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硝子体手術のワンポイントアドバイス53.網膜下出血を伴う糖尿病牽引性網膜剥離に対する硝子体手術(中級編)

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLSはじめに増殖糖尿病網膜症では,後部硝子体?離の牽引により新生血管から破綻性の出血が網膜前あるいは硝子体腔内に生じるが,高度の牽引性網膜?離を併発した症例では,網膜下にも出血を認めることがある.陳旧性の牽引性網膜?離例あるいは裂孔併発型牽引性網膜?離例では,内部排液の際に多量の出血やghostcellが意図的裂孔を介して吸引されることがある.●網膜下出血の原因このような糖尿病牽引性網膜?離に伴う網膜下出血の出血源に関しては不明な点が多いが,筆者らは過去に,網膜下出血を伴う増殖糖尿病網膜症の11例11眼に対して硝子体手術を施行し,その臨床的特徴を検討した1).その結果,全例とも,増殖膜が視神経乳頭上あるいはその近傍に存在し,視神経乳頭周囲の網膜を前方に向かって高度に牽引していた.また,網膜下出血は,視神経乳頭に連続する形で?離網膜下に存在していた.よって網膜下出血は,乳頭上増殖膜による前方への牽引により,乳頭周囲の血管(おもに短後毛様動脈の分枝)が破綻することにより生じるのではないかと推察した.●網膜下出血を伴う糖尿病牽引性網膜?離に対する硝子体手術のポイント一般に網膜下出血をきたす糖尿病牽引性網膜?離例は,視神経乳頭周囲の増殖膜に働く牽引は強いが,周辺部は後部硝子体?離が生じていることが多いので,手術の難易度は見かけほど高くない.出血が多量に存在する症例では,意図的裂孔から網膜下液を吸引する際に,可能なかぎり出血も除去しておく.通常,糖尿病牽引性網膜?離の網膜下液は粘稠なので,出血は網膜下液とともに排出されることが多い.なお,この操作は眼内液?空気同時置換術を施行する前,すなわち灌流液下で必ず施行しておく必要がある.(59)文献1)大内雅之,安原徹,小泉閑ほか:網膜下出血を伴う増殖糖尿病網膜症の臨床的特徴.眼紀49:592-596,1998硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載?53網膜下出血を伴う糖尿病牽引性網膜?離に対する硝子体手術(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1網膜下出血を伴う糖尿病牽引性網膜?離例a:術前の眼底所見.黄斑部に牽引性網膜?離を認め,網膜下出血は視神経乳頭から耳側血管アーケード内に裾広がりに貯留している.矯正視力は0.02.b:硝子体手術後1カ月の眼底所見.網膜下出血は視神経乳頭上方と下方の血管アーケード周囲に一部残存するも大半は吸収され,網膜は復位している.矯正視力は0.1.ab図2網膜下出血か生じる原因網膜下出血は視神経乳頭上の増殖膜による前方への牽引により,乳頭周囲の血管(矢印)が破綻するため生じるのではないかと考えられる.

眼科医のための先端医療82.網膜細胞を増やす!

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS中枢神経のなかで再生が起こる場所最近は大人になっても脳の細胞が新しく生まれていることが知られています.といっても,記憶に関与するといわれる海馬と,鼻の感覚神経を生み出す脳室下帯では常に再生していることが知られていますが,その他の領域で神経が新生するかどうかは議論のあるところです.虚血などの障害後に大脳皮質などでも神経が新生するという報告1)もありますが,新生しないという意見も根強くあります.網膜では神経細胞の新生があるのか筆者らは,中枢神経の一部である網膜を対象に,傷害後に神経が新生するかどうかを確認しました.傷害後にミュラー(M?ller)細胞が分裂を始めるのですが,数日後にはミュラー細胞の存在する内顆粒層にあった分裂細胞が徐々に外顆粒層あるいは内網状層に移動していくことを観察しました.さらに外顆粒層に移動した分裂細胞,すなわち新しく生まれた細胞のなかには,視細胞特有の蛋白質であるロドプシンを発現する細胞があることがわかりました.つまり,もともとミュラー細胞であったものが,分裂して新しい視細胞を生み出したことになります2)(図1).網膜神経新生を促進することができるのかしかし,新生する視細胞の数はわずかで,顕微鏡の1視野に数個という量でした.傷害後の視機能を再生させるためには足りませんので,これを増やすために幹細胞の増殖因子であるWnt蛋白に着目しました.Wntは造血系の幹細胞を増殖させたり,網膜の発生過程でも毛様体辺縁部に存在する網膜幹細胞を増殖させる働きをもっています.そこで,網膜をそのまま取り出し(器官培養),培養液中にWnt3aを添加してみますと,前記のミュラー細胞の分裂が20倍以上に増幅され,生まれる視細胞も格段に多くなりました3).これは,中枢神経における傷害後の神経細胞新生促進の初めての例です.新生した視細胞が双極細胞とシナプスを形成すれば,視機能の回復,保持に寄与する可能性があります.海馬では,新生した細胞は神経回路網に組み込まれ機能することが証明されていますので,網膜でも薬物による網膜機能回復促進の可能性があります.つまり,網膜傷害後,硝子体中にWnt3aを投与すれば網膜の修復機構で少量再生される視細胞を大量に増やして機能回復を促進することができるかもしれないということです.ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針上記は内在性幹細胞による網膜再生ですが,細胞移植に関しては,昨年9月に厚生労働省から示された「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」が施行され,それまでにすでに行われている以外の新たに計画された臨床研究,あるいはすでに行われている細胞移植でも変更がある場合はこの指針に従うこととなりました.指針では,研究の体制,細胞の採取,調整時の安全対策,品質管理,移植時の安全対策などが定められており,細胞調整は薬剤と同様にGMP(goodmanufacturingpractice)基準のCPC(cellprocessingcenter)に準ずる施設で行うように規定されています.臨床研究の計画は,所属機関の倫理委員会の認可のもと,厚生科学審議会で検討され,その審議を踏まえた厚生労働大臣の承認が必要です.胎児細胞を用いた研究にはこの指針は適応されず,実質日本では胎児細胞を用いた臨床研究はできないのが現状です.現在申請されている臨床研究は骨髄細胞を用いた自家移植が大半です.(55)◆シリーズ第82回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊高橋政代(理化学研究所神戸研究所発生・再生科学研究センター/神戸市立医療センター中央市民病院眼科)網膜細胞を増やす!図1網膜傷害時のミュラー細胞からの視細胞新生の模式図分裂ミュラー細胞移動視細胞新生内顆粒層外顆粒層Nestin+Pax6+Rhodopsin+Recoverin+———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007実際に行われている細胞移植指針施行以前から行われている細胞移植としては,皮膚移植,角膜上皮細胞移植,膵島移植(糖尿病),骨髄由来各種幹細胞移植(下肢虚血や心筋梗塞,歯・骨・軟骨疾患),数例の骨格筋芽細胞の心筋移植があります.効果はまだ不明ですが,脳梗塞や脊髄損傷に対して骨髄間質細胞移植が,脊髄損傷に関しては鼻粘膜細胞の移植も日本で行われています.(輸血も広義の細胞移植であり,血液疾患に対する造血幹細胞移植も早くから行われています.)また,日本では行われていませんが,海外ではパーキンソン(Parkinson)病や脊髄損傷,そして網膜色素変性や加齢黄斑変性に対して胎児細胞移植が行われています.脊髄損傷に対しては,血液中のマクロファージ細胞移植も行われています.つぎに控える細胞移植このように,皮膚,角膜,血管,骨・軟骨のつぎに神経が対象となってきており,特にパーキンソン病の胎児細胞移植はランドマイズ研究で有効性が確認されています.ただし,高齢者のパーキンソン病には効果が出にくいなど,対象疾患の病期や状態に大きく左右されますので,効果判定には慎重な臨床研究が必要と思われます.神経がつぎの候補としてあげられる理由の一つにES細胞から神経が分化しやすいということがあります.膵臓や肝臓などの内胚葉系細胞はES細胞から分化させるのがむずかしいので,大量の移植細胞確保の目処が立っていません.それに対し,ヒトES細胞からパーキンソン病の治療に使用されるドーパミン細胞や網膜前駆細胞は大量に得られます.また,中枢神経は免疫租界なので拒絶反応が比較的少ないと考えられており,他家移植であるES細胞由来細胞の移植も行いやすいということがあります.現在,骨髄細胞移植につぐ移植細胞源であるES細胞由来細胞の移植に向けての準備が海外でも日本でも着々と進められており,脊髄損傷に対するヒトES細胞由来神経幹細胞移植はアメリカで近々行われる予定です.次世代の細胞移植源最近,京都大学再生医科学研究所の山中らが,皮下の線維芽細胞に4種類の遺伝子を導入することでES細胞に酷似した性質をもつiPS(inducedpluripotentstemcells)細胞の作製に成功しました4).これは早くも世界中でノーベル賞が噂されるほどの画期的な成果で,クローンES細胞を作製せずとも患者本人の細胞からES細胞同様のあらゆる細胞になる細胞源がつくれるのです.ES細胞から分化させるのと同じようにiPS細胞から視細胞を分化させることができれば,拒絶反応のない移植細胞源ができます.遺伝子導入による腫瘍化の問題などが残っていますが,免疫抑制剤不要の移植治療は患者さんにどれだけ福音となるか計り知れません.文献1)NakatomiH,KuriuT,OkabeSetal:Regenerationofhip-pocampalpyramidalneuronsafterischemicbraininjurybyrecruitmentofendogenousneuralprogenitors.????110:429-441,20022)OotoS,AkagiT,KageyamaRetal:Potentialforneuralregenerationafterneurotoxicinjuryintheadultmamma-lianretina.??????????????????????101:13654-13659,20043)OsakadaF,OotoS,AkagiTetal:Wntsignalingpro-motesregenerationintheretinaofadultmammals.???????????27:4210-4219,20074)OkitaK,IchisakaT,YamanakaS:Generationofgerm-line-competentinducedpluripotentstemcells.??????448:313-317,2007(56)■「網膜細胞を増やす!」を読んで■今回は理化学研究所/神戸市立医療センター中央市民病院の高橋政代先生に網膜を中心に再生医療の高度で最先端の成果をとてもわかりやすく解説していただきました.われわれ眼科医にとっての泣きどころは,網膜が再生しないため,糖尿病網膜症や緑内障で網膜細胞障害の原因を取り除く,または病態を落ち着かせることができても一度破壊された網膜のため視力の回復につながらないということです.この問題に解決の方向を見だされた高橋先生はこの分野のパイオニアで,網膜は中枢神経だから新しく生まれ変わることはありえないと考えていた迂闊な私にとって高橋先生の一連のお仕事はきわめて衝撃的なものでした.サイエ———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????(57)☆☆☆ンスの進歩というのは自ら制限をしてできないと思ってはいけないのだという,いわばサイエンスのフィロソフィーをもういちど思い起こさせたお仕事です.ES細胞に代表される多分化能をもった細胞の開発においては社会的な面,倫理的な面が今後も大きな問題になると考えます.韓国ソウル大学の黄教授(当時)がヒトクローン胚を始めてつくることに成功したという報告が研究方法の面,実際の科学的な検証からの面で問題があり,最終的には論文の捏造という不幸な形となったことは皆さんの記憶に新しいことと思います.人類の幸福のために行う科学研究では激烈な競争があり,ともするとこれが研究の本質をゆがめてしまう可能性があります.たとえきちんとした研究がなされても高橋先生の総説中にあるように国によってはかなり慎重な態度で再生医療の研究方法に制限をつけている段階ですので,ひとつの大きな不祥事で研究全体に対する社会の支持を一挙に失う可能性すらあります.再生医療の基本となるES細胞の作製には先陣争いでのいろいろな苦い経験をした人類が,京都大学山中伸弥教授のES細胞に酷似した性質をもつiPS(inducedpluripotentstemcells)細胞(本文参照)の開発にたどり着いたことは,ES細胞の開発には受精卵またはその発生の進んだ初期胚を用いる必要があるという倫理的に大変な慎重さを要求される研究手法から一気に開放されるすばらしい業績で,高橋先生が「これは早くも世界中でノーベル賞が噂されるほどの画期的な成果」と絶賛される意味がわかります.このような研究成果が日本から発信されたことは大変誇らしく思います.また,高橋先生は網膜の再生の研究では日本を代表し,世界の最先端におられますが,このような研究者が眼科臨床の現場から生まれて眼疾患に悩む患者さんのために研究をしておられることに同じ眼科医として大変誇らしく思います.山形大学医学部情報構造統御学講座視覚病態学分野山下英俊

