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糖尿病の代謝コントロールと網膜症の発症進展阻止-DCCT/EDIC, Kumamoto Study, UKPDSの結果から-

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS進展を阻止しうる」ことが明確になった.I1型糖尿病患者を対象としたDiabetesControlandComplicationsTrial(DCCT)/Epidemi-ologyofDiabetesInterventionsandCompli-cations(EDIC)1.1型糖尿病患者を対象としたDiabetesControlandComplicationsTrial(DCCT)米国とカナダの29施設において,1型糖尿病患者を対象に,強化インスリン療法を用いた厳格な血糖コントロールにより細小血管合併症の発症を予防しうるか(一次予防試験),また細小血管合併症の進展を抑制しうるか(二次介入試験)について検討した研究である.登録した1型糖尿病患者(1,441例)は,研究開始時に網膜症を認めなかった一次予防群,網膜症をすでに有していた二次介入群に分け,さらに,無作為に従来インスリン療法(conventionalinsulintherapy)群と頻回注射を用いた強化インスリン療法(intensiveinsulintherapy)群に分けられ,平均6.5年間(3~9年間)の観察がなされた3).インスリン療法は,従来インスリン療法群では混合型インスリンを含む1日1~2回のインスリン注射により,強化インスリン療法群では1日3回以上のインスリン頻回注射またはCSII(continuoussubcutaneousinsulininfu-siontherapy)により施行され,血糖コントロールの目標は,従来インスリン療法群では,高血糖症状のないこと,強化インスリン療法群では,空腹時血糖値70~120mg/はじめに血糖コントロールが長期間不良な患者では網膜症の発症進展が生じやすいことが,米国のKleinらの一連の研究(ウィスコンシン糖尿病網膜症疫学研究)において示唆されていた1,2).図1に1型糖尿病,2型糖尿病の10年間の観察により若年発症糖尿病(おもに1型),30歳以上発症の糖尿病でインスリン治療中の患者,30歳以上発症の糖尿病でインスリン以外の治療法により加療されている者(2型)のいずれにおいても,HbA1C(ヘモグロビンA1C)が高値となると網膜症の進展率が高いことを示す.その後,1型糖尿病および2型糖尿病患者を対象に,厳格な血糖コントロールにより糖尿病性慢性血管合併症の発症,進展を阻止しうるかを検討した無作為前向き調査研究の成果が,国内外で相ついで報告され,「厳格な血糖コントロールにより糖尿病網膜症の発症,(3)????*1HidekiKishikawa:熊本大学保健センター*2NakayasuWake&EiichiAraki:熊本大学大学院医学薬学研究部代謝内科*3MotoakiShichiri:生長会生活習慣病研究所〔別刷請求先〕岸川秀樹:〒860-8555熊本市黒髪2-40-1熊本大学保健センター特集●糖尿病網膜症:一次予防,二次予防,三次予防の戦略あたらしい眼科24(10):1275~1280,2007糖尿病の代謝コントロールと網膜症の発症進展阻止─DCCT/EDIC,KumamotoStudy,UKPDSの結果から─????????????????????????????????????????????????:???????????????????????????????????????????????????岸川秀樹*1和気仲庸*2荒木栄一*2七里元亮*3図1ウィスコンシン糖尿病網膜症疫学研究(WESDR)002040680100HbA1C(%)網膜症の進展率:5.4~8.5:8.6~10.0若年(30歳未満)発症,ほぼ1型30歳以上発症ほぼ2型,インスリンにより治療30歳以上発症,ほぼ2型,非インスリンにより治療:10.1~11.5:11.6~20.8———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007d?,食後血糖値180mg/d?未満,午前3時の血糖値65mg/d?以上,HbA1C6.05未満とされた.その結果,強化インスリン療法群では,HbA1Cは,研究開始後6カ月後約7.0%まで低下し,観察期間中維持されたが,従来インスリン療法群では研究開始後明らかな変化は認められなかった.網膜症については,ETDRS(EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy:25段階)分類で3段階以上の上昇時を網膜症の悪化と定義し経過をみたところ,網膜症悪化率(平均観察期間6年の成績)は,一次予防群,二次介入群ともに,従来インスリン療法群に比し,強化インスリン療法群で有意な低値を示した(図2).二次介入群の網膜症悪化率においては,研究開始当初,従来インスリン療法群に比し強化インスリン療法群で高率となるがその後に逆転するという所見となり,DCCTに先行する1型糖尿病患者を対象としたヨーロッパの小規模研究と同様な所見となった.研究開始当初より進行した網膜症を有する患者が,DCCTの二次介入群に多数含まれていたことが示されており,強化インスリン療法導入後の網膜症悪化との関連も推測される.2.EpidemiologyofDiabetesInterventionsandComplications(EDIC)─DCCT終了後のDCCT登録患者における慢性血管合併症の発症・進展に関する前向き調査研究EDICではDCCT終了後も登録患者を継続観察し,DCCT終了後4年間の網膜症の発症・進展に関する調査結果が報告された4).1,208名の眼底所見,および血糖コントロール状況を調査したところ,前項で述べたDCCT調査期間中に従来インスリン療法群に割り付けられた患者群と強化インスリン療法に割り付けられた患者群におけるHbA1Cの差(従来インスリン療法群で9.1%,強化インスリン療法群で7.2%)は,DCCT終了後4年間の間に従来インスリン療法群の多数の患者が強化インスリン療法に移行したため,縮小していた(従来インスリン療法群で8.2%,強化インスリン療法群で7.9%).したがって,2群におけるEDIC調査期間中の血糖コントロール状態に明らかな差はなかったが,DCCT研究時従来インスリン療法を施行した群と強化インスリン療法を施行した群における4年間の網膜症の累積悪化(4)図2DCCTにおける糖尿病網膜症の推移網膜症の増悪:modi?edETDRS25段階分類3段階上昇.6050403020100累積悪化率(%)0123456789経過期間(年)一次予防:従来インスリン療法:強化インスリン療法6050403020100累積悪化率(%)0123456789経過期間(年)二次介入図3EpidemiologyofDiabetesInterventionsandComplications(EDIC)─網膜症累積悪化率01432従来インスリン療法強化インスリン療法網膜症の悪化はDCCT終了時の所見からの悪化(ETDRS25段階分類の3段階)網膜症累積悪化率DCCT終了後の年数24201612840———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????は明らかに強化インスリン療法施行群で,持続的に低値となり(図3),また,EDIC調査4年後の両群の網膜症悪化率,増殖網膜症の発症率,網膜浮腫発症率,光凝固施行率は,DCCT研究時従来インスリン療法を施行した群に比べ,強化インスリン療法を施行した群で明らかな低値となった(図4).したがって,厳格な血糖コントロールの網膜症発症・進展に及ぼす好影響は,施行後4年間にわたり続くことが示された.EDICにおける厳格な血糖コントロールによる同様の長期効果は,腎障害,神経障害についても報告されている.II2型糖尿病患者を対象とした熊本スタディ熊本大学代謝内科において中間型インスリン朝1回または朝夕2回で加療されていた糖尿病患者110例を,中間型インスリン療法継続群(conventionalinsulininjectiontherapy:CIT群)または頻回インスリン注射療法群(multipleinsulininjectiontherapy:MIT群)に割り付け,研究開始時に網膜症を認めず尿中アルブミン排泄量<30mg/dayの患者における細小血管合併症の発症に及ぼす厳格な血糖コントロールの影響(一次予防(5)図4EpidemiologyofDiabetesInterventionsandComplications(EDIC)─網膜症リスク減少率:従来インスリン療法:強化インスリン療法a.網膜症の進展c.網膜浮腫b.増殖または重症網膜症d.光凝固療法発症率(%)オッズ減少76%修正後オッズ減少75%6040200DCCT終了時DCCT終了4年後発症率(%)オッズ減少46%修正後オッズ減少58%12840DCCT終了時DCCT終了4年後発症率(%)オッズ減少68%修正後オッズ減少69%20100DCCT終了時DCCT終了4年後発症率(%)修正後オッズ減少75%修正後オッズ減少52%12840DCCT終了時DCCT終了4年後図5KumamotoStudyにおける網膜症の推移網膜症の増悪:modi?edETDRS19段階分類2段階上昇.80706050403020100累積悪化率(%)012345678109経過期間(年)一次予防従来インスリン療法群強化インスリン療法群80706050403020100累積悪化率(%)012345678109経過期間(年)二次介入従来インスリン療法群強化インスリン療法群———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007試験)および研究開始時に単純網膜症を認め,尿中アルブミン排泄量<300mg/dayの患者の細小血管合併症の進展に及ぼす厳格な血糖コントロールの影響(二次介入試験)を調査した5~7).血糖コントロール目標は,CIT群においては空腹時血糖値140mg/d?以下,MIT群では空腹時血糖値140mg/d?以下,食後血糖値200mg/d?以下,HbA1C7.0%以下とした.その結果,10年間の経過観察中,空腹時血糖値,HbA1C値は,CIT群に比し,MIT群で有意な低値を示し,MIT群における厳格な血糖コントロールが示唆された.網膜症の悪化をmodi?edETDRS分類(19段階)において2段階以上の悪化を認める場合と定義し,10年間の網膜症累積悪化率を算出したところ,一次予防試験および二次介入試験ともに,CIT群に比し,MIT群で有意な低値となった(図5).また,血糖コントロール状態と網膜症の進展,増悪率の関係を対数線形ポアソン(Poisson)回帰分析で検討した結果,網膜症の進展,増悪率は,血糖コントロール状態の悪化とともに増大することが明らかにされた.III2型糖尿病患者を対象としたUnitedKingdomProspectiveDiabetesStudy(UKPDS)1.血糖コントロールに関する研究UKPDSでは,2型糖尿病患者において代謝コントロールが糖尿病合併症に及ぼす影響を明らかにするため,血糖と血圧コントロールの効果がともに検討された.