あたらしい眼科25(1):37,2008太っていなくてもメタボリックシンドローム?─内臓脂肪症候群とアディポネクチンの発見─BodyWeightCannnotPredictMetabolicSyndrome─VisceralFatSyndromeandtheDiscoveryofAdiponectin前田和久*下村伊一郎*図1米国における肥満者(BMI≧30)の推移(19912000)19952000199120%:(BMI≧30)15~19%:10~14%:<10%:Nodata:60~6920~2930~3940~4950~5970~(歳)(%)35302520151050男性60~6920~2930~3940~4950~5970~(歳)女性:昭和55年(1980):平成2年(1990):平成12年(2000)図2国民栄養調査による肥満者(BMI≧25)の割合図3全世界における糖尿病患者増加の予測(20032025)(単位:百万人)IDFAtlas2003———————————————————————-Page24あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008(4)ムの必須診断基準に取り入れられているが,1980年代より筆者らが提唱してきた「内臓脂肪症候群」こそが,メタボリックシンドロームの上流の基盤病態として,重要であることが実証されたといえよう(図6).すなわち,内臓脂肪症候群とは,本来高度の肥満でなくても糖尿病を起こしやすい日本人に対するきめ細かい臨床観察研究から発見された概念である.具体的にはBMIが高くない非肥満者でも,臍部での内臓脂肪面積が100cm2を超える場合,多くの合併症が集積することが示されている.III内臓脂肪型肥満者の割合これまで正確な内臓脂肪量の測定は腹部CT(コンピュータ断層撮影)測定による内臓脂肪面積値を算出す米を追い抜いて著しく増加すると予想されているのである(図3).その一方で,同じ1990年頃より20歳代から30歳代にかけての女性の体重減少傾向が認められることは注目すべきである(図2).実はこれら出産適齢の女性のやせがわが国における小児肥満者の増加と関連していることも指摘されている.妊婦の体重増加低下すなわち過少栄養は,胎児の相対的な飢餓状態を意味する.胎内でやせた胎児の体には,太ろうとする機構が働き,倹約遺伝子ともよばれる抗肥満ホルモンが低下する.すると出生後に豊富な人工乳などにより過栄養状態に曝露されると,肥満に対する防御機構が働かず,体重増加や糖尿病をきたしやすくなるという考えである1).IIメタボリックシンドロームの概念と内臓脂肪症候群2005年4月の日本内科学会において,内科系8学会で構成されたメタボリックシンドローム診断基準検討委員会により日本人のメタボリックシンドロームの定義と診断基準が公開された(図4).メタボリックシンドロームは耐糖能異常,高脂血症,高血圧が個々人に合併する心血管病の易発症状態と定義され,動脈硬化性疾患予防の重要なターゲットになると考えられている(図5).その必須項目にあるのがウェスト周囲径,すなわち腹部肥満である.WHO(世界保健機関)やIDFをはじめ,世界中でこのウェスト周囲径がメタボリックシンドローウェスト周囲径男性85cm以上女性90cm以上(内臓脂肪面積100平方cm以上に相当する)中性脂肪値150mg/d?以上HDL(善玉)コレステロール値40mg/d?未満のいずれか,または両方収縮期血圧130mmHg以上拡張期血圧85mmHg以上のいずれか,または両方空腹時血糖110mg/d?以上以下のうち,2項目以上+内臓脂肪蓄積血清脂質異常血圧高値高血糖図4メタボリックシンドローム(MS)の診断基準(日本内科学会,2005)図5危険因子の数と冠動脈疾患の発症(JpnCircJ,2001より)0102030400123~4危険因子の数(肥満,高脂血症,高血圧,糖尿病)1.05.19.731.3メタボリックシンドローム冠動脈疾患オッズ比図6内臓脂肪がたまるといろんな病気になる皮下脂肪型肥満インスリン抵抗性糖尿病高脂血症左室機能不全高血圧冠動脈疾患睡眠時無呼吸症候群内臓脂肪型肥満????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.1,20085(5)る方法しかなかったが,コスト面や被曝の問題がある.ウェスト周囲径の測定はウェストサイズが内臓脂肪蓄積と相関することから簡便な指標として用いられるが,皮下脂肪の多寡を考慮できない.最近,筆者らは内臓脂肪を従来のCT法ではなく,12分で簡易式かつ正確に測定可能とする腹部インピーダンス法によるベルト型装置の開発に成功した2).本装置の使用によって,ウェスト周囲径のスクリーニング調査では内臓脂肪型肥満が発見できない症例を検出することができ,内臓脂肪型肥満の早期発見に役立つことも示されている.筆者らの行った検討では,内臓脂肪蓄積はすでに40歳において一般健診者の60%にも達していることが判明した(図7).本装置は特に放射線被曝の懸念される小児科領域における生活習慣病検診にも役立てられている(図8).IVバイオマーカーアディポネクチンの発見ではこうして明らかにされてきた内臓肥満およびメタボリックシンドローム発症のメカニズムあるいは治療標的となる分子は何であるか.筆者らはこの問いかけに対する答えを得るべく,1990年代後半,その発症に際し最も重要な臓器と考えられる脂肪組織の網羅的発現遺伝子の解析を行った.そして見いだしたのが,脂肪組織こそが体内で最大の内分泌臓器であるという概念(図9)と,その脂肪組織から特異的に分泌され,メタボリックシンドローム進展のkey分子であるアディポネクチンである3).アディポネクチンは当初脂肪組織中に特異的に最も高頻度に発現している遺伝子として見いだされたことから,apM1=adiposemostabundantgenetranscript1図7内臓脂肪面積≧100cm2の比率男性1,803名,検診時簡易式測定装置による.(平成16年度未来医療センターより)02040608020歳代30歳代40歳代50歳代60歳以上内臓脂肪面積(%)図8大阪大学内分泌代謝内科ウェイトマネジメント外来外来において内臓脂肪面積,安静時代謝量,運動量モニター,血清アディポネクチン濃度を基盤に介入治療を行う.内臓脂肪面積代謝率測定過去現在図9脂肪組織から多くのホルモンや蛋白質が分泌されるTNF-aPAI-1LeptinアディポネクチンHB-EGFResistinインスリン抵抗性動脈硬化高血圧症Angiotensinogen図10apM1:ヒトアディポネクチン遺伝子(apM1:adiposemostabundantgenetranscript-1)Collagen-likeFibrousDomainC1q-likeGlobularDomain11841244heartbrainlungliverkidneyovaryuterusplacentaintestinemuscleadipose????????????????????????????????????????????????????????????????????107———————————————————————-Page46あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008かになった(図13).現在,世界中から2,000件を超える論文がアディポネクチンに関して報告されているが,メタボリックシンドローム以外にも過栄養や運動不足などにより低下したアディポネクチンが癌や非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholicsteatohepatitis:NASH),炎症性腸疾患(inammatoryboweldisease:IBD)といった消化器疾患,出生時低体重などに関与するという知見も報告されている.おわりにメタボリックシンドロームの治療に向けては,高血圧,高脂血症,耐糖能異常など各危険因子の治療が重要であることは言うに及ばない.しかし,減少させるどころか増加し続ける肥満患者を前にして,薬剤療法だけでは医療経済的にも破綻をきたす.運動療法により内臓脂肪を減少させ,食事療法によりアディポネクチンを増やと命名された(図10)4).ほぼ同時期にマウス脂肪細胞cDNAライブラリーから同定されたAcrp30,AdipoQはアディポネクチンのマウスホモログであり,ゼラチン結合能をもつ血漿蛋白として精製されたGBP28はアディポネクチンと同一分子である.ヒト脂肪組織ライブラリーからapM1がクローニングされたことにより血中レベル測定系確立とともにその後,臨床病態を中心とした解析が進められた.すなわちアディポネクチンの血中濃度は肥満者,特に内臓脂肪蓄積状態に伴って低下する(図11).そして臨床データに相応すべく,細胞実験やマウスを用いた検討などを中心に多くのアディポネクチンの作用機序の解析が進められ(図12)5),内臓脂肪の減少に伴って低下したアディポネクチンが直接心循環器疾患に対して,あるいは間接的に高血圧や糖尿病などを介してメタボリックシンドローム発症に関与していることが明ら(6)0内臓脂肪面積(cm2)20051015血中アディポネクチン(?g/m?)300200100図11内臓肥満者はアディポネクチン値が低い図14メタボリックシンドローム=脂肪不全?アディポネクチン内臓脂肪面積健常者前方障害後方障害メタボリックシンドローム100cm24.0μg/m?②運動療法①食事療法図12アディポネクチンは大阪大学で発見された善玉因子である〔2007年4月現在,アディポネクチンに関する論文2,000件以上(PubMed)〕糖尿病をよくする肝臓筋肉脂肪血圧を改善する血管癌細胞もやっつける動脈硬化を防ぐ図13アディポネクチンが減るとメタボリックシンドロームになる高脂血症高血圧糖尿病心血管疾患内臓脂肪過栄養運動不足アディポネクチン癌,NASH,IBD,出生時低体重———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.1,20087forthemeasurementofvisceralfataccumulationbybio-electricalimpedance.DiabetesCare28:451-453,20053)MaedaK,OkuboK,ShimomuraIetal:Analysisofanexpressionproleofgenesinthehumanadiposetissue.Gene190:227-235,19974)MaedaK,OkuboK,ShimomuraIetal:cDNAcloningandexpressionofanoveladiposespeciccollagen-likefactor,apM1(AdiPoseMostabundantGenetranscript1).BiochemBiophysResCommun221:286-289,19965)MatsuzawaY,FunahashiT,KiharaSetal:Adiponectinandmetabolicsyndrome.AnteriosclerThrombVascBiol24:29-33,2004す.これらを包括的に管理することがメタボリックシンドロームの制御に不可欠であると考えられる.今,その改善に向けて心不全の治療を行うがごとく科学的かつ簡便な指標が明らかになってきたと考えられる(図14).文献1)GluckmanPD,HansonMA,PinalC:Thedevelopmentaloriginsofadultdisease.MaternChildNutr1:130-141,20052)RyoM,MaedaK,OndaTetal:Anewsimplemethod(7)

