———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSI欠けている視野が垂直経線上に沿っている→視交叉より後ろに病変!即,画像検査を!1.両方の耳側視野が欠けていたら主訴としては両眼視困難を訴えることが多い.鼻側視野が保たれている場合,両眼で約120°の視野があり,両耳側半盲で外側が見えないとの訴えはあまり聞かない.斜視でないのに両眼視困難を訴えた患者には,もしや,と思い視野検査を施行する必要がある.視野検査をはじめに視野検査は「診断に重要な意味をもつ」場合と「補助診断」あるいは「定期検診」で行う場合に分かれる.今回は欠けている視野がどんな意味をもつのか,どの部位の障害によるのかについて述べ,眼球だけでなく,視神経,視交叉以降の病変についても症例を提示しながら解説したい.最も一般的な視覚経路の模式図とその部位の病巣により生じる視野欠損を図示した(図1).視交叉から視覚中枢における病変では視野欠損の境界線がきっちり垂直経線上に乗っていることが重要である.どの部位の頭蓋内病変がどの視覚経路に障害を与え,どのような視野欠損をきたすのか,常にイメージしながら診療に当たりたい.MRI(磁気共鳴画像)軸位断での視覚経路の局在を図2に示した.(35)1585*AkikoKimura:兵庫医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕木村亜紀子:〒663-8501西宮市武庫川町1-1兵庫医科大学眼科学教室特とっても近な神経眼科あたらしい眼科24(12):15851594,2007欠けている視野の診かたVisualFieldDefects─ItsInterpretation木村亜紀子*図1視覚経路網膜神経節細胞層の軸索は視神経を形成し,視交叉(1)で一部交叉して視索(2)となる.視索は一眼の耳側半分と他眼の鼻側半分の網膜からのインパルスを外側膝状体(3)に伝える.外側膝状体からの最終投射は視放線(4)で,鳥距溝の上下の視皮質(5)に終わる.視放線の下部は側脳質下角を取り巻くループ(Meyer’sloop)を形成し,側頭葉の前方まで達する.このループは網膜の下半分からのインパルスを伝達し,これが傷害されると対側の同名性上1/4盲が起こる.(文献1より改変)網膜視神経視交叉()視索()外側膝状体()視放線()後頭皮質()左右側頭葉頭頂葉後頭葉固視点右視野左視野———————————————————————-Page21586あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007(36)出したペン先が視界に入っているかを問う検査法である.目と目で見つめ合うことは互いの中心窩と中心窩を結んでいる.視交叉以降の病変で生じる視野欠損はあるオーダーする前にまず対座法で大まかな情報を得る.患者の片眼(たとえば左眼)を隠し,正面に座って患者の目(右眼)と検者の目(右眼)で見つめ合って検者の指し視索(2)視放線(4)外側膝状体(3)視放線(4)上斜筋腱視交叉(1)内頸動脈漏斗視索(2)大脳脚黒質中脳水道小脳中部上矢状静脈洞視放線(4)視皮質(5)視放線(4)視皮質(5)図2頭部MRIT1強調画像軸位断での視覚経路の局在を示した.(文献2より改変)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.12,20071587(37)図4巨大下垂体腫瘍による同名半盲52歳,女性.半年前から視野異常を自覚していた.視力は右眼矯正0.05,左眼矯正1.0.右同名半盲と左耳上側視野欠損を認める.MRIT1矢状断で巨大下垂体腺種による視交叉圧迫を認め,軸位断では右視索圧迫所見が認められる.右眼上耳側視野欠損は両耳側半盲の名残であり,同名半盲にマスクされている.図3両耳側半盲下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)による典型例.