血糖コントロールに関する研究においては,より厳格に血糖コントロールを行うと合併症のリスクが減少するか,血糖をコントロールする際の治療(スルフォニル尿素剤,インスリン,メトホルミン)に差があるのか,肥満2型糖尿病に対するメトホルミンは有用かを明らかにすべく,新規に糖尿病と診断された2型糖尿病患者5,102例を対象に,3カ月間の食事指導の後,空腹時血糖値が108~207mg/d?の患者を選択,一部を肥満2型糖尿病に対するメトホルミン研究に組み込み,残り3,867例を従来療法(食事療法)群,またはより良好な血糖コントロールを目指す強化療法群(当初より経口剤,インスリンなどの薬物治療を開始する群)に割り付けた8).研究期間中の平均HbA1C値は,強化療法群で7.0%となり,従来療法群の平均HbA1C値7.9%に比し有意な低値となった.観察期間中の合併症の発症・進展から,強化療法施行群では,従来療法群に比し,白内障手術などのリスクが有意に低下すること,網膜症の発症進展(modi-?edETDRS21段階分類の2段階上昇時に悪化と定義)が低下することが示され(図6),血糖コントロールによる血管合併症のリスク減少は,使用された薬剤(スルフォニル尿素剤,インスリン)間に差がなかったことも報告された.UKPDSでは,熊本スタディにおいて示唆された頻回インスリン注射療法を用いた良好な血糖コントロールの細小血管合併症に及ぼす好影響が,インスリン以外の経口薬など,あらゆる糖尿病治療法についてもあてはまることが示唆された8).2.血圧コントロールに関する研究UKPDSの高血圧合併糖尿病患者においては,高血圧の是正により血管合併症を阻止しうるか,アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とb遮断薬の効果に差があるかが検討された9,10).血糖コントロール研究に登録された5,102例のうち,高血圧があった1,148例を,ACE阻害薬またはb遮断薬の投与により厳格に血圧管理を行う群(降圧目標:150/80mmHg以下)と,ACE阻害薬またはb遮断薬を使用せずゆるやかに血圧管理を行(6)図6強化療法による細小血管合併症のリスク減少率UKPDS:12年後のデータ.従来療法群(n=1,138)の平均HbA1C:7.9%.強化療法群(n=2,729)の平均HbA1C:7.0%.網膜症の増悪:modi?edETDRS21段階分類2段階上昇.神経障害(振動覚)の増悪:両足の平均値≧25V.微量アルブミン尿:50mg/?,蛋白尿:>300mg/?.網膜症神経障害(振動覚)微量アルブミン尿腎症血漿クレアチニン値2倍増加218333474010080204060リスク減少率(%)NS蛋白尿———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????う群(降圧目標:180/105mmHg以下)に分け,その後の経過(平均8.4年)を観察した結果,研究期間中の平均血圧は,ゆるやかな血圧管理群(154/87mmHg)に比し,厳格な血圧管理群(144/82mmHg)で有意に低値となること,厳格な血圧管理群では,ゆるやかな血圧管理群に比し,網膜症の進展が抑制されることが明らかになった(図7).また,合併症抑制効果は使用した薬剤(ACE阻害薬とb遮断薬)間に有意な差がなかったこと,収縮期血圧を10mmHg下降させることにより,細小血管障害(光凝固・硝子体出血など網膜症の増悪および腎不全状態)のリスクが13%低下したことが明らかにされた(図8)11).網膜症の発症進展阻止におけるACE阻害薬の有用性は,高血圧のない糖尿病患者を対象とした研究においても報告されている.正常血圧1型糖尿病を対象とした2年間のEUrodiabControlledtrialofLisinoprilinInsu-lindependentDMStudy(EUCLID;ユークリッド研究)では,網膜症を5段階に分類し1段階以上の上昇を認めたとき網膜症悪化と定義し,ACE阻害薬が網膜症の発症進展に及ぼす影響が検討された12).その結果,プラセボ群に比し,ACE阻害薬(リシノプリル)投与群では,網膜症の発症進展率が約50%低下すること,プラセボ群に比したリシノプリル群の収縮期血圧低下は,わずか3mmHgであったこと,網膜症の進展と微量アルブミン尿の間に相関がなかったことが報告され,ACE阻害薬に,腎症抑制,血圧低下作用とは独立した機序で,網膜症予防?網膜血管保護作用を有する可能性が示唆された.ACE阻害薬による腎症進展抑制効果については肯定的な研究が多いが,ACE阻害薬による網膜症の発症進展に関しては否定的な報告も多く,今後検討すべき問題となっている.おわりに糖尿病の代謝管理においては,脂質代謝異常のコントロールも重要である.EDICにおいては,脂質代謝異常が網膜症の進展に関与することが報告され,脂質代謝正常化の必要性が示唆されている13).網膜症をはじめとする細小血管合併症の発症予防および進展阻止のためには,1型糖尿病,2型糖尿病のいずれにおいても,糖尿病発症早期から厳格な代謝コントロールを行うことが不可欠である.文献1)KleinR,KleinBE,MossSEetal:Glycosylatedhemoglo-binpredictstheincidenceandprogressionofdiabeticofdiabeticretinopathy.????260:2864-2871,19882)KleinR,KleinBE,MossSEetal:Relationshipofhyper-glycemiatothelong-termincidenceandprogressionofdiabeticretinopathy.???????????????154:2169-2178,1994(7)図8UKPDSにおける収縮期血圧コントロールの細小血管エンドポイントに及ぼす影響サブポピュレーション(n=3,642)の解析.収縮期血圧10mmHg低下に対し13%のリスク減少.1010.5110120130140150160170p<0.0001収縮期血圧(mmHg)リスク比図7UKPDSにおける厳格な血圧コントロールによる細小血管合併症のリスク減少率UKPDS:網膜症7.5年後,腎症6年後のデータ.網膜症の増悪:modi?edETDRS21段階分類2段階上昇.神経障害(振動覚)の増悪:両足の平均値≧25V.微量アルブミン尿:50mg/?,蛋白尿:>300mg/?.厳格な血圧コントロール群(n=758)の平均血圧:144/82mmHg.ゆるやかな血圧コントロール群(n=390)の平均血圧:154/87mmHg.網膜症神経障害(振動覚)微量アルブミン尿腎症血漿クレアチニン値2倍増加342939010080204060リスク減少率(%)NSNSNS蛋白尿———————————————————————-Page6????あたらしい眼科Vol.24,No.10,20073)TheDiabetesControlandComplicationsTrialResearchGroup:Thee?ectofintensivetreatmentofdiabetesonthedevelopmentandprogressionoflong-termcomplica-tionsininsulin-dependentdiabetesmellitus.?????????????329:977-986,19934)TheDiabetesControlandComplicationsTrial/Epidemiolo-gyofDiabetesInterventionsandComplicationsResearchGroup:Retinopathyandnephropathyinpatientswithtype1diabetesfouryearsafteratrialofintensivethera-py.????????????342:381-389,20005)OhkuboY,KishikawaH,ArakiEetal:Intensiveinsulintherapypreventstheprogressionofdiabeticmicrovascu-larcomplicationsinJapanesepatientswithnon-insulin-dependentdiabetesmellitus─arandomizedprospective6-yearstudy─.???????????????????28:103-117,19956)ShichiriM,KishikawaH,OhkuboYetal:Long-termresultsoftheKumamotoStudyonoptimaldiabetescon-trolintype2diabeticpatients.?????????????23(Suppl2):B21-B29,20007)WakeN,HisashigeA,KatayamaTetal:Cost-e?ective-nessofintensiveinsulintherapyfortype2diabetes─Aten-yearfollow-upofKumamotoStudy─.???????????????????48:201-210,20008)UKProspectiveDiabetesGroup:Intensiveblood-glucosecontrolwithsulphonylureaorinsulincomparedwithcon-ventionaltreatmentandriskofcomplicationsinpatientswithtype2diabetes(UKPDS33).??????352:837-853,19989)UKProspectiveDiabetesGroup:Tightbloodpressurecontrolandriskofmacrovascularandmicrovascularcom-plicationsintype2diabetes(UKPDS38).????????317:703-713,199810)UKProspectiveDiabetesGroup:E?cacyofatenololandcaptoprilinreducingriskofmacrovascularcomplicationsintype2diabetes(UKPDS39).????????317:713-720,199811)AdlerAI,StrattonIM,NeilHAWetal:Associationofsystolicbloodpressurewithmacrovascularandmicrovas-cularcomplicationsoftype2diabetes(UKPDS36):pro-spectiveobservationalstudy.????????321:412-419,200012)ChaturvediN,SjolieA-K,StephensonJMetal:E?cacyoflisinoprilonprogressionofretinopathyinnormotensivepeoplewithtype1diabetes.??????351:28-31,199813)LyonsTJ,JenkinsAJ,ZhengDetal:Diabeticretinopa-thyandserumlipoproteinsubclassesintheDCCT/EDICcohort.?????????????????????????45:910-918,2004(8)