序説:目の病い─生活習慣病が原因

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSとはいえ,考えてみると生活習慣病はこれだけではない.現代人の「生活」には,環境や食物汚染,アレルゲン(抗原)や感染因子,交通手段の危険性などさまざまな問題が存在する.また「習慣」には,食材の好み,運動不足,ストレスなどの因子も含まれる.すなわち,遺伝子で決まること以外は,健康状態にとってすべての影響は生活習慣から来ているといえる.さらに最近の研究より生活習慣が遺伝子の発現を規定するエピジェネティックスにも影響を与える可能性が示唆されており,遺伝子そのものに加えて生活習慣が遺伝子の発現をも左右する可能性が指摘されている.これをすべて改善しようと考えるのは所詮無理がある(たとえば,ストレスが多すぎるから医師の仕事を止めるというわけにはいかない).したがって,毎日,生活や習慣からの危険に触れながら,自分でコントロールできる因子(肥満,喫煙,運動不足)を防ぐことに努力するのが現実的な対応法だろう.従来眼科では治療が優先されてきたが,これからの21世紀は予防医学の時代となっており,外来に来院される患者に対しても生活習慣病対策を含めた適切な指導が必要になってきている.ご自身の健康はもとより患者の健康のために本特集をご活用いただければ幸いである.「目を見ればその人間がわかる」と言うことがある.これは本当で,眼(眼底)は,人体で唯一臓器の血管を直接観察できる場所であるため,血管障害や血管炎などを評価するのに適している.無論,加齢黄斑変性に合併する脈絡膜新生血管のように眼だけのプロセスもあるが,糖尿病,高血圧のように多くの場合は全身疾患が網膜血管に反映されている.さまざまな網膜血管障害を伴う疾患は根本的に生活習慣病であるという認識をもつ必要がある.本特集の前半では,わが国で最近急増しているメタボリックシンドロームに注目した.これにより高血圧,高脂血症,糖尿病の合併症が高頻度に出現し,網膜静脈閉塞症や糖尿病網膜症の原因となる.眼科ジャーナルにはあまり登場しない内科の情報が紹介されており,参考になるはずである.本特集の後半は,メタボリックシンドロームと直接関係しない他の2つの「習慣」に注目する.すなわち喫煙および飲酒である.飲酒については一日に男性では2杯,女性では1杯までなら摂取したほうが,心血管イベントに対してプラスに働くなどの報告もあり,プラスマイナスを一概に論じることはできない.しかし,喫煙は加齢黄斑変性の発症,視力予後に強く関与していることは以前から多くのevidenceが存在しており,ぜひこの場を借りて訴えたいと思う.(1)1*AnnabelleAyameOkada:杏林大学医学部眼科学教室**KazuoTsubota:慶應義塾大学医学部眼科学教室あたらしい眼科25(1):1,2008目の病い─生活習慣病が原因DiseasesofLifestyleAecttheEyes岡田アナベルあやめ*坪田一男**