新しい治療と検査シリーズ175.Brilliant Blue G(BBG)による内境界膜染色

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLSm?以下の濃度であれば,明らかな網膜における組織障害を認めなかった3).さらに角膜内皮細胞に対してもその安全性を証明した4).さらに,ヒトでの手術を想定し,カニクイザルを用い実際に硝子体手術を施行し,BBGでの内境界膜染色と?離を行った.術後,眼底および蛍光眼底造影での経過観察を行ったが,網膜変性などの重篤な合併症は認めなかった2).?BBGを用いた内境界膜?離の使用法と注意点筆者らは九州大学におけるBBG使用の臨床研究の承認の後,現在患者に十分なインフォームド・コンセントを得た後,アジュバントとして手術に使用している.新しい治療と検査シリーズ(53)?バックグラウンド眼科手術に際し,各種薬剤を手術補助剤(アジュバント)として用いた術中眼内染色は,元来手術中に見えなかった組織を可視化することで,より確実かつ安全な手術の実施が可能になり,手術成績の大幅な向上にも寄与している.現在内境界膜における術中染色にはおもにインドシアニングリーン(ICG)とトリパンブルー(TB)が用いられているが,近年それらの網膜に対する組織障害の報告が相次いでいる.またトリアムシノロンアセトニド(TA)も内境界膜?離に用いられるが,手技的に若干の慣れが必要であり,内境界膜の視認性ではICGに劣る.かつて筆者らもICGの網膜毒性の可能性の報告1)を行っておきながら,実際は当時術中に使用しているという矛盾に,なんとかして解決策を見いだそうとしていた.したがって,内境界膜の十分な染色性を有する安全性の高いアジュバントの開発と臨床応用は,この分野における重要な課題であった.?新しい手術アジュバントの安全性評価筆者らは,新しい内境界膜染色のための色素の有力な候補としてBrilliantBlueG(BBG)を見いだした.BBGを実際の手術アジュバントとして用いる臨床試験に先立ち,安全性の評価のため実験動物を用いた非臨床試験を実施した.まず,網膜に対する影響を検討するため,さまざまな濃度のBBGをラットの硝子体腔に注入し留置後に電気生理学的,さらに眼球を摘出し組織学的な検討を行った.組織学的には高濃度(10mg/m?)のBBG注入群でも,明らかな網膜障害を示唆する所見は認めなかった.また網膜電図(ERG)の観察でも振幅の低下は生じなかった2).また,誤って網膜下に迷入した場合を想定し,ラット網膜下にBBGを注入したが,その結果0.25mg/175.BrilliantBlueG(BBG)による内境界膜染色プレゼンテーション:江内田寛1,2)石橋達朗1)1)九州大学大学院医学研究院眼科学分野/2)国立病院機構九州医療センター眼科コメント:山本禎子山形大学医学部附属病院眼細胞工学講座図1BBGを用いた内境界膜?離黄斑円孔症例において,BBGによる内境界膜染色後に,鉗子を用いて内境界膜を?離する(a).染色された領域と?離部の境界は明瞭に区別される(b).黄斑上膜症例での使用では,BBGを注入しても,黄斑上膜の明らかな染色は認めない.黄斑上膜を?離(c)の後,再度BBGを注入すると,残存している内境界膜は鮮明に染色され,その?離も容易に行える(d).abcd———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007実際の硝子体手術では,人工的後部硝子体?離を作製の後,0.25mg/m?に調整したBBG溶液を0.5m?ほど硝子体腔に注入し,すぐに眼内灌流液で洗浄を行う.内境界膜は明瞭に青色に染色され,鉗子を用いた?離も容易に行える(図1a,b).染色に際しTBで行う液?空気置換などの煩雑な手技も必要でない.眼内での染色の特徴として,内境界膜についてはきわめて良好な染色性を示し,ICGと同様に黄斑上膜や残存硝子体などについては染色を認めない(図1b,c).現在筆者らが使用しているBBG溶液の性状は調整後でpHおよび浸透圧も眼内灌流液と同等である2).有害事象については,これまで実施し報告した症例(黄斑円孔と黄斑上膜での成績)について,6カ月以上の術後経過を観察した限りでは,薬剤によると考えられるいかなる合併症や副作用も認めておらず,高い眼内での安全性と,臨床使用における有効性が証明されている5).BBGはこれまでおもに生化学や分子生物学の分野において,電気泳動の際のゲル内の蛋白染色に用いられていた色素である.言うまでもなく,ヒトに対する安全性については十分に確立されているものではない.使用に際しては,所属機関の倫理委員会の承認と患者に対する十分なインフォームド・コンセントが必要である.文献1)EnaidaH,SakamotoT,HisatomiTetal:Morphologicalandfunctionaldamageoftheretinacausedbyintravitre-ousindocyaninegreeninrateyes.????????????????????????????????240:209-213,20022)EnaidaH,HisatomiT,GotoYetal:Preclinicalinvestiga-tionofinternallimitingmembranepeelingandstainingusingintravitrealBrilliantBlueG.??????26:623-630,20063)UenoA,HisatomiT,EnaidaHetal:BiocompatibilityofBrilliantBlueGinaratmodelofsubretinalinjection.???????27:499-504,20064)HisatomiT,EnaidaH,MatsumotoHetal:Thebiocom-patibilityofBrilliantBlueG:PreclinicalStudyofBrilliantBlueGasanajunctforcapsularstaining.????????????????124:514-519,20065)EnaidaH,HisatomiT,HataYetal:BrilliantblueGselec-tivelystainstheinternallimitingmembrane/BrilliantBlueG-assistedmembranepeeling.??????26:631-636,2006(54)?本方法に対するコメント?内境界膜を?離する際に用いられる手術補助剤は,現在,トリアムシノロンアセトニド(TA),インドシアニングリーン(ICG)やトリパンブルーなどが代表的である.TAは染色による組織毒性はないが,所詮は内境界膜の上に乗っているだけなので途中で内境界膜の?離断端を見失ってしまうことがある.ICGやトリパンブルーは網膜毒性が報告されており,その濃度や照明光の曝露時間に注意を要する.本報告に用いられている0.25mg/m?のBrilliantBlueG(BBG)はICGの0.125%に類似した染色程度で,内境界膜の一部が切開されると境界部分がより明瞭になるので,内境界膜の?離操作に非常に有用である.ただし,多くの染色剤が濃度および曝露時間依存性に網膜障害を生じるので,今後も引き続いて本剤の安全性についての検討を行っていただきたい.☆☆☆