序説:糖尿病網膜症:一次予防,二次予防,三次予防の戦略

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1(1)????糖尿病網膜症は,身体障害者手帳の発給状況を基本のデータとして日本における視力障害の現状を調査した厚生労働省研究班「網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究」によると,現在,緑内障と並んで後天性視力障害の原因の第2位を占めており,糖尿病網膜症については同様の方法で約20年前に行われた調査とほぼ同様の割合を占めている.今後も糖尿病患者の増加,特に若年者(40歳代,50歳代)での増加を背景に糖尿病網膜症による視力障害は大きな問題となると考えられる.特に若年での糖尿病発症患者の糖尿病網膜症は重症化するため,社会的にactiveである年代に起こりうる視力低下は,医療費の問題に加えて,当該患者たちが健康である場合に生み出していた社会への貢献を減少させることになる.このため,糖尿病網膜症の治療の戦略は重症患者の治療(三次予防)のみでなく,網膜病変を発症の予防(一次予防),発症した軽症の網膜症を進行させない(二次予防)医療,すなわち,失明予防ではなく,視力の低下を阻止することを目的とする医療の重要性が今後ますます大きくなる.本特集では今後の糖尿病網膜症の治療戦略を予防医学の面から整理し,現状と今後の問題点を認識して,次世代の新しいパラダイムを構築することを目指して企画した.このためには眼科─内科の診療の連携が不可欠であることから,特に一次予防においては内科からの寄稿をお願いすることにより,多面的に糖尿病網膜症を捉えられるように企画した.一次予防は血糖,血圧コントロールをはじめとする全身的管理が主となる.そのため本特集でも,糖尿病網膜症一次予防のエビデンスについて岸川秀樹教授(熊本大学保健センター)ほかによるDCCT(DiabetesControlandComplicationsTrial),EDIC(EpidemiologyofDiabetesInterventionsandComplications),KumamotoStudyについての解説,曽根博仁先生(筑波大学内科,御茶ノ水女子大学)ほかによる日本における多施設前向きの大規模調査JDCS(本文参照)の解説をお願いし,安田美穂先生(九州厚生年金病院眼科,九州大学)には眼科の立場から住民調査による研究からの知見の解説をお願いして,糖尿病網膜症発症のリスクについて多角的,多面的に理解できるようにした.二次予防では糖尿病網膜症の重症化の阻止がその大きな目的であり,全身の治療と並んで眼科的治療を有機的にリンクさせ,それぞれの適切なときに治療を行うこと,すなわち糖尿病網膜症の管理と治療を適切に行うことが重要であり,一次予防から二次予防へとスムーズに診療体制が流れる必要がある.本特集では,重症化のマーカーとして網膜硝子体血管新生と黄斑浮腫を取り上げた.前者については北野滋彦教授(東京女子医科大学糖尿病センター),後者については山本禎子先生(山形大学医学部附属病院眼細胞工学)に最新の知見を解説していただい0910-1810/07/\100/頁/JCLS*1HidetoshiYamashita:山形大学医学部情報構造統御学講座視覚病態学分野*2TatsuroIshibashi:九州大学大学院医学研究院眼科学分野●序説あたらしい眼科24(10):1273~1274,2007糖尿病網膜症:一次予防,二次予防,三次予防の戦略??????????????????????????????????????????:???????????????????????????????????????????????????????????山下英俊*1石橋達朗*2———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007た.三次予防は白神史雄教授(香川大学)にお願いして,重症例での最新の治療を解説していただいた.糖尿病網膜症の診療のトータルを検討するためにはロービジョン,再生医療および人工網膜が必要になるが,これはそれぞれで特集に値する大きなテーマであり紙数の関係上省かせていただいた.本特集での糖尿病網膜症による視力低下を抑制するための体系的,戦略的なアプローチについての紹介が読者の皆さんの糖尿病網膜症の診療の役に立てれば幸いである.(2)年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科2008Vol.25月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)最新情報を,整理された総説として提供!眼科手術2008Vol.21■毎号の構成■季刊/1・4・7・10月発行A4変形判総140頁定価2,520円(本体2,400円+税)(送料160円)年間予約購読料10,080円(本体9,600円+税)(4冊)(送料弊社負担)日本眼科手術学会誌【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障など)/新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■【特集】あらゆる眼科手術のそれぞれの時点における最も新しい考え方を総説の形で読者に伝達.【原著】査読に合格した質の高い原著論文を掲載.【その他】トピックス・ニューインストルメント他株式会社メディカル葵出版〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.http://www.medical-aoi.co.jp

硝子体手術のワンポイントアドバイス52.糖尿病硝子体手術時に生じるavulsed retinal vessel(中級編)

2007年9月30日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLSはじめに増殖糖尿病網膜症では増殖膜の牽引により網膜血管が硝子体腔内に遊離することがある.一般にこの病態を?離網膜血管(avulsedretinalvessel)とよんでいる.広川らは,724眼の糖尿病網膜症を調査し,36眼に?離網膜血管を確認し,すべてが増殖型であり,約80%が耳側に存在したと報告している1).このavulsedretinalves-selは増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の術中に形成されることもある.●どのような症例に生じやすいか一般にavulsedretinalvesselは後部硝子体が未?離かつ網膜硝子体癒着が強固な症例で,人工的後部硝子体?離を強引に作製する際に形成されることが多い(図1).網膜血管は,硝子体カッターなどの牽引により内境界膜を破り,硝子体腔に遊離してくる.Avulsedretinalvesselをきたした部分の網膜には血管の存在していた部位に一致して線状の溝が認められる.しばしば血管が破綻して出血が生じ,血管が遊離する際の牽引が高度だと溝に沿ったスリット状の網膜裂孔が形成されることもある.●処置はどうするか血管からの破綻性の出血が生じた場合には眼内ジアテルミー凝固で確実に止血を行う.また,avulsedretinalvesselが広範囲に形成された部位の網膜は,虚血がより高度になっている可能性があるので,同部位に眼内光凝固を確実に施行しておく必要がある.筆者らは広範囲のavulsedretinalvesselをきたした症例の硝子体手術後に,網膜虚血が原因と考えられる晩期の医原性裂孔が形成され,限局性網膜?離に至った症例を経験している(図2)2).(79)●予防法は術中のavulsedretinalvessel形成を未然に予防するには,人工的後部硝子体?離作製時に硝子体カッターなどで強引に吸引をかけないことが重要である.癒着の程度が強い症例では,適宜硝子体剪刀を使用して,癒着を解離しながら,人工的後部硝子体?離の作製を慎重に行う必要がある.文献1)広川博之,吉田晃敏,門正則ほか:糖尿病性網膜症での?離網膜血管.臨眼45:31-34,19912)今村裕,南政宏,植木麻理ほか:増殖糖尿病網膜症の?離網膜血管部位に萎縮性裂孔を生じた1例.眼紀52:943-945,2001硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載?52糖尿病硝子体手術時に生じるavulsedretinalvessel(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1人工的後部硝子体?離作製時に形成されたavulsedretinalvessel(矢印)?離網膜血管からの出血を認める.図2術5カ月後の眼底所見Avulsedretinalvesselが生じた領域に3個の萎縮性裂孔が形成され,その周囲に限局性網膜?離を認めた.再手術を施行し復位を得た.