眼科医にすすめる100冊の本-12月の推薦図書-

2007年12月31日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.12,200716450910-1810/07/\100/頁/JCLS最近よくリーダー待望論を耳にします.企業でも,リーダー育成のための研修やコーチングが頻繁に行われるようになってきました.しかし,まだ日本では,「リーダーシップとは何か」という質問に論理的に答えきれていないのが現状だと思います.ほかに「リーダーシップは学習で身につけられるのか」「だとすれば,教えることも可能なのか」「可能ならば,どのような方法や手段で教えることができるのか」「教えることもリーダーシップの行為の一つだろうか」といった問いの答えもはっきりしていません.リーダーあるいはリーダーシップという概念は,まだまだ曖昧です.加えて,リーダーの資質やリーダーシップについては,先天的な才能という見方が前提になっており,それもまた,リーダーシップというものを正しく知るうえでの障害になっていると思います.本書の著者は文中でそのことに何度も触れています.「リーダーになれる人というのは,他者を率いるために,特別な資質を生まれながらにして神から授かっている」.このような考え方はいまでも一般的です.日本でも,メディアのインタビューに対して「力強いリーダーが現れることを待ち望みます」「今こそリーダーシップを」と答える街の人の声を聞くことがあります.そこには,まるでこの世にないものを待ちわびるような,または稀有な存在の出現を待つかのような響きがあります.リーダーは,「預言者」と同類であるかのように捉えられているとさえ感じます.また,リーダーの存在は,そのカリスマ性からもたらされるのか,どこかドラマチックに考えられる傾向もあります.しかし一方で,それが的外れであり,実は「リーダーシップとは身につけられるものであり,また身につけるものである」という考え方が出てきていることも確かです.それを裏付けるために,本書では,ハーバード・ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ教授と彼の開発した教授法を紹介しています.ロナルド・ハイフェッツ教授は,「リーダーシップは学習によって身に付けることのできる」ものであることを証明しました.彼は独自の教授方法を開発し,ハーバード・ケネディスクールの学生たちのために活用しています.本書はこの教授方法に,著者のシャロン・ダロッツ・パークス氏が切り込み,成果をまとめたものです.さて本書で著者は,今日リーダーシップへの危機感が強まっている理由には5つあり,そのうち先の2つは従来存在するもので,残りの3つは現在の独特な状況のなかで生じている,と述べています.(以下,文中より抜粋)①すべての人に潜む,何らかの決定権への欲求影響力,権力,物事を変革する権限などを行使し,人の役に立ったり,何かをつくり上げたりしながら,他者をリードしたいという欲求だ.②オーソリティ(権威,権力)への欲求歴史を通じて,人間の社会集団の中には,必ずこの欲求があった.オーソリティによる方向づけがあれば,安心感が得られるためだ.ストレスや不安の多い時代には,この傾向が顕著になる.③目まぐるしく複雑化するシステムに対応できるリーダーシップへの欲求システムの複雑化は,機械・電子工学,経済,政治,環境などの領域で,接続性の向上や相互依存型システムの構築が進んだことによるもの.④複雑化にともなう変化の深さ,広さ,速さに,適切に対応できるリーダーシップへの欲求⑤「公共の利益」に貢献するリーダーシップへの欲求新しい環境のもと,道徳の規範も変わりつつある.リ(95)■12月の推薦図書■リーダーシップは教えられるシャロン・ダロッツ・パークス著中瀬英樹訳(ランダムハウス講談社)シリー78◆伊藤守株式会社コーチ・トゥエンティワン———————————————————————-Page21646あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007ーダーも,環境が様変わりするなかで重大なことを決定しなくてはならない.また考え方の多様化を考慮して,当然とされてきた価値観に揺さぶりをかける必要もある.こうした中,道徳面での想像力,精神面での大胆さを発揮して「公共の利益」に寄与するリーダーシップが求められている.本書は,リーダーシップそのものについての分析ではなく,いかにしてリーダーを育成することができるのか,またリーダーシップを教えることの可能性について説いています.ハイフェッツたちは60名余の学生とともにリーダーシップ育成に関するリサーチをはじめ,そのプロセスを通して,新しいタイプのリーダーの育成が可能であることを証明していきます.それを検証するために,観察,インタビュー,分析を基に,つぎのような側面から進めています.○理論○教え方(教授法)○学生の経験談本書では,リーダーを育てる効果的な方法として,コーチングにも着目しています.「複雑な実践の場で生き抜くための知恵は『教えられる』だけでは身につかない.それより実際の経験のほうがものをいう.必要なのは,学習者に『その職業の流儀』を伝え,彼らを『正しい教え方』で導くことのできる指導者である.この人たちがそれぞれの目的や方法にもとづいて,学習者が本当に学ぶ必要のあることを見きわめればよい」.「そして,実践と優れたコーチング技術にもとづく学習経験について,研究すべきだ.ただし次の考え方を前提にすること.『演習やコーチングのプロセスは,理論的に構築できる.限度はあるにせよ,理論によって解き明かせる』.」(文中,ドナルド・シェーン著「EducatingtheReectivePractitioner」からの抜粋引用)これらを読んでも,リーダーの育成は決して偶然ではなく,理論的であることを求められていることが理解できます.本書では,リーダーシップは教えることができることを主張していますが,上記抜粋からもわかるとおり,リーダーを育てるときの基本は,個別対応であることが重要です.もちろん,グループワークは必要とされますが,組織内におけるリーダー候補にはコーチをつけ,個別に教育する必要があるでしょう.ハイフェッツとその同僚は,一つの教授法として,「ケース・イン・ポイント」を示しました.実は,ケース・イン・ポイント教授法の基礎には,確立された伝統的な学習方法が活きています.その内容は,セミナー,シミュレーション(講義,テキスト,映像などを併用),ディスカッションとダイアログ,臨床心理学,コーチング,研究室やアート・スタジオの活用,考えを深め整理することを目的とした文章執筆,そしてケースメソッドなどです.これらを用いて,リーダーシップを教授するという試み,そしてそのプロセスを本書では紹介しています.当然その過程では,従来のリーダーシップのイメージとの葛藤が続きます.リーダーシップ理論の専門家の間では,すでに指揮統制型のマネージメントをする英雄的なリーダーシップ・モデルは,おおむね否定されています.しかし,この英雄的なリーダーシップ像は,単なるモデル以上のものとして浸透しているのも事実です.今日の社会のリーダーといえば,CEO,CFO,社長,国会議員,司令官,学長,機長,会長,上司.これらの役割に期待するイメージとは,やはり,力強い,男性的,影響力がある,そういうヒーローなのです.英雄的なヒーローのイメージはアメリカの文化とともに広まったもので,無意味になったわけではありませんが,弊害も徐々に現れていると思います.医学の世界でも,オーソリティからエビデンスへのシフトが始まっているように,おそらく企業においても,リーダーの定義のシフトが始まっていると思います.「信頼の獲得」「状況分析能力」「体系的に考えること」「変化を学習する能力」「実践の中で理論を学ぶ能力」「ストレスへの対応力」「コミュニケーション能力」「コーチングの能力」「相手の言葉を理解し,周りに翻訳する能力」「不確実さを受け入れる能力」.本書は,これらの能力を効果的に学び,実践し,コーチをつけることで,「現代にマッチするリーダーの育成」の可能性を開いた一冊だと思います.☆☆☆(96)