眼感染症:多剤耐性淋菌

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS淋菌(?????????????????????)は性行為感染症(sexu-allytransmitteddiseases)の代表的な起因菌である.淋菌感染症は2002年をピークとして減少傾向となっているものの現在も性器クラミジア感染症についで発生頻度の高い性感染症である1).淋菌による眼感染症としては膿漏眼といわれる結膜炎がよく知られており,その多くは産道感染による新生児結膜炎や淋菌性尿道炎,子宮頸管炎を有する成人例での報告であったが,近年では小児例の報告もみられている2,3).淋菌性結膜炎は診断・治療が遅れると角膜潰瘍や角膜穿孔から失明といった重篤な合併症をきたす可能性があるといわれている4).近年,キノロン系薬耐性をはじめとした多剤耐性淋菌が増加しており,適切な抗菌薬の選択が必要である.■塗抹鏡検での見方とコツ淋菌性結膜炎では,膿性眼脂を認めることが多いためにグラム染色で好中球に貪食されたグラム陰性双球菌を確認できれば淋菌を推定することが可能である(図1).しかし,検体採取時に皮膚常在菌の混入があった場合は,淋菌と同様にグラム陰性双球菌に染色される非病原性ナイセリアとの鑑別が必要となる.塗抹標本中の好中球の存在およびその貪食像は重要な鑑別点となる.■材料採取における注意事項眼分泌物の採取においては皮膚常在菌の混入がないよう細心の注意が必要である.淋菌は低温,乾燥に弱く死滅しやすいために輸送培地入りの滅菌綿棒で採取し,速やかに細菌検査室に提出する必要がある.しかし,やむを得ず保存が必要なときは室温で保存する.一方,保険適用はないがPCR(polymerasechainreaction)法により眼分泌物中の淋菌を同定する場合は,輸送培地の入らない滅菌綿棒で採取する必要がある.■薬剤感受性試験淋菌の薬剤感受性試験の標準法5)を表1に示す.MIC(49)53.多剤耐性淋菌眼感染症セミナー─クライシスコントロール講座─●連載?監修=浅利誠志井上幸次大橋裕一幸福知己兵庫県立尼崎病院検査・放射線部淋菌性結膜炎は新生児,成人のみならず小児感染例も報告され,早期に診断・治療がされなければ角膜穿孔から失明に至る可能性がある.淋菌性結膜炎では検体が適切に採取されればグラム染色による推定が可能であり,早期診断としての有用性が高い.また,近年はキノロン系薬耐性をはじめとした多剤耐性淋菌が増加しており,適切な抗菌薬療法が必要である.図1淋菌性結膜炎の膿性眼脂とグラム染色像a:淋病を疑う膿漏眼(写真提供:鈴木崇先生(愛媛県鷹の子病院).b:眼分泌物の塗抹標本(グラム染色,1,000倍).aの所見を呈する膿漏のグラム染色で多核白血球(好中球)に貪食されたグラム陰性双球菌を認めれば,??????????????????????と推定可能である.ab———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007(最小発育阻止濃度)を求める方法として寒天平板希釈法があるが,測定方法が煩雑なために,多くの施設ではディスク拡散法を用い,感性(S),中間(I),耐性(R)の報告を行っているのが現状である.■淋菌の薬剤耐性メカニズムと薬剤感受性成績淋菌の薬剤耐性機構を表2に示す.b-ラクタム系薬耐性としては,以前多くみられたPPNG(PenicillinaseProducing?????????????????????)は現在では数%以下となり,多くはb-ラクタム系薬の標的酵素であるペニシリン結合蛋白(PBP)の変異による耐性となっている.また,近年では経口抗菌薬としては,淋菌に対して最も抗菌力の強いセフィキシム(CFIX)の耐性率も増加している.これはPBP-1の遺伝子である????遺伝子の点変異(Len421Pro)およびPBP-2の遺伝子である????遺伝子が他の?????????属の遺伝子とキメラ化を起こしていることによる.一方,キノロン系薬耐性としてはDNAgyraseやTopoisomeraseⅣの遺伝子である????や????などの点変異がおもな耐性メカニズムとなっている6,7).2006年に近畿地区の医療施設から分離された淋菌209株に対して,筆者らが実施した薬剤感受性成績を表3に示す8).ペニシリンG(PCG),テトラサイクリン(TC),レボフロキサシン(LVFX)の耐性率はそれぞれ96.2%,87.6%,84.2%と高く,治療薬としては選択できない状況である.CFIXの近畿地区における耐性率は7.7%であったが,30~50%が耐性であったとの報告もある9).セフトリアキソン(CTRX)およびスペクチノマイシン(SPCM)の耐性株はなかった.また,PCG・TC・LVFX同時耐性は64株(30.6%),PCG・TC・LVFX・CFIX同時耐性を11株(5.3%)認め,多剤耐性化がみられた.■基本的な治療薬剤日本性感染症学会の性感染症診断・治療ガイドライン200610)では,淋菌性結膜炎に対してはSPCMの筋注(臀部)2.0g単回投与が推奨されている.保険適用はないが,セフォジジム(CDZM)の静注1.0g単回投与またはCTRXの静注1.0g単回投与も有効とされている.投与期間については,個々の症例ごとに考慮されるべきであるとしている.点眼薬としては,セフメノキシム(50)表1淋菌に対する薬剤感受性試験(CLSIM2-A9andM7-A7/M100-S17)抗菌薬ディスク拡散法(mm)寒天平板希釈法(?g/m?)R(耐性)I(中間)S(感性)R(耐性)I(中間)S(感性)ペニシリンG≦2627~46≧47≧20.12~1≦0.06セフィキシム──≧31──≦0.25セフトリアキソン──≧35──≦0.25テトラサイクリン≦3031~37≧38≧20.5~1≦0.25レボフロキサシン*≦2425~30≧31≧20.5~1≦0.25スペクチノマイシン≦1415~17≧18≧12864≦32*レボフロキサシンは判定基準がないためにオフロキサシンの判定基準を代用.表2淋菌の抗菌薬耐性b-ラクタム薬耐性?PPNG(PenicillinaseProducing?????????????????????)プラスミド獲得によるb-lactamase(TEM-1)産生菌?CMRNG(Chromosomally-mediatedresistant??????????????????????)染色体に存在するPBP-1,2または外膜蛋白質遺伝子の変異?CZRNG(Cefozopran-resistant?????????????????????)PBP-2遺伝子????の大部分が他の?????????属とキメラ化テトラサイクリン系薬耐性(染色体性,プラスミド性)?外膜蛋白質遺伝子の変異?薬剤排出システムの亢進(高度耐性tetM)キノロン系薬耐性(染色体性)?DNAgyrase(????),TopoisomeraseⅣ(????)遺伝子の点変異?外膜蛋白質遺伝子の変異,薬剤排出システムの亢進(文献6より一部改変)表3淋菌に対する各種抗菌薬の薬剤感受性成績(2006年,209株)抗菌薬感受性率(%)MIC90(?g/m?)感性(S)中間(I)耐性(R)ペニシリンG3.84452.22セフィキシム92.37.7*0.25セフトリアキソン1000*0.06テトラサイクリン12.435.452.24レボフロキサシン15.89.175.1>4スペクチノマイシン1000032*感性(S)以外.(幸福知己ほか,近畿耐性菌研究会)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????(51)(CMX)の抗菌力が強いが,経口セフェム耐性淋菌に対して,有効であるかどうかは不明である.キノロン系薬に対しては80%以上が耐性株であるため,ニューキノロン含有点眼薬は使用すべきではない.一方,サンフォード感染症治療ガイド200711)では淋菌性結膜炎に対して小児ではCTRX25~50mg/kg筋注または静注(125mgを超えない)単回投与,成人には1g筋注または静注単回投与となっている.現在,淋菌治療において確実に効果が期待できる抗菌薬はSPCM,CTRX,CDZMである.他の抗菌薬は,薬剤感受性試験の結果に基づき使用すべきである.文献1)小坂円,岡部信彦:発生動向調査からみた性感染症の最近の動向.日本性感染症学会誌17(Suppl):90-98,20062)後藤亜紀,稲田紀子,菅谷哲史ほか:小児に発症したフルオロキノロン耐性淋菌結膜炎の2症例.眼科47:2003-2008,20053)田中才一,雑賀司珠也,大西克尚:8歳男児に発症したレボフロキサシン耐性淋菌性角結膜炎の1例.眼臨98:873-875,20044)永田正子,小野眞史,永堀通男:成人淋菌性結膜炎の2症例.眼紀50:301-305,19995)ClinicalLaboratoryStandardsInstitute:PerformanceStandardsforAntimicrobialSusceptibilityTesting:Sev-enteenthInformationalSupplement,M100-S17,NationalClinicalLaboratoryStandardsInstitute(formerlyNCCLS),Pennsylvania,20076)松本哲朗:淋菌感染症.産科と婦人科72:837-843,20057)村谷哲郎,松本哲朗:淋菌感染症の現況と対策.化学療法の領域21:1107-1112,20058)幸福知己,折田環,木下承晧ほか:淋菌に関する薬剤耐性菌調査成績─第5回目調査─.第18回日本臨床微生物学会総会抄録集,20079)AkasakaS,MurataniT,YamadaYetal:Emergenceofcephemsandaztreonamhigh-resistant??????????????????????thatdoesnotproduceb-lactamase.???????????????????7:49-50,200110)日本性感染症学会編:性感染症診断・治療ガイドライン2006.日本性感染症学会誌17:35-39,200611)サンフォード感染症治療ガイド2007.p24,ライフサイエンス出版,2007◎検査室から眼科医へ◎淋菌性結膜炎疑いの場合は検査材料として眼脂が提出されますが,可能なかぎり常在菌の混入を避けた検体採取をお願いしたいと思います.また,疑う感染症名によって検体の保存条件,使用培地,培養条件などが異なるために,検体提出時に情報が検査室に伝達されれば,より確実な検査が可能となります.さらに,淋菌の感受性試験においては事前に測定抗菌薬を検査室と協議しておくことが重要であると思います.◎眼科医から検査室へ◎ご指摘のとおり,一般に眼脂や結膜ぬぐい液を採取する際に皮膚の常在菌を持ち込まないことは重要だと思います.幸い,淋菌性結膜炎の場合は眼脂がきわめて大量のため,皮膚の菌をcontaminationさせる可能性は逆に低いように思います.一方,淋菌の結膜での病原性が非常に強いために,眼科医の大部分は淋菌が強い菌であると誤解しているのが現状で,検査室への輸送や保存にあたって注意がなされていないように思います.死滅しやすい弱い菌であることを多くの眼科医に知っていただく必要があると思います.それと,淋菌性結膜炎では診断・治療が遅れると角膜穿孔につながり,重度の視力障害を生じますので,塗抹検鏡でグラム陰性球菌を認めた場合は,その結果を速やかに眼科医に報告していただければと思います.淋菌性結膜炎は言われているように検査室と眼科医の連携が特に重要となる疾患といえるでしょう.鳥取大学医学部視覚病態学井上幸次☆☆☆