———————————————————————-Page41588あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007(38)早期に視野検査が施行されておれば腫瘍の増大の前に加療に当たれた可能性がある.動的視野検査は半盲患者などの診断に適しているが,治療後のfollowupには静的視野による閾値測定が優れることから,脳外科での手術前にはできれば静的視野のデータも残しておき術後再発などの判定に用いたい.接合部暗点(junctionalscotoma)片眼の視力障害(古典的には中心暗点)と他眼の耳側上方の半盲性視野欠損のことをいい,視神経と視交叉の接合部の病変を示唆するきわめて重要な所見である.原因不明の片眼視力障害をみたとき,他眼の耳側視野にイソプター低下を認めたら,トルコ鞍近傍のさらに詳しい検査が必要である.2.両方の鼻側視野が欠けていたら静的視野検査では正常人でも鼻下側の感度低下は出やすいので,中心30-2や中心24-2で鼻下側に異常が出たら,周辺プログラム60-4か,Goldmann視野計で再検査をする.鼻側視野欠損が本当であれば,緑内障以外では頭蓋内病変や副鼻腔病変が疑わしいので画像検査を施行する.視神経病変が鼻側視野障害単独で発症することはきわめてまれである.視交叉部病変ではemptysellasyndrome(空虚トルコ鞍症候群)で両鼻側半盲を呈することがある(図5).程度対座法で知ることができる.これで異常が検出できなければ静的視野検査からオーダーする.動的視野検査では内部イソプターの変化として認められる可能性が高い.両耳側半盲は視交叉病変による視野変化である.プロラクチノーマによる典型的な両耳側半盲を提示する(図3).視野欠損(内部イソプターのみの変化も含む)が垂直経線上に乗っているのがわかる.視交叉はトルコ鞍内で下垂体の上に位置しており,内頸動脈サイフォンに隣接している.代表疾患としては,下垂体腺腫,頭蓋咽頭腫,ラトケ(Rathke)胞など視交叉を下方から圧迫するもの,内頸動脈瘤(視交叉を外下方から圧迫),神経線維腫症における視交叉部腫瘍(視神経膠腫)などがある.いずれも緊急疾患ではないが,腫瘍内に出血して突発する下垂体卒中には注意が必要である.両耳側半盲をみれば視交叉部を思い浮かべなければならないが,初期病変は内部イソプターのみ変化して現れる.このような場合も見逃さず両耳側半盲(あるいは半盲性暗点)と診断する.視交叉病変はいつも両耳側半盲で発症するわけではない(約6割から8割).教室の西村が報告した視交叉部巨大下垂体腺腫における同名半盲症例を提示する(図4).この症例は病変が視索方向へ進展し同名半盲を呈しているが,左眼上方の視野欠損は両耳側半盲から視野欠損が進んだ可能性を示唆しており,図5Emptysellasyndrome両鼻下側に内部イソプターの沈下を認める.くも膜のトルコ鞍内への進入によりトルコ鞍が拡張し,下垂体は後下方へ圧排され,両鼻側半盲を呈する.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.12,20071589(39)3.両眼の左側,右側の視野が欠けていたら同名半盲は両耳側半盲と異なり,両眼開放していてもどちらか視野が半分欠損しているため,欠損側のものにぶつかりやすく,物体が急に目の前に現れると訴える.症例は50歳の女性であるが,複視を主訴に眼科を受診した.眼球運動では片眼の上転制限を認めたことから図6蝶形洞髄膜種による同名半盲静的視野で左同名半盲を認める.MRIT1強調画像軸位断では右視索圧排が認められる.図7同名性上1/4盲59歳,男性.血管造影で左中大脳動脈閉塞を認め,MRIT1強調画像で出血性脳梗塞を認め,梗塞部位は左Meyer’sloopにかかっている.———————————————————————-Page61590あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007乳頭を認めれば,頭蓋内圧亢進をきたしている可能性が高く,脳外科での早急な精査が必要である.III中心暗点・盲点中心暗点まず対光反応をみよう!視神経線維のなかで炎症や圧迫などのダメージに最も弱いのは乳頭黄斑線維束である(図8).