私が思うこと8.おつきあい

2007年12月31日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.12,20071643私が思うこと●シリーズ⑧(93)普段の仕事帰りの飲み会や,地方学会の医局の飲み会などに若い医者を誘うと,是非にと付いてくるのですが,他の大学の先生たちと飲みに行こうかと誘っても,最近の若い先生たちは,「いいですよ,面倒くさいから.」といつも断られてしまいます.確かに,いつものメンバーで飲んだり騒いだりするのは楽しく,知らない人と飲んだり話したりはいやかもしれません.しかし,そういうお付き合いをしていくことで,いろいろな人たちと交流ができます.私の若いころはどうであったかというと,上の先生や教授からお誘いがあれば,小さな飲み会から海外の学会まですべてお断りをせず参加させていただいていました.3年医の秋にAAO(アメリカ眼科アカデミー)を中心にエモリー大学でのadvancedvitreoussurgerycourse,デューク大学アイセンター,マサチューセッツ眼科耳鼻科病院での手術見学を企画したツアーに樋田哲夫教授よりお誘いを受け参加しました.このツアーを企画されたのは大阪大学の田野保雄教授,東邦大学の竹内忍教授,杏林大学の樋田教授で,田野教授や竹内教授とは初対面でした.そのほか,浜松の海谷忠良先生や新潟の安藤伸朗先生たちもいらっしゃいました.昼は学会に参加し,夜はホテルの一室で飲みながら勉強のことだけでなくいろいろと語り明かしたのを思い出します.「いつもは怖そうな顔で演者に質問を浴びせていた先生がこんな気さくな先生だったなんて!」だとか,「え,この先生がこんな飲んだくれだったの?」とか目からうろこのことばかりでした.このツアーから帰ってきてはじめての学会で,ご一緒した先生や教授方からお声をかけられたときは,とてもうれしく思いました.今でも親しくお付き合いさせていただいている先生方もいらっしゃいます.また,私の留学のきっかけをつくったのも,デューク大学の見学でした.当時,ちょうど日本大学の佐藤幸裕先生(現東邦大学佐倉病院教授)と慶應義塾大学の平形明人先生(現杏林大学教授)が留学中で,いつかは自分も留学したいなと考えるようになったのが実現したものです.国内の学会でも先輩の先生方に金魚の糞のようにくっついて飲みに連れていってもらいました.福岡の網膜硝子体学会では,関西の某大学の網膜硝子体を専門にしていた先生たちと中洲を何軒もはしごしました.私がデューク大学に留学する1年前にこの時一緒に飲んでいた先生が留学されており,なんと奇遇なことかと思われます.2004年の日本眼科手術学会で現在亀田総合病院の堀田一樹先生が中心となり,全国の私と同世代の網膜硝子体術者と飲み会を開くことになりました.当時40歳前後の網膜硝子体術者が20名近く集まりました.この会0910-1810/07/\100/頁/JCLS三木大二郎(DaijirouMiki)杏林大学医学部眼科学教室1960年東京生まれ.公立阿伎留病院に1年出張,デューク大学に1年留学した以外,18年間杏林大学に居続けている珍しい医者である.専門は網膜硝子体手術.最近ようやく緊急手術を若い先生たちに振り分けることができるようになった.こよなく酒を愛し,最近では泡盛に夢中.太ってはいるが,スポーツは水泳以外は何でもこなす万能スポーツマンであると自負している.(三木)おつきあい▲第四世代?網膜硝子体術者の会———————————————————————-Page21644あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007の参加者は日本の網膜硝子体術者の第四世代であるし,このなかから将来何人の教授が誕生するだろうと思いを馳せながら語らいました.酔った勢いというのは恐ろしいもので,「○○があんなこと言うからみんな真似してしまいミスリードになるんだよ.」とか,「おまえそんなことしたら駄目だろう.」とかふだんではできないようなしかし非常に内容の濃い討論ができるものです.今まで金魚の糞だった私もそろそろ金魚として若い先生たちをこのような会に誘ってあげようと,杏林大学の若手の術者に声をかけるのですが,誰一人手を上げず,面倒くさいからいいよ,知らない人と飲むのは気を使うから僕らは僕らで行きますとむげに断られます.すでに私を含め何人もの方々が准教授,講師になられており,なかには教授になられた先生もいらっしゃいます.若手のバリバリの硝子体術者のコメントなんてなかなか機会がなければ聞くことはできませんよ.このように出会った方々とは,学会でお会いするたびに,一言お声をかけていただいたり,飲みに連れて行っていただいたり,わからない症例やあんなことこんなことをしてしまった症例などの相談にも乗ってもらい,私の人脈は形成されています.若い先生たちも,勉強も大事ですが,人と人のつながりもとても重要であることをもう一度考えてみてはいかがでしょうか.学会で大勢の前で質問はしにくいでしょうが,酔った席でさっきの発表のことですけどなんて質問するのは比較的やりやすいですよ.また,学会場で質問されるよりそういう席で質問されるほうがあなたのことを覚えてくれていますよ.次の学会で会ったとき,「ああ,あのときの○○先生だね.元気ですか.」なんて声をかけられたらとってもうれしいと思うのですが,こんなことを考えているのは私だけでしょうか.ご賛同いただける先生方がいらっしゃいましたら,今度飲みに行きませんか.三木大(みき・だいじろう)昭和63年5月杏林大学医学部眼科入局平成9年10月米国デューク大学アイセンター留学平成16年4月杏林大学医学部眼科学内講師平成17年4月杏林大学医学部眼科講師平成19年4月杏林大学医学部眼科准教授現在に至る(94)☆☆☆

硝子体手術のワンポイントアドバイス55.赤道部増殖を有する増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術(上級編)

2007年12月31日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.12,200716410910-1810/07/\100/頁/JCLSはじめに増殖糖尿病網膜症の線維血管性増殖膜は,通常後部硝子体皮質前ポケットの辺縁に沿って形成されるので,視神経乳頭から血管アーケードに沿った形状を呈することが多い.しかし,なかには赤道部近傍に線維血管性増殖膜を有する症例に遭遇することがある1,2).赤道部増殖を有する増殖糖尿病網膜症の臨床的特徴このような症例は,一般に中間周辺部から赤道部にかけて後部硝子体剥離はまったく生じておらず,硝子体が広範囲かつ面状に網膜と癒着している.軽症例では,網膜血管に沿って島状の増殖膜が孤立性に認められるが,重症例では円周状に増殖膜が融合する.このような症例では,往々にして眼底後極部の増殖性変化が軽度で,一見硝子体手術の難易度が低いと判断しがちであるが,実際には後部硝子体剥離作製が困難で,かつ赤道部の増殖膜の癒着も強固であり,手術の難易度はきわめて高い(91)(図1a,b).術後にも,硝子体再出血や血管新生緑内障をきたす頻度が高く注意が必要である.赤道部増殖を有する増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術のポイント初回硝子体手術時に確実な増殖膜処理と人工的後部硝子体剥離作製が必須であるが,周辺部の牽引が残存する場合には輪状締結術が有効な場合もある1).増殖膜処理時の視認性の確保がむずかしく,十分な散瞳を得ておく必要がある.また,周辺部の増殖膜を確実に処理するためには水晶体を摘出したほうが有利である.増殖膜はしばしば網膜と面状の強固な癒着を形成しており,一手法での膜処理は困難なことが多く,適宜双手法を併用する.後合併症のと対このような症例は,見かけ上網膜症の活動性が高くなくても,術後に再出血や血管新生緑内障を併発することが多い.初回手術時に十分な眼内光凝固を施行することが重要であるが,必要に応じてシリコーンオイルタンポナーデも考慮する.文献1)HanDP,PulidoJS,MielerWFetal:Vitrectomyforpro-liferativediabeticretinopathywithsevereequatorialbrovascularproliferation.AmJOphthalmol119:563-570,19952)澤浩,池田恒彦:前部硝子体線維血管性増殖と赤道部増殖:病態と対処法.眼科手術11:335-341,1998硝子体手術のンポイントアドイ●連載赤道部増殖を有する増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術(上級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1赤道部増殖を有する増殖糖尿病網膜症例a:後極部眼底写真.活動性の低下した増殖膜を後極に認め,一見手術の難易度は低いと判断しがちである.b:耳側周辺部眼底写真.ほぼ全周にわたって赤道部に円周方向の増殖膜を認める.後部硝子体剥離は生じておらず,膜処理の難易度は高い.ab

