———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.1,2009670910-1810/09/\100/頁/JCLS眼内レンズ(IOL)偏位,脱臼の原因は後破損などの術中トラブルの場合と,術眼のZinn小帯脆弱などに起因する場合がある.その治療は眼内で外固定し直すか,毛様溝縫着1~3)を行うかである.外固定できる場合はごく限られた症例で全周の水晶体が残っており,Zinn小帯がしっかりしている場合のみである.IOL縫着にはIOLを取り出す場合と偏位,脱臼したIOLをそのまま利用する場合4,5)がある.〔症例〕80歳,男性,2007年7月,右眼の超音波水晶体乳化吸引術の際,後破損が生じIOLは外固定となっていた.9月11日突然の視力低下にてIOL落下を認め当院紹介となる.初診時所見:視力は右眼=(0.8×sph+1.0D),左眼=(1.0×sph7.25D),眼圧は右眼=16mmHg,左眼=14mmHg,前は12時方向に亀裂を認めた.落下したIOLが6時方向眼底に確認できた.治療:落下したIOLを引き上げるために通常のスリー(67)ポート(20ゲージ)にて硝子体手術を行い,できる限り周辺部硝子体も切除した後,落下したIOLを前房へ持ち上げ片方の支持部を下方に残存している前を利用し外固定した.つぎに,上方2時の部分に角膜に接して強膜半層フラップを作製し,半層切開部の輪部から1.5mmの部位で10-0ナイロン糸付き直針を用い,前房内櫻井寿也多根記念眼科病院眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎269.硝子体手術用25ゲージトロカールを用いた眼内レンズ縫着術白内障手術時に挿入した眼内レンズ(IOL)が偏位,脱臼する場合の一つの対処法としてIOL縫着術がある.この術式のなかでも一部の前が残存する場合に片方ループのみを対面通糸により固定する方法がある.本法はIOLを摘出しないことから手術侵襲が少なく,簡便に,縫着できる.この手法の角膜通糸の際に硝子体手術用25ゲージトロカールを用いたより簡便な手法を提示する.図1縫着糸による角膜通糸図3IOL縫着図2縫着糸を反転し角膜通糸———————————————————————-Page2のIOL支持部の横を硝子体側から通糸し,対側の角膜周辺部に前もって留置した硝子体手術用25ゲージトロカールを通じて直針を眼外へ誘導した(図1).その針を反転し逆方向に25ゲージトロカールを通しIOL支持部の往路とは対側を通過させ,半層切開部から27ゲージ針のガイド針を通じて眼内から通糸する(図2).10-0ナイロン糸を結紮することで片方の支持部が毛様溝に固定される(図3).術後6カ月の時点で右眼視力=(1.0×sph8.25D(cyl1.0DAx90°),右眼眼圧=15mmHgであった.落下したIOL症例に対してIOL縫着を行う場合,IOLを眼外に摘出して新しいIOLを縫着する方法は簡便であるが,IOL取り出しの際に角膜内皮への侵襲,術中の低眼圧の発生,強角膜創の縫合不全,強角膜切開による術後乱視を若起するなどの合併症も考えられる.IOLをそのまま縫着する方法は手術手技が複雑で,IOLの光学径によっては偏心が生じたり,もともと挿入されているIOLが内固定用の度数であったならば縫着によるIOLの位置が前房側への移動に伴い近視化が生じたりもする.しかし,もし前の一部が残っており,外固定を考慮した度数で縫着に適した光学径のIOLが挿入されていたとするなら,今回の手法は合併症も少なく,また,角膜創の25ゲージトロカールを留置することでさらに手術手技が平易になった.ただし,片方であってもIOL縫着を行っていることから,周辺部の硝子体はできうる限り切除したほうがよい.この手法でやはり最も注意すべき点はIOL光学部のセンタリングの問題であり,IOLの大きさ(光学部と支持部),支持部縫着部位と前残在部の位置関係を十分検討し適応を考えるべきである.文献1)MalbranES:LensguidesuturefortransportandxationinsecondaryIOLimplantationafterintracapsularextrac-tion.IntOphthalmolClin9:151,19862)StarkWJ,GoodmanG,GoodmanDetal:Posteriorcham-berintraocularlensimplantationintheabsenceofposteri-orcapsularsupport.OphthalmicSurg19:240-243,19883)HuBV,ShinDH,GibbsKAetal:Implantationofposteri-orchamberlensintheabsenceofcapsularandzonularsupport.ArchOphthalmol106:416-420,19884)DueyRJ,HollandEJ,AgapitosPJetal:Anatomicstudyoftranssclerallysuturedintraocularlensimplantation.AmJOphthalmol108:300-309,19895)HanemotoT,IdetaH,KawasakiT:Dislocatedintraocularlensxationusingintraocularcowhitchknot.AmJOph-thalmol131:265-267,2001