乳頭黄斑線維束の障害は著しい視力低下をきたす.すぐ散瞳して眼底検査,フルオレセイン蛍光造影(FA)へと進みたくなってしまうが,まずは対光反応をみなければならない.対光反応の所見はきわめて重要である.中心暗点をきたす疾患としては視神経疾患と黄斑病変であることから,対光反応を確認後に散瞳して眼底の詳細な観察,画像検査へと進みたい.対光反応が不良な場合,特に網膜に大きな変化がないのにRAPD(relativeaerentpupillarydefect)陽性であれば視神経疾患を考える.代表的な疾患は視神経を取り巻く組織の炎症の波及,圧迫,さまざまな要因から視神経がダメージを受ける視神経症と特発性視神経炎である.眼底所見では一見鑑別困難なことがあり(図9),臨床の現場ではしばしば判断に迷う.眼球運動時痛があっ甲状腺眼症を疑いMRIを施行したところ,大きな蝶形骨洞髄膜腫を認めた.右視索を圧迫している.対座法では検出できなかったが,静的視野検査で左同名半盲を認めた(図6).同名半盲は視野欠損と反対側の視索,外側膝状体,視放線および後頭葉の病変にて生じる.この同名半盲には完全な同名半盲と不完全なものがある.後頭葉に近くなるほど,左右の視野欠損のcongruity(一致)が高くなる.他の神経症状を伴わない同名半盲は後大脳動脈閉塞症が最も疑われる.同名半盲の際に中心視野のみが生き残っていることを黄斑回避という.病巣局在診断価値はあまりなく,後頭葉では中心窩を担っている神経線維が大部分を占めていることに関係している.視放線障害,特に側頭葉腫瘍などによる場合,外側のMeyer’sloopが障害されると同名性上1/4盲をきたす(図1,7).責任病巣推定に価値がある.特に垂直経線に沿った下方の楔型の場合は視出血など視放線の最内側の障害が疑われる.視覚路障害では動的視野と静的視野の結果に解離(statokineticdissociation)が生じることがあり,Rid-doch現象とよばれる.これは欠損部において動きに対する視覚のみが残存することによる.視覚路のどの障害でも生じるものである.II視野欠損ではないけれど,Mariotte盲点拡大??真のMariotte盲点(以下,マ盲点)拡大は珍しい,ということをまず知っておくことが大切である.眼底,視神経乳頭周囲の脈絡膜所見は重要である.たとえば,視神経の先天異常の場合,視神経と接する脈絡膜に萎縮病変が認められる.Colobomaやmorningglorysyn-drome(朝顔症候群)などは眼底をみれば一目瞭然である.巨大乳頭でもマ盲点拡大をみる.視神経乳頭の一部に深い陥凹を認める(耳側に多い)視神経乳頭ピットや乳頭が上下方向に傾斜するtilteddiscsyndromeではこれに伴う視野異常をみる.これらの先天異常は乳頭小窩黄斑症候群など例外を除いては停止性である.それに対し,両眼のマ盲点拡大があり,眼底にうっ血(40)視神経乳頭弓状線維乳頭黄斑線維束中心窩網膜縫線図8視神経乳頭における神経線維の走行弓状線維は耳側縫線で上下にきっちり分かれる.弓状線維束に相当する視野領域をBjerrum領域とよぶ.乳頭黄斑線維束の最内側は視神経乳頭と中心窩を水平に走る.ここは炎症で真っ先に障害を受け盲点中心暗点となる.(文献3より)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.24,No.12,20071591検査,MRIにおけるMSplaqueの有無など検査を進める.炎症の確認には造影検査が必須である.片眼の中心暗点は脳腫瘍や副鼻腔の粘液腫など圧迫病変が原因のこともあるので注意を要する.両眼の中心暗点は急性に発症したものを除けば中毒性視神経症,遺伝性視神経萎縮であり,病歴や詳しい聴取で診断可能と思われる.対光反応が良好な場合,散瞳し,欠けている視野に一致する網膜病変があるかを精査する.一見網膜病変がないようであればFAも施行する.対光反応が良好な視神経疾患は3つ,Leber病,優性遺伝性視神経症,心因性視覚障害である.若い男性,大きな中心暗点,視力はきわめて不良な場合,Leber病を鑑別する必要がある.