眼科医のための先端医療84.日本人における加齢黄斑変性の遺伝的特徴

2007年12月31日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.12,200716370910-1810/07/\100/頁/JCLS加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)は先進国,特に西欧諸国の失明の主要な原因で,全世界に約2,500~3,000万人の患者が存在し,アメリカ合衆国だけでも約1,700万人の患者が存在し,毎年約15.5万人が新たに罹患しています.特にアメリカ合衆国では約116,000人がすでに法律的に失明し,毎年約1,600人が新規に失明しています.欧米人(白色人種)はAMDに罹患した患者のほとんどが,地図状萎縮といわれるdrytypeのAMDに罹患し,10%が,より視力予後の悪い,脈絡膜新生血管(choroidalneovasculari-zation:CNV)を伴うwettypeのAMDに罹患します1).それに対して,日本人は多くがCNVを伴うwettypeのAMDに罹患します.日本人のAMDの疫学調査(久山町スタディ)では,wettypeの罹患率は0.67%,drytypeの罹患率は0.2%と全人口のうち約1%弱にAMDの患者を認めました.AMDの眼底所見における危険因子に関しても欧米人ではドルーゼン(特に軟性)の集積が重要な危険因子であるのに対し,日本人ではドルーゼンの集積(18%)よりも漿液性網膜色素上皮離(58%)のほうがより主要な危険因子となっています2).このように,欧米人と日本人においては一口にAMDといってもその表現型に大きな違いをみるわけです.世界の加齢黄斑変性の遺伝的特家族や双児を対象とした研究などにより,以前からAMDは網膜視細胞,網膜色素上皮,Bruch膜が環境因子に加えて遺伝的異常にも影響を受けて発症する疾患と考えられてきました1).近年の統計的な解析手法の進歩により,染色体上の1番長腕31(1q31),3番短碗13(3p13),4番長腕32(4q32),9番長腕33(9q33),10番長腕26(10q26)が遺伝的危険因子の候補部位とされ3),その後の研究で,そのなかでも特に,1q31と10q26にAMDとの強い相関がみられることがわかり,ついに2005年,1q31に位置し,補体経路に関与するcomplementfactorH(CFH)のY402H遺伝子多型が白色人種のAMDの危険因子として報告されました4).この事実は,現在までdrytypeとwettype双方のAMDにおいて12以上の異なった白色人種で確認されています.続いて2006年DeWanらが香港人において10q26に位置し,humanhigh-temperaturerequirementfactorA1(HTRA1)のプロモーター部位に存在するHTRA1-512(HTRA1の512b上流)とその近傍のLOC387715の一塩基多型をwettypeのAMDの危険因子として報告し5),ほぼ同時期にYangらは,白色人種でも同様の事実を確認し6),加えて,同遺伝子多型が地図状萎縮の危険因子でもあることを報告しました.日本人における加齢黄斑変性の遺伝的特一方,日本人においてCFHY402H遺伝子多型は,リスクアレル(C)をもつホモ個体(2%),ヘテロ個体(9%)はわずかにしか存在せず,AMDとの関連性は証明されませんでしたが,2007年,筆者らは,日本人においてもHTRA1-512とLOC387715の遺伝子多型をwettypeのAMDの危険因子として報告し7),それ以降,多施設で同様の報告が続いています.Humanhigh-temperaturerequirementfactorA1(HTRA1)HTRA1は10q26に存在するheatshockserinepro-teasesの一つで,1~4まで確認されているHTRAfamilyの一員です.細胞ストレスで惹起され,発生段階でtransforminggrowthfactor(TGF)bのシグナルを阻害し,妊娠および卵巣や子宮の腫瘍にも関与が示唆されており,その蛋白は比較的ユビキタスに,全身に発現しています5,7).ヒトとマウスの網膜への発現も確認されていますが,眼の発生や機能との関係はほとんど知られていません.DeWanらはHTRA1-512の遺伝子変異がHTRA1の転写活性を増強するとも報告しています5)が,それが,網膜および脈絡膜でどのような生理活性をもつかは不明です.(87)シリー第84回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊(東京医療センター感覚器センター)日本人における加齢黄斑変性の遺伝的特徴———————————————————————-Page21638あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007まとめと今後も,たとえば,さまざまな施設で行われているDNAチップを用いた新しい原因遺伝子の探索法の導入などにより,CFHY402H,HTRA1-512遺伝子多型に続き,新たな遺伝的危険因子が報告される可能性は高いと思われます.それは,たとえば,早期の遺伝子診断により疾患の発生を予測し,経過観察を行うことにより,適切な時期での治療が可能になるなどのメリットをわれわれに供与することになるかも知れません.同様にまた,それはAMDという難治性の疾患に対して,疾患原因遺伝子に対する遺伝子治療など,新たな治療法の可能性も切り開くことになるかも知れません.余談になりますが,CFHに続いて,factorB(BF)やcomplementcomponent2および3(C2,C3)などの補体経路の諸因子がAMDに関与しているという報告を受けて,筆者らの研究施設では,遺伝的に黄斑部にドルーゼンが集積し,drytypeのAMDに類似した病態を起こすカニクイザルに対し,霊長類において補体経路(C3)を,特異的に抑制する薬剤を硝子体に投与し,その病態に対する影響を評価中です.文献1)SchollHP,FleckensteinM,CharbelIssaPetal:Anupdateonthegeneticsofage-relatedmaculardegenera-tion.MolVis13:196-205,20072)UyamaM,TakahashiK,IdaNetal:ThesecondeyeofJapanesepatientswithunilateralexudativeagerelatedmaculardegeneration.BrJOphthalmol84:1018-1023,20003)MajewskiJ,SchultzDW,WeleberRGetal:Age-relatedmaculardegeneration─agenomescaninextendedfami-lies.AmJHumGenet73:540-550,20034)KleinRJ,ZeissC,ChewEYetal:ComplementfactorHpolymorphisminage-relatedmaculardegeneration.Sci-ence308:385-389,20055)DewanA,LiuM,HartmanSetal:HTRA1promoterpolymorphisminwetage-relatedmaculardegeneration.Science314:989-992,20066)YangZ,CampNJ,SunHetal:AvariantoftheHTRA1geneincreasessusceptibilitytoage-relatedmaculardegeneration.Science314:992-993,20067)YoshidaT,DeWanA,ZhangHetal:HTRA1promoterpolymorphismpredisposesJapanesetoage-relatedmacu-lardegeneration.MolVis13:545-548,2007(88)白色人種Drytype>Wettype日本人Drytype<Wettype表現型ドルーゼンの形成を認めることが多く,地図状萎縮(geographicatrophy:GA)をきたすdrytypeのAMD患者が多い.ドルーゼンが少ないもしくはまったくない“wet”typeAMDに罹患する.ドルーゼンは脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)発生の中等度リスク(18%)でしかないが,漿液性網膜色素上皮離は高いリスクである(58%).民族によって,表現型に加え,遺伝的リスクも大きな違いがある.ComplementfactorH(CFH)Y402H遺伝子多型と加齢黄斑変性(AMD)CFHY402H遺伝子多型とAMD=地図状萎縮(GA)および脈絡膜新生血管(CNV)との関連が12以上の異なった白色人種で示されている.CFHY402H遺伝子多型とAMDの関連性は証明されず,リスクアレル(C)をもつホモ(2%),ヘテロ(9%)はわずかにしか存在しなかった.Humanhigh-temperaturerequire-mentfactorA1(HTRA1)近傍のHTRA1-512およびLOC387715遺伝子多型と加齢黄斑変性(AMD)HTRA1のプロモーター部位に存在するHTRA1-512とその近傍のLOC387715の一塩基多型がwettype(CNV),drytype(GA)のAMDの危険因子として報告された.HTRA1のプロモーター部位に存在するHTRA1-512とその近傍のLOC387715の一塩基多型がwettype(CNV)のAMDの危険因子として報告された.図1加齢黄斑変性(AMD)の表現型と遺伝的リスク<complementfactorH(CFH)1q32およびhumanhightemperaturerequirementfactorA1(HTRA1512)10q26>***———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.12,20071639(89)☆☆☆■「日本人における加齢黄斑変性の遺伝的特徴」を読んで加齢黄斑変性のに的に本文にるよに人と日本人で(表現)遺伝るとま特に人で遺伝型と加齢黄斑変性ののに日本人で遺伝と加齢黄斑変性とののよとま加齢黄斑変性とのる遺伝のとま現まで遺伝にのののまま遺伝ま遺伝と遺伝けでのにるのと人まの人に遺伝「遺伝にびとる世のにのでにおまでの性る性る」とま本でる()まに「遺伝によるの」のので現吉田統彦をにるによる加齢黄斑変性のにると遺伝の性のとに遺伝にとまののでのるののよで坂本泰二