眼科医のための先端医療81.加齢黄斑変性に対する最新抗vascular endothelial growth factor(VEGF)療法 -Aflibercept(VEGF Trap-Eye)-

2007年9月30日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS加齢黄斑変性に対する抗VEGF治療これまでの動物実験・組織学的研究・薬剤の臨床効果から滲出型加齢黄斑変性の病態にVEGF-Aが関与していることは間違いないでしょう.欧米では抗VEGF治療薬として滲出型加齢黄斑変性に対してpegaptanib(Macugen?)1),ranibizumab(Lucentis?)2)が承認されています.VEGF-Aは種々のアイソフォームをもっています.Pegaptanibはアプタマーとよばれるオリゴヌクレオチド製剤であり,VEGF165には結合しますが,VEGF121には結合しないため,作用が弱い反面,安全性が高いと推測されてきました.一方,bevacizumab(Avastin?)はマウス由来の抗ヒトVEGF中和抗体として転移性大腸癌・結腸癌に対して国内でも承認されています.しかし,全長の抗体であるbevacizumabは硝子体内注入した場合の網膜内移行性が悪いと推測され,抗VEGF中和抗体のFabフラグメントからつくられたより小さな分子量の誘導体としてranibizumabが開発されました.VEGFアイソフォームに対する特異性はなく,すべてのアイソフォームのVEGF-Aを阻害します.さらに,アミノ酸配列を少し変え,VEGFへの親和性はbevaci-zumabよりも高められています.また,最近bevaci-zumabもranibizumabと同等か,それ以上の加齢黄斑変性に対する治療効果があるのではないかと考えられ盛んに臨床使用されています3).VEGFTrap滲出型加齢黄斑変性に対してpegaptanib,ranibi-zumabにつづく第3の抗VEGF製剤として期待されているのがa?ibercept(VEGFTrap)4~6)です.VEGFTrapはVEGFreceptor1(FLT1)の細胞外イムノグロブリンドメイン2とVEGFreceptor2(KDR)の細胞外イムノグロブリンドメイン3とをヒトIgG1Fcとに結合させた可溶性融合蛋白で,胎盤成長因子(PIGF),すべてのアイソフォームのVEGF-A,VEGF-B,VEGF-C,VEGF-Dと結合します(図1)6).VEGFTrapのVEGF-Aとの結合能はKd<1pmol/?と非常に高いと報告されています4).また,VEGF165とのみ結合するpegaptanib,VEGF-Aとのみ結合するranibizumabと比べて,VEGFTrapはすべてのアイソフォームのVEGF-Aと結合するだけではなく,血管増殖作用のあるPIGFなどとも結合することにより,これまでの製剤と比べて高い血管新生抑制効果が期待されています.さらに,Fcフラグメントで結合されていることにより,半減期が長くなっています.これまで,進行卵巣癌に対して,phaseII臨床試験が行われ,有効性・安全性が報告されています.眼科領域ではレーザーを用いた脈絡膜新生血管モデルにおいて,マウス,サルでの有効性が示されています.投与方法としては全身投与(VEGFTrap)と硝子体内投与(VEGFTrap-Eye)があります.VEGFTrap治療成績2006年,滲出型加齢黄斑変性に対するVEGFTrapの静脈内投与のphaseI(無作為,多施設,プラセボコントロール)臨床試験の結果が報告されました5).0.3~(75)◆シリーズ第81回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊辻川明孝(京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学)加齢黄斑変性に対する最新抗vascularendothelialgrowthfactor(VEGF)療法─A?ibercept(VEGFTrap-Eye)─図1VEGFTrapの構造(文献6より)ヒトVEGFR1(FLT1)の細胞外イムノグロブリンドメイン2とVEGFR2(KDR)の細胞外イムノグロブリンドメイン3とをヒトIgG1Fcとに結合させた融合蛋白.VEGF:vascularendothelialgrowthfactor.VEGFR1:VEGFreceptor1.VEGFR2:VEGFreceptor2.①②③④⑤⑥⑦VEGFR1KinaseKd10~20pMKd<1pMKinaseKd100~300pMVEGFTrap②③Fc①②③④⑤⑥⑦VEGFR2②③———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.9,20073.0mg/kgのVEGFTrapを滲出型加齢黄斑変性19症例に対して静脈内投与し,視力改善効果,網膜厚減少効果はいずれの濃度でも認められました.しかし,高濃度では高血圧,蛋白尿などの副作用がみられたため中止に至っています.一方,滲出型加齢黄斑変性に対するVEGFTrap-Eyeの硝子体内投与に関してはphaseII(無作為,多施設)臨床試験が行われており,中間解析の結果が2007年のARVO(TheAssociationforResearchinVisionandOphthalmology)で報告されました.滲出型加齢黄斑変性150例に対してVEGFTrap-Eye硝子体内投与を行い,12週間の経過観察を終えた78例に関する中間解析です.この試験では,0.5mgまたは2.0mgのVEGFTrap-Eyeの4週間間隔での硝子体内投与および0.5mg,2.0mgまたは4.0mgのVEGFTrap-Eyeの単回投与後の12週間での有効性,安全性について評価を受けています.すべてのグループの総計で網膜厚は平均135?m減少し(p<0.0001),視力も平均5.9文字増加しています(p<0.0001).また,糖尿病網膜症に対しても,phaseI臨床試験が行われ,VEGFTrap-Eyeの単回投与の安全性が報告されています.加齢黄斑変性に対する今後の治療VEGFTrap-EyeのphaseIII臨床試験は2007年秋頃からの実施に向け,滲出型加齢黄斑変性に対して,4週間,8週間間隔でのVEGFTrap-Eye投与と4週間間隔でのLucentis?投与との治療効果を比較することが計画されています.VEGFTrap-Eyeの治療効果が,pegaptanib,ranibizumab,bevacizumabより高いかどうかは現時点では不明です.しかし,たとえ効果が高かったとしても,視力改善効果が極端に違うことはないでしょう.いったん,中心窩下にtype2脈絡膜新生血管が生じてしまうと完全に消失することはまれで,治療を行ってもあまり良い視力は期待できません.しかし,治療間隔を長くできるという点では大いに期待をもつことができます.1カ月に1回の硝子体内注射は現実的には治療を行う側にとっても,受ける側にとっても大変なものがあります.2カ月に1回,できれば3カ月に1回でしたらかなり負担は違ってくるでしょう.文献1)GragoudasES,AdamisAP,CunninghamETJretal:Pegaptanibforneovascularage-relatedmaculardegenera-tion.????????????351:2805-2816,20042)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:Ranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.????????????355:1419-1431,20063)AveryRL,PieramiciDJ,RabenaMDetal:Intravitrealbevacizumab(Avastin)forneovascularage-relatedmacu-lardegeneration.?????????????113:363-372,20064)HolashJ,DavisS,PapadopoulosNetal:VEGF-Trap:aVEGFblockerwithpotentantitumore?ects.??????????????????????99:11393-11398,20025)NguyenQD,ShahSM,Ha?zGetal:AphaseItrialofanIV-administeredvascularendothelialgrowthfactortrapfortreatmentinpatientswithchoroidalneovascularizationduetoage-relatedmaculardegeneration.?????????????113:1522-1532,20066)RiniBI,RathmellWK:Biologicalaspectsandbindingstrategiesofvascularendothelialgrowthfactorinrenalcellcarcinoma.???????????????13:741s-746s,2007(76)■「加齢黄斑変性に対する最新抗vascularendothelialgrowthfactor(VEGF)療法」を読んで■今回は辻川明孝先生による,VEGFの作用の制御のための新しい薬物の解説です.血管新生が病態の本態である加齢黄斑変性の治療薬として,これまでのpegaptanib(Macugen?),抗VEGF中和抗体と比較しつつ大変わかりやすく解説していただきました.1回の硝子体内注射での効果に差があるかどうかは今後の詳細な検討を待ってということですが,「Fcフラグメントで結合されていることにより,半減期が長くなっています.」とのアドバンテージがあり,今後の治療薬として臨床の現場での有効性が期待されます.VEGFは眼科領域では循環障害などの病態に伴って発生する血管新生,血管の透過性亢進に伴う網膜の浮腫といった病態に中心的な役割をはたしていることが,分子細胞生物学的,???????での研究などにより明らかにされてきました.今回紹介のあった種々のVEGFの作用の抑制により上記の病態が抑制,治癒させられることが明らかになり,VEGFの病態における位置づけが科学的にきちんと確立されたことにな─A?ibercept(VEGFTrap-Eye)─———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????(77)☆☆☆ります.今後ますます種々の薬物がVEGFの作用をターゲットとして開発されると考えられます.その際に,どのような時期にこれらの薬物を使うかという臨床医としては最も重要な問題を今後解決していく必要があります.まずは加齢黄斑変性のようにきわめて長期にわたって進行する疾患のどの時期にどのような薬物をどのようなツールで(ドラッグデリバリー)使用するかを明らかにする必要があります.また,長期にわたって使用した場合の予期せぬ副作用にも注意が必要です.そして,種々の抗VEGF薬が開発されたときにそれぞれの効果の比較検証を誰がやるかという問題もあります.辻川先生もそのような観点で総説をわかりやすく書いていただきました.学会でもトピックスになっている最先端の治療法の基礎をまとめて理解する良い機会を与えていただいたことに感謝します.山形大学医学部視覚病態学山下英俊