緑内障:“ガード付きナイフ”による2重強膜弁作製

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS●緑内障手術における強膜弁作製緑内障手術において,強膜弁の作製は術後の眼圧コントロールに重要な位置を占めている.強膜弁の大きさは4×4mmであるが,常に一定の厚さに作製することはなかなかむずかしい.さらに,最近は線維柱帯切開術だけでなく,線維柱帯切除術においても,2重強膜弁を作製する傾向にある.しかし,2重強膜弁を2枚とも一定の深さで作製することは経験を要するところである.そこで,一定の厚さで切開を入れることが可能なガード付きナイフを2重強膜弁作製に使用することを検討した.適切な深さのガード付きナイフで2枚の強膜弁を作製することにより,第1強膜弁は常に一定の厚さで,弁の辺縁まで均一で直角の理想的な強膜弁が作製可能となり,第2強膜弁を一定の厚さで作製することにより自動的にSchlemm管を露出することが可能となる(図1).このことは,常に同じ条件で手術をすることがむずかしい緑内障手術の定型化が可能となる.さらに,緑内障手術の執刀が少ない医師にとってはしっかりとした強膜弁の作製およびSchlemm管露出の助けとなり,緑内障手術を多数執刀する医師にとっては手術時間の短縮につながる方法と考えられた.●強膜厚の測定超音波生体顕微鏡(UBM)を使用し,強膜表面からブドウ膜までの厚さを測定した.4例の強膜をUBMで測定し,730±86;620~820?m(mean±SD;range)の厚さであることを確認した(表1).●ガード付きナイフの種類BD社からディスポーザブルのBDビーバークリアコーニア“ガード付きナイフ”が発売され,切開の深さは(47)●連載?緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄88.“ガード付きナイフ”による2重強膜弁作製川瀬和秀大垣市民病院眼科緑内障手術における強膜弁作製に“ガード付きナイフ”の使用を検討した.超音波生体顕微鏡での強膜厚を測定し,2重強膜弁作製に適した300?mの“ガード付きナイフ”を使用した.“ガード付きナイフ”の使用により緑内障手術手技の定型化,手術時間の短縮および手術手技習得の簡便化が可能と考えられる.表1UBMによる強膜厚の測定結果年齢(歳)性別強膜厚(?m)50男性82046女性77063男性71073女性620730±86?m(mean±SD)図12重強膜弁作製第1強膜弁第2強膜弁———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007250?m,300?m,350?mの3種類がある(図2a).また,フェザー安全剃刀株式会社からは再使用可能なアルミニウムハンドルによる“緑内障ナイフ”が0.20,0.30,0.40mmの深さで用意されている(図2b).強膜厚測定結果より両方のナイフで使用できる300?mを使用した.BD社製のガード付きナイフは,ガードの部分が厚く,一定の厚さ以上に深く切開することは少ないが,細かい部分の切開にはガードが邪魔になることもある(図3).フェザー安全剃刀社製のガード付きナイフは,ガードの部分が薄く,追加切開などでやや深く切開されることがあるが,操作性は良好である.それぞれの特性を生かして好みのナイフを使用することをお勧めする.(48)図3第2強膜弁の作製ab図2ガード付きナイフa:AccurateDepthKnife300?m.b:マイクロフェザーNo.6330G.☆☆☆