新しい治療と検査シリーズ177.開放隅角緑内障に対する選択的レーザー線維柱帯形成術

2007年12月31日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.12,200716350910-1810/07/\100/頁/JCLS条件はスポットサイズ400μm(固定),照射時間は3nsec(固定),照射出力は0.8mJから開始し,わずかに気泡が生じる最小の出力とする.照射範囲は隅角半周照射(50~60発)の報告が多いが,近年は隅角全周照射(100~120発)の報告も散見される.当施設でも隅角半周照射と全周照射で眼圧下降効果の比較検討を行ったが全周照射のほうが優れており3),現在は全周照射で施行している(表1).術後は炎症による眼圧上昇を防ぐ目的で,非ステロイド性消炎剤を1週間点眼する.合併症は術後一過性の眼圧上昇が生じることがあるが,特に問題になる症例は経験したことはない.効果の判定時期は術後1~3カ月に行う.1カ月後に眼圧が下降しない症例も2~3カ月後に徐々に眼圧が下降する症例を経験する.有効率は約70~80%で,無効例も約20~30%存在するが術前の予測は困難である.このため効果が出現するまで最低でも1カ月程度は要するので,緑内障の末期で眼圧が高い症例は適応から除外したほうがいい.術後成績はアルゴンレーザーとほぼ同等との報告が多い.SLTの術後成績を表2にまとめた.再照射に関しては,初回治療で有効であった症例のみに限定している.なお,いたずらに再照射をして手術の時期を逃さないことも肝要である.新しい治療と検ーズ(85)バックグラウンド開放隅角緑内障に対するレーザー線維柱帯形成術は1979年のアルゴンレーザーが最初である1).眼圧下降機序としては線維柱帯の熱凝固による瘢痕形成,収縮による線維柱帯組織間隙の開大に伴う房水流出の増加と考えられている.合併症としては約30~50%の症例で周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)をきたすことがあり,反復照射は逆に眼圧レベルを上昇する可能性があった.術後成績は1年で約70%,5年で約50%が有効とされており年数が経過するごとに低下する.新しい治療法1995年になり線維柱帯組織の破壊を伴わない新しいレーザー治療である選択的レーザー線維柱帯形成術(selectivelasertrabeculoplasty:SLT)が開発された2).Qスイッチ半波長Nd:YAGレーザー(波長:532nm)を用いることで線維柱帯の色素顆粒をもつ細胞のみに選択的に作用し,線維柱帯の房水流出率を改善する治療法である.線維柱帯の熱変性やSchlemm管の破壊をきたさないことが特長で,理論上くり返し照射可能と考えられている.奏効機序は不明な点が多いが,レーザーによる炎症反応の過程で線維柱帯細胞が活性化し房水流出が増加することが想定されている.治療の実際SLTには専用のレーザー装置が必要である.最近はYAGレーザーと機能を一体化したものもある.治療の実際は,術直後の眼圧上昇を抑える目的でアプラクロニジンを照射1時間前と直前に点眼し,点眼麻酔後にGoldmann三面鏡や隅角鏡を用いて線維柱帯幅全体にスポット間隔を空けずに重ならないように照射する.照射177.開放隅角緑内障に対する選択的レーザー線維柱帯形成術プレゼンテーション:菅野誠山形大学医学部情報構造統御学講座視覚病態学分野コメント:千原悦夫千原眼科表1SLTの照射条件照射部位線維柱帯幅全体スポット間隔を空けずに重ならないように照射スポットサイズ400μm(固定)照射時間3nec(固定)出力0.8mJから開始しわずかに気泡が生じる最小出力照射範囲全周(360°)照射数100~120発———————————————————————-Page21636あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007本方法の利点SLTの利点はレーザー照射による線維柱帯組織の破壊を伴わない点である.このため,術後PAS形成などの合併症もなく,くり返し照射できる点が優れている.効果としては,点眼薬1本分で永続的な効果はないが,点眼コンプライアンスの悪い症例や点眼薬アレルギーのある症例には,積極的に考慮していいと考えられる.文献1)WiseJB,WitterSL:Argonlasertherapyforopen-angleglaucoma.Apilotstudy.ArchOphthalmol97:319-322,19792)LatinaM,ParkC:Selectivetargetingoftrabecularmesh-workcells:invitrostudiesofpulsedandCWlaserinter-actions.ExpEyeRes60:359-371,19953)菅野誠,永沢倫,鈴木理郎ほか:照射範囲の違いによる選択的レーザー線維柱帯形成術の術後成績.臨眼61:1033-1037,2007(86)☆☆☆表2SLTの成績表照射野治菅野菅野ののののの文献本方法に対するコメント隅角に対するレーザー光凝固は1970年の初め頃線維柱帯(TM)を焼灼して眼圧を上げ,実験的緑内障を誘発する手段であったが,1973年KrasnovがTMにレーザーで開口すると眼圧が下がることを報告し,1979年Wiseらは開口ではなくアルゴンレーザー凝固によりTMを収縮させれば房水透過性が向上し,眼圧が下がることを発表した(argonlasertrabeculo-plasty:ALT).ALTは眼圧下降,点眼薬数の減少や日内変動の縮小に寄与することが多くの追試によって確認されたが,治療後眼圧が一過性に上昇すること,組織学的にTMに凝固瘢痕や周辺虹彩前癒着(PAS)が形成され,眼圧下降効果が長期的に減弱することが問題となった.選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)は菅野先生が記載されているように選択的に色素を含む細胞に作用し,ALTより組織破壊が少なく,くり返し凝固治療ができるという長所がある.しかしながら,眼圧の下降効果はプロスタグランジン剤1剤とほぼ同等で,効果は持続性がなく次第に減衰する.したがって,現在のSLTの適応は,薬剤副作用によって点眼治療が困難な人,点眼のコンプライアンスが悪い人などに限られると考えてよいであろう.