新しい治療と検査シリーズ174.極小量眼軟膏を用いた新しいドライアイ治療

2007年9月30日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS?使用方法(治療の実際のやり方)治療手順としては,人工涙液・ヒアルロン酸点眼や涙点プラグなどで水分を確保したうえで,効果が不十分であれば極少量の眼軟膏追加と選択していくことになる.従来の眼軟膏の使用方法である結膜?へのバルク投与では視界がぼやけてしまうため,今回の方法では,硝子新しい治療と検査シリーズ(73)?バックグラウンド涙液は油層,水層,ムチン層の3層構造をしているといわれている.ドライアイの原因は水層の欠乏のみならず,油層,ムチン層の異常によってもひき起こされる.近年,ドライアイ観察装置DR-1?(興和)によって涙液油層の観察や厚みの定量が可能1)になっており,ドライアイ患者のなかには,油層が薄くなっている症例が少なからず存在する2).そのようなドライアイ患者に対する油成分補充を目的とした治療法を紹介する.?新しい治療法(原理)今回紹介する治療法は,涙液油層の薄くなったドライアイ患者に対して油成分を補充する治療法である.現在使用可能な油成分の含まれた点眼薬は,インドメタシン(インドメロール?),塩酸オキシテトラサイクリン・ヒドロコルチゾン(テトラゾール?)油性点眼液と眼軟膏であるが,油性点眼液は油成分の濃度が高く,点眼後に視認性が悪くなり,かえって自覚症状が悪くなる傾向がある.そこで,生理的に油成分が分泌されるマイボーム腺開口部に沿ってうっすらと眼軟膏を塗布する方法を油層の薄いドライアイ患者に施行している.使用する眼軟膏は,防腐剤無添加であり,非極性脂質に加え極性脂質(非極性脂質の水層上での伸展を助ける)も基剤に含むオフロキサシン(タリビッド?)眼軟膏が向いている3).抗菌薬を含有しているため,閉塞性マイボーム腺梗塞や眼瞼炎を合併している症例に使用する.この治療法の鍵は極性脂質を水層の上で滑らせ,その極性脂質の上に均一な厚みの非極性脂質の膜を形成させることであり,水分がなければ油成分の伸展が得られない4).水成分が足りない場合はその補充も重要である.174.極少量眼軟膏を用いた新しいドライアイ治療プレゼンテーション:保坂絵里糟谷優子後藤英樹鶴見大学歯学部眼科学講座コメント:横井則彦京都府立医大大学院医学研究科視覚機能再生外科学図1ゴマ粒大眼軟膏硝子棒の先に最少限の眼軟膏(約2mm)をつける.図2眼軟膏の塗り方硝子棒の先につけた眼軟膏を下眼瞼縁に沿って,うっすらと伸ばすように塗布する.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007棒の先端にゴマ粒大(約2mm)のタリビッド?眼軟膏をのせ(図1),下眼瞼縁に沿って均一に伸ばすようにして塗布する(図2).上記の方法で1日3回塗布する.?本方法の良い点本治療法は,油層欠乏性のドライアイ患者に対して,簡便に油成分を補充することができる.また,今までの眼軟膏の使用方法では,視界のぼやけ,眼瞼がベタベタしてしまうなどの訴えにより,就寝前の使用に限られていたが,本治療法では日中に使用可能であり,自覚症状を軽減させることができる.この治療法は今までのところ,涙液油層が薄いo?ceのdryeye,涙液油層が薄いStevens-Johnson症候群および眼類天疱瘡などの重度のドライアイ,EEC(ectro-dactyly-ectodermaldysplasiaclefting)症候群で効果が報告されている5).高齢者にみられるマイボーム腺機能不全はしばしば涙液分泌減少を伴い,そもそも涙液油層の厚みが薄くない例も多く,この治療の効果は要検討である.文献1)GotoE,DogruM,KojimaTetal:Computer-synthesisofaninterferencecolorchartofhumantearlipidlayer,byacolorimetricapproach.?????????????????????????44:4693-4697,20032)GotoE,TsengSC:Di?erentiationoflipidtearde?ciencydryeyebykineticanalysisoftearinterferenceimages.???????????????121:173-180,20033)横井則彦,木下茂:眼軟膏とその特性.眼科NewInsight2,点眼薬─常識と非常識─(大橋裕一編),p66-75,メジカルビュー社,19954)後藤英樹,保坂絵里,山崎朝子:特集ドライアイ(診療の最前線)6.MGD.眼科48:1019-1031,20065)GotoE,DogruM,FukagawaKetal:Successfultearlipidlayertreatmentforrefractorydryeyepatientsino?ceworkersbylow-doselipidapplicationonthefull-lengthlidmargin.???????????????142:264-270,2006(74)?本方法に対するコメント?涙液の油層は涙液の蒸発を抑制し,その安定性を保つ.ドライアイ治療としての油性点眼液は,たとえば米国では実際に用いられているが,わが国ではまだない.マイボーム腺機能不全による蒸発亢進型ドライアイにおいては,涙液の液層は確保されるため,何らかの形で涙液の蒸発を抑えることができれば,治療として成り立つ.本稿は,涙液油層の薄いドライアイに対して極少量の眼軟膏で油層を補うという新しい治療法を示しており,その発想は非常にユニークである.しかしながら,点入されたゴマ粒大の眼軟膏が,涙液油層にうまく取り込まれて,涙液の蒸発を抑制しその安定性を高めてくれるかという疑問がわく.しかし,Gotoらは,そのエビデンスをすでに見事に示している.今後,多施設での,極少量眼軟膏の効果を検討した報告が待たれるところである.眼軟膏は人工涙液に比べてターンオーバが遅く,1時間以上は涙液層として存在しうるため,回数を少なくして長い効果が期待できると思われる.☆☆☆表1極少量眼軟膏治療法のまとめ目的油層欠乏性のドライアイ患者への油成分の補充.原理極性脂質および非極性脂質を基材に含む軟膏を少量使用することにより水層上に薄い均一な油層を形成させる.方法ゴマ粒大のタリビッド?眼軟膏を硝子棒の先端にのせ,下眼瞼縁に沿って薄く伸ばす.1日3回塗布.利点油層を補充することによるドライアイ症状の改善.眼軟膏使用後のぼやけ感なし.欠点抗菌薬が含有されている.原理や利点,欠点をよく理解する必要がある.