屈折矯正手術:Epi-LASIKのエンハンスメント

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS本稿では,Epi(Epipolis)-LASIK(laser???????kera-tomileusis)で行うエンハンスメント手術について述べる.当院では,2004年11月にEpi-LASIKを導入した.その後現在まで,22例33眼でEpi-LASIKでエンハンスメントを行った.●エピケラトームについて現在,日本国内で利用できるエピケラトームは4機種ありそれぞれに特徴がある.しかし,最近のEpi-LASIKでは,初回手術での実質穿孔例が報告されるようになりメーカーに確認したところでは,エンハンスメント手術について公式に安全性を認めているメーカーはなく,その利用は医師の自己責任とのことである.かなり乱暴な言い方だが,Epi-LASIKでエンハンスメント手術を施術する医師は各自,エンハンスメント手術の報告はないのか確認して,医師の自己責任のもとに手術を行う必要がある.●当院での適応初回手術がLASIKであれば禁忌である.LASIKのフラップは外力でずれやすく,エピケラトームで上皮フラップを作る際には,正常に上皮フラップができる可能性は低いものと推測される.初回手術が,PRK(pho-torefractivekeratectomy),LASEK(laser-assistedsubepithelialkeratectomy),Epi-LASIKの場合は適応と考えている.初回手術が,RK(radialkeratotomy)の場合もRKの切開創から実質へ穿孔してしまう可能性が高いものと思われ,禁忌と考えている.●ノモグラムエピケラトームの吸引リングが角膜曲率と関係する場合は,LASIKの場合と同じでエンハンス手術直前の曲率値を採用する.レーザーのノモグラムは初回手術と同じもので行い,特にエンハンスメント手術専用のものは使っていない.●症例今回のエンハンスメント前の手術は33眼中25眼がPRK,8眼がwavefront-guidedEpi-LASIKであった.●結果上皮フラップ作製時の安全性エンハンスメント手術時のフラップのトラブルは33眼中5眼で生じた.Epi-LASIK導入から間もない14眼中5眼で生じた.内訳は3眼が結膜の偽吸引に気づかずカットし,不完全フラップになった.このうち2眼は,レーザーの照射範囲にかかっていたので,レーザーを照射せず後日再手術を行い問題なく手術を終えた.1眼はレーザーの照射範囲は問題なかったためレーザーを照射し経過は良好であった.2眼がフリーフラップになったが,レーザーを照射し経過良好であった.言い訳になってしまうが,この14眼を手術した頃は,普通の初回手術のEpi-LASIKでもたびたび結膜の偽吸引が起きていた.一種のラーニングカーブのようなものなのかもしれない.そこで,手術時の眼位を厳密に水平にし,開瞼器をオリジナルに作製し,最近では結膜の偽吸引はみなくなった.しかし,最近でもフリーフラップは時々みられるが,フラップが戻せなくても術後視力に影響は出ていない.幸い実質穿孔したエンハンスメント症例は1例もない.万が一穿孔したときは,フラップに残っている実質を捨てずに穿孔部に戻すことを薦める.(45)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=木下茂大橋裕一坪田一男89.Epi-LASIKのエンハンスメント合屋慶太こやのせ眼科クリニックEpi(Epipolis)-LASIK(laser???????keratomileusis)で行うエンハンスメントでは,実質穿孔しないでエピケラトームが作動するのか,メーカーは安全性を公式には認めていない.施術医師の自己責任で手術を行わなければならない.しかも,術後経過も初回手術とは異なり,視力の立ち上がりが遅く,3分の1の症例では2~3カ月の間,強い遠視化を認め注意が必要である.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007●術中所見フラップをめくると,Bowman膜が残っている部位と前回の手術時のレーザー照射部の表面は明らかに異なり,一目で見分けがつく.初回手術でのレーザー照射部が中心ずれを起こしていることがすぐにわかる症例もある.この部の顕微鏡下の見え方は,Bowman膜表面とも,LASIKの角膜ベッド表面とも異なるもっとテカテカとした独特の光沢をもったものである(初回Epi-LASIKで実質穿孔したときは,LASIKの角膜ベッド表面と似ている).●視力と屈折3カ月間術後を観察できた28眼でみると,図1に示すように,視力は平均でみると立ち上がりが遅い.屈折は図2に示すように平均は術後1週目から良い値を示すが,その分布をみると(図3),術後1カ月目には±0.5D以内が28眼中16眼(57%)あるものの,理由は不明だが1D以上遠視化している症例も9眼(32%)あり,良いグループと遠視化するグループがあり注意を要する.3カ月後には±0.5D以内の症例数16眼は変わりないが,1D以上遠視化している症例が2眼(7%)と減少している.術前のインフォームド・コンセントで視力の立ち上がりに2週間ほどかかること,および約3分の1の症例は,2カ月ぐらい強い遠視化を伴うことがあるが,その後急激に遠視が軽くなることを説明しておく必要がある.おわりにEpi-LASIKでのエンハンスメントは,初回手術とかなり異なった手術経過をとること,エピケラトームによっては,エンハンスメント症例の報告がないものもあり注意が必要であることを強調しておきたいと思う.(46)☆☆☆00.51.01.52.0術前:裸眼視力:矯正視力1週1カ月3カ月図1術後平均視力の経過-1.5-1.0-0.500.51.0術前1週1カ月3カ月図2屈折(等価球面)の経過05101520-1D以内眼数:1カ月:3カ月±0.5D以内2.0以上2D以内1D以内図3屈折(等価球面)の分布

眼内レンズ:白内障術後の壊死性強膜炎

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS●症例患者は83歳,女性.白内障手術目的に当院紹介となった.両眼とも小瞼裂で,散瞳不良を伴う落屑症候群がありZinn小帯脆弱が疑われた.全身の既往歴としては2年前より慢性関節リウマチに対し加療を開始されており,内科主治医からは手術施行可能の旨が確認されていた.まずは右眼白内障手術を施行(切開創は3.5mm上耳側強角膜切開),術中には瞳孔縁小切開およびイリスリトラクターによる虹彩拡張を行った.術中合併症なく手術を終了した.4日後,左眼白内障手術を施行,術中にZinn小帯断裂を認めたため,硝子体切除術+眼内レンズ毛様体溝縫着術にコンバートした.確実に閉創を行い,手術を終了した.左眼は術翌日,経過良好であったが,術後2日目に鼻側結膜縫合部が創離解し,術後2週間で左眼鼻側の眼内レンズ縫着糸が強膜上へ露出(図1)したため,翌週の結膜縫合術を予定した.結膜縫合術予定日,左眼の疼痛,毛様充血,鼻側強膜の融解,前房内および硝子体腔内炎症を認めた(図2,3).眼内炎と診断し,同日,硝子体手術を施行した.なお,右眼にも強角膜創菲薄化と(43)周辺部角膜浸潤(図4)を認めた.術中は前回手術時の強角膜創や強膜ポートを中心とした強膜融解と房水漏出を認めた.網膜の炎症程度はごく軽度であった.強膜が非常に脆弱でナイロン糸では穿孔するため,バイクリル糸で縫合を行った.しかし,房水漏出が持続し術翌日には眼球虚脱と著明なDescemet膜皺襞,脈絡膜?離,硝子体腔内フレアを認めた(図5).また,同日の採血ではCRP(C反応性蛋白)=11.9と著明な高値をきたしていた.手術によって惹起された壊死性強膜炎(SINS)を疑い,術後2日目よりステロイド全身投与を開始した.経過とともに強膜炎は徐々に軽減し,10日ほどで強膜創は閉鎖し房水漏出も消退した.山岸哲哉医療法人旦龍会町田病院眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎254.白内障術後の壊死性強膜炎白内障手術のまれな術後合併症として壊死性強膜炎surgicallyinducednecrotizingscleritis(SINS)が報告されている1~3).今回,両眼の白内障術後にSINSを発症し治療に苦慮した症例を経験したので報告する.図1左眼鼻側(白内障術後2週間)結膜創は離解し,強膜上に眼内レンズ縫着糸が露出している.図2左眼前眼部(白内障術後3週間)著明な充血と眼内炎症を認めた.図3図2と同日の左眼鼻側左眼鼻側は著明な充血があり,結膜・強膜の融解所見が見られる.図4図2と同日の右眼上方白内障手術時の切開創周囲の強膜炎・強膜菲薄化を認めた.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007(00)その後,ステロイド投与量を漸減しつつ治療を続け,消炎が得られた(図6).右眼の周辺部角膜浸潤も治癒した.なお,硝子体液の鏡検・培養では病原体を検出できず,強膜炎の炎症波及による無菌性眼内炎の可能性も考えられた.●Surgicallyinducednecrotizingscleritis(SINS)とは白内障手術のみならず,翼状片手術4,5),斜視手術6),輪状締結術など,あらゆる眼科手術の術後数週から数十年後に発症する強膜炎で,膠原病(慢性関節リウマチ,Wegener肉芽腫など)の関与が疑われている(ただし,非合併例の報告も多く,関与は断言できない)7).病因としては複数や両眼の手術手技の既往による強膜抗原に対する感作が考えられている.治療法としてはステロイドの点眼・全身投与,シクロスポリンA点眼,免疫抑制薬(シクロホスファミド,アザチオプリン)全身投与,強膜移植などが有効である.点眼のみで消炎する症例もあれば,免疫抑制薬にも抵抗し強膜穿孔から眼球摘出に至る症例もあり,治療に対する反応にも個体差があるのが特徴的である.文献1)気賀沢一輝,川村真理,入久巳ほか:白内障術後に発症した壊死性強膜炎の1例.眼紀37:1027-1036,19862)今泉綾子,川村俊彦,原吉幸ほか:白内障術後に発症した重篤な両眼性壊死性強膜炎の1例.眼紀47:1277-1282,19963)藤田聡,後藤浩,浅谷哲也ほか:眼球破裂と眼内レンズの脱出を生じた壊死性強膜炎の1例.眼科43:73-76,20014)Alsago?Z,TanDT,CheeSP:Necrotisingscleritisafterbarescleraexcisionofpterygium.???????????????84:1050-1052,20005)SridharMS,BansalAK,RaoGN:Surgicallyinducednec-rotizingscleritisafterpterygiumexcisionandconjunctivalautograft.??????21:305-307,20026)MahmoodS,SureshPS,CarleyFetal:Surgicallyinducednecrotisingscleritis:reportofacasepresenting51yearsfollowingstrabismussurgery.???16:503-504,20027)O?DonoghueE,LightmanS,TuftSetal:Surgicallyinducednecrotisingsclerokeratitis(SINS)─precipitatingfactorsandresponsetotreatment.???????????????76:17-21,1992←図5左眼所見(再手術翌日)房水漏出により眼球は虚脱している.角膜には著明なDescemet膜皺襞を認める.→図6左眼所見(再手術後3週間)ステロイド全身投与により,強膜創の閉鎖と房水漏出の消失が得られた.