眼感染症:エビデンスに基づく点眼薬の使い分け

2007年12月31日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.12,200716310910-1810/07/\100/頁/JCLSはじめに細菌性眼感染症の多くは,臨床所見と塗抹標本のグラム染色結果により起因菌推定と点眼薬選択が可能であるが,臨床の現場ではほとんど行われていない.この理由としては,①幅広い抗菌力を有するキノロン点眼薬が汎用されていること,②診療中に行うグラム染色が煩雑で熟練が必要であることがあげられる.しかし,有効な点眼薬も検査を行わずに長期集中的に使用されると耐性菌出現は避けることができない.ここでは,日常診療で使用されている市販点眼薬の主要な角膜炎起因菌に対するpostantibioticbactericidaleect(PABE)を測定した砂田ら1)のデータをエビデンスとして菌種・菌群別に対する市販点眼薬の有効性を検証するが紙面の都合上,実験の詳細は砂田らの論文を参照していただきたい.また,PABEとは,細菌に抗菌薬を短時間接触させた後,抗菌薬を取り去っても持続される殺菌効果を意味する.PABE測定法の概要1.対象菌株2003年1月から12月に施行された感染性角膜炎サーベイランスに参加した24施設において分離された133株のうち,分離頻度の低い菌および感受性測定困難な菌を除いた9菌種,計93株(表1)を対象とした.2.測定市販抗菌点眼薬スルベニシリン(SBPC),セフメノキシム(CMX),トブラマイシン(TOB),ミクロノマイシン(MCR),クロラムフェニコール/コリスチン(CP/CL),エリスロマイシン/コリスチン(EM/CL),レボフロキサシン(LVFX)およびガチフロキサシン(GFLX)の8種類の市販点眼薬を用いた.3.PABE測定法一定高濃度の菌液10μlに点眼薬原液を約50μl添加・混和後4分間室温にて作用させた後,滅菌生理食塩水にて2,000倍希釈しその菌浮遊液50μlをスパイラルシステムにて定量培養後,コントロール(点眼薬無添加)と比較しその発育阻止率(,±,+,2+,3+)を求めPABEとした.種点眼薬のPABE図1に被検菌種に対する点眼薬のPABEを3+と1+~2+の2群に分けて示し,その内訳を下記に示した.7菌種・群に対して最も強い3+のPABEを示したのはMCRで,以下TOB,SBPC,GFLX,LVFX,CL,CMX,CPの順であった.1.ブドウ球菌群に対するPABETOBは97.5%,MCRは80%,SBPCは55%の株に対し3+のPABEを示した.CMX,CP/CL,EM/CL,LVFX,GFLXは87.5%以上の株に対し~1+の(81)眼感染症セミークライシスコントロール●連載(最終回)監修=浅利誠志井上幸次大橋裕一55.エビデンスに基づく点眼薬の使い分け浅利誠志*1井上幸次*2大橋裕一*3*1大阪大学医学部附属病院感染制御部/臨床検査部*2鳥取大学医学部眼科*3愛媛大学医学部眼科点眼薬選択の基本は,臨床所見および塗抹染色結果より起因菌を推定し適正に各種点眼薬を使い分けることにある.しかし,実際には広域抗菌スペクトルを有するキノロン薬の汎用に偏り,塗抹・培養検査,使い分けも軽視されている.そこで,適正治療を目的に各種起因菌に対する市販点眼薬有効性のエビデンスを紹介する.表1使用菌種と菌株数菌種菌株数()()ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌———————————————————————-Page21632あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007PABEを示した.また,メチシリン耐性ブドウ球菌群(MRS)とメチシリン感受性ブドウ球菌群(MSS)の2群においてPABEに差はみられなかった.2.溶血性レンサ球菌群に対するPABESBPC,TOB,MCRは全株に対し,CMXは50%の株に対し3+のPABEを示した.CP/CL,EM/CL,LVFX,GFLXは66.7%以上の株に対し~1+のPABEを示した.3.緑膿菌に対するPABELVFX,GFLXは全株に対し,TOB,MCRは87.5%,EM/CLは75%,SBPC,CP/CLは50%の株に対し3+のPABEを示した.CMXはすべての株に対し~1+のPABEを示した.4.GNFNB(ブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌)に対するPABETOBは全株に対し,SBPCは92.9%,MCRは71.4%の株に対し3+のPABEを示した.LVFXは1+~2+に92.9%,GFLXは1+に44.4%,3+に33.3%のPABEを示した.CMX,CP/CL,EM/CLはすべての株に対し~1+のPABEを示した.5.セラチアに対するPABEMCRは75%,GFLXは66.7%,LVFXは50%の株に対し3+のPABEを示した.SBPCは50%の株に対し~±,残りの50%の株に対し2+~3+のPABEを示した.CMX,TOB,CP/CL,EM/CLはすべての株に対し~1+のPABEを示した.6.コリネバクテリウム群に対するPABE(図1には示していない)SBPC,TOB,MCRはすべての株に対し,LVFXは57.1%,EM/CLは42.9%の株に対し3+のPABEを示した.CMXは~3+に,CP/CLは±~3+に幅広いPABEを示した.GFLXは33.3%の株に3+のPABEを示したが,66.7%の株に対しのPABEを示した.因菌種と点眼薬選択角膜炎のおもな起因菌に対するPABE(3+)を基に点眼薬の選択順位を表2に示した.ただし,このデータは,invitroの水溶性の高い条件下での結果であるため,実際の点眼抗菌薬選択に際しては,この表と感染部位への薬物動態薬力学(PK/PD),細胞毒性などを考慮して(82)表2角膜炎起因菌に対する点眼薬のPABE分布菌群()ブドウ球菌群溶血性レンサ球菌群緑膿菌セラチアコリネバクテリウムブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌0%20%40%60%80%100%3+0%20%40%60%80%100%:GlucosenonfermenterGFLXLVFXCLCPMCRTOBCMXSBPCGFLXLVFXCLCPMCRTOBCMXSBPC:??????????????:?????????????:?????????:??????????????spp?:?????????????:?????????????2+1+~図1角膜炎起因菌に対する点眼薬のPABE分布———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.12,20071633(83)決めていただきたい.特に,分子量が500以上の点眼剤(CMX,MCR,CL,EM)では組織透過性が悪い2)ため感染部位によっては良好な治療成績が得られないこともある.一方,多くの菌種に対して良好なPABEが得られたアミノ配糖体系薬(TOB,MCR)は,術前の減菌化にも効果的であるが,頻回点眼により細胞毒性が増すため点眼回数と投与期間を控えることが重要である.また,アミノ配糖体系薬は血中有効濃度から考慮した場合,溶血性レンサ球菌群には無効なため通常治療薬としては用いないが,ペニシリン系薬およびキノロン系薬との併用により優れた殺菌効果が得られることが知られている.事実,Streptococcussanguis,Streptococcussalivariusなどの溶血性レンサ球菌群による感染性心内膜炎の治療薬は,ペニシリンGとゲンタマイシンの2剤併用治療3)が世界標準とされている.この併用療法は,眼感染症治療においても治療効果が期待できるものと思われる.さらに,術後眼内炎では,房水内最高濃度値(AQCmax)に優れた薬剤が第一選択となるが,福田らの報告4)では6種汎用点眼薬のAQCmaxはLVFX,CP,EM,CMX,MCR,SBPCの順に高かったとされている.このためPABEは1+と弱くてもAQCmaxの高い薬剤も選択肢の一つとなる.治療開始後の注意としては,同一点眼薬使用後5~7日以上治療効果が得られない状態で培養検査を行った場合,菌交代現象によりその薬剤に耐性を示す菌種に変わっている5)ことが多いため単純に起因菌と判断してはならない.また,術前と術後に系統の異なる抗菌薬を用いることも菌交代現象を阻止するために重要である.まとめ耐性菌の出現が抗菌薬開発を凌駕している現在,限られた点眼薬を適正に使用することが結果的に耐性菌防止に繋がる.このためには,臨床所見より推定される起因菌と塗抹結果に基づきPABEの優れた薬剤を選択し,さらに治療開始後3日前後で治療効果が認められない場合は,培養結果,感受性結果およびPK/PDに応じて適切な点眼薬の使い分けを心掛ければ耐性菌の出現を効果的に抑えることは可能である.また,今後,非常に危惧される事項としては,溶血性レンサ球菌や腸球菌に対する第一選択薬であるペニシリン系点眼薬のサルペリンが2006年11月に製造中止となったことがあげられる.なぜなら,最も汎用されているキノロン系薬の弱点は溶血性レンサ球菌および腸球菌感染症だからである.適正な点眼薬の使い分けが行われていない施設では,今後,治療期間の延長,難治性感染症の増加,菌交代現象に伴う真菌・腸球菌の分離頻度の増加および薬剤高度耐性菌の分離頻度が一層増加するものと考えられる.点眼薬の使い分けにより優れた抗菌薬を長期有効に使用したいものである.文献1)砂田淳子,上田安希子,井上幸次ほか:感染性角膜炎全国サーベイランス分離菌における薬剤感受性と市販点眼薬のpostantibioticeectの比較.日眼会誌110:973-983,20062)新家眞:点眼薬の吸収と動態(眼内移行,流出など).眼科診療プラクティス11:387-392,19943)サンフォード感染症治療ガイド,37版,p45-50,20074)福田正道,佐々木一之:あたらしい薬動力学的指標maxi-mumconcentrationintheaqueousによる汎用抗菌点眼薬の評価.日眼会誌106:195-200,20025)浅利誠志:耐性菌感染症.臨眼57(増刊号):66-74,2003☆☆☆

