———————————————————————-Page10910-1810/09/\100/頁/JCLS性角膜症となる.一般的に角膜内皮細胞密度が400500個/mm2以下になると全体的な機能代償ができず水疱性角膜症になるといわれている.このように角膜内皮細胞は角膜の生理的機能維持に重要な意味をもち,加齢性変化に加え,Fuchsジストロフィをはじめとする種々の状況下で内皮細胞減少が認められるため,その臨床的モニターリングは非常に重要な意義をもつ.本稿ではスペキュラーマイクロスコープを中心とする角膜内皮細胞観察について述べる.II内皮細胞観察・測定の原理―Specularreexについて角膜内皮細胞の観察は鏡面反射の原理を利用しており,1918年Vogtのスリットランプによる観察が最初である.スペキュラーマイクロスコープを用いた生体観察は,1968年にMauriceが初めて角膜内皮細胞の撮影に成功し,その後改良を重ねて今日に至った.鏡面反射とは,光源からの観察光を斜めから当てることによる角膜からの反射(上皮細胞層側と内皮細胞層側に分かれる)が観察光の入射角度と同じ角度で反射することに基づいて,観察部を同角度に位置させて内皮層からの反射光のみを捉えるという原理である(図1).細隙灯下では鏡面法において,内皮細胞層にスリット光を反射させることによって内皮細胞像を得ることができる.角膜中央より45°スリットを傾けて,入射角と反射角を一致させるようにする.スリットの拡大率を30倍以上に上げて,I角膜内皮細胞とは角膜内皮細胞は角膜前房側の最内層に存在する単細胞層で,六角形の細胞がモザイクパターンに配列している.ヒト角膜内皮細胞は,invitroにて一定条件で細胞培養を行うと増殖が可能であるが,通常のinvivoの状態では細胞増殖できないので,生下時の細胞数より増加することはない.正常の細胞密度は約3,000個/mm2であり,通常角膜周辺部が中央部に比べて角膜内皮細胞密度は高い.よって病的もしくは外的要因にて角膜内皮細胞が脱落した場合は,周囲の細胞が拡大・伸展して脱落箇所を補償する.角膜内皮細胞は機能的に角膜透明性維持に重要な作用を担い,角膜実質に水分が浸透するのを制限するバリア機能と水分を前房側へ汲み出すポンプ機能の2つの機能を有する.ポンプ機能は,角膜の含水率を一定にするために,角膜実質のイオンを前房側へ能動輸送し,前房内の浸透圧が実質内の浸透圧より高くなることで浸透圧勾配を作り出し,実質内から前房へ水を移動させる.この働きはミトコンドリアでのグルコース代謝から産生されるATP(アデノシン三リン酸)による能動輸送である.角膜内皮細胞機能が正常ならば,角膜は78%の含水率で0.52mmの角膜厚が維持されているが,この機能が障害されると角膜実質内に水分が貯留し,角膜浮腫となり透明性が低下する.一時的な角膜内皮障害の場合は角膜浮腫も一過性であるが,不可逆的な角膜内皮代償不全を生じると,恒久的な角膜浮腫となり,水疱(3)141TuIue565087122特集●角膜内皮疾患を理解するあたらしい眼科26(2):141146,2009角膜内皮細胞の臨床的観察法ClinicalObservationofCornealEndothelialCells井上智之*———————————————————————-Page2142あたらしい眼科Vol.26,No.2,2009(4)れている接触型は被験者角膜表面に対物コーンレンズをのせて撮影する.利点として広視野が得られ,角膜中央(図3)から周辺(図4)に至るあらゆる部分を撮影することが可能である.その反面,感染や過度の圧迫など撮影時には注意を要し,またマニュアル操作になるため熟練を要した.撮影の実際は,1)コーンレンズの消毒,2)患眼への点眼麻酔,3)コーンレンズ先端に角膜保護剤(スコピゾル),4)固視灯にて眼位固定,5)レンズを患眼に接触,6)画面で確認しつつ,機械本体を動かしフォスリット幅を広めとし,光源の反射とスリット光の重なった部分で内皮細胞像を得る.ピントをずらして上皮細胞像でなく,六角形の見える内皮細胞像を観察する.III接触型・非接触型スペキュラーマイクロスコープスペキュラーマイクロスコープの撮影方法も上述の原理と同じである.スペキュラーマイクロスコープには接触型(図2)と非接触型(図5)がある.