コンタクトレンズ:マルチパーパスソリューションとコンタクトレンズの相性(2)

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????によってひき起こされると推察されている.●MPSとSHCLとの組み合わせによる安全性2)以前筆者らが行った臨床試験でSHCLとレンズケア製品との適合性を検討したので説明する.7種類のMPSに24~48時間浸漬させたO2オプティクス(チバビジョン株式会社)を,2時間および6時間装着させ,レンズ装着前後の角膜ステイニングの発生状況を確認した.角膜ステイニングは,面積と密度をスコア化し評価した.全体的に,レンズを2時間装着後の角膜ステイニングは強く現れ,6時間装着後では改善傾向を示している(図1).これらはMPSの毒性によるものと考えられ,0910-1810/07/\100/頁/JCLS●ソフトコンタクトレンズに発生する角膜ステイニングソフトコンタクトレンズ(SCL)とマルチパーパスソリューション(MPS)との相性によりひき起こされる角膜ステイニングは,その組み合わせによって複雑で程度も異なっている.角膜ステイニングは,シリコーンハイロゲルコンタクトレンズ(SHCL)に特有のものではなく,既存のハイドロゲルコンタクトレンズでも確認されている1).また,この組み合わせによる角膜への影響は,MPSの消毒成分を含めたすべての毒性を示す物質の,レンズへの接着とレンズ装着時の角膜への放出との関係(41)工藤昌之工藤眼科クリニックコンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純TOPICS&FITTINGTECHNICS280.マルチパーパスソリューションとコンタクトレンズとの相性(2)図1同一被検者のレンズを2時間と6時間装着後の角膜所見a:レンズを2時間装着後の角膜所見.びまん性に角膜ステイニングを認める.スコア値6点以上.b:レンズを6時間装着後の角膜所見.角膜周辺部に比較的軽い角膜ステイニングを認める.スコア値2点以下.ab図2レンズ装着2時間後および6時間後の角膜ステイニングのスコア値2時間装着後の角膜ステイニングは強く現れ,6時間装着後では改善傾向を示している.012345678ロートC3ソフトワン?モイスレニューマルチプラスフレッシュルックケアコンプリート10min?エピカコールドオプティ・フリープラス?オプティ・フリー?:装着前:2時間装着後:6時間装着後角膜ステイニングスコア(点)———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007(00)その種類によって程度に差が出ることが確認された.また,この試験のスコア値が高い組み合わせは,臨床的に問題となることが予想され,なるべく避けるべきであると考えている(図2).●MPSとコンタクトレンズとの相性の検討感染性角膜炎をひき起こした10歳代の96.3%,20歳代の89.8%が,コンタクトレンズ使用者であったことが報告されている3).また,MPSの毒性による角膜ステイニングを認めた場合,認めない場合と比較して角膜炎をひき起こす確率は3倍であると報告されている4).角膜上皮のバリア機構の破綻は,角膜への微生物の侵入と付着の足がかりになり角膜感染症の誘因となる.また,MPSは,煮沸(熱)消毒や過酸化水素消毒に比較して消毒効果では劣っており,こすり洗い・すすぎなどの工程を省略してしまうと洗浄効果だけではなく消毒効果まで減弱する.これらのことを考えると,MPSとコンタクトレンズとの相性には注意が必要であり,相性を考慮したレンズケアの指導も,コンタクトレンズに関連した角膜感染症の予防に有効なのかもしれない.●MPSの相性に関連した角膜ステイニングの対策MPSの相性に関連した角膜ステイニングは軽微なことが多いが,レンズケアの説明の際は相性のよい組み合わせを指導する.MPSの消毒効果を高くすることは,角膜感染症の予防には有効な手段ではある.しかし,レンズとの組み合わせによる相性で角膜ステイニングが発生し,角膜のバリア機構の破綻をひき起こすと角膜感染症の誘因となる.したがって,角膜のバリア機構に影響の少ない,消毒効果の高い消毒剤を選択することが必要である.しかし,すでに相性に問題があると考えられるMPSを使用している場合は,フルオレセイン染色後の角膜観察や,レンズ装用2~3時間後となる午前中の診察など注意深く診察を行う.また,過酸化水素消毒剤への変更は,組み合わせによる相性の問題が少なくなるだけではなく,消毒効果も高まり有効な手段である.文献1)BegleyCG,EdringtonTB,ChalmersR:E?ectoflenscaresystemsoncorneal?uoresceinstainingandsubjectivecomfortinhydrogellenswearers.??????????????????????21:7-13,19942)工藤昌之,糸井素純:O2オプティクスと各種ソフトコンタクトレンズ消毒剤との組み合わせによる安全性.あたらしい眼科24:513-519,20073)感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス─分離菌・患者背景・治療の現況─.日眼会誌110:961-972,20064)CarntN,JalbertI,StrettonSetal:Solutiontoxicityinsoftcontactlensdailywearisassociatedwithcornealin?ammation.????????????84:309-315,2007