緑内障:今後発売が予測される緑内障新薬

2007年12月31日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.12,200716270910-1810/07/\100/頁/JCLS平成19年10月現在,日本では15種類の緑内障点眼薬が発売されている(表1).多くの緑内障治療薬が発売されている現在,新たな治療薬の開発の余地がないように思われるが,今なお厳しい開発競争が行われている.本稿では,欧米と日本における緑内障点眼薬を比較しながら,今後日本で発売が予測される緑内障新薬を紹介する.(77)連載緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄90.今後発売が予測される緑内障新薬池田博昭*1塚本秀利*2*1広島大学病院臨床研究部*2高山眼科国内で今後発売が予測される緑内障新薬の候補として,プロスタグランジン関連薬は配合薬を含めて3種類,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬1種類,Rho-キナーゼ阻害薬3種類,a刺激薬1種類,カルシウムチャネルブロッカーは点眼および内服各1種類の計10種類があげられる.これら新薬の開発が順調に進めば,数年後には日本も欧米と同等以上の医療環境になると期待される.表1緑内障点眼薬の欧米と日本の発売状況の比較欧米日本交感神経動薬ロカルンカルール×コリンエステラーゼ阻害薬ジスチグミン×○交感神経刺激薬ab刺激薬ジピベフリン○○エピネフリン○×a刺激薬ブリモニジン○×アプラクロニジン○×交感神経遮断薬b遮断薬チモロール○○チモロールゲル○○ベタキソロール○○カルテオロール○○メチプラノロール○×ab遮断薬ニプラジロール×○レボブノロール○○a遮断薬ブナゾシン×○プロスタグランジン関連薬ウノプロストン○○ラタノプロスト○○ビマプロスト○×トラボプロスト○○炭酸脱水酵素阻害薬ドルゾラミド○○ブリンゾラミド○○2種類の薬剤を配合b遮断薬とプロスタグランジン関連薬チモロールとラタノプロスト○×b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬チモロールとドルゾラミド○×○:発売,×:未発売.平成19年10月現在.———————————————————————-Page21628あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007■米と日本における緑内障点眼薬の比較(表1)欧米と日本で発売されているおもな緑内障点眼薬を表1に示した.欧米で発売されていない点眼薬はジスチグミン,ニプラジロール,ブナゾシンの3種類であるが,日本では,カルバコール,エピネフィリン,ブリモニジン,アプラクロニジン(レーザー前後の使用は可能),メチプラノロール,ビマプロスト,配合薬(チモロール+ラタノプロスト,チモロール+ドルゾラミド)の8種類が発売されていない(表1).本における緑内障治療薬の開発の動向(表2)日本において新たに開発される治療薬は,欧米で最初に開発された新薬が日本へ技術提携される場合と,逆に,まず日本で開発されその後欧米へ技術提携される場合に大別される(表2).欧米から日本へ導入された治療薬のほとんどは欧米ではすでに発売されており,逆に日本から欧米へ導出された治療薬は日本が先行している.しかし,今後の治療薬は開発期間の短縮やコスト削減を目的に欧米および日本で同時に行う傾向であることから,欧米との医療環境は類似するであろう.後発売が予測される緑内障新薬(表3)プロスタグランジン関連薬欧米ではウノプロストン,ラタノプロスト,ビマトプロスト,トラボプロストの4種類が使用可能であるのに対し,日本では平成19年10月よりトラボプロストが発売となりウノプロストン,ラタノプロストの3種類が処方できるようになった.ビマトプロストは治験を終了している.5番目のプロスタグランジン関連薬となるタフルプロストが日本と欧米において開発中で,これが日本で先行発売されると,米国を追い越しプロスタグランジン関連薬5種類が選択できる時代になる.配合薬日本は今まで配合薬を承認しない傾向にあったが,現在,すでに発売されている2種類の薬剤を配合した製剤(78)表2新薬開発の動向従来欧米から日本へ導入欧米で開発され承認を得た薬を欧米データを利用して治験を実施日本から欧米へ導出日本で開発した薬を技術提携により欧米で治験を実施↓今後日本と欧米で同時開発日本・欧米データの同時相互利用による開発期間の短縮・費用の削減表3日本で開発中の緑内障治療薬(平成19年10月現在)点眼薬開発中の新薬成分名製薬会社国内開発状況*プロスタグランジン関連薬ビマトプロスト千寿製薬治験終了医薬品製造販売承認申請中タフルプロスト参天製薬治験終了医薬品製造販売承認申請中プロスタグランジン関連薬+b遮断薬配合薬ラタノプロスト+チモロールファイザー第Ⅱ/Ⅲ相アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬オルメサルタン参天製薬第Ⅱ相(パイロット試験準備中)Rho-キナーゼ阻害薬未公表参天製薬米国第Ⅰ相千寿製薬第Ⅱ相準備中興和第Ⅰ相a刺激薬ブリモニジン千寿製薬第Ⅲ相カルシウムチャネルブロッカーイガニジピン千寿製薬第Ⅱ相経口薬ロメリジン参天製薬第Ⅱ相*:日本製薬工業会の新薬・治験情報および各製薬会社のホームページに記載された内容とした(第Ⅱ相の前期・後期,実施中・終了などの詳細情報は不明).———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.12,20071629(79)時間間隔の点眼が必要で,1525℃の保管温度が記載されているが日本ではどうなるであろうか.カルシウムチャネルブロッカーイガニジピンはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬で正常眼圧緑内障治療点眼液として欧米と日本で開発中である.ロメリジンは片頭痛の適応で発売されているテラナスR錠は視野欠損の進行を抑制する適応症の拡大として開発が進められている.おわりに以上,欧米と日本における緑内障点眼薬を比較しながら,今後日本で発売が予測される緑内障新薬を紹介した.これら新薬の開発が順調に進めば,数年後には日本においても欧米と同等の薬物療法が行える環境になることが期待できる.出典:本稿で取り上げた国内開発状況は,日本製薬工業会の新薬・治験情報および製薬会社のホームページを参照した.の開発が進行している.配合薬は,患者の点眼コンプライアンスの向上や医療経済的なメリットを考えて認可される可能性がある.アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬作用機序は,アンジオテンシンⅡタイプ1受容体拮抗作用により,ぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進とされる.Rhoキナーゼ(ROCK)阻害薬ROCKはさまざまな細胞において,その基質をリン酸化することによりアクトミオシン依存の収縮を制御している.そのためROCK阻害薬は,線維柱帯の収縮を用量依存的に抑制すると考えられている.つまり眼房水の流出とそれに伴う眼圧を制御し,房水の主要流出経路からの流出を促進することで眼圧を持続的に低下させ,かつ網膜の血液の流れを良くすることが期待される.ROCK阻害薬の開発は,論文を見る限り日本が先行している.交感神経a2刺激薬ブリモニジンの米国の添付文書によれば1日3回,8☆☆☆