———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLSポリープ状脈絡膜血管症(PCV)は日本人に多く,滲出型加齢黄斑変性(AMD)と診断されてきた症例にかなりの頻度で含まれていると考えられる.Chanら1)はPCVに対する光線力学的療法(PDT)に対する前向きな検討をしており,照射範囲をフルオレセンイ蛍光眼底造影(FA)を用いるのでなく,インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)で決めるIA-guidedPDTを施行し,12カ月の観察で良好な成績を報告した.しかし,臨床の場では必ずしも経過が良好な症例だけではない.今回Chanら1)の方法に準じたIA-guidedPDTを施行して,異なる経過をたどった2症例を提示して,その臨床像を検討する.●PDTに奏効しなかった症例患者:68歳,男性.主訴:1カ月前からの左眼視力低下.既往歴:特記すべきことなし.右眼PCVで瘢痕化視力不良.PDT照射前矯正視力0.8.眼底所見:黄斑部に約3乳頭径大の網膜色素上皮?離(PED)内に出血によるニボーがあり,下方に鮮赤色のポリープ状病巣2)がある(図1左上).FA所見:下方出血にブロックされたPED内に色素貯留している(図1右上).IA所見:拡張した異常血管網(矢頭)の先端のブドウの房状のポリープ3)(矢印)から旺盛な蛍光漏出をしている.この病巣を含む範囲IA-guidedで病巣径3,484?mとした(図1右下).光干渉断層計(OCT)所見:背の高いPEDとその周囲に漿液性網膜?離が検出されている(図1左下).他眼が同様の経過で視力不良になったことより,病変50%以上の出血,大きなPEDがあったが他に有効な治療法がなく,照射径4,500?mでPDTを施行した.PDT照射後1週間矯正視力0.4.眼底所見:血管アーケイドを超える網膜出血が増加している.上方に網膜色素上皮裂孔が生じている(図2左上).OCT所見:PEDの背が低くなり,網膜色素上皮裂孔(矢頭)部は網膜色素上皮の高反射帯が欠損(矢印)している(図2左下).PDT照射後12カ月矯正視力0.1.眼底所見:上方の網膜色素上皮裂孔(矢頭)が明瞭になり,黄斑部は瘢痕化してきている(図2右上).(63)佐藤拓群馬大学医学部眼科光線力学的療法(PDT)セミナー監修/石橋達朗湯沢美都子10.治療の実際:ポリープ状脈絡膜血管症ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)に対する光線力学的療法(PDT)の治療効果は狭義の加齢黄斑変性症(AMD)に対するものより有効性が高いとの報告が多数ある.しかし,視力予後不良例も存在し,治療の適応には慎重を要する.今回経過の異なる2症例を提示し治療のポイントをまとめる.提供図1PDTに奏効しなかった症例(1)(図説明は本文参照)nim5nim51TCOAFAITCOTCO図2PDTに奏効しなかった症例(2)(図説明は本文参照)———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007OCT所見:扁平なPED上に?胞様黄斑浮腫(矢印)が生じている(図2右下).PDT照射直後に出血の増大,網膜色素上皮裂孔が生じ,1回の照射で病巣の沈静化が得られたが,視力予後不良となりPDTが奏効しなかった症例であった.<PDTが奏効しなった症例のポイント>?照射前視力0.8と良好.?大きなPEDや出血が主体であり,鮮赤色ポリープ2)がある.?IAで太い異常血管網と旺盛な漏出を示すブドウの房状ポリープ3)が存在する.●PDT奏効症例患者:64歳,男性.主訴:2カ月前から視力低下.既往歴:特記すべきことなし.PDT照射前矯正視力0.4.眼底所見:約2乳頭径大の漿液性網膜?離内に2個の橙赤色隆起病巣(矢印)網膜下出血がある(図3左上).FA所見:橙赤色病巣部が淡い顆粒状蛍光漏出している(図3右上).IA所見:2個のポリープ状病巣(矢印)が検出され,この病巣を含む範囲IA-guidedで病巣径3,470?mとした(図3右下).光干渉断層計(OCT)所見:ポリープ部が急峻な隆起性病変として検出されている(図3左下).以上より活動性のあるPCVとして照射径4,500?mでPDTを施行した.PDT照射後12カ月矯正視力1.2.眼底所見:橙赤色病巣や出血,網膜?離が消失してい(64)る(図4上).OCT所見:退縮したポリープが軽度の隆起病変として検出されている(図4下).PDT照射1回にて眼底病変の沈静化を得られ,12カ月間で再発なく経過良好のPDT奏効例であった.<奏効例のポイント>?照射前視力0.5近辺.?漿液性網膜?離主体であり,鮮赤色ポリープがなくPEDや出血が少ない.?IAでブドウの房状ポリープや太い異常血管網がない.PCVに対するPDTは,多くの報告で狭義のAMDより効果的であるとされ,臨床の現場でも実感されるところであるが,ときに今回の奏効しなかった症例のように術後大量網膜下出血などがあった場合は必ずしも良好な予後を得られないこともある.照射前の臨床所見でPDTの効果を予測することは現時点では困難であるが,照射前の眼底所見の広範な出血,大きなPED,鮮赤色ポリープ,IA所見でのブドウの房状のポリープや拡張した異常血管網がPCVに対するPDTの予後不良因子である可能性があると考えられ,これらの所見がみられた場合は注意が必要である.文献1)ChanWM,LamDS,LaiTYetal:Photodynamictherapywithvertepor?nforsymptomaticpolypoidalchoroidalvas-culopathy:one-yearresultofaprospectivecaseseries.?????????????111:1576-1584,20042)高橋牧,佐藤拓,萩村徳一ほか:ポリープ状脈絡膜血管症における巨大血腫の前兆としての鮮赤色ポリープ.臨眼58:741-746,20043)UyamaM,WadaM,NagaiYetal:Polypoidalchoroidalvasculopathy:NaturalHistory.???????????????133:639-648,2002図3PDT奏効症例(1)(図説明は本文参照)nim5nim7TCOAFAITCO図4PDT奏効症例(2)(図説明は本文参照)