写真:オルソケラトロジーによる合併症(3)-角膜上皮下混濁-

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS(39)吉野健一吉野眼科クリニック写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦281.オルソケラトロジーによる合併症(3)─角膜上皮下混濁─図4使用していたオルソケラトロジーレンズ同症例左眼に使用していたレンズ表面には多数の傷があり,1回の新規交換作製後3年3カ月が経過し寿命と思われた.一方,右眼のレンズは新規交換作製後1年3カ月が経過しているが使用可能と思われる.装用スケジュールは両眼同じでironringも両眼に同時期,同程度に観察されたが,上皮下混濁は寿命と考えられるレンズを使用していた左眼のみに観察された.図1角膜上皮下混濁(20歳,男性,左眼)オルソケラトロジーレンズの装用歴は,7~8時間の夜間装用で4年半である.装用10カ月において,両眼角膜下方中間周辺部の?ttingcurve部に一致した部位にironringが観察された.装用4年半の定期検査時に,左眼のironringを境に角膜中心側に帯状の上皮下混濁が観察された.視力は全経過を通じて良好であったが,観察時においてVS=0.7(1.2×cyl-1.50DAx180?)と変動範囲内の乱視を認めた.自覚症状はなく,疼痛,充血,前房内細胞,角膜上皮障害,角膜浸潤など炎症,感染を疑わせる所見もない.混濁は,レンズ装用を中止しステロイドの点眼にて消退傾向を認めるものの,1カ月以上経過しても残存している.図3図1と同一症例のフルオレセイン生体染色所見角膜上皮障害はまったく認められない.図2図1のシェーマ①:Ironring.②:角膜上皮下混濁.①②———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007(00)オルソケラトロジー(以下,OK)レンズを使用することにより発生する角膜上皮下混濁は,私信ではその存在を認識していたものの,文献的にはその組織学的所見や病理学的発生機序は明らかにされていないのみならず,その存在の報告すら現時点でのPubMed検索では見当たらない.少なくとも混濁が瞳孔領に及んでいないうちは視力の低下をきたさず,充血,疼痛などの自覚症状もなく患者の訴えはないため,定期検査時に偶然発見されるものと推測される.今回の執筆にあたり,当院でOKレンズを4年半装用し,フォローアップしていた患者に本病変が偶然にも発症したため,急遽施行した予備データの概略をもとに考察を試みた.細隙灯顕微鏡所見から,病変部位は明らかに角膜上皮細胞層内で,Bowman膜を越え実質には及んでいない.パキメータやペンタカムを用いた角膜厚の測定結果から,左右眼角膜同部位の角膜厚,また,同眼混濁部分と透明部分の角膜厚には差を認めず,角膜浮腫は呈していなかった.また,角膜内皮細胞数もOK施行前の値に比し減少はみられなかったことから,低酸素に起因する病変ではないように思われた.Confocalmicroscopeを用いた角膜組織学的所見から,混濁は角膜上皮基底細胞を中心に翼細胞に至る細胞の変化であることが明らかになった.この変化は,細胞内に外部より何らかの物質が取り込まれたことによるものか,細胞内で産生されたものによるものか,その本体は現時点においてまったく不明である.実質細胞から内皮細胞に至る部位には明らかな病的所見は認められず,炎症細胞の浸潤も観察されなかった.一方,本症例でも観察されたOKレンズ装用眼の角膜上皮細胞層内に出現するironring(鉄成分の沈着)の報告はすでに散見されているが,この鉄沈着のメカニズムも必ずしも明らかになってはいない.急激な角膜形状の変化や角膜表面の不正が原因で,涙液が角膜上の局所に滞留することがその発生メカニズムとして推察されている.本角膜上皮下混濁も,?ttingcurve部に一致するironringを境に,涙液が貯留する傾向にある角膜下方中心領域に帯状に観察されたことより,その発生は角膜上の涙液の滞留に関係していることが示唆される.しかし,涙液が滞留する部位に一致して,いかなる機序で細胞内に先の何らかの物質が取り込まれるのか,あるいは産生されるのかは現時点ではまったく不明で,今後の研究が期待される興味深い現象である.治療は,OKレンズの装用を速やかに中止し混濁の消失を待つべきであろう.患者は裸眼視力も良好で自覚症状がないため装用の継続を希望するが,瞳孔領に混濁が及べば視機能への影響も懸念されるため装用継続は禁忌であろう.消失までには数カ月を要するものと思われる.ステロイド使用の可否は本疾患の発症メカニズムが明らかになっていない以上不明といわざるをえない.