眼底所見では急性期は視神経乳頭の発赤腫脹があり,視神経乳頭周囲に血管が多く蛇行したり,運動や体温上昇により視力低下が増悪すれば(Uhtho現象)視神経炎が疑わしいし,基礎疾患に高血圧や糖尿病があれば虚血性視神経症が疑わしい.視神経炎の視野の特徴は中心暗点と思われがちだが,Humphrey視野計では中心感度の低下として描出され,患者の自覚も患眼が暗い,色が鮮明でないと訴える.参考となる所見は,健眼と思われるほうの眼にも異常が認められることである(1993年の米国での他施設共同研究で健眼にも69%に異常が認められた).患眼だけでなく他眼にも異常が検出された場合は視神経炎が疑われることから,静的視野検査は必ず両眼行う.球後視神経炎(図10)では眼底はまったく正常であり,MRIにより初めて確認される.比較的若年者に認められる視神経炎の原因の一つは多発性硬化症(multiplesclerosis:MS)であり,耳鳴りはないかなどの他の神経症状の検出,髄液(41)図9乳頭腫脹上:56歳,男性.特発性視神経炎の乳頭,下:65歳,男性.前部虚血性視神経症の乳頭.眼底のみでは鑑別は困難であるが,上の症例はMRIで視神経に炎症を認め,下の症例ではFA早期に脈絡膜循環遅延を局所的に認め診断に至った.図10球後視神経炎MRIT1冠状断,造影検査にて右視神経が造影されている.軸位断では,炎症が球後視神経に限局しているのがわかる.このような場合,眼底には変化を認めない.この症例は20歳,健康な男性で,多発性硬化症が疑われたが,原因精査を希望しなかった.髄液検査などが必要である.———————————————————————-Page81592あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007診断自体がむずかしい.片眼の視神経乳頭炎で特に時期を違えて両眼に生じた場合はLeber病の可能性があり,ミトコンドリアDNAの検査が診断の決め手になる.優性遺伝性家族性視神経症は発症年齢が若いこと,OPA-1遺伝子が検出される特徴がある.IV欠けている視野が水平経線に沿っている水平半盲??不規則性視野??網膜疾患として,半側網膜動脈または静脈閉塞症の可ている(拡張性微細血管症)がFAで色素の漏出をみない.進行すると視神経萎縮となる.ミトコンドリアDNA検査では3460変異,11778変異,14484変異が全患者の9割を占める.自然回復する症例も認めるが,11778変異では自然回復はほとんど期待できない(図11).外傷を契機とした心因性視覚障害では時に難治を示し,外傷性散瞳などで対光反応の判断自体がむずかしい場合は(42)図11Lerber病13歳,男性.右眼矯正視力0.15,左眼1.0,兄が14歳でLerber病を発症し,母の兄もLerber病である.ミトコンドリアDNA検査で11778変異が確認されている.女性を介して男性で発症する.図12Superiorsegmentalopticnervehypoplasia(SSOH)21歳,女性.右下半盲を認めた.視神経乳頭は局所的右耳上側のリム狭細化を認める.緑内障との診断で近医でフォローされていた.———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.24,No.12,20071593まず考えないといけない疾患である.FAでchoroidalash時に局所的脈絡膜循環遅延をみる.虚血性視神経症(ION)にはriskfactorがあり,小乳頭,遠視眼がそれに当てはまる(図13).Foster-Kennedy症候群は患能性がある.きっちり水平経線上に沿っているわけではないが網膜離,眼内腫瘍,網膜血管閉塞症なども鑑別疾患である.Nerveberbundle型欠損では緑内障を考える.緑内障ガイドライン第2版によると,緑内障は「視神経と視野に特徴的変化を有するもの」と定義され,緑内障性視神経症における構造的異常と視野障害は一致すると考えられる.緑内障性視野変化の詳細については項を譲りたい.Superiorsegmentalopticnervehypoplasia(SSOH)は正常眼圧緑内障(NTG)に間違われやすい疾患である.