従来から使用さ観察光上皮上皮像内皮側の反射上皮側の反射内皮像角膜内皮図1角膜内皮細胞の観察原理図2接触型スペキュラーマイクロスコープ図3接触型スペキュラーマイクロスコープによる角膜中央部の角膜内皮細胞(bar:100μm)図4接触型スペキュラーマイクロスコープによる角膜周辺部の角膜内皮細胞(bar:100μm)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.2,2009143(5)mm2となる.さらに年齢が上がるごとに角膜内皮細胞は少しずつ脱落しその数が減少する.加齢に加えて,外傷,内眼手術,アルゴンレーザー虹彩切開術,薬剤毒性,コンタクトレンズ長期装用,緑内障,眼炎症疾患などにて角膜内皮細胞数は減少する.角膜内皮細胞が脱落すると,周囲の細胞が少しずつ拡大し,伸展することでその脱落箇所を充する.つまり一つひとつの角膜内皮細胞が代償肥大する像が認められる(図7).Fuchs角膜内皮ジストロフィなどでは,Descemet膜と角膜内皮細胞の間にコラーゲン様物質が局所的に蓄積した角膜後面に凸の疣状の突起が存在して,滴状角膜(cornealgut-ーカスを合わせる,である.時間や熟練を要するため,スクリーニングには適さないが,周辺部などの角膜のあらゆる目的部分が観察可能なため,得られる情報は大きい.現在は非接触型が主流だが,今後疾患病態を考えるうえで,角膜のあらゆる部分を確認できる接触型が病態解明のための詳細な解析のため再び脚光を浴びるかもしれない.1970年Brownらによる報告から,1991年トプコン社から,さらにコーナン・メディカル社などから非接触型スペキュラーマイクロスコープが発売された.初心者でも簡単に撮影できて非侵襲検査である非接触型マイクロスコピーは一般臨床の場で広く使用されている.ジョイスティックにて角膜反射に向かって動かし,アライメントがとれると自動的に撮影する.患者負担が少なく,感染などの心配がないのが利点である.非接触であるがゆえ,空気と角膜表面の鏡面反射が高度で角膜内皮の撮影範囲が狭い.測定範囲は0.1mm2で,全体の0.1以下の角膜内皮面積をみているにすぎない.あくまでスクリーニングである.非接触型スペキュラーマイクロスコープによる正常角膜内皮像は小さな正六角形の規則正しく配列された像である(図6).生下時の角膜内皮細胞密度は4,0005,000cells/mm2といわれており,生後2年で約3,000cells/図5非接触型スペキュラーマイクロスコープ図6非接触型スペキュラーマイクロスコープによる正常者の角膜内皮細胞図7非接触型スペキュラーマイクロスコープによる代償性肥大を示す角膜内皮細胞———————————————————————-Page4144あたらしい眼科Vol.26,No.2,2009(6)cells/mm2以上,60歳以上で2,5003,000cells/mm2とされており,2,000cells/mm2以下が異常値.また,400500cells/mm2以下になると角膜の透明性が維持できず水疱性角膜症となる.②変動係数(coecientofvariation:CV値):角膜内皮細胞の大きさのばらつきをみる値であり,細胞の大小不同の程度を表す.細胞数の減少が少なくても変動係数の増大傾向にあると角膜内皮障害の可能性が示唆される.正常値は2040歳で0.200.25,60歳以上で0.250.30とされており,0.35以上は異常値.③六角形細胞率(%)は解析した細胞のうちでの六角形細胞の頻度であり,角膜内皮細胞の形のばらつきをみる値である.角膜内皮細胞は安定した状態では六角形を示すが,内皮細胞の脱落などがみられると細胞の拡大,伸展が生じるために形にばらつきを認め,六角形細胞率が減少する.正常値は2040歳で6570%,60歳以上で6070%とされており,50%以下は異常値.V新しい内皮細胞撮影機器最近になりスペキュラーマイクロスコープのほかに,以下のような新機器にて内皮細胞撮影が可能になってきており,今後の発展が期待される.tata)とよばれる.滴状角膜はスペキュラーマイクロスコピーでは,円形に黒く抜けたdarkareaとして観察される(図8).角膜内皮細胞密度が400500個/mm2以下になると角膜内皮のバリア機能,ポンプ機能が低下し,角膜に水分が貯留し,角膜浮腫を生じる.不可逆的な角膜内皮代償不全を生じると,恒久的な角膜浮腫となり,水疱性角膜症の状態となる.角膜浮腫や実質混濁が強い場合は鮮明な内皮細胞反射を得ることができずスペキュラー像も映らない(図9).