増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術(三次予防)のエビデンス

2007年10月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSに大きく変化している(図1,未発表データ).したがって,この急速な変化を考えた場合,計画から結果の解析までに数年を要する多施設ランダム化比較試験(rando-mizedcontrolledtrial:RCT)をゆっくりと行うことがむずかしく,また仮に行っても,臨床試験を行っている間に手術手技が進化し,数年後に結果が出ても,すでにその時期には有用でなくなってしまう可能性がある.したがって,この手術に関して,レベルの高い多施設でのRCTは,米国のTheDiabeticRetinopathyVitrectomyStudy(DRVS)による研究のみである.1.多施設RCTの結果a.硝子体出血に対する硝子体手術DRVSは,3つの群から成り立っている.このなかで,6カ月以内の硝子体出血で視力が5/200以下に低下した594例616眼(GroupH)を対象として,ただちに手術を行う群(早期手術群)と1年間手術を待つ群(手術延期群)に分けて両者の成績を検討した3).ランダム化前の3カ月以内にレーザー光凝固,重症の虹彩血管新生,はじめに従来中途失明の原因のトップであった糖尿病網膜症は,平成17年度の厚生労働科学研究研究費補助金難治性疾患克服研究事業網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究班の報告1)では,緑内障についで第2位であった(表1).このことは,網膜を専門とするわれわれにとって朗報であり,患者教育や適切な内科的治療もさることながら,硝子体手術の進歩と標準化の貢献が大きい.この報告から試算すると,日本全体で,1年間に565名の糖尿病網膜症患者が視覚障害の第1級の新規認定を受けていることになる.一般的に,増殖糖尿病網膜症,血管新生緑内障,黄斑浮腫のいずれかで失明に至るわけであるが,そのなかで増殖糖尿病網膜症(proliferativedia-beticretinopathy:PDR)によって視力を失う症例が多い.したがって,PDRに対する硝子体手術成績の向上が直接的に失明予防につながる.本稿では,三次予防としてのPDR手術に関して,過去のエビデンスをレビューし,また進化し続けるこの手術の最近の進歩を紹介する.I増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術のEBM(evidence-basedmedicine)近代PDR手術はMachemerによって行われて以来2),現在までの約35年間に,急速に手術手技が進歩してきた.それに伴い安全性が増し,成績が向上し,早期手術を含めて適応が拡大した.実際に筆者自身の成績も,早期手術への移行,手術手技の進歩によって,この15年間(33)????*FumioShiraga:香川大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕白神史雄:〒761-0793香川県木田郡三木町大字池戸1750-1香川大学医学部眼科学教室特集●糖尿病網膜症:一次予防,二次予防,三次予防の戦略あたらしい眼科24(10):1305~1309,2007増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術(三次予防)のエビデンス??????????????????????????????????????????????????????????????白神史雄*表11級視覚障害認定の原因疾患緑内障25.5%糖尿病網膜症21.0%網膜色素変性8.8%高度近視6.5%白内障4.4%加齢黄斑変性4.2%———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007黄斑?離などは除外された.20歳以下で糖尿病(DM)の診断を受け,エントリー時にインスリン投与を受けている症例はTypeI(37.8%)とされ,40歳以降にDMの診断を受けている(DMの診断をそれよりも若く受けてもエントリー時にインスリン投与を受けていない症例を含む)症例はTypeII(28.3%)と分類された.なお,21歳から39歳までにDMの診断を受けたインスリン投与患者は中間群(33.9%)に分類された.硝子体手術のゴールは,赤道部まで硝子体出血の完全除去と周辺部までの増殖膜除去である.術中の汎網膜光凝固は許可されていない.なお,手術の施行に必要な場合にのみ水晶体切除が許されており,手術時に有水晶体眼であった464眼のうちの30.4%に水晶体切除が行われた.手術延期群のほうにおいても,黄斑?離が発見された時点で硝子体手術が許されている.全体の49.2%は光凝固の既往があった.2年後の視力結果であるが,10/20以上の視力は,早期手術群24.5%,手術延期群15.2%であった(有意差0.01).また,NLP(光覚なし)は,早期手術群24.9%,手術延期群19.3%であり,両者間に有意差はなかった.TypeIでは,2年後視力が10/20以上の症例は,早期手術群35.6%,手術延期群11.7%,TypeIIでは,早期手術群15.9%,待機手術群18.1%で,タイプにより差がみられた.一方,2年後視力がNLPになる比率においてはタイプによる両群間の差に違いはなかった.つぎに視力低下に関与する血管新生緑内障の発生率は,早期手術群30.2%,待機手術群17.2%であり,TypeIIにこの差は大きかった.この結果には,手術中に光凝固が許されていないことが関係しており,現在のように手術終了時には汎網膜光凝固を完成させていれば,この発生率はかなり低くなり,早期手術群の結果がより良くなったものと考えられる.4年後の結果4)でも同様で,TypeIにおいて早期手術の有効性が示されたが,TypeIIではみられなかった.b.重症の線維血管性増殖に対する硝子体手術のEBMこのスタディ(DRVSのGroupNR)は,重症の線維血管性増殖があり,視力が10/200以上の視力を有する370眼の症例を対象にして,早期手術群と非手術群(重症な硝子体出血や黄斑?離が生じれば手術)に無作為に分けて視力を評価項目として比較検討したものである.手術は前述のGroupHと同じであり,ゴールはすべての線維血管性増殖膜の除去である.手術時に有水晶体眼であった177眼の6.2%に手術時に水晶体切除を行っている.このスタディでも,術中の汎網膜光凝固は許されていない.4年後の結果であるが,10/20以上の症例は,早期手術群で44%,非手術群で28%あった.しかし,視力不良例の比率では両群間に差はなかった.早期手術の有用性は,重症例ほど高くなる傾向がみられた.網膜?離発生率は,非手術群に有意に高かった.このスタディでは,糖尿病のタイプにより,早期手術の有効性(34)1.01.00.10.10.010.010.0010.001PostRxVAPreRxVA術前平均視力0.017術後平均視力0.0481992~19971.01.00.10.10.010.010.0010.001PostRxVAPreRxVA術前平均視力0.023術後平均視力0.1221998~20011.01.00.10.10.010.010.0010.001PostRxVAPreRxVA術前平均視力0.086術後平均視力0.4922006図1筆者の手術成績の変遷(1992年から2006年)縦軸は術後視力,横軸は術前視力.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????に差はみられなかった.2.GradeII(CanadianTaskForceonPreventiveHealthCare)以下のエビデンスa.手術適応6,7)PDRの硝子体手術適応に関しては,Hoらのレビュー7)の1992年の時点からあまり大きな変化はない(表2).強いて言えば,黄斑?離が生じてからではなく,視力予後を考えて黄斑に?離が生じる前に手術を行うべきであると考える.b.手術手技8~11)手術手技に関しては,この35年間に休むことなく新しい手技が考案され続けている.これらの手技に関して,多施設によるRCTが行われたことはない.しかし,有用性が明白な場合には,あえてRCTを行う必要はないと判断されてきた.現在まで,有用性について賛否両論であるのは,“Enbloc”excusion8),前部線維血管増殖9)(強膜血管新生を含む)を予防するための周辺部硝子体切除,白内障手術の併用10)などであり,これらに関しては,RCTが行われない限り,最終的な結論は得られないであろう.c.術後合併症術後合併症に関しては,1981年にMichelsが詳細に述べている12).すなわち角膜欠損,遷延性角膜浮腫,白内障,硝子体出血,網膜裂孔,網膜?離,虹彩血管新生,そして低眼圧,眼球萎縮などである.この当時,術後の裂孔原性網膜?離が5~10%,眼球萎縮が10~20%に生じると述べており,現在と比べると高率である.II最新の手術とエビデンス小切開硝子体手術(microincisionvitreoussurgery:MIVS)14),キセノン光による明るいシャンデリア照明,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfac-tor:VEGF)抗体の硝子体注入15,16)などの最近の進歩により,PDR手術は変貌した.現在MIVSは23ゲージと25ゲージの2つのシステムがあるが,PDRの増殖膜切除には25ゲージ硝子体カッターが優れており(図2),(35)表2増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の適応1.吸収しない多量の硝子体出血2.最近生じた黄斑の牽引性?離3.裂孔併発牽引性?離4.重症の進行性線維血管増殖5.眼底の透見が不良な虹彩新生血管例6.厚い黄斑前出血7.泡沫細胞緑内障8.黄斑牽引が関係する黄斑浮腫(文献6より改変)図225ゲージカッターによる増殖膜切除(双手法)図3増殖糖尿病網膜症手術におけるシャンデリア照明下での双手法:抗VEGF抗体:線維血管増殖膜———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007筆者は25GゲージシステムでPDR手術を行っている.硝子体カッター1本で切断,分層した増殖膜や出血を除去しながら膜処理が行え,そのまま周辺部まで硝子体を切除できるので,器具の入れ替えをくり返す必要はない.もちろん,後部硝子体が赤道部までほとんど未?離で線維血管性増殖膜が広く周辺部まで存在するような症例では,20ゲージで行い,粘弾性物質による膜?離などが必要であるが,ほとんどの症例はMIVSで十分施(36)図4ベバシズマブ投与による新生血管抑制a:投与前のフルオレセイン蛍光眼底写真.活動性の高い新生血管から蛍光漏出がみられる.b:投与翌日のフルオレセイン蛍光眼底写真.新生血管は細くなり,蛍光漏出もみられない.abab図5早期手術a:術前カラー眼底写真.数日前に生じた硝子体出血が軽度にみられる.線維血管性増殖が耳側アーケードから上方にかけて存在している.矯正視力は0.5であるが,この時点で手術施行を決定し,ベバシズマブを術前に投与し,25ゲージ経結膜無縫合手術を行った.b:術後4週のカラー眼底写真.矯正視力は0.7に改善した.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????(37)行できる.また,キセノン光によるシャンデリア照明によって双手法が可能になり,眼内鑷子と硝子体カッターで増殖膜を容易に切除できるようになった(図3).さらに,抗VEGF抗体であるベバシズマブを手術の数日前に硝子体内に注入すると,翌日には新生血管が細くなり活動性も低下するので(図4),手術中に増殖膜処理時のエピセンターからの出血を少なくすることができ,止血操作がほとんど不要となる.こういった手術手技の進歩によって,安全かつ低侵襲でPDR手術を行えるようになり,以前に比べると,前述のように視力成績も格段に向上している.これには,手術をより早期に行うようになったことも大きく影響している(図5).おわりにETDRS(TheEarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy)13)によると,頻回の観察と適切な時期に汎網膜光凝固を行うと,5年間で硝子体手術を行った症例は5.3%であった.今後,さらに適切な一次予防,二次予防が行われていければ,この比率はますます低下するであろう.理想的には三次予防にまで進行させないことが肝心であるが,不幸にも硝子体手術の適応になっても,早いタイミングで低侵襲手術を行えば,失明率を限りなく0に近づけることが可能であろう.もちろん,そのためには,血管新生緑内障の制御が必要であることはいうまでもない.文献1)中江公裕ほか:わが国における視覚障害の現状.厚生労働科学研究研究費補助金難治性疾患克服研究事業網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究平成17年度総括・分担研究報告書,p263-2672)MachemerR,BuetnnerH,NortonEWetal:Vitrecto-my;aparsplanaapproach.??????????????????????????????????75:813-820,19713)TheDiabeticRetinopathyStudyResearchGroup:Earlyvitrectomyforseverevitreoushemorrhageindiabeticret-inopathy.Two-yearresultsofarandomizedtrial.DiabeticRetinopathyVitrectomyStudyReport2.????????????????103:1644-1652,19854)TheDiabeticRetinopathyStudyResearchGroup:Earlyvitrectomyforseverevitreoushemorrhageindiabeticret-inopathy.Four-yearresultsofarandomizedtrial.DiabeticRetinopathyVitrectomyStudyReport5.????????????????108:958-964,19905)TheDiabeticRetinopathyStudyResearchGroup:Earlyvitrectomyforsevereproliferativediabeticretinopathyineyeswithusefulvision.Resultsofarandomizedtrial-Dia-beticRetinopathyVitrectomyStudyReport3.??????????????103:1644-1652,19856)AabergTM,AbramsGW:Changingindicationsandtech-niquesforvitrectomyinmanagementofcomplicationsofdiabeticretinopathy.?????????????94:775-779,19877)HoT,SmiddyW,FlynnHW:Vitrectomyinthemanage-mentofdiabeticeyedisease.???????????????37:190-202,19928)AbramsGW,WilliamsGA:“Enbloc”excisionofdiabeticmembranes.???????????????103:302-308,19879)LewisH,AbramsGW,WilliamsGA:Anteriorhyaloid?brovascularproliferationaftervitrectomy.????????????????104:607-613,198710)HonjoM,OguraY:Surgicalresultsofparsplanavitrec-tomycombinedwithphacoemulsi?cationandintraocularlensimplantationforcomplicationsofproliferativediabeticretinopathy.??????????????????????29:99-105,199811)SonodaK,SakamotoT,EnaidaHetal:Residualvitreouscortexaftersurgicalposteriorvitreousseparationvisual-izedbyintravitreoustriamcinoloneacetonide.??????????????111:226-230,200412)MichelsRG:Proliferativediabeticretinopathy.Pathophys-iologyofextraretinalcomplicationsandprinciplesofvitre-oussurgery.??????1:1-17,198113)TheEarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudyResearchGroup:ParsplanavitrectomyintheEarlyTreatmentDiabeticRetinopathy.ETDRSReportNumber17.?????????????99:1351-1357,199214)OhshimaY,OhjiM,TanoY:Surgicaloutcomesof25-gaugetransconjunctivalvitrectomycombinedwithcata-ractsurgeryforvitreoretinaldiseases.???????????????????????35:175-180,200615)AveryRL,PearlmanJ,PieramiciDJetal:Intravitrealbevacizumab(Avastin)inthetreatmentofproliferativediabeticretinopathy.?????????????113:1695.e1-15,2006;16)ChenE,ParkCH:Useofintravitrealbevacizumabasapreoperativeadjunctfortractionalretinaldetachmentrepairinsevereproliferativediabeticretinopathy.??????26:699-700,2006