眼感染症:バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)

2007年9月30日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS腸球菌はグラム染色でグラム陽性球菌として観察される(図1).腸球菌はヒトを含む動物の腸管内に生息している細菌であり,日和見感染症の原因菌として,尿路感染症,腹腔内・骨盤内感染症,菌血症,心内膜炎,術後創感染などをひき起こす.腸管内の常在菌であるため,多くは内因性感染であると考えられているが,入院患者では直接的あるいは間接的な接触感染を起こす.■培養法腸球菌の細菌学的な特徴は,酸素があってもなくても発育可能(通性嫌気性),カタラーゼ試験陰性,10~45℃やpH9.6の環境下でも発育可能,6.5%食塩含有培地や40%胆汁酸含有培地で発育可能,エスクリンを加水分解するなどの性状を示し,他の細菌と区別できる.現在,腸球菌は21菌種に分類されているが,臨床検体から分離される腸球菌は,?????????????????????が70~80%を占め,ついで??????????が約20%,残りの10%未満に????????,?????????????,???????????????などがある.培養依頼時の検査材料は採取後すみやかに検査室に提出することが望ましい.保存しなければならないときは冷蔵保存する.■耐性菌判定法現在,バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resis-tantenterococci:VRE)には????,????,????,????,????,????の6タイプの遺伝子型がある.おもな遺伝子型は????,????,????である.臨床的に問題となるのは,耐性を他の菌に伝達することのできる????および????遺伝子を有する??????????または???????????である1)(表1).VRE選択培地によるスクリーニング検査,薬剤感受性検査,耐性遺伝子検査などを組み合わせてVREを検出する(図2).感染症法では,VRE感染症は五類感染症として全例(69)52.バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)眼感染症セミナー─クライシスコントロール講座─●連載?監修=浅利誠志井上幸次大橋裕一小森敏明京都府立医科大学附属病院臨床検査部バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistantenterococci:VRE)は感染防止対策と治療の両面で注目すべき病院感染原因菌である.日本でもVRE集団発生が散発的に報告されており,病院外への感染拡大も懸念されている.VREが検出されたときには,感染症か保菌かを区別することが重要である.VRE伝播防止のためには,予防対策と伝播の遮断が必要となる.図1膿検体のグラム染色白血球による腸球菌の貪食像を認める(矢印).図2バンコマイシン添加エンテロコッコセル寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン)VRE選択培地の一つで,胆汁エスクリン培地にバンコマイシンが8?g/m?添加されている.周囲が黒変した発育集落はVREを疑う.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007報告が義務化されている.■治療薬剤選択近年,いくつかの抗VRE薬が開発され,VRE感染症治療が可能となった2).??????????によるVRE感染症ではbラクタム系薬剤,アミノグリコシド系,テトラサイクリン系などの薬剤にすべて耐性であることが多く,治療はリネゾリド(LZD)やキヌプリスチン?ダルフォプリスチン(QPR/DPR)を使用する.しかし,LZDやQPR/DPRに対し耐性を示すVREがすでに報告されている.LZDは???????????および??????????のVREをはじめ,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの多剤耐性菌を含めたグラム陽性菌に対して広い抗菌スペクトルを示す.QPR/DPRは????,????を有する??????????に抗菌作用を示すが,???????????に対する抗菌作用は弱い.VREのなかでも???????????はアンピシリン(ABPC)に対して比較的感受性を有している.ABPCとゲンタマイシン(GM)またはストレプトマイシン(SM)の併用効果も報告されている.臨床的には????遺伝子を有するVREにテイコプラニン(TEIC)の選択肢が残されている.文献1)GoldHS:Vancomycin-resistantenterococci:Mechanismsandclinicalobservations.??????????????33,210-219,20012)小森敏明,藤田直久:バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)─感染拡大に対する懸念─.感染制御3:247-252,20063)松本哲朗:VRE集団感染から明らかになったこと.?????????????????14:836-838,2005(70)表1代表的なバンコマイシン耐性腸球菌の分類表現型関連耐性遺伝子おもな分離菌種感受性MIC(?g/m?)伝達性感染対策VCMTEICVanA型????????????????????????????????????????????????64~>1,02416~512○必要VanB型??????????????????????????????????????4~>1,0240.5~>32(大半は感受性)○必要VanC型????????????????????????????????????????????2~320.5~1×現時点では不要VCM:バンコマイシン,TEIC:テイコプラニン.◎検査室から眼科医へ◎国内で起こったVRE集団発生の解析で,VRE感染症の危険因子として,VRE陽性者やMRSA陽性者と同室,IVH(経静脈高カロリー輸液)やモニターの使用者,褥創の処置,長期臥床,喀痰の吸引などが報告されました3).その他の危険因子としては長期入院患者,免疫能低下患者,尿道カテーテル挿入患者や腎不全による腹膜透析(CAPD)患者などの易感染性患者,長期抗菌薬投与患者,臓器移植患者などがあげられます.VREが検出されたときは,まず感染症か保菌かを区別します.発熱や敗血症などの症状がない無症状患者で,VREが定着しているだけの保菌患者では,VREに対する治療は不必要で,標準予防策と接触感染予防策を基本としたVRE伝播防止のための予防対策に重点を置きます.◎眼科医から検査室へ◎眼科医が腸球菌を恐れる最大の理由は,白内障術後にみられる腸球菌眼内炎にあります.本文でも述べられているように,元来は日和見病原体ですが,眼内(硝子体内)に迷入すると想像を絶する強い病原性を発揮します.進行が速く,発症すれば視力予後不良に至る例が少なくないため,白内障サージャンにとって———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????(71)は大きな脅威となっています.起炎菌のほとんどは,?????????????????????ですが,ごくまれに??????????も病原体となりえます.本稿で詳細に取り上げられたVREが,眼内炎の起炎菌としては分離されたことはいまだありませんが,最近,他科領域において増加していると聞きます.特に,外眼部細菌叢における分離動向は眼科医にとって重要です.サーベイランス情報を定期的にご提供いただければありがたいと思います.愛媛大学医学部眼科大橋裕一☆☆☆

光線力学的療法(PDT):治療の実際:PDTが奏効した例と奏効しなかった例

2007年9月30日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS●PDTが奏効した例〔症例1〕63歳,男性.右眼の視力低下を主訴に来院.初診時視力は右眼=(0.2),左眼=(1.2).右眼眼底に漿液性網膜?離を伴った灰白色病変を認めた.フルオレセイン蛍光眼底造影(?uoresceinangiography:FA)では,後期に著明な蛍光色素の漏出がみられ,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)(水平断)では?胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME)および扁平な網膜?離を伴った脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)が認められたため,病変最大径(greatestlineardimension:GLD)5,100?m,照射径6,100?mでPDTを施行した(図1).治療3カ月後,視力は右眼=(0.2),左眼=(1.2),FAにて病変サイズはやや小さくなったものの,蛍光色素の漏出が認められたため,GLD4,500?m,照射径5,500?mで2回目のPDTを施行した.治療1年後,CNVはほぼ瘢痕化した.視力は右眼=(0.15),左眼=(1.2)で,FAにて蛍光色素の漏出は認められず,OCT(水平断)にても漿液性網膜?離の吸収とCMEの減少がみられた(図2).●PDTが奏効しなかった例〔症例2〕60歳,男性.左眼の変視症を主訴に来院.初診時視力は右眼=(1.2),左眼=(0.7).左眼眼底に小さな網膜色素上皮?離と扁平な漿液性網膜?離を認めた.インドシアニングリーン蛍光眼底造影では,明らかなポリープ様病巣は認められなかった.FAにて蛍光色素の漏出を認めたが,病変が小さく,視力もまだ良好であることから,トリアムシノロン(triamcinoloneace-tonide:TA)20mgの後部Tenon?下注射を施行した(図3a).3カ月後,左眼視力は(0.4)に低下し,病変も拡大したため,GLD2,200?m,照射径3,200?mでPDTを施行した(図3b).PDT施行後3カ月で,病変(67)山岡青女杏林大学医学部眼科光線力学的療法(PDT)セミナー監修/石橋達朗湯沢美都子12.治療の実際:PDTが奏効した例と奏効しなかった例本稿では,実際に当院にて加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)と診断され,光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)を施行した2症例について,治療後1年間の経過を紹介する.提供abc図1症例1:初診時a:眼底には扁平な漿液性網膜?離を伴った灰白色病変を認め,b:FA後期では著明な蛍光色素の漏出がみられる.c:OCT(水平断)ではCMEおよび扁平な網膜?離を伴ったCNVが認められる.abc図2症例1:PDT後1年a:CNVはほぼ瘢痕化し,b:FA後期においても著明な蛍光色素の漏出は認められない.c:OCT(水平断)では漿液性網膜?離の吸収とCMEの減少がみられる.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007はさらに拡大し,左眼視力も(0.1)まで低下したため,GLD3,800?m,照射径4,800?mで2回目のPDTを施行した(図3c).PDT施行後1年で,左眼視力は(0.15),病変の一部分に瘢痕化を認めるものの,FAでは著明な蛍光色素の漏出が認められ,GLD4,400?m,照射径5,400?mで3回目のPDTを施行した(図3d).おわりに加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)では,治療前の所見が同様な症例であっても,PDTが奏効する例とあまり奏効しない例が存在する.治療開始後12カ月でのCNVの進展率は,TAP(Treat-mentofAge-RelatedMacularDegenerationwithPho-todynamicTherapy)Study1)では46%,VIP(Verte-por?ninPhotodynamicTherapy)Study2)では55%,JAT(TheJapaneseAge-RelatedMacularDegenera-tionTrial)Study3)では,classicCNVおよびoccultCNVでそれぞれ19%,14%となっている.一般的に,classic成分を多く含むCNVで,病変サイズが小さいものはPDTが奏効しやすいといわれている4)が,後者の症例のようにCNVが進展してしまう場合には,他の治療法の追加や変更も考慮する必要があると思われる.(68)文献1)TreatmentofAge-RelatedMacularDegenerationwithPhotodynamicTherapy(TAP)StudyGroup:Photody-namictheraphyofsubfovealchoroidalneovascularizationinage-relatedmaculardegenerationwithVertepor?n:oneyearresultsof2randomizedclinicaltrials─TAPreport1.???????????????117:1329-1345,19992)Vertepor?ninPhotodynamicTherapyGroup:Vertepor-?ntherapyofsubfovealchoroidalneovascularizationinage-relatedmaculardegeneration:two-yearresultsofarandomizedclinicaltrialincludinglesionswithoccultwithnoclassicchoroidalneovascularization─vertepor?ninphotodynamictherapyreport2.???????????????131:541-560,20013)JapaneseAge-RelatedMacularDegenerationTrial(JAT)StudyGroup:Japaneseage-relatedmaculardegenerationtrial:1-yearresultsofphotodynamictherapywithvertepor?ninJapanesepatientswithsubfovealchoroidalneovascularizationsecondarytoage-relatedmaculardegeneration.???????????????136:1049-1061,20034)TreatmentofAge-RelatedMacularDegenerationwithPhotodynamicTherapyandVertepor?ninPhotodynamicTherapyStudyGroups.E?ectoflesionsize,visualacuity,andlesioncompositiononvisualacuitychangewithandwithoutvertepor?ntherapyforchoroidalneovasculariza-tionsecondarytoage-relatedmaculardegeneration:TAPandVIPreportNo.1.???????????????136:407-418,2003☆☆☆図3症例2:治療経過a:初診時所見.b:TA後部Tenon?下注射後3カ月(PDT前).c:PDT後3カ月.d:PDT後1年.abcd