その特徴は局所的乳頭リムの狭細化と下半盲・盲点中心暗点である.いかにもNTG様で緑内障薬の点眼が行われていることもあるが,日本人ではNTGの約1割が本来はSSOHの可能性があり,的確な診断が期待される(図12).視神経乳頭の他の特徴としては網膜中心動脈起始部の上方偏位,上方乳頭の強膜haloなどがある.通常両眼性である.母親がⅠ型糖尿病の場合であることが多く,その場合の有病率は8.8%と報告されている.前部虚血性視神経症(anteriorischemicopticneurop-athy:AION)はさまざまな視野を呈し,決して下半盲がAIONに特異的とは言えないのだが,水平半盲では(43)図13視神経小乳頭前部虚血性視神経症のリスクファクターである.小乳頭の診断はDM/DD比といい,乳頭中心から中心窩までの距離(DM:disc-maculardistance)と乳頭径(DD:discdiameter)を測り,その比が3以上あると小乳頭といえる.すなわち,乳頭と中心窩との間に乳頭が3個分入ればそれは乳頭が小さいと考えられる.DMDD$14PseudoFosterKennedy症候群40歳,男性.初診時血糖400mg/dl,HbA1c13.2で糖尿病は無治療であった.左眼から右眼へと時期を異にして発症したAIONでは右眼乳頭は境界不鮮明,腫脹のため陥凹は消失し,乳頭上に線状出血を認める.左眼は視神経萎縮を呈している.———————————————————————-Page101594あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007文献1)AndersonDR:PerimetrywithandwithoutAutomation,2nded.Mosby,Toronto,19872)半田譲二:MRI診断のための脳解剖図譜.第2版,南江堂,19913)若倉雅登,東範行,松元俊ほか:アトラス視神経乳頭のみかた・考え方.第1版,医学書院,19964)根木昭:視野を読む基本.眼科プラクティス15,視野(根木昭編),文光堂,20075)HalleAA,DrewryRD,RobertsonJT:Ocularmanifesta-tionsofpituitaryadenomas.SouthMedJ76,732-735,19836)NishimuraM,KurimotoT,YamagataYetal:Giantpitu-itaryadenomamanifestingashomonymoushemianopia.JpnJOphthalmol51:151-153,20077)YamamotoT,SatoM,IwaseA:SuperiorsegmentaloptichypoplasiafoundinTajimiEyeHealthCareProjectpar-ticipants.JpnJOphthalmol48:578-583,20048)LandauK,BajkaJD,KirchschlagerBM:ToplessopticdisksinchildrenofmotherswithtypeIdiabetesmellitus.AmJOphthalmol125:605-611,1998側の視神経萎縮と反対側のうっ血乳頭所見をきたし,前頭葉腫瘍やトルコ鞍近傍腫瘍で認められるが,実際臨床で遭遇するのはpseudo-FosterKennedy症候群である.時期を異にして発症したAIONである(図14).基礎疾患に糖尿病,高血圧,高脂血症などがある場合が多い.AIONは急性発症であるが,慢性型IONの存在が認識されている.緑内障性乳頭陥凹を呈さず,視野がゆっくりと進行する.当初はbundle型欠損を呈することから経過をみないと緑内障との鑑別はむずかしい.おわりに視野検査を必要とする疾患は,視路疾患,緑内障,網脈絡膜疾患,心因性疾患の4種類であり,欠けている視野が生命線を左右する疾患の発見に直結することも少なくない.早急な治療が良好な視力・視野の維持に結びつくことを思うと,欠けている視野を放置し手遅れになることのないよう,見逃さず的確に神経眼科的疾患も診断したい.(44)