———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.1,2009670910-1810/09/\100/頁/JCLS眼内レンズ(IOL)偏位,脱臼の原因は後破損などの術中トラブルの場合と,術眼のZinn小帯脆弱などに起因する場合がある.その治療は眼内で外固定し直すか,毛様溝縫着1~3)を行うかである.外固定できる場合はごく限られた症例で全周の水晶体が残っており,Zinn小帯がしっかりしている場合のみである.IOL縫着にはIOLを取り出す場合と偏位,脱臼したIOLをそのまま利用する場合4,5)がある.〔症例〕80歳,男性,2007年7月,右眼の超音波水晶体乳化吸引術の際,後破損が生じIOLは外固定となっていた.9月11日突然の視力低下にてIOL落下を認め当院紹介となる.初診時所見:視力は右眼=(0.8×sph+1.0D),左眼=(1.0×sph7.25D),眼圧は右眼=16mmHg,左眼=14mmHg,前は12時方向に亀裂を認めた.落下したIOLが6時方向眼底に確認できた.治療:落下したIOLを引き上げるために通常のスリー(67)ポート(20ゲージ)にて硝子体手術を行い,できる限り周辺部硝子体も切除した後,落下したIOLを前房へ持ち上げ片方の支持部を下方に残存している前を利用し外固定した.つぎに,上方2時の部分に角膜に接して強膜半層フラップを作製し,半層切開部の輪部から1.5mmの部位で10-0ナイロン糸付き直針を用い,前房内櫻井寿也多根記念眼科病院眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎269.硝子体手術用25ゲージトロカールを用いた眼内レンズ縫着術白内障手術時に挿入した眼内レンズ(IOL)が偏位,脱臼する場合の一つの対処法としてIOL縫着術がある.この術式のなかでも一部の前が残存する場合に片方ループのみを対面通糸により固定する方法がある.本法はIOLを摘出しないことから手術侵襲が少なく,簡便に,縫着できる.この手法の角膜通糸の際に硝子体手術用25ゲージトロカールを用いたより簡便な手法を提示する.図1縫着糸による角膜通糸図3IOL縫着図2縫着糸を反転し角膜通糸———————————————————————-Page2のIOL支持部の横を硝子体側から通糸し,対側の角膜周辺部に前もって留置した硝子体手術用25ゲージトロカールを通じて直針を眼外へ誘導した(図1).その針を反転し逆方向に25ゲージトロカールを通しIOL支持部の往路とは対側を通過させ,半層切開部から27ゲージ針のガイド針を通じて眼内から通糸する(図2).10-0ナイロン糸を結紮することで片方の支持部が毛様溝に固定される(図3).術後6カ月の時点で右眼視力=(1.0×sph8.25D(cyl1.0DAx90°),右眼眼圧=15mmHgであった.落下したIOL症例に対してIOL縫着を行う場合,IOLを眼外に摘出して新しいIOLを縫着する方法は簡便であるが,IOL取り出しの際に角膜内皮への侵襲,術中の低眼圧の発生,強角膜創の縫合不全,強角膜切開による術後乱視を若起するなどの合併症も考えられる.IOLをそのまま縫着する方法は手術手技が複雑で,IOLの光学径によっては偏心が生じたり,もともと挿入されているIOLが内固定用の度数であったならば縫着によるIOLの位置が前房側への移動に伴い近視化が生じたりもする.しかし,もし前の一部が残っており,外固定を考慮した度数で縫着に適した光学径のIOLが挿入されていたとするなら,今回の手法は合併症も少なく,また,角膜創の25ゲージトロカールを留置することでさらに手術手技が平易になった.ただし,片方であってもIOL縫着を行っていることから,周辺部の硝子体はできうる限り切除したほうがよい.この手法でやはり最も注意すべき点はIOL光学部のセンタリングの問題であり,IOLの大きさ(光学部と支持部),支持部縫着部位と前残在部の位置関係を十分検討し適応を考えるべきである.文献1)MalbranES:LensguidesuturefortransportandxationinsecondaryIOLimplantationafterintracapsularextrac-tion.IntOphthalmolClin9:151,19862)StarkWJ,GoodmanG,GoodmanDetal:Posteriorcham-berintraocularlensimplantationintheabsenceofposteri-orcapsularsupport.OphthalmicSurg19:240-243,19883)HuBV,ShinDH,GibbsKAetal:Implantationofposteri-orchamberlensintheabsenceofcapsularandzonularsupport.ArchOphthalmol106:416-420,19884)DueyRJ,HollandEJ,AgapitosPJetal:Anatomicstudyoftranssclerallysuturedintraocularlensimplantation.AmJOphthalmol108:300-309,19895)HanemotoT,IdetaH,KawasakiT:Dislocatedintraocularlensxationusingintraocularcowhitchknot.AmJOph-thalmol131:265-267,2001