緑内障:緑内障乳頭陥凹形成の動的観察

2007年9月30日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS●眼底写真の疑似動画化緑内障患者あるいは緑内障発症のリスクが高いとされる高眼圧症や乳頭出血を伴う患者,さらには近視の症例などでは,経過観察が長期に及ぶことが多く,その病状の進行の判断は重要である.特に緑内障性変化の観察では視野検査も重要ではあるが,視野検査は患者の協力が必要な心理物理変化であるので,さまざまな要因により測定データが修飾を受けるため必ずしも客観検査であるとは言いがたい面もある.それに比べると眼底写真は撮(65)●連載?緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄87.緑内障乳頭陥凹形成の動的観察中澤満*1黒滝淳二*2類家浩司*2*1弘前大学大学院医学研究科眼科*2黒滝眼科クリニック緑内障や近視などで定期的に受診している患者に対し,毎回無散瞳デジタル眼底カメラにて眼底を撮影し,数年分の画像データをまとめてコンピュータ処理により疑似動画化して観察した.従来の複数の写真を見比べる方法よりも,動画にして観察したほうがヒトの眼にはその変化がよりはっきりと捉えやすいことがわかった.図1症例1の眼底写真a:13歳,女児.-1.50Dの近視,乳頭陥凹がやや大きい.b:15歳時の視神経乳頭所見.-3.00Dに近視が進行した.それに伴い,近視コーヌスが耳下側に生じている.c:18歳時の視神経乳頭所見.-4.75Dに近視が進行するとともに乳頭陥凹の局所拡大および下耳側に神経線維層欠損が出現している.近視コーヌスはさらに拡大している.これらの写真から疑似動画を作成すると静止画を見比べるより乳頭およびその周囲の変化を捉えやすい.abc———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007影条件さえ一定であれば,比較的客観性の高い結果が得られる.今回筆者らは,外来受診の際に無散瞳デジタル眼底カメラ(トプコン社製)にて撮影された眼底写真をAdobePhotoshop?とMicrosoftWindowsMoviemaker?にて疑似動画化して観察したのでその方法を紹介する.●方法と結果誌面の都合上,実際の動画観察は無理であるが,動画化の元となった眼底写真を図1と図2に示す.中心窩を固定点として各眼底写真を濃淡差10段階になるように調整し,同様に編集したつぎの時点の眼底写真に順次重ね合わせ,全体の濃さは一定となるように調整し,順次一定時間を配分して動画観察した.編集時に周辺部の血管の位置がずれることがあるが,Photoshop?にて補正した.この方法だと2枚の眼底写真上の変化がよりヒトの眼にはわかりやすい.また視神経乳頭陥凹のみならず,乳頭出血,神経線維層欠損,乳頭そのものの長期の位置変化,コーヌス形成過程なども動的に観察できる.●将来の展望定期的に眼底撮影を行うことにより眼底の長期変化を動的に捉えることができ,各種疾患の病態の理解がさらに進む可能性がある.(66)図2症例2の眼底写真a:15歳,女児.-3.00Dの近視.b:17歳時の視神経乳頭所見.下耳側に乳頭上出血を認める.c:18歳時の視神経乳頭所見.出血の部位に神経線維層欠損が出現.d:20歳時の視神経乳頭所見.-3.25Dの近視.これらの写真を動画にて観察すると年齢が進むにつれて視神経乳頭陥凹が拡大しているのがわかる.abdc

屈折矯正手術:トポガイドレーシックによる不正乱視の治療

2007年9月30日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLSエキシマレーザーによる屈折矯正術が開始されて約15年が経過した.数年前まではLASIK(laser???????keratomileusis)やPRK(photorefractivekeratec-tomy)による矯正は低次の収差(球面と円柱面)の除去が目的で,高次収差(不正乱視)の矯正は不可能であった.近年,カスタム照射の開発によって不正乱視の矯正が可能になり,術後の視力の質の向上に貢献した.カスタム照射にはwavefront-guided1,2)とtopogra-phy-guided3)の2つのシステムがある.前者は収差計で測定した眼の全収差の除去,後者は角膜形状解析によって測定した角膜に起因する収差(角膜不正乱視)の除去を行う.図1a(症例1)は他院でのLASIK術後患者の左眼の角膜形状解析マップ(TMS-III,トーメー)であるが,耳上側に照射のずれが認められる.視力は0.1(1.0×-2.5D-3.0DAx150?)で患者はダブりと夜間の光のにじみをうったえていた.この角膜形状解析データをFinalFit?(NIDEK社)を用いて照射パターンのシミュレーションを行った(図1b)結果,照射域を中央に(63)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=木下茂大橋裕一坪田一男88.トポガイドレーシックによる不正乱視の治療戸田郁子南青山アイクリニックトポガイドレーシックは,屈折矯正術後の照射ずれ,小照射径,セントラルアイランドなどの角膜に起因する不正乱視の除去に有用である.ただし,術後に屈折変化が起こりうるため,その調整のための再手術が必要なことへの理解が必要である.図1症例1a:術前の角膜形状解析カラーコードマップ.b:FinalFit?による照射パターンのシミュレーション.「preOpe」は術前のマップ.「Target」はシミュレーション後のマップ.c:実際の手術後の角膜形状解析マップ.cab———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007戻せる照射パターンが得られた(右上のマップ).この結果に基づいて再手術を施行し,実際の結果が図1cである.照射中心はほぼ中央に回復し,視力は1.2p(1.2p×+1.0D-1.0DAx70?)と改善した.トポガイドによる照射は,高次収差がおもに角膜に起因する場合において,ダイレクトに収差の除去が行えるため特に有用である.たとえば,屈折矯正術後の照射ずれ,小照射径,セントラルアイランド,不正乱視などが適応である.また,再手術例だけでなく,初回手術における非対称性乱視などにも有用である.図2a(症例2)は角膜手術を受けたことのない非対称性乱視の症例であるが,通常照射ではこのような角膜の非対称性はそのまま残り,術後の矯正効果不良や角膜乱視の発生の可能性がある(図2b).こういった症例にトポガイドによる照射を行うと非対称性が改善され術後の視力の質が良好となる(図2c,d).このようにトポガイドによる照射は,角膜不正乱視に対して有用であるが,球面と円柱面の矯正に加えて不正成分の矯正を行うため,矯正度数のずれが起こることがある.このため高度の不正乱視を矯正する場合は,再手術によって度数調整を行う可能性があることを患者に話しておく必要がある.たとえば,中心部を多く削るパターンの場合は遠視化,周辺部を多く削るパターンの場合は近視化の可能性がある4).また,極端な不正乱視は角膜照射深度が深くなりすぎるため適応にならない場合がある.さらに,特に初回手術において,角膜収差と全収差のパターンが大きく異なると,角膜収差の除去によって逆に全収差の増加をきたすことがあるので注意が必要である.文献1)KohnenT,BuhrenJ,KuhneCetal:Wavefront-guidedLASIKwiththeZyoptix3.1systemforthecorrectionofmyopiaandcompoundmyopicastigmatismwith1-yearfollow-up:clinicaloutcomeandchangeinhigherorderaberrations.?????????????111:2175-2185,20042)VenterJ:Wavefront-guidedLASIKwiththeNIDEKNAVEXplatformforthecorrectionofmyopiaandmyopicastigmatismwith6-monthfollow-up.??????????????21:S640-S645,20053)AlessioG,BosciaF,LaTegolaMGetal:Topography-drivenexcimerlaserfortheretreatmentofdecentralizedmyopicphotorefractivekeratectomy.?????????????108:1695-1703,20014)TodaI,YamamotoT,ItoMetal:Topography-guidedablationfortreatmentofpatientswithirregularastigma-tism.??????????????23:118-125,2007(64)☆☆☆図2症例2a:術前の角膜形状解析マップ.b:通常照射のシミュレーションマップ.c:トポガイドによる照射のシミュレーションマップ.d:実際の手術後の角膜形状解析マップ.dcba

