———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.8,200811030910-1810/08/\100/頁/JCLSC-000CⅢEC-5000CXⅢは平成19年12月に日本で初めて厚生労働省の認可を受けたカスタム照射対応のエキシマレーザー装置である(図1).EC-5000CXⅢは,EC-5000の特徴である矩形のビームを重ね合わせて照射するスリットスキャン方式に,マルチポイント照射方式を付加してカスタム照射に対応している(図2).マルチポイント照射は3次以上の高次不正乱視の切除のみを行い,S面とC面はこれまでどおりのスリットスキャン方式で行うため,最初期型のEC-5000でもマルチポイント照射装置の追加によりカスタム照射に対応でき,従来型レーザー装置の発展性を確保していることが大きな特徴である.CXⅢにはCXⅡで採用された200Hzアイトラッキングシステムが改良されて装備されている.ハイスピードCCD(charge-coupled-device)カメラにより瞳孔をモニターし,1秒間に200回の頻度で瞳孔中心を自動的に検出する.アイトラッキングはレーザーアームを移動する方式で,追従性が当初は疑問視されていたが,実際には実用上の問題はなく,0.5mm以上の眼球移動によってレーザー照射が停止するセーフティストップ機構も装備されている.今回,CXⅢに搭載されるに当たって,X方向とY方向の制御が独立して行われるようになったため,トラッキング精度はCXⅡより向上している.瞳孔中心から任意の位置に照射中心を変位させる機能をもつため,照射中心を瞳孔中心に設定するだけではなく,OPD-Scanの測定中心である角膜輝点を中心として照射することが可能である.術中の眼球の回旋に伴う軸ずれを検出する回旋誤差検出機能(onlinetorsionerrordetection,以下onlineTED)が装備されている.カスタム照射では軸ずれは不正乱視矯正の精度を大きく左右することから回旋誤差の検出と補正は非常に重要である.術前にOPD-Scanで得られた虹彩画像と実際の虹彩画像を比較して,レー(57)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載監修=木下茂大橋裕一坪田一男99.ニデックEC5000CXⅢと収差計木村格岡本茂樹岡本眼科EC-5000CXⅢはマルチポイント照射によるカスタム切除への対応,オートアライメントをもつ200Hzアイトラッキング機能,術中の回旋誤射検出機能をもつエキシマレーザー照射装置で,波面収差計であるOPD-Scanとファイナルフィットプログラムにより連携し,wavefrontおよびトポグラフィ連携カスタム照射に対応している.1EC5000CXⅢの特徴スリットスキャン方式/200Hzアイトラッキング(オートアライメント)/回旋誤差検出機能(onlineTED)/ファイナルフィットプログラム(inalit)によるOPD-Scanとの連動/multipointablation/トポグラフィ連携カスタム照射(CATz)/wavefront連携カスタム照射(OPDCAT).図2マルチポイント照射の原理それぞれにシャッターを備えた6連のアパーチャーにより1mm径のガウシアンビームによるフライングスポット方式で,不正乱視成分の切除のみを行う.———————————————————————-Page21104あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008ザー照射中も回旋を確認することができ,大きな軸ずれが手術中に起こった場合には,レーザー照射を一時中止して補正することが可能である.さらに近い将来には,術中の回旋に応じてレーザー照射軸を変化させて追従させる回旋誤差補正機能(torsionerrorcorrection)が搭載される予定である.面収差計(OPD-Scan)OPD-Scanはビデオケラトスコープ,波面収差計,オートレフラクトメータ,回転誤差検出機能に使用する虹彩画像の取得などの機能をもち,屈折矯正手術に必要な眼屈折系の情報を総合的に取得することができる(図3).角膜形状測定はプラチド方式を採用したビデオケラトスコープとして上下方向に19リング,水平方向に23リングをもち,角膜上0.5~11mmをカバーしている.屈折力の測定は,検影法により行う.これは赤外線スリット光を瞳孔から眼内に照射し,網膜からの反射光をフォトダイオードアレイを回転させながら1,440点の屈折力を測定し,6mm径の屈折力分布をカラーコードマップ(OPDマップ)として表示する.OPDマップからZernike多項式により波面収差を算出しwavefrontマップを得る.波面収差計としては,主流であるHartmann-Shack方式ではなく,検影法によって測定した眼屈折力誤差分布から,眼のもつ収差成分の種類と大きさを定量することが特徴である.OPD-Scanでは各収差成分を単独でカラーコードマップをして抽出し,さらに,たとえば術前術後などの2つのマップのdierentialmapを作成することも可能である.ファイナルフィットプログラム(inalit)OPD-Scanで得られた角膜形状,全屈折度数をもとに手術結果をシミュレーションし,CXⅢによる照射データを作成するファイナルフィットプログラム(inalit)を搭載している.これにより矯正領域,ノモグラム選択,矯正量,切除形状,不正乱視矯正量の設定が簡単にできる.CXⅢの切除形状は球面切除である従来照射,移行部の照射領域を最適化して球面収差の増加を減らしたoptimizedaspherictreatmentzone(OATz),トポグラフィと連携して角膜前面の不正乱視を除去するcus-tomizedaspherictreatmentzone(CATz),および波面収差を計測し全眼球の不正乱視を除去するOPDCATの4種類から選択できる.OATzは矯正領域と非矯正領域の間(トランジションゾーン)を非球面切除により最適化し,急峻な屈折度数の変化により生じる,いわゆるレッドリングを外側に追いやり,有効光学径を大きくする切除方法で,球面収差の低減に効果がある.CATzはトポグラフィと連携したカスタム照射による切除形式でOATzによって照射した後にマルチポイント照射によって角膜表面の不正乱視成分を除去する.屈折矯正手術後の角膜不正乱視の矯正,特に偏心照射の治療に効果が期待されている.OPDCATはOPD-Scanで検出した眼球全体の高次収差をマルチポイント照射を用いて除去するwavefrontカスタム照射である.文献1)KermaniO,SchmiedtK,OberheideUetal:Topographic-andwavefront-guidedcustomizedablationswiththeNIDEK-EC5000CXⅡinLASIKformyopia.JRefractSurg22:754-763,20062)PopM,BainsHS:ClinicaloutcomesofCATzversusOPDCAT.JRefractSurg20(5Suppl):S636-639,20053)TelandroAP:Pseudo-accommodativecornea.Anewcon-ceptforcorrectionofpresbyopia.JRefractSurg20(5Suppl):S714-717,20044)TelandroAP,SteileJ3rd:Presbyopia:PerspectiveontherealityofpseudoaccommodationwithLASIK.Oph-thalmolClinNorthAm19:45-69,2006(58)図3OPDScanの特徴オートレフラクトメータ,ケラトメータ/波面収差計測/角膜形状解析と自動診断機能/回旋検出用の虹彩画像の取得/検影法により6mm瞳孔で1,440点の屈折力をダイオードアレイが回転しながら測定し,屈折力誤差マップ(OPDマップ)を作成/OPDマップからZernike多項式により波面収差(wavefrontマップ)を作成する.