水疱性角膜症になると角膜浮腫による角膜混濁により視力低下および角膜上皮下の水疱の破綻による著しい眼痛をきたす.現在のところ,進行した水疱性角膜症の根本的な治療は全層角膜移植術か角膜内皮移植しかない.移植により良好な視力が得られても内皮型拒絶反応や感染症,二次性緑内障といった術後合併症の危険を伴うこととなる.IVスペキュラーマイクロスコープにおけるパラメータ臨床でよく用いられるスペキュラーマイクロスコープでの角膜内皮細胞の評価に関するパラメータとしては,角膜内皮細胞密度,変動係数,六角形細胞出現率があげられる.①内皮細胞密度〔celldensity,(cells/mm2)〕:単位面積当たりの細胞数で,正常値は2040歳で3,000図8非接触型スペキュラーマイクロスコープによる滴状角膜における角膜内皮細胞図9非接触型スペキュラーマイクロスコープによる角膜浮腫症例における角膜内皮細胞———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.2,2009145(7)ある.最近はダイオードレーザーを光源として採用したハイデルベルグ社のHRT-Ⅲに角膜観察用に開発されたRostockCornealModule(RCM)という前眼部アタッチメントを取り付けたHRT-ⅢRCM(図10)による生体共焦点顕微鏡検査(レーザースキャン型)により,より鮮明な画像が得られるようになった(図11).RCMの光学系の前面は使い捨ての滅菌カバーで覆われており,検査時には被験者の角膜に接触する.角膜の全組織の観察が可能で,回転リングにより焦点位置を調整する.1.コンフォーカルマイクロスコピー共焦点光学系を用いた共焦点顕微鏡検査(コンフォーカルマイクロスコピー)は角膜内皮細胞のみの観察でなく,角膜上皮細胞から角膜内皮細胞まで角膜全層の細胞の生態観察が可能である.大きく分けて,タンデムスキャン型,スリットスキャン型,レーザースキャン型が図10レーザースキャン型コンフォーカルマイクロスコピー(ハイデルベルグ社HRT-ⅢRCM)図11HRTⅢRCMにて撮影した角膜内皮細胞干渉計部CCDカメラBSハロゲンランプ光学フィルタ対物レンズレンズZ-scanyYZXZXYx対物レンズ〔装置の概要〕角膜+人工前房(液温約37℃のBBSPLUS?)中心波長790nm,波長幅80nm深さ分解能:2.6?m視野:850?m×850?mCCD画素数:500×500(1.7?m/画素)対物レンズ:10×NA-0.3水浸位相シフト法参照鏡ピエゾ素子500×500pix.検出部図12FFOCTシステムの原理図———————————————————————-Page6146あたらしい眼科Vol.26,No.2,2009(8)して取得可能な計測法である.リニク型干渉顕微鏡をベースにして,ハロゲンランプから微弱な近赤外線を角膜に照射し,光源の低干渉性と二次元CCDによる検出で,非走査で深さを分解した断面画像を取得する.さらに位相シフト法を用いたコンピュータ画像演算により共焦点型顕微鏡と同様な鉛直断面画像を作成することができる.角膜において,上皮から内皮までの角膜全層を2μmごとに撮影し,垂直方向・水平方向にて高分解能の画像が得られる.内皮細胞層も鮮明に映し出すことが可能(図13)である.文献1)PhillipsCetal:Cornea,2ndedition,Chapter19,p261-281,ElsevierMosby,Philadelphia,20052)松田司:スペキュラーマイクロスコープ.眼科診療プラクテイス18,p32-35,文光堂,19953)三方修:スペキュラーマイクロスコピー.眼科診療プラクテイス46,p66-69,文光堂,19994)小林顕:HRTⅡロストック角膜モジュール.眼科手術19:497-500,20065)AkibaM,MaedaN,YumikakeKetal:Ultrahigh-resolu-sionimagingofhumandonarcorneausingfull-ieldopti-calcoherencetomography.JBiomedOpt12:1-7,20072.フルフィールドOCT(Full-ieldopticalcoher-encetomography:FF-OCT)フルフィールドOCTシステムはTOPCON社により開発されたシステム(図12)で,水平方向の平面画像をCCDカメラにより深さ分解した二次元断層断面画像と図13FFOCTにて撮影した角膜内皮細胞