眼内レンズ:落屑症候群における水晶体嚢拡張リング

2007年9月30日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS近年,水晶体脱臼,水晶体振盪が認められる症例に対して,水晶体?拡張リング(capsulartensionring:CTR)を使用することで難症例白内障手術を比較的安全に行えるようになってきた.しかし,落屑症候群(XFS)1)のように進行性のZinn小帯脆弱を呈するような症例では,術中にCTRを使用して眼内レンズ(IOL)を挿入できたとしても術後長期間を経て前?の完全閉鎖やIOLとCTRを内包したまま水晶体?が脱臼するような症例も散見されるようになってきた2~4).XFSにおいて,術後長期の合併症回避のためにはCTR挿入の適応決定は慎重に行うべきである.本稿では,XFSを有する白内障眼の手術において筆者が行っている術式の選択について述べる.●明らかなZinn小帯脆弱がない場合術前,術中ともに水晶体動揺がなくIOL挿入まで問題のない症例の扱いが最も重要と考える.筆者はIOL挿入時に生じることがある連続前?切開(CCC)の変形に注目している.明らかなZinn小帯脆弱がなく超音波乳化吸引(PEA)終了時に円形であったCCC(図1)が,IOL挿入直後にhaptic方向に水晶体?が引き伸ばされ(61)楕円形を呈する(図2)ことがある.CCCが楕円形を呈した場合,CTRを挿入すると元の円形に戻る.このような症例ではCTRを挿入しないと術後長期経過した後,前?収縮を高率に起こしてくる(しかも収縮の仕方は均一でないことが多い).筆者はIOL挿入後にCCC形状が変形する症例では軽微なZinn小帯脆弱がすでに存在していると考えている.また,筆者らはIOL挿入後CCC形状が変化しなかったXFS症例について,A:CTRを挿入しない群,B:CTRを挿入した群,C:CTRを挿入しeyeletを閉鎖した群の3群に分け,術後の前?収縮について比較検討し報告した5).その結果CTRのeyeletを閉鎖した群では前?収縮の抑制効果があったが,CTRを挿入しただけの群では抑制効果はなかった.上記のことより,筆者はIOL挿入後CCCの変形が認められた場合にはCTRを挿入した後,両端のeyeletを10-0ポリプロピレン糸で閉鎖したほうが良いのではないかと考えている(図3).●術中にZinn小帯脆弱と判断した場合①術前所見で水晶体振盪はないが術中に水晶体動揺原田行規産業医科大学眼科眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎253.落屑症候群における水晶体?拡張リング進行性のZinn小帯脆弱を呈する疾患として落屑症候群(XFS)がある.近年,難症例白内障手術において水晶体?拡張リング(capsulartensionring:CTR)が使用されているが,術後長期の合併症が散見されるようになってきた.本稿ではXFSにおけるCTRの適応について述べる.←図1明らかなZinn小帯脆弱がない症例でのPEA終了時の前眼部写真CCC形状はほぼ同心円状である.→図2図1と同一症例のIOL挿入後の前眼部写真CCC形状はIOLのhaptic方向に引き伸ばされ楕円形を呈している.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007(00)を認めた症例に対しては,CCC作製からPEA終了時までのどの時点においても水晶体の位置が手術開始時と比較して変化がなければ,CTRの適応とし上述と同様にeyeletを閉鎖する.②CCC作製からPEA終了時までに水晶体赤道部が見えてくる場合や,CCCが最初に作製した位置から大きくずれるような場合は,術後に水晶体?の偏位や脱臼が懸念されるので毛様溝固定の適応と考える.水晶体が後方(硝子体腔)に脱臼していなければmodi?edCTR(毛様溝縫着フック付きCTR)6,7)を挿入して水晶体?を毛様溝固定した後,PEAを行い,IOLを?内固定する.●術前より明らかなZinn小帯脆弱がある場合①術前にすでに水晶体動揺,水晶体偏位がある場合は毛様溝固定の絶対適応である.水晶体の前後移動がない場合あるいは前房側に偏位している場合は上記②と同様にmodi?edCTRを用いる.②これに対して,硝子体腔に偏位した水晶体へのCTR挿入は困難なため,後方脱臼例では可能なら?内摘出(ICCE)を行い(不可能なら硝子体手術を行う),IOLを毛様溝縫着する.XFSの脱臼例は高齢な症例が多いため硝子体が液化しており,後方脱臼が多い.CTR単独の処理が可能な症例はZinn小帯脆弱が軽微な症例に限定される.明らかなZinn小帯脆弱がある場合は毛様溝固定を選択すべきである.また,今後長期の検討が必要だが,CTRの両端のeyeletを閉鎖する手技はZinn小帯の補強効果がある可能性がある.文献1)Schlotzer-SchrehardtU,NaumannGO:Ahistopathologicstudyofzonularinstabilityinpseudoexfoliationsyndrome.???????????????118:730-743,19942)FaschingerCW,EckhardtM:Completecapsulorhexisopeningocclusiondespitecapsulartensionringimplanta-tion.???????????????????????25:1013-1015,19993)WaheedK,EleftheriadisH,LiuC:Anteriorcapsularphi-mosisineyeswithacapsulartensionring.???????????????????????27:1688-1690,20014)SchererM,BertelmannE,RieckP:Latespontaneousin-the-bagintraocularlensandcapsulartensionringdis-locationinpseudoexfoliationsyndrome.???????????????????????32:672-675,20065)HaradaY,SohmaR,TawaraA:Inhibitorye?ectofcap-sulartensionringonanteriorcapsuleshrinkageinexfolia-tionsyndromeaftercataractsurgery.ARVOAnnualMeeting,20076)CionniRJ,OsherRH:Managementofprofoundzonulardialysisorweaknesswithanewendcapsularringdesignedforscleral?xation.???????????????????????24:1299-1306,19987)德田芳浩:白内障手術アップデート2006合併症対策:水晶体?拡張リングの使い方アップデート.あたらしい眼科23:453-458,2006図3CTRのeyelet閉鎖CTRの両端のeyeletにポリプロピレン糸をあらかじめ通糸しておき,CTR挿入後前房内操作にて縫合を行う.図のように糸の一端をガスキン鑷子などで把持すると縫合しやすい.筆者は3-2-2